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特開2023-74969半導体記憶装置、及び、半導体記憶装置の制御装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074969
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】半導体記憶装置、及び、半導体記憶装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
   G11C 11/16 20060101AFI20230523BHJP
   G11C 7/14 20060101ALI20230523BHJP
   G11C 5/06 20060101ALI20230523BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20230523BHJP
   H10B 61/00 20230101ALI20230523BHJP
   H10N 50/10 20230101ALI20230523BHJP
【FI】
G11C11/16 230
G11C7/14
G11C5/06 100
H01L27/04 P
H01L27/04 B
H01L27/105 447
H01L43/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188194
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】521507497
【氏名又は名称】パワースピン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 浩
(72)【発明者】
【氏名】行川 敏正
(72)【発明者】
【氏名】荒木 悟
(72)【発明者】
【氏名】福田 悦生
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 哲郎
【テーマコード(参考)】
4M119
5F038
5F092
【Fターム(参考)】
4M119BB00
4M119CC05
4M119DD32
4M119DD45
4M119EE22
4M119EE27
4M119HH01
4M119HH04
4M119HH13
4M119KK01
5F038AV13
5F038AV18
5F038CD12
5F038DF05
5F092AC04
5F092AD25
5F092DA03
5F092GA01
(57)【要約】
【課題】情報の読み出し時における配線寄生抵抗の影響を低減し、メモリセルの配置可能な領域の拡大を図る。
【解決手段】半導体記憶装置は、抵抗状態を記憶可能な抵抗変化型記憶素子とスイッチとを備えるメモリセル(MC1~MCm)を複数有するメモリセルアレイと、抵抗変化型記憶素子から情報を読み出すために、メモリセルアレイ内において選択されたメモリセルからの測定信号と参照信号とを比較して、抵抗状態を判定する読み出し判定回路(25)と、メモリセルアレイ内におけるメモリセルの選択位置に基づいて、参照信号のレベルを補正する参照信号補正部(81)と、を備える。
【選択図】図8

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗状態を記憶可能な抵抗変化型記憶素子とスイッチとを備えるメモリセルを複数有するメモリセルアレイと、
前記抵抗変化型記憶素子から情報を読み出すために、前記メモリセルアレイ内において選択された前記メモリセルからの測定信号と参照信号とを比較して、抵抗状態を判定する読み出し判定回路と、
前記メモリセルアレイ内における前記メモリセルの選択位置に基づいて、前記参照信号のレベルを補正する参照信号補正部と、を備える半導体記憶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体記憶装置であって、
前記メモリセルアレイは、複数の領域を備え、
前記参照信号補正部は、選択されたメモリセルの存在する前記領域の位置に応じて、前記参照信号のレベルを補正する、半導体記憶装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体記憶装置であって、
前記参照信号補正部は、前記参照信号のレベルが、前記抵抗変化型記憶素子が高抵抗状態である場合の前記測定信号と、前記抵抗変化型記憶素子が低抵抗状態である場合の前記測定信号との間になるように補正する、半導体記憶装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体記憶装置であって、
前記参照信号補正部は、
可変抵抗部を備え、
前記メモリセルの選択位置に基づいて前記可変抵抗部の抵抗値を変化させることにより前記参照信号のレベルを補正する、半導体記憶装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体記憶装置であって、
前記参照信号補正部は、
導通状態を切替可能なダミーセルを複数備え、
前記メモリセルの選択位置に基づいて前記ダミーセルを選択し、選択された前記ダミーセルを経由して前記参照信号を前記読み出し判定回路に入力させることで、前記参照信号のレベルを補正する、半導体記憶装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体記憶装置であって、
前記ダミーセルが、ワードライン及びソースラインの一方のラインに沿って配列される場合には、
前記参照信号補正部は、選択された前記メモリセルと、前記ワードライン及びソースラインの他方のラインと接続された前記ダミーセルを導通状態とすることで、前記参照信号のレベルを補正する、半導体記憶装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体記憶装置であって、
前記ダミーセルは、前記メモリセルが備える前記スイッチとは異なる他のスイッチである、半導体記憶装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体記憶装置であって、
前記メモリセルの選択位置は、前記メモリセルアレイ内における前記選択された前記メモリセルの物理的配置である、半導体記憶装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体記憶装置であって、
前記メモリセルの選択位置は、前記メモリセルの選択に用いられるアドレス信号、プリデコード信号、及びデコード信号のうちの少なくとも1つにより示される、半導体記憶装置。
【請求項10】
請求項8に記載の半導体記憶装置であって、
前記メモリセルアレイ内において、前記メモリセルの前記物理的配置と論理的配置とは一致しておらず、
前記参照信号補正部は、さらに、前記メモリセルの選択位置について前記論理的配置を前記物理的配置に変換し、変換により得られた前記物理的配置に基づいて、前記参照信号のレベルを補正する、半導体記憶装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の半導体記憶装置であって、
上記参照信号補正部は、さらに、前記メモリセルの個体差に応じて前記参照信号を補正する、半導体記憶装置。
【請求項12】
請求項11に記載の半導体記憶装置であって、
前記個体差は、電圧依存特性、または、温度依存特性のいずれかを含む、半導体記憶装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の半導体記憶装置であって、
前記メモリセルアレイは、複数のサブモジュールからなり、
前記参照信号補正部は、
前記サブモジュールと対応して複数設けられ、
前記サブモジュール内の前記メモリセルの選択位置、及び、前記サブモジュールと前記サブモジュールの外に設けられる前記参照信号の生成装置との位置関係に基づいて、前記参照信号を補正する、半導体記憶装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の半導体記憶装置であって、
半導体集積回路に実装される、半導体記憶装置。
【請求項15】
抵抗状態を記憶可能な抵抗変化型記憶素子とスイッチとを備えるメモリセルを複数有するメモリセルアレイと、前記メモリセルアレイ内において選択された前記メモリセルからの測定信号と参照信号とを比較する読み出し判定回路と、を備える半導体記憶装置の制御装置であって、
前記制御装置は、
前記メモリセルアレイ内における前記メモリセルの選択位置に基づいて、参照信号生成部から出力される前記参照信号のレベルの補正を行い、
前記読み出し判定回路に対して、前記メモリセルアレイ内において選択された前記メモリセルからの前記測定信号と、前記参照信号とを比較させ、
前記読み出し判定回路による比較結果に基づいて、前記抵抗変化型記憶素子の抵抗状態を判定する、半導体記憶装置の制御装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗変化型記憶素子を用いた半導体記憶装置、及び、半導体記憶装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体記憶装置において、記録情報の保持に電源が必要な揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory))に替えて、記録情報の保持に電源が不要な不揮発性メモリ(例えば、MRAM(Magneto-resistive Random Access Memory))を用いることが検討されている。
【0003】
MRAMは抵抗変化型記憶素子として強磁性体素子を備え、強磁性体素子の抵抗状態の違いを利用して情報を記憶する。このような抵抗変化型記憶素子から情報を読み出す場合には、所定の強磁性体素子を選択し、選択された強磁性体素子の抵抗値を測定する。そして、強磁性体素子が高抵抗状態または低抵抗状態のいずれかであるかを判定することにより、記憶された情報を読み出すことができる。
【0004】
特許文献1には、記憶素子として強磁性体素子を用いた半導体記憶素子に関する技術が開示されている。
【0005】
この技術によれば、2次元に配列されたメモリセルにより構成されるメモリセルアレイにおいて、所定のメモリセルの抵抗状態を判定することにより、記憶された情報の読み出しを行う。抵抗状態の判定は、メモリセルの配列の列方向の端部に設けられ、測定信号と参照信号との2つの入力を受け付けて両者を比較して読み出し値を決定する読み出し判定回路(例えば、センスアンプ)により行われる。
【0006】
具体的には、メモリアレイの同一行内に参照レベルに設定されたメモリセルを配置し、読み出し判定回路は、一方の端子から情報の読み出し対象のメモリセルからの測定信号を受け付ける。同時に、メモリアレイの同一行内の参照レベルに設定されたメモリセルからの参照信号を他方の端子において受け付けると、測定信号と参照信号との大きさを比較する。その結果、メモリセルの抵抗状態が判定され、記憶された情報の読み出しを行うことができる。
【0007】
同様に強磁性体素子を用いた半導体記憶素子に関する技術が、特許文献2及び3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3873055号公報
【特許文献2】特許第6749021号公報
【特許文献3】特許第2856848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、抵抗変化型記憶素子においては、抵抗値の測定時における電流経路の配線寄生抵抗が比較的大きく(例えば、数kΩ)、抵抗状態の判定に影響を与えるおそれがある。また、半導体製造プロセスの微細化に伴い、記憶素子が小さくなるほど配線寄生抵抗の影響は大きくなる。そのため、抵抗値を測定するために配線寄生抵抗の影響を抑制しようとすると、半導体記憶装置全体の構成やサイズの小型化が制限されてしまう。
【0010】
例えば、特許文献1に開示された技術が、1セル方式、すなわち、メモリセルが単独で動作する構成に適用される場合には、測定信号と参照信号の両者において、データ線DL及びソース線SLの配線寄生抵抗の影響を受ける。
【0011】
強磁性体素子は高抵抗状態と低抵抗状態との間における測定電流の差が極めて小さい。そのため、読み出し判定回路により比較可能なレベルに参照メモリセルの抵抗値を設定しても、配線寄生抵抗の影響によりメモリセルの抵抗状態を適切に判定することが難しい。
【0012】
また、特許文献1に開示された技術を、メモリセルが対をなして動作する2セル方式の構成に適用する場合には、参照メモリも対をなして設定される。詳細には、対をなす参照メモリセルの抵抗値を高抵抗状態と低抵抗状態とに設定し、これらの参照メモリセルからの出力の中間値を参照信号として用いる。
【0013】
しかしながら、参照メモリセルを高抵抗状態及び低抵抗状態の2つの抵抗状態を設定するためには、対をなす参照メモリセルのそれぞれにデータ線とソース線とを設ける必要がある。さらに、高抵抗状態と低抵抗状態との中間値を得るためにデータ線とソース線とが並列接続されるので、全体として配線寄生抵抗が小さくなる。そのため、読み出し判定回路に入力される測定信号と参照信号における配線寄生抵抗の影響が同等とならないため、測定信号の補正が必要になるおそれがある。
【0014】
このように、記憶素子として強磁性体素子を用いた半導体記憶装置においては、高抵抗状態と低抵抗状態との間における測定電流の差が極めて小さいため、配線寄生抵抗の影響をより受けやすいので、抵抗状態の判定に使用する参照信号のレベル範囲が限定されてしまう。そのため、配線寄生抵抗の影響を受けずにメモリセルの読み出しを行おうとすると、メモリセルの配置可能な領域に制限が生じてしまうという課題がある。
【0015】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、情報の読み出し時における配線寄生抵抗の影響を低減し、メモリセルの配置可能な領域の拡大を図る半導体記憶装置、及び、半導体記憶装置の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願発明の一態様の半導体記憶装置は、抵抗状態を記憶可能な抵抗変化型記憶素子とスイッチとを備えるメモリセルを複数有するメモリセルアレイと、抵抗変化型記憶素子から情報を読み出すために、メモリセルアレイ内において選択されたメモリセルからの測定信号と参照信号とを比較して、抵抗状態を判定する読み出し判定回路と、メモリセルアレイ内におけるメモリセルの選択位置に基づいて、参照信号のレベルを補正する参照信号補正部と、を備える。
【0017】
本願発明の他の一態様の半導体記憶装置の制御装置は、抵抗状態を記憶可能な抵抗変化型記憶素子とスイッチとを備えるメモリセルを複数有するメモリセルアレイと、メモリセルアレイ内において選択されたメモリセルからの測定信号と参照信号とを比較する読み出し判定回路と、を備える半導体記憶装置に対して、メモリセルの記憶内容を読み出す。制御装置は、メモリセルアレイ内におけるメモリセルの選択位置に基づいて、参照信号生成部から出力される参照信号のレベルの補正を行い、読み出し判定回路に対して、メモリセルアレイ内において選択されたメモリセルからの測定信号と、参照信号とを比較させ、読み出し判定回路による比較結果に基づいて、抵抗変化型記憶素子の抵抗状態を判定する。
【発明の効果】
【0018】
本願発明の一態様の半導体記憶装置によれば、参照信号補正部がメモリセルの選択位置に応じて参照信号のレベルを補正する。ここで、読み出し判定回路の一方の入力である測定信号は、メモリセルの選択位置に応じた配線寄生抵抗の影響を受けている。これに対して、読み出し判定回路の他方の入力である参照信号において、参照信号補正部によりメモリセルの選択位置に応じた補正がされることで、選択位置に応じた配線寄生抵抗の影響を受けている。
【0019】
このように、読み出し判定回路に入力される測定信号及び参照信号の双方において、メモリセルの選択位置に応じた同等の配線寄生抵抗の影響が含まれることになる。その結果、測定信号と参照信号との比較時における配線寄生抵抗の影響を低減できるので、メモリセルの配置可能な領域の拡大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、比較例の半導体記憶装置を構成するメモリセルの概略構成図である。
図2A図2Aは、複数のメモリセルにより構成されるメモリセルアレイ及びその周辺の概略回路構成図である。
図2B図2Bは、読み出し判定回路の具体的構成の一例である。
図2C図2Cは、読み出し判定回路の具体的構成の一例である。
図2D図2Dは、読み出し判定回路の具体的構成の一例である。
図2E図2Eは、読み出し判定回路の具体的構成の一例である。
図3図3は、メモリセルアレイの周辺の概略回路構成図である。
図4図4は、半導体記憶装置の概略構成図である。
図5図5は、読み出し判定回路の周辺の概略回路構成図である。
図6図6は、読み出し電流と選択されたメモリセルの位置との関係を示すグラフである。
図7図7は、読み出し電圧と選択されたメモリセルの位置との関係を示すグラフである。
図8図8は、第1実施形態における読み出し判定回路の周辺の概略回路構成図である。
図9図9は、読み出し電流と選択されたメモリセルの位置との関係を示すグラフである。
図10図10は、第2実施形態における読み出し判定回路の周辺の概略回路構成図である。
図11図11は、ロウデコーダの論理回路である。
図12図12は、ワード線が配置される領域とロウデコーダの入出力との関係を示す論理対応表である。
図13図13は、可変抵抗部の詳細な回路構成図である。
図14図14は、読み出し電流と選択されたメモリセルの位置との関係を示すグラフである。
図15図15は、読み出し電圧と選択されたメモリセルの位置との関係を示すグラフである。
図16図16は、第3実施形態におけるサブアレイ方式のメモリセルアレイの全体構成図である。
図17図17は、メモリセルアレイの回路構成図である。
図18図18は、読み出し電流と選択されたメモリセルの位置との関係の一例を示すグラフである。
図19図19は、読み出し電圧と選択されたメモリセルの位置との関係の一例を示すグラフである。
図20図20は、読み出し電流と選択されたメモリセルの位置との関係の他の一例を示すグラフである。
図21図21は、読み出し電圧と選択されたメモリセルの位置との関係の他の一例を示すグラフである。
図22図22は、第4実施形態において利用されるダミーセルの概略構成図である。
図23図23は、メモリセルの読み出し動作の説明図である。
図24図24は、メモリセルアレイの構成の回路構成図の一例である。
図25図25は、メモリセルアレイの構成の回路構成図の他の一例である。
図26図26は、第5実施形態の半導体記憶装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。実施の形態の説明において、個数や量などに言及する場合や特に記載がある場合等を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数や量などに限定するものではない。実施形態を示す図面において、同一の名称は、同一部分または相当部分を示すものとする。また、実施形態の説明において、同一の名称を付した部分等に対しては、重複する説明は繰り返さずに省略する。
【0022】
まず、本願発明に係る実施形態の説明の前に、本願発明に係る参照信号補正部を備えない比較例の半導体記憶装置の構成及び動作について説明する。
【0023】
(比較例)
図1は、比較例の半導体記憶装置を構成するメモリセルの概略構成図である。この図には、MOS型のトランジスタ11(Metal-oxide-semiconductor Transistor)と強磁性体素子12(MTJ:Magnetic Tunneling Junction)とで構成される抵抗変化型のメモリセルMC(Memory Cell)が示されている。
【0024】
トランジスタ11は、ゲート(G)、ソース(S)、及び、ドレイン(D)を備える半導体スイッチである。ゲート(G)への電圧の印加により、ソース(S)とドレイン(D)との間の導通を制御する。トランジスタ11は、ゲート(G)がワード線WL(Word Line)と接続され、ソース(S)がソース線SL(Source Line)と接続され、ドレイン(D)が強磁性体素子12の一端と接続されている。強磁性体素子12の他端はデータ線DL(Date Line)と接続される。MOS型のトランジスタ11は、メモリセルMCが備えるスイッチの一例であるが、これに限らず、半導体記憶装置に用いられる種々のスイッチであってもよい。
【0025】
強磁性体素子12は、磁気抵抗メモリ(MRAM: Magneto-resistive Random Access Memory)型の記憶素子に相当し、磁化方向を可変的に記憶可能に構成されている。強磁性体素子12の抵抗状態は、磁化方向に応じて低抵抗状態(平行状態)又は高抵抗状態(反平行状態)に変化する。強磁性体素子12の抵抗値を測定して抵抗状態を判定することにより、メモリセルMCの記憶内容を読み出すことができる。
【0026】
図2Aは、複数のメモリセルMCにより構成されるメモリセルアレイ及びその周辺の概略回路構成図である。この図には、二次元配列された複数のメモリセルMCにより構成されるメモリセルアレイ21、及び、その周辺の回路構成が示されている。二次元配列されたメモリセルMCにおいては、同行のメモリセルMCは同じワード線WLに接続され、同列のメモリセルMCは同じデータ線DL及びソース線SLに接続される。図右方から左方に向かってワード線WL0~WLm-1が設けられ、図下方から上方に向かってデータ線DL0~DLn-1及びソース線SL0~SLn-1が設けられている。
【0027】
ワード線WL0~WLm-1は行制御部22と接続されており、データ線DL0~DLn-1及びソース線SL0~SLn-1は列制御部23と接続されている。行制御部22及び列制御部23は、ワード線WLのいずれか、並びに、データ線DLのいずれか及びソース線SLのいずれかを制御することで、読み書きの対象となるメモリセルMCを選択する。
【0028】
行制御部22は、ロウ(Row)デコーダとワードドライブとを備える。ロウデコーダは、読み書き対象のメモリセルMCを示す信号を受け付けると、読み書き対象のメモリセルMCのワード線WLを求める。ここで、ワードドライブはワード線WL~WLm-1と接続されるアドレスバスを備え、アドレスバスと対応するアドレス信号の入力を受け付ける。そのため、ロウデコーダは、求めたワード線WLと対応するアドレス信号をワードドライブに出力すると、ワードドライブにおいて所定のアドレスバスに電圧が印加される。このような動作によって、所定のワード線WLが選択される。
【0029】
列制御部23は、カラム(Column)デコーダとカラムスイッチとを含む。カラムスイッチはメモリセルアレイ21側のデータ線DL及びソース線SLと、反対側(書き込みドライブ24又は読み出し判定回路25)の端子(DL端子及びSL端子)との接続を制御する。列制御部23が読み書き対象のメモリセルMCを示す信号を受け付けると、カラムデコーダが、読み書き対象のメモリセルMCのデータ線DL及びソース線SLを求める。そして、カラムデコーダは、求めたデータ線DL及びソース線SLと接続されたカラムスイッチを導通させる。このような動作により。メモリセルアレイ21側において選択されるメモリセルMCと接続されるデータ線DL及びソース線SLが、反対側(書き込みドライブ24又は読み出し判定回路25)の端子と接続される。
【0030】
このように、行制御部22により所定のワード線WLに電圧が印加され、列制御部23によりメモリセルアレイ21側と反対側(書き込みドライブ24又は読み出し判定回路25)との間でデータ線DL及びソース線SLとが接続される。これにより、所定のメモリセルMCが選択されて、情報の読み書き制御が行われる。
【0031】
所定のメモリセルMCに対するデータの書き込み制御は、以下のようにして行われる。まず、行制御部22により、書き込み対象のメモリセルMCと接続されるワード線WLに電圧が印加されると、選択されたメモリセルMC内のトランジスタ11が導通される。そして、列制御部23により、メモリセルアレイ21側のいずれかのデータ線DL及びソース線SLと、書き込みドライブ24のデータ線DL及びソース線SLとがそれぞれ接続される。
【0032】
このような状態において、書き込みドライブ24によりデータ線DLをソース線SLよりも高いレベルに設定することにより、選択されたメモリセルMCの強磁性体素子12は高抵抗状態となる。書き込みドライブ24によりデータ線DLをソース線SLよりも低いレベルに設定することにより、選択されたメモリセルMCの強磁性体素子12は低抵抗状態となる。このようにして、書き込みドライブ24は、選択されたメモリセルMCに対しての情報の書き込み処理を行う。なお、データ線DLとソース線SLとの電位関係と、強磁性体素子12の抵抗状態(高抵抗状態/低抵抗状態)の関係については、上述の説明に限らない。強磁性体素子12とデータ線DL及びソース線SLとの接続関係により強磁性体素子12の抵抗状態が定まるため、データ線DLとソース線SLとの電位関係と、抵抗状態(高抵抗状態/低抵抗状態)との関係については、上述の説明とは異なり逆であっても良い。
【0033】
次に、所定のメモリセルMCからのデータの読み出し制御について説明する。行制御部22により、書き込み対象のメモリセルMCと接続されるワード線WLに電圧が印加されると、選択されたメモリセルMC内のトランジスタ11が導通される。そして、列制御部23により、読み出し判定回路25の測定信号の入力端子と、メモリセルアレイ21において選択されたメモリセルMCと接続されたデータ線DLとが接続される。なお、メモリセルアレイ21の参照信号の入力端子は、参照信号生成部26と接続されている。
【0034】
このような状態において、読み出し判定回路25は、選択されたメモリセルMCから入力される測定信号、及び、参照信号生成部26から入力される参照信号を受け付ける。読み出し判定回路25は、測定信号と参照信号のレベルを比較し、比較結果に応じてメモリセルMCの強磁性体素子12の抵抗状態を判定する。これにより、メモリセルMCに記憶されている情報を読み出すことができる。なお、読み出し判定回路25は、電圧値または電流値のいずれを取得して比較してもよい。
【0035】
ここで、書き込み動作と読み出し動作では、ワード線WL、データ線DL、及び、ソース線SLのそれぞれにおける最適電圧(電流)が異なる。そのため、最適なレンジの電圧(電流)が用いられるように、メモリセルアレイ21の周辺に配置するトランジスタ11を、高電圧用または低電圧用で使い分けて設計する必要がある。
【0036】
このように、読み出し判定回路25を用いて、メモリセルMCから出力される電流値または電圧値のいずれかを参照値(参照電流または参照電圧)と比較して、メモリセルMCの抵抗状態を判定する。以下においては、電流値が用いられる場合を電流モードと称し、電圧値が用いられる場合を電圧モードと称する。電流モードである場合の読み出し判定回路25の一例の構成としては、センスアンプが考えられる。例えば、センスアンプは、入力端子を介して受け付ける測定信号と参照信号の電流の大小関係に応じて、ハイレベル/ローレベルの電圧を出力する。その結果、この電圧レベルによりメモリセルMCの抵抗状態を判定できる
【0037】
読み出し判定回路25は、センスアンプに限られず、例えば、図2B~2Eに示されるような構成であってもよい。図2B、2Dに示した読み出し判定回路25は、電流モードにおいて使用され、入力される電流値を比較する回路であり、図2C、2Eに示した読み出し判定回路25は、電圧モードにおいて使用され、入力された電圧値を比較する回路である。
【0038】
図2Bの構成によれば、読み出し判定回路25は、電流比較回路251であってもよい。電流比較回路251は、入力1と入力2の入力電流値を比較し、例えば入力1の電流値が入力2の電流値よりも大きい場合には、ハイレベルの電圧が出力される。
【0039】
図2Cの構成によれば、読み出し判定回路25は、電圧比較回路252であってもよい。電圧比較回路252は、入力1と入力2の入力電圧値を比較し、例えば入力1の電圧値が入力2の電圧値よりも大きい場合には、ハイレベルの電圧が出力される。
【0040】
図2Dの構成によれば、読み出し判定回路25は、電流比較回路253と電圧比較回路254とが直列に接続されて構成されている。電流比較回路253は、2つの入力端子を介して入力される電流値に応じて、2つの出力端子のそれぞれに大小関係を維持した電圧値を出力する。そして、電圧比較回路254は、2つの入力端子を介して入力される電圧値の大小関係に応じて、ハイレベル/ローレベルの電圧を出力する。
【0041】
図2Eの構成によれば、読み出し判定回路25は、3つの電圧比較回路255~257が直列に接続されて構成されている。電圧比較回路255、256は、それぞれ、2つの入力端子を介して入力される電圧値に応じて、2つの出力端子のそれぞれに大小関係を維持した電圧値を出力する。そして、電圧比較回路257は、2つの入力端子を介して入力される電圧値の大小関係に応じて、ハイレベル/ローレベルの電圧を出力する。
【0042】
このように、図2D、2Eに示す読み出し判定回路25では、複数段の比較回路を組み合わせて構成されることで、2つの入力値を比較して出力する判定回路構成として、比較感度、動作速度、及び、消費電力等の向上と、これらの最適化とを図ることができる。
【0043】
図3は、メモリセルアレイ21の周辺の概略回路構成図である。この図においては、可読性のために、メモリセルアレイ21として選択された1つのメモリセルMCが代表的に示されている。また、以下に説明するように、点線で示されたメモリセルアレイ21の周囲の高耐圧素子領域31においては、電圧耐性の高い高電圧用の半導体素子を用いる必要がある。高耐圧素子領域31の外部においては、低電圧用の半導体素子を用いればよい。なお、高電圧用の半導体素子が用いられる高耐圧素子領域31と、低電圧用の半導体素子が用いられる領域との境界については、回路方式や回路構成等から合理的、効率的要素等により決定されるものであって、この図の例に限定されない。
【0044】
高耐圧素子領域31の図右方においては、白丸で示された出力端子と接続された列制御部23のカラムスイッチが設けられている。列制御部23(カラムスイッチ)が制御されることで、選択されるメモリセルMCと接続されるデータ線DLと読み出し判定回路25の測定信号の入力端との間の接続が制御される。また、読み出し判定回路25の出力端にはラッチ回路32が設けられている。ラッチ回路32は、読み出し判定回路25の出力結果を後段で利用可能にするために設けられる保持回路である。この図の例においては増幅器(アンプ)を備えていないが、増幅器を備えていてもよい。
【0045】
高耐圧素子領域31の図左方においては、白丸で示された3つの端子、具体的には、制御信号の受付端子、及び、書き込み処理に用いられる2つの書き込み端子が設けられている。制御端子が制御信号を受け付けている間、選択されたメモリセルMCからのデータの読み出し、又は、選択されたメモリセルMCへのデータの書き込みが行われる。2つの書き込み端子には、構成331~333を経た書き込みデータDin、及び、書き込みデータDinの反転データSinが入力される。データの書き込み処理時においては、これらの2つの書き込み端子の入力に応じて、メモリセルMCの強磁性体素子12の抵抗状態を変化させる。
【0046】
詳細には、2つの書き込み端子の前段(図左方)では、ラッチ回路331と、2つの論理積演算器332、333が設けられ、書き込みデータDin、及び、書込許可信号WEの入力を受け付ける。論理積演算器332は、ラッチ回路331を介して入力される書き込みデータDin、及び、書込許可信号WEを受け付けて論理和処理を行う。このようにすることで、書込許可信号WEがオンである場合に、書き込みデータDinがデータ線DLに入力される。
【0047】
論理積演算器333は、反転された書き込みデータDin、及び、書込許可信号WEを受け付けて論理和処理を行う。このようにすることで、書込許可信号WEがオンである場合に、書き込みデータDinの反転データSinがソース線SLに入力される。
【0048】
高耐圧素子領域31の内部においてデータ線DLには、レベルシフタ34D、制御付インバーター35D(クロックインバータ)、及び、制御スイッチ36Dが設けられている。レベルシフタ34D及び制御付インバーター35Dが設けられていることにより、書き込みデータDinの大きさによらず、データ線DLに最適なレベルの信号を入力するとともに、逆方向の電流の発生を抑制できる。
【0049】
同様に、ソース線SLには、レベルシフタ34S、インバーター35S、及び、制御スイッチ36Sが設けられている。ワード線WLには、レベルシフタ34W、及び、インバーター35Wが設けられている。
【0050】
制御信号が伝達される制御線CLにおいては、レベルシフタ34C、インバーター351C、352Cが設けられている。ここで、データ線DL及びソース線SLに設けられる制御スイッチ36D、36Sは、ゲートに正の電圧を印加するとオンとなるN型MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)と、ゲートに負の電圧を印加するとオンとなるP型MOSFETとの組み合わせにより構成されている。インバーター351Cから出力される制御信号をN型MOSFETに入力させるとともに、インバーター352Cから出力される制御信号を反転させてP型MOSFETに入力させることにより、制御信号がハイレベルの場合に制御スイッチ36D、36Sが導通される。
【0051】
さらに、データ線DLと列制御部23との間にはトランジスタスイッチ37Dが設けられ、ソース線SLの接地端にはトランジスタスイッチ37Sが設けられている。インバーター352Cから出力される制御信号により、トランジスタスイッチ37D、37Sは制御される。そして、制御信号がオンである場合に、測定信号が列制御部23を介して読み出し判定回路25の測定信号の入力端子に入力されるので、読み出し判定回路25が測定信号と参照信号との比較を行うことで、情報の読み出し処理を行うことができる。
【0052】
ここで、高耐圧素子領域31の構成に着目すれば、データ線DL、ソース線SL、ワード線WL、及び制御線CLのレベルを合わせるために、レベルシフタ34D、34S、34C、34Wを用いる必要がある。高耐圧素子領域31においては、レベルシフタ34D、34S、34C、34Wにより電圧レベルが高められているため、半導体素子は高電圧用の部品を使用する必要がある。一方、高耐圧素子領域31の外部においては、低電圧用の半導体素子を用いてもよい。このように、レベルシフタ34の配置に応じて、半導体記憶装置の全体のサイズ及び動作特性を設計する必要がある。
【0053】
図4は、半導体記憶装置の概略構成図である。半導体記憶装置41は、メモリセルアレイ21、行制御部22、列制御部23、書き込みドライブ24、読み出し判定回路25、参照信号生成部26、及び、入出力バッファ42を有する。入出力バッファ42は、半導体記憶装置41の全体を制御する上位コントローラとの間でやりとりする入出力データを一時的に記憶する。なお、上述のように、行制御部22はロウデコーダ及びワードドライブを備え、列制御部23はカラムデコーダ及びカラムスイッチを備える。
【0054】
ここで、メモリセルMCの記憶内容の読み出しは、メモリセルMCの強磁性体素子12が低抵抗状態か高抵抗状態かのいずれかであるかを判別することにより行われる。しかしながら、強磁性体素子12の抵抗値を測定して抵抗状態を判定する場合には、選択されるメモリセルMCのメモリセルアレイ21内の配置に応じて、配線寄生抵抗を考慮する必要がある。
【0055】
図5は、読み出し判定回路25の周辺の概略回路構成図である。この図においては、読み出し判定回路25から最も近い端(近端)にある1行目のメモリセルMC1と、最も遠い端(遠端)にあるm行目のメモリセルMCmとが代表例として示されている。
【0056】
太線矢印で示されるように、遠端のメモリセルMCmの読み出し時は、読み出し判定回路25から、データ線DL及びメモリセルMCmを介し、ソース線SLの近端の接地部までの配線に電流が流れる。すなわち、データ線DLの近端から遠端のメモリセルMCmまでの抵抗値RDLmと、ソース線SLの近端から遠端のメモリセルMCmまでの抵抗値RSLmとの和「RDLm+RSLm」が配線寄生抵抗となる。
【0057】
ここで、メモリセルMCmの読み出し時には、読み出し判定回路25による読み出し電流から測定抵抗値RMCを求め、メモリセルMCが高抵抗状態か低抵抗状態かを判定する。しかしながら、強磁性体素子12の抵抗値Rの評価において、測定抵抗値RMCには、強磁性体素子12の抵抗値だけでなく、配線寄生抵抗「RDL+RSL」が含まれてしまう。
【0058】
さらに、近端のメモリセルMC1の測定時においては、データ線DL及びソース線SLの配線寄生抵抗はゼロとなる。このように、メモリセルMCの配置に応じて配線寄生抵抗の大きさが異なるため、メモリセルMCの抵抗状態の判定を適切に行えないおそれがある。
【0059】
図6は、電流モードにおいて、読み出し判定回路25に入力される読み出し電流と選択されたメモリセルMCの位置との関係を示すグラフである。この図には、メモリセルMCの読み出し時において、読み出し判定回路25に入力される電流値ICELLと、選択されたメモリセルMCの読み出し判定回路25からの距離との関係が示されている。
【0060】
横軸には、読み出し判定回路25に入力される電流値ICELLが示されている。縦軸には、読み出し対象のメモリセルMCの読み出し判定回路25からの距離が示されている。なお、縦軸においては、図5の近端が下段部に相当し、図5の遠端が中段部に相当する。そして、上段部には、理論的に読み出し可能なメモリセルMCの配置の最も遠い端(最遠端)が示されている。
【0061】
このグラフでは、選択されたメモリセルMCが高抵抗状態である場合に読み出し判定回路25に入力される電流値がICELL1で示され、低抵抗状態である場合の電流値がICELL0で示されている。電流値は抵抗値と反比例の関係であるため、全体として、高抵抗状態の電流値ICELL1は、低抵抗状態の電流値ICELL0よりも小さい。読み出し判定回路25からの距離が遠くなるほど(図上方であるほど)配線寄生抵抗が大きくなるので、高抵抗状態の電流値ICELL1及び低抵抗状態の電流値ICELL0は、読み出し判定回路25からの距離が遠くなるほど、小さくなる。
【0062】
ここで、読み出し電流値ICELLが参照電流Irefよりも大きいか否かにより、メモリセルMCの抵抗状態が判定される。そのため、例えば近端において、参照電流Irefは、高抵抗状態の電流値ICELL1(A点)と低抵抗状態の電流値ICELL0(B点)との間である必要がある。同様に、遠端において、参照電流Irefは、高抵抗状態の電流値ICELL1(C点)と低抵抗状態の電流値ICELL0(D点)との間である必要がある。
【0063】
また、同じ参照電流Irefを用いてメモリセルMCの抵抗状態を判定する場合には、理論的に最も遠いメモリセルMCの配置位置(最遠端)は以下のように定められる。任意のメモリセルMCの配置において、参照電流Irefは、高抵抗状態の電流値ICELL1と低抵抗状態の電流値ICELL0との間の値である必要がある。そのため、近端での高抵抗状態の電流値ICELL1(A点)は、理論的に読み出し可能な最遠端の低抵抗状態の電流値ICELL0(E点)よりも小さくなる必要がある。このように定められる位置より遠く(E点よりも上方)にメモリセルMCが配置されてしまうと、低抵抗状態の電流値ICELL0は、近端の高抵抗状態の電流値ICELL1よりも小さくなってしまい、同じ参照電流Irefを用いて抵抗状態を判定することはできなくなる。
【0064】
そして、同じ参照電流Irefを用いて抵抗状態を判定する場合、「RMC1-RMC0」と等しくなる「RDLf+RDSf」が、理想状態での最遠端(理論的最遠端)となる。また、同じ参照電流Irefを用いて抵抗状態を判定する場合、「RDLf+RDSf」が、論理的に設計可能な最遠端の配線寄生抵抗である。
【0065】
さらに、安定的にメモリセルMCの読み出しを行うためには、配線寄生抵抗「RDL+RSL」は、測定抵抗値RMCの高抵抗状態と低抵抗状態との差「RMC1-RMC0」の半分程度であるのが望ましい。そのため、「(RMC1-RMC0)/2=RDLm+RSLm」となる位置を、メモリセルMCが配置可能な遠端として定義する。なお、近端では配線寄生抵抗はゼロとみなせるため、「RDL1+RSL1=0」となる。
【0066】
ここで、参照電流Irefの上限及び下限について検討すると以下のとおりである。近端に配置されるメモリセルMCについては、高抵抗状態の電流値ICELL1(A点)と低抵抗状態の電流値ICELL0(B点)とを判別するためには、参照電流IrefはA点とB点との間に存在する必要がある。また、遠端に配置されるメモリセルにおいて、高抵抗状態の電流値ICELL1(C点)と低抵抗状態の電流値ICELL0(D点)とを判別するためには、参照電流IrefはC点とD点との間に存在する必要がある。
【0067】
そのため、近端から遠端までの間に並設されるメモリセルMCの抵抗状態を判別するためには、上限参照電流Iref_maxがD点により定まり、下限参照電流Iref_minがA点により定まる。そして、上限参照電流Iref_maxと下限参照電流Iref_minとの中間値を、抵抗状態の判定に用いる参照電流Irefとして定める。
【0068】
これにより、参照電流Irefが高抵抗状態の電流値ICELL1と低抵抗状態の電流値ICELL0との中間に位置することで、読み出し判定回路25からの距離によらず参照電流Irefと高抵抗状態の電流値ICELL1及び低抵抗状態の電流値ICELL0との差が所定値(「Iref_max-Iref」または、「Iref-Iref_min」)よりも大きくなる。これにより、メモリセルMCの抵抗状態の判定において精度向上を図ることができる。
【0069】
なお、このように定められた参照電流Irefを用いて、仮に、メモリセルMCが遠端を超えて最遠端まで配列される場合について検討すれば、以下のとおりである。参照電流Irefと低抵抗状態の電流値ICELL0とが一致する点Fに応じた距離までに配置されるメモリセルMCについては、抵抗状態を判定できる。しかしながら、F点以遠に配置されるメモリセルMCについては、参照電流Irefが高抵抗状態の電流値ICELL1及び低抵抗状態の電流値ICELL0を上回るため、抵抗状態を判定することはできない。
【0070】
図7は、電圧モードにおいて、読み出し電圧と選択されたメモリセルMCの位置との関係を示すグラフである。この図は、図6に示されるグラフと対応し、読み出し判定回路25が電流値に替えて電圧値を読み出す例を示す。そして、横軸には、読み出し判定回路25に入力される電流値ICELLに替えて、読み出し判定回路25に入力されるデータ線DLの電圧値VDLが示されている。読み出し判定回路25で用いられる参照信号は、参照電圧Vrefである。
【0071】
この図に示されるように、電圧値VDLは抵抗値に応じた値となるため、全体として、高抵抗状態の電圧値VDL1は低抵抗状態の電圧値VDL0よりも大きい。また、読み出し判定回路25からの距離が遠くなるほど、配線寄生抵抗が大きくなり、高抵抗状態の電圧値VDL1及び低抵抗状態の電圧値VDL0は大きくなる。
【0072】
同様に、参照電圧Vrefの上限及び下限について検討すると以下のとおりである。近端に配置されるメモリセルMCにおいて、高抵抗状態の電圧値VDL1(A点)と低抵抗状態の電圧値VDL0(B点)とを判別するためには、参照電圧VrefはA点とB点との間に存在する必要がある。また、遠端に配置されるメモリセルMCにおいて、高抵抗状態の電圧値VDL1(C点)と低抵抗状態の電圧値VDL0(D点)とを判別するためには、参照電圧VrefはC点とD点との間に存在する必要がある。
【0073】
そのため、近端から遠端までの間に並設されるメモリセルMCの抵抗状態を判別するためには、上限参照電圧Vref_maxはA点により定まり、下限参照電圧Vref_minはD点により定まる。また、上限参照電圧Vref_maxと下限参照電圧Vref_minとの中間値が、参照電圧Vrefとして用いられる。
【0074】
なお、仮に、メモリセルMCが遠端を超えて最遠端まで配列される場合について検討すれば以下のとおりである。参照電圧Vrefと高抵抗状態の電圧値VDL0との交点Fにより定められる距離までに配置されるメモリセルMCについては、抵抗状態を判定できる。しかしながら、F点以遠に配置されるメモリセルMCについては、参照電圧Vrefが高抵抗状態の電圧値VDL1及び低抵抗状態の電圧値VDL0を下回るため、抵抗状態を判定することはできない。
【0075】
以上が比較例におけるメモリセルMCの読み出し処理の説明となる。以下に示される本願発明の実施形態によれば、データ線DLとソース線SLの配線寄生抵抗の影響を低減するために、参照信号補正部が設けられる。これにより、読み出し判定回路25からより遠くに配置されるメモリセルMCについて抵抗状態を判定できるようになる。
【0076】
(第1実施形態)
比較例においては、図6図7に示すように、メモリセルMCを中段の遠端までしか配置できず、上段の最遠端まで配置できない。第1実施形態においては、参照信号補正部を備えることにより、比較例における上段の最遠端にまでメモリセルMCを配置できるようになる。なお、本実施形態に係る半導体記憶装置は、比較例で説明した半導体記憶装置41と基本的な構成が略同等であるため、以下、図4に示した半導体記憶装置41を本実施形態に係る半導体記憶装置41とし、主に、半導体記憶装置41に設けられた読み出し判定回路25の周辺の回路構成に着目して説明する。
【0077】
図8は、第1実施形態に係る半導体記憶装置41における読み出し判定回路25の周辺の概略回路構成図である。この図によれば、図5に示された比較例の構成と比較すると、参照信号補正部である可変抵抗部81が設けられている。なお、後述のように、図7に示された比較例での最遠端までメモリセルMCは配置できるため、本実施形態の遠端は、比較例の最遠端に相当するものとする。また、図示された例は、電圧モードで動作するものとする。すなわち、読み出し判定回路25は、2つの入力端子から入力される入力電圧の大小関係に応じて、ハイレベル/ローレベルの電圧値を出力する。
【0078】
可変抵抗部81は、選択されたメモリセルMCの位置情報(選択位置情報)Lを受け付けると、選択位置情報Lに示された選択されるメモリセルMCの位置に応じて抵抗値を変化させる。選択位置情報Lは、例えば、ワード線WLを示す情報である。読み出し判定回路25から選択されるメモリセルMCまでの距離が遠いほど、可変抵抗部81の抵抗値が大きくなるように変化する。選択位置情報Lは、例えば、行制御部22の制御に用いられるワード線WLのアドレス信号である。
【0079】
なお、メモリセル以外の構成、すなわち、行制御部22、読み出し判定回路25、参照信号生成部26、可変抵抗部81、及び、その他の制御に係る構成の全部又は一部を、1つの制御装置82により実現してもよい。なお、制御装置82は、例えば、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータを備え、読み出し判定回路25や可変抵抗部81の電子部品を制御することにより実現できる。マイクロコンピュータを電子部品のコントローラとして機能させるためには、コンピュータプログラム(制御プログラム)がマイクロコンピュータにインストールされて実行される。これにより、汎用のマイクロコンピュータは、制御装置82において所定のプログラムを実行するコントローラとして機能する。
【0080】
図9は、読み出し判定回路25に入力される読み出し電流と選択されたメモリセルMCの位置との関係を示すグラフであり、比較例の図6と対応する。なお、この図においては、上段の図6では最遠端として示された位置が、遠端として示される。これは、本実施形態では、当該位置において、メモリセルMCの読み出しが可能であるためである。
【0081】
この図に示されるように、参照電流Irefは、高抵抗状態の電流値ICELL1と低抵抗状態の電流値ICELL0との中間値となるように、読み出し判定回路25からの距離に応じて大きさが変化する。これは、参照電流Irefがこの中間値となるように、可変抵抗部81の抵抗値が変化するためである。
【0082】
このように参照電流Irefを設定することで、上段に示される遠端、すなわち、比較例の最遠端に相当する位置であっても、参照電流Irefは、高抵抗状態の電流値ICELL1(G点)と低抵抗状態の電流値ICELL0(E点)との間に位置する。そのため、読み出し電流値ICELLと参照電流Irefとを比較することにより、メモリセルMCの抵抗状態を判定できる。
【0083】
その結果、読み出し判定回路25からより遠くまでメモリセルMCを配置できるので、データ線DLの配線寄生抵抗(RDL)及びソース線SLの配線寄生抵抗(RSL)に起因するメモリセルMCの配置の制限を低減できる。具体的には、比較例ではメモリセルMCを配置できなかった図6の最遠端(図9の遠端に相当)でもメモリセルMCが配置可能となり、メモリセルアレイの面積の拡大を図ることができる。
【0084】
さらに、参照電流Irefが、高抵抗状態の電流値ICELL1と低抵抗状態の電流値ICELL0との中間に位置することで、読み出し判定回路25からの距離によらず参照電流Irefと高抵抗状態の電流値ICELL1及び低抵抗状態の電流値ICELL0との差が一定となる。これにより、メモリセルMCの抵抗状態の判定において精度向上を図ることができる。
【0085】
なお、本実施形態においては、読み出し判定回路25は電流モードで動作して、メモリセルMCの抵抗状態を判断するために、メモリセルMCからの出力電流と、参照電流との大小関係を判定する例について説明した。具体的には、読み出し判定回路25として、図2Bに示したように、電流比較回路251からなる読み出し判定回路25や、図2Dに示したように、2段構成の読み出し判定回路25を適用した例を説明した。このような構成において、可変抵抗部81によって読み出し判定回路25に入力される参照電流の値が変更された。
【0086】
このような構成に限らず、読み出し判定回路25は電圧モードで動作して、メモリセルMCの抵抗状態を判断するために、メモリセルMCからの出力電圧と、参照電圧との大小関係を判定してもよい。具体的に、読み出し判定回路25としては、図2Cに示したように、電圧比較回路253からなる読み出し判定回路25や、図2Eに示したような、3段構成の読み出し判定回路25を適用してもよい。このような構成においては、読み出し判定回路25に入力される参照電圧が変更されることになる。
【0087】
また、電流モードにおいて、可変抵抗部81は、読み出し判定回路25の内部に配置されることにより、読み出し判定回路25と一体となって構成されてもよい。すなわち、図2Bの例では、電流比較回路251と一体となって構成し、また、図2Dの例では、入力端子と接続される電流比較回路253と一体となって構成することができる。また、電圧モードにおいては、読み出し判定回路25に入力される参照電圧を変化させる構成は、図2Cの例では、電圧比較回路252と一体となって構成し、また、図2Eの例では、入力端子と接続される電圧比較回路255と一体となって構成してもよい。
【0088】
(第2実施形態)
第1実施形態においては、図8に示されるように、可変抵抗部81の制御に用いる選択位置情報Lとしてワード線WDの位置を示すアドレス信号が用いられた。しかしながら、このアドレス信号を用いるためには、選択位置情報Lの発生源として行制御部22のワードドライブと同等のアドレスバスを備える構成が必要となり、配線及び回路規模が大きくなってしまう。そこで、第2実施形態においては、メモリセルアレイ21を複数の領域に分割し、選択されるメモリセルMCが含まれる領域に応じて可変抵抗部81の抵抗値を段階的に切り替えることにより、選択位置情報Lの発生源や可変抵抗部81の構成を簡略化する。
【0089】
図10は、第2実施形態における読み出し判定回路25の周辺の概略回路構成図である。この図によれば、メモリセルアレイ21は4つの領域に分割され、選択されたメモリセルMCが存在する領域に応じて可変抵抗部81の抵抗値を変化させる。なお、領域の選択方法は図11図12を用いて説明し、可変抵抗部81の構成は図13を用いて説明する。
【0090】
この例においては、メモリセルアレイ21において、列方向に2048個のメモリセルMCが並設され、それぞれのメモリセルMCと接続されるワード線WL(WL0~WL2047)が設けられている。ワード線WLに付される番号は、近端側から遠端側に向かって大きくなるように付される。
【0091】
そして、メモリセルMCの配置領域が、列方向において4つの領域101~104に分割されている。第1領域101はワード線WL0~WL511が含まれ、第2領域102はワード線WL512~WL1023が含まれ、第3領域103はワード線WL1024~WL1535が含まれ、第4領域104はワード線WL1536~WL2047が含まれる。
【0092】
データ線DL及びソース線SLの配線寄生抵抗は、4つの領域101~104のそれぞれにおいて、「RDL/4」及び「RSL/4」となる。なお、領域101~104と対応して示されたa109[0]~a109[3]は、領域101~104の選択に用いられるアドレスバスであって、詳細については図11及び図12を用いて説明する。
【0093】
ここで、メモリセルMCを選択する場合には、行制御部22(図10において不図示)においては、ロウデコーダが対応するアドレス入力信号に基づいて一意的に定まる選択されるメモリセルMCと接続されるワード線WLを求め、そのワード線WLと対応するワードドライブより電圧を印加する。このようなロウデコーダによる一連の処理は、デコード処理と称される。
【0094】
本実施形態においては、領域101~104のいずれかを選択する信号として、デコード処理において生成される信号の一部(プリデコード信号)を用いる。詳細には、デコード処理を階層分割した回路から情報の一部(プリデコード信号)を選択位置情報Lとして用いて、可変抵抗部81の抵抗値が制御される。以下では、このようなプリデコード信号を用いた処理について、図11~13を用いて説明する。
【0095】
図11は、ロウデコーダの論理回路である。ロウデコーダ111においては、上位制御部のアドレスバスa0~a10からの入力値に応じて、選択されるメモリセルMCと接続されるワード線WLが決定される。なお、この図においては、上位制御部は、アドレスバスa0~a10に加えて、相補となるアドレス信号a0b~a10bを備えるが、以下では相補となるアドレス信号a0b~a10bの動作の説明については記載を省略する。
【0096】
ロウデコーダ111は、ハイレベル(H)/ローレベル(L)の2値を持つアドレス信号a0~a10の全ての組み合わせ(211)の2048個から一意的にワード線1本を選択する信号を生成する回路である。この回路は、論理積演算器112~116を含む2階層に分割して構成されている。
【0097】
1階層目の3入力論理積演算器112は、アドレスa0/a0b~a2/a2bの入力の全ての組み合わせ(2x2x2)に対応するため8個必要となり、出力も8信号となる。演算器113、及び、演算器114も同様の構成である。2入力論理積演算器115は、アドレスa9/a9b~a10/a10bの入力の全ての組み合わせ(2x2)に対応するため、4個で出力4信号となる。
【0098】
2階層目の4入力論理積演算器116は、入力信号の全ての組み合わせ(8x8x8x4)により2048個となる。このデコード処理により一意的にワード線を選択することが出来る。
【0099】
ここで、演算器115から出力されるa109(プリデコード信号)が、選択位置情報Lとして可変抵抗部81の制御に用いられる。演算器115から出力されるパラメータa109(プリデコード信号)は、図12に示されるような関係が成立する。
【0100】
図12は、選択されるワード線WLが配置される領域101~104とロウデコーダ111の入出力との関係を示す論理対応表である。この表においては、ロウデコーダ111の入力側のアドレスバスと選択されるワード線WLとの論理関係が示されている。なお、論理積演算器115から出力されるa109[0]―[3]の4信号を用いて、領域101~104のいずれかが選択される。
【0101】
第4領域104が選択される場合には、論理積演算器115の入力においてa10がハイレベルかつa9がハイレベルとなる。なお、a8-a0は第4領域104内における選択されるメモリセルMCの配置を示すレベルとなる。このような場合には、論理積演算器115から出力されるa109において、a109[3]がハイレベルとなり、その他(a109[0]-a109[3])がローレベルとなる。
【0102】
第3領域103が選択される場合には、論理積演算器115の入力においてa10がハイレベルかつa9がローレベルとなる。このような場合には、a109[2]がハイレベルとなり、その他(a109[0]、a109[1]及びa109[3])がローレベルとなる。
【0103】
第2領域102が選択される場合には、論理積演算器115の入力においてa10がローレベルかつa9がハイレベルとなる。このような場合には、a109[1]がハイレベルとなり、その他(a109[0]、a109[2]及びa109[3])がローレベルとなる。
【0104】
第1領域101が選択される場合には、論理積演算器115の入力においてa10がローレベルかつa9がローレベルとなる。このような場合には、a109[0]がハイレベルとなり、その他(a109[1]-a109[3])がローレベルとなる。
【0105】
このように、論理積演算器115から出力されるa109[0]~[3]の4ビットの情報は領域101~104と対応する。そこで、可変抵抗部81は、a109[0]~[3]を選択位置情報Lとして受け付け、選択位置情報Lに応じて可変抵抗部81の抵抗値が制御される。
【0106】
図13は、可変抵抗部81の詳細な回路構成図である。この図によれば、4つの抵抗素子131~134が直列に接続され、抵抗素子131~134のそれぞれにはスイッチ135~138が並列に設けられている。抵抗素子131~134の抵抗値RSTEPは、データ線寄生抵抗RDLとソース線寄生抵抗RSLとの和を4で除した値「(RDL+RSL)/4」である。
【0107】
ここで、論理積演算器115から出力されるa109に含まれる4ビットの情報に応じて、スイッチ135~138が処理される。詳細には、a109[0]がハイレベルである場合には、スイッチ135~138がオンとなる。a109[1]がハイレベルである場合には、スイッチ136~138がオンとなり、スイッチ135がオフとなる。a109[2]がハイレベルである場合には、スイッチ137、138がオンとなり、スイッチ135、136がオフとなる。a109[3]がハイレベルである場合には、スイッチ138がオンとなり、スイッチ135~137がオフとなる。
【0108】
a109[0]がハイレベルである場合、すなわち、選択されたメモリセルMCが第1領域101に含まれる場合には、スイッチ135~138がオンとなる。このような場合には、参照信号は抵抗素子131~134を通らずに読み出し判定回路25に入力される。そのため、可変抵抗部81の全体の抵抗値は0となる。
【0109】
a109[1]がハイレベルである場合、すなわち、選択されたメモリセルMCが第2領域102に含まれる場合には、スイッチ136~138がオンとなる。このような場合には、参照信号は抵抗素子132~134を通らずに抵抗素子131を通り読み出し判定回路25に入力される。そのため、可変抵抗部81の全体の抵抗値は「RSTEP」となる。
【0110】
a109[2]がハイレベルである場合、すなわち、選択されたメモリセルMCが第3領域103に含まれる場合には、スイッチ137、138がオンとなる。このような場合には、参照信号は抵抗素子133、134を通らずに抵抗素子131、132を通り読み出し判定回路25に入力される。そのため、可変抵抗部81の全体の抵抗値は「2RSTEP」となる。
【0111】
a109[3]がハイレベルである場合、すなわち、選択されたメモリセルMCが第4領域104に含まれる場合には、スイッチ138がオンとなる。このような場合には、参照信号は抵抗素子134を通らずに抵抗素子131~133を通り読み出し判定回路25に入力される。そのため、可変抵抗部81の全体の抵抗値は「3RSTEP」となる。
【0112】
ここで、可変抵抗部81の抵抗値が大きくなるほど、参照電流Irefは小さく、参照電圧Vrefは大きくなる。そのため、選択されるメモリセルMCが第1領域101に位置する場合には、抵抗値が大きく、参照電流Irefは小さく、参照電圧Vrefは大きくなる。選択されるメモリセルMCが第4領域104に位置する場合には、抵抗値が小さく、参照電流Irefは大きく、参照電圧Vrefは小さくなる。
【0113】
また、可変抵抗部81が受け付ける選択位置情報Lは、第1実施形態のようにワード線WL0~2047の2048種類の値ではなく、a109[0]~[3]の4種類の値となり、可変抵抗部81の抵抗値は4段階で制御される。そのため、可変抵抗部81の制御に用いるアドレスバスの情報が少なくなり、可変抵抗部81及びその周辺回路の構成を簡略化することができる。
【0114】
なお、可変抵抗部81はこの図に示されたような複数の抵抗素子131~134を直列接続した構成に限らず、同等の抵抗変化が実現可能な抵抗素子や、参照信号に対して同等の補正が可能な回路で構成されても良い。
【0115】
図14は、電流モードにおいて、読み出し判定回路25に入力される読み出し電流と選択されたメモリセルMCの位置との関係を示すグラフであり、比較例の図6、及び、第1実施形態の図9と対応する。
【0116】
選択されるメモリセルMCが領域101~104のうちのいずれかの領域に含まれる場合には、その領域内において参照電流Irefは一定である。さらに、同一領域内の参照電流Irefは、第1領域101、第2領域102、第3領域103、第4領域104の順に小さくなる。これは、選択されるメモリセルMCが第1領域101に含まれる場合には、可変抵抗部81の抵抗値が小さく、選択されるメモリセルMCが第4領域104に含まれる場合には、可変抵抗部81の抵抗値が大きいためである。
【0117】
このように、ロウデコーダ111の論理積演算器115から出力されるプリデコード信号を、選択されたメモリセルMCが含まれる領域を示す選択位置情報Lとして参照電流Irefの補正に用いる。このようにして求められた参照電流Irefは、第1領域101~第4領域104のいずれの領域においても、高抵抗状態の電流値ICELL1と、低抵抗状態の電流値ICELL0の間に存在する。そのため、読み出し電流値ICELLと参照電流Irefと比較することにより、メモリセルMCの抵抗状態を判定することができる。
【0118】
図15は、電圧モードにおいて、読み出し判定回路25に入力される読み出し電圧と選択されたメモリセルMCの位置との関係を示すグラフであり、比較例の図7と対応する。また、上述の読み出し電流を示した図14とも対応し、読み出し判定回路25が電流値に替えて電圧値を読み出しているので、横軸には電圧値VDLが示されている。
【0119】
選択されるメモリセルMCが領域101~104のうちのいずれかの領域に含まれる場合には、その領域内において参照電圧Vrefは一定である。さらに、同一領域内の参照電圧Vrefは、第1領域101、第2領域102、第3領域103、第4領域104の順に大きくなる。これは、選択されるメモリセルMCが第1領域101に含まれる場合には、可変抵抗部81の抵抗値が小さく、選択されるメモリセルMCが第4領域104に含まれる場合には、可変抵抗部81の抵抗値が大きいためである。
【0120】
このように、ロウデコーダ111の論理積演算器115から出力されるプリデコード信号を、選択されたメモリセルMCが含まれる領域を示す選択位置情報Lとして参照電圧Vrefの補正に用いる。このようにして求められた参照電圧Vrefは、第1領域101~第4領域104のいずれの領域においても、高抵抗状態の電圧値VDL1と、低抵抗状態の電圧値VDL0の間に存在する。そのため、読み出し電圧値VDLと参照電圧Vrefと比較することにより、メモリセルMCの抵抗状態を判定することができる。
【0121】
なお、本実施形態においては、可変抵抗部81は、ロウデコーダ111におけるプリデコード信号であるa109[0]~[3]a109を用いて、参照信号のレベルを補正した。第1実施形態においては、可変抵抗部81の抵抗値の制御は、ロウデコーダ111の入力側のアドレスバスと接続されるアドレス信号を用いる例について説明したが、これに限らない。本実施形態において図11に示される論理積演算器116から出力されるワード線(WL0~WL2047)を示すデコード信号を用いることも可能である。
【0122】
(第3実施形態)
第3実施形態においては、メモリセルアレイが複数のサブアレイにより構成されている場合について説明する。なお、複数のサブアレイによりメモリセルアレイが構成されることは、サブアレイ方式と称されることがある。
【0123】
図16は、第3実施形態におけるサブアレイ方式のメモリセルアレイの全体構成図である。なお、この図において、図右方の列制御部23、書き込みドライブ24、読み出し判定回路25、参照信号生成部26、及び、入出力バッファ42は、図2A及び図4に示された構成と同等であるため、説明を省略する。なお、参照信号生成部26とともに可変抵抗部81が設けられている。
【0124】
メモリセルアレイ161は、4つのサブアレイ162A~162Dを備える。サブアレイ162A~162Dのそれぞれは、二次元に配列される複数のメモリセルMCにより構成される。メモリセルMCは、列方向においてはローカルデータ線LDL、及び、ローカルソース線LSLと接続され、行方向においてはワード線WLと接続される。サブアレイ162A~162Dのそれぞれには行制御部163A~163Dが設けられており、ワード線WLの選択は、いずれかのサブアレイ162において行制御部163A~163Dにより行われる。
【0125】
列方向において、サブアレイ162Aと162Bとは階層スイッチ164Aを介して対をなして配置され、サブアレイ162Cと162Dとは階層スイッチ164Bを介して対をなして配置される。列制御部23と、階層スイッチ164A及び164Bとはグローバルデータ線GDL、及び、グローバルソース線GSLを介して接続される。
【0126】
階層スイッチ164Aは、グローバルデータ線GDLと、サブアレイ162A又は162Bのローカルデータ線LDLとの接続、及び、グローバルソース線GSLと、サブアレイ162A又は162Bのローカルソース線LSLとの接続を制御する。同様に、階層スイッチ164Bは、グローバルデータ線GDLと、サブアレイ162C又は162Dのローカルデータ線LDLとの接続、及び、グローバルソース線GSLと、サブアレイ162C又は162Dのローカルソース線LSLとの接続を制御する。
【0127】
階層スイッチ164A及び164Bが制御されることにより、グローバルデータ線GDLと、サブアレイ162A~162Dのいずれかのローカルデータ線LDLとの接続、及び、グローバルソース線GSLと、サブアレイ162A~162Dのいずれかのローカルソース線LSLとの接続が制御される。
【0128】
このように、グローバルデータ線GDL及びグローバルソース線GSLと、サブアレイ162A~162Dのいずれかのローカルデータ線LDL、及び、ローカルソース線LSLとが接続されることで、選択されるメモリセルMCが含まれるサブアレイ162が選択される。そして、階層スイッチ164Aと164Bにより接続されたサブアレイ162に併設された行制御部163が、所定のワード線WLに電圧を印加することで、メモリセルMCが選択される。
【0129】
複数のサブアレイ162は、高さ方向に積層されて階層的に構成されてもよい。例えば、サブアレイ162Aと162B、及び、サブアレイ162Cと162Dとを積層して構成してもよい。階層構造とすることにより、グローバルデータ線GDL、及び、グローバルソース線GSLの配線長を短くでき、配線寄生抵抗を小さくすることができる。
【0130】
図17は、図16に示されたメモリセルアレイ161の回路構成図である。ここで、列方向に配策されるグローバルデータ線GDLにおいて、サブアレイ162A~162Dのそれぞれにおける、列方向の配策部分の配線寄生抵抗の抵抗値はRGDLであるものとする。サブアレイ162A~162D内に設けられるローカルデータ線LDL及びローカルソース線LSLの配線寄生抵抗の抵抗値はRLDL及びRLSLであるものとする。
【0131】
階層スイッチ164Aは、グローバルデータ線GDLの途中点と、サブアレイ162A、162Bのローカルデータ線LDLの端部のうちの階層スイッチ164Aと対向する側の端部(サブアレイ162Aの図左端及びサブアレイ162Bの図右端)と接続可能に構成されている。なお、階層スイッチ164Aと接続されるグローバルデータ線GDLの途中点は、サブアレイ162Aと162Bとの間に位置する。
【0132】
同様に、階層スイッチ164Bは、グローバルデータ線GDLの読み出し判定回路25が設けられていない側の端部(図左端)と、サブアレイ162C、162Dのローカルデータ線LDLの端部のうちの階層スイッチ164Bと対向する側の端部(サブアレイ162Cの図左端及びサブアレイ162Dの図右端)と接続可能に構成されている。
【0133】
この図においては、サブアレイ162A内のメモリセルMCが選択された状態が示されている。そのため、階層スイッチ164Aは、サブアレイ162Aと接続されており、階層スイッチ164Bは、サブアレイ162C、162Dのいずれとも接続されていない。
【0134】
グローバルデータ線GDLの配線寄生抵抗の抵抗値は、読み出し判定回路25から階層スイッチ164A、164Bまでの配線距離に応じて定まる。そのため、グローバルデータ線GDLにおいて、読み出し判定回路25と階層スイッチ164Aとの間の配線寄生抵抗の抵抗値がRGDLであり、階層スイッチ164Aと164Bとの間の配線寄生抵抗の抵抗値が2RGDLである。
【0135】
サブアレイ162A~162Dにおいては、ローカルデータ線LDLとローカルソース線LSLとの間に複数のメモリセルMCが並設されている。ローカルソース線LSLは、階層スイッチ164A、164Bが設けられる側で接地される。
【0136】
ここで、サブアレイ162Aについて、配列長を2分割することで構成される領域Xmのうち、階層スイッチ164Aと接続される側を領域Xm000と称し、反対側を領域Xm001と称する。同様に、サブアレイ162Bについて、階層スイッチ164Aと接続される側を領域Xm010と称し、反対側を領域Xm011と称する。サブアレイ162Cについて、階層スイッチ164Bと接続される側を領域Xm100と称し、反対側をXm101と称する。サブアレイ162Dについて、階層スイッチ164Bと接続される側を領域Xm110と称し、反対側を領域Xm111と称する。
【0137】
サブアレイ162A~162DのメモリセルMCの選択位置に応じた配線寄生抵抗は以下のとおりである。選択されるメモリセルMCがサブアレイ162Aに含まれる場合には、メモリセルMCの選択位置が領域Xm000の階層スイッチ164Aとの接続端(左端)側に近いほど配線寄生抵抗が小さい。選択位置が領域Xm001の階層スイッチ164Aと接続されない側の端部(右端)に近いほど配線寄生抵抗が大きい。
【0138】
同様に、サブアレイ162Bにおいては、メモリセルMCの選択位置が、領域Xm010の階層スイッチ164Aとの接続端(右端)に近いほど配線寄生抵抗が小さい。選択位置が、領域Xm011の階層スイッチ164Aと接続されていない側の端部(左端)に近いほど、配線寄生抵抗が大きい。
【0139】
サブアレイ162Cにおいては、メモリセルMCの選択位置が領域Xm100の階層スイッチ164Bとの接続端(左端)に近いほど配線寄生抵抗が小さく、選択位置が領域Xm101の階層スイッチ164Bと接続されていない側の端部(右端)に近いほど配線寄生抵抗が大きい。サブアレイ162Dにおいては、メモリセルMCの選択位置が領域Xm110の階層スイッチ164Bとの接続端(右端)に近いほど配線寄生抵抗が小さく、選択位置が領域Xm111の階層スイッチ164Bと接続されていない側の端部(左端)に近いほど配線寄生抵抗が大きい。
【0140】
すなわち、配線寄生抵抗に基づいて、選択されるメモリセルMCの読み出し判定回路25からの距離とは、物理的な配置位置による距離ではなく、接地までの電流経路の距離となる。遠端及び近端を検討すれば、以下のようになる。サブアレイ162Aの領域Xm000の階層スイッチ164Aとの接続端、及び、サブアレイ162Bの領域Xm010の階層スイッチ164Aとの接続端が近端となる。一方、サブアレイ162Cの領域Xm101の階層スイッチ164Bと接続されない側の端部、及び、サブアレイ162Dの領域Xm111の階層スイッチ164Bと接続されない側の端部が遠端となる。
【0141】
図18は、電流モードにおいて、読み出し判定回路25に入力される読み出し電流と選択されたメモリセルMCの位置との関係を示すグラフであり、比較例の図6、第1実施形態の図9、及び、第2実施形態の図14と対応する。
【0142】
この図においては、縦軸においては、メモリセルMCが配置される位置として、読み出し判定回路25からの距離が比較的近いサブアレイ162A、162Bが下側に示され、読み出し判定回路25からの距離が比較的遠いサブアレイ162C、162Dが上側に示される。
【0143】
読み出し判定回路25からの距離は、図下側から上側に向かって、領域Xm000(サブアレイ162A)及び領域Xm010(サブアレイ162B)、領域Xm001(サブアレイ162A)及び領域Xm011(サブアレイ162B)、領域Xm100(サブアレイ162C)及び領域Xm110(サブアレイ162D)、領域Xm101(サブアレイ162C)及び領域Xm111(サブアレイ162D)の順に長くなる。
【0144】
なお、以下では、説明の簡略化のために、サブアレイ162A及び162Cを用いて構成を説明する。サブアレイ162B及び162Dについては、それぞれ、サブアレイ162A及び162Cの説明を援用できる。
【0145】
この図に示されるように、サブアレイ162A(領域Xm000、Xm001)及び162C(領域Xm100、Xm101)のそれぞれにおいて、読み出し判定回路25からの距離が長くなるほど(図上方に配置されるほど)、配線寄生抵抗が大きくなるので、高抵抗状態の電流値ICELL1及び低抵抗状態の電流値ICELL0は小さくなる。
【0146】
図中段に示されるように、領域Xm001(サブアレイ162A)の遠端側と、領域Xm100(サブアレイ162C)の近端側とで、高抵抗状態の電流値ICELL1及び低抵抗状態の電流値ICELL0は連続しない。これは、図17に示されるように、領域Xm001(サブアレイ162A)の遠端側でメモリセルMCが選択される場合の配線寄生抵抗は「RGDL+RLDL+RLSL」であり、領域Xm100(サブアレイ162C)の近端側でメモリセルMCが選択される場合の配線寄生抵抗は「3RGDL」であり、両者の配線寄生抵抗が連続しないことに起因する。
【0147】
図18の例においては、「RLDL+RLSL>2RGDL」(すなわち、「RGDL+RLDL+RLSL>3RGDL」)が成立しており、Xm001(サブアレイ162A)の遠端側でメモリセルMCが選択される場合は、Xm100(サブアレイ162C)の近端側でメモリセルMCが選択される場合よりも配線寄生抵抗が大きい。そのため、高抵抗状態の電流値ICELL1及び低抵抗状態の電流値ICELL0の両者において、Xm001(サブアレイ162A)の遠端側は、Xm100(サブアレイ162C)の近端側よりも小さくなる。
【0148】
このような構成であっても、選択されるメモリセルMCが領域Xm000~111のいずれに配置されるかに応じて可変抵抗部81の抵抗値を変化させることにより、参照電流Irefを変化させる。高抵抗状態である場合の電流値ICELL1と、低抵抗状態である場合の電流値ICELL0との間に参照電流Irefが存在するようにすることで、任意の配置のメモリセルMCの抵抗状態の判定できる。なお、この図においては、参照電流Irefは3レベル(Xm000、Xm001~Xm100、Xm101)で変化しており、可変抵抗部81は少なくとも3つの抵抗部を備えればよい。
【0149】
図19は、電圧モードにおいて、本実施形態における読み出し電圧とメモリセル選択位置の関係を示す図であり、比較例の図7、及び、第2実施形態の図15に相当する。なお、図18に示される電流値ICELLは配線寄生抵抗に反比例していたが、この図に示される電圧値VDLは配線寄生抵抗に比例する。
【0150】
そのため、図上方に示されるサブアレイ162AでメモリセルMCが選択される場合、及び、図下方に示されるサブアレイ162CでメモリセルMCが選択される場合において、読み出し判定回路25からの距離が長くなるほど(図上方に配置されるほど)、配線寄生抵抗が大きくなるので、読み出し電圧値VDLが大きくなる。
【0151】
領域Xm001(サブアレイ162A)の遠端側でメモリセルMCが選択される場合は、領域Xm100(サブアレイ162C)の近端側でメモリセルMCが選択される場合よりも配線寄生抵抗が大きいので、電圧値VDLが大きくなる。
【0152】
図20は、電流モードにおいて、読み出し電流とメモリセル選択位置の関係を示す他の図であり、図21は、電圧モードにおいて、読み出し電圧とメモリセル選択位置の関係を示す他の図である。図20及び図21は、図18及び図19と対応する図である。
【0153】
図20及び図21に示される例においては、「RLDL+RLSL<2RGDL」(すなわち、「RGDL+RLDL+RLSL<3RGDL」)が成立しているものとする。そのため、図中段に示されるように、メモリセルMCが領域Xm001(サブアレイ162A)の遠端に設けられる場合は、領域Xm100(サブアレイ162C)の近端に設けられる場合よりも、配線寄生抵抗が小さくなる。
【0154】
その結果、図20においては、領域Xm001(サブアレイ162A)の遠端側でメモリセルMCが選択される場合は、領域Xm100(サブアレイ162C)の近端側でメモリセルMCが選択される場合よりも、配線寄生抵抗が小さいので、読み出し電流値ICELLが大きい。同じ理由により。図21においては、領域Xm001(サブアレイ162A)の遠端でメモリセルMCが選択される場合は、領域Xm100(サブアレイ162C)の近端側でメモリセルMCが選択される場合よりも、読み出し電圧値VDLが小さい。
【0155】
図18~21以外の例として、「RLDL+RLSL=2RGDL」(すなわち、「RGDL+RLDL+RLSL=3RGDL」)が成立する場合について検討すれば以下のとおりである。領域Xm001(サブアレイ162A)の遠端側でメモリセルMCが選択される場合と、領域Xm100(サブアレイ162C)の近端側でメモリセルMCが選択される場合とでは、配線寄生抵抗が等しい。そのため、図14及び図15の例と同様に、両者において読み出し電流値ICELL及び読み出し電圧値VDLが連続する。
【0156】
このように、選択されるメモリセルMCが領域Xm000~111のいずれに配置されているかに応じて段階的に可変抵抗部81の抵抗値を変化させることにより、参照電流Iref及び電圧値VDL1が段階的に補正される。そして、高抵抗状態である場合の電流値ICELL1と、低抵抗状態である場合の電流値ICELL0との間に参照電流Irefが存在すれば、任意の配置のメモリセルMCの抵抗状態を判定できる。同様に、高抵抗状態である場合の電圧値VDL1と、低抵抗状態である場合の電圧値VDL0との間に参照電圧Vrefが存在すれば、任意の配置のメモリセルMCの抵抗状態を判定できる。
【0157】
さらに、ローカルデータ線LDLの抵抗値RLDLとローカルソース線LSLのRLSLの和である「RLDL+RLSL」と、グローバルデータ線GDLの抵抗値の2倍である「2RGDL」との大小関係に基づいて、選択されるメモリセルMCが近端側のサブアレイ162Aに含まれる場合と、遠端側のサブアレイ162Cに含まれる場合とにおける読み出し電流値ICELL及び読み出し電圧値VDLとの連続性を変化させることができる。
【0158】
そのため、参照電流Iref及び参照電圧Vrefの設定値に制限がある場合には、「RLDL+RLSL」と「2RGDL」との関係を変化させることで、高抵抗状態の電流値ICELL1及び低抵抗状態の電流値ICELL0、並びに、高抵抗状態の電圧値VDL1及び低抵抗状態の電圧値VDL0の特性を変化させることで、メモリセルMCの抵抗状態を判定できる。
【0159】
(第4実施形態)
第1~第3実施形態においては、選択されるメモリセルMCの選択位置に応じて可変抵抗部81の抵抗値を変化させることで参照信号を補正したが、これに限らない。第4実施形態においては、可変抵抗部として強磁性体素子12を備えないダミーセルを用いて参照信号を補正する例について説明する。
【0160】
図22は、第4実施形態において利用されるダミーセルの概略構成図である。ダミーセルDCは、図1に示されるメモリセルMCと比較すると、強磁性体素子12が存在しておらず、データ線DLとトランジスタ11のドレイン(D)とが直接接続されている。そのため、トランジスタ11がオンである状態においては、データ線DLとソース線SLとの間において、ダミーセルDCは導通され、抵抗値はゼロとなる。
【0161】
図23は、ダミーセルDCを用いる場合のメモリセルMCの読み出し動作の説明図である。この図によれば、データ線DL及びソース線SLと接続されるメモリセルMCとは別に、ダミーセルDCが設けられている。ダミーセルDCは、ダミーデータ線DDL及びダミーソース線DSLと接続される。また、ダミーセルDCは、メモリセルMCと同様に列方向に複数が並設される。これらの複数のダミーセルDCが、可変抵抗部231として動作する。
【0162】
読み出し判定回路25は、測定信号の入力端子がメモリセルMCのデータ線DLと接続され、参照信号の入力端子が可変抵抗部231のダミーデータ線DDLと接続される。可変抵抗部231のダミーソース線DSLの読み出し判定回路25側の端部が、参照信号生成部26と接続される。そのため、参照信号生成部26から出力される参照信号は、可変抵抗部231(ダミーソース線DSL、ダミーセルDC及びダミーデータ線DDL)を介して読み出し判定回路25に入力される。なお、ダミーソース線DSLとダミーデータ線DDLの接続先は逆でもよい。
【0163】
ここで、所定のワード線WLに電圧を印加すると、対応するメモリセルMC及びダミーセルDCのトランジスタ11がオンとなる。このような場合には、参照信号生成部26において生成された参照信号は、導通されたダミーセルDCを介して読み出し判定回路25の他端に入力される。
【0164】
選択されたメモリセルMCと導通されたダミーセルDCとは同じワード線WLと接続されるため、測定信号に影響するデータ線DL及びソース線SLの配線寄生抵抗と、参照信号に影響するダミーデータ線DDL及びダミーソース線DSLの配線寄生抵抗は、共にRDL及びRSLとなる。このように、読み出し判定回路25に入力される測定信号及び参照信号に影響する配線寄生抵抗が略同じとなり、測定信号と参照信号との比較における配線寄生抵抗の影響を抑制することができる。
【0165】
図24は、ダミーセルDCを用いた場合におけるメモリセルアレイの回路構成図の一例である。メモリセルアレイ241は、サブアレイ242A、242Bにより構成されている。サブアレイ242A、242Bのそれぞれは、二次元に配列されたメモリセルMC、行制御部22A、22B、列制御部23A、23B、及び、読み出し判定回路25A、25Bを備える。そして、サブアレイ242A、242Bの両者において、列方向に並設されたダミーセルDCにより構成される可変抵抗部231A、231Bが設けられている。
【0166】
参照信号生成部26は、サブアレイ242A、242Bのダミーソース線DSLA、DSLBと接続されている。サブアレイ242A、242Bのそれぞれのダミーデータ線DDLA、DDLBは読み出し判定回路25A、25Bの参照信号の入力端子と接続されている。
【0167】
サブアレイ242AのメモリセルMCを読み出す場合には、行制御部22Aが所定のワード線WLに電圧を印加する。これにより、所定のメモリセルMCが選択されるとともに、選択されるメモリセルMCと同じ行のダミーセルDCが導通される。その結果、読み出し判定回路25Aに入力される測定信号及び参照信号における配線寄生抵抗を同程度にでき、抵抗状態の判定における配線寄生抵抗の影響を抑制することができる。サブアレイ242BのメモリセルMCを読み出す場合における制御も同様である。
【0168】
ここで、メモリセルMCの抵抗状態の判定方式としては、読み出し判定回路25に電流値ICELLが入力される電流検出方式と、電圧値VDLが入力される電圧検出方式とがある。一般に、電流値は電圧値よりも、可変抵抗部231の配置による影響を受けやすい。図24の例においては、可変抵抗部231A、231Bがサブアレイ242A、242Bのそれぞれに設けられ、選択されるメモリセルMCと導通されるダミーセルDCとが同じサブアレイ242に配置されるので、電流検出方式であっても抵抗状態の判定における配線寄生抵抗の影響を抑制できる。また、サブアレイ242毎に異なるワード線を同時に読み出すことが出来る。
【0169】
図25は、ダミーセルDCを用いた場合におけるメモリセルアレイの回路構成図の他の一例である。図24に示される構成と比較すると、サブアレイ242Aの可変抵抗部231Aが削除されている。そのため、サブアレイ242Bの可変抵抗部231Bのダミーデータ線DDLBは、さらにサブアレイ242Aの読み出し判定回路25Aと接続される。
【0170】
サブアレイ242BのメモリセルMCを読み出す場合の動作は、図24の例における動作と同等である。一方、サブアレイ242AのメモリセルMCを読み出す場合には、さらに、サブアレイ242Bの行制御部21Bが所定のワード線WLに電圧を印加することで、可変抵抗部231Bの所定のダミーセルDCを導通させる。これにより、サブアレイ242Aで選択されるメモリセルMCと、サブアレイ242Bで導通されるダミーセルDCとの配線寄生抵抗を同等とすることができる。その結果、読み出し判定回路25Aに入力される測定信号及び参照信号における配線寄生抵抗が同程度となり、抵抗状態の判定における配線寄生抵抗の影響を抑制することができる。
【0171】
上述のように、電流値は電圧値よりも可変抵抗部231の配置の影響を受けにくいため、電圧検出方式を用いることにより、図25の構成であってもメモリセルMCの抵抗状態の判定を適切に行うことができる。さらに、図25の例においては、可変抵抗部231をサブアレイ242毎に設ける必要がなく、メモリセルアレイ241毎に1つを設ければよくなるため、メモリセルアレイ241の構成を簡略化できる。ただし、サブアレイ242は同じ位置のワード線を選択する必要がある。
【0172】
本実施形態においては、図22に示されるように、ダミーセルDCは、メモリセルMCが備えるスイッチ素子であるトランジスタ11とは異なる他のトランジスタ11により構成されてもよい。このようなダミーセルDCは、メモリセルMCと構成を比較すると、強磁性体素子12を備えていない。そのため、図24、25に示されるように、メモリセルアレイ241内の所定の列において強磁性体素子12を設けないセルを形成することにより、当該列にダミーセルDCを構成することが可能となる。
【0173】
(第5実施形態)
第3実施形態においては、メモリセルアレイが複数のサブ構成(サブアレイ)により構成される場合に、サブアレイの配置に応じて参照信号を補正する例について説明したが、これに限らない。第5実施形態においては、サブ構成の配置に応じて参照信号の補正を行う補正部を各サブ構成が備える例について説明する。
【0174】
図26は、第5実施形態の半導体記憶装置の概略構成図である。この図によれば、半導体記憶装置261は、4つのサブモジュール262を含む。なお、サブモジュール262は、図4に示された半導体記憶装置41と略同等の構成であって、参照信号生成部26に替えて、配置に応じた参照信号の補正機能を備える参照信号補正部263を有する。
【0175】
参照信号補正部263のそれぞれは、サブモジュール262の外部に設けられる参照信号生成部26と接続される。参照信号補正部263は、サブモジュール262と参照信号生成部26との間の配線寄生抵抗の大きさに応じて、参照信号生成部26から出力される参照信号を補正する。
【0176】
このような構成とすることで、参照信号生成部26が共通化され、さらに、参照信号生成部26から出力される参照信号は、サブモジュール262のそれぞれにおいて参照信号補正部263により補正される。詳細には、参照信号補正部263は、半導体記憶装置261内のサブモジュール262の配置位置、及び、サブモジュール262と参照信号生成部26との間の配線寄生抵抗に基づいて参照信号を補正する。
【0177】
このように、参照信号補正部263をサブモジュール262毎に設けることで、参照信号生成部26は、サブモジュール262の配置位置によらず同一の補正信号を送信すればよくなるので、全体の構成を簡略化できる。
【0178】
また、アドレス信号の暗号化や物理配置のスクランブル化等により、デコード後の信号の論理順と選択されるメモリの物理的配置とは一致しない場合がある。しかしながら、サブモジュール262毎に参照信号補正部263を設け、参照信号補正部263が、暗号化信号の復号化に用いるデコード回路や、逆スクランブル回路を備えることにより、論理順と物理的配置とが一致するように参照信号を補正することができる。
【0179】
一般に、半導体記憶装置261においては、サブモジュール262毎やメモリセルMC毎に、プロセスばらつき(P)、電圧依存(V)、及び温度依存(T)を最適化した特性依存(PVT依存性)が異なる。サブモジュール262毎に設けられる参照信号補正部263が、これらの特性依存に基づいた補正を行うことで、特性依存に起因する設定、補正設定のテスト時の読み出し動作範囲の確認、及び、動作限界の確認等の工数の低減を図ることができる。
【0180】
上述した半導体記憶装置41、261は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やRF(Radio Frequency)回路等の電子回路が実装された半導体集積回路に実装するようにしてもよい。この場合、半導体記憶装置41、261は、ひとつの半導体集積回路上に他の電子回路とともに一体的に集積化させて実装するようにしてもよく、また、他の電子回路が設けられた既存の半導体集積回路上に別体として後から実装するようにしてもよい。また、同様に、半導体記憶装置に設けられる制御装置82を、メモリセルが設けられた既存の半導体集積回路上に別体として後から実装するようにしてもよい。
【0181】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内およびそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0182】
11 トランジスタ
12 強磁性体素子
21、161、241 メモリセルアレイ
25 読み出し判定回路
41、261 半導体記憶装置
81、231 可変抵抗部(参照信号補正部)
263 参照信号補正部

図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26