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特開2023-75036医療システム及び医療システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075036
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】医療システム及び医療システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20230523BHJP
   A61B 1/01 20060101ALI20230523BHJP
   A61B 1/018 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
A61B1/00 610
A61B1/01 513
A61B1/01 511
A61B1/018 514
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171250
(22)【出願日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】63/280,716
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/294,453
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【弁理士】
【氏名又は名称】西河 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】井上 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】後野 和弘
(72)【発明者】
【氏名】松尾 伸子
(72)【発明者】
【氏名】大田原 崇
(72)【発明者】
【氏名】南元 一希
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー ピロッツィ
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161AA01
4C161BB04
4C161CC06
4C161DD03
4C161GG24
4C161GG25
4C161HH24
4C161LL02
(57)【要約】
【課題】電動駆動により乳頭部に対して内視鏡の先端部を位置決め可能な医療システム等を提供すること。
【解決手段】医療システム10は、内視鏡100と制御装置600とを含む。内視鏡100は、内視鏡動作が電動駆動され、内視鏡画像を撮像する。内視鏡動作は、挿入部110の前進後退、挿入部110の湾曲部の湾曲角度調整、又は挿入部110のロール回転のうち少なくとも1つである。制御装置600は、電動駆動による内視鏡動作を制御する。制御装置600は、十二指腸の乳頭部に対して挿入部110が位置決めされる第1位置決めが行われた後に、内視鏡画像に基づいて、電動駆動による内視鏡動作を制御することで、乳頭部に対して挿入部110の先端部130を位置決めする第2位置決めを行う。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部の前進後退、前記挿入部の湾曲部の湾曲角度調整、又は前記挿入部のロール回転のうち少なくとも1つである内視鏡動作が電動駆動され、内視鏡画像を撮像する内視鏡と、
前記電動駆動による前記内視鏡動作を制御する制御装置と、
を含み、
前記制御装置は、
十二指腸の乳頭部に対して前記挿入部が位置決めされる第1位置決めが行われた後に、前記内視鏡画像に基づいて、前記電動駆動による前記内視鏡動作を制御することで、前記乳頭部に対して前記挿入部の先端部を位置決めする第2位置決めを行うことを特徴とする医療システム。
【請求項2】
請求項1に記載された医療システムにおいて、
前記挿入部を保持することで前記挿入部の前記第1位置決めを行う保持部材を含むことを特徴とする医療システム。
【請求項3】
請求項2に記載された医療システムにおいて、
前記制御装置は、
前記挿入部を保持する前記保持部材よりも先端側の前記内視鏡動作により前記挿入部の前記先端部の位置を微調整する前記第2位置決めを行うことを特徴とする医療システム。
【請求項4】
請求項1に記載された医療システムにおいて、
前記制御装置は、
前記乳頭部が、前記内視鏡画像上の事前に登録された位置に撮像されるように、前記電動駆動による前記内視鏡動作を制御する前記第2位置決めを行うことを特徴とする医療システム。
【請求項5】
請求項1に記載された医療システムにおいて、
前記乳頭部は、胆管と膵管が合流した共通管の開口部、又は胆管の開口部である管腔組織の開口部を含むことを特徴とする医療システム。
【請求項6】
請求項5に記載された医療システムにおいて、
前記内視鏡の処置具の挿入口から挿入され、前記先端部の内部で起上されて前記先端部の側面から突出する処置具を含み、
前記制御装置は、
前記処置具が、前記乳頭部が写る前記内視鏡画像から推定される前記胆管の走行方向に向くように、前記内視鏡動作又は前記処置具の起上角度の少なくとも1つを制御する前記第2位置決めを行うことを特徴とする医療システム。
【請求項7】
請求項2に記載された医療システムにおいて、
前記保持部材は、
前記乳頭部が存在する臓器に対して前記挿入部を保持する第1保持部材を含むことを特徴とする医療システム。
【請求項8】
請求項7に記載された医療システムにおいて、
前記第1保持部材は、
前記内視鏡の前記先端部が前記乳頭部に達した状態において前記十二指腸に対して前記挿入部を保持する部材であることを特徴とする医療システム。
【請求項9】
請求項7に記載された医療システムにおいて、
前記第1保持部材は、
前記湾曲部の基端よりも前記挿入部の基端側に設けられることを特徴とする医療システム。
【請求項10】
請求項7に記載された医療システムにおいて、
前記第1保持部材は、
膨張して前記臓器に接することで前記臓器に対して前記挿入部を保持するバルーンであることを特徴とする医療システム。
【請求項11】
請求項7に記載された医療システムにおいて、
前記保持部材は、
前記臓器に対して前記挿入部を保持する前記第1保持部材までの前記挿入部の経路を保持する第2保持部材を含むことを特徴とする医療システム。
【請求項12】
請求項11に記載された医療システムにおいて、
前記第2保持部材は、
硬度可変であり、硬化により前記挿入部の前記経路を保持するオーバーチューブであることを特徴とする医療システム。
【請求項13】
挿入部の前進後退、前記挿入部の湾曲部の湾曲角度調整、又は前記挿入部のロール回転のうち少なくとも1つである内視鏡動作が電動駆動され、内視鏡画像を撮像する内視鏡を用いた医療システムの制御方法であって、
前記医療システムが、前記内視鏡の前記挿入部を体内に挿入するステップと、
前記医療システムが、十二指腸の乳頭部に対して前記挿入部を位置決めする第1位置決めを行うステップと、
前記医療システムが、前記第1位置決めを行うステップの後に、前記内視鏡画像に基づいて、前記電動駆動による前記内視鏡動作を制御することで、前記乳頭部に対して前記挿入部の先端部を位置決めする第2位置決めを行うステップと、
前記医療システムが、前記第2位置決めを行うステップの後に、前記乳頭部から胆管へのカニュレーションを行うステップと、
を含むことを特徴とする医療システムの制御方法。
【請求項14】
請求項13に記載された医療システムの制御方法において、
前記医療システムが、前記第1位置決めを行うステップにおいて、前記挿入部を保持する保持部材により前記挿入部の前記第1位置決めを行うことを特徴とする医療システムの制御方法。
【請求項15】
請求項14に記載された医療システムの制御方法において、
前記医療システムが、前記第2位置決めを行うステップにおいて、前記挿入部を保持する前記保持部材よりも先端側の前記内視鏡動作により前記内視鏡の前記先端部の位置を微調整することを特徴とする医療システムの制御方法。
【請求項16】
請求項13に記載された医療システムの制御方法において、
前記医療システムが、前記第2位置決めを行うステップにおいて、前記乳頭部が、前記内視鏡画像上の事前に登録された位置に撮像されるように、前記電動駆動による前記内視鏡動作を制御することを特徴とする医療システムの制御方法。
【請求項17】
請求項13に記載された医療システムの制御方法において、
前記医療システムが、前記第2位置決めを行うステップにおいて、前記内視鏡の処置具の挿入口から挿入されると共に前記先端部の内部で起上されて前記先端部の側面から突出する処置具が、前記乳頭部が写る前記内視鏡画像から推定される胆管の走行方向に向くように、前記内視鏡動作又は前記処置具の起上角度の少なくとも1つを制御することを特徴とする医療システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療システム及び医療システムの制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の処置具チャネルからカニューラを胆管に挿入し、カニューラから造影剤を注入してX線撮影又はCT撮影を行い、胆管のX線画像又はCT画像を取得するERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)という手技が知られている。特許文献1には、カテーテルシステムを遠隔操作して手技を行うロボティックカテーテルシステムを、ERCPに適用した例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0086929号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ERCPの手技において得られる情報は、乳頭部を写した内視鏡画像のみである。乳頭部と管腔組織の形態には個人差があることから、内視鏡画像のみからカニューラの挿入位置と挿入方向を特定することは困難を伴う。開口部の位置と胆管の走行方向をより正確に推測するために、画像内の所定位置に乳頭部が写るように位置合わせすることが望ましいが、挿入部の基端側で行われる操作が先端部に伝わりにくい、或いは内視鏡の先端部が乳頭部に対してブレるといった理由によって、内視鏡先端部の位置を調整する操作には、困難を伴う。なお、上記の特許文献1にはロボティックカテーテルシステムをERCPに適用した例が開示されているが、上記のような課題及びそれを解決する主題については開示も示唆もしていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、挿入部の前進後退、前記挿入部の湾曲部の湾曲角度調整、又は前記挿入部のロール回転のうち少なくとも1つである内視鏡動作が電動駆動され、内視鏡画像を撮像する内視鏡と、前記電動駆動による前記内視鏡動作を制御する制御装置と、を含み、前記制御装置は、十二指腸の乳頭部に対して前記挿入部が位置決めされる第1位置決めが行われた後に、前記内視鏡画像に基づいて、前記電動駆動による前記内視鏡動作を制御することで、前記乳頭部に対して前記内視鏡の先端部を位置決めする第2位置決めを行う医療システムに関係する。
【0006】
本開示の他の態様は、挿入部の前進後退、前記挿入部の湾曲部の湾曲角度調整、又は前記挿入部のロール回転のうち少なくとも1つである内視鏡動作が電動駆動され、内視鏡画像を撮像する内視鏡を用いた医療システムの制御方法であって、前記医療システムが、内視鏡の挿入部を体内に挿入するステップと、前記医療システムが、十二指腸の乳頭部に対して前記挿入部を位置決めする第1位置決めを行うステップと、前記医療システムが、前記第1位置決めを行うステップの後に、前記内視鏡画像に基づいて、前記電動駆動による前記内視鏡動作を制御することで、前記管腔組織の前記開口部に対して前記内視鏡の先端部を位置決めする第2位置決めを行うステップと、前記医療システムが、前記第2位置決めを行うステップの後に、前記乳頭部から胆管へのカニュレーションを行うステップと、を含む医療システムの制御方法に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ERCPの手技に関係する臓器及び組織を示す図。
図2】ERCPの手技フロー。
図3】乳頭部に正対して見たときの乳頭部の形態を模式的に示す図と、その個人差を示す形態例。
図4】管腔組織とその開口部の形態を示す断面図。
図5】本実施形態の医療システムの基本構成例。
図6】本実施形態における手技の第1フロー。
図7】オーバーチューブが無い場合と有る場合の比較を示す図。
図8】オーバーチューブとバルーンによって位置決めされた内視鏡の先端付近を示す図。
図9】医療システムの詳細構成例。
図10】駆動制御装置の詳細構成例。
図11】湾曲部とその駆動機構を含む内視鏡を模式的に示す図。
図12】進退駆動装置の詳細構成例。
図13】ロール駆動装置を含む連結部の斜視図。
図14】処置具の起上台を含む内視鏡の先端部の詳細構成例。
図15】処置具の詳細構成例。
図16】オーバーチューブの駆動システムの構成例。
図17】バルーンの駆動システムの構成例。
図18】保持部材の第1変形例。
図19】保持部材の第2変形例。
図20】ルーワイ法による胃バイパス手術を受けた患者の臓器構造を示す図。
図21】電動内視鏡をマニュアル操作する操作装置の変形例。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の開示において、提示された主題の異なる特徴を実施するための多くの異なる実施形態や実施例を提供する。もちろんこれらは単なる例であり、限定的であることを意図するものではない。さらに、本開示では、様々な例において参照番号および/または文字を反復している場合がある。このように反復するのは、簡潔明瞭にするためであり、それ自体が様々な実施形態および/または説明されている構成との間に関係があることを必要とするものではない。さらに、第1の要素が第2の要素に「接続されている」または「連結されている」と記述するとき、そのような記述は、第1の要素と第2の要素とが互いに直接的に接続または連結されている実施形態を含むとともに、第1の要素と第2の要素とが、その間に介在する1以上の他の要素を有して互いに間接的に接続または連結されている実施形態も含む。
【0009】
1.ERCPについて
本実施形態は、電動化された医療システムを用いてERCPを行う際の自動制御に関するものである。ERCPは、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(Endoscopic Retrograde Cholangio Pancreatography)の略である。まず、本実施形態について説明する前に、ERCPの手技内容について説明する。
【0010】
図1に、ERCPの手技に関係する臓器及び組織を示す。なお、臓器は、複数種類の組織が集まって独自の構造を構成すると共に特定の機能を有するものである。図1では、肝臓、胆のう、膵臓、食道、胃及び十二指腸が、臓器に該当する。組織は、血管、筋肉及び皮膚等のように、関連する細胞が結合して構成されたものである。図1では、胆管及び膵管が、組織に該当する。
【0011】
ERCPの処置対象は、胆管である。胆管は、肝臓で作られた胆汁を十二指腸に流すための管路である。内視鏡で胆管へアプローチする際には、内視鏡を十二指腸の位置に保持したまま、内視鏡のチャネル内に挿通された処置具を、十二指腸乳頭部から胆管へと挿入する。以下、十二指腸乳頭部を単に乳頭部と呼ぶ。乳頭部は、管腔組織が十二指腸に対して開口した開口部を含む領域であり、開口部のみでなく開口部周辺の構造を含めて乳頭部と呼ぶ。管腔組織の開口部は、胆管と膵管が合流した共通管が十二指腸に対して開口した部分である。但し、後述するように乳頭部には様々な個人差があり、例えば胆管と膵管が合流せずに胆管が直接に十二指腸に開口する場合がある。このような場合、管腔組織の開口部は、胆管の開口部である。
【0012】
図2に、ERCPの手技フローを示す。ERCPには、内視鏡先端部の側面にカメラ、照明レンズ、及び処置具チャネルの開口が設けられた側視タイプの内視鏡が用いられる。なお、カメラを撮像装置とも呼ぶ。
【0013】
内視鏡挿入ステップにおいて、内視鏡の挿入部を口から食道と胃を通って十二指腸まで挿入する。このとき、内視鏡の視野におおまかに乳頭部が写る位置まで、挿入部を挿入する。次に、位置合わせステップにおいて、乳頭部に対して内視鏡を位置合わせする。具体的には、乳頭部が内視鏡のカメラの撮像範囲に入るように、内視鏡先端部の位置を調整する。或いは、内視鏡のカメラが乳頭部に正対し、且つ視野の中央に乳頭部が写るように、内視鏡先端部の位置を調整する。
【0014】
次に、カニュレーションステップにおいて、乳頭部から胆管へカニューラを挿入する。具体的には、内視鏡の処置具チャネルにカニューラを挿入して内視鏡先端部のチャネル開口からカニューラを突出させ、そのカニューラの先端を共通管の開口部に差し込んで共通管に挿入し、更に胆管と膵管の合流部から胆管の方向へとカニューラを挿入していく。なお、カニュレーションとは、体内にカニューラを挿入することである。カニューラは、体内に挿入され医療用に用いられる医療用チューブのことである。
【0015】
次に、造影及び撮像ステップにおいて、カニューラに造影剤を注入してカニューラ先端から胆管内に造影剤を流し込む。この状態でX線撮影又はCT撮影を行うことで、胆管、胆のう及び膵管が写るX線画像又はCT(Computed Tomography)画像を取得する。ここまでがERCPの手技であり、以降は、X線画像又はCT画像に基づく診断結果に応じて様々な処置が行われる。以下に、その一例を説明する。
【0016】
ガイドワイヤ挿入ステップにおいて、カニューラにガイドワイヤを挿入してカニューラ先端からガイドワイヤを突出させ、胆管内にガイドワイヤを挿入する。カニューラ抜去ステップにおいて、ガイドワイヤを胆管内に留置したままカニューラを抜去する。これにより、ガイドワイヤのみが内視鏡先端部から突出して胆管内に留置された状態となる。次に、処置具挿入ステップにおいて、ガイドワイヤに沿って処置具を胆管に挿入する。処置具の一例としては、バスケット又はステントがある。バスケットはカテーテルと共に用いられる。カテーテル内にガイドワイヤを通しながらカテーテルをガイドワイヤに沿って胆管内に挿入し、複数の金属ワイヤで構成されたバスケットをカテーテル先端から胆管内へ挿入し、バスケット内に胆石等の除去対象を入れて保持し、その状態でバスケット及びカテーテルを胆管から抜去することで除去対象を胆管から搬出する。ステントも同様にカテーテルと共に用いられ、カテーテル先端から胆管内へ挿入される。胆管の狭窄部にステントを挿入することで狭窄部を押し広げ、そのステントを留置することで、その留置されたステントにより狭窄部を押し広げた状態に保持する。
【0017】
以上のようにしてERCPの手技が行われるが、その位置決めステップにおいて、乳頭部又は管腔組織の個人差に起因して手技の難しさが生じる。この点について、図3図4を用いて以下に説明する。
【0018】
図3は、乳頭部に正対して見たときの乳頭部の形態を模式的に示す図と、その個人差を示す形態例である。模式図に示すように、管腔組織の開口部である主乳頭の周辺には乳頭部に特有の構造がある。具体的には、小帯、はちまきひだ及び口側隆起と呼ばれる構造が主乳頭の周辺に存在している。
【0019】
しかしながら、模式図は典型的な乳頭部の形態を示すものであり、例a~dに示すように乳頭部の形態は個人差によって患者毎に異なっている。例えば、主乳頭、小帯、はちまきひだ又は口側隆起が明確でない、或いは典型的な形態とは大きく異なる形態を有する等である。また、管腔組織の開口部は閉じていることが多く、その場合には開口がどこにあるのか目視で正確に知ることが難しくなる。
【0020】
図4は、管腔組織とその開口部の形態を示す断面図である。管腔組織とその開口部の形態には、Y字型と呼ばれる1型、V字型と呼ばれる2型、及びU字型又は分離型と呼ばれる3型がある。なお図中において1型、2型及び3型の数字をローマ数字で示している。1型では、胆管と膵管が合流部で共通管に合流し、その共通管が乳頭部に開口する。2型では、胆管と膵管が合流する合流部において乳頭部に開口しており、共通管が無い。3型では、胆管と膵管の各々が分離して乳頭部に開口しており、合流部と共通管が無い。1型が多数を占めるが、2型又は3型の患者も存在する。
【0021】
胆管へのカニュレーションを行う際には、基本的には図3の例a~dに示すような乳頭部を写した内視鏡画像を参照する。図3図4で説明したように、乳頭部と管腔組織の形態は多岐にわたっており、内視鏡画像からカニューラの挿入位置と挿入方向を特定することは困難を伴う。
【0022】
これに対して、術者は内視鏡画像を見ながら過去の症例又は経験等に基づいて開口部の位置と胆管の走行方向を推測し、その推測に従って開口部から胆管へのカニューラ挿入を試みる。このとき、開口部の位置と胆管の走行方向をより正確に推測するためには、画像内の乳頭部の位置と画像の画角が、過去の症例と比較しやすい或いは術者が見慣れたものとなっていることが望ましい。
【0023】
このような内視鏡の位置合わせは、図1に示すように十二指腸に達した内視鏡挿入部の先端を体外から操作することで、行われる。しかしながら、挿入部と、その挿入部が通る臓器とが柔軟であることから、挿入部の基端側で行われる操作が先端部に伝わりにくい。また、内視鏡の先端部が十二指腸に対して固定されず宙に浮いた状態となるため、内視鏡の先端部が乳頭部に対して安定せず、その位置関係が定まりにくい。これらの理由から、内視鏡の視野を乳頭部に正対させるように、或いは乳頭部が視野の中央に写るように内視鏡先端部の位置を調整する操作には、困難を伴う。
【0024】
2.本実施形態の手技フロー及び医療システム
そこで、本実施形態では、電動の医療システムにより上記位置合わせを自動化することで、ERCPの手技をアシストする。また、内視鏡の挿入部を十二指腸に保持する構成を加えることで、電動駆動を内視鏡先端部に伝わりやすくして自在に先端部の位置を制御できるようにする。以下に、その詳細を説明する。
【0025】
図5に、本実施形態の医療システム10の基本構成例を示す。医療システム10は、内視鏡100とオーバーチューブ710とバルーン720と処置具400と制御装置600とを含む。なお、医療システム10は、内視鏡システム又は電動内視鏡システムとも呼ばれる。
【0026】
オーバーチューブ710は、内視鏡100の挿入部110を覆う、硬度可変なチューブである。バルーン720は、オーバーチューブ710の外側の先端付近に設けられている。内視鏡100とオーバーチューブ710が体内に挿入された状態において、オーバーチューブ710の先端からは少なくとも挿入部110の湾曲部が露出した状態となっている。湾曲部とは、挿入部110の先端付近において、湾曲操作に応じたアングルで屈曲するように構成された部分のことである。また、オーバーチューブ710の基端は体外にあり、そのオーバーチューブ710の基端から挿入部110の基端側が露出する。
【0027】
挿入部110の基端側には処置具の挿入口190が設けられており、挿入部110の内部には、挿入口190から先端部130の開口まで処置具400を通すための処置具チャネルが設けられている。処置具の挿入口190は鉗子口とも呼ばれるが、用いられる処置具は鉗子に限らない。
【0028】
内視鏡100は、コネクタ201及び202により制御装置600に対して着脱可能に接続される。制御装置600は、コネクタ201が接続される駆動制御装置200と、コネクタ202が接続される映像制御装置500とを含む。駆動制御装置200は、コネクタ201を介して内視鏡100の電動駆動を制御する。図5には不図示であるが、電動駆動をマニュアル操作するための操作装置が駆動制御装置200に接続されてもよい。映像制御装置500は、内視鏡100の先端部130に設けられたカメラからの画像信号を、コネクタ202を介して受信し、その画像信号から表示画像を生成して不図示の表示装置に表示する処理を行う。なお、図5では駆動制御装置200と映像制御装置500を別体の装置として図示しているが、これらが一体の装置で構成されてもよい。その場合、コネクタ201及び202が1つのコネクタに統合されてもよい。
【0029】
図6に、本実施形態における手技の第1フローを示す。ここでは、内視鏡100の挿入部110の前進後退、挿入部110の湾曲部の湾曲、及び挿入部110のロール回転が電動化された電動内視鏡を想定している。但し、これらのうち少なくとも1つが電動化されていればよい。電動とは、内視鏡動作を制御するための電気信号に基づいてモータ等によって内視鏡が駆動されることを意味する。例えば、電動がマニュアル操作される場合には、操作装置への操作入力が電気信号に変換され、その電気信号に基づいて内視鏡が駆動される。なお以下では、前進後退を単に進退とも呼ぶ。
【0030】
ステップS1において、術者は内視鏡100の挿入部110とオーバーチューブ710を十二指腸まで挿入する。具体的には、挿入部110がオーバーチューブ内に挿入された状態で、挿入部110とオーバーチューブ710を一緒に十二指腸まで挿入する。オーバーチューブ710は硬度可変であるが、ステップS1においては軟らかい状態である。例えば術者は、非電動の手動により、挿入部110とオーバーチューブ710を前進させて体内に挿入することができる。非電動とは、モータ等が内視鏡100を電動駆動するのではなく、操作部に加えられた力がワイヤ等によって直接に内視鏡に伝達されることで内視鏡が動作することを意味する。なお、一例として本実施形態においてはステップS1~S4までが非電動である。その場合、少なくとも進退が非電動であればよく、湾曲、ロール回転又はそれらが電動でマニュアル操作されてもよい。
【0031】
ステップS2において、術者は先端部130が乳頭部付近に到達するまで挿入部110を挿入する。例えば、術者が非電動の手動で挿入する場合、術者は内視鏡画像に乳頭部が写るまで挿入部110を挿入する。なお、この段階では内視鏡100の先端が正確に乳頭部に到達していなくても良く、乳頭部より手前、あるいは乳頭部を過ぎた位置まで到達していても良い。
【0032】
ステップS3において、術者は、オーバーチューブ710の先端を十二指腸に固定する。一例としては、術者は、オーバーチューブ710の先端付近に設けられたバルーン720を膨らませる操作を行い、そのバルーン720によりオーバーチューブ710の先端を十二指腸に固定する。ステップS4において、術者はオーバーチューブ710を硬化させる操作を行う。このとき、オーバーチューブ710は、硬化される直前の形状、即ち口から十二指腸まで挿入された状態の形状を保ったまま、硬化する。これにより、硬化したオーバーチューブ710とバルーン720とにより挿入部110が保持されることで、挿入部110の挿入経路が固定される。これらステップS3とS4を第1位置決めと呼ぶこととする。
【0033】
ステップS5において、内視鏡100をモータユニットに接続し、非電動から電動に切り替える。非電動と電動を切り替える手法は、駆動機構の構成に応じて様々である。例えば図9で後述する医療システム10を用いた場合、ステップS1~S4において進退が非電動であり、湾曲とロール回転が電動である。この場合、進退駆動装置800に内視鏡100を接続することで、進退が非電動から電動に切り替えられてもよい。或いは、湾曲操作を非電動で行うための湾曲操作ダイヤル等を設けることで、非電動の湾曲操作を可能に構成した場合には、例えばコネクタ201を駆動制御装置200に接続することで、湾曲動作が非電動から電動に切り替えられてもよい。或いは、モータユニットが接続されたままであっても、クラッチ機構等によりモータを切り離し可能に構成し、そのクラッチ機構により非電動と電動が切り替えられてもよい。なお、ステップS5はステップS1より前に実行されても良い。例えば進退を電動でマニュアル操作する場合においては、ステップS1より前に内視鏡100がモータユニットに接続されていても良い。
【0034】
ステップS6において、駆動制御装置200が自動で先端部130を乳頭部に位置合わせし、術者は、乳頭が内視鏡画像上の所定の位置に撮像されるように先端部130が位置調整されたことを、確認する。駆動制御装置200は、映像制御装置500から内視鏡画像を取得し、その内視鏡画像に基づいて内視鏡100の先端部130を位置合わせする。具体的には、駆動制御装置200は、内視鏡画像上の事前に登録された位置に乳頭部が写るように、電動駆動による進退、湾曲又はロール回転を制御する。事前に登録された位置とは、例えば画像中央である。より好ましくは、管腔組織の開口部が、事前に登録された位置に写るように位置合わせされてもよい。更に、駆動制御装置200は、カメラが乳頭部に正対するように、或いは、乳頭部が適切な画角で写るように、内視鏡画像に基づいて電動制御を行ってもよい。また、駆動制御装置200は、内視鏡画像に基づいてバルーン720の径を電動制御することで、カメラの視線方向を変えずにカメラと乳頭部の距離を変えることで、乳頭部を撮影する画角を調整してもよい。このステップS6を第2位置決めと呼ぶこととする。
【0035】
ステップS7において、術者はカニューラを挿入口190から処置具チャネルに挿入し、胆管へのカニュレーションを開始する。
【0036】
なお、図6ではステップS3のバルーン操作とステップS4のオーバーチューブ硬化を非電動としたが、これらを電動化してもよい。その場合、術者が操作装置から指示を入力し、駆動制御装置200が、その指示をトリガーとして電動駆動によりバルーンを膨らませたり、オーバーチューブを硬化させたりしてもよい。或いは、駆動制御装置200が、内視鏡画像から乳頭部を検出する画像認識処理を行い、内視鏡画像から乳頭部を検出したことをトリガーとして自動的にバルーンを膨らませたり、オーバーチューブを硬化させたりしてもよい。
【0037】
以上の手技フローによれば、ステップS3において、オーバーチューブ710を硬化させる前にバルーン720を膨らませることで、オーバーチューブ710を硬化した際にオーバーチューブ710の先端位置がずれない。即ち、オーバーチューブ710の先端位置を正確に位置決めできる。また、ステップS3とステップS4の第1位置決めによって、バルーン720とオーバーチューブ710により挿入部110の挿入経路が保持される。これにより、ステップS6の第2位置決めにおいて、電動駆動による内視鏡100の進退、湾曲又はロール回転が、挿入部110の基端側から先端に伝達されやすくなる。この点について、図7を用いて説明する。
【0038】
図7は、オーバーチューブ710が無い場合と有る場合の比較を示す図である。ここでは挿入部110の前進を例に説明する。挿入部110の前進は、後述のスライダ機構等が挿入部110を軸線方向に押すことで実現される。上図に示すように、挿入部110がオーバーチューブ710に覆われていない場合には、挿入部110の基端側が軸線方向に押されたとき、その力が、挿入部110が変形することで吸収されてしまい、挿入部110の先端に伝わりにくい。これは、挿入部110と、挿入部110が通る胃又は十二指腸とが柔軟なためである。下図に示すように、挿入部110が、硬化したオーバーチューブ710に覆われている場合には、挿入部110の基端側が軸線方向に押されたとき、硬化したオーバーチューブ710をガイドにして挿入部110がオーバーチューブ710内を前進する。これにより、基端側の前進駆動が挿入部110の先端部に効率的に伝達される。湾曲又はロール回転についても、オーバーチューブ710とバルーン720により挿入部110が保持されることで、基端側からの電動駆動が挿入部110の先端部に効率的に伝達されるようになる。
【0039】
図8は、オーバーチューブ710とバルーン720によって位置決めされた内視鏡の先端付近を示す図である。図8に示すように、バルーン720は乳頭部から胃の幽門側に少し離れた位置に固定される。具体的には、挿入部110の湾曲部の基端よりも挿入部110の基端側にバルーン720が位置している。このようなバルーン720と、硬度可変のオーバーチューブ710を組み合わせることで、バルーン720より乳頭部側に露出した湾曲部と先端部130が固定されずに自由に動作できると共に、基端側からの電動駆動が内視鏡の先端部130に効率的に伝達されるようになる。
【0040】
電動駆動による内視鏡動作は、A1に示す前進後退、A2に示す湾曲動作、又はA3に示すロール回転である。前進は、挿入部110の軸線方向に沿って先端側へ移動することであり、後退は、挿入部110の軸線方向に沿って基端側へ移動することである。湾曲動作は、湾曲部の屈曲により先端部130のアングルが変わる動作である。湾曲動作は、直交する2方向への湾曲動作を含んでおり、それらが独立して制御可能になっている。直交する2方向の一方を上下方向と呼び、他方を左右方向と呼ぶ。ロール回転は、挿入部110の軸周りの回転である。
【0041】
なお、図8には、オーバーチューブ710の先端にバルーン720が取り付けられ、そのオーバーチューブ710の先端から内視鏡が突出する例を示している。但し、湾曲部の基端より先の部分が自由に動作できるようにオーバーチューブ710とバルーン720が構成されていればよい。例えば、硬度可変のオーバーチューブの先に硬度不変の軟性チューブが延びており、その境界にバルーン720が取り付けられてもよい。この場合、湾曲部の基端側の一部が軟性チューブに覆われるが、その動作は妨げられない。
【0042】
3.医療システムの詳細構成例
図9に、医療システム10の詳細構成例を示す。医療システム10は、手術台Tに横たわる患者の体内を観察又は処置するためのシステムである。医療システム10は、内視鏡100と制御装置600と操作装置300と処置具400と進退駆動装置800と表示装置900と、を含む。制御装置600は、駆動制御装置200と映像制御装置500とを含む。
【0043】
内視鏡100は、患者の管腔内に挿入されて患部を観察する装置である。本実施形態において、患者の管腔内に挿入される側を「先端側」と呼び、制御装置600に装着される側を「基端側」と呼ぶ。内視鏡100は、挿入部110と、連結部125と、体外軟性部145と、コネクタ201及び202と、を含む。挿入部110と、連結部125と、体外軟性部145と、コネクタ201及び202とは、その順に先端側から接続されている。 挿入部110は、患者の管腔内に挿入される部分であり、軟性で細長い形状に構成されている。挿入部110は、湾曲部102と、湾曲部102の基端と連結部125を接続する体外軟性部と、湾曲部102の先端に設けられる先端部130とを含む。挿入部110と連結部125と体外軟性部145の内部には内部経路101が設けられており、その内部経路101を通る湾曲ワイヤが湾曲部102に接続される。駆動制御装置200がコネクタ201を介してワイヤを駆動することで、湾曲部102が湾曲動作する。また先端部130に設けられた起上台に接続される起上台用ワイヤが内部経路101を通ってコネクタ201に接続される。駆動制御装置200が起上台用ワイヤを駆動することで、先端部130の側面から突出する処置具400の起上角度が変わる。先端部130の側面にはカメラと照明レンズと処置具チャネルの開口とが設けられる。カメラとコネクタ202を接続する画像信号線が内部経路101に設けられ、その画像信号線を介してカメラから映像制御装置500に画像信号が伝送される。映像制御装置500は、画像信号から生成した内視鏡画像を表示装置900に表示する。
【0044】
連結部125には、処置具の挿入口190と、ロール操作部121とが設けられる。処置具チャネルは内部経路101に設けられ、その一端が先端部130に開口し、他端が処置具の挿入口190に開口する。挿入口190には、挿入口190から操作装置300まで延びる延長チューブ192が接続される。処置具400は、延長チューブ192の操作装置300側の開口から挿入され、挿入口190と処置具チャネルを経由して先端部130の開口に突出する。なお、延長チューブ192が省略され、挿入口190から処置具400が挿入されてもよい。ロール操作部121は、挿入部110の軸線方向を中心に回転可能に連結部125に取り付けられており、ロール操作部121が回転操作されることで、挿入部110がロール回転する。また、後述するように、ロール操作部121は電動駆動可能である。
【0045】
進退駆動装置800は、挿入部110を電動駆動により前進後退させる駆動装置である。体外軟性部140が進退駆動装置800に着脱可能になっており、体外軟性部140が進退駆動装置800に装着された状態で進退駆動装置800が体外軟性部140を軸線方向にスライドさせることで、挿入部110が前進後退する。なお、図9には体外軟性部140と進退駆動装置800が着脱可能な例を示すが、これに限定されず、連結部125と進退駆動装置800が着脱可能に構成されてもよい。
【0046】
操作装置300は、操作ケーブル301を経由して駆動制御装置200と着脱可能に接続される。操作装置300は、有線通信ではなく無線通信により駆動制御装置200と通信してもよい。術者は操作装置300を操作すると、その操作入力の信号が操作ケーブル301を介して駆動制御装置200に伝送され、駆動制御装置200が操作入力の信号に基づいて操作入力に応じた内視鏡動作が行われるように内視鏡100を電動駆動する。操作装置300は、内視鏡100の前進後退、2方向の湾曲動作及びロール回転と、起上台の動作とに対応した5チャンネル以上の操作入力部を有する。なお、これらのうち電動化されない動作がある場合には、その操作入力部が省略されてもよい。各操作入力部は、例えばダイヤル、ジョイスティック、十字キー、ボタン、スイッチ又はタッチパネル等で構成される。
【0047】
駆動制御装置200は、操作装置300に入力された操作に基づき、内蔵するモータを駆動して内視鏡100を電動駆動する。或いは、モータが駆動制御装置200の外部にある場合には、駆動制御装置200は、操作装置300に入力された操作に基づき、外部のモータに制御信号を送信して電動駆動を制御する。また、駆動制御装置200は、操作装置300に入力された操作に基づき、内蔵するポンプ等を駆動して内視鏡100に送気吸引を実施させてもよい。送気吸引は、内部経路101に設けられた送気吸引チューブを介して行われる。送気吸引チューブの一端は内視鏡100の先端部130に開口し、他端はコネクタ201を介して駆動制御装置200に接続される。なお、処置具チャネルがコネクタ201まで延伸され、その処置具チャネルが送気吸引チューブとして兼用されてもよい。
【0048】
図10に、駆動制御装置200の詳細構成例を示す。駆動制御装置200は、画像取得部270と記憶部280と駆動コントローラ260と操作受信部220とワイヤ駆動部250と送気吸引駆動部230と通信部240とアダプタ210とを含む。
【0049】
アダプタ210は、操作ケーブル301が着脱可能に接続される操作装置用アダプタ211と、内視鏡100のコネクタ201が着脱可能に接続される内視鏡用アダプタ212と、を有する。
【0050】
ワイヤ駆動部250は、駆動コントローラ260からの制御信号に基づいて、内視鏡100の湾曲部102の湾曲動作、又は処置具400の起上台の動作を駆動する。ワイヤ駆動部250は、内視鏡100の湾曲部102を駆動する湾曲動作用モータユニットと、起上台を駆動する起上台用モータユニットとを含む。内視鏡用アダプタ212は、内視鏡100側の湾曲ワイヤにカップリングするための湾曲動作用カップリング機構を有し、湾曲動作用モータユニットがカップリング機構を駆動することで、その駆動力が内視鏡100側の湾曲ワイヤに伝達される。また、内視鏡用アダプタ212は、内視鏡100側の起上台用ワイヤにカップリングするための起上台用カップリング機構を有し、起上台用モータユニットがカップリング機構を駆動することで、その駆動力が内視鏡100側の起上台用ワイヤに伝達される。
【0051】
送気吸引駆動部230は、駆動コントローラ260からの制御信号に基づいて、内視鏡100の送気吸引を駆動する。送気吸引駆動部230は、内視鏡用アダプタ212を介して内視鏡100の送気吸引チューブに接続される。送気吸引駆動部230は、ポンプ等を備えており、送気吸引チューブに空気を送気したり、送気吸引チューブ172から空気を吸引したりする。
【0052】
通信部240は、駆動制御装置200の外部に設けられる駆動装置との通信を行う。通信は無線通信又は有線通信のいずれでもよい。外部に設けられる駆動装置は、前進後退を行う進退駆動装置800、ロール回転を行うロール駆動装置、オーバーチューブ710の硬度を変更するオーバーチューブ駆動装置、又は、バルーン720の径を変更するバルーン駆動装置等である。
【0053】
駆動コントローラ260は、内視鏡100の前進後退、湾曲動作及びロール回転と、起上台による処置具400の起上角度と、内視鏡100による送気吸引とを制御する。また、オーバーチューブ710の硬度制御又はバルーン720の径の制御が電動化される場合には、駆動コントローラ260は、それらの制御を行う。駆動コントローラ260は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサである。例えば、記憶部280はコンピュータによって読み取り可能なプログラムを格納しており、当該プログラムをプロセッサが実行することによって、駆動コントローラ260の機能が処理として実現される。但し、駆動コントローラ260のハードウェアは上記に限定されず、様々な構成の回路で構成されてよい。
【0054】
駆動コントローラ260が行う電動制御には、術者が内視鏡100等の電動駆動をマニュアル操作するマニュアルモードと、内視鏡画像に基づいて内視鏡100等の電動駆動を自動制御する自動制御モードとが含まれる。本実施形態における自動モードでは、図2で説明した位置合わせステップが自動化される。なお、自動モードにおいては、内視鏡100の前進後退、湾曲動作又はロール回転の少なくとも1が自動化されていればよい。即ち、起上台による処置具400の起上角度、オーバーチューブ710の硬度制御、バルーン720の径の制御、内視鏡100の送気吸引、或いは、内視鏡100の前進後退、湾曲動作又はロール回転の一部は、マニュアル操作されてもよい。
【0055】
まずマニュアルモードについて説明する。操作受信部220は、操作装置用アダプタ221に装着された操作ケーブル301を経由して操作装置300から操作入力の信号を受信する。操作装置300と駆動制御装置200とが無線通信により通信を行う場合、操作受信部220は無線通信回路であってもよい。
【0056】
駆動コントローラ260は、操作受信部220からの操作入力の信号に基づいて電動駆動を制御する。具体的には、湾曲操作が行われたとき、駆動コントローラ260は、湾曲方向又は湾曲角度を示す制御信号をワイヤ駆動部250に出力し、ワイヤ駆動部250は、その湾曲方向又は湾曲角度で湾曲部102が湾曲するように湾曲ワイヤを駆動する。また、進退操作が行われたとき、駆動コントローラ260は、進退方向又は進退移動量を示す制御信号を通信部240を介して進退駆動装置に送信し、進退駆動装置は、その進退方向又は進退移動量で内視鏡100が進退するように体外軟性部140を前進後退させる。また、ロール回転操作が行われたとき、駆動コントローラ260は、ロール回転方向又はロール回転角度を示す制御信号を通信部240を介してロール駆動装置に送信し、ロール駆動装置は、そのロール回転方向又はロール回転角度で内視鏡100がロール回転するように挿入部110をロール回転させる。他の電動駆動についても同様な制御が行われる。
【0057】
次に自動制御モードについて説明する。画像取得部270は、有線通信又は無線通信により映像制御装置500から内視鏡画像の画像データを受信する通信インターフェースである。画像取得部270は、受信した内視鏡画像の画像データを駆動コントローラ260へ出力する。
【0058】
記憶部280は、乳頭部に対する位置決めの基準となる乳頭部の基準画像を記憶している。基準画像は、所定位置に管腔組織の開口部が写るように乳頭部が写された画像である。所定位置は、例えば画像中央であり、上述した「事前に登録された位置」に対応する。記憶部280には、図3又は図4で説明した様々な形態に対応した複数の基準画像を記憶していてもよい。記憶部280は、半導体メモリ又は磁気記憶装置等の記憶装置である。半導体メモリはSRAM又はDRAM等の揮発性メモリであってもよいし、EEPROM等の不揮発性メモリであってもよい。
【0059】
駆動コントローラ260は、内視鏡画像に写る乳頭部の位置を、基準画像に写る乳頭部の位置に近づけるように内視鏡動作又はバルーン720の径を制御する。例えば、駆動コントローラ260は、乳頭部の画像特徴量を内視鏡画像と基準画像から抽出し、その画像特徴量の比較結果に基づいて、内視鏡画像に写る乳頭部の位置を判断する。より好ましくは、駆動コントローラ260は、内視鏡画像上における管腔組織の開口部の位置を、所定位置に近づけるように内視鏡動作又はバルーン720の径を制御する。例えば、所定位置に管腔組織の開口部が位置する基準画像を記憶部280に記憶させておく。駆動コントローラ260は、乳頭部の位置合わせを行うことで、管腔組織の開口部を位置合わせする。管腔組織の開口部が閉じており画像から開口部を認識できない場合であっても、乳頭部の位置合わせが行われることで、画像内の所定位置に開口部が存在する状態に位置合わせされる。なお、記憶部280には、基準画像ではなく、基準画像から抽出した画像特徴量を記憶させておいてもよい。
【0060】
また駆動コントローラ260は、内視鏡画像に基づいて、処置具400の先端が管腔組織の開口部の方向を向くように内視鏡動作又は処置具400の起上角度を制御してもよい。或いは、駆動コントローラ260は、内視鏡画像に基づいて、処置具400の先端が胆管の走行方向を向くように、内視鏡動作又は処置具400の起上角度を制御してもよい。例えば、基準画像に胆管の走行方向の情報が付与されており、その情報に基づいて、処置具400の先端が胆管の走行方向を向くように制御されてもよい。なお、ここでの走行方向は内視鏡画像上の2次元的な方向である。即ち、内視鏡画像上において、胆管の走行方向と処置具400の向く方向が略平行となるように、内視鏡動作又は処置具400の起上角度が制御される。但し、CT画像等によって胆管の走行方向の3次元情報が得られる場合において、胆管の走行方向と処置具400の向く方向が3次元的に略平行となるように制御されてもよい。
【0061】
或いは、駆動コントローラ260は機械学習を用いた画像認識処理の結果に基づいて、内視鏡画像における管腔組織の開口部の位置が、事前に登録された位置となるように、制御してもよい。具体的には、記憶部280は学習済みモデルを記憶し、駆動コントローラ260は、その学習済みモデルに基づく処理を行うことで、上記位置決め制御を行う。例えば、学習済みモデルは、内視鏡画像が入力され、その内視鏡画像における管腔組織の開口部の位置が所定位置となるような内視鏡動作等の情報を出力するように、学習されている。また学習済みモデルは、内視鏡画像が入力され、その内視鏡画像から胆管の走行方向の情報を出力するように、学習されてもよい。駆動コントローラ260は、学習済みモデルに基づく処理により内視鏡画像から内視鏡動作等の情報を推定し、その情報に基づいて内視鏡動作又は処置具の起上角度等を制御する制御信号をワイヤ駆動部250等に出力する。この例では、記憶部280は基準画像又は画像特徴量を記憶しなくてもよく、管腔組織の開口部の「事前に登録された位置」は、学習によって学習済みモデルに反映されている。
【0062】
上述したように、胆管へのカニュレーションを行う際、乳頭部の内視鏡画像からカニューラの挿入位置と挿入方向を推測することが困難である。この点、上記の本実施形態によれば、オーバーチューブ710等による第1位置決めが行われた後の第2位置決めにおいて、内視鏡画像に基づいて内視鏡動作等の電動駆動が自動制御されることで、内視鏡100の先端部130が乳頭部に対して自動的に位置決めされる。これにより、非電動による手動操作で微妙な位置調整を行う必要がなくなり、経験の少ない術者等に対してERCP手技をアシストできる。また、自動制御によって、内視鏡画像内の乳頭部の位置が事前に登録された位置に自動制御されるので、内視鏡画像から術者がカニューラの挿入位置と挿入方向を特定しやすくなる。例えば、管腔組織の開口部が画像内の所定位置となるように自動制御されるので、開口部が画像から視認できない状態であっても、術者が開口部の位置を把握しやすくなる。
【0063】
4.医療システム各部の詳細構成例
図11に、湾曲部102とその駆動機構を含む内視鏡100を模式的に示す。内視鏡100は、湾曲部102と軟性部104とコネクタ201とを含む。なお、軟性部104は図9で説明した体内軟性部と体外軟性部145に対応し、図11では連結部125の図示を省略している。
【0064】
湾曲部102と軟性部104はアウターシース111に覆われる。このアウターシース111のチューブ内が図9の内部経路101に相当する。湾曲部102は、複数の湾曲駒112と、湾曲駒112の先端に連結された先端部130と、を含む。複数の湾曲駒112と先端部130は、各々、回動可能な連結部114によって基端側から先端側に直列的に連結されており、多関節構造となっている。コネクタ201には、駆動制御装置200側のカップリング機構に接続される内視鏡側のカップリング機構162が設けられる。このコネクタ201が駆動制御装置200に装着されることで、湾曲動作の電動駆動が可能になる。またアウターシース111内には湾曲ワイヤ160が設けられる。湾曲ワイヤ160の一端は先端部130に接続され、湾曲ワイヤ160は複数の湾曲駒112を貫通して軟性部104を通り、カップリング機構162内で折り返して再び軟性部104を通り、複数の湾曲駒112を貫通し、湾曲ワイヤ160の他端が先端部130に接続される。ワイヤ駆動部250からの駆動力はカップリング機構162を介して湾曲ワイヤ160の牽引力として湾曲ワイヤ160に伝達される。
【0065】
B2の実線矢印に示すように図面上の上側ワイヤが牽引されると下側ワイヤが押され、それにより湾曲駒112の多関節が図面上の上方向に屈曲する。これにより、A2の実線矢印に示すように、図面上の上方向に湾曲部102が湾曲する。B2の点線矢印に示すように図面上の下側ワイヤが牽引された場合、同様にして、A2の点線矢印に示すように、図面上の下方向に湾曲部102が湾曲する。なお、図8で説明したように、湾曲部102は直交する2方向に独立に湾曲可能である。図11には1方向分の湾曲機構を示しているが、実際には湾曲ワイヤが2組設けられ、各湾曲ワイヤが独立にカップリング機構162により牽引されることで、2方向に独立に湾曲可能となっている。
【0066】
なお、湾曲を電動化する機構は上記に限らない。例えば、カップリング機構162に変えてモータユニットを設けてもよい。具体的には、駆動制御装置200がコネクタ201を介してモータユニットに制御信号を送信し、モータユニットが制御信号に基づいて湾曲ワイヤ160を牽引又は弛緩することで湾曲動作を駆動してもよい。
【0067】
図12に、進退駆動装置800の詳細構成例を示す。進退駆動装置800は、モータユニット816とベース818とスライダ819とを含む。
【0068】
上段図と中段図に示すように、内視鏡100の体外軟性部140には、モータユニット816に着脱可能なアタッチメント802が設けられる。中段図に示すように、アタッチメント802がモータユニット816に装着されることで、進退の電動駆動が可能になる。下段図に示すように、スライダ819は、ベース818に対して直線移動可能にモータユニット816を支持する。このスライダ819は、図9の手術台Tに固定されている。B1に示すように、駆動制御装置200がモータユニット816に対して無線通信により前進又は後退の制御信号を送信し、その制御信号に基づいてモータユニット816とアタッチメント802がスライダ819上を直線移動する。これにより、図8のA1に示す内視鏡100の前進後退が実現される。なお、駆動制御装置200とモータユニット816は有線接続されてもよい。
【0069】
図13に、ロール駆動装置850を含む連結部125の斜視図を示す。連結部125は、連結部本体124とロール駆動装置850とを含む。
【0070】
処置具の挿入口190は連結部本体124に設けられており、連結部本体124の内部で処置具チャネルに接続されている。連結部本体124は円筒状であり、その円筒と同軸の円筒部材が連結部本体124の内部に回転可能に設けられている。その円筒部材の外側に体内軟性部119の基端部が固定されており、その基端部がロール操作部121となっている。これにより、体内軟性部119と円筒部材が、体内軟性部119の軸線方向を中心として連結部本体124に対して回転可能となっている。ロール駆動装置850は、連結部本体124の内部に設けられたモータユニットである。B3に示すように、駆動制御装置200がロール駆動装置850に対して無線通信によりロール回転の制御信号を送信し、その制御信号に基づいてロール駆動装置850が体内軟性部119の基端部を連結部本体124に対して回転させることで、体内軟性部119がロール回転する。これにより、図8のA3に示す内視鏡100のロール回転が実現される。なお、ロール駆動装置850がクラッチ機構を含み、クラッチ機構によりロール回転の非電動と電動が切り替えられてもよい。また、駆動制御装置200とロール駆動装置850は、内部経路101を通る信号線により有線接続されてもよい。
【0071】
図14に、処置具の起上台を含む内視鏡の先端部130の詳細構成例を示す。上図には、先端部130の外観図を示す。先端部130の側面に、処置具チャネルの開口131とカメラ132と照明レンズ133が設けられる。下図に示すように、先端部130の軸線方向に平行な方向をz方向とし、カメラ132の視線方向に平行な方向をy方向とし、z方向及びy方向に直交する方向をx方向とする。下図には、処置具チャネルのyz平面に平行で且つ処置具チャネルの開口131を通る平面における先端部130の断面図を示す。
【0072】
先端部130は、起上台134と起上台用ワイヤ135とを含む。起上台134は、x方向に平行な軸を中心に揺動可能である。起上台用ワイヤ135の一端は起上台134に接続され、他端はコネクタ201を介して駆動制御装置200に接続される。B4に示すように、駆動制御装置200のワイヤ駆動部250が起上台用ワイヤ135を押し引きすることで起上台134が揺動し、A4に示すように、処置具400の起上角度が変わる。起上角度は、開口131から突出する処置具400の角度であり、例えば、開口131から突出する処置具400とz方向との成す角度で定義できる。
【0073】
図15に、処置具400の詳細構成例を示す。ここでは、処置具400の一例として、先端湾曲を操作可能なカニューラを図示する。処置具400は、軸線方向に延びる長尺な挿入部402と、湾曲動作可能な湾曲動作部403と、湾曲動作部403を操作するための第1操作部404と、造影剤又はガイドワイヤを挿入するための第2操作部405とを含む。
【0074】
挿入部402は、チューブ421を有し、チューブ421の先端に湾曲動作部403が接続されている。なお、図15には、チューブ421の先端側を拡大して図示している。チューブ421はシースとも呼ばれる。術者は、内視鏡100の処置具チャネルに挿入された処置具400のチューブ421を持ち、チューブ421を押し引きすることで処置具400を前進後退させる。
【0075】
チューブ421の基端には、コネクタ422が接続される。コネクタ422には、第1操作部404と第2操作部405が接続される。第1操作部404は、コネクタ422に一端が接続された接続管442と、接続管442の他端に接続された第1操作本体441と、第1操作本体441の基端に固定されたグリップ444と、第1操作本体441の軸線方向に進退可能に設けられたスライダ443とを含む。チューブ421、コネクタ422、接続管442及び第1操作本体441の内部に、湾曲動作部403とスライダ443を接続するワイヤが設けられる。術者がグリップ444を把持してスライダ443を引くことでワイヤが牽引され、湾曲動作部403が湾曲する。
【0076】
第2操作部405は、コネクタ422に一端が接続された接続管452と、接続管452の他端に接続された第2操作本体451と、第2操作本体の基端側で接続管452の軸線方向に開口された第1開口453と、第2操作本体451の外面に開口された第2開口454と、第2操作本体451に設けられたフック455とを含む。フック455は、弾性を有し略C字状に形成されており、内視鏡100等に処置具400を係止するために用いられる。第1開口453と第2開口454は、第2操作本体451と接続管452とコネクタ422を介してチューブ421に接続される。第1開口453又は第2開口454から造影剤又はガイドワイヤを挿入することで、処置具400の先端から体内に造影剤を注入又はガイドワイヤを挿入できる。
【0077】
なお、ここでは処置具400が非電動で手動操作される例を説明したが、処置具400の操作が電動化されてもよい。例えば、内視鏡100の電動化と同様な手法により処置具400の進退、先端湾曲又はロール回転を電動化できる。
【0078】
図16に、オーバーチューブ710の駆動システム701の構成例を示す。上図に示すように、駆動システム701は、オーバーチューブ710とオーバーチューブ駆動装置715とを含む。
【0079】
オーバーチューブ710は、硬度が可変自在であり、軟化の際、その形状を可変自在で、硬化の際、その形状を保持できるよう構成されている。ここでは温度に応じて硬度が変わる形状記憶ポリマを用いた例を示すが、硬度可変の手法はこれに限定されず、例えば複数の駒部材を直列に連結した多関節構造を用いて硬度可変とする構成であってもよい。上図に示すように、オーバーチューブ710は、挿入部705sと操作部705tとを含む。操作部705tには接続部705aが設けられ、接続部705aを介してオーバーチューブ駆動装置715が接続される。
【0080】
下図に、挿入方向Sに平行な断面における挿入部705sの断面図を示す。なお、断面においてチューブの壁は2つ存在するが、その一方のみを図示している。他方の壁も同様な構成である。挿入部705sは、チューブ部材705pと、形状記憶ポリマチューブ705iとを含む。
【0081】
形状記憶ポリマチューブ705iは、ガラス転移温度よりも低い温度の流体が供給されると硬化され、ガラス転移温度よりも高い温度の流体が供給されると軟化する。形状記憶ポリマチューブ705iはチューブ部材705pに覆われており、形状記憶ポリマチューブ705iとチューブ部材705pの内壁との間に、供給路705kと、その供給路705kの先端に接続する回収路705bとが設けられる。オーバーチューブ駆動装置715は、ポンプ等を含む流体供給装置であり、設定温度の流体を供給路705kに供給し、回収路705bから回収する。駆動制御装置200は、オーバーチューブ710の硬度を制御する制御信号を無線通信によりオーバーチューブ駆動装置715へ送信し、オーバーチューブ駆動装置715は、その制御信号に基づいて流体の温度を設定することで、オーバーチューブ710の硬度を変更する。なお、図16では、オーバーチューブ710内において、供給路705kが内側に位置し、回収路705bが外側に位置しているが、供給路705kが外側に位置し、回収路705bが内側に位置しても良い。また、駆動制御装置200とオーバーチューブ駆動装置715は有線接続されてもよい。
【0082】
なお、オーバーチューブの硬度変更を電動化する機構は上記に限らない。例えば、複数のコマ部材を直列に連結させ、そのコマ部材の密着度合いの変更を電動駆動してもよい。具体的には、隣り合うコマ部材を煽動可能な状態にすることでオーバーチューブを軟化させ、隣り合うコマ部材を接触させて煽動しにくい状態にすることでオーバーチューブを硬化させてもよい。
【0083】
図17に、バルーン720の駆動システム721の構成例を示す。駆動システム721は、バルーン720と接続チューブ722とバルーン駆動装置725とを含む。
【0084】
バルーン720は伸縮可能な部材で構成され、オーバーチューブ710の先端付近に設けられる。バルーン720は、オーバーチューブ710の先端部の外周を囲うように配置されたドーナツ形状を有する。オーバーチューブ710の基端にバルーン通気口723が設けられ、バルーン通気口723とバルーン720は不図示の管路を介して接続される。また、バルーン通気口723とバルーン駆動装置725は接続チューブ722により接続される。バルーン駆動装置725は、ポンプ等を含み、接続チューブ722を介してバルーン720へ送気することでバルーン720を膨張させ、又はバルーン720から吸気することでバルーン720を収縮させる。駆動制御装置200は、バルーン720の径を制御する制御信号を無線通信によりバルーン駆動装置725へ送信し、バルーン駆動装置725は、その制御信号に基づいてバルーン720を膨張又は収縮させることで、バルーン720の径を制御する。なお、駆動制御装置200とバルーン駆動装置725と有線接続されてもよい。
【0085】
5.変形例
以下に、幾つかの変形例を示す。各変形例は、上述したいずれの実施形態にも組み合わせ可能である。
【0086】
図18に、保持部材の第1変形例を示す。この変形例では、内視鏡100の先端部130にバルーン730が設けられる。バルーン730は膨張と収縮により径が可変であり、非電動でバルーン730径が操作されてもよいし、バルーン720と同様な手法でバルーン730の径の制御が電動化されてもよい。また電動はマニュアル操作でも内視鏡画像に基づく自動制御でもよい。バルーン730により内視鏡100の先端部130が十二指腸に固定されることで、カニュレーション時における先端部130と乳頭部の位置関係を安定させることができる。またB5に示すように、バルーン730の径を調整することで、先端部130のアングルを変えることなく先端部130と乳頭部の距離を調整できる。
【0087】
図19に、保持部材の第2変形例を示す。この変形例では、内視鏡100の先端部130に吸引キャップ740が設けられる。吸引キャップ740の側面には、カメラ等の視線方向と同じ向きに吸引口741が設けられる。吸引口741から吸気することで十二指腸の腸壁が先端部130の方へ引き寄せられる。これにより、先端部130と乳頭部の距離を調整できる。この吸引は非電動でも電動でもよい。また電動はマニュアル操作でも内視鏡画像に基づく自動制御でもよい。
【0088】
保持部材の第3変形例として、バルーン720又は730をバスケットに置き換えてもよい。束ねた複数のワイヤで構成されるバスケットが膨らんだり閉じたりすることで、バルーンと同様な機能が実現される。保持部材の第4変形例として、内視鏡100の先端部130にグラスパ又はリトラクタを設けてもよい。グラスパ又はリトラクタは、十二指腸の腸壁を掴み、その腸壁を押す又は引き寄せる。これにより、先端部130が十二指腸に保持されると共に、先端部130と乳頭部の距離が調整される。
【0089】
次に、患者の個人差に応じて長さの異なる内視鏡等を使い分ける変形例を説明する。患者ごとに臓器の構造が異なるため、全ての患者に対して同じ内視鏡、オーバーチューブ又はアタッチメント等で対応するのは難しい。図20に、臓器構造の個人差の一例として、ルーワイ法による胃バイパス手術を受けた患者の臓器構造を示す。ルーワイ法では、胃を、食道に繋がる袋と、十二指腸に繋がる袋とに分離し、食道に繋がる袋に回腸を接続し、その回腸の途中に十二指腸を接続する。このような手術を受けた患者と、手術を受けていない患者では、口から乳頭部までの挿入距離が異なる。
【0090】
そこで、体内に挿入される内視鏡又はオーバーチューブを、半再利用、シングルユース又はアタッチメントで延長可能とし、患者ごとに選択できるようにする。例えば、再利用可能なものとしては、例えば制御装置、モータユニット又は送気吸引装置等がある。半再利用可能、シングルユース又はアタッチメント化可能なものとしては、例えば内視鏡、処置具又はオーバーチューブ等がある。内視鏡、処置具又はオーバーチューブは、長さ又はバルーン位置等が異なるものが準備される。
【0091】
図21に、電動内視鏡をマニュアル操作する操作装置の変形例を示す。図9ではハンディな操作装置300を図示したが、図21に示すようにコンソール形態の操作装置320を用いてもよい。操作装置320は、内視鏡画像を表示するモニタ325と、右手で操作される操作部321と、左手で操作される操作部322と、1又は複数のフットスイッチ323とを含む。操作部321と322の各々は、例えば上下左右方向の操作入力が可能となっている。例えば、操作部321の上下左右操作に内視鏡100の上下左右の湾曲操作を割り当て、操作部322の上下左右操作に内視鏡100の進退操作とロール回転操作を割り当て、フットスイッチに処置具400の起上台の上下操作を割り当てる。なお、機能の割り当てはこれに限定されない。
【0092】
以上に説明したように、ERCPの手技において得られる情報は、乳頭部を写した内視鏡画像のみである。乳頭部と管腔組織の形態には個人差があることから、内視鏡画像のみからカニューラの挿入位置と挿入方向を特定することは困難を伴う。開口部の位置と胆管の走行方向をより正確に推測するために、画像内の所定位置に乳頭部が写るように位置合わせすることが望ましいが、挿入部の基端側で行われる操作が先端部に伝わりにくい、或いは内視鏡の先端部が乳頭部に対してブレるといった理由によって、内視鏡先端部の位置を調整する操作には、困難を伴う。なお、上記の米国特許出願公開第2017/0086929号明細書にはロボティックカテーテルシステムをERCPに適用した例が開示されているが、上記のような課題及びそれを解決する主題については開示も示唆もしていない。
【0093】
そこで、本実施形態の医療システム10は、内視鏡100と制御装置600とを含む。内視鏡100は、内視鏡動作が電動駆動され、内視鏡画像を撮像する。内視鏡動作は、挿入部110の前進後退、挿入部110の湾曲部102の湾曲角度調整、又は挿入部110のロール回転のうち少なくとも1つである。制御装置600は、電動駆動による内視鏡動作を制御する。制御装置600は、十二指腸の乳頭部に対して挿入部110が位置決めされる第1位置決めが行われた後に、内視鏡画像に基づいて、電動駆動による内視鏡動作を制御することで、乳頭部に対して挿入部110の先端部130を位置決めする第2位置決めを行う。
【0094】
本実施形態によれば、第1位置決めによって、乳頭部に対して挿入部110を位置決めできる。そして、その位置決めされた挿入部110と乳頭部の位置関係のもとに、第2位置決めが行われることで、先端付近の内視鏡動作を電動駆動により自在に制御できるようになる。また、第2位置決めにおいて、内視鏡画像に基づいて内視鏡動作等の電動駆動が自動制御されることで、挿入部110の先端部130が乳頭部に対して自動的に位置決めされる。これにより、非電動による手動操作で微妙な位置調整を行う必要がなくなり、経験の少ない術者等に対してカニュレーションの手技をアシストできる。
【0095】
なお、内視鏡動作については「2.本実施形態の手技フロー及び医療システム」の図8等で説明されている。また、十二指腸の乳頭部については「1.ERCPについて」の図1等で説明されている。また、第1位置決めと第2位置決めについては、「2.本実施形態の手技フロー及び医療システム」の図6等で説明されている。
【0096】
また本実施形態では、医療システム10は、挿入部110を保持することで挿入部110の第1位置決めを行う保持部材を含んでもよい。
【0097】
本実施形態によれば、第1位置決めにおいて保持部材により挿入部110が保持されることで、第2位置決めにおいて、内視鏡動作の電動駆動が挿入部110の基端側から先端側に伝達されやすくなると共に、内視鏡100の先端部130が乳頭部に対してブレないように挿入部110が保持される。
【0098】
なお、保持部材は、図5図8図16又は図17等で説明したオーバーチューブ710、バルーン720又はそれら両方に対応する。或いは、保持部材は、図18で説明したバルーン730、又は図19で説明した吸引キャップ740等であってもよい。
【0099】
また本実施形態では、制御装置600は、挿入部110を保持する保持部材よりも先端側の内視鏡動作により挿入部110の先端部130の位置を微調整する第2位置決めを行ってもよい。
【0100】
本実施形態によれば、第1位置決めにおいて、乳頭部に対する先端部130の位置が粗調整されると共に挿入部110が保持部材により保持される。これにより、電動駆動による内視鏡動作が正確に行われると共に、先端部130が乳頭部に対してブレなくなるため、第2位置決めにおいて、保持部材よりも先端側の内視鏡動作により内視鏡100の先端部130の位置を乳頭部に対して微調整できるようになる。
【0101】
なお、保持部材よりも先端側とは、保持部材のうち内視鏡動作を制限する硬化又は固定等が行われる部分よりも先端側という意味である。この点については、「2.本実施形態の手技フロー及び医療システム」の図8等で説明されている。
【0102】
また本実施形態では、制御装置600は、乳頭部が、内視鏡画像上の事前に登録された位置に撮像されるように、電動駆動による内視鏡動作を制御する第2位置決めを行ってもよい。
【0103】
本実施形態によれば、事前に登録された位置に乳頭部が位置する内視鏡画像が得られる。これにより、過去の症例又は経験と比較しやすい見慣れた位置に乳頭部が写るので、術者は、その内視鏡画像を見ることで、管腔組織の開口部の位置や胆管の走行方向を判断しやすくなる。また、電動で位置合わせが行われるので、術者が微妙な操作を行うことなく、事前に登録された位置に乳頭部が位置する内視鏡画像が得られる。なお、制御装置600は、管腔組織の開口部が、内視鏡画像上の事前に登録された位置に撮像されるように、電動駆動による内視鏡動作を制御する第2位置決めを行ってもよい。術者は、その内視鏡画像を見ることで管腔組織の開口部の位置を把握できる。例えば、乳頭部の画像において管腔組織の開口部が閉じており視認しにくい場合であっても、術者は、内視鏡画像内の所定位置に管腔組織の開口部があると推定できる。
【0104】
なお、事前に登録された位置については、「2.本実施形態の手技フロー及び医療システム」の図6又は「3.医療システムの詳細構成例」の図10等で説明されている。
【0105】
また本実施形態では、乳頭部は、管腔組織の開口部を含んでもよい。管腔組織の開口部は、十二指腸の乳頭部において、胆管と膵管が合流した共通管の開口部、又は胆管の開口部であってもよい。
【0106】
十二指腸の乳頭部には、乳頭部の形態又は管腔組織の構造などに様々な個人差がある。本実施形態によれば、様々な個人差がある十二指腸の乳頭部に対して、第1位置決めと第2位置決めにより、内視鏡100の先端部130を位置決めできる。また、乳頭部に対する位置決めが自動化されることで、ERCPにおけるカニュレーションの手技をアシストできる。
【0107】
なお、十二指腸の乳頭部、管腔組織の開口部及びそれらの関係については、「1.ERCPについて」等で説明されている。
【0108】
また本実施形態では、医療システム10は処置具400を含む。処置具400は、内視鏡100の処置具400の挿入口190から挿入され、先端部130の内部で起上されて先端部130の側面から突出する。制御装置600は、処置具400が、乳頭部が写る内視鏡画像から推定される胆管の走行方向に向くように、内視鏡動作又は処置具400の起上角度の少なくとも1つを制御する第2位置決めを行う。
【0109】
本実施形態によれば、第2位置決めにより、処置具400が胆管の走行方向を向くように内視鏡動作又は処置具400の起上角度の少なくとも1つが自動制御される。これにより、乳頭部の個人差等に起因して困難な胆管の走行方向の推定が自動化されるので、経験の少ない術者等に対してERCPの手技をアシストできる。
【0110】
なお、処置具400の起上については、「4.医療システム各部の詳細構成例」の図14等で説明されている。また、処置具400を胆管の走行方向に向ける制御については、例えば「3.医療システムの詳細構成例」の図10等で説明されている。
【0111】
また本実施形態では、保持部材は、乳頭部が存在する臓器に対して挿入部110を保持する第1保持部材を含んでもよい。
【0112】
具体的には、第1保持部材は、内視鏡100の先端部130が十二指腸の乳頭部に達した状態において十二指腸に対して挿入部110を保持する部材であってもよい。
【0113】
また、第1保持部材は、湾曲部102の基端よりも挿入部110の基端側に設けられてもよい。
【0114】
また、第1保持部材は、膨張して臓器に接することで臓器に対して挿入部110を保持するバルーン720であってもよい。
【0115】
これらの第1保持部材により臓器に挿入口190が保持されることで、その臓器に存在する乳頭部に対する挿入部110の第1位置決めを行い、その後の第2位置決めにおいて先端付近の内視鏡動作を電動駆動により自在に制御できるようになる。
【0116】
なお、第1保持部材は、図5図8又は図17等で説明したバルーン720に対応する。或いは、第1保持部材は、図18で説明したバルーン730、又は図19で説明した吸引キャップ740等であってもよい。
【0117】
また本実施形態では、保持部材は、臓器に対して前記挿入部を保持する第1保持部材までの挿入部110の経路を保持する第2保持部材を含んでもよい。
【0118】
また、第2保持部材は、硬度可変であり、硬化により挿入部110の経路を保持するオーバーチューブ710であってもよい。
【0119】
これらの第2保持部材により臓器に挿入口190が保持されることで、その臓器に存在する管腔組織の開口部に対する挿入部110の第1位置決めを行い、その後の第2位置決めにおいて先端部130の内視鏡動作を電動駆動により自在に制御できるようになる。
【0120】
なお、第2保持部材は、図5図8図16又は図17等で説明したオーバーチューブ710に対応する。オーバーチューブ710の硬度可変については、「4.医療システム各部の詳細構成例」の図16等で説明されている。
【0121】
また医療システム10において、内視鏡100の湾曲動作の電動駆動は本実施形態の構成に限られない。例えば、非電動の内視鏡の湾曲操作ノブに、電動モータを搭載したアタッチメントを着脱できる構成でもよい。駆動制御装置200とアタッチメントとは通信可能に構成され、駆動制御装置200からの湾曲制御信号を受け取るとアタッチメントが駆動して湾曲を実行する。この場合、アタッチメントの着脱により、マニュアル制御と、自動制御とを切り替えることができる。あるいは、駆動制御装置200の駆動を制御できるハンドルを、駆動制御装置200に相当する湾曲制御のためのモータユニットに対して着脱できる構成でもよい。この場合、ハンドルの着脱により、マニュアル制御と、自動制御とを切り替えることができる。
【0122】
本実施形態は以下のようにカニュレーション方法として実施されてもよい。即ち、カニュレーション方法は、内視鏡100を用いる。内視鏡100は、内視鏡動作が電動駆動され、内視鏡画像を撮像する。内視鏡動作は、挿入部110の前進後退、挿入部110の湾曲部102の湾曲角度調整、又は挿入部110のロール回転のうち少なくとも1つである。カニュレーション方法は、内視鏡100の挿入部110を体内に挿入するステップを含む。カニュレーション方法は、十二指腸の乳頭部に対して挿入部110を位置決めする第1位置決めを行うステップを含む。カニュレーション方法は、第1位置決めを行うステップの後に、内視鏡画像に基づいて、電動駆動による内視鏡動作を制御することで、乳頭部に対して挿入部110の先端部130を位置決めする第2位置決めを行うステップを含む。カニュレーション方法は、第2位置決めを行うステップの後に、乳頭部から胆管へのカニュレーションを行うステップを含む。
【0123】
また本実施形態では、第1位置決めを行うステップにおいて、挿入部110を保持する保持部材により挿入部110の第1位置決めを行ってもよい。
【0124】
また本実施形態では、第2位置決めを行うステップにおいて、挿入部110を保持する保持部材よりも先端側の内視鏡動作により内視鏡100の先端部130の位置を微調整してもよい。
【0125】
また本実施形態では、第2位置決めを行うステップにおいて、乳頭部が、内視鏡画像上の事前に登録された位置に撮像されるように、電動駆動による内視鏡動作を制御してもよい。
【0126】
また本実施形態では、処置具400は、内視鏡100の処置具400の挿入口190から挿入されると共に先端部130の内部で起上されて先端部130の側面から突出する。第2位置決めを行うステップにおいて、処置具400が、乳頭部が写る内視鏡画像から推定される胆管の走行方向に向くように、内視鏡動作又は処置具400の起上角度の少なくとも1つを制御してもよい。
【0127】
また本実施形態は、以下のように医療システム10の作動方法として実施されてもよい。即ち、医療システム10の作動方法は、内視鏡100を用いる。内視鏡100は、内視鏡動作が電動駆動され、内視鏡画像を撮像する。内視鏡動作は、挿入部110の前進後退、挿入部110の湾曲部102の湾曲角度調整、又は挿入部110のロール回転のうち少なくとも1つである。医療システム10の作動方法は、十二指腸の乳頭部に対して挿入部110を位置決めする第1位置決めを行うステップを含む。医療システム10の作動方法は、第1位置決めを行うステップの後に、内視鏡画像に基づいて、電動駆動による内視鏡動作を制御することで、乳頭部に対して挿入部110の先端部130を位置決めする第2位置決めを行うステップを含む。なお、医療システム10の作動方法において、各ステップの主体は医療システム10である。
【0128】
以上、本開示を適用した実施形態およびその変形例について説明したが、本開示は、各実施形態やその変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階では、開示の要旨を逸脱しない範囲内で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記した各実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の開示を形成することができる。例えば、各実施形態や変形例に記載した全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態や変形例で説明した構成要素を適宜組み合わせてもよい。このように、開示の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能である。また、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【符号の説明】
【0129】
10 医療システム、100 内視鏡、101 内部経路、102 湾曲部、104 軟性部、110 挿入部、111 アウターシース、112 湾曲駒、114 連結部、119 体内軟性部、121 ロール操作部、124 連結部本体、125 連結部、130 先端部、131 開口、132 カメラ、133 照明レンズ、134 起上台、135 起上台用ワイヤ、140 体外軟性部、145 体外軟性部、160 湾曲ワイヤ、162 カップリング機構、172 送気吸引チューブ、190 挿入口、192 延長チューブ、200 駆動制御装置、201 コネクタ、202 コネクタ、210 アダプタ、211 操作装置用アダプタ、212 内視鏡用アダプタ、220 操作受信部、221 操作装置用アダプタ、230 送気吸引駆動部、240 通信部、250 ワイヤ駆動部、260 駆動コントローラ、270 画像取得部、280 記憶部、300 操作装置、301 操作ケーブル、320 操作装置、321 操作部、322 操作部、323 フットスイッチ、325 モニタ、500 映像制御装置、600 制御装置、900 表示装置
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