(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075130
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】減少した酸価を有する炭化水素組成物の製造方法および短鎖脂肪酸の単離方法
(51)【国際特許分類】
C07C 1/207 20060101AFI20230523BHJP
C07C 9/14 20060101ALI20230523BHJP
C07C 11/02 20060101ALI20230523BHJP
C07C 7/10 20060101ALI20230523BHJP
C07C 7/12 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
C07C1/207
C07C9/14
C07C11/02
C07C7/10
C07C7/12
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023024525
(22)【出願日】2023-02-20
(62)【分割の表示】P 2019504067の分割
【原出願日】2017-07-21
(31)【優先権主張番号】62/366,278
(32)【優先日】2016-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521443841
【氏名又は名称】フォーグ ハイドロカーボンズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Forge Hydrocarbons Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ブレッセラー,デイヴィッド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】脂肪酸資源の加熱時に製造される炭化水素から短鎖脂肪酸を除去し、そして単離するための効率的な方法を提供する。
【解決手段】遊離脂肪酸から炭化水素を製造するための方法であって、当該方法が:
(a)遊離脂肪酸を加熱して、炭化水素および少なくとも1種の短鎖遊離脂肪酸を含んでなる第1の組成物を製造するステップと;
(b)前記短鎖遊離脂肪酸を第1の組成物から分離して、最終炭化水素組成物を製造するステップであって、分離するステップが、(i)第1の炭化水素組成物をシリカゲルまたはPSAシリカである吸着剤と接触させ、且つ、短鎖遊離脂肪酸の回収のためにメタノールあるいはドライアイスおよび/または液体CO2を使用するステップおよび(ii)第1の炭化水素組成物を陰イオン交換樹脂と接触させるステップのうちの1つを備えるステップと
を備えることを特徴とする方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸資源から炭化水素を製造するための方法において、
(a)前記脂肪酸資源を加熱して、前記炭化水素および少なくとも1種の短鎖遊離脂肪酸を含んでなる第1の組成物を製造することと;
(b)前記短鎖遊離脂肪酸を前記第1の組成物から除去して、ASTM D974によって測定した場合に0.1未満の酸価を有する最終炭化水素組成物を製造することと
を含んでなることを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、ステップ(b)が、前記炭化水素組成物を吸着剤と接触させることを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記吸着剤を含んでなるカラムに前記炭化水素組成物を通過させることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法において、前記吸着剤が、シリカまたは変性シリカを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法において、前記短鎖遊離脂肪酸が、その後、前記吸着剤から除去されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記吸着剤から前記短鎖遊離脂肪酸を除去するために、前記吸着剤を極性溶媒と接触させることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記極性溶媒が、アルコール、ニトリル、エーテル、エステルまたは塩化炭化水素を含んでなることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法において、前記吸着剤から前記短鎖遊離脂肪酸を除去するために、前記吸着剤を臨界超過二酸化炭素流体と接触させることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項5に記載の方法において、前記吸着剤から前記短鎖遊離脂肪酸を除去するために、前記吸着剤を、ステップ(a)からの副産物である臨界超過流体生成物と接触させることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記臨界超過流体生成物が、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、エタン、水素またはそれらのいずれかの組合せを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項5に記載の方法において、前記短鎖遊離脂肪酸が、前記吸着剤から連続的に除去されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、
(a)反応器中で遊離脂肪酸を加熱して、炭化水素および少なくとも1種の短鎖遊離脂肪酸を含んでなる第1の組成物を製造することと;
(b)吸着剤を含んでなるカラム中に前記第1の組成物を導入することであって、前記短鎖遊離脂肪酸を前記第1の組成物から除去して、ASTM D974によって測定した場合に0.02未満の酸価を有する最終炭化水素組成物を製造することと;
(c)前記短鎖遊離脂肪酸を前記吸着剤から除去することと;
(d)ステップ(a)の前記反応器中に前記短鎖遊離脂肪酸を導入し、そして前記短鎖遊離脂肪酸を加熱して、第2の炭化水素組成物および少なくとも1種の第2の短鎖遊離脂肪酸を製造することと
を含んでなり、ステップ(a)~(d)が連続的に実行されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記吸着剤が、シリカまたは変性シリカを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記吸着剤から前記短鎖遊離脂肪酸を除去するために、前記吸着剤を臨界超過二酸化炭素流体と接触させることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法において、前記吸着剤から前記短鎖遊離脂肪酸を除去するために、前記吸着剤を、ステップ(a)からの副産物である臨界超過流体生成物と接触させることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、ステップ(b)が、前記炭化水素組成物を塩基と接触させることを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法において、前記塩基が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物またはアルカリ土類金属炭酸塩を含んでなることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項14に記載の方法において、前記塩基が、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項14に記載の方法において、前記炭化水素組成物を水性塩基と接触させて、水相および炭化水素相を製造し、前記炭化水素相を除去することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項14に記載の方法において、塩基のモル量が、前記短鎖脂肪酸中に存在するカルボン酸基のモル等量より多いことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法において、ステップ(b)が、前記炭化水素組成物を陰イオン交換樹脂と接触させることを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、前記陰イオン交換樹脂が、複数のアミノ基を有するポリマーおよび化合物の混合物を含んでなることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法において、前記陰イオン交換樹脂が、複数のアミノ基を有するポリスチレンおよびポリマーを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項1乃至23のいずれか1項に記載の方法において、前記短鎖脂肪酸が、連続的に除去され、かつ加熱されて、追加の炭化水素が製造されることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項1乃至23のいずれか1項に記載の方法において、前記脂肪酸資源が、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、脂質、遊離脂肪酸またはそれらの塩、あるいはそれらのいずれかの組合せを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項1乃至23のいずれか1項に記載の方法において、前記脂肪酸資源が、植物油、動物脂、藻類または菌類油、トール油、使用済み調理油、バイオソリッドから誘導される脂質、脂質、ホスホリピドまたはトリグリセリドを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項1乃至23のいずれか1項に記載の方法において、ステップ(a)の前に、遊離脂肪酸が前記脂肪酸資源から分離されることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法において、(i)前記脂肪酸資源から1種以上のトリグリセリドを分離することと、(ii)前記トリグリセリドを加水分解して、前記遊離脂肪酸を製造することと、(iii)前記遊離脂肪酸を単離することとを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項27に記載の方法において、前記遊離脂肪酸が、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸またはそれらの組合せを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項27に記載の方法において、前記遊離脂肪酸が、酪酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、アルファ-リノレン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、リノール酸、アラキドン酸、オレイン酸、エルカ酸、植物または動物供給源からの天然由来脂肪酸、またはそれらの組合せを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項1乃至23のいずれか1項に記載の方法において、前記加熱ステップ(a)が、220℃~650℃の温度で実行されることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項1乃至23のいずれか1項に記載の方法において、前記加熱ステップ(a)が、250℃~500℃の温度で、2秒間~8時間実行されることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項1乃至23のいずれか1項に記載の方法において、前記加熱ステップ(a)が、1種以上のアルケンの存在下で実行されることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項1乃至23のいずれか1項に記載の方法において、前記加熱ステップ(a)が、補足水素の不在下で実行されることを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項1乃至23のいずれか1項に記載の方法によって製造されることを特徴とする炭化水素組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年7月25日出願の米国仮特許出願第62/366,278号に基づく優先権を主張する。本出願は、その全ての教示に関して、全体として参照によって本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0002】
本明細書に記載される方法は、脂肪酸資源の加熱時に製造される炭化水素から短鎖脂肪酸を除去し、そして単離するための効率的な方法を提供する。短鎖脂肪酸は、連続的に単離され、そして熱分解反応器中に供給することができ、すなわち、炭化水素の製造の全効率を増加させる。代わりに、短鎖脂肪酸を単離し、そして他の用途に使用することができる。
【0003】
本明細書に記載の材料、方法および物品の利点は、一部、以下の説明において明らかになるであろう。あるいは、以下に記載される態様の実施によって見出され得る。以下に記載される利点は、特に添付の請求項に指摘される要素および組合せによって理解され、かつ達成されるであろう。上記の一般的な説明および以下の詳細な説明は両方とも例示的および説明的であるのみであり、そして制限的ではないことは理解されるべきである。
【0004】
本明細書の一部に組み込まれ、かつそれを構成する添付の図面は、下記のいくつかの態様を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、酸抽出の前および後の脂肪酸熱分解生成物流のGC-MSクロマトグラムを示す。
【
図2】
図2は、熱分解生成物流から分離され、かつその後、メタノールによってシリカから回収された酸のGC-MSクロマトグラムを示す。
【
図3】
図3は、官能化シリカによる酸抽出の前および後の別の熱分解生成物流のGC-MSクロマトグラムを示す。
【
図4】
図4は、熱分解生成物流から分離され、かつその後、臨界超過CO
2によって官能化シリカから回収された酸のGC-MSクロマトグラムを示す。
【
図5】
図5は、脂質熱分解生成物流に存在し、かつ臨界超過CO
2によってシリカから除去された酸のGC-MSクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本材料、物品および/または方法が開示および記載される前に、下記の態様が、特定の化合物、合成方法または使用に限定されず、それらはもちろん変動し得ることは理解されるべきである。本明細書で使用された専門用語が、特定の態様のみを説明することを目的としており、かつ限定するように意図されないことも理解されるべきである。
【0007】
本明細書およびそれに続く請求項において、次の意味を有するように定義されるであろう多数の用語が参照されるであろう。
【0008】
明細書および添付の請求項において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに他に規定されない限り、複数形の指示対象を含むことは留意されるべきである。したがって、例えば、「炭化水素」という記載は、炭化水素または2種以上の炭化水素の混合物を含む。
【0009】
「任意の」または「任意選択的に」とは、その後の記載された事象または状況が、生じることが可能でも、不可能でもあり、かつその記載には、事象または状況が生じる例およびそれが生じない例を含むことを意味する。
【0010】
「炭化水素」は、本明細書に使用される場合、分枝、環式または直鎖アルカンまたはアルケンである。一般的な炭化水素は、脂肪酸資源の炭素長さ未満である炭素長さを有する。本明細書において製造された炭化水素は、限定されないが、燃料(例えば、バイオ燃料、ジェット燃料、ディーゼルおよびガソリン)、溶媒および希釈液を含む多数の用途を有する。
【0011】
本明細書を通して、文脈上他に規定されない限り、「含んでなる(comprise)」という用語、あるいは「含んでなる(comprises)」または「含んでなっている(comprising)」などの変形は、明記された整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を含むが、いずれかの他の整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を排除しないことを暗示すると理解されるであろう。「含んでなる(comprises)」という用語およびその変形は、「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」などの他の移行句によって置き換え可能であることも予想される。
【0012】
一態様において、減少した酸価を有する炭化水素の製造方法が本明細書に記載される。本態様において、この方法は、
(a)脂肪酸資源を加熱して、炭化水素および少なくとも1種の短鎖遊離脂肪酸を含んでなる第1の組成物を製造すること;ならびに
(b)短鎖遊離脂肪酸を第1の組成物から除去して、ASTM D974によって測定した場合に0.1未満の酸価を有する最終炭化水素組成物を製造すること
を含んでなる方法に関する。
【0013】
それぞれのステップのための成分および条件は、以下に詳細に議論される。
【0014】
「脂肪酸資源」という用語は、本明細書で定義されるように、脂肪酸のいずれかの供給源である。脂肪酸は、遊離脂肪酸またはその対応する塩を含むことができる。「遊離脂肪酸」という用語は、本明細書中、脂肪酸の酸型(すなわち、末端COOH基)を意味し、対応する塩ではない。代わりに、脂肪酸資源は、脂肪酸への前駆体を含むことができる。例えば、脂肪酸前駆体は、脂質、トリグリセリド、ジグリセリドまたはモノグリセリドであることが可能である。
【0015】
脂肪酸資源の例としては、限定されないが、植物油、動物脂、藻類または菌類油、トール油、動物脂、バイオソリッドから誘導される脂質、使用済み調理油、脂質、ホスホリピド、ソープストック、あるいはトリグリセリド、ジグリセリドまたはモノグリセリドの他の供給源が含まれる。一態様において、植物油は、コーン油、綿実油、カノーラ油、菜種油、オリーブ油、ヤシ油、落花生油、グランドナッツ油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、ヒマワリ油、藻類油、アーモンド油、アプリコット油、アルガン油、アボカド油、ベン油、カシュー油、ヒマシ油、グレープシード油、ヘーゼルナッツ油、麻実油、アマニ油、カラシ油、ニーム油、パーム核油、パンプキンシード油、トール油、米ぬか油、クルミ油、それらの組合せを含んでなる。別の態様において、動物脂は、脂肪、タラ肝油、牛酪油、豚脂、獣脂、それらの誘導体(例えば、イエローグリース、使用済み調理油など)、またはそれらの組合せを含んでなる。
【0016】
脂肪酸資源を、その後の処理の前にさらに精製することができることは予想される。例えば、脂肪酸資源は、いずれの望ましくない不純物も除去するために、蒸留または抽出することができる。代わりに、脂肪酸資源をそのまま使用することもできる。脂肪酸資源の供給源は、予備精製ステップが必要とされるかどうかを決定するであろう。脂肪酸資源は、その後、下記の技術を使用して、アルケンの存在下で熱分解されることが可能である。
【0017】
特定の態様において、脂肪酸資源は、脂肪酸資源中に存在する特定の成分を他の種に変換するために、熱分解の前にさらに処理することができる。一態様において、分離ステップ(a)は、脂肪酸資源から1種以上の遊離脂肪酸を除去するか、または単離することを必要とする。脂肪酸の単離および精製について、多数の異なる技術が当技術分野で知られている。例えば、米国特許第5,917,501号明細書には、脂肪酸の単離方法が開示されている。この方法は、ホスホリピド、トリグリセリドおよびステロールを含有する自然由来脂質混合物を加水分解して、脂肪酸およびステロールから構成される遊離脂肪酸相と、水、グリセロールおよびグリセロールリン酸エステルから構成される水相とを含有する2相生成物を形成することを伴う。水相は、脂肪酸相から分離され、そして粗製脂肪酸相を加熱して、遊離ステロールを脂肪酸ステロールエステルに変換する。脂肪酸ステロールエステルから遊離脂肪酸を蒸留し、コレステロールおよび他のステロールならびにリン化合物を含まない、精製された遊離脂肪酸が得られる。他の態様において、脂肪酸資源中に存在する脂肪酸前駆体を加水分解して、対応する遊離脂肪酸を製造するために、脂肪酸資源を酸に暴露する。例えば、植物油はトリグリセリドが豊富であり、これは酸加水分解時に、遊離脂肪酸およびグリセロールを製造する。
【0018】
特定の態様において、分離ステップの後、脂肪酸の純粋な形態または実質的に純粋な形態を製造することが望ましくなる可能性がある。本明細書で使用される場合、「実質的に純粋」という句は、80重量%より多い、85重量%より多い、または90重量%より多い脂肪酸含有量として定義される。不純物の存在は、炭化水素溶媒の最終組成物に悪影響を与える可能性がある。例えば、ステップ(b)の前に硫黄、酸素または窒素化合物が脂肪酸中に存在する場合、燃焼の間の高い硫黄または窒素放出を含む望ましくない製品特徴が生じるか、あるいは望ましくない芳香族化合物の形成などの副反応がステップ(b)の間に生じ得る。
【0019】
脂肪酸の性質は、脂肪酸資源次第で様々であろう。脂肪酸は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸またはそれらの組合せであることが可能である。脂肪酸の例としては、限定されないが、酪酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、アルファ-リノレン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、リノール酸、アラキドン酸、オレイン酸、エルカ酸、植物または動物供給源からの天然由来脂肪酸、またはそれらの組合せが含まれる。脂肪酸は、遊離脂肪酸の混合物であることも可能である。
【0020】
加熱ステップ(a)の温度は、種々のパラメーターの間で変動可能である。一態様において、加熱ステップの温度は、220℃~650℃、300℃~650℃、350℃~650℃、350℃~600℃、250℃~500℃、350℃~450℃、380℃~450℃、390℃~450℃、390℃~430℃または390℃~420℃である。考慮に入れるべき他のパラメーターは、加熱ステップの持続時間および加熱ステップが実行される圧力である。圧力は、周囲~2,000psiの範囲であることが可能であり、かつ加熱ステップの持続時間は、数秒~12時間であることが可能である。一態様において、加熱ステップは、2秒~8時間である。
【0021】
ステップ(a)における脂肪酸資源から炭化水素への変換の間の反応条件を変更することによって、当業者は、短鎖または長鎖アルカン/アルケンを製造することができる。例えば、高温での長時間加熱によって、燃料として有用となる可能性のある短鎖アルカン/アルケンを製造することができる。代わりに、長鎖アルカン/アルケンは、加熱時間および温度を減少させることによって、当業者によって製造することができる。短鎖アルカンまたはアルケンが製造される場合、これらの生成物が、反応器から容易に除去することが可能である気体(例えば、メタン、プロパン、ブタンなど)であるように、反応条件を制御することができる。
【0022】
一態様において、加熱ステップ(a)は、例えば、窒素またはアルゴンのような不活性雰囲気下で実行される。別の態様において、加熱ステップ(a)の間に生じた化学種と反応するであろう成分を、加熱ステップ(a)の前または間に反応器に添加しない。例えば、本態様において、当業者に既知の技術である水素化ステップを実行するために、反応器中に水素は導入されない。他の態様において、脂肪酸資源および反応器条件の選択次第で、水素などの反応性化合物をその場で製造することができる。
【0023】
別の態様において、加熱ステップ(a)において、分枝アルカンおよびアルケンを製造するために、アルケンを熱分解反応器中に導入する。「アルケン」という用語は、1個の炭素-炭素二重結合を有する有機分子である。一態様において、アルケンは、炭素および水素のみから構成される直鎖または分枝状分子である。アルケンは、周囲温度において気体または液体であることが可能である。別の態様において、アルケンは、エチレン、プロピレン、ブテンまたはそれらの異性体(例えば、イソブテン)またはそれらの混合物である。
【0024】
熱分解反応器中に導入されるアルケンの量は、変動可能である。特定の態様において、脂肪酸資源に対してアルケンのモル過剰を使用することができる。例えば、脂肪酸資源対アルケンのモル比は、1:1~1:5、1:1~1:4、1:1~1:3または1:1~1:2である。ここでは、気体のモルは、実際の気体のファンデルワールス(van der Waal)の状態方程式を使用して算出されている。他の態様において、アルケンに対して、脂肪酸資源の供給源の実質的により高い量が存在することが可能である。したがって、プロセス条件および反応動力学次第で、アルケンおよび脂肪酸資源の供給源の相対量は、それに応じて変更可能である。
【0025】
燃料配合物中、分枝鎖アルカンおよびアルケンは、それらの直鎖相同体と比較して、ノッキング現象の傾向がより少ないため(それらの高いオクタン価のため)、好ましい。加えて、分枝アルカンおよびアルケンでは、非極性化学種のための溶媒として広範囲の工業的応用が見出される。直鎖アルカンおよびアルケンは、金属触媒の存在下での改質および異性化などの工業プロセスにおいて分枝型異性体に慣習的に変換される。
【0026】
別の態様において、脂肪酸資源から炭化水素への変換を促進するために、加熱ステップ(a)において脱炭酸触媒の使用が使用可能である。脱炭酸触媒の選択次第で、触媒は、加熱温度および時間を減少することができる。特定の例において、特にアルカン/アルケンの分解または副反応(例えば、芳香族化)が回避されるべき場合、これは望ましい。脱炭酸触媒の例としては、限定されないが、活性アルミナ触媒が含まれる。脱炭酸触媒の使用は任意であり、したがって、本明細書に記載される方法は、脱炭酸触媒の存在を必要としない。
【0027】
加熱ステップ(a)の後、脂肪酸資源が1種以上の炭化水素に変換された後、炭化水素は、様々な量の遊離短鎖脂肪酸も含むであろう。「遊離短鎖脂肪酸」という用語は、本明細書で使用される場合、出発材料として使用される脂肪酸資源よりも少ない鎖長を有する脂肪酸である。例えば、脂肪酸資源がC18脂肪酸を含む場合、短鎖遊離脂肪酸はC5~C17脂肪酸であろう。
【0028】
本明細書で製造される炭化水素の純度、ならびにプロセスの全効率を増加させるために、短鎖遊離脂肪酸は炭化水素から分離される。
【0029】
一態様において、短鎖遊離脂肪酸は、炭化水素組成物を吸着剤と接触させることによって、炭化水素組成物から分離される。一態様において、吸着剤はシリカであることが可能である。例えば、シリカは、活性化(例えば、酸処理)可能である。他の態様において、シリカは、化学的に誘導体化されたシリカである、変性シリカであることが可能である。例えば、シリカは、第一級および第二級アミン基で誘導体化することができる。一態様において、シリカまたは変性シリカは、40~70μmの粒子直径および10Å~100Åの細孔径を有する。一態様において、シリカまたは変性シリカは、粒子直径40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μmまたは70μmおよび細孔径10Å、20Å、30Å、40Å、50Å、60Å、70Å、80Å、90Åまたは100Åを有し、いずれの値も、範囲の下限および上限末端であることが可能である(例えば、40μm~60μmの細孔直径、50Å~70Åの細孔径)。一態様において、吸着剤は、カラムまたは連続カラム中に存在することが可能である。吸着剤の量および使用されたカラムの数は、短鎖遊離脂肪酸の除去の規模によって変動可能である。
【0030】
短鎖遊離脂肪酸が吸着剤によって炭化水素組成物から除去された後、吸着剤から短鎖遊離脂肪酸を除去することが望ましい。第1に、さらなる使用のために吸着剤を再生するために、吸着剤から短鎖遊離脂肪酸を除去することが望ましい。第2に、短鎖遊離脂肪酸は、それ自体が貴重な成分である。最後に、以下により詳細に議論されるであろう通り、短鎖遊離脂肪酸は、炭化水素の製造を増加させるために、本明細書に記載の方法を通して再生利用されることが可能である。
【0031】
一態様において、短鎖遊離脂肪酸は、吸着剤を極性溶媒と接触させることによって、吸着剤から除去することができる。例えば、溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコールであることが可能である。別の態様において、極性溶媒は、ニトリル(例えば、アセトニトリル)、エーテル(例えば、ジメチルエーテル)、エステルまたは塩化炭化水素(例えば、塩化ジメチレン)などの非プロトン溶媒であることが可能である。別の態様において、短鎖遊離脂肪酸は、吸着剤を臨界超過二酸化炭素流体と接触させ、吸着剤から短鎖遊離脂肪酸を除去することによって、吸着剤から除去することができる。短鎖遊離脂肪酸を吸着剤から除去するためのこれらの実施形態のそれぞれが、実施例においてさらに詳細に記載されている。
【0032】
別の態様において、短鎖遊離脂肪酸は、吸着剤を、ステップ(a)からの副産物である臨界超過流体生成物と接触させることによって、吸着剤から除去することができる。理論によって拘束されることを望まないが、脂肪酸資源が炭化水素に変換される加熱ステップ(a)の間、限定されないが、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、エタン、水素またはそれらのいずれかの組合せを含む副産物も製造可能である。これらの副産物は、反応器のヘッドスペースから除去され、加熱され、そして1種以上の副産物を含有する臨界超過流体生成物へと圧縮され、吸着剤から短鎖遊離脂肪酸を除去するために、吸着剤を含有するカラム中に導入されることが可能である。
【0033】
一態様において、次のプロセスは、連続プロセスで実行され:
(a)反応器中で遊離脂肪酸を加熱して、炭化水素および少なくとも1種の短鎖遊離脂肪酸を含んでなる第1の組成物を製造し;
(b)吸着剤を含んでなるカラム中に第1の組成物を導入し、そこで、短鎖遊離脂肪酸を第1の組成物から除去して、ASTM D974によって測定した場合に0.02未満の酸価を有する最終炭化水素組成物を製造し;
(c)短鎖遊離脂肪酸を吸着剤から除去し;
(d)ステップ(a)の反応器中に短鎖遊離脂肪酸を導入し、そして短鎖遊離脂肪酸を加熱して、第2の炭化水素組成物および少なくとも1種の第2の短鎖遊離脂肪酸を製造するが、
ステップ(a)~(d)は連続的に実行される。
【0034】
別の態様において、短鎖遊離脂肪酸は、炭化水素組成物を塩基と接触させることによって炭化水素組成物から分離される。一態様において、炭化水素組成物を水性塩基と混合して、短鎖遊離脂肪酸の対応する塩を含む水相と、炭化水素相とを生じさせる。塩基抽出によって炭化水素組成物から短鎖遊離脂肪酸を除去するための代表的な方法の例が提供される。
【0035】
塩基の選択は変動可能である。一態様において、塩基は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物またはアルカリ土類金属炭酸塩、あるいはそれらのいずれかの組合せである。別の態様において、塩基は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである。塩基の量も変動可能である。一般に、塩基の量は、短鎖脂肪酸中に存在するカルボン酸基の全てが脱プロトン化するために十分な量である。一態様において、塩基のモル量は、脂肪酸中に存在するカルボン酸基のモル等量より多いか、またはそれに等しい。
【0036】
別の態様において、短鎖遊離脂肪酸は、炭化水素組成物を陰イオン交換樹脂と接触させることによって炭化水素組成物から分離される。陰イオン交換樹脂は、溶液中でそれ自体の陰イオンを他の陰イオンと交換する合成樹脂を意味する。陰イオン交換カラムは、短鎖脂肪酸を吸着することができる。陰イオン交換樹脂は、強塩基性または弱塩基性であってよい。強塩基性陰イオン樹脂は、広いpH範囲にわたって、それらの正電荷を維持するのに対して、弱塩基性陰イオン樹脂は、より高いpHレベルで中和される。
【0037】
一態様において、陰イオン交換樹脂は、複数の(第一級、第二級、第三級)アミノ基を有するポリマーおよび化合物の混合物である。別の態様において、陰イオン交換樹脂は、複数の(例えば、ポリエチレンアミン、ポリエチレンイミンなど)アミノ基を有するポリスチレンおよびポリマーである。本明細書において有用な陰イオン交換樹脂の非限定的な例は、The Dow Chemical Companyによって製造されるAMBERLYST(登録商標)A21である。陰イオン交換樹脂を使用して炭化水素組成物から短鎖遊離脂肪酸を除去するための代表的な方法の例が提供される。
【0038】
本明細書に記載の方法は、バッチ、半バッチまたは連続モードの作業で実行可能である。本実施形態において、それぞれのステップは連続的に実行され、短鎖脂肪酸は炭化水素から分離され、そして熱分解反応器中に供給される。ここで、減少した酸価を有する炭化水素は、全生成物収率に関して、より効率よく製造される。本明細書に記載の方法は、実質的に脱酸素化された炭化水素を製造するために触媒または水素の使用を必要とせず、これは、さらに全効率および減少したプロセスコストに寄与する。
【0039】
本明細書に記載の技術を使用して、短鎖遊離脂肪酸が炭化水素から除去された後、最終炭化水素組成物は、ASTM D974によって測定した場合に0.1未満、0.05未満または0.02未満の酸価を有し、炭化水素組成物中に本質的に0%の脂肪酸が存在する。ここで、酸価は、短鎖遊離脂肪酸に変換されなかった短鎖遊離脂肪酸ならびに脂肪酸を含む炭化水素組成物中に存在する脂肪酸の量を表す。
【実施例0040】
次の実施例は、本明細書に記載され、かつ請求される材料、物品および方法が、どのように製造され、かつ評価されるのかということの完全な開示および説明を当業者に提供するために提案されており、かつ純粋な例示として意図され、かつ本発明者が本発明とみなすものの範囲を制限するように意図されない。数値(例えば、量、温度など)に関しての正確度を保証する努力はなされたが、いくつかの誤差および偏差が考慮されるべきである。他に示されない限り、部は重量部分であり、温度は℃で表されるか、または周囲温度であり、かつ圧力は大気にあるか、または近大気である。反応条件には多数の変動および組合せがあり、例えば、成分濃度、所望の溶媒、溶媒混合物、温度、圧力、ならびに記載されたプロセスから得られる生成物の純度および収率を最適化するために使用可能である他の反応範囲および条件である。そのようなプロセス条件を最適化するために、合理的かつ定常的な実験のみが必要とされるであろう。
【0041】
使用された試料:熱分解生成物は、本明細書に記載の方法を使用して調製され、そして下記のようにその後処理された。
【0042】
収着剤:シリカゲル(Siliaflash(登録商標)F60 40~63μm(230~400メッシュ)、60Å細孔径)(Silicycle,Quebec city,QC,Canada)およびPSA Silica(50μm、70Å細孔径)(Supelco,Bellefonte,PA,USA)。
【0043】
A.酸抽出
収着剤を保持するためにガラスウールが詰められたガラスカラム中に、約20gの活性化シリカゲル(150℃で一晩加熱)またはPSAシリカを移した。カラムの充てんは、カラム中のシリカゲルの高さが不変になるまで、カラムを穏やかに数回軽くたたくことによって補助した。50mLの熱分解生成物をカラムに添加し、重力溶出させた。溶出した熱分解生成物のアリコートを回収した。目に見える熱分解生成物層がカラム中で収着剤上に観察されなくなったら、圧縮空気を使用して、可能な限り多くの残留液体を排出させた。
【0044】
メタノールを使用しての酸回収
約100mLのHPLCグレードメタノール(Fisher Scientific,Fair Lawn,NJ,USA)をカラム中の収着剤に添加し、そして目に見える溶媒層が収着剤について観察されなくなるまで、丸底フラスコ中に重力溶出させた。次いで、圧縮空気を使用して、可能な限り多くの残留溶媒を排出させた。減圧下でrotovapによってメタノールを除去して、酸を回収した。
【0045】
臨界超過流体抽出を使用しての酸回収
臨界超過流体抽出器は、Swagelok(登録商標)菅および取付具から内部で構築された。抽出からの使用済み樹脂は、装置の樹脂貯留槽に入り、そしてガラスウールを使用して端部をふさいだ。ドライアイスおよび/または液体CO2を装置のCO2貯留槽に入れて、次いで、密閉した。温度および圧力が臨界点(それぞれ、31℃および1100psi)上になるまで、装置をCO2貯留槽において加熱した。次いで、CO2貯留槽バルブを完全に開放し、そして装置上の樹脂バルブをわずかに開放し、臨界超過CO2が樹脂を通って流れるようにさせた。次いで、生成物を適切な径のエルレンマイヤー(Erlenmeyer)フラスコ中に捕捉し、CO2を蒸発させ、抽出物が残った。
【0046】
分析
酸価決定のためのASTM D974-14法を使用して、回収された熱分解生成物のフラクションに対する酸価の変化を評価した。次いで、選択された試料上でGC-MSを実行し、収着剤上に保持され、かつ収着剤から回収された化合物の同一性を決定した。
【0047】
結果
表1に、シリカゲルによる抽出の前(初期)および後(フラクション)の2種の熱分解生成物(AおよびB)のASTM D974酸価を示す。フラクション番号は、1.5mLのアリコートが回収された順番を示す。
【表1】
【0048】
酸抽出(すなわち、表中のフラクション1)の前および後のいくつかの試料のGC-MSクロマトグラムを
図1~5に示す。
【0049】
表1および
図1~5の結果は、シリカゲルまたはPSAシリカ吸着剤の使用によって、熱分解生成物からの酸の完全な抽出が可能であることを示す。これは、<0.02まで酸価が減少した表1、ならびに吸着剤の使用による酸除去前後の生成物を示す
図1および3に示される。
【0050】
メタノールまたは臨界超過CO
2を使用しての熱分解生成物からの抽出後に酸を回収することの可能性も明らかに示される(
図2、4および5)。クロマトグラムは、C9またはそれより高級な残留の炭化水素の存在も示しているが、これは、カラムを湿潤させるために使用された残留生成物に由来する可能性がある。
【0051】
B.塩基抽出
材料
使用された試料:イエローグリース加水分解物熱分解生成物
苛性アルカリ溶液:5.9M NaOH溶液
【0052】
手順
約25mLの冷(ウォークイン冷蔵庫中に貯蔵された試料)イエローグリース加水分解物熱分解生成物を50mLのプラスチック製遠心分離機管に移し、そして管をドライアイスの収納箱中に配置した。15mLおよび10mLのNaOH溶液を遠心分離機管に添加し、これを約2分間強力ボルテックスした。次いで、管を10分間、8000rpmにおいて遠心分離機にかけた。パスツールピペットを使用して、上澄みをガラスバイアル中に慎重に移した。酸価(ASTM D974)に関して試料を分析し、そしてGC-MSを使用して、試料の前および後の種類を決定した。
【0053】
結果
試験された条件下で、有機(熱分解物)および水性フラクションの間の良好な相分離が得られた。酸価の結果は、酸抽出のないイエローグリース加水分解物熱分解生成物の試料1gあたり47.5mg KOHと比較して、上澄みが0の酸価値を有することを示し、これは、酸の完全な抽出が生じたことを示唆する。
【0054】
GC-MSクロマトグラムは、熱分解生成物からの酸の完全な抽出を示しており、酸価試験からの結果を確証する。濃縮NaOHによる酸抽出後の熱分解物中の芳香族化合物(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの低分子量化合物)の保留も観察された。
【0055】
C.イオン交換樹脂を用いての抽出
材料
使用された試料:イエローグリース加水分解物熱分解生成物
樹脂:Amberlyst(登録商標)A21、Dowex(登録商標)66およびAmberlite(登録商標)IRA 67およびPurolite(登録商標)PD206(全ての樹脂は遊離塩基陰イオン交換型であった)。湿分を除去するために、Amberlite(登録商標)IRA 67、Dowex(登録商標)66およびAmberlyst(登録商標)A21の試料を凍結乾燥させた。Purolite(登録商標)PD206は乾燥形態で受け取られ、そして受け取られたまま使用された。
【0056】
手順
ガラスウールを詰めたガラスカラム中に、約20gの乾燥樹脂を入れた。次いで、100mLのイエローグリース加水分解物熱分解生成物をカラムに加えて、そして重力溶出して、1.5mLのフラクションを回収した。目に見える液体層が樹脂上に観察されなくなったら、圧縮空気を使用して、可能な限り多くの液体を排出させた。試料上で酸価(ASTM D974)を決定した。選択された試料上でGC-MSを実行した。
【0057】
結果
以下の表2の酸価の結果は、Amberlyst(登録商標)A21が熱分解生成物から全ての酸を完全に抽出/除去することが可能であったことを示す。これはGM-MSクロマトグラフィーによって確認された。抽出後の熱分解物中の芳香族化合物(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの低分子量化合物)の保留。
【表2】
【0058】
本出願を通して、種々の刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、それらの全体において、本明細書に記載の化合物、組成物および方法をより完全に説明するために、参照によって本出願中に組み込まれる。
【0059】
本明細書に記載の材料、方法および物品に、様々な修正および変更がされてもよい。本明細書に記載の材料、方法および物品の他の態様は、明細書の考慮および本明細書に開示される材料、方法および物品の実施から明らかであろう。明細書および実施例は、代表的であると考えられることが意図される。