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特開2023-75008ウイルス性肺炎の防止又は処置における窒素含有ビスホスホネートとグルココルチコイドの併用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075008
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】ウイルス性肺炎の防止又は処置における窒素含有ビスホスホネートとグルココルチコイドの併用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/675 20060101AFI20230523BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230523BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230523BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230523BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20230523BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20230523BHJP
   A61K 31/663 20060101ALI20230523BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230523BHJP
   A61K 31/575 20060101ALI20230523BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20230523BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
A61K31/675
A61P43/00 121
A61P11/00
A61P31/14
A61P31/16
A61P31/20
A61K31/663
A61K31/573
A61K31/575
A61K31/56
A61K31/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022067657
(22)【出願日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】202111368291.6
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】511121045
【氏名又は名称】インスティテュート オブ ベーシック メディカル サイエンシズ チャイニーズ アカデミー オブ メディカル サイエンシズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ボ・ファン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA08
4C086DA10
4C086DA11
4C086DA12
4C086DA34
4C086DA38
4C086GA13
4C086GA14
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA59
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZA59
4C086ZB33
4C086ZC75
(57)【要約】
【課題】COVID-19のための非従来型の処置戦略を探求すること。
【解決手段】ウイルス性肺炎の防止又は処置における窒素含有ビスホスホネートとグルココルチコイドの併用が提供される。具体的には、コロナウイルス感染の処置又は軽減において使用するための窒素含有ビスホスホネートとグルココルチコイドの組合せが提供され、窒素含有ビスホスホネートは、パミドロネート、アレンドロネート、リセドロネート、イバンドロネート、ゾレドロネート、ミノドロネート及びインカドロネートからなる群から選択される。グルココルチコイドは、デキサメタゾン、リメキソロン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、ヒドロコルチゾン、モメタゾン、フルチカゾン、ベクロメタゾン、フルニソリド、トリアムシノロン、プロピオン酸フルチカゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド及びフロ酸モメタゾンからなる群から選択される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドの組合せ物であって、
組合せ物が、ウイルス性肺炎を防止又は処置するために使用され、
窒素含有ビスホスホネートが、アレンドロネート、パミドロネート、リセドロネート、イバンドロネート、ゾレドロネート、ミノドロネート及びインカドロネートのいずれか1つ又はそれらの組合せから選択され、
ウイルスが、コロナウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パラインフルエンザウイルス、ヒト片肺ウイルス、ヘンドラウイルス、ニパウイルス、風疹ウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、レオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、及びそれらの変異株のいずれか1つ又はそれらの組合せから選択され、
ここで、コロナウイルスが、コロナウイルス科のウイルス又はその変異株、好ましくはコロナウイルス属のウイルス又はその変異株であり、より好ましくはHCoV-229E又はその変異株、HCoV-OC43又はその変異株、HCoV-NL63又はその変異株、HCoV-HKU1又はその変異株、SARS-CoV又はその変異株、SARS-CoV2又はその変異株、及びMERS-CoV又はその変異株のいずれか1つから選択され、
好ましくは、組合せ物が、次の剤形、注射剤、スプレー剤、エアロゾル剤、点鼻薬、経口薬剤、及び粘膜投与に適した剤形のいずれか1つ又はそれらの組合せに製剤化され、
好ましくは、塩が、アンモニウム、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛及びアルミニウム塩、有機塩基から形成された塩、並びに塩基性アミノ酸から形成された塩のいずれか1つ又はそれらの組合せから選択され、
グルココルチコイドが、デキサメタゾン、リメキソロン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、ヒドロコルチゾン、モメタゾン、フルチカゾン、ベクロメタゾン、フルニソリド、トリアムシノロン、プロピオン酸フルチカゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド及びフロ酸モメタゾンのいずれか1つ又はそれらの組合せから選択され、
窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドが、同じ容器又は異なる容器内に入れられる、
組合せ物。
【請求項2】
SARS-CoV2変異株が、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、デルタプラス、イプシロン、ラムダ、ミュー及びオミクロンのいずれか1つ又はそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項3】
単位用量中の窒素含有ビスホスホネートの量が、1mg~100mgである、請求項1又は2に記載の組合せ物。
【請求項4】
単位用量中のグルココルチコイドの量が、10μg~10mgである、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項5】
処置効果の徴候が、マクロファージのエンドソームpHの増大、マクロファージにおけるウイルス複製の制限、マクロファージにおけるウイルス分解の促進、マクロファージからの炎症性因子の放出の阻害、肺胞上皮細胞からの炎症性因子の放出の阻害、肺胞上皮細胞におけるウイルス増殖の阻害、肺損傷の低減、サイトカインストームの低減、生存率の改善、及び生存期間の延長のいずれか1つ又はそれらの組合せから選択され、
炎症性因子が、IL-1、TNF-α、IFN-γ及びIL-6のいずれか1つ又はそれらの組合せから選択される、
請求項1に記載の組合せ物。
【請求項6】
防止効果の徴候が、重症の又は重篤な疾病への疾患の進行の遅延又は防止、及び重症の又は重篤な疾病への進行のリスクの低減のいずれか1つ又はそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項7】
ウイルス性肺炎が、軽症、中等症、重症及び重篤のいずれか1つから選択される、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項8】
窒素含有ビスホスホネートとグルココルチコイドの質量比が、200:1~100:1、好ましくは150:1である、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項9】
ウイルス性肺炎を防止又は処置するための医薬組成物又はキットであって、
- 窒素含有ビスホスホネート、
- グルココルチコイド、及び
- 必要に応じて、薬学的に許容される担体
を含み、
グルココルチコイドが、デキサメタゾン、リメキソロン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、ヒドロコルチゾン、モメタゾン、フルチカゾン、ベクロメタゾン、フルニソリド、トリアムシノロン、プロピオン酸フルチカゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド及びフロ酸モメタゾンのいずれか1つ又はそれらの組合せから選択され、
窒素含有ビスホスホネートが、アレンドロネート、パミドロネート、リセドロネート、イバンドロネート、ゾレドロネート、ミノドロネート及びインカドロネートのいずれか1つ又はそれらの組合せから選択され、
好ましくは、塩が、アンモニウム、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛及びアルミニウム塩、有機塩基から形成された塩、並びに塩基性アミノ酸から形成された塩のいずれか1つ又はそれらの組合せから選択される、
医薬組成物又はキット。
【請求項10】
医薬組成物が、次の剤形、注射剤、スプレー剤、エアロゾル剤、点鼻薬、経口薬剤、及び粘膜投与に適した剤形のいずれか1つ又はそれらの組合せであり、
好ましくは、単位用量中の窒素含有ビスホスホネートの量が、1mg~100mgであり、
好ましくは、単位用量中のグルココルチコイドの量が、10μg~10mgであり、
窒素含有ビスホスホネートとグルココルチコイドの質量比が、200:1~100:1、好ましくは150:1であり、
好ましくは、窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドが、同じ容器又は異なる容器に入れられ、
好ましくは、医薬組成物が、液体又は粉末である、
請求項9に記載のウイルス性肺炎を防止又は処置するための医薬組成物又はキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年11月18日出願の中国特許出願第2021113682916号の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、生物学的、医学的及び臨床的分野に関する。具体的には、本開示は、ウイルス性肺炎の防止又は処置における窒素含有ビスホスホネートとグルココルチコイドの併用に関する。
【背景技術】
【0003】
コロナウイルス性疾患2019(COVID-19)は、2019年の新規なコロナウイルス(SARS-CoV-2)によって引き起こされた急性呼吸器感染性疾患である。主な伝染経路は、呼吸器飛沫伝染及び接触伝染であり、潜伏期間は1~14日、大抵3~7日である。
【0004】
典型的に、COVID-19は、主に発熱、乾性咳及び疲労として現れ、少数の患者は、鼻閉、鼻汁、下痢、並びに他の上気道及び消化器症状も有する。重症疾病を有する患者は、通常、約1週間後に呼吸に困難を有し、重症の場合には、急性呼吸促迫症候群、敗血症ショック、凝血機能不全、多臓器不全等に急速に進行し、最終的には患者の死亡に至る。SARS-CoV-2は、感染性が高く、致死率が高い。現在、デルタ及びオミクロン株が優勢であり、それらはより感染性が高く、又はより病原性が高い。
【0005】
SARS-CoV-2は、ニドウイルス目のコロナウイルス科に属する。ビリオンは、多形性を有する球形又は楕円形であり、直径が60~220nmである。ウイルスは、そのエンベロープ上にスパイクを有し、内部ゲノムは一本鎖プラス鎖のRNAである。SARS-CoV-2ウイルスゲノムは、5'末端から約2/3に、重複するオープンリーディングフレーム(ORF)を有する。ORF1a及びORF1bは、主に、ウイルス複製及び転写に関係する酵素、並びに他の非構造的タンパク質のコード化に関与する。ゲノムの残りの1/3は、主な構造タンパク質、例えばスパイクタンパク質、エンベロープ膜タンパク質、膜タンパク質、及びヌクレオカプシドタンパク質のコード化に関与する。
【0006】
SARS-CoV-2のSタンパク質は、2つの機能的ドメインを有しており、その一方は、S1受容体結合ドメイン(RBD)であり、他方は、ウイルスと宿主細胞膜の融合を媒介するS2ドメインである。SARS-CoV-2は、まず、S1受容体-結合ドメインを介して宿主細胞上のACE2受容体に結合する。次に、S1ドメインがウイルス表面から切り離されて、S2ドメインと宿主細胞膜の融合を促進する。このプロセスは、Sタンパク質の活性化を必要とし、その活性化は、プロテアーゼフューリン及びTMPRSS2によって2つの部位(S1/S2及びS2')が切断されることによって達成される。S1/S2部位におけるフューリンによる切断は、ウイルスSタンパク質の立体構造変化をもたらし、したがってRBD及び/又はS2ドメインを曝露することができる。SARS-CoV-2ウイルスはまた、マクロファージに貪食され得る。細胞においては、まずエンドソームが形成され、次にCatLの作用下で、SARS-CoV-2ウイルスのSタンパク質がエンドソームと融合し、それが複製のために細胞質に入る。
【0007】
現在、変異株アルファ(B.1.1.7)、ベータ(B.1.351)、ガンマ(P.1)、イプシロン(B.1.427)、デルタ(B.1.617.2)、デルタプラス(AY.4.2)、ラムダ(C.37)、ミュー(B.1.621)及びオミクロン(B.1.1.529)を含めた、SARS-CoV-2の複数の変異株が特定されている。デルタ変異株は、例えば、病原性がわずかに低下しているが、感染力が大幅に増大している。SARS-CoV-2の変異速度は、経時的に加速しており、ワクチン及び中和抗体治療をかなり困難にしている。COVID-19ワクチンの生産及び接種の速度は、しばしばウイルスの変異速度に後れを取っている。したがって、当分野では、感染の初期段階でウイルスの伝染をブロックするために、市販薬物を使用することによる新規な併用治療の探求が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許出願第2021113682916号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Stanley A Plotkinら、Vaccine第4版、W.B. Saunders Company 2003
【非特許文献2】E.W. MartinによるRemington Pharmaceutical Sciences
【非特許文献3】Huang Ji-hanら、Dose conversion among different animals and healthy volunteers in pharmacological study、Chinese Journal of Clinical Pharmacology and Therapeutics、2004; 9:1069~1072頁
【非特許文献4】Regulations for the Administration of Affairs Concerning Experimental Animals
【非特許文献5】Guide for the Care and Use of Laboratory Animals
【非特許文献6】National Standard GB/14925
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術では、骨粗鬆症、変形性骨炎、高カルシウム血症、及び悪性腫瘍の骨転移によって引き起こされた骨の疼痛、特に「骨減少症及び骨構造破壊」によって特徴付けられる骨粗鬆症を処置するために、ビスホスホネートが使用されている。しかし、ウイルス性肺炎におけるビスホスホネート(及び/又は他の活性剤との組合せ)の効果は、従来技術においては特定されていない。したがって、COVID-19のための非従来型の処置戦略を探求する必要性が高い。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の技術的解決法は、窒素含有ビスホスホネートをグルココルチコイドと組み合わせて投与することによりウイルス性肺炎を有効に防止又は処置することができるという、予期されなかった本発明者の以下の知見に、少なくとも部分的に基づく。
【0012】
したがって、本開示は、ウイルス性肺炎を防止又は処置するための方法であって、対象に、予防有効量又は治療有効量の窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドを投与する工程を含む方法を提供し、窒素含有ビスホスホネートは、パミドロネート、アレンドロネート、リセドロネート、イバンドロネート、ゾレドロネート、ミノドロネート及びインカドロネートのいずれか1つ又はそれらの組合せから選択され、塩は、アンモニウム、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛及びアルミニウム塩、有機塩基から形成された塩、並びに塩基性アミノ酸から形成された塩のいずれか1つ又はそれらの組合せから選択され、グルココルチコイドは、デキサメタゾン、リメキソロン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、ヒドロコルチゾン、モメタゾン、フルチカゾン、ベクロメタゾン、フルニソリド、トリアムシノロン、プロピオン酸フルチカゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド及びフロ酸モメタゾンのいずれか1つ又はそれらの組合せから選択される。
【0013】
窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドは、同時又は逐次的に投与され、窒素含有ビスホスホネートとグルココルチコイドの質量比は、200:1~100:1である。
【0014】
本開示はまた、
- 本開示において定義される窒素含有ビスホスホネート、
- 本開示において定義されるグルココルチコイド、及び
- 必要に応じて、薬学的に許容される担体
を含む医薬組成物又はキットを提供する。
【0015】
医薬組成物又はキットを調製する場合、窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドは、同じ容器又は異なる容器内に入れられる。窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドは、独立に、液体又は粉末形態に調製される。単位用量中の窒素含有ビスホスホネートの量は、1mg~100mgである。単位用量中のグルココルチコイドの量は、10μg~10mgである。
【0016】
窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドは、独立に、次の剤形、注射剤、スプレー剤、エアロゾル剤、点鼻薬、経口薬剤、及び粘膜投与に適した剤形のいずれか1つ又はそれらの組合せに調製される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】アレンドロン酸ナトリウム(Alen)とデキサメタゾン(Dex)の組合せが、インビトロ及びインビボの両方でマクロファージのエンドソームpHを増大できることを示す。PBS:緩衝液対照群。
図1B】アレンドロン酸ナトリウム(Alen)とデキサメタゾン(Dex)の組合せが、インビトロ及びインビボの両方でマクロファージのエンドソームpHを増大できることを示す。PBS:緩衝液対照群。
図1C】アレンドロン酸ナトリウム(Alen)とデキサメタゾン(Dex)の組合せが、インビトロ及びインビボの両方でマクロファージのエンドソームpHを増大できることを示す。PBS:緩衝液対照群。
図1D】アレンドロン酸ナトリウム(Alen)とデキサメタゾン(Dex)の組合せが、インビトロ及びインビボの両方でマクロファージのエンドソームpHを増大できることを示す。PBS:緩衝液対照群。
図2A】アレンドロン酸ナトリウム(Alen)とデキサメタゾン(Dex)の組合せが、マクロファージによるSARS-CoV-2デルタ株のクリアランスをインビトロで促進できることを示す。モック(mock):ブランク群;PBS:緩衝液対照群。
図2B】アレンドロン酸ナトリウム(Alen)とデキサメタゾン(Dex)の組合せが、マクロファージによるSARS-CoV-2デルタ株のクリアランスをインビトロで促進できることを示す。モック(mock):ブランク群;PBS:緩衝液対照群。
図3A】アレンドロン酸ナトリウム(Alen)とデキサメタゾン(Dex)の組合せが、デルタ株に感染したマクロファージ中の炎症性サイトカインIL-1の発現をインビトロで下方調節できることを示す。モック:ブランク群;PBS:緩衝液対照群。
図3B】アレンドロン酸ナトリウム(Alen)とデキサメタゾン(Dex)の組合せが、デルタ株に感染したマクロファージ中の炎症性サイトカインIL-6の発現をインビトロで下方調節できることを示す。モック:ブランク群;PBS:緩衝液対照群。
図3C】アレンドロン酸ナトリウム(Alen)とデキサメタゾン(Dex)の組合せが、デルタ株に感染したマクロファージ中の炎症性サイトカインTNF-αの発現をインビトロで下方調節できることを示す。モック:ブランク群;PBS:緩衝液対照群。
図4A】アレンドロン酸ナトリウム(Alen)とデキサメタゾン(Dex)の組合せが、A549-ACE2を過剰発現する細胞系においてSARS-CoV-2デルタ株の複製を阻害できることを示す。モック:ブランク群;PBS:緩衝液対照群。
図4B】アレンドロン酸ナトリウム(Alen)とデキサメタゾン(Dex)の組合せが、A549-ACE2を過剰発現する細胞系においてSARS-CoV-2デルタ株の複製を阻害できることを示す。モック:ブランク群;PBS:緩衝液対照群。
図4C】アレンドロン酸ナトリウム(Alen)とデキサメタゾン(Dex)の組合せが、A549-ACE2を過剰発現する細胞系においてSARS-CoV-2デルタ株の複製を阻害できることを示す。モック:ブランク群;PBS:緩衝液対照群。
図5A】SARS-CoV-2デルタ株に感染したマウスの処置における、アレンドロン酸ナトリウム(Alen)とデキサメタゾン(Dex)の組合せのインビボでの効果を示す。HE染色は、マウスにおける気管支周囲及び血管周囲の炎症性細胞浸潤が、組合せ治療群において低減し、肺組織の病理学的損傷が、著しく軽減することを示す。モック:ブランク群;PBS:緩衝液対照群。
図5B】SARS-CoV-2デルタ株に感染したマウスの処置における、アレンドロン酸ナトリウム(Alen)とデキサメタゾン(Dex)の組合せのインビボでの効果を示す。PCRは、組合せ治療群において、マウスの肺組織におけるウイルス負荷が低下することを示す。モック:ブランク群;PBS:緩衝液対照群。
図5C】SARS-CoV-2デルタ株に感染したマウスの処置における、アレンドロン酸ナトリウム(Alen)とデキサメタゾン(Dex)の組合せのインビボでの効果を示す。PCRは、組合せ治療群において、マウスの肺組織におけるウイルス負荷が低下することを示す。モック:ブランク群;PBS:緩衝液対照群。
図5D】SARS-CoV-2デルタ株に感染したマウスの処置における、アレンドロン酸ナトリウム(Alen)とデキサメタゾン(Dex)の組合せのインビボでの効果を示す。PCRは、組合せ治療群において、炎症性因子が下方調節されることを示す。モック:ブランク群;PBS:緩衝液対照群。
図5E】SARS-CoV-2デルタ株に感染したマウスの処置における、アレンドロン酸ナトリウム(Alen)とデキサメタゾン(Dex)の組合せのインビボでの効果を示す。PCRは、組合せ治療群において、炎症性因子が下方調節されることを示す。モック:ブランク群;PBS:緩衝液対照群。
図6A】アレンドロン酸ナトリウムとデキサメタゾンの組合せの経鼻投与が、静脈内投与と比較して、エンドソームpHを著しく増大し、抗炎症性効果を改善することを示す。
図6B】アレンドロン酸ナトリウムとデキサメタゾンの組合せの経鼻投与が、静脈内投与と比較して、エンドソームpHを著しく増大し、抗炎症性効果を改善することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
製薬上の使用
前述の必要性を考慮して、本開示は、医薬の製造/調製における窒素含有ビスホスホネートとグルココルチコイドの併用を提供する。
【0019】
一部の実施形態では、医薬は、ウイルス性肺炎の発生又は再発の防止、ウイルス性肺炎又はその症状の処置のいずれか1つ又はそれらの組合せのために使用される。
【0020】
「窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドの組合せ」又は「窒素含有ビスホスホネートとグルココルチコイドの組合せ」という表現は、広範に理解されるべきであり、医薬の調製プロセス中の2種の活性成分の直接的な物理的接触に限定されるべきではない。(1)空間の観点から、例示的な技術的解決法において、窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドは、同じ容器内に入れられ、別の例示的な技術的解決法では、窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドは、異なる容器内に入れられ、更に別の例示的な技術的解決法では、窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドは、様々な製造者によって別個の形態で独立に提供される。(2)時間の観点からは、窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドは、並行して/同時に提供することができ、窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドは、連続的/逐次的に提供することもできる。
【0021】
ビスホスホネートは、2つのP-C結合が同じ炭素原子に連結して、P-C-P構造によって特徴付けられる式Iによって表される有機化合物を形成する、ピロリン酸の有機類似体である。ビスホスホネートは、窒素含有ビスホスホネート及び非窒素含有ビスホスホネートに分類することができる。
【0022】
【化1】
【0023】
一部の実施形態では、窒素含有ビスホスホネートは、アレンドロネート、パミドロネート、リセドロネート、イバンドロネート、ゾレドロネート、ミノドロネート及びインカドロネートからなる群から選択される。
【0024】
本開示における「塩」という用語は、無機酸、無機塩基、有機酸又は有機塩基を用いて形成された酸付加塩及び/又は塩基付加塩を指すと理解されるべきである。「塩」は、例えば式Iによって表される化合物が、塩基性基(例えば、アミン又はピリジン又はイミダゾール環)及び酸性基の両方を含む場合、双性イオンを含み得る。
【0025】
一部の実施形態では、式Iによって表される化合物は、塩基付加塩である。例示的な塩基付加塩は、アンモニウム塩、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム)塩;アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、マグネシウム)塩;バリウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩;有機塩基(例えば、アミン)を用いて形成された塩;アミノ酸(例えば、アルギニン、リジン)を用いて形成された塩からなる群から選択される。例として、式Iによって表される化合物がアレンドロネートである場合、アレンドロン酸ナトリウムであってもよく、式Iによって表される化合物がパミドロネートである場合、パミドロン酸ナトリウムであってもよい。
【0026】
本開示における「グルココルチコイド」という用語は、炭水化物、脂肪及びタンパク質の生合成及び代謝を調節する効果を有する、副腎皮質の束状帯によって分泌される、あるクラスのステロイドホルモンである。グルココルチコイドには、内因性物質だけでなく、人工的に合成された薬物も含まれる。
【0027】
一部の実施形態では、グルココルチコイドは、デキサメタゾン、リメキソロン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、ヒドロコルチゾン、モメタゾン、フルチカゾン、ベクロメタゾン、フルニソリド、トリアムシノロン、プロピオン酸フルチカゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド及びフロ酸モメタゾンのいずれか1つ又はそれらの組合せから選択される。
【0028】
特定の実施形態では、アレンドロネート及びデキサメタゾンの組合せは、医薬の調製において使用される。
【0029】
一部の実施形態では、窒素含有ビスホスホネートとグルココルチコイドの組合せで防止又は処置することができるウイルス性肺炎は、コロナウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パラインフルエンザウイルス、ヒト片肺(hemipulmonary)ウイルス、ヘンドラウイルス、ニパウイルス、風疹ウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、レオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、及びそれらの変異株からなる群から選択されるウイルスと関連するか、又はそれによって引き起こされる。
【0030】
一部の実施形態では、コロナウイルスは、コロナウイルス科のウイルス又はその変異株である。
【0031】
一部の特定の実施形態では、コロナウイルスは、コロナウイルス属のウイルス又はその変異株である。
【0032】
一部の特定の実施形態では、コロナウイルス属のウイルスは、HCoV-229E又はその変異株、HCoV-OC43又はその変異株、HCoV-NL63又はその変異株、HCoV-HKU1又はその変異株、SARS-CoV又はその変異株、SARS-CoV2又はその変異株、及びMERS-CoV又はその変異株からなる群から選択される。
【0033】
一部の特定の実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV2又はその変異株である。
【0034】
一部の特定の実施形態では、SARS-CoV2変異株は、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、デルタプラス、イプシロン、ラムダ、ミュー及びオミクロンのいずれか1つ又はそれらの組合せから選択される。
【0035】
一部の実施形態では、ウイルス性肺炎は、軽症、中等症、重症及び重篤のいずれか1つから選択される。
【0036】
一部の実施形態では、ウイルス性肺炎の臨床的分類により、患者は4つのタイプに分けられる。
1)軽症:臨床症状は軽症であり、肺炎徴候画像は観察されない。
2)中等症:患者が発熱、呼吸器症状を有しており、肺炎徴候画像を観察することができる。
3)重症:患者が以下のいずれかを満たす:呼吸促迫、RR≧30回/分、安静時指先酸素飽和≦93%、動脈酸素分圧(PaO2)/吸入酸素濃度(FiO2)≦300mmHg(1mmHg=0.133kPa)。
4)重篤:患者が以下の1つを満たす:呼吸不全及び人工呼吸器の必要性、ショック、他の臓器不全の併発、並びにICUモニタリング及び処置の必要性。
【0037】
窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドの製剤化
本開示の窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドは、それぞれ独立に、散剤、液体溶液剤(例えば、注射可能な溶液剤、水溶液剤若しくは生理食塩水溶液剤、又は懸濁液剤、軟膏剤、液滴剤、エマルション剤、ゲル剤、シロップ剤、エアロゾル剤、スプレー剤、点鼻薬)、錠剤、コーティング錠剤、マイクロカプセル剤、坐剤、丸剤、顆粒剤、糖衣錠又はカプセル剤に調製することができる。調製方法は、一般に、Stanley A Plotkinら、Vaccine第4版、W.B. Saunders Company 2003に記載されている。
【0038】
窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドは、それぞれ独立に、注射剤、スプレー剤、エアロゾル剤、点鼻薬、経口薬剤、及び粘膜投与に適した剤形からなる群から選択される剤形に調製することができる。
【0039】
一部の実施形態では、単位用量中の窒素含有ビスホスホネートの量は、1mg~100mgである。1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg及び100mgに言及することができる。
【0040】
一部の実施形態では、単位用量中のグルココルチコイドの量は、10μg~1mgである。10μg、20μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、90μg、100μg、150μg、200μg、250μg、300μg、350μg、400μg、450μg、500μg、550μg、600μg、650μg、700μg、750μg、800μg、850μg、900μg、950μg、1000μg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg及び10mgに言及することができる。
【0041】
一部の実施形態では、窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドの質量比は、200:1、190:1、180:1、170:1、160:1、150:1、140:1、130:1、120:1、110:1、100:1である。
【0042】
本開示において使用される「単位用量」という用語は、単位用量として対象に投与するのに適した物理的に別個の単位を指す。各単位は、単独で又は組合せで所望の効果をもたらすのに十分な量として存在する、所定量の窒素含有ビスホスホネート及び/又はグルココルチコイドを含有する。
【0043】
一部の実施形態では、本開示に記載される単位用量は、体積によって表され、0.1ml、0.15ml、0.2ml、0.5ml、1.0ml、1.5ml、2.0ml、2.5ml、3.0ml、4.0ml、5.0ml、10.0ml、20.0ml、30.0ml、40.0ml、50.0ml、60.0ml、70.0ml、80.0ml、90.0ml、100.0ml、150ml、200ml、250.00ml、及び先の値のいずれか2つの間の範囲から選択される。
【0044】
当業者には、単位用量が多すぎる又は少なすぎると、臨床的な不都合を生じることが理解される。したがって、本開示の窒素含有ビスホスホネート又はグルココルチコイドが、皮下注射によってヒト対象に投与される場合、単位用量は、好ましくは0.5ml~1.0mlの範囲である。
【0045】
本開示の窒素含有ビスホスホネート又はグルココルチコイドが、ヒト対象に鼻腔内投与される場合、単位用量は、好ましくは0.15ml~0.2mlの範囲である。
【0046】
本開示の窒素含有ビスホスホネート又はグルココルチコイドが、ヒト対象に静脈内投与される場合、単位用量は、好ましくは30.0ml~1000mlの範囲である。
【0047】
単位用量は体積によって表されるが、このことは、本開示の窒素含有ビスホスホネート又はグルココルチコイド又はその組成物が液体製剤の形態のみであり得ることを意味するものではないことが本明細書において理解されるべきである。本開示の窒素含有ビスホスホネート又はグルココルチコイドが、固体(散剤又は凍結乾燥散剤)製剤に調製される場合、単位用量の体積は、散剤又は凍結乾燥散剤から再構築される液体の体積を表し得る。
【0048】
医薬組成物
一部の実施形態によれば、窒素含有ビスホスホネート、グルココルチコイド、及び必要に応じて薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。
【0049】
薬学的に許容される適切な担体は、E.W. MartinによるRemington Pharmaceutical Sciencesに記載されている。特定の実施形態では、医薬組成物は、製薬分野で慣習的な、希釈剤、賦形剤、充填剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、吸収促進剤、界面活性剤、吸着担体、滑沢剤又は共力剤等を含めた1つ又は複数の薬学的に許容される担体を、更に含み得る。
【0050】
当業者は、医薬組成物が散剤又は凍結乾燥散剤の形態である場合、液体形態の医薬組成物との差異が、含水量及び/又は緩衝液の環境にあることを理解することができる。
【0051】
一部の実施形態では、窒素含有ビスホスホネートは、アレンドロネート、パミドロネート、リセドロネート、イバンドロネート、ゾレドロネート、ミノドロネート及びインカドロネートからなる群から選択される。
【0052】
一部の実施形態では、グルココルチコイドは、デキサメタゾン、リメキソロン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、ヒドロコルチゾン、モメタゾン、フルチカゾン、ベクロメタゾン、フルニソリド、トリアムシノロン、プロピオン酸フルチカゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド及びフロ酸モメタゾンのいずれか1つ又はそれらの組合せから選択される。
【0053】
一部の実施形態では、窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドは、同じ容器又は異なる容器内に入れられる。
【0054】
一部の実施形態では、医薬組成物は、ウイルス性肺炎の発生又は再発の防止、ウイルス性肺炎又はその症状の処置のいずれか1つ又はそれらの組合せにおいて使用するためのものである。
【0055】
一部の実施形態では、ウイルスは、コロナウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パラインフルエンザウイルス、ヒト片肺ウイルス、ヘンドラウイルス、ニパウイルス、風疹ウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、レオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、及びそれらの変異株のいずれか1つ又はそれらの組合せから選択される。
【0056】
一部の実施形態では、コロナウイルスは、コロナウイルス科のウイルス又はその変異株である。
【0057】
一部の特定の実施形態では、コロナウイルスは、コロナウイルス属のウイルス又はその変異株である。
【0058】
一部の特定の実施形態では、コロナウイルス属のウイルスは、HCoV-229E又はその変異株、HCoV-OC43又はその変異株、HCoV-NL63又はその変異株、HCoV-HKU1又はその変異株、SARS-CoV又はその変異株、SARS-CoV2又はその変異株、及びMERS-CoV又はその変異株からなる群から選択される。
【0059】
一部の特定の実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV2又はその変異株である。
【0060】
一部の特定の実施形態では、SARS-CoV2変異株は、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、デルタプラス、イプシロン、ラムダ、ミュー及びオミクロンのいずれか1つ又はそれらの組合せから選択される。
【0061】
一部の実施形態では、ウイルス性肺炎は、軽症、中等症、重症及び重篤のいずれか1つから選択される。
【0062】
一部の実施形態では、医薬組成物は、注射剤、スプレー剤、エアロゾル剤、点鼻薬、経口薬剤、及び粘膜投与に適した剤形からなる群から選択される剤形である。
【0063】
一部の実施形態では、窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドは、同じ剤形又は異なる剤形に製剤化することができる。
【0064】
防止又は処置のための方法
一部の実施形態によれば、ウイルス性肺炎を防止又は処置するための方法であって、対象に、予防有効量又は治療有効量の窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドを投与する工程を含む方法が提供される。
【0065】
一部の実施形態では、言及され得る投与経路には、筋肉内、静脈内、皮下、皮内、経口、鼻腔内、呼吸器、経粘膜、舌下及び非経口が含まれるが、それらに限定されない。
【0066】
本開示による方法の一部の実施形態では、「有効量」又は「有効用量」は、任意の1つ又は複数の有益な又は所望の結果を得るのに必要な、医薬、化合物又は医薬組成物の量を指す。有益な又は所望の結果には、臨床アウトカムの改善(例えば、罹患率、死亡率の低下、1つ又は複数の症状の改善)、重症度の低下、状態(状態若しくはその合併症、中間の病理学的表現型、生化学検査、組織学的検査、及び/又は状態の発症プロセス中に現れる行動学的症状を含む)の発病の遅延が含まれるが、それらに限定されない。
【0067】
有益な又は所望の結果は、疾患又はその症状を完全に及び/若しくは部分的に防止するという意味で予防的であってもよく、又は疾患及び/若しくは疾患によって引き起こされた悪影響を完全に及び/若しくは部分的に安定化する若しくは治癒するという意味で治療的であってもよい。
【0068】
対象への単回投与に必要な医薬の量は、対象の体重×対象への単回投与に必要な単位体重当たりの用量の数学的積を計算することによって、好都合に得ることができる。例えば、医薬を調製するプロセスでは、一般に、成人の体重を50kg~70kgとし、実験動物とヒトの間の等価用量変換関係から用量を最初に決定することができると考えられる。例えば、その量は、FDA、SFDA及び他の薬物監督機関によって提供された指針に従って決定することができ、又は文献が参照される(例えば、Huang Ji-hanら、Dose conversion among different animals and healthy volunteers in pharmacological study、Chinese Journal of Clinical Pharmacology and Therapeutics、2004; 9:1069~1072頁)。
【0069】
本開示の例示的な実施形態では、ヒト及びマウスのための用量は、ヒト及びマウスについて0.0026の体表面積変換係数に従って変換することができる。
【0070】
本開示の例示的な実施形態では、窒素含有ビスホスホネートは、体重18~22gのマウスに150μg/マウスの量で投与される。
【0071】
本開示の例示的な実施形態では、グルココルチコイドは、体重18g~22gのマウスに150μg/マウスの量で投与される。
【0072】
また一部の実施形態によれば、対象において呼吸器ウイルス肺炎が悪化するのを防止するための方法であって、窒素含有ビスホスホネート及び/又はグルココルチコイドを、呼吸器ウイルス肺炎を有する対象(又は重症の/重篤な疾病を発症する傾向がある対象)に投与する工程を含む方法が提供され、好ましくは、窒素含有ビスホスホネート及び/又はグルココルチコイドは、経口、鼻腔内又は呼吸器投与によって投与される。
【0073】
一部の実施形態では、窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドの投与順は、同時的又は順次的であってもよく、その2つの投与順は、交換することができる。
【0074】
本開示によれば、製剤における窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドの量は、様々な重症度のウイルス性肺炎を有する対象への投与を促進するために、必要に応じて調整することができる。
【0075】
一部の実施形態では、対象は、ウイルス感染に対して感受性のある対象である。
【0076】
一部の実施形態では、対象は、ウイルスのキャリアである。
【0077】
一部の実施形態では、対象は、ウイルスの存在に起因して症状を発症した対象である。
【0078】
一部の実施形態では、対象は、ウイルスの存在に起因して症状を発症する可能性がある対象である。
【0079】
一部の実施形態では、対象は、重症の又は重篤な疾病を発症するリスクがある対象である。
【0080】
一部の実施形態では、対象には、窒素含有ビスホスホネート又はグルココルチコイド(独立に又は組合せで)が、4年毎に1~4回、3年毎に1~3回、2年毎に1~2回、1年に1回、1年に2回、1年に3回、1年に4回、1年に5回、1年に6回、1カ月に1回、1カ月に2回、1カ月に3回、1カ月に4回、1カ月に5回、1カ月に6回、1カ月に7回、1カ月に8回、1週間に1回、1週間に2回、1週間に3回、1週間に4回、1週間に5回、1週間に6回、3日毎に1回、3日毎に2回、3日毎に3回、2日毎に1回、2日毎に2回、1日1回、1日2回の頻度で投与される。
【0081】
一部の実施形態では、窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドの投与頻度は、同じでも異なっていてもよい。
【0082】
一部の実施形態では、各投与間の時間間隔は、同じであるか又は異なる。
【0083】
一部の例示的な実施形態では、窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドが並行して投与されない場合、その2つの間の間隔は、窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドが対象において相乗効果を発揮できる限度を超えない。当業者は、活性成分の薬物動態プロファイルに従って、このような間隔を決定することができる。例として、窒素含有ビスホスホネートとグルココルチコイドの間の投与間隔は、48時間~1時間、例えば、48時間以内、47時間以内、46時間以内、45時間以内、44時間以内、40時間以内、36時間以内、30時間以内、24時間以内、20時間以内、15時間以内、12時間以内、11時間以内、10時間以内、9時間以内、8時間以内、7時間以内、6時間以内、5時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、又は1時間である。2つが1時間以内に順次的に投与される場合、それらは並行して投与されることが分かる。
【0084】
本開示は、コロナウイルス感染を防止又は処置するための方法であって、対象に、予防有効量若しくは治療有効量の窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドを投与するか、又は予防有効量若しくは治療有効量の医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0085】
一部の実施形態では、窒素含有ビスホスホネート又はグルココルチコイド又はその医薬組成物の投与は、全身的又は局所的である。
【0086】
一部の実施形態では、窒素含有ビスホスホネート又はグルココルチコイド又はその医薬組成物は、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、皮内)注射によって投与される。
【0087】
一部の実施形態では、窒素含有ビスホスホネート又はグルココルチコイド又はその医薬組成物は、筋肉内投与される。
【0088】
他の実施形態では、窒素含有ビスホスホネート又はグルココルチコイド又はその医薬組成物は、皮内送達される(例えば、機械デバイスによって上皮細胞バリアを破壊しない方式で)。
【0089】
他の一部の実施形態では、窒素含有ビスホスホネート又はグルココルチコイド又はその医薬組成物は、直腸、膣内、経鼻、経口、舌下、呼吸器、眼又は経皮経路によって投与される。
【0090】
一部の実施形態では、窒素含有ビスホスホネート又はグルココルチコイド又はその医薬組成物は、点鼻薬として投与される。
【0091】
一部の実施形態では、吸入による投与のために、吸入器、ネブライザー、加圧パッケージ又はガススプレー導入の手段が使用され得る。加圧パッケージは、適切な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素)を有することができる。加圧エアロゾルを使用する場合、単位用量は、空気弁を提供することによって決定することができる。粉末化混合物は、カプセル剤及びカートリッジ、又は例えばゼラチンパケット(gelatin packet)の単位用量の形態で保持することができ、散剤は、インヘラー又は吸入器を用いることによって、これらの容器から投与することができる。経鼻投与について、窒素含有ビスホスホネート又はグルココルチコイド又はその医薬組成物は、液体スプレー剤又は点鼻薬の製剤で、例えばネブライザーを介して投与することができる。
【0092】
一部の実施形態では、対象は、好ましくは哺乳動物、例えばサル、より好ましくはヒトである。
【0093】
キット
本開示の別の態様によれば、前述の防止又は処置するための方法を実施するためのキットであって、窒素含有ビスホスホネート又はグルココルチコイド又はその医薬組成物を独立に含有する少なくとも1つの容器を含むキットが提供される。異なる容器における組成及び/又は量は、同じでも異なっていてもよい。
【0094】
一部の実施形態では、本開示の窒素含有ビスホスホネート又はグルココルチコイド又はその医薬組成物は、無菌液剤に製剤化され、無菌容器(例えば、管、バイアル、アンプル、シリンジ)に含有される。
【0095】
他の一部の実施形態では、本開示の窒素含有ビスホスホネート又はグルココルチコイド又はその医薬組成物は、散剤又は凍結乾燥散剤の形態で容器に含有される。その形態は、使用直前に液体形態に再構成される。
【0096】
例示的な一実施形態では、本開示のキットは、針、注射用水、及び使用説明書から選択される1つ又はそれらの組合せを更に含む。
【0097】
例示的な一実施形態では、本開示のキットは、ネブライザー、及び使用説明書から選択される1つ又はそれらの組合せを更に含む。
【0098】
例示的な一実施形態では、本開示のキットは、点鼻用ドロッパー、及び使用説明書から選択される1つ又はそれらの組合せを更に含む。
【0099】
本明細書において、数値範囲が記載される場合、「...~...」、「...の範囲内」又は「...の範囲の間」という表現は、エンドポイント値を含んで使用される。
【0100】
本明細書において、数値範囲が記載される場合、「1mg~100mg」等の表現は、簡易的な表現であり、その範囲内の任意の小数又は整数に明確に言及するとみなされるべきである。
【0101】
本明細書において、数値が記載される場合(別段特定されない限り)、統計誤差及び操作によって生じた誤差が含まれるはずである。誤差の程度は、具体的な状況に応じて変わり、例えば投与量に関して、秤量誤差、製剤化プロセスにおいて生じた誤差等が含まれ、例えば150μgは、150μg±10%と理解することができる。
【0102】
本明細書において、別段特定されない限り、「a/an」及び「the」は、単数形及び複数形の両方を包含すると理解されるべきである。
【実施例0103】
別段特定されない限り、本開示の実験動物に対する操作は、「Regulations for the Administration of Affairs Concerning Experimental Animals」、「Guide for the Care and Use of Laboratory Animals」及びNational Standard GB/14925に従って実施した。
【0104】
実験マウスは、Medical Laboratory Animal Center of the Chinese Academy of Medical Sciences(北京)から購入した、6~8週齢の雌性ICR、hACE2遺伝子導入マウスであった。SARS-CoV-2デルタ株の動物研究は、動物バイオセーフティーレベル3(BASL3)の施設内で、HEPAフィルタアイソレーターを使用して実施した。ウイルス感染なしのマウスでの研究は、倫理委員会によって承認されたものであった。
【0105】
使用した細胞は、マウス原発性肺胞マクロファージ(10%ウシ胎児血清を含有する1640で培養した)、A549-ACE2を過剰発現するヒト肺腺癌細胞系(10%ウシ胎児血清を含有するDMEM培地で培養した)であった。A549ヒト肺腺癌細胞系は、Cell Resource Center、Institute of Basic Medicine、Chinese Academy of Medical Sciencesから購入した。
【0106】
(実施例1)
アレンドロン酸ナトリウムとデキサメタゾンの組合せは、インビトロ及びインビボの両方でマクロファージのエンドソームpHを増大することができる。
1.実験工程
インビトロでのpH測定:マウス肺胞マクロファージを、共焦点研究のために1ウェル当たり5×104の細胞で小型皿に蒔いた。次に、50μMアレンドロン酸ナトリウム、又は0.2μMデキサメタゾン、又はその両方の組合せ1mLを、各ウェルに添加し、24時間培養した。次に、pHrodo(商標)Redデキストランを、標識のために10分間にわたって添加しておき、画像化のために共焦点顕微鏡を使用した。
【0107】
インビボでのpH測定:各マウスに、アレンドロン酸ナトリウム150μg、又はデキサメタゾン1μg、又はその両方の組合せを鼻腔内投与した。24時間後、マウスの肺胞マクロファージを収集し、50μg/mLのpHrodo(商標)Redデキストランで10分間にわたって標識し、次にAttune(登録商標)NxTアコースティックフォーカシングフローサイトメーターによって検出した。
【0108】
2.実験結果
アレンドロン酸ナトリウムとデキサメタゾンの組合せを用いるマウス肺胞マクロファージのインビトロ処置は、マクロファージのエンドソームpHを増大することができる(図1A:24時間、図1B:48時間)。アレンドロン酸ナトリウムとデキサメタゾンの組合せのインビボ投与も、マウス肺胞マクロファージのエンドソームpHを増大することができる(図1C図1D)。
【0109】
(実施例2)
アレンドロン酸ナトリウムとデキサメタゾンの組合せは、マクロファージによるSARS-CoV-2デルタ株のクリアランスをインビトロで促進することができる
1.実験工程
マウス肺胞マクロファージを、24ウェルプレートに1ウェル当たり5×104の細胞で蒔いた。翌日、2.5×104のTCID50で2時間、ウイルス感染させた後、培地を廃棄し、プレートをPBSで2回洗浄し、最終洗浄中にPBSを完全に廃棄した。50μMアレンドロン酸ナトリウム、又は0.2μMデキサメタゾン、又はその両方の組合せ1mLを各ウェルに添加し、22時間又は46時間培養した。次に、プレートをPBSで2回洗浄し、最終洗浄中にPBSを完全に廃棄した。TRIZOL1mLを各ウェルに添加し、RNAを抽出し、逆転写した。ウイルス遺伝子ORF1abのコピー数(図2B)及びNのコピー数(図2A)を、qPCRによって分析した。
【0110】
2.実験結果
qPCR分析は、アレンドロン酸ナトリウムとデキサメタゾンの組合せが、マクロファージにおけるSARS-CoV-2デルタ株のウイルス負荷をインビトロで低減できることを示す(図2A及び図2B)。
【0111】
(実施例3)
アレンドロン酸ナトリウムとデキサメタゾンの組合せは、デルタ株に感染したマクロファージにおいて、炎症性サイトカインIL-1、TNF-α及びIL-6の発現をインビトロで下方調節することができる
1.実験工程
マウス肺胞マクロファージを、24ウェルプレートに1ウェル当たり5×104の細胞で蒔いた。翌日、2.5×104のTCID50で2時間、ウイルス感染させた後、培地を廃棄し、プレートをPBSで2回洗浄し、最終洗浄中にPBSを完全に廃棄した。50μMアレンドロン酸ナトリウム、又は0.2μMデキサメタゾン、又はその両方の組合せ1mLを各ウェルに添加し、22時間又は46時間培養した。次に、プレートをPBSで2回洗浄し、最終洗浄中にPBSを完全に廃棄した。TRIZOL1mLを各ウェルに添加し、RNAを抽出し、逆転写した。IL-6の発現を、qPCRによって分析した。
【0112】
2.実験結果
アレンドロン酸ナトリウムとデキサメタゾンの組合せは、デルタ株に感染したマクロファージにおいて、IL-6、IL-1及びTNF-αの発現をインビトロで下方調節することができる(図3A図3C)。
【0113】
(実施例4)
アレンドロン酸ナトリウムとデキサメタゾンの組合せは、A549-ACE2を過剰発現する細胞系において、SARS-CoV-2デルタ株の複製を阻害することができる
1.実験工程
A549-ACE2を過剰発現する細胞系:ヒトACE2コード配列を増幅させ、プラスミドpLV-EF1α-IRES-Puroに挿入し、それによって293T細胞に過渡的に発現させて、標的遺伝子を含有するウイルスを得た。hACE2を含有するレンチウイルスを、A549細胞に形質導入し、次にそれによって、1μg/mlのピューロマイシンでスクリーニングして、高いACE2発現を有するクローンを得た。
【0114】
A549-ACE2を過剰発現する細胞を、24ウェルプレートに1ウェル当たり5×104の細胞で蒔いた。翌日、2.5×104のTCID50で4時間、ウイルス感染させた後、培地を廃棄し、プレートをPBSで2回洗浄し、最終洗浄中にPBSを完全に廃棄した。50μMアレンドロン酸ナトリウム、又は0.2μMデキサメタゾン、又はその両方の組合せ1mLを各ウェルに添加し、20時間培養した。次に、プレートをPBSで2回洗浄し、最終洗浄中にPBSを完全に廃棄した。TRIZOL1mLを各ウェルに添加し、RNAを抽出し、逆転写した。ウイルス遺伝子ORF1abのコピー数(図4B)及びNのコピー数(図4A)を、qPCRによって分析した。細胞固定液1mLを各ウェルに添加し、Nタンパク質を、免疫蛍光染色(Abcam社、カタログ番号Ab273434、1:200)によって標識した。
【0115】
2.実験結果
アレンドロン酸ナトリウムとデキサメタゾンの組合せは、A549-ACE2を過剰発現する細胞において、デルタのコピー数を低減することができる(図4A図4B)。アレンドロン酸ナトリウムとデキサメタゾンの組合せは、A549-ACE2を過剰発現する細胞において、デルタNタンパク質の発現を低減することができる(図4C)。
【0116】
(実施例5)
SARS-CoV-2デルタ株感染の処置におけるアレンドロン酸ナトリウムとデキサメタゾンの組合せのインビボ有効性
1.実験工程
hACE2遺伝子導入マウスを、SARS-CoV-2デルタ株(1×105TCID50)に気管内感染させ、次に対照群(PBS)又はアレンドロン酸ナトリウム(150μg/マウス)又はデキサメタゾン(1μg/マウス)又はその両方の組合せを用いて処置した。処置を、1日1回、5日連続で提供した(n=4マウス/群)。5日間の処置後、マウスを屠殺し、肺組織をHE染色で固定し、又は溶解させるためにTRIZOLに入れた。
【0117】
2.実験結果
アレンドロン酸ナトリウムとデキサメタゾンの組合せの処置群におけるマウスのH&E染色の結果は、ウイルスによって引き起こされた肺組織損傷が相対的に少ないことを示し、免疫組織化学の結果は、炎症性細胞浸潤が低減したことを示している(図5A)。
【0118】
アレンドロン酸ナトリウムとデキサメタゾンの組合せの処置群におけるマウスのqPCR結果は、肺組織においてウイルス負荷が低減したことを示している(図5B(N)、図5C(ORF))。
【0119】
アレンドロン酸ナトリウムとデキサメタゾンの組合せの処置群におけるマウスのqPCR結果は、炎症性因子IL-6(図5E)及びTNFα(図5D)の発現が著しく低減することも示している。
【0120】
(実施例6)
エンドソームpH及び抗炎症に対する経鼻投与及び静脈内投与の効果
1.実験工程
マウスをLPS(100μg/マウス)で4時間刺激した後、アレンドロン酸ナトリウム及びデキサメタゾンを、マウスに気管内又は静脈内投与した。エンドソームpH及び炎症性因子IL-6の発現の検出のために、20時間後に肺胞マクロファージを収集した。
【0121】
2.実験結果
アレンドロネート及びデキサメタゾンの経鼻投与群のマウスにおいて、より高いエンドソームpHを観察することができ(図6A)、IL-6発現は、同じ条件下で、静脈内群よりも経鼻群の方が低かった(図6B)。
【0122】
つまり、本開示の解決法は、少なくとも以下の効果を有する。
【0123】
1.窒素含有ビスホスホネートは、SARS-CoV-2感染(デルタ株を含む)を処置するために使用することができる。窒素含有ビスホスホネートは、肺胞マクロファージによるSARS-CoV-2のクリアランスを増強し、炎症を阻害するための新しい治療戦略である。
【0124】
2.ウイルス感染の前及び後、窒素含有ビスホスホネートの気管内投与は、マクロファージのエンドソームpHを調節することによって、マクロファージ及び上皮細胞におけるウイルス複製を阻害し、マクロファージによるSARS-CoV-2のクリアランスを増強する。したがって、COVID-19の臨床処置が達成され、本開示の解決法は、COVID-19患者の死亡率を有効に低減することができ、臨床適用の良好な見込みを有する。
【0125】
3.本開示の窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドは、FDAによって承認されている安全な薬物である。したがって、安全性が高く、且つ毒性及び副作用が低く、ヒトの身体に適用することができる。
【0126】
4.本開示は、アレンドロン酸ナトリウムとデキサメタゾンの組合せが、マクロファージエンドソームの酸性度を増大し、マクロファージにおけるSARS-CoV-2ウイルスの複製を制限し、マクロファージによるウイルス分解を促進し、SARS-CoV-2ウイルス感染後のマクロファージによる炎症性サイトカイン(例えば、IL-1、TNF-α、IFN-γ、IL-6)の放出を阻害し、肺胞上皮細胞におけるSARS-CoV-2ウイルスの増殖を阻害できることを見出した。インビボ研究では、ブランク対照群と比較して、アレンドロン酸ナトリウムとデキサメタゾンの組合せが、モデル動物の肺における病理学的損傷及びウイルス負荷を大幅に低減できることが見出された。
【0127】
本発明の更なる態様は、以下の節の主題によって提供される。
【0128】
1.窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドの組合せ物であって、
組合せ物が、ウイルス性肺炎を防止又は処置するために使用され、
窒素含有ビスホスホネートが、アレンドロネート、パミドロネート、リセドロネート、イバンドロネート、ゾレドロネート、ミノドロネート及びインカドロネートのいずれか1つ又はそれらの組合せから選択され、
ウイルスが、コロナウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パラインフルエンザウイルス、ヒト片肺ウイルス、ヘンドラウイルス、ニパウイルス、風疹ウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、レオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、及びそれらの変異株のいずれか1つ又はそれらの組合せから選択され、
ここで、コロナウイルスが、コロナウイルス科のウイルス又はその変異株、好ましくはコロナウイルス属のウイルス又はその変異株であり、より好ましくはHCoV-229E又はその変異株、HCoV-OC43又はその変異株、HCoV-NL63又はその変異株、HCoV-HKU1又はその変異株、SARS-CoV又はその変異株、SARS-CoV2又はその変異株、及びMERS-CoV又はその変異株のいずれか1つから選択され、
好ましくは、組合せ物が、次の剤形、注射剤、スプレー剤、エアロゾル剤、点鼻薬、経口薬剤、及び粘膜投与に適した剤形のいずれか1つ又はそれらの組合せに製剤化され、
好ましくは、塩が、アンモニウム、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛及びアルミニウム塩、有機塩基から形成された塩、並びに塩基性アミノ酸から形成された塩のいずれか1つ又はそれらの組合せから選択され、
グルココルチコイドが、デキサメタゾン、リメキソロン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、ヒドロコルチゾン、モメタゾン、フルチカゾン、ベクロメタゾン、フルニソリド、トリアムシノロン、プロピオン酸フルチカゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド及びフロ酸モメタゾンのいずれか1つ又はそれらの組合せから選択され、
窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドが、同じ容器又は異なる容器内に入れられる、
組合せ物。
【0129】
2.SARS-CoV2変異株が、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、デルタプラス、イプシロン、ラムダ、ミュー及びオミクロンのいずれか1つ又はそれらの組合せから選択される、節1に記載の組合せ物。
【0130】
3.単位用量中の窒素含有ビスホスホネートの量が、1mg~100mgである、節1又は2に記載の組合せ物。
【0131】
4.単位用量中のグルココルチコイドの量が、10μg~10mgである、節1から3のいずれか1つに記載の組合せ物。
【0132】
5.処置効果の徴候(manifestation of treatment)が、マクロファージのエンドソームpHの増大、マクロファージにおけるウイルス複製の制限、マクロファージにおけるウイルス分解の促進、マクロファージからの炎症性因子の放出の阻害、肺胞上皮細胞からの炎症性因子の放出の阻害、肺胞上皮細胞におけるウイルス増殖の阻害、肺損傷の低減、サイトカインストームの低減、生存率の改善、及び生存期間の延長のいずれか1つ又はそれらの組合せから選択され、
炎症性因子が、IL-1、TNF-α、IFN-γ及びIL-6のいずれか1つ又はそれらの組合せから選択される、
節1から4のいずれか1つに記載の組合せ物。
【0133】
6.防止効果の徴候(manifestation of prevention)が、重症の又は重篤な疾病への疾患の進行の遅延又は防止、及び重症の又は重篤な疾病への進行のリスクの低減のいずれか1つ又はそれらの組合せから選択される、節1から4のいずれか1つに記載の組合せ物。
【0134】
7.ウイルス性肺炎が、軽症、中等症、重症及び重篤のいずれか1つから選択される、節1から6のいずれか1つに記載の組合せ物。
【0135】
8.窒素含有ビスホスホネートとグルココルチコイドの質量比が、200:1~100:1、好ましくは(prefearbly)150:1である、節1から7のいずれか1つに記載の組合せ物。
【0136】
9.ウイルス性肺炎を防止又は処置するための医薬組成物又はキットであって、
- 窒素含有ビスホスホネート、
- グルココルチコイド、及び
- 必要に応じて、薬学的に許容される担体
を含み、
グルココルチコイドが、デキサメタゾン、リメキソロン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、ヒドロコルチゾン、モメタゾン、フルチカゾン、ベクロメタゾン、フルニソリド、トリアムシノロン、プロピオン酸フルチカゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド及びフロ酸モメタゾンのいずれか1つ又はそれらの組合せから選択され、
窒素含有ビスホスホネートが、アレンドロネート、パミドロネート、リセドロネート、イバンドロネート、ゾレドロネート、ミノドロネート及びインカドロネートのいずれか1つ又はそれらの組合せから選択され、
好ましくは、塩が、アンモニウム、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛及びアルミニウム塩、有機塩基から形成された塩、並びに塩基性アミノ酸から形成された塩のいずれか1つ又はそれらの組合せから選択される、
医薬組成物又はキット。
【0137】
10.医薬組成物が、次の剤形、注射剤、スプレー剤、エアロゾル剤、点鼻薬、経口薬剤、及び粘膜投与に適した剤形のいずれか1つ又はそれらの組合せであり、
好ましくは、単位用量中の窒素含有ビスホスホネートの量が、1mg~100mgであり、
好ましくは、単位用量中のグルココルチコイドの量が、10μg~10mgであり、
窒素含有ビスホスホネートとグルココルチコイドの質量比が、200:1~100:1、好ましくは150:1であり、
好ましくは、窒素含有ビスホスホネート及びグルココルチコイドが、同じ容器又は異なる容器に入れられ、
好ましくは、医薬組成物が、液体又は粉末である、
節9に記載のウイルス性肺炎を防止又は処置するための医薬組成物又はキット。
図1-1】
図1-2】
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5-1】
図5-2】
図6
【外国語明細書】