(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007508
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】光学結像装置の製造方法及び光学結像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/08 20060101AFI20230112BHJP
G02B 30/00 20200101ALI20230112BHJP
【FI】
G02B5/08 C
G02B5/08 A
G02B27/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019187843
(22)【出願日】2019-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】598033848
【氏名又は名称】株式会社アスカネット
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠
【テーマコード(参考)】
2H042
2H199
【Fターム(参考)】
2H042DA01
2H042DA11
2H042DA12
2H042DA22
2H042DB14
2H042DC01
2H042DC02
2H042DD04
2H042DE00
2H199BA32
2H199BB17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】安価に製造可能で高品質な光学結像装置の製造方法及び光学結像装置を提供する。
【解決手段】平行配置された複数の透明薄板材と、各透明薄板材の対向面に形成された光反射面と、その間に充填された透明樹脂18を有する第1、第2の光学結像部材11、12を、光反射面が直交するように重ねて構成された光学結像装置10及びその製造方法であり、第1、第2の光学結像部材11、12は、複数の透明板材20を、幅方向に所定長交互にずらして積層し突出部21を形成した積層体22を形成し、各突出部21の対向面24に光反射面となる金属反射面を形成し、隣り合う突出部21の隙間領域17に透明樹脂18を充填し、一体となった突出部21を切断して原材26、27を製造し、その切断端面28の反対側の露出端面29を研磨又は除去して形成され、透明板材20と透明樹脂18との屈折率の比を0.9~1.1とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視して短幅で長尺の矩形状のガラス又は樹脂からなる複数の透明板材を幅方向に所定長交互にずらして突出部を形成した状態で、該透明板材を接着剤を介して積層して積層体を形成する積層体形成工程と、
少なくとも隣り合う前記突出部の対向面に金属反射面を形成する金属膜形成工程と、
隣り合う前記突出部の隙間領域に透明樹脂を充填する樹脂充填工程と、
前記積層体の両側で、それぞれ前記透明樹脂が充填されて一体となった前記突出部を切断し積層本体から分離して対となる光学結像部材の原材を製造する切断工程と、
前記各原材の少なくとも切断端面の反対側の露出端面を研磨又は除去して前記光学結像部材を製造する除去工程と、
対となる前記光学結像部材を、光反射面となる前記金属反射面を平面視して直交させて光学結像装置を構成する組立工程とを有し、
しかも、前記透明板材と前記透明樹脂との屈折率の比を0.9~1.1としたことを特徴とする光学結像装置の製造方法。
【請求項2】
平面視して短幅で長尺の矩形状のガラス又は樹脂からなり幅が異なる2種類の透明板材をそれぞれ複数用意し、該2種類の透明板材を交互にその幅方向一側を揃えてその幅方向他側に突出部を形成した状態で、接着剤を介して積層して積層体を形成する積層体形成工程と、
少なくとも隣り合う前記突出部の対向面に金属反射面を形成する金属膜形成工程と、
隣り合う前記突出部の隙間領域に透明樹脂を充填する樹脂充填工程と、
前記透明樹脂が充填されて一体となった前記突出部を切断し積層本体から分離して光学結像部材の原材を製造する切断工程と、
前記原材の少なくとも切断端面の反対側の露出端面を研磨又は除去して前記光学結像部材を製造する除去工程と、
前記積層体形成工程から前記除去工程により製造した対となる前記光学結像部材を、光反射面となる前記金属反射面を平面視して直交させて光学結像装置を構成する組立工程とを有し、
しかも、前記透明板材と前記透明樹脂との屈折率の比を0.9~1.1としたことを特徴とする光学結像装置の製造方法。
【請求項3】
平面視して短幅で長尺の矩形状のガラス又は樹脂からなり、その片面又は両面に金属反射面が形成された複数の透明板材を幅方向に所定長交互にずらして突出部を形成した状態で、該透明板材を接着剤を介して積層して積層体を形成する積層体形成工程と、
隣り合う前記突出部の隙間領域に透明樹脂を充填する樹脂充填工程と、
前記積層体の両側で、それぞれ前記透明樹脂が充填されて一体となった前記突出部を切断し積層本体から分離して対となる光学結像部材を製造する切断工程と、
対となる前記光学結像部材を、光反射面となる前記金属反射面を平面視して直交させて光学結像装置を構成する組立工程とを有し、
しかも、前記透明板材と前記透明樹脂との屈折率の比を0.9~1.1としたことを特徴とする光学結像装置の製造方法。
【請求項4】
平面視して短幅で長尺の矩形状のガラス又は樹脂からなり、その片面又は両面に金属反射面が形成された幅が異なる2種類の透明板材をそれぞれ複数用意し、該2種類の透明板材を交互にその幅方向一側を揃えてその幅方向他側に突出部を形成した状態で、接着剤を介して積層して積層体を形成する積層体形成工程と、
隣り合う前記突出部の隙間領域に透明樹脂を充填する樹脂充填工程と、
前記透明樹脂が充填されて一体となった前記突出部を切断し積層本体から分離して光学結像部材を製造する切断工程と、
前記積層体形成工程から前記切断工程により製造した対となる前記光学結像部材を、光反射面となる前記金属反射面を平面視して直交させて光学結像装置を構成する組立工程とを有し、
しかも、前記透明板材と前記透明樹脂との屈折率の比を0.9~1.1としたことを特徴とする光学結像装置の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4記載の光学結像装置の製造方法において、前記切断工程で製造される前記光学結像部材は、前記突出部を切断し前記積層本体から分離された原材の少なくとも切断端面の反対側の露出端面が研磨又は除去されていることを特徴とする光学結像装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の光学結像装置の製造方法において、前記光学結像部材の切断側端面及び反対側の露出側端面のいずれか一方又は双方に、ガラス又は樹脂からなる透明カバー薄板材を貼り合わせることを特徴とする光学結像装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の光学結像装置の製造方法において、前記透明板材は前記突出部を除く領域に前記接着剤が配置されていることを特徴とする光学結像装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の光学結像装置の製造方法において、前記接着剤はOCAテープであることを特徴とする光学結像装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の光学結像装置の製造方法において、前記透明板材の寸法は、幅が8~40mm、長尺方向長さが500~2000mm、厚みが0.1~2mmの範囲にあることを特徴とする光学結像装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の光学結像装置の製造方法において、前記突出部の突出長さは、0.2~10mmの範囲にあることを特徴とする光学結像装置の製造方法。
【請求項11】
断面矩形のガラス又は樹脂からなり、一定の隙間を有して平行に配置された複数の透明薄板材と、対向する前記透明薄板材の対向面に形成された光反射面と、該光反射面が形成された前記透明薄板材の間に充填された透明樹脂とを有する第1、第2の光学結像部材を、前記光反射面が平面視して直交するように重ねて構成された光学結像装置であって、
前記第1、第2の光学結像部材は、平面視して短幅で長尺の矩形状のガラス又は樹脂からなる複数の透明板材を幅方向に所定長交互にずらして突出部を形成した状態で、該透明板材を接着剤を介して積層して積層体を形成し、少なくとも隣り合う前記突出部の対向面に前記光反射面となる金属反射面を形成し、隣り合う前記突出部の隙間領域に前記透明樹脂を充填し、前記積層体の両側で、それぞれ前記透明樹脂が充填されて一体となった前記突出部を切断し積層本体から分離して対となる光学結像部材の原材を製造し、前記各原材の少なくとも切断端面の反対側の露出端面を研磨又は除去して形成され、
しかも、前記透明板材と前記透明樹脂との屈折率の比を0.9~1.1としたことを特徴とする光学結像装置。
【請求項12】
断面矩形のガラス又は樹脂からなり、一定の隙間を有して平行に配置された複数の透明薄板材と、対向する前記透明薄板材の対向面に形成された光反射面と、該光反射面が形成された前記透明薄板材の間に充填された透明樹脂とを有する第1、第2の光学結像部材を、前記光反射面が平面視して直交するように重ねて構成された光学結像装置であって、
前記第1、第2の光学結像部材は、平面視して短幅で長尺の矩形状のガラス又は樹脂からなり幅が異なる2種類の透明板材をそれぞれ複数用意し、該2種類の透明板材を交互にその幅方向一側を揃えてその幅方向他側に突出部を形成した状態で、接着剤を介して積層して積層体を形成し、少なくとも隣り合う前記突出部の対向面に前記光反射面となる金属反射面を形成し、隣り合う前記突出部の隙間領域に前記透明樹脂を充填し、該透明樹脂が充填されて一体となった前記突出部を切断し積層本体から分離して光学結像部材の原材を製造し、前記原材の少なくとも切断端面の反対側の露出端面を研磨又は除去して形成され、
しかも、前記透明板材と前記透明樹脂との屈折率の比を0.9~1.1としたことを特徴とする光学結像装置。
【請求項13】
断面矩形のガラス又は樹脂からなり、一定の隙間を有して平行に配置された複数の透明薄板材と、対向する前記透明薄板材の対向面に形成された光反射面と、該光反射面が形成された前記透明薄板材の間に充填された透明樹脂とを有する第1、第2の光学結像部材を、前記光反射面が平面視して直交するように重ねて構成された光学結像装置であって、
前記第1、第2の光学結像部材は、平面視して短幅で長尺の矩形状のガラス又は樹脂からなり、その片面又は両面に前記光反射面となる金属反射面が形成された複数の透明板材を幅方向に所定長交互にずらして突出部を形成した状態で、該透明板材を接着剤を介して積層して積層体を形成し、隣り合う前記突出部の隙間領域に透明樹脂を充填し、前記積層体の両側で、それぞれ前記透明樹脂が充填されて一体となった前記突出部を切断し積層本体から分離して形成され、
しかも、前記透明板材と前記透明樹脂との屈折率の比を0.9~1.1としたことを特徴とする光学結像装置。
【請求項14】
断面矩形のガラス又は樹脂からなり、一定の隙間を有して平行に配置された複数の透明薄板材と、対向する前記透明薄板材の対向面に形成された光反射面と、該光反射面が形成された前記透明薄板材の間に充填された透明樹脂とを有する第1、第2の光学結像部材を、前記光反射面が平面視して直交するように重ねて構成された光学結像装置であって、
前記第1、第2の光学結像部材は、平面視して短幅で長尺の矩形状のガラス又は樹脂からなり、その片面又は両面に前記光反射面となる金属反射面が形成された幅が異なる2種類の透明板材をそれぞれ複数用意し、該2種類の透明板材を交互にその幅方向一側を揃えてその幅方向他側に突出部を形成した状態で、接着剤を介して積層して積層体を形成し、隣り合う前記突出部の隙間領域に透明樹脂を充填し、該透明樹脂が充填されて一体となった前記突出部を切断し積層本体から分離して形成され、
しかも、前記透明板材と前記透明樹脂との屈折率の比を0.9~1.1としたことを特徴とする光学結像装置。
【請求項15】
請求項13又は14記載の光学結像装置において、前記第1、第2の光学結像部材は、前記突出部を切断し前記積層本体から分離された原材の少なくとも切断端面の反対側の露出端面が研磨又は除去されていることを特徴とする光学結像装置。
【請求項16】
請求項11~15のいずれか1項に記載の光学結像装置において、前記第1、第2の光学結像部材の厚み方向の片面又は両面に、ガラス又は樹脂からなる透明カバー薄板材が貼り合わされていることを特徴とする光学結像装置。
【請求項17】
請求項11~16のいずれか1項に記載の光学結像装置において、前記透明薄板材の寸法は、前記光反射面を形成する表面の高さが0.2~10mm、長尺方向長さが500~2000mm、厚みが0.1~2mmの範囲にあることを特徴とする光学結像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隙間を有して垂直に配置された複数の光反射面(鏡面)が形成された光学結像部材を用いた光学結像装置の製造方法及び光学結像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体表面から発する光(散乱光)を用いて立体像を形成する装置として、例えば、特許文献1に記載の光制御パネル(光学結像部材)を用いた光学結像装置がある。
光制御パネルは、平行な土手によって形成される断面四角形の溝が一面に形成された透明な凹凸板材の各溝の対向する平行な側面に光反射部を形成して製造され、光学結像装置は、この光制御パネルを2つ用意し、それぞれの光反射部を直交又は交差させた状態で向い合わせて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、光制御パネルの凹凸板材をインジェクション成型によって製造する場合、型枠の寸法精度によっては、溝の対向する側面の垂直角度の精度が悪くなり(側面が傾き)、製品品質の低下を招くおそれがある。この傾向は、特に大型の凹凸板材を製造する場合に顕著になり易い。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、安価に製造可能で高品質な光学結像装置の製造方法及び光学結像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る光学結像装置の製造方法は、平面視して短幅で長尺の矩形状のガラス又は樹脂からなる複数の透明板材を幅方向に所定長交互にずらして突出部を形成した状態で、該透明板材を接着剤を介して積層して積層体を形成する積層体形成工程と、
少なくとも隣り合う前記突出部の対向面に金属反射面を形成する金属膜形成工程と、
隣り合う前記突出部の隙間領域に透明樹脂を充填する樹脂充填工程と、
前記積層体の両側で、それぞれ前記透明樹脂が充填されて一体となった前記突出部を切断し積層本体から分離して対となる光学結像部材の原材を製造する切断工程と、
前記各原材の少なくとも切断端面の反対側の露出端面を研磨又は除去して前記光学結像部材を製造する除去工程と、
対となる前記光学結像部材を、光反射面となる前記金属反射面を平面視して直交させて光学結像装置を構成する組立工程とを有し、
しかも、前記透明板材と前記透明樹脂との屈折率の比を0.9~1.1とした。
【0007】
前記目的に沿う第2の発明に係る光学結像装置の製造方法は、平面視して短幅で長尺の矩形状のガラス又は樹脂からなり幅が異なる2種類の透明板材をそれぞれ複数用意し、該2種類の透明板材を交互にその幅方向一側を揃えてその幅方向他側に突出部を形成した状態で、接着剤を介して積層して積層体を形成する積層体形成工程と、
少なくとも隣り合う前記突出部の対向面に金属反射面を形成する金属膜形成工程と、
隣り合う前記突出部の隙間領域に透明樹脂を充填する樹脂充填工程と、
前記透明樹脂が充填されて一体となった前記突出部を切断し積層本体から分離して光学結像部材の原材を製造する切断工程と、
前記原材の少なくとも切断端面の反対側の露出端面を研磨又は除去して前記光学結像部材を製造する除去工程と、
前記積層体形成工程から前記除去工程により製造した対となる前記光学結像部材を、光反射面となる前記金属反射面を平面視して直交させて光学結像装置を構成する組立工程とを有し、
しかも、前記透明板材と前記透明樹脂との屈折率の比を0.9~1.1とした。
【0008】
前記目的に沿う第3の発明に係る光学結像装置の製造方法は、平面視して短幅で長尺の矩形状のガラス又は樹脂からなり、その片面又は両面に金属反射面が形成された複数の透明板材を幅方向に所定長交互にずらして突出部を形成した状態で、該透明板材を接着剤を介して積層して積層体を形成する積層体形成工程と、
隣り合う前記突出部の隙間領域に透明樹脂を充填する樹脂充填工程と、
前記積層体の両側で、それぞれ前記透明樹脂が充填されて一体となった前記突出部を切断し積層本体から分離して対となる光学結像部材を製造する切断工程と、
対となる前記光学結像部材を、光反射面となる前記金属反射面を平面視して直交させて光学結像装置を構成する組立工程とを有し、
しかも、前記透明板材と前記透明樹脂との屈折率の比を0.9~1.1とした。
【0009】
前記目的に沿う第4の発明に係る光学結像装置の製造方法は、平面視して短幅で長尺の矩形状のガラス又は樹脂からなり、その片面又は両面に金属反射面が形成された幅が異なる2種類の透明板材をそれぞれ複数用意し、該2種類の透明板材を交互にその幅方向一側を揃えてその幅方向他側に突出部を形成した状態で、接着剤を介して積層して積層体を形成する積層体形成工程と、
隣り合う前記突出部の隙間領域に透明樹脂を充填する樹脂充填工程と、
前記透明樹脂が充填されて一体となった前記突出部を切断し積層本体から分離して光学結像部材を製造する切断工程と、
前記積層体形成工程から前記切断工程により製造した対となる前記光学結像部材を、光反射面となる前記金属反射面を平面視して直交させて光学結像装置を構成する組立工程とを有し、
しかも、前記透明板材と前記透明樹脂との屈折率の比を0.9~1.1とした。
【0010】
第3、第4の発明に係る光学結像装置の製造方法において、前記切断工程で製造される前記光学結像部材には、前記突出部を切断し前記積層本体から分離された原材の少なくとも切断端面の反対側の露出端面を研磨又は除去したものを使用できる。
【0011】
第1~第4の発明に係る光学結像装置の製造方法において、前記光学結像部材の切断側端面及び反対側の露出側端面のいずれか一方又は双方に、ガラス又は樹脂からなる透明カバー薄板材を貼り合わせるのがよい。
【0012】
第1~第4の発明に係る光学結像装置の製造方法において、前記透明板材(幅が異なる2種類の透明板材も含む)は前記突出部を除く領域に前記接着剤を配置するのがよい。
【0013】
第1~第4の発明に係る光学結像装置の製造方法において、前記接着剤はOCAテープであるのがよい。
【0014】
第1~第4の発明に係る光学結像装置の製造方法において、前記透明板材の寸法は、幅を8~40mm、長尺方向長さを500~2000mm、厚みを0.1~2mmの範囲にすることができる。
【0015】
第1~第4の発明に係る光学結像装置の製造方法において、前記突出部の突出長さを、0.2~10mmの範囲にすることができる。
【0016】
前記目的に沿う第5の発明に係る光学結像装置は、断面矩形のガラス又は樹脂からなり、一定の隙間を有して平行に配置された複数の透明薄板材と、対向する前記透明薄板材の対向面に形成された光反射面と、該光反射面が形成された前記透明薄板材の間に充填された透明樹脂とを有する第1、第2の光学結像部材を、前記光反射面が平面視して直交するように重ねて構成された光学結像装置であって、
前記第1、第2の光学結像部材は、平面視して短幅で長尺の矩形状のガラス又は樹脂からなる複数の透明板材を幅方向に所定長交互にずらして突出部を形成した状態で、該透明板材を接着剤を介して積層して積層体を形成し、少なくとも隣り合う前記突出部の対向面に前記光反射面となる金属反射面を形成し、隣り合う前記突出部の隙間領域に前記透明樹脂を充填し、前記積層体の両側で、それぞれ前記透明樹脂が充填されて一体となった前記突出部を切断し積層本体から分離して対となる光学結像部材の原材を製造し、前記各原材の少なくとも切断端面の反対側の露出端面を研磨又は除去して形成され、
しかも、前記透明板材と前記透明樹脂との屈折率の比を0.9~1.1とした。
【0017】
前記目的に沿う第6の発明に係る光学結像装置は、断面矩形のガラス又は樹脂からなり、一定の隙間を有して平行に配置された複数の透明薄板材と、対向する前記透明薄板材の対向面に形成された光反射面と、該光反射面が形成された前記透明薄板材の間に充填された透明樹脂とを有する第1、第2の光学結像部材を、前記光反射面が平面視して直交するように重ねて構成された光学結像装置であって、
前記第1、第2の光学結像部材は、平面視して短幅で長尺の矩形状のガラス又は樹脂からなり幅が異なる2種類の透明板材をそれぞれ複数用意し、該2種類の透明板材を交互にその幅方向一側を揃えてその幅方向他側に突出部を形成した状態で、接着剤を介して積層して積層体を形成し、少なくとも隣り合う前記突出部の対向面に前記光反射面となる金属反射面を形成し、隣り合う前記突出部の隙間領域に前記透明樹脂を充填し、該透明樹脂が充填されて一体となった前記突出部を切断し積層本体から分離して光学結像部材の原材を製造し、前記原材の少なくとも切断端面の反対側の露出端面を研磨又は除去して形成され、
しかも、前記透明板材と前記透明樹脂との屈折率の比を0.9~1.1とした。
【0018】
前記目的に沿う第7の発明に係る光学結像装置は、断面矩形のガラス又は樹脂からなり、一定の隙間を有して平行に配置された複数の透明薄板材と、対向する前記透明薄板材の対向面に形成された光反射面と、該光反射面が形成された前記透明薄板材の間に充填された透明樹脂とを有する第1、第2の光学結像部材を、前記光反射面が平面視して直交するように重ねて構成された光学結像装置であって、
前記第1、第2の光学結像部材は、平面視して短幅で長尺の矩形状のガラス又は樹脂からなり、その片面又は両面に前記光反射面となる金属反射面が形成された複数の透明板材を幅方向に所定長交互にずらして突出部を形成した状態で、該透明板材を接着剤を介して積層して積層体を形成し、隣り合う前記突出部の隙間領域に透明樹脂を充填し、前記積層体の両側で、それぞれ前記透明樹脂が充填されて一体となった前記突出部を切断し積層本体から分離して形成され、
しかも、前記透明板材と前記透明樹脂との屈折率の比を0.9~1.1とした。
【0019】
前記目的に沿う第8の発明に係る光学結像装置は、断面矩形のガラス又は樹脂からなり、一定の隙間を有して平行に配置された複数の透明薄板材と、対向する前記透明薄板材の対向面に形成された光反射面と、該光反射面が形成された前記透明薄板材の間に充填された透明樹脂とを有する第1、第2の光学結像部材を、前記光反射面が平面視して直交するように重ねて構成された光学結像装置であって、
前記第1、第2の光学結像部材は、平面視して短幅で長尺の矩形状のガラス又は樹脂からなり、その片面又は両面に前記光反射面となる金属反射面が形成された幅が異なる2種類の透明板材をそれぞれ複数用意し、該2種類の透明板材を交互にその幅方向一側を揃えてその幅方向他側に突出部を形成した状態で、接着剤を介して積層して積層体を形成し、隣り合う前記突出部の隙間領域に透明樹脂を充填し、該透明樹脂が充填されて一体となった前記突出部を切断し積層本体から分離して形成され、
しかも、前記透明板材と前記透明樹脂との屈折率の比を0.9~1.1とした。
【0020】
第7、第8の発明に係る光学結像装置において、前記第1、第2の光学結像部材には、前記突出部を切断し前記積層本体から分離された原材の少なくとも切断端面の反対側の露出端面を研磨又は除去したものを使用できる。
【0021】
第5~第8の発明に係る光学結像装置において、前記第1、第2の光学結像部材の厚み方向の片面又は両面に、ガラス又は樹脂からなる透明カバー薄板材を貼り合わせるのがよい。
【0022】
第5~第8の発明に係る光学結像装置において、前記透明薄板材の寸法は、前記光反射面を形成する表面の高さを0.2~10mm、長尺方向長さを500~2000mm、厚みを0.1~2mmの範囲にすることができる。
【発明の効果】
【0023】
第1~第4の発明に係る光学結像装置の製造方法、及び、第5~第8の発明に係る光学結像装置は、平面視して短幅で長尺の矩形状のガラス又は樹脂からなる複数の透明板材(幅が異なる2種類の透明板材も含む、以下同様)を、その幅方向の一方又は双方に突出部を形成した状態で、接着剤を介して積層して積層体を形成し、この積層体の突出部を用いて光学結像部材が製造されるので、積層された透明板材の突出部の対向面、即ち、光反射面を、透明板材の積層方向(光学結像部材の表裏面)に対して簡単に垂直にできる。
従って、高品質の光学結像装置を安価に製造できる。
【0024】
特に、第1、第2の発明に係る光学結像装置の製造方法、及び、第5、第6の発明に係る光学結像装置は、少なくとも隣り合う突出部の対向面に金属反射面を形成するため、最低限必要な箇所のみに金属反射面を形成すればよく、製造コストを更に低減できる。
また、第3、第4の発明に係る光学結像装置の製造方法、及び、第7、第8の発明に係る光学結像装置は、積層前の透明板材の片面又は両面に、予め金属反射面を形成しているので、突出部の対向面に形成される光反射面のむらをなくすことができ(金属膜の厚みを略均一にでき)、製品品質を更に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】(A)~(E)は本発明の一実施の形態に係る光学結像装置の製造方法の説明図である。
【
図2】(A)、(B)はそれぞれ同光学結像装置の拡大正断面図及び拡大側断面図である。
【
図3】変形例に係る光学結像装置の拡大正断面図である。
【
図4】本発明の一実施の形態に係る光学結像装置の製造方法の積層体形成工程の説明図である。
【
図5】変形例に係る積層体形成工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、
図1(A)~(E)に示す本発明の一実施の形態に係る光学結像装置の製造方法により製造した光学結像装置10について、
図2(A)、(B)を参照しながら説明する。
光学結像装置10は、それぞれ平面視して正方形(長方形でもよい)の対となる第1、第2の光学結像部材(光制御パネルや平行光反射パネルともいう)11、12を有しているが、第1、第2の光学結像部材11、12は基本形状が同一なので、同一の構成要素には同一の番号を付与する。なお、
図2(A)、(B)においては、第1の光学結像部材11を下側に、第2の光学結像部材12を上側に、それぞれ配置している。
【0027】
図2(A)、(B)に示すように、第1の光学結像部材11(第2の光学結像部材12も同様)には、その両面(表裏面)に直交状態で、隙間を有して平行配置された複数の帯状の光反射面(垂直光反射面、ミラー)13が形成されている。
具体的には、第1、第2の光学結像部材11、12はそれぞれ、一定の隙間を有して平行に配置された複数のガラス(又は透明度の高い合成樹脂)からなる断面矩形の透明薄板材(以下、単に薄板材とも記載)15と、対向する薄板材15の対向面16に形成された光反射面13と、光反射面13が形成された薄板材15の間に形成される隙間領域17に充填され硬化させた透明樹脂18を有している。
【0028】
第1、第2の光学結像部材11、12は、光反射面13が平面視して直交配置された状態(例えば、85~95度、好ましくは88~92度の範囲で交差配置された状態を含む)で、積層され接合されて一体化されて光学結像装置10を構成している。この第1、第2の光学結像部材11、12は、その一辺の長さが、例えば、500~2000mm(好ましくは、下限が750mm、更には1000mm、上限が1800mm)程度の大型のものである。
この積層された第1の光学結像部材11と第2の光学結像部材12との間には、図示しない透明の接着剤(例えば、UV硬化樹脂、2液硬化型樹脂、熱硬化樹脂、常温効果樹脂)が配置されている。なお、
図2(A)、(B)では、第1の光学結像部材11の上面と、第2の光学結像部材12の下面とが、当接配置された状態(隙間がない:0mm)を示しているが、隙間(例えば、0を超え5mm以下程度)を有して近接配置された状態でもよい。この場合、この隙間にも接着剤が充填される(隙間が接着剤の層厚となる)。
【0029】
上記した透明樹脂18や接着剤を構成する合成樹脂には、この屈折率と薄板材15(後述する透明板材20)の屈折率の比が同一又は近似するものを使用することが好ましい。具体的には、薄板材15の屈折率η1と同一又は略等しい屈折率η2(例えば、±10%の範囲、即ち(0.9~1.1)×η1の範囲、好ましくは下限が0.95×η1、上限が1.05×η1、更に好ましくは0.99×η1、上限が1.01×η1)を有する合成樹脂を使用できる。
ここで、第1、第2の光学結像部材11、12を構成する薄板材15の屈折率η1に対し、合成樹脂の屈折率η2を合わせる方法としては、例えば、異なる2種以上の樹脂を混合して屈折率を調整する方法がある。この場合、薄板材と合成樹脂の屈折率の数値を、上から3桁まで(小数点以下第2位まで)揃えることが好ましい。
【0030】
なお、透明樹脂18や接着剤を構成する合成樹脂は、紫外線硬化型(例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリイソプレン骨格を有する(メタ)アクリレート、ポリブタジエン骨格を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレートモノマー等の(メタ)アクリレート)、熱硬化型、2液硬化型、及び、常温硬化型のいずれか1であることが好ましい。また、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA:アクリル系樹脂)、非晶質フッ素樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)、光学用ポリカーボネート、フルオレン系ポリエステル、ポリエーテルスルホン等の熱可塑性樹脂も使用できる。
【0031】
光反射面13は、薄板材15の対向面16に、金属膜(金属皮膜)14を設ける(鏡面処理を行う)ことにより形成されている(
図1(B)参照)。
第1、第2の光学結像部材11、12は、光反射面13が薄板材15の対向面16に形成されているため、h1を薄板材15の高さ、h2を光反射面13の高さとすると、高さh1と高さh2は同じである(以下、単にhと記載)。ここで、高さhは、例えば、0.2~10mmの範囲(好ましくは、下限が0.5mm、更には1mm、上限が5mm、3mm、更には2.5mm)であるのが実用的であるが、本発明はこの数値に限定されない。
また、薄板材15の厚みtと隙間領域17の幅s(金属膜14の厚みは、例えば、60nm以上、好ましくは80nm以上(例えば、100nm程度:上限は150nm程度))は、後述する光学結像装置10の製造方法により略同一となっており、例えば、0.1~2mmの範囲(好ましくは、下限が0.3mm、上限が1.5mm)であり、薄板材15の長尺方向長さは500~2000mmの範囲(好ましくは、下限が750mm、更には1000mm、上限が1800mm)であるのが実用的であるが、本発明はこの数値に限定されない。
なお、説明の便宜上、金属膜14の厚みを誇張して図示している。
【0032】
ここで、光反射面13のピッチp(薄板材15の厚みt又は隙間領域17の幅sに相当)に対する高さh(薄板材15の高さh1又は光反射面13の高さh2に相当)の比であるアスペクト比(h/p)は、0.8~5の範囲(好ましくは、下限が1.5、更には2、上限が4、更には3.5)にあるのが好ましく、これによって、より高さの高い光反射面13が得られる。
なお、ここでは、薄板材15の厚み方向両側の対向面16に金属膜14を形成しているが、例えば、薄板材15の厚みが薄い場合や、要求される製品品質に応じて、薄板材15の厚み方向片側の対向面16のみに金属膜14(光反射面13)を形成することもできる。
【0033】
図2(A)、(B)において、光学結像装置10の左下側から斜めに入光した対象物からの光L1、L2は、下側の第1の光学結像部材11の光反射面13のP1、P2で反射し、更に上側の第2の光学結像部材12の光反射面13のQ1、Q2で反射して、光学結像装置10の上側に立体像を形成できる。
この光学結像装置10は、上記したように、第1、第2の光学結像部材11、12の光反射面13が当接(又は近接)配置されるので、対象物からの光の集光度合いが向上し、より鮮明な画像を得ることができる。
【0034】
なお、薄板材15の対向面16に形成された金属膜14の入光側が、第1、第2の光学結像部材11、12の光反射面13として使用される。
図2(A)、(B)では、左側から入光しているので、金属膜14の左側が光反射面13として使用されているが、右側から入光する場合は、金属膜14の右側が光反射面13として使用される。
この光学結像装置10の動作において、空気中から薄板材15へ入光する場合、及び、薄板材15から空気中に出光する場合に、光の屈折現象、場合によって全反射現象を起こすので、これらを考慮して光学結像装置10を使用する必要がある。なお、光反射面13以外の部分は光通過面となる。
【0035】
上記した光学結像装置10の変形例として、
図3に示す光学結像装置10aがある。
この光学結像装置10aは、上記した一体化された第1、第2の光学結像部材11、12の表面(光学結像装置10aの厚み方向両面)に、前記した接着剤を用いて、ガラス又は樹脂からなる透明カバー薄板材19が貼り合わされたものである。
この透明カバー薄板材19は、例えば、表面が研磨処理された第1、第2の光学結像部材11、12について、透明樹脂18の表面が白くなる場合があり、この悪影響を防止するためのものである。このため、透明カバー薄板材19の厚みは特に限定されるものではないが、光学結像装置10aが大型の場合に軽量化を図ることを考慮すれば、透明カバー薄板材19の厚みxを、例えば、2mm以下、更には1.5mm以下(下限は、例えば、0.1mm程度)にすることが好ましい。
【0036】
続いて、本発明の一実施の形態に係る光学結像装置10の製造方法について、
図1(A)~(E)、
図2(A)、(B)、
図4を参照しながら説明する。
なお、
図1(A)~(E)では、
図2(A)、(B)と同様、説明の便宜上、金属膜14の厚みを誇張して図示している。また、
図1(A)~(C)には、後述する積層体22を構成する複数の透明板材20の積層方向の一部を、
図1(D)には、第1、第2の光学結像部材11、12とその原材26、27の一部を、
図1(E)には、光学結像装置10の一部を、それぞれ図示している。
【0037】
(積層体形成工程)
図1(A)に示すように、平面視して短幅で長尺の矩形状のガラス(又は透明度の高い合成樹脂)からなる複数の透明板材20を、その幅方向に所定長交互にずらして突出部21を形成した状態で、透明板材20同士を接着剤を介して積層して積層体22を形成する。
この透明板材20の寸法は、
図4に示すように、例えば、幅W1が8~40mmの範囲(好ましくは、下限が20mm)、長尺方向長さLが500~2000mmの範囲(好ましくは、下限が750mm、更には1000mm、上限が1800mm)、厚みT(透明薄板材15の厚みtに相当)が0.1~2mmの範囲(好ましくは、下限が0.3mm、上限が1.5mm)であり、また、突出部21の突出長さH(薄板材15の高さh1に相当)は、例えば、0.2~10mmの範囲(好ましくは、下限が0.5mm、上限が5mm、更には3mm)であるのが実用的であるが、本発明はこの数値に限定されない。
【0038】
積層体22は、
図4に示すように、上方が開口したガイドボックス23を用いて製造することが好ましい。
このガイドボックス23は、その内幅が、透明板材20の幅W1と突出部21の突出長さHとの和(即ち、W1+H)となって、その長尺方向の内幅が、透明板材20の長尺方向長さLとなっている。
積層体22は、透明板材20の表面に接着剤をコーティング(塗布、配置)した後、ガイドボックス23の幅方向の左側又は右側(一方)の内側面に、透明板材20の幅方向の左側端面又は右側端面(一側端面:突出部21の先端面)が接触するように、透明板材20をガイドボックス23内の幅方向一側に寄せて配置し、次に、ガイドボックス23の幅方向の右側又は左側(他方)の内側面に、透明板材20の幅方向の右側端面又は左側端面(他側端面:突出部21の先端面)が接触するように、透明板材20をガイドボックス23内の幅方向他側に寄せて、下側に配置した透明板材20の上に配置し、これを交互に行って複数の透明板材20を積層して製造する。
【0039】
ここで、隣り合う透明板材20同士を固着する接着剤には、例えば、フィルム状の光学粘着テープであるOCA(optical clear adhesive)テープを使用できるが、前記した透明樹脂18と同一種類のもの、例えば、紫外線硬化型のものを使用することもできる。このOCAテープは、例えば、厚みが10~300μm程度(更には、下限が50μm、上限が150μm:ここでは100μm程度)であり、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の透明のものである。
この接着剤は、突出部21を除く領域にコーティングすることが好ましい。この場合、OCAテープの使用が好ましい。
また、接着剤は、透明板材20の上側対向面及び下側対向面のいずれか片面のみにコーティングすればよいが、上面対向面及び下面対向面の両面にコーティングしてもよい。
【0040】
上記した透明板材20の積層と接着剤のコーティングは、例えば、予め設定されたプログラムに基づいて動作する積層装置や塗布装置を用いて順次行うことが好ましい。
なお、積層体22の製造は、上記したガイドボックス23を用いることに限定されるものではなく、例えば、透明板材を載置する矩形状の底板と、この底板の四隅に立設配置された断面L字状のアングル(位置決め部材)とを有する積層体形成装置等を用いることもできる。また、ガイドボックス等を用いることなく、積層装置の制御情報(予め入力された位置情報)を用いることもできる。
これにより、積層体22の幅方向両側に、同じ突出長さHの突出部21を複数形成できる。
【0041】
また、
図5に示す方法で、積層体22aを製造することもできる。
図5に示すように、平面視して短幅で長尺の矩形状のガラス(又は透明度の高い合成樹脂)からなり幅が異なる2種類の第1、第2の透明板材20a、20bをそれぞれ複数用意し、この第1、第2の透明板材20a、20bを交互にその幅方向一側を揃えてその幅方向他側に突出部21を形成した状態で、隣り合う透明板材20a、20b同士を接着剤を介して積層して積層体22aを形成する。
この第1の透明板材20aの寸法は、前記した透明板材20と同一であり、第2の透明板材20bの寸法は、第1の透明板材20aとは幅が異なるのみであり、第2の透明板材20bの幅W2は、形成する突出部21の突出長さHに応じて、例えば、第1の透明板材20aの幅W1よりも0.2~10mmの範囲で狭くなっている。
【0042】
積層体22aの製造には、
図5に示す上方が開口したガイドボックス23aを準備する。
このガイドボックス23は、その内幅が、第1の透明板材20aの幅W1と同じであって、その長尺方向の内幅が、第1、第2の透明板材20a、20bの長尺方向長さLと同じになっている。
積層体22aは、第2の透明板材20bの厚み方向両面に接着剤をコーティング(塗布、配置)した後、ガイドボックス23aの幅方向の右側(又は左側:一方)の内側面に、透明板材20a、20bの幅方向の右側端面(又は左側端面:一側端面)が接触するように、透明板材20a、20bを交互に、その幅方向の右側(又は、左側)を揃えて(寄せて)積層して製造する。
この場合、1つの光学結像装置10の製造に2つの積層体22aが必要となる。
【0043】
(金属膜形成工程)
図1(B)に示すように、少なくとも隣り合う突出部21の対向面24(透明薄板材15の対向面16に相当)に金属膜14を形成する。
この金属には、高反射率を有する金属(例えば、Al(アルミニウム)、Ag(銀)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、Cr(クロム)等)を用いており、対向面24に形成される金属膜14の表面(金属反射面)が光反射面13となる。
なお、対向面24に形成される金属膜14の膜厚は、例えば、60nm以上、好ましくは80nm以上(例えば、100nm程度:上限は150nm程度)であるが、これに限定されるものではない。
【0044】
金属膜14の形成には照射等を使用できる。
照射は、対向面24に対して斜め方向から金属噴射(金属照射)することにより行うことができ、この金属噴射には、スパッターリング、金属蒸着、金属微粒子の吹き付け、又はイオンビームの照射等がある。なお、照射は、対向面24に対して斜め方向(特定方向)から金属噴射(金属照射)することにより行うため、透明板材20(突出部21)の一面側とその頂面が金属で覆われる。従って、積層体22に対しては、照射を4回程度実施することになるが、予め透明板材20の両面全体に金属膜を形成する場合と比較して、経済的である。
これにより、対向面16に光反射面13を形成できる。
【0045】
(樹脂充填工程)
図1(C)に示すように、金属膜14が形成された隣り合う突出部21の隙間領域17に、透明樹脂18を充填し硬化させる。
この透明樹脂18の屈折率η2は、透明板材20の屈折率η1と同一又は略等しい(例えば、透明板材20と透明樹脂18との屈折率η1、η2の比が0.9~1.1)。
なお、隙間領域17への透明樹脂18の充填は、例えば、透明板材20の両側面(長尺方向の両端面)に、透明のガラス製や樹脂製の薄板を配置し、脱気状態で行うのがよい。この薄板は、透明樹脂18が硬化した後、除去することができる。
【0046】
積層体22は、その幅方向両側にそれぞれ複数の突出部21が形成されているため、両側の突出部21に対してそれぞれ、上記した金属膜形成工程と樹脂充填工程を行う。例えば、積層体22の両側に金属膜14の形成(金属膜形成工程)を行った後、積層体22の片側ごとに、透明樹脂18の充填及び硬化(樹脂充填工程)を行う。また、積層体22の片側ごとに、金属膜14の形成(金属膜形成工程)と、透明樹脂18の充填及び硬化(樹脂充填工程)を順次行うこともできる。従って、対となる第1、第2の光学結像部材11、12を1つの積層体22から一度に製造できる。
一方、積層体22aでは、その幅方向片側のみに複数の突出部21が形成されているため、これに対して上記した金属膜形成工程と樹脂充填工程を順次行う。従って、第1、第2の光学結像部材11、12を同時に製造できるため、製造時間の短縮が図れる。
【0047】
(切断工程)
図1(D)に示すように、積層体22の両側でそれぞれ隙間領域17に透明樹脂18が充填されて一体となった突出部21を切断し、
図1(C)に示す積層本体25(積層体22の突出部21を除く部分)から分離して、対となる第1、第2の光学結像部材11、12の原材26、27を製造する。
この突出部21の切断は、突出部21と透明樹脂18が交互に配置された部分(即ち、突出部21を形成した隣り合う透明板材20の間に位置する透明板材20を切断しない位置(突出部21の基端位置))に対して行えばよい。
しかし、前記した金属膜形成工程では、形成した金属膜の厚みが突出部の基端へ向けて薄くなり易い(グラデーションが発生し易い)ことから、薄くなる部分を避けた位置(突出部の基端位置よりも先側位置)で切断することが好ましい。この場合、薄くなる部分を考慮して、積層体形成工程における突出部の突出長さを長くするのがよい。
また、積層体形成工程における突出部の突出長さを更に長くすることで、積層体の幅方向片側から、光学結像部材の原材を複数(例えば、2又は3)製造することもできる。
なお、積層体22aでは、透明樹脂18が充填されて一体となった突出部21が形成されている幅方向片側のみを切断する。
【0048】
(除去工程)
原材26、27の切断端面28及びその反対側の露出端面29をそれぞれ研磨して、第1、第2の光学結像部材11、12を製造する。
研磨処理は、切断端面28と露出端面29の双方が、透明かつ水平となるように行われるが、切断端面28は前記した切断工程で透明かつ水平にできる場合もあり、また、突出部21の頂面には前記した金属膜形成工程で不要金属が残存していることから、露出端面29についてのみ行うこともできる。この研磨には、ペースト状の研磨材等や、薬液に反応して研磨材が消失するものも使用できる。
なお、露出端面29については、研磨処理の代わりに、突出部の先端部のみを切断(除去)処理することもできる。この場合、前記した切断工程で積層本体から原材を分離する前に、突出部の先端部のみを切断処理することが、作業上好ましい。
【0049】
上記した研磨処理を行った場合、第1、第2の光学結像部材11、12の表面が白くなり、製品品質に悪影響を及ぼす場合がある。この場合、
図3に示すように、研磨処理が終了した第1、第2の光学結像部材11、12の露出端面29に、前記した接着剤を用いて、ガラス又は樹脂からなる透明カバー薄板材19を貼り合わせる。これにより、悪影響を防止できると共に、第1、第2の光学結像部材11、12を保護できる。
なお、透明カバー薄板材は、上記した悪影響の防止のみならず、光学結像部材の保護を目的として、光学結像部材の切断端面のみ、又は、切断端面と露出端面の双方に貼り合わせることもできる。また、透明カバー薄板材の貼り合わせは、後述する組立工程を行った後に行うこともできる。
上記した方法により、透明薄板材15の対向面16に金属膜14が形成され、その表面が光反射面13となった第1の光学結像部材11と第2の光学結像部材12が得られる。
なお、
図5の変形例の場合は、それぞれ積層体形成工程から除去工程を経て、対となる第1の光学結像部材11と第2の光学結像部材12を形成する。
【0050】
(組立工程)
第1の光学結像部材11を、例えば、支持台上に配置し、この第1の光学結像部材11の上に、前記した接着剤(液体(ゼリー状))を載せる。
この接着剤には、紫外線硬化型、熱硬化型、2液硬化型、及び常温硬化型のいずれか1を使用することが好ましく、また、ポリメチルメタクリレート、非晶質フッ素樹脂、シクロオレフィンポリマー、光学用ポリカーボネート、フルオレン系ポリエステル、ポリエーテルスルホン等の熱可塑性樹脂も使用できる。
【0051】
続いて、第1の光学結像部材11上に、第2の光学結像部材12を、それぞれの光反射面13が平面視して直交配置された状態で、重ね合わせて配置する。
そして、脱気状態(減圧状態、更には真空状態)で、第2の光学結像部材12をプレスで第1の光学結像部材11に対して押圧し、第1、第2の光学結像部材11、12を接合する。
このように、第1、第2の光学結像部材11、12の接合作業を、脱気状態で行うことで、内部に気泡が発生することを防止できる。なお、第1、第2の光学結像部材11、12の接合中に超音波等の振動を加えて(加振して)、内部に発生した気泡を除去することもできる。
【0052】
この接着剤には、熱可塑性樹脂からなる板状(シート状)のものを使用することもできる。
この場合、まず、第1の光学結像部材11の上に板状の接着剤を載せ、更にこの接着剤の上に第2の光学結像部材12を載せる。次に、脱気状態で、第2の光学結像部材12をプレスで第1の光学結像部材11に対して押圧しながら、少なくとも接着剤を加熱し軟化(更には溶融)させて冷却する。
また、脱気状態で、重ね合わせて対向配置された第1の光学結像部材11と第2の光学結像部材12との間に、接着剤を注入することもできる。この場合、接着剤の注入部以外を封止する。
以上の方法により、
図2(A)、(B)に示す光学結像装置10が完成する。
【0053】
なお、光学結像装置10の製造には、前記した透明板材20の代わりに、その片面又は両面に金属反射面が形成された透明板材を使用することもできる(第1、第2の透明板材20、20aの代わりに、その片面又は両面に金属反射面が形成された幅が異なる2種類の第1、第2の透明板材を使用することもできる)。
この透明板材は、前記した透明板材20の片面又は両面に金属反射面を形成したものでもよく、また、その片面又は両面に予め金属反射面が形成されたものでもよい。
なお、透明板材の周面(両面を除く面)には、金属反射面が形成されていない(透明な状態)。
【0054】
この透明板材を複数用いて、前記した積層体形成工程、樹脂充填工程、切断工程、及び、組立工程を順次行うことで、光学結像装置を製造できる。なお、透明板材には金属反射面が形成されていることから、積層体形成工程においては、複数の透明板材同士を一体化する接着剤として、紫外線硬化型のものを使用することは好ましくない。
上記したように、除去工程を行っていないのは、透明板材の周面に金属反射面が形成されていないためであり、切断工程で製造した光学結像部材をそのままの状態で光学結像装置の製造に使用(組立工程を実施)できる。しかし、切断工程で製造した光学結像部材の切断端面及び露出端面のいずれか一方又は双方に、接着剤を介してガラス又は樹脂からなる透明カバー薄板材を貼り合わせることもでき、また、切断端面及び露出端面のいずれか一方又は双方が透明かつ水平となるように、突出部を切断し積層本体から分離された原材を研磨又は除去することもでき、更には、研磨又は除去した後に透明カバー薄板材を貼り合わせることもできる。
【0055】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の光学結像装置の製造方法及び光学結像装置を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
前記実施の形態においては、第1、第2の光学結像部材の透明薄板材(透明板材)をガラスで構成した場合について説明したが、透明薄板材を透明度の高い合成樹脂(透明樹脂)で構成することもできる。この場合、透明薄板材の合成樹脂には、前記した隙間領域を埋める透明樹脂や接着剤と同じ種類の樹脂を使用することが好ましいが、異なる種類の樹脂を使用することもできる。具体的には、透明薄板材の合成樹脂として、例えば、隙間領域を埋める透明樹脂や接着剤よりも融点の高い熱可塑性樹脂であるゼオネックス(ZEONEX:登録商標、ガラス転移温度:120~160℃、屈折率η1:1.535、シクロオレフィンポリマー)を使用できる。また、隙間領域を埋める透明樹脂や接着剤として、例えば、ゼオノア(ZEONOR:登録商標、ガラス転移温度:100~102℃、屈折率η2:1.53、シクロオレフィンポリマー)を使用できる。
【0056】
また、前記実施の形態では、幅が異なる2種類の第1、第2の透明板材を寝かした状態で(鉛直方向に)積層した場合について説明したが、第1、第2の透明板材の積層は幅方向一側を揃えればよいため、第1、第2の透明板材を立てた状態で(水平方向に)積層することもできる。
そして、前記実施の形態において、第1、第2の光学結像部材の原材の切断分離後に残存する積層本体は、廃棄処理してもよいが、再利用することもできる。
この場合、積層本体は、例えば、その片面又は両面に金属反射面が形成された複数の透明板材が積層されたものであるのが好ましい。この積層本体は、金属反射面と透明板材が交互に配置された構成となるため、必要とする大きさに切断することで、第1、第2の光学結像部材として利用できる。
なお、金属反射面が形成されていない複数の透明板材が積層された積層本体である場合でも、例えば、積層本体を構成する複数の透明板材を1枚ずつ分離することで、これを光学結像装置の製造に再利用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る光学結像装置の製造方法及び光学結像装置は、光学結像装置を容易に製造できる。これによって、光学結像装置を、映像を必要とする機器(例えば、医療機器、家庭電気製品、自動車、航空機、船舶等)で有効に利用できる。
【符号の説明】
【0058】
10、10a:光学結像装置、11:第1の光学結像部材、12:第2の光学結像部材、13:光反射面、14:金属膜、15:透明薄板材、16:対向面、17:隙間領域、18:透明樹脂、19:透明カバー薄板材、20:透明板材、20a:第1の透明板材、20b:第2の透明板材、21:突出部、22、22a:積層体、23、23a:ガイドボックス、24:対向面、25:積層本体、26、27:原材、28:切断端面、29:露出端面