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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007503
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】磁気コアデバイス及び電力変換器
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20230111BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022103053
(22)【出願日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】21182024
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518100258
【氏名又は名称】ヴァレオ シーメンス イーオートモーティブ フランス エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】オーレリアン、プイイ
(72)【発明者】
【氏名】フリートヘルム、キュンツェ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ、ロペス
(72)【発明者】
【氏名】ギード、ラーセク
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA01
5H770QA01
5H770QA14
5H770QA25
5H770QA28
5H770QA33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造コストを低減しつつ、磁気コアデバイス及び電力変換器の堅牢性を改善させ得る固定機構を提供する。
【解決手段】電力変換器に使用される磁気コアデバイス1は、少なくとも1つの固定脚部7と、磁気コアを備える本体部51と、を備える。少なくとも1つの固定脚部7は、本体部51から延在し、磁気コアデバイス1を、電力変換器のハウジングなどの対象構成要素にしっかりと固定する。少なくとも1つの固定脚部7及び本体部51は、1つの部品として一体的に形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気コアデバイス(1)であって、
磁気コア(3)を備える本体部(51)と、
前記本体部(51)から延在し、前記磁気コアデバイス(1)を対象構成要素(110)にしっかりと固定するように構成される少なくとも1つの固定脚部(7)であって、前記少なくとも1つの固定脚部(7)及び前記本体部(51)が、1つの部品として一体的に形成される、少なくとも1つの固定脚部(7)と
を備える、磁気コアデバイス(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの固定脚部(7)が、前記本体部(51)の側壁(55a~55d)のうちの少なくとも1つから、及び/又は前記本体部(51)の底部から延在し、並びに/あるいは
前記磁気コアデバイス(1)が、前記本体部(51)の2つの対向する側壁(55a~55d)に配置される開口部(61a)を備える少なくとも1つの通路(61)を更に備え、少なくとも1つの導電体(121)が通過し得るように、前記少なくとも1つの通路(61)が、構成される、請求項1に記載の磁気コアデバイス(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの固定脚部(7)及び前記開口部(61a)が、前記本体部(51)の同じ側壁に配置されない、請求項2に記載の磁気コアデバイス(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの固定脚部(7)が、前記対象構成要素(110)の固定点に配置される対象固定孔に対応する主固定孔(72)を備え、これにより、前記主固定孔(72)及び前記対象固定孔に、ねじ又はリベットを取り付けることによって、前記少なくとも1つの固定脚部(7)が、前記対象構成要素(110)の前記対象点に固定される、請求項1から3のいずれか一項に記載の磁気コアデバイス(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの固定脚部(7)が、前記固定孔(72)に対応する中心孔を備えるインサート(73)を備え、前記インサート(73)が、前記少なくとも1つの固定脚部(7)に埋め込まれ、金属材料又はプラスチックで作られた圧縮リミッタとして利用される、請求項4に記載の磁気コアデバイス(1)。
【請求項6】
前記本体部(51)の前記底部(54)に配置され、更にクリップ留め又はスナップ嵌めによって前記対象構成要素(110)上に配置された少なくとも1つのインターロック締結具と係合するように構成される、少なくとも1つの補助締結具(22)を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の磁気コアデバイス(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの補助締結具(22)が、1つの部品として前記本体部(51)と一体的に作られる、請求項6に記載の磁気コアデバイス(1)。
【請求項8】
前記本体部(51)の2つの対向する側壁(55c,55d)から延在する複数の固定脚部(7)を備え、前記固定脚部(7)が、前記2つの対向する側壁(55c,55d)と一体的に形成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の磁気コアデバイス(1)。
【請求項9】
前記本体部(51)が、前記磁気コア(3)を少なくとも部分的に収容するように構成されるホルダ(8)を備え、前記少なくとも1つの固定脚部(7)が、前記ホルダ(8)から延在し、更に1つの部品として前記ホルダ(8)と一体的に形成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の磁気コアデバイス(1)。
【請求項10】
前記本体部(51)の前記側壁(55a~55d)が、前記磁気コア(3)を収容するように構成されるコアチャンバを画定する前記ホルダ(8)の側壁である、請求項2と組み合わせた請求項9に記載の磁気コアデバイス(1)。
【請求項11】
前記ホルダ(8)が、前記コアチャンバのチャンバ開口部を閉鎖するように構成されるホルダキャップ(55b)を備える、請求項10に記載の磁気コアデバイス(1)。
【請求項12】
前記ホルダキャップ(55b)が、前記少なくとも1つの固定脚部(7)が配置される前記少なくとも1つの側壁(55c,55d)とは異なる、請求項11に記載の磁気コアデバイス(1)。
【請求項13】
前記ホルダ(8)が、隆起縁部を有する浅板の形状であり、前記磁気コア(3)を保持するように構成される、請求項9に記載の磁気コアデバイス(1)。
【請求項14】
前記ホルダ(8)が、絶縁材料で作られ、並びに/あるいは、
前記磁気コア(3)が、ナノ結晶材料、フェライト材料、及び鉄粉材料のうちの1つ又は任意の組合せで作られ、前記磁気コアが、2つのE字形部分(31,32)又は2つのU字形部分を備える、請求項9から13のいずれか一項に記載の磁気コアデバイス(1)。
【請求項15】
前記磁気コアデバイス(1)を収容するように構成されるハウジング(110)と、
請求項1から14のいずれか一項に記載の磁気コアデバイス(1)であって、本体部(51)と、前記磁気コアデバイス(1)を前記ハウジング(110)にしっかりと固定するように構成される少なくとも1つの固定脚部(7)と、を備え、前記少なくとも1つの固定脚部(7)が、前記本体部(51)から延在し、1つの部品として前記本体部(51)と一体に形成される、磁気コアデバイス(1)と
を備える、電力変換器(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気コアデバイス及び電力変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車又はハイブリッド電気自動車の電力変換器は、入力電圧を、車両の電気駆動装置又は他の電気機器に供給される出力電圧に、変換するように設計される。
【0003】
既知のように、電気自動車又はハイブリッド電気自動車は、電気モータと、直流(DC)電圧を交流(AC)電圧に変換して、電気モータを駆動するインバータと、を備える電気駆動装置を備える。インバータに加えて、電気自動車又はハイブリッド電気自動車は、AC電気ネットワークに接続され、したがって電気を車両のバッテリに充電する車載充電器、又はDC/DC変換器などの他の電力変換器を備える。
【0004】
電力変換器の取り付けられたハウジング内に収容され、そのハウジングに固定された1つ又は複数の磁気コアデバイスを、電力変換器は備える。電力変換器の要素の電磁干渉(EMI)など、望ましくない影響を防止又は制限するために、磁気コアデバイスを利用することができる。
【0005】
一般に、いくつかの固定機構を使用することができる。例えば、磁気コアデバイスは、接着剤を用いて、スナップ嵌めによって、又はクリップ留めによって、ハウジングの内面に取り付けられる。しかしながら、電力変換器が、振動、制御不能な衝撃及び/又は予想外の高温を受けるとき、上述の固定機構は、特に磁気コアデバイスが重いとき、磁気コアデバイスを本来の所定の位置に引き続き適切に固定することを、保証できない。これは、磁気コアデバイス及び/又は電力変換器全体の性能の低下、又は誤動作さえももたらす。更に、接着剤の使用は、電力変換器の製造コストを増加させる。
【0006】
そこで、本発明は、製造コストを低減しつつ、磁気コアデバイス及び電力変換器の堅牢性を改善させ得る固定機構を提供することを主目的とする。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、電力変換器に使用される磁気コアデバイスに関し、磁気コアデバイスは、少なくとも1つの固定脚部と、磁気コアを備える本体部と、を備える。少なくとも1つの固定脚部は、本体部から延在し、磁気コアデバイスを、電力変換器のハウジングなどの対象構成要素に、しっかりと固定するように構成される。少なくとも1つの固定脚部及び本体部は、磁気コアデバイスの堅牢性を向上させ、固定効果を改善させるために、1つの部品として一体的に形成される。
【0008】
したがって、本発明は、特に振動、衝撃及び/又は高温などの制御されていない又は予期しない状況において、固定効果を大幅に改善し得る。したがって、本発明は、磁気コアデバイス及び電力変換器の堅牢性を改善し得る。更に、組立てのために接着剤を、もはや必要とせず、これにより、組立てプロセスが簡素化され、製造コストが低減される。
【0009】
一実施形態によれば、少なくとも1つの固定脚部は、本体部の側壁の少なくとも1つから、及び/又は磁気コアデバイスの本体部の底部から延在する。
【0010】
一実施形態によれば、側壁の少なくとも1つは平坦であり得る。側壁の各々は平坦であり得る。
【0011】
一実施形態によれば、底部は平坦である。
【0012】
一実施形態によれば、本体部は、頂部を更に備える。頂部は平坦であり得る。
【0013】
一実施形態によれば、本体部は、平行六面体の形状を有する。本体部は、対をなして対向する平行な4つの側壁、底部、及び頂部を有する。底部及び頂部は、対向し、平行である。
【0014】
一実施形態によれば、本体部の2つの対向する側壁に配置された開口部を備える少なくとも1つの通路を更に備える磁気コアデバイス、少なくとも1つの通路は、少なくとも1つの導電体が通過し得るように構成される。少なくとも1つの導電体は、電力変換器のバスバー(複数可)の複数の導電体板であってもよい。
【0015】
一実施形態によれば、少なくとも1つの通路は、導電体に合わせられる。導電体が通路を通過するとき、通路の体積の90%超、特に95%超、特に98%超が占有される。
【0016】
一実施形態によれば、磁気コアデバイスは、いくつかの通路、特に2つの通路を備える。各通路は、1つの単一の導電体専用である。
【0017】
一実施形態によれば、通路は、特に底部から頂部の方向に互いに重なり合う。
【0018】
好ましくは、少なくとも1つの固定脚部及び開口部(複数可)は、本体部の同じ側壁に配置されない。
【0019】
好ましくは、少なくとも1つの固定脚部も開口部(複数可)も、底部及び頂部に配置されない。
【0020】
一実施形態によれば、少なくとも1つの固定脚部は、対象構成要素の固定点に配置された対象固定孔に対応する主固定孔を備え、これにより、少なくとも1つの固定脚部を対象構成要素の対象点にしっかりと固定するために、主固定機構を、主固定孔及び対象固定孔に、ねじ又はリベットを取り付けることによって、設けることができる。したがって、磁気コアデバイスの本体部を、対象構成要素上の所定の位置(例えば、電力変換器のハウジング)に固定することができる。
【0021】
一実施形態によれば、少なくとも1つの固定脚部は、固定孔に対応する中央孔を備えるインサートを備える。インサートは、少なくとも1つの固定脚部に埋め込まれており、金属材料又はプラスチックから作られた圧縮リミッタとして利用される。
【0022】
更に、磁気コアデバイスの底部と接触する対象構成要素の表面に加えて、固定点は、磁気コアデバイスの質量によって生じる圧力を共有するための追加の領域を形成し、磁気コアデバイスが、対象構成要素から外れることを防止し得る。
【0023】
一実施形態によれば、ハウジングの底壁に配置され、対象構成要素に配置された少なくとも1つのインターロック締結具と係合するように構成された少なくとも1つの補助締結具を、磁気コアデバイスは備える。そのような補助固定機構は、例えばクリップ留め又はスナップ嵌めによって、磁気コアデバイスを対象構成要素に取り付け得る。
【0024】
一実施形態によれば、少なくとも1つの補助締結具は、1つの部品として本体部と一体的に作られる。
【0025】
好ましい実施形態によれば、磁気コアデバイスは、本体部の2つの対向する側壁から延在する複数の固定脚部を備える。固定脚部は、2つの対向する側壁と一体的に形成され、これにより、磁気コアデバイスの対象構成要素への取付けを更に安定的にする。
【0026】
一実施形態によれば、磁気コアデバイスは、磁気コアデバイスを対象構成要素上の所定の位置(例えば、電力変換器のハウジング)に位置決めするように構成される位置決めモジュールを、更に備える。位置決めモジュールは、好ましくは、以下の手段、すなわち、孔(複数可)、横長形状(複数可)(oblong(s))、及びピン(複数可)のうちの少なくとも1つを備える。
【0027】
一実施形態によれば、磁気コアデバイスの本体部は、磁気コアを少なくとも部分的に収容するように構成されるホルダを備え、少なくとも1つの固定脚部は、ホルダから延在し、1つの部品としてホルダと一体的に形成される。
【0028】
一実施形態によれば、本体部の側壁は、磁気コアを収容するように構成されるコアチャンバを画定するホルダの側壁である。
【0029】
一実施形態によれば、本体部は、単一のホルダを備える。
【0030】
一実施形態によれば、ホルダは、コアチャンバのチャンバ開口部を閉鎖するように構成されるホルダキャップを備える。好ましくは、ホルダキャップは、少なくとも1つの固定脚部が配置される少なくとも1つの側壁とは異なり、これにより、固定脚部(複数可)の存在は、磁気コアをコアチャンバ内に配置する組立工程を複雑にしない。ホルダキャップは、好ましくは、開口部のうちの1つが配置される側壁のうちの1つであり、そのため、コアチャンバのすべての点は、外部から容易にアクセス可能である。コアチャンバを充填するために少なくとも1つの通路を迂回する必要はない。
【0031】
一実施形態によれば、ホルダキャップを除いて、ホルダの残りは、1つの部品として一体的に形成される。ホルダの残りの部分は、互いに固定された、いくつかの独立した部品を備えていない。
【0032】
一実施形態によれば、ホルダは、単一のコアチャンバを備える。
【0033】
一実施形態によれば、ホルダは、単一のホルダキャップを備える。
【0034】
一実施形態によれば、ホルダは、隆起縁部を有する浅板(shallow-plate)の形状であり、磁気コアを保持するように構成される。
【0035】
好ましい実施形態によれば、ホルダは、絶縁材料で作られる。
【0036】
一実施形態によれば、磁気コアは、ナノ結晶材料、フェライト材料、及び鉄粉材料のうちの1つ又は任意の組合せで作られる。
【0037】
一実施形態によれば、磁気コアは、2つのE字形部分又は2つのU字形部分を備える。
【0038】
本発明はまた、ハウジングと、ハウジング内に収容された上記の磁気コアデバイスと、を備える電力変換器に関する。磁気コアデバイスは、少なくとも1つの固定脚部と、磁気コアを備える本体部と、を備える。磁気コアデバイスをハウジングにしっかりと固定するように構成される少なくとも1つの固定脚部は、本体部から延在し、1つの部品として本体部と一体的に形成される。
【0039】
本発明による電力変換器は、DC電圧をAC電圧に変換して、電気自動車又はハイブリッド電気自動車の電気駆動装置の電気モータを駆動するインバータであってもよい。AC電圧は、多相AC電圧、特に三相AC電圧であってもよい。あるいは、電力変換器は、電気自動車又はハイブリッド電気自動車の車載充電器又はDC/DCコンバータであってもよい。
【0040】
本発明の更なる態様は、電気モータと、電気モータを駆動するためにDC電圧をAC電圧に変換するように構成される上述のインバータと、を備える電気駆動装置である。
【0041】
本発明の別の態様は、電気自動車又はハイブリッド電気自動車を駆動するように構成される電気駆動装置を備える、電気自動車又はハイブリッド電気自動車である。
【0042】
いくつかの例示的な実施形態を参照して実施形態を説明したが、本開示の原理の範囲内に入る他の修正及び実施形態が、当業者によって導き出され得ることを理解されたい。
【0043】
本発明のこれら及び他の目的、特徴、態様及び利点は、添付の図面と併せて、本発明の好ましい実施形態を開示する以下の詳細な説明から当業者には明らかになるであろう。
【0044】
本発明は、以下の説明を読み、非限定的な例として与えられた添付の図面を参照することによって、好適に理解され、添付の図面では、同一の参照符号が類似の対象物に付与される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の一実施形態による、電力変換器を示す図である。
図2】本発明の一実施形態による、電力変換器の磁気コアデバイス、延長脚部を備える磁気コアデバイスを、異なる視点で示す図である。
図3】本発明の一実施形態による、電力変換器の磁気コアデバイス、延長脚部を備える磁気コアデバイスを、異なる視点で示す図である。
図4】本発明の一実施形態による、磁気コアデバイスの断面図である。
図5】本発明の一実施形態による、磁気コアデバイスが有し得るホルダの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を、図面を参照して以下に詳述する。本開示から当業者には明らかなように、本発明のこれらの実施形態の以下の説明は、例示のみで提供され、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって定義される本発明を限定する目的ではない。
【0047】
本発明は、車輪と、車両の車輪のうちの少なくとも1つを少なくとも間接的に駆動するように構成される電気駆動装置と、を備える電気車両又はハイブリッド電気車両に関する。電気駆動装置は、電気モータと、電力変換器としてのインバータと、を備え、インバータは、インバータによって生成されたAC電圧によって電気モータを駆動するように構成される。あるいは、電力変換器は、電気自動車又はハイブリッド電気自動車の車載充電器又はDC/DC変換器であってもよい。
【0048】
図1は、本発明の一実施形態による電力変換器100を示す。電力変換器100は、上述したように、電気モータを駆動するために、DC電圧をAC電圧に変換するように構成されるインバータとすることができる。AC電圧は、多相AC電圧、特に三相AC電圧であってもよい。
【0049】
電力変換器100は、ハウジング110と、1つ又は複数の磁気コアデバイス1と、ハウジング110の底板に取り付けられた電子基板と、を備える。ハウジング110は、好ましくは導電性材料(例えば、AlSi12(fe)など)で作られ、ダイカストプロセスによって製造され得る。電子基板は、プリント回路基板(PCB)であることが好ましい。DCバスバーである少なくとも1つのバスバー120は、導電体121のセット(すなわち、正端子及び負端子)を備える。導電体121は、好ましくは板状である。本実施形態では、電力変換器100は、2つの同一の磁気コアデバイス1を備える。説明を容易にするために、1つの磁気コアデバイス1を以下の本文で詳細に説明する。しかしながら、本発明は、磁気コアデバイス1の数を限定しない。
【0050】
本実施形態によれば、ハウジング110は、頂部カバーと、底板と、側壁と、底板及び側壁によって画定される主チャンバと、を備える。主チャンバは、電力変換器100の電子基板及び磁気コアデバイス(複数可)1を収容するために使用される。断熱板、ヒートシンク、及びいくつかの電子構成要素などの電力変換器100の他の要素も、主チャンバ内に収容される。
【0051】
図2及び図3は、本発明の一実施形態による、電力変換器100の磁気コアデバイス1を異なる視点で示している。図4は、磁気コアデバイス1の断面を示している。磁気コアデバイス1は、少なくとも1つの固定脚部7と、磁気コア3を備える本体部51と、を備える。コモンモード又はディファレンシャルモード電流のいずれか又はその両方の組合せをフィルタリングするためのインダクタンスとして作用する磁気コア3は、EMI、又は電力変換器100の要素の物理的損傷などの望ましくない影響を防止又は制限するために利用される。
【0052】
本体部51から延在する少なくとも1つの固定脚部7は、磁気コアデバイス1を電力変換器100のハウジング110などの対象構成要素にしっかりと固定するように構成される。少なくとも1つの固定脚部7、及び本体部51は、磁気コアデバイス1の堅牢性を向上させ、固定効果を改善させるために、1つの部品として一体的に形成される。
【0053】
一実施形態によれば、少なくとも1つの固定脚部7は、本体部51の側壁55a~55d(例えば、図2図4の「側壁55c及び55d」)の少なくとも1つから延在する。少なくとも1つの固定脚部7、及び対応する側壁(55c又は55d)は、1つの部品として一体的に形成される。代替的な実施形態(図に示さず)によれば、少なくとも1つの固定脚部7は、本体部51の底部(例えば、図2から図4の「54」)から延在する。少なくとも1つの固定脚部7、及び本体部51の底部は、1つの部品として一体的に形成される。少なくとも1つの固定脚部7については、以下の段落で詳細に説明する。
【0054】
磁気コアデバイス1は、少なくとも1つの導電体(例えば、電力変換器100のバスバー(複数可)120の導電体板121)を通過させ得るように構成される少なくとも1つの通路61を備える。図2図4に示すように、通路61の各々は、本体部51の2つの対向する側壁55a、55bの一方にそれぞれ配置された2つの開口部61aを有する通路であり、2つの開口部61aは、互いに対向している。したがって、バスバー(複数可)120の導電体板121は、磁気コアデバイス1の開口部61a及び通路61を介して、磁気コアデバイス1を通過することができる。一実施形態によれば、通路61のうちの少なくとも1つは、複数のバスバー120の複数の導電体板121を通過させ得る。
【0055】
一実施形態によれば、開口部61a及び少なくとも1つの固定脚部7は、本体部51の同じ側壁(複数可)には配置されない。更に、通路61は、好ましくは、外部構成要素121の形状に相補的な形状を呈する。本発明は、磁気コアデバイス1の通路(複数可)61の数及び形状を限定しない。
【0056】
磁気コアデバイス1は、プラスチックなどの絶縁材料で作られた少なくとも1つの絶縁層58を更に備えてもよい。少なくとも1つの絶縁層58は、磁気コア3と、本体部51の磁気コア3を貫通する少なくとも1つの導電体(121)とを分離するように構成される。
【0057】
磁気コア3は、例えば、ナノ結晶材料、フェライト材料、及び鉄粉材料のうちの1つ又は任意の組合せである磁性材料のモノブロックであるか、又はそのそれぞれで作られた複数の部分からなる。あるいは、磁気コア3は、上述したものとは異なる磁性材料で作られてもよい。一実施形態によれば、磁気コア3は、図4に示すように、2つのE字形部分31、32と、2つの通路61と、を備える。通路61間の磁気コア3の中間部分は、フェライトバーとすることができる一方で、磁気コア3の残りの部分は、ナノ結晶材料で作られる。あるいは、磁気コア3は、2つのU字形部分と、1つの通路61と、を備える。本発明は、磁性材料の種類、又は磁気コア3の部分の形状を限定しない。
【0058】
好ましい実施形態によれば、磁気コアデバイス1は、本体部51の2つの対向する側壁55c及び55dから延在する複数の固定脚部7を備える。固定脚部7は、互いに対向する側壁55c及び55dと一体的に形成され、これにより、磁気コアデバイス1の対象構成要素(例えば、ハウジング110)への取付けを更に安定的にする。固定脚部7は、好ましくは、図4に示すように、磁気コアデバイス1の下部に配置される。言い換えれば、固定脚部7は、本体部51の頂部53よりも底部54に近いことが好ましい。
【0059】
説明を容易にするために、1つの固定脚部7を以下の本文で詳細に説明する。しかしながら、本発明は、固定脚部7の数を限定しない。固定脚部7は、対象構成要素(例えば、ハウジング110)上の固定点に固定されるように構成される。したがって、本体部51を、対象構成要素(例えば、ハウジング110)上の所定の位置に固定することができる。固定脚部7は、対象構成要素110の固定点に配置された第1の固定要素(図に示さず)に対応する主固定要素71を備える。本実施形態によれば、主固定要素71は、主固定孔72と、好ましくは固定孔72に対応する中心孔を備えるインサート73と、を備える。インサート73は、金属材料又はプラスチック製の圧縮リミッタとして利用され、オーバーモールドプロセスによって固定脚部7に埋め込まれる。あるいは、モールドプロセス(例えばローレット圧縮リミッタ)の後に、インサート73を、固定脚部7に挿入する。
【0060】
第1の固定要素は、例えば、対象構成要素110の固定点に、対象固定孔を備える。固定脚部7を対象構成要素110の対象点にしっかりと固定するために、主固定機構を、主固定孔72及び対応する対象固定孔に、ねじ又はリベットを取り付けることによって、設けることができる。更に、磁気コアデバイス1の底部と接触する対象構成要素110の表面に加えて、固定点は、磁気コアデバイス1の質量によって生じる圧力を共有するための追加の領域を形成し、磁気コアデバイス1が、対象構成要素110から外れることを防止し得る。
【0061】
一実施形態によれば、磁気コアデバイス1は、本体部51を対象構成要素(例えば、ハウジング110)上の所定の位置に位置決めするように構成される位置決めモジュール(図に示さず)を、更に備える。位置決めモジュールは、好ましくは、以下の手段、すなわち、孔(複数可)、横長形状(複数可)、及びピン(複数可)のうちの少なくとも1つを備える。
【0062】
更に、図3及び図4に示すように、磁気コアデバイス1は、好ましくは、少なくとも1つの補助締結具22を備える。少なくとも1つの補助締結具22は、底部54に配置され、対象構成要素110に配置された少なくとも1つのインターロック締結具(図に示さず)と係合するように構成される。少なくとも1つの補助締結具22は、少なくとも1つのインターロック締結具と共に、例えばクリップ留め又はスナップ嵌めによって、磁気コアデバイス1を対象構成要素110に取り付け得る補助固定機構を提供する。少なくとも1つの補助締結具22は、1つの部品として本体部51と一体的に作られることが好ましい。
【0063】
一実施形態によれば、磁気コアデバイス1の本体部51(図2から図4に示す)は、磁気コア3である。この場合、磁気コア3は、鉄粉材料から作られることが好ましい。本体部51の側壁55a~55dは、磁気コア3の側壁である。磁気コアデバイス1の開口部61a及び通路(複数可)61は、磁気コア3上/内に形成された開口部及び通路である。少なくとも1つの固定脚部7は、磁気コア3の側壁のうちの少なくとも1つから、及び/又は磁気コア3の底部から延在する。少なくとも1つの固定脚部7及び磁気コア3は、1つの部品として一体的に形成されており、したがって、同一の磁性材料(例えば、鉄粉材料)から作られる。
【0064】
あるいは、本体部51は、磁気コア3に加えて、磁気コア3を少なくとも部分的に収容するように構成されるホルダ8を備える。ホルダ8は、好ましくは、プラスチックなどの絶縁材料で作られる。少なくとも1つの固定脚部7は、ホルダ8から延在し、1つの部品としてホルダ8と一体的に形成される。この場合、少なくとも1つの固定脚部7及びホルダ8は、同じ絶縁材料で作られる。
【0065】
一実施形態(図に示さず)によれば、ホルダ8は、隆起縁部を有する浅板の形状であり、支持板と、隆起縁部と、を備える。支持板は、隆起縁部と共に、磁気コア3を保持(すなわち、部分的に収容する)するように構成される。磁気コア3がホルダ8内に部分的に収容されるが、ホルダ8の支持板に引き続きしっかりと取り付けられるように構成されるコア固定手段を、磁気コアデバイス1は、更に備える。この場合、ホルダ8には、側壁がない。本体部51の側壁55a~55dは、磁気コア3の側壁である。磁気コアデバイス1の開口部61a及び通路(複数可)61は、磁気コア3上/内に形成された開口部及び通路である。1つ又は複数の固定脚部7は、支持板から、又は支持板とホルダ8の隆起縁部との接合部から、延在する。固定脚部(複数可)7、及びホルダ8の支持板は、1つの部品として一体的に形成され、したがって同じ絶縁材料で作られる。
【0066】
別の実施形態によれば、本体部51のホルダ8(図2から図4に示す)は、磁気コア3を完全に収容するように構成されるコアチャンバを備える。図5は、本発明の一実施形態によるホルダ8の断面を示している。コアチャンバの内容積は、磁気コア3の内容積とほぼ等しい。本体部51の側壁55a~55d、頂部53及び底部54は、側壁、ホルダ8の頂壁及び側壁である。磁気コアデバイス1の開口部61a及び通路(複数可)61は、ホルダ8の側壁及び内側にそれぞれ形成され、ホルダ8のコアチャンバに収容された磁気コア3に形成された開口部及び通路に、それぞれ対応する。また、少なくとも1つの絶縁層58は、1つの部品としてホルダ8と一体的に作られていることが好ましい。あるいは、少なくとも1つの絶縁層58は、ホルダ8に挿入された別個の要素である。
【0067】
少なくとも1つの固定脚部7は、ホルダ8の側壁の少なくとも1つから、及び/又はホルダ8の底部から、延在する。例えば、図5に示すように、固定脚部7は、ホルダ8の2つの対向する側壁から延在し、好ましくはホルダ8の下部に配置される。換言すれば、固定脚部7は、ホルダ8の頂部よりも底部に近いことが好ましい。1つ又は複数の固定脚部7、並びに1つ又は複数の固定脚部7が配置されるホルダの側壁(複数可)及び/又は底部は、1つの部品として一体的に形成され、したがって同じ絶縁材料で作られる。
【0068】
一実施形態によれば、磁気コア3が磁気コアデバイス1の製造プロセス中にコアチャンバ内に配置されるチャンバ開口部を、ホルダ8のコアチャンバは備える。例えば、E字形部分31、32は、チャンバ開口部を介してコアチャンバ内に配置される。コアチャンバを封止するために、チャンバ開口部を閉鎖するように構成されるホルダキャップを、ホルダ8は備える。ホルダキャップは、好ましくは、ホルダ8の側壁(例えば側壁55b)又は頂壁のうちの一方である。更に、開口部(複数可)61aはまた、ホルダキャップ55bに配置されてもよい。
【0069】
一実施形態によれば、ホルダキャップを除いて、ホルダ8の残りは、1つの部品として一体的に形成される。更に、ホルダキャップ55bは、1つ又は複数の固定脚部7が配置される側壁55c、55dとは異なる。したがって、固定脚部(複数可)7の存在は、磁気コア3を、ホルダ8のコアチャンバ内に配置する組立工程を複雑にしない。
【0070】
代替的な実施形態によれば、上記とは異なる別の製造プロセス中に、(オーバー)モールドプロセスでの適切なモールドを使用することによって、ホルダ8と共に、磁気コア3を形成する。ホルダ8、及びホルダ8から延在する固定脚部(複数可)7は、上述のようなチャンバ開口部も、ホルダキャップなどのような別個の部品もなしに、1つの部品として一体的に形成される。
【0071】
本発明は、バスバー全体を固定することなく、磁気コアデバイスを、電力変換器のハウジングに固定し得る。接着剤を用いた取付け、又はクリップ留め/スナップ嵌めによる単なる取付けなど、上述の従来の固定機構と比較して、本発明は、磁気コアデバイスと一体的に形成された固定脚部を使用し、特に振動、衝撃及び/又は高温などの制御されていない又は予期しない状況において、固定効果を大幅に改善し得る。したがって、本発明は、磁気コアデバイス及び電力変換器の堅牢性を改善し得る。更に、組立てのために接着剤を、もはや必要とせず、これにより、組立てプロセスが簡素化され、製造コストが低減される。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】