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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074906
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】過酸化水素の生成装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/30 20060101AFI20230523BHJP
   C02F 1/48 20230101ALI20230523BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20230523BHJP
   C25B 9/65 20210101ALI20230523BHJP
   C25B 9/17 20210101ALI20230523BHJP
【FI】
C25B1/30
C02F1/48 B
C25B9/00 A
C25B9/65
C25B9/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188089
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(71)【出願人】
【識別番号】510182881
【氏名又は名称】株式会社融合技術開発センター
(71)【出願人】
【識別番号】596009788
【氏名又は名称】株式会社末松電子製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 隆久
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛之
(72)【発明者】
【氏名】中島 泰仁
(72)【発明者】
【氏名】秋山 秀典
(72)【発明者】
【氏名】末松 謙一
(72)【発明者】
【氏名】甲田 忠
(72)【発明者】
【氏名】豊永 大樹
【テーマコード(参考)】
4D061
4K021
【Fターム(参考)】
4D061DA03
4D061DB09
4D061EA13
4D061EB05
4D061EB07
4D061EB11
4D061EB19
4D061EB29
4D061EB33
4D061ED12
4K021AB15
4K021BA02
4K021BB03
4K021CA05
4K021CA06
4K021CA15
4K021DA03
4K021DA15
4K021DC07
4K021EA05
4K021EA06
(57)【要約】
【課題】過酸化水素を効率よく生成できる過酸化水素の生成装置を提供する。
【解決手段】水16を溜める水槽部11と、前記水16を介在して配置された一対の電極部12F,12Sと、前記一対の電極部12F,12Sに最大電圧が1kV以上のパルス状の電圧を印加する電源部13と、前記一対の電極部12F,12Sの間に配置され、前記水槽部11を一方の電極部12F側と他方の電極部12S側とに仕切る絶縁部14と、を備え、絶縁部14は電気的絶縁体であり、一方の電極部12F側から他方の電極部12S側まで貫通する孔18が複数形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を溜める水槽部と、
前記水を介在して配置された一対の電極部と、
前記一対の電極部に最大電圧が1kV以上のパルス状の電圧を印加する電源部と、
前記一対の電極部の間に配置され、前記水槽部を一方の電極部側と他方の電極部側とに仕切る絶縁部と、を備え、
前記絶縁部は電気的絶縁体であり、前記一方の電極部側から前記他方の電極部側まで貫通する孔が複数形成されている、過酸化水素の生成装置。
【請求項2】
前記孔の数は、前記電源部が印加するパルスエネルギー1Jあたり200以上1000以下である、請求項1に記載の過酸化水素の生成装置。
【請求項3】
前記孔の前記貫通方向に直交する断面形状は、円形状であり、
前記孔の前記貫通方向に直交する直径寸法は、20μm以上100μm以下である、請求項1から請求項2までの何れか一項に記載の過酸化水素の生成装置。
【請求項4】
隣接する前記孔の縁同士の前記貫通方向に直交する方向の最短距離は、1mm以上である、請求項1から請求項3までの何れか一項に記載の過酸化水素の生成装置。
【請求項5】
前記一対の電極部の対向面にそれぞれ密着する一対のカバー部を備え、
前記一対のカバー部は、前記対向面のうち前記水槽部内において気体に接触し得る部分を覆う、請求項1から請求項4までの何れか一項に記載の過酸化水素の生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、過酸化水素の生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過酸化水素は化学式:Hで示される化合物で、酸化力によって殺菌剤、漂白剤として一般家庭でも利用されている。現状の過酸化水素の製造方法は、非特許文献1に記載のアルキルアンスラキノンを利用した自動酸化法が主流であるが、様々な薬剤を利用し、酸化、抽出、洗浄などの複数のプロセスを経て製造されるものであり、一般家庭での利用にあたっては専用の製造工場で製造されたものを液体のまま瓶容器入りの状態で購入し、必要量を小出しして使用している。しかし、過酸化水素は時間の経過によって徐々に分解するため、過酸化水素を長期間保存していると使用したい時に既に分解が進行し、利用可能な濃度の過酸化水素が残っていないこともある。そこで、一般家庭向けに家庭内で過酸化水素を生成する技術が望まれている。
【0003】
一方、例えば下記特許文献1には、処理槽の平板電極間に、貫通孔を有する絶縁性隔離壁を設けた液体処理装置が記載されている。この液体処理装置の処理槽に汚濁物質を含む処理液を導入し、平板電極間に電圧を印加すると、貫通孔において電界が集中してプラズマが発生し、汚濁物質を処理する技術が開示されている。この技術では、プラズマによって紫外線、ラジカル、衝撃波が生成して有機物などの汚濁物質を分解することが開示されているが、過酸化水素が生成することの開示はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-93972号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日下部良、「過酸化水素の製造と性質, 取り扱い」、紙パ技協誌、1998年、第52巻5号、p.608-615
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高濃度の過酸化水素水を生成するべく、過酸化水素を効率よく生成できる過酸化水素の生成装置が望まれた。
【0007】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、過酸化水素を効率よく生成できる過酸化水素の生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の過酸化水素の生成装置は、水を溜める水槽部と、前記水を介在して配置された一対の電極部と、前記一対の電極部に最大電圧が1kV以上のパルス状の電圧を印加する電源部と、前記一対の電極部の間に配置され、前記水槽部を一方の電極部側と他方の電極部側とに仕切る絶縁部と、を備え、前記絶縁部は電気的絶縁体であり、前記一方の電極部側から前記他方の電極部側まで貫通する孔が複数形成されているものである。この装置に、飲用可能な汚濁物質を含まない水道水を充填し、所定のパルス状電圧を印可すると、絶縁体に設けられた貫通孔でプラズマが生成し、プラズマによって水(HO)から過酸化水素(H)が生成することを見出し、発明に至った。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】過酸化水素の生成装置の構成を概略的に示す概略図
図2】絶縁部を示す正面図
図3】カバー部を示す正面図
図4】電源部の出力電圧波形を示す図
図5】実験1の結果を示す表
図6】実験2の結果を示す表
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
過酸化水素の生成装置(以後、単に装置10と称する。)は、図1に示すように、水槽部11と、一対の電極部12F,12Sと、電源部13と、絶縁部14と、一対のカバー部15F,15Sと、を備えている。装置10は、一対の電極部12F,12S間に電圧を印加して、水16の中でプラズマを発生させ、過酸化水素を生成する。装置10は、単独で使用してもよいし、トイレ、浴室、キッチン、洗面台等の水回りの機器に組み込んで使用してもよい。
【0011】
各図面においてX軸は、一対の電極部12F,12Sの対向方向と平行である。Y軸は一対の電極部12F,12Sの対向面17F,17Sに沿って縦方向に延びている。Z軸は、X軸及びY軸と直交し、対向面17F,17Sに沿って横方向に延びている。
【0012】
水槽部11は、樹脂製である。水槽部11は、水16、一対の電極部12F,12S、絶縁部14及び一対のカバー部15F,15Sを収容する。水16は、家庭で容易に入手可能な水道水等である。
【0013】
一対の電極部12F,12Sは、水16を介在して配置されている。一対の電極部12F,12Sのうち一方の第一電極部12Fは陽極であり、他方の第二電極部12Sは陰極である。第一電極部12F及び第二電極部12Sは、いずれも平板状をなし、互いに対向して配置されている。
【0014】
第一電極部12Fの第一対向面17F及び第二電極部12Sの第二対向面17Sは、絶縁部14と対向している。第一対向面17F及び第二対向面17Sは、縦Y方向及び横X方向に広がる平面である。第一対向面17Fと第二対向面17Sとは平行であり、第一対向面17Fと第二対向面17Sの間隔はどこも等しい。
【0015】
電源部13は、一対の電極部12F,12Sと電気的に接続されている。電源部13は、一対の電極部12F,12Sに最大電圧が1kV以上のパルス状の電圧を印加する。電源部13は、高電圧・大電流を瞬間的に出力するパルス電源等である。
【0016】
絶縁部14は、電気的に絶縁性を有する電気的絶縁体によって形成されている。絶縁部14は、平板状をなしている。絶縁部14は、一対の電極部12F,12Sの間に配置されている。絶縁部14は、第一電極部12F及び第二電極部12Sと離れている。絶縁部14は、水槽部11を第一電極部12F側と第二電極部12S側とに仕切る隔壁である。絶縁部14によって、水槽部11の第一電極部12F側には第一室11Fが形成され、水槽部11の第二電極部12S側には第二室11Sが形成されている。また、第一対向面17Fと絶縁部14および第二対向面17Sと絶縁部14は平行であり、その間隔はどこも等しい。
【0017】
絶縁部14には、複数の微細な孔18が形成されている。各孔18は、第一室11Fから第二室11Sまで貫通している。各孔18の貫通方向は、X軸と平行である。
【0018】
各孔18の貫通方向に直交する断面形状は、図2に示すように、円形状である。全ての孔18の形状及び大きさは同等である。各孔18の貫通方向に直交する直径寸法S1は、20μm以上100μm以下である。直径寸法S1は、YZ平面上の寸法である。絶縁部14に設ける孔18の数は、電源部13が印加するパルスエネルギー1Jあたり200以上1000以下である。パルスエネルギーは、1パルスあたりのエネルギーである。孔18の数は、電源部13が印加するパルスエネルギー1Jあたりの数に換算した値である。全ての孔18は、縦方向及び横方向に所定の間隔S2,S3を開けて配置されている。間隔S2,S3は、YZ平面における隣接する孔18の外縁同士の最短距離である。間隔S2,S3は、1mm以上である。間隔S2,S3はそれぞれ、等間隔であってもよいし、等間隔でなくてもよい。
【0019】
一対のカバー部15F,15Sは、絶縁性を有する材料によって形成されている。一対のカバー部15F,15Sは、図1に示すように、第一電極部12Fの第一対向面17F及び第二電極部12Sの第二対向面17Sに密着している。
【0020】
第一カバー部15F及び第二カバー部15Sはいずれも、図3に示すように、開口部19を囲う枠状をなしている。第一カバー部15Fは、図1に示すように、第一対向面17Fの外縁に沿っている。第二カバー部15Sは、第二対向面17Sの外縁に沿っている。第一カバー部15F及び第二カバー部15Sは、第一対向面17F及び第二対向面17Sのうち水16及び気体の両方に臨む界面部分を覆っている。これによって、第一対向面17F及び第二対向面17Sはそれぞれ、水16のみに直接接触する。言い換えると、第一対向面17F及び第二対向面17Sは、気体及び水16の両方と接触する点を有していない。このような構造とすることで、パルス電圧印可時に第一対向面17F上の気体及び水16の両方と接触する点と、第二対向面17S上の気体及び水16の両方と接触する点の間で生じる沿面放電と呼ばれる、絶縁部14に設けられた水中の孔18を経ずに空気中を通電する現象を阻止できる。なお、この空気中を通電する沿面放電が生じると、パルスエネルギーが第一対向面17F-絶縁部14上の孔18-第二対向面17Sの経路の通電が減り、過酸化水素の生成量が減少する。
【0021】
装置10によれば、電源部13を作動させると、一対の電極部12F,12Sの間にパルス状の高電圧が印加され、絶縁部14の各孔18に電界が集中してプラズマが発生し、飲用可能な汚濁物質を含まない水道水を使用した場合には、プラズマのエネルギーは汚濁物質の分解に使用されず、高濃度の過酸化水素が生成される。この時、絶縁部14上に孔18が複数設けられることで、プラズマの生成箇所を多くでき、孔18の数が1つの場合よりも短時間に高濃度の過酸化水素を得ることができる。また、孔18の数は多い程単位時間当たりの過酸化水素生成量は多くなるが、孔の数が多すぎると孔1つあたりの電流密度が低下してプラズマを生成しなくなるため、単位時間当たりの過酸化水素濃度はかえって低下する。好適な孔18の数は、1回のパルスエネルギー1Jあたり200以上1000以下である。
【0022】
孔18の大きさは100μm以下で小さいほどよい。孔18の大きさが小さい程少ないエネルギー量で電流密度を高めることができ、同じエネルギー量ならより多くの過酸化水素を生成できる。また、孔18の大きさは20μm以上がよい。孔18の大きさが20μm未満であると通電自体がなくなってしまい、プラズマ・過酸化水素が生成しなくなる。
【0023】
孔18どうしの間隔S2及びS3は1mm以上あるのがよい。孔18どうしの間隔S2及びS3が1mm未満であると、孔18どうしでエネルギーの取り合いとなり、電流密度が高まらなくなって過酸化水素の生成量が低下する。
【0024】
絶縁部14の厚さは、150~200μmが好適である。絶縁部14の厚さは薄い程プラズマが生成しやすく、過酸化水素が生成しやすいが、絶縁部14の孔18が劣化で広がりやすく、絶縁部14の耐久性が低下する。一方、絶縁部14の厚さが厚すぎると孔18での電気抵抗が大きくなり、プラズマが生成しにくくなり、過酸化水素も生成しにくくなる。
【0025】
絶縁部14の材質は、アルミナセラミックやポリイミド樹脂などの絶縁体を選択できる。絶縁部14の孔18はプラズマ生成によって高温になるため、耐熱性を有する素材が好適である。また、絶縁部14の素材は、誘電率が低いものがよい。これは、印加するパルスエネルギーは図4に示すように常に電位の変化する山型であるため、絶縁部14の誘電率が高いと誘電によって電流が流れるようになる。これを防止するためにも、絶縁部14の誘電率は低い方がよく、ポリイミド樹脂やアルミナセラミックが好適である。
【0026】
水16の電気伝導率は、高いほどよい。水16の電気伝導率が低いと水自体を通電・加熱するのにパルスエネルギーが消費されてしまい、過酸化水素の生成効率が悪くなる。そこで、本願発明の過酸化水素生成装置10に充填する水は、あらかじめ塩などの電解質を加えておいたり、電解によって導電率を変化させた水を充填してもよい。
【0027】
一対の電極部12F、12Sは、定期的に極性を入れ替えるのがよい。一対の電極部12F、12Sの極性を定期的に入れ替えることで、装置の稼働に伴って電極表面に析出する水16由来の成分を除去することができる。極性の入れ替えは、パルスごとに入れ替えてもよいし、過酸化水素の生成1回ごとでもよい。
【0028】
<実験>
実験用の装置10を用いて、絶縁部14に設ける孔数、孔径及び孔間隔に関する実験を行った。孔数は、1つの装置10に設ける絶縁部14の孔18の数である。各孔18のYZ平面上の形状は円形とする。孔径は、孔18の直径寸法S1である。全ての孔18の孔径は等しい値とする。孔間隔は、YZ平面で隣接する孔18の外縁同士の最短距離S2,S3である。孔間隔は、縦方向及び横方向で等間隔とする。
【0029】
実験用の装置10は、次のような構成を有している。第一電極部12F及び第二電極部12Sは、グラファイトカーボン電極である。第一電極部12Fと第二電極部12Sとの間隔Dは、14mmである。間隔Dは、第一対向面17Fと第二対向面17SとのX軸上の距離である。絶縁部14は、ポリイミド樹脂で形成されている。絶縁部14の厚さ寸法T1は、200μmである。一対のカバー部15F,15Sはいずれも、シリコーンゴムで形成されている。カバー部15F,15Sの厚さ寸法T2は、1mmである。絶縁部14及びカバー部15F,15Sの厚さ寸法T1,T2はいずれも、X軸上の寸法である。
【0030】
電源部13は、株式会社末松電子製作所製のMPC3010S-50SPである。電源部13からの出力電圧波形は、図4に示す通りである。電源部13の最大印加電圧は、10kVである。電源部13の印加時間は4n秒/パルスである。印加時間は、最大印加電圧の1/2時点における印加時間である。印加時間4n秒間に最大印加電圧10kVを印加する1パルスあたりのパルスエネルギーは1Jである。印加頻度は150パルス/秒である。累積印加数は100万パルスである。水16は、熊本市水道水を用いる。水16の電気伝導率は、230μS/cmである。
【0031】
実験1:孔数及び孔径について
孔間隔を2.5mmで固定し、孔数及び孔径を変化させ、それぞれ生成された過酸化水素水の濃度(mg/L)を測定した。過酸化水素水の濃度は、過酸化水素水中の過酸化水素の含有量である。実験1の結果を図5の表に示す。孔数は、136孔、275孔、555孔、760孔、1500孔と変化させた。孔径は、10μm、20μm、30μm、60μm、90μm、120μmと変化させた。
【0032】
実験1の結果:孔数及び孔径の組み合わせによって、過酸化水素の生成濃度がゼロであったり低濃度であったり高濃度であったりした。図5の表には、高濃度であるものに網掛けをして示す。具体的には、孔径が10μmである場合、孔数がいくつであっても過酸化水素の生成濃度はゼロであった。孔径が90μmであり、かつ孔数が136孔及び1500孔のいずれかである場合、過酸化水素の生成濃度はゼロであった。孔径が120μmであり、かつ孔数が136孔及び1500孔のいずれかである場合、過酸化水素の生成濃度はゼロであった。孔径が120μmであり、かつ孔数が275孔、555孔及び760孔のいずれかである場合、過酸化水素の生成濃度は低濃度であった。
【0033】
一方、孔径が20μm、30μm及び60μmのいずれかである場合、及び孔径が90μmであり、かつ孔数が275孔、555孔及び760孔のいずれかである場合、過酸化水素の生成濃度は高濃度であった。この結果から孔径は、20μm以上100μm以下が良いと考えられる。
【0034】
孔径が20μm、30μm及び60μmのいずれかであり、かつ孔数が、275孔、555孔及び760孔のいずれかである場合、過酸化水素の生成濃度は特に高濃度であった。この結果から孔数は、電源部13が印加するパルスエネルギー1Jあたり200以上1000以下が良いと考えられる。
【0035】
実験2:孔間隔について
孔数を555孔、孔径を30μmで固定し、孔間隔を変化させ、それぞれ生成された過酸化水素水の濃度(mg/L)を測定した。実験2の結果を図6の表に示す。孔間隔は、2.5mm、1mm、0.5mmと変化させた。
【0036】
実験2の結果:孔間隔によって、過酸化水素の生成濃度が低濃度であったり高濃度であったりした。図6の表には、高濃度であるものに網掛けをして示す。具体的には、孔間隔が0.5mmである場合、過酸化水素の生成濃度は低濃度であった。孔間隔が1mm及び2.5mmのいずれかである場合、過酸化水素の生成濃度は高濃度であった。この結果から孔間隔は、1mm以上が良いと考えられる。孔間隔が2.5mmである場合、過酸化水素の生成濃度は特に高濃度であった。
【0037】
上記のように構成された実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0038】
過酸化水素の生成装置10は、水槽部11と、一対の電極部12F,12Sと、電源部13と、絶縁部14と、を備えている。水槽部11は、水16を溜める。一対の電極部12F,12Sは、水16を介在して配置されている。電源部13は、一対の電極部12F,12Sに最大電圧が1kV以上のパルス状の電圧を印加する。絶縁部14は、一対の電極部12F,12Sの間に配置され、水槽部11を一方の第一電極部12F側と他方の第二電極部12S側とに仕切る。絶縁部14は電気的絶縁体であり、第一電極部12F側から第二電極部12S側まで貫通する孔18が複数形成されている。
【0039】
この構成によれば、絶縁部14の各孔18の周辺において電流密度を局所的に高くすることができるから、過酸化水素を効率よく生成できる。これによって、家庭環境の除菌等に適した、高濃度の過酸化水素水を生成できる。
【0040】
孔18の数は、電源部13が印加するパルスエネルギー1Jあたり200以上1000以下である。この構成によれば、過酸化水素をさらに効率よく生成できる。
【0041】
孔18の貫通方向に直交する断面形状は、円形状である。孔18の貫通方向に直交する直径寸法S1は、20μm以上100μm以下である。この構成によれば、過酸化水素をさらに効率よく生成できる。
【0042】
隣接する孔18の縁同士の貫通方向に直交する方向の最短距離S2,S3は、1mm以上である。この構成によれば、各孔18周辺の電流密度が均一化する。したがって、放電ムラを抑制し、効率よく安定して過酸化水素を生成できる。
【0043】
装置10は、一対の電極部12F,12Sの対向面17F,17Sにそれぞれ密着する一対のカバー部15F,15Sを備えている。一対のカバー部15F,15Sは、対向面17F,17Sのうち水槽部11内において気体に接触し得る部分を覆う。この構成によれば、水槽部11の水以外に通電することを抑制できるから、さらに効率よく過酸化水素を生成できる。
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態において孔18の断面形状は円形である。これに限らず、孔の断面形状は変更してもよい。
(2)上記実施形態において全ての孔18の直径寸法は等しい。これに限らず、孔の直径寸法は異なってもよい。
(3)上記実施形態において隣接する孔18同士の間隔S2,S3は一定である。これに限らず、孔の間隔は不定であってもよい。
(4)上記実施形態において隣接する孔18同士の縦方向の間隔S1と横方向の間隔S2とは等しい。これに限らず、隣接する孔同士の縦方向の間隔と横方向の間隔とは異なってもよい。
(5)上記実施形態において孔18は縦方向及び横方向に直線状に配置されている。これに限らず、孔の配置は適宜変更できる。
(6)上記実施形態の実験用の装置10において、電源部13が印加するパルスエネルギーは1Jである。これに限らず、電源部が印加するパルスエネルギーは1Jより大きくてもよいし小さくてもよい。この場合、孔の数はパルスエネルギーに比例して増減すると良い。
(7)上記実施形態の実験用の装置10において、電源部13の最大印加電圧は、10kVである。これに限らず、電源部の最大印加電圧は、1kV以上であればよい。
【符号の説明】
【0044】
10…装置(過酸化水素の生成装置)、11…水槽部、12F,12S…一対の電極部、13…電源部、14…絶縁部、15F,15S…一対のカバー部、16…水、18…孔、S1…孔の貫通方向に直交する直径寸法、S2,S3…隣接する孔の縁同士の貫通方向に直交する方向の最短距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6