(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074966
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 13/00 20060101AFI20230523BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20230523BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20230523BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20230523BHJP
C08K 5/18 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
B60C13/00 C
B60C1/00 A
B60C1/00 B
B60C11/00 H
C08L9/00
C08K5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188190
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】吉原 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 皓介
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131AA06
3D131BC35
3D131BC47
3D131EB13Z
3D131EB18Z
3D131EB33Z
3D131EB38Z
3D131EC09Z
3D131EC16Z
3D131GA01
3D131GA03
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC081
4J002EN076
4J002FD036
4J002GN01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】タイヤ表面の変色(茶変)や微小クラックの発生に起因する外観の悪化を抑制したタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤの外面に形成され、ベース部22を有するパターン領域20と、前記パターン領域内に形成され、前記ベース部から0.1mm以上1.0mm以下の突出高さとされる突起24,26と、を有するゴム部材を具えるタイヤであって、前記パターン領域及び突起を有するゴム部材は、イソプレン骨格ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴムから選択される少なくとも1種を含有するゴム成分と、下記一般式(1):
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して一価の飽和炭化水素基である]で表されるアミン系老化防止剤と、を含み、ゴム部材中の前記アミン系老化防止剤の含有量が、ゴム成分100質量部に対して0.1~11質量部であることを特徴とする、タイヤである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの外面に形成され、ベース部を有するパターン領域と、
前記パターン領域内に形成され、前記ベース部から0.1mm以上1.0mm以下の突出高さとされる突起と、を有するゴム部材を具えるタイヤであって、
前記パターン領域及び突起を有するゴム部材は、
イソプレン骨格ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴムから選択される少なくとも1種を含有するゴム成分と、
下記一般式(1):
【化1】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して一価の飽和炭化水素基である]で表されるアミン系老化防止剤と、を含み、
前記ゴム部材中の前記アミン系老化防止剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.1~11質量部であることを特徴とする、タイヤ。
【請求項2】
上記一般式(1)中のR1及びR2が、それぞれ独立して炭素数1~20の鎖状又は環状の一価の飽和炭化水素基である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ゴム部材が、前記ゴム成分として、イソプレン骨格ゴムを含む、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ゴム部材が、トレッドゴムである、請求項1~3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記ゴム部材が、サイドウォールゴムである、請求項1~3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤを構成する各種ゴム部材は、オゾン存在下等の外気環境の影響を受けて劣化することがあり、該劣化が進行すると、クラック(亀裂)等を生じる場合がある。このような問題への対応として、タイヤを構成する各種ゴム部材には、老化防止剤を含むゴム組成物が適用されている。
例えば、下記特許文献1には、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(老化防止剤6PPD)を配合したゴム組成物をタイヤの表面を構成するゴムに適用することで、タイヤ表面のクラックを抑制できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1で使用されている老化防止剤6PPDは、ゴムの耐オゾン性を向上させる効果に優れるものの、老化防止剤6PPDを含むゴム組成物を、タイヤの表面を構成するゴムに適用すると、タイヤの表面を変色(茶変)させてしまい、タイヤ表面の外観が損なわれる。
これに対して、本発明者らが検討したところ、老化防止剤6PPDの代わりに他の老化防止剤を配合したゴム組成物を、タイヤの表面を構成するゴムに適用すると、該ゴムの耐オゾン性の向上が不十分で、タイヤ表面に微小クラックが発生し、タイヤ表面の外観が損なわれることが分かった。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、タイヤ表面の変色(茶変)や微小クラックの発生に起因する外観の悪化を抑制したタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0007】
本発明のタイヤは、
タイヤの外面に形成され、ベース部を有するパターン領域と、
前記パターン領域内に形成され、前記ベース部から0.1mm以上1.0mm以下の突出高さとされる突起と、を有するゴム部材を具え、
前記パターン領域及び突起を有するゴム部材は、
イソプレン骨格ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴムから選択される少なくとも1種を含有するゴム成分と、
下記一般式(1):
【化1】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して一価の飽和炭化水素基である]で表されるアミン系老化防止剤と、を含み、
前記ゴム部材中の前記アミン系老化防止剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.1~11質量部であることを特徴とする。
かかる本発明のタイヤによれば、タイヤ表面の変色(茶変)や微小クラックの発生に起因する外観の悪化を抑制できる。
【0008】
本発明のタイヤの好適例においては、上記一般式(1)中のR1及びR2が、それぞれ独立して炭素数1~20の鎖状又は環状の一価の飽和炭化水素基である。この場合、ゴム部材の耐オゾン性が更に向上する。
【0009】
本発明のタイヤの他の好適例においては、前記ゴム部材が、前記ゴム成分として、イソプレン骨格ゴムを含む。この場合、本発明の効果が顕著に現れ易い。
【0010】
本発明のタイヤの他の好適例においては、前記ゴム部材が、トレッドゴムである。この場合、タイヤのトレッド部の外観の悪化を抑制できる。
【0011】
本発明のタイヤの他の好適例においては、前記ゴム部材が、サイドウォールゴムである。この場合、タイヤのサイド部の外観の悪化を抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、タイヤ表面の変色(茶変)や微小クラックの発生に起因する外観の悪化を抑制したタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施態様に係るタイヤの断面図である。
【
図2】本発明の一実施態様に係るタイヤの側面図である。
【
図3】本発明の一実施態様に係るタイヤのパターン領域の一部である。
【
図4】本発明の一実施態様に係るタイヤのパターン領域の一部拡大図である。
【
図5】(A)は
図4のA-A線の断面図であり、(B)は
図4のB-B線の断面図である。
【
図6】本発明の一実施態様に係るタイヤの標章部の一部拡大図である。
【
図7】本発明の一実施態様の変形例に係るタイヤの
図5(A)及び(B)に対応する部分の断面図である。
【
図8】本発明の一実施態様の変形例に係るタイヤの第1延出部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明のタイヤを、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0015】
本発明のタイヤは、タイヤの外面に形成され、ベース部を有するパターン領域と、前記パターン領域内に形成され、前記ベース部から0.1mm以上、1.0mm以下の突出高さとされる突起と、を有するゴム部材を具える。そして、前記パターン領域及び突起を有するゴム部材は、イソプレン骨格ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴムから選択される少なくとも1種を含有するゴム成分と、下記一般式(1):
【化2】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して一価の飽和炭化水素基である]で表されるアミン系老化防止剤と、を含み、前記ゴム部材中の前記アミン系老化防止剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.1~11質量部であることを特徴とする。
【0016】
本発明のタイヤが具えるゴム部材は、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤をゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上含むことで、耐オゾン性が向上している。また、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤は、老化防止剤6PPDよりも変色(茶変)を引き起こし難い。但し、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤は、老化防止剤6PPDよりも耐オゾン性を向上させる効果が低いため、本発明のタイヤが具えるゴム部材の表面には、微小クラックが発生することとなる。これに対して、本発明のタイヤが具えるゴム部材は、パターン領域内に形成され、パターン領域のベース部からの突出高さが0.1mm以上1.0mm以下の突起を有し、パターン領域に入射した光は、突起の壁面間で反射を繰り返しながら減衰するため、反射が抑えられ、パターン領域が黒く見え、ゴム部材の表面に発生した微小クラックが目立たなくなる。
従って、本発明のタイヤによれば、変色(茶変)を引き起こし難い効果と、発生した微小クラックを目立たなくする効果とが組み合わさって、タイヤ表面の変色(茶変)や微小クラックの発生に起因する外観の悪化を抑制でき、長期に亘って高い視認性を維持できる。
【0017】
(ゴム成分)
前記パターン領域及び突起を有するゴム部材は、イソプレン骨格ゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)から選択される少なくとも1種を含有するゴム成分を含み、該ゴム成分が、ゴム部材にゴム弾性をもたらす。ここで、イソプレン骨格ゴムは、イソプレン単位を主たる骨格とするゴムであり、具体的には、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)等が挙られる。
前記ゴム部材は、前記ゴム成分として、イソプレン骨格ゴムを含むことが好ましい。前記ゴム部材がイソプレン骨格ゴムを含む場合、本発明の効果(アミン系老化防止剤の使用による耐オゾン性の向上効果)が顕著に現れ易い。
前記ゴム成分は、イソプレン骨格ゴムのみでもよく、また、イソプレン骨格ゴムとブタジエンゴムやスチレン-ブタジエンゴムとを併用してもよく、イソプレン骨格ゴムとスチレンブタジエンゴムとを併用することが好ましい。ここで、ブタジエンゴムやスチレンブタジエンゴムは、変性されていてもよい。
前記ゴム成分中の、イソプレン骨格ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴムの総含有率は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上が更に好ましく、100質量%でもよい。前記ゴム成分は、1種単独でもよいし、2種以上のブレンドでもよい。
【0018】
(アミン系老化防止剤)
前記パターン領域及び突起を有するゴム部材は、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤を含む。一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤は、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(老化防止剤6PPD)と同様にフェニレンジアミン部分を含むものの、該フェニレンジアミン部分以外には二重結合を有しない点で、老化防止剤6PPDと異なる。一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤は、ゴム組成物の耐オゾン性を向上させ、老化後の切断時伸び(EB)及び引張強さ(TB)の低下を抑制する作用を有する。
【0019】
上記一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して一価の飽和炭化水素基である。R1とR2は、同一でも異なってもよいが、合成上の観点から、同一であることが好ましい。
【0020】
前記一価の飽和炭化水素基の炭素数は、1~20が好ましく、3~10が更に好ましく、6及び7が特に好ましい。飽和炭化水素基の炭素数が20以下であると、単位質量当たりのモル数が大きくなるため、老化防止効果が大きくなり、ゴム組成物の耐オゾン性が向上する。
上記一般式(1)中のR1及びR2は、ゴム部材の耐オゾン性を更に向上させる観点から、それぞれ独立して炭素数1~20の鎖状又は環状の一価の飽和炭化水素基であることが好ましい。
【0021】
前記一価の飽和炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基が挙げられ、アルキル基は、直鎖状でも、分岐鎖状でもよく、また、シクロアルキル基には、置換基として更にアルキル基等が結合していてもよい。
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,2-ジメチルペンチル基、1,3-ジメチルペンチル基、1,4-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,4-ジメチルペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基等が挙げられ、これらの中でも、1,4-ジメチルペンチル基が好ましい。
前記シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられ、これらの中でも、シクロヘキシル基が好ましい。
【0022】
上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤として、具体的には、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(老化防止剤77PD)、N,N’-ビス(1-エチル-3-メチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミン(老化防止剤CCPD)等が挙げられ、これらの中でも、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(老化防止剤77PD)、N,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミン(CCPD)が好ましく、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(老化防止剤77PD)が特に好ましい。前記アミン系老化防止剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
前記アミン系老化防止剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して0.1~11質量部である。アミン系老化防止剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.1質量部未満であると、ゴム組成物の耐オゾン性を十分に確保することができず、老化後のゴム組成物の切断時伸び(EB)及び引張強さ(TB)の低下を十分に抑制することができない。一方、アミン系老化防止剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して11質量部を超えると、耐オゾン性以外のゴム物性(発熱性等)への悪影響が大きくなり、タイヤ用途に適さなくなる。前記アミン系老化防止剤の含有量は、耐オゾン性の観点から、前記ゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上が更に好ましく、また、他のゴム物性へ影響の観点から、前記ゴム成分100質量部に対して10質量部以下が好ましく、8質量部以下が更に好ましい。
【0024】
(キノリン系老化防止剤)
前記パターン領域及び突起を有するゴム部材は、キノリン系老化防止剤を含んでもよい。該キノリン系老化防止剤は、キノリン部分又はその誘導体部分(ジヒドロキノリン部分等)を有する老化防止剤である。該キノリン系老化防止剤は、ゴム部材の耐オゾン性を向上させ、老化後の切断時伸び(EB)及び引張強さ(TB)の維持率の低下を抑制する作用を有する。
【0025】
前記キノリン系老化防止剤は、ジヒドロキノリン部分を有することが好ましく、1,2-ジヒドロキノリン部分を有することが更に好ましい。
前記キノリン系老化防止剤として、具体的には、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合体(老化防止剤TMDQ)、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、6-アニリノ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等が挙げられる。
前記キノリン系老化防止剤は、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合体(老化防止剤TMDQ)を含むことが好ましい。2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合体を含むキノリン系老化防止剤は、ゴム組成物の耐オゾン性を向上させる効果が高く、また、ゴム部材を変色させ難いという利点も有する。
なお、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合体としては、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの二量体、三量体、四量体等が挙げられる。
【0026】
前記キノリン系老化防止剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して0.1~5質量部であることが好ましい。キノリン系老化防止剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上であると、ゴム部材の耐オゾン性が向上し、老化後のゴム部材の切断時伸び(EB)及び引張強さ(TB)の低下を更に抑制できる。一方、キノリン系老化防止剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して5質量部以下であると、耐オゾン性以外のゴム物性(発熱性等)への悪影響を抑制することができ、タイヤ用途により好適となる。前記キノリン系老化防止剤の含有量は、耐オゾン性の観点から、前記ゴム成分100質量部に対して0.3質量部以上が更に好ましく、0.5質量部以上がより一層好ましく、また、他のゴム物性へ影響の観点から、前記ゴム成分100質量部に対して4質量部以下が更に好ましく、3質量部以下がより一層好ましい。
【0027】
(ワックス)
前記パターン領域及び突起を有するゴム部材は、更にワックスを含むことが好ましい。ゴム部材がワックスを含む場合、ゴム部材の耐オゾン性が更に向上する。
前記ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
前記ワックスの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して0.1~5質量部であることが好ましい。ワックスの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上であると、ゴム部材の耐オゾン性が更に向上する。また、ワックスの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して5質量部以下であると、耐オゾン性以外のゴム物性への影響が小さい。前記ワックスの含有量は、耐オゾン性の観点から、前記ゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上が更に好ましく、1質量部以上がより一層好ましく、また、他のゴム物性への影響の観点から、前記ゴム成分100質量部に対して4質量部以下が更に好ましく、3質量部以下がより一層好ましい。
【0028】
(硫黄)
前記パターン領域及び突起を有するゴム部材は、硫黄を含むことが好ましい。ゴム部材が硫黄を含むことで、ゴム成分が加硫され、ゴム部材の耐久性(特には、切断時伸び(EB)、引張強さ(TB))が向上する。
前記硫黄としては、種々の硫黄を使用できるが、不溶性硫黄よりも普通の硫黄(可溶性硫黄(粉末硫黄)等)が好ましく、また、オイルトリート硫黄等も好ましい。ここで、不溶性硫黄は、二硫化炭素に対して不溶な硫黄(無定形の高分子硫黄)であり、可溶性硫黄(粉末硫黄)は、二硫化炭素に対して可溶な硫黄である。
前記硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.1~10質量部の範囲が好ましく、1~5質量部の範囲が更に好ましい。硫黄の含有量がゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上であれば、加硫ゴムの耐久性を確保でき、また、ゴム成分100質量部に対して10質量部以下であれば、ゴム弾性を十分に確保できる。
【0029】
(その他)
前記パターン領域及び突起を有するゴム部材は、既述のゴム成分、アミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤、ワックス、及び硫黄の他にも、必要に応じて、ゴム工業界で通常使用される各種成分、例えば、充填剤(シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム等)、シランカップリング剤、軟化剤、加工助剤、樹脂、界面活性剤、有機酸(ステアリン酸等)、酸化亜鉛(亜鉛華)、加硫促進剤、硫黄以外の加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して含有していてもよい。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0030】
前記ゴム部材がカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して1~90質量部の範囲が好ましい。また、カーボンブラックの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して15質量部以上がより好ましく、20質量部以上がより一層好ましく、25質量部以上が特に好ましく、また、80質量部以下が更に好ましく、70質量部以下がより一層好ましく、60質量部以下が特に好ましい。
前記ゴム部材が更にシリカを含有する場合、シリカとカーボンブラックの総量に対するシリカの質量比率は、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がより一層好ましく、90%以上が特に好ましい。また、タイヤを茶色く見せないためにも、カーボンブラックを含んでいることが好ましいため、シリカとカーボンブラックの総量に対するシリカの質量比率は100%未満であることが好ましい。
【0031】
なお、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤は、任意の担体に担持されていてもよい。例えば、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤は、シリカ、炭酸カルシウム等の無機充填剤に担持されていてもよい。
また、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤は、ゴム成分と共にマスターバッチを構成してもよい。ここで、マスターバッチとする際に用いるゴム成分は、特に限定されるものではなく、天然ゴム(NR)等のジエン系ゴムでもよいし、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等であってもよい。
また、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤は、有機酸との塩としてもよい。ここで、塩とする際に用いる有機酸としては、特に限定されるものではないが、ステアリン酸等が挙げられる。
【0032】
(ゴム部材の製造方法)
前記ゴム部材の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、既述のゴム成分、アミン系老化防止剤に、必要に応じて適宜選択した各種成分を配合して、混練り、熱入れ、押出等することによりゴム組成物を製造し、また、得られたゴム組成物を加硫して、加硫ゴムとすることで、ゴム部材を得ることができる。
【0033】
前記混練りの条件としては、特に制限はなく、混練り装置の投入体積やローターの回転速度、ラム圧等、及び混練り温度や混練り時間、混練り装置の種類等の諸条件について目的に応じて適宜に選択することができる。混練り装置としては、通常、ゴム組成物の混練りに用いるバンバリーミキサーやインターミックス、ニーダー、ロール等が挙げられる。
【0034】
前記熱入れの条件についても、特に制限はなく、熱入れ温度や熱入れ時間、熱入れ装置等の諸条件について目的に応じて適宜に選択することができる。該熱入れ装置としては、通常、ゴム組成物の熱入れに用いる熱入れロール機等が挙げられる。
【0035】
前記押出の条件についても、特に制限はなく、押出時間や押出速度、押出装置、押出温度等の諸条件について目的に応じて適宜に選択することができる。押出装置としては、通常、ゴム組成物の押出に用いる押出機等が挙げられる。押出温度は、適宜に決定することができる。
【0036】
前記加硫を行う装置や方式、条件等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜に選択することができる。加硫を行う装置としては、通常、ゴム組成物の加硫に用いる金型による成形加硫機等が挙げられる。加硫の条件として、その温度は、例えば100~190℃程度である。
【0037】
本発明のタイヤにおいて、前記パターン領域は、タイヤのサイド部や、トレッド部の溝底に配置されていることが好ましく、タイヤのサイド部に配置されていることが更に好ましい。
図1は、本発明の一実施態様に係るタイヤの断面図である。
図1に示すタイヤは、一対のビード部1と、一対のサイド部2と、トレッド部3と、ビード部1に埋設されたビードコア4間にトロイド状に延在させたカーカス5と、を具え、更に、トレッド部3において、トレッド踏面のタイヤ半径方向内側で、且つ、カーカス5のクラウン部のタイヤ半径方向外側に、2枚のベルト層6a,6bからなるベルト6を具える。また、トレッド部3には、複数の溝7が設けられている。
図1に示すタイヤは、サイド部2、及び/又は、トレッド部3の溝7の溝底7aに、パターン領域を有することが好ましい。また、
図1に示すように、タイヤのサイド部2の中でも、タイヤの最大幅位置Pにおけるタイヤの断面高さH(即ち、タイヤの最大幅高さ)の25%分タイヤ径方向内側の位置P
1から、トレッド踏面のタイヤ幅方向外側の位置P
2(即ち、トレッド部とバットレス部との境界)までの範囲Aに、パターン領域が配置されることが特に好ましい。これらの部分や領域は、微小クラックが目につき易いため、本発明の効果が特に顕著になる。
【0038】
ここで、本発明において、トレッド踏面とは、適用リムに組み付けるとともに規定内圧を充填したタイヤを、最大負荷能力に対応する負荷を加えた状態で転動させた際に、路面に接触することになる、タイヤの全周にわたる外周面を意味する。
なお、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association, Inc.)のYEAR BOOK等に記載されている、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す。また、「規定内圧」とは、上記のJATMA YEAR BOOK等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力に対応する空気圧をいい、「最大負荷能力」とは、上記規格でタイヤに負荷されることが許容される最大の質量をいう。
【0039】
本発明のタイヤにおいては、前記ゴム部材が、サイドウォールゴムであることが好ましい。この場合、タイヤのサイド部の外観の悪化を抑制できる。
【0040】
前記パターン領域及び突起を有するゴム部材がサイドウォールゴムである場合、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して3.2~10質量部の範囲が好ましい。また、前記アミン系老化防止剤の含有量は、耐オゾン性の観点から、前記ゴム成分100質量部に対して3.5質量部以上がより好ましく、3.8質量部以上がより一層好ましく、4.2質量部以上が特に好ましく、また、他のゴム物性へ影響の観点から、前記ゴム成分100質量部に対して9質量部以下がより好ましく、8質量部以下が更に好ましく、7質量部以下がより一層好ましく、6質量部以下が特に好ましい。
【0041】
また、前記ゴム部材がサイドウォールゴムである場合、当該ゴム部材は、前記ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを10~90質量部含むことが好ましい。また、カーボンブラックの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して15質量部以上がより好ましく、20質量部以上がより一層好ましく、25質量部以上が特に好ましく、また、80質量部以下が更に好ましく、70質量部以下がより一層好ましく、60質量部以下が特に好ましい。
【0042】
また、前記ゴム部材がサイドウォールゴムである場合、ゴム成分としては、イソプレン骨格ゴムのみでもよく、また、イソプレン骨格ゴムとブタジエンゴムやスチレン-ブタジエンゴムとを併用してもよく、イソプレン骨格ゴムとブタジエンゴムとを併用することが好ましい。ここで、ブタジエンゴムやスチレン-ブタジエンゴムは、変性されていてもよい。
【0043】
本発明のタイヤにおいては、前記ゴム部材が、トレッドゴムであることも好ましい。この場合、タイヤのトレッド部の外観の悪化を抑制できる。
【0044】
前記パターン領域及び突起を有するゴム部材がトレッドゴムである場合、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して2~11質量部の範囲が好ましい。また、前記アミン系老化防止剤の含有量は、耐オゾン性の観点から、前記ゴム成分100質量部に対して2.5質量部以上がより好ましく、3質量部以上がより一層好ましく、また、他のゴム物性へ影響の観点から、前記ゴム成分100質量部に対して9質量部以下がより好ましく、8質量部以下が更に好ましく、7質量部以下がより一層好ましく、6質量部以下が特に好ましい。
【0045】
また、前記ゴム部材がトレッドゴムである場合、当該ゴム部材は、前記ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを1~90質量部含むことが好ましい。
該ゴム部材が更にシリカを含有する場合、シリカとカーボンブラックの総量に対するシリカの質量比率は、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がより一層好ましく、90%以上が特に好ましい。また、タイヤを茶色く見せないためにも、カーボンブラックを含んでいることが好ましいため、シリカとカーボンブラックの総量に対するシリカの質量比率は100%未満であることが好ましい。
【0046】
また、前記ゴム部材がトレッドゴムである場合、ゴム成分としては、イソプレン骨格ゴムのみでもよく、また、イソプレン骨格ゴムとブタジエンゴムやスチレン-ブタジエンゴムとを併用してもよく、イソプレン骨格ゴムとスチレンブタジエンゴムとを併用することが好ましい。ここで、ブタジエンゴムやスチレンブタジエンゴムは、変性されていてもよい。
【0047】
以下、本発明に従う第1実施形態のタイヤについて説明する。
【0048】
<第1実施形態>
本発明に従う第1実施形態のタイヤは、
タイヤの外面に形成され、ベース部を有するパターン領域と、
前記パターン領域内に形成され、前記ベース部から0.1mm以上1.0mm以下の突出高さとされる複数の突起と、を有するゴム部材を具える。
ここで、前記突起は、平面視で屈曲点から複数方向に延出された延出部を含んで形成され、隣り合う前記突起の前記屈曲点同士の間隔が0.2mm以上1.0mm以下であり、前記突起の少なくとも一つの延出部は、湾曲状である。
【0049】
第1実施形態のタイヤの外面には、ベース部を有するパターン領域が形成されている。ここで、タイヤの外面とは、タイヤサイド部、トレッド部、トレッドの溝底、溝壁など、タイヤの外側から視認可能な表面をいう。また、本発明のタイヤは、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤの両方を含む。
パターン領域内には、複数の突起が形成されており、当該突起は、ベース部から0.1mm以上1.0mm以下の突出高さとされ、平面視で屈曲点から複数方向に延出された延出部を含んで形成されている。そして、隣り合う突起の屈曲点同士の間隔は、0.2mm以上1.0mm以下である。さらに、突起の少なくとも一つの延出部は、該延出部が湾曲状とされている。このような突起をベース部に形成することにより、パターン領域に入射した光は、反射が抑えられ、パターン領域外とのコントラストを出すことができる。また、突起の少なくとも一つの延出部は湾曲状であるので、延出部で反射される反射光の集中が抑制される。これにより、見る角度を変えた場合における見え方の均一性を高め、視認性を向上させることができる。また、湾曲状の延出部により、ベース部の底面が見えにくくなり、パターン領域に入射した光の反射を抑制することができる。
【0050】
第1実施形態のタイヤは、一の前記突起と隣り合う他の突起とが連結部により連結されていることが好ましい。
このように、一の突起と隣り合う他の突起とを連結部により連結することにより、連結部を介して突起が互いに支え合い、突起の倒れ込みが抑制され、耐久性を向上させることができる。
【0051】
また、第1実施形態のタイヤにおいて、湾曲状の前記延出部は、該延出部の先端が他の前記突起の延出部に近づくように湾曲していることが好ましい。
このように、湾曲延出部の先端を他の突起の延出部に近づくように湾曲させることにより、近づいた他の延出部との間のベース部の底面が見えにくくなり、パターン領域に入射した光の反射をより抑制することができる。
【0052】
また、第1実施形態のタイヤにおいては、湾曲状の前記延出部が、前記連結部に向かって延びていることが好ましい。
このように、湾曲状の延出部を連結部に向かって延ばして連結部と当該湾曲状の延出部との間の隙間を小さくし、ベース部を見えにくくして、パターン領域に入射した光の反射をより抑制することができる。
【0053】
また、第1実施形態のタイヤにおいては、湾曲状の前記延出部が、他の前記突起の延出部の先端に向かって延びていることが好ましい。
このように、湾曲状の延出部を他の突起の延出部の先端に向かって延ばして、湾曲状の延出部と他の突起の延出部の先端の間の隙間を小さくして、ベース部を見えにくくし、パターン領域に入射した光の反射をより抑制することができる。
【0054】
以下、図面を参照して、本発明に従う第1実施形態のタイヤについて説明する。
図2には、第1実施形態の好適態様に係るタイヤ10の側面図が示されている。本実施形態では、タイヤ周方向をC、タイヤ径方向をRで示す。
【0055】
タイヤ10のタイヤサイド部12には、標章部14が形成されている。標章部14は、帯状の円弧状とされ、タイヤ中心軸CE(
図2参照)を挟んで対称位置の2カ所に形成されている。標章部14には、パターン領域20と、文字領域16が配置されている。文字領域16は、平滑面で表示された例えば「ABCDEFGH」の文字で表示されている。
図2の紙面上側の標章部14Aでは、パターン領域20は、標章部14Aの文字領域16以外の部分で、一種の装飾帯であり、文字領域16を囲むように形成されている。一方、
図2の紙面下側の標章部14Bでは、パターン領域20は、標章部14Bの文字領域16と同一領域であり、標章部14Bの文字領域16以外の部分は、タイヤサイド部12の標章部14以外の外面と同様とされている。本実施形態では、標章部14Aについて説明する。なお、パターン領域20を含む標章部14は、レーザー加工によってタイヤのモールド内に対応する凹凸を設けることによって、形成することができる。また、パターン領域20は、タイヤ最大幅部(タイヤサイド部間の直線距離の最大部分)よりもタイヤ径方向Rの外側に配置されることが好ましい。
【0056】
図3に示されるように、パターン領域20は、ベース部22を有している。ベース部22は、パターン領域20内での底面(「ベース面」とも呼ぶ)を形成するものであり、このベース部22から突起24,26としての、第1アスタリスク突起24及び第2アスタリスク突起26が突出形成されている。なお、第1アスタリスク突起24及び第2アスタリスク突起26は、空気抵抗の観点から、タイヤサイド部12の表面(標章部14以外の表面)から突出しないことが好ましい。
【0057】
図4に示されるように、第1アスタリスク突起24は、屈曲点としての中心O1から各々異なる方向へ延出された第1延出部25A-1,25A-2、第2延出部25B-1,25B-2、第3延出部25C-1,25C-2で構成されている。以下、これらの6本の延出部を、まとめて「延出部24E」と称する。第1延出部25A-1,25A-2、第2延出部25B-1、第3延出部25C-1,25C-2は、直線状に延出され、同一形状とされている。第2延出部25B-2は、先端が後述する連結部42へ近づくように湾曲する湾曲状とされている。一の延出部24Eと他の延出部24E(中心O1から互いに逆向きに延出されているもの同士を除く)とで、中心O1において屈曲された屈曲形状が構成されている。第1延出部25A-1と第1延出部25A-2とは、中心O1から互いに逆方向に延出され、第1延出部25A-1と第1延出部25A-2とで直線状に連続した形状が構成されている。以下、第1延出部25A-1と第1延出部25A-2を、まとめて「第1延出部25A」と称する。第2延出部25B-1と第2延出部25B-2とについても、中心O1から互いに逆方向に延出され、第2延出部25B-1と第2延出部25B-2とで線状(第2延出部25B-1側は直線状、第2延出部25B-2側は湾曲状)に連続した形状が構成されている。以下、第2延出部25B-1と第2延出部25B-2を、まとめて「第2延出部25B」と称する。第3延出部25C-1と第3延出部25C-2とについても、中心O1から互いに逆方向に延出され、第3延出部25C-1と第3延出部25C-2とでは直線状に連続した形状が構成されている。以下、第3延出部25C-1と第3延出部25C-2を、まとめて「第3延出部25C」と称する。
【0058】
6本の延出部24Eは、隣り合う延出部24Eと、各々60°の角度を成している。第1アスタリスク突起24は、言い換えると、中心O1から6本の延出部24Eが放射状に延出された形状となっている。第1アスタリスク突起24では、第1延出部25A-1、25A-2は、略タイヤ径方向Rに沿って延出されている。
【0059】
図5に示されるように、第1アスタリスク突起24において、延出部24Eの各々の延出方向と直交する方向の断面は、平坦な頂部を有する略二等辺三角形状とされている。以下、第1延出部25Aの頂部を第1頂部23A、第2延出部25Bの頂部を第2頂部23B、第3延出部25Cの頂部を第3頂部23Cと称する。ベース部22から第1頂部23A、第2頂部23B、第3頂部23Cの各々までの高さ(以下「突出高さH1」という)は、0.1mm以上1.0mm以下とされている。以下、第1頂部23A、第2頂部23B、第3頂部23Cを、まとめて第1頂部23A~第3頂部23Cと表す。なお、突出高さH1は、0.2mm以上0.8mm以下の範囲内に設定することがより好ましい。
【0060】
図5(A)に示されるように、第1アスタリスク突起24において、第1延出部25Aと、第2延出部25Bの間のベース部22は、平坦状とされ、第1延出部25Aと第3延出部25Cの間のベース部22は、曲面状とされている。また、
図5(B)に示されるように、後述する第2アスタリスク突起26において、第1延出部27Aと第2延出部27Bの間のベース部22は、平坦状とされ、第1延出部27Aと第3延出部27Cの間のベース部22は、曲面状とされている。ベース部22を曲面状にすることにより、入射光の反射が抑制され、パターン領域20外とのコントラストが大きくなり、視認性が向上する。
【0061】
第1延出部25Aの前記二等辺三角形の斜辺を構成する第1側壁面23WA、第2延出部25Bの前記二等辺三角形の斜辺を構成する第2側壁面23WB、及び、第3延出部25Cの前記二等辺三角形の斜辺を構成する第3側壁面23WCは、延出方向と直交する断面で見て、両側の側壁面間の距離Sが頂部側からベース部22へ向けて長くなっている。第1側壁面23WA、第2側壁面23WB、第3側壁面23WCは、ベース部22に対する仮想の垂直面Fに対して、角度θをなしている。角度θは、5°~30°の範囲内とされていることが好ましく、5°~15°の範囲内であることがより好ましい。角度θが30°よりも大きいと、第1側壁面23WA~第3側壁面23WCでの反射光が、延出部24E同士の間から外側へ戻る割合が多くなり、視認性の向上が少なくなる。すなわち、光が反射して、パターン領域20外とのコントラストの差異が小さくなり、視認性の向上が少なくなる。一方、角度θが5°よりも小さいと、延出部24Eが倒れやすくなる。したがって、延出部24Eの間に入射した光の反射光が延出部24Eの間から外側へ戻ることを抑制する効果と、延出部24Eの耐久性を考慮し、角度θは、5°~30°であることが好ましい。
【0062】
また、延出部24Eにおいて、突出高さH1は、前記二等辺三角形の底辺長さB1(ベース部22における側壁面の基部間の距離)の0.8倍~6倍であることが好ましい。突出高さH1が底辺長さB1の0.8倍よりも小さいと、第1側壁面23WA~第3側壁面23WCでの反射光が延出部24Eの間から外側へ戻る割合が多くなり、視認性の向上が少なくなる。すなわち、光が反射して、パターン領域20外とのコントラストの差異が小さくなり、視認性の向上が少なくなる。一方、突出高さH1が底辺長さB1の6倍よりも大きいと、第1側壁面23WA~第3側壁面23WCがベース部22に対して垂直に近い角度になるため、延出部24Eが倒れやすくなる。したがって、延出部24Eの間に入射した光の反射光が延出部24Eの間から外側へ戻ることを抑制する効果と、延出部24Eの耐久性を考慮し、突出高さH1が底辺長さB1の0.8倍~6倍であることが好ましい。
【0063】
第2アスタリスク突起26は、第1アスタリスク突起24と略同一形状で、平面視において第1アスタリスク突起24の配置から中心O1を中心にして90°回転した配置とされている。当該回転させた状態で、第2アスタリスク突起26において、第1アスタリスク突起24の第1延出部25A-1,25A-2、第2延出部25B-1,25B-2、及び第3延出部25C-1,25C-2、中心O1に対応する部分を、第1延出部27A-1,27A-2、第2延出部27B-1,27B-2、及び第3延出部27C-1,27C-2、中心O2と称する。以下、前述の6本の延出部を、まとめて「延出部26E」称する。また、第1頂部23A、第2頂部23B、第3頂部23Cに対応する部分を、第1頂部28A、第2頂部28B、第3頂部28Cと称する。以下、第1頂部28A、第2頂部28B、第3頂部28Cを、まとめて第1頂部28A~第3頂部28Cと表す。さらに、第1側壁面23WA、第2側壁面23WB、第3側壁面23WCに対応する部分を第1側壁面28WA、第2側壁面28WB、第3側壁面28WCと称する。以下、第1側壁面23WA、第2側壁面23WB、第3側壁面23WCを、まとめて第1側壁面23WA~第3側壁面23WCと表し、第1側壁面28WA、第2側壁面28WB、第3側壁面28WCを、まとめて第1側壁面28WA~第3側壁面28WCと表す。
【0064】
上記のように、第2アスタリスク突起26を配置することにより、延出部24Eと、延出部26Eは、各々延出方向が異なる。また、第2アスタリスク突起26は、第1アスタリスク突起26の第2延出部25B-2に対応する第2延出部27-2が直線状に延出されている。さらに、第1アスタリスク突起26の第3延出部25C-2に対応する第3延出部27C-2は、先端が第1アスタリスク突起26の第3延出部25C-1へ近づくように湾曲する湾曲状とされている。
【0065】
第1アスタリスク突起24と第2アスタリスク突起26は、パターン領域20の全体を埋めるように、タイヤ径方向R及びタイヤ周方向Cに交互に並べられている。第1アスタリスク突起24の第1延出部25A-1,25A-2の各々の先端は、タイヤ径方向Rで隣り合う第2アスタリスク突起26の第2延出部27B-2と第3延出部27C-1の間、第2延出部27B-1と第3延出部27C-2の間に各々挿入されている。第2アスタリスク突起26の第1延出部27A-1,27A-2の各々の先端は、タイヤ周方向Cに隣り合う第1アスタリスク突起24の第2延出部25B-1と第3延出部25C-2の間、第2延出部25B-2と第3延出部25C-1の間に挿入されている。
【0066】
タイヤ径方向R及びタイヤ周方向Cで隣り合う第1アスタリスク突起24と第2アスタリスク突起26は、中心O1と中心O2の間隔(以下「間隔P」と称する)が、0.2mm以上1.0mm以下とされている。また、第1延出部25A-1の先端から第1延出部25A-2の先端までの延出方向長さ、第2延出部25B-1の先端から第2延出部25B-2の先端までの延出方向長さ、及び、第3延出部25C-1の先端から第3延出部25C-2の先端までの延出方向長さは等しく、平面視における第1アスタリスク突起24の最長の長さとされている。この長さを、以下「延出長さL」と称する。延出長さLは、間隔Pよりも長く設定されている。なお、第1延出部27A-1の先端から第1延出部27A-2の先端までの延出方向長さ、第2延出部27B-1の先端から第2延出部27B-2の先端までの延出方向長さ、及び、第3延出部27C-1の先端から第3延出部27C-2の先端までの延出方向長さは、平面視における第2アスタリスク突起26の最長の長さとされており、延出長さLと同じ長さである。また、第2延出部25B-2及び第3延出部25C-1は、湾曲状であるが、直線状のものと延出長さは同じLとなっている。
【0067】
間隔Pが0.2mm未満の場合、延出部24E、26Eの長さが短くなり、製造時における成形性の確保が難しい。一方、間隔Pが1.0mmを超えると、第1アスタリスク突起24及び第2アスタリスク突起26が密に配置されておらず、ベース部22での反射光により、パターン領域20の視認性の向上が少なくなる。したがって、間隔Pは、0.2mm以上1.0mm以下とすることが好ましい。なお、間隔Pは、0.2mm以上0.8mm以下の範囲内に設定することがより好ましい。隣り合う第1アスタリスク突起24と第2アスタリスク突起26は、離間配置されている。
【0068】
第2延出部25B-1と第2延出部27B-1の間には、連結部42が形成されている。連結部42は、第2延出部25B-1の先端から第2延出部25B-1と同方向に延出され、タイヤ周方向Cで隣接する第2延出部27B-1の先端と90°の角度をなすように連結されている。連結部42は、断面は第2延出部25B-1と同形状とされている。第2延出部27B-1と第2延出部25B-1とは、連結部42を介してタイヤ周方向Cに連続されている。連結部42と、第2延出部25B-1、第2延出部27B-1は、一体的に連結されている。連結部42により第2延出部25B-1が延長されて他の延出部よりも長い延出部分が形成されている。
【0069】
第3延出部25C-1と第3延出部27C-1の間には、連結部44が形成されている。連結部44は、第3延出部27C-1の先端から第3延出部27C-1と同方向に延出され、タイヤ径方向Rで隣接する第3延出部25C-1の先端と90°の角度をなすように連結されている。連結部44の断面は第3延出部27-1と同形状とされている。第3延出部27C-1と第3延出部25C-1とは、連結部44を介してタイヤ径方向Rに連続されている。連結部44と、第3延出部27C-1、第3延出部25C-1とは、一体的に連結されている。連結部44により第3延出部27C-1が延長されて他の延出部よりも長い延出部分が形成されている。
【0070】
第2延出部25B-1と第2延出部27B-1は、連結部42を介してタイヤ周方向Cに連続されている。第3延出部27C-1と第3延出部25C-1とは、連結部44を介してタイヤ径方向Rに連続されている。そして、第3延出部27C-1、連結部44、第3延出部25C-1、第2延出部25B-1、連結部42、第2延出部27B-1の順に連結されて、連続した1本の連続突起46が形成されている。連続突起46は、第1アスタリスク突起24及び第2アスタリスク突起26の中心O1,O2を通過しつつ、中心O1,O2で隣り合わない延出部へ屈曲されて他の第1アスタリスク突起24及び第2アスタリスク突起26へ延出されている。連続突起46は、全体としてタイヤ径方向Rに傾斜角度をもって延出されている。連続突起46は、パターン領域20-3のタイヤ径方向Rの内側端から外側端まで連続形成されている。
【0071】
上記のような、タイヤサイド部12のパターン領域20では、パターン領域20内に形成された突起24,26(第1アスタリスク突起24及び第2アスタリスク突起26)へ入射する光は、隣り合う第1側壁面23WA~第3側壁面23WC、第1側壁面28WA~第3側壁面28WCに当たる。そして、第1側壁面23WA~第3側壁面23WC、第1側壁面28WA~第3側壁面28WCの間で反射を繰り返しながら減衰する。これにより、パターン領域20の外側へ反射される光が少なくなり、
図6に示すように、パターン領域20が黒く見え、他の領域(文字領域16や他のタイヤサイド部12)が相対的に白く見える。したがって、パターン領域20と他の領域とのコントラストを出すことができる。本実施形態のように、パターン領域20と、パターン領域20に囲まれた文字領域16とのコントラストが大きくなることにより、文字領域16が明瞭に見え、視認性を向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態のパターン領域20は、第1アスタリスク突起24と第2アスタリスク突起26がタイヤ径方向Rとタイヤ周方向Cに交互に並べられており、延出部24Eと延出部26Eとは、各々延出方向が異なっている。したがって、パターン領域20で反射される光の反射方向を異ならせることができ、反射光の集中が抑制される。これにより、見る角度を変えた場合の、パターン部分の見え方の均一性を高めて、視認性を向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態では、延出長さLは、隣り合う第1アスタリスク突起24と第2アスタリスク突起26の間隔Pよりも長い。したがって、単位パターンとしての第1アスタリスク突起24、第2アスタリスク突起26を接近させて配置しやすくなり、パターン領域20における単位パターンを密に配置することができる。単位パターンを密に配置することにより、パターン領域20における光の反射がより抑えられ、視認性を向上させることができる。
【0074】
また、本実施形態では、第1アスタリスク突起24は、各々異なる方向に延出されると共に6本が中心O1で連結された延出部24Eで構成され、第2アスタリスク突起26は、各々異なる方向に延出されると共に6本が中心O2で連結された延出部26Eで構成されている。したがって、第1アスタリスク突起24、第2アスタリスク突起26の各々は、倒れにくくなり、個々の第1アスタリスク突起24、第2アスタリスク突起26の耐久性を向上させることができる。また、第1アスタリスク突起24、第2アスタリスク突起26内で延出部24E、26Eが異なる方向に延出されているので、反射される光の反射角度を異ならせることができ、反射光の集中が抑制される。これにより、見る角度を変えた場合の、パターン領域20の見え方の均一性を高めて、視認性を向上させることができる。
【0075】
また、第1アスタリスク突起24、及び第2アスタリスク突起26は、独立して(各々離間して)配置されているので、パターン領域20にクラックが発生した場合でも、当該クラックの進展を抑制することができる。
【0076】
さらに、第1アスタリスク突起24、第2アスタリスク突起26は、延出部24E同士、延出部26E同士が成す角度が等角度(60°)とされている。したがって、延出部24E同士、延出部26E同士でバランス良く支持し合えることから、第1アスタリスク突起24、第2アスタリスク突起26の各々は、延出部24E同士、延出部26E同士が成す角度が等角度でないものより倒れにくくなり、耐久性を向上させることができる。
【0077】
また、延出部24E、延出部26Eは、断面が、略二等辺三角形状とされており、第1~第3側壁面23WA~23WC、28WA~28WCが延出方向と直交する断面で見て、両側の側壁面間の距離Sが頂部側からベース部22へ向けて長くなっている。したがって、隣り合う頂部23A~23C、28A~28Cの間隔がベース部22側の間隔よりも広くなり、広い範囲で光を延出部24E間、延出部26E間に入射させることができる。そして、延出部24E間、延出部26E間に入射した光は、側壁面で反射が繰り返されるので、反射光が延出部の間から外側へ戻ることを抑制することができる。
【0078】
また、延出部24E、延出部26Eの延出方向と直交する方向の断面を上記のようにすることで、製造時に型抜きしやすくなり、成形性を向上させることができる。その結果、第1アスタリスク突起24、第2アスタリスク突起26の倒れ込みが少なくなり、耐久性を向上させることができる。
【0079】
さらに、第1アスタリスク突起24と、第2アスタリスク突起26とが、連結部42、44により連結されているので、連結部42、44を介して第1アスタリスク突起24と第2アスタリスク突起26が互いに支え合い、第1アスタリスク突起24及び第2アスタリスク突起26の倒れ込みが抑制され、耐久性を向上させることができる。また、第2延出部25B、27Bが連結されて、パターン領域20タイヤ径方向Rの内側端から外側端まで連続する連続突起46が形成されているので、加硫時のエアを、連続突起46の端部からパターン領域20外へ逃がすことができる。これにより、パターン領域20内にエア溜まりによるベアが発生することを抑制することができる。
【0080】
また、本実施形態では、第1アスタリスク突起24の第2延出部25B-2と、第2アスタリスク突起26の第3延出部27C-2が、他の単位パターンの延出部に先端が近づくように湾曲しているので、反射される光の反射角度を異ならせることができ、反射光の集中が抑制される。これにより、見る角度を変えた場合の、パターン部分の見え方の均一性を高めて、視認性を向上させることができる。さらに、第2延出部25B-2と第3延出部27C-2が湾曲形状とされているので、ベース部22の底面が見えにくくなり、パターン領域20に入射した光の反射を抑制することができる。
【0081】
また、第2延出部25B-2と第3延出部27C-2は、先端が他の第1アスタリスク突起24、第2アスタリスク突起26の延出部(それぞれ、第2延出部27B-1、第3延出部25C-1)の先端に近づくように湾曲しているので、近づいた延出部との間のベース部22が見えにくくなり、パターン領域20に入射した光の反射をより抑制することができる。
【0082】
また、第2延出部25B-2の先端が連結部42に向かって延び、第3延出部27C-2の先端が連結部44に向かって延びているので、連結部42と第2延出部25B-2の間の隙間、第3延出部27C-2と連結部44の間の隙間が小さくなる。したがって、ベース部22が見えにくくなり、パターン領域20に入射した光の反射をより抑制することができる。
【0083】
さらに、本実施形態のパターン領域20では、隣り合う第1アスタリスク突起24と第2アスタリスク突起26とが、延出方向が異なる連結部42と連結部44で連結されているので、連結部で反射される光の方向を異ならせることができ、見る角度を変えた場合における見え方の均一性を高め、視認性を向上させることができる。また、その他、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0084】
なお、本実施形態では、延出部24E、延出部26Eの各々の延出方向と直交する方向の断面を略二等辺三角形状としたが、他の形状、例えば、
図7に示すように、第1頂部23A~第3頂部23C、第1頂部28A~第3頂部28の近傍を曲面状として、第1頂部23AR~第3頂部23CR、第1頂部28AR~第3頂部28CRとしてもよい。
【0085】
また、本実施形態では、6方向に延出された延出部24E、延出部26Eで単位パターン(第1アスタリスク突起24、第2アスタリスク突起26)を構成したが、異なる2方向に延出される延出部で単位パターンを形成してもよいし、異なる3方向以上に延出部を延出させて単位パターンを形成してもよい。また、異なる3方向以上に延出部を延出させる場合には、隣り合う延出部同士のなす角度は、等角度でもよいし、異なる角度でもよい。本実施形態のように、等角度とすることにより、延出部同士がバランスよく支持し合うことができる。
【0086】
なお、本実施形態の、第2延出部25B-2と第3延出部27C-2については、
図8に示されるように、その湾曲方向を反対にしてもよい。
【0087】
本発明のタイヤは、上述の実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示す第2実施形態~第12実施形態のタイヤも、本発明のタイヤの好適例である。
【0088】
<第2実施形態>
本発明に従う第2実施形態のタイヤは、
タイヤの外面に形成され、ベース部を有するパターン領域と、
前記パターン領域内に形成され、前記ベース部から突出すると共に間隔が0.1mmよりも大きく1.0mm以下で、かつ、高さが0.1mm以上で1.0mm以下とされた複数の突起と、を有するゴム部材を具え、
前記パターン領域には、隣接して配置される複数の前記突起の高さが漸減する漸減領域が設けられている。
【0089】
第2実施形態のタイヤの外面には、パターン領域が形成されており、そして、このパターン領域には、ベース部(ベース面)から突出すると共に間隔が0.1mmよりも大きく1.0mm以下で、かつ、突出高さが0.1mm以上で1.0mm以下とされた突起が複数形成されている。
これにより、パターン領域に入射した光は、突起の向かい合う側面で反射を繰り返しながら減衰して、外側に反射されるので、パターン領域は、突起が形成されていないタイヤの外面の他の領域(平滑な面)と比して明度が低くなっている。
そして、このパターン領域には、隣接して配置される複数の前記突起の高さが漸減する漸減領域が設けられている。前述したように、パターン領域に入射した光は、突起の向かい合う側面で反射を繰り返しながら減衰するが、突起の高さが低いと光の減衰が少なくなり、タイヤの外側へ反射される光は多くなるので、明度が高くなる。
漸減領域では突起の高さが漸減するので、漸減領域でタイヤの外側へ反射される光は、突起の高さの高い部分から低い部分に向けて多くなり、徐々に明るくなって見える。即ち、漸減領域では明度にグラデーションがつけられ、明度が一定の場合に比較して、タイヤにおいて突起が形成されている領域の表現の幅を広げることができる。
【0090】
第2実施形態のタイヤにおいては、前記漸減領域に、前記ベース部からの高さが一定とされた複数の前記突起が設けられていると共に、前記ベース部からの高さが漸増する漸増部を備えた底上げ部が複数の前記突起に跨って設けられていることで、前記底上げ部から前記突起の頂部までの前記高さが漸減していることが好ましい。
ベース部からの高さが一定とされた複数の突起を設けた上で、ベース部からの高さが漸増する漸増部を備えた底上げ部を複数の突起に跨って設けることで、底上げ部から突起の頂部までの高さを漸減させる構成を実現できる。
【0091】
ここで、前記底上げ部は、2つの前記漸増部が互いに反対向きに接続されていることが好ましい。
この場合、底上げ部としては、一方側から他方側に渡って、その高さが漸増して高さのピークを過ぎてから漸減する。
したがって、底上げ部を配置した部分では、タイヤの外側へ反射される光は、徐々に多くなった後に徐々に少なくなる。言い換えれば、徐々に明るくなった後に徐々に暗くなるように見え、徐々に明るくなって急に黒色に見える場合のみに比較して、突起が形成されている領域の表現の幅を更に広げることができる。
【0092】
また、前記底上げ部の高さが変化する部分は、前記ベース部に向けて凸となる曲線で形成されていることが好ましい。
この場合、ベース部に対する底上げ部(曲面部分)の傾斜角度は、裾野部分から頂部に向けて漸増するので、タイヤの外側へ反射される光の量の変化は裾野部分において比較的小さく、頂部付近では比較的大きくなる。
したがって、ベース部に向けて凹となる曲面、または平面で形成される場合に比較して、外観状、底上げ部の高さが最大となる部分を明るく明瞭に見せることができる。言い換えれば、底上げ部の裾野付近では明るさの変化が少なく、頂部付近では明るさの変化が大きくなるので、底上げ部の高さが最大となる部分が目立つようになる。これにより、突起が形成されている領域の表現の幅を更に広げることができる。
【0093】
また、前記ベース部は、前記外面よりもタイヤ内側に向けて形成された凹部の底部であり、前記底上げ部は、頂部が前記外面からタイヤ外側へ突出しないように形成されていることが好ましい。
この場合、走行時にタイヤ表面に沿って流れる空気の流れに対して底上げ部が当たり難くなり、空力効果を向上させることができる。
【0094】
また、前記ベース部は、前記外面よりもタイヤ内側に向けて形成された凹部の底部であり、前記突起は、頂部が前記外面からタイヤ外側へ突出しないように形成されていることが好ましい。
この場合、走行時にタイヤ表面に沿って流れる空気の流れに対して突起が当たり難くなり、空力効果を向上させることができる。
【0095】
また、前記漸減領域において、前記ベース部から計測する前記突起の高さは一定とされていることが好ましい。
ベース部から計測する突起の高さを一定とすることで、突起を形成するためのモールドに形成する凹部の加工深さを一定にでき、漸減領域以外のパターン領域を、一定の黒さに維持することができる。
【0096】
また、前記漸減領域には、前記底上げ部からの前記高さの異なる3種類以上の前記突起が設けられていることが好ましい。
漸減領域にベース部から突出する底上げ部を設けたタイヤにおいて、底上げ部からの高さの異なる3種類以上の突起を設けることで、滑らかなグラデーションを得ることができる。
なお、底上げ部を設けて突起の高さを異ならせる場合、2種類の高さの異なる突起を設けるようにすると、単位長さ当たりで底上げ部の高さの変化が大きくなり過ぎることになり、漸減領域において、応力の集中し易い大きな段差が生じ、段差部分からクラックを発生する懸念がある。一方、高さの異なる3種類以上の突起を設けるようにすれば、漸減領域において、単位長さ当たりの底上げ部の高さの変化が小さくなり、応力の集中が緩和され、クラックが発生し難くなる。
【0097】
<第3実施形態>
本発明に従う第3実施形態のタイヤは、
タイヤの外面に形成され、ベース部を有する第一のパターン領域と、
前記第一のパターン領域内に形成され、前記ベース部から0.1mm以上で1.0mm以下の突出高さで突出すると共に1.0mmよりも大きく3.0mm以下の間隔で形成された複数の第一突起と、を有するゴム部材を具える。
【0098】
第3実施形態のタイヤの外面には、第一のパターン領域が形成されており、そして、この第一のパターン領域には、ベース部から突出すると共に間隔が1.0mmよりも大きく3.0mm以下で、かつ、突出高さが0.1mm以上で1.0mm以下とされた第一突起が複数形成されている。これにより、第一のパターン領域に入射した光は、第一突起の向かい合う側面で反射を繰り返しながら減衰して、外側に反射される。
第一のパターン領域は、突起が形成されていない他の領域と比して明度が低く、かつ、密度が高い状態で突起が形成されている領域(例えば、突起の間隔が0.5mmで配置されている領域)と比して明度が高くなっている。このため、タイヤにおいて突起が形成されている領域の表現の幅を広げることができる。
【0099】
第3実施形態のタイヤにおいて、前記第一突起は、前記ベース部に対して直交する方向から見て、基点から複数方向に延びている延出部を含んで形成されていることが好ましい。
この場合、第一突起の側面で反射される光の反射角度を異ならせることができ、反射光の集中が抑制される。これにより、第一のパターン領域に対して視認する角度を変えて第一のパターン領域を見た場合でも、見え方が異なるのを抑制することができる。
【0100】
また、第3実施形態のタイヤは、前記第一のパターン領域に近接して配置され、前記ベース面から0.1mm以上で1.0mm以下の突出高さで突出すると共に0.1mm以上1.0mm以下の間隔の第二突起が、複数形成されている第二のパターン領域を備えることが好ましい。
この場合、第一のパターン領域の明度に比して低い明度の第二のパターン領域が、第一のパターン領域に近接して配置されるため、第一のパターン領域だけが形成されている場合と比して、突起が形成されている領域の表現の幅を広げることができる。
【0101】
ここで、前記第一のパターン領域に形成された前記第一突起の突出高さと、前記第二のパターン領域に形成された前記第二突起の突出高さとは、異なることが好ましい。
この場合、第一突起の突出高さと、第二突起の突出高さとが同様の場合と比して、突起が形成されている領域の見え方が変わり、突起が形成されている領域の表現の幅を広げることができる。
【0102】
<第4実施形態>
本発明に従う第4実施形態のタイヤは、
タイヤの外面に形成され、ベース部を有する複数の第一のパターン領域と、
前記複数の第一のパターン領域内に形成され、前記ベース部から0.1mm以上1.0mm以下の突出高さで突出すると共に0.1mm以上1.0mm以下の間隔で複数形成された突起と、を有するゴム部材を具え、
前記複数の第一のパターン領域において、前記突起の間隔が互いに異なる。
【0103】
第4実施形態のタイヤの外面には、複数の第一のパターン領域が形成されており、この第一のパターン領域には、ベース部から0.1mm以上1.0mm以下の突出高さで突出する突起が、0.1mm以上1.0mm以下の間隔で複数形成されている。これにより、第一のパターン領域に入射した光は、突起の向かい合う側面で反射を繰り返しながら減衰して、外側に反射される。
したがって、第一のパターン領域は、突起が形成されていない他の領域と比して明度が低くなっている。また、複数の第一のパターン領域において、突起の間隔が互いに異なっているので、明度を除変させ、グラデーションを表現できる。このため、タイヤにおいて突起が形成されている領域の表現の幅を広げることができる。
【0104】
第4実施形態のタイヤにおいては、前記突起が、互いに連結されていることが好ましい。
この場合、連結部を介して各突起同士が互いに支え合い、各突起の倒れ込みが抑制され、耐久性を向上させることができる。
【0105】
また、前記突起は、前記ベース部に対して直交する方向から見て、基点から複数方向に延びている延出部を含んで形成されていることが好ましい。
この場合、突起の側面で反射される光の反射角度を異ならせることができ、反射光の集中が抑制される。これにより、第一のパターン領域に対して視認する角度を変えて第一のパターン領域を見た場合でも、見え方が異なるのを抑制することができる。
【0106】
また、第4実施形態のタイヤにおいては、少なくとも1つの前記第一のパターン領域において、隣り合う前記突起の間隔は、0.5mmより大きいことが好ましい。
この場合、隣り合う突起の間隔が0.5mm以下の領域に比べて、明度を明るくすることができる。これにより、タイヤ外面の視認性が向上し、突起が形成されている領域の表現の幅を広げることができる。
【0107】
また、第4実施形態のタイヤにおいては、互いに隣り合う前記第一のパターン領域において、前記突起の間隔の比が、1.1以上3.0以下であることが好ましい。
互いに隣り合う第一のパターン領域においては、突起の間隔の比が小さ過ぎても大き過ぎても、外観上、明度の徐変、つまりグラデーションとして認識しづらい。上記構成によれば、互いに隣り合う第一のパターン領域における突起の間隔の比を適切に設定しているので、明度の徐変を視認可能である。
【0108】
また、第4実施形態のタイヤは、前記第一のパターン領域に近接して配置され、前記突起が、1mmより大きい間隔で複数形成されている第二のパターン領域を有することが好ましい。
この場合、タイヤの外面には、第一のパターン領域に近接して第二のパターン領域が配置されており、この第二のパターン領域には、突起が1mmより大きい間隔で複数形成されている。これにより、第一のパターン領域の明度に比して高い明度の第二のパターン領域が、第一のパターン領域に近接して配置される。このため、第一のパターン領域だけが形成されている場合と比して、突起が形成されている領域の表現の幅を広げることができる。
【0109】
ここで、互いに隣り合う前記第一のパターン領域と前記第二のパターン領域において、前記突起の間隔の比が、1.1以上3.0以下であることが好ましい。
互いに隣り合う第一のパターン領域と第二のパターン領域においては、突起の間隔の比が小さ過ぎても大き過ぎても、外観上、明度の徐変、つまりグラデーションとして認識しづらい。上記構成によれば、互いに隣り合う第一のパターン領域と第二のパターン領域における突起の間隔の比を適切に設定しているので、明度の徐変を視認し易くなる。
【0110】
<第5実施形態>
本発明に従う第5実施形態のタイヤは、
タイヤの外面に形成され、ベース部を有する第一のパターン領域及び第二のパターン領域と、
前記第一のパターン領域及び第二のパターン領域内に形成され、前記ベース部から0.1mm以上1.0mm以下の突出高さで突出すると共に0.1mm以上1.0mm以下の間隔で複数形成された突起と、を有するゴム部材を具え、
前記第一のパターン領域と前記第二のパターン領域において、前記ベース部に対して直交する方向から見た前記突起の形状が、互いに異なる。
【0111】
第5実施形態のタイヤの外面には、第一のパターン領域と第二のパターン領域とが形成されており、第一のパターン領域及び第二のパターン領域には、ベース部から0.1mm以上1.0mm以下の突出高さで突出する突起が、0.1mm以上1.0mm以下の間隔で複数形成されている。これにより、第一のパターン領域や第二のパターン領域に入射した光は、突起の向かい合う側面で反射を繰り返しながら減衰して、外側に反射される。
したがって、第一のパターン領域及び第二のパターン領域は、突起が形成されていない他の領域と比して明度が低くなっている。また、第一のパターン領域と第二のパターン領域において、ベース部に対して直交する方向から見た突起の形状が互いに異なっているので、明度が同等であったとしても、光の入射角度が変化することによって、第一のパターン領域又は第二のパターン領域をあたかも浮かび上がるように見せることが可能になる。このため、タイヤにおいて突起が形成されている領域の表現の幅を広げることができる。
【0112】
第5実施形態のタイヤにおいては、前記突起が、互いに連結されていることが好ましい。
この場合、連結部を介して各突起同士が互いに支え合い、各突起の倒れ込みが抑制され、耐久性を向上させることができる。
【0113】
ここで、前記第一のパターン領域において、前記突起が、前記ベース部に対して直交する方向から見て、基点から複数方向に延びている延出部を含んで形成されていることが好ましい。
この場合、突起の側面で反射される光の反射角度を異ならせることができ、反射光の集中が抑制される。これにより、第一のパターン領域に対して視認する角度を変えて第一のパターン領域を見た場合でも、見え方が異なるのを抑制することができる。
【0114】
また、前記第二のパターン領域において、前記突起が、前記ベース部に対して直交する方向から見てジグザグ状のリブ状突起を構成し、前記リブ状突起が、前記間隔で複数形成されていることが好ましい。
この場合、ジグザグ状の複数のリブ状突起によりヘリンボーン形状が構成され、光の入射角に対して直交する面と平行する面とが交互に形成される。これにより、突起が形成されている領域にストライプ状の明暗を表現できる。
また、第一のパターン領域の突起をリブ状突起と異なる構成とし、リブ状突起を有する第二のパターン領域と組み合わせることで、反射率の違いによるグラフィック表現が可能になる。
【0115】
<第6実施形態>
本発明に従う第6実施形態のタイヤは、
タイヤの外面に形成され、ベース部を有する第一のパターン領域及び第二のパターン領域と、
前記第一のパターン領域内に形成され、前記ベース部から0.1mm以上で1.0mm以下の予め決められた値の突出高さで突出すると共に0.1mm以上1.0mm以下の予め決められた値の間隔で複数形成された第一突起と、
前記第二のパターン領域内に形成され、前記ベース部から0.1mm以上で1.0mm以下の予め決められた値の突出高さで突出すると共に0.1mm以上1.0mm以下の予め決められた値の間隔で複数形成された第二突起と、を有するゴム部材を具え、
夫々の前記第一突起の間隔と夫々の前記第二突起の間隔とが同様とされ、前記第一突起の突出高さと前記第二突起の突出高さとが異なる。
【0116】
第6実施形態のタイヤにおいて、第一のパターン領域と、第一のパターン領域に近接して配置されている第二のパターン領域とには、予め決められた間隔で複数の第一突起、又は複数の第二突起が形成されている。そこで、第一のパターン領域に入射した光は、第一突起の向かい合う側面で反射を繰り返しながら減衰して、外側に反射される。さらに、第二のパターン領域に入射した光は、第二突起の向かい合う側面で反射を繰り返しながら減衰して、外側に反射される。これにより、第一のパターン領域の明度及び第二のパターン領域の明度が、突起が形成されていない他の領域と比して低くなり相対的に黒色に見える。
ここで、第一のパターン領域に予め決められた間隔で形成された複数の第一突起の高さと、第二のパターン領域に予め決められた間隔で形成された複数の第二突起の高さとが異なっている。このため、黒色に見える明度が低い領域において、第一のパターン領域の明度と第二のパターン領域の明度とが異なっている。このように、黒色に見える明度が低い領域において、明度が異なる領域を設けるで、タイヤにおいて突起が形成されている領域の表現の幅を広げることができる。
【0117】
第6実施形態のタイヤにおいて、前記第一突起及び前記第二突起は、前記ベース部に対して直交する方向から見て、基点から複数方向に延びている延出部を含んで形成されていることが好ましい。
この場合、第一突起の側面及び第二突起の側面で反射される光の反射角度を異ならせることができ、反射光の集中が抑制される。これにより、視認する角度を変えて、突起が形成されている領域を見た場合でも、見え方が異なるのを抑制することができる。
【0118】
また、第6実施形態のタイヤにおいて、第二突起の突出高さは、第一突起の突出高さの70%以下とされていることが好ましい。
この場合、第一のパターン領域に入射して外側に反射される光の量(光量)と、第二のパターン領域に入射して外側に反射される光の量(光量)との差が大きくなる。これにより、第一のパターン領域と第二のパターン領域との境界線が明確なり、突起が形成されている領域の表現の幅を広げることができる。
【0119】
また、第6実施形態のタイヤが具えるゴム部材は、更に、
タイヤの外面に形成され、ベース部を有し、前記第二のパターン領域と近接して配置されている第三のパターン領域と、
前記第三のパターン領域内に形成され、前記ベース部から0.1mm以上で1.0mm以下の予め決められた値の突出高さで突出すると共に0.1mm以上1.0mm以下の予め決められた値の間隔で複数形成された第三突起と、を有し、
夫々の前記第三突起の間隔と夫々の前記第一突起の間隔とが同様とされ、前記第一突起の突出高さは、前記第二突起の突出高さと比して高くされ、前記第三突起の突出高さは、前記第二突起の突出高さと比して低くされ、前記第一のパターン領域、前記第二のパターン領域、及び前記第三のパターン領域は、この順番に一方向の一側から他側に並んでいることが好ましい。
この場合、第一のパターン領域において外側に反射される光の量は、第二のパターン領域において外側に反射される光の量と比して少なくなる。さらに、第二のパターン領域において外側に反射される光の量は、第三のパターン領域において外側に反射される光の量と比して少なくなる。
このように、第三のパターン領域、第二のパターン領域、及び第一のパターン領域が、この順番で明度が低くなる。これにより、明度の段階的な変化(グラデーション効果)を表現することができる。
【0120】
<第7実施形態>
本発明に従う第7実施形態のタイヤは、
タイヤの外面に形成され、ベース部を有するパターン領域と、
前記パターン領域内に形成され、前記ベース部から0.1mm以上、1.0mm以下の突出高さとされ、平面視で各々が文字を表す複数の文字突起と、を有するゴム部材を具え、
前記文字突起の配列ピッチは0.1mm以上1.0mm以下であり、一の前記文字突起は、隣り合う他の文字突起のうちの少なくとも1つとは、異なる文字である。
【0121】
第7実施形態のタイヤの外面には、ベース部を有するパターン領域が形成されている。ここで、タイヤの外面とは、タイヤサイド部、トレッド部、トレッドの溝底、溝壁など、タイヤの外側から視認可能な表面をいう。また、本発明のタイヤは、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤの両方を含む。
パターン領域内には、複数の文字突起が配列されている。当該文字突起は、ベース部から0.1mm以上1.0mm以下の突出高さとされ、平面視で文字を表すものであり、配列ピッチは0.1mm以上1.0mm以下であり、一の文字突起は、隣り合う他の文字突起のうちの少なくとも1つとは、異なる文字である。なお、ここでの「文字」は、ひらがな、漢字、カタカナ、アルファベット、数字など、言語を表記するために用いられる符号をいう。また、当該文字は、肉眼で文字の認識ができなくても、拡大して文字と認識できればよい。
このように、隣り合う文字突起のうちの少なくとも1つは異なる文字とすることにより、文字突起で反射される光の反射方向を異ならせることができ、反射光の集中が抑制される。これにより、見る角度を変えた場合の、パターン部分の見え方の均一性が高まり、タイヤ外面の視認性を向上させることができる。
【0122】
第7実施形態のタイヤにおいて、前記文字突起は、前記ベース部側の基部から突出先端側の頂部にかけて、前記ベース部に沿う方向の断面積が漸減することが好ましい。
このように、ベース部側から頂部へ向かって断面積が漸減する形状にすることで、文字突起が安定し、倒れ込みが抑制されて耐久性を向上させることができる。なお、ここでの基部は、文字突起のベース部上の根元、即ち、文字突起がベース部から立ち上がる部分をいう。
【0123】
ここで、前記文字突起の前記突出高さは、前記文字突起の前記基部の幅の最小値の0.8倍~6倍であることが好ましい。
文字突起において、前記突出高さが基部の幅の0.8倍よりも小さいと、文字突起の側壁面とベース部に対する垂直面との成す角度が大きくなるため、側壁面で反射された光が文字突起の外側へ直接戻る割合が多くなり、視認性の向上が少なくなる。一方、前記突出高さが基部の幅の6倍を超えると、文字突起の側壁面とベース部に対する垂直面との成す角度が小さくなるため、文字突起が倒れやすくなる。したがって、文字突起で反射された光が文字突起の外側へ戻ることを抑制する効果と、文字突起の耐久性を考慮し、文字突起の突出高さが基部の幅の最小値の0.8倍~6倍であることが好ましい。
【0124】
第7実施形態のタイヤにおいて、前記文字突起の前記ベース部から立ち上がる一方側の側壁面と他方側の側壁面が成す角度は、5°~40°であることが好ましい。
文字突起の一方側の側壁面と他方側の側壁面が成す角度が、5°未満であると、文字突起が倒れやすくなる。一方、前記の角度が40°を超えると、側壁面で反射された光が文字突起の外側へ直接戻る割合が多くなり、視認性の向上が少なくなる。したがって、文字突起で反射された光が文字突起の外側へ戻ることを抑制する効果と、文字突起の耐久性を考慮し、前記角度は5°~40°であることが好ましい。
【0125】
<第8実施形態>
本発明に従う第8実施形態のタイヤは、
タイヤの外面に形成され、ベース部を有するパターン領域と、
前記パターン領域内に形成され、平面視で第1の方向に延びると共に該第1の方向と直交する第2の方向に間隔をあけて複数配置された第1突起及び隣り合う前記第1突起間に前記第1の方向に間隔をあけて複数配置された第2突起と、を有するゴム部材を具え、
前記第2突起は、平面視で屈曲部と前記屈曲部から前記第1の方向と交差する方向に延出する複数の延出部とを有している。
【0126】
第8実施形態のタイヤでは、タイヤ表面に第1突起と第2突起を含んで構成される装飾用のパターン領域を形成している。このパターン領域では、入射された光が各突起間で反射を繰り返しながら減衰されるため、光の反射が抑制される。これにより、例えば、パターン領域に隣接して平滑領域が形成されている場合、パターン領域と平滑領域との間でコントラストが大きくなり、パターン領域の視認性が向上する。
ここで、第8実施形態のタイヤでは、平面視で第1突起を第1の方向に延ばしていることから、例えば、第1突起を一方向に延ばさずに点在させる構成と比べて、モールドを用いたタイヤ成形時に第1突起成形用のブレード間にゴムが流れ込みやすく(言い換えると、第1突起成形用のブレード間のエアが抜けやすく)、第1突起(パターン領域)の成形性が確保される。
また、第8実施形態のタイヤでは、平面視で隣り合う第1突起間に第1の方向に間隔をあけて第2突起を複数配置していることから、例えば、隣り合う第1突起間に第2突起を配置しない構成と比べて、パターン領域に特定の方向(一例として第2の方向と直交する方向)から光が入射されても、入射された光が第2突起間で反射を繰り返しながら減衰されるため、光の反射が抑制される。すなわち、パターン領域に対して各方向から光が入射されても、光の反射を抑制することができる。これにより、例えば、パターン領域に隣接して平滑領域が形成されている場合、パターン領域を見る角度によってパターン領域と平滑領域との間のコントラストが低下するのが抑制される。
さらに、第8実施形態のタイヤでは、第2突起が平面視で屈曲部から第1の方向と交差する方向に延出する複数の延出部を有するため、例えば、第2突起が平面視で第1の方向に沿って延びる延出部を有する構成と比べて、異なる方向に延びる突起成分が増え、パターン領域に入射された光がより効果的に各突起間で減衰され、光の反射がさらに抑制される。これにより、例えば、パターン領域に隣接して平滑領域が形成されている場合、パターン領域と平滑領域との間でコントラストがさらに大きくなり、パターン領域の視認性が向上する。
なお、ここでいう「平面視で第1の方向と交差する方向」には、平面視で第1の方向に対して傾斜する方向及び第1の方向に対して直交する方向が含まれる。
【0127】
第8実施形態のタイヤにおいて、隣り合う前記第2突起同士は、平面視で各々の前記延出部の前記第1の方向に対する角度がそれぞれ異なることが好ましい。
この場合、平面視において、隣り合う第2突起同士の各々の延出部の第1の方向に対する角度がそれぞれ異なるため、例えば、隣り合う第2突起同士の各々の延出部の第1の方向に対する角度がそれぞれ異ならないものと比べて、異なる方向に延びる突起成分が増え、パターン領域に入射された光がより効果的に減衰され、光の反射がさらに抑制される。これにより、例えば、パターン領域に隣接して平滑部が形成されている場合、パターン領域と平滑領域との間でコントラストがさらに大きくなり、パターン領域の視認性がさらに向上する。
【0128】
また、第8実施形態のタイヤにおいて、前記第1突起は、平面視で前記第2の方向に振幅を有する形状であることが好ましい。
この場合、第1突起を平面視で第2の方向に振幅を有する形状としているため、例えば、第1突起が平面視で第1の方向に直線状に延びる形状としたものと比べて、パターン領域に入射された光が各突起間で乱反射しやすく、光の反射がより抑制される。これにより、例えば、パターン領域に隣接して平滑領域が形成されている場合、パターン領域と平滑領域との間でコントラストがさらに大きくなり、パターン領域の視認性が向上する。
【0129】
また、第8実施形態のタイヤおいては、前記第1突起の配置間隔が0.5~1mmの範囲内とされ、前記第1突起及び前記第2突起のそれぞれの突出方向の高さが0.1~1mmの範囲内とされていることが好ましい。
この場合、例えば、第1突起の配置ピッチを0.5~1mmの範囲内に含まず、第1突起及び第2突起のそれぞれの突出方向の高さを0.1~1mmの範囲内に含まれないものと比べて、パターン領域に入射された光が各突起間で反射を繰り返しながら減衰されるため、光の反射がさらに抑制される。
【0130】
また、第8実施形態のタイヤにおいて、前記タイヤ表面は、タイヤサイド部の表面であり、前記タイヤサイド部の表面には、前記パターン領域によって囲まれる平滑領域が形成されていることが好ましい。
この場合、タイヤサイド部の表面に形成された平滑領域をパターン領域が囲んでいるため、平滑領域とパターン領域との間にコントラストが生じる。これにより、パターン領域の視認性が向上する共に、パターン領域によって囲まれる平滑領域の視認性も向上する。
【0131】
<第9実施形態>
本発明に従う第9実施形態のタイヤは、
タイヤの外面に形成され、ベース部を有するパターン領域と、
前記パターン領域内に形成され、平面視で第1の方向に延びると共に該第1の方向と直交する第2の方向に間隔をあけて複数配置された第1突起及び隣り合う前記第1突起間に前記第1の方向に間隔をあけて複数配置された第2突起と、を有するゴム部材を具え、
前記第2突起は、平面視で屈曲部と前記屈曲部から前記第1の方向と交差する方向に延出する複数の延出部とを有し、
前記延出部は、延在方向と直交する方向の断面で見て、両側の壁面間の壁面間隔が頂部から基部にかけて漸増するように突出方向に対して前記壁面が傾斜している。
【0132】
第9実施形態のタイヤでは、タイヤの外面に第1突起と第2突起を含んで構成される装飾用のパターン領域を形成している。このパターン領域では、入射された光が各突起間で反射を繰り返しながら減衰されるため、光の反射が抑制される。これにより、例えば、パターン領域に隣接して平滑領域が形成されている場合、パターン領域と平滑領域との間でコントラストが大きくなり、パターン領域の視認性が向上する。
ここで、第9実施形態のタイヤでは、平面視で第1突起を第1の方向に延ばしていることから、例えば、第1突起を一方向に延ばさずに点在させる構成と比べて、モールドを用いたタイヤ成形時に第1突起成形用のブレード間にゴムが流れ込みやすく(言い換えると、第1突起成形用のブレード間のエアが抜けやすく)、第1突起(パターン領域)の成形性が確保される。
また、第9実施形態のタイヤでは、平面視で隣り合う第1突起間に第1の方向に間隔をあけて第2突起を複数配置していることから、例えば、隣り合う第1突起間に第2突起を配置しない構成と比べて、パターン領域に特定の方向(一例として第2の方向と直交する方向)から光が入射されても、入射された光が第2突起間で反射を繰り返しながら減衰されるため、光の反射が抑制される。すなわち、パターン領域に対して各方向から光が入射されても、光の反射を抑制することができる。これにより、例えば、パターン領域に隣接して平滑領域が形成されている場合、パターン領域を見る角度によってパターン領域と平滑領域との間のコントラストが低下するのが抑制される。
さらに、第9実施形態のタイヤでは、第2突起が平面視で屈曲部から延出する複数の延出部を有するため、異なる方向に延びる突起成分が増え、パターン領域に入射された光がより効果的に減衰されて、光の反射がさらに抑制される。
また、第9実施形態のタイヤでは、複数の第2突起の延出部を平面視で第1の方向と交差する方向に延ばしているため、例えば、複数の第2突起の延出部を平面視で第1の方向に沿って延ばしているものと比べて、異なる方向に延びる突起成分が増え、パターン領域に入射された光がより効果的に各突起間で減衰され、光の反射がさらに抑制される。
なお、ここでいう「平面視で第1の方向と交差する方向」には、平面視で第1の方向に対して傾斜する方向及び第1の方向に対して直交する方向が含まれる。
またさらに、第9実施形態のタイヤでは、第2突起の延出部を延在方向と直交する方向の断面で見て、両側の壁面間の壁面間隔が頂部から基部にかけて漸増するように突出方向に対して壁面を傾斜させているため、例えば、両側の壁面間の壁面間隔が頂部から基部にかけて一定のものと比べて、延出部の剛性が向上し、第2突起が倒れにくくなる。これにより、パターン領域に入射された光の反射を抑制する効果が長期に亘って維持される。
【0133】
第9実施形態のタイヤにおいて、前記延出部は、延在方向と直交する方向の断面で見て、両側の前記壁面が前記頂部よりも前記基部で突出方向と直交する方向にそれぞれ張り出していることが好ましい。
この場合、例えば、片側の壁面のみが頂部よりも基部において突出方向と直交する方向に張り出しているものと比べて、延出部の剛性がより向上し、第2突起がより倒れにくくなる。これにより、パターン領域に入射された光の反射を抑制する効果がさらに長期に亘って維持される。また、脱型時にモールドのブレード間から延出部が抜きやすくなる。
【0134】
ここで、前記延出部は、延在方向と直交する方向の断面で見て、突出方向に沿った高さが、前記基部における前記壁面間隔の0.8~6倍の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、例えば、上記長さが上記間隔の0.8~6倍の範囲内に含まれないものと比べて、延出部の倒れとパターン領域に入射された光の反射を効果的に抑制することができる。
【0135】
また、前記延出部は、延在方向と直交する方向の断面で見て、突出方向に対する前記壁面の角度が5~30度の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、例えば、上記角度が5~30度の範囲内に含まれないものと比べて、延出部の倒れとパターン領域に入射された光の反射を効果的に抑制することができる。
【0136】
また、第9実施形態のタイヤにおいて、前記延出部は、延在方向と直交する方向の断面で見て、頂部が円弧状に湾曲していることが好ましい。
この場合、例えば、延出部の頂部を尖端形状としたものと比べて、延出部の体積が増え、頂部側の倒れを抑制できる。
【0137】
また、第9実施形態のタイヤにおいて、前記第1突起は、延在方向と直交する方向の断面で見て、両側の壁面間の壁面間隔が頂部から基部にかけて漸増するように突出方向に対して前記壁面が傾斜していることが好ましい。
この場合、例えば、両側の壁面間の壁面間隔が頂部から基部にかけて一定のものと比べて、第1突起が倒れにくく、パターン領域に入射された光の反射を抑制する効果が長期に亘って維持される。
【0138】
また、第9実施形態のタイヤにおいては、前記第1突起の配置ピッチが0.5~1mmの範囲内とされ、前記第1突起及び前記第2突起のそれぞれの突出方向の高さが0.1~1mmの範囲内とされていることが好ましい。
この場合、例えば、第1突起の配置ピッチを0.5~1mmの範囲内に含まず、第1突起及び第2突起のそれぞれの突出方向の高さを0.1~1mmの範囲内に含まれないものと比べて、パターン領域に入射された光が各突起間で反射を繰り返しながら減衰されるため、光の反射がさらに抑制される。
【0139】
また、第9実施形態のタイヤのタイヤにおいて、前記タイヤ表面は、タイヤサイド部の表面であり、前記タイヤサイド部の表面には、前記パターン領域によって囲まれる平滑領域が形成されていることが好ましい。
この場合、タイヤサイド部の表面に形成された平滑領域をパターン領域が囲んでいるため、平滑領域とパターン領域との間でコントラストが大きくなる。これにより、パターン領域の視認性が向上する共にパターン領域によって囲まれる平滑領域の視認性も向上する。
【0140】
<第10実施形態>
本発明に従う第10実施形態のタイヤは、
タイヤの外面に形成され、ベース部を有するパターン領域と、
前記パターン領域内に複数突設された突起部と、を有するゴム部材を具え、
前記複数突設された突起部を高さ寸法が0.2mm以上0.5mm以下の突条で構成し、平面視で該突条を屈曲して屈曲部を形成するとともに、平面視で互いに隣接する一方の突起部における屈曲部が他方の突起部における屈曲部の先端側に位置し、かつ互いに隣接する突起部を構成する突条のピッチが0.15mm以上0.35mm以下となるように各突起部を配置して、表示を構成する為の暗部を形成した。
【0141】
第10実施形態のタイヤの外面には、複数の突起部で構成された暗部によって表示が形成されている。ここで、タイヤの外面とは、タイヤサイド部、トレッド部、トレッドの溝底、溝壁など、タイヤの外側から視認可能な表面をいう。また、タイヤとしては、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤの両方を含む。
表示を構成する暗部は、高さ寸法が0.2mm以上0.5mm以下の突条で構成されており、平面視で突条が屈曲されてなる屈曲部を備えている。この屈曲部は、屈曲部分を境とした一方側の壁と他方側の壁とを有し、屈曲部を構成する壁の壁面は四方向を向いている。
このため、各壁面で光が反射した際には、その反射方向を異ならせることができ、反射光の集中が抑制される。これにより、この屈曲部を有した突起部からなる暗部を、暗く見せることができるので、タイヤが有する黒さ以上に黒く見せることができる。また、様々な角度から見てもパターン領域の見え方の均一性を高めて、視認性が向上する。
また、この屈曲部を有する突起部で構成された暗部を暗く見せることができるので、暗部と暗部以外の部分とのコントラストを高めることができ、視認性を向上させることができる。
そして、平面視で隣接する一方の突起部の屈曲部が他方の突起部の屈曲部の先端側に位置するように各突起部が配置されており、両突起部を構成する突条のピッチが0.15mm以上0.35mm以下となるように構成されている。このため、屈曲部を有する突起部をばらばらに配置した場合と比較して、各突起部を密に配置することができる。これにより、表示を構成する暗部をより黒く見せることができる。
【0142】
第10実施形態のタイヤにおいては、前記突起部を構成する突条の壁面が傾斜し、隣接する突起部の突条において対向した壁面が成す角度を15°以上40°以下とすることが好ましい。
隣接する突起部での突条の壁面が成す角度が40°よりも大きいと、壁面での反射光が、突条の間から外側へ戻る割合が多くなり、視認性の向上が少なくなる。すなわち、光が反射して、明部とのコントラストの差異が小さくなり、視認性の向上が少なくなる。一方、隣接する突起部での突条の壁面が成す角度が15°よりも小さいと、突条が倒れやすくなる。
【0143】
また、第10実施形態のタイヤにおいては、前記屈曲部を連続して複数並設し、前記突起部をジグザグ形状とすることが好ましい。
これにより、暗部を構成する突起部をより密に配置できるため、暗部をより黒く見せることができ、視認性が向上する。
【0144】
<第11実施形態>
本発明に従う第11実施形態のタイヤは、
タイヤの外面に形成され、ベース部を有するパターン領域と、
前記パターン領域内に形成され、前記ベース部から突出すると共に間隔が0.1mmよりも大きく1.0mm以下で、かつ、高さが0.1mm以上で1.0mm以下とされた複数の突起と、を有するゴム部材を具え、
少なくとも前記パターン領域では、複数の前記突起が、前記ベース部に垂直な法線に対して一方向に傾斜している。
【0145】
第11実施形態のタイヤの外面には、パターン領域が形成されており、このパターン領域には、ベース部から突出すると共に間隔が0.1mmよりも大きく1.0mm以下で、かつ、突出高さが0.1mm以上で1.0mm以下とされた突起が複数形成されている。そして、パターン領域に形成される突起は、ベース部に垂直な法線に対して傾斜している。
パターン領域に入射した光は、突起の向かい合う側面で反射を繰り返しながら減衰して、外側に反射されるので、パターン領域は、突起が形成されていないタイヤの外面の他の領域(平滑な面)と比して明度が低くなる。そして、パターン領域の外側に反射される光の中でも、突起の突出方向に反射される光は、突出方向とは異なる方向に反射される光に比較して少ないので、突起の突出方向からパターン領域を見ると、突起の突出方向とは異なる方向から見る場合に比較して黒色に見える。即ち、突起の突出方向からパターン領域を見ると、最もパターン領域が黒く見える。
第11実施形態のタイヤによれば、パターン領域の突起が、ベース部に垂直な法線に対して傾斜しているので、突起の傾斜している方向から、言い換えれば、ベース部に垂直な法線に対して傾斜した方向(突起の突出方向)から見たときに、パターン領域を黒く見せることができる。
これにより、タイヤの外面を斜め方向から見た時に、パターン領域と他の領域との間で大きなコントラストを得ることができる。
【0146】
第11実施形態のタイヤには、前記突起の傾斜方向が異なる複数の前記パターン領域が設けられていることが好ましい。
突起の傾斜方向が同一方向であると、突起の傾斜している方向から見たときはパターン領域が黒色に見えるが、突起の傾斜している方向とは異なる方向から見たときは、突起の傾斜している方向から見たときよりも明るく見える。即ち、パターン領域に設けられる突起が全て同一方向に傾斜していると、タイヤの外面は、パターン領域を黒色に見せるために方向性を有することになる。
一方、タイヤに、突起の傾斜方向が異なる複数のパターン領域が設けられている場合、特定の方向以外の方向から見た時にも、何れかのパターン領域が黒く見えるようになり、パターン領域と他の領域との間で大きなコントラストを得ることができる。言い換えれば、複数の方向からタイヤを見た時に、該タイヤのうちの何れかパターン領域を黒く見せることが可能となり、方向性を無くすことができる。
【0147】
また、第11実施形態のタイヤにおいて、前記パターン領域は、タイヤ側面に形成され、前記パターン領域では、前記突起が前記タイヤ側面に垂直な法線に対してタイヤ径方向外側に傾斜していることが好ましい。
この場合、タイヤ側面にパターン領域が設けられており、該パターン領域において、突起がタイヤ側面に垂直な法線に対してタイヤ径方向外側に傾斜しているため、タイヤ側面の上側部分(タイヤ回転軸の上側の部分)のパターン領域に形成されている突起は、斜め上方に向いていることになる。
したがって、タイヤ側面の上側部分のパターン領域を、タイヤ側面に対して斜め上側から見ることで、該パターン領域に設けられた突起を、突起の突出方向から見ることになり、該パターン領域をタイヤ側面に対して垂直の方向から見る場合に比較してパターン域が黒く見える。即ち、該タイヤでは、タイヤ側面の上側のパターン領域において、大きなコントラストを得ることができるようになる。
【0148】
また、第11実施形態のタイヤにおいて、前記パターン領域は、前記タイヤ側面のうちのタイヤ最大幅部に設けられていることが好ましい。
この場合、パターン領域をタイヤ最大幅部に設けているので、タイヤの側部の斜め上方からタイヤの上側の最大幅部を見た場合に、該タイヤ最大幅部に設けられたパターン領域における突起を、突起の突出方向から見ることができ、タイヤの上側の最大幅部におけるパターン領域が最も黒く見えるようになる。即ち、該タイヤでは、タイヤ側方の上側から、タイヤ側面の上側のタイヤ最大幅部のパターン領域を見た時に、大きなコントラストを得ることができるようになる。
【0149】
また、第11実施形態のタイヤにおいて、前記パターン領域は、タイヤ側面に形成され、前記突起がタイヤ径方向外側に傾斜している前記パターン領域と、前記突起がタイヤ径方向外側とは異なる方向に傾斜している前記パターン領域とを有していることが好ましい。
突起がタイヤ径方向外側に傾斜しているパターン領域と、突起がタイヤ径方向外側とは異なる方向に傾斜しているパターン領域とを有している場合、タイヤ回転軸の上側のタイヤ側面における突起は斜め上方を向く。
回転軸の上側のタイヤ側面を見たとき、視線の方向と、突起の傾斜方向とが近づく、または一致するので、傾斜した突起の形成されている部分が最も黒く見えるようになる。
【0150】
<第12実施形態>
本発明に従う第12実施形態のタイヤは、
トレッド部のトレッド踏面を区画する溝部の一部を構成しかつ当該溝部と当該トレッド踏面との境界部に当該溝部に沿って設けられた境界面部と、前記境界面部に密集した状態で設けられた複数の突起部と、を有するゴム部材を具えている。
【0151】
第12実施形態のタイヤによれば、トレッド部のトレッド踏面が溝部によって区画されており、当該溝部の一部は、当該溝部と当該トレッド部との境界部に当該溝部に沿って設けられた境界面部とされている。このため、タイヤを側方から見ると、境界面部、すなわち溝部の一部を視認することが可能となっている。なお、ここでいう「タイヤを側方から見る」状態には、タイヤを上方から斜め下方に見るような状態も含まれる。
ところで、境界面部に何も設けられていない状態では、境界面部で反射された光がそのまま溝部の外側に進行するため、溝部が明るく見えてしまうことが考えられる。
ここで、第12実施形態のタイヤでは、境界面部に複数の突起部が密集した状態で設けられている。このため、境界面部に反射した光は、複数の突起部間で反射を繰り返すため、溝部の外側に進行する光の光量を少なくすることができる。
【0152】
第12実施形態のタイヤにおいて、前記複数の突起部は、起点部から放射状に延びる複数の線状突起部を含んで構成された集合突起部を備えていることが好ましい。
この場合、境界面部に集合突起部が設けられており、当該集合突起部は、複数の線状突起部を含んで構成されている。これにより、境界面部に反射した光は、複数の線状突起部間で反射を繰り返すこととなる。
ところで、境界面部から反射した光が線状突起部の延びる方向と同じ方向に進行する場合、この光は線状突起部に当たることなく溝部の外側に進行することが考えられる。つまり、境界面部に設けられた線状突起部が全て同じ方向に延びている場合、タイヤを見る角度によっては、境界面部が明るく見えることが考えられる。
ここで、複数の線状突起部が起点部から放射状に延びている場合、境界面部に反射した光の方向によらず、この光を複数の線状突起部間で繰り返し反射させることができる。
【0153】
また、第12実施形態のタイヤにおいて、前記複数の突起部は、それぞれの前記境界面部からの高さが0.1mm以上1mm以下に設定されていると共に、前記複数の突起部は、隣接する当該突起部同士の間隔が0.1mm以上1mm以下に設定されていることが好ましい。
突起部の境界面部からの高さが0.1mm未満の場合は、境界面部に反射した光が複数の突起部間で反射する回数が減少することが考えられる。一方、突起部の境界面部からの高さが1mmよりも高くなる場合には、突起部に負荷がかかったときに、突起部と境界面部との境界部に応力が集中することが考えられる。ここで、突起部の境界面部からの高さが上記のように設定されている場合、タイヤの溝部の外側に進行する境界面部からの反射光の光量を少なくしつつ、突起部と境界面部との境界部における応力集中を抑制することができる。
また、隣接する突起部同士の間隔が0.1mm未満の場合は、当該突起部の成形が困難になる。一方、隣接する突起部同士の間隔が1mmよりも大きい場合には、境界面部に反射した光が複数の突起部間で反射する回数が減少することが考えられる。ここで、隣接する突起部同士の間隔が上記のように設定されている場合、突起部の成形を容易にしつつ、タイヤの溝部の外側に進行する境界面部からの反射光の光量を少なくすることができる。
【0154】
また、第12実施形態のタイヤにおいて、前記境界面部は、前記溝部の長手方向から見て前記溝部の内側でかつタイヤ径方向外側に凸となって湾曲している曲面部とされていることが好ましい。
この場合、境界面部のトレッド踏面側の部分において、突起部の突出方向を境界面部と直交する方向に近づけることができ、その結果、境界面部のトレッド踏面側の部分において、溝部の外側に進行する光の光量をより少なくすることができる。
【0155】
また、第12実施形態のタイヤにおいて、前記境界面部は、前記溝部の長手方向から見て前記トレッド踏面側から前記溝部の底部側に向かって傾斜している平面部とされていることが好ましい。
この場合、境界面部が曲面部とされている構成と比し、トレッド踏面と溝部との境界部を明確なものとし、溝部を深く見せることができる。
【0156】
また、第12実施形態のタイヤにおいて、前記複数の突起部は、前記溝部の底部側を構成する底面部及び当該底面部からタイヤ径方向外側に延びる側面部にさらに設けられていることが好ましい。
この場合、溝部の底部側を構成する底面部及び当該底面部からタイヤ径方向外側に延びる側面部に複数の突起部が設けられており、タイヤの溝部の外側に進行する境界面部からの反射光の光量をより少なくすることができる。
【符号の説明】
【0157】
1:ビード部、 2:サイド部、 3:トレッド部、 4:ビードコア、 5:カーカス、 6:ベルト、 6a,6b:ベルト補強層、 7:溝、 7a:溝底、 P:タイヤの最大幅位置、 H:タイヤの最大幅位置におけるタイヤの断面高さ(タイヤの最大幅高さ)、 P1:タイヤの最大幅高さの25%分タイヤ径方向内側の位置、 P2:トレッド踏面のタイヤ幅方向外側の位置、 A:タイヤの最大幅高さの25%分タイヤ径方向内側の位置からトレッド踏面のタイヤ幅方向外側の位置までの範囲、 10:タイヤ、 12:タイヤサイド部、 14,14A,14B:標章部、 16:文字領域、 20:パターン領域、 22:ベース部、 23A:第1頂部、 23B:第2頂部、 23C:第3頂部、 23WA:第1側壁面、 23WB:第2側壁面、 23WC:第3側壁面、 24:第1アスタリスク突起(突起)、 25A,27A:第1延出部(延出部)、 25B,27B:第2延出部(延出部)、 25C,27C:第3延出部(延出部)、 26:第2アスタリスク突起(突起)、 28A:第1頂部、 28B:第2頂部、 28C:第3頂部、 23WA:第1側壁面、 23WB:第2側壁面、 23WC:第3側壁面、 CE:タイヤ中心軸、 O1,O2:中心、 P:間隔、 L:延出長さ、 H1:突出高さ、 B1:底辺長さ