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特開2023-75104電磁鋼板、電磁鋼板用絶縁被膜組成物および電磁鋼板の製造方法
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  • 特開-電磁鋼板、電磁鋼板用絶縁被膜組成物および電磁鋼板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075104
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】電磁鋼板、電磁鋼板用絶縁被膜組成物および電磁鋼板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/00 20060101AFI20230523BHJP
   C23C 22/82 20060101ALI20230523BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20230523BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20230523BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20230523BHJP
   H01F 1/18 20060101ALI20230523BHJP
   C21D 8/12 20060101ALN20230523BHJP
   C22C 38/60 20060101ALN20230523BHJP
【FI】
C23C22/00 B
C23C22/82
C23C26/00 C
C21D9/46 501B
C22C38/00 303U
H01F1/18
C21D8/12 A
C22C38/60
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021994
(22)【出願日】2023-02-15
(62)【分割の表示】P 2021505751の分割
【原出願日】2019-07-30
(31)【優先権主張番号】10-2018-0088696
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0088697
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0165656
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ミン ソク
(72)【発明者】
【氏名】シム,ホ-ギョン
(72)【発明者】
【氏名】コ,ヒョンチョル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ビョン-チョル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュン-ウ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ホン-ジョ
(72)【発明者】
【氏名】ノ,テヨン
(57)【要約】
【課題】シラン化合物を使用し応力除去焼鈍時の耐熱性および熱伝導度に優れた電磁鋼板、電磁鋼板用絶縁被膜組成物および電磁鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明による電磁鋼板は、電磁鋼板基材および電磁鋼板基材の一面または両面に位置した絶縁被膜を含み、絶縁被膜は化学式1で表されるシラン化合物;および無水クロム酸、クロム酸塩および重クロム酸塩のうちの1種以上のクロム酸化合物、を含むことを特徴とする。
[化学式1]
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるシラン化合物;および無水クロム酸、クロム酸塩および重クロム酸塩のうちの1種以上のクロム酸化合物、を含み、
前記シラン化合物および前記クロム酸化合物の合量100重量部に対して、前記シラン化合物10~80重量部および前記クロム酸化合物20~90重量部を含むことを特徴とする電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
[化学式1]
(化学式1において、Rは水素、ハロゲン元素、直鎖状または分枝状アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基またはアミノアルキル基であり、Lは直接結合または2価の連結基である。mは1~3の整数であり、nは4-mである。)
【請求項2】
前記化学式1において、Rは水素、ハロゲン元素、直鎖状または分枝状アルキル基またはアルコキシ基であることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項3】
前記化学式1において、Lは直接結合、アルキレン基および-CF-のうちの1種以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項4】
前記シラン化合物は下記化学式2で表されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
[化学式2]
(化学式2において、R~Rはそれぞれ独立して水素、ハロゲン元素、直鎖状または分枝状アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基またはアミノアルキル基であり、Lは直接結合または2価の連結基である。mは1~3の整数であり、nは4-mである。)
【請求項5】
前記化学式2において、RおよびRはそれぞれ独立して、水素またはハロゲン元素であることを特徴とする請求項4に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項6】
前記シラン化合物は、Triethyl(trifluoromethyl)silane(トリエチル(トリフルオロメチル)シラン)、Trimethoxy(trifluoropropyl)silane(トリメトキシ(トリフルオロプロピル)シラン)、Dimethoxy-methyl(trifluoropropyl)silane(ジメトキシ-メチル(トリフルオロプロピル)シラン)およびPerfluorooctyl-triethoxysilane(パーフルオロオクチル-トリエトキシシラン)のうちの1種以上を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項7】
前記シラン化合物および前記クロム酸化合物の合量100重量部に対して、セラミック粉末を0.5~65重量部さらに含むことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項8】
前記セラミック粉末は、MgO、MnO、Al、SiO、TiO、ZrO、AlSi13、Al・TiO、Y、9Al・B、BN、CrN、BaTiO、SiCおよびTiCのうちの1種以上を含むことを特徴とする請求項7に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項9】
前記セラミック粉末の平均粒径は0.05~20μmであることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項10】
前記シラン化合物および前記クロム酸化合物の合量100重量部に対して、アクリル樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂およびエポキシ樹脂のうちの1種以上の高分子樹脂を0.5~30重量部さらに含むことを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項11】
前記シラン化合物および前記クロム酸化合物の合量100重量部に対して、エチレングリコール(Ethylene golycol)、プロピレングリコール(Propylene glycol)、グリセリン(Glycerine)、ブチルカルビトール(Butyl carbitol)のうちの1種以上を1~15重量部さらに含むことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項12】
電磁鋼板基材および
電磁鋼板基材の一面または両面に位置した絶縁被膜を含み、
前記絶縁被膜は下記化学式1で表されるシラン化合物;および無水クロム酸、クロム酸塩および重クロム酸塩のうちの1種以上のクロム酸化合物、を含み、
前記シラン化合物および前記クロム酸化合物の合量100重量部に対して、前記シラン化合物10~80重量部および前記クロム酸化合物20~90重量部を含むことを特徴とする電磁鋼板。
[化学式1]
(化学式1において、Rは水素、ハロゲン元素、直鎖状または分枝状アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基またはアミノアルキル基であり、Lは直接結合または2価の連結基である。mは1~3の整数であり、nは4-mである。)
【請求項13】
前記絶縁被膜はSiを0.1~50重量%およびFを0.01~25重量%含むことを特徴とする請求項12に記載の電磁鋼板。
【請求項14】
前記絶縁被膜の厚さは0.1~10μmであることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の電磁鋼板。
【請求項15】
電磁鋼板基材を製造する段階、および
前記電磁鋼板基材の一面または両面に絶縁被膜組成物を塗布して絶縁被膜を形成する段階を含み、
前記絶縁被膜組成物は下記化学式1で表されるシラン化合物、および無水クロム酸、クロム酸塩および重クロム酸塩のうちの1種以上のクロム酸化合物、を含み、
前記シラン化合物および前記クロム酸化合物の合量100重量部に対して、前記シラン化合物10~80重量部および前記クロム酸化合物20~90重量部含むことを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
[化学式1]
(化学式1において、Rは水素、ハロゲン元素、直鎖状または分枝状アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基またはアミノアルキル基であり、Lは直接結合または2価の連結基である。mは1~3の整数であり、nは4-mである。)
【請求項16】
前記電磁鋼板基材を製造する段階は、
スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、
前記熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階および
前記冷延板を最終焼鈍する段階を含むことを特徴とする請求項15に記載の電磁鋼板の製造方法。
【請求項17】
前記絶縁被膜を形成する段階は、100~680℃の温度で前記絶縁被膜組成物が塗布された鋼板を熱処理する段階を含むことを特徴とする請求項15または請求項16に記載の電磁鋼板の製造方法。
【請求項18】
前記絶縁被膜を形成する段階の後、
700~1000℃の温度で応力除去焼鈍を行う段階をさらに含むことを特徴とする請求項15乃至請求項17のいずれか一項に記載の電磁鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁鋼板、電磁鋼板用絶縁被膜組成物および電磁鋼板の製造方法に関し、より具体的には、特定の化学構造を含むシラン化合物を使用し、応力除去焼鈍時の耐熱性および熱伝導度に優れた電磁鋼板、電磁鋼板用絶縁被膜組成物および電磁鋼板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータや変圧器などに使用される電磁鋼板の絶縁被膜は、層間抵抗だけでなく様々な特性が求められる。例えば、加工成形時の便利性、保管、使用時の安定性などである。また、電磁鋼板は多様な用途に使用されるため、その用途に応じて様々な絶縁被膜の開発が実施されている。例えば、電磁鋼板はパンチング加工、せん断加工、曲げ加工などを実施すると残留変形によって磁気特性が劣化する。そのため、劣化した磁気特性を回復させるために高温で応力除去焼鈍(SRA,Stress Relief Annealing)を実施する場合がある。したがって、絶縁被膜は応力除去焼鈍時剥離されず固有電気絶縁を維持する耐熱特性が必要である。
【0003】
既に知られている絶縁被膜組成物として、無水クロム酸、酸化マグネシウム、アクリル系樹脂またはアクリル-スチレン共重合体樹脂を混合適用して耐食性と絶縁性向上を図った。ただし、このような絶縁被膜組成物では最近求められる応力除去焼鈍時の耐熱性を満足させるには限界がある。また、金属リン酸塩を絶縁被膜組成物の主成分として使用して応力除去焼鈍時の密着性を改善する方法が提案された。しかし、この方法は耐吸性が強いリン酸塩の特徴のために表面に白化欠陥が発生して製品加工時粉塵が発生する問題があり、白化欠陥が発生した部位に耐熱性がかえって劣る問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、電磁鋼板用絶縁被膜組成物および絶縁被膜を含む電磁鋼板を提供することにある。より具体的には、特定の化学構造を有するシラン化合物を使用し、応力除去焼鈍時の耐熱性および熱伝導度に優れた電磁鋼板用絶縁被膜組成物および絶縁被膜を含む電磁鋼板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施例による電磁鋼板は、電磁鋼板基材および電磁鋼板基材の一面または両面に位置した絶縁被膜を含み、絶縁被膜は下記化学式1で表されるシラン化合物および水酸化金属を含むことを特徴とする。
[化学式1]
(化学式1において、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、直鎖状または分枝状アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基またはアミノアルキル基であり、Lは直接結合または2価の連結基である。mは1~4の整数であり、nは4-mである。)
【0006】
シラン化合物は下記化学式2で表されることを特徴とする。
[化学式2]
(化学式2において、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、直鎖状または分枝状アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基またはアミノアルキル基であり、Lは直接結合または2価の連結基である。mは1~4の整数であり、nは4-mである。)
【0007】
シラン化合物は、トリアセトキシメチルシラン(Triacetoxy(methyl)silane)、トリアセトキシビニルシラン(Triacetoxy(vinyl)silane)、ジメチルジメタクロイルオキシ-1-エトキシシラン(Dimethyl-di(methacroyloxy-1-ethoxy)silane)および3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(3-(trimethoxysilyl)propylmethacrylate)のうちの1種以上を含むことを特徴とする。
【0008】
水酸化金属は、Ni(OH)、Co(OH)、Cu(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)、Pd(OH)、In(OH)、(CHCOCr(OH)、Bi(OH)およびSn(OH)のうちの1種以上を含むことを特徴とする。
【0009】
絶縁被膜は金属窒化物をさらに含み、金属窒化物0.1~40重量%、シラン化合物25~75重量%および水酸化金属0.5~60重量%を含むことを特徴とする。
【0010】
金属窒化物は、BN、AlN、Si、Mg、Ca、Sr、BaおよびGeのうちの1種以上を含むことを特徴とする。
【0011】
電磁鋼板は下記一般式1を満足することを特徴とする。
[一般式1]
20≦TC≦200W/mK
(前記一般式1において、TCは600×400mmの試験片を230℃誘導加熱してPPMS(Physical Property Measurement System)で測定した熱伝導度値を示す。)
【0012】
電磁鋼板基材は、C:0.01重量%以下、Si:6.0重量%以下、P:0.5重量%以下、S:0.005重量%以下、Mn:0.1~1.0重量%、Al:0.40~2.0重量%、N:0.005重量%以下、Ti:0.005重量%以下およびSb、Sn、Niまたはこれらの組み合わせ:0.01~0.15重量%を含み、残部はFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする。
【0013】
本発明の一実施例による電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、下記化学式1で表されるシラン化合物および水酸化金属を含むことを特徴とする。
[化学式1]
(化学式1において、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、直鎖状または分枝状アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基またはアミノアルキル基であり、Lは直接結合または2価の連結基である。mは1~4の整数であり、nは4-mである。)
【0014】
金属窒化物をさらに含み、固形分を基準として、金属窒化物0.1~40重量%、シラン化合物25~75重量%および水酸化金属0.5~60重量%を含むことを特徴とする。
【0015】
金属窒化物は、BN、AlN、Si、Mg、Ca、Sr、BaおよびGeのうちの1種以上を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の一実施例による電磁鋼板の製造方法は、スラブを熱間圧延して熱間圧延板を製造後、冷間圧延を経た後、最終焼鈍を完了した鋼板を準備する段階、および鋼板に絶縁被膜組成物を塗布して絶縁被膜を形成する段階を含み、絶縁被膜組成物は下記化学式1で表されるシラン化合物および水酸化金属を含むことを特徴とする。
[化学式1]
(化学式1において、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、直鎖状または分枝状アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基またはアミノアルキル基であり、Lは直接結合または2価の連結基である。mは1~4の整数であり、nは4-mである。)
【0017】
絶縁被膜が形成された電磁鋼板は下記一般式1を満足することを特徴とする。
[一般式1]
20≦TC≦200W/mK
(前記一般式1において、TCは600x400mmの試験片を230℃誘導加熱してPPMS(Physical Property Measurement System)で測定した熱伝導度値を示す。)
【0018】
本発明の一実施例による電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、下記化学式1で表されるシラン化合物シラン化合物、および無水クロム酸、クロム酸塩および重クロム酸塩のうちの1種以上のクロム酸化合物、を含むことを特徴とする。
[化学式1]
(化学式1において、Rは水素、ハロゲン元素、直鎖状または分枝状アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基またはアミノアルキル基であり、Lは直接結合または2価の連結基である。mは1~3の整数であり、nは4-mである。)
【0019】
シラン化合物およびクロム酸化合物の合量100重量部に対して、シラン化合物10~80重量部およびクロム酸化合物20~90重量部を含むことを特徴とする。
【0020】
化学式1において、Rは水素、ハロゲン元素、直鎖状または分枝状アルキル基またはアルコキシ基であることを特徴とする。
【0021】
化学式1において、Lは直接結合、アルキレン基および-CF-のうちの1種以上であることを特徴とする。
【0022】
シラン化合物は下記化学式2で表されることを特徴とする。
[化学式2]
(化学式2において、R~Rはそれぞれ独立して水素、ハロゲン元素、直鎖状または分枝状アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基またはアミノアルキル基であり、Lは直接結合または2価の連結基である。mは1~3の整数であり、nは4-mである。)
【0023】
化学式2において、RおよびRはそれぞれ独立して、水素またはハロゲン元素であることを特徴とする。
【0024】
シラン化合物は、Triethyl(trifluoromethyl)silane(トリエチル(トリフルオロメチル)シラン)、Trimethoxy (trifluoropropyl)silane(トリメトキシ(トリフルオロプロピル)シラン)、Dimethoxy-methyl(trifluoropropyl)silane(ジメトキシ-メチル(トリフルオロプロピル)シラン)およびPerfluorooctyl-triethoxysilane(パーフルオロオクチル-トリエトキシシラン)のうちの1種以上を含むことを特徴とする。
【0025】
シラン化合物およびクロム酸化合物の合量100重量部に対して、セラミック粉末を0.5~65重量部さらに含むことを特徴とする。
【0026】
セラミック粉末は、MgO、MnO、Al、SiO、TiO、ZrO、AlSi13、Al・TiO、Y、9Al・B、BN、CrN、BaTiO、SiCおよびTiCのうちの1種以上を含むことを特徴とする。
【0027】
セラミック粉末の平均粒径は0.05~20μmであることを特徴とする。
【0028】
シラン化合物およびクロム酸化合物の合量100重量部に対して、アクリル樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂およびエポキシ樹脂のうちの1種以上の高分子樹脂を0.5~30重量部さらに含むことを特徴とする。
【0029】
シラン化合物およびクロム酸化合物の合量100重量部に対して、エチレングリコール(Ethylene golycol)、プロピレングリコール(Propylene glycol)、グリセリン(Glycerine)、ブチルカルビトール(Butyl carbitol)のうちの1種以上を1~15重量部さらに含むことを特徴とする。
【0030】
本発明の一実施例による電磁鋼板は、電磁鋼板基材および電磁鋼板基材の一面または両面に位置した絶縁被膜を含み、絶縁被膜は下記化学式1で表されるシラン化合物、および無水クロム酸、クロム酸塩および重クロム酸塩のうちの1種以上のクロム酸化合物、を含むことを特徴とする。
[化学式1]
(化学式1において、Rは水素、ハロゲン元素、直鎖状または分枝状アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基またはアミノアルキル基であり、Lは直接結合または2価の連結基である。mは1~3の整数であり、nは4-mである。)
【0031】
絶縁被膜はSiを0.1~50重量%およびFを0.01~25重量%含むことを特徴とする。
【0032】
絶縁被膜の厚さは0.1~10μmであることを特徴とする。
【0033】
本発明の一実施例による電磁鋼板の製造方法は、電磁鋼板基材を製造する段階、および電磁鋼板基材の一面または両面に絶縁被膜組成物を塗布して絶縁被膜を形成する段階を含み、絶縁被膜組組成物は下記化学式1で表されるシラン化合物、および無水クロム酸、クロム酸塩および重クロム酸塩のうちの1種以上のクロム酸化合物、を含むことを特徴とする。
[化学式1]
(化学式1において、Rは水素、ハロゲン元素、直鎖状または分枝状アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基またはアミノアルキル基であり、Lは直接結合または2価の連結基である。mは1~3の整数であり、nは4-mである。)
【0034】
電磁鋼板基材を製造する段階はスラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階および冷延板を最終焼鈍する段階を含むことを特徴とする。
【0035】
絶縁被膜を形成する段階は100~680℃の温度で絶縁被膜組成物が塗布された鋼板を熱処理する段階を含むことを特徴とする。
【0036】
絶縁被膜を形成する段階の後、700~1000℃の温度で応力除去焼鈍を行う段階をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明の一実施形態によれば、絶縁被膜形成後の鉄損特性に優れた電磁鋼板を得ることができる。本発明の一実施形態によれば、占積率に優れた電磁鋼板を得ることができる。本発明の一実施形態によれば、応力除去焼鈍(SRA,Stress Relief Annealing)以後にも密着性および耐剥離性に優れた絶縁被膜を得ることができる。本発明の一実施形態によれば、熱伝導度に優れた電磁鋼板を製造することができ、この電磁鋼板を利用して製造したモータなどの製品は優れた効率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一実施例による電磁鋼板の断面の模式図である。
図2】本発明の一実施例による電磁鋼板の製造方法のフローチャートである。
図3】実施例1-2で製造した電磁鋼板単面の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
図4】比較例1-2で製造した電磁鋼板単面の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
図5】実施例1-2で製造した電磁鋼板被膜のFT-IR-RAS分析結果である。
図6】実施例2-2で製造した電磁鋼板単面の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
図7】比較例2-3で製造した電磁鋼板の表面の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
第1、第2および第3などの用語は多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これらの用語はある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、以下で叙述する第1部分、成分、領域、層またはセクションは本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及される。
【0040】
ここで使用される専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形態は文脈上明らかに逆の意味を示さない限り複数形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外しない。
【0041】
ある部分が他の部分「上に」または「の上に」あると言及する場合、これはすぐに他の部分の上にまたはの上にあるか、その間に他の部分が伴われる。対照的にある部分が他の部分の「すぐ上に」あると言及する場合、その間に他の部分が介在しない。
【0042】
特に定義していないが、ここに使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。一般に用いられている辞書に定義された用語は関連技術文献と現在の開示された内容に合う意味を有するものと追加解釈され、定義しない限り理想的または公式的過ぎる意味に解釈ならない。本明細書で基(原子団)の表記において、置換および無置換を記載しない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するもの含む。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)だけでなく、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)も含む。
【0043】
本明細書で「置換」とは別段の定義がない限り、化合物の少なくとも一つの水素がC1~C30アルキル基;C2~C30アルケニル基、C2~C30アルキニル基、C1~C10アルキルシリル基;C3~C30シクロアルキル基;C6~C30アリール基;C1~C30ヘテロアリール基;C1~C10アルコキシ基;シラン基;アルキルシラン基;アルコキシシラン基;アミン基;アルキルアミン基;アリールアミン基;エチレンオキシル基またはハロゲン基に置換されたものを意味する。
【0044】
本明細書で「ヘテロ」とは、別段の定義がない限り、N、O、SおよびPからなる群より選ばれる原子を意味する。本明細書で「アルキル(alkyl)基」とは、別段の定義がない限り、あるアルケニル(alkenyl)基やアルキニル(alkynyl)基を含んでいない「飽和アルキル(saturated alkyl)基」;または少なくとも一つのアルケニル基またはアルキニル基を含んでいる「不飽和アルキル(unsaturated alkyl)基」をすべて含むことを意味する。前記「アルケニル基」は、少なくとも二つの炭素原子が少なくとも一つの炭素-炭素二重結合をなしている置換基を意味し、「アルキン基」という少なくとも二つの炭素原子が少なくとも一つの炭素-炭素三重結合をなしている置換基を意味する。前記アルキル基は分枝状、直鎖状または環状である。
【0045】
前記アルキル基はC1~C20のアルキル基であり得、具体的にはC1~C6である低級アルキル基、C7~C10である中級アルキル基、C11~C20の高級アルキル基である。例えば、C1~C4アルキル基はアルキル鎖に1~4個の炭素原子が存在することを意味し、これはメチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルからなる群より選ばれるものを示す。
【0046】
典型的なアルキル基にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などがある。「芳香族基」は環状である置換基のすべての元素がp-オービタルを有しており、これらp-オービタルが共役(conjugation)を形成している置換基を意味する。具体的な例としてアリール基(aryl)とヘテロアリール基がある。
【0047】
「アリール(aryl)基」は単一環または融合環、すなわち、炭素原子の隣接する対を分け合う複数の環置換基を含む。「ヘテロアリール(heteroaryl)基」はアリール基内にN、O、SおよびPからなる群より選ばれるヘテロ原子が含まれるアリール基を意味する。前記ヘテロアリール基が融合環である場合、それぞれの環ごとに前記ヘテロ原子を1~3個含む。
【0048】
本明細書で別段の定義がない限り、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基またはアミノアルキル基は置換または非置換されたアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基またはアミノアルキル基を意味する。本明細書で別段の定義がない限り、2価の連結基とはアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、-NR’-、-O-、-SO-、-CO-、-CF-から選択される1種以上の2価の連結基を意味する。R’はアルキル基である。
【0049】
以下、本発明の実施例について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で実現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0050】
電磁鋼板用絶縁被膜組成物
本発明の一実施例による電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、下記化学式1で表されるシラン化合物および水酸化金属を含む。
[化学式1]
(化学式1において、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、直鎖状または分枝状アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基またはアミノアルキル基であり、Lは直接結合または2価の連結基である。mは1~4の整数であり、nは4-mである。)
【0051】
本発明の一実施例による絶縁被膜組成物は、応力除去焼鈍時の耐熱性と耐食性を画期的に改善するために特有の化学構造を有するシラン化合物を含む。また、シラン化合物を単独で使用する場合、応力除去焼鈍過程で被膜が剥離される問題および電磁鋼板の表面に均一に塗布することに困難性が存在する。これを改善するために水酸化金属もまた含む。
【0052】
以下では本発明の一実施例による電磁鋼板用絶縁被膜組成物を各成分別に詳細に説明する。
【0053】
先に、本発明の一実施例による電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、固形分を基準として、化学式1で表されるシラン化合物を含む。具体的にはシラン化合物および水酸化金属の合量100重量部に対して30~75重量部を含む。化学式1で表されるシラン化合物は、化合物内にSi元素とカルボニル基(Carbonyl group)を含有しており耐熱性に優れる。さらにカルボニル基は水酸化金属と反応性に優れ、シラン化合物-水酸化金属複合体を形成して表面品質を画期的に改善することに重要な役割をする。
【0054】
具体的にはシラン化合物は下記化学式2で表される。
[化学式2]
(化学式2において、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、直鎖状または分枝状アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基またはアミノアルキル基であり、Lは直接結合または2価の連結基である。mは1~4の整数であり、nは4-mである。)
【0055】
具体的には、化学式1および化学式2において、RおよびRは水素またはアルキル基である。より具体的にはRおよびRはメチル基またはエチル基である。具体的には、化学式1において、Lはアルキレン基、-O-および-CO-から選択される1種以上の2価の連結基である。より具体的には化学式1において、Lは-L-O-で表され、Lは直接結合またはアルキレン基、-O-および-CO-から選択される1種以上の2価の連結基である。
【0056】
シラン化合物は、トリアセトキシメチルシラン(Triacetoxy(methyl)silane)、トリアセトキシビニルシラン(Triacetoxy(vinyl)silane)、ジメチルジメタクロイルオキシ-1-エトキシシラン(Dimethyl-di(methacroyloxy-1-ethoxy)silane)および3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(3-(trimethoxysilyl)propylmethacrylate)のうちの1種以上を含む。
【0057】
シラン化合物が過度に少なく含まれると、耐熱性が低下して応力除去焼鈍後の鉄損が劣る。シラン化合物が過度に多く含まれると、相対的に金属水酸化物が少なくなり、被膜が剥離される。したがって、前述した範囲にシラン化合物を含み得る。より具体的にはシラン化合物はシラン化合物および水酸化金属の合量100重量部に対して40~55重量部を含む。
【0058】
本発明の一実施例による電磁鋼板用絶縁被膜組成物は水酸化金属を含む。具体的にはシラン化合物および水酸化金属の合量100重量部に対して水酸化金属を25~70重量部を含む。水酸化金属は、溶媒によく分散する特徴があり、シラン化合物の官能基と化学反応により溶媒によく分散するように表面性質を疎水性から親水性に変化させることを助ける役割をする。このような水酸化金属は、電磁鋼板の表面に均一に塗布されるので、絶縁被膜の応力除去焼鈍時の耐熱性と耐食性を画期的に改善することに大きく役立つ。
【0059】
水酸化金属は、水酸基(-OH)を含む金属であれば制限なく使用することができる。具体的には水酸化金属は、Ni(OH)、Co(OH)、Cu(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)、Pd(OH)、In(OH)、(CHCOCr(OH)、Bi(OH)およびSn(OH)のうちの1種以上を含み得る。より具体的にはCo(OH)および(CHCOCr(OH)のうちの1種以上を含む。
【0060】
水酸化金属を過度に少なく含む場合、シラン化合物の分散に問題が発生して均一な塗布が難しい。水酸化金属を過度に多く含む場合、シラン化合物が相対的に少なくなり、応力除去焼鈍時の耐熱性と耐食性の改善が不充分である。より具体的にはシラン化合物および水酸化金属の合量100重量部に対して水酸化金属を45~60重量部を含む。
【0061】
本発明の一実施例による電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、シラン化合物および水酸化金属の他に金属窒化物をさらに含み得る。金属窒化物を適正量さらに含む場合、形成される絶縁被膜の絶縁特性および熱伝導特性がより向上することができる。金属窒化物をさらに含む場合、固形分を基準として、金属窒化物0.1~40重量%、シラン化合物25~75重量%および水酸化金属0.5~60重量%を含む。固形分とは、絶縁被膜組成物内の溶媒など揮発性分を除いた固形部分を100重量%基準としたものを意味する。
【0062】
金属窒化物が過度に少なく添加されると、絶縁特性および熱伝導特性の向上効果が不充分である。金属窒化物が過度に多く含まれると、相対的にシラン化合物および水酸化金属の量が少なくなり、応力除去焼鈍時の耐熱性と耐食性の改善が不充分である。より具体的には固形分を基準として、金属窒化物1~25重量%、シラン化合物35~65重量%および水酸化金属15~50重量%を含む。金属窒化物は、BN、AlN、Si、Mg、Ca、Sr、BaおよびGeのうちの1種以上を含む。金属窒化物の平均粒径は0.05~20μmである。金属窒化物の粒径が適切である場合のみ、分散性および塗布性が容易である。
【0063】
本発明の一実施例による電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、シラン化合物および金属窒化物の他にエチレングリコール(Ethylene golycol)、プロピレングリコール(Propylene glycol)、グリセリン(Glycerine)、ブチルカルビトール(Butyl carbitol)のうちの1種以上をさらに含む。前述した添加剤をさらに含むことによって、表面光沢に優れ、粗さが非常に美麗な絶縁被膜を形成することができる。前述した添加剤はシラン化合物および水酸化金属の合量100重量部に対して、1~15重量部さらに含まれ得る。添加剤が過度に少なく含まれると、前述した向上効果が不充分である。添加剤がさらに含まれても追加向上効果はなく、かえって分散性が劣る。より具体的には添加剤はシラン化合物および水酸化金属の合量100重量部に対して、3~10重量部を含む。
【0064】
絶縁被膜組成物は固形物の均一な分散および容易な塗布のために溶媒をさらに含む。溶媒としては水、アルコールなどを使用し得、シラン化合物および水酸化金属の合量100重量部に対して、300~1000重量部を含む。このように絶縁被膜組成物はスラリー形態である。
【0065】
本発明の一実施例による電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、下記化学式1で表されるシラン化合物シラン化合物;および無水クロム酸、クロム酸塩および重クロム酸塩から選択される1種以上のクロム酸化合物;を含む。
[化学式1]
(化学式1において、Rは水素、ハロゲン元素、直鎖状または分枝状アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基またはアミノアルキル基であり、Lは直接結合または2価の連結基である。mは1~3の整数であり、nは4-mである。)
【0066】
本発明の一実施例による絶縁被膜組成物は応力除去焼鈍時の耐熱性と耐食性を画期的に改善するために特有の化学構造を有するシラン化合物を含む。また、シラン化合物を単独で使用する場合、応力除去焼鈍過程で被膜が剥離される問題および電磁鋼板の表面に均一に塗布することに困難性が存在する。これを改善するためにクロム酸化合物をまた含む。
【0067】
以下では本発明の一実施例による電磁鋼板用絶縁被膜組成物を各成分別に詳細に説明する。
【0068】
先に、本発明の一実施例による電磁鋼板用絶縁被膜組成物は化学式1で表されるシラン化合物を含む。化学式1で表されるシラン化合物は化合物内にSi元素とF元素を含有しており耐熱性がきわめて優れる。特にF元素は絶縁被膜内部に空気中の水分が浸透する化学反応を抑制する効果があり、耐薬品性、絶縁性および耐食性に卓越して電磁鋼板の表面品質を画期的に改善することに重要な役割をする。シラン化合物およびクロム酸化合物の合量100重量部に対して、シラン化合物を10~80重量部を含む。シラン化合物が過度に少なく含まれると、形成される絶縁被膜内のSiおよびF元素の含有量が少なくなり、耐熱性が低下して応力除去焼鈍後の鉄損が劣位になる。溶媒との混用性が低下して均一な絶縁被膜の形成が困難な問題が発生する。したがって、前述した範囲でシラン化合物を含み得る。より具体的にはシラン化合物は40~70重量部を含む。
【0069】
化学式1において、Rは水素、ハロゲン元素、直鎖状または分枝状アルキル基またはアルコキシ基である。mが2以上である場合、複数のRは互いに同じであるかまたは異なってもよい。化学式1において、Lは直接結合、アルキレン基および-CF-のうちの1種以上である。nが2以上である場合、複数のLは互いに同じであるかまたは異なってもよい。
【0070】
具体的にはシラン化合物は下記化学式2で表される。
[化学式2]
(化学式2において、R~Rはそれぞれ独立して水素、ハロゲン元素、直鎖状または分枝状アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基またはアミノアルキル基であり、Lは直接結合または2価の連結基である。mは1~3の整数であり、nは4-mである。)
【0071】
具体的には、化学式2において、R、m、nは化学式1の説明と同様である。Lは直接結合または2価の連結基である。より具体的にはLは直接結合、アルキレン基および-CF-のうちの1種以上である。RおよびRはそれぞれ独立して、水素またはハロゲン元素である。シラン化合物は、Triethyl(trifluoromethyl)silane(トリエチル(トリフルオロメチル)シラン)、Trimethoxy(trifluoropropyl)silane(トリメトキシ(トリフルオロプロピル)シラン)、Dimethoxy-methyl(trifluoropropyl)silane(ジメトキシ-メチル(トリフルオロプロピル)シラン)およびPerfluorooctyl-triethoxysilane(パーフルオロオクチル-トリエトキシシラン)のうちの1種以上を含む。
【0072】
より具体的には、シラン化合物は、Triethyl(trifluoromethyl)silane、Trimethoxy (3,3,3-trifluoropropyl)silane、Dimethoxy-methyl(3,3,3-trifluoropropyl)silaneおよび1H,1H,2H,2H-Perfluorooctyl-triethoxysilaneのうちの1種以上を含む。
【0073】
本発明の一実施例による電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、無水クロム酸、クロム酸塩および重クロム酸塩から選択される1種以上のクロム酸化合物を含む。クロム酸化合物はシラン化合物と化学的に反応して分散安定性を向上させて均一な被膜を形成する役割をする。また、クロム酸化合物は大量生産時に原価を低減する効果があり、絶縁コーティング工程で安定した操業が可能な長所がある。
クロム酸塩および重クロム酸塩としては、例えば、Na、K、Mg、Ca、Mn、Mo、Zn、Alなどの塩を利用することができる。
【0074】
シラン化合物およびクロム酸化合物の合量100重量部に対して、クロム酸化合物を20~90重量部を含む。クロム酸化合物を過度に少なく含む場合、シラン化合物の分散に問題が発生して均一な塗布が難しい場合もある。クロム酸化合物を過度に多く含む場合、シラン化合物が相対的に少なくなり、応力除去焼鈍時の耐熱性と耐食性の改善が不充分である。より具体的にはクロム酸化合物は30~60重量部を含む。
【0075】
本発明の一実施例による電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、シラン化合物およびクロム酸化合物の他にセラミック粉末をさらに含む。セラミック粉末を適正量さらに含む場合、形成される絶縁被膜の絶縁特性がより向上することができる。セラミック粉末はシラン化合物およびクロム酸化合物の合量100重量部に対して、0.5~65重量部を含む。セラミック粉末が過度に少なく含まれると、絶縁特性向上効果が不充分である。セラミック粉末が過度に多く含まれると、相対的にシラン化合物およびクロム酸化合物の量が少なくなり、応力除去焼鈍時の耐熱性と耐食性の改善が不充分である。より具体的にはセラミック粉末はシラン化合物およびクロム酸化合物の合量100重量部に対して、5~30重量部を含む。
【0076】
セラミック粉末は、MgO、MnO、Al、SiO、TiO、ZrO、AlSi13、Al・TiO、Y、9Al・B、BN、CrN、BaTiO、SiCおよびTiCのうちの1種以上を含む。より具体的には、セラミック粉末は、MgO、CaO、Al、SiO、TiO、ZrO、Al・TiO、Y、9Al・B、BN、CrN、BaTiO、SiCおよびTiCのうちの1種以上を含む。セラミック粉末の平均粒径は0.05~20μmであり得る。セラミック粉末の粒径が適切である場合のみ、分散性および塗布性が容易である。
【0077】
本発明の一実施例による電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、シラン化合物およびクロム酸化合物の合量100重量部に対して、アクリル樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂およびエポキシ樹脂のうちの1種以上の高分子樹脂を0.5~30重量部さらに含む。前述した高分子樹脂を適正量さらに添加することによって、表面光沢に優れ、粗さが非常に美麗な電磁鋼板を製造することができる。
【0078】
本発明の一実施例による電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、シラン化合物およびクロム酸化合物の合量100重量部に対して、エチレングリコール(Ethylene golycol)、プロピレングリコール(Propylene glycol)、グリセリン(Glycerine)、ブチルカルビトール(Butyl carbitol)のうちの1種以上を1~15重量部さらに含む。前述した添加剤をさらに含むことによって、表面光沢に優れ、粗さが非常に美麗な絶縁被膜を形成することができる。添加剤が過度に少なく含まれると、前述した向上効果が不充分である。添加剤がさらに含まれても追加向上効果はなく、かえって分散性が劣る。より具体的には添加剤はシラン化合物およびクロム酸化合物の合量100重量部に対して、3~10重量部を含む。
【0079】
絶縁被膜組成物は固形物の均一な分散および容易な塗布のために溶媒をさらに含み得る。溶媒としては水、アルコールなどを使用し、シラン化合物およびクロム酸化合物の合量100重量部に対して、300~1000重量部を含む。このように絶縁被膜組成物はスラリー形態である。
【0080】
電磁鋼板
本発明の一実施例による電磁鋼板100は、電磁鋼板基材10および電磁鋼板基材10の一面または両面に位置した絶縁被膜20を含む。図1は本発明の一実施例による電磁鋼板の概略的な側断面図を示す。図1では電磁鋼板基材10の上面に絶縁被膜20が形成された場合を示す。
【0081】
絶縁被膜20は下記化学式1で表されるシラン化合物および水酸化金属を含む。
[化学式1]
(化学式1において、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、直鎖状または分枝状アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基またはアミノアルキル基であり、Lは直接結合または2価の連結基である。mは1~4の整数であり、nは4-mである。)
【0082】
本発明の一実施例による電磁鋼板100の絶縁被膜20は、応力除去焼鈍時の耐熱性と耐食性を画期的に改善し、また、熱伝導率を改善するために特有の化学構造を有するシラン化合物を含む。また、シラン化合物を単独で使用する場合、応力除去焼鈍過程で被膜が剥離される問題および電磁鋼板の表面に均一に塗布することに困難性が存在する。これを改善するために水酸化金属をまた含む。
【0083】
絶縁被膜20の成分に対する内容は前述した絶縁被膜組成物と関連して具体的に説明したので、重複する説明は省略する。絶縁被膜20の形成過程で一部のシラン化合物の化学構造が変形されるが、多くのシラン化合物はその化学構造を維持する。また、絶縁被膜20の形成過程でシラン化合物と水酸化金属が反応して化合物を形成することができ、この場合、化合物内のシラン化合物の比率および水酸化金属の含有量比率を計算し、それぞれシラン化合物および水酸化金属の重量で計算する。絶縁被膜20の形成過程で溶媒などの揮発成分は除去されるので、絶縁被膜20内の成分は絶縁被膜組成物内の固形分成分と実質的に同様である。
【0084】
絶縁被膜20はSiを0.1~50重量%含む。この時、Siはシラン化合物内のSi、金属窒化物としてSiを使用する場合、金属窒化物内のSi、電磁鋼板基材10から拡散されるSiである。Siが適正量含まれて絶縁被膜20の絶縁特性を確保することができる。
【0085】
絶縁被膜20はSiの他にもFe、C、Oなど絶縁被膜組成物および電磁鋼板基材10から由来する元素を含む。絶縁被膜20の厚さは、0.1~10μmである。絶縁被膜20の厚さが過度に薄いと、耐熱性が低下して応力除去焼鈍後の鉄損が劣る問題が生じる。絶縁被膜20の厚さが過度に厚いと、占積率が低下してモータ特性が劣る問題が生じる。したがって、絶縁被膜20の厚さを前述した範囲に調節することができる。より具体的には絶縁被膜20の厚さは0.2~5μmである。
【0086】
電磁鋼板基材10は、無方向性電磁鋼板または方向性電磁鋼板は制限なく使用できる。具体的には無方向性電磁鋼板を使用することができる。本発明の一実施例で絶縁被膜20の成分によって絶縁特性が発生し、電磁鋼板の合金成分とは関係がない。以下では一例として、電磁鋼板の合金成分について説明する。
【0087】
電磁鋼板は、C:0.01重量%以下、Si:6.0重量%以下、P:0.5重量%以下、S:0.005重量%以下、Mn:0.1~1.0重量%、Al:0.40~2.0重量%、N:0.005重量%以下、Ti:0.005重量%以下およびSb、Sn、Niまたはこれらの組み合わせ:0.01~0.15重量%を含み、残部としてFeおよび不可避不純物を含む。
以下では各合金成分別に具体的に説明する。
【0088】
以下では無方向性電磁鋼板基材10成分の限定理由について説明する。
【0089】
C:0.01重量%以下
炭素(C)は本発明による実施例で電磁鋼板の磁気的特性向上に大いに役立たない成分であるため、できるだけ除去することが好ましい。Cは最終製品で磁気時効を起こして使用中に磁気的特性を低下させるので、0.01重量%以下で含有し、Cの含有量が低いほど磁気的特性に好ましいので、最終製品では0.005重量%以下に制限することがより好ましい。
【0090】
Si:6.0重量%以下
シリコン(Si)は鋼の比抵抗を増加させて鉄損のうち渦電流損失を減少させる成分として、Siの含有量が過度に多い場合には脆性が大きくなり、冷間圧延が難しくなる問題が発生し得る。したがって、6.0重量%以下に制限することが好ましい。より具体的にはSiは0.1~4.0重量%含まれる。
【0091】
P:0.5重量%以下
リン(P)は比抵抗を増加させ、集合組織を改善して磁性を向上させるために添加する。過多に添加された場合、冷間圧延性が悪化するので、0.5重量%以下に制限することが好ましい。
【0092】
S:0.005重量%以下
硫黄(S)は微細な析出物であるMnSおよびCuSを形成して結晶粒成長を抑制して磁気特性を悪化させるため、最大限低く管理することが好ましいので、その含有量を0.005重量%以下に制限する。
【0093】
Mn:0.1~1.0重量%
マンガン(Mn)が0.1重量%未満に存在すると微細なMnS析出物が形成されて結晶粒成長を抑制させることにより磁性を悪化させる。したがって、0.1重量%以上存在する場合、粗大なMnSが形成され、また、S成分がより微細な析出物であるCuSとして析出されることを防ぐことができる。しかし、Mnが増加する場合は磁性が劣化するので1.0重量%以下に添加する。
【0094】
Al:0.40~2.0重量%
Alは比抵抗を増加させて渦流損失を低くすることに有効な成分である。0.40重量%未満の場合、AlNが微細に析出して磁性が劣位であり、また、2.0重量%を超えた場合、加工性が劣化するので、2.0重量%以下に制限することが好ましい。
【0095】
N:0.005重量%以下
Nは母材内部に微細で長いAlN析出物を形成して結晶粒成長を抑制するので少なく含有させ、0.005重量%以下に制限することが好ましい。
【0096】
Ti:0.005重量%以下
Tiは微細なTiN、TiCの析出物を形成させて結晶粒成長を抑制し、0.005重量%を超えて添加される場合、多くの微細な析出物が発生して集合組織を悪くして磁性を悪化させる。
【0097】
Sb、Sn、Niまたはこれらの組み合わせ:0.01~0.15重量%
Sb、Sn、またはNiは表面析出元素として鋼板表層部に濃化して窒素の吸着を抑制し、結果的に結晶粒の成長を妨げず鉄損を低くする役割をし、Sb、Sn、またはNiを単独または複合添加した含有量が過度に少ないとその効果が劣る問題が生じる。Sb、Sn、またはNiを単独または複合添加した含有量が過度に多いと結晶粒界偏析が激しくなり鋼板の脆性が大きくなり、圧延時板破断が発生する。Sb、Sn、Niを2種以上複合添加する時、その合量が0.01~0.15重量%である。より具体的にはSbを0.01~0.05重量%、Snを0.01~0.12重量%、Niを0.01~0.06重量%含む。
【0098】
本発明の一実施例による電磁鋼板は前述したように、絶縁被膜の形成によって熱伝導度に優れる。具体的には下記一般式1を満足する。
[一般式1]
20≦TC≦200W/mK
(前記一般式1において、TCは600x400mmの試験片を230℃誘導加熱してPPMS(Physical Property Measurement System)で測定した熱伝導度値を示す。)
【0099】
本発明の一実施例による電磁鋼板100の絶縁被膜20は、応力除去焼鈍時の耐熱性と耐食性を画期的に改善するために特有の化学構造を有するシラン化合物を含む。また、シラン化合物を単独で使用する場合、応力除去焼鈍過程で被膜が剥離される問題および電磁鋼板の表面に均一に塗布することに困難性が存在する。これを改善するためにクロム酸化合物をまた含む。
【0100】
絶縁被膜20の成分に係る内容は前述した絶縁被膜組成物と関連して具体的に説明したので、重複する説明は省略する。絶縁被膜20の形成過程で一部シラン化合物の化学構造が変形されるが、多くのシラン化合物はその化学構造を維持する。また、絶縁被膜20の形成過程でシラン化合物とクロム酸化合物が反応して化合物を形成することができ、この場合、化合物内のシラン化合物の比率およびクロム酸化合物の含有量比率を計算し、それぞれシラン化合物およびクロム酸化合物の重量で計算する。絶縁被膜20の形成過程で溶媒などの揮発成分は除去されるので、絶縁被膜20内の成分は絶縁被膜組成物内の固形分成分と実質的に同一である。固形分とは、絶縁被膜組成物内の溶媒など揮発性分を除いた固形部分を100重量%基準としたものを意味する。
【0101】
絶縁被膜20はSiを0.1~50重量%およびFを0.01~25重量%含む。この時、Siはシラン化合物内のSi、セラミック粉末としてSiOを使用する場合、セラミック粉末内のSi、電磁鋼板基材10から拡散されるSiである。Siが適正量含まれて絶縁被膜20の絶縁特性を確保することができる。
また、Fはシラン化合物内のFから由来する。Fが適正量含まれ、絶縁被膜20の耐薬品性、絶縁性および耐食性を向上させることができる。絶縁被膜20はSi、Fの他にもCr、Fe、C、Oなど絶縁被膜組成物および電磁鋼板基材10から由来する元素を含む。
【0102】
絶縁被膜20の厚さは0.1~10μmである。絶縁被膜20の厚さが過度に薄いと、耐熱性が低下して応力除去焼鈍後の鉄損が劣る問題が生じる。絶縁被膜20の厚さが過度に厚いと、占積率が低下してモータ特性が劣る問題が生じる。したがって、絶縁被膜20の厚さを前述した範囲に調節することができる。より具体的には絶縁被膜20の厚さは0.2~5μmである。
【0103】
電磁鋼板の製造方法
図2では本発明の一実施例による電磁鋼板の製造方法のフローチャートを概略的に示す。図2の電磁鋼板の製造方法のフローチャートは単に本発明を例示するためであり、本発明はこれに限定されるものではない。したがって電磁鋼板の製造方法を多様に変形することができる。
【0104】
図2に示すように、電磁鋼板の製造方法は電磁鋼板基材を製造する段階(S10)、および電磁鋼板基材の一面または両面に絶縁被膜組成物を塗布して絶縁被膜を形成する段階(S20)を含む。この他に、電磁鋼板の製造方法は他の段階をさらに含む。先に段階(S10)では電磁鋼板基材を製造する。電磁鋼板基材の合金成分については具体的に説明したので、繰り返しの説明は省略する。
【0105】
電磁鋼板基材を製造する段階はスラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階;熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階および冷延板を最終焼鈍する段階を含む。先に、スラブを加熱する。この時、スラブ加熱は1,200℃以下で加熱する。次に、加熱したスラブを熱間圧延して熱延板を製造する。製造された熱延板を熱延焼鈍する。
【0106】
次に、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する。冷間圧延を1回実施したり、中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延を実施することができる。次に、冷延板を最終焼鈍する。この時、冷延板を最終焼鈍する段階は、冷延板に存在する圧延油を脱脂して1次焼鈍をし、水素と窒素で構成された雰囲気で2次焼鈍する。また、最終焼鈍は表面に酸化物が形成されて磁性が劣化することを防止するための目的で露点温度を-5℃以下に管理する。
【0107】
再び電磁鋼板の製造方法に係る説明に戻ると、次に段階(S20)は電磁鋼板基材の一面または両面に絶縁被膜組成物を塗布して絶縁被膜を形成する。絶縁被膜組成物については前述した内容と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0108】
絶縁被膜を形成する段階は100~680℃の温度で絶縁被膜組成物が塗布された鋼板を熱処理する段階を含む。熱処理温度が過度に低いと、溶媒の除去が容易でなく、美麗な絶縁被膜が形成され難い。熱処理温度が過度に高いと密着性が劣る問題が発生する。より具体的には350~650℃の温度で熱処理する。熱処理時間は5~200秒である。
【0109】
絶縁被膜を形成する段階の後、700~1000℃の温度で応力除去焼鈍を行う段階をさらに含む。本発明の一実施例では絶縁被膜組成物内のシラン化合物および水酸化金属によって応力除去焼鈍以後にも優れた絶縁被膜の密着性および表面特性を維持することができる。応力除去焼鈍の温度が過度に低い場合、目的とする応力除去が円滑に行われない。応力除去焼鈍の温度が過度に高い場合、電磁鋼板の磁性が劣る。応力除去焼鈍を行う段階は窒素雰囲気で行われ、1~5時間の間行われる。
【0110】
以下では実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかし、このような実施例は単に本発明を例示するためであり、これに限定されるものではない。
【0111】
実験例1-1:シラン化合物の種類別特性
実施例1-1
シリコン(Si):3.4重量%、アルミニウム(Al):0.80重量%、マンガン(Mn):0.17重量%、チタン(Ti):0.0015重量%、スズ(Sn):0.03重量%、ニッケル(Ni):0.01重量%、炭素(C):0.003重量%、窒素(N):0.0013重量%、リン(P):0.012重量%、硫黄(S):0.001重量%含み、残部はFeおよびその他不可避不純物からなるスラブを準備した。スラブを1130℃で加熱した後2.3mm厚さに熱間圧延して熱延板を製造した。
【0112】
熱延板を650℃で巻き取った後空気中で冷却し、1040℃で2分間熱延板焼鈍を実施した後水に急冷して酸洗した後、0.35mm厚さに冷間圧延して冷延板を製造した。冷延板を1040℃で50秒間水素20%、窒素80%雰囲気で露点温度を調節して最終焼鈍を行い、焼鈍した鋼板を製造した。
【0113】
絶縁コーティング組成物としてトリアセトキシメチルシラン60重量部、水酸化ニッケル(Ni(OH))20重量部、水酸化ストロンチウム(Sr(OH))10重量部、窒化ホウ素5重量部およびエチレングリコール5重量部を蒸溜水と混合してスラリー形態に製造し、ロールを用いてスラリーを最終焼鈍した鋼板に塗布した後、650℃条件で30秒間熱処理して空気中で冷却した。電磁鋼板は100%窒素雰囲気、750℃で2時間の間応力除去焼鈍(SRA,Stress Relief Annealing)を行って空気中で冷却した。絶縁被膜の厚さは約0.8μmであった。
【0114】
実施例1-2ないし1-12
実施例1-1と同様に実施するが、絶縁被膜組成物内のシラン化合物、水酸化金属および金属窒化物の含有量と種類を下記表1のように変えて絶縁被膜を形成した。
【0115】
比較例1-1
実施例1-1と同様に実施するが、水酸化金属なしで、トリアセトキシメチルシラン100重量部を含む絶縁被膜組成物を使用した。
【0116】
比較例1-2
実施例1-1と同様に実施するが、シラン化合物なしで、水酸化クロム100重量部を含む絶縁被膜組成物を使用した。
【0117】
比較例1-3
実施例1-1と同様に実施するが、シラン化合物なしで、水酸化クロム60重量部、窒化ホウ素40重量部を含む絶縁被膜組成物を使用した。
【0118】
実施例および比較例で製造した電磁鋼板の特性を測定して下記表2に整理した。鉄損(W15/50)は周波数50Hzの磁場を1.5Teslaまで交流で磁化させたとき現れる電力損失を意味する。また、絶縁特性はASTM A717国際規格に従いFranklin測定機を活用して絶縁被膜の上部を測定した。また、密着性は試験片を10~100mm円弧に接して180°曲げるときに被膜剥離がない最小円弧直径で示したものである。また、表面特徴は均一な被膜を形成して色相が均一な程度を肉眼で評価した結果である。また、熱伝導度は電磁鋼板を230℃誘導加熱して試験片の熱伝導度をPPMS(Physical property measurement system,Quantum Design社製)で測定した。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
表1および表2に示すように、比較例に比べて実施例は絶縁被膜特性に優れることを確認することができる。また、シラン化合物または水酸化金属を単独で含む場合には激しい被膜剥離が発生して磁気的特性が劣位になることを確認することができる。
【0122】
図3および図4はそれぞれ実施例1-2および比較例1-2で製造した電磁鋼板単面の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示した。図3に示すように、実施例1-2の場合、SRA以後にも美麗な絶縁被膜が維持されることを確認することができる。反面、図4に示すように、比較例1-2の場合、SRA以後、絶縁被膜の表面にクラックが多数生じることを確認することができる。図5では実施例1-2で製造した電磁鋼板被膜のFT-IR-RAS分析結果を示した。図5で確認できるように、被膜内にトリアセトキシビニルシランが存在することを確認することができる。
【0123】
実験例1-2:占積率評価
実施例1-13
シリコン(Si):4.2重量%、アルミニウム(Al):0.80重量%、マンガン(Mn):0.15重量%、チタン(Ti):0.001重量%、スズ(Sn):0.08重量%、炭素(C):0.004重量%、窒素(N):0.0015重量%、リン(P):0.015重量%、硫黄(S):0.001重量%含み、残部はFeおよびその他不可避不純物からなるスラブを準備した。スラブを1150℃で加熱した後2.3mm厚さに熱間圧延して熱延板を製造した。
【0124】
熱延板を650℃で巻き取った後空気中で冷却し、1040℃で3分間熱延板焼鈍を実施した後水に急冷して酸洗した後、0.35mm厚さに冷間圧延して冷延板を製造した。冷延板を1050℃で60秒間水素30%、窒素70%雰囲気で露点温度-40℃に調節して最終焼鈍を行い、焼鈍した鋼板を製造した。その後、絶縁コーティング組成物としてトリアセトキシメチルシラン25重量部、トリアセトキシビニルシラン25重量部、水酸化クロム((CHCOCr(OH))15重量部、水酸化コバルト(Co(OH))15重量部、水酸化ストロンチウム(Sr(OH))3重量部、窒化ホウ素15重量部およびプロピレングリコール2重量部を蒸溜水と混合してスラリー形態に製造し、ロールを用いてスラリーを厚さで塗布した後、650℃条件で30秒間熱処理して空気中で冷却した。磁鋼板は100%窒素雰囲気、820℃で2時間の間応力除去焼鈍(SRA,Stress Relief Annealing)熱処理を行って空気中で冷却した。応力除去焼鈍した鋼板を60℃、湿度95%条件で24時間処理した後表面に錆の発生程度を評価した結果を下記表3に示した。
【0125】
比較例1-5
イオン水に先にMgOおよびCaO約7重量部をゆっくり投入させた後発熱反応を起こすCrO約20重量部を溶液内(MgO,CaO+イオン水)に徐々に注入して透明な茶色液状になるまで攪拌してブレンディング(Blending)した。
【0126】
その後、溶液にアクリル系樹脂またはアクリル-スチレン共重合体樹脂のうち1種約30重量部と還元剤であるブチルカルビトール6.7重量部を注入して絶縁被膜組成物を製造した。実施例1-13と同様に実施するが、前記製造された絶縁被膜組成物を使用して絶縁被膜を形成した。
【0127】
比較例1-6
第1リン酸アルミニウム(Al(HPO)50重量部、第1リン酸亜鉛(Zn(HPO)50重量部、エポキシ樹脂210重量部、コバルトヒドロキシド(cobalt hydroxide)1重量部、ストロンチウムヒドロキシド(strontium hydroxide)1重量部、Tiキレート剤0.05重量部を含む絶縁被膜組成物を使用した。実施例1-13と同様に実施するが、前記絶縁被膜組成物を使用して絶縁被膜を形成した。
【0128】
【表3】
【0129】
表3に示すように、比較例1-5および1-6に比べて実施例1-13の特性がはるかに優れることを確認することができる。
【0130】
実験例2-1:シラン化合物の種類別特性
実施例2-1
シリコン(Si):3.4重量%、アルミニウム(Al):0.80重量%、マンガン(Mn):0.17重量%、チタン(Ti):0.0015重量%、スズ(Sn):0.03重量%、ビスマス(Bi):0.01重量%、炭素(C):0.003重量%、窒素(N):0.0013重量%、リン(P):0.012重量%、硫黄(S):0.001重量%含み、残部はFeおよびその他不可避不純物からなるスラブを準備した。スラブを1130℃で加熱した後2.3mm厚さに熱間圧延して熱延板を製造した。熱延板を650℃で巻き取った後空気中で冷却し、1040℃で2分間熱延板焼鈍を実施した後水に急冷して酸洗した後、0.35mm厚さに冷間圧延して冷延板を製造した。冷延板を1040℃で50秒間水素20%、窒素80%雰囲気で露点温度を調節して最終焼鈍を行い、焼鈍した鋼板を製造した。
【0131】
絶縁コーティング組成物としてTriethyl(trifluoromethyl)silane(トリエチル(トリフルオロメチル)シラン)60重量部、無水クロム酸(CrO)20重量部、酸化マグネシウム(MgO)10重量部およびエチレングリコール5重量部を蒸溜水と混合してスラリー形態に製造し、ロールを用いてスラリーを最終焼鈍した鋼板に塗布した後、650℃条件で25秒間熱処理して空気中で冷却した。電磁鋼板は100%窒素雰囲気、820℃で2時間の間応力除去焼鈍(SRA,Stress Relief Annealing)を行って空気中で冷却した。絶縁被膜の厚さは約0.8μmであった。
【0132】
実施例2-2ないし2-12
実施例2-1と同様に実施するが、絶縁被膜組成物内のシラン化合物、クロム酸化合物およびセラミック粉末の含有量と種類を下記表4ように変えて絶縁被膜を形成した。
【0133】
比較例2-1
実施例2-1と同様に実施するが、クロム酸化合物なしで、Triethyl(trifluoromethyl)silane(トリエチル(トリフルオロメチル)シラン)100重量部を含む絶縁被膜組成物を使用した。
【0134】
比較例2-2
実施例2-1と同様に実施するが、シラン化合物なしで、無水クロム酸100重量部を含む絶縁被膜組成物を使用した。
【0135】
比較例2-3
実施例2-1と同様に実施するが、シラン化合物なしで、無水クロム酸60重量部、酸化マグネシウム40重量部を含む絶縁被膜組成物を使用した。実施例および比較例で製造した電磁鋼板の特性を測定して下記表5に整理した。鉄損(W15/50)は周波数50Hzの磁場を1.5Teslaまで交流で磁化させたとき現れる電力損失を意味する。また、絶縁特性はASTM A717国際規格に従いFranklin測定機を活用して絶縁被膜の上部を測定した。また、密着性は試験片を10~100mm円弧に接して180°曲げるときに被膜剥離がない最小円弧直径で示したものである。また、表面特徴は均一な被膜を形成して色相が均一な程度を肉眼で評価した結果である。
【0136】
【表4】
【0137】
【表5】
【0138】
表4および表5に示すように、比較例に比べて実施例は絶縁被膜特性に優れることを確認することができる。また、シラン化合物またはクロム酸化合物を単独で含む場合には激しい被膜剥離が発生して磁気的特性が劣位になることを確認することができる。
【0139】
図6は実施例2-2で製造した電磁鋼板単面の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。図7は比較例2-3で製造した電磁鋼板の表面の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示した。図6に示すように、実施例2-2の場合、SRA以後にも美麗な絶縁被膜が維持されることを確認することができる。反面、図7に示すように、比較例2-3の場合、SRA以後、絶縁被膜表面にクラックが多数生じることを確認することができる。
【0140】
実験例2-2:高分子樹脂添加効果の評価
実施例2-11
シリコン(Si)を4.5重量%、アルミニウム(Al):0.80重量%、マンガン(Mn):0.15重量%、チタン(Ti):0.001重量%、スズ(Sn):0.05重量%、炭素(C):0.004重量%、窒素(N):0.0015重量%、リン(P):0.015重量%、硫黄(S):0.001重量%含み、残部はFeおよびその他不可避不純物からなるスラブを準備した。
【0141】
スラブを1150℃で加熱した後2.3mm厚さに熱間圧延して熱延板を製造した。熱延板を650℃で巻き取った後空気中で冷却し、1040℃で3分間熱延板焼鈍を実施した後水に急冷して酸洗した後、0.35mm厚さに冷間圧延して冷延板を製造した。冷延板を1050℃で60秒間水素30%、窒素70%雰囲気で露点温度-40℃に調節して最終焼鈍を行い、焼鈍した鋼板を製造した。その後、実施例2-2に記載された絶縁コーティング組成物に高分子樹脂を下記表6に整理されたとおり混合してスラリー形態に製造し、650℃条件で30秒間熱処理して空気中で冷却した。前記電磁鋼板は100%窒素雰囲気、820℃で2時間の間応力除去焼鈍(SRA,Stress Relief Annealing)熱処理を行って空気中で冷却した。絶縁被膜は約0.4μmの厚さに形成された。
【0142】
応力除去焼鈍された鋼板を60℃、湿度95%条件で24時間処理した後表面に錆の発生程度を評価した結果を下記表6に示す。
【0143】
【表6】
【0144】
表6に示すように、高分子樹脂の種類および添加量の変更により鉄損、表面粗さ、占積率および錆の発生面積の変化が確認された。
【0145】
本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造できる。上記の実施例は例示的なものであり、限定的なものではない。
【符号の説明】
【0146】
100 電磁鋼板
10 電磁鋼板基材
20 絶縁被膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7