(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075083
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】ドコサペンタエン酸を含む脂質
(51)【国際特許分類】
C11B 1/10 20060101AFI20230523BHJP
C12P 7/64 20220101ALI20230523BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230523BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230523BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230523BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230523BHJP
A01H 5/00 20180101ALI20230523BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20230523BHJP
A61K 36/31 20060101ALI20230523BHJP
A61K 36/28 20060101ALI20230523BHJP
A61K 36/286 20060101ALI20230523BHJP
A61K 36/48 20060101ALI20230523BHJP
A61K 36/899 20060101ALI20230523BHJP
A61K 36/889 20060101ALI20230523BHJP
A61K 36/88 20060101ALI20230523BHJP
A61K 35/66 20150101ALI20230523BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20230523BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20230523BHJP
A61K 36/55 20060101ALI20230523BHJP
A61K 36/81 20060101ALI20230523BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20230523BHJP
C12N 15/53 20060101ALN20230523BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20230523BHJP
C12N 15/82 20060101ALN20230523BHJP
A61P 3/00 20060101ALN20230523BHJP
【FI】
C11B1/10 ZNA
C12P7/64
C12N5/10
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
A01H5/00 A
A61K31/19
A61K36/31
A61K36/28
A61K36/286
A61K36/48
A61K36/899
A61K36/889
A61K36/88
A61K35/66
A61K8/9789
A61K36/185
A61K36/55
A61K36/81
A23K10/30
C12N15/53
C12N15/54
C12N15/82 126Z
A61P3/00
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017919
(22)【出願日】2023-02-08
(62)【分割の表示】P 2021043379の分割
【原出願日】2015-06-18
(31)【優先権主張番号】2014902471
(32)【優先日】2014-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】20140104761
(32)【優先日】2014-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AR
(31)【優先権主張番号】PCT/AU2014/050433
(32)【優先日】2014-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】14/575,756
(32)【優先日】2014-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】590003283
【氏名又は名称】コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼーション
(71)【出願人】
【識別番号】511119798
【氏名又は名称】グレインズ リサーチ アンド デヴェロップメント コーポレイション
(71)【出願人】
【識別番号】522099630
【氏名又は名称】ヌシード ニュートリショナル オーストラリア ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(72)【発明者】
【氏名】ペトリ―,ジェームズ ロバートソン
(72)【発明者】
【氏名】シング,スリンダー パル
(72)【発明者】
【氏名】シュレスタ,プシュカル
(72)【発明者】
【氏名】マカリスター,ジェイソン,ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】ディバイン,マルコン,デビット
(72)【発明者】
【氏名】デ フェイター,ロバート,チャールズ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ドコサペンタエン酸(DPA)を含む抽出植物脂質または微生物脂質、及び該抽出脂質の製造方法を提供する。
【解決手段】エステル化された形態の脂肪酸を含み、前記脂肪酸は、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)を含むω6脂肪酸、α-リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸及びドコサペンタエン酸(DPA)を含み、場合により、ステアリドン酸(SDA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、及びエイコサテトラエン酸(ETA)のうち1つ以上を含んでもよく、前記抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるDPAのレベルが、7%から35%の間である、抽出植物脂質または微生物脂質を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル化された形態の脂肪酸を含み、前記脂肪酸は、オレイン酸、パルミチン酸、リ
ノール酸(LA)を含むω6脂肪酸、α-リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸及びド
コサペンタエン酸(DPA)を含み、場合により、ステアリドン酸(SDA)、エイコサ
ペンタエン酸(EPA)、及びエイコサテトラエン酸(ETA)のうち1つ以上を含んで
もよく、前記抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるDPAのレベルが、7%から35%の間
である、抽出植物脂質または微生物脂質。
【請求項2】
以下の特徴:
i)前記抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるパルミチン酸のレベルは、約2%から15
%の間、または約3%から10%の間であること、
ii)前記抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるミリスチン酸(C14:0)のレベルは
、約0.1%であること、
iii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるオレイン酸のレベルは、約1%から約3
0%の間、約3%から約30%の間、約6%から約30%の間、約1%から約20%の間
、約30%から約60%の間、約45%~約60%、約30%、または約15%から約3
0%の間であること、
iv)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるリノール酸(LA)のレベルは、約4%か
ら約35%の間、約4%から約20%の間、約4%から約17%の間、または約5%から
約10%の間であること、
v)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるα-リノレン酸(ALA)のレベルは、約4
%から約40%の間、約7%から約40%の間、約10%から約35%の間、約20%か
ら約35%の間、約4%から約16%の間、または約2%から約16%の間であること、
vi)前記抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるγ-リノレン酸(GLA)のレベルは、
4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、0.05%から7%
の間、0.05%から4%の間、0.05%から約3%の間、または0.05%から約2
%の間であること、
vii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるステアリドン酸(SDA)のレベルは、
約10%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約4%未満、約3%未満、約0.
05%から約7%の間、約0.05%から約6%の間、約0.05%から約4%の間、約
0.05%から約3%の間、約0.05%から約10%の間、または約0.05%から約
2%の間であること、
viii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるエイコサテトラエン酸(ETA)のレ
ベルは、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約1%未満、約0.5%未満、0.05
%から約6%の間、0.05%から約5%の間、0.05%から約4%の間、0.05%
から約3%の間、または0.05%から約2%の間であること、
ix)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるエイコサトリエン酸(ETrA)のレベル
は、4%未満、約2%未満、約1%未満、0.05%から4%の間、0.05%から3%
の間、または0.05%から約2%の間、または0.05%から約1%の間であること、
x)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるエイコサペンタエン酸(EPA)のレベルは
、4%から15%の間、4%未満、約3%未満、約2%未満、0.05%から10%の間
、0.05%から5%の間、0.05%から約3%の間、または0.05%から約2%の
間であること、
xi)もし、前記抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるDHAのレベルが、2%未満、ま
たは0.05%から約2%の間であること、
xii)該脂質は、その脂肪酸含有物中にω6-ドコサペンタエン酸(22:5Δ4,
7,10,13,16)を含むこと、
xiii)該脂質は、その脂肪酸含有物中に0.1%未満のω6-ドコサペンタエン酸
(22:5Δ4,7,10,13,16)を含むこと、
xiv)該脂質は、その脂肪酸含有物中に0.1%未満の1つ以上または全てのSDA
、EPA及びETAを含むこと、
xv)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における総飽和脂肪酸レベルは、約4%から約25
%の間、約4%から約20%の間、約6%から約20%の間、または約6%から約12%
の間であること、
xvi)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における総一価不飽和脂肪酸レベルは、約4%か
ら約40%の間、約4%から約35%の間、約8%から約25%の間、8%から約22%
の間、約15%から約40%の間または約15%から約35%の間であること、
xvii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における総多価不飽和脂肪酸レベルは、約20
%から約75%の間、30%から75%の間、約50%から約75%の間、約60%、約
65%、約70%、約75%、または約60%から約75%の間であること、
xviii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における総ω6脂肪酸レベルは、約35%か
ら約50%の間、約20%から約35%の間、約6%から約20%の間、20%未満、約
16%未満、約10%未満、約1%から約16%の間、約2%から約10%の間、または
約4%から約10%の間であること、
xix)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における新ω6脂肪酸レベルは、約10%未満、
約8%未満、約6%未満、4%未満、約1%から約20%の間、約1%から約10%の間
、0.5%から約8%の間、または0.5%から4%の間であること、
xx)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における総ω3脂肪酸レベルは、36%から約65
%の間、36%から約70%の間、40%から約60%の間、約30%から約60%の間
、約35%から約60%の間、40%から約65%の間、約30%から約65%の間、約
35%から約65%の間、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60
%、約65%または約70%であること、
xxi)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における新ω3脂肪酸レベルは、21%から約4
5%の間、21%から約35%の間、約23%から約35%の間、約25%から約35%
の間、約27%から約35%の間、約23%から約25%の間、約27%、約30%、約
35%、約40%または約45%であること、
xxii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比は、
約1.0から約3.0の間、約0.1から約1の間、約0.1から約0.5の間、約0.
50未満、約0.40未満、約0.30未満、約0.20未満、約0.15未満、約1.
0未満、約0.1未満、約0.10~約0.4、または約0.2であること、
xxiii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における新ω6脂肪酸:新ω3脂肪酸の比は
、約1.0から約3.0の間、約0.02から約0.1の間、約0.1から約1の間、約
0.1から約0.5の間、約0.50未満、約0.40未満、約0.30未満、約0.2
0未満、約0.15未満、約0.02、約0.05、約0.1、約0.2または約1.0
であること、
xxiv)該脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なく
とも約80%、約60%から約98%の間、約70%から約95%の間、または約75%
から約90%の間のΔ12-デサチュラーゼによるオレイン酸からLAへの転換効率に基
づくこと、
xxv)該脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくと
も約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、約30%から約70%の間、約
35%から約60%の間、または約50%から約70%の間のΔ6-デサチュラーゼによ
るALAからSDAへの転換効率に基づくこと、
xxvi)該脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なく
とも約75%、約60%から約95%の間、約70%から約88%の間、または約75%
から約85%の間のΔ6-エロンガーゼによるSDAからETA酸への転換効率に基づく
こと、
xxvii)該脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少な
くとも約75%、約60%から約99%の間、約70%から約99%の間、または約75
%から約98%の間のΔ5-デサチュラーゼによるETAからEPAへの転換効率に基づ
くこと、
xxviii)該脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少
なくとも約90%、約50%から約99%の間、約85%から約99%の間、約50%か
ら約95%の間、または約85%から約95%の間のΔ5-エロンガーゼによるEPAか
らDPAへの転換効率に基づくこと、
xxix)前記脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少な
くとも約20%、少なくとも約25%、約20%、約25%、約30%、約10%から約
50%の間、約10%から約30%の間、約10%から約25%の間または約20%から
約30%の間のオレイン酸からDPAへの転換効率に基づくこと、
xxx)前記脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なく
とも約22%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、約25
%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約15%から約50%の間、
約20%から約40%の間、または約20%から約30%の間のLAからDPAへの転換
効率に基づくこと、
xxxi)前記脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約17%、少なくとも約22%、少な
くとも約24%、少なくとも約30%、約30%、約35%、約40%、約45%、約5
0%、約55%、約60%、約22%から約70%の間、約17%から約55%の間、約
22%から約40%の間、または約24%から約40%の間のALAからDPAへの転換
効率に基づくこと、
xxxii)該抽出脂質中の総脂肪酸は、1.5%未満のC20:1、1%未満のC2
0:1または約1%のC20:1を有すること、
xxxiii)該脂質のトリアシルグリセロール(TAG)含有率は、少なくとも約7
0%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、約70%から約
99%の間、または約90%から約99%の間であること、
xxxiv)該脂質は、ジアシルグリセロール(DAG)を含み、DAGは好ましくは
DPAを含むこと、
xxxv)該脂質は、約10%未満、約5%未満、約1%未満または約0.001%か
ら約5%の間の遊離(非エステル化)脂肪酸及び/またはリン脂質を含む、または本質的
にそれを含まないこと、
xxxvi)TAGの形態でエステル化されたDPAの少なくとも70%、少なくとも
72%または少なくとも80%は、前記TAGのsn-1位またはsn-3位であること
、
xxxvii)前記脂質において最も豊富なDPA含有TAG種は、DPA/18:3
/18:3(TAG56:12)であること、
xxxviii)前記脂質は、トリDPA TAG(TAG66:18)を含むこと、
及び
xxxix)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるDPAのレベルが、約7%、約8%
、約9%、約10%、約12%、約15%、約18%、約20%、約22%、約24%、
約26%、約28%、約31%、約7%から約31%の間、約7%から約28%の間、約
10%から約35%の間、約10%から約30%の間、約10%から約25%の間、約1
0%から約22%の間、約14%から約35%の間、約16%から約35%の間、約16
%から約30%の間、約16%から約25%の間、または約16%から約22%の間であ
り、場合により、DHAレベルは、該抽出脂質の総脂肪酸含有量の0.5%未満であるこ
と
の1つ以上を有する、請求項1に記載の脂質。
【請求項3】
前記脂質がオイル、好ましくは、油料種子から採れるオイルであり、より好ましくは、
前記脂質が、セイヨウアブラナ(Brassica napus)オイルまたはカラシナ
(Brassica juncea)オイルなどのアブラナ属(Brassica sp
.)オイル、ワタ(Gossypium hirsutum)オイル、アマ(Linum
usitatissimum)オイル、ヘリアンタス属(Helianthus sp
.)オイル、ベニバナ(Carthamus tinctorius)オイル、ダイズ(
Glycine max)オイル、トウモロコシ(Zea mays)オイル、ギニアア
ブラヤシ(Elaesis guineenis)オイル、ベンサミアナタバコ(Nic
otiana benthamiana)オイル、アオバナルーピン(Lupinus
angustifolius)オイル、カメリナサティバ(Camelina sati
va)オイル、クランベアビシニカ(Crambe abyssinica)オイル、ジ
ャイアントミスカンサス(Miscanthus x giganteus)オイル、ま
たはススキ(Miscanthus sinensis)オイルを含むまたはである、請
求項1または2のいずれか1項に記載の脂質。
【請求項4】
i)脂質を含む植物部分または微生物細胞を得る工程であって、前記脂質がエステル化
された形態の脂肪酸を含み、前記脂肪酸がオレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA
)を含むω6脂肪酸、α-リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸、ステアリドン酸(S
DA)、ドコサペンタエン酸(DPA)を含み、場合により、1つ以上のエイコサペンタ
エン酸(EPA)及びエイコサテトラエン酸(ETA)を含んでもよく、前記植物部分中
の抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるDPAのレベルが7%から35%の間である前記工
程、及び
ii)前記植物部分または微生物細胞から脂質を抽出する工程
を含み、前記抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるDPAのレベルが7%から35%の間で
ある抽出植物脂質または微生物脂質の産生方法。
【請求項5】
前記抽出脂質が請求項2または請求項3で定義された特徴の1つ以上を有する、請求項
4記載の方法
【請求項6】
前記植物部分が種子、好ましくは、セイヨウアブラナ(Brassica napus
)またはカラシナ(Brassica juncea)などのアブラナ属(Brassi
ca sp.)、ワタ(Gossypium hirsutum)、アマ(Linum
usitatissimum)、ヘリアンタス属(Helianthus sp.)、ベ
ニバナ(Carthamus tinctorius)、ダイズ(Glycine ma
x)、トウモロコシ(Zea mays)、ギニアアブラヤシ(Elaesis gui
neenis)、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)
、アオバナルーピン(Lupinus angustifolius)、カメリナサティ
バ(Camelina sativa)、またはクランベアビシニカ(Crambe a
byssinica)、好ましくは、セイヨウアブラナ(Brassica napus
)、カラシナ(B. juncea)またはカメリナサティバ(C. sativa)の
種子などの油料種子である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記植物部分または微生物細胞が、酵素の以下のセット:
i)ω3-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エ
ロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
ii)Δ15-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6
-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
iii)Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ
6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
iv)Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュ
ラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-
エロンガーゼ、
v)ω3-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エ
ロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
vi)Δ15-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9
-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
vii)Δ12-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ
9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
viii)Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサ
チュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ
5-エロンガーゼ、
ix)ω3-デサチュラーゼまたはΔ15-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、
Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、または
x)ω3-デサチュラーゼまたはΔ15-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ
5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ
の1つをコードする外来性ポリヌクレオチドを含み、各ポリヌクレオチドは、前記植物部
分または微生物細胞の細胞内の前記ポリヌクレオチドの発現を誘導可能である1つ以上の
プロモーターと作動可能に結合している、請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記植物部分または微生物細胞が、以下の特徴:
i)前記Δ12‐デサチュラーゼが、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少な
くとも約80%、約60%から約95%の間、約70%から約90%の間、または約75
%から約85%の間の効率で、前記植物部分または微生物細胞の1つ以上の細胞内で、オ
レイン酸をリノール酸に転換すること、
ii)前記ω3‐デサチュラーゼが、少なくとも約65%、少なくとも約75%、少な
くとも約85%、約65%から約95%の間、約75%から約91%の間、または約80
%から約91%の間の効率で、前記植物部分または微生物細胞の1つ以上の細胞内で、ω
6脂肪酸をω3脂肪酸に転換すること、
iii)前記Δ6‐デサチュラーゼが、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少
なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、約
30%から約70%の間、約35%から約60%の間、または約50%から約70%の間
の効率で、前記植物部分または微生物細胞の1つ以上の細胞内で、ALAをSDAに転換
すること、
iv)前記Δ6‐デサチュラーゼが、約5%未満、約2.5%未満、約1%未満、約0
.1%から約5%の間、約0.5%から約2.5%の間、または約0.5%から約1%の
間の効率で、前記植物部分または微生物細胞の1つ以上の細胞内で、リノール酸をγ‐リ
ノレン酸に転換すること、
v)前記Δ6‐エロンガーゼが、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくと
も約75%、約60%から約95%の間、約70%から約80%の間、または約75%か
ら約80%の間の効率で、前記植物部分または微生物細胞の1つ以上の細胞内で、SDA
をETAに転換すること、
vi)前記Δ5‐デサチュラーゼが、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少な
くとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、約60%から約95%の間
、約70%から約95%の間、または約75%から約95%の間の効率で、前記植物部分
または微生物細胞の1つ以上の細胞内で、ETAをEPAに転換すること、
vii)前記Δ5‐エロンガーゼが、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少な
くとも約90%、約50%から約90%の間、または約85%から約95%の間の効率で
、前記植物部分または微生物細胞の1つ以上の細胞内で、EPAをDPAに転換すること
、
viii)前記植物部分または微生物細胞の1つ以上の細胞内で、オレイン酸をDPA
に転換する効率が、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少
なくとも約25%、約20%、約25%、約30%、約10%から約50%の間、約10
%から約30%の間、または約10%から約25%の間、または約20%から約30%の
間であること、
ix)前記植物部分または微生物細胞の1つ以上の細胞内で、LAをDPAに転換する
効率が、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約22%、少なくとも約
25%、少なくとも約30%、約25%、約30%、約35%、約15%から約50%の
間、約20%から約40%の間、または約20%から約30%の間であること、
x)前記植物部分または微生物細胞の1つ以上の細胞内で、ALAをDPAに転換する
効率が、少なくとも約17%、少なくとも約22%、少なくとも約24%、少なくとも約
30%、約30%、約35%、約40%、約17%から約55%の間、約22%から約3
5%の間、または約24%から約35%の間であること、
xi)前記植物部分または微生物細胞の1つ以上の細胞は、前記外来性ポリヌクレオチ
ドを含まない対応細胞より、少なくとも約25%、少なくとも約30%、約25%から約
40%の間、または約27.5%から約37.5%の間で多いω3脂肪酸を含むこと、
xii)前記Δ6-デサチュラーゼは、リノール酸(LA)と比較してα-リノレン酸
(ALA)を優先的に不飽和化すること、
xiii)前記Δ6-エロンガーゼは、Δ9-エロンガーゼ活性も有すること、
xiv)前記Δ12-デサチュラーゼは、Δ15-デサチュラーゼ活性も有すること、
xv)前記Δ6-デサチュラーゼは、Δ8-デサチュラーゼ活性も有すること、
xvi)前記Δ8-デサチュラーゼは、Δ6-デサチュラーゼ活性も有する、またはΔ
6-デサチュラーゼ活性を有しないこと、
xvii)前記Δ15-デサチュラーゼは、GLAに対するω3-デサチュラーゼ活性
も有すること、
xviii)前記ω3-デサチュラーゼは、LAに対するΔ15-デサチュラーゼ活性
も有すること、
xix)前記ω3-デサチュラーゼは、LA及び/またはGLAの両方を不飽和化する
こと、
xx)前記ω3-デサチュラーゼは、LAと比較してGLAを優先的に不飽和化するこ
と、
xxi)1つ以上または全ての前記デサチュラーゼは、対応するアシル‐PC基質より
、アシル-CoA基質に対して高い活性を有すること、
xxii)前記Δ6-デサチュラーゼは、脂肪酸基質として、LAより、ALAに対し
て高いΔ6-デサチュラーゼ活性を有すること、
xxiii)前記Δ6-デサチュラーゼは、脂肪酸基質としてのPCのSn-2位と結
合したALAに対するより、脂肪酸基質としてのALA-CoAに対して高いΔ6-デサ
チュラーゼ活性を有すること、
xxiv)前記Δ6-デサチュラーゼは、LAと比較して、基質としてのALAに対し
て、少なくとも約2倍高いΔ6-デサチュラーゼ活性、少なくとも3倍高い活性、少なく
とも4倍高い活性、または少なくとも5倍高い活性を有すること、
xxv)前記Δ6-デサチュラーゼは、脂肪酸基質としてのPCのsn-2位と結合し
たALAに対するより、脂肪酸基質としてのALA-CoAに対して高い活性を有するこ
と、
xxvi)前記Δ6-デサチュラーゼは、脂肪酸基質としてのPCのsn-2位に結合
したALAに対するより、脂肪酸基質としてのALA-CoAに対して、少なくとも約5
倍高いΔ6‐デサチュラーゼ活性または少なくとも10倍高い活性を有すること、
xxvii)前記デサチュラーゼは、フロントエンドデサチュラーゼであること、及び
xxviii)前記Δ6‐デサチュラーゼは、ETAに対する検出可能なΔ5‐デサチ
ュラーゼ活性を有しないこと
の1つ以上または全てを有する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記植物部分または微生物細胞が、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(
DGAT)、モノアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(MGAT)、グリセロ
ール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(GPAT)、1-アシル-グリセロール-
3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)、好ましくは、DPA-CoAなど
のC22多価不飽和脂肪アシル-CoA基質を使用できるLPAAT、アシル-CoA:
リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ(LPCAT)、ホスホリパーゼA
2(PLA2)、ホスホリパーゼC(PLC)、ホスホリパーゼD(PLD)、CDP-
コリンジアシルグリセロールコリンホスホトランスフェラーゼ(CPT)、ホスファチジ
ルコリンジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(PDAT)、ホスファチジル
コリン:ジアシルグリセロールコリンホスホトランスフェラーゼ(PDCT)、アシル-
CoAシンターゼ(ACS)、またはその2つ以上の組合せをコードする外来性ポリヌク
レオチドをさらに含む、請求項7または請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記外来性ポリヌクレオチドが、前記植物部分または微生物細胞の細胞のゲノムに組み
込まれたDNA分子、好ましくは、T-DNA分子内に共有結合しており、好ましくは、
前記植物部分または微生物細胞の細胞のゲノムに組み込まれたかかるDNA分子数が、1
以下、2もしくは3以下であり、または2もしくは3である、請求項7~9のいずれか1
項に記載の方法。
【請求項11】
前記外来性ポリヌクレオチドを含む前記植物部分または微生物細胞の総オイル含有率が
、前記外来性ポリヌクレオチドを含まない対応する植物部分または微生物細胞の総オイル
含有率の少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約
70%、約50%から約80%の間、または約80%から約100%の間である、請求項
4~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記脂質を処理して、総脂肪酸含有率のパーセンテージとして、DPAのレベルを増加
させることをさらに含み、前記処理が、1つ以上の分別蒸留、蒸留またはDPAのメチル
エステルまたはエチルエステルの生成などのエステル交換反応を含む、請求項4~11の
いずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
その種子中に脂質を含む油料種子植物、もしくはその部分、または微生物細胞であって
、
a)エステル化された形態の脂肪酸を含む脂質、及び
b)酵素の以下のセット;
i)Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュ
ラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-
エロンガーゼ、
ii)Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチ
ュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5
-エロンガーゼ
iii)ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュラーゼ、Δ6-デサチ
ュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、または
iv)ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュ
ラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ
の1つをコードする外来性ポリヌクレオチド
を含み、
各ポリヌクレオチドが、前記植物の発育種子中の前記ポリヌクレオチドの発現を誘導可
能である1つ以上の種子特異的プロモーター、または前記微生物細胞中の前記ポリヌクレ
オチドの発現を誘導可能である1つ以上のプロモーターと作動可能に結合されており、前
記脂肪酸が、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)を含むω6脂肪酸、α-リ
ノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸、ステアリドン酸(SDA)、及びドコサペンタエ
ン酸(DPA)を含み、場合によっては、エイコサペンタエン酸(EPA)及び/または
エイコサテトラエン酸(ETA)を含んでもよく、及び前記種子または微生物細胞の脂質
の総脂肪酸含有量におけるDPAのレベルが7%から35%の間である、
前記油料種子植物、もしくはその部分、または微生物細胞。
【請求項14】
DPAを含む種子を産生可能であるセイヨウアブラナ(Brassica napus
)、カラシナ(B. juncea)またはカメリナサティバ(Camelina sa
tiva)植物であって、前記植物の成熟した収穫された種子が、種子1グラム当たり少
なくとも約28mg、好ましくは、種子1グラム当たり少なくとも約32mg、種子1グ
ラム当たり少なくとも約36mg、種子1グラム当たり少なくとも約40mg、より好ま
しくは、種子1グラム当たり少なくとも約44mgまたは少なくとも48mg、種子1グ
ラム当たり少なくとも約80mg、または種子1グラム当たり約30mgから約80mg
の間のDPA含有量を有する、前記植物。
【請求項15】
前記外来性ポリヌクレオチドを含む請求項13記載の植物細胞。
【請求項16】
以下の特徴:
i)請求項13または14記載の植物由来であること、
ii)請求項1~3のいずれか1項に記載の脂質を含むこと、
iii)請求項4~12のいずれか1項に記載の方法で使用できること
の1つ以上を有する植物部分、好ましくは種子、または微生物細胞。
【請求項17】
DPA及び約4重量%から約15重量%の間、好ましくは、約6重量%から約8重量%
の間または約4重量%から約8重量%の間の水分を含む成熟して収穫されたセイヨウアブ
ラナ(Brassica napus)、カラシナ(B. juncea)またはカメリ
ナサティバ(Camelina sativa)種子であって、前記種子のDPA含有量
が種子1グラム当たり少なくとも約28mg、好ましくは、種子1グラム当たり少なくと
も約32mg、種子1グラム当たり少なくとも約36mg、種子1グラム当たり少なくと
も約40mg、より好ましくは、種子1グラム当たり少なくとも約44mgまたは種子1
グラム当たり少なくとも約48mg、種子1グラム当たり約80mg、または種子1グラ
ム当たり約30mgから約80mgの間である、前記種子。
【請求項18】
請求項1~3のいずれか1項に記載の抽出植物脂質または抽出微生物脂質の製造に使用
できる植物または微生物細胞の産生方法であって、前記方法が、
a)複数の植物または微生物細胞からの1つ以上の植物部分または微生物細胞により産
生された脂質中のDPAのレベルをアッセイすることであって、各植物または微生物細胞
が、酵素の以下のセット;
i)ω3-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エ
ロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
ii)Δ15-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6
-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
iii)Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ
6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
iv)Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼまたはΔ15-デサチュラーゼ
、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロン
ガーゼ、
v)ω3-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エ
ロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
vi)Δ15-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9
-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
vii)Δ12-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ
9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
viii)Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼまたはΔ15-デサチュラ
ーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5-エ
ロンガーゼ、
ix)ω3-デサチュラーゼまたはΔ15-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、
Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、または
x)ω3-デサチュラーゼまたはΔ15-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ
5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ
の1つをコードする1つ以上の外来性ポリヌクレオチドを含み、
各ポリヌクレオチドが、植物部分または微生物細胞の細胞内の前記ポリヌクレオチドの発
現を誘導可能である1つ以上のプロモーターと作動可能に結合する、前記アッセイするこ
と、と
b)1つ以上のその部分の請求項1~3のいずれか1項に記載の抽出植物脂質または微
生物脂質の産生に使用できる複数の植物または微生物細胞から植物または微生物細胞を同
定すること、と
c)場合によっては、前記同定植物または微生物細胞、またはそれ由来の種子から後代
植物または微生物細胞を産生すること
とを含む前記方法。
【請求項19】
種子の産生方法であって、前記方法が、
a)好ましくは、少なくとも1000または2000または3000のかかる植物の集
合部分としての耕地または標準栽植密度で植えられた少なくとも1ヘクタールまたは2ヘ
クタールまたは3ヘクタールの領域で、請求項13または14記載の植物、または請求項
16記載の植物部分を産生、もしくは請求項17記載の種子を産生する植物を生育するこ
と、
b)前記1つまたは複数の植物から種子を収穫すること、及び
c)場合によっては、前記種子から脂質を抽出して、好ましくは、少なくとも60kg
または70kgまたは80kgのDPA/ヘクタールの総DPA収率でオイルを産生する
こと
を含む、前記方法。
【請求項20】
次の特徴:
i)請求項2または請求項3に定義されるオイルを含むこと、及び
ii)前記植物部分または種子または微生物細胞が請求項4~12のいずれか1項に記
載の方法で使用可能であること
の1つ以上を有する、請求項13~17のいずれか1項に記載の植物、植物細胞、植物部
分もしくは種子、または微生物細胞。
【請求項21】
請求項4~12のいずれか1項に記載の方法を用いて、請求項15記載の細胞、請求項
13記載の油料種子植物、請求項13記載の微生物細胞、請求項14記載のセイヨウアブ
ラナ(Brassica napus)、カラシナ(B. juncea)もしくはカメ
リナサティバ(Camelina sativa)植物、請求項16記載の植物部分、ま
たは請求項17記載の種子により産生、またはから得られる脂質、またはオイル。
【請求項22】
請求項17記載の種子から得られる、または請求項13または14記載の植物から得ら
れるシードミール。
【請求項23】
1つ以上の請求項21記載の脂質もしくはオイル、請求項15記載の細胞、請求項20
記載の植物細胞または微生物細胞、請求項17記載の種子、または請求項22記載のシー
ドミールを含む組成物。
【請求項24】
1つ以上の請求項21記載の脂質もしくはオイル、請求項15記載の細胞、請求項13
記載の油料種子植物、請求項20記載の植物細胞もしくは微生物細胞、請求項14記載の
セイヨウアブラナ(Brassica napus)、カラシナ(B. juncea)
もしくはカメリナサティバ(Camelina sativa)植物、請求項20記載の
植物部分、請求項17記載の種子、請求項22記載のシードミール、または請求項23記
載の組成物を含む家畜飼料、化粧品または化学薬品。
【請求項25】
家畜飼料の製造方法であって、前記方法が、少なくとも1つの他の食物成分と、1つ以
上の請求項1~3のいずれか1項に記載の脂質もしくはオイル、請求項15記載の細胞、
請求項13記載の油料種子植物、請求項20記載の植物細胞もしくは微生物細胞、請求項
14記載のセイヨウアブラナ(Brassica napus)、カラシナ(B. ju
ncea)もしくはカメリナサティバ(Camelina sativa)植物、請求項
20記載の植物部分、請求項17記載の種子、請求項22記載のシードミール、または請
求項23記載の組成物を混合することを含む前記方法。
【請求項26】
PUFAから利益を受けることになる症状の治療または予防用医薬品製造のための、請
求項1~3のいずれか1項に記載の1つ以上の脂質またはオイル、請求項15記載の細胞
、請求項20記載の植物細胞もしくは微生物細胞、請求項20記載の植物部分、請求項1
7記載の種子、請求項22記載のシードミール、または請求項23記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物細胞または微生物細胞から得られたドコサペンタエン酸を含む脂質、及
び該脂質の産生及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ω3長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)は、ヒト及び動物の健康のための重要な
化合物として、今では広く認識されている。これらの脂肪酸を、食事供給源からまたは、
その両方とも食餌の必須脂肪酸として見なされているリノール酸(LA、18:2ω6)
またはα-リノレン酸(ALA、18:3ω3)脂肪酸の転換により得ることができる。
ヒト及び多くの他脊椎動物は、植物源から得られたLAまたはALAをC22に転換でき
るが、この転換反応は、非常に遅い速度で起こる。さらに、現代社会のほとんどは、理想
とされるω6:ω3脂肪酸について4:1以下の比の代わりに、少なくとも90%の多価
不飽和脂肪酸(PUFA)がω6脂肪酸であるというバランスのとれていない食事をとっ
ている(Trautwein、2001)。ヒトのためのエイコサペンタエン酸(EPA
、20:5ω3)、ドコサペンタエン酸(DPA)、及びドコサヘキサエン酸(DHA、
22:6ω3)などのLC-PUFAの即時型食事供給源は、ほとんど、魚または魚油か
らである。従って、健康専門家はヒトの食事に、LC-PUFAの有意なレベルを含む魚
を規則的に含めることを推奨している。益々、魚由来LC-PUFAオイルは、例えば、
食品及び乳児用調製粉乳に配合されている。しかしながら、世界的及び国の水産業の衰退
のせいで、これらの有益な健康増進オイルの代替源が必要とされている。
【0003】
動物と対照的に、顕花植物類は、18個の炭素より長い長鎖を有する多価不飽和脂肪酸
を合成する能力を有しない。特に、他被子植物類と共に作物及び園芸植物は、ALAから
誘導されるEPA、ドコサペンタエン酸(DPA、22:5ω3)及びDHAなどのより
長鎖ω3脂肪酸を合成するために必要な酵素を有しない。従って、植物バイオ技術の重要
ゴールは、実質的量のLC-PUFAを産生し、それ故、これらの化合物の代替供給源を
提供する作物のエンジニアリングである。
【発明の概要】
【0004】
LC-PUFA生合成経路
微細藻類、セン類及び真菌類などの生物のLC-PUFAの生合成は、通常、一連の酸
素依存性不飽和化及び伸長反応として起こる(
図1)。これらの生物内でEPAを産生す
る最も共通の経路としては、Δ6-不飽和化反応、Δ6-伸長反応及びΔ5-不飽和化反
応(Δ6-不飽和化反応経路と呼ばれる)が挙げられ、一方で、余り共通でない経路は、
Δ9-伸長反応、Δ8-不飽和化反応及びΔ5-不飽和化反応(Δ9-不飽和化反応経路
と呼ばれる)を使用する。これらの連続した不飽和化及び伸長反応は、
図1の上左部に模
式的に示したω6脂肪酸基質LA(ω6)または
図1の下右部に示したEPAに完結する
ω3基質ALA(ω3)のいずれかで開始し得る。もし、最初のΔ6-不飽和化反応が、
ω6基質LA上で起こるならば、一連の3種の酵素のLC-PUFA産生物は、ω6脂肪
酸ARAであろう。LC-PUFA合成生物は、アラキドン酸(ARA、20:4ω6)
のEPAへの転換について
図1中のΔ17-デサチュラーゼ工程として示したω3-デサ
チュラーゼを用いて、ω6脂肪酸をω3脂肪酸に転換し得る。ω3-デサチュラーゼファ
ミリーのいくつかのメンバーは、LAからARAまでの範囲の様々な基質上で作用できる
。植物ω3-デサチュラーゼは、しばしば、LAからALAまでのΔ15-不飽和化反応
を特異的に触媒するが、一方、真菌類及び酵母のω3-デサチュラーゼは、ARAからE
PAまでのΔ17-不飽和化反応に対して特異的であり得る(Pereiraら,200
4a;Zankら,2005)。広範囲のω6基質をそれらの対応するω3産生物に転換
できる非特異的ω3-デサチュラーゼが存在し得ることを、いくつかの報告が示唆してい
る(Zhangら,2008)。
【0005】
これらの生物内におけるEPAのDHAへの転換は、EPAのΔ5-伸長反応により起
こり、DPAを産生し、次いで、Δ4-不飽和化反応によりDHAを産生する(
図1)。
対照的に、哺乳類は、Δ4-デサチュラーゼと独立した3種の別反応によりDPAをDH
Aに転換する、いわゆる、「シュプレッヒャー」経路を使用する(Sprecherら,
1995)。
【0006】
植物、セン類、微細藻類、及び線虫(Caenorhabditis elegans
)などの下等動物で概して見られるフロントエンドデサチュラーゼは、ホスファチジルコ
リン(PC)基質のsn-2位とエステル化された脂肪酸基質を支配的にに受容する。従
って、これらのデサチュラーゼは、アシル-PC、脂質結合、フロントエンドデサチュラ
ーゼとして知られる(Domergueら,2003)。対照的に、高等動物フロントエ
ンドデサチュラーゼは、概して、脂肪酸基質がPCよりCoAと結合しているアシル-C
oA基質を受容する(Domergueら,2005)。いくつかの微細藻類デサチュラ
ーゼ及び1つの植物デサチュラーゼは、CoAとエステル化された脂肪酸基質を使用する
ことが知られている(表2)。
【0007】
各PUFA伸長反応は、他成分タンパク質複合体により触媒される4工程から成る:先
ず、縮合反応の結果、マロニル-CoAから脂肪酸に2C単位が付加され、β-ケトアシ
ル中間体を生成する。それから、これが、NADPHにより還元され、次いで、脱水反応
によりエノイル中間体を得る。この中間体は、最終的に、2回還元されて、伸長脂肪酸を
生成する。他工程はそうでないが、これらの4反応の縮合工程は基質特異的であると、概
して、考えられる。実際に、天然植物伸長機構は、非天然PUFA基質の伸長において天
然植物伸長機構の効率が低くあり得るが、PUFAに特異的縮合酵素(通常、「エロンガ
ーゼ」と呼ぶ)が導入されること提供するPUFAを伸長可能であることを、このことは
意味している。2007年に、酵母伸長サイクルデヒドラターゼの同定及び特徴付けが発
表された(DenicとWeissman、2007)。
【0008】
伸長反応がアシル-CoAプールにおいて基質に対して起こる一方で、植物、セン類及
び微細藻類のPUFA不飽和化は、アシル-PCプールにおいて優先的に脂肪酸基質に対
して自然に起こる。PC担体へのアシル-CoA脂肪酸の転移がリゾホスファチジルコリ
ンアシルトランスフェラーゼ(LPCAT)により起こる一方で、アシル-PC分子から
CoA担体への脂肪酸の転移は、ホスホリパーゼ(PLA)により起こる(Singhら
、2005)。
【0009】
LC-PUFAの工学的産生
ほとんどのLC-PUFA代謝工学は、好気性Δ6-不飽和化/伸長経路を用いて行わ
れている。タバコ中にγ-リノレン酸(GLA、18:3ω6)の生合成は、シアノバク
テリア・シネコシスティス(cyanobacterium Synechocysti
s)のΔ6-デサチュラーゼを用いて、1996年に初めて報告された(ReddyとT
homas、1996)。より近年では、GLAは、ベニバナ(種子オイル中GLA73
%、WO2006/127789)及びダイズ(GLA28%;Satoら、2004)
などの作物で産生された。EPA及びDHAなどのLC-PUFAの産生は、関連する不
飽和化及び伸長工程数が多いせいで、より複雑な工学操作を伴う。EPA陸上植物のEP
A産生は、Qiらにより初めて報告され(2004)、イソクリシス・ガルバナ(Iso
chrysis galbana)のΔ9-エロンガーゼ、ユーグレナ・グラシリス(E
uglena gracilis)のΔ8-デサチュラーゼ及びモルティエレラ・アルピ
ナ(Mortierella alpina)のΔ5-デサチュラーゼをコードする遺伝
子を、EPA3%までの収率で、アラビドプシス属(Arabidopsis)に導入し
た。この研究後、Abbadiら(2004)が続き、ニセツリガネゴケ(Physco
mitrella patens)のΔ6-デサチュラーゼ及びΔ6-エロンガーゼ及び
フェオダクチラム・トリコルヌタム(Phaeodactylum tricornut
um)のΔ5-デサチュラーゼをコードする遺伝子を用いて、亜麻仁でEPA0.8%ま
での産生を報告した。
【0010】
DHA産生の最初の報告は、ダイズ胚芽内におけるDHA3%の産生を記載しているW
O04/017467であったが、種子ではなく、サプロレグニア・ディクリナ(Sap
rolegnia diclina)Δ6-デサチュラーゼ、モルティエレラ・アルピナ
(Mortierella alpina)Δ6-デサチュラーゼ、モルティエレラ・ア
ルピナ(Mortierella alpina)Δ5-デサチュラーゼ、サプロレグニ
ア・ディクリナ(Saprolegnia diclina)Δ4-デサチュラーゼ、サ
プロレグニア・ディクリナ(Saprolegnia diclina)Δ17-デサチ
ュラーゼ、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)Δ6-
エロンガーゼ及びパブロバ・ルセリ(Pavlova lutheri)Δ5-エロンガ
ーゼをコードする遺伝子導入によるものであった。DHAも産生する胚芽内の最大EPA
レベルは19.6%であり、EPAからDHAへの転換効率は小さいことを示した(WO
2004/071467)。この発見は、ゼブラフィッシュ(Danio rerio)
Δ5/6-デサチュラーゼ、線虫(Caenorhabditis elegans)Δ
6-エロンガーゼ、並びにパブロバ・サリナ(Pavlova salina)Δ5-エ
ロンガーゼ及びΔ4-デサチュラーゼを用いて、アラビドプシス属(Arabidops
is)内におけるEPA3%及びDHA0.5%の産生についてRobertら(200
5)により発表されたものと類似していた。また、2005年に、Wuらは、ピシリウム
・イレグラーレ(Pythium irregulare)Δ6-エロンガーゼ、スラウ
ストキトリッド(Thraustochytrid)Δ5-デサチュラーゼ、ニセツリガ
ネゴケ(Physcomitrella patens)Δ6-エロンガーゼ、キンセン
カ(Calendula officianalis)Δ12-デサチュラーゼ、スラウ
ストキトリッド(Thraustochytrid)Δ5-エロンガーゼ、フィトフトラ
・インフェスタンス(Phytophthora infestans)Δ17-デサチ
ュラーゼ、ニジマス(Oncorhyncus mykiss)LC-PUFAエロンガ
ーゼ、スラウストキトリッド(Thraustochytrid)Δ4-デサチュラーゼ
及びスラウストキトリッド(Thraustochytrid)LPCATを用いて、カ
ラシナ(Brassica juncea)内において、ARA25%、EPA15%、
及びDHA1.5%の産生を発表した(Wuら、2005)。ω3LC-PUFAを合成
する油料種子作物を産生する試みの総括が、Venegas-Canelonら(201
0)及びRuiz-Lopezら(2012)により提供されている。 Ruiz-Lo
pezら(2012)により示されたように、トランスジェニック植物内のDHA産生に
ついて、今日までに得られた結果は魚油で見られるレベルにはほど遠いものであった。よ
り近年、Petrieら(2012)は、シロイヌナズナ(Arabidopsis t
haliana)の種子内におけるDHA約15%の産生を報告し、WO2013/18
5184は、7%から20%の間のDHAを有する特定の種子オイルの産生を報告した。
しかしながら、20%を超えるDHAを有する植物油の産生の報告はない。
【0011】
DHAの同時産生なしに有意なレベルまで、組換え細胞内のDPA産生の報告はない。
実際、本発明者らは、DHA産生なしで、組換え細胞内でDPAを産生するいかなる公に
なった示唆も動機づけも知らない。
【0012】
従って、組換え細胞内でのLC-PUFA、特に、油料種子植物の種子内のDPAのよ
り効率的な産生の必要性が依然として存在する。
【0013】
発明の概要
ほとんどの生物体が、1~2%を超えてDPAを有するオイルを産生することができず
、そのため、天然源からラージスケールでDPAを産生するという選択肢は、たとえあっ
たとしても限定的である。本発明者らは、天然源よりも非常に高レベルのDPAを有する
脂質を産生するための方法及び植物を特定した。
【0014】
第一の態様では、本発明は、エステル化された形態の脂肪酸、オレイン酸、パルミチン
酸、リノール酸(LA)を含むω6脂肪酸、α-リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸
を含み、及び場合により、ステアリドン酸(SDA)、エイコサペンタエン酸(EPA)
、ドコサペンタエン酸(DPA)及びエイコサテトラエン酸(ETA)の1つ以上を含ん
でもよく、該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるDPAのレベルが、約7%から35%の
間である抽出脂質、好ましくは、抽出植物脂質または抽出微生物脂質を提供する。この態
様の実施形態において、該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるDPAのレベルは、約7%
、約8%、約9%、約10%、約12%、約15%、約18%、約20%、約22%、約
24%、約26%、約28%、約30%、約7%から約28%の間、約7%から約25%
の間、約10%から35%の間、約10%から約30%の間、約10%から約25%の間
、約10%から約22%の間、約14%から35%の間、約16%から35%の間、約1
6%から約30%の間、約16%から約25%の間、または約16%から約22%の間で
ある。
【0015】
上記態様の実施形態では、DHAは、該抽出脂質の総脂肪酸含有量の2%未満または0
.5%未満のレベルで存在し、より好ましくは、該脂質の総脂肪酸含有物中に存在しない
。
【0016】
別の態様では、本発明は、ドコサペンタエン酸(DPA)を含むエステル化された形態
の脂肪酸を含む抽出脂質、好ましくは、抽出植物脂質または抽出微生物脂質を提供し、ト
リアシルグリセロール(TAG)の形態でエステル化された少なくとも35%のDPAが
、該TAGのsn-2位でエステル化されている。実施形態では、該抽出脂質は、(i)
オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)を含むω6脂肪酸、α-リノレン酸(A
LA)を含むω3脂肪酸の1つ以上または全てを含み、場合により、ステアリドン酸(S
DA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、及びエイコサテトラエン酸(ETA)の1つ
以上を含んでもよいこと、(ii)少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくと
も約48%、35%から約60%の間、または35%から約50%の間のトリアシルグリ
セロール(TAG)の形態でエステル化されたDPAが該TAGのsn-2位でエステル
化されていること、及び(iii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるDPAのレベル
が約1%から35%の間、または約7%から35%の間または約20.1%から35%の
間であることの1つ以上または全てにより、さらに特徴付けられる。この態様の実施形態
では、該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるDPAのレベルが、約7%、約8%、約9%
、約10%、約12%、約15%、約18%、約20%、約22%、約24%、約26%
、約28%、約30%、約7%から約28%の間、約7%から約25%の間、約10%か
ら35%の間、約10%から約30%の間、約10%から約25%の間、約10%から約
22%の間、約14%から35%の間、約16%から35%の間、約16%から約30%
の間、約16%から約25%の間、または約16%から約22%の間である。好ましい実
施形態では、該抽出脂質は、(i)及び(ii)、(i)及び(iii)または(ii)
及び(iii)、より好ましくは、(i)、(ii)及び(iii)の全てにより特徴付
けられる。好ましくは、該抽出脂質は、約2%から16%の間である該抽出脂質の総脂肪
酸含有量におけるパルミチン酸レベル、及び、もし存在する場合、1%未満である該抽出
脂質の総脂肪酸含有量におけるミリスチン酸(C14:0)レベルにより、さらに特徴付
けられる。
【0017】
上記の態様の各々の実施形態を、以下、さらに詳細に説明する。当業者が理解するよう
に、上記態様の対応する特徴より広範である、記載された実施形態のいかなる特徴もその
態様に適用しない。
【0018】
実施形態では、抽出脂質は、以下の特徴:
i)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるパルミチン酸のレベルは、約2%から18%
の間、約2%から16%の間、約2%から15%の間、または約3%から10%の間であ
ること、
ii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるミリスチン酸(C14:0)のレベルは、
6%未満、3%未満、2%未満、1%未満、または約0.1%であること、
iii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるオレイン酸のレベルは、約1%から約3
0%の間、約3%から約30%の間、約6%から約30%の間、約1%から約20%の間
、約30%から約60%の間、約45%~約60%、約30%、または約15%から約3
0%の間であること、
iv)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるリノール酸(LA)のレベルは、約4%か
ら約35%の間、約4%から約20%の間、約4%から約17%の間、または約5%から
約10%の間であること、
v)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるα-リノレン酸(ALA)のレベルは、約4
%から約40%の間、約7%から約40%の間、約10%から約35%の間、約20%か
ら約35%の間、約4%から約16%の間、または約2%から約16%の間であること、
vi)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるγ-リノレン酸(GLA)のレベルは、4
%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、0.05%から約7%
の間、0.05%から4%の間、0.05%から約3%の間、または0.05%から約2
%の間であること、
vii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるステアリドン酸(SDA)のレベルは、
約10%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約4%未満、約3%未満、約0.
05%から約7%の間、約0.05%から約6%の間、約0.05%から約4%の間、約
0.05%から約3%の間、約0.05%から約10%の間、または約0.05%から約
2%の間であること、
viii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるエイコサテトラエン酸(ETA)のレ
ベルは、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約1%未満、約0.5%未満、0.05
%から約6%の間、0.05%から約5%の間、0.05%から約4%の間、0.05%
から約3%の間、または0.05%から約2%の間であること、
ix)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるエイコサトリエン酸(ETrA)のレベル
は、4%未満、約2%未満、約1%未満、0.05%から4%の間、0.05%から3%
の間、または0.05%から約2%の間、または0.05%から約1%の間であること、
x)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるエイコサペンタエン酸(EPA)のレベルは
、4%から15%の間、4%未満、約3%未満、約2%未満、0.05%から10%の間
、0.05%から5%の間、0.05%から約3%の間、または0.05%から約2%の
間であること、
xi)該脂質は、その脂肪酸含有物中にω6-ドコサペンタエン酸(22:5Δ4,7
,10,13,16)を含むこと、
xii)該脂質は、その脂肪酸含有物中に0.1%未満のω6-ドコサペンタエン酸(
22:5Δ4,7,10,13,16)を含むこと、
xiii)該脂質は、その脂肪酸含有物中に0.1%未満の1つ以上または全てのSD
A、EPA及びETAを含むこと、
xiv)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における総飽和脂肪酸レベルは、約4%から約2
5%の間、約4%から約20%の間、約6%から約20%の間、または約6%から約12
%の間であること、
xv)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における総一価不飽和脂肪酸レベルは、約4%から
約40%の間、約4%から約35%の間、約8%から約25%の間、8%から約22%の
間、約15%から約40%の間または約15%から約35%の間であること、
xvi)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における総多価不飽和脂肪酸レベルは、約20%
から約75%の間、30%から75%の間、約50%から約75%の間、約60%、約6
5%、約70%、約75%、または約60%から約75%の間であること、
xvii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における総ω6脂肪酸レベルは、約35%から
約50%の間、約20%から約35%の間、約6%から約20%の間、20%未満、約1
6%未満、約10%未満、約1%から約16%の間、約2%から約10%の間、または約
4%から約10%の間であること、
xviii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における新ω6脂肪酸レベルは、約10%未
満、約8%未満、約6%未満、4%未満、約1%から約20%の間、約1%から約10%
の間、0.5%から約8%の間、または0.5%から4%の間であること、
xix)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における総ω3脂肪酸レベルは、36%から約6
5%の間、36%から約70%の間、40%から約60%の間、約30%から約60%の
間、約35%から約60%の間、40%から約65%の間、約30%から約65%の間、
約35%から約65%の間、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約6
0%、約65%または約70%であること、
xx)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における新ω3脂肪酸レベルは、21%から約45
%の間、21%から約35%の間、約23%から約35%の間、約25%から約35%の
間、約27%から約35%の間、約23%から約25%の間、約27%、約30%、約3
5%、約40%または約45%であること、
xxi)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比は、約
1.0から約3.0の間、約0.1から約1の間、約0.1から約0.5の間、約0.5
0未満、約0.40未満、約0.30未満、約0.20未満、約0.15未満、約1.0
未満、約0.1未満、約0.10~約0.4、または約0.2であること、
xxii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における新ω6脂肪酸:新ω3脂肪酸の比は、
約1.0から約3.0の間、約0.02から約0.1の間、約0.1から約1の間、約0
.1から約0.5の間、約0.50未満、約0.40未満、約0.30未満、約0.20
未満、約0.15未満、約0.02、約0.05、約0.1、約0.2または約1.0で
あること、
xxiii)該脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少な
くとも約80%、約60%から約98%の間、約70%から約95%の間、または約75
%から約90%の間のΔ12-デサチュラーゼによるオレイン酸からLAへの転換効率に
基づくこと、
xxiv)該脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なく
とも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、約30%から約70%の間、
約35%から約60%の間、または約50%から約70%の間のΔ6-デサチュラーゼに
よるALAからSDAへの転換効率に基づくこと、
xxv)該脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくと
も約75%、約60%から約95%の間、約70%から約88%の間、または約75%か
ら約85%の間のΔ6-エロンガーゼによるSDAからETA酸への転換効率に基づくこ
と、
xxvi)該脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なく
とも約75%、約60%から約99%の間、約70%から約99%の間、または約75%
から約98%の間のΔ5-デサチュラーゼによるETAからEPAへの転換効率に基づく
こと、
xxvii)該脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少な
くとも約90%、約50%から約99%の間、約85%から約99%の間、約50%から
約95%の間、または約85%から約95%の間のΔ5-エロンガーゼによるEPAから
DPAへの転換効率に基づくこと、
xxviii)該脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少
なくとも約20%、少なくとも約25%、約20%、約25%、約30%、約10%から
約50%の間、約10%から約30%の間、約10%から約25%の間または約20%か
ら約30%の間のオレイン酸からDPAへの転換効率に基づくこと、
xxix)該脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なく
とも約22%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、約25
%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約15%から約50%の間、
約20%から約40%の間、または約20%から約30%の間のLAからDPAへの転換
効率に基づくこと、
xxx)該脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約17%、少なくとも約22%、少なくと
も約24%、少なくとも約30%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%
、約55%、約60%、約22%から約70%の間、約17%から約55%の間、約22
%から約40%の間、または約24%から約40%の間のALAからDPAへの転換効率
に基づくこと、
xxxi)該抽出脂質中の総脂肪酸は、1.5%未満のC20:1、1%未満のC20
:1または約1%のC20:1を有すること、
xxxii)該脂質のトリアシルグリセロール(TAG)含有率は、少なくとも約70
%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、約70%から約9
9%の間、または約90%から約99%の間であること、
xxxiii)該脂質は、ジアシルグリセロール(DAG)を含み、DAGは好ましく
はDPAを含むこと、
xxxiv)該脂質は、約10%未満、約5%未満、約1%未満または約0.001%
から約5%の間の遊離(非エステル化)脂肪酸及び/またはリン脂質を含む、または本質
的にそれを含まないこと、
xxxv)TAGの形態でエステル化されたDPAの少なくとも70%、少なくとも7
2%または少なくとも80%は、該TAGのsn-1位またはsn-3位であり、
xxxvi)該脂質中に最も豊富なDPAを含むTAG化学種は、DPA/18:3/
18:3(TAG58:12)であり、該脂質はトリDPA TAG(TAG66:18
)を含むこと、及び
xxxvii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるDPAのレベルが、約7%、約8
%、約9%、約10%、約12%、約15%、約18%、約20%、約22%、約24%
、約26%、約28%、約31%、約7%から約31%の間、約7%から約28%の間、
約10%から約35%の間、約10%から約30%の間、約10%から約25%の間、約
10%から約22%の間、約14%から約35%の間、約16%から約35%の間、約1
6%から約30%の間、約16%から約25%の間、または約16%から約22%の間で
あり、場合により、DHAレベルは、該抽出脂質の総脂肪酸含有量の0.5%未満である
こと
の1つ以上を有する。
【0019】
別の実施形態では、該抽出脂質は、以下の特徴:
i) 該抽出植物脂質の総脂肪酸含有量におけるパルミチン酸のレベルは、2%から15
%の間であること、
ii) 該抽出植物脂質の総脂肪酸含有量におけるミリスチン酸(C14:0)のレベル
は、約0.1%であること、
iii) 該抽出植物脂質の総脂肪酸含有量におけるオレイン酸のレベルは、1%から3
0%の間であること、
iv) 該抽出植物脂質の総脂肪酸含有量におけるリノール酸(LA)のレベルは、4%
から20%の間であること、
v) 該抽出植物脂質の総脂肪酸含有量におけるα-リノレン酸(ALA)のレベルは、
4%から40%の間であること、
vi) 該抽出植物脂質の総脂肪酸含有量におけるγ-リノレン酸(GLA)のレベルは
、0.05%から7%の間であること、
vii) 該抽出植物脂質の総脂肪酸含有量におけるステアリドン酸(SDA)のレベル
は、0.05%から10%の間であること、
viii) 該抽出植物脂質の総脂肪酸含有量におけるエイコサテトラエン酸(ETA)
のレベルは、6%未満であること、
ix) 該抽出植物脂質の総脂肪酸含有量におけるエイコサトリエン酸(ETrA)のレ
ベルは、4%未満であること、
x) 該抽出植物脂質は、その脂肪酸含有物中に0.1%未満のω6-ドコサペンタエン
酸(22:5Δ4,7,10,13,16)を含むこと、
xi) 該抽出植物脂質の総脂肪酸含有量における新ω6脂肪酸のレベルは、10%未満
であること、
xii) 該抽出植物脂質の脂肪酸含有物中の総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比は、1.
0から3.0の間、または0.1から1の間であること、
xiii) 該抽出植物脂質の脂肪酸含有物中の新ω6脂肪酸:新ω3脂肪酸の比は、1
.0から3.0の間、または0.02から0.1の間、または0.1から1の間であるこ
と、
xiv) 該抽出植物脂質の脂肪酸組成は、少なくとも10%のオレイン酸からDPAへ
の転換効率に基づくこと、
xv) 該抽出植物脂質の脂肪酸組成は、少なくとも15%のLAからDPAへの転換効
率に基づくこと、
xvi) 該抽出植物脂質の脂肪酸組成は、少なくとも17%のALAからDPAへの転
換効率に基づくこと、
xvii) 該抽出植物脂質中の総脂肪酸は、1.5%未満のC20:1であること、及
び
xviii) 該抽出植物脂質中のトリアシルグリセロール(TAG)含有率は、少なく
とも70%であり、1つ以上の以下の特徴により特徴付けられ得ること、
xix) 該抽出植物脂質は、DPAを含むジアシルグリセロール(DAG)を含むこと
、
xx) 該抽出植物脂質は、10%未満の遊離(非エステル化)脂肪酸及び/またはリン
脂質を含む、または本質的にそれを含まないこと、
xxi) TAGの形態でエステル化されたDPAの少なくとも70%は、該TAGのs
n-1位またはsn-3位であること、
xxii)該抽出植物脂質中の最も豊富なDPA含有TAG化学種は、DPA/18:3
/18:3(TAG58:12)であること、及び
xxiii)該抽出植物脂質は、トリDPA TAG(TAG66:18)を含むこと
の1つ以上を有する。
【0020】
実施形態では、該抽出植物脂質の総脂肪酸含有量におけるエイコサペンタエン酸(EP
A)のレベルは、0.05%から10%の間である。。
【0021】
さらなる実施形態では、該抽出植物脂質の総脂肪酸含有量におけるDHAのレベルは、
2%未満、好ましくは1%未満、または0.1%から2%の間、より好ましくは検出され
ないことである。好ましくは、植物、または種子などその一部、または微生物細胞は、Δ
4-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドを有していないか、またはΔ4-デサ
チュラーゼポリペプチドを有していない。別の実施形態では、該抽出脂質は、オイルの形
態であり、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約98重量%
、または約95重量%から約98重量%の間であるオイルは脂質である。
【0022】
好ましくは、該抽出脂質は、アブラナ属の種子オイルの脂質、またはカメリナサティバ
(Camelina sativa)の種子オイルの脂質である。
【0023】
上記第1の態様の好ましい実施形態では、脂質またはオイル、好ましくは、種子オイル
、より好ましくは、アブラナ属の種子オイルまたはカメリナサティバの種子オイルは、以
下の特徴を有する:脂質またはオイルの総脂肪酸含有量において、DPAレベルは、約7
%から30%の間または約7%から35%の間であり、パルミチン酸レベルは、約2%か
ら約16%の間であり、ミリスチン酸レベルは、1%未満であり、オレイン酸レベルは、
約1%から約30%の間であり、LAレベルは、約4%から35%の間であり、ALAは
存在し、抽出脂質の総脂肪酸含有量における総飽和脂肪酸レベルは、約4%から約25%
の間であり、抽出脂質の脂肪酸含有量における総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比は、0.
05から約3.0の間であり、脂質のトリアシルグリセロール(TAG)含有率は、少な
くとも約70%であり、場合により、脂質は、コレステロールを本質的に含まなくてもよ
く、及び/または脂質は、トリ-DPA TAG(TAG66:15)を含む。より好ま
しくは、脂質またはオイル、好ましくは、種子オイルは、以下の特徴の1つ以上または全
てをさらに有する:少なくとも70%のDPAは、トリアシルグリセロール(TAG)の
sn-1位またはsn-3位でエステル化されており、ALAは、総脂肪酸含有物の4%
から40%の間のレベルで存在し、GLAは存在し、及び/またはGLAレベルは、総脂
肪酸含有物の4%未満であり、SDAレベルは、0.05%から約10%の間であり、E
TAレベルは、約4%未満であり、EPAレベルは、0.05%から約10%の間であり
、抽出脂質の総脂肪酸含有量における総一価不飽和脂肪酸レベルは、約4%から約35%
の間であり、抽出脂質の総脂肪酸含有量における総多価不飽和脂肪酸レベルは、約20%
から約75%の間であり、抽出脂質の総脂肪酸含有量における新ω6脂肪酸:新ω3脂肪
酸の比は、約0.03から約3.0の間、好ましくは、約0.50未満であり、脂質の脂
肪酸組成は:少なくとも約60%のΔ12-デサチュラーゼによるオレイン酸からLAへ
の転換効率、少なくとも約60%のΔ6-エロンガーゼによるSDAからETAへの転換
効率、約50%から約95%の間のΔ5-エロンガーゼによるオレイン酸からDPAへの
転換効率、少なくとも約10%のオレイン酸からDPAへの転換効率に基づく。最も好ま
しくは、少なくとも81%のDPAはトリアシルグリセロール(TAG)のsn-1位ま
たはsn-3位でエステル化されている。
【0024】
上記第2の態様の別の好ましい実施形態では脂質またはオイル、好ましくは、種子オイ
ル、より好ましくは、DPAを含むアブラナ属の種子オイルまたはカメリナサティバの種
子オイルは、以下の特徴を有する:脂質またはオイルの総脂肪酸含有量において、パルミ
チン酸レベルは、約2%から約16%の間であり、ミリスチン酸レベルは、1%未満であ
り、オレイン酸レベルは、約1%から約30%の間であり、LAレベルは、約4%から3
5%の間であり、ALAは存在し、抽出脂質の総脂肪酸含有量における総飽和脂肪酸レベ
ルは、約4%から約25%の間であり、抽出脂質の脂肪酸含有量における総ω6脂肪酸:
総ω3脂肪酸の比は、0.05から約3.0の間であり、脂質のトリアシルグリセロール
(TAG)含有率は、少なくとも約70%であり、場合により、脂質は、トリ-DPA
TAG(TAG66:15)を含んでもよく、トリアシルグリセロール(TAG)の形態
でエステル化された少なくとも35%のDPAは、該TAGのsn-2位でエステル化さ
れている。より好ましくは、脂質またはオイル、好ましくは、種子オイルは、加えて、次
の特徴の1つ以上または全てを有する:ALAは総脂肪酸含有物の4%から40%の間の
レベルで存在し、GLAは存在し、及び/またはGLAのレベルは総脂肪酸含有物の4%
未満であり、SDAレベルは、0.05%から約10%の間であり、ETAレベルは約4
%未満であり、EPAレベルは0.05%から約10%の間であり、該抽出脂質の総脂肪
酸含有量における総一価不飽和脂肪酸のレベルは約4%から約35%の間であり、該抽出
脂質の総脂肪酸含有量における総多価不飽和脂肪酸のレベルは約20%から約75%の間
であり、該抽出脂質の脂肪酸含有物中の新ω6脂肪酸:新ω3脂肪酸の比は約0.03か
ら約3.0の間、好ましくは、約0.50未満であり、該脂質の脂肪酸組成は:少なくと
も約60%のΔ12-デサチュラーゼによるオレイン酸からLAへの転換効率、少なくと
も約60%のΔ6-エロンガーゼによるSDAからETAへの転換効率、約50%から約
95%の間のΔ5-エロンガーゼによるEPAからDPAへの転換効率、少なくとも約1
0%のオレイン酸からDPAへの転換効率に基づく。
【0025】
本発明の抽出脂質またはオイルに関連して、ある実施形態では、該抽出脂質またはオイ
ル中のDPAのレベルは、抽出前の植物部分または微生物の脂質またはオイル中のDPA
のレベルから増加していない、または実質的に同じである。言い換えれば、他の抽出後の
脂肪酸と比較して、脂質またはオイル中のDPAのレベルを増加させる処理はない。明白
であるようなとき、脂質またはオイルを、分取または他の方法により、その後に処理して
、脂肪酸組成を変化させてもよい。
【0026】
別の好ましい実施形態では、脂質またはオイル、好ましくは、種子オイル、より好まし
くは、カラシ油またはキャノーラオイルまたはカメリナサティバの種子オイルなどのアブ
ラナ(Brassica)種子オイルは、以下の特徴を有する:脂質またはオイルの総脂
肪酸含有量におけるDPAレベルは、約7%から35%の間であり、パルミチン酸レベル
は、約2%から約16%の間であり、ミリスチン酸レベルは、約6%未満、好ましくは1
%未満であり、オレイン酸レベルは、約1%から約30%の間であり、LAレベルは、約
4%から約35%の間であり、ALAは存在し、SDAレベルは、約0.05%から約1
0%の間であり、ETAレベルは、約6%未満であり、EPAレベルは、約0.05%か
ら約10%の間である。DHAは、脂質またはオイル中で検出され、好ましくは、脂質ま
たはオイル中で検出されない。好ましくは、DHAは、もし存在するならば、脂質または
オイルの総脂肪酸含有量の2%未満のレベル、または0.5%未満のレベルで存在し、よ
り好ましくは、該脂質またはオイルの総脂肪酸含有物中に存在しない。場合により、脂質
は、コレステロールを本質的に含まなくてもよく、及び/または脂質はトリ-DPA T
AG(TAG66:15)を含んでもよい。より好ましくは、脂質またはオイル、好まし
くは、種子オイルは、以下の特徴の1つ以上または全てをさらに有する:少なくとも70
%のDPAは、トリアシルグリセロール(TAG)のsn-1位またはsn-3位でエス
テル化されており、ALAは、総脂肪酸含有物の4%から40%の間のレベルで存在し、
GLAは存在し、及び/またはGLAレベルは、総脂肪酸含有物の4%未満であり、SD
Aレベルは、0.05%から約10%の間であり、ETAレベルは、約4%未満であり、
EPAレベルは、0.05%から約10%の間であり、抽出脂質の総脂肪酸含有量におけ
る総一価不飽和脂肪酸レベルは、約4%から約35%の間であり、抽出脂質の総脂肪酸含
有量における総多価不飽和脂肪酸レベルは、約20%から約75%の間であり、抽出脂質
の総脂肪酸含有量における新ω6脂肪酸:新ω3脂肪酸の比は、約0.03から約3.0
の間、好ましくは、約0.50未満であり、脂質の脂肪酸組成は:少なくとも約60%の
Δ12-デサチュラーゼによるオレイン酸からLAへの転換効率、少なくとも約60%の
Δ6-エロンガーゼによるSDAからETAへの転換効率、約50%から約95%の間の
Δ5-エロンガーゼによるEPAからDPAへの転換効率、少なくとも約10%のオレイ
ン酸からDPAへの転換効率に基づく。実施形態では、少なくとも81%のDPAはトリ
アシルグリセロール(TAG)のsn-1位またはsn-3位でエステル化されている。
あるいは、TAGの形態でエステル化されたDPAの少なくとも35%は、該TAGのs
n-2位でエステル化されている。
【0027】
さらなる実施形態では、本発明の抽出脂質は、1つ以上のステロール類、好ましくは、
植物ステロール類をさらに含む。
【0028】
別の実施形態では、抽出脂質はオイルの形態であり、オイル1g当たり約10mg未満
のステロール類、オイル1g当たり約7mg未満のステロール類、オイル1g当たり約1
.5mgから約10mgの間のステロール類、またはオイル1g当たり約1.5mgから
約7mgの間のステロール類を含む。
【0029】
抽出脂質中のあり得るステロール類の例としては、必ずしも限定されないが、1つ以上
または全てのカンプエステロール/24-メチルコレステロール、Δ5-スチグマステロ
ール、エブリコール、β-シトステロール/24-エチルコレステロール、Δ5-アベナ
ステロール/イソフコステロール、Δ7-スチグマステロール/スチグマスト-7-エン
-3β-オール、及びΔ7-アベナステロールが挙げられる。
【0030】
実施形態では、植物種は、セイヨウアブラナなど、表11にリストしたものであり、ス
テロール類のレベルは、その特定の植物種について、表11にリストしたものとほぼ同じ
である。該植物種は、セイヨウアブラナ(B.napus)、カラシナ(B.junce
a)またはカンナビス・サティバ(C.sativa)であってよく、それぞれ、野生型
のカラシナセイヨウアブラナ、カラシナまたはカンナビス・サティバ抽出オイル中に見ら
れる辺りのステロール類のレベルを含む。
【0031】
実施形態では、抽出植物脂質は、1つ以上まては全てのカンペステロール/24-メチ
ルコレステロール、Δ5-スチグマステロール、エブリコール、β-シトステロール/2
4-エチルコレステロール、Δ5-アベナステロール/イソフコステロール、Δ7-スチ
グマステロール/スチグマスト-7-エン-3β-オール、及びΔ7-アベナステロール
を含む、または野生型キャノーラオイルと本質的に同じステロール含有率を有する。
【0032】
実施形態では、抽出脂質は、野生型キャノーラオイル、カラシナオイルまたはカンナビ
ス・サティバオイルと本質的に同じステロール含有率を有する。
【0033】
実施形態では、抽出脂質は、オイル1g当たり約0.5mg未満のコレステロール、オ
イル1g当たり約0.25mg未満のコレステロール、オイル1g当たり約0mgから約
0.5mgの間のコレステロール、またはオイル1g当たり約0mgから約0.25mg
の間のコレステロールを含む、またはコレステロールを本質的に含まない。
【0034】
さらなる実施形態では、脂質はオイル、好ましくは、 油料種子のオイルである。かか
るオイルの例としては、これに限定されないが、例えば、キャノーラオイルもしくはカラ
シナオイルなどのアブラナ属(Brassica sp.)オイル、ワタ(Gossyp
ium hirsutum)オイル、アマ(Linum usitatissimum)
オイル、ヘリアンタス属(Helianthus sp.)オイル、ベニバナ(Cart
hamus tinctorius)オイル、ダイズ(Glycine max)オイル
、トウモロコシ(Zea mays)オイル、シロイヌナズナ(Arabidopsis
thaliana)オイル、モロコシ(Sorghum bicolor)オイル、モ
ロコシ(Sorghum vulgare)オイル、エンバク(Avena sativ
a)オイル、トリフォリウム属(Trifolium sp.)オイル、ギニアアブラヤ
シ(Elaesis guineenis)オイル、ベンサミアナタバコ(Nicoti
ana benthamiana)オイル、オオムギ(Hordeum vulgare
)オイル、アオバナルーピン(Lupinus angustifolius)オイル、
イネ(Oryza sativa)オイル、アフリカイネ(Oryza glaberr
ima)オイル、カメリナサティバ(Camelina sativa)オイル、クラン
ベアビシニカ(Crambe abyssinica)オイル、ジャイアントミスカンサ
ス(Miscanthus x giganteus)オイル、またはススキ(Misc
anthus sinensis)オイルが挙げられる。より好ましくは、オイルは、ア
ブラナ属(Brassica sp.)オイル、カメリナ・サティバ(Camelina
sativa)オイルまたはグリシンマックス(Glycine max)(ダイズ)
オイルである。実施形態では、脂質は、セイヨウアブラナ(Brassica napu
s)オイルまたはカラシナ(Brassica juncea)オイルなどのアブラナ属
(Brassica sp.)オイル、ワタ(Gossypium hirsutum)
オイル、アマ(Linum usitatissimum)オイル、ヘリアンタス属(H
elianthus sp.)オイル、ベニバナ(Carthamus tinctor
ius)オイル、ダイズ(Glycine max)オイル、トウモロコシ(Zea m
ays)オイル、ギニアアブラヤシ(Elaesis guineenis)オイル、ベ
ンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)オイル、アオバナル
ーピン(Lupinus angustifolius)オイル、カメリナサティバ(C
amelina sativa)オイル、クランベアビシニカ(Crambe abys
sinica)オイル、ジャイアントミスカンサス(Miscanthus x gig
anteus)オイル、またはススキ(Miscanthus sinensis)オイ
ルを含むまたはである。さらなる実施形態では、該オイルは、キャノーラオイル、カラシ
ナ(B.juncea)オイル、ダイズ(Glycine max)オイル、カメリナサ
ティバ(Camelina sativa)オイルまたはシロイヌナズナ(Arabid
opsis thaliana)オイルである。別の実施形態では、該オイルは、シロイ
ヌナズナ(A. thaliana)オイル及び/またはカメリナサティバ(C. sa
tiva)オイル以外の植物オイルである。実施形態では、植物オイルは、G.max(
ダイズ)オイル以外のオイルである。実施形態では、該オイルを、例えば、実施例1に記
載の標準条件下に生育した植物から、または標準条件下、畑または温室で生育した植物か
ら得た。
【0035】
さらなる態様では、本発明は、
i)脂質を含む植物部分、好ましくは脂質を含むアブラナ属の種子もしくはカメリナサ
ティバの種子、または微生物細胞を得る工程であって、該脂質がエステル化された形態の
脂肪酸を含み、該脂肪酸がオレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)を含むω6脂
肪酸、α-リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸、及びドコサペンタエン酸(DPA)
を含み、場合により、1つ以上のステアリドン酸(SDA)、エイコサペンタエン酸(E
PA)、及びエイコサテトラエン酸(ETA)を含んでもよく、該植物部分または微生物
部分の該脂質の総脂肪酸含有量におけるDPAのレベルが約7%から35%の間である工
程、及び
ii)該植物部分または微生物細胞から脂質を抽出する工程であって、該抽出脂質の総
脂肪酸含有量におけるDPAのレベルが約7%から35%の間である工程、
を含む、抽出植物脂質または微生物脂質の産生方法を提供する。ある実施形態では、該抽
出脂質の総脂肪酸含有量におけるDPAのレベルが、約7%から20%の間または20.
1%から35%の間である。ある実施形態では、DPAのレベルは、7%から20%の間
、または20.1%から30%の間、好ましくは、20.1%から35%の間、より好ま
しくは、30%から35%の間である。ある実施形態では、該抽出脂質の総脂肪酸含有量
におけるDPAのレベルが、8%から20%の間、または10%から20%の間、より好
ましくは11%から20%の間、または12%から20%の間である。
【0036】
上記態様の実施形態では、本発明は、
i)脂質を含む植物部分、好ましくはアブラナ属の種子もしくはカメリナサティバの種
子、または微生物細胞を得る工程であって、該脂質がエステル化された形態の脂肪酸を含
み、該脂質は、がオレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)を含むω6脂肪酸、α
-リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸及びドコサペンタエン酸(DPA)、並びにス
テアリドン酸(SDA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、及びエイコサテトラエン酸
(ETA)のうち1つ以上を含む脂肪酸組成を有し、(i)該抽出脂質の総脂肪酸含有量
におけるDPAレベルが7%から30%の間または7%から35%の間、好ましくは30
%から35%の間であり、(ii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるパルミチン酸レ
ベルが2%から16%の間であり、(iii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるミリ
スチン酸(C14:0)レベルが6%未満、好ましくは1%未満であり、(iv)該抽出
脂質の総脂肪酸含有量におけるオレイン酸レベルが1%から30%の間であり、(v)該
抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるリノール酸(LA)レベルが4%から35%の間であ
り、(vi)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるα-リノレン酸(ALA)が4%から
40%の間であり、(vii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるエイコサトリエン酸
(ETrA)レベルが4%未満であり、(viii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけ
る総飽和脂肪酸レベルが4%から25%の間であり、(ix)該抽出脂質の総脂肪酸含有
量における総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比が0.05から1の間であり、(x)該脂質
のトリアシルグリセロール(TAG)含有率が少なくとも70%であり、及(xi)びT
AGの形態でエステル化された少なくとも70%のDPAが該TAGのsn-1位または
sn-3位である、並びに
ii)該植物部分から脂質を抽出する工程
を含み、該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるDPAのレベルが約7%から30%の間ま
たは7%から35%の間、好ましくは、30%から35%の間である、抽出植物脂質また
は微生物脂質の産生方法を提供する。好ましくは、TAGの形態でエステル化されたDP
Aの少なくとも81%または少なくとも90%は、該TAGのsn-1位またはsn-3
位である。
【0037】
別の態様では、本発明は、
i)脂質を含む細胞、好ましくは、脂質を含む細胞を含む植物部分または微生物細胞、
より好ましくはアブラナ属の種子またはカメリナサティバの種子を得る工程であって、該
脂質は、エステル化された形態の脂肪酸を含み、該脂肪酸は、ドコサペンタエン酸(DP
A)を含み、トリアシルグリセロール(TAG)の形態でエステル化された少なくとも3
5%のDPAは、該TAGのsn-2位でエステル化されており、及び
ii)該細胞から脂質を抽出する工程
を含み、該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるトリアシルグリセロール(TAG)の形態
でエステル化された少なくとも35%のDPAは、該TAGのsn-2位でエステル化さ
れている、抽出脂質の産生方法を提供する。実施形態では、該方法により産生された抽出
脂質は、(i)オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)を含むω6脂肪酸、α-
リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸の1つ以上または全てを含み、場合により、ステ
アリドン酸(SDA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、及びエイコサテトラエン酸(
ETA)の1つ以上を含んでもよいこと、(ii)少なくとも約40%、少なくとも約4
5%、少なくとも約48%、35%から約60%の間、または35%から約50%の間の
トリアシルグリセロール(TAG)の形態でエステル化されたDPAが該TAGのsn-
2位でエステル化されていること、及び(iii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における
DPAのレベルが約1%から35%の間、または約7%から35%の間または約20.1
%から35%の間であることの1つ以上または全てにより、さらに特徴付けられる。本態
様の実施形態では、該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるDPAのレベルは、約7%、約
8%、約9%、約10%、約12%、約15%、約18%、約20%、約22%、約24
%、約26%、約28%、約30%、約7%から約28%の間、約7%から約25%の間
、約10%から約35%の間、約10%から約30%の間、約10%から約25%の間、
約10%から約22%の間、約14%から約35%の間、約16%から約35%の間、約
16%から約30%の間、約16%から約25%の間、または約16%から約22%の間
である。好ましい実施形態では、該抽出脂質は、(i)及び(ii)、(i)及び(ii
i)または(ii)及び(iii)、より好ましくは、(i)、(ii)及び(iii)
の全てにより特徴付けられる。好ましくは、該抽出脂質は、約2%から16%の間である
該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるパルミチン酸レベル、及び、もし存在する場合、1
%未満である該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるミリスチン酸(C14:0)レベルに
より、さらに特徴付けられる。
【0038】
上記態様の実施形態では、本発明は、
i)脂質を含む細胞、好ましくは、脂質を含む、細胞を含む植物部分または微生物細胞
、より好ましくは、アブラナ属の種子またはカメリナサティバの種子を得る工程であって
、該脂質がエステル化された形態の脂肪酸を含み、該脂肪酸は、ドコサペンタエン酸(D
PA)を含み、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)を含むω6脂肪酸、α-
リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸、並びにステアリドン酸(SDA)、エイコサペ
ンタエン酸(EPA)、及びエイコサテトラエン酸(ETA)のうち1つ以上をさらに含
み、(i)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるパルミチン酸レベルが2%から16%の
間であり、(ii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるミリスチン酸(C14:0)レ
ベルが1%未満であり、(iii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるオレイン酸レベ
ルが1%から30%の間であり、(iv)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるリノール
酸(LA)レベルが4%から35%の間であり、(v)該抽出脂質の総脂肪酸含有量にお
けるα-リノレン酸(ALA)が4%から40%の間であり、(vi)該抽出脂質の総脂
肪酸含有量におけるエイコサトリエン酸(ETrA)レベルが4%未満であり、(vii
)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における総飽和脂肪酸レベルが4%から25%の間であり
、(viii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比が
0.05から1の間であり、(ix)該脂質のトリアシルグリセロール(TAG)含有率
が少なくとも70%であり、及び(x)トリアシルグリセロール(TAG)の形態でエス
テル化された少なくとも35%のDPAが該TAGのsn-2位でエステル化されている
、並びに
ii)該植物部分から脂質を抽出する工程
を含み、該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるトリアシルグリセロール(TAG)の形態
でエステル化された少なくとも35%のDPAは、該TAGのsn-2位でエステル化さ
れている、抽出脂質の産生方法を提供する。
【0039】
植物部分または微生物細胞を得る工程は、該植物部分を産生する植物から植物部分、好
ましくは種子を収穫すること、かかる細胞の培養液から微生物細胞を回収すること、また
は製造業者もしくは供給業者から購入、または輸入により該植物部分もしくは微生物細胞
を得ることを含んでもよい。方法は、植物部分もしくは微生物細胞試料中の脂質、または
抽出脂質の脂肪酸組成を決定する工程を含んでもよい。
【0040】
好ましい実施形態では、本発明の方法により得られた抽出脂質は、該当する場合、本明
細書で定義した通り、例えば、最初の2つの態様に関連した上記定義した通りの1つ以上
の特徴を有する。
【0041】
本発明の上記の態様の実施形態を、以下、さらに詳細に説明する。当業者が理解するよ
うに、上記態様の対応する特徴より広範である、いかなる記載される実施形態もその態様
に適用しない。
【0042】
実施形態では、植物部分は種子、好ましくは油料種子である。かかる種子の例としては
、これに限定されないが、アブラナ属(Brassica sp.)、ワタ(Gossy
pium hirsutum)、アマ(Linum usitatissimum)、ヘ
リアンタス属(Helianthus sp.)、ベニバナ(Carthamus ti
nctorius)、ダイズ(Glycine max)、トウモロコシ(Zea ma
ys)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、モロコシ(S
orghum bicolor)、モロコシ(Sorghum vulgare)、エン
バク(Avena sativa)、トリフォリウム属(Trifolium sp.)
、ギニアアブラヤシ(Elaesis guineenis)、ベンサミアナタバコ(N
icotiana benthamiana)、オオムギ(Hordeum vulga
re)、アオバナルーピン(Lupinus angustifolius)、イネ(O
ryza sativa)、アフリカイネ(Oryza glaberrima)、カメ
リナサティバ(Camelina sativa)、またはクランベアビシニカ(Cra
mbe abyssinica)、好ましくは、アブラナ属(Brassica sp.
)の種子、カメリナサティバ(C. sativa)の種子またはG.max(ダイズ)
の種子、より好ましくは、セイヨウアブラナ(Brassica napus)、カラシ
ナ(B. juncea)またはカメリナサティバ(C. sativa)の種子が挙げ
られる。実施形態では、植物部分は、種子、好ましくは、セイヨウアブラナ(Brass
ica napus)またはカラシナ(Brassica juncea)などのアブラ
ナ属(Brassica sp.)、ワタ(Gossypium hirsutum)、
アマ(Linum usitatissimum)、ヘリアンタス属(Helianth
us sp.)、ベニバナ(Carthamus tinctorius)、ダイズ(G
lycine max)、トウモロコシ(Zea mays)、ギニアアブラヤシ(El
aesis guineenis)、ベンサミアナタバコ(Nicotiana ben
thamiana)、アオバナルーピン(Lupinus angustifolius
)、カメリナサティバ(Camelina sativa)、またはクランベアビシニカ
(Crambe abyssinica)、好ましくは、セイヨウアブラナ(Brass
ica napus)、カラシナ(B juncea)またはカメリナサティバ(C.
sativa)の種子などの油料種子である。実施形態では、種子は、キャノーラ種子
、カラシナ種子、ダイズ種子、カメリナサティバ(Camelina sativa)種
子またはシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)種子である。代
替の実施形態では、該種子は、シロイヌナズナ(A. thaliana)の種子及び/
またはカメリナサティバ(C. sativa)の種子以外の種子である。実施形態では
、種子は、ダイズの種子以外の種子である。実施形態では、植物部分は、アブラナ属(B
rassica sp.)種子である。植物部分は、好ましくは、アブラナ属の種子また
はカメリナサティバの種子である。実施形態では、該種子を、例えば、実施例1に記載の
標準条件下に生育した植物から、または標準条件下、畑または温室で生育した植物から得
た。
【0043】
別の実施形態では、種子は、種子1g当たり、少なくとも約18mg、少なくとも約2
2mg、少なくとも約26mg、約18mgから約100mgの間、約22mgから約7
0mgの間、約80mg、約30mgから約80mgの間、または約24mgから約50
mgの間のDPAを含む。
【0044】
さらなる実施形態では、種子などの植物部分は、酵素の以下のセット;
i)ω3-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エ
ロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
ii)Δ15-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6
-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
iii)Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ
6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
iv)Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュ
ラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-
エロンガーゼ、
v)ω3-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エ
ロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
vi)Δ15-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9
-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
vii)Δ12-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ
9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
viii)Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサ
チュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ
5-エロンガーゼ、
の1つをコードする外来性ポリヌクレオチドを含み、各ポリヌクレオチドは、該植物部分
の細胞内の前記ポリヌクレオチドの発現を誘導可能である1つ以上のプロモーターと作動
可能に結合している。
【0045】
さらなる実施形態では、種子などの植物部分または微生物細胞などの組換え細胞は、酵
素の以下のセット;
i)ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラー
ゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
ii)Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6
-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
iii)Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチ
ュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5
-エロンガーゼ、
iv)ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラ
ーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
v)Δ12-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-
エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
vi)Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュ
ラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5-
エロンガーゼ
の1つをコードする外来性ポリヌクレオチドを含み、各ポリヌクレオチドは、該植物部分
または細胞の細胞内の前記ポリヌクレオチドの発現を誘導可能である1つ以上のプロモー
ターと作動可能に結合している。
【0046】
実施形態では、もし、植物部分または細胞がエステル化された形態の脂肪酸を含む脂質
を含み、該脂肪酸がドコサペンタエン酸(DPA)を含み、トリアシルグリセロール(T
AG)の形態でエステル化された少なくとも35%のDPA及び/またはDHA(もし存
在する場合)が該TAGのsn-2位でエステル化されているならば、種子などの植物部
分または微生物細胞などの組換え細胞は、1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシル
トランスフェラーゼ(LPAAT)をコードする外来性ポリヌクレオチドを含み、該ポリ
ヌクレオチドは、該植物部分の細胞もしくは細胞中のポリヌクレオチドの発現を誘導可能
である1つ以上のプロモーターと作動可能に結合している。さらなる実施形態では、該細
胞は、酵素の以下のセット;
i)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)
、ω3-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロン
ガーゼ、及びΔ5-エロンガーゼ、
ii)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT
)、Δ15-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エ
ロンガーゼ、及びΔ5-エロンガーゼ、
iii)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAA
T)、Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-
エロンガーゼ、及びΔ5-エロンガーゼ、
iv)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT
)、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュラー
ゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロ
ンガーゼ、
v)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)
、ω3-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロン
ガーゼ、及びΔ5-エロンガーゼ、
vi)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT
)、Δ15-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エ
ロンガーゼ、及びΔ5-エロンガーゼ、
vii)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAA
T)、Δ12-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-
エロンガーゼ、及びΔ5-エロンガーゼ、
viii)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPA
AT)、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュ
ラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、及びΔ5
-エロンガーゼ、
の1つをコードする外来性ポリヌクレオチドを含み、各ポリヌクレオチドは、該細胞内の
前記ポリヌクレオチドの発現を誘導可能である1つ以上のプロモーターと作動可能に結合
している。好ましくは、LPAATは、DPA-CoAなどのC22多価不飽和脂肪アシ
ル-CoA基質を使用できる。
【0047】
好ましくは、植物部分、もしくはたとえば種子などのその一部、または微生物細胞は、
Δ4-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドを有しておらず、またはΔ4-デサ
チュラーゼポリペプチドを有していない。
【0048】
実施形態では、Δ12‐デサチュラーゼは、ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15
-デサチュラーゼ活性も有する、すなわち、該活性は、1つのポリペプチドにより与えら
れる。あるいは、Δ12‐デサチュラーゼは、ω3-デサチュラーゼ活性を有さず、かつ
Δ15-デサチュラーゼ活性を有さない、すなわち、Δ12‐デサチュラーゼは、ω3-
デサチュラーゼ活性及び/またはΔ15-デサチュラーゼを有するポリペプチドと別のポ
リペプチドである。
【0049】
さらなる実施形態では、種子などの植物部分または微生物細胞などの組換え細胞は、以
下の特徴;
i)Δ12‐デサチュラーゼが、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくと
も約80%、約60%から約95%の間、約70%から約90%の間、または約75%か
ら約85%の間の効率で、1つ以上の該植物部分の細胞内または組換え細胞内において、
オレイン酸をリノール酸に転換すること、
ii)ω3‐デサチュラーゼが、少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくと
も約85%、約65%から約95%の間、約75%から約91%の間、または約80%か
ら約91%の間の効率で、1つ以上の該植物部分の細胞内または組換え細胞内において、
ω6脂肪酸をω3脂肪酸に転換すること、
iii)Δ6‐デサチュラーゼが、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なく
とも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、約30
%から約70%の間、約35%から約60%の間、または約50%から約70%の間の効
率で、1つ以上の該植物部分の細胞内または組換え細胞内において、ALAをSDAに転
換すること、
iv)Δ6‐デサチュラーゼが、約5%未満、約2.5%未満、約1%未満、約0.1
%から約5%の間、約0.5%から約2.5%の間、または約0.5%から約1%の間の
効率で、1つ以上の該植物部分の細胞内または組換え細胞内において、リノール酸をγ‐
リノレン酸に転換すること、
v)Δ6‐エロンガーゼが、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約
75%、約60%から約95%の間、約70%から約80%の間、または約75%から約
80%の間の効率で、1つ以上の該植物部分の細胞内または組換え細胞内において、SD
AをETAに転換すること、
vi)Δ5‐デサチュラーゼが、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくと
も約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、約60%から約95%の間、約
70%から約95%の間、または約75%から約95%の間の効率で、1つ以上の該植物
部分の細胞内または組換え細胞内において、ETAをEPAに転換すること、
vii)Δ5‐エロンガーゼが、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくと
も約90%、約50%から約90%の間、または約85%から約95%の間の効率で、1
つ以上の該植物部分の細胞内または組換え細胞内において、EPAをDPAに転換するこ
と、
ix)1つ以上の該植物部分の細胞または組換え細胞内において、オレイン酸をDPA
に転換する効率が、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少
なくとも約25%、約20%、約25%、約30%、約10%から約50%の間、約10
%から約30%の間、または約10%から約25%の間、または約20%から約30%の
間であること、
x)1つ以上の該植物部分の細胞内または組換え細胞内において、LAをDPAに転換
する効率が、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約22%、少なくと
も約25%、少なくとも約30%、約25%、約30%、約35%、約15%から約50
%の間、約20%から約40%の間、または約20%から約30%の間であること、
xi)1つ以上の該植物部分の細胞内または組換え細胞内において、ALAをDPAに
転換する効率が、少なくとも約17%、少なくとも約22%、少なくとも約24%、少な
くとも約30%、約30%、約35%、約40%、約17%から約55%の間、約22%
から約35%の間、または約24%から約35%の間であること、
xi)1つ以上の該植物部分の細胞または組換え細胞は、該外来性ポリヌクレオチドを
含まない対応細胞より、少なくとも約25%、少なくとも約30%、約25%から約40
%の間、または約27.5%から約37.5%の間で多いω3脂肪酸を含むこと、
xii)Δ6-デサチュラーゼは、リノール酸(LA)と比較してα-リノレン酸(A
LA)を優先的に不飽和化すること、
xiii)Δ6-エロンガーゼは、Δ9-エロンガーゼ活性も有すること、
xiv)Δ12-デサチュラーゼは、Δ15-デサチュラーゼ活性も有すること、
xv)Δ6-デサチュラーゼは、Δ8-デサチュラーゼ活性も有すること、
xvi)Δ8-デサチュラーゼは、Δ6-デサチュラーゼ活性も有する、またはΔ6-
デサチュラーゼ活性を有しないこと、
xvii)Δ15-デサチュラーゼは、GLAに対するω3-デサチュラーゼ活性も有
すること、
xviii)ω3-デサチュラーゼは、LAに対するΔ15-デサチュラーゼ活性も有
すること、
xix)ω3-デサチュラーゼは、LA及び/またはGLAの両方を不飽和化すること
、
xx)ω3-デサチュラーゼは、LAと比較してGLAを優先的に不飽和化すること、
xxi)1つ以上または全てのデサチュラーゼ、好ましくはΔ6-デサチュラーゼ及び
/またはΔ5-デサチュラーゼは、対応するアシル‐PC基質より、アシル-CoA基質
に対して高い活性を有すること、
xxii)Δ6-デサチュラーゼは、脂肪酸基質として、LAより、ALAに対して高
いΔ6-デサチュラーゼ活性を有すること、
xxiii)Δ6-デサチュラーゼは、脂肪酸基質としてのPCのSn-2位と結合し
たALAに対するより、脂肪酸基質としてのALA-CoAに対して高いΔ6-デサチュ
ラーゼ活性を有すること、
xxiv)Δ6-デサチュラーゼは、LAと比較して、基質としてのALAに対して、
少なくとも約2倍高いΔ6-デサチュラーゼ活性、少なくとも3倍高い活性、少なくとも
4倍高い活性、または少なくとも5倍高い活性を有すること、
xxv)Δ6-デサチュラーゼは、脂肪酸基質としてのPCのsn-2位と結合したA
LAに対するより、脂肪酸基質としてのALA-CoAに対して高い活性を有すること、
xxvi)Δ6-デサチュラーゼは、脂肪酸基質としてのPCのsn-2位に結合した
ALAに対するより、脂肪酸基質としてのALA-CoAに対して、少なくとも約5倍高
いΔ6‐デサチュラーゼ活性または少なくとも10倍高い活性を有すること、
xxvii)デサチュラーゼは、フロントエンドデサチュラーゼであること、及び
xxviii)Δ6‐デサチュラーゼは、ETAに対する検出可能なΔ5‐デサチュラ
ーゼ活性を有しないこと
の1つ以上または全てを有する。
【0050】
さらなる実施形態では、種子、好ましくはアブラナ属の種子またはカメリナサティバの
種子などの植物部分または微生物細胞などの組換え細胞は、以下の特徴の1つ以上または
全てを有する。
i)Δ12-デサチュラーゼは、配列番号4で提供される配列を有するアミノ酸、その
生物活性なフラグメント、または配列番号4と少なくとも50%同一なアミノ酸配列を含
むこと、
ii)ω3-デサチュラーゼは、配列番号6で提供される配列を有するアミノ酸、その
生物活性なフラグメント、または配列番号6と少なくとも50%同一なアミノ酸配列を含
むこと、
iii)Δ6-デサチュラーゼは、配列番号9で提供される配列を有するアミノ酸、そ
の生物活性なフラグメント、または配列番号9と少なくとも50%同一なアミノ酸配列を
含むこと、
iv)Δ6-エロンガーゼは、配列番号16で提供される配列を有するアミノ酸、配列
番号17などのその生物活性なフラグメント、または配列番号16及び/または配列番号
17と少なくとも50%同一なアミノ酸配列を含むこと、
v)Δ5-デサチュラーゼは、配列番号20で提供される配列を有するアミノ酸、その
生物活性なフラグメント、または配列番号20と少なくとも50%同一なアミノ酸配列を
含むこと、及び、
vi)Δ5-エロンガーゼは、配列番号25で提供される配列を有するアミノ酸、その
生物活性なフラグメント、または配列番号25と少なくとも50%同一なアミノ酸配列を
含むこと。
【0051】
実施形態では、種子などの植物部分または微生物細胞などの組換え細胞は、ジアシルグ
リセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)、モノアシルグリセロールアシルトラ
ンスフェラーゼ(MGAT)、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(G
PAT)、1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAA
T)、好ましくは、DPA-CoAなどのC22多価不飽和脂肪アシル-CoA基質を使
用できるLPAAT、アシル-CoA:リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラ
ーゼ(LPCAT)、ホスホリパーゼA2(PLA2)、ホスホリパーゼC(PLC)、
ホスホリパーゼD(PLD)、CDP-コリンジアシルグリセロールコリンホスホトラン
スフェラーゼ(CPT)、ホスファチジルコリンジアシルグリセロールアシルトランスフ
ェラーゼ(PDAT)、ホスファチジルコリン:ジアシルグリセロールコリンホスホトラ
ンスフェラーゼ(PDCT)、アシル-CoAシンターゼ(ACS)、またはその2つ以
上の組合せをコードする外来性ポリヌクレオチドをさらに含む。
【0052】
別の実施形態では、種子などの植物部分または微生物細胞などの組換え細胞は、FAE
1、DGAT、MGAT、GPAT、LPAAT、LPCAT、PLA2、PLC、PL
D、CPT、PDAT、FATBなどのチオエステラーゼ、もしくはΔ12-デサチュラ
ーゼ、またはその2つ以上の組合せから選択される植物部分細胞内の内在性酵素の産生及
び/または活性をダウンレギュレートする導入変異体または外来性ポリヌクレオチドをさ
らに含む
【0053】
さらなる実施形態では、少なくとも1つ、または好ましくは全てのプロモーターは、種
子特異的プロモーターである。実施形態では、少なくとも1つ、または全てのプロモータ
ーを、オイル生合成もしくはオレオシンをコードする遺伝子などの集積遺伝子、またはコ
ンリニンをコードする遺伝子などの種子貯蔵タンパク質遺伝子から得た。
【0054】
別の実施形態では、Δ5-エロンガーゼをコードする外来性ポリヌクレオチドの発現を
誘導するプロモーターは、該プロモーターがΔ12-デサチュラーゼ及びω3-デサチュ
ラーゼをコードする外来性ポリヌクレオチドの発現を誘導する前の微生物細胞などの植物
もしくは組換え細胞の発育種子内のポリヌクレオチドの発現を開始、または発現をピーク
にする。
【0055】
さらなる実施形態では、外来性ポリヌクレオチドは、植物部分の細胞または微生物細胞
などの組換え細胞のゲノムに組み込まれたDNA分子、好ましくは、T-DNA分子内に
共有結合しており、好ましくは、植物部分の細胞または組換え細胞のゲノムに組み込まれ
たかかるDNA分子数が、1以下、2もしくは3以下であり、または2もしくは3である
場合である。
【0056】
さらに別の実施形態では、植物部分は、同じまたは異なるアミノ酸配列を有するΔ6-
デサチュラーゼを各々コードする少なくとも2つの異なる外来性ポリヌクレオチドを含む
。
【0057】
さらなる実施形態では、外来性ポリヌクレオチドを含む植物部分の総オイル含有率は、
該外来性ポリヌクレオチドを含まない対応する植物部分の総オイル含有率の少なくとも約
40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、約50%から
約80%の間、または約80%から約100%の間である。さらなる実施形態では、外来
性ポリヌクレオチドを含む種子は、該外来性ポリヌクレオチドを含まない対応する種子重
量の少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70
%、約50%から約80%の間、または約80%から約100%の間である。
【0058】
別の実施形態では、脂質は、オイルの形態であり、好ましくは、油料種子の種子オイル
であり、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約98重量%、
または約95重量%から約98重量%の間の脂質はトリアシルグリセロール類である。
【0059】
さらなる実施形態では、方法は、総脂肪酸含有率パーセントとして、DPAのレベルを
増加するように脂質を処理することを含む。例えば、該処理は、遊離脂肪酸を生成するた
めのエステル化脂肪酸の加水分解、またはエステル交換反応を含む。例えば、キャノーラ
オイルなどの脂質を、該オイル中の脂肪酸を、メチルまたはエチルエステルなどのアルキ
ルエステルに転換してもよく、それから、DPAの脂質またはオイルが豊富になるように
分取してもよい。実施形態では、かかる処理後の脂質の脂肪酸組成は、少なくとも40%
、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または
少なくとも90%DPAを含む。ある実施形態では、処理後の総脂肪酸含有量におけるD
HAレベルは、2.0%未満または0.5%未満であり、好ましくは、該脂質中に検出さ
れない。
【0060】
脂質、またはたとえば遊離脂肪酸もしくはアルキルエステルなどの脂質を含むオイルも
提供され、本発明の方法を用いて産生される。
【0061】
別の態様では、本発明は、多価不飽和脂肪酸のメチルまたはエチルエステルを産生する
方法を提供し、該方法は、抽出植物脂質中、または抽出過程中に、トリアシルグリセロー
ル類を、それぞれ、メタノールまたはエタノールと反応させることを含み、該抽出植物脂
質は、TAGの形態でエステル化された脂肪酸を含み、該脂肪酸は、オレイン酸、パルミ
チン酸、リノール酸(LA)を含むω6脂肪酸、α-リノレン酸(ALA)を含むω3脂
肪酸、及びドコサペンタエン酸(DPA)を含み、場合により、ステアリドン酸(SDA
)、エイコサペンタエン酸(EPA)、及びエイコサテトラエン酸(ETA)のうち1つ
以上を含んでもよく、該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるDPAレベルは約7%から3
5%の間、好ましくは20.1%から30%の間、または、20.1%から35%の間で
あり、それにより、多価不飽和脂肪酸のメチルまたはエチルエステルを産生する。
【0062】
別の態様では、本発明は、ドコサペンタエン酸(DPA)のメチルまたはエチルエステ
ルの産生方法を提供し、該方法は、それぞれ、メタノールまたはエタノールと抽出植物脂
質中、または抽出処理中にトリアシルグリセロール類(TAG)を反応させることを含み
、該抽出植物脂質はエステル化された形態の脂肪酸を含み、該脂肪酸はドコサペンタエン
酸(DPA)を含み、TAGの形態でエステル化された少なくとも35%のDPAは該T
AGのsn-2位でエステル化されており、それにより、多価不飽和脂肪酸のメチルまた
はエチルエステルを産生する
【0063】
好ましい実施形態では、上記2つの態様の方法で使用される脂質は、本発明の抽出脂質
またはオイルに関連して、本明細書で定義された1つ以上の特徴を有する。
【0064】
別の態様では、本発明は、
a)エステル化された形態の脂肪酸を含む脂質、及び
b)酵素の以下のセット;
i)Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュ
ラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-
エロンガーゼ、
ii)Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチ
ュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5
-エロンガーゼ
iii)ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュラーゼ、Δ6-デサチ
ュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、または
iv)ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュ
ラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ
の1つをコードする外来性ポリヌクレオチド
を含み、
各ポリヌクレオチドが、前記植物の発育種子中の前記ポリヌクレオチドの発現を誘導可
能である1つ以上の種子特異的プロモーター、または前記微生物細胞中の前記ポリヌクレ
オチドの発現を誘導可能である1つ以上の種子特異的プロモーターと作動可能に結合され
ており、前記脂肪酸が、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)を含むω6脂肪
酸、及び場合により、γ-リノレン酸(GLA)、α-リノレン酸(ALA)を含むω3
脂肪酸、ステアリドン酸(SDA)、及びドコサペンタエン酸(DPA)を含み、場合に
よっては、エイコサペンタエン酸(EPA)及び/またはエイコサテトラエン酸(ETA
)を含んでもよく、及び前記種子または微生物細胞の脂質の総脂肪酸含有量におけるDP
Aのレベルが7%から35%の間である、
油料種子植物、もしくは種子などのその部分、好ましくはその種子中に脂質を含むアブラ
ナ属植物またはカメリナサティバ植物、または微生物細胞を提供する。本態様の好ましい
実施形態では、DHAは、種子及び抽出脂質の脂質の総脂肪酸含有物の2%未満、または
0.5%未満のレベルで存在し、より好ましくは、脂質の総脂肪酸含有物中に検出されな
い。
【0065】
別の態様では、本発明は、
a)エステル化された形態の脂肪酸であって、該脂肪酸は、ドコサペンタエン酸(DP
A)を含み、トリアシルグリセロール(TAG)の形態でエステル化された少なくとも3
5%のDPAは、該TAGのsn-2位でエステル化されている該脂肪酸、及び
b)酵素の以下のセットのうち1つをコードする外来性ポリヌクレオチド;
i)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT
)、ω3-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロ
ンガーゼ、及びΔ5-エロンガーゼ、
ii)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAA
T)、Δ15-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-
エロンガーゼ、及びΔ5-エロンガーゼ、
iii)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPA
AT)、Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6
-エロンガーゼ、及びΔ5-エロンガーゼ、
iv)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAA
T)、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュラ
ーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エ
ロンガーゼ、
v)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT
)、ω3-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロ
ンガーゼ、及びΔ5-エロンガーゼ、
vi)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAA
T)、Δ15-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-
エロンガーゼ、及びΔ5-エロンガーゼ、
vii)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPA
AT)、Δ12-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9
-エロンガーゼ、及びΔ5-エロンガーゼ、
viii)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LP
AAT)、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチ
ュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、及びΔ
5-エロンガーゼ、
を含む細胞、好ましくは、油料種子植物などの植物中もしくはそれからの細胞または種
子などのその部分、または好ましくはアブラナ属植物もしくはカメリナサティバ植物とい
った油料植物もしくはその部分、または微生物細胞を提供し、各ポリヌクレオチドが、該
細胞内の前記ポリヌクレオチドの発現を誘導可能である1つ以上のプロモーターと作動可
能に結合している。好ましくは、LPAATは、DPA-CoAなどのC22多価不飽和
脂肪アシル-CoA基質を使用でき、抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるDPAのレベル
は、約1%から35%の間、または、約7%から35%の間、または約20.1%から3
5%の間である。実施形態では、トリアシルグリセロール(TAG)の形態でエステル化
された、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約48%、35%から約
60%の間、または35%から約50%の間のDPAは、TAGのsn-2位でエステル
化されている。
【0066】
上記2つの態様の各々の好ましい実施形態では、Δ15-デサチュラーゼは、真菌のΔ
15-デサチュラーゼであり、ω3-デサチュラーゼは、真菌のω3-デサチュラーゼで
ある。
【0067】
好ましい実施形態では、本発明の油料植物、微生物細胞または細胞は、該当する場合、
本明細書で定義した、例えば、抽出植物脂質、抽出微生物脂質またはその産生方法に関連
した上記定義した通りの1つ以上の特徴を有する。
【0068】
油料種子植物の例としては、これに限定されないが、アブラナ属(Brassica
sp.)、ワタ(Gossypium hirsutum)、アマ(Linum usi
tatissimum)、ヘリアンタス属(Helianthus sp.)、ベニバナ
(Carthamus tinctorius)、ダイズ(Glycine max)、
トウモロコシ(Zea mays)、シロイヌナズナ(Arabidopsis tha
liana)、モロコシ(Sorghum bicolor)、モロコシ(Sorghu
m vulgare)、エンバク(Avena sativa)、トリフォリウム属(T
rifolium sp.)、ギニアアブラヤシ(Elaesis guineenis
)、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)、オオムギ(
Hordeum vulgare)、アオバナルーピン(Lupinus angust
ifolius)、イネ(Oryza sativa)、アフリカイネ(Oryza g
laberrima)、カメリナサティバ(Camelina sativa)、または
クランベアビシニカ(Crambe abyssinica)が挙げられる。実施形態で
は、該植物は、アブラナ属(Brassica sp.)植物、カメリナサティバ(C.
sativa)植物またはグリシンマックス(G. max)(ダイズ)植物である。
実施形態では、該油料種子植物は、セイヨウアブラナ、カラシナ(B.juncea)、
ダイズ(Glycine max)、カメリナサティバ(Camelina sativ
a)またはシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)植物である。
代替の実施形態では、該油料種子植物は、シロイヌナズナ(A. thaliana)及
び/またはカメリナサティバ(C. sativa)以外である。実施形態では、該油料
種子植物は、G.max(ダイズ)以外の植物である。該植物は、好ましくはアブラナ属
またはカメリナサティバである。実施形態では、油料種子植物は、例えば、実施例1に記
載したような標準条件で、畑にある、または畑で生育した、または温室で生育した。
【0069】
実施形態では、本発明の方法で使用される、または本発明の細胞もしくは植物もしくは
その植物部分に存在する1つ以上のデサチュラーゼは、アシル-CoA基質を使用可能で
ある。好ましい実施形態では、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ及びΔ8-
デサチュラーゼは、もし存在するならば、アシル-CoA基質を使用可能であり、好まし
くは、i)Δ6-デサチュラーゼ、及びΔ5-デサチュラーゼまたはii)Δ5-デサチ
ュラーゼ、及びΔ8-デサチュラーゼの各々は、アシル-CoA基質を使用可能である。
実施形態では、Δ12-デサチュラーゼ及び/またはω3-デサチュラーゼは、アシル-
CoA基質を使用可能である。該アシル-CoA基質は、好ましくは、Δ6-デサチュラ
ーゼにはALA-CoA、Δ5-デサチュラーゼにはETA-CoA、そしてΔ8-デサ
チュラーゼにはETrA-CoA、Δ12-デサチュラーゼにはオレオイル-CoA、ま
たはω3-デサチュラーゼにはLA-CoA、GLA-CoA、及びARA-CoAのう
ち1つ以上である。
【0070】
実施形態では、植物の収穫された種子は、種子1グラム当たり少なくとも約28mg、
好ましくは、種子1グラム当たり少なくとも約32mg、種子1グラム当たり少なくとも
約36mg、種子1グラム当たり少なくとも約40mg、より好ましくは、種子1グラム
当たり少なくとも約44mgまたは少なくとも48mg、種子1グラム当たり少なくとも
約80mg、または種子1グラム当たり約30mgから約80mgの間のDPA含有量を
有する。
【0071】
さらなる態様では、本発明は、DPAを含む種子を産生可能であるセイヨウアブラナ(
Brassica napus)、カラシナ(B. juncea)またはカメリナサテ
ィバ(C. sativa)植物を提供し、該植物の成熟した収穫された種子が、種子1
グラム当たり少なくとも約28mg、好ましくは、種子1グラム当たり少なくとも約32
mg、種子1グラム当たり少なくとも約36mg、種子1グラム当たり少なくとも約40
mg、より好ましくは、種子1グラム当たり少なくとも約44mgまたは少なくとも48
mg、種子1グラム当たり少なくとも約80mg、または種子1グラム当たり約30mg
から約80mgの間のDPA含有量を有する。
【0072】
別の態様では、本発明は、本明細書で定義した外来性ポリヌクレオチドを含む本発明の
植物の植物細胞を提供する。
【0073】
以下の特徴:
i)本発明の植物由来であること、
ii)本明細書で定義した脂質を含むこと、または
iii)本発明の方法で使用できること、のうちの1つ以上を有する植物部分、好まし
くは種子、または微生物細胞などの組換え細胞も提供される。
【0074】
さらに別の態様では、本発明は、DPA及び約4重量%から約15重量%の間、好まし
くは、約6重量%から約8重量%の間または約4重量%から約8重量%の間、より好まし
くは、約4重量%から約6重量%の水分を含む成熟して収穫されたセイヨウアブラナ(B
rassica napus)、カラシナ(B. juncea)またはカメリナサティ
バ(Camelina sativa)種子を提供し、該種子のDPA含有量が種子1グ
ラム当たり少なくとも約28mg、好ましくは、種子1グラム当たり少なくとも約32m
g、種子1グラム当たり少なくとも約36mg、種子1グラム当たり少なくとも約40m
g、より好ましくは、種子1グラム当たり少なくとも約44mgまたは種子1グラム当た
り少なくとも約48mg、種子1グラム当たり約80mg、または種子1グラム当たり約
30mgから約80mgの間である。
【0075】
実施形態では、本発明の細胞、本発明の油料種子植物、本発明のセイヨウアブラナ(B
rassica napus)、カラシナ(B. juncea)またはカメリナサティ
バ(Camelina sativa)植物、本発明の植物部分、または本発明の種子を
、本明細書で定義した特徴の1つ以上または全てを含む抽出脂質を産生するために使用で
きる。
【0076】
その上、さらなる態様では、本発明は、本発明の抽出脂質を産生するために使用できる
植物または細胞の産生方法を提供し、該方法は、
a)複数の植物または微生物細胞などの組換え細胞からの種子などの1つ以上の植物部
分または微生物細胞などの組換え細胞により産生された脂質中のDPAのレベルをアッセ
イすることであって、各植物または微生物細胞などの組換え細胞が、酵素の以下のセット
;
i)ω3-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エ
ロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
ii)Δ15-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6
-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
iii)Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ
6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
iv)Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼまたはΔ15-デサチュラーゼ
、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロン
ガーゼ、
v)ω3-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エ
ロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
vi)Δ15-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9
-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
vii)Δ12-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ
9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
viii)Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼまたはΔ15-デサチュラ
ーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5-エ
ロンガーゼ、
ix)ω3-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-
エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
x)Δ15-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-
エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、または、
xi)Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6
-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
の1つをコードする1つ以上の外来性ポリヌクレオチドを含み、
各ポリヌクレオチドが、植物部分または組換え細胞の細胞内の該ポリヌクレオチドの発現
を誘導可能である1つ以上のプロモーターと作動可能に結合する、該アッセイすること、
と
b)1つ以上のその部分の本発明の抽出植物脂質または組換え細胞脂質の産生に使用で
きる複数の植物または組換え細胞から植物または組換え細胞を同定すること、と
c)場合によっては、前記同定植物または組換え細胞、またはそれ由来の種子から後代
植物または組換え細胞を産生すること
とを含む。
【0077】
実施形態では、植物または組換え細胞は、本明細書で定義したLPAATをコードする
外来性ポリヌクレオチドをさらに含む。
【0078】
好ましくは、後代植物は、同定された植物から取り出された少なくとも第二または第三
世代であり、好ましくは、1つ以上のポリヌクレオチドにとってホモ接合である。より好
ましくは、該1つ以上のポリヌクレオチドは、1つの挿入遺伝子座のみにおいて、後代植
物中に存在する。すなわち、本発明は、複数の形質転換候補植物または種子から植物また
はその種子を同定するためのスクリーニング方法として使用できるような方法を提供し、
同定された植物またはその後代植物が好ましくはその種子内で、本発明の脂質を産生する
。かかる植物または後代植物またはその種子は、特に特定のDPAレベルを有する本発明
の脂質を産生する場合に選択され、または本発明の脂質を産生しない場合選択されない。
【0079】
実施形態では、本明細書で定義した微生物細胞、または植物もしくはその部分などの細
胞内に存在する外来性ポリペプチドは、該細胞、植物または種子などの植物部分のゲノム
中に安定に組み込まれる。好ましくは、外来性ポリヌクレオチドは、該ゲノム中の1つの
遺伝子座において、該細胞、植物または種子などの植物部分のゲノム中に安定に組み込ま
れ、好ましくは、挿入にとってホモ接合である。より好ましくは、該植物、植物部分また
は種子は、1つ以上のT-DNA分子以外の外来性ポリヌクレオチドを欠いているという
点でさらに特徴付けられる。すなわち、外来性ベクター配列は、T-DNA配列以外のゲ
ノム中に組み込まれない。
【0080】
実施形態では、工程a)の前に、該方法は、1つ以上の外来性ポリヌクレオチドを、植
物の1つ以上の細胞に導入することを含む。
【0081】
本発明の方法を用いて産生した植物、及びかかる植物の種子も提供する。
【0082】
実施形態では、本発明の植物は、雌雄両方の生殖能力があり、好ましくは、対応する野
生型植物と比較して少なくとも70%である、または好ましくはほぼ同じである雌雄両方
の生殖能力レベルを有する。実施形態では、本発明の植物または本発明の種子から産生さ
れた植物により産生された花粉は、生存性染色での染色により測定したとき、90~10
0%の生存性である。例えば、花粉の生存性を、実施例1に記載のように評価してもよい
。
【0083】
別の態様では、本発明は、種子を産生する方法を提供し、該方法は、
a)好ましくは、少なくとも1000または2000または3000のかかる植物の集
合部分としての耕地または標準栽植密度で植えられた少なくとも1ヘクタールまたは2ヘ
クタールまたは3ヘクタールの領域、あるいは標準条件下温室内で、本発明の植物、また
は本発明の植物部分を産生、もしくは本発明の種子を産生する植物を生育すること、
b)前記1つまたは複数の植物から種子を収穫すること、及び
c)場合によっては、前記種子から脂質を抽出して、好ましくは、少なくとも60kg
または70kgまたは80kgのDPA/ヘクタールの総DPA収率でオイルを産生する
こと
を含む。
【0084】
実施形態では、本発明の植物、植物細胞、植物部分もしくは種子、または組換え細胞は
、次の特徴:
i) そのオイルは、本明細書で定義したものであること、または
ii) 該植物部分または種子または組換え細胞が本発明の方法で使用可能であること
の1つ以上を有する。
【0085】
例えば、種子を、本発明の植物を産生するために使用できる。植物は、例えば、実施例
1に記載したように、標準条件下で、畑または温室で生育してもよい。
【0086】
さらなる態様では、本発明は、本発明の方法を用いて、本発明の細胞、本発明の油料種
子、本発明のアブラナ属(Brassica sp.)、セイヨウアブラナ(Brass
ica napus)、カラシナ(B. juncea)、ダイズ(G. max)また
はカメリナサティバ(Camelina sativa)植物、本発明の植物部分、本発
明の種子、または本発明の植物、植物細胞、植物部分もしくは種子により産生された、ま
たはそれから得られた脂質、またはオイルを提供する。好ましくは、脂質またはオイルを
精製して、核酸(DNA及び/またはRNA)、タンパク質及び/または炭水化物、また
はクロロフィルなどの顔料などの夾雑物を取り除く。脂質またはオイルを精製して、例え
ば、遊離脂肪酸(FFA)またはリン脂質の除去により、TAGの割合を濃縮する
【0087】
実施形態では、脂質またはオイルを、油料種子からオイルを抽出することにより得る。
油料種子のオイルの例としては、これに限定されないが、キャノーラオイル(Brass
ica napus,Brassica rapa ssp)、カラシナオイル(Bra
ssica juncea)、他のブラシカオイル、ヒマワリオイル(Helianth
us annus)、アマニオイル(Linum usitatissimum)、ダイ
ズオイル(Glycine max)、ベニバナオイル(Carthamus tinc
torius)、トウモロコシオイル(Zea mays)、タバコオイル(Nicot
iana tabacum)、ピーナッツオイル(Arachis hypogaea)
、パームオイル、綿実油(Gossypium hirsutum)、ココナッツオイル
(Cocos nucifera)、アボカドオイル(Persea american
a)、オリーブオイル(Olea europaea)、カシューオイル(Anacar
dium occidentale)、マカダミアオイル(Macadamia int
ergrifolia)、アーモンドオイル(Prunus amygdalus)、ま
たはアラビドプシス種子オイル(Arabidopsis thaliana)が挙げら
れる。
【0088】
実施形態では、本発明の、または本発明で使用される細胞(組換え細胞)は、発酵に適
切な細胞などの微生物細胞、好ましくは、重量基準で少なくとも25%のレベルまでトリ
アシルグリセロールを蓄積可能である油性微生物細胞である。好ましい発酵方法は、当技
術分野で周知であるような嫌気性発酵方法である。適切な発酵細胞、通常、微生物は、発
酵可能である、すなわち、グルコースまたはマルトースなどの糖類を、直接または間接的
に所望の脂肪酸に転換できる。発酵する微生物の例としては、酵母などの真菌生物が挙げ
られる。本明細書で使用されるとき、「酵母」は、サッカロミセス属(Saccharo
myces spp.)、サッカロミセス・セレビシア(Saccharomyces
cerevisiae)、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharom
yces carlbergensis)、カンジダ属(Candida spp.)、
クルベロミセス属(Kluveromyces spp.)、ピキア属(Pichia
spp.)、ハンゼヌラ属(Hansenula spp.)、トリコデルマ属(Tri
choderma spp.)、リポミセス・スターキー(Lipomyces sta
rkey)、及び好ましくは、アルカン資化性酵母(Yarrowia lipolyt
ica)が挙げられる。
【0089】
さらなる態様では、本発明は、本発明の方法を用いて、本発明の細胞、本発明の油料種
子、本発明のアブラナ属(Brassica sp.)、セイヨウアブラナ(Brass
ica napus)、カラシナ(B. juncea)、ダイズ(G. max)また
はカメリナサティバ(Camelina sativa)植物、本発明の植物部分、本発
明の種子、または本発明の植物、植物細胞、植物部分もしくは種子により産生された、ま
たはそれから得られた脂肪酸を提供する。好ましくは、脂肪酸は、DPAである。脂肪酸
は、本明細書に記載の脂肪酸組成を有する脂肪酸混合物であってよく、または脂肪酸、好
ましくはDPAが混合物中の脂肪酸含有物の少なくとも40%または少なくとも90%を
含むように濃縮されてもよい。実施形態では、脂肪酸は、エステル化されていない。ある
いは、脂肪酸は、例えば、メチル、エチル、プロピルまたはブチル基になど、エステル化
されている。
【0090】
本発明の種子から得られる、または本発明の植物から得られるシードミール(seed
meal)も提供される。好ましいシードミールとしては、これに限定されないが、アブ
ラナ属(Brassica sp.)、セイヨウアブラナ(Brassica napu
s)、カラシナ(B. juncea)、ダイズ(Glycine. max)シードミ
ールが挙げられる。実施形態では、該シードミールは、本明細書で定義した外来性ポリヌ
クレオチド及び/または遺伝子構築物を含む。好ましい実施形態では、該シードミールは
、シードミールが得られるが、ほとんどの脂質またはオイルの抽出後低レベル(例えば、
2重量%未満)である種子内で産生された脂質またはオイルのいくらかを保持する。該シ
ードミールを、動物用飼料または食料製品の成分として使用してもよい。
【0091】
別の態様では、本発明は、1つ以上の本発明の脂質またはオイル、本発明の脂肪酸、本
発明に記載の細胞、本発明の油料種子植物、本発明のアブラナ属(Brassica s
p.)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)、カラシナ(B. jun
cea)、ダイズ(Glycine. max)またはカメリナサティバ(Cameli
na sativa)植物、本発明の植物部分、本発明の種子、または本発明のシードミ
ールを含む組成物を提供する。実施形態では、該組成物は、医薬品、食物もしくは農業用
途、種子処理化合物、肥料、別の食物もしくは飼料成分、または添加タンパク質もしくは
ビタミン類に適切な担体を含む。
【0092】
1つ以上の本発明の脂質またはオイル、本発明の脂肪酸、本発明に記載の細胞、本発明
の油料種子植物、本発明のアブラナ属(Brassica sp.)、セイヨウアブラナ
(Brassica napus)、カラシナ(B. juncea)、ダイズ(Gly
cine. max)またはカメリナサティバ(Camelina sativa)植物
、本発明の植物部分、本発明の種子、または本発明のシードミール、または本発明の組成
物を含む飼料、化粧品または化学薬品も提供する。好ましい飼料は、本発明の脂質または
オイルを含む乳児用調製粉乳である。
【0093】
別の態様では、本発明は、飼料、好ましくは乳児用調製粉乳の製造方法を提供し、該方
法は、1つ以上の本発明の脂質またはオイル、本発明の脂肪酸、本発明に記載の細胞、本
発明の油料種子植物、本発明のアブラナ属(Brassica sp.)、セイヨウアブ
ラナ(Brassica napus)、カラシナ(B. juncea)、ダイズ(G
lycine. max)またはカメリナサティバ(Camelina sativa)
植物、本発明の植物部分、本発明の種子、または本発明のシードミール、または本発明の
組成物を、少なくとも1つの他の食物成分と混合することを含む。該方法は、配合、料理
、ベーキング、押出、乳化、さもなければ飼料の処方、または飼料の包装、または試料中
の脂質もしくはオイルの量の分析の工程を含んでもよい。
【0094】
別の態様では、本発明は、PUFA、好ましくはDPAから効果を得るだろう病状の治
療または予防方法を提供し、該方法は、対象に、1つ以上の本発明の脂質またはオイル、
本発明の脂肪酸、本発明に記載の細胞、本発明の油料種子植物、本発明のアブラナ属(B
rassica sp.)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)、カラ
シナ(B. juncea)、ダイズ(Glycine. max)またはカメリナサテ
ィバ(Camelina sativa)植物、本発明の植物部分、本発明の種子、また
は本発明のシードミール、本発明の組成物、または本発明の飼料を投与することを含む。
好ましい実施形態では、PUFAを、PUFAのエチルエステルを含む医薬組成物の形態
で投与する。対象は、ヒトまたはヒト以外の動物であり得る。
【0095】
PUFAから効果を得られるだろう病状の例としては、これに限定されないが、血清ト
リグリセリド値上昇、LDLコレステロール値上昇などの血清コレステロール値上昇、不
整脈、血管形成、炎症、喘息、乾癬、骨粗鬆症、腎臓結石、AIDS、多発性硬化症、関
節リウマチ, クローン病、統合失調症、がん、胎児アルコール症候群、注意不足多動性
障害、嚢胞性線維症、フェニルケトン尿症、単極性うつ病、攻撃的な敵意、アドレノロイ
コジストフィー、冠動脈心疾患、高血圧症、糖尿病、肥満症、アルツハイマー病、慢性閉
塞性肺疾患、潰瘍性大腸炎、血管形成術後の再狭窄、湿疹、高血圧、血小板凝集、胃腸出
血、子宮内膜症、月経前緊張症、筋痛性脳脊髄炎、ウイルス性感染後の慢性疲労または眼
疾患が挙げられる。
【0096】
1つ以上の本発明の脂質またはオイル、本発明の脂肪酸、本発明に記載の細胞、本発明
の油料種子植物、本発明のアブラナ属(Brassica sp.)、セイヨウアブラナ
(Brassica napus)、カラシナ(B. juncea)、ダイズ(Gly
cine. max)またはカメリナサティバ(Camelina sativa)植物
、本発明の植物部分、本発明の種子、または本発明のシードミール、本発明の組成物、ま
たは本発明の飼料を、PUFA、好ましくはDPAから効果を得られるだろう病状を治療
用または予防用医薬品製造のための使用も提供される。
【0097】
該医薬品製造は、本明細書に記載の病状の治療のため、本発明のオイルを薬剤的に許容
可能な担体と混合することを含んでもよい。該方法は、オイルを先ず精製し、及び/また
はエステル交換し、及び/または該オイルの分取をしてDPAのレベルを増加することを
含んでもよい。特定の実施形態では、該方法は、キャノーラオイルなどの脂質またはオイ
ルを処理して、オイル中の脂肪酸をメチルまたはエチルなどのアルキル エステルに転換
することを含む。分取または蒸留などのさらなる処理を、脂質またはオイルのDPAを濃
縮するために適用してもよい。好ましい実施形態では、該医薬品は、DPAのエチルエス
テルを含む。さらにより好ましい実施形態では、医薬品中のDPAのエチルエステルのレ
ベルは、30%から50%の間、または少なくとも80%、または少なくとも85%、ま
たは少なくとも90%、または少なくとも約95%である。該医薬品は、医薬品中総脂肪
酸含有率の30%から50%の間、または少なくとも90%などのEPAのエチルエステ
ルをさらに含む。かかる医薬品は、本明細書に記載の病状の治療のため、ヒトまたは動物
対象に投与するのに適切である。
【0098】
別の態様では、本発明は、本発明の種子を得ること、及び得られた種子を金銭利益のた
め取引きすることを含む種子の取引き方法を提供する。
【0099】
実施形態では、種子を得ることは、本発明の植物を栽培すること、及び/または該植物
から種子を収穫することを含む。
【0100】
別の実施形態では、種子を得ることは、該種子を容器に入れること、及び/または該種
子を貯蔵することをさらに含む
【0101】
さらなる実施形態では、種子を得ることは、該種子を異なる場所に輸送することをさら
に含む。
【0102】
さらに別の実施形態では、該方法は、該種子を取り引き後、該種子を異なる場所に輸送
することをさらに含む。
【0103】
さらなる実施形態では、該取り引きを、コンピューターなどの電子的手段を用いて実行
する。
【0104】
その上、さらなる態様では、本発明は、
a)本発明の種子を含む植物の地上部を包む、引き抜く及び/または刈り取ること
b)植物の部分を脱穀及び/または選穀して、植物部分の残部から種子を分離すること
、及び
c)工程b)で分離した種子を篩い分け及び/または選別し、篩い分け及び/または選
別した種子を貯蔵箱に充填し、それにより、種子の箱を製造すること、を含む種子の箱の
製造方法を提供する。
【0105】
実施形態では、関連する場合、本発明の、または本発明に有用な脂質またはオイル、好
ましくは、種子オイルは、実施例のセクション中の表中に提供したものについて脂肪レベ
ルを有する。
【0106】
本明細書中のいかなる実施形態も、特に別段の明記がない限り、いずれもの他の実施形
態に対して、変更すべきところは変更して適用されるべきである。
【0107】
本発明は、例証することのみを目的と意図された、本明細書に記載の特定の実施形態に
より、範囲を限定されない。機能的に均等な製品、組成物及び方法は、本明細書に記載の
ように、明白に、本発明の範囲内である。
【0108】
本明細書を通して、特に別段の明言がない、または文脈上別の意味を必要としない限り
、1つの工程、物質の組成物、工程の群または物質の組成物の群の参照は、1つ及び複数
(すなわち、1つ以上)のこれらの工程、物質の組成物、工程の群または物質の組成物の
群を包含すると解釈すべきである。
【0109】
以下、本発明を、以下の非限定的実施例として、及び添付の図を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【
図2】pJP3416-GA7の左右境界領域間のT-DNA挿入領域のマップ。RBは右境界領域を示し;LBは左境界領域を示し、TERは転写ターミネーター/ポリアデニル化領域を示し、PROはプロモーターを示し;コード領域は矢印上に示され、プロモーター及びターミネーターは矢印の下に示される。Micpu-Δ6Dはミクロモナス・プシーラ(Micromonas pusilla)Δ6-デサチュラーゼ;Pyrco-Δ6Eはピラミモナス・コルダタ(Pyramimonas cordata)Δ6-エロンガーゼ;Pavsa-Δ5Dはパブロバ・サリナ(Pavlova salina)Δ5-デサチュラーゼ;Picpa-ω3Dはピキア・パストリス(Pichia pastoris)ω3-デサチュラーゼ;Pavsa-Δ4Dはパブロバ・サリナ(P. salina)Δ4-デサチュラーゼ;Lackl-Δ12Dはラカンセア・クルイベリ(Lachancea Kluyveri)Δ12-デサチュラーゼ、Pyrco-Δ5Eはピラミモナス・コルダタ(Pyramimonas cordata)Δ5-エロンガーゼを示す。NOSはアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)ノバリン合成転写ターミネーター/ポリアデニル化領域を示し;FP1はセイヨウアブラナ(Brassica napus)短縮化ナピンプロモーターを示し;FAE1はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)FAE1プロモーターを示し;Lectinはダイス(Glycine max)レクチン転写ターミネーター/ポリアデニル化領域;Cnl1及びCnl2はアマ(Linum usitatissimum)コンリニン1またはコンリニン2プロモーターまたはターミネーターを示す。MARはタバコ(Nicotiana tabacum)Rb7マトリックス結合領域を示す。
【
図3】(A)は、環番号及び側鎖番号を伴う、基本的な植物ステロールの構造である。(B)は、一部の植物ステロールの化学構造である。
【
図4】pJP3662の左境界と右境界の間のT-DNA挿入領域の地図である。RBは、右境界を示す。LBは左境界を示す。TERは、転写ターミネーター(transcription terminator)/ポリアデニル化領域(polyadenylation region)。PROは、プロモーター。コード領域は、矢印の上に示され、プロモーター及びターミネーターは、は矢印の下に示される。Micpu-Δ6Dは、ミクロモナス・プシーラ(Micromonas pusilla)のΔ6-デサチュラーゼ。Pyrco-Δ6Eは、ピラミモナス・コルダタ(Pyramimonas cordata)のΔ6-エロンガーゼ。Pavsa-Δ5Dは、パブロバ・サリナ(Pavlova salina)のΔ5-デサチュラーゼ。Picpa-ω3Dは、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)のω3-デサチュラーゼ。Lackl-Δ12Dは、ラカンセア・クルイベリ(Lachancea kluyveri)のΔ12-デサチュラーゼ。Pyrco-Δ5Eは、ピラミモナス・コルダタ(Pyramimonas cordata)のΔ5-エロンガーゼ。NOSは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のノパリン合成酵素転写ターミネーター/ポリアデニル化領域を示す。FP1は、セイヨウアブラナ(Brassica napus)短縮化ナピンプロモーターを示す。FAE1は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)FAE1プロモーターを示す。Lectinは、ダイズ(Glycine max)レクチン転写ターミネーター/ポリアデニル化領域。Cnl1は、アマ(Linum usitatissimum)コンリニン1プロモーターまたはターミネーターを示す。MARはタバコ(Nicotiana tabacum)由来のRb7マトリックス結合領域を示す。
【0111】
配列表のキー
配列番号1-pJP3416-GA7ヌクレオチド配列。
配列番号2-pGA7-mod_Bヌクレオチド配列。
配列番号3-植物のラカンセア・クルイベリ(Lachancea Kluyveri
)Δ12デサチュラーゼの発現のコドン最適化オープンリーディングフレーム。
配列番号4-ラカンセア・クルイベリ(Lachancea Kluyveri)Δ1
2デサチュラーゼ。
配列番号5-植物のピキア・パストリス(Pichia pastoris)ω3デサ
チュラーゼの発現のコドン最適化オープンリーディングフレーム。
配列番号6-ピキア・パストリス(Pichia pastoris)ω3デサチュラ
ーゼ。
配列番号7-ミクロモナス・プシーラ(Micromonas pusilla)Δ6
-デサチュラーゼをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号8-植物のミクロモナス・プシーラ(Micromonas pusilla
)Δ6-デサチュラーゼの発現のコドン最適化オープンリーディングフレーム。
配列番号9-ミクロモナス・プシーラ(Micromonas pusilla)Δ6
-デサチュラーゼ。
配列番号10-オストレオコッカス・ルシマリヌス(Ostreococcus lu
cimarinus)Δ6-デサチュラーゼをコードするオープンリーディングフレーム
。
配列番号11-植物のオストレオコッカス・ルシマリヌス(Ostreococcus
lucimarinus)Δ6-デサチュラーゼの発現のコドン最適化オープンリーデ
ィングフレーム。
配列番号12-オストレオコッカス・ルシマリヌス(Ostreococcus lu
cimarinus)Δ6-デサチュラーゼ。
配列番号13-オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri
)Δ6-デサチュラーゼ。
配列番号14-ピラミモナス・コルダタ(Pyramimonas cordata)
Δ6-エロンガーゼをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号15-植物のピラミモナス・コルダタ(Pyramimonas corda
ta)Δ6-エロンガーゼの発現のコドン最適化オープンリーディングフレーム(3’末
端で短縮化され、機能的エロンガーゼをコードする)。
配列番号16-ピラミモナス・コルダタ(Pyramimonas cordata)
Δ6-デサチュラーゼ。
配列番号17-短縮化ピラミモナス・コルダタ(Pyramimonas corda
ta)Δ6-デサチュラーゼ。
配列番号18-パブロバ・サリナ(Pavlova salina)Δ5-デサチュラ
ーゼをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号19-植物のパブロバ・サリナ(Pavlova salina)Δ5-デサ
チュラーゼの発現のコドン最適化オープンリーディングフレーム。
配列番号20-パブロバ・サリナ(Pavlova salina)Δ5-デサチュラ
ーゼ。
配列番号21-ピラミモナス・コルダタ(Pyramimonas cordata)
Δ5-デサチュラーゼをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号22-ピラミモナス・コルダタ(Pyramimonas cordata)
Δ5-デサチュラーゼ。
配列番号23-ピラミモナス・コルダタ(Pyramimonas cordata)
Δ5-エロンガーゼをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号24-植物のピラミモナス・コルダタ(Pyramimonas corda
ta)Δ5-エロンガーゼの発現のコドン最適化オープンリーディングフレーム。
配列番号25-ピラミモナス・コルダタ(Pyramimonas cordata)
Δ5-エロンガーゼ。
配列番号26-パブロバ・サリナ(Pavlova salina)Δ4-デサチュラ
ーゼをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号27-植物のパブロバ・サリナ(Pavlova salina)Δ4-デサ
チュラーゼの発現のコドン最適化オープンリーディングフレーム。
配列番号28-パブロバ・サリナ(Pavlova salina)Δ4-デサチュラ
ーゼ。
配列番号29-イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)Δ
9-エロンガーゼ。
配列番号30-植物のエミリアニア・ハクスレイ(Emiliania huxley
i)Δ9-エロンガーゼの発現のコドン最適化オープンリーディングフレーム。
配列番号31-エミリアニア・ハクスレイ(Emiliania huxleyi)C
CMP1516Δ9-エロンガーゼ。
配列番号32-パブロバ・サリナ(Pavlova pinguis)Δ9-エロンガ
ーゼをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号33-パブロバ・サリナ(Pavlova pinguis)Δ9-エロンガ
ーゼ。
配列番号34-パブロバ・サリナ(Pavlova salina)Δ9-エロンガー
ゼをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号35-パブロバ・サリナ(Pavlova salina)Δ9-エロンガー
ゼ。
配列番号36-パブロバ・サリナ(Pavlova salina)Δ8-デサチュラ
ーゼをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号37-パブロバ・サリナ(Pavlova salina)Δ8-デサチュラ
ーゼ。
配列番号38-V2ウイルスサプレッサー。
配列番号39-V2ウイルスサプレッサーをコードするオープンリーディングフレーム
。
配列番号40-シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)LPA
AT2。
配列番号41-リムナンテス・アルバ(Limnanthes alba)LPAAT
。
配列番号42-サッカロミセス・セレビシア(Saccharomyces cere
visiae)LPAAT。
配列番号43-ミクロモナス・プシーラ(Micromonas pusilla)L
PAAT。
配列番号44-モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)
LPAAT。
配列番号45-セイヨウアブラナ(Braccisa napus)LPAAT。
配列番号46-セイヨウアブラナ(Brassica napus)LPAAT。
配列番号47-フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora inf
estans)ω3-デサチュラーゼ。
配列番号48-タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseu
donana) ω3-デサチュラーゼ。
配列番号49-ピシリウム・イレグラーレ(Pythium irregulare)
ω3-デサチュラーゼ。
配列番号50~58-オリゴヌクレオチドプライマー/プローブ。
【発明を実施するための形態】
【0112】
一般的方法及び定義
特に、別段の規定がない限り、本明細書で使用する全ての技術及び科学用語は、当業者
(例えば、細胞培養、分子遺伝学、脂肪酸合成、トランスジェニック植物、組換え細胞、
タンパク質化学、及び生化学)により共通に理解されるのと同じ意味を有すると解すべき
である。
【0113】
別段の指示がない限り、本発明に利用するタンパク質、細胞培養、及び免疫技術は当業
者に周知の標準的方法である。かかる技術を、J.Perbal,A Practica
l Guide to Molecular Cloning,John Wiley
and Sons (1984),J.Sambrook et al.,Molecu
lar Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spr
ing Harbour Laboratory Press (1989),T.A.
Brown(editor),Essential Molecular Biolog
y:A Practical Approach,Volumes 1 and 2,I
RL Press (1991),D.M.Glover and B.D..Hame
s (editors),DNA Cloning:A Practical Appr
oach,Volumes 1-4,IRL Press (1995 and 199
6),F.M.Ausubel et al.(editors),Current P
rotocols in Molecular Biology,Greene Pub
.Associates and Wiley-Interscience (1988
,including all updates until present),Ed
Harlow and David Lane (editors),Antibod
ies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harb
our Laboratory,(1988),and J.E.Coligan et
al.(editors),Current Protocols in Immun
ology,John Wiley & Sons (現在までの全最新版を含む)など
の資料中の文献により記載し説明する。
【0114】
「及び/または」という語、例えば、「X及び/またはY」は、「X及びY」または「
XまたはY」のいずれかを意味すると理解すべきであり、両方の意味またはどちらかの意
味を明示的に支持すると解する。
【0115】
本明細書で使用するとき、「約」という語は、そうでないと言及されない限り、指示値
の±10%、より好ましくは、±5%、より好ましくは、±1%を表す
【0116】
本明細書を通して、「含む(comprise)」という語、または「含む(comp
rises)」もしくは「含んでいる(comprising)」などの変化形は、言及
した要素、整数もしくは工程、または要素、整数もしくは工程の群を含むが、他の要素、
整数もしくは工程、または要素、整数もしくは工程の群を除外しないことを意味すると理
解されるだろう。
【0117】
選択された定義
本明細書で使用するとき、「抽出植物脂質」及び「単離植物脂質」という語は、例えば
、植物または種子などのその部分から、例えば、圧搾により抽出された脂質組成物を表す
。該抽出脂質は、例えば、植物種子の圧搾により得られた比較的粗製の組成物、または植
物材料由来の水、核酸、タンパク質及び炭水化物の1つ以上または各々の、もし全部でな
ければ、ほとんどを取り除いたより純粋な組成物であり得る。精製方法の例を以下に記載
する。実施形態では、抽出または単離植物脂質は、組成物の少なくとも約60重量%、少
なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、または少な
くとも約95重量%(w/w)の脂質を含む。脂質は、室温において、固体であっても液
体であってもよく、液体の時、オイルであると見なされる。実施形態では、本発明の抽出
脂質を、別原料(例えば、魚油のDPA)により産生されたDPAなどの別の脂質と配合
していない。実施形態では、抽出後、DPAに対するオレイン酸、DPAに対するパルミ
チン酸、DPAに対するリノレン酸、及び総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の1つ以上または
全ての比を、無処置の種子または細胞中の比と比較したとき、有意に変化しなかった(例
えば、10%または5%以下の変化)。別の実施形態では、抽出植物脂質を、無処置の種
子または細胞中の比と比較したとき、DPAに対するオレイン酸、DPAに対するパルミ
チン酸、DPAに対するリノレン酸、及び総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の1つ以上または
全ての比を変化させ得る水素化または分取などの方法にさらさなかった。本発明の抽出植
物脂質がオイル中に含まれるとき、該オイルは、ステロール類などの非脂肪酸分子をさら
に含んでもよい。
【0118】
本明細書で使用するとき、「抽出植物オイル」及び「単離植物オイル」という語は、抽
出植物脂質または単離植物脂質を含み、室温において液体である物質または組成物を表す
。該オイルは、植物または種子などのその部分から得られる。該抽出または単離オイルは
、例えば、植物種子の圧搾により得られた比較的粗製の組成物、または植物材料由来の水
、核酸、タンパク質及び炭水化物の1つ以上または各々の、もし全部でなければ、ほとん
どを取り除いたより純粋な組成物であり得る。該組成物は、脂質または非脂質であり得る
他の成分を含んでもよい。実施形態では、該オイルは、少なくとも約60重量%、少なく
とも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、または少なくと
も約95重量%(w/w)の抽出植物脂質を含む。実施形態では、本発明の抽出オイルを
、別原料(例えば、魚油のDPA)により産生されたDPAなどの別のオイルと配合して
いない。実施形態では、抽出後、DPAに対するオレイン酸、DPAに対するパルミチン
酸、DPAに対するリノレン酸、及び総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の1つ以上または全て
の比を、無処置の種子または細胞中の比と比較したとき、有意に変化しなかった(例えば
、10%または5%以下の変化)。別の実施形態では、抽出植物オイルを、無処置の種子
または細胞中の比と比較したとき、DPAに対するオレイン酸、DPAに対するパルミチ
ン酸、DPAに対するリノレン酸、及び総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の1つ以上または全
ての比を変化させ得る水素化または分取などの方法にさらさなかった。本発明の抽出植物
オイルは、ステロール類などの非脂肪酸分子を含んでもよい。
【0119】
本明細書で使用するとき、「抽出微生物脂質」または「抽出微生物オイル」などの語は
、主に異なる点が脂質またはオイルの原料であることで、それぞれ、対応する語「抽出植
物脂質」及び「抽出植物オイル」と類似の意味を有する。
【0120】
本明細書で使用するとき、「オイル」は、主に脂質を含み、室温において液体である組
成物である。例えば、本発明のオイルは、好ましくは、少なくとも75重量%、少なくと
も80重量%、少なくとも85重量%または少なくとも90重量%の脂質を含む。通常、
精製オイルは、該オイル中脂質の少なくとも90重量%のトリアシルグリセロール(TA
G)を含む。ジアシルグリセロール(DAG)、遊離脂肪酸(FFA)、リン脂質及びス
テロール類などのオイルの少量成分は、本明細書に記載のように存在し得る。
【0121】
本明細書で使用するとき、「脂肪酸」という語は、飽和あるいは不飽和の長鎖脂肪族末
端をしばしば有するカルボン酸(または有機酸)を表す。通常、脂肪酸は、長さが少なく
とも8個の炭素原子、より好ましくは、長さが少なくとも12個の炭素の炭素-炭素結合
鎖を有する。本発明の好ましい脂肪酸は、18~22個の炭素原子(C18、C20、C
22脂肪酸)、より好ましくは、20~22個の炭素原子(C20、C22)及び最も好
ましくは、22個の炭素原子(C22)の炭素鎖を有する。ほとんどの天然脂肪酸は、そ
の生合成が2個の炭素原子を有するアセテートを取り込むので、偶数の炭素原子を有する
。脂肪酸は、遊離状態(非エステル化)またはトリグリセリド、ジアシルグリセリド、モ
ノアシルグリセリド、アシル-CoA(チオエステル)結合または他結合体の部分などの
エステル化された形態であり得る。脂肪酸は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエ
タノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジル
イノシトールまたはジホスファチジルグリセロール体などのリン脂質としてエステル化さ
れ得る。実施形態では、脂肪酸は、例えば、C20またはC22PUFAのメチルまたは
エチルエステルなどのメチル基またはエチル基とエステル化される。好ましい脂肪酸は、
EPA、またはDPA、またはEPA、DPA及びDHA、またはEPA及びDPAのメ
チルまたはエチルエステルである。
【0122】
「飽和脂肪酸」は、鎖上に二重結合も他の官能基も含まない。「飽和」という語は、全
ての炭素(カルボン酸[-COOH]基は別として)が可能な限り多くの水素を含むとい
う点において、水素を表す。言い換えれば、オメガ(ω)末端は、3個の水素(-CH3
-)を含み、鎖内の各炭素は2個の水素(-CH2-)を含む。
【0123】
「不飽和脂肪酸」は、1つ以上のアルケン官能基が鎖上に存在し、各アルケンが鎖の一
重結合「-CH2-CH2-」部分を二重結合「-CH=CH-」部分(すなわち、別炭
素と二重結合した炭素)により置換されていることを除いて、飽和脂肪酸と類似の形態で
ある。二重結合のどちらかの側と結合している、鎖中の2つの隣接炭素原子は、cisま
たはtrans配置、好ましくは、cis配置になることができる。実施形態では、脂質
またはオイルまたは本発明は、1%未満のtrans配置の炭素-炭素二重結合を有する
脂肪酸(trans脂肪酸)を含む脂肪酸組成物を有する。
【0124】
本明細書で使用するとき、「一価不飽和脂肪酸」という語は、その炭素鎖中少なくとも
12個の炭素原子及び鎖中1個のみのアルケン基(炭素-炭素二重結合)を含む脂肪酸を
表す。本明細書で使用するとき、「多価不飽和脂肪酸」または「PUFA」という語は、
その炭素鎖中少なくとも12個の炭素原子及び鎖中少なくとも2個のアルケン基(炭素-
炭素二重結合)を含む脂肪酸を表す。
【0125】
本明細書で使用するとき、「長鎖多価不飽和脂肪酸」または「LC-PUFA」という
語は、その炭素鎖中少なくとも20個の炭素原子及び鎖中少なくとも2個の炭素-炭素二
重結合を含む脂肪酸を表し、それ故、VLC-PUFAを含む。本明細書で使用するとき
、「超長鎖多価不飽和脂肪酸」または「VLC-PUFA」という語は、その炭素鎖中少
なくとも22個の炭素原子及び鎖中少なくとも3個の炭素-炭素二重結合を含む脂肪酸を
表す。通常、脂肪酸の炭素鎖中の炭素原子数は、分岐していない炭素鎖を表す。もし、炭
素鎖が分岐しているならば、炭素原子数は、側鎖基のものを除外する。1つの実施形態で
は、長鎖多価不飽和脂肪酸は、ω3脂肪酸である、すなわち、該脂肪酸のメチル末端から
3つ目の炭素-炭素結合において不飽和化(炭素-炭素二重結合)を有する。別の実施形
態では、長鎖多価不飽和脂肪酸は、ω6脂肪酸である、すなわち、該脂肪酸のメチル末端
から6つ目の炭素-炭素結合において不飽和化(炭素-炭素二重結合)を有する。さらな
る実施形態では、長鎖多価不飽和脂肪酸は、アラキドン酸(ARA、20:4Δ5、8、
11、14;ω6)、エイコサテトラエン酸(ETA、20:4Δ8、11、14、17
;ω3)、エイコサペンタエン酸(EPA、20:5Δ5、8、11、14、17;ω3
)、ドコサペンタエン酸(DPA、22:5Δ7、10、13、16、19;ω3)、ま
たはドコサヘキサエン酸(DHA、22:6Δ4、7、10、13、16、19;ω3)
から成る群から選択される。LC-PUFAは、ジホモ-γ-リノール酸(DGLA)ま
たはエイコサトリエン酸(ETrA、20:3Δ11、14、17;ω3)であってもよ
い。本発明に従って産生されるLC-PUFAは、上記のいずれかまたは全ての混合物で
あってよく、他のLC-PUFAまたはこれらのLC-PUFAのいずれかの誘導体を含
んでもよいことは、容易に分かるだろう。好ましい実施形態では、ω3脂肪酸は、少なく
ともDPA、またはDPA及びDHA、またはEPA、DPA及びDHA、またはEPA
及びDPAである。実施形態では、DPAは、総脂肪酸組成物の約7%から30%または
35%の間のレベルで存在し、DHAは存在しないか、もし存在するならば、2.0%未
満、好ましくは1.0%未満、より好ましくは0.5%未満のレベルで存在し、最も好ま
しくは、存在しないか検出不可である。これは、細胞内にΔ4-デサチュラーゼが存在し
ないことにより達成され得る。実施形態では、DPAレベルは、EPAレベルより多く、
より好ましくは、EPA及びDHAの各々のレベルより多く、最も好ましくは、EPA及
びDHAを合わせたレベルより多い。この実施形態では、DHAは、存在しなくてよく、
もし存在するならば、総脂肪酸組成物の0.5%未満のレベルで存在する。
【0126】
さらに、本明細書で使用するとき、「長鎖多価不飽和脂肪酸」(LC-PUFA)及び
「超長鎖多価不飽和脂肪酸」(VLC-PUFA)は、遊離状態(非エステル化)または
トリグリセリド(トリアシルグリセロール)、ジアシルグリセリド、モノアシルグリセリ
ド、アシル-CoA結合または他結合体の部分などのエステル化された形態である脂肪酸
を表す。トリグリセリドでは、DPAなどのLC-PUFAまたはVLC-PUFAは、
sn-1/3位またはsn-2位においてエステル化されていてもよく、または該トリグ
リセリドは、LC-PUFA及びVLC-PUFAアシル基から選択される2つまたは3
つのアシル基を含んでもよい。例えば、トリグリセリドは、sn-1位及びsn-3位の
両方において、DPAを含んでもよい。脂肪酸は、ホスファチジルコリン(PC)、ホス
ファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホ
スファチジルイノシトールまたはジホスファチジルグリセロール体などのリン脂質として
エステル化され得る。このように、LC-PUFAは、細胞の脂質または細胞、組織また
は生物から抽出した精製オイルもしくは脂質の形態の混合物として存在し得る。好ましい
実施形態では、本発明は、LC-PUFAを含む少なくとも前記トリアシルグリセロール
を含む、言及したものなどの脂質の他の形態として存在する残部と、少なくとも75%ま
たは少なくとも85%のトリアシルグリセロールを含むオイルを提供する。オイルは、引
き続き、例えば、強塩基を用いて加水分解して遊離脂肪酸を遊離することにより、または
エステル交換、蒸留などにより、さらに精製または処理してもよい。
【0127】
本明細書で使用するとき、「総ω6脂肪酸」または「総ω6脂肪酸含有率」などは、状
況に応じて、該総脂肪酸含有物のパーセントとして表され、抽出脂質、オイル、組換え細
胞、植物部分または種子中のエステル化された、及びエステル化されていない全てのω6
脂肪酸の総和を表す。これらのω6脂肪酸は、(もし存在するならば)LA、GLA、D
GLA、ARA、EDA及びω6-DPAを含み、ω3脂肪酸及び一価不飽和脂肪酸を含
まない。本発明の植物、種子またはオイル中に存在するω6脂肪酸は、全て、多価不飽和
脂肪酸(PUFA)の分類に含まれる。
【0128】
本明細書で使用するとき、「新ω6脂肪酸」または「新ω6脂肪酸含有率」などは、状
況に応じて、該総脂肪酸含有物のパーセントとして表され、抽出脂質、オイル、組換え細
胞、植物部分または種子中のエステル化された、及びエステル化されていない、LAを除
いた全てのω6脂肪酸の総和を表す。これらの新ω6脂肪酸は、細胞中に導入された遺伝
子構築物(外来性ポリヌクレオチド)の発現により、本発明の細胞、植物、植物部分及び
種子内で産生された脂肪酸であり、(もし存在するならば)GLA、DGLA、ARA、
EDA及びω6-DPAを含むが、LA及びω3脂肪酸及び一価不飽和脂肪酸を含まない
。実例となる総ω6脂肪酸含有率及び新ω6脂肪酸含有率を、実施例1に記載のように、
試料中の脂肪酸をFAMEに転換して、GCにより分析することによって決定する。
【0129】
本明細書で使用するとき、「総ω3脂肪酸」または「総ω3脂肪酸含有率」などは、状
況に応じて、該総脂肪酸含有物のパーセントとして表され、抽出脂質、オイル、組換え細
胞、植物部分または種子中のエステル化された、及びエステル化されていない全てのω3
脂肪酸の総和を表す。これらのω3脂肪酸は、(もし存在するならば)ALA、SDA、
ETrA、ETA、EPA、DPA及びDHAを含み、ω6脂肪酸及び一価不飽和脂肪酸
を含まない。本発明の植物、種子またはオイル中に存在するω3脂肪酸は、全て、多価不
飽和脂肪酸(PUFA)の分類に含まれる。
【0130】
本明細書で使用するとき、「新ω3脂肪酸」または「新ω3脂肪酸含有率」などは、状
況に応じて、該総脂肪酸含有物のパーセントとして表され、抽出脂質、オイル、組換え細
胞、植物部分または種子中のエステル化された、及びエステル化されていない、ALAを
除いた全てのω3脂肪酸の総和を表す。これらの新ω3脂肪酸は、細胞中に導入された遺
伝子構築物(外来性ポリヌクレオチド)の発現により、本発明の細胞、植物、植物部分及
び種子内で産生されたω3脂肪酸であり、(もし存在するならば)SDA、EtrA、E
TA、EPA、DPA及びDHAを含むが、ALA及びω6脂肪酸及び一価不飽和脂肪酸
を含まない。実例となる総ω3脂肪酸含有率及び新ω3脂肪酸含有率を、実施例1に記載
のように、試料中の脂肪酸をFAMEに転換して、GCにより分析することによって決定
する。
【0131】
当業者が認識する通り、本発明の方法の工程として「植物部分を得ること」は、該方法
用途の1つ以上の植物部分を得ることを含み得る。植物部分を得ることは、機械的収穫機
を用いて、または植物部分を購入、または供給者から植物部分を受け取るなどの植物から
の植物部分を収穫することを含む。別の例では、植物部分を得ることは、植物部分を収穫
した誰か他の者から植物を取得することであってよい。
【0132】
本発明で使用され得る、デサチュラーゼ、エロンガーゼ並びにアシルトランスフェラー
ゼタンパク質及びそれをコードする遺伝子は、当技術分野で公知のもの、またはそのホモ
ログもしくは誘導体のいずれかである。かかる遺伝子及びコードされたタンパク質サイズ
の例を、表1にリストする。LC-PUFA生合成に関与することが分かっているデサチ
ュラーゼ酵素は全て、いわゆる「フロントエンド」デサチュラーゼの群に属する。好まし
いタンパク質、またはタンパク質の組合せは、 本明細書で提供された配列番号1及び2
の遺伝子構築物によりコードされたものである。
【0133】
本明細書で使用するとき、「フロントエンドデサチュラーゼ」という語は、3つの高度
に保存されたヒスチジンボックスを含む典型的な脂肪酸デサチュラーゼドメインと共に、
N-末端チトクロームb5ドメインの存在により、構造的に特徴付けられる、脂質のアシ
ル鎖のカルボン酸基と既存の不飽和部分との間に二重結合を導入する酵素分類のメンバー
を表す(Napierら、1997)。
【0134】
本発明に使用するためのいずれかのエロンガーゼまたはデサチュラーゼの活性を、例え
ば、植物細胞などの細胞内、または好ましくは、体細胞胚もしくはトランスジェニック植
物内で、該酵素をコードする遺伝子を発現し、該細胞、胚または植物が該酵素を発現しな
い同等の細胞、胚または植物と比較して、LC-PUFAを産生する能力の増強を有する
かどうかを決定することにより試験し得る。
【0135】
1つの実施形態では、本発明に使用するための1つ以上のデサチュラーゼ及び/または
エロンガーゼを、微細藻類から精製できる、すなわち、微細藻類から精製できるポリペプ
チドとアミノ酸配列が同一である。
【0136】
特定の酵素を本明細書で、「二元機能性」と具体的に説明している一方、そうような語が
ないからといって、必ずしも、特定の酵素が具体的に定義された以外の活性を有しないと
意味するわけではない。
【表1】
本明細書で使用するとき、「デサチュラーゼ」という語は、例えば、アシル-CoAエ
ステルなどの通常エステル化された形態の脂肪酸基質のアシル基に炭素-炭素二重結合を
導入可能な酵素を表す。アシル基を、ホスファチジルコリン(PC)などのリン脂質に、
またはアシルキャリアータンパク質(ACP)に、または好ましい実施形態では、CoA
にエステル化してもよい。デサチュラーゼは、それによって、3つの群に通常分類され得
る。1つの実施形態では、デサチュラーゼは、フロントエンドデサチュラーゼである。
【0137】
本明細書で使用するとき、「Δ4-デサチュラーゼ」は、脂肪酸基質のカルボン酸末端
から4番目の炭素-炭素結合に炭素-炭素二重結合を導入するデサチュラーゼ反応を行う
タンパク質を表す。「Δ4-デサチュラーゼ」は、少なくとも、DPAをDHAに転換可
能である。好ましくは、「Δ4-デサチュラーゼ」は、少なくとも、DPA-CoAをD
HA-CoAに転換可能である、すなわち、アシル-CoAデサチュラーゼである。実施
形態では、「Δ4-デサチュラーゼ」は、PCのsn-2位においてエステル化されたD
PAを、DHA-PCに転換可能である。好ましくは、Δ4-デサチュラーゼは、DPA
-PCに対してより、DPA-CoAに対して大きな活性を有する。DPAからDHAを
産生する不飽和化工程は、哺乳類以外の生物内のΔ4-デサチュラーゼにより触媒され、
この酵素をコードする遺伝子は、淡水原生生物種ミドリムシ(Euglena grac
ilis)及び海産種スラウストキトリウム属(Thraustochytrium s
p.)から単離された(Qiuら、2001;Meyerら、2003)。1つの実施形
態では、Δ4-デサチュラーゼは、配列番号28の配列をを有するアミノ酸、またはスラ
ウストキトリウム属(Thraustochytrium sp.)Δ4-デサチュラー
ゼ、その生物活性フラグメント、または配列番号28と少なくとも80%同一なアミノ酸
配列を含む。実施形態では、総抽出可能脂肪酸含有物の5%~35%がDPAであるよう
な高レベルのDPAを産生する、本発明の、または本発明で使用される植物、植物部分(
種子など)または細胞は、機能的Δ4-デサチュラーゼをコードする遺伝子を含まない。
【0138】
本明細書で使用するとき、「Δ5-デサチュラーゼ」は、脂肪酸基質のカルボン酸末端
から5番目の炭素-炭素結合に炭素-炭素二重結合を導入するデサチュラーゼ反応を行う
タンパク質を表す。実施形態では、脂肪酸基質はETAであり、該酵素はEPAを産生す
る。好ましくは、「Δ5-デサチュラーゼ」は、ETA-CoAをEPA-CoAに転換
可能である、すなわち、アシル-CoAデサチュラーゼである。実施形態では、「Δ5-
デサチュラーゼ」は、PCのsn-2位においてエステル化されたETAを転換可能であ
る。好ましくは、Δ5-デサチュラーゼは、ETA-PCに対してより、ETA-CoA
に対して大きな活性を有する。Δ5-デサチュラーゼの例は、Ruiz-Lopezら(
2012)及びPetrieら(2010a)及び本明細書の表1にリストされている。
1つの実施形態では、Δ5-デサチュラーゼは、配列番号20の配列を有するアミノ酸、
その生物活性フラグメント、または配列番号20と少なくとも80%同一なアミノ酸配列
を含む。別の実施形態では、Δ5-デサチュラーゼは、配列番号22の配列を有するアミ
ノ酸、その生物活性フラグメント、または配列番号22と少なくとも53%同一なアミノ
酸配列を含む。別の実施形態では、Δ5-デサチュラーゼは、スラウストキトリウム属(
Thraustochytrium sp.)またはエミリアニア・ハクスレイ(Emi
liania huxleyi)由来である。
【0139】
本明細書で使用するとき、「Δ6-デサチュラーゼ」は、脂肪酸基質のカルボン酸末端
から6番目の炭素-炭素結合に炭素-炭素二重結合を導入するデサチュラーゼ反応を行う
タンパク質を表す。実施形態では、脂肪酸基質はALAであり、該酵素はSDAを産生す
る。好ましくは、「Δ6-デサチュラーゼ」は、ALA-CoAをSDA-CoAに転換
可能である、すなわち、アシル-CoAデサチュラーゼである。実施形態では、「Δ6-
デサチュラーゼ」は、PCのsn-2位においてエステル化されたALAを転換可能であ
る。好ましくは、Δ6-デサチュラーゼは、ALA-PCに対してより、ALA-CoA
に対して大きな活性を有する。Δ6-デサチュラーゼは、Δ5-デサチュラーゼとしての
活性も有し得、ETAに対するΔ5-デサチュラーゼ活性より、大きなALAに対するΔ
6-デサチュラーゼ活性を有する限り、Δ5/Δ6-二元機能性デサチュラーゼと呼ばれ
る。Δ6-デサチュラーゼの例は、Ruiz-Lopezら(2012)及びPetri
eら(2010a)及び本明細書の表1にリストされている。好ましいΔ6-デサチュラ
ーゼは、ミクロモナス・プシラ(Micromonas pusilla)、ピシウム・
イレグラレ(Pythium irregulare)またはオストレオコッカス・タウ
リ(Ostreococcus taurii)由来である。
【0140】
実施形態では、Δ6-デサチュラーゼは、以下:i)脂肪酸基質として、リノール酸(
LA、18:2Δ9,12,,ω6)よりα-リノレン酸(ALA、18:3Δ9,12
,15,ω3)に対して大きなΔ6デサチュラーゼ活性;ii)脂肪酸基質としてPCの
sn-2位と結合したALAに対してより、脂肪酸基質としてALA-CoAに対して大
きなΔ6-デサチュラーゼ活性;及びiii)ETrAに対するΔ8-デサチュラーゼ活
性のうち少なくとも2つ、好ましくは3つ全て、及び好ましくは植物細胞内で、有するこ
とによりさらに特徴付けられる。そのようなΔ6-デサチュラーゼを表2に示す。
【0141】
実施形態では、Δ6-デサチュラーゼは、対応するω6基質より、ω3基質に対して高
い活性を有し、植物細胞などの組換え細胞内の外来性ポリヌクレオチドから発現されると
き、少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、もしくは最も好ましくは少な
くとも50%、または酵母細胞内で発現されるとき、少なくとも35%の効率で、ALA
に対して、オクタデカテトラエン酸(ステアリドン酸、SDA、18:4Δ6,9,12
,15,ω3)を産生する活性をALAに対して有する。1つの実施形態では、Δ6-デ
サチュラーゼは、脂肪酸基質としてLAより、ALAに対して高い活性、例えば、少なく
とも約2倍高いΔ6-デサチュラーゼ活性を有する。別の実施形態では、Δ6-デサチュ
ラーゼは、脂肪酸基質としてPCのsn-2位と結合したALAに対してより、脂肪酸基
質としてALA-CoAに対して高い活性、例えば、少なくとも約5倍高いΔ6-デサチ
ュラーゼ活性または少なくとも約10倍高い活性を有する。さらなる実施形態では、Δ6
-デサチュラーゼは、PCのsn-2位と結合した脂肪酸基質ALA-CoA及びALA
の両方に対して活性を有する。
【表2】
【0142】
1つの実施形態では、Δ6-デサチュラーゼは、ETAに対して、検出可能なΔ5-デ
サチュラーゼ活性を有しない。別の実施形態では、Δ6-デサチュラーゼは、配列番号9
、配列番号12または配列番号13の配列を有するアミノ酸、その生物活性フラグメント
、または配列番号9、配列番号12または配列番号13と少なくとも77%同一であるア
ミノ酸配列を含む。別の実施形態では、Δ6-デサチュラーゼは、配列番号12または配
列番号13の配列を有するアミノ酸、その生物活性フラグメント、または配列番号12ま
たは配列番号13の1つまたは両方と少なくとも67%同一であるアミノ酸配列を含む。
Δ6-デサチュラーゼは、Δ8-デサチュラーゼ活性も有し得る。
【0143】
本明細書で使用するとき、「Δ8-デサチュラーゼ」は、脂肪酸基質のカルボン酸末端
から8番目の炭素-炭素結合に炭素-炭素二重結合を導入するデサチュラーゼ反応を行う
タンパク質を表す。Δ8-デサチュラーゼは、少なくとも、ETrAをETAに転換可能
である。好ましくは、Δ8-デサチュラーゼは、ETrA-CoAをETA-CoAに転
換可能である、すなわち、アシル-CoAデサチュラーゼである。実施形態では、Δ8-
デサチュラーゼは、PCのsn-2位においてエステル化されたETrAを転換可能であ
る。好ましくは、Δ8-デサチュラーゼは、EtrA-PCに対してより、ETrA-C
oAに対して大きな活性を有する。Δ8-デサチュラーゼは、Δ6-デサチュラーゼとし
ての活性も有し得、ALAに対するΔ6-デサチュラーゼ活性より、大きなETrAに対
するΔ8-デサチュラーゼ活性を有する限り、Δ6/Δ8二元機能性デサチュラーゼと呼
ばれる。Δ8-デサチュラーゼの例を、表1にリストする。1つ実施形態では、Δ8-デ
サチュラーゼは、配列番号37の配列を有するアミノ酸、その生物活性フラグメント、ま
たは配列番号37と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0144】
本明細書で使用するとき、「ω3-デサチュラーゼ」は、脂肪酸基質のメチル末端から
3番目の炭素-炭素結合に炭素-炭素二重結合を導入するデサチュラーゼ反応を行うタン
パク質を表す。従って、ω3-デサチュラーゼは、LAをALAに、GLAをSDA(全
てC18脂肪酸)、またはDGLAをETAに、及び/またはARAをEPA(C20脂
肪酸)に転換し得る。いくつかのω3-デサチュラーゼ(グループI)は、植物及びシア
ノバクテリアω3-デサチュラーゼなどのC18基質に対してのみ活性を有する。そのよ
うなω3-デサチュラーゼは、Δ15-デサチュラーゼでもある。他のω3-デサチュラ
ーゼは、C18基質に対して活性を有しない(グループII)または活性有して(グルー
プIII)、C20基質に対する活性を有する。そのようなω3-デサチュラーゼは、Δ
17-デサチュラーゼでもある。好ましいω3-デサチュラーゼは、ピキア・パストリス
(Pichia pastoris)ω3-デサチュラーゼ(配列番号6)など、LAを
ALAに、GLAをSDAに、DGLAをETAに、及びARAをEPAに転換するグル
ープIII型である。ω3-デサチュラーゼの例としては、Pereiraら(2004
a)(サプロレグニア・ディクリナ(Saprolegnia diclina)ω3-
デサチュラーゼ、グループII)、Horiguchiら(1998)、Berberi
chら(1998)及びSpychallaら(1997)(カエノラブディティス・エ
レガンス(C.elegans)ω3-デサチュラーゼ、グループIII)により記載さ
れたものが挙げられる。好ましい実施形態では、ω3-デサチュラーゼは、真菌ω3-デ
サチュラーゼである。本明細書で使用するとき、「真菌ω3-デサチュラーゼ」は、卵菌
起源、またはアミノ酸配列が少なくとも95%同一であるその変異体を含む真菌起源由来
のω3-デサチュラーゼを表す。多数のω3-デサチュラーゼをコードする遺伝子は、例
えば、フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestan
s)(受託番号CAJ30870、WO2005083053;配列番号47)、サプロ
レグニア・ディクリナ(Saprolegnia diclina)(受託番号AAR2
0444、Pereiraら、2004a及びUS7211656)、ピシウム・イレグ
ラレ(Pythium irregulare)(WO2008022963、グループ
II;配列番号49)、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpi
na)(Sakuradaniら、2005;受託番号BAD91495;WO2006
019192)、タラッシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pse
udonana)(Armbrustら、2004;受託番号XP_002291057
;WO2005012316、配列番号48)、ラカンセア・クルイベリ(Lachan
cea kluyveri)(サッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyc
es kluyveri)としても公知;Ouraら、2004;受託番号AB1186
63)など、真菌起源から単離された。Xueら(2012)は、C20基質を好んで、
ω6脂肪酸基質を、対応するω3脂肪酸に効率的に転換できる卵菌ピシウム・アファニデ
ルマータム(Pythium aphanidermatum)、フィトフトラ・ソジャ
エ(Phytophthora sojae)、及びフィトフトラ・ラモルム(Phyt
ophthora ramorum)由来のω3-デサチュラーゼを記載しており、すな
わち、それらは、Δ15-デサチュラーゼ活性より、強力なΔ17-デサチュラーゼ活性
を有した。これらの酵素は、Δ12-デサチュラーゼ活性がないが、基質として、アシル
-CoA及びリン脂質画分の両方の脂肪酸を使用できる。
【0145】
より好ましい実施形態では、真菌ω3-デサチュラーゼは、ピキア・パストリス(Pi
chia pastoris)ω3-デサチュラーゼ/Δ15-デサチュラーゼ(Zha
ngら、2008;受託番号EF116884;配列番号6)、または少なくとも95%
同一であるポリペプチドである。
【0146】
実施形態では、ω3-デサチュラーゼは、ARAからEPA、DGLAからETA、G
LAからSDA、ARAからEPAとDGLAからETAの両方、ARAからEPAとG
LAからSDAの両方、またはこれら3つ全てのうち1つの転換を少なくとも可能である
。
【0147】
1つの実施形態では、ω3-デサチュラーゼは、少なくとも3つの炭素-炭素二重結合
を有するC20脂肪酸、好ましくはARAに対するΔ17-デサチュラーゼ活性を有する
。別の実施形態では、ω3-デサチュラーゼは、3つの炭素-炭素二重結合を有するC1
8脂肪酸、好ましくはGLAに対するΔ15-デサチュラーゼ活性を有する。好ましくは
、両方の活性が存在する。
【0148】
本明細書で使用するとき、「Δ12-デサチュラーゼ」は、脂肪酸基質のカルボン酸末
端から12番目の炭素-炭素結合に炭素-炭素二重結合を導入するデサチュラーゼ反応を
行うタンパク質を表す。Δ12-デサチュラーゼは、通常、オレオイル-ホスファチジル
コリンまたはオレオイル-CoAのいずれかを、それぞれ、リノレオイル-ホスファチジ
ルコリン(18:1-PC)またはリノレオイル-CoA(18:1-CoA)に転換す
る。PC結合基質を使用するサブクラスは、リン脂質依存性Δ12-デサチュラーゼと呼
ばれ、後者のサブクラスは、アシル-CoA依存性Δ12-デサチュラーゼと呼ばれる。
植物及び真菌Δ12-デサチュラーゼは、概して、前者のサブクラスであり、一方、動物
Δ12-デサチュラーゼは、後者のサブクラスであり、例えば、Zhouら(2008)
による、昆虫からクローンした遺伝子によりコードされたΔ12-デサチュラーゼがある
。多くの他のΔ12-デサチュラーゼ配列を、配列データベースの検索により容易に同定
できる。
【0149】
本明細書で使用するとき、「Δ15-デサチュラーゼ」は、脂肪酸基質のカルボン酸末
端から15番目の炭素-炭素結合に炭素-炭素二重結合を導入するデサチュラーゼ反応を
行うタンパク質を表す。Δ15-デサチュラーゼをコードする多数の遺伝子は、植物及び
真菌種からクローンされた。例えば、US5952544は、植物Δ15-デサチュラー
ゼをコードする核酸について記載している(FAD3)。これらの酵素は、植物Δ15-
デサチュラーゼの特徴であったアミノ酸モチーフを含む。WO200114538は、ダ
イズFAD3をコードする遺伝子について記載している。多くの他のΔ15-デサチュラ
ーゼ配列を、配列データベースの検索により容易に同定できる。
【0150】
本明細書で使用するとき、「Δ17-デサチュラーゼ」は、脂肪酸基質のカルボン酸末
端から17番目の炭素-炭素結合に炭素-炭素二重結合を導入するデサチュラーゼ反応を
行うタンパク質を表す。Δ17-デサチュラーゼは、もし、C20基質に作用してω3結
合に不飽和化を導入するならば、ω3-デサチュラーゼとも見なされる。
【0151】
好ましい実施形態では、Δ12-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュラーゼ
は、真菌Δ12-デサチュラーゼまたは真菌Δ15-デサチュラーゼである。本明細書で
使用するとき、「真菌Δ12-デサチュラーゼ」または「真菌Δ15-デサチュラーゼ」
は、卵菌起源を含む真菌起源、またはそのアミノ酸配列が少なくとも95%同一である変
異体由来であるΔ12-デサチュラーゼまたはΔ15-デサチュラーゼを表す。多数のデ
サチュラーゼをコードする遺伝子は、真菌起源から単離された。US7211656は、
サプロレグニア・ディクリナ(Saprolegnia diclina)のΔ12-デ
サチュラーゼについて記載している。WO2009016202は、Helobdell
a robusta、Laccaria bicolor、Lottia gigant
ea、Microcoleus chthonoplastes、Monosiga b
revicollis、Mycosphaerella fijiensis、Myco
spaerella graminicola、Naegleria gruben、N
ectria haematococca、Nematostella vectens
is、Phycomyces blakesleeanus、Trichoderma
resii、Physcomitrella patens、Postia place
nta、Selaginella moellendorffii及びMicrodoc
hium nivaleの真菌デサチュラーゼについて記載している。WO2005/0
12316は、Thalassiosira pseudonana及び他の真菌のΔ1
2-デサチュラーゼについて記載している。WO2003/099216は、Neuro
spora crassa、Aspergillus nidulans、Botryt
is cinerea及びMortierella alpinaから単離された真菌Δ
12-デサチュラーゼ及びΔ15-デサチュラーゼをコードする遺伝子について記載して
いる。WO2007133425は、Saccharomyces kluyveri、
Mortierella alpina、Aspergillus nidulans、
Neurospora crassa、Fusarium graminearum、F
usarium moniliforme及びMagnaporthe griseaか
ら単離された真菌Δ15-デサチュラーゼについて記載している。好ましいΔ12-デサ
チュラーゼは、Phytophthora sojae由来のものである(Ruiz-L
opezら、2012)。
【0152】
真菌Δ12-デサチュラーゼ、及び真菌Δ15-デサチュラーゼの別のサブクラスは、
二元機能性真菌Δ12/Δ15-デサチュラーゼである。これらをコードする遺伝子は、
Fusarium monoliforme(受託番号DQ272516、Damude
ら、2006)、アカントアメーバ・カステラーニ(Acanthamoeba cas
tellanii)(受託番号EF017656、Sayanovaら、2006)、パ
ーキンサス・マリヌス(Perkinsus marinus)(WO20070425
10)、クラビセプス・プルプレア(Claviceps purpurea)(受託番
号EF536898、Meesapyodsukら、2007)及びコプリナス・シネレ
ウス(Coprinus cinereus)(受託番号AF269266、Zhang
ら、2007)からクローンされた。
【0153】
別の実施形態では、ω3-デサチュラーゼは、少なくともいくらかの活性を有し、好ま
しくは、対応するアシル-PC基質より、アシル-CoA基質に対して大きな活性を有す
る。本明細書で使用するとき、「対応するアシル-PC基質」は、脂肪酸が該アシル-C
oA基質中と同じ脂肪酸であるホスファチジルコリン(PC)のsn-2位においてエス
テル化された脂肪酸を表す。例えば、アシル-CoA基質は、ARA-CoAであってよ
く、対応するアシル-PC基質はsn-2ARA-PCである。実施形態では、活性は、
少なくとも2倍大きい。好ましくは、ω3-デサチュラーゼは、アシル-CoA基質とそ
の対応するアシル-PC基質との両方に対して少なくともいくらかの活性を有し、C18
とC20基質の両方に対して活性を有する。そのようなω3-デサチュラーゼの例は、上
記クローンされた真菌デサチュラーゼの中で公知である。
【0154】
さらなる実施形態では、ω3-デサチュラーゼは、配列番号6の配列を有するアミノ酸
、その生物活性フラグメント、または配列番号6と少なくとも60%同一である、好まし
くは、配列番号6と少なくとも90%または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を
含む。
【0155】
その上、さらになる実施形態では、本発明で使用するためのデサチュラーゼは、対応す
るアシル-PC基質より、アシル-CoA基質に対して大きな活性を有する。別の実施形
態では、本発明で使用するためのデサチュラーゼは、対応するアシル-CoA基質より、
アシル-PC基質に対して大きな活性を有するが、両方の基質に対していくらかの活性を
有する。上記のように、「対応するアシル-PC基質」は、脂肪酸が該アシル-CoA基
質中と同じ脂肪酸であるホスファチジルコリン(PC)のsn-2位においてエステル化
された脂肪酸を表す。実施形態では、該より大きな活性は、少なくとも2倍の大きさであ
る。実施形態では、デサチュラーゼは、Δ5もしくはΔ6-デサチュラーゼ、またはω3
-デサチュラーゼであり、この例は、これに限定されないが、表2にリストしたものであ
る。デサチュラーゼがどの基質に対して作用するか、例えば、アシル-CoAまたはアシ
ル-PC基質についてテストするため、Domergueら(2003及び2005)に
記載の酵母細胞内で、アッセイを実行できる。デサチュラーゼと一緒に発現される際、エ
ロンガーゼが該デサチュラーゼの産生の伸長を触媒する場合に、該エロンガーゼが少なく
とも約90%の植物細胞内酵素転換効率を有するとき、該デサチュラーゼに対するアシル
-CoA基質の能力も推測できる。これの基づき、GA7構築物(実施例2、
図2及び配
列番号1を参照のこと)及びその変異体(実施例3)から発現されたΔ5-デサチュラー
ゼ及びΔ4-デサチュラーゼは、それらのそれぞれのアシル-CoA基質、ETA-Co
A及びDPA-CoAを不飽和化可能である。
【0156】
エロンガーゼ
脂肪酸伸長が4工程:縮合反応、還元反応、脱水反応及び第二還元反応から成ることは
生化学的証拠が示唆している。本発明に関連して、「エロンガーゼ」は、適切な生理条件
下、伸長複合体の他のメンバーの存在で、縮合工程を触媒するポリペプチドを表す。伸長
タンパク質複合体の縮合成分(「エロンガーゼ」)のみの細胞内非相同発現または相同的
発現は、それぞれのアシル鎖の伸長に必要であることが分かっている。このように、導入
されたエロンガーゼは、トランスジェニック宿主から還元及び脱水活性を首尾良く補充で
き、アシル伸長を上手く実行する。脂肪酸基質の鎖長及び不飽和度に対する伸長反応の特
異性は、縮合成分に属すると考えられる。この成分は、伸長反応に律速であるとも考えら
れる。
【0157】
本明細書で使用するとき、「Δ5-エロンガーゼ」は、EPAをDPAに少なくとも転
換可能である。Δ5-エロンガーゼの例としては、WO2005/103253に開示さ
れたものが挙げられる。1つの実施形態では、Δ5-エロンガーゼは、EPAに対して、
少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%
、最も好ましくは少なくとも80%または90%の効率でDPAを産生する活性を有する
。さらなる実施形態では、Δ5-エロンガーゼは、配列番号25のアミノ酸配列、その生
物活性フラグメント、または配列番号25と少なくとも47%同一であるアミノ酸配列を
含む。さらなる実施形態では、Δ6-エロンガーゼは、オストレオコッカス・タウリ(O
streococcus taurii)またはオストレオコッカス ・ルシマリヌス(
Ostreococcus lucimarinus)由来である(US2010/08
8776)。
【0158】
本明細書で使用するとき、「Δ6-エロンガーゼ」は、SDAをETAに少なくとも転
換可能である。Δ6-エロンガーゼの例としては、表1にリストしたものが挙げられる。
1つの実施形態では、Δ6-エロンガーゼは、配列番号16の配列を有するアミノ酸、そ
の生物活性フラグメント(配列番号17のフラグメントなど)、または配列番号16また
は配列番号17の1つまたは両方と少なくとも55%同一であるアミノ酸配列を含む。実
施形態では、Δ6-エロンガーゼは、フィスコミトレラ・パテンス(Physcomit
rella patens)(Zankら、2002;受託番号AF428243)また
はThalassiosira pseudonana(Ruiz-Lopezら、20
12)由来である。
【0159】
本明細書で使用するとき、「Δ9-エロンガーゼ」は、ALAをETrAに少なくとも
転換可能である。Δ9-エロンガーゼの例としては、表1にリストしたものが挙げられる
。1つの実施形態では、Δ9-エロンガーゼは、配列番号29の配列を有するアミノ酸、
その生物活性フラグメント、または配列番号29と少なくとも80%同一であるアミノ酸
配列を含む。別の実施形態では、Δ9-エロンガーゼは、配列番号31の配列を有するア
ミノ酸、その生物活性フラグメント、または配列番号31と少なくとも81%同一である
アミノ酸配列を含む。別の実施形態では、Δ9-エロンガーゼは、配列番号33の配列を
有するアミノ酸、その生物活性フラグメント、または配列番号33と少なくとも50%同
一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、Δ9-エロンガーゼは、配列番号35
の配列を有するアミノ酸、その生物活性フラグメント、または配列番号35と少なくとも
50%同一であるアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、Δ9-エロンガーゼは、
対応するω3基質より、ω6基質に対して大きな活性を有する、またはその逆である。
【0160】
本明細書で使用するとき、「対応するω3基質より、ω6基質に対して大きな活性を有
する」という語は、ω3デサチュラーゼの作用と異なる基質に対する酵素の相対的作用を
表す。好ましく、ω6基質はLAであり、ω3基質はALAである。
【0161】
Δ6-エロンガーゼ及びΔ9-エロンガーゼ活性を有するエロンガーゼは、少なくとも
(i)SDAをETAに転換、及び(ii)ALAをETrAに転換可能であり、Δ9-
エロンガーゼ活性より大きなΔ6-エロンガーゼ活性を有する。1つの実施形態では、エ
ロンガーゼは、SDAに対して、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%で
あるETAを産生する転換効率、及び/またはALAに対して、少なくとも6%、より好
ましくは少なくとも9%であるETrAを産生する転換効率を有する。別の実施形態では
、エロンガーゼは、Δ9-エロンガーゼ活性より、少なくとも約6.5倍大きなΔ6-エ
ロンガーゼ活性を有する。さらなる実施形態では、エロンガーゼは、検出可能なΔ5-エ
ロンガーゼ活性を有しない。
【0162】
他の酵素
微生物細胞などの組換え細胞、またはトランスジェニック植物もしくはその部分に導入
された導入遺伝子は、LPAATもコードし得る。本明細書で使用するとき、リゾホスフ
ァチジン酸アシルトランスフェラーゼまたはアシル-CoA-リゾホスファチジン酸アシ
ルトランスフェラーゼとも呼ばれる「1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトラ
ンスフェラーゼ」(LPAAT)という語は、sn-1-アシル-グリセロール-3-リ
ン酸(sn-1G-3-P)を、sn-2位でアシル化してホスファチジン酸(PA)を
生成するタンパク質を表す。従って、「1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルト
ランスフェラーゼ活性」という語は、sn-2位において、sn-1 G-3-Pをアシ
ル化してPA(EC2.3.1.51)を産生することを表す。好ましいLPAATは、
基質として多価不飽和C22アシル-CoAを使用して多価不飽和C22アシル基をLP
Aのsn-2位に転移してPAを生成することができるものである。実施形態では、多価
不飽和C22アシル-CoAは、DPA-CoAである。そのようなLPAATを実施例
6に例示しており、そこに記載のように試験できる。実施形態では、本発明の有用なLP
AATは、配列番号40~46のいずれか1つの配列を有するアミノ酸、その生物活性フ
ラグメント、またはいずれか1つ以上の配列番号40~46と少なくとも40%同一であ
るアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、LPAATは、配列番号44のいずれか1つ
の配列を有するアミノ酸を有しない。好ましい実施形態では、C22多価不飽和脂肪アシ
ル-CoA基質、好ましくは、DPA-CoAを使用できる、本発明に有用なLPAAT
は、配列番号41、42及び44のいずれか1つの配列を有するアミノ酸、その生物活性
フラグメント、またはいずれか1つ以上の配列番号41、42及び44と少なくとも40
%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、C22多価不飽和脂肪アシル
-CoA基質、好ましくは、DPA-CoAを使用できる、本発明に有用なLPAATは
、配列番号41または42のいずれか1つの配列を有するアミノ酸、その生物活性フラグ
メント、またはいずれか1つ以上の配列番号41または42と少なくとも40%同一であ
るアミノ酸配列を含む。実施形態では、LPAATは、好ましくは、そのアミノ酸配列が
配列番号44で記載されるモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alp
ina)LPAAT、または基質としてDPA-CoAを使用して、DPAをLPAに転
移し、sn-2位においてDPAを有するPAを生成できる別のLPAATである。
【0163】
組換え細胞、トランスジェニック細胞、トランスジェニック植物もしくはその部分に導
入された導入遺伝子は、DGATもコードし得る。本明細書で使用するとき、「ジアシル
グリセロールアシルトランスフェラーゼ」(EC 2.3.1.20;DGAT)という
語は、脂肪アシル基を、アシル-CoAからジアシルグリセロール基質に転移してトリア
シルグリセロールを産生するタンパク質を表す。従って、「ジアシルグリセロールアシル
トランスフェラーゼ活性」という語は、アシル-CoAからジアシルグリセロールへ転移
してトリアシルグリセロールを産生することを表す。それぞれ、DGAT1、DGAT2
及びDGAT3と呼ばれる3つの既知タイプのDGATがある。DGAT1ポリペプチド
は、通常、10個の膜貫通型ドメインを有し、DGAT2は、通常、2個の膜貫通型ドメ
インを有し、一方、DGAT3は、通常、可溶性である。DGAT1ポリペプチドの例と
しては、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus
)(受託番号XP_755172)、シロイヌナズナ(Arabidopsis tha
liana)(CAB44774)、トウゴマ(Ricinus communis)(
AAR11479)、シナアブラギリ(Vernicia fordii)(ABC94
472)、ベルノニア・ガラメンシス(Vernonia galamensis)(A
BV21945、ABV21946)、ニシキギ(Euonymus alatus)(
AAV31083)、線虫(Caenorhabditis elegans)(AAF
82410)、ドブネズミ(Rattus norvegicus)(NP_44588
9)、ホモサピエンス(Homo sapiens)(NP_036211)、並びにそ
の変異体及び/または突然変異体のDGAT1遺伝子によりコードされたポリペプチドが
挙げられる。DGAT2ポリペプチドの例としては、シロイヌナズナ(Arabidop
sis thaliana)(受託番号NP_566952)、トウゴマ(Ricinu
s communis)(AAY16324)、シナアブラギリ(Vernicia f
ordii)(ABC94474)、モルティエレラ・ラマニアナ(Mortierel
la ramanniana)(AAK84179)、ホモサピエンス(Homo sa
piens)(Q96PD7、Q58HT5)、ウシ(Bos taurus)(Q70
VD8)、ハツカネズミ(Mus musculus)(AAK84175)、ミクロモ
ナス属 (Micromonas)CCMP1545、並びにその変異体及び/または突
然変異体のDGAT2遺伝子によりコードされたポリペプチドが挙げられる。DGAT3
ポリペプチドの例としては、ピーナッツ(Arachis hypogaea、Saha
ら、2006)並びにその変異体及び/または突然変異体のDGAT3遺伝子によりコー
ドされたポリペプチドが挙げられる。
【0164】
ポリペプチド/ペプチド
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という語は、概して、互換的に使用される。
【0165】
ポリペプチドまたはポリペプチドの分類を、基準アミノ酸配列に対するそのアミノ酸配
列の同一性の程度(同一性%)により、または1つの基準アミノ酸配列に対して、別のも
のに対するより大きな%の同一性を有することにより、規定し得る。基準アミノ酸配列に
対するポリペプチドの同一性%は、通常、ギャップクリエーションペナルティ=5、及び
ギャップエクステンションペナルティ=0.3のパラメーターを用いて、GAP解析(N
eedleman及びWunsch、1970;GCGプログラム)により決定される。
クエリシーケンスは、少なくとも15アミノ酸長であり、GAP解析は、少なくとも15
アミノ酸の領域に渡って2つの配列を配置する。より好ましくは、クエリシーケンスは、
少なくとも50アミノ酸長であり、GAP解析は、少なくとも50アミノ酸の領域に渡っ
て2つの配列を配置する。より好ましくは、クエリシーケンスは、少なくとも100アミ
ノ酸長であり、GAP解析は、少なくとも100アミノ酸の領域に渡って2つの配列を配
置する。さらにより好ましくは、クエリシーケンスは、少なくとも250アミノ酸長であ
り、GAP解析は、少なくとも250アミノ酸の領域に渡って2つの配列を配置する。さ
らにより好ましくは、GAP解析はその完全長に渡って2つの配列を配置する。ポリペプ
チドまたはポリペプチドの分類は、基準のポリペプチドと同じ酵素活性を有してもよく、
異なる活性を有してもよく、または活性を有しなくてもよい。好ましくは、ポリペプチド
は、基準のポリペプチドの少なくとも10%、少なくとも50%、少なくとも75%また
は少なくとも90%の酵素活性を有する。
【0166】
本明細書で使用するとき、「生物活性」フラグメントは、例えば、デサチュラーゼ及び
/またはエロンガーゼ活性または他の酵素活性を有する完全長基準ポリペプチドの定義さ
れた活性を維持する、本明細書で定義されたポリペプチドの部分である。本明細書で使用
するとき、生物活性フラグメントは、完全長ポリペプチドを除外する。生物活性フラグメ
ントは、それらが定義された活性を維持する限り、いかなるサイズの部分でもあり得る。
好ましくは、生物活性フラグメントは、完全長タンパク質の少なくとも10%、少なくと
も50%、少なくとも75%または少なくとも90%の活性を維持する。
【0167】
定義されたポリペプチドまたは酵素に関して、本明細書で提供されたものより高い同一
性%の数字は、好ましい実施形態を包含することは理解されるだろう。従って、適用可能
な場合、最小の同一性%の数字に照らして、ポリペプチド/酵素が、関連する指定配列番
号と、少なくとも60%、より好ましくは65%、より好ましくは70%、より好ましく
は75%、より好ましくは76%、より好ましくは80%、より好ましくは85%、より
好ましくは90%、より好ましくは91%、より好ましくは92%、より好ましくは93
%、より好ましくは94%、より好ましくは95%、より好ましくは96%、より好まし
くは97%、より好ましくは98%、より好ましくは99%、より好ましくは99.1%
、より好ましくは99.2%、より好ましくは99.3%、より好ましくは99.4%、
より好ましくは99.5%、より好ましくは99.6%、より好ましくは99.7%、よ
り好ましくは99.8%、さらにより好ましくは99.9%同一であるアミノ酸配列を含
むことは好ましい。
【0168】
本明細書で定義されたポリペプチドのアミノ酸配列変異体/突然変異体を、本明細書で
定義された核酸に適切なヌクレオチド変化を導入することにより、または所望のポリペプ
チドのインビトロ合成により、準備できる。かかる変異体/突然変異体としては、例えば
、アミノ酸配列内の残基の欠失、挿入または置換が挙げられる。欠失、挿入及び置換の組
合せを行って、最終構築物に到達できるが、但し、最終ペプチド構築物は、所望の酵素活
性を有する。
【0169】
突然変異(変化した)ペプチドを、当技術分野で公知のいずれかの技術を用いて、準備
できる。例えば、本明細書で定義されたポリヌクレオチドに対して、インビトロ突然変異
誘発またはHarayama(1998)により広範に記載されているDNAシャフリン
グ技術を行うことができる。突然変異/変化したDNA由来の生成物を、本明細書に記載
の技術を用いて容易にスクリーニングし、それらが、例えば、デサチュラーゼまたはエロ
ンガーゼ活性を有しているかどうかを決定できる。
【0170】
アミノ酸配列突然変異体の設計では、突然変異部位の位置及び突然変異体の性質は、修
飾される特徴に依存するだろう。突然変異の部位を、例えば、(1)先ず、保存的アミノ
酸の選択により、次いで得られた結果に依ってより多くのラジカルの選択により置換し、
(2)対象の残基を欠失し、または(3)その位置に隣接して他の残基を挿入することに
より、個別にまたは連続して修飾できる。
【0171】
アミノ酸配列の欠失は、概して、約1~15残基、より好ましくは約1~10残基、典
型的には約1~5隣接残基の範囲である。
【0172】
置換突然変異体は、除去したポリペプチド分子中に少なくとも1つのアミノ酸残基及び
その位置に挿入した異なる残基を有する。置換突然変異誘発の最も対象の部位としては、
天然デサチュラーゼまたはエロンガーゼ中に保存されない部位が挙げられる。これらの部
位は、好ましくは、酵素活性を維持するため、比較的保存的方法で置換される。このよう
な保存的置換を、「実例となる置換」の表題の表3に示す。
【0173】
好ましい実施形態では、突然変異/変異ポリペプチドは、天然ポリペプチドと比較した
とき、保存的アミノ酸変化のみ有する、または1つもしくは2つもしくは3つもしくは4
つ以下の保存的アミノ酸変化を有する。保存的アミノ酸変化の詳細を表3に示す。当業者
が認識するように、かかる少しの変化を、組換え細胞内で発現するとき、ポリペプチドの
活性を変化させないで、合理的に予測できる。
【表3】
【0174】
ポリヌクレオチド
本発明は、例えば、遺伝子、単離ポリヌクレオチド、T-DNA分子などのキメラ遺伝
子構築物、またはキメラDNAであり得るポリヌクレオチドの使用も提供する。ポリヌク
レオチドは、ゲノム起源もしくは合成起源、二本鎖もしくは一本鎖のDNAまたはRNA
であってよく、本明細書で定義された特定の活性を行うために炭水化物、脂質、タンパク
質または他の物質と結合していてもよい。「ポリヌクレオチド」という語は、本明細書中
、「核酸分子」という語と互換的に使用される。
【0175】
実施形態では、ポリヌクレオチドは非天然である。非天然ポリヌクレオチドの例として
は、これに限定されないが、突然変異したもの(本明細書に記載の方法を用いてなど)、
及びタンパク質をコードするオープンリーディングフレームが自然の状態では関連しない
プロモーター(本明細書に記載の構築物など)と作動可能に結合しているポリヌクレオチ
ドが挙げられる。
【0176】
本明細書で使用するとき、「遺伝子」という語は、広義に考えるべきであり、転写され
た領域を含むデオキシリボヌクレオチド配列及び、もし翻訳されたならば、構造的遺伝子
のタンパク質コード領域を含み、いずれかの末端の少なくとも約2kbの距離に対して、
5’と3’末端の双方上のコード領域と隣接する位置の配列を含み、該遺伝子の発現に関
係する。この点では、遺伝子は、プロモーター、エンハンサー、停止などの制御シグナル
及び/または所与の遺伝子と自然に関連するポリアデニル化シグナル、または該遺伝子が
「キメラ遺伝子」と呼ばれる場合の非相同制御シグナルを含む。タンパク質コード領域の
5’に位置し、mRNA上に存在する配列は、5’非翻訳配列と呼ばれる。タンパク質コ
ード領域の3’または下流に位置し、mRNA上に存在する配列は、3’非翻訳配列と呼
ばれる。「遺伝子」という語は、cDNA及び遺伝子のゲノム体の両方を包含する。遺伝
子のゲノム体またはクローンは、「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」
と呼ばれる非コード配列により分断され得るコード領域を含む。イントロンは、核RNA
(hnRNA)に転写される遺伝子のセグメントである。イントロンは、エンハンサーな
どの調節エレメントを含み得る。イントロンを、核または一次転写産物から除去または「
スプライシング」し;従って、イントロンはメッセンジャーRNA(mRNA)転写産物
中に存在しない。mRNAは、翻訳中、新生ポリペプチド中のアミノ酸の配列または順序
を指定する働きをする。「遺伝子」という語は、本明細書に記載のタンパク質の全てまた
は部分をコードする合成または融合分子及び上記のいずれか1つに対する相補ヌクレオチ
ド配列を含む。
【0177】
本明細書で使用するとき、「キメラDNA」または「キメラ遺伝子構築物」または類似
物は、その天然部位の天然DNA分子でないDNA分子を表し、本明細書で、「DNA構
築物」と呼ぶ。通常、キメラDNAまたはキメラ遺伝子は、天然で、作動可能に一緒に結
合したものが見つからない、すなわち、互いに非相同である調節及び転写またはタンパク
質コード配列を含む。従って、キメラDNAまたはキメラ遺伝子は、異なる起源由来の調
節配列及びコード配列、または同じ起源由来だが、天然で見られるものと異なるように配
置されている調節配列及びコード配列を含んでもよい。
【0178】
「内在性遺伝子」は、生物のゲノム中のその天然の位置の天然遺伝子を表す。本明細書
で使用するとき、「組換え核酸分子」、「組換えポリヌクレオチド」またはその変異体は
、組換えDNA技術により構築または修飾された核酸分子を表す。「外来性(forei
gn)ポリヌクレオチド」または「外来性(exogenous)ポリヌクレオチド」ま
たは「非相同ポリヌクレオチド」等は、実験操作により細胞のゲノム中に導入された核酸
を表す。外来性(foreign)または外来性(exogenous)遺伝子は、非天
然生物中に挿入された遺伝子、天然宿主内の新しい位置に導入された天然遺伝子、または
キメラ遺伝子であってよい。「導入遺伝子」は、形質転換方法によりゲノム中に導入され
た遺伝子である。「遺伝子的修飾」、「トランスジェニック」という語及びその変化形は
、形質転換または形質導入により細胞中に遺伝子を導入すること、細胞内の遺伝子を突然
変異させること、及びこれらの作用が起こった細胞または生物またはその子孫内の遺伝子
の調節を変更または調節することを含む。本明細書で使用するとき、「ゲノム領域」は、
導入遺伝子、または導入遺伝子群(本明細書中、クラスターとも呼ばれる)が細胞、また
はその祖先中に挿入されたゲノム内の位置を表す。そのような領域は、本明細書に記載の
方法などにより人の介在によって組み込まれたヌクレオチドのみ含む。
【0179】
ポリヌクレオチドに関連した「外来性」という語は、その自然状態と比較して、変化し
た量で細胞内に存在するときのポリヌクレオチドを表す。1つの実施形態では、細胞は、
自然に、ポリヌクレオチドを含まない細胞である。しかしながら、該細胞は、コードされ
たポリペプチドの変化した産生量で得られる非内在性ポリヌクレオチドを含む細胞であっ
てよい。外来性ポリヌクレオチドは、トランスジェニック(組換え)細胞、または存在す
る場合、無細胞発現系の他成分から分離していないポリヌクレオチド、及びそのような細
胞または少なくともいくつかの他成分から離して引き続き精製した無細胞系で産生された
ポリヌクレオチドを含む。外来性ポリヌクレオチド(核酸)は、天然に存在するヌクレオ
チドの隣接伸長(contiguous stretch)であり得、または結合して一
本鎖ポリヌクレオチドを生成する異なる起源(天然及び/または合成)からのヌクレオチ
ドの2つ以上の隣接伸長を含む。通常、このようなキメラポリヌクレオチドは、対象とな
る細胞内のオープンリーディングフレームの転写の駆動に適切なプロモーターと作動可能
に結合したポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを少なくとも含む。
【0180】
定義されたポリヌクレオチドに関して、上記のものより高い同一性%の特徴は、好まし
い実施形態を包含することは認識されるだろう。このように、適用可能な場合、最小の同
一性%の数字に照らして、ポリヌクレオチドが、関連する指定配列番号と、少なくとも6
0%、より好ましくは65%、より好ましくは70%、より好ましくは75%、より好ま
しくは80%、より好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは91%、
より好ましくは92%、より好ましくは93%、より好ましくは94%、より好ましくは
95%、より好ましくは96%、より好ましくは97%、より好ましくは98%、より好
ましくは99%、より好ましくは99.1%、より好ましくは99.2%、より好ましく
は99.3%、より好ましくは99.4%、より好ましくは99.5%、より好ましくは
99.6%、より好ましくは99.7%、より好ましくは99.8%、さらにより好まし
くは99.9%同一であるポリヌクレオチド配列を含むことは好ましい。
【0181】
ポリヌクレオチドは、天然分子と比較したとき、ヌクレオチド残基の欠失、挿入、また
は置換である1つ以上の突然変異を有してもよい。基準配列と比較して突然変異を有する
ポリヌクレオチドは、天然(すなわち、天然起源から単離)または合成(例えば、上記核
酸に対して部位特異的突然変異誘発またはDNAシャフリングを行うことにより)のいず
れかであり得る。従って、ポリヌクレオチドが天然起源または組換えのいずれかからであ
り得ることは明白である。好ましいポリヌクレオチドは、当技術分野で公知の、植物細胞
内の翻訳にコドン最適化したコード領域を有するものである。
【0182】
組換えベクター
組換え発現を、本発明の組換え細胞、または植物もしくは植物部分の産生するため使用
できる。組換えベクターは、非相同ポリヌクレオチド配列、すなわち、好ましくは、該ポ
リヌクレオチド分子が誘導された種以外の種由来の、本明細書で定義されたポリヌクレオ
チド分子と隣接して、天然に見られないポリヌクレオチド配列を含む。ベクターは、RN
AあるいはDNAのいずれかであり得、通常、プラスミドである。プラスミドベクターは
、通常、原核細胞内の発現カセット、例えば、pUC誘導ベクター、pSK誘導ベクター
、pGEM誘導ベクター、pSP誘導ベクター、pBS誘導ベクター、または好ましくは
、1つ以上のT-DNA領域を含むバイナリーベクターの容易な選択、増幅、及び形質転
換を提供する付加的核酸配列を含む。付加的核酸配列は、ベクターの自律的複製を提供す
る複製開始点、好ましくは、抗菌剤または除草剤耐性をコードする選択可能なマーカー遺
伝子、核酸配列または核酸構築物内でコードされた遺伝子を挿入する多重部位を提供する
固有の多重クローニング部位、及び原核細胞及び真核細胞(特に植物)の形質転換を促進
する配列を含む。組換えベクターは、好ましくは、本明細書で定義されたキメラ遺伝子構
築物と組み合わせて、本明細書で定義された1つより多いポリヌクレオチド、例えば、3
つ、4つ、5つまたは6つの本明細書で定義されたポリヌクレオチドを含んでもよく、各
ポリヌクレオチドは、対象となる細胞内で作働可能な発現制御配列と作動可能に結合して
いる。好ましくは、該発現制御配列は、非相同プロモーターを含む、または全てである、
すなわち、それらが制御するコード領域に関して非相同である。本明細書で定義された1
つより多いポリヌクレオチド、例えば、3つ、4つ、5つまたは6つのポリヌクレオチド
、好ましくは、各々が異なるポリペプチドをコードする7つまたは8つのポリヌクレオチ
ドを、好ましくは、1つのT-DNA分子内の1つの組換えベクター中で好適に共有結合
し、それから、細胞内に1つの分子として導入して本発明に記載の組換え細胞を生成し、
好ましくは、組換え細胞のゲノム内に、例えば、トランスジェニック植物内に組み込んで
もよい。ゲノム内への組込みは、核のゲノムまたはトランスジェニック植物のプラスチド
ゲノム内への組込みであってよい。それにより、そのように結合したポリヌクレオチドは
、組換え細胞または植物の子孫の単一遺伝子座として一緒に遺伝するだろう。組換えベク
ターまたは植物は、2つ以上のそのような組換えベクターを含んでもよく、各々は、例え
ば、各々の組換えベクターが3つ、4つ、5つまたは6つのポリヌクレオチドを含む、複
数のポリヌクレオチドを含む。
【0183】
本明細書で使用するとき、「作動可能に結合」は、2つ以上の核酸(例えば、DNA)
セグメント間の機能的関係性を表す。通常、転写された配列に対する転写調節エレメント
(プロモーター)の機能的関係性を表す。例えば、プロモーターは、もし、適切な細胞内
のコード配列の転写を刺激または調節するならば、本明細書で定義されたポリヌクレオチ
ドなどのコード配列と作動可能に結合する。概して、転写配列と作動可能に結合している
プロモーター転写調節エレメントは、転写配列と物理的に隣接している、すなわち、それ
らはシス作用性である。しかしながら、エンハンサーなどのいくつかの転写調節エレメン
トは、それらがその転写を促進するコード配列と物理的に隣接または近接近して配置して
いる必要がない。
【0184】
複数のプロモーターが存在するとき、各プロモーターは、独立して、同じであっても異
なっていてもよい。好ましくは、6つの異なるプロモーター配列のうち少なくとも3つか
ら最大値までを、組換えベクター内で使用して、外来性ポリヌクレオチドの発現を制御す
る。
【0185】
キメラDNAまたは遺伝子構築物などの組換え分子は、(a)単一ペプチド配列をコー
ドして、本明細書で定義された発現されたポリペプチドが該ポリペプチドを産生または該
発現されたポリペプチドの局在化、例えば、細胞内の小胞体(ER)中のポリペプチドの
保持を提供する1つ以上の分泌シグナル、及び/または(b)融合タンパク質として核酸
分子の発現をもたらす融合配列も含んでもよい。適切な単一セグメントの例としては、本
明細書で定義されたポリペプチドの分泌または局在化を誘導可能ないずれかのシグナルセ
グメントが挙げられる。組換え分子は、本明細書で定義された核酸分子の核酸配列周囲及
び/または内の介在及び/または非翻訳配列も含んでもよい。
【0186】
形質転換体の同定を容易にするため、核酸構築物は、外来性(foreign)または
外来性(exogenous)ポリヌクレオチドとして、またはそれに加えて、選択可能
またはスクリーニング可能なマーカー遺伝子を望ましく含む。「マーカー遺伝子」は、カ
ーカー遺伝子を発現する細胞に別のフェノタイプを付与して、それ故、そのような形質転
換された細胞を、マーカーを有しない細胞と区別することを可能とする遺伝子を意味する
。選択可能なマーカー遺伝子は、選択剤(例えば、除草剤、抗菌剤、放射線、熱、または
形質転換していない細胞にダメージを与える他の処理)に対する耐性に基づいて「選択」
できる特色を与える。スクリーニング可能なマーカー遺伝子(またはリポーター遺伝子)
は、観察または試験により、すなわち、「スクリーニング」(例えば、β-グルクロニダ
ーゼ、ルシフェラーゼ、GFPまたは形質転換していない細胞内に存在しない他の酵素活
性)により、同定できる特色を与える。マーカー遺伝子及び対象となるヌクレオチド配列
は、結合している必要がない。マーカーの実際の選択は、植物細胞などの選択の細胞と組
み合わせて機能的(すなわち、選択的)である限り、重大ではない。
【0187】
選択可能なマーカーの例は、アンピシリン、クロラムフェニコールまたはテトラサイク
リン耐性、好ましくは、カナマイシン耐性などの抗菌耐性を与えるマーカーである。植物
形質転換体の選択のための実例となる選択可能なマーカーとしては、これに限定されない
が、ハイグロマイシンB耐性をコードするhyg遺伝子;カナマイシン、パロモマイシン
、G418に対する耐性を与えるネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(nptII)
遺伝子;例えば、EP256223に記載のグルタチオン誘導除草剤に対する耐性を与え
るラット肝臓のグルタチオンS-トランスフェラーゼ;例えば、過剰発現時、WO87/
05327に記載のホスフィノトリシンなどのグルタミンシンセターゼインヒビターに対
する耐性、例えば、EP275957に記載の選択剤ホスフィノトリシンに対する耐性を
与えるストレプトミセス・ビリドクロモゲネス(Streptomyces virid
ochromogenes)のアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、例えば、Hinch
eeら(1988)により記載されたN-ホスホノメチルグリシンに対する耐性を与える
5-エノールシキメート-3-ホスフェートシンターゼ(EPSPS)をコードする遺伝
子、または好ましくは、例えば、WO91/02071に記載のビアラホスに対する耐性
を与えるbar遺伝子が挙げられる。
【0188】
好ましくは、核酸構築物を、植物細胞などの細胞のゲノム内に安定に組み込む。従って
、核酸は、分子がゲノム内に組み込まれることを可能とする適切なエレメントを含んでも
よく、好ましくは、T-DNA分子または構築物の左右境界配列を、細胞の染色体中に組
み込むことができる適切なベクター内に配置する。
【0189】
発現
本明細書で使用するとき、発現ベクターは、宿主細胞を形質転換すること及び1つ以上
の特異的ポリヌクレオチド分子の発現に影響することが可能であるDNAベクターである
。本発明の発現ベクターは、植物細胞内または微生物細胞などの組換え細胞内で遺伝子発
現を誘導できる。本発明に有用な発現ベクターは、転写制御配列、翻訳制御配列、複製開
始点、及び組換え細胞と互換性があり、本発明のポリヌクレオチド分子の発現を制御する
他の調節配列などの調節配列を含む。特に、本発明に有用なポリヌクレオチドまたはベク
ターは、転写制御配列を含む。転写制御配列は、転写の開始、伸長、及び停止を制御する
配列である。特に、重要な転写制御配列は、プロモーター及びエンハンサー配列などの転
写開始を制御するものである。適切な転写制御配列は、本発明の少なくとも1つの組換え
細胞内で機能できるいずれかの転写制御配列を含む。使用される調節配列の選択は、対象
となる植物及び/または器官または組織などの対象生物体に依存する。かかる調節配列を
、植物または植物ウイルスなどの真核生物から得てもよく、化学的に合成してもよい。様
々なそのような転写制御配列は、当業者に公知である。特に、好ましい転写制御配列は、
恒常的にあるいは植物もしくその部分の使用に依存して特異的な段階及び/または組織の
いずれかに、植物内の転写を誘導する活性のあるプロモーターである。
【0190】
植物細胞の安定なトランスフェクトまたはトランスジェニック植物の確立に適切ないく
つかのベクターは、例えば、Pouwelsら、Cloning Vectors: A
Laboratory Manual、1985、supp. 1987;Weiss
bach及びWeissbach、Methods for Plant Molecu
lar Biology、Academic Press、1989;及びGelvin
ら、Plant Molecular Biology Manual、Kluwer
Academic Publishers、1990に記載されている。通常、植物発現
ベクターとしては、例えば、5’及び3’調節配列及び優性選択可能マーカーの転写制御
下の1つ以上のクローン植物遺伝子が挙げられる。かかる植物発現ベクターは、プロモー
ター調節領域(例えば、誘導的もしくは恒常的、環境的に調節もしくは発生的に調節、ま
たは細胞特異的もしくは組織特異的発現を制御する調節領域)、転写開始部位、リボソー
ム結合部位、RNAプロセシングシグナル、転写停止部位、及び/またはポリアデニル化
シグナルも含み得る。
【0191】
植物細胞で活性ないくつかの構成的プロモーターを説明した。植物の構成的発現に適切
なプロモーターとしては、これに限定されないが、カリフラワーモザイクウイルス(Ca
MV)35Sプロモーター、ゴマノハグサモザイクウイルス(FMV)35S、及びリブ
ロース-1,5-二リン酸カルボキシラーゼの小サブユニットからの光誘導プロモーター
が挙げられる。
【0192】
葉、種子、根または幹などの植物の源組織の発現の目的のため、本発明で利用されるプ
ロモーターがこれらの特異的組織内で比較的高い発現を有することは好ましい。多くの例
が当技術分野で周知である。環境、ホルモン、化学的、及び/または発生のシグナルに応
答して調節される様々な植物遺伝子プロモーターを、植物細胞内で遺伝子発現のためにも
使用でき、または器官特異的プロモーターを使用することも有利であり得る。
【0193】
本明細書で使用するとき、「種子特異的プロモーター」という語またはその変化形は、
他の植物組織と比較したとき、優先的に、植物、好ましくは、アブラナ属(Brassi
ca sp.)、カメリナサティバ(Camelina sativa)またはダイズ(
G. max)の植物の発育種子の遺伝子転写を誘導するプロモーターを表す。実施形態
では、種子特異的プロモーターを、植物の葉及び/または幹と比較して、植物の発育種子
中で、少なくとも5倍強力に発現し、他の植物組織と比較して、発育種子の胚中でより強
力に好適に発現する。好ましくは、プロモーターのみが、発育種子中の対象となる遺伝子
の発現を誘導し、及び/または葉などの植物の他の部分中の対象となる遺伝子の発現はノ
ーザンブロット解析及び/またはRT-PCRにより検出できない。通常、プロモーター
は、種子の成長及び発育中、特に、種子内の貯蔵化合物の合成フェーズ及び蓄積中、遺伝
子の発現を駆動する。かかるプロモーターは、植物貯蔵器官全体もしくは種皮、もしくは
子葉などのその部分のみ、好ましくは、双子葉植物の種子中の胚、または単子葉植物の種
子の胚乳もしくはアリューロン層中の遺伝子発現を駆動し得る。
【0194】
種子特異的発現のための好ましいプロモーターとしては、i)脂肪酸デサチュラーゼ及
びエロンガーゼなどの、種子内の脂肪酸生合成及び蓄積に関連する酵素をコードする遺伝
子からのプロモーター、ii)種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子からのプロモータ
ー、及びiii)種子内の炭水化物生合成及び蓄積に関連する酵素をコードする遺伝子か
らのプロモーターが挙げられる。適切な種子特異的プロモーターは、アブラナナピン遺伝
子プロモーター(US5,608,152)、ソラマメUSPプロモーター(Bauml
einら、1991)、アラビドプシス・オレオシン(Arabidopsis ole
osin)プロモーター(WO98/45461)、ファセオラス・ブルガリス(Pha
seolus vulgaris)ファゼオリンプロモーター(US5,504,200
)、ブラシカBce4プロモーター(WO91/13980)またはソラマメからのレグ
ミンLeB4プロモーター(Baumleinら、1992)及びトウモロコシ、オオム
ギ、コムギ、ライムギ、コメなどの単子葉植物中の種子特異的発現をもたらすプロモータ
ーである。適切な注目すべきプロモーターは、オオムギlpt2またはlpt1遺伝子プ
ロモーター(WO95/15389及びWO95/23230)またはWO99/168
90に記載のプロモーター(オオムギホルデイン遺伝子、コメグルテリン遺伝子、コメオ
リジン遺伝子、コメプロラミン遺伝子、コムギグリアジン遺伝子、コムギグルテリン遺伝
子、トウモロコシゼイン遺伝子、カラスムギグルテリン遺伝子、モロコシカシリン(ka
sirin)遺伝子、ライムギセカリン遺伝子からのプロモーター)である。他のプロモ
ーターとしては、Brounら(1998)、Potenzaら(2004)、US20
070192902及びUS20030159173に記載されたものが挙げられる。実
施形態では、種子特異的プロモーターを、優先的に、胚、子葉または胚乳などの画定され
た種子部分内で発現する。そのような特異的プロモーターの例としては、これに限定され
ないが、FP1プロモーター(Ellerstromら、1996)、エンドウマメレグ
ミンプロモーター(Perrinら、2000)、マメフィトヘマグルトニンプロモータ
ー(Perrinら、2000)、アマ2S貯蔵タンパク質をコードする遺伝子のコンリ
ニン1及びコンリニン2プロモーター(Chengら、2010)、シロイヌナズナ(A
rabidopsis thaliana)からのFAE1遺伝子のプロモーター、セイ
ヨウアブラナ(Brassica napus)のグロブリン様タンパク質遺伝子のBn
GLPプロモーター、アマ(Linum usitatissimum)からのペルオキ
シレドキシン遺伝子のLPXRプロモーターが挙げられる。
【0195】
5’非翻訳リーダー配列を、本発明のポリヌクレオチドの非相同遺伝子配列を発現する
ため選択されたプロモーターから誘導でき、または好ましくは、産生される酵素のコード
領域に関して非相同であり、mRNAの翻訳を増強するように、必要に応じて、特異的に
修飾できる。導入遺伝子の最適発現をレビューするため、Kozielら(1996)参
照。5’非翻訳領域を、植物ウイルスRNA(とりわけ、タバコモザイクウイルス、タバ
コエッチウイルス、トウモロコシドワーフモザイクウイルス、アルファルファモザイクウ
イルス)から、適切な真核遺伝子、植物遺伝子(コムギ及びトウモロコシクロロフィルa
/b結合タンパク質遺伝子リーダー)から、または合成遺伝子配列からも得ることができ
る。本発明は、非翻訳領域がプロモーター配列を付随する5’非翻訳配列から誘導される
構築物に限定されない。リーダー配列を、関連しないプロモーターまたはコード配列から
も誘導できる。本発明との関連で有用なリーダー配列は、トウモロコシHsp70リーダ
ー(US5,362,865及びUS5,859,347)、及びTMVオメガエレメン
トを含む。
【0196】
転写停止を、キメラベクター中で対象となるポリヌクレオチドと作動可能に結合した3
’非翻訳DNA配列により実行する。組換えDNA分子の3’非翻訳領域は、植物内で、
アデニル酸ヌクレオチドのRNAの3’末端への付加を引き起こす機能をするポリアデニ
ル化シグナルを含む。3’非翻訳領域を、植物細胞内で発現される様々な遺伝子から得る
ことができる。ノパリンシンターゼ3’非翻訳領域、エンドウマメ小サブユニットルビス
コ遺伝子からの3’非翻訳領域は、ダイズ7S種子貯蔵タンパク質遺伝子またはアマコン
リニン遺伝子からの3’非翻訳領域が、この目的で、共通に使用される。アグロバクテリ
ウム腫瘍誘導(Ti)プラスミドのポリアデニル化シグナルを含む3’転写された非翻訳
領域も適切である。
【0197】
組換えDNA技術を、例えば、宿主細胞内のポリヌクレオチド分子の複製数、これらの
ポリヌクレオチド分子が転写される効率、得られた転写産物が翻訳される効率、及び翻訳
後修飾の効率の操作により、形質転換されたポリヌクレオチド分子の発現を改良するため
に使用できる。本明細書で定義されたポリヌクレオチド分子の発現の増加に有用な組換え
技術としては、これに限定されないが、ポリヌクレオチド分子の1つ以上の宿主細胞染色
体への組込み、mRNAへの安定配列の付加、転写制御シグナルの置換または修飾(例え
ば、プロモーター、オペレーター、エンハンサー)、翻訳制御シグナルの置換または修飾
(例えば、リボソーム結合部位、シャイン・ダルガノ配列)、宿主細胞のコドン使用頻度
に対応するためのポリヌクレオチド分子の修飾、及び転写を不安定化する配列の欠失が挙
げられる。
【0198】
トランスジェニック植物
本明細書で名詞として使用するとき、「植物」という語は、植物全体を表すが、形容詞
として使用するとき、例えば、植物器官(例えば、葉、幹、根、花)、1つの細胞(例え
ば、花粉)、種子、植物細胞など、植物中に存在、植物から得られる、植物由来、または
植物に関連する物質を表す。「植物部分」という語は、該植物部分が本発明に記載の脂質
を合成する限り、例えば、葉もしくは幹、根、花器もしくは花の構造物、花粉、種子、胚
などの種子部分、胚乳、胚盤もしくは種皮、例えば、維管束組織などの植物組織、その細
胞と子孫などの植物性構造物を含む植物DNAを含む全ての植物部分を表す。
【0199】
概して、「トランスジェニック植物」、「遺伝子的に修飾された植物」またはその変化
形は、同じ種、変種または栽培品種の野生型植物に見られない遺伝子構築物(「導入遺伝
子」)を含む植物を表す。本発明に関連して定義されたトランスジェニック植物は、組換
え技術を用いて遺伝子的に修飾して、所望の植物または植物器官内で本明細書中に定義さ
れた脂質または少なくとも1つのポリペプチドの産生を引き起こした植物またはその子孫
を含む。トランスジェニック植物細胞及びトランスジェニック植物部分は、対応する意味
を有する。本明細書で呼ぶ「導入遺伝子」は、バイオテクノロジーの技術分野における通
常の意味を有し、組換えDNAまたはRNA技術により産生または変更され、植物細胞内
に導入された遺伝子配列を含む。導入遺伝子は、該導入遺伝子が植物細胞以外の細胞に導
入された、または異なる種、変種もしくは栽培品種、または由来である植物細胞と同じ種
、変種もしくは栽培品種であり得る植物細胞由来の遺伝子配列を含む。通常、導入遺伝子
は、植物などの細胞内に、例えば、形質転換などのヒトの操作により導入されるが、いず
れの方法も、当業者が認識する通りに使用できる。
【0200】
「種子」及び「穀物」という語は、本明細書で互換的に使用される。「穀物」は、収穫
された穀物またはまだ植物上にあるがいつでも収穫する状態になっている穀物などの成熟
した穀物を表すが、文脈により吸水または発芽後の穀物も表し得る。成熟した穀物または
種子は、通常、約18~20%未満、好ましくは、10%未満の含水率を有する。キャノ
ーラ種子などのアブラナ属種子は、通常、成熟時、約4~8%または6~8%、好ましく
は、約4%~約6%の含水率を有する。本明細書で使用するとき、「発育種子」は、成熟
前、通常、受精または開花後の植物の生殖構造物内で見られる種子を表すが、植物から単
離された成熟前のそのような種子も表し得る。
【0201】
本明細書で使用するとき、「植物部分を得ること」または「種子を得ること」という語
は、畑または温室もしくはグロースチャンバーなどのコンテインメントの植物から植物部
分または種子を収穫することを含み、または該植物部分もしくは種子の供給者から購入も
しくは受け取ることにより、それぞれ、植物部分または種子を得るいずれかの手段を表す
。室温における標準的生育条件は、自然光の射す、22~24℃の日中温度及び16~1
8℃の夜間温度を含む。種子は、呈色に適切であり得る、すなわち、子孫植物を発芽また
は産生できる、あるいは、もはや発芽できないように処理した、例えば、食物もしくは飼
料用途、または本発明の脂質の抽出に有用である、粉砕、研磨もしくは製粉した種子であ
り得る。
【0202】
本明細書で使用するとき、「植物貯蔵器官」という語は、例えば、タンパク質、炭水化
物、脂肪酸及び/またはオイルの形態でエネルギーを貯蔵するために特殊化した植物の部
分を表す。植物貯蔵器官の例としては、種子、果実、塊根、及び塊茎が挙げられる。好ま
しい植物貯蔵器官は種子である。
【0203】
本発明のまたは本発明で使用される植物または植物部分は、好ましくは、表現型的に正
常である。本明細書で使用するとき、「表現型的に正常」という語は、遺伝的に修飾され
た植物または植物器官、特に、未修飾の植物または植物器官と比較したとき、生育及び繁
殖する能力を著しく低下していない種子、塊茎または果実などの貯蔵器官を表す。実施形
態では、表現型的に正常である遺伝的に修飾された植物または植物器官は、外来性ポリヌ
クレオチドを含まないアイソジェニックな植物または器官と本質的に同じである生育また
は繁殖する能力を有する。好ましくは、バイオマス、生育速度、発芽速度、貯蔵器官サイ
ズ、花粉生存率、雌雄受精、種子サイズ及び/または産生された生存種子数は、同一条件
下で生育したとき、前記外来性ポリヌクレオチドを含まない植物の90%以上である。好
ましくは、本発明の植物、または本発明の種子から産生した植物の花粉生存率は、対応す
る野生型植物の花粉生存率と比較して約100%である。この語は、野生型植物と異なり
得るが、例えば、子葉(seedling leaves)のバレリーナ表現型などの商
業目的用植物の有用性に影響しない、植物の特徴を包含しない。
【0204】
本発明により提供される、または本発明の実践での使用を考慮した植物としては、単子
葉植物及び双子葉植物の両方が挙げられる。好ましい実施形態では、本発明の植物は、作
物(例えば、穀類及び豆類、トウモロコシ、コムギ、ジャガイモ、タピオカ、コメ、モロ
コシ、アワ、キャッサバ、オオムギ、またはエンドウマメ)、または他のマメ科植物であ
る。植物を、食用根、塊茎、葉、幹、花または果実の産生のため生育してもよい。植物は
、野菜植物または観賞植物であってよい。本発明の、または本発明に有用な植物は:トウ
モロコシ(Zea mays)、セイヨウアブラナ(Brassica napus、B
rassica rapa ssp.)、カラシナ(Brassica juncea)
、アマ(Linum usitatissimum)、アルファルファ(Medicag
o sativa)、コメ(Oryza sativa)、ライムギ(Secale c
erale)、モロコシ(Sorghum bicolour、Sorghum vul
gare)ヒマワリ(Helianthus annus)、コムギ(Tritium
aestivum)、ダイズ(Glycine max)、タバコ(Nicotiana
tabacum)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、ピーナッツ
(Arachis hypogaea)、ワタ(Gossypium hirsutum
)、サツマイモ(Lopmoea batatus)、キャッサバ(Manihot e
sculenta)、コーヒー(Cofea spp.)、ココナツ(Cocos nu
cifera)、パイナップル(Anana comosus)、柑橘系樹木(citr
is tree)(Citrus spp.)、ココア(Theobroma caca
o)、茶(Camellia senensis)、バナナ(Musa spp.)アボ
カド(Persea americana)、イチジク(Ficus casica)、
グアバ(Psidium guajava)、マンゴ(Mangifer indica
)、オリーブ(Olea europaea)、パパイヤ(Carica papaya
)、カシュー(Anacardium occidentale)、マカダミア(Mac
adamia intergrifolia)、アーモンド(Prunus amygd
alus)、サトウダイコン(Beta vulgaris)、カラスムギ、またはオオ
ムギであってよい。
【0205】
好ましい実施形態では、植物は被子植物である。
【0206】
実施形態では、植物は、油料種子植物、好ましくは、油料種子作物である。本明細書で
使用するとき、「油料種子植物」という語は、該植物の種子からオイルの商業的産生のた
めに使用される植物種である。油料種子植物は、油料種子用セイヨウアブラナ(rape
)(セイヨウアブラナ(canola)など)、トウモロコシ、ヒマワリ、ダイズ、モロ
コシ、アマ(亜麻仁)またはサトウダイコンであってよい。さらに、油料種子植物は、他
のアブラナ属(Brassicas)、ワタ、ピーナッツ、ポピー、カラシナ、トウゴマ
、ゴマ、ヒマワリ、ベニバナ、アマナズナ属(Camelina)、クランベ属(Cra
mbe)または木の実を産生する植物であってよい。植物は、オリーブ、油ヤシまたはコ
コナッツなどのその果実中に高レベルのオイルを産生し得る。本発明を適用し得る園芸植
物は、レタス、エンダイブ、またはキャベツ、ブロッコリー、またはカリフラワーを含む
野菜のアブラナ属である。本発明を、タバコ、ウリ科植物、ニンジン、イチゴ、トマト、
またはコショウに適用してもよい。
【0207】
さらに好ましい実施形態では、本発明のトランスジェニック植物を産生するために使用
される非トランスジェニック植物は、特に種子中に、i)20%未満、10%未満または
5%未満の18:2脂肪酸及び/またはii)10%未満または5%未満の18:3脂肪
酸を有するオイルを産生する。
【0208】
好ましい実施形態では、トランスジェニック植物またはその部分は、その子孫が所望の
表現型に対して分離しないように導入された(導入遺伝子)各々及び全ての遺伝子(外来
性ポリヌクレオチド)について相同である。トランスジェニック植物は、導入された導入
遺伝子について非相同であってもよく、好ましくは、例えば、ハイブリッド種子から生育
したF1子孫など、導入遺伝子について一律に非相同であってよい。そのような植物は、
当技術分野で周知の雑種強勢などの長所を備え得、または植物育種もしくは戻し交配で使
用され得る。
【0209】
関連する場合、トランスジェニック植物またはその部分は、これに限定されないが、Δ
6-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ
、Δ5-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、ジアシルグリセ
ロールアシルトランスフェラーゼ、LPAAT、Δ17-デサチュラーゼ、Δ15-デサ
チュラーゼ及び/またはΔ12-デサチュラーゼなどLC-PUFAの産生に関連する酵
素をコードする付加的導入遺伝子も含んでよい。1つ以上のこれらの活性を有するそのよ
うな酵素の例は、当技術分野で公知であり、本明細書に記載のものが挙げられる。具体例
では、トランスジェニック植物は;
a)Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、及びΔ6-
エロンガーゼ、
b)Δ5-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、及びΔ9-
エロンガーゼ、
c)Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロ
ンガーゼ、及びΔ15-デサチュラーゼ、
d)Δ5-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ9-エロ
ンガーゼ、及びΔ15-デサチュラーゼ、
e)Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロ
ンガーゼ、及びΔ17-デサチュラーゼ、
f)Δ5-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ9-エロ
ンガーゼ、及びΔ17-デサチュラーゼ、
g)ω3-デサチュラーゼまたはΔ15-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ
5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
h)ω3-デサチュラーゼまたはΔ15-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ
5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
i)Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼまたはΔ15-デサチュラーゼ、
Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガ
ーゼ、
j)Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼまたはΔ15-デサチュラーゼ、
Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガ
ーゼ、
k)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)
、ω3-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロン
ガーゼ、及びΔ5-エロンガーゼ、
l)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)
、Δ15-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロ
ンガーゼ、及びΔ5-エロンガーゼ、
m)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)
、Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロ
ンガーゼ、及びΔ5-エロンガーゼ、
n)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)
、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュラーゼ
、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロン
ガーゼ、
o)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)
、ω3-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロン
ガーゼ、及びΔ5-エロンガーゼ、
p)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)
、Δ15-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロ
ンガーゼ、及びΔ5-エロンガーゼ、
q)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)
、Δ12-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロ
ンガーゼ、及びΔ5-エロンガーゼ、または
r)1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)
、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュラーゼ
、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、及びΔ5-エロ
ンガーゼ、
をコードする外来性ポリヌクレオチドのセットを少なくとも含む。
【0210】
実施形態では、外来性ポリヌクレオチドは、ピシリウム・イレグラーレ(Pythiu
m irregulare)Δ6-エロンガーゼ、スラウストキトリッド(Thraus
tochytrid)Δ5-デサチュラーゼまたはエミリアナ ・ハックスレイ(Emi
liana huxleyi)Δ5-デサチュラーゼ、ニセツリガネゴケ(Physco
mitrella patens)Δ6-エロンガーゼ、スラウストキトリッド(Thr
austochytrid)Δ5-エロンガーゼまたはオストレオコッカス・タウリ(O
streocccus taurii)Δ5-エロンガーゼ、及びフィトフトラ・インフ
ェスタンス(Phytophthora infestans)ω3-デサチュラーゼま
たはピシリウム・イレグラーレ(Pythium irregulare)ω3-デサチ
ュラーゼであるポリペプチドのセットをコードする。
【0211】
実施形態では、本発明の、または本発明に使用される植物を、畑、好ましくは、本質的
に同じ、または少なくとも1ヘクタールまたは2ヘクタールの面積である少なくとも1,
000、1,000,000または2,000,000の植物の集団として生育する。栽
植密度は、植物種、植物品種、天候、土壌条件、肥料割合及び当技術分野で公知の他の因
子に応じて異なる。例えば、セイヨウアブラナは、通常、ヘクタール当たり1.2~1.
5百万植物の栽植密度で生育される。当技術分野で公知のように、植物を収穫し、植物を
刈取り(swathing)、引抜き及び/または刈取り(reaping)し、次いで
、植物素材を脱穀及び/または風選して、しばしばもみ殻の形態である植物部分の残部か
ら種子を分離することを含み得る。あるいは、種子を、1回の処理、例えば、コンバイン
収穫機で、畑の植物から収穫してもよい。
【0212】
植物の形質転換
トランスジェニック植物を、A.Slaterら、Plant Biotechnol
ogy-The Genetic Manipulation of Plants,O
xford University Press(2003)、及びP.Christo
u and H.Klee,Handbook of Plant Biotechno
logy,John Wiley and Sons(2004)に全般的に記載された
ものなど、当技術分野で公知の技術を用いて産生できる。
【0213】
本明細書で使用するとき、「安定に形質転換すること」、「安定に形質転換された」及
びその変化形は、それらの存在について積極的に選択する必要なく、細胞分裂中の子孫細
胞に転移されるように、該細胞のゲノム中に、外来性核酸分子を組み込むことを表す。安
定な形質転換、またはその子孫を、染色体DNAに対するサザンブロットまたはゲノムD
NAのin situハイブリダイゼーションなどの当技術分野で公知のいずれかの方法
により選択できる。好ましくは、植物形質転換を、本明細書の実施例で記載の通り実施す
る。
【0214】
アグロバクテリウム介在転移は、植物細胞ゲノム中のDNAの一過性発現または安定な
組込みのいずれかのため、全植物組織または植物器官または組織培養中の移植片中の細胞
に、DNAを導入できるので、植物細胞中に遺伝子を導入するために広範に応用できるシ
ステムである。DNAを植物細胞に導入するためのアグロバクテリウム介在植物組込みベ
クターの使用は、アグロバクテリウムまたはDNAを植物細胞に導入できる他の細菌を用
いたフローラルディップ法を含み、当技術分野で周知である(例えば、US517701
0、US5104310、US5004863またはUS5159135参照)。転移さ
れるDNA領域は、境界配列により画定され、介在DNA(T-DNA)は、通常、植物
ゲノムに挿入される。さらに、T-DNAの組込みは、ほとんど再転位のない比較的正確
な処理である。アグロバクテリウム介在形質転換が効率的である場合のこれらの植物品種
では、遺伝子導入の容易且つ定義された性質から、選択の方法となる。好ましいアグロバ
クテリウム形質転換ベクターは、記載のように便利な操作を可能とする、アグロバクテリ
ウムだけでなく大腸菌内で複製可能である(Kleeら、In:Plant DNA I
nfectious Agents、Hohn and Schell,eds.,Sp
ringer-Verlag,New York,pp.179~203(1985))
。
【0215】
使用され得る加速法としては、例えば、微粒子銃などが挙げられる。形質転換する核酸
分子を植物細胞に送達する方法の1つの例は、微粒子銃である。この方法は、Yangら
.Particle Bombardment Technology for Gen
e Transfer.Oxford Press,Oxford,England(1
994)に概説されている。非生物粒子(微粒子噴出体)を核酸で被覆し、推進力により
細胞に送達し得る。例証となる粒子としては、タングステン、近、プラチナ等から成るも
のが挙げられる。単子葉植物を再現性よく形質転換する効率的手段であることに加えて、
微粒子銃の特定の利点は、プロトプラストの単離もアグロバクテリウム感染の感受性も必
要ないことである。
【0216】
別の代替の実施形態では、プラスチドを、安定に形質転換できる。高等植物のプラスチ
ド形質転換について開示された方法としては、選択可能なマーカーを含み、DNAを相同
組換えによるプラスチドゲノムに標的化するDNAのパーティクルガン送達が挙げられる
(US5,451,513、US5,545,818、US5,877,402、US5
,932479、及びWO99/05265)。
【0217】
細胞形質転換の他の方法も使用でき、これに限定されないが、花粉への直接DNA転移
により、植物の生殖器中へのDNAの直接注入により、または未成熟胚の細胞中にDNA
を直接注入して、次いで、乾燥胚に水分補給して戻すことにより、DNAを植物に導入す
ることが挙げられる。
【0218】
単一の植物プロトプラスト形質転換から、または様々な形質転換移植片からの植物の再
生、発育、及び栽培は、当技術分野で周知である(Weissbachら,In:Met
hods for Plant Molecular Biology,Academi
c Press,San Diego,Calif.,(1988))。この再生及び生
育過程としては、形質転換細胞の選択工程、定着小植物期を通して胚発育の通常期にわた
るこれらの個別化細胞の培養工程を通常含む。トランスジェニック胚及び種子を同様に再
生する。得られたトランスジェニック定着新芽を、その後に、土壌などの適切な植物生育
培地で栽培する。
【0219】
外来性(foreign)、外来性(exogenous)遺伝子を含む植物の発育ま
たは再生は、当技術分野で周知である。好ましくは、再生された植物を、相同トランスジ
ェニック植物を得るため自家受粉する。さもなければ、再生植物から得られた花粉を、農
学的に重要な系統の種子から生育する植物と交雑する。逆に、所望の外来性核酸を含む本
発明のトランスジェニック植物を、当業者に周知の方法を用いて栽培する。所望の外来性
核酸を含む本発明のトランスジェニック植物を、当業者に周知の方法を用いて培養する。
【0220】
トランスジェニック細胞及び植物内の導入遺伝子の存在を確認するため、ポリメラーゼ
連鎖反応(PCR)増幅法またはサザンブロット解析を、当業者に公知の方法を用いて実
施できる。導入遺伝子の発現産生物を、該産生物の性質に依存して、様々な方法のいずれ
かで検出でき、ウェスタンブロット法及び酵素アッセイを含む。一旦、トランスジェニッ
ク植物を得たならば、それらを、所望の表現型を有する植物組織または部分を産生するよ
うに生育し得る。該植物組織または部分を収穫、及び/または種子を採取し得る。種子は
、所望の特徴を有する組織または部分を含む追加の植物を成長源の役割をし得る。
【0221】
アグロバクテリウムまたは他の形質転換方法を用いて作成したトランスジェニック植物
は、1つ染色体上に単一の遺伝子座を通常含む。かかるトランスジェニック植物を、付加
遺伝子についてヘミ接合であると言うことができる。より好ましくは、付加遺伝子につい
てホモ接合であるトランスジェニック植物、すなわち、2つの付加遺伝子を含むトランス
ジェニック植物、染色体対の各染色体上の同じ坐位に1つの遺伝子である。ホモ接合トラ
ンスジェニック植物を、ヘミ接合トランスジェニック植物の自家受粉、産生種子のいくつ
かの発芽、及び対象となる遺伝子のため得られた植物の分析により得ることができる。
【0222】
2つの、独立して分離する外来性遺伝子または遺伝子座を含む2つの異なるトランスジ
ェニック植物も、遺伝子または遺伝子座の両セットを含む子孫を産生するため交雑(交配
)できる。適切なF1子孫の自家受粉は、外来性遺伝子または遺伝子座の両方についてホ
モ接合である植物を産生できる。親植物との戻し交配及び非トランスジェニック植物との
外交配も、植物性繁殖であると考えられる。異なる特色及び作物のため通常使用される他
の繁殖方法の説明を、Fehr,In:Breeding Methods for C
ultivar Development,Wilcox J.ed.,America
n Society of Agronomy,Madison Wis.(1987)
に見ることができる。
【0223】
外来性RNAレベルの増強及び安定化した発現
サイレンシングサプレッサー
実施形態では、植物細胞、植物または植物部分は、サイレンシングサプレッサータンパ
ク質をコードする外来性ポリヌクレオチドを含む。
【0224】
転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)は、細胞及びウイルスmRNAを分解PTG
Sの標的にし、外来性(非相同)または内在性DNAを安定にまたは一過性に形質転換さ
れた植物または真菌内で発生し、導入された核酸と配列類似性を有するRNA分子の蓄積
減少をもたらすことができるヌクレオチド配列特異的生体防御機構である。
【0225】
対象となる導入遺伝子とサイレンシングサプレッサーの同時発現が、該導入遺伝子から
転写される細胞内に存在するRNAレベルを増加させるだろうと広く考えられてきた。こ
のことがインビトロ細胞について真実であると証明した一方、著しい副作用が多くの全植
物同時発現試験で観察された。より具体的には、Malloryら(2002)、Cha
pmanら(2004)、Chenら(2004)、Dunoyerら(2004)、Z
hangら(2006)、Lewseyら(2007)及びMengら(2008)に記
載のように、概して構造的プロモーター下、植物発現サイレンシングサプレッサーは、し
ばしば、それらが商業生産に有用でなくなる程度まで表現型的に異常である。
【0226】
近年、RNA分子レベルを増加できる、及び/またはRNA分子レベルを、サイレンシ
ングサプレッサーの発現を植物またはその部分の種子に限定することにより、何世代にも
わたって安定化できることが分かった(WO2010/057246)。本明細書で使用
するとき、「サイレンシングサプレッサータンパク質」またはSSPは、特に、初めに形
質転換された植物から反復世代にわたって、植物細胞内の異なる導入遺伝子からの発現産
生物レベルを増強する植物細胞内で発現され得るポリペプチドである。実施形態では、S
SPは、ウイルスサイレンシングサプレッサーまたはその突然変異体である。大多数のウ
イルスサイレンシングサプレッサーは、当技術分野で公知であり、これに限定されないが
、P19、V2、P38、Pe-Po及びRPV-P0が挙げられる。実施形態では、ウ
イルスサイレンシングサプレッサーは、配列番号38の配列を有するアミノ酸、その生物
活性フラグメント、または配列番号38と少なくとも50%同一でありサイレンシングサ
プレッサーとしての活性を有するアミノ酸配列を含む。
【0227】
本明細書で使用するとき、「安定発現」、「安定に発現された」、「安定化された発現
」及びその変化形は、RNA分子レベルが、サイレンシングサプレッサーをコードする外
来性ポリヌクレオチドを含まないアイソジェニック植物と比較したとき、反復世代、例え
ば、少なくとも3世代、少なくとも5世代または少なくとも10世代にわたって、子孫植
物内で本質的に同じまたはより高いことを表す。しかしながら、この語は、反復世代にわ
たって、RNA分子レベルのいくらかのロス、前の世代と比較したとき、例えば、世代当
たり10%以上のロスがある可能性を除外しない。
【0228】
該サプレッサーを、いずれかの起源、例えば、植物、ウイルス、哺乳類、その他から選
択できる。該サプレッサーを得ることができるウイルス、及び各特定のウイルスからのサ
プレッサーのタンパク質(例えば、B2、P14、その他)またはコード領域指定の一覧
は、WO2010/057246参照。サプレッサーの多重コピーを使用してもよい。異
なるサプレッサーを一緒に使用してもよい(例えば、直列に)。
【0229】
RNA分子
本質的に、植物種子内で発現されるのが望ましいいずれかのRNAを、サイレンシング
サプレッサーと同時発現できる。コードされたポリペプチドは、オイル、デンプン、炭水
化物、栄養素、その他の代謝と関連し得る、またはタンパク質、ペプチド類、脂肪酸類、
脂質類、ワックス類、オイル類、デンプン類、糖類、炭水化物、香料、匂い、毒素類、カ
ロテノイド類、ホルモン類、高分子類、フラボノイド類、貯蔵タンパク質、フェノール酸
類、アルカロイド類、リグニン類、タンニン類、セルロース類、糖タンパク質、糖脂質、
他、好ましくは、TAGの生合成または会合体の合成に関与し得る。
【0230】
特定の例では、産生された植物は、アブラナ属、例えば、セイヨウアブラナまたはヒマ
ワリ、ベニバナ、アマ、ワタ、ダイズ、カメリナ(Camelina)またはトウモロコ
シなどの植物内のオイル産生のための酵素レベルを増加させた。
【0231】
産生されたLC-PUFAレベル
組換え細胞または種子などの植物部分内で産生されたLC-PUFAまたは複数のLC
-PUFAの組合せのレベルは重要である。特定のLC-PUFAまたは関連するLC-
PUFA群、例えば、ω3LC-PUFAもしくはω6LC-PUFA、もしくはVLC
-PUFA、もしくは当技術分野で公知の方法により決定され得るその他である総脂肪酸
の組成(%)として、レベルを表してよい。例えば、組換え細胞を含む物質の乾燥重量に
おけるLC-PUFAのパーセント、例えば、LC-PUFAである種子の重量のパーセ
ントなど、LC-PUFA含有率として、レベルを表してもよい。油料種子内で産生され
たLC-PUFAが、オイル産生物のために生育されない野菜または穀類におけるより、
LC-PUFA含有率の点でかなり高く、さらにどちらも類似のLC-PUFA組成を有
し、どちらもヒトまたは動物の食用LC-PUFAの供給源として使用してもよいことは
認識されるだろう。
【0232】
LC-PUFAレベルを、当技術分野で公知の方法のいずれかにより決定してもよい。
好ましい方法では、総脂質を細胞、組織または生物体から抽出し、ガスクロマトグラフィ
(GC)による分析前に、脂肪酸をメチルエステルに転換する。そのような技術を実施例
1に記載している。クロマトグラフィーのピーク位置を使用して各特定の脂肪酸を同定し
、各ピーク下の積算面積で量を決定し得る。本明細書で使用するとき、反対に明示されな
い限り、試料中の特定の脂肪酸のパーセントを、クロマトグラム中の脂肪酸の総面積パー
セントとして、この脂肪酸のピーク下面積から決定する。これは本質的に重量パーセント
(w/w)に対応する。脂肪酸の同定を、GC-MSにより確認し得る。総脂質を、当技
術分野で公知の技術により分離してTAGフラクションなどのフラクションを精製し得る
。例えば、薄層クロマトグラフィー(TLC)を、分析スケールで行って、TAGの脂肪
酸組成特異的に決定するために、DAG、アシル-CoAまたはリン脂質などの他の脂質
フラクションからTAGを分離し得る。
【0233】
1つの実施形態では、抽出脂質中の脂肪酸のARA、EPA、DPA及びDHAの合計
は、細胞内の総脂肪酸の約21%から約40%の間である。さらなる実施形態では、細胞
内の総脂肪酸は、1%未満のC20:1を有する。好ましい実施形態では、細胞内の抽出
可能なTAGは、本明細書に示されたレベルで脂肪酸を含む。本明細書に記載の脂質を定
義する特徴の各可能な組合せも包含する。
【0234】
組換え細胞、植物または種子などの植物部分内のLC-PUFA産生レベルを、本明細
書中、「転換効率」または「酵素効率」とも呼ぶ、1つ以上の産生脂肪酸に対する特異的
基質脂肪酸の転換パーセントとしても表してもよい。このパラメーターは、細胞、植物、
植物部分または種子から抽出された脂質の脂肪酸組成、すなわち、1つ以上の基質脂肪酸
(それ由来の全ての他脂肪酸を含む)のパーセントとして生成されたLC-PUFA(そ
れ由来の全ての他LC-PUFAを含む)の量に基づく。転換パーセントの一般式は:1
00x(産生LC-PUFA及びそれ由来の全産生物のパーセント総和)/(基質脂肪酸
及びそれ由来の全産生物のパーセント総和)である。DPAに関して、例えば、基質脂肪
酸(例えば、OA、LA、ALA、SDA、ETAまたはEPA)及び該基質由来のDP
Aを含む全産生物のレベルに対するDPAレベルの比として(脂質中の総脂肪酸含有率の
パーセントとして)、これを表してよい。転換パーセントまたは転換効率を、経路内の単
一酵素工程、または経路の部分もしくは全体について表すことができる。
【0235】
具体的転換効率を式に従って本明細書中算出する:
1. OAからDPA=100x(DHA%+DPA%)/(OA、LA、GLA、D
GLA、ARA、EDA、ALA、SDA、ETrA、ETA、EPA、DPA及びDH
Aの%総和)。
2. LAからDPA=100x(DHA%+DPA)/(LA、GLA、DGLA、
ARA、EDA、ALA、SDA、ETrA、ETA、EPA、DPA及びDHAの%総
和)。
3. ALAからDPA=100x(DHA%+DPA%)/(ALA、SDA、ET
rA、ETA、EPA、DPA及びDHAの%総和)。
4. EPAからDPA=100x(DHA%+DPA)/(EPA、DPA及びDH
Aの%総和)。
5. DPAからDHA(Δ4-デサチュラーゼ効率)=100X(DHA%)/(D
PA及びDHAの%総和)。
6. Δ12-デサチュラーゼ効率=100x(LA、GLA、DGLA、ARA、E
DA、ALA、SDA、ETrA、ETA、EPA、DPA及びDHAの%総和)/(O
A、LA、GLA、DGLA、ARA、EDA、ALA、SDA、ETrA、ETA、E
PA、DPA及びDHAの%総和)。
7.ω3-デサチュラーゼ効率=100x(ALA、SDA、ETrA、ETA、EP
A、DPA及びDHAの%総和)/(LA、GLA、DGLA、ARA、EDA、ALA
、SDA、ETrA、ETA、EPA、DPA及びDHAの%総和)。
8. OAからALA=100x(ALA、SDA、ETrA、ETA、EPA、DP
A及びDHAの%総和)/(OA、LA、GLA、DGLA、ARA、EDA、ALA、
SDA、ETrA、ETA、EPA、DPA及びDHAの%総和)。
9. Δ6-デサチュラーゼ効率(ω3基質ALA)=100x(SDA、ETA、E
PA、DPA及びDHAの%総和)/(ALA、SDA、ETrA、ETA、EPA、D
PA及びDHAの%)
10. Δ6-エロンガーゼ効率(ω3基質SDA)=100x(ETA、EPA、D
PA及びDHAの%総和)/(SDA、ETA、EPA、DPA及びDHAの%総和)。
11. Δ5-デサチュラーゼ効率(ω3基質ETA)=100x(EPA、DPA及
びDHAの%総和)/(ETA、EPA、DPA及びDHAの%総和)。
12. Δ5-エロンガーゼ効率(ω3基質EPA)=100x(DPA及びDHAの
%総和)/(EPA、DPA及びDHAの%総和)。
【0236】
本発明の脂質、好ましくは、種子オイルの脂肪酸組成は、総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸
または新ω6脂肪酸:新ω3脂肪酸のいずれかについて、総脂肪酸含有量におけるω6脂
肪酸:ω3脂肪酸の比によっても特徴付けられる。総ω6脂肪酸、総ω3脂肪酸、新ω6
脂肪酸及び新ω3脂肪酸という語は、本明細書で定義した意味を有する。本明細書で例証
された方法で、細胞、植物、植物部分または種子から抽出された脂質の脂肪酸組成から、
比を算出する。脂質中のω6脂肪酸より大きなω3レベルを有することが望ましく、従っ
て、1.0未満のω6:ω3比は好ましい。0.0の比は、定義されたω6脂肪酸が全く
存在しないことを示し;0.03の比を得た。このような低い比を、ω3-デサチュラー
ゼ、特に、本明細書に例証のピキア・パストリス(Pichia pastoris)ω
3-デサチュラーゼなどの真菌ω3-デサチュラーゼと一緒にω3基質選択性を有するΔ
6-デサチュラーゼの併用により達成できる。
【0237】
種子の重量当たりのLC-PUFAの収量を、種子中の総オイル含有率及び該オイル中
のDPA%に基づいて算出してもよい。例えば、もし、キャノーラ種子のオイル含有率が
約40%(w/w)及びオイル中の総脂肪酸含有量の約12%がDPAであるならば、種
子のDPA含有率は、約4.8%または種子グラム当たり約48mgである。約21%の
DPA含有率において、キャノーラ種子またはカメリナサティバ(Camelina s
ativa)種子は、種子グラム当たり約84mgのDPA含有量を有する。従って、本
発明は、セイヨウアブラナ(Brassica napus)、カラシナ(B. jun
cea)及びカメリナサティバ(Camelina sativa)植物、及び種子グラ
ム当たり少なくとも約80mgまたは少なくとも約84mgのDPAを含む、該植物から
得られた該種子を提供する。種子は、乾燥後(4~15%の含水)の収穫された成熟種子
について標準的に、水分を含有している。本発明は、種子を得ること及び該種子からオイ
ルを抽出することを含むオイルを得る方法、及び該オイルの使用及び本発明に記載の植物
から種子を収穫することを含む種子を得る方法も提供する。
【0238】
ヘクタール当たり産生されたDPAの量も、もし、ヘクタール当たりの種子の収量が既
知または推定できるならば算出できる。例えば、オーストラリアにおけるセイヨウアブラ
ナは、通常、ヘクタール当たり約2.5トンの種子を産生し、40%のオイル含有率にお
いて、約1000kgのオイルを産生する。総オイル中20.1%のDPAにおいて、こ
れは、ヘクタール当たり約200kgのDPAを得る。もし、オイル含有率が50%低下
すれば、これは、それでも、ヘクタール当たり約100kgのDPAを得る。
【0239】
現在までの証拠は、酵母または植物内で非相同に発現された、いくつかのデサチュラー
ゼは、いくつかのエロンガーゼとの併用で比較的低活性であることを示唆している。これ
を、LC-PUFA合成における基質としての脂肪酸のアシル-CoA形態を使用する能
力を有するデサチュラーゼの提供により軽減してもよく、これは、組換え細胞、特に、植
物細胞内で利点があると思われる。効率的DPA合成のための特に有益な組合せは、例え
ば、ミクロモナス・プシーラ(Micromonas pusilla)Δ6-デサチュ
ラーゼ(配列番号9)などのω3アシル基質に対する優先性を有するΔ6-デサチュラー
ゼ、または少なくとも95%のアミノ酸配列の同一性を有するその変異体と、例えば、ピ
キア・パストリス(Pichia pastoris)ω3-デサチュラーゼ(配列番号
6)などの真菌ω3-デサチュラーゼとである。
【0240】
本明細書で使用するとき、「本質的に含まない」という語は、組成物(例えば、液体ま
たはオイル)が規定の成分をほとんど(例えば、約0.5%未満、約0.25%未満、約
0.1%未満、または約0.01%未満)または全く含まないことを意味する。実施形態
では、「本質的に含まない」は、ルーチンの分析技術、例えば、特定の脂肪酸(ω6-ド
コサペンタエン酸など)を、実施例1で概要を述べたガスクロマトグラフィを用いて、成
分を検出できないことを意味する。
【0241】
実施形態では、(本発明の、または本発明のプロセス/方法で用いられる)本発明の抽
出脂質、抽出オイル、植物、もしくはたとえば種子など植物の一部、飼料、または本発明
の組成物は、全シス-6,9,12,15,18-ヘネイコサペンタエン酸(n-3 H
PA)を含まない。
【0242】
オイルの製造
当技術分野においてルーチンに実施される技術を、本発明の細胞、植物、種子、その他
により産生されたオイルを抽出、処理、及び分析するために使用できる。通常、植物種子
を調理し、圧力をかけ、抽出して粗オイルを製造し、それから該オイルを脱ガムし、精製
し、脱色し、脱臭する。概して、種子を粉砕する技術は、当技術分野において公知である
。例えば、油料種子を、水との噴霧により適度な柔らかさにして、例えば、含水率を8.
5%まで上げることができ、0.23~0.27mmのギャップ設定した平滑ローラーを
用いてフレーク状にする。種子のタイプに応じて、粉砕前に水を添加しなくてもよい。加
熱は酵素を不活性化させ、さらなる細胞破壊を促進し、油滴を凝集させ、タンパク質粒子
を凝集させる。これらの全ては、抽出処理を促進する。
【0243】
実施形態では、種子オイルの大部分を、スクリュープレスを通過させることにより遊離
する。それから、スクリュープレスから追い出されたケーキを、熱追跡カラム(heat
traced column)を用いて、例えば、ヘキサンで溶媒抽出する。あるいは
、圧搾操作により製造された粗オイルを、溝付きワイヤー排液上蓋を有する沈降タンクを
通過させて、圧搾操作中のオイルで発現された固形物を除去できる。澄ませたオイルを板
枠式圧濾機を通過させて、残った微細な固形粒子を除去できる。必要に応じて、抽出処理
から回収されたオイルを、澄ませたオイルと合わせて、配合粗オイルを製造できる。
【0244】
一旦、溶媒を粗オイルから取り除くと、圧搾及び抽出部分を合わせたものに対して、通
常のオイル処理方法を行う。本明細書で使用するとき、本発明の脂質またはオイルと組み
合わせて使用されるとき、「精製された」という語は、抽出脂質またはオイルに対して、
脂質/オイル成分の純度を上げる1つ以上の処理工程を行うことを意味する。例えば、精
製工程は、脱ガム、脱臭、脱色、乾燥及び/または抽出オイルの分取から成る群の1つ以
上または全てを含み得る。しかしながら、本明細書で使用するとき、「精製された」とい
う語は、総脂肪酸含有物のパーセントとしてDPA含有率を増加させるように、本発明の
脂質またはオイルの脂肪酸組成を変更するエステル交換反応処理または他の処理を含まな
い。言い換えれば、精製された脂質またはオイルの脂肪酸組成は、未精製の脂質またはオ
イルと本質的に同じである。
【0245】
脱ガム
脱ガムはオイル精製の初期工程であり、その主な目的は、総抽出脂質の約1~2%存在
し得る、該オイルからリン脂質のほとんどを除去することである。70~80℃において
、リン酸を通常含む、約2%の水を粗オイルに添加すると、微量金属及び顔料と会合した
リン脂質のほとんどが分離する。除去された不溶性物質は、主に、リン脂質及びトリアシ
ルグリセロールの混合物であり、レクチンとしても公知である。濃縮リン酸を粗種子オイ
ルに添加することにより、脱ガムを実行し、水和可能でないホスファチド類を水和可能な
形態に転換して、存在する少量の金属をキレート化できる。ガムを遠心分離により種子オ
イルから分離する。
【0246】
アルカリ精製
アルカリ精製は、時折、中和とも呼ばれる、粗オイルの処理の精製方法の1つである。
通常、脱ガム後、脱色前に行う。脱ガム後、十分量のアルカリ溶液の添加により、種子オ
イルを処理して、脂肪酸及びリン酸の全てを滴定し、こうして生成した石鹸を除去し得る
。適切なアルカリ物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、
水酸化リチウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム及び水酸化アンモニウムが挙げられ
る。この方法は、通常、室温において実行され、遊離脂肪酸部分を除去する。石鹸を遠心
分離または石鹸を溶媒に抽出することにより除去し、中和オイルを水で洗浄する。必要で
あれば、オイル中の過剰アルカリを、塩酸または硫酸などの適切な酸で中和してもよい。
【0247】
脱色
脱色は、漂白土(0.2~2.0%)の存在下、酸素の非存在下、窒素または蒸気でま
たは真空中での操作により、90~120℃において、10~30分間、オイルを加熱す
る精製方法である。オイル処理のこの工程は、望まれない顔料(カロテノイド、クロロフ
ィル、ゴシポール、他)を除去するように設計されており、この方法は、酸化生成物、微
量金属、イオウ化合物及び微量の石鹸も除去する。
【0248】
脱臭
脱臭は、高温(200~260℃)及び低圧(0.1~1mmHg)におけるオイル及
び脂肪の処理である。通常、約0.1ml/分/100mlの種子オイルの速度で種子オ
イル中に蒸気を導入することにより、これを実施する。約30分のスパージ後、種子オイ
ルを真空下冷却させる。種子オイルを、通常、ガラス容器に移動して、冷蔵貯蔵する前に
アルゴンを流す。この処理により、種子オイルの色を改善し、揮発性物質または残ってい
る遊離脂肪酸、モノアシルグリセロール及び酸化生成物を含む臭気化合物の大部分を除去
する。
【0249】
脱ろう
脱ろうは、オイル及び脂肪を、周囲以下の温度における結晶化により固体(ステアリン
)及び液体(オレイン)フラクションに分離するため、オイルの商業生産で時々使用され
る方法である。最初に、綿実油に応用され、固形分のない製品を製造した。オイルの飽和
脂肪酸含有量を減少させるために、通常使用される。
【0250】
エステル交換反応
本明細書で使用するとき、「エステル交換反応」は、TAG内及びTAG間で脂肪酸を
交換または脂肪酸を別のアルコールに転移してエステルを生成する方法を意味する。これ
は、遊離脂肪酸としてTAGから脂肪酸を遊離することを最初に含み得る、または直接、
脂肪酸エステル、好ましくは、脂肪酸メチルエステルまたはエチルエステルを生成し得る
。メタノールまたはエタノールなどのアルコールとTAGとのエステル交換反応では、ア
ルコールのアルキル基は、TAGのアシル基(DPAを含む)とのエステル結合を生成す
る。分取方法と合わせたとき、エステル交換反応を、脂質の脂肪酸組成の修飾のため使用
できる(Marangoniら、1995)。エステル交換反応は、化学的(例えば、強
酸または塩基触媒)または酵素的手段のいずれかを使用でき、後者は、TAGの脂肪酸に
対して位置特異的(sn-1/3またはsn-2特異的)であり得る、または他よりいく
つかの脂肪酸に対して選択性を有するリパーゼを使用する(Speranzaら、201
2)。オイル中のLC-PUFA濃度を上昇させる脂肪酸分取を、例えば、凍結結晶化、
尿素を用いた複合体形成、分子蒸留、超臨界流体抽出法、カウンターカレントクロマトグ
ラフィー及び銀イオン錯体化などの、当技術分野で公知の方法のいずれかにより実施でき
る。尿素との複合体形成は、オイル中の飽和及び一価不飽和脂肪酸レベルを低下するのに
その簡便さ及び効率のため、好ましい方法である(Gamezら、2003)。初めに、
オイルのTAGを、酸または塩基触媒反応条件下のいずれかで加水分解により、しばしば
、脂肪酸エステルの形態で、その構成脂肪酸に分割し、それにより、生成したアルキルア
ステルと生成されたまたはリパーゼによるグリセロールとの分離が可能であるように過剰
のアルコールを含む、少なくとも3モルのアルコール(例えば、エチルエステルにはエタ
ノールまたはメチルエステルにはメタノール)と、TAGの1モルを反応する。それから
、処理により脂肪酸組成が通常変更されない、これらの遊離脂肪酸または脂肪酸エステル
を複合体生成のため、尿素のエタノール溶液と混合してもよい。飽和及び一価不飽和脂肪
酸は、容易に尿素と複合体を形成し、冷却により晶出し、その後、濾過により除去しても
よい。非尿素複合フラクションは、それにより、LC-PUFAが豊富となる。
【0251】
飼料
本発明は、飼料として使用できる組成物を含む。本発明の目的のため、「飼料」は、体
に取り込まれたとき、(a)栄養を与えるまたは組織を蓄積するまたはエネルギーを供給
する役割をし;及び/または(b)充分な栄養状態または代謝機能を維持、回復または支
持するヒトまたは動物の食用の食物または製剤を含む。本発明の飼料としては、例えば、
乳児用調整粉乳、及び本発明のシードミールなどの乳児及び/または幼児のための栄養組
成物が挙げられる。
【0252】
本発明の飼料は、例えば、本発明の細胞、本発明の植物、本発明の植物部分、本発明の
種子、本発明の抽出物、本発明の方法の産生物、本発明の発酵処理産生物、または適切な
担体を伴う組成物を含む。「担体」という語は、栄養価値を有していても有していなくて
もよいいずれかの成分を包含するという広義の意味で使用される。熟練者が認識するよう
に、担体は、飼料を消費する生物に対して有害な影響を有しないように、該飼料中に使用
に適切(または充分に低濃度で使用される)でなければならない。
【0253】
本発明の飼料は、本明細書に記載の方法の使用、細胞または植物により直接または間接
的に産生されたオイル、脂肪酸エステル、または脂肪酸を含む。組成物は、固体または液
体のいずれかであってよい。加えて、組成物は、特定の使用に望ましい量で、食用多量栄
養素、タンパク質、炭水化物、ビタミン類、及び/またはミネラル類を含んでもよい。こ
れらの成分量は、該組成物が、正常な個体が使用するのか、代謝障害等に患っている個体
などの専門的ニーズを有する個体が使用するのか、どちらを意図するかに依って異なるだ
ろう。
【0254】
栄養価値を有する適切な担体の例としては、これに限定されないが、食用脂肪などの多
量栄養素、炭水化物及びタンパク質が挙げられる。かかる食用脂肪の例としては、これに
限定されないが、ココナツオイル、ルリジサオイル、真菌オイル、黒潮オイル、ダイズオ
イル、及びモノ-及びジグリセリドが挙げられる。かかる炭水化物の例としては(これに
限定されないが):グルコース、食用ラクトース、及び加水分解デンプンが挙げられる。
さらに、本発明の栄養組成物で利用され得るタンパク質の例としては、(これに限定され
ないが)ダイズタンパク質、電気透析ホエー、電気透析スキムミルク、ミルクホエー、ま
たはこれらのタンパク質の加水分解産物が挙げられる。
【0255】
ビタミン類及びミネラル類に関して、本発明の飼料組成物に、以下のものを添加しても
よい:カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、塩化物、マグネシウム、マンガン、鉄
、銅、亜鉛、セレン、ヨウ素、及びビタミンA、E、D、C、及びビタミンB複合体が挙
げられる。他のかかるビタミン類及びミネラル類も添加してよい。
【0256】
本発明の飼料組成物で利用される成分は、半精製または精製された原料であり得る。半
精製または精製というのは、天然物質の精製またはデノボ合成により準備された物質を意
味する。
【0257】
本発明の飼料組成物を、食事補給を必要としないときでさえ、食物に添加してもよい。
例えば、該組成物を、(これに限定されないが):マーガリン、モディファイドバター、
チーズ、牛乳、ヨーグルト、チョコレート、キャンディー、スナック類、サラダオイル、
料理用油、料理用油脂、肉類、魚及び野菜類を含む、いずれかのタイプの食物に添加して
よい。
【0258】
加えて、本発明に従って産生された脂肪酸または対象遺伝子を含み発現するように形質
転換された宿主細胞を、ヒトまたは動物の食用により望ましいものに、動物の蘇生器、卵
または乳脂肪酸組成物を変えるための動物用栄養補助食品としても使用してよい。かかる
動物の例としては、ヒツジ、ウシ、ウマ、ニワトリ等の家禽類が挙げられる。
【0259】
さらに、本発明の飼料を、例えば、ヒトまたは動物の食用エビなどの魚または甲殻類の
脂肪酸レベルの増加させるように水産養殖で使用できる。好ましい魚はサケである。
【0260】
本発明の好ましい飼料は、ヒトまたは他の動物用食物または餌として直接使用され得る
葉及び幹などの植物、種子及び他の植物部分である。例えば、動物は、畑で成育したその
ような植物を直接食べてもよい、または制御された給餌でより計量された量を与えられて
もよい。本発明は、ヒトまたは他の動物のLC-PUFAレベルを増加するために食料と
してかかる植物及び植物部分の使用を含む。
【0261】
実施形態では、飼料は、本発明の脂質またはオイルを含む乳児用調製粉乳である。本明
細書において用いられる場合、「乳児用調製粉乳」とは、乳児の栄養要求の少なくとも一
部を満たす非天然組成物を意味する。「乳児」とは、出生時から、1歳を超えない範囲の
年齢のヒト対象を意味し、0から12か月の間の補正年齢の乳児を含む。「補正年齢」と
いう文言は、乳児が未熟児であった期間を引いた乳児の実年齢を意味する。従って、補正
年齢は、もしその乳児が正期産で生まれた場合の乳児の年齢である。本明細書において用
いられる場合「非天然」とは、その生成物は自然界には存在しないが、ヒトの介入により
生成されることを意味する。本明細書において用いられる場合、本発明の乳児用調製粉乳
は、純粋なヒトの母乳(Koletzkoら、1988)及び非ヒト動物により産生され
た純粋な乳は含まないが、本発明の乳児用調製粉乳は、たとえばホエータンパク質もしく
はラクトースなどの、乳のタンパク質または炭水化物などの、乳由来の成分は含みうる。
本発明の乳児用調製粉乳は、たとえば牛肉、海獣肉、鯨肉または魚類などの天然の食肉は
含まないが、本発明の乳児用調製粉乳は、たとえばこれらの源由来のタンパク質などの成
分は含みうる。本発明の乳児用調製粉乳は、総脂肪酸含有量の好ましくは0.05重量%
から約0.5重量%の間のレベルで本発明のDPAを含む脂質を常に含有する。該DPA
は、TAGとして、リン脂質として、または非エステル化脂肪酸として、またはそれらの
混合物として存在しうる。本発明の脂質またはオイルは、当分野に公知の方法を用いて乳
児用調製粉乳に混合されてもよい。たとえば、当業者であれば、DPAが、下記文献中に
記載されている1つ以上の多価不飽和脂肪酸に加えて添加されている、または代わりに添
加されている、WO2008/027991、US20150157048、US201
5094382及びUS20150148316に記載されている方法を一般的に用いて
、本発明の乳児用調製粉乳を容易に製造することができる。
【0262】
1つの例において、乳児用調製粉乳は、DPA(すなわち、本明細書に記載されるオメ
ガ-3 DPA)を、任意選択的にプレバイオティクス、特にポリデキストロース(PD
X)及びガラクト-オリゴ糖(GOS)、非ヒト源由来のラクトフェリン、ならびに他の
長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)と共に含む。一部の実施形態では、栄養組成物
は、SDA及び/またはガンマ-リノレン酸(GLA)をさらに含む。ある実施形態では
、乳児用調製粉乳は、約7g/100kcal以下の脂肪源または脂質源、より好ましく
は約3g/100kcal~約7g/100kcalの脂肪源または脂質源を含み、この
場合において、該脂肪源または脂質源は、少なくとも約0.5g/100kcal、より
好ましくは約1.5g/100kcal~約7g/100kcal;約7g/100kc
al以下のタンパク質源またはタンパク質相当の源、より好ましくは約1g/100kc
al~約7g/100kcalのタンパク質源またはタンパク質相当の源;及び少なくと
も約5g/100kcalの炭水化物、より好ましくは約5g~約25g/100kca
lの炭水化物を含む。乳児用調製粉乳は、1)少なくとも約10mg/100kcalの
ラクトフェリン、より好ましくは約10mg/100kcal~約200mg/100k
calのラクトフェリン;2)約0.1g/100kcal~約1g/100kcalの
PDX及びGOSを含有するプレバイオティクス組成物;及び3)DHAを含有する少な
くとも約5mg/100kcalの追加のLC-PUFA(すなわち、DPA以外のLC
-PUFA)、より好ましくはDHAを含有する5mg/100kcal~約75 mg
/100kcalの追加のLC-PUFA、のうちの1つ以上、またはすべてをさらに含
んでもよい。
【0263】
実施形態では、乳児用調製粉乳の総脂肪酸含有量におけるDPA:DHAの比率は、1
:3と2:1の間である。EPAが存在してもよいが、存在しないほうが好ましい。もし
存在する場合、総脂肪酸含有量におけるEPA:DPAの比率は、好ましくは1:2未満
、より好ましくは1:5未満である。ARAが存在しなくてもよいが、存在するほうが好
ましく、総脂肪酸含有量におけるARA:DPAの比率は、好ましくは、1:3と2:1
の間である。最も好ましくは、乳児用調製粉乳中の各LC-PUFAのレベルは、任意の
ヒト母乳中に見られるレベルとほぼ同じであり、ヒト母乳は、自然状態で、母体の年齢、
遺伝的素因、食事摂取量、及び栄養状態により変動を示す。たとえば、Koletzko
ら、(1988)を参照のこと。好ましい実施形態では、乳児用調製粉乳は、検出可能レ
ベルのヘネイコサペンタエン酸(HPA、21:5ω3)を含まない。
【0264】
たとえば、乳児用調製粉乳とは、液体、粉末、ゲル、ペースト、固形物、濃縮物、懸濁
液、またはすぐに使用可能な形態の経腸調製物、経口調製物、乳児用の調製物を指し得る
。
【0265】
本開示において有用なプレバイオティクスは、ポリデキストロース、ポリデキストロー
ス粉末、ラクツロース、ラクトスクロース、ラフィノース、グルコ-オリゴ糖、イヌリン
、フルクト-オリゴ糖、イソマルト-オリゴ糖、ダイズオリゴ糖、ラクトスクロース、キ
シロ-オリゴ糖、キト-オリゴ糖、マンノ-オリゴ糖、アリビノ-オリゴ糖、シアリル-
オリゴ糖、フコ-オリゴ糖、ガラクト-オリゴ糖、及びゲンチオ-オリゴ糖を含んでもよ
い。
【0266】
また、本開示の栄養組成物にラクトフェリンが含まれてもよい。ラクトフェリンは種に
よって1~4個のグリカンを含有する約80kDの単鎖ポリペプチドである。異種のラク
トフェリンの3D構造は非常に似ているが、同じではない。各ラクトフェリンはNローブ
及びCローブと呼ばれる2つの対応するローブを含有し、それぞれ該分子のN末端部分と
C末端部分を指す。
【0267】
タンパク質源またはタンパク質相当の源は、たとえば無脂肪乳、ホエータンパク質、カ
ゼイン、大豆タンパク質、タンパク質加水分解物、アミノ酸などの当分野で用いられてい
る任意のものであってもよい。本開示の実施に有用なウシの乳タンパク質源としては、限
定されないが、乳タンパク質粉末、乳タンパク質濃縮物、乳タンパク質単離物、無脂肪乳
固形物、無脂肪乳、脱脂粉乳、ホエータンパク質、ホエータンパク質単離物、ホエータン
パク質濃縮物、スイートホエー、酸ホエー、カゼイン、酸カゼイン、カゼイン塩(たとえ
ばカゼインナトリウム、カゼインナトリウムカルシウム、カゼインカルシウムなど)、及
びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0268】
適切な炭水化物源は、たとえばラクトース、グルコース、フルクトース、コーンシロッ
プ固形物、マルトデキストリン、スクロース、デンプン、ライスシロップ固形物などの当
分野で用いられる任意のものであってもよい。栄養組成物中の炭水化物成分の量は、少な
くとも約5g/100kcalであり、一般的には約5gと約25g/100kcalの
間で変化し得る。一部の実施形態では、該炭水化物の量は、約6gと約22g/100k
calの間である。他の実施形態では、該炭水化物の量は、約12gと約14g/100
kcalの間である。一部の実施形態では、コーンシロップ固形物が好ましい。さらに、
加水分解された、部分的に加水分解された、及び/または十分に加水分解された炭水化物
が、その消化の容易さを理由として、栄養組成物中での含有に望ましい場合がある。具体
的には、加水分解された炭水化物は、アレルゲンとなるエピトープを含有する可能性が低
い。本明細書における使用に適した炭水化物性物質の非限定的な例としては、トウモロコ
シ、タピオカ、コメ、またはジャガイモを源とする、加水分解されたまたは損なわれてい
ない、天然または化学修飾された、ワックス形態または非ワックス形態のデンプンが挙げ
られる。適切な炭水化物の非限定的な例としては、加水分解されたコーンスターチ、マル
トデキストリン、マルトース、コーンシロップ、デキストロース、コーンシロップ固形物
、グルコース、及び様々な他のグルコースポリマー、ならびにそれらの組み合わせとして
特徴づけられる様々な加水分解されたデンプンが挙げられる。他の適切な炭水化物の非限
定的な例としては、スクロース、ラクトース、フルクトース、高フルクトースコーンシロ
ップとしばしば呼称されるもの、たとえばフルクトオリゴ糖などの消化しにくいオリゴ糖
、及びそれらの組み合わせ、が挙げられる。
【0269】
好ましくは、対象の1日栄養所要量を供給するのに十分な量の1つ以上のビタミン及び
/またはミネラルが乳児用調製粉乳に加えられていてもよい。当分野の当業者であれば、
該ビタミン及びミネラル要求量は、たとえば小児の年齢に基づき変化することが理解され
るであろう。栄養組成物は、任意選択的に、限定されないが、以下のビタミンまたはその
誘導体を1つ以上含みうる:ビタミンB1(チアミン、チアミンピロリン酸、TPP、チ
アミン三リン酸、TTP、チアミン塩酸塩、チアミン硝酸塩)、ビタミンB2(リボフラ
ビン、フラビンモノヌクレオチド、FMN、フラビンアデニンジヌクレオチド、FAD、
ラクトフラビン、オボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン、ニコチン酸、ニコチンア
ミド、ナイアシンアミド、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、NAD、ニコチン酸
モノヌクレオチド、NicMN、ピリジン-3-カルボン酸)、ビタミンB3前駆体トリ
プトファン、ビタミンB6(ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン、塩酸ピリ
ドキシン)、パントテン酸(パントテン酸塩、パンテノール)、葉酸塩(葉酸、フォラシ
ン、プテロイルグルタミン酸)、ビタミンB12(コバラミン、メチルコバラミン、デオ
キシアデノシルコバラミン、シアノコバラミン、ヒドロキシコバラミン、アデノシルコバ
ラミン)、ビオチン、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンA(レチノール、酢酸レ
チニル、パルミチン酸レチニル、他の長鎖脂肪酸を有するレチニルエステル、レチナール
、レチノイン酸、レチノールエステル)、ビタミンD(カルシフェロール、コレカルシフ
ェロール、ビタミン3、1,25-ジヒドロキシビタミンD)、ビタミンE(α-トコフ
ェロール、α-酢酸トコフェロール、α-コハク酸トコフェロール、α-ニコチン酸トコ
フェロール、α-トコフェロール)、ビタミンK(ビタミンK1、フィロキノン、ナフト
キノン、ビタミンK2、メナキノン-7、ビタミンK3、メナキノン-4、メナジオン、
メナキノン-8、メナキノン-8H、メナキノン-9、メナキノン-9H、メナキノン-
10、メナキノン-11、メナキノン-12、メナキノン-13)、コリン、イノシトー
ル、β-カロテン、及びそれらの任意の組み合わせ。さらに、栄養組成物は、任意選択的
に、限定されないが、以下のミネラルまたはその誘導体を1つ以上含み得る:ホウ素、カ
ルシウム、酢酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、
リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩素、クロム、塩化クロム、クロミウムピコロネー
ト、銅、硫酸銅、グルコン酸銅、硫酸銅、フッ素、鉄、カルボニル鉄、第二鉄、フマル酸
第一鉄、リン酸第二鉄、鉄粉砕物(iron trituration)、多糖鉄、ヨウ
化物、ヨウ素、マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウ
ム、ステアリン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、マンガン、モリブデン、リン、カリ
ウム、リン酸カリウム、ヨウ化カリウム、塩化カリウム、酢酸カリウム、セレニウム、硫
黄、ナトリウム、ドキュセートナトリウム、塩化ナトリウム、セレン酸ナトリウム、モリ
ブデン酸ナトリウム、亜鉛、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、及びそれらの混合物。ミネラル化合物
の非限定的な誘導体例としては、塩、アルカリ塩、エステル、及び任意のミネラル化合物
のキレートが挙げられる。ミネラルは、たとえばリン酸カルシウム、グリセロールリン酸
カルシウム、クエン酸ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム
、硫酸鉄、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸マンガン、及びセレン酸ナトリウムなどの塩の形態で
栄養組成物に添加されてもよい。当分野内で公知の追加のビタミン及びミネラルが添加さ
れてもよい。
【0270】
実施形態では、本発明の乳児用調製粉乳、または本発明を用いて作製される乳児用調製
粉乳は、DPAを含有するヒトの乳もしくは動物の乳またはそれらの抽出物を含まない。
【0271】
他の実施形態では、乳児用調製粉乳の総脂肪酸含有量におけるオメガ-6DPAのレベ
ルは2%未満であり、好ましくは1%未満であり、または0.1%~2%の間であり、よ
り好ましくは含まれていない。
【0272】
組成物
本発明は、組成物、特に、1つ以上の脂肪酸及び/または好ましくは、脂肪酸のエチル
エステルの形態の、本発明の方法を用いて産生され得られたオイルを含む医薬組成物も包
含する。
【0273】
医薬組成物は、標準的で周知の無毒性薬剤的に許容可能な担体、賦形剤またはリン酸緩
衝食塩水、水、エタノール、ポリオール類、植物油類、湿潤剤または、水/油エマルジョ
ンなどの、エマルジョンなどの媒体と組み合わせて、1つ以上の脂肪酸及び/またはオイ
ルを含んでよい。組成物は、液体または固体のいずれかであってよい。例えば、組成物は
、錠剤、カプセル剤、接種可能な液体もしくは散剤、注射剤、または局所軟膏剤もしくは
クリーム剤の形態であってよい。適切な流動性を、例えば、分散剤の場合では必要な粒径
の維持及び界面活性剤の使用により維持できる。等張剤、例えば、糖類、塩化ナトリウム
等を含むことも望ましい場合がある。そのような不活性希釈剤に加えて、組成物は、湿潤
剤、乳化及び懸濁剤、甘味料、香味料及び芳香剤などのアジュバントも含むことができる
。
【0274】
活性化合物に加えて、懸濁剤は、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエ
チレンソルビトール及びソルビタンエステル、結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロ
キシド、ベントナイト、寒天、及びトラガカントまたはこれらの物質の混合物を含んでよ
い。
【0275】
錠剤及びカプセル剤などの固体剤形を、当技術分野で周知の技術を用いて製剤できる。
例えば、本発明に従って産生された脂肪酸を、アカシア、コーンスターチまたはゼラチン
などの結合剤、ジャガイモデンプンまたはアルギン酸などの崩壊剤、及びステアリン酸ま
たはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤と組み合わせて、ラクトース、ショ糖、及び
コーンスターチなどの従来の錠剤用基材で打錠できる。カプセル剤を、酸化防止剤及び関
連する脂肪酸と共に、ゼラチンカプセル中にこれらの賦形剤を組み込むことにより製剤で
きる。
【0276】
静脈内投与のため、本発明に従って産生した脂肪酸またはその誘導体を、市販製剤中に
組み入れてもよい。
【0277】
特定の脂肪酸の典型的投与量は、1日1~5回の服用で、0.1mg~20g(1日1
00gまで)であり、好ましくは、1日約10mg~約1、2、5、または10gの範囲
(1回または複数回投与で服用)である。当技術分野で公知のように、最小約300mg
/日の脂肪酸、特にLC-PUFAが望ましい。しかしながら、いずれの量の脂肪酸も対
象に有益であろうと考えられる。
【0278】
本発明の医薬組成物の可能な投与経路としては、例えば、経腸(例えば、経口及び直腸
)及び非経口が挙げられる。例えば、液体製剤を、経口または直腸投与してよい。加えて
、均一混合物を無菌条件下で、生理学的に許容可能な希釈剤、防腐剤、緩衝剤またはスプ
レー剤もしくは吸入剤を作成するための噴霧剤と混合した水中に完全に分散できる。
【0279】
患者に投与される組成物の投与量を、当業者が決定してよく、患者の体重、患者の年齢
、患者の健康全般、患者の病歴、患者の免疫状態、他に依存する。
【0280】
加えて、本発明の組成物を、化粧品目的用に利用してもよい。混合物を生成または対象
となる発明に従って産生した脂肪酸を化粧品組成物中の単独「活性」成分として使用して
もよいように、既に存在する化粧品組成物に添加してよい。
【実施例0281】
実施例1.物質及び方法
一過性発現系の植物細胞内の遺伝子の発現
外来性遺伝子構築物を、Voinnetら(2003)及びWoodら(2009)に
より記載されたように、本質的に一過性発現系の植物細胞内で発現した。
【0282】
脂肪酸のガスクロマトグラフィ(GC)分析
30m SGE-BPX70カラム(70%シアノプロピルポリシルフェニレン-シロ
キサン、内径0.25mm、膜厚0.25mm)、FID、スプリット/スプリットレス
インジェクター及びAgilent Technologies7693シリーズオート
サンプラー及びインジェクターを備えたAgilent Technologies78
90A GC(米国カリフォルニア州パロアルト)を用いてガスクロマトグラフィにより
、FAMEを分析した。キャリアガスとしてヘリウムを使用した。150℃のオーブン温
度において、スプリットモード(比50:1)で試料を注入した。注入後、オーブン温度
を1分間150℃で保持し、その後、3℃/分で210℃まで上昇させ、再度、50℃/
分で240℃まで上昇させ、最終的に240℃で1.4分保持した。外部標準GLC-4
11(Nucheck)及びC17:0-ME内部標準の既知量の応答に基づいて、Ag
ilent Technologies ChemStationソフトウェア(Rev
B.04.03(16)、米国カリフォルニア州パロアルト)を用いて、ピークを定量
化した。
【0283】
脂質の液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)
開花後12日目(daf)、凍結乾燥した発育種子及び内部定量標準としてトリ-C1
7:0-TAGの既知量を添加後の成熟種子から総脂質を抽出した。乾燥物質5mg当た
りブタノール:メタノール(1:1v/v)中の10mMブチル化ヒドロキシトルエン1
mL中に抽出脂質を溶解し、Agilent1200シリーズLC及び6410bエレク
トロスプレーイオン化トリプル四重極LC-MSを用いて分析した。流速0.2mL/分
でバイナリーグラジエントを用いて、Ascentis Express RP-アミド
カラム(50mm x 2.1mm、2.7μm、Supelco)を用いて、液体をク
ロマトグラフィー法で分離した。移動相は:A.10mMギ酸アンモニウム水溶液:メタ
ノール:テトラヒドロフラン(50:20:30v/v/v);B.10mMギ酸アンモ
ニウム水溶液:メタノール:テトラヒドロフラン(5:20:75v/v/v)。多重反
応モニタリング(MRM)リストは、コリジョンエネルギー30V及びフラグメンタ60
Vを用いて、次の主要脂肪酸:16:0、18:0、18:1、18:2、18:3、1
8:4、20:1、20:2、20:3、20:4、20:5、22:4、22:5、2
2:6に基づいた。22:6のニュートラルロスからアンモニアと化合したプリカーサ-
イオンとプロダクトイオンに基づいて、個々のMRM TAGを同定した。10μMトリ
ステアリン外部標準を用いて、TAGを定量化した。
【0284】
LC-MSを用いた脂質プロファイリング
Agilent6410Bエレクトロスプレーイオン化QQQ-MS(Agilent
、米国カリフォルニア州パロアルト)と連結したAgilent1200シリーズLCを
用いて、抽出した総脂質を分析した。流速0.2mL/分でバイナリーグラジエントを用
いたAscentis Express RP-アミド 50mm x 2.1mm、2
.7μm HPLCカラム(Sigma-Aldrich、オーストラリア、キャッスル
ヒル)を用いて、各総脂質抽出物5μLを注入して、クロマトグラフィー法で分離した。
移動相は:A.10mMギ酸アンモニウム水溶液:メタノール:テトラヒドロフラン(5
0:20:30v/v/v);B.10mMギ酸アンモニウム水溶液:メタノール:テト
ラヒドロフラン(5:20:75v/v/v)。コリジョンエネルギー30V及びフラグ
メンテーションエネルギー60Vを用いて、多重反応モニタリング(MRM)により、選
択した中性脂質(TAG及びDAG)及びリン脂質(PC、PE、PI、PS、PA、P
Gを含むPL)を分析した。次の主要脂肪酸:16:0(パルミチン酸)、18:0(ス
テアリン酸)、18:1ω9(オレイン酸、OA)、18:2ω6(リノール酸、LA)
、18:3ω3(α-リノレン酸、ALA)、18:4ω3(ステアリドン酸、SDA)
、20:1、20:2、20:3、20:4ω3、20:5ω3、22:4ω3、22:
5ω3、22:6ω3に、中性脂質を標的とし、一方、それぞれ、0-3、0-4、0-
5、4-6の二重結合を有するC16、C18、C20及びC22化学種を含めてリン脂
質をスキャンした。
【0285】
20:1、SDA、EPA及びDHAのニュートラルロスからアンモニアと化合したプ
リカーサ-イオンとプロダクトイオンに基づいて、個々のMRM TAGを同定した。外
部標準として50μMトリステアリン及びジステアリンを用いて、TAG及びDAGを定
量化した。10μMのジ-18:0-PC、ジ-17:0-PA、ジ-17:0-PE、
17:0-17:1-PG、ジ-18:1-PI及びジ-17:0-PS外部標準(Av
anti Polar Lipids、米国アラバマ州アラバスター)を日いて、PLを
定量化した。選択したTAG、DAG及びPL化学種を、Agilent6520Q-T
OF MS/MSによりさらに確認した。
【0286】
種子脂肪酸プロファイル及びオイル含有率の決定
種子オイル含有率を決定する場合、種子を、24時間デシケーター内で乾燥し、種子約
4mgを、テフロン加工スクリューキャップを含む2mlガラスバイアル中に移動した。
トルエン0.1ml中に溶解したトリヘプタデカノイン0.05mgを内部標準としてバ
イアルに添加した。
【0287】
種子FAMEを、種子物質を含むバイアルに、1N HClメタノール溶液(Supe
lco)0.7mlを添加することにより調製し、短時間ボルテックスし、80℃で2時
間インキュベートした。室温まで冷却後、0.9%NaCl(w/v)0.3ml及びヘ
キサン0.1mlを該バイアルに添加し、Heidolph Vibramax 110
で、10分間よく混合した。FAMEを、0.3mlガラスインサート中に集め、前述の
ように水素炎イオン化検出器(FID)を備えたGCにより分析した。
【0288】
市販標準品GLC-411(NU-CHEK PREP,INC.、米国)中に存在す
る同じFAMEの既知量のピーク面積応答に基づき、個々のFAMEのピーク面積を、先
ず補正した。GLC-411は、C8:0~C22:6の範囲の等量の31種の脂肪酸(
重量%)を含む。標準品中に存在しなかった脂肪酸の場合、本発明者らは、最も類似のF
AMEのピーク面積応答を利用した。例えば、16:1d9のFAMEのピーク面積応答
を16:1d7に使用し、C22:6のFAME応答をC22:5に使用した。内部標準
質量との比較により、補正面積を使用して、試料中の各FAMEの質量を算出した。オイ
ルを、主に、TAGの形態で貯蔵し、その重量を、FAMEの重量に基づいて算出した。
各FAMEのモル数を計算し、FAMEの総モル数を3で割ることにより、グリセロール
の総モル数を決定した。関係:オイルの重量%=100 x ((41 x FAME総
モル数/3)+(FAME総g数-(15 x FAME総モル数)))/種子g数(式
中、41及び15は、それぞれ、グリセロール部分とメチル基のモル重量である)を用い
て、グリセロール及び脂肪アシル部分の総和として、TAGを算出した。
【0289】
オイル試料のステロール含有率の分析
内部標準としてC24:0モノオールのアリコットを添加して一緒にオイル約10mg
の試料を、80%MeOH中5%KOH4mLを用いてけん化し、テフロン加工スクリュ
ーキャップしたガラスチューブ内で80℃2時間加熱した。反応混合物を冷却後、ミリQ
水2mLを添加し、ステロールを、振盪及びボルテックスすることにより、ヘキサン:ジ
クロロメタン(4:1v/v)2mL中に抽出した。混合物を遠心分離し、ステロール抽
出物を除去し、ミリQ水2mLで洗浄した。それから、該ステロール抽出物を振盪及び遠
心分離後に除去した。該抽出物を窒素ガス気流中で蒸発し、BSTFA200mLを用い
て、ステロールをシリル化し、80℃で2時間加熱した。
【0290】
ステロールのGC/GC-MS分析のため、ステロール-OTMSi誘導体を40℃に
おいてヒートブロック上で窒素ガス気流下乾燥し、それから、GC/GC-MS分析直前
に、クロロホルムまたはヘキサン中に再溶解した。Supelco Equity(商標
)-1フューズドシリカキャピラリーカラム(15m x 0.1mm(内径)、膜厚0
.1μm)、FID、スプリット/スプリットレスインジェクター及びAgilent
Technologies7683Bシリーズオートサンプラー及びインジェクターを備
えたAgilent Technologies 6890A GC(米国カリフォルニ
ア州パロアルト)を用いたガスクロマトグラフィ(GC)により、ステロール-OTMS
誘導体を分析した。キャリアーガスはヘリウムだった。オーブン温度120℃においてス
プリットレスモードで試料を注入した。注入後、オーブン温度を、10℃/分で270℃
まで、最終的に、5℃/分で300℃まで上昇させた。Agilent Technol
ogies ChemStationソフトウェア(米国カリフォルニア州パロアルト)
を用いて、ピークを定量化した。GC結果には、個々の成分面積の±5%の誤差がある。
【0291】
GC-質量分光(GC-MS)分析を、Finnigan Thermoquest
GCQ GC=MS及びFinnigan Thermo Electron Corp
oration GC-MSで行った;両システムは、オンカラムインジェクター及びT
hermoquest Xcaliburソフトウェア(米国テキサス州オースチン)を
備えていた。各GCは、上記のものと同様な極性のキャピラリーカラムを装着していた。
質量分析データを用いて、且つ信頼ある基準及び実験室基準で得られたものと保持時間デ
ータを比較することにより、個々の成分を同定した。試料バッチと同時に、全工程のブラ
ンク分析を行った。
【0292】
RT-PCR条件
順方向プライマー10pmol(ピコモル)及び逆方向プライマー30pmol、最終
濃度2.5mMまでのMgSO4、緩衝剤を含むRNA合計400ng(ナノグラム)及
び製造者説明書に従ったヌクレオチド成分を用いた、体積25μLのSuperscri
pt III One-Step RT-PCRシステム(Invitrogen)を用
いて、逆転写PCR(RT-PCR)増幅を通常に行った。典型的な温度状況は、45℃
、30分間の1サイクルで逆転写を起こし、;それから、94℃、2分の1サイクル、次
いで、94℃、30秒の40サイクル、52℃、30秒間、70℃、1分間;それから、
72℃、2分間の1サイクル後、反応混合物を5℃まで冷却した。
【0293】
デジタルPCRによる導入遺伝子のコピー数の決定
トランスジェニック植物内の導入遺伝子のコピー数を決定するため、次のように、デジ
タルPCR法を使用した。この方法を、植物が、本明細書に記載の遺伝子構築物のトラン
スジェニックであるかどうかを決定するためにも使用できるはずである。約1平方センチ
メートルの葉組織を、各個々の植物から収穫し、コレクションマイクロチューブ(Qia
gen)に入れた。それから、試料を24~48時間凍結乾燥した。DNA抽出物の試料
を解氷のため、ステンレススチールボールベアリングを各乾燥試料に添加し、Qiage
n Tissuelyserでチューブを振盪した。抽出緩衝液375μL(0.1M
トリス-HCl pH8、0.05M EDTA pH8及び1.25%SDS)を各チ
ューブに添加し、混合物を65℃で1時間インキュベートし、それから、冷却後、6M酢
酸アンモニウム(4℃)187μLを徹底的に混合しながら各チューブに添加した。それ
から、試料を3000rpmで30分間遠心分離した。各チューブの上澄みを、室温で5
分間DNA沈降のためイソプロパノール220μLを各々含む新しいマイクロチューブ中
に取り出した。DNAを、3000rpmで30分間チューブを遠心分離することにより
集め、DNAペレットを、70%エタノール320μLで洗浄し、乾燥後、水225μL
中にDNAを再懸濁した。不溶解性物質を3000rpmで20分間遠心分離することに
よりペレット化し、各上澄み150μLを長期貯蔵用96ウェルプレートに移動した。
【0294】
効率的且つ定量的デジタルPCR(ddPCR)のため、DNAを導入遺伝子または複
数挿入の複数のコピーが物理的に分離していることを保証するため、増幅反応前に制限酵
素で消化した。従って、DNA製剤のアリコットを10xEcoRI緩衝剤、DNA5μ
L及び試料当たり各酵素4単位を用いて、20μL体積において、EcoRI及びBam
HIと一緒に、37℃で一夜インキュベートして消化した。
【0295】
これらのPCR反応で使用したプライマーを、参照及び標的遺伝子用プライマーが相互
作用すると予測されない、またはかかる相互作用が使用条件下問題とならないと確認する
ため、Primer3ソフトウェアを用いて設計した。アッセイに使用する参照遺伝子は
、セイヨウアブラナゲノム当たり1つの遺伝子に存在するアブラナHmg(高移動度群)
遺伝子であった(Wengら、2004)。セイヨウアブラナは異質四倍体であるので、
セイヨウアブラナ(Brassica napus)において、Hmg遺伝子の4コピー
、すなわち、2つの遺伝子の各々の2つのアレルがあると分かった。参照遺伝子反応は、
プライマー対及び以下の二重標識プローブを使用した:センスプライマー、Can11
GCGAAGCACATCGAGTCA(配列番号50);アンチセンスプライマー、C
an12 GGTTGAGGTGGTAGCTGAGG(配列番号51);プローブ、H
mg-P3 5’-Hex/TCTCTAC/zen/CCGTCTCACATGACG
C/3IABkFQ/-3’(配列番号52)。増幅産生物サイズは73bpであった。
【0296】
全てのトランスジェニック植物をスクリーニングするため、PPT選択マーカー遺伝子
領域を検出した1つの標的遺伝子増幅反応では、センスプライマーは、Can17、AT
ACAAGCACGGTGGATGG(配列番号:53);アンチセンスプライマーは、
Can18 TGGTCTAACAGGTCTAGGAGGA(配列番号:54);プロ
ーブは、PPT-P3 5’-/FAM/TGGCAAAGA/zen/GATTTCG
AGCTTCCTGC/3IABkFQ/-3’(配列番号:55)であった。この標的
遺伝子増幅産生物は82bpであった。時として、第二標的遺伝子アッセイを、T-DN
Aの部分的挿入を検出するため平行して行った。この第二アッセイはセンスプライマー、
Can23 CAAGCACCGTAGTAAGAGAGCA(配列番号:56)、アン
チセンスプライマー、Can24 CAGACAGCCTGAGGTTAGCA(配列番
号:57);プローブ、D6des-P3 5’-/FAM/TCCCCACTT/ze
n/CTTAGCGAAAGGAACGA/3IABkFQ/-3’(配列番号:58)
を用いて、Δ6-デサチュラーゼ遺伝子領域を検出した。この標的遺伝子増幅産生物のサ
イズは89bpであった。反応は、ルーチンに消化DNA製剤2μLを使用した。試料当
たりの反応組成;総体積25μL中、参照センスプライマー(10pM)、1μL;参照
アンチセンスプライマー(10pM)、1μL;参照遺伝子プローブ(10pM)、0.
5μL;標的遺伝子センスプライマー(10pM)、1μL;標的遺伝子アンチセンスプ
ライマー(10pM)、1μL;標的遺伝子プローブ(10pM)、0.5μL;ddP
CR試薬混合物、12.5μL;水5.5μL。
【0297】
それから、各試料を20000ナノリットルサイズ液滴に分割するQX100ドロプレ
ットジェネレーター中に入れた。全ての試料を処理して96ウェルPCRプレートに移動
するまで、8ウェルカートリッジ中でこれを行った。それから、このプレートを、プレー
トシーラー機を用いて、突き刺し可能な箔(pierceable foil)で熱シー
ルした。それから、試料を以下の反応条件下で処理した:95℃、10分間、2.5℃/
秒でランピング;その後、2.5℃/秒でランピングしながら94℃、30秒間を39サ
イクル;2.5℃/秒でランピングしながら61℃、1分間;98℃、10分間、次いで
、12℃に冷却。液滴中のDNAの増幅反応後、プレートを、二色検出システムを用いて
個々に各液滴を分析するQX100ドロプレットリーダーに入れた(FAMまたはHex
検出に設定)。液滴デジタルPCRデータを、蛍光強度グラフ上にプロットした試料の各
液滴の1-Dプロット、または蛍光(FAM)を各液滴の蛍光(Hex)に対してプロッ
トする2-Dプロットのいずれかとして見る。ソフトウェアは、各試料の各フルオロフォ
ア(FAMまたはHex)について、正及び負の液滴の数を測定した。それから、ソフト
ウェアは、入力された、コピー/μLの単位で標的DNA分子濃度を決定するため、正の
液滴に分画をポワソンアルゴリズムにフィットさせた。コピー数の変動を、式:CNV=
(A/B)*Nb(式中、A=標的遺伝子濃度、B=参照遺伝子濃度、及びNb=4、ゲ
ノム中の参照遺伝子のコピー数)を用いて算出した。
【0298】
花粉生存率の評価
フルオレセイン二酢酸エステル(FDA)を、アセトン中に2mg/mlで溶解して原
液を得た。持続的白濁の外観により示される飽和に達するまで、ショ糖溶液(0.5M)
2mlにFDA原液を滴下することにより使用直前に、FDA希釈液を調製した。
【0299】
ヨウ化プロピジウム(PI)を滅菌蒸留水中1mg/mlで溶解して原液を得た。使用
直前に、原液100μlを、滅菌蒸留水10mlに添加して、使用液を作製した。生存花
粉と非生存花粉の比をチェックするため、PI及びFDA原液を2:3の比で混合した。
【0300】
1日16時間の光周期で、22±2℃の温室内の標準条件下、トランスジェニック及び
野生型セイヨウアブラナ及びカラシナ植物を生育した。翌日開花する状態の成熟した花蕾
を標識し、翌朝9~10時amに集めた。開花した花の花粉をFDA/PI混合物で染色
し、Leica MZFLIII蛍光顕微鏡を用いて可視化した。GFP-2、480/
40nm励起フィルターを備えた510nmロングパス発光フィルター(赤と緑の光を透
過する)を使用して、生存及び非生存花粉を検出した。PI染色した非生存花粉は、蛍光
顕微鏡下、赤く見えたが、生存花粉は、PI及びFDAで染色したとき、鮮緑色に見えた
。
【0301】
実施例2.カメリナサティバ(Camelina sativa)種子内のトランスジェ
ニックDHA経路の安定発現
【0302】
バイナリーベクターpJP3416-GA7(
図2及び配列番号1を参照のこと)を、
アグロバクテリウム・ツメファシエンス株AGL1及び形質転換のためのフローラルディ
ップ法を用いたカメリナサティバ顕花植物の処理に使用した形質転換アグロバクテリウム
の培養液からの細胞中に導入した(Lu及びKang、2008)。植物の生育及び成熟
後、処理した植物のT
1種子を収穫し、土壌に播種し、得られた植物を、pJP3416
-GA7のT-DNAに存在するbar選択マーカー遺伝子のトランスジェニックであり
、これを発現する植物について選択するため、除草剤BASTAをスプレー処理した。除
草剤に耐性のある生存T
1植物を、自家受粉させて後、成熟するまで生育し、得られたT
2種子を収穫した。5種のトランスジェニック植物を得て、これらの3種は全部そろった
T-DNAを含んでいた。
【0303】
脂質を、全部そろったT-DNAを含む各3種の植物からの約20個の種子プールから
抽出した。プール試料の2種は非常に低く、かろうじて検出できるレベルのDHAを含有
していたが、3番目のプールは、約4.7%のDHAを含有していた。従って、この植物
からの10個の個々のT2種子から、脂質を抽出し、脂肪酸組成をGCにより分析した。
この形質転換系統について個々の種子の脂肪酸組成データも表4に示す。総種子脂質プロ
ファイル(表4)から集めたデータを表5に示す。
【0304】
DHAは、10個の個々の種子のうち6個中に存在した。4個の他の種子は、DHAを
含まず、親植物のT-DNAインサーションのヘミ接合に基づいて、T-DNAを有しな
いヌルな分離個体であると推定された。最高レベルのDHAを含む単一種子から抽出した
脂質は9.0%のDHAを含み、一方、EPA、DPA及びDHAのパーセント合計は1
1.4%であった。
【表4】
【表5】
【0305】
この系統からのホモ接合種子を、T4世代で得た。全部のT4世代にわたって観察され
た平均7.3%のDHAであったイベントFD5-46-18-110で、10.3%ま
でのDHAが産生された。その後の世代(T5)を、何世代かにわたって、PUFA産生
、特に、DHAの安定性についてさらなる試験をするため確立した。プール種子DHA含
有率が、複数トランスジェニック遺伝子座の存在のため、T4世代まで安定化されなかっ
たにもかかわらず、観察された最大DHAレベルは、5世代目で安定であると分かった。
T5種子バッチも、発芽効率または速度で明らかな差が観察されない親カメリナサティバ
種子と並べて、インビトロMS培地上で発芽させた。トランスジェニック系統のさらなる
世代(T6、T7世代、他)は、種子DHAレベルの低下を示さなかった。トランスジェ
ニック植物は、完全に雌雄生殖能力があり、花粉は、野生型植物同様、約100%生存率
を示した。異なるレベルのDHAを含む種子のオイル含有率の分析では、シロイヌナズナ
で見られた相関と対照的に、DHAレベルとオイル含有率との間の相関は確認されなかっ
た。
【0306】
いくつかのさらなるトランスジェニック系統では、独立イベントからの単一種子のDH
A含有率は12%を超えた。これらの系統のトランスジェニック:ヌル比は、おおよそ、
3:1から15:1の間であると分かった。各構築物からのトップDHA試料の代表的脂
肪酸プロファイルの分析で、他の新ω6PUFAは検出されず、1.2~1.4%のみの
GLAであると分かった。対照的に、新ω3PUFA(SDA)、ω3LC-PUFA(
ETA、EPA、DPA、DHA)は、総脂肪酸含有物の9.6%のDHAレベルで18
.5%まで蓄積することが分かった。Δ6-不飽和化は32%であり、EPAは総脂肪酸
含有物の0.8%であった。Δ5-エロンゲーション効率は93%であり、Δ6-エロン
ゲーション効率は60%であった。GA7系統の極性種子脂質フラクション中でDHAを
検出した。
【0307】
なお、観察された分離比(約3:1~約15:1)は、1つまたは、高々、2つのトラ
ンスジェニック遺伝子座がカメリナサティバの魚オイルの様なDHAレベルを産生するの
に必要であることを示した。このことは、トランスジェニックの体質を導入遺伝子の安定
性だけでなく繁殖できる容易さについて重要な意味を有する。
【0308】
ホモ接合種子を、合計600以上の個々の植物を生成するため、いくつかの温室にわた
って植え付けた。ソックスレー、アセトン及びヘキサン抽出を含む様々な方法を用いて、
種子からオイルを抽出した。
【0309】
TAGのω3LC-PUFAの位置分布を決定するため、トランスジェニックカメリナ
サティバ種子オイルに対して、13C NMR位置特異性分析を行った。おおよそ等しい
EPA及びDHAでのイベントを、これらの脂肪酸に対する応答を最大にするため選択し
、sn-2に対するsn-1,3の比が、EPAについて0.75:0.25であり、D
HAについて0.86:0.14であり、偏りがない分布は0.66:0.33であろう
と分かった。すなわち、EPA75%及びDHA86%が、TAGのsn-1,3位に位
置していた。このことは、EPAの優先度は、DHAより弱いが、両方の脂肪酸は、カメ
リナサティバTAGのsn-1,3位に優先的に位置することを示した。DHAがsn-
1,3位に優先的に見られたという発見は、シロイヌナズナの種子で以前に報告された結
果と類似していた(Petrieら、2012)。
【0310】
少数の独立トランスジェニック系統が上記形質転換実験で得られたので、さらなるカメ
リナサティバ形質転換を、GA7-modB構築物を用いて行った(実施例3)。より多
くの形質転換体を得て、20.1%を超えるDHAを産生するホモ接合系統を確認した。
【0311】
実施例3.植物種子内のDHAをコードするT-DNAの修飾経路
WO2013/185184に記載のレベルを超えるアブラナのDHA産生レベルを改
善するため、バイナリーベクターpJP3416-GA7-modA、pJP3416-
GA7-modB、pJP3416-GA7-modC、pJP3416-GA7-mo
dD、pJP3416-GA7-modE及びpJP3416-GA7-modFを、W
O2013/185184に記載の通り構築し、トランスジェニック植物で試験した。こ
れらのバイナリーベクターは、pJP3416-GA7構築物の変異体であり、特に、Δ
6-デサチュラーゼ及びΔ6-エロンガーゼ機能の改良により、植物種子内のDHA合成
をさらに増加するように設計した。SDAは、Δ5-エロンガーゼと比較して、比較的低
いΔ6-エロンガーゼ効率のによってGA7構築物で形質転換されたいくつかの種子内に
蓄積されるので、他の修飾の中で、2つのエロンガーゼ遺伝子位置をT-DNA中にスイ
ッチすることが観察された。
【0312】
pJP3416-GA7中で配列をコードする2つのエロンガーゼを、T-DNAのそ
れらの位置でスイッチし、ピラミモナス・コルダタΔ5-エロンガーゼカセットを置換す
るためにpJP3416-GA7のSbf1部位間の新ピラミモナス・コルダタΔ6-エ
ロンガーゼカセットを先ずクローニングすることにより、pJP3416-GA7-mo
dAを得た。この構築物を、コンリニンCnl2プロモーター(pLuCnl2)でミク
ロモナス・プシーラΔ6-デサチュラーゼを駆動づるFP1プロモーターを交換して、p
JP3416-GA7-modBを得ることによりさらに修飾した。Δ6-デサチュラー
ゼ発現、それにより、酵素効率を増加する試みで、この修飾を行った。Cnl2プロモー
ターは、短縮化ナピンプロモーターより、セイヨウアブラナの導入遺伝子のより高い発現
を得る可能性があるはずである。
【0313】
8つのトランスジェニックpJP3416-GA7-modBシロイヌナズナイベント
及び15のトランスジェニックpJP3416-GA7-modGシロイヌナズナイベン
トを作成した。プールされたpJP3416-GA7-modB種子内の3.4%から7
.2%の間のDHAを観察し、プールされたT2 pJP3416-GA7-modG種
子内の0.6から4.1%の間のDHAを観察した。最も高いpJP3416-GA7-
modBイベントのいくつかを、選択培地上に播種し、生存苗を次世代まで生育した。種
子をDHA含有率について分析する。プールされたT1種子は、導入遺伝子について分離
している集団を表し、いずれかのヌル分離個体を含んでいたので、子孫植物のホモ接合種
子が、種子オイル中の総脂肪酸含有物の30%まで、DHAレベルを増加したはずだと期
待される。他の修飾された構築物を、シロイヌナズナを使用して形質転換した。少数のみ
の形質転換系統を得たにもかかわらず、modB構築物より高いレベルのDHAを得るも
のはなかった。
【0314】
pJP3416-GA7-modB構築物も、品種オスカー及びNX002、NX00
3、NX005、NX050、NX052及びNX054と命名された一連の育成系統の
形質転換セイヨウアブラナ植物を使用して作成した。オスカー形質転換のための77独立
形質転換植物(T0)、及びFAD2遺伝子中の突然変異の効果によってその種子オイル
中の高オレイン酸含有率を有する系統であるNX005のための189を含む育成系統の
ための1480独立植物を含む1558形質転換植物全体を得た。他の育成系統はより高
いレベルのLA及びALAを有した。デジタルPCR法により決定するとき、T-DNA
の4つより多いコピーを示すトランスジェニック植物(実施例1)を引抜き;T0植物の
約25%をこの判断基準により処分した。T0トランスジェニック植物の約53%は、デ
ジタルPCR法により決定するとき、T-DNAの1つまたは2つのコピーを有し、12
%は約3つのコピー、24%は、4つ以上のコピーを有した。種子(T1種子)を、自家
受粉後、約450のトランスジェニック系統から収穫し、異系交配を避けるために、開花
中植物に袋掛けすることにより行った。T1種子を、成熟したとき、トランスジェニック
植物の残りから収穫した。約1~2%の植物系統は、雄または雌繁殖不能のいずれかであ
り、生存可能な種子を産生せず、T0植物を処分した。
【0315】
種子のプール(各ポールで20のT1種子)を、プールされた種子オイル中のDHAレ
ベルについて試験し、最も高いレベルを示す系統を選択した。特に、プールされたT1種
子内の総脂肪酸含有物の少なくとも2%のDHA含有率を有する系統を選択した。約15
%のトランスジェニック系統をこの方法で選択し;その他の85%を処分した。これらの
いくつかを系統CT132-5(品種オスカー)、CT133-15、-24、-63、
-77、-103、-129及び-130(NX005)と命名した。NX050の選択
系統は、CT136-4、-8、-12、-17、-19、-25、-27、-49及び
-51を含んだ。CT132.5を含む選択系統の20種子及びCT133.15の11
種子を浸し、2日後、各個々の種子からの半分の子葉からオイルを抽出した。胚軸を含む
他の半分の子葉を残し、特異子孫系統を維持するために培地で培養した。オイル中の脂肪
酸組成を決定した;データをCT132.5について表6に示す。分析した20種子のう
ち10のDHAレベルは、GC分析により測定して、総脂肪酸含有物の7~20%の範囲
であった。他の種子は、7%未満のDHAを含み、pJP3416-GA7-modBか
らのT-DNAの部分(不完全)コピーを含んでいた可能性がある。トランスジェニック
系統は、遺伝的に結合していない複数の導入遺伝子インサーションを含むように思われた
。トランスジェニック系統CT133.15の種子は、0~5%の範囲のDHAレベルを
示した。DHAを含まない種子は、ヌル分離個体であるようであった。これらのデータは
、modB構築物がキャノーラ種子内のDHA産生に対して十分に性能を発揮することを
確認した。
【0316】
選択された形質転換系統から自家受粉後に各複数のT1植物から得られた20または4
0の個々の種子(T2種子)を、脂肪酸組成について個別に試験した。20%より大きい
レベルでDHAを含む種子を同定した(表7)。2つの代表的試料、CT136-27-
18-2及びCT136-27-18-19は、それぞれ、21.2%及び22.7%の
DHAを含んでいた。これらの種子内の総ω3脂肪酸含有率は、総脂肪酸含有物中のパー
セントで約60%であり、ω6含有率は10%未満であった。さらに、各T1植物の20
または40のT2種子のセットを、脂肪酸組成について試験した。34.3%までのDH
Aを含む種子を、例えば、種子CT136-27-47-25で確認した(表9)。CT
136-27-47-25から得られた種子オイルの脂肪酸組成を表9に示す。脂肪酸組
成は、DPA約1.5%、EPA0.6%及びETA0.5%と一緒にDHA34.3%
を含んでいた。SDAレベルは約7.5%であり、ALAは約21.9%、LAは約6.
9%であった。新ω6PUFAはGLA1.1%を示したが、ω6-C20も-C22
LC-PUFAも検出されなかった。総飽和脂肪酸:9.6%;一価不飽和脂肪酸、12
.5%;総PUFA、75.2%;総ω6-PUFA(LAを含む)、7.2%;総ω3
-PUFA、66.9%;総ω6:ω3脂肪酸の比、9.3:1;新ω6:新ω3脂肪酸
、37:1。オレイン酸からDHAへの各酵素工程の効率は以下であった:Δ12-デサ
チュラーゼ、90%;Δ15/ω3-デサチュラーゼ、89%;Δ6-デサチュラーゼ、
67%;Δ6-エロンガーゼ、83%;Δ5-デサチュラーゼ、99%;Δ5-エロンガ
ーゼ、98%;Δ4-デサチュラーゼ、96%。オレイン酸からDHAへの転換の全体効
率は約50%であった。従って、種子オイルの総脂肪酸含有物の20.1~35%の範囲
でDHAを産生する種子が、総脂肪酸含有物中の20.1%から30%の間のDHAまた
は30%から35%の間のDHAを含む種子を含み確認され、選択されるとは明白であっ
た。
【0317】
いくつかの種子内のオイル含有率は、野生型種子の約44%から、DHA産生種子のい
くつかの約31~39%まで低下するが、他のDHA産生種子の野生型レベルと同様であ
った。
【0318】
T2種子の少なくとも10%のレベルでDHAを産生する様々な形質転換植物系統を交
配し、複数のT-DNAインサーションに対してホモ接合であるF2子孫を産生するため
、F1子孫を自家受粉させた。ホモ接合種子からの種子オイルを分析し、種子オイル中の
30%までまたは35%の総脂肪酸含有物はDHAである。
【0319】
CT136-27-18-2及びCT136-27-18-19から得られたオイル中
のTAGを、TAG分子のグリセロール骨格上のDHAの位置分布について、13C N
MR位置特異性アッセイにより分析した。DHAは、sn-1,3位において優先的に結
合していた。DHAの70%より多く、実際、90%より多くが、sn-1,3位であっ
た。
【0320】
いくつかのさらなるトランスジェニック系統では、独立イベントからの単一種子のDH
A含有率は12%を超えた。これらの系統のトランスジェニック:ヌル比は、1つのトラ
ンスジェニック遺伝子座に対応して約3:1であり、2つのトランスジェニック遺伝子座
に対応して15:1であることが分かった。最も高いレベルのDHAを有する各構築物か
らの試料の代表的脂肪酸プロファイルの分析では、新ω6PUFAを含まず、1.2~1
.4%のみのGLAが検出された。対照的に、新ω3PUFA(SDA)及びω3LC-
PUFA(ETA、EPA、DPA、DHA)は、GA7-形質転換種子について18.
5%と比較して、modF構築物について25.8%及びmodG構築物について21.
9%の合計を蓄積した。これらの種子のオイル中のDHAレベルは、それぞれ、9.6%
、12.4%及び11.5%であった。Δ6-不飽和化は、modF-及びmodG-形
質転換種子よりGA7-形質転換種子で低く(32%対47%及び43%)、これにより
、GA7と比較して、modF及びmodG内のALAの低下をもたらすことが分かった
。別の注目すべき差は、modF種子内のEPAの蓄積であり(他の2つのトランスジェ
ニック種子内で3.3%対0.8%)、これは、GA7及びmodG種子(93%及び9
4%)と比較して、modF(80%)種子内で観察されたΔ5-エロンゲーションの低
下に反映された。わずかにより活性なΔ6-不飽和化によって、SDA量が実際に増加し
たが、これらの種子内のΔ6-エロンゲーションのわずかな増加(66%対60%及び6
1%)があった。DHAを、GA7系統の極性種子脂質フラクションで検出した。
【0321】
modB構築物のT-DNAで形質転換されたセイヨウアブラナ育成系統NX54の7
0の独立トランスジェニック植物のT1種子内の脂質の脂肪酸組成物を分析した。これら
のトランスジェニック植物の1つが、種子オイル中にDPAを含むが、DHAを含まない
種子を産生することが観察された。この系統(CT-137-2)のT1種子は、T1プ
ール種子内に検出可能なDHAを含まないで、DPA約4%を産生した。本発明者らは、
このことが、自然な突然変異により、その特定の挿入T-DNA中のΔ4-デサチュラー
ゼ遺伝子の不活性化が原因であるか否かを検証した。PCR分析及びDNA配列解析によ
り欠失の存在が示され、GA7-modBのT-DNAのヌクレオチド12988-15
317の欠失が明らかにされた(配列番号2)。該欠失ヌクレオチドは、Δ4-デサチュ
ラーゼコード領域の発現を駆動させるLinus Cnl2プロモーター部分ならびにΔ
4-デサチュラーゼコード領域それ自体に相当し、これにより、該欠失を含むT-DNA
で形質転換された種子がDHAを産生しなかった理由が説明される。
【0322】
このトランスジェニック系統からの約50のT1種子を発芽させ、各々からの1つの発
生した子葉を、残りのオイル中の脂肪酸組成について分析した。それから、5%より多い
DPAを示す選択された苗を成熟するまで生育し、T2種子を収穫した。プール種子脂肪
酸組成を、表8に示し、7%より多いDPAを、これらの系統で観察した。T4種子はセ
イヨウアブラナ(B.napus)DPA系統CT-137-2から作製され、脂肪酸プ
ロファイルについて分析された。最大で13%のDPAが、集められた成熟種子試料にお
いて観察された。
【0323】
約10%のDPAを有する種子からのオイルを、弱アルカリで処置し、脂肪酸を加水分
解した。
【0324】
B0003-514と指定される別のトランスジェニック系統は、T2種子において約
10~16%のDPAを示した。15.8%のDPA、0.2~0.9%のDHA、及び
0.1~2.5%のEPAを含有する種子が選択された。T2種子群は、高DPA:中D
PA:無DPAに関し、1:2:1の分離割り当てを示し、このことから、該トランスジ
ェニック系統において、DPA産生に関し、単一遺伝子座の存在が示唆される。
【0325】
オイルは、LC-PUFAを産生する種子試料からねじプレスにより抽出され、それに
よりシードミールを作製した。
【0326】
構築物の設計
この実験の焦点が油料種子作物種内のDHA及びDPAの産生の実証であった一方、上
記の結果は、構築物設計展望からも興味があった。最初、modF構築物中のΔ6-及び
Δ5-エロンガーゼコード領域位置のスイッチは、より低いΔ5-エロンゲーションのた
めに蓄積されたより多いEPAを含む意図されたプロファイル変化をもたらした。Δ6-
エロンゲーションの同時増加が観察されたが、これは、より低いSDAレベルをもたらさ
なかった。これは、より高活性なアマコンリニン2プロモーターによる短縮化ナピンプロ
モーター(FP1)の置換だけでなく、余分にミクロモナス・プシーラΔ6-デサチュラ
ーゼ発現カセットの付加により引き起こされた、modF形質転換種子内のΔ6-不飽和
化の増加に起因した。modG構築物で観察されたΔ6-不飽和化のいくらか低い増加は
、GA7中の高発現Δ5-エロンガーゼカセットの利用に起因した。Δ6-デサチュラー
ゼ及びΔ5-エロンガーゼコード領域の位置のスイッチは、より大きなΔ6-不飽和化を
もたらした。Cnl2プロモーターによるFP1プロモーターの置換によって、この場合
では、Δ5-エロンガーゼ活性は減少しなかった。
【0327】
これらのデータは、modB、modF及びmodG構築物が、アラビドプシス属及び
セイヨウアブラナのように、カメリナ種子内のDHA産生に対して良い結果を出した。
【0328】
本発明者らは、概して、DHA経路の律速酵素活性の効率が、単一コピーT-DNA形
質転換体と比較して、多コピーT-DNA形質転換体でより大きくあり得る、または経路
内で限定され得る酵素をコードするT-DNA同義遺伝子中への挿入により増加し得ると
考えた。多コピー形質転換体の可能性ある重要性に対する証拠は、GA7構築物で形質転
換されたアラビドプシス属種子内で見られ、最高収率のDHAイベントは、宿主ゲノム中
に挿入された3種のT-DNAを有した。同義遺伝子は同じであり得る、または、好適に
、同じポリペプチドをコードする異なる変異体である、または重複する発現パターンを有
する異なるプロモーターの制御下にある。例えば、同じタンパク質が産生される場合でも
、多重Δ6-デサチュラーゼコード領域の発現により、増加した発現を達成できるはずで
ある。pJP3416-GA7-modF及びpJP3416-GA7-modCでは、
例えば、ミクロモナス・プシーラΔ6-デサチュラーゼの2つの変化形が存在し、異なる
プロモーターにより発現された。コード配列は、異なるコドン使用頻度、従って、異なる
ヌクレオチド配列を有し、可能性のあるサイレンシングまたは同時抑制効果を減少させた
が、同じタンパク質の産生をもたらした。
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0329】
実施例4.DHAを産生するトランスジェニックシロイヌナズナ種子のTAGの分析
形質転換シロイヌナズナ種子のTAG上のDHAの位置分布を、NMRにより測定した
。総脂質を、ヘキサン10mLを含むガラスチューブに粉砕種子を移動する前に、ヘキサ
ン下に、種子を先ず粉砕することにより約200mgの種子から抽出した。チューブを水
浴で約55℃に温めて、それから、ボルテックスして遠心分離した。ヘキサン溶液を取り
出し、さらに4x10mLでこの手順を繰り返した。抽出物を合わせて、ロータリーエバ
ポレーターで濃縮し、抽出脂質中のTAGを、20mLのヘキサン中7%ジエチルエーテ
ルを用いて、短いシリカカラムを通過させることにより極性脂質から分離して精製した。
精製TAG上のアシル基位置分布を前述のように定量的に測定した(Petrieら、2
010a及びb)。
【0330】
分析は、総種子オイル中のDHAの大部分がTAGのsn-1/3位に位置しており、
sn-2位においてはほとんど見られなかったことを示した。このことは、ARA(20
:4Δ5、8、11、14)の50%がトランスジェニックキャノーラオイルのsn-2
位に位置する一方、33%のみランダムな分布で期待されることを示したARA産生種子
からのTAGと対照的であった(Petrieら、2012)。
【0331】
トランスジェニックシロイヌナズナ種子の総脂質を、主要なDHA含有トリアシルグリ
セロール(TAG)化学種を測定するため、トリプル四重極LC-MSによっても分析し
た。最も豊富なDHA含有TAG化学種は、DHA-18:3-18:3(TAG58:
12;位置分布を表現できない命名法)であり、2番目に最も豊富なのはDHA-18:
3-18:2(TAg58:11)であることが分かった。トリDHA TAG(TAG
66:18)を、たとえ低くても、検出可能レベルで、総種子オイル中に観察された。他
の主要DHA含有TAG種は、DHA-34:3(TAG56:9)、DHA-36:3
(TAG58:9)、DHA-36:4(TAG58:10)、DHA-36:7(TA
G58:13)及びDHA-38:4(TAG60:10)を含んでいた。2つの主要D
HA含有TAG種を、Q-TOF MS/MSによりさらに確認した。
【0332】
実施例5.オイルのステロール含有量及び組成のアッセイ
オーストラリアの商業的給源から購入した12種の植物オイルからのフィトステロール
は、実施例1に記載のO-トリメチルシリルエーテル(OTMSi-エーテル)誘導体と
してGC及びGC-MSにより特徴付けられた。ステロールを、保持データ、質量スペク
トル解析及び文献と実験標準質量スペクトルデータとの比較により同定した。ステロール
を5β(H)-コラン-24-オール内部標準の使用により定量化した。同定されたステ
ロールのフィトステロール基本構造及び化学構造を、
図3及び表10に示す。
【0333】
分析された植物オイルは:ゴマ(Sesamum indicum)、オリーブ(Ol
ea europaea)、ヒマワリ(Helianthus annus)、ヒマ(R
icinus communis)、セイヨウアブラナ(Brassica napus
)、ベニバナ(Carthamus tinctorius)、ピーナッツ(Arach
is hypogaea)、アマ(Linum usitatissimum)及びダイ
ズ(Glycine max)からであった。オイル試料全部にわたって、相対的存在比
の減少では、主要フィトステロールは:β-シトステロール(総ステロール含有物中28
~55%の範囲)、Δ5-アベナステロール(イソフコステロール)(3~24%)、カ
ンペステロール(2~33%)、Δ5-スチグマステロール(0.7~18%)、Δ7-
スチグマステロール(1~18%)及びΔ7-アベナステロール(0.1~5%)であっ
た。いくつかの他の少量ステロールを同定し、これらは:コレステロール、ブラシカステ
ロール、カリナステロール、カンペスタノール及びエブリコールであった。4種のC29
:2及び2種のC30:2ステロールも検出されたが、これらの少量成分の同定を完了す
るには、さらなる調査が必要である。加えて、いくつかの他の同定されたステロールは、
オイルのいくつか中に存在したが、その非常に低存在量のために、質量スペクトルは、そ
の構造を同定するには十分な強度でなかった。
【表10】
【0334】
減少量のオイルmg/gとして表現したステロール含有量は:キャノーラオイル(6.
8mg/g)、ゴマオイル(5.8mg/g)、アマオイル(4.8~5.2mg/g)
、ヒマワリオイル(3.7~4.1mg/g)、ピーナッツオイル(3.2mg/g)、
ベニバナオイル(3.0mg/g)、ダイズオイル(3.0mg/g)、オリーブオイル
(2.4mg/g)、ヒマシオイル(1.9mg/g)であった。ステロール組成%及び
総ステロール含有率を表11に示す。
【0335】
全ての種子オイル試料の中で、主要フィトステロールは、概して、β-シトステロール
であった(総ステロール含有物の30~57%の範囲)。他の腫瘍ステロール:カンペス
テロール(2~17%)、Δ5-スチグマステロール(0.7~18%)、Δ5-アベナ
ステロール(4~23%)、Δ7-スチグマステロール(1~18%)の割合のオイルの
中で広範囲であった。異なる種のオイルは、全く異なるプロファイルを有するいくつかを
含む異なるステロールプロファイルを有した。キャノーラオイルの場合、カンペステロー
ルの最も高い比率(33.6%)を有したが、他種の試料は、概して、ピーナッツオイル
中、例えば、17%までの低レベルを有した。ベニバナオイルは、比較的高い割合のΔ7
-スチグマステロール(18%)を有したが、このステロールは、ヒマワリオイル中9%
まで、他種オイル中、通常低かった。それらは、各種について特徴的であったので、従っ
て、ステロールプロファイルを特異的植物(vegetable)または植物(plan
t)オイルの同定の助け及びその真実性または他のオイルによる不純物混和のチェックの
ため使用できる。
【0336】
種子の冷間圧縮により製造され精製されていない各場合において、2つの試料の各ヒマ
ワリとベニバナを比較したが、一方、その他は冷間圧縮をせず精製した。いくつかの異な
る点が観察されたが、オイルの2つの源は、類似のステロール組成及び総ステロール含有
率を有し、処理及び精製がこれらの2つのパラメーターに対してほとんど影響がないこと
を示唆した。試料中のステロール含有量は、3倍変わり、1.9mg/g~6.8mg/
gの範囲であった。キャノーラオイルは、最も高く、ヒマシオイルは最も低いステロール
含有率であった。
【0337】
実施例6.TAGのsn-2位におけるDHA及びDPAの蓄積増加
本発明は、TAGのsn-2位におけるDHA及び/またはDPA蓄積を、1-アシル
-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)をGA7構築物ま
たはその変異体により与えられるなど、DHAまたはDPA生合成経路と一緒に同時発現
することにより増加できた。好ましいLPAATは、内在性LPAATと比較して、LP
Aのsn-2位における多価不飽和C22鎖の挿入増加をもたらし、PAを生成する、基
質として多価不飽和C22脂肪アシル-CoA、好ましくはDHA-CoA及び/または
DPA-CoAに対して作用できるもの、特に基質としてDHA-CoA及びDPA-C
oAの両方を用いることができるものである。細胞質内LPAAT酵素は、特に、該種が
合成及びTAG中の異常な脂肪酸を蓄積する場合、しばしば、多様な基質選択性を示す。
リムナンテス・ダグラシー(Limnanthes douglasii)からのLPA
AT2を、C22基質を利用できない同じ種からのLPAAT1との対照で、PA合成の
基質として、エルコイルCoA(C22:1-CoA)を使用することが分かった(Br
ownら、2002)。
【表11】
【0338】
既知LPAATを考慮し、コントロールとして、sn-2位におけるDHAの組み込み
を増加すると期待されないいくつかを含み、試験のため数を選択した。既知のLPAAT
は:シロイヌナズナLPAAt2:(配列番号40、受託番号ABG48392、Kim
ら、2005)、リムナンテス・アルバLPAAT(配列番号41、受託番号AAC49
185、Lassnerら、1995)、サッカロミセス・セレビシアSlc1p(配列
番号42、受託番号NP_010231、Zouら、1997)、モルティエレラ・アル
ピナLPAAT1(配列番号44、受託番号AED33305;US7879591)及
びセイヨウアブラナLPAAT(配列番号45及び配列番号46、それぞれ、受託番号A
DC97479及びADC97478)を含んでいた。
【0339】
アラビドプシス属LPAAT2(LPAT2とも命名)は、C16及びC18基質に対
する活性を有することが分かっている小胞体局在酵素であるが、しかしながら、C20ま
たはC22基質に対する活性は試験されなかった(Kimら、2005)。リムナンテス
・アルバLPAAT2は、基質としてDHAまたはDPAを使用する能力は試験されなか
ったが、PAのsn-2位中にC22:1アシル鎖を挿入することが示された(Lass
nerら、1995)。選択されたサッカロミセス・セレビシアLPAAT Slc1p
は、鎖長に関する広い基質特異性を示す、基質として18:1-CoAに加えて、22:
1-CoAを用いた活性を有することが分かった(Zouら、1997)。また、DHA
-CoA、DPA-CoA及び他のLC-PUFAは、基質として試験されなかった。モ
ルティエレラ属LPAATは、アルカン資化性酵母(Yarrowia lipolyt
ica)中でEPA及びDHA脂肪酸基質に対する活性を有することが以前に分かってい
る(US7879591)が、植物細胞のその活性は未知であった。
【0340】
さらなるLPAATは、本発明者らにより同定された。ミクロモナス・プシーラは、こ
の種のTAG上のDHAの位置分布を確認しなかったが、そのオイル中のDHAを産生し
蓄積する微細藻類である。ミクロモナス・プシーラLPAAT(配列番号43、受託番号
XP_002501997)を、BLASTクエリー配列として、アラビドプシスLPA
AT2を用いた、ミクロモナス・プシーラゲノム配列の調査により同定した。いくつかの
候補配列が明らかになり、配列XP_002501997を、C22 LC-PUFAに
ついての試験のため合成した。トウゴマLPAATを、ヒマシゲノム配列中の推定LPA
ATとしてアノテートした(Chanら、2010)。ヒマシゲノムからの候補4つのL
PAATを合成し、湿潤されたベンサミアナタバコ葉組織の粗葉ライセートで試験した。
本明細書に記載の候補配列は、LPAAT活性を示した。
【0341】
いくつかの候補LPAATを、系統樹上の既知LPAATで配置した。なお、推定ミク
ロモナスLPAATは、推定C22 LPAATとクラスター形成しなかったが、分岐(
divergent)配列であった。
【0342】
基質としてDHA-CoA及び/またはDPA-CoAを使用するその能力について様
々なLPAATの最初の試験として、キメラ遺伝子構築物を、ベンサミアナタバコ葉内の
外来性LPAATの構成的発現のため作成し、35Sプロモーターの制御下、各々は次の
ものであった:35S:Arath-LPAAT2(シロイヌナズナER LPAAt)
;35S:Limal-LPAAT(リムナンテス・アルバLPAAT);35S:Sa
cce-Slc1p(サッカロミセス・セレビシアLPAAT);35S:Micpu-
LPAAT(ミクロモナス・プシーラLPAAT);35S:Moral-LPAAT1
(モルティエレラ・アルピナLPAAT);35S:Brana-LPAAT1.13(
セイヨウアブラナLPAAT1.13);35S:Brana-LPAAT1.5(セイ
ヨウアブラナLPAAT1.5)。外来性LPAATを含まない35S:p19構築物を
、実験のコントロールとして使用した;該構築物は、各ベンサミアナタバコ(N. be
nthamiana)接種物に含まれた。これらの構築物の各々を、実施例1に記載のよ
うに、アグロバクテリウムによりベンサミアナタバコ葉中に導入し、浸潤後5日目、処理
した葉のゾーンを切り取り粉砕して葉ライセートを作成した。各ライセートは、LPAを
合成する内在性酵素だけでなく、外来性LPAATを含有した。該ライセートに、14C
標識-OA及び-DHAを別々に添加することにより、インビトロ反応を行った。反応物
を25℃でインキュベートし、14C標識脂肪酸をPAに組み込んだレベルをTLCによ
り決定した。ARA及びC18脂肪酸と比較した各LPAATがDHAを使用する能力を
評価した。メドウフォーム(リムナンテス・アルバ)、モルティエレラ及びサッカロミセ
スLPAATは、これらは見えるが、他のLPAATは見えない放射標識PAを用いて、
DHA基質に対する活性を有することが分かった。全てのLPAATを、オレイン酸コン
トロールフィードにより確認した。
【0343】
種子中のLPAAT活性を試験するため、いくつかのタンパク質コード配列またはLP
AATを、コンリニン(pLuCnl2)プロモーターの制御下、バイナリーベクター中
に挿入した。それから、それぞれ、キメラ遺伝子、Cnl2:Arath-LPAAT(
ネガティブコントロール)、Cnl2:Limal-LPAAT、Cn2:Sacce-
Slc1p、及びCnl2:Moral-LPAATを含む得られた遺伝子構築物を、そ
れらの種子内でDHAを産生するシロイヌナズナ植物を使用し形質転換使用し、LPAA
T及びTAGのsn-2位へのDHAの組み込みが増加するかどうかを試験するため、種
子特異的方法のトランスジェニックDHA経路を発現する安定な形質転換体を生成する。
GA7構築物及びその変異体(実施例2及び3)を既に含むセイヨウアブラナ及びカメリ
ナサティバ植物を使用し形質転換し、親及びLPAAT遺伝子構築物の両方を保有する子
孫を生成する。TAGのsn-2位へのDHA及び/またはDPAの組み込みの増加を、
導入遺伝子をコードするLPAATを含まない植物での組み込みと比較して試験した。オ
イル含有率も種子内で改善され、特に、より高いレベルのDHAを産生する種子に対して
改善される。
【0344】
種子特異的pCnl2:Moral-LPAAT1構築物を使用して、GA7構築物か
らのT-DNAに対してホモ接合であり、その種子が種子脂質中にDHA約15%をは含
有する既にトランスジェニックなシロイヌナズナ系統を形質転換した(Petrieら、
2012)。これのため、トランスジェニック系統中に既に存在するbar選択マーカー
遺伝子と異なるpCnl2:Moral-LPAAT1構築物中のカナマイシン選択マー
カー遺伝子を使用した。カナマイシンに耐性があり、温室内で成熟するまで生育したトラ
ンスジェニック苗を選択した。T2種子を収穫し、その総種子脂質の脂肪酸組成をGCに
より分析した(表12)。33種の独立した形質転換された系統の中から、3種の表現型
を観察した。第一の群(6/33系統)では、DPAは、総種子脂質の約10.6%まで
、DHAレベルより実質的に大きいレベルで増加した。これは、この系統群の中で、強く
減少するDHAの犠牲によって生じた。この第一の群の2つの系統では、DPA+DHA
の合計は減少したが、他の4系統では減少しなかった。第二の群(5/33)では、DP
AとDHAのレベルはほぼ等しく、DPA+DHAの合計は親種子とほぼ同じであった。
第三の群では、DPAとDHAのレベルは親種子のものと類似していた。第一及び第二群
でDPAレベルの増加についての1つの可能な説明は、LPAATがDPA-CoA基質
に対するΔ4-デサチュラーゼとの競合に勝って、Δ4-デサチュラーゼと比較して、優
先的に、DPAをPA中に、それから、TAG中に組み込むというものである。2番目の
可能な説明は、Δ4-不飽和化が部分的に阻害されているものである。
【0345】
pCnl2::Moral-LPAATベクターでさらに形質転換されたGA7構築物
のT-DNAで形質転換されたアラビドプシス植物の種子を収穫し、オイルを種子から抽
出した。それから、TAGフラクションをTLC法により、抽出オイルから単離し、TL
Cプレートから回収した。これらのTAG試料及び分取前の種子オイルの試料を、リゾー
プス属リパーゼで消化することにより分析し、DHAの位置分布を決定した。該リパーゼ
は、TAGのsn-1位またはsn-3位においてエステル化されたアシル基に対して特
異的である。5mMのCaCl2を含む0.1MのトリスHCl pH7.7中のリゾー
プス属リパーゼ溶液を添加して、超音波を用いて、5%アラビアゴム中の各脂質試料を乳
化し、混合物を振盪し続けながら、30℃でインキュベートすることによりこれを行った
。各反応を、クロロホルム:メタノール(2/1、v/v)及び1体積の0.1MのKC
lを各混合物に添加することにより停止した。脂質をクロロホルムフラクション中に抽出
し、ヘキサン/ジエチルエーテル/酢酸(50/50/1、v/v)を用いて2.3%ホ
ウ酸含浸TLCでの分離により得られた脂質のsn-2 MAG、sn-1/3 FFA
、DAG及びTAG成分の相対量を決定した。脂質バンドを、TLCプレート上にアセト
ン/水(80/20、v/v)中の0.01%プリムリンの噴霧により可視化し、UV光
下で可視化した。個々の脂質バンドを、同じTLCプレート上に溶解された脂質の標準ス
ポットに基づいて同定した。TLC脂質バンドをガラスバイアル中に集め、それらの脂肪
酸メチルエステルを、1Nメタノール性HCl(Supelco)を用いて合成し、80
℃で2時間インキュベートした。個々の脂質の脂肪酸組成をGCにより分析した。
【0346】
このアッセイは、GA7(系統22-2-1-1及び22-2-38-7)で形質転換
された親種子内のDHAは、TAGのsn-1位またはsn-3位において優先的にエス
テル化したことを示した。対照的に、GA7構築物及びLPAATをコードする導入遺伝
子の両方で形質転換されたNY11及びNY15種子内のDHAは、該系統の1つのDH
Aの35%及びTAGのsn-2位においてエステル化される他系統のDHAの48%で
、sn-2位で、DHAは濃縮されていた、すなわち、リパーゼ消化後、DHAは、sn
-2-MAGとして存在していた(表13)。GA7-modB構築物からのT-DNA
及びLPAATコード遺伝子の両方で形質転換し、DHAを産生するセイヨウアブラナ及
びカラシナ種子について、類似の結果を得、DPAを産生するセイヨウアブラナ及びカラ
シナの種子も同様である。
【0347】
モルティエレラLPAATまたは別のLPAATがDPA-CoAまたはDHA-Co
Aのいずれかに対して優先的であるか否かを決定するため、上記構成的プロモーターの制
御下候補LPAATを一過性に発現するベンサミアナタバコ葉のライセートに14C標識
DPA-CoAまたは-DHA-CoAを別々に添加することによりインビトロ反応を行
った。反応物を25℃でインキュベートし、PAへの14C標識脂肪酸の組み込みレベル
を脂質のTLC分析により決定した。DPA-CoAと比較して、各LPAATのDHA
-CoAを使用する能力を評価する。有効なDHAを有し、LPAAT活性を組み込んで
いることが確認されているLPAATをコードする遺伝子を使用し、形質転換DHA産生
セイヨウアブラナ植物及び種子を産生する。
【0348】
DPA-CoAを用いて強い活性を有するLPAATをコードする遺伝子を使用し、D
PA産生植物及び種子を形質転換し、TAGのsn-2位においてエステル化されたDP
Aの量を増加させる。
【表12】
【表13】
【0349】
実施例7.トランスジェニックカメリナサティバ種子のさらなる分析
総脂質含有率
GA7構築物のT-DNAに対してホモ接合である及び総脂肪酸含有物中にDHAを含
むカメリナサティバ種子を、以下の総脂質含有率及び組成について分析した。2つの連続
した溶媒抽出工程を、初め、ヘキサンを用いて、次に、クロロホルム/メタノールを用い
て、種子に対して行った。抽出または分析中、酸化防止剤は添加しなかった。脂質/溶媒
混合物の長時間加熱及び還流により種子脂質を抽出ために通常に使用されるソックスレー
抽出法は、DHAなどのω3PUFAの分解または酸化の可能性があるので、使用しない
。
【0350】
油料種子に対して業界標準であるので、最初の抽出で、溶媒としてヘキサンを使用した
。また、ヘキサンは、その溶媒特性及び、特に室温において、極性脂質のその比較的貧溶
解性おかげでTAG含有オイルを優先的に抽出する。形質転換及びコントロールカメリナ
種子(それぞれ、130g及び30g)をヘキサンで濡らし、電気めのう乳鉢と乳棒を用
いて粉砕した(Retsch Muhle、ドイツ)。混合物を、分液ロートに移動し、
総量800mLのヘキサンを用いて4回抽出し、3番目の抽出では、一夜静置して抽出し
た。各抽出では、微粉を取り除くため、真空下GFCガラス繊維フィルターを通して、抽
出物を濾過し、それから、真空下40℃においてロータリーエバポレーターで蒸発させた
。抽出物はプールされ、TAGリッチなヘキサン抽出物であった。
【0351】
ヘキサンでの抽出後、残ったシードミールを、ヘキサン抽出と同様な方法で、クロロホ
ルム-メタノール(CM、1:1v/v)を用いてさらに抽出した。それから、ミールを
濾過により取り除き、合わせた抽出物をロータリーエバポレーターで蒸発させた。それか
ら、プールされたCM総粗脂質抽出物を一相メタノール-クロロホルム-水混合物(2:
1:0.8v/v/v)を用いて溶解した。クロロホルム-水の添加により相を分離した
(最終溶媒比、1:1:0.9v/v/vメタノール-クロロホルム-水)。各抽出物の
精製脂質を下層のクロロホルム相中に分配し、ロータリーエバポレーターで濃縮して、極
性脂質リッチCM抽出物とした。これら各抽出物中の脂質含有物を重量測定法で決定した
。
【0352】
脂肪酸組成分析では、ヘキサンとCMの抽出物のアプリコットを、Christieら
(1982)の方法に従って、トランスメチル化し、メタノール-クロロホルム-濃塩酸
(3mL、10:1:1、80℃、2時間)を用いて脂肪酸メチルエステル(FAME)
を生成した。FAMEを、ヘキサン-クロロホルム(4:1、3x1.8mL)中に抽出
した。ヘキサンとCMの抽出後の残ったシードミール試料(1~2g)もトランスメチル
化して、重量測定法によりFAMEとして残渣の脂質を測定した。種子の総脂質含有率を
、ヘキサン及びCM抽出物の脂質含有率及び溶媒抽出後のトランスメチル化したミールの
FAME含有率を足すことにより算出した。
【0353】
トランスジェニック種子は、種子重量中40.9%である野生型カメリナサティバ種子
と比較して、種子重量中36.2%であり、わずかに少ない総脂質を含有していた。油料
種子を含む種子では、ヘキサン、それから、クロロホルム-メタノールを用いた連続抽出
により得られた溶媒抽出可能な脂質、及び本明細書に例証の溶媒抽出後の抽出ミールのメ
チル基転移により放出された残渣の脂質の合計として、総脂質を決定した。この総脂質は
、主に、トリアシルグリセロールなどの脂肪酸含有脂質及び極性脂質及び少量の非脂肪酸
脂質、例えば、フィトステロール及び遊離した非エステル化形態で存在または脂肪酸との
エステル化された脂肪アルコールから成った。加えて、いずれかのステロールエステル類
またはワックスエステル類及びカロテノイド、例えば、β-カロテンなどの炭化水素も、
存在するならば、溶媒抽出可能な脂質中に含まれていた。これらは、全体的に重量測定に
含まれ、TLC-FID分析に含まれていた(表14)。
【0354】
総脂質の種子重量当たりの脂質の31~38%を、ヘキサンにより抽出し、トランスジ
ェニック及びコントロール種子について、それぞれ、種子の総脂質の86%及び92%の
割合であった。CM抽出は、トランスジェニック及びコントロール種子から、それぞれ、
さらに4.8%及び2.4%(種子重量の)の主に極性な脂質リッチ抽出物を回収した。
残りの溶媒抽出された油料シードミールのメチル基転移反応により遊離された残渣の脂質
は、それぞれ、種子重量の0.3%及び0.4%であった。すなわち、第一及び第二の溶
媒抽出は一緒に、種子の総脂質含有物の99%を抽出した(すなわち、トリグリセリドな
どの脂質及び糖脂質及びリン脂質から成る極性脂質を含む大部分脂肪酸であった、種子重
量の36.2%または40%(次セクション-脂質分類分析参照))。
【0355】
脂質分類分析
ヘキサン及びCM抽出物の脂質分類を、石英ロッド上のChromarod S-II
Iシリカと組み合わせて、展開溶媒系としてヘキサン/ジエチルエーテル/氷酢酸(70
:10:0.1、v/v/v)を用いて、水素炎イオン化検出器を備えた薄層クロマトグ
ラフィー(TLC-FID;Iatroscan Mark V.Iatron Lab
oratories、日本、東京)により分析した。適切な補正曲線を、Nu-Chek
Prep.Inc.(米国ミネソタ州エリジアン)から得た代表的基準を用いて作成し
た。SIC-480IIソフトウェア(SISCバージョン:7.0-E)を用いて、デ
ータを処理した。リン脂質化学種をシリカカラムクロマトグラフィーから得られた精製リ
ン脂質フラクションの適用及びFID検出前のクロロホルム/メタノール/氷酢酸/水(
85:17:5:2、v/v/v)中、ロッドの展開により分離した。
【0356】
CM抽出物からTAG、糖脂質及びリン脂質フラクションを分離するため、短いガラス
カラム中のシリカゲル60(100~200メッシュ)(0.3~1g)またはグラスウ
ールを詰めたパスツールピペットを使用して、10mgの精製CM脂質抽出物を精製した
。CM抽出物の残渣のTAGフラクションを、ヘキサン中10%ジエチルエーテル20m
Lで溶離し、糖脂質を、アセトン20mLで溶離し、リン脂質を、最初メタノール10m
L、次いでメタノール-クロロホルム-水(5:3:2)10mLの2工程で溶離した。
この第二の溶離はリン脂質の回収を増加させた。各フラクションの収量を重量測定法によ
り決定し、純度をTLC-FIDにより確認した。全抽出物及びフラクションを、さらに
GC及びGC-MS分析するまで、-20℃においてジクロロメタン中で保管した。
【0357】
各トランスジェニック及びコントロール種子からのTAGリッチヘキサン抽出物は、約9
6%のTAgを含有していた。CM抽出物は、トランスジェニック及び野生型種子につい
て、それぞれ、該CM抽出物の44重量%及び13重量%になる残渣TAGを含有してい
た。ヘキサン抽出物と対照的に、CM抽出物は、トランスジェニック及びコントロール種
子について、それぞれ、該CM抽出物の50重量%及び76重量%になる極性脂質、即ち
、リン脂質及び糖脂質に富んでいた(表14)。主なリン脂質は、ホスファチジルコリン
(PC)であり、総リン脂質の70%~79%を占め、次いで、ホスファチジルエタノー
ルアミン(PE、7%~13%)、比較的低レベルのホスファチジン酸(PA、2%~5
%)及びホスファチジルセリン(PS、<2%)であった。
【0358】
脂肪酸組成
概して、DHA及び/またはDPAを産生する種子では、本発明者らは、種子中の全脂
質の直接的メチル基転移反応により決定したとき、種子中の総脂質の脂肪酸組成が、TA
Gフラクショと類似していることを観察した。このことは、種子中に存在する総脂質の9
0%より多くが、TAGの形態で起こることに起因した。
【0359】
ヘキサン及びCM抽出物の異なる脂質分類の脂肪酸組成を、Supelco Equi
ty(商標)-1フューズドシリカキャピラリーカラム(15m x 内径0.1mm、
膜厚0.1μm、米国ペンシルベニア州ベルフォント)、FID、スプリット/スプリッ
トレスインジェクター及びAgilent Technologies 7683Bシリ
ーズオートサンプラー及びインジェクターを備えたAgilent Technolog
ies 6890A GC装置(米国カリフォルニア州パロアルト)を用いて、ガスクロ
マトグラフィ(GC)及びGC-MS分析により決定した。キャリアーガスはヘリウムで
あった。試料を120℃のオーブン温度において、スプリットレスモードで注入した。注
入後、オーブン温度を、10℃/分で270℃まで上昇させ、最終的に5℃/分で300
℃まで上昇させた。溶離した化合物を、Agilent Technologies C
hemStationソフトウェア(米国カリフォルニア州パロアルト)で定量化した。
GC結果には、個々の成分面積の±5%以下の誤差があった。
【表14】
【0360】
GC質量分光測定(GC-MS)分析を、Finnigan Trace ultra
Quadrupole GC-MS(モデル:ThermoQuest Trace
DSQ、Thermo Electron Corporation)で行った。The
rmoQuest Xcaliburソフトウェア(米国テキサス州オースチン)でデー
タを処理した。GCにオンカラムインジェクター及び上記と類似極性のキャピラリーHP
-5 Ultra Agilent J& Wカラム(50m x 内径0.32mm、
膜厚0.17μm、Agilent Technologies、米国カリフォルニア州
サンタクララ)を装着した。個々の成分を、質量分析データを用いて、及び信頼できる標
準及び実験室基準として得たものを用いた保持時間データとの比較により同定した。試料
バッチと同時に、全過程のブランク分析を行った。
【0361】
抽出物中の異なる脂質分類の脂肪酸組成データを表15に示す。DHA産生カメリナ種
子では、DHAは、DHA及びALAの比率と逆相関で、1.6%から6.8%の間の範
囲の比率で主要脂質フラクション(TAG、リン脂質及び糖脂質)中に分布していた。ト
ランスジェニック種子からのTAGリッチヘキサン抽出物は、6.8%のDHA及び41
%のALAを含有していた(表15)。極性脂質リッチCM抽出物は、4.2%のDHA
及び50%のALA、すなわち、比較的より少ないDHA及びより多いALAを含有して
いた。極性脂質リッチCM抽出物からの残渣TAGは、6%のDHA及び40%のALA
を含有していた。CM抽出物から単離された糖脂質フラクションは、3%のDHA及び3
9%のALAを含有し、リン脂質フラクションは、最低レベルのDHA(1.6%)及び
最高レベルのALA(54%)を含有していた。トランスジェニックカメリナ種子は、主
要脂質分類(TAg、糖脂質及びリン脂質)のコントロール種子と比較して、より高いレ
ベルのALA及びより低いレベルのLA(リノール酸、18:2ω6)を含有していた。
ALA及びLAの比率は:トランスジェニック種子についてALA39~54%及びLA
4%~9%、並びに、コントロール種子についてALA12%~32%及びLA20%~
29%であった。エルカ酸(22:1ω9)の相対レベルは、コントロール種子より、ト
ランスジェニック種子内の全フラクションで低く、例えば、ヘキサン抽出物では、1.3
%対2.7%であった(表15)。
【0362】
種子内のステロール組成
抽出脂質中のステロール含有率及び組成を決定するため、TAGリッチヘキサン抽出物
及び極性脂質リッチCM抽出物からの約10mgの総脂質試料を、80%MeOH中5%
KOH4mLを用いてけん化し、テフロン加工スクリューキャップしたガラス試験チュー
ブ内で80℃2時間加熱した。反応混合物を冷却後、ミリQ水2mLを添加し、ステロー
ル及びアルコールを、振盪及びボルテックスすることにより、ヘキサン:ジクロロメタン
(4:1v/v)2mL中に抽出した。混合物を遠心分離し、有機相の各抽出物を、振盪
及び遠心分離によりミリQ水2mLで洗浄した。上層のステロール含有有機層を抜き出し
た後、溶媒を、窒素気流を用いて蒸発させ、ステロール及びアルコールを、ビス(トリメ
チルシリル)-トリフルオロアセトアミド(BSTFA、Sigma-Aldrich)
200μLを用いて、密封GCバイアル内で80℃2時間加熱によりシリル化した。この
方法により、遊離ヒドロキシル基をトリメチルシリルエーテルに転換した。ステロール-
及びアルコール-OTMSi誘導体を、窒素気流下、加熱ブロック(40℃)で乾燥し、
上記GC/GC-MS分析直前に、ジクロロメタン(DCM)に再溶解した。
【表15】
【0363】
トランスジェニック及びコントロール種子両方の主要ステロールは、24-エチルコレ
ステロール(シトステロール、総ステロールの43%~54%)、24-メチルコレステ
ロール(カンペステロール、20%~26%)であり、より低レベルのコレステロール(
5%~8%)では、ブラシカステロール(2%~7%)、イソフコステロール(Δ5-ア
ベナステロール、4%~6%)、スチグマステロール(0.5%~3%)、コレスタ-7
-エン-3β-オール(0.2%~0.5%)、24-メチルコレスタノール(カンペス
タノール、0.4%~1%)及び24-デヒドロコレステロール(0.5%~2%)であ
った(表16)。これらの9つのステロールは、総ステロールの86%~95%を占め、
残りの成分は、炭素及び二重結合数について部分的のみ同定されたステロールであった。
全ステロールプロファイルは、ヘキサン及びCM抽出物両方について、トランスジェニッ
ク及びコントロール種子間で類似していた。
【0364】
脂肪アルコール分析
種子中の脂肪アルコールを誘導体化し、ステロールと同様に分析した。イソ分岐脂肪ア
ルコールを伴ったC16~C22の一連の脂肪アルコールを、ヘキサン及びCM抽出物両
方で同定した。トランスジェニック及びコントロール種子について、観察された個々の成
分の比率のいくらかの差異を含む類似のプロファイルが観察された。クロロフィル由来の
フィトールは主要脂肪族アルコールであり、それぞれ、トランスジェニック及びコントロ
ール種子中のヘキサンフラクションの総脂肪アルコールの47%及び37%を占める。奇
数鎖アルコールは、ヘキサン抽出物中(16%~23%)より、CM抽出物中で高いレベ
ルで存在する(総脂肪アルコール含有物の37%~38%)。イソ-17:0(16%~
38%)は、17:0(0.3%~5.7%)に対して優勢であった。存在する別の奇数
鎖アルコールは、19:0であった(4.5%~6.5%)。検出された他のアルコール
は、イソ-16:0、16:0、イソ-18:0、18:1、18:0を含み、少量レベ
ルのイソ-20:0、20:1、20:0、イソ-22:0、22:1及び22:0も存
在した。
【0365】
考察
結果は、室温においてヘキサンで複数回抽出と電動式乳鉢及び乳棒を用いた粉砕は、ト
ランスジェニック種子からTAG含有オイルの大部分を回収するのに効果的であることを
示した。中程度レベルのDHAを含むトランスジェニック種子からのオイルに加えて、ト
ランスジェニック種子は、コントロール種子と比較して、大部分の脂質分類(トリアシル
グリセロール、糖脂質及びリン脂質)中に著しく高いレベルのALAも含んでいた。この
ことは、Δ15-デサチュラーゼ活性が、種子発育中に、トランスジェニック種子内で著
しく増強されることを示した。興味深いことに、様々な抽出物及びフラクション中の脂肪
酸組成及びDHAの比率においていくらかのわずかな差があり、DHAレベルは、TAG
リッチヘキサン抽出物及びCM抽出からのTAG中でより高く(6%~6.8%)、極性
脂質フラクション中でより低かった(糖脂質中3%及びリン脂質中1.6%)。16:0
のレベルは、TAGリッチヘキサン抽出物及びCM抽出からのTAG(6%~7%)と比
較して、CM抽出物中の糖脂質及びリン脂質の極性脂質フラクション中でより高かった(
19%~21%)。
【表16】
【0366】
トランスジェニック種子及びコントロール種子のステロール組成は、同じ大部分のステ
ロールが存在する精製カメリナオイル(Shuklaら、2002)中で見られたものと
同様であり、付加遺伝子が種子内のステロール合成に影響を及ぼさないことを示した。カ
メリナオイル中のコレステロールレベルは、大部分の植物オイルで生じるより高かった。
カメリナサティバを含むアブラナ科(Brassicaceae)ファミリー内で見られ
る特徴的ステロールであるブラシカステロールが存在していた。
【0367】
実施例8.カラシナ種子内のLC-PUFAの産生
トランスジェニックセイヨウアブラナ植物を、以下のように、DHAの産生のため、G
A7-modB構築物(実施例3)を用いて産生した。長日反応性変種のカラシナ種子を
、Keresztら(2007)に記載のように塩素ガスを用いて滅菌した。滅菌種子を
、pH5.8に調節した、0.8%寒天で固形化した1/2強化MS培地(Murash
ige及びSkoog、1962)で発芽させ、6~7日間、16/8時間(明/暗)光
周期で、蛍光灯下(50μE/m2s)、24℃において生育した。2~4mm柄の子葉
柄を、これらの苗から無菌的に単離し、移植片として使用した。アグロバクテリウム・ツ
メファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)株AGL1を
、バイナリーベクターGA7で形質転換した。アグロバクテリウム培養を開始し、Bel
ideら(2013)に記載のように感染処理した。全形質転換のため、約50の新たに
単離した子葉柄を、6分間、アグロバクテリウム・ツメファシエンス10mlで感染させ
た。感染葉柄を、滅菌フィルターペーパー上で吸い取り、過剰なアグロバクテリウム・ツ
メファシエンスを除去して、共培養培地(1,5mg/LのBA、0.01mg/LのN
AA及び100μMアセトシリンゴンを含み、L-システイン(50mg/L)、アスコ
ルビン酸(15mg/L)及びMES(250mg/L)を添加したMS)に移動した。
全プレートをマイクロポアテープで密封し、共培養48時間24℃において、暗所でイン
キュベートした。それから、移植片を、事前選択培地(1.5mg/LのBA、0.01
mg/LのNAA、3mg/LのAgNO3、250mg/Lのセフォタキシム及び50
mg/Lのチメンチンを含むMS-寒天)に移動し、16/8時間光周期で、24℃にお
いて4~5日間培養した後、移植片を、事前選択培地(1.5mg/LのBA、0.01
mg/LのNAA、3mg/LのAgNO3、250mg/Lのセフォタキシム、50m
g/Lのチメンチン及び5mg/LのPPTを含むMS-寒天)に移動し、16/8時間
光周期で、24℃において4週間培養した。緑色のカルスを有する移植片を、シュート形
成培地(2.0mg/LのBA、3mg/LのAgNO3、250mg/Lのセフォタキ
シム、50mg/Lのチメンチン及び5mg/LのPPTを含むMS-寒天)に移動し、
さらに2週間培養した。小さな再分化シュート芽を、ホルモンフリーMS培地(3mg/
LのAgNO3、250mg/Lのセフォタキシム、50mg/Lのチメンチン及び5m
g/LのPPTを含むMS-寒天)に移動し、さらに2~3週間培養した。
【0368】
少なくとも1.5cmのサイズの可能性のあるトランスジェニックシュートを単離し、
発根誘導培地(0.5mg/LのNAA、3mg/LのAgNO3、250mg/Lのセ
フォタキシム及び50mg/Lのチメンチンを含むMS-寒天)に移動し、2~3週間培
養した。PCRにより確認し、繁茂した根を有するトランスジェニックシュートを、温室
内の土壌に移植し、22℃において16/8時間(明/暗)光周期下生育した。3つの確
認されたトランスジェニック植物を得た。形質転換植物を温室で生育し、自家受粉させて
、T1種子を収穫した。各T0形質転換植物からのT1種子のプールの脂質の脂肪酸組成
を分析し、JT1-4と命名された1つの系統で、2.8%のDPA及び7.2%のDH
Aの存在を示したが、JT1-6と命名された別の系統は2.6%のDPAを示した。
【0369】
個々のT1種子の種子オイルを、脂肪酸組成について分析した;データのいくつかを表
17に示す。JT1-4-A-13、JT1-4-A-5及びJT1-4-B-13を含
むいくつかのT1種子は、総脂肪酸含有物の10%~約21%のレベルでDHAを産生し
た。驚くべきことに且つ予想外に、T1種子のいくつかは、総脂肪酸含有物の10%~約
18%のレベルでDPAを含み、検出可能なDHAを含んでいなかった(<0.1%)。
発明者らは、これらの植物中に挿入されたT-DNAのΔ4-デサチュラーゼ遺伝子が、
実施例2に記載されるものと類似した自然な突然変異により不活性であったと結論づけた
。T1種子を発芽し、各々からの1つの発生子葉を残りのオイル中の脂肪酸組成について
分析した。各苗の残りを維持し、成熟するまで生育しT2種子を得た。
【0370】
1つのT-DNAインサーションに対してホモ接合であるトランスジェニック植物を同
定し選択した。JT1-4-17と命名された1つの選択系統の植物は、1つのT-DN
Aインサーションを有し、DHAを産生し、同時に低レベルのみのDPAを産生するが、
JT1-4-34と命名された第二選択系統も1つのT-DNAインサーションを有する
が、DPAを産生し、DHAを産生しなかった。本発明者らは、最初の形質転換体は2つ
の別々のT-DNAを含んでいたが、1つはDHA産生を与えられ、他方はDHAでなく
DPAの産生を与えられたと結論した。その種子内でDHAを産生するカラシナ植物を、
その種子内でDPAを産生する植物と交配した。F1子孫は、双方のT-DNAインサー
ションに対してヘテロ接合である植物を含んでいた。これらの子孫植物からの種子を観察
し、26%の総DHA+DPA含有率に対して、約20%のDHA及び約6%のDPAを
産生した。F1植物を自家受粉し、双方のT-DNAインサーションに対してホモ接合で
ある子孫は、35%までのDHA及びDPAを産生すると期待される。
【0371】
約18%のDPAを、JT1-4-34-11と命名されたT3子孫のプール種子の脂
質で観察した。同様に、約17.5%のDHAを、T3 JT1-4-17-20の子孫
のプール種子の脂質で観察した。JT1-4 T1プール種子、T1単一種子、T2プー
ル種子、T2単一種子、及びT3プール種子、T3単一種子の脂肪酸組成を、表18~2
1に示す。JT1-4 T3分離個体JT-1-4-34-11は、18%のプールT3
種子DPA含有率を有し、この特定の分離個体からの単一種子は、各々、総脂肪酸含有物
のパーセントとして、約26%のDPA含有率を有した。
【0372】
17.9%のDPAを有する種子のオイルについて、次のパラメーターを算出した:総
飽和脂肪酸、6.8%;総一価不飽和脂肪酸、36.7%;総多価不飽和脂肪酸、56.
6%、総ω6脂肪酸、7.1%;新ω6脂肪酸、0.4%、その全てはGLAであった;
総ω3脂肪酸、46.5%;新ω3脂肪酸、24.0%;総ω6:総ω3脂肪酸の比、6
.5;新ω6:新ω3脂肪酸の比、60;Δ12-デサチュラーゼによるオレイン酸から
LAへの転換効率、61%;Δ6-デサチュラーゼによるALAからSDAへの転換効率
、51%;Δ6-エロンガーゼによるSDAからETAへの転換効率、90%;Δ5-デ
サチュラーゼによるETAからEPAへの転換効率、87%;Δ5-エロンガーゼによる
EPAからDPAへの転換効率、98%。
【0373】
modB構築物で、カラシナのより多くのトランスジェニック植物を産生するため、形
質転換を5回繰り返し、16の推定トランスジェニックシュート/苗を再生した。T1種
子分析を実行し、DPA及びDHA含有率を決定する。
【0374】
DPAを含み、DHAを含まないさらなる種子を産生するため、以下のように、Δ4-
デサチュラーゼ遺伝子を欠く、modB構築物の変異体である遺伝子構築物を作製した。
2つのDNA断片、EPA-DPA断片1とEPA-DPA断片2を、適切な制限酵素部
位を用いて合成した(Geneart、ドイツ)。中間クローニングベクター、pJP3
660は、EPA-DPA断片1のAatII-MluI断片を、Δ6デサチュラーゼカ
セットを含むGA7-modBの構築において初期に使用したベクターである、11AB
HZHC_GA7-frag_d6D_pMSと指定されるベクター中のAscI-Aa
tII部位へとクローニングすることにより作製された。次いで、pJP3661は、p
JP3660のPmeI-PspOMI断片を、modBのPmeI-PspOMI部位
へとクローニングすることにより作製した。次いで、DPAベクターであるpJP366
2(
図4)を、EPA-DPA断片2のBsiWI-PspOMI断片を、pJP366
1のBsiWI-PspOMI部位へとクローニングすることによりアセンブリした。こ
のベクターは、オレイン酸をDPAω3及び対応するω6脂肪酸へと転換する酵素をコー
ドする脂肪酸生合成遺伝子を含有した。得られた構築物を使用し、カラシナ及びセイヨウ
アブラナを形質転換した。種子脂質の総脂肪酸含有物中35%までのDPAを含む子孫種
子を産生する。
【0375】
DHAを産生する植物の種子から抽出されたオイルをNMRにより検査し、少なくとも
95%のDHAは、TAG分子のsn-1,3位に存在していることが観察された。
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【0376】
実施例9.形質転換植物のさらなる分析及び実地試験
サザンブロットハイブリダイゼーション解析を、GA7-modB構築物からのT-D
NAで形質転換された選択T2セイヨウアブラナ植物に対して実行した。植物組織試料か
ら抽出されたDNAを、サザンブロットハイブリダイゼーション解析のためいくつかの制
限酵素で消化した。T-DNA部分に対応する放射活性プローブを、該ブロットにハイブ
リダイズし、ストリンジェントな条件下洗浄し、ブロットを膜に暴露してハイブリダイズ
するバンドを検出した。試料のいくつかは、植物の1つのT-DNAインサーションに対
応する各制限酵素の単一ハイブリダイズバンドを示したが、他は、2本のバンドを示し、
また、他は、4つ~6つのインサーションに対応する複数のT-DNAバンドを示した。
サザンブロット解析により観察されたハイブリダイズバンド数は、デジタルPCR法によ
り決定されるとき、約3または4のコピー数まで、トランスジェニック植物のT-DNA
コピー数とよく相関した。約5より大きいコピー数においては、デジタルPCR法はあま
り信頼性ができなかった。
【0377】
選択系統のいくつかを、異なる遺伝子背景の一連の約30種の異なるセイヨウアブラナ
変種との交配において花粉ドナーとして使用した。さらに、戻し交配を実行し、複数のT
-DNAインサーションが遺伝的に連鎖しているかどうかを示し、遺伝的に連鎖していな
いトランスジェニック遺伝子座の分離個体を可能とする。それにより、単一トランスジェ
ニック遺伝子座を含む系統を選択する。
【0378】
単一プライマーPCR反応を、T-DNAの左右境界と隣接するプライマーを用いて、
トランスジェニック系統に対して実行し、T-DNAの逆方向反復の存在を示すいずれも
の系統を処分する。
【0379】
トランスジェニック系統のいくつかは、遅い開花を示し、一方、他は結実を減少し、従
って、温室での生育後の植物当たりの種子収率が低下し、雌または雄生殖能力の低下と一
致していた。花の形態をこれらの植物で調査し、いくつかの場合、葯から花粉の裂開及び
放出が遅いので、裂開が起こる前に花柱が伸びて、それ故、柱頭から葯まで距離が遠ざか
った。完全な受精率は人為的受粉により回復できる。さらに、裂開におけるは分生存率を
、生体染色FDA及びPIでの染色(実施例1)により決定し、系統のいくつかで減少し
ているが、トランスジェニック系統の大部分では、花粉生存率は、野生型コントロールの
ほぼ100%であることが分かった。いくつかの植物での種子収率低下の可能性のある原
因についてさらなる試験として、いくつかのT3及びT4の葯及び柱頭/花柱を含む花芽
の脂肪酸含有率及び組成を試験した。抽出脂質中でDHAは検出されず、遺伝子構築物の
遺伝子が植物の生育中に花芽内で発現されなかったことを示し、種子収率低下の原因とし
て、これを除外した。
【0380】
オイル含有率をNMRにより測定し、総脂肪酸含有物中のDHAレベルを、T2種子に
ついて決定した。6%未満のDHAを含むトランスジェニック系統を処分した。T1、T
2及びT3世代の植物からの葉試料のT-DNAコピー数を、デジタルPCR法(実施例
1)により決定した。
【0381】
選択T3及びT4種子ロットを、オーストラリア、ビクトリアの2カ所の場所において
、各々、約10種子/mの播種密度で、10m作条で、畑に播種した。選択種子ロットは
、約8~11%のプール種子DHAレベル、約19%までの個々のT2種子DHAレベル
を示し、T0植物T-DNAコピー数が3であるB003-5-14由来系統を含んでい
た。選択種子ロットは、20%を超えるT2種子DHAレベル、及び1または2のT2植
物T-DNAコピー数を示したB0050-27由来系統も含んでいた。畑に播種された
種子は発芽し、小植物は、野生型種子と同じ速度で発生した。大部分だが、全てではない
播種された種子ロットから生育した植物は、表現的に正常であり、例えば、形態、生育速
度、草高、雌雄生殖能力、花粉生存率(100%)、結実、長角果サイズ及び同条件下生
育した野生型コントロール植物と本質的に同じである形態を有した。植物当たりの種子収
率は、同条件下生育した野生型コントロールと同様であった。他の種子試料を、より大き
な面積で播種し、選択トランスジェニック系統を大きくした。収穫した種子中の総DHA
含有量は、少なくとも30mg/種子gであった。
【0382】
広範に記載された本発明の精神または範囲から逸脱することなく、具体的実施形態で示
したように、本発明に多数の変化形及び/または修飾が成され得ることを、当業者は認識
するであろう。従って、本実施形態は、あらゆる点で、例証であって、制限されるもので
はないと見なすべきである。
【0383】
本明細書中に含まれた文書、行為、物質、装置、物品などのいかなる考察も、本発明の
ための状況を提供する目的のためだけのものである。本願の各請求範囲の優先日前に存在
したので、いずれかまたは全てのこれらの物質が先行技術の基礎の部分を形成するまたは
本発明に関連する分野で共通する一般知識であったとの承認であると解釈するべきでない
。
【0384】
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本明細書中に含まれた文書、行為、物質、装置、物品などのいかなる考察も、本発明のための状況を提供する目的のためだけのものである。本願の各請求範囲の優先日前に存在したので、いずれかまたは全てのこれらの物質が先行技術の基礎の部分を形成するまたは本発明に関連する分野で共通する一般知識であったとの承認であると解釈するべきでない。
本発明は次の実施態様を含む。
[1]
エステル化された形態の脂肪酸を含み、前記脂肪酸は、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)を含むω6脂肪酸、α-リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸及びドコサペンタエン酸(DPA)を含み、場合により、ステアリドン酸(SDA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、及びエイコサテトラエン酸(ETA)のうち1つ以上を含んでもよく、前記抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるDPAのレベルが、7%から35%の間である、抽出植物脂質または微生物脂質。
[2]
以下の特徴:
i)前記抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるパルミチン酸のレベルは、約2%から15%の間、または約3%から10%の間であること、
ii)前記抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるミリスチン酸(C14:0)のレベルは、約0.1%であること、
iii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるオレイン酸のレベルは、約1%から約30%の間、約3%から約30%の間、約6%から約30%の間、約1%から約20%の間、約30%から約60%の間、約45%~約60%、約30%、または約15%から約30%の間であること、
iv)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるリノール酸(LA)のレベルは、約4%から約35%の間、約4%から約20%の間、約4%から約17%の間、または約5%から約10%の間であること、
v)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるα-リノレン酸(ALA)のレベルは、約4%から約40%の間、約7%から約40%の間、約10%から約35%の間、約20%から約35%の間、約4%から約16%の間、または約2%から約16%の間であること、
vi)前記抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるγ-リノレン酸(GLA)のレベルは、4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、0.05%から7%の間、0.05%から4%の間、0.05%から約3%の間、または0.05%から約2%の間であること、
vii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるステアリドン酸(SDA)のレベルは、約10%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約4%未満、約3%未満、約0.05%から約7%の間、約0.05%から約6%の間、約0.05%から約4%の間、約0.05%から約3%の間、約0.05%から約10%の間、または約0.05%から約2%の間であること、
viii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるエイコサテトラエン酸(ETA)のレベルは、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約1%未満、約0.5%未満、0.05%から約6%の間、0.05%から約5%の間、0.05%から約4%の間、0.05%から約3%の間、または0.05%から約2%の間であること、
ix)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるエイコサトリエン酸(ETrA)のレベルは、4%未満、約2%未満、約1%未満、0.05%から4%の間、0.05%から3%の間、または0.05%から約2%の間、または0.05%から約1%の間であること、
x)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるエイコサペンタエン酸(EPA)のレベルは、4%から15%の間、4%未満、約3%未満、約2%未満、0.05%から10%の間、0.05%から5%の間、0.05%から約3%の間、または0.05%から約2%の間であること、
xi)もし、前記抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるDHAのレベルが、2%未満、または0.05%から約2%の間であること、
xii)該脂質は、その脂肪酸含有物中にω6-ドコサペンタエン酸(22:5
Δ4,7,10,13,16
)を含むこと、
xiii)該脂質は、その脂肪酸含有物中に0.1%未満のω6-ドコサペンタエン酸(22:5
Δ4,7,10,13,16
)を含むこと、
xiv)該脂質は、その脂肪酸含有物中に0.1%未満の1つ以上または全てのSDA、EPA及びETAを含むこと、
xv)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における総飽和脂肪酸レベルは、約4%から約25%の間、約4%から約20%の間、約6%から約20%の間、または約6%から約12%の間であること、
xvi)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における総一価不飽和脂肪酸レベルは、約4%から約40%の間、約4%から約35%の間、約8%から約25%の間、8%から約22%の間、約15%から約40%の間または約15%から約35%の間であること、
xvii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における総多価不飽和脂肪酸レベルは、約20%から約75%の間、30%から75%の間、約50%から約75%の間、約60%、約65%、約70%、約75%、または約60%から約75%の間であること、
xviii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における総ω6脂肪酸レベルは、約35%から約50%の間、約20%から約35%の間、約6%から約20%の間、20%未満、約16%未満、約10%未満、約1%から約16%の間、約2%から約10%の間、または約4%から約10%の間であること、
xix)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における新ω6脂肪酸レベルは、約10%未満、約8%未満、約6%未満、4%未満、約1%から約20%の間、約1%から約10%の間、0.5%から約8%の間、または0.5%から4%の間であること、
xx)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における総ω3脂肪酸レベルは、36%から約65%の間、36%から約70%の間、40%から約60%の間、約30%から約60%の間、約35%から約60%の間、40%から約65%の間、約30%から約65%の間、約35%から約65%の間、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%または約70%であること、
xxi)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における新ω3脂肪酸レベルは、21%から約45%の間、21%から約35%の間、約23%から約35%の間、約25%から約35%の間、約27%から約35%の間、約23%から約25%の間、約27%、約30%、約35%、約40%または約45%であること、
xxii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比は、約1.0から約3.0の間、約0.1から約1の間、約0.1から約0.5の間、約0.50未満、約0.40未満、約0.30未満、約0.20未満、約0.15未満、約1.0未満、約0.1未満、約0.10~約0.4、または約0.2であること、
xxiii)該抽出脂質の総脂肪酸含有量における新ω6脂肪酸:新ω3脂肪酸の比は、約1.0から約3.0の間、約0.02から約0.1の間、約0.1から約1の間、約0.1から約0.5の間、約0.50未満、約0.40未満、約0.30未満、約0.20未満、約0.15未満、約0.02、約0.05、約0.1、約0.2または約1.0であること、
xxiv)該脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、約60%から約98%の間、約70%から約95%の間、または約75%から約90%の間のΔ12-デサチュラーゼによるオレイン酸からLAへの転換効率に基づくこと、
xxv)該脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、約30%から約70%の間、約35%から約60%の間、または約50%から約70%の間のΔ6-デサチュラーゼによるALAからSDAへの転換効率に基づくこと、
xxvi)該脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、約60%から約95%の間、約70%から約88%の間、または約75%から約85%の間のΔ6-エロンガーゼによるSDAからETA酸への転換効率に基づくこと、
xxvii)該脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、約60%から約99%の間、約70%から約99%の間、または約75%から約98%の間のΔ5-デサチュラーゼによるETAからEPAへの転換効率に基づくこと、
xxviii)該脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、約50%から約99%の間、約85%から約99%の間、約50%から約95%の間、または約85%から約95%の間のΔ5-エロンガーゼによるEPAからDPAへの転換効率に基づくこと、
xxix)前記脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、約20%、約25%、約30%、約10%から約50%の間、約10%から約30%の間、約10%から約25%の間または約20%から約30%の間のオレイン酸からDPAへの転換効率に基づくこと、
xxx)前記脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約22%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約15%から約50%の間、約20%から約40%の間、または約20%から約30%の間のLAからDPAへの転換効率に基づくこと、
xxxi)前記脂質の脂肪酸組成は、少なくとも約17%、少なくとも約22%、少なくとも約24%、少なくとも約30%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約22%から約70%の間、約17%から約55%の間、約22%から約40%の間、または約24%から約40%の間のALAからDPAへの転換効率に基づくこと、
xxxii)該抽出脂質中の総脂肪酸は、1.5%未満のC20:1、1%未満のC20:1または約1%のC20:1を有すること、
xxxiii)該脂質のトリアシルグリセロール(TAG)含有率は、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、約70%から約99%の間、または約90%から約99%の間であること、
xxxiv)該脂質は、ジアシルグリセロール(DAG)を含み、DAGは好ましくはDPAを含むこと、
xxxv)該脂質は、約10%未満、約5%未満、約1%未満または約0.001%から約5%の間の遊離(非エステル化)脂肪酸及び/またはリン脂質を含む、または本質的にそれを含まないこと、
xxxvi)TAGの形態でエステル化されたDPAの少なくとも70%、少なくとも72%または少なくとも80%は、前記TAGのsn-1位またはsn-3位であること、
xxxvii)前記脂質において最も豊富なDPA含有TAG種は、DPA/18:3/18:3(TAG56:12)であること、
xxxviii)前記脂質は、トリDPA TAG(TAG66:18)を含むこと、及び
xxxix)該抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるDPAのレベルが、約7%、約8%、約9%、約10%、約12%、約15%、約18%、約20%、約22%、約24%、約26%、約28%、約31%、約7%から約31%の間、約7%から約28%の間、約10%から約35%の間、約10%から約30%の間、約10%から約25%の間、約10%から約22%の間、約14%から約35%の間、約16%から約35%の間、約16%から約30%の間、約16%から約25%の間、または約16%から約22%の間であり、場合により、DHAレベルは、該抽出脂質の総脂肪酸含有量の0.5%未満であること
の1つ以上を有する、[1]に記載の脂質。
[3]
前記脂質がオイル、好ましくは、油料種子から採れるオイルであり、より好ましくは、前記脂質が、セイヨウアブラナ(Brassica napus)オイルまたはカラシナ(Brassica juncea)オイルなどのアブラナ属(Brassica sp.)オイル、ワタ(Gossypium hirsutum)オイル、アマ(Linum usitatissimum)オイル、ヘリアンタス属(Helianthus sp.)オイル、ベニバナ(Carthamus tinctorius)オイル、ダイズ(Glycine max)オイル、トウモロコシ(Zea mays)オイル、ギニアアブラヤシ(Elaesis guineenis)オイル、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)オイル、アオバナルーピン(Lupinus angustifolius)オイル、カメリナサティバ(Camelina sativa)オイル、クランベアビシニカ(Crambe abyssinica)オイル、ジャイアントミスカンサス(Miscanthus x giganteus)オイル、またはススキ(Miscanthus sinensis)オイルを含むまたはである、[1]または[2]のいずれかに記載の脂質。
[4]
i)脂質を含む植物部分または微生物細胞を得る工程であって、前記脂質がエステル化された形態の脂肪酸を含み、前記脂肪酸がオレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)を含むω6脂肪酸、α-リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸、ステアリドン酸(SDA)、ドコサペンタエン酸(DPA)を含み、場合により、1つ以上のエイコサペンタエン酸(EPA)及びエイコサテトラエン酸(ETA)を含んでもよく、前記植物部分中の抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるDPAのレベルが7%から35%の間である前記工程、及び
ii)前記植物部分または微生物細胞から脂質を抽出する工程
を含み、前記抽出脂質の総脂肪酸含有量におけるDPAのレベルが7%から35%の間である抽出植物脂質または微生物脂質の産生方法。
[5]
前記抽出脂質が[2]または[3]で定義された特徴の1つ以上を有する、[4記載の方法
[6]
前記植物部分が種子、好ましくは、セイヨウアブラナ(Brassica napus)またはカラシナ(Brassica juncea)などのアブラナ属(Brassica sp.)、ワタ(Gossypium hirsutum)、アマ(Linum usitatissimum)、ヘリアンタス属(Helianthus sp.)、ベニバナ(Carthamus tinctorius)、ダイズ(Glycine max)、トウモロコシ(Zea mays)、ギニアアブラヤシ(Elaesis guineenis)、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)、アオバナルーピン(Lupinus angustifolius)、カメリナサティバ(Camelina sativa)、またはクランベアビシニカ(Crambe abyssinica)、好ましくは、セイヨウアブラナ(Brassica napus)、カラシナ(B. juncea)またはカメリナサティバ(C. sativa)の種子などの油料種子である、[4]または[5]に記載の方法。
[7]
前記植物部分または微生物細胞が、酵素の以下のセット:
i)ω3-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
ii)Δ15-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
iii)Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
iv)Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
v)ω3-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
vi)Δ15-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
vii)Δ12-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
viii)Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
ix)ω3-デサチュラーゼまたはΔ15-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、または
x)ω3-デサチュラーゼまたはΔ15-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ
の1つをコードする外来性ポリヌクレオチドを含み、各ポリヌクレオチドは、前記植物部分または微生物細胞の細胞内の前記ポリヌクレオチドの発現を誘導可能である1つ以上のプロモーターと作動可能に結合している、[4]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]
前記植物部分または微生物細胞が、以下の特徴:
i)前記Δ12‐デサチュラーゼが、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、約60%から約95%の間、約70%から約90%の間、または約75%から約85%の間の効率で、前記植物部分または微生物細胞の1つ以上の細胞内で、オレイン酸をリノール酸に転換すること、
ii)前記ω3‐デサチュラーゼが、少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、約65%から約95%の間、約75%から約91%の間、または約80%から約91%の間の効率で、前記植物部分または微生物細胞の1つ以上の細胞内で、ω6脂肪酸をω3脂肪酸に転換すること、
iii)前記Δ6‐デサチュラーゼが、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、約30%から約70%の間、約35%から約60%の間、または約50%から約70%の間の効率で、前記植物部分または微生物細胞の1つ以上の細胞内で、ALAをSDAに転換すること、
iv)前記Δ6‐デサチュラーゼが、約5%未満、約2.5%未満、約1%未満、約0.1%から約5%の間、約0.5%から約2.5%の間、または約0.5%から約1%の間の効率で、前記植物部分または微生物細胞の1つ以上の細胞内で、リノール酸をγ‐リノレン酸に転換すること、
v)前記Δ6‐エロンガーゼが、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、約60%から約95%の間、約70%から約80%の間、または約75%から約80%の間の効率で、前記植物部分または微生物細胞の1つ以上の細胞内で、SDAをETAに転換すること、
vi)前記Δ5‐デサチュラーゼが、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、約60%から約95%の間、約70%から約95%の間、または約75%から約95%の間の効率で、前記植物部分または微生物細胞の1つ以上の細胞内で、ETAをEPAに転換すること、
vii)前記Δ5‐エロンガーゼが、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、約50%から約90%の間、または約85%から約95%の間の効率で、前記植物部分または微生物細胞の1つ以上の細胞内で、EPAをDPAに転換すること、
viii)前記植物部分または微生物細胞の1つ以上の細胞内で、オレイン酸をDPAに転換する効率が、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、約20%、約25%、約30%、約10%から約50%の間、約10%から約30%の間、または約10%から約25%の間、または約20%から約30%の間であること、
ix)前記植物部分または微生物細胞の1つ以上の細胞内で、LAをDPAに転換する効率が、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約22%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、約25%、約30%、約35%、約15%から約50%の間、約20%から約40%の間、または約20%から約30%の間であること、
x)前記植物部分または微生物細胞の1つ以上の細胞内で、ALAをDPAに転換する効率が、少なくとも約17%、少なくとも約22%、少なくとも約24%、少なくとも約30%、約30%、約35%、約40%、約17%から約55%の間、約22%から約35%の間、または約24%から約35%の間であること、
xi)前記植物部分または微生物細胞の1つ以上の細胞は、前記外来性ポリヌクレオチドを含まない対応細胞より、少なくとも約25%、少なくとも約30%、約25%から約40%の間、または約27.5%から約37.5%の間で多いω3脂肪酸を含むこと、
xii)前記Δ6-デサチュラーゼは、リノール酸(LA)と比較してα-リノレン酸(ALA)を優先的に不飽和化すること、
xiii)前記Δ6-エロンガーゼは、Δ9-エロンガーゼ活性も有すること、
xiv)前記Δ12-デサチュラーゼは、Δ15-デサチュラーゼ活性も有すること、
xv)前記Δ6-デサチュラーゼは、Δ8-デサチュラーゼ活性も有すること、
xvi)前記Δ8-デサチュラーゼは、Δ6-デサチュラーゼ活性も有する、またはΔ6-デサチュラーゼ活性を有しないこと、
xvii)前記Δ15-デサチュラーゼは、GLAに対するω3-デサチュラーゼ活性も有すること、
xviii)前記ω3-デサチュラーゼは、LAに対するΔ15-デサチュラーゼ活性も有すること、
xix)前記ω3-デサチュラーゼは、LA及び/またはGLAの両方を不飽和化すること、
xx)前記ω3-デサチュラーゼは、LAと比較してGLAを優先的に不飽和化すること、
xxi)1つ以上または全ての前記デサチュラーゼは、対応するアシル‐PC基質より、アシル-CoA基質に対して高い活性を有すること、
xxii)前記Δ6-デサチュラーゼは、脂肪酸基質として、LAより、ALAに対して高いΔ6-デサチュラーゼ活性を有すること、
xxiii)前記Δ6-デサチュラーゼは、脂肪酸基質としてのPCのSn-2位と結合したALAに対するより、脂肪酸基質としてのALA-CoAに対して高いΔ6-デサチュラーゼ活性を有すること、
xxiv)前記Δ6-デサチュラーゼは、LAと比較して、基質としてのALAに対して、少なくとも約2倍高いΔ6-デサチュラーゼ活性、少なくとも3倍高い活性、少なくとも4倍高い活性、または少なくとも5倍高い活性を有すること、
xxv)前記Δ6-デサチュラーゼは、脂肪酸基質としてのPCのsn-2位と結合したALAに対するより、脂肪酸基質としてのALA-CoAに対して高い活性を有すること、
xxvi)前記Δ6-デサチュラーゼは、脂肪酸基質としてのPCのsn-2位に結合したALAに対するより、脂肪酸基質としてのALA-CoAに対して、少なくとも約5倍高いΔ6‐デサチュラーゼ活性または少なくとも10倍高い活性を有すること、
xxvii)前記デサチュラーゼは、フロントエンドデサチュラーゼであること、及び
xxviii)前記Δ6‐デサチュラーゼは、ETAに対する検出可能なΔ5‐デサチュラーゼ活性を有しないこと
の1つ以上または全てを有する、[7]記載の方法。
[9]
前記植物部分または微生物細胞が、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)、モノアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(MGAT)、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(GPAT)、1-アシル-グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)、好ましくは、DPA-CoAなどのC22多価不飽和脂肪アシル-CoA基質を使用できるLPAAT、アシル-CoA:リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ(LPCAT)、ホスホリパーゼA
2
(PLA
2
)、ホスホリパーゼC(PLC)、ホスホリパーゼD(PLD)、CDP-コリンジアシルグリセロールコリンホスホトランスフェラーゼ(CPT)、ホスファチジルコリンジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(PDAT)、ホスファチジルコリン:ジアシルグリセロールコリンホスホトランスフェラーゼ(PDCT)、アシル-CoAシンターゼ(ACS)、またはその2つ以上の組合せをコードする外来性ポリヌクレオチドをさらに含む、[7]または[8]記載の方法。
[10]
前記外来性ポリヌクレオチドが、前記植物部分または微生物細胞の細胞のゲノムに組み込まれたDNA分子、好ましくは、T-DNA分子内に共有結合しており、好ましくは、前記植物部分または微生物細胞の細胞のゲノムに組み込まれたかかるDNA分子数が、1以下、2もしくは3以下であり、または2もしくは3である、[7]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11]
前記外来性ポリヌクレオチドを含む前記植物部分または微生物細胞の総オイル含有率が、前記外来性ポリヌクレオチドを含まない対応する植物部分または微生物細胞の総オイル含有率の少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、約50%から約80%の間、または約80%から約100%の間である、[4]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12]
前記脂質を処理して、総脂肪酸含有率のパーセンテージとして、DPAのレベルを増加させることをさらに含み、前記処理が、1つ以上の分別蒸留、蒸留またはDPAのメチルエステルまたはエチルエステルの生成などのエステル交換反応を含む、[4]~[11]のいずれかに記載の方法。
[13]
その種子中に脂質を含む油料種子植物、もしくはその部分、または微生物細胞であって、
a)エステル化された形態の脂肪酸を含む脂質、及び
b)酵素の以下のセット;
i)Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
ii)Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ
iii)ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、または
iv)ω3-デサチュラーゼ及び/またはΔ15-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ
の1つをコードする外来性ポリヌクレオチド
を含み、
各ポリヌクレオチドが、前記植物の発育種子中の前記ポリヌクレオチドの発現を誘導可能である1つ以上の種子特異的プロモーター、または前記微生物細胞中の前記ポリヌクレオチドの発現を誘導可能である1つ以上のプロモーターと作動可能に結合されており、前記脂肪酸が、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)を含むω6脂肪酸、α-リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸、ステアリドン酸(SDA)、及びドコサペンタエン酸(DPA)を含み、場合によっては、エイコサペンタエン酸(EPA)及び/またはエイコサテトラエン酸(ETA)を含んでもよく、及び前記種子または微生物細胞の脂質の総脂肪酸含有量におけるDPAのレベルが7%から35%の間である、
前記油料種子植物、もしくはその部分、または微生物細胞。
[14]
DPAを含む種子を産生可能であるセイヨウアブラナ(Brassica napus)、カラシナ(B. juncea)またはカメリナサティバ(Camelina sativa)植物であって、前記植物の成熟した収穫された種子が、種子1グラム当たり少なくとも約28mg、好ましくは、種子1グラム当たり少なくとも約32mg、種子1グラム当たり少なくとも約36mg、種子1グラム当たり少なくとも約40mg、より好ましくは、種子1グラム当たり少なくとも約44mgまたは少なくとも48mg、種子1グラム当たり少なくとも約80mg、または種子1グラム当たり約30mgから約80mgの間のDPA含有量を有する、前記植物。
[15]
前記外来性ポリヌクレオチドを含む[13]記載の植物細胞。
[16]
以下の特徴:
i)[13]または14]記載の植物由来であること、
ii)[1]~[3]のいずれかに記載の脂質を含むこと、
iii)[4]~[12]のいずれかに記載の方法で使用できること
の1つ以上を有する植物部分、好ましくは種子、または微生物細胞。
[17]
DPA及び約4重量%から約15重量%の間、好ましくは、約6重量%から約8重量%の間または約4重量%から約8重量%の間の水分を含む成熟して収穫されたセイヨウアブラナ(Brassica napus)、カラシナ(B. juncea)またはカメリナサティバ(Camelina sativa)種子であって、前記種子のDPA含有量が種子1グラム当たり少なくとも約28mg、好ましくは、種子1グラム当たり少なくとも約32mg、種子1グラム当たり少なくとも約36mg、種子1グラム当たり少なくとも約40mg、より好ましくは、種子1グラム当たり少なくとも約44mgまたは種子1グラム当たり少なくとも約48mg、種子1グラム当たり約80mg、または種子1グラム当たり約30mgから約80mgの間である、前記種子。
[18]
[1]~[3]のいずれかに記載の抽出植物脂質または抽出微生物脂質の製造に使用できる植物または微生物細胞の産生方法であって、前記方法が、
a)複数の植物または微生物細胞からの1つ以上の植物部分または微生物細胞により産生された脂質中のDPAのレベルをアッセイすることであって、各植物または微生物細胞が、酵素の以下のセット;
i)ω3-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
ii)Δ15-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
iii)Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
iv)Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼまたはΔ15-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
v)ω3-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
vi)Δ15-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
vii)Δ12-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
viii)Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼまたはΔ15-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、
ix)ω3-デサチュラーゼまたはΔ15-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ、または
x)ω3-デサチュラーゼまたはΔ15-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ及びΔ5-エロンガーゼ
の1つをコードする1つ以上の外来性ポリヌクレオチドを含み、
各ポリヌクレオチドが、植物部分または微生物細胞の細胞内の前記ポリヌクレオチドの発現を誘導可能である1つ以上のプロモーターと作動可能に結合する、前記アッセイすること、と
b)1つ以上のその部分の[1]~[3]のいずれかに記載の抽出植物脂質または微生物脂質の産生に使用できる複数の植物または微生物細胞から植物または微生物細胞を同定すること、と
c)場合によっては、前記同定植物または微生物細胞、またはそれ由来の種子から後代植物または微生物細胞を産生すること
とを含む前記方法。
[19]
種子の産生方法であって、前記方法が、
a)好ましくは、少なくとも1000または2000または3000のかかる植物の集合部分としての耕地または標準栽植密度で植えられた少なくとも1ヘクタールまたは2ヘクタールまたは3ヘクタールの領域で、[13]または14]記載の植物、または[16]記載の植物部分を産生、もしくは[17]記載の種子を産生する植物を生育すること、
b)前記1つまたは複数の植物から種子を収穫すること、及び
c)場合によっては、前記種子から脂質を抽出して、好ましくは、少なくとも60kgまたは70kgまたは80kgのDPA/ヘクタールの総DPA収率でオイルを産生すること
を含む、前記方法。
[20]
次の特徴:
i)[2]または[3]に定義されるオイルを含むこと、及び
ii)前記植物部分または種子または微生物細胞が[4]~[12]のいずれかに記載の方法で使用可能であること
の1つ以上を有する、[13]~[17]のいずれかに記載の植物、植物細胞、植物部分もしくは種子、または微生物細胞。
[21]
[4]~[12]のいずれかに記載の方法を用いて、[15]記載の細胞、[13]記載の油料種子植物、[13]記載の微生物細胞、[14]記載のセイヨウアブラナ(Brassica napus)、カラシナ(B. juncea)もしくはカメリナサティバ(Camelina sativa)植物、[16]記載の植物部分、または[17]記載の種子により産生、またはから得られる脂質、またはオイル。
[22]
[17]記載の種子から得られる、または[13]または[14]記載の植物から得られるシードミール。
[23]
1つ以上の[21]記載の脂質もしくはオイル、[15]記載の細胞、[20]記載の植物細胞または微生物細胞、[17]記載の種子、または[22]記載のシードミールを含む組成物。
[24]
1つ以上の[21]記載の脂質もしくはオイル、[15]記載の細胞、[13]記載の油料種子植物、[20]記載の植物細胞もしくは微生物細胞、[14]記載のセイヨウアブラナ(Brassica napus)、カラシナ(B. juncea)もしくはカメリナサティバ(Camelina sativa)植物、[20]記載の植物部分、[17]記載の種子、[22]記載のシードミール、または[23]記載の組成物を含む家畜飼料、化粧品または化学薬品。
[25]
家畜飼料の製造方法であって、前記方法が、少なくとも1つの他の食物成分と、1つ以上の[1]~[3]のいずれかに記載の脂質もしくはオイル、[15]記載の細胞、[13]記載の油料種子植物、[20]記載の植物細胞もしくは微生物細胞、[14]記載のセイヨウアブラナ(Brassica napus)、カラシナ(B. juncea)もしくはカメリナサティバ(Camelina sativa)植物、[20]記載の植物部分、[17]記載の種子、[22]記載のシードミール、または[23]記載の組成物を混合することを含む前記方法。
[26]
PUFAから利益を受けることになる症状の治療または予防用医薬品製造のための、[1]~[3]のいずれかに記載の1つ以上の脂質またはオイル、[15]記載の細胞、[20]記載の植物細胞もしくは微生物細胞、[20]記載の植物部分、[17]記載の種子、[22]記載のシードミール、または[23]記載の組成物の使用。