(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075027
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】粒界酸化層の膜厚算出方法、めっき性判定方法、めっき鋼板の製造方法、及び膜厚算出装置
(51)【国際特許分類】
G01B 15/02 20060101AFI20230523BHJP
G01N 23/223 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
G01B15/02 D
G01N23/223
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146404
(22)【出願日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2021188119
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康二
(72)【発明者】
【氏名】小林 正宜
(72)【発明者】
【氏名】福島 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】林 和志
(72)【発明者】
【氏名】乾 昌広
【テーマコード(参考)】
2F067
2G001
【Fターム(参考)】
2F067AA27
2F067BB01
2F067BB11
2F067BB18
2F067CC05
2F067DD02
2F067DD07
2F067FF13
2F067HH04
2F067JJ03
2F067KK01
2F067KK08
2F067NN03
2F067PP16
2F067RR31
2F067RR44
2G001AA01
2G001BA04
2G001CA01
2G001KA11
2G001LA02
2G001MA05
2G001RA02
2G001RA04
(57)【要約】
【課題】本発明は、酸洗処理後の鋼板に残存している粒界酸化層の膜厚を高い精度で算出できる粒界酸化層の膜厚算出方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る粒界酸化層の膜厚算出方法は、酸洗処理後の鋼板に残存している粒界酸化層の膜厚算出方法であって、上記鋼板に含まれるとともに、上記粒界酸化層内の酸化物を構成している元素に対する蛍光X線強度を測定する強度測定工程と、上記粒界酸化層の膜厚を、予め抽出されている蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚との相関関係及び上記強度測定工程で測定された上記蛍光X線強度に基づいて算出する膜厚算出工程とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸洗処理後の鋼板に残存している粒界酸化層の膜厚算出方法であって、
上記鋼板に含まれるとともに、上記粒界酸化層内の酸化物を構成している元素に対する蛍光X線強度を測定する強度測定工程と、
上記粒界酸化層の膜厚を、予め抽出されている蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚との相関関係及び上記強度測定工程で測定された上記蛍光X線強度に基づいて算出する膜厚算出工程と
を備える粒界酸化層の膜厚算出方法。
【請求項2】
上記鋼板の製造条件に応じて複数の相関関係が予め抽出されており、
上記膜厚算出工程で、上記鋼板の製造条件に応じて上記複数の相関関係から1の相関関係を選択する請求項1に記載の粒界酸化層の膜厚算出方法。
【請求項3】
上記強度測定工程で測定される上記蛍光X線強度の測定位置と上記鋼板との間の距離である測定距離を測定する距離測定工程と、
上記強度測定工程で測定される上記蛍光X線強度を上記測定距離に基づき補正する強度補正工程と
をさらに備え、
上記膜厚算出工程で、上記強度測定工程で測定された上記蛍光X線強度に代えて上記強度補正工程で補正された蛍光X線強度を用いる請求項1又は請求項2に記載の粒界酸化層の膜厚算出方法。
【請求項4】
上記酸洗処理に用いられる酸が、塩酸であり、
上記元素が、Mnである請求項1又は請求項2に記載の粒界酸化層の膜厚算出方法。
【請求項5】
酸洗処理後の鋼板に残存している粒界酸化層から上記鋼板のめっき性を判定するめっき性判定方法であって、
上記粒界酸化層の膜厚を算出する算出工程と、
上記算出工程で算出された上記粒界酸化層の膜厚を判定指標として、上記鋼板のめっき性を判定する判定工程と
を備え、
上記算出工程で、請求項1に記載の粒界酸化層の膜厚算出方法を用いるめっき性判定方法。
【請求項6】
酸洗処理後の鋼板に残存している粒界酸化層から上記鋼板のめっき性を判定するめっき性判定方法であって、
上記鋼板に含まれるとともに、上記粒界酸化層内の酸化物を構成している元素に対する蛍光X線強度を測定する強度測定工程と、
上記強度測定工程で測定された上記蛍光X線強度に基づいて上記鋼板のめっき性を直接判定する判定工程と
を備えるめっき性判定方法。
【請求項7】
母材となる鋼板を熱間圧延する熱間圧延工程と、
上記熱間圧延工程後の鋼板を酸によって表面の酸化スケールを除去する酸洗工程と、
上記酸洗工程後の鋼板に残存している粒界酸化層から上記鋼板のめっき性を判定するめっき性判定工程と
を備え、
上記めっき性判定工程で、請求項5又は請求項6に記載のめっき性判定方法を用いるめっき鋼板の製造方法。
【請求項8】
酸洗処理後の鋼板に残存している粒界酸化層の膜厚を算出する膜厚算出装置であって、
上記鋼板に含まれるとともに、上記粒界酸化層内の酸化物を構成している元素に対する蛍光X線強度を測定する強度測定部と、
上記強度測定部の蛍光X線強度の測定位置と上記鋼板との間の距離である測定距離を測定する距離測定部と、
上記強度測定部で測定された上記蛍光X線強度を上記測定距離に基づき補正する強度補正部と、
上記粒界酸化層の膜厚を、予め抽出されている蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚との相関関係及び上記強度補正部で補正された上記蛍光X線強度に基づいて算出する膜厚算出部と
を備える膜厚算出装置。
【請求項9】
上記鋼板の製造条件に応じて抽出された複数の相関関係を記憶する記憶部をさらに備え、
上記膜厚算出部が、上記鋼板の製造条件に応じて上記複数の相関関係から1の相関関係を選択する機能を有する請求項8に記載の膜厚算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒界酸化層の膜厚算出方法、めっき性判定方法、めっき鋼板の製造方法、及び膜厚算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体等に用いられる高強度鋼板として、防錆性を付与した表面処理鋼板、中でも防錆性に優れる溶融亜鉛めっき鋼板や合金化溶融亜鉛めっき鋼板が公知である。溶融亜鉛めっき鋼板は、一般にはスラブを熱間圧延及び冷間圧延した帯状の鋼板を母材鋼板として用い、この母材鋼板を焼鈍炉で還元性雰囲気のもとで再結晶焼鈍し、その後に溶融亜鉛めっき処理を行って製造される。
【0003】
このような高強度鋼板では、強度を高めるためSiやMn等の添加が有効である。ところが、鋼板がSiやMnを含む場合、鉄の酸化が起こらない還元性の水素ガスを含有する還元性雰囲気においても酸化が進み、鋼板表面にSiやMnの酸化物を形成する。この酸化物によりめっき処理時に溶融亜鉛と鋼板との濡れ性が低下するため、SiやMn等が添加された母材鋼板を用いる場合、めっき性が低下し易い。
【0004】
SiやMn等が添加された母材鋼板のめっき性を改善する方法として、酸化帯及び還元帯を有する焼鈍炉を用いた酸化還元法による製造方法が実用化されている。この製造方法では、鋼板の表面に鉄の酸化膜を形成させ、水素を含む還元性雰囲気中でこの酸化膜を還元した後にめっき処理を行う。
【0005】
酸化還元法での酸化膜形成には、粒界酸化層が影響することが知られている。粒界酸化層とは、Fe中に固溶していた元素が粒界に移動し、粒界に沿って拡散してくる酸素と結合して酸化物が形成された層である。この粒界酸化層の厚さは、酸化還元処理よりも前に行われる酸洗条件により調整することができる。
【0006】
例えばこの粒界酸化層が薄いすなわち固溶元素量が多い場合には、酸化還元焼鈍中にFeより卑なSiやMnが選択酸化されるため、上記酸化膜形成が阻害されて不めっきや合金化ムラが発生するおそれがある。一方、上記粒界酸化層が厚いと、合金化が過剰に進行するなどめっき性が確保できないおそれがある。このように粒界酸化層の厚さはめっき性を確保する重要因子である。
【0007】
この粒界酸化層の厚さと相関すると考えられる粒界酸化層の量をインラインで特定する方法として、X線を利用したコンプトン散乱線により、鋼板の単位面積当たりの酸素量、すなわち酸素目付量を特定する方法が提案されている(特開2001-272360号公報参照)。この特定方法では、表層が酸化されて酸素量が増加するのに対応してコンプトン散乱強度が増大することを利用し、実際に測定した散乱強度から酸素目付量を一義的に求めている。そして、この酸素量が粒界酸化層の量と比例するという前提のもと、上記酸素量を粒界酸化層の量の指標として用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の特定方法では、酸素量が粒界酸化層の量と比例することが前提となる。この前提が成立するためには、粒界酸化層に含まれる酸化物の構成が変化しないことが必要となる。ここで、上述のように酸化還元法での酸化膜形成前の粒界酸化層の厚さ調整は、酸洗条件により行われている。具体的には、酸洗することで、厚かった粒界酸化層の一部を溶解させ、所望の厚さまで薄くして残存させている。このとき、特定の酸化物が選択的に酸に溶解するため、酸洗の前後で、また酸洗により溶解した粒界酸化層の量により粒界酸化層に含まれる酸化物の構成は変化してしまう。
【0010】
従って、酸洗処理後の鋼板に残存している粒界酸化層の膜厚に対しては、上記従来の特定方法では、そもそも酸素量が粒界酸化層の量と比例するという前提が成立しないため、高い精度で粒界酸化層の膜厚を特定することが難しい。このため、酸素量を用いる方法では鋼板のめっき性を精度よく評価することが難しい。
【0011】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、酸洗処理後の鋼板に残存している粒界酸化層の膜厚を高い精度で算出できる粒界酸化層の膜厚算出方法及び膜厚算出装置、酸洗処理後の鋼板に残存している粒界酸化層から鋼板のめっき性を精度よく判定するめっき性判定方法、並びに上記めっき性判定方法を用いためっき鋼板の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
酸洗処理前の鋼板には、鋼板素地の表面に比較的厚い粒界酸化層が形成されている。この段階で、鋼板に含まれるとともに、上記粒界酸化層内の酸化物を構成している元素の濃度は、鋼板素地と粒界酸化層内とで均一である。この鋼板に対して酸洗処理を行うと、上記元素の酸化物が選択的に溶解するため、上記粒界酸化層内の元素の濃度は低下する。この鋼板の上記元素に対して蛍光X線強度を測定すると、表面付近の上記元素によりその強度が決まるから、上記蛍光X線強度は、鋼板素地を測定する場合より低くなる。本発明者らは、さらに、酸洗処理を継続し残存する粒界酸化層の厚さが所望の値に近づくと、粒界酸化層が十分に薄くなるため、蛍光X線強度に鋼板素地に含まれる上記元素からの強度が重畳してくることに着目した。つまり、本発明者らは、この領域においては、粒界酸化層が薄くなるに従って、鋼板素地に含まれる上記元素から重畳してくる蛍光X線の割合が増加し、測定される蛍光X線強度が増加することを知得した。そして、本発明者らは、蛍光X線強度が粒界酸化層の膜厚と高い相関を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明の一態様に係る粒界酸化層の膜厚算出方法は、酸洗処理後の鋼板に残存している粒界酸化層の膜厚算出方法であって、上記鋼板に含まれるとともに、上記粒界酸化層内の酸化物を構成している元素に対する蛍光X線強度を測定する強度測定工程と、上記粒界酸化層の膜厚を、予め抽出されている蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚との相関関係及び上記強度測定工程で測定された上記蛍光X線強度に基づいて算出する膜厚算出工程とを備える。
【0014】
当該粒界酸化層の膜厚算出方法では、上記鋼板に含まれるとともに、上記粒界酸化層内の酸化物を構成している元素に対する蛍光X線強度を測定する。上記蛍光X線強度は、酸洗処理後の鋼板に残存している粒界酸化層の膜厚と高い相関性を有するので、上記蛍光X線強度に基づいて上記膜厚を高い精度で算出できる。
【0015】
上記鋼板の製造条件に応じて複数の相関関係が予め抽出されており、上記膜厚算出工程で、上記鋼板の製造条件に応じて上記複数の相関関係から1の相関関係を選択するとよい。例えば蛍光X線強度は、Mn濃度に依存する。このように鋼板の製造条件が異なる場合、上記相関関係は異なり得る。このため、鋼板の製造条件に応じて適切な相関関係を選択可能とすることで、膜厚の算出精度をさらに向上させることができる。
【0016】
上記強度測定工程で測定される上記蛍光X線強度の測定位置と上記鋼板との間の距離である測定距離を測定する距離測定工程と、上記強度測定工程で測定される上記蛍光X線強度を上記測定距離に基づき補正する強度補正工程とをさらに備え、上記膜厚算出工程で、上記強度測定工程で測定された上記蛍光X線強度に代えて上記強度補正工程で補正された蛍光X線強度を用いるとよい。蛍光X線強度は、上記測定距離の影響を受ける。このため、上記測定距離により蛍光X線強度を規格化することで、膜厚の算出精度の低下を抑止できる。
【0017】
上記酸洗処理に用いられる酸が、塩酸であり、上記元素が、Mnであるとよい。このように上記酸洗処理に用いられる酸を塩酸とし、上記元素をMnとすることで、蛍光X線強度の測定感度が向上し、膜厚の算出精度をさらに高めることができる。
【0018】
本発明の別の一態様に係るめっき性判定方法は、酸洗処理後の鋼板に残存している粒界酸化層から上記鋼板のめっき性を判定するめっき性判定方法であって、上記粒界酸化層の膜厚を算出する算出工程と、上記算出工程で算出された上記粒界酸化層の膜厚を判定指標として、上記鋼板のめっき性を判定する判定工程とを備え、上記算出工程で、本発明の粒界酸化層の膜厚算出方法を用いる。
【0019】
当該めっき性判定方法では、本発明の粒界酸化層の膜厚算出方法を用いて、粒界酸化層の膜厚を高い精度で算出できる。従って、この算出された膜厚に基づいて鋼板のめっき性を高い精度で判定できる。
【0020】
本発明のさらに別の一態様に係るめっき性判定方法は、酸洗処理後の鋼板に残存している粒界酸化層から上記鋼板のめっき性を判定するめっき性判定方法であって、上記鋼板に含まれるとともに、上記粒界酸化層内の酸化物を構成している元素に対する蛍光X線強度を測定する強度測定工程と、上記強度測定工程で測定された上記蛍光X線強度に基づいて上記鋼板のめっき性を直接判定する判定工程とを備える。
【0021】
当該めっき性判定方法では、上記鋼板に含まれるとともに、上記粒界酸化層内の酸化物を構成している元素に対する蛍光X線強度を測定する。上記蛍光X線強度は、酸洗処理後の鋼板に残存している粒界酸化層の膜厚と高い相関性を有するので、上記蛍光X線強度に基づいて鋼板のめっき性を直接高い精度で算出できる。
【0022】
本発明の別の一態様に係るめっき鋼板の製造方法は、母材となる鋼板を熱間圧延する熱間圧延工程と、上記熱間圧延工程後の鋼板を酸によって表面の酸化スケールを除去する酸洗工程と、上記酸洗工程後の鋼板に残存している粒界酸化層から上記鋼板のめっき性を判定するめっき性判定工程とを備え、上記めっき性判定工程で、本発明のめっき性判定方法を用いる。
【0023】
当該めっき鋼板の製造方法は、酸洗工程の後に本発明のめっき性判定方法を用いることで、高い精度で鋼板のめっき性を判定することができる。これにより、酸洗工程以降の製造条件を鋼板のめっき性に従って最適化できる。従って、当該めっき鋼板の製造方法を用いることで、めっき鋼板の製造効率を高めることができる。
【0024】
本発明のさらに別の一態様に係る膜厚算出装置は、酸洗処理後の鋼板に残存している粒界酸化層の膜厚を算出する膜厚算出装置であって、上記鋼板に含まれるとともに、上記粒界酸化層内の酸化物を構成している元素に対する蛍光X線強度を測定する強度測定部と、上記強度測定部の蛍光X線強度の測定位置と上記鋼板との間の距離である測定距離を測定する距離測定部と、上記強度測定部で測定された上記蛍光X線強度を上記測定距離に基づき補正する強度補正部と、上記粒界酸化層の膜厚を、予め抽出されている蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚との相関関係及び上記強度補正部で補正された上記蛍光X線強度に基づいて算出する膜厚算出部とを備える。
【0025】
当該膜厚算出装置は、上記鋼板に含まれるとともに、上記粒界酸化層内の酸化物を構成している元素に対する蛍光X線強度を測定する強度測定部を備える。上記蛍光X線強度は、酸洗処理後の鋼板に形成されている粒界酸化層の膜厚と高い相関性を有するので、当該膜厚算出装置の膜厚算出部は、上記蛍光X線強度に基づいて粒界酸化層の膜厚を精度よく算出することができる。また、当該膜厚算出装置は、測定距離の影響を受ける蛍光X線強度を上記測定距離により規格化することで、算出精度の低下を抑止できる。従って、当該膜厚算出装置は、粒界酸化層の膜厚を高い精度で算出できる。
【0026】
上記鋼板の製造条件に応じて抽出された複数の相関関係を記憶する記憶部をさらに備え、上記膜厚算出部が、上記鋼板の製造条件に応じて上記複数の相関関係から1の相関関係を選択する機能を有するとよい。このように鋼板の製造条件に応じて適切な相関関係を選択可能とすることで、膜厚の算出精度をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明の粒界酸化層の膜厚算出方法及び膜厚算出装置は、酸洗処理後の鋼板に残存している粒界酸化層の膜厚を高い精度で算出できる。本発明のめっき性判定方法は、酸洗処理後の鋼板に残存している粒界酸化層から鋼板のめっき性を精度よく判定できる。また、本発明のめっき鋼板の製造方法は、粒界酸化層から鋼板のめっき性を精度よく判定できるめっき性判定方法を備えており、製造効率を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る膜厚算出方法を示すフロー図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るめっき性判定方法を示すフロー図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るめっき鋼板の製造方法を示すフロー図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る膜厚算出装置、この膜厚算出装置が用いられるめっき性判定装置及びこのめっき性判定装置が用いられるめっき鋼板の製造装置の模式的構成図である。
【
図5】
図5は、
図1の判定工程で用いる蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚との相関関係を抽出する抽出方法を示すフロー図である。
【
図6】
図6は、
図4の膜厚算出装置とは異なる実施形態に係る膜厚算出装置の模式的構成図である。
【
図7】
図7は、蛍光X線の相対強度と粒界酸化層厚の相関関係の相関関係を説明するグラフである。
【
図8】
図8は、
図2とは異なる実施形態に係るめっき性判定方法を示すフロー図である。
【
図9】
図9は、実施例における酸洗処理時間と酸洗処理による質量減少分との関係を示すグラフである。
【
図10】
図10は、実施例における蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚との相関関係を示すグラフである。
【
図11】
図11は、実施例における
図4の判定方法に従って算出した粒界酸化層の膜厚と実測値との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態に係る粒界酸化層の膜厚算出方法、めっき性判定方法、めっき鋼板の製造方法、及び膜厚算出装置について説明する。
【0030】
本発明の粒界酸化層の膜厚算出方法は、酸洗処理後の鋼板に残存している粒界酸化層の膜厚算出方法であって、
図1に示すように、強度測定工程S1と、距離測定工程S2と、強度補正工程S3と、膜厚算出工程S4とを備える。当該粒界酸化層の膜厚算出方法は、それ自体が本発明の一実施形態であるめっき性判定方法で用いられる。具体的には、当該めっき性判定方法は、酸洗処理後の鋼板に残存している粒界酸化層から上記鋼板のめっき性を判定するめっき性判定方法であって、
図2に示すように、算出工程S5と、判定工程S6とを備え、算出工程S5で、当該粒界酸化層の膜厚算出方法が用いられる。当該めっき性判定方法は、それ自体が本発明の一実施形態であるめっき鋼板の製造方法で用いられる。具体的には、当該めっき鋼板の製造方法は、
図3に示すように、熱間圧延工程S11と、酸洗工程S12と、めっき性判定工程S13と、冷間圧延工程S14とを備え、めっき性判定工程S13で当該めっき性判定方法が用いられる。
【0031】
当該粒界酸化層の膜厚算出方法は、
図4に示すそれ自体が本発明の一実施形態である膜厚算出装置1によって行うことができる。当該膜厚算出装置1は、
図4に示すめっき性判定装置2に用いられ、めっき性判定装置2は、
図4に示すめっき鋼板の製造装置100に用いられる。めっき鋼板の製造装置100は、母材となる鋼板Mを熱間圧延する熱間圧延部110と、熱間圧延部110で圧延された鋼板Mを酸によって表面の酸化スケールを除去する酸洗部120と、酸洗部120で酸化スケールが除去された鋼板Mを冷間圧延する冷間圧延部130とを備える。当該膜厚算出装置1、ひいてはこれを含むめっき性判定装置2は、酸洗部120の下流側かつ冷間圧延部130の上流側に配設される。つまり、後述する当該膜厚算出装置1の強度測定部10で測定する鋼板Mは、熱間圧延されているが、冷間圧延されていない。
【0032】
当該膜厚算出装置1は、酸洗処理後の鋼板Mに残存している粒界酸化層の膜厚を算出する膜厚算出装置であって、具体的には酸洗処理後の鋼板Mに残存している粒界酸化層の膜厚(算出膜厚1a)を算出する。当該膜厚算出装置1は、鋼板Mに含まれるとともに、上記粒界酸化層内の酸化物を構成している元素に対する蛍光X線強度を測定する強度測定部10と、強度測定部10の蛍光X線強度の測定位置と鋼板Mとの間の距離である測定距離Lを測定する距離測定部20と、強度測定部10で測定された上記蛍光X線強度を測定距離Lに基づき補正する強度補正部30と、上記粒界酸化層の膜厚を、予め抽出されている蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚との相関関係及び強度補正部30で補正された上記蛍光X線強度に基づいて算出する膜厚算出部40とを備える。
【0033】
めっき性判定装置2は、当該膜厚算出装置1に加え、膜厚算出部40で算出された上記粒界酸化層の膜厚(算出膜厚1a)を判定指標として、鋼板Mのめっき性を判定する判定部50を備える。
【0034】
〔めっき鋼板の製造方法〕
以下、当該めっき鋼板の製造方法の各工程について説明する。
【0035】
<熱間圧延工程>
熱間圧延工程S11では、母材となる鋼板Mを熱間圧延する。熱間圧延工程S11は、熱間圧延部110により行われる。
【0036】
具体的には、以下の手順による。例えば鋳造したスラブ等の鋼材をコイル状に巻き取り一旦室温まで冷却した鋳造コイルC1から、鋼板Mを通板方向Rに操出し、熱間圧延部110に装入する。なお、鋳造したスラブ等の鋼材を熱間圧延部110に直接装入することもできる。
【0037】
熱間圧延部110に装入された鋼板Mは均熱され、熱間圧延される。圧延条件は特に限定されない。熱間圧延された鋼板Mは、例えば500℃以上の高温にあり、リールに巻き取られる。巻取り後の冷却前熱延コイルC2は、常温まで冷却(例えば空冷)される。
【0038】
<酸洗工程>
酸洗工程S12では、熱間圧延工程S11後の鋼板Mを酸によって表面の酸化スケールを除去(酸洗処理)する。酸洗工程S12は、酸洗部120により行われる。
【0039】
具体的には、以下の手順による。常温となった冷却後熱延コイルC3から、鋼板Mを通板方向Rに操出し、酸洗部120に装入する。酸洗部120は、例えば酸が貯留された酸洗槽を有しており、鋼板Mを上記酸洗槽に浸漬することで、熱間圧延工程S11で形成された表面の酸化皮膜を溶解し、除去する。このとき、めっき性の観点から、鋼板Mの表面に粒界酸化層を残存させる。残存させる粒界酸化層の平均厚さとしては、5μm以上20μm以下が好ましい。ここで、「平均厚さ」とは、任意の10点を測定した厚さの平均を言う。
【0040】
上記酸洗処理に用いられる酸としては、塩酸、硫酸等を挙げることができるが、塩酸が好ましい。このように上記酸洗処理に用いる酸を塩酸とすることで、後述するめっき性判定工程S13の算出工程S5、すなわち当該膜厚算出方法での抽出の感度が向上し、上記粒界酸化層の膜厚の抽出精度をさらに高めることができる。
【0041】
<めっき性判定工程>
めっき性判定工程S13では、酸洗工程S12後の鋼板Mに残存している粒界酸化層から鋼板Mのめっき性を判定する。具体的には、酸洗工程S12後の鋼板Mに残存している粒界酸化層の膜厚を抽出し、そのめっき性を判定する。
【0042】
めっき性判定工程S13では、
図2に示す当該めっき性判定方法を用いる。当該めっき性判定方法の詳細については、後述する。
【0043】
膜厚算出位置としては、酸洗後にブライドロール等で鋼板Mに張力がかかり、板振動が抑止されている位置が好ましい。また、算出結果は、コイル単位で保存するとよい。
【0044】
算出した当該粒界酸化層の膜厚を用いると、粒界酸化層の膜厚に応じて鋼板Mのグループ化が可能となる。このように粒界酸化層の膜厚に応じてグループ化することで、例えば原板ばらつきを低減しためっき鋼板の製造が可能となる。また、原板に起因してめっき不良が発生し得る鋼板Mの事前予測が可能となるので、必要に応じて鋼板Mを廃棄する等の処置が行える。さらに、めっき不良原因について原板と製造条件との要因の切り分けが可能となるため、製造条件の最適化を行い易い。
【0045】
このめっき性判定工程S13は、鋼板Mの長手方向(通板方向R)に沿って連続的に行うことが好ましい。このようにめっき性判定工程S13を、鋼板Mの長手方向に沿って連続的に行うことで、部分的に粒界酸化層の膜厚が薄い領域が発生した場合、該当箇所をカットして使用することを可能とする。
【0046】
当該めっき鋼板の製造方法では、冷間圧延工程S14の前に酸洗工程S12が行われる。この酸洗工程S12の後で、かつ冷間圧延工程S14の前のめっき性判定工程S13において、酸洗処理後の鋼板Mに形成されている粒界酸化層の膜厚を抽出することで、次工程である冷間圧延工程S14以降の製造条件を粒界酸化層の膜厚に従って最適化できる。従って、当該めっき鋼板の製造方法を用いることで、めっき鋼板の製造効率を高めることができる。
【0047】
<冷間圧延工程>
冷間圧延工程S14では、めっき性判定工程S13後の鋼板Mを冷間圧延する。冷間圧延工程S14は、冷間圧延部130により行われる。
【0048】
具体的には、通板中の鋼板Mを圧延ロールに挟むことで、冷間圧延を行うことができる。冷間圧延部130の圧延ロールとしては、
図3に示すような複数対の冷間圧延ロールを配置させた構成としてもよいし、1基のミルで繰り返し圧延するリバース圧延機を用いてもよい。
【0049】
圧延された鋼板Mはリールに巻き取られて冷間圧延鋼板のコイル(冷延コイルC4)が形成される。
【0050】
冷延コイルC4に対して、常法である工程、つまり鋼材Mの表面を酸化する酸化工程、上記酸化工程で形成された酸化膜を還元する還元工程、及び上記還元工程後の鋼材Mの表面をめっきするめっき工程を経てめっき鋼板が得られる。
【0051】
〔めっき性判定方法〕
次に、上述しためっき鋼板の製造方法のめっき性判定工程S13で用いられる当該めっき性判定方法の各工程について説明する。
【0052】
<算出工程>
算出工程S5では、上記粒界酸化層の膜厚を算出する。上述したように、この算出工程S5では、
図1に示す当該粒界酸化層の膜厚算出方法が用いられる。以下、算出工程S5として、当該粒界酸化層の膜厚算出方法の各工程について説明する。
【0053】
(強度測定工程)
強度測定工程S1では、鋼板Mに含まれるとともに、上記粒界酸化層内の酸化物を構成している元素に対する蛍光X線強度を測定する。
【0054】
強度測定工程S1は、強度測定部10で行われる。強度測定部10としては、公知の蛍光X線分析装置を用いることができる。
【0055】
上記元素には、鋼板Mに含まれ、酸洗によりその酸化物が選択的に除去される元素が選択される。中でも上記元素がMnであることが好ましく、上記酸洗処理に用いられる酸が塩酸であり上記元素がMnであることがより好ましい。選択的に除去される酸化物とその除去される割合は、酸洗液の種類と元素の種類との組み合わせで決まる。上記酸洗処理に用いられる酸を塩酸とし、上記元素をMnとする組み合わせは、この除去される割合が高い。当該粒界酸化層の膜厚算出方法では、この除去される割合が高いほど測定の感度が向上するので、上記組み合わせとすることで膜厚の算出精度、ひいては当該めっき性判定方法での判定精度をさらに高めることができる。
【0056】
(距離測定工程)
距離測定工程S2では、強度測定工程S1で測定される上記蛍光X線強度の測定位置と鋼板Mとの間の距離である測定距離Lを測定する。
【0057】
距離測定工程S2は、距離測定部20で行われる。距離測定部20としては、例えば公知のレーザ変位計を用いることができる。
【0058】
(強度補正工程)
強度補正工程S3では、強度測定工程S1で測定される上記蛍光X線強度を測定距離Lに基づき補正する。
【0059】
強度補正工程S3は、強度補正部30で行われる。強度補正部30としては、公知のマイクロコントローラやパーソナルコンピュータ等の演算装置を用いることができる。
【0060】
仮に後述する相関関係を抽出した際の蛍光X線分析装置を用い、同等の測定距離L0で強度測定工程S1を行っていたとしても、実際の測定距離Lが相関関係を抽出した際の測定距離L0に対して誤差を生じる場合がある。蛍光X線強度は、測定距離Lの影響を受けるから、この誤差は、算出される膜厚の誤差に直結してしまう。この強度補正工程S3では、測定距離Lを実際に測定し、相関関係を抽出した際の測定距離L0との関係で上記測定距離により蛍光X線強度を規格化する。
【0061】
このように蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚との相関関係を抽出した際の測定距離L0に対して、実際に測定されている測定距離Lが異なる場合であっても、距離測定工程S2及び強度補正工程S3を備え、上記測定距離により蛍光X線強度を規格化することで、判定精度の低下を抑止することができる。
【0062】
例えば蛍光X線強度は測定距離Lの2乗に反比例して減少するから、強度測定工程S1で測定される上記蛍光X線強度をA、補正後の蛍光X線強度をAcとするとき、下記式1で補正することができる。
Ac=A×(L/L0)2 ・・・1
【0063】
あるいは、実際に予想される測定距離Lの範囲について予め蛍光X線強度を実測し、測定距離Lと補正後の蛍光X線強度Acとの関係を例えばルックアップテーブル形式でデータベースとし、このデータベースに基づいて補正値を決定してもよい。
【0064】
(膜厚算出工程)
膜厚算出工程S4では、上記粒界酸化層の膜厚を、予め抽出されている蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚との相関関係及び上記強度測定工程で測定された上記蛍光X線強度に基づいて算出する。
【0065】
膜厚算出工程S4は、膜厚算出部40で行われる。膜厚算出部40としては、公知のマイクロコントローラやパーソナルコンピュータ等の演算装置を用いることができる。膜厚算出部40として、強度補正部30の演算装置を共有してもよい。
【0066】
ここで、蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚との相関関係の抽出方法について説明する。上記相関関係は、膜厚が異なる粒界酸化層が残存している複数の鋼板試料に対して、
図5に示すように、個別X線強度測定工程S21と、折れ点抽出工程S22と、個別膜厚算出工程S23と、相関関係式決定工程S24とを有する抽出方法により抽出することができる。
【0067】
(個別X線強度測定工程)
個別X線強度測定工程S21では、個々の鋼板試料の上記元素に対する蛍光X線強度を測定する。
【0068】
この工程は、強度測定工程S1で用いる強度測定部10と同じ装置を用い、同等の測定距離Lで行うことが好ましい。このように強度測定工程S1と測定条件を揃えることで、誤差を低減することができる。
【0069】
(折れ点抽出工程)
折れ点抽出工程S22では、個別X線強度測定工程S21で測定した鋼板試料の酸洗処理時間と酸洗処理による単位面積当たりの質量減少分との関係を表す折れ線の折れ点を求める。
【0070】
個々の鋼板試料について、酸洗処理時間と酸洗処理による単位面積当たりの質量減少分との関係をとると、酸洗処理開始後一定の期間は粒界酸化層が除去されることにより質量が減少する。やがて粒界酸化層が完全に除去されると、続いて鋼板の素地が除去されることになる。粒界酸化層と鋼板の素地とは組成が異なるため、単位時間当たりに酸洗処理により溶解して減少する質量減少分、つまり質量減少速度が異なる。このため、個々の鋼板試料について、酸洗処理時間と酸洗処理による質量減少分との関係は、折れ線となる(例えば実施例の
図9参照)。この折れ点は粒界酸化層と鋼板の素地との境界を意味している。この折れ点は、例えば離散的にプロットされている酸洗処理時間と酸洗処理による質量減少分との関係を1点で折れる折れ線近似して求めることができる。
【0071】
(個別膜厚算出工程)
個別膜厚算出工程S23では、上記折れ点における上記質量減少分を鋼板の密度で除することで上記鋼板試料の粒界酸化層の換算膜厚を算出する。
【0072】
上記折れ点は、粒界酸化層が完全に除去されているが、鋼板素地はまだ除去されていない点を表しているから、上記折れ点における単位面積当たりの質量減少分は、鋼板試料に残存している粒界酸化層の単位面積当たりの全量を表す。粒界酸化層の密度は実質的に鋼板の密度と同等であるから、この折れ点における上記質量減少分を鋼板の密度、例えば鉄の7.87g/cm3で除すると、上記鋼板試料の粒界酸化層の膜厚を精度良く求めることができる。
【0073】
(相関関係式決定工程)
相関関係式決定工程S24では、個別X線強度測定工程S21及び個別膜厚算出工程S23で求められた個々の鋼板試料の蛍光X線強度及び粒界酸化層の換算膜厚から、蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚との相関関係式を抽出する。
【0074】
上述したように粒界酸化層は、比較的薄いため、鋼板Mの上記元素の蛍光X線強度を測定すると、鋼板素地に含まれる上記元素からの強度が重畳して蛍光X線強度が測定される。そして、粒界酸化層が薄いほど鋼板素地に含まれる上記元素からの強度が重畳する割合が高まる。ここで、粒界酸化層では上記元素を含む酸化物が選択的に除去されているから、粒界酸化層の上記元素の濃度は、鋼板素地に含まれる上記元素の濃度より低い。従って、粒界酸化層が薄いほど上記蛍光X線強度が高まるから、蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚とは負の相関を有することになる(例えば実施例の
図9参照)。
【0075】
相関関係式決定工程S24では、この相関を相関関係式で表す。上記相関関係式としては、例えば1次式を用いるとよい。粒界酸化層の膜厚には所望の値があり、この所望値となるように酸洗処理条件を決めるから、大きくばらつくことは想定し難く、1次式近似で十分な精度を得ることができる。1次式近似としては、例えば公知の最小二乗法を用いることができる。
【0076】
このように個別膜厚算出工程S23で求められた粒界酸化層の膜厚と、個別X線強度測定工程S21で求められた鋼板試料の蛍光X線強度との相関関係式を決定することで、強度補正工程S3で補正された蛍光X線強度に基づいて容易かつ精度よく上記粒界酸化層の膜厚(算出膜厚1a)を算出することができる。
【0077】
<判定工程>
判定工程S6では、算出工程S5で算出された上記粒界酸化層の膜厚を判定指標として、鋼板Mのめっき性を判定する。具体的には、残存する粒界酸化層の厚さが所望の値であるか否かを判定する。判定においては、正確に所望の値に等しくなくとも、一定の範囲内にある場合をめっき性がよいと判定してもよい。
【0078】
判定工程S6は、判定部50で行われる。判定部50としては、公知のマイクロコントローラやパーソナルコンピュータ等の演算装置を用いることができる。判定部50として、強度補正部30又は膜厚算出工程S4の演算装置を共有してもよい。
【0079】
<利点>
当該粒界酸化層の膜厚算出方法では、鋼板Mに含まれるとともに、上記粒界酸化層内の酸化物を構成している元素に対する蛍光X線強度を測定する。上記蛍光X線強度は、酸洗処理後の鋼板Mに残存している粒界酸化層の膜厚と高い相関性を有するので、上記蛍光X線強度に基づいて上記膜厚を高い精度で算出できる。
【0080】
当該めっき性判定方法では、本発明の粒界酸化層の膜厚算出方法を用いて、粒界酸化層の膜厚を高い精度で算出できる。従って、この算出された膜厚に基づいて鋼板Mのめっき性を高い精度で判定できる。
【0081】
当該めっき鋼板の製造方法は、酸洗工程S12の後に本発明のめっき性判定方法を用いることで、高い精度で鋼板Mのめっき性を判定することができる。これにより、酸洗工程S12以降の製造条件を鋼板Mのめっき性に従って最適化できる。従って、当該めっき鋼板の製造方法を用いることで、めっき鋼板の製造効率を高めることができる。
【0082】
当該膜厚算出装置1は、鋼板Mに含まれるとともに、上記粒界酸化層内の酸化物を構成している元素に対する蛍光X線強度を測定する強度測定部10を備える。上記蛍光X線強度は、酸洗処理後の鋼板Mに形成されている粒界酸化層の膜厚と高い相関性を有するので、当該膜厚算出装置1の膜厚算出部40は、上記蛍光X線強度に基づいて粒界酸化層の膜厚を精度よく算出することができる。また、当該膜厚算出装置1は、測定距離Lの影響を受ける蛍光X線強度を測定距離Lにより規格化することで、算出精度の低下を抑止できる。従って、当該膜厚算出装置1は、粒界酸化層の膜厚を高い精度で算出できる。
【0083】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係る粒界酸化層の膜厚算出方法及び膜厚算出装置について説明する。
【0084】
〔膜厚算出装置〕
図6に示す膜厚算出装置3は、酸洗処理後の鋼板Mに残存している粒界酸化層の膜厚を算出する膜厚算出装置である。当該膜厚算出装置3は、
図1に示す膜厚算出装置1に代えて用いることができる。
【0085】
当該膜厚算出装置3は、鋼板Mに含まれるとともに、上記粒界酸化層内の酸化物を構成している元素に対する蛍光X線強度を測定する強度測定部10と、強度測定部10の蛍光X線強度の測定位置と鋼板Mとの間の距離である測定距離Lを測定する距離測定部20と、強度測定部10で測定された上記蛍光X線強度を測定距離Lに基づき補正する強度補正部30と、上記粒界酸化層の膜厚(算出膜厚1a)を、予め抽出されている蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚との相関関係及び強度補正部30で補正された上記蛍光X線強度に基づいて算出する膜厚算出部41とを備える。また、当該膜厚算出装置3は、記憶部60をさらに備える。
【0086】
強度測定部10、距離測定部20及び強度補正部30は、
図1の強度測定部10、距離測定部20及び強度補正部30と同様に構成できるので、同一符号を付して詳細説明を省略する。
【0087】
(記憶部)
記憶部60は、鋼板Mの製造条件に応じて抽出された複数の相関関係を記憶する。
【0088】
鋼板Mの製造条件は、例えば酸洗処理に用いられる酸、鋼板Mに含まれる元素の種類とその濃度などを挙げることができる。中でも鋼板Mの製造条件としては、Mn濃度が好ましい。蛍光X線強度は、Mn濃度に依存することが知られている。
【0089】
蛍光X線強度のMn濃度依存性について詳説すると、鋼板素地と粒界酸化層との2層構造を持つ鋼板Mに単波長のX線を入射した場合、鋼板素地及び粒界酸化層のMn濃度は一定と仮定すると、鋼板M中のMnから発生する蛍光X線の相対強度は下記式2で表される。ここで、W1は粒界酸化層中のMn濃度(質量%)、W2は鋼板素地中のMn濃度(質量%)、T1は粒界酸化層の膜厚(cm)、ρ1は粒界酸化層の密度(g/cm3)、Aは定数で下記式3により表される。Const.は、測定元素及びX線の光学系で定まる定数である。また、下記式3で、μ1(λ)は、入射X線の粒界酸化層での質量吸収係数(cm2/g)、μ1(ip)は、蛍光X線の粒界酸化層での質量吸収係数(cm2/g)、Φは入射X線の入射角(rad)、Ψは蛍光X線の検出角(rad)である。
【0090】
【0091】
粒界酸化層内の主成分はFeであるため、粒界酸化層内での質量吸収係数は変化しないと仮定すると、Mn濃度等がばらついてもAは一定と考えられる。つまり、蛍光X線強度Iは、W1、W2及びT1の関数となる。
【0092】
いま、鋼板Mの設計値としてMn濃度2.0質量%を仮定し、製鋼ばらつきによりMn濃度が1.8質量又は2.2質量%に変化したと想定する。また、粒界酸化層におけるMn酸化物形成量を一律0.5質量%とし、酸洗工程にてMn酸化物が完全に除去されると仮定すると、酸洗後の粒界酸化層中のMn濃度W
1は1.3質量%~1.7質量%となる。これらの数値を用いて上記式2を用いて蛍光X線の相対強度と粒界酸化層厚の相関関係を計算すると、
図7のグラフが得られる。ここで、入射X線はRh Ka線、蛍光X線はMn Ka線、入射X線の入射角は60°、検出角は90°、粒界酸化層の密度は7.87g/cm
3として計算している。また、粒界酸化層中のMn濃度1.5質量%、鋼板素地のMn濃度2.0質量%の場合における粒界酸化層の膜厚0μmの蛍光X線強度を1として規格化した。
【0093】
図7のグラフから鋼板素地中のMn濃度が変化すると、同じ蛍光X線強度が得られたとしても、粒界酸化層の膜厚は変わり得ることが分かる。このため、当該膜厚算出装置3では、鋼板Mの製造条件(この場合鋼板素地中のMn濃度)に応じて抽出された複数の相関関係を準備している。
【0094】
記憶する相関関係の数は、特に限定されない。鋼板Mの製造条件やそれに伴う相関関係の差異に応じて適宜決定される。
【0095】
(膜厚算出部)
膜厚算出部41は、鋼板Mの製造条件に応じて上記複数の相関関係から1の相関関係を選択する機能を有する。このように鋼板Mの製造条件に応じて適切な相関関係を選択可能とすることで、膜厚の算出精度をさらに向上させることができる。
【0096】
上記機能を有する点を除き、膜厚算出部41は、
図4に示す膜厚算出部40と同様に構成できるので、詳細説明を省略する。
【0097】
〔粒界酸化層の膜厚算出方法〕
図6に示す膜厚算出装置3を用いた粒界酸化層の膜厚算出方法は、酸洗処理後の鋼板Mに残存している粒界酸化層の膜厚算出方法であって、鋼板Mに含まれるとともに、上記粒界酸化層内の酸化物を構成している元素に対する蛍光X線強度を測定する強度測定工程と、上記強度測定工程で測定される上記蛍光X線強度の測定位置と鋼板Mとの間の距離である測定距離Lを測定する距離測定工程と、上記強度測定工程で測定される上記蛍光X線強度を測定距離Lに基づき補正する強度補正工程と、上記粒界酸化層の膜厚を、予め抽出されている蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚との相関関係及び上記強度補正工程で測定された上記蛍光X線強度に基づいて算出する膜厚算出工程とを備える。
【0098】
上記強度測定工程、上記距離測定工程及び上記強度補正工程は、第1実施形態の強度測定工程S1、距離測定工程S2及び強度補正工程S3と同様である。
【0099】
(膜厚算出工程)
当該粒界酸化層の膜厚算出方法では、鋼板Mの製造条件に応じて複数の相関関係が予め抽出されている。例えば鋼板MのMn濃度に応じて複数の相関関係が予め抽出されている場合を例にとり説明するが、鋼板Mの製造条件が鋼板MのMn濃度に限定されることを意味するものではない。なお、それぞれの相関関係は、例えば第1実施形態で説明した蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚との相関関係の抽出方法を用いて行うことができる。
【0100】
上記複数の相関関係は、Mn濃度が異なる。このMn濃度は、例えば鋼板Mの設計基準値を中心として製造ばらつきを考慮した範囲がカバーされるように決定するとよい。
図7のグラフの例では、設計基準値であるMn濃度2.0質量%の場合に加え、製造ばらつき範囲をカバーすべくMn濃度1.8質量%及びMn濃度2.2質量%の合計3つの相関関係が準備されることとなる。
【0101】
上記膜厚算出工程では、鋼板Mの製造条件に応じて上記複数の相関関係から1の相関関係を選択する。製造条件がMnである場合、鋼板MのMn濃度は、例えば操業中に行われる母材の測定結果を用いることができる。この測定結果を用いることで、個々の鋼板MのMn濃度を知ることができるので、測定結果に近いMn濃度の相関関係を選択することができる。
【0102】
この選択した相関関係を用いて、蛍光X線強度に基づいて容易かつ精度よく上記粒界酸化層の膜厚(算出膜厚1a)を算出することができる。
【0103】
<利点>
例えば蛍光X線強度は、Mn濃度に依存する。このように鋼板Mの製造条件が異なる場合、上記相関関係は異なり得る。このため、当該粒界酸化層の膜厚算出方法では、鋼板Mの製造条件に応じて適切な相関関係を選択可能とすることで、膜厚の算出精度をさらに向上させることができる。従って、鋼板Mに製造ばらつきが生じても、例えば粒界酸化層から鋼板Mのめっき性を精度よく判定できる。
【0104】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態に係るめっき性判定方法について説明する。
【0105】
〔めっき性判定方法〕
図8に示すめっき性判定方法は、酸洗処理後の鋼板Mに残存している粒界酸化層から鋼板Mのめっき性を判定するめっき性判定方法であって、鋼板Mに含まれるとともに、上記粒界酸化層内の酸化物を構成している元素に対する蛍光X線強度を測定する強度測定工程S1と、強度測定工程S1で測定される上記蛍光X線強度の測定位置と鋼板Mとの間の距離である測定距離Lを測定する距離測定工程S2と、強度測定工程S1で測定される上記蛍光X線強度を測定距離Lに基づき補正する強度補正工程S3と、強度補正工程S3で測定された上記蛍光X線強度に基づいて鋼板Mのめっき性を直接判定する判定工程S7とを備える。当該めっき性判定方法は、第1実施形態の
図3に示すめっき性判定工程S13で、
図2に示すめっき性判定方法に代えて用いることができる。
【0106】
強度測定工程S1、距離測定工程S2及び強度補正工程S3は、
図2に示す第1実施形態のめっき性判定工程における強度測定工程S1、距離測定工程S2及び強度補正工程S3と同様であるので、詳細説明を省略する。
【0107】
<判定工程>
図2に示す第1実施形態のめっき性判定工程では、粒界酸化層の膜厚を算出して判定指標としたのに対し、当該めっき性判定工程では、蛍光X線強度の数値自体から、粒界酸化層の膜厚を介さずに直接めっき性を判定する。
【0108】
上述したように、蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚とは相関があり、粒界酸化層の膜厚が決まればめっき性を判定することができる。この場合、蛍光X線強度が分かればめっき性の判定結果は唯一に決まるから、めっき性を蛍光X線強度の関数として規定することができる。この場合、粒界酸化層の膜厚は、陽としては算出されないが、実質的に粒界酸化層の膜厚を算出して判定した結果と同一の結果を得ることができる。
【0109】
<利点>
当該めっき性判定方法では、鋼板Mに含まれるとともに、上記粒界酸化層内の酸化物を構成している元素に対する蛍光X線強度を測定する。上記蛍光X線強度は、酸洗処理後の鋼板Mに残存している粒界酸化層の膜厚と高い相関性を有するので、上記蛍光X線強度に基づいて鋼板Mのめっき性を直接高い精度で算出できる。
【0110】
[その他の実施形態]
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0111】
上記実施形態では、当該めっき性判定方法が強度補正工程を備える場合を説明したが、強度補正工程は必須の構成ではなく、省略可能である。この場合、めっき性判定装置の強度補正部も省略することができる。
【0112】
強度補正工程を備えないめっき性判定方法では、機械的に測定距離を一定にする距離補正工程を備えることが好ましい。この場合、めっき性判定装置には、機械的に測定距離を一定にする距離補正部が設けられる。機械的に測定距離を一定にする方法としては、適宜選択可能であるが、例えば距離測定工程で測定された測定距離に基づいて、強度測定部を移動させる方法を挙げることができる。なお、強度補正工程を備えない当該めっき性判定方法では、判定工程において、粒界酸化層の膜厚を、予め抽出されている蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚との相関関係及び強度測定工程で測定された蛍光X線強度に基づいて算出する。
【0113】
距離測定工程を備えず、強度補正工程のみを備える構成とすることもできる。例えば強度測定工程において、対象の元素に加えてFe元素の蛍光X線強度を取得し、このFe元素の強度の差異に基づいて補正することもできる。
【0114】
さらに、距離測定工程及び強度補正工程を共に備えないめっき性判定方法も、本発明の意図するところである。例えば測定距離の変動が小さいことが担保されている環境下においては、補正を行わなくとも粒界酸化層の膜厚を精度よく算出できる。この場合、めっき性判定装置では距離測定部及び強度補正部の双方を省略することができる。
【0115】
上記第1実施形態では、蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚との相関関係を、鋼板試料の酸洗処理時間と酸洗処理による質量減少分との関係から求める抽出方法を示したが、相関関係の抽出方法はこれに限定されない。例えば個々の鋼板試料の断面からSEM観察等により粒界酸化層の膜厚を求め、相関関係を規定してもよい。
【0116】
上記第1実施形態では、蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚との相関関係を、相関関係式で表す方法を示したが、例えばルックアップテーブル形式で表す等他の方法で相関関係を表してもよい。
【0117】
上記実施形態では、当該膜厚算出装置が、酸洗部の下流側かつ冷間圧延部の上流側に配設される場合を説明したが、当該膜厚算出装置は、酸洗部の下流側である限り他の位置に配設されてもよい。同様に当該めっき鋼板の製造方法において、めっき性判定工程は、酸洗工程より後であれば、冷間圧延工程の前には限定されない。冷間圧延された鋼板を当該めっき性判定装置の強度測定部で測定しても同様の効果を奏する。
【0118】
上記第1実施形態及び第2実施形態では、粒界酸化層の膜厚を算出して判定指標とする場合を説明し、上記第3実施形態では、蛍光X線強度の数値自体から直接めっき性を判断する場合を説明したが、判定指標は他の指標であってもよい。
【実施例0119】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0120】
鋼板としてMnを2.35質量%含むものを準備した。
【0121】
第1実施形態の膜厚算出工程S4で述べた蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚との相関関係の抽出方法に従って相関関係式を決定するため、膜厚が異なる粒界酸化層が残存している15個の鋼板試料を準備した。
【0122】
まず、個々の上記鋼板試料について、蛍光X線強度を測定した。蛍光X線分析装置には、Rigaku製のSimultix-14を用いた。
【0123】
次に、個々の鋼板試料の酸洗処理時間と酸洗処理による単位面積当たりの質量減少分との関係を求めた。その一例を
図9に示す。
図9に示すように、個々の鋼板試料について、酸洗処理時間と酸洗処理による質量減少分との関係は、折れ線となった。上記折れ点における上記質量減少分を鉄の密度7.87g/cm
3で除して、個々の鋼板試料の粒界酸化層の換算膜厚を算出した。
【0124】
図10に、個々の上記鋼板試料について、蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚との関係をプロットしたグラフを示す。
図10のグラフから分かるように、蛍光X線強度と粒界酸化層の膜厚との間には負の相関があることが分かる。
【0125】
蛍光X線強度x(kcps)と、粒界酸化層の膜厚y(μm)との関係を最小二乗法により1次式近似で算出したところ、下記式4を得た。
y=-0.0832x+28.216 ・・・4
【0126】
15個の上記鋼板試料について、上記相関式4を用いて本発明のめっき性判定方法に従って算出した粒界酸化層の膜厚と実測値との相関を、
図11に示す。なお、実測値は、個々の鋼板試料について上述の酸洗処理時間と酸洗処理による質量減少分との折れ線における折れ点から質量減少分を算出し鉄の密度7.87g/cm
3で除して算出した換算膜厚値である。
【0127】
図11の結果から、測定範囲である2μm以上8μm以下の範囲で、標準偏差σ=0.88μmの高い精度で測定できていることが分かる。従って、蛍光X線強度に基づいて算出する粒界酸化層の膜厚を判定指標とすることで、鋼板のめっき性を判定できると言える。
本発明の粒界酸化層の膜厚算出方法及び膜厚算出装置は、酸洗処理後の鋼板に残存している粒界酸化層の膜厚を高い精度で算出できる。本発明のめっき性判定方法は、酸洗処理後の鋼板に残存している粒界酸化層から鋼板のめっき性を精度よく判定できる。また、本発明のめっき鋼板の製造方法は、粒界酸化層から鋼板のめっき性を精度よく判定できるめっき性判定方法を備えており、製造効率を高められる。