(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074920
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
F17C 13/06 20060101AFI20230523BHJP
B65D 90/34 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
F17C13/06 301Z
B65D90/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188111
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】村中 一孝
【テーマコード(参考)】
3E170
3E172
【Fターム(参考)】
3E170AA03
3E170AB01
3E170AB28
3E170BA04
3E170BA05
3E170PA10
3E170VA20
3E172AA02
3E172AA05
3E172AA06
3E172BA06
3E172BB05
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD05
3E172DA75
3E172EB19
3E172JA01
3E172JA05
3E172JA10
3E172KA03
(57)【要約】
【課題】放出管の外径に対する寸法の許容度を大きくできるキャップを提供すること。
【解決手段】液体または気体を貯蔵するタンクから上方へ延びる放出管の上端の開口部に被せられるキャップは、開口部を覆う天面部と、軸線を囲み軸線方向の一端が天面部で塞がれて他端が開口した筒体と、を備え、筒体は、周方向の少なくとも2か所に設けられて放出管の外周面に軸線方向の少なくとも一部が当たる接触部と、接触部の間を周方向に繋いで放出管の外周面から離れる離隔部と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体または気体を貯蔵するタンクから上方へ延びる放出管の上端の開口部に被せられるキャップであって、
前記開口部を覆う天面部と、
軸線を囲み軸線方向の一端が前記天面部で塞がれて他端が開口した筒体と、を備え、
前記筒体は、周方向の少なくとも2か所に設けられて前記放出管の外周面に軸線方向の少なくとも一部が当たる接触部と、
前記接触部の間を周方向に繋いで前記放出管の外周面から離れる離隔部と、を備えていることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記筒体は、軸線方向の少なくとも一部における前記軸線に垂直な断面が、前記接触部を短軸とする楕円形状であることを特徴とする請求項1記載のキャップ。
【請求項3】
前記接触部は、前記天面部から離れるにつれて内側へ傾斜する内傾斜部を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記離隔部には、前記放出管に固定された紐帯が取り付けられる取付孔が貫通形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクの放出管に装着されるキャップであって、放出管の外径に対する寸法の許容度を大きくできるキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体または気体を貯蔵するタンクには、液体の気化や気体の温度上昇による膨張などにより内圧が既定値を超えた場合に開く安全弁や、作業者の任意操作によって開く開放弁が設けられる。この安全弁や開放弁から上方へ延びる放出管の上端の開口部には、雨水などの浸入を防ぐためのキャップが被せられる。断面円形状の放出管に断面円形状のキャップを嵌め合わせて固定することで、安全弁や開放弁が開かれたとき、放出管に送られた気体の圧力によってキャップが外れ、放出管から気体が外部へ放出される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、放出管にキャップを嵌め合わせるために、放出管の外径に対しキャップの内径を精度良く製作する必要がある。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、放出管の外径に対する寸法の許容度を大きくできるキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明のキャップは、液体または気体を貯蔵するタンクから上方へ延びる放出管の上端の開口部に被せられるものであって、前記開口部を覆う天面部と、軸線を囲み軸線方向の一端が前記天面部で塞がれて他端が開口した筒体と、を備え、前記筒体は、周方向の少なくとも2か所に設けられて前記放出管の外周面に軸線方向の少なくとも一部が当たる接触部と、前記接触部の間を周方向に繋いで前記放出管の外周面から離れる離隔部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載のキャップによれば、放出管の開口部を天面部で覆うように、筒体の開口に放出管の上端を挿入することで、キャップが放出管に被せられる。このキャップの筒体は、周方向の少なくとも2か所に設けられて放出管の外周面に当たる接触部と、接触部の間を周方向に繋いで放出管の外周面から離れる離隔部と、を備えている。離隔部と放出管の外周面との間に余裕があるため、離隔部を内側に弾性変形させること等により接触部を外側に弾性変形させ、筒体に放出管を挿入し易くできる。放出管を筒体に挿入した後は、弾性力によって接触部を放出管に押し付けることで、放出管にキャップを固定できる。以上のように、筒体の接触部および離隔部の弾性変形によって、放出管の外径に対して装着可能なキャップの寸法の許容度を大きくできる。
【0008】
請求項2記載のキャップによれば、筒体は、軸線方向の少なくとも一部における軸線に垂直な断面が、接触部を短軸とする楕円形状である。この場合、筒体の断面が多角形状である場合と比べて、筒体を弾性変形させ易い。よって、請求項1の効果に加え、放出管の外径に対するキャップの寸法の許容度をより大きくできると共に、放出管へのキャップの装着性を良くできる。さらに、筒体が楕円形状である場合、筒体を変形させても目立ち難いので、放出管に装着することで筒体が変形したキャップの見栄えを良くできる。
【0009】
請求項3記載のキャップによれば、接触部は、天面部から離れるにつれて内側へ傾斜する内傾斜部を備えている。この内傾斜部の傾斜量の調整によって、接触部が当たる放出管の外径の範囲を容易に調整できると共に、放出管への接触部の押付力を容易に調整できる。その結果、請求項1又は2の効果に加え、放出管の外径に対するキャップの寸法の許容度を更に大きくできる共に、放出管にキャップを固定し易くできる。
【0010】
請求項4記載のキャップによれば、放出管に固定された紐帯(例えば鎖)が取り付けられる取付孔が離隔部に貫通形成されている。従来、筒体の内周面と放出管の外周面との間に隙間が無かったため、天面部に設けた取付孔に紐体を取り付け、放出管から外れたキャップの脱落を防止していた。しかし、この場合、紐体の取付部分の劣化などにより、取付孔から雨水などが放出管内に流入するおそれがあった。これに対し、筒体の離隔部と放出管の外周面との間にスペースがあるため、離隔部に設けた取付孔を利用して紐帯を取り付けることができる。そのため、紐体の取付部分が劣化したとしても、取付孔が天面部ではなく筒体の離隔部にあるので、請求項1から3のいずれかの効果に加え、取付孔から放出管内に雨水などを流入し難くできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態におけるキャップを被せた放出管を有する地上設置型のタンクの正面図である。
【
図2】(a)は
図1のIIa-IIa線におけるキャップ及び放出管の断面図であり、(b)は
図2(a)のIIb-IIb線におけるキャップ及び放出管の断面図である。
【
図3】
図2(a)のIII-III線におけるキャップ及び放出管の断面図である。
【
図4】(a)は第2実施形態におけるキャップ及び放出管の断面図であり、(b)は第3実施形態におけるキャップ及び放出管の断面図であり、(c)は第4実施形態におけるキャップ及び放出管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず
図1を参照して第1実施形態におけるキャップ10,11を被せた放出管6,7を有するタンク1について説明する。
図1はタンク1の正面図である。
【0013】
タンク1は、液体または気体が貯蔵されるタンク本体2と、タンク本体2の上部に取り付けられる安全弁3及び開放弁4と、を備えている。タンク本体2は、地上に設置固定される枕型(横長の俵型)の圧力容器である。安全弁3は、タンク本体2内の液体の気化や気体の膨張などにより内圧が既定値を超えた場合に開く弁である。開放弁4は、作業者の任意操作によって開く弁である。
【0014】
安全弁3から上方へ放出管6が延び、開放弁4から上方へ放出管7が延びている。この放出管6,7は、上端に開口部8(
図2(b)及び
図3参照)を設けた金属製の円筒状(断面円形状)の部材である。放出管6,7は、安全弁3や開放弁4が開いた場合に、タンク1内の気体を開口部8から外部へ放出する。なお、放出管6の外径よりも放出管7の外径が小さい。
【0015】
放出管6,7の上端には、開口部8を覆う金属製のキャップ10,11がそれぞれ被せられる。なお、キャップ10とキャップ11とは、寸法は異なるが、構成は同一である。そのため以下、キャップ10の構成および放出管6との関係について説明し、キャップ11の構成および放出管7との関係についての説明は省略する。
【0016】
キャップ10は、放出管6内への雨水などの浸入を防ぐためのものである。キャップ10は、風などの吹き上げによって放出管6から外れない程度に摩擦力で固定される。安全弁3が開かれて放出管6に気体が送られ、その気体の圧力(例えば2MPa)がキャップ10と放出管6との間の摩擦力を上回ると、キャップ10が気体に押し上げられて放出管6から外れ、放出管6から気体が外部へ放出される。なお、この外れたキャップ10が遠くに飛ばされないように、キャップ10と放出管6とは、金属製の鎖17(
図3参照)によって連結されている。鎖17の長さは、キャップ10が放出管6から外れることを抑制しない程度であることが好ましい。
【0017】
次に
図2(a)、
図2(b)及び
図3を参照して、キャップ10について詳しく説明する。
図2(a)は、
図1のIIa-IIa線におけるキャップ10及び放出管6の断面図である。
図2(b)は、
図2(a)のIIb-IIb線におけるキャップ10及び放出管6の断面図である。
図3は、
図2(a)のIII-III線におけるキャップ10及び放出管6の断面図である。
【0018】
キャップ10は、放出管6の開口部8を覆う円板状の天面部12と、天面部12の縁の全周に連なる筒体13と、を備えている。天面部12に垂直な仮想の軸線Cが天面部12の中心を通る。筒体13は、軸線Cを囲むように軸線Cに沿って延びる厚さが略一定の筒状の部材であり、軸線Cに関して回転対称(2回対称)に形成されている。筒体13は、軸線C方向(上下方向)の一端(上端)が天面部12により塞がれ、軸線C方向の他端(下端)が開口している。
【0019】
図2(a)に示すように、筒体13は、周方向(天面部12の縁に沿う方向)の2か所に設けられて放出管6の外周面に当たる(接触する)接触部14と、接触部14の間を周方向に繋いで放出管6の外周面から離れる離隔部15と、を備えている。2か所の接触部14は、軸線Cに関して対称位置に設けられ、放出管6を挟む。
【0020】
なお、筒体13を放出管6から外した状態における接触部14及び離隔部15の定義について説明する。放出管6を軸線Cを中心とする仮想円柱に見立てた場合、筒体13のうち、その仮想円柱を周方向の複数か所で挟むように仮想円柱の外周面に接する(干渉する)部位が接触部14であり、仮想円柱の外周面から離れた部位が離隔部15である。
【0021】
図2(b)に示すように、接触部14は、上下方向に亘り上端(天面部12側)から離れるにつれて内側(軸線C側)へ傾斜する内傾斜部である。この傾斜により接触部14は、上端側が放出管6の外周面から離れ、下端側が放出管6の外周面に当たり放出管6に沿って変形する。なお、筒体13を放出管6から外した状態では、軸線Cを含む断面において、接触部14は軸線C方向に亘り直線状に形成されている。
【0022】
図3に示すように、離隔部15は、上下方向に亘り上端から離れるにつれて外側(軸線Cとは反対側)へ傾斜する外傾斜部15aを備える。外傾斜部15aは、接触部14から軸線Cまわりに約45°以上離れた位置に設けられる。
【0023】
図2(a)に示すように、接触部14及び離隔部15の傾斜によって、軸線Cに垂直な筒体13の断面は、最上端を除き、接触部14を短軸とする楕円形状となる。なお、天面部12は円板状であるため、その天面部12に連なる筒体13の最上端の断面は、円形状となる。この筒体13の最上端の内径は、放出管6の外径よりも大きい。
【0024】
楕円形状の筒体13の扁平率(1-(短半径/長半径))は、天面部12から離れるにつれて大きくなる。筒体13の最下端における短軸の長さ(接触部14の間隔)を放出管6の外径よりも小さくすることで、接触部14が放出管6の外周面に接触する。これにより、放出管6は筒体13に挟持される。
【0025】
このような形状のキャップ10を製造する方法について説明する。まず、板材に絞り加工を施し、天面部12で一端が塞がれて他端が開口した円筒体を形成する。この円筒体の他端のうち軸線Cを挟んだ2か所を内側に加圧して塑性変形させることで、内側へ傾斜した接触部14が形成される。この内側への塑性変形に伴い、加圧方向に直交する方向の外側へ円筒体が塑性変形し、外傾斜部15aを有する離隔部15が形成される。
【0026】
このように、筒体13の最上端以外が楕円形状であるキャップ10は、天面部12で一端を塞いだ円筒体から容易に製造できる。筒体13の断面が多角形状である場合と比べて、楕円形状の方が筒体13を製造し易くできる。
【0027】
以上説明したキャップ10を放出管6に被せるには、まず、接触部14の下端部(楕円の短軸)を外側(軸線Cと反対側)に弾性変形させ、短軸の長さを放出管6の外径よりも大きくする。これにより、筒体13に放出管6を挿入し易くできる。特に、軸線Cを挟んだ2か所のみに接触部14が位置するので、それらの直交方向に位置する離隔部15の下端部(楕円の長軸)を内側(軸線C側)に押して弾性変形させることで、接触部14の下端部を容易に外側へ弾性変形させることができる。その結果、筒体13に放出管6をより挿入し易くできる。
【0028】
筒体13に放出管6を挿入した後、接触部14の下端部の変形を元に戻すことで、接触部14が放出管6の外周面に押し付けられ、接触部14の弾性力によって放出管6にキャップ10が固定される。その結果、筒体13の接触部14及び離隔部15の弾性変形により、放出管6の外径に対して装着可能なキャップ10の寸法の許容度を大きくできる。
【0029】
なお、放出管6にキャップ10を装着すると、装着前よりも接触部14が外側へ広がるように筒体13が変形する。しかし、楕円形状の筒体13が変形していても目立ち難いので、放出管6に装着したキャップ10の見栄えを良くできる。
【0030】
ここで、筒体13の断面が多角形状である場合には、角部や角部同士の中央が局所的に変形し易いため、キャップ10の装着時に接触部14を外側へ弾性変形させるために大きな力が必要となることがある。これに対し、本実施形態では筒体13の断面が楕円形状であるため、変形箇所が周方向に分散され易く、キャップ10の装着時に接触部14を外側へ弾性変形させるための力が小さく済み、接触部14を外側へ弾性変形させ易い。よって、楕円形状の筒体13によって、放出管6の外径に対するキャップ10の寸法の許容度をより大きくできると共に、放出管6へのキャップ10の装着性を良くできる。
【0031】
また、接触部14は、軸線Cに垂直な断面において外側へ凸状に湾曲しているので、離隔部15を内側へ押したときに接触部14を外側へ変形させ易い。これにより、放出管6の外径に対するキャップ10の寸法の許容度をより一層大きくできると共に、放出管6へのキャップ10の装着性をより良くできる。
【0032】
接触部14は、下端へ向かうにつれて内側へ傾斜しているので、この傾斜量の調整によって、接触部14が当たる放出管6の外径の範囲を容易に調整できると共に、放出管6への接触部14の押付力を容易に調整できる。その結果、放出管6の外径に対するキャップ10の寸法の許容度を更に大きくできると共に、放出管6にキャップ10を固定し易くできる。また、この接触部14の傾斜により接触部14の上端側が放出管6に当たり難くなっているので、筒体13の上端側の寸法の自由度を向上できる。
【0033】
キャップ10を放出管6に装着すると、装着前よりも接触部14の下端側が外側へ広がる。この装着後の接触部14が下端へ向かうにつれ外側へ傾斜するように、接触部14が放出管6の上端近傍に当たってしまうと、キャップ10の弾性力に起因して放出管6からキャップ10が外れ易くなってしまうおそれがある。しかし、本実施形態では装着前の接触部14が予め下端へ向かうにつれ内側へ傾斜しているので、放出管6への装着に伴い接触部14が外側へ広がっても、装着後の接触部14を下端へ向かうにつれ外側へ傾斜させ難くできる。その結果、キャップ10の弾性力に起因して放出管6からキャップ10を外れ難くできる。
【0034】
図3に示すように、離隔部15には、取付孔16が貫通形成されている。離隔部15と放出管6との間にスペースがあるので、鎖(紐体)17の一端に設けた取付部18を、取付孔16を利用して離隔部15に取り付けることができる。取付部18は、例えば既知の環ボルト及びナットにより形成されている。なお、鎖17の他端に設けた固定部19が放出管6に固定されることにより、放出管6から外れたキャップ10の脱落が鎖17によって防止される。
【0035】
従来のように、天面部12に設けた孔を利用して取付部18をキャップ10に取り付ける場合には、取付部18の劣化などにより、天面部12の孔から雨水などが放出管6内に流入するおそれがある。これに対し、本実施形態では、筒体13の離隔部15に設けた取付孔16を利用して取付部18がキャップ10に取り付けられるため、取付部18が劣化したとしても、取付孔16から放出管6内に雨水などを流入し難くできる。
【0036】
次に
図4(a)を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では、筒体13が楕円形状である場合について説明した。これに対して第2実施形態では、筒体21の断面が略正三角形状である場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0037】
図4(a)は第2実施形態におけるキャップ20及び放出管6の断面図である。キャップ20は、放出管6の開口部8(
図2(b)参照)を覆う板状の天面部12(
図2(b)参照)と、天面部12の縁の全周に連なる筒体21と、を備える金属製のものである。
【0038】
筒体21は、仮想の軸線Cを囲むように軸線Cに沿って延びる厚さが略一定の筒状の部材である。筒体21は、軸線Cに垂直な断面が略正三角形状であり、軸線Cに関して回転対称(3回対称)に形成されている。筒体21は、軸線C方向(上下方向)の一端(上端)が天面部12により塞がれ、軸線C方向の他端(下端)が開口している。
【0039】
また、筒体21は、軸線Cを含む断面において、軸線Cと略水平に形成されている。これにより、第1実施形態のように筒体13を軸線Cに対し傾斜させる場合と比べ、第2実施形態における筒体21を製造し易くできる。
【0040】
筒体21は、周方向の3か所に設けられて放出管6の外周面に当たる接触部22と、接触部22の間を周方向に繋いで放出管6の外周面から離れる離隔部23と、を備えている。3か所の接触部22は、略正三角形の各辺の中央に設けられ、放出管6を挟む。離隔部23に設けた取付孔16(
図3参照)を利用し、取付部18がキャップ20に取り付けられている。
【0041】
キャップ20を放出管6に被せるには、第1実施形態と同様に、接触部22を外側に弾性変形させて筒体21に放出管6を挿入した後、接触部22の変形を元に戻して、接触部22の弾性力により放出管6にキャップ20を固定する。その結果、放出管6の外径に対して装着可能なキャップ20の寸法の許容度を大きくできる。
【0042】
筒体21が略正三角形状であるため、その角部の離隔部23を内側に押すことで、接触部22を外側へ変形させ易い。これにより、放出管6の外径に対するキャップ20の寸法の許容度をより大きくできると共に、放出管6へのキャップ20の装着性を良くできる。
【0043】
次に
図4(b)を参照して第3実施形態について説明する。第3実施形態では、筒体31の断面が、正方形の各辺の中央を内側に湾曲させた形状である場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0044】
図4(b)は第3実施形態におけるキャップ30及び放出管6の断面図である。キャップ30は、放出管6の開口部8(
図2(b)参照)を覆う板状の天面部12(
図2(b)参照)と、天面部12の縁の全周に連なる筒体31と、を備える金属製のものである。
【0045】
筒体31は、仮想の軸線Cを囲むように軸線Cに沿って延びる厚さが略一定の筒状の部材である。筒体31は、軸線Cに垂直な断面が、正方形の各辺の中央を内側に湾曲させた形状であり、軸線Cに関して回転対称(4回対称)に形成されている。筒体31は、軸線C方向(上下方向)の一端(上端)が天面部12により塞がれ、軸線C方向の他端(下端)が開口している。
【0046】
筒体31は、周方向の4か所に設けられて放出管6の外周面に当たる接触部32と、接触部32の間を周方向に繋いで放出管6の外周面から離れる離隔部33と、を備えている。4か所の接触部32は、正方形の各辺の中央を内側に湾曲させた部分の頂点近傍であり、放出管6を挟む。離隔部33に設けた取付孔16(
図3参照)を利用し、取付部18がキャップ30に取り付けられている。
【0047】
キャップ30を放出管6に被せるには、第1実施形態と同様に、接触部32を外側に弾性変形させて筒体31に放出管6を挿入した後、接触部32の変形を元に戻して、接触部32の弾性力により放出管6にキャップ30を固定する。その結果、放出管6の外径に対して装着可能なキャップ30の寸法の許容度を大きくできる。
【0048】
図示しないが、接触部32は、第1実施形態と同様に、天面部12から離れるにつれて内側(軸線C側)へ傾斜する内傾斜部である。これにより、第1実施形態と同様に、放出管6にキャップ30を固定し易くできると共に、放出管6の外径に対するキャップ30の寸法の許容度を更に大きくできる。
【0049】
内側へ傾斜する接触部32を有するキャップ30を製造するには、まず、天面部12で一端が塞がれて他端が開口した断面正方形状の筒体を形成する。この筒体の下端のうち正方形の各辺の中央を内側に加圧して塑性変形させることで、内側へ傾斜した接触部32が形成される。この塑性変形に伴い、正方形の角部を含む離隔部33も天面部12から離れるにつれて内側へ傾斜する。
【0050】
このように、キャップ30の筒体31は、天面部12から離れるにつれて全体的に窄む形状になっているので、その筒体31の窄みを元に戻すようにして接触部32を外側へ弾性変形させ易い。これにより、放出管6の外径に対するキャップ30の寸法の許容度をより大きくできると共に、放出管6へのキャップ30の装着性を良くできる。
【0051】
次に
図4(c)を参照して第4実施形態について説明する。第1実施形態では、楕円形状の筒体13の短軸によって接触部14が形成される場合について説明した。これに対し第4実施形態では、円筒体の内周の一部に設けた突起によって接触部42が形成される場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0052】
図4(c)は第4実施形態におけるキャップ40及び放出管6の断面図である。キャップ40は、放出管6の開口部8(
図2(b)参照)を覆う円板状の天面部12(
図2(b)参照)と、天面部12の縁の全周に連なる筒体41と、を備える金属製のものである。
【0053】
筒体41は、仮想の軸線Cを囲むように軸線Cに沿って延びる筒状の部材である。筒体41は、軸線C方向の一端(上端)が天面部12により塞がれ、軸線C方向の他端(下端)が開口している。
【0054】
筒体41は、軸線Cを中心とする円筒体の内周面の2か所に突起を設けて形成されている。筒体41は、この突起を設けた部分である接触部42と、突起が設けられていない部分であって接触部42の間を周方向に繋ぐ離隔部43と、を備える。
【0055】
接触部42は、放出管6の外周面に当たる部位であり、軸線Cに関する対称位置に設けられる。離隔部43は、放出管6の外周面から離れる部位である。離隔部43に設けた取付孔16(
図3参照)を利用し、取付部18がキャップ40に取り付けられている。
【0056】
キャップ40を放出管6に被せるには、第1実施形態と同様に、離隔部43を内側へ変形させることで、接触部42を外側に弾性変形させ、筒体41に放出管6を挿入した後、接触部42の変形を元に戻して、接触部42の弾性力により放出管6にキャップ40を固定する。その結果、放出管6の外径に対して装着可能なキャップ40の寸法の許容度を大きくできる。
【0057】
円筒体に突起を設けることで接触部42を形成できるので、例えば円筒体に後から突起を溶接することによって、接触部42及び離隔部43を有する筒体41を容易に製造できる。また、筒体41は、内周面の一部に突起を設けた円筒体なので、第1実施形態の楕円形状の筒体13と同様に、筒体41の変形が目立ち難く、放出管6に装着したキャップ40の見栄えを良くできる。
【0058】
さらに、筒体41は、内周面の一部に突起を設けた円筒体なので、キャップ40の装着時の変形箇所が周方向に分散され易く、キャップ40の装着時に接触部42を外側へ弾性変形させるための力が小さく済み、接触部42を外側へ弾性変形させ易い。よって、放出管6の外径に対するキャップ40の寸法の許容度をより大きくできると共に、放出管6へのキャップ40の装着性を良くできる。
【0059】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、放出管6の外周面に当たる接触部の数は適宜変更しても良い。上記形態に示した断面形状以外の多角形状によって筒体を形成しても良く、その多角形状の各辺を湾曲させて筒体を形成しても良い。また、取付部18を接触部42として利用しても良い。放出管6の周方向の一部に突起を設け、その突起と接触する筒体の一部を接触部としても良い。
【0060】
タンク本体2が枕型(横長の俵型)の圧力容器である場合に限らず、タンク本体2を縦長の俵型や球型の圧力容器としても良い。また、取付孔16に取り付けられる鎖17が金属製である場合に限らず、鎖を合成樹脂製にしても良い。鎖以外の紐帯(例えばロープ等)を取付孔16に取り付けても良い。
【0061】
上記形態では、キャップ10,11,20,30,40が金属製である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、キャップ10,11,20,30,40を合成樹脂製にしても良い。また、キャップ10,11,20,30,40を、絞り加工により形成する場合に限らず、複数の金属板の溶接や鋳造、射出成形により形成しても良い。
【0062】
上記第1,4実施形態では、筒体の最上端が円形状である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。筒体の最上端を楕円形状にしても良い。この形状に合わせて、天面部を楕円形状にしても良い。また、天面部12が円形や楕円形の平板状である場合に限らず、例えば天面部12をドーム状に形成しても良い。また、軸線Cに対して平板状の天面部12を傾斜させても良い。いずれの場合でも、軸線Cは天面部12と交わる。
【0063】
上記第1,3実施形態では、接触部14,32の軸線C方向の全体が、天面部12から離れるにつれて内側へ傾斜する内傾斜部である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。接触部14,32の軸線C方向の一部に内傾斜部を設けても良い。また、上記第2,4実施形態における接触部22,42の軸線C方向の少なくとも一部に内傾斜部を設けても良い。
【0064】
接触部14,32の軸線C方向の少なくとも一部を、軸線Cを含む断面において軸線Cと略平行に形成しても良い。接触部14,22,32,42の軸線C方向の少なくとも一部を、天面部12から離れるにつれて外側へ傾斜させても良い。離隔部15,23,33,43の軸線C方向の少なくとも一部を、軸線Cに対して傾斜させても良く軸線Cと略平行にしても良い。
【符号の説明】
【0065】
1 タンク
6,7 放出管
8 開口部
10,11,20,30,40 キャップ
12 天面部
13,21,31,41 筒体
14,32 接触部(内傾斜部)
15,23,33,43 離隔部
16 固定孔
17 鎖(紐帯)
22,42 接触部
C 軸線