(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075191
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】抗isoAsp7アミロイドβ(Aβ)抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230523BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230523BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230523BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230523BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230523BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230523BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230523BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230523BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20230523BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230523BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230523BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20230523BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230523BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230523BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20230523BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230523BHJP
C12M 1/34 20060101ALN20230523BHJP
【FI】
A61K39/395 D ZNA
A61K39/395 N
A61K45/00
A61P3/10
A61P9/00
A61P21/00
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P31/18
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61P37/02
C07K16/18
C07K16/46
G01N33/53 D
G01N33/543 595
C12N15/12
C12M1/34 F
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023030237
(22)【出願日】2023-02-28
(62)【分割の表示】P 2020501790の分割
【原出願日】2018-07-17
(31)【優先権主張番号】17182167.1
(32)【優先日】2017-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.プルロニック
3.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】513002566
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツア フェーアデルング デア アンゲヴァンテン フォルシュング エー.ファオ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピーショッタ アンケ
(72)【発明者】
【氏名】グノート カトリン
(72)【発明者】
【氏名】シニス ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】ラーフェルト イェンス-ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】シリング シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】デムート ハンス-ウルリヒ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アルツハイマー病等のアミロイドβ関連疾患の治療及び/又は予防のための医薬組成物並びに診断方法を提供する。
【解決手段】isoAsp7アミロイドβ(Aβ)に結合し得る抗体及びその抗原結合フラグメント、並びに上記抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を提供する。上記抗体、その抗原結合フラグメント及びいずれかを含む医薬組成物を使用することで、神経変性疾患を治療及び/又は予防することができる。さらに、本発明は、ハイブリドーマ細胞系統、神経変性疾患の診断及び/又は予後診断のための上記抗体又はその抗原結合フラグメントの使用、並びに単離された試料中のisoAsp7 Aβを検出する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)L-isoAsp7アミロイドβ(Aβ)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントと、
ここで、前記抗体と配列番号44との間の相互作用のKDが、前記抗体と配列番号8との間の相互作用のKDよりも少なくとも10倍小さく、かつ前記KDは、25℃で表面プラズモン共鳴により測定される;
(ii)薬学的に許容可能な担体又は希釈剤と、
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
医薬として使用されるL-isoAsp7 Aβに特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合フラグメントであって、前記抗体と配列番号44との間の相互作用のKDが、前記抗体と配列番号8との間の相互作用のKDよりも少なくとも10倍小さく、かつ前記KDは、25℃で表面プラズモン共鳴により測定される、抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又は医薬として使用される請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
神経変性疾患の治療及び/又は予防に使用されるL-isoAsp7 Aβに特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合フラグメントであって、前記抗体と配列番号44との間の相互作用のKDが、前記抗体と配列番号8との間の相互作用のKDよりも少なくとも10倍小さく、かつ前記KDは、25℃で表面プラズモン共鳴により測定される、抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又は神経変性疾患の治療及び/又は予防に使用される請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)を含み、前記VLはLCDR1ポリペプチド、LCDR2ポリペプチド及びLCDR3ポリペプチドを含み、かつVHはHCDR1ポリペプチド、HCDR2ポリペプチド及びHCDR3ポリペプチドを含み、該ポリペプチドは、
(a)LCDR1が、KSSQSLLNSRNRKNYLA(配列番号9)であり、LCDR2が、WASTRDS(配列番号11)であり、LCDR3が、KQSYNLRT(配列番号13)であり、HCDR1が、GFSLTSYGVH(配列番号14)であり、HCDR2が、ALWASGNTDYSSTLMS(配列番号15)であり、かつHCDR3が、DRGILTGGYFDV(配列番号17)である、
(b)LCDR1が、KSSQSLFNSRTRKNYVA(配列番号27)であり、LCDR2が、WASTRES(配列番号29)であり、LCDR3が、KQSYNLRA(配列番号30)であり、HCDR1が、GFTFTDYYMS(配列番号32)であり、HCDR2が、FIRNKANGYTTEYSASVKG(配列番号34)であり、かつHCDR3が、DIPTIMDY(配列番号35)である、
(c)LCDR1が、KSSQSLLNX1RX2RKNYLA(配列番号10)であり、LCDR2が、WASTRX3S(配列番号12)であり、LCDR3が、KQSYNLRT(配列番号13)であり、HCDR1が、GFSLTSYGVH(配列番号14)であり、HCDR2が、X4LWASGX5TDYX6SX7LMS(配列番号16)であり、かつHCDR3が、DRGIX8TGGYFDV(配列番号18)であり、ここで、X1はS又はRであり、X2はN又はTであり、X3はD又はEであり、X4はA又はVであり、X5はN又はRであり、X6はS又はNであり、X7はT又はAであり、かつX8はL、T又はMである、及び、
(d)LCDR1が、KSSQX1LX2NSRTRKNYX3A(配列番号28)であり、LCDR2が、WASTRES(配列番号29)であり、LCDR3が、X4QSYNLRX5(配列番号31)であり、HCDR1が、GFTFX6DYYMX7(配列番号33)であり、HCDR2が、FIRNKANGYTTEYSASVKG(配列番号34)であり、かつHCDR3が、DIPTIMDY(配列番号35)であり、ここで、X
1はS又はNであり、X2はF又はLであり、X3はV又はLであり、X4はK又はMであり、X5はA又はTであり、X6はT又はSであり、かつX7はS又はNである、
からなる群より選択される、請求項1に記載の医薬組成物、請求項2若しくは3に記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又は請求項2若しくは3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、軽鎖(LC)及び重鎖(HC)を含み、前記LC及び前記HCは、
(a)配列番号21のLC及び配列番号22のHCと、
(b)配列番号38のLC及び配列番号39のHCと、
(c)配列番号21のLC及び配列番号39のHCと、
(d)配列番号38のLC及び配列番号22のHCと、
からなる群より選択されるポリペプチドである、請求項1に記載の医薬組成物、請求項2若しくは3に記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又は請求項2若しくは3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントである、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物、請求項2~5のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又は請求項2~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒト化抗体又はその抗原結合フラグメントである、請求項1、2、3、4及び6のいずれか一項に記載の医薬組成物、請求項2、3、4及び6のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又は請求項2、3、4及び6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記組成物は、ドネペジル、ガランタミン、メマンチン、リバスチグミン、β-セクレターゼ阻害剤、γ-セクレターゼモジュレーター、アデュカヌマブ、バピネオズマブ、クレネズマブ、ガンテネルマブ、ソラネズマブのようなpan-Aβ特異的抗体の群から選択される追加の抗体及び/又は翻訳後リン酸化若しくはニトロ化されたAβペプチドに特異性を有する抗体を更に含む、請求項1に記載の医薬組成物又は請求項2~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記神経変性疾患は、軽度認知障害、臨床的又は前臨床的アルツハイマー病、ダウン症候群における神経変性、臨床的及び前臨床的アミロイド血管症、進行性核上性麻痺、多発性硬化症、クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症糖尿病に関連した認知症、老人性心臓アミロイドーシス及び筋変性からなるリストより選択される、請求項3~8のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は請求項3~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記神経変性疾患は、臨床的又は前臨床的アルツハイマー病である、請求項3~9のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は請求項3~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
神経変性疾患の診断及び/又は予後診断のためのL-isoAsp7 Aβに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントの使用であって、前記抗体と配列番号44との間の相互作用のKDが、前記抗体と配列番号8との間の相互作用のKDよりも少なくとも10倍小さく、かつ前記KDは、25℃で表面プラズモン共鳴により測定される、使用。
【請求項12】
単離された試料を、L-isoAsp7 Aβに特異的に結合する抗体又はその抗原結
合フラグメントと接触させる工程を含むisoAsp7 Aβを検出する方法であって、前記抗体と配列番号44との間の相互作用のKDが、前記抗体と配列番号8との間の相互作用のKDよりも少なくとも10倍小さく、かつ前記KDは、25℃で表面プラズモン共鳴により測定される、方法。
【請求項13】
前記単離された試料は、単離された血清試料、脳脊髄液試料又は組織試料である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
単離された試料における配列番号1の位置7にL-isoAspを含むAβペプチドのパーセンテージを決定する方法であって、
(a)サンドイッチイムノアッセイの使用によりL-isoAsp含有ペプチドの量を定量化することと、
ここで、固定化された捕捉抗体又はその抗原結合フラグメントは、L-isoAsp7 Aβに特異的に結合し、検出抗体は、配列番号1を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントである;
(b)サンドイッチイムノアッセイの使用によりAβの総量を定量化することと、
ここで、固定化された捕捉抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号1を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントであり、検出抗体は、配列番号1を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントである;
(c)工程(a)及び(b)において得られた値を使用することによりパーセンテージ値を決定することと、
を含み、前記L-isoAsp7 Aβに特異的に結合する抗体と配列番号44との間の相互作用のKDが、同抗体と配列番号8との間の相互作用のKDよりも少なくとも10倍小さく、かつ前記KDは、25℃で表面プラズモン共鳴により測定される、方法。
【請求項15】
前記単離された試料は、単離された血清試料、脳脊髄液試料又は組織試料である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野に含まれ得る。特に、本発明は、isoAsp7アミロイドβ(Aβ)に結合し得る抗体及びその抗原結合フラグメント、並びに上記抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を提供する。上記抗体、その抗原結合フラグメント及び上記医薬組成物を使用することで、神経変性疾患を治療及び/又は予防することができる。さらに、本発明は、ハイブリドーマ細胞系統、神経変性疾患の診断及び/又は予後診断のための上記抗体又はその抗原結合フラグメントの使用、並びに単離された試料中のisoAsp7 Aβを検出する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、中年又は晩年に起こる進行性の難治性の脳の神経傷害である。最初の症状の1つは短期記憶喪失であり、それに続いて行動障害及び見当識障害が起こり、身体機能の喪失に及ぶ。ADは常に死につながり、通常では診断後7年~10年で死亡する。
【0003】
AD患者には死後に2つの組織学的変化、すなわち老人斑と過剰リン酸化タウタンパク質からなる神経原線維変化とが見られる。前者は、基本的に線維状アミロイドβ(Aβ)から構成される細胞外沈着物である。Aβペプチドは、APPのタンパク質内分解的開裂により生ずる。AβペプチドはAPPの膜貫通領域内に存在するため、疎水性側鎖が多く、その結果として溶解性に乏しい。Aβペプチドは放出後に、強く凝集する傾向がある。AD患者においては、Aβペプチドの生成と分解との間に不均衡があり、Aβペプチドが凝集して沈着することで、神経細胞死が引き起こされる。ヒトの脳で観察される主なAβ変異体はAβ40及びAβ42であるが、プラークにおいてはN末端欠損変異体及びその他の翻訳後修飾形も観察される。
【0004】
2つの異なる型のAD、つまり非常に稀な遺伝性の形態(家族性AD-FAD)と患者の約95%が罹患する孤発性の形態とが存在する。FADは、異常に若年齢で現れるAD症状によって特徴付けられる。プレセニリン1(PSI)及びプレセニリン2(PS2)以外に、APPは、FADを引き起こし得る3つの既知の遺伝子に属する。これらの遺伝子における突然変異はAβ産生の増加をもたらし、ADの発症を事実上保証する。しかしながら、Aβがどのようにその毒性効果を発揮するかは未解明のままである。遺伝的障害として、FADは明らかに突然変異遺伝子の機能不全の結果であるが、遅発性の自発性ADの原因はまだ完全には理解されていない。
【0005】
自発性ADの発症の理由が未知であるだけでなく、世界中の科学者は、AD患者をできるだけ早期に特定するためにADバイオマーカーを見つけようとしている。ADは、被験者が認知的に正常な発症前期と、軽度認知障害(MCI)として知られる前駆期と、患者が日常活動における機能障害又は機能喪失さえも伴う認知症を示す第3期とに分けることができる(非特許文献1、非特許文献2)。これまで、ADのための唯一の高度に予見的なバイオマーカーは、FADの病原の遺伝子突然変異である。この遺伝子突然変異は疾患の発症の何年も前に検出され、高齢期にADの発症に進むであろう個体を特定することができる。アルツハイマー病の画像診断を用いた先導的研究(ADNI)では、Aβアミロイドバイオマーカーがまず異常となり、それに続いて神経変性バイオマーカー(CSFタウ、FDG-PET、MRI)に変化が生じ、臨床症状が発症することを示唆するADバイオマーカーの時間的順序のためのモデルが作製された。つまりAβペプチドは、患者がMCI期に最初の神経症状を示す前であっても脳内で病理学的濃度まで上昇する。さらに、突然変異だけでなくAβペプチドの翻訳後修飾もそれらの凝集挙動を加速し得ることか
ら、疾患の重度の進行がもたらされる可能性があることを明らかにすることができた。
【0006】
Aβペプチド中に観察される1つの翻訳後修飾は、イソアスパラギン酸(isoAsp)の形成である。アスパルチル残基からのisoAspの生成は、ペプチド及びタンパク質の自発的な翻訳後修飾である。この反応は、タンパク質の半減期を決定するとみなされる(非特許文献3、非特許文献4)。それ以外にisoAsp形成により、追加のメチレン基がタンパク質又はペプチドの骨格に導入され(非特許文献5、非特許文献6)、結果的にその構造が変化する。この翻訳後修飾は、溶解性、コンフォメーション及び機能のようなタンパク質の特性も変化させ得る。isoAspは、C末端隣接アミノ酸の側鎖が比較的小さく親水性である配列に最も形成されやすく、この位置に嵩高い又は疎水性の残基が存在する場合には形成される可能性が低い。最も好適なC末端隣接アミノ酸はグリシン、セリン及びヒスチジンである(非特許文献7)。
【0007】
老人斑に不溶性Aβが沈着した後に、Aβは位置8にセリン残基を有するので、時間の経過に伴いisoAsp7の形成が生ずる可能性がある。AD患者の脳内のisoAsp7 Aβの存在は1993年に初めて記載された(非特許文献8)。ポリクローナル抗isoAsp7 Aβ抗体を使用することによって、isoAsp7 AβがAD脳内の細胞外沈着物及びアミロイド蓄積血管に存在し、プラーク年齢の指標として働くことを明らかにすることができた(非特許文献9、非特許文献10)。AβはC1qの直接的な結合により古典的補体経路(CCP)を活性化することが可能であり、その結果、線維性Aβタンパク質プラークの部位に反応性グリア細胞が動員される。Velazquezと同僚達は、A
sp7の異性体化によりCCP活性化の完全な排除が生ずることを見出した。これは補体系によるプラーク認識を妨げることができた。
【0008】
isoAsp7修飾はAβペプチドの凝集に影響しないので(非特許文献11、非特許文献12)、この修飾により沈着及びプラーク形成が加速されることはありそうにない。しかしながら、Wakutaniらは、2004年にFADの新たな事例、いわゆる日本鳥取型FAD(Japanese-Tottori FAD)を記載した。この家族の一部の構成員においては、APP内のミスセンス突然変異(D678N)がAβのアスパラギン酸7をアスパラギンに置き換えている(非特許文献13)。アスパラギン残基は、アスパラギン酸よりも約10倍速く異性化される(非特許文献14)。この家系におけるAD症状の発現は、Asn7-Aβによるものではなく、isoAsp7 Aβの形成の増加によるものである可能性がある。
【0009】
ADは100年以上前から知られているが、未だに市場にて利用可能なものは対症療法だけである。Aβ及びその断片を用いた能動免疫アプローチ並びに抗Aβ抗体を用いた受動免疫は、種々の動物モデルにおいて有効であった。ヒトへのAβのワクチン接種はAβプラークの発生を抑制し、AD患者のAβ負荷を軽減した。しかしながら、一部の患者が重度の髄膜脳炎を発症するため(非特許文献15)又はAβに対する体液性応答及び細胞性応答が内因性Aβペプチドに対する強力な免疫応答を生ずるため(非特許文献16)、臨床研究を中止する必要があった。
【0010】
その結果、受動免疫は、能動免疫よりも安全で制御可能であるとみなされた。Aβペプチドを標的とする幾つかの抗体は、AD患者における受動免疫療法の臨床試験で使用されている。しかしながら、殆どの抗体は、天然の非修飾ペプチドにおける線状エピトープに対するものである。治療研究は良い効果を示したが、アミロイド関連画像異常(ARIA)、発作及び死亡等の副作用を有する(非特許文献17)。
【0011】
したがって、アルツハイマー病等のAβプラーク関連疾患の効果的な治療及び/又は予防のための抗体が求められている。本出願は、関連動物モデルにおいてより有効であるこ
とが見出されたため、アルツハイマー病等のAβプラーク関連疾患の治療及び/又は予防においてより有効であると予想される抗体を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Petersen (2004) J Intern Med 256:183-94
【非特許文献2】Savva et al. (2009) N Engl J Med 360:2302-2309
【非特許文献3】Robinson and Rudd (1974) Curr Top Cell Regul.8(0):247-95
【非特許文献4】Robinson and Robinson (2001) PNAS 98(3):944-949
【非特許文献5】Aswad et al. (2000) J Pharm Biomed Anal. 21(6):1129-36
【非特許文献6】Geiger and Clarke (1987) J Biol Chem 262:785-794
【非特許文献7】Shimizu et al. (2005) Biol Pharm Bull. 28(9):1590-6
【非特許文献8】Roher et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10836-10840
【非特許文献9】Fonseca et al. (1999) Exp Neurol. 157(2):277-88
【非特許文献10】Shimizu et al. (2000) Arch Biochem Biophys. 381(2):225-34
【非特許文献11】Fukuda et al. (1999) Bioorg Med Chem Lett. 9(7):953-6
【非特許文献12】Shimizu et al. (2002) J Neurosci Res. 70(3):451-61
【非特許文献13】Wakutani et al. (2004) J Neurol Neurosurg Psychiatry. 75(7):1039-42
【非特許文献14】Stephenson and Clarke (1989) J Biol Chem 264:6164-6170
【非特許文献15】Orgogozo et al. (2003) Neurology 61:46 - 54
【非特許文献16】Holmes et al. (2008) Lancet 372:216 - 223
【非特許文献17】Moreth et al. (2013) Immun Ageing. 10(1):18
【発明の概要】
【0013】
AD患者におけるisoAsp7 Aβの標的化は、抗体が修飾され、老化したAβペプチドのみに結合するので、新しい有望なアプローチである。したがって、末梢中の合成されたばかりの循環Aβは殆ど影響されないため、例えば血液又はCSFにおけるAβ結合を介した活性抗体の損失は妨げられる。これにより、抗体の投与量の減少が可能となり得る。さらに、Aβ沈着物中のisoAsp7修飾種のエピトープ密度は、天然のAβ変異体と比較して低い。これにより、脳組織内の抗体分布はより良くなり、中枢神経系における血管壁のアミロイド沈着物(脳アミロイド血管症、CAA)との反応性がより低くなるため、ARIAが防止される。
【0014】
本明細書では、isoAsp7-Aβ特異的抗体でのアルツハイマー病状を有するトランスジェニックマウスの処理により、疾患の病状が弱まることが示されている。驚くべきことに、isoAsp特異性の高い抗体の適用は、これらのマウスにおけるisoAsp7-Aβを減少させるだけでなく、アミロイドプラーク及び非isoAsp7修飾Aβの予想外の減少も示すことが観察された(以下の
図9及び
図12を参照)。この結果は、本明細書で初めて示されるように、未修飾(すなわち、位置7にisoAspではなくAspを含む)Aβを特異的に検出するクローン6E10に由来する抗体を使用して得られた(
図1)。したがって、両方の抗体を使用して、isoAsp-Aβ特異的抗体のこの活性の違いを立証することで、アルツハイマー病等のAβプラーク関連疾患の治療のためのisoAsp-Aβの適用が可能となる。
【0015】
さらに、isoAsp7修飾Aβは、総Aβと比較して少数しか存在しない種であり、マウスではわずか4%しか占めないことも示されている(
図9)。この低濃度にもかかわらず、処理後にアミロイドプラークの予想外の減少が観察された(
図9、
図11、
図12及び
図15)。この新規知見はAβ免疫療法の以前の制限を回避するのに役立つかもしれ
ない。
【0016】
驚くべきことに、本発明の抗体は、
図15Aに示されるように、3D6(L-isoAsp7修飾を有しないAβ42ペプチドの残基1~残基5に結合する抗体)よりも多くの線維性Aβを除去することが可能であった。このことは、より多量の単量体、オリゴマー及び線維性のisoAsp修飾Aβの除去と関連していると見られる(
図14B及び
図15B)。さらに、本発明の抗体は、3D6と比較して5xFADマウスの治療を改善する(
図17~
図19を参照)。
【0017】
したがって、本発明は、isoAsp7アミロイドβ(Aβ)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントであって、該抗体と配列番号44との間の相互作用のKDが、該抗体と配列番号8との間の相互作用のKDよりも少なくとも10倍小さい、抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。本発明はまた、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントと薬学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む医薬組成物を提供する。また、本発明は、本発明の抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は本発明の医薬組成物の、特に神経変性疾患の治療及び/又は予防のための医薬としての使用を包含する。さらに、本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントの、神経変性疾患の診断及び/又は予後診断のための使用を提供する。本発明はまた、ハイブリドーマ細胞系統と、単離された試料を本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントと接触させる工程を含むisoAsp7 Aβを検出する方法とを提供する。最後に、本発明は、配列番号1の位置7にL-isoAspを含むアミロイドプラーク中のペプチドのパーセンテージを決定する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ドットブロット分析による抗体特異性の調査を示す図である。2μlのAβペプチドをニトロセルロースメンブレン上に漸減濃度でスポットし、ブロッキング溶液(TBS-T(TBS+0.05%のTween 20(容量/容量))中の5%(重量/容量)のミルク粉末)中で1時間ブロッキングした。抗体K11(A)、K119(B)及び6E10(C)をブロッキング溶液にて1μg/mlに希釈し、メンブレンと一緒に1時間インキュベートした後に、TBS-Tによる5分間の洗浄工程を3回行った。アルカリ性ホスファターゼ(AP)にコンジュゲートされた抗マウス抗体を加えて1時間インキュベートした後に、5分間の洗浄工程を3回行い、引き続き基質のBCIP(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-ホスフェート)及びNBT(ニトロブルーテトラゾリウム)の添加によりAP活性の比色検出を行った。1はisod7-Aβ(1-17)であり、2はisoD7-Aβ(5-9)repであり、3はAβ(1-18)であり、4はisoD7-Aβ(1-12)である。注目すべきことに、抗体6E10はisoAsp修飾Aβを認識しない。
【
図2】SPR分析による固定化K11と種々のAβペプチドとの結合定数の測定を示す図である。1500RU~2000RUの抗体K11を、ヤギ抗マウスIgGへの結合によりCM5チップ上に固定化した。単量体Aβペプチドを様々な濃度で注入した。K
D値はBIAevaluationソフトウェアのシングルサイクルカイネティクス解析の使用により計算した。Aでは、isoD7-Aβ(1-18)を1nM、3nM、9nM、27nM、81nM及び243nMで適用した。Bでは、isoD7-Aβ(1-17)を1nM、3nM、9nM、27nM、81nM及び243nMで適用した。Cでは、Aβ(1-18)を10mM、30nM、90nM、270nM、810nM及び2430nMで適用した。
【
図3】SPR分析による固定化K119とisoD7-Aβ(1-18)とのK
D値の測定を示す図である。約2000RUの抗体K119を、ヤギ抗マウスIgGへの結合によりCM5チップ上に固定化した。単量体isoD7-Aβ(1-18)ペプチドを様々な濃度(1nM、2nM、5nM、10nM、20nM、50nM、100nM、200nM、500nM、1μM)で注入した。K
D値はBIAevaluationソフトウェアのマルチサイクルカイネティクス解析の使用により計算した。
【
図4】K11と種々のAβペプチドとの熱力学的キャラクタリゼーションを示す図である。K11と種々の抗原との25℃での熱力学的パラメーターの測定。K11を、ITCバッファー(25mMのKH
2PO
4、25mMのNa
2HPO
4、150mMのNaCl、1mMのEDTA、pH7.4)中に溶解されたAβ-ペプチドに対して透析した。ペプチドを5分毎に以下の濃度で抗体溶液に添加した:Aでは、50.8μMのisoD7-Aβ(1-18)を2.5μMのK11に対して滴定した。Bでは、56.7μMのAβ(1-18)を11.9μMのK11に対して滴定した。Cでは、238μMのisod7-Aβ(1-17)を11.9μMのK11に対して滴定した。上部のグラフは、抗体K11による熱量測定セル中での抗原の滴定から生じる熱パルスの生データを示している。下部のグラフは、モル比に対する、注入物1モルにつき正規化された積算された熱パルスを示している。
【
図5】等温滴定型熱量測定の使用によるisoD7-Aβ(1-18)へのK119の結合の熱力学的キャラクタリゼーションを示す図である。K119を、ITCバッファー(25mMのKH
2PO
4、25mMのNa
2HPO
4、150mMのNaCl、1mMのEDTA、pH7.4)中に溶解されたペプチドisoD7-Aβ(1-18)に対して透析した。44.9μMのペプチド溶液を、5分毎に2.2μMの抗体溶液に添加した。上部のグラフは、抗体K119による熱量測定セル中での抗原の滴定から生じる熱パルスの生データを示している。下部のグラフは、モル比に対する、注入物1モルにつき正規化された積算された熱パルスを示している。
【
図6】K11の使用による5xFADマウス及び野生型マウス由来の脳試料におけるAβ凝集体の免疫組織化学的分析を示す図である。様々な年齢の5xFADマウス(B~E及びG~J)及び12ヶ月齢の野生型マウス(A及びF)由来のパラホルムアルデヒドで処理され凍結保存された脳切片を、抗isoAsp7-Aβ抗体K11(A~E)及び市販の抗体6E10で処理した後に、ビオチン化抗マウスIgGを適用した。免疫染色を、ExtrAvidin-ペルオキシダーゼ(Sigma-Aldrich社)及び発色基質の3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)の添加により行った。A)K11で染色された12ヶ月齢の野生型マウス。B)K11で染色された3ヶ月齢の5xFADマウス。C)K11で染色された6ヶ月齢の5xFADマウス。D)K11で染色された9ヶ月齢の5xFADマウス。E)K11で染色された12ヶ月齢の5xFADマウス。F)6E10で染色された12ヶ月齢の野生型マウス。G)6E10で染色された3ヶ月齢の5xFADマウス。H)6E10で染色された6ヶ月齢の5xFADマウス。I)6E10で染色された9ヶ月齢の5xFADマウス。J)6E10で染色された12ヶ月齢の5xFADマウス。
【
図7】種々の抗体を用いた12ヶ月齢の5xFADマウス由来の脳試料におけるAβ凝集体の比較染色を示す図である。12ヶ月齢の5xFADマウス由来のホルムアルデヒドで処理され凍結保存された脳切片を、抗isoAsp7-Aβ抗体K119(A)、K11(B)、6E10(C)で処理し、及び一次抗体で処理せず(D)、その後にビオチン化抗マウスIgGを適用した。
図7(E)は、K119による野生型マウスの脳切片の染色を示している。免疫染色を、ExtrAvidin-ペルオキシダーゼ(Sigma-Aldrich社)及び発色基質の3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)の添加により行った。
【
図8】生物学的試料におけるisoAsp7-Aβ濃度及び総Aβ濃度の定量化のためのサンドイッチELISAを示す図である。捕捉抗体K11(A)及び3D6(B)を、2μg/mlに希釈し、マイクロタイタープレートに4℃で一晩固定化した。ブロッキングは室温で2時間行った。isoD7-Aβ(1-30)(配列番号51)及びAβ(1-30)(配列番号52)を連続希釈し、2連でウェルに加えた。4℃で2時間のインキュベート期間後に、プレートをTBS-Tで6回洗浄した。HRPにコンジュゲートされた抗Aβ抗体クローン4G8を1μg/mlの最終濃度で添加し、4℃で1時間インキュベートした。TBS-Tで洗浄した後にTMBにより発色反応を行い、1.2NのH
2SO
4の添加により停止させた。標準曲線は、4パラメーターロジスティックフィット:y=(A2+(A1-A2)/(1+(x/x
0)
p)によって450nm/540nmで測定された吸光度から計算した。
【
図9】K11及びアイソタイプコントロールで処理された5xFADマウスの脳からの5MのGdmCl画分における総Aβ(A)ペプチド及びisoAsp7-Aβ(B)ペプチドの定量化を示す図である。3ヶ月齢の5xFADマウスを500μg、150μgのK11又は500μgのアイソタイプコントロールで週に1回腹腔内処理した。処理12週間後に、マウスを屠殺し、脳の左半球をT-Perバッファー中でホモジナイズし、引き続き遠心分離した。得られたペレットを5MのGdmCl(150mg/ml)中に再懸濁し、再び遠心分離し、上清を総Aβ(A)又はisoAsp7-Aβ(B)特異的ELISAに適用した。
【
図10】K11及びアイソタイプコントロールで処理された5xFADマウス由来の海馬脳切片におけるisoAsp7-Aβを含む凝集体の免疫組織化学的分析を示す図である。3ヶ月齢の5xFADマウスを500μg、150μgのK11又は500μgのアイソタイプコントロールで週に1回腹腔内処理した。処理12週間後に、マウスを屠殺し、脳の右半球をホルムアルデヒドで処理し、凍結保存し、免疫組織化学的染色のために使用した。海馬区域から30μmの切片を作製し、2μg/mlのK11と一緒にインキュベートした後に、ビオチン化抗マウスIgGを適用した。免疫染色を、ExtrAvidin-ペルオキシダーゼ(Sigma-Aldrich社)及び発色基質の3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)の添加により行った。海馬脳切片における対象領域(ROI)を、2μg/mlの6E10(一般的なAβのため)及び2μg/mlのisoAsp7-Aβ特異的抗体K11(isoAsp7-Aβのため)で染色することにより選択した。全ての写真は、顕微鏡Biorevo BZ-9000(Keyence社)の使用により透過光モード及び露出時間1/200秒で記録した。isoAsp7-Aβのパーセント面積(ROIのisoD7(%))を、ROIの総面積に対してBZ II解析プログラムを使用して定量化した。
【
図11】K11及びアイソタイプコントロールで処理された5xFADマウス由来の脳試料におけるisoAsp7-Aβを含む凝集体の免疫組織化学的染色を示す図である。3ヶ月齢の5xFADマウスを500μg、150μgのK11又は500μgのアイソタイプコントロールで週に1回腹腔内処理した。処理12週間後にマウスを屠殺した。脳の右半球を使用して、パラホルムアルデヒド処理され凍結保存された脳切片を調製した。脳切片をK11で処理した後に、ビオチン化抗マウスIgGを適用した。免疫染色を、ExtrAvidin-ペルオキシダーゼ(Sigma-Aldrich社)及び発色基質の3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)の添加により行った。A)3ヶ月齢の5xFADマウス(ベースラインコントロール)、B)500μgのアイソタイプコントロール抗体で処理された6ヶ月齢の5xFADマウス、C)150μgのK11で処理された6ヶ月齢の5xFADマウス、D)500μgのK11で処理された6ヶ月齢の5xFADマウス。
【
図12】K11及びアイソタイプコントロールで処理された5xFADマウス由来の脳試料におけるAβ凝集体(抗体6E10)の免疫組織化学的染色を示す図である。3ヶ月齢の5xFADマウスを500μg、150μgのK11又は500μgのアイソタイプコントロールで週に1回腹腔内処理した。処理12週間後にマウスを屠殺した。脳の右半球を使用して、パラホルムアルデヒド処理され凍結保存された脳切片を調製した。脳切片を市販の6E10抗体で処理した後に、ビオチン化抗マウスIgGを適用した。免疫染色を、ExtrAvidin-ペルオキシダーゼ(Sigma-Aldrich社)及び発色基質の3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)の添加により行った。A)3ヶ月齢の5xFADマウス(ベースラインコントロール)、B)500μgのアイソタイプコントロール抗体で処理された6ヶ月齢の5xFADマウス、C)150μgのK11で処理された6ヶ月齢の5xFADマウス、D)500μgのK11で処理された6ヶ月齢の5xFADマウス。
【
図13】K11で処理された5xFADマウス由来の小脳及び脳幹におけるIgG2aの定量化を示す図である。3ヶ月齢の5xFADマウスを500μg又は150μgのK11で週に1回腹腔内処理した。処理12週間後にマウスを屠殺し、小脳及び脳幹をELISAブロッカー+Tween中でホモジナイズし、引き続き遠心分離した。得られた上清をマウスIgG2a特異的ELISAに適用した。ベースラインは、処理されていない3ヶ月齢の5xFADマウスに相当する。
【
図14】抗Aβ抗体K11、3D6及びアイソタイプコントロールで処理された5xFADマウスの脳からのT-Per画分における総Aβ(A)ペプチド及びisoD7-Aβ(B)ペプチドの定量化を示す図である。3ヶ月齢の5xFADマウスを300μgのK11、3D6又はアイソタイプコントロールで週に1回腹腔内処理した。処理6ヶ月後にマウスを屠殺し、脳の左半球をT-Perバッファー(Thermofisher社)中で50mg(脳重量)/ml(T-Perバッファー)までホモジナイズした。得られたT-Per画分を総Aβ及びisoAsp7-Aβ特異的ELISAに適用した。サンプルサイズは、1群当たり少なくとも10匹の動物からなっていた(一部の群には1匹又は2匹多い動物が含まれていた)。統計分析は、ボンフェローニの多重比較検定を使用して実施した。
*はp≦0.05を意味する。
**はp≦0.01を意味する。
***はp≦0.001を意味する。
【
図15】抗Aβ抗体K11、3D6及びアイソタイプコントロールで処理された5xFADマウスの脳からの5MのGdmCl画分における総Aβ(A)ペプチド及びisoD7-Aβ(B)ペプチドの定量化を示す図である。3ヶ月齢の5xFADマウスを300μgのK11、3D6及びアイソタイプコントロールで週に1回腹腔内処理した。処理6ヶ月後にマウスを屠殺し、脳の左半球をT-Perバッファー(50mg/ml)でホモジナイズし、引き続き遠心分離した。得られたペレットを5MのGdmCl(150mg/ml)中に再懸濁し、再び遠心分離し、上清を総Aβ及びisoAsp7-Aβ特異的ELISAにかけた。サンプルサイズは、1群当たり少なくとも10匹の動物からなっていた(一部の群には1匹又は2匹多い動物が含まれていた)。統計分析は、ボンフェローニの多重比較検定を使用して実施した。
*はp≦0.05を意味する。
**はp≦0.01を意味する。
***はp≦0.001を意味する。
【
図16】300μgのK11、3D6及びアイソタイプコントロールで38週間にわたり毎週処理された5xFAD動物の高架式十字迷路(EPM)試験を示す図である。抗体処理された5xFAD群を、300μgのアイソタイプコントロールで処理された野生型動物と比較した。試験動物を、2本の開いたアームと2本の閉じたアームとを備える高架式十字(+)装置の規定の閉じたアームの端に頭を向けて置いた。その後10分間の間、試験動物の全ての動きを記録した。Aでは、開いたアーム内で動物が費やした時間を合計することで、曝露区画(exposed area)における%を計算した。Bでは、アーム進入は、開いたアーム内に動物全体(尾を除く)が存在すると定義される。サンプルサイズは、1群当たり少なくとも9匹の動物からなっていた(一部の群には1匹又は2匹多い動物が含まれていた)。統計分析は、ボンフェローニの多重比較検定を使用して実施した。
*はp≦0.05を意味する。
**はp≦0.01を意味する。
***はp≦0.001を意味する。
【
図17】300μgのK11、3D6及びアイソタイプコントロールで38週間にわたり毎週処理された5xFAD動物の恐怖条件付け試験を示す図である。抗体処理された5xFAD群を、300μgのアイソタイプコントロールで処理された野生型動物と比較した。試験動物を、自動式の恐怖条件付けシステムに置き、以下の手順:休止(180秒)、音(28秒)、電気刺激(0.7mAを2秒間)を受けさせた。24時間後に、試験動物を再び恐怖条件付けシステムに置き、そこに210秒間放置してから取り出した。1時間後に動物をコンテナに戻し、それらを180秒の休止の後に180秒の音(中性刺激)に曝した。恐怖状態は、マウスによる所定の位置でのすくみ行動により表現された。180秒の休止の間のすくみ行動時間を計数して、180秒の音の間のすくみ行動時間から減算することで、すくみ行動時間の%を得た。サンプルサイズは、1群当たり少なくとも8匹の動物からなっていた(一部の群には1匹又は2匹多い動物が含まれていた)。統計分析は、ボンフェローニの多重比較検定を使用して実施した。
*はp≦0.05を意味する。
**はp≦0.01を意味する。
***はp≦0.001を意味する。
【
図18】300μgのK11、3D6及びアイソタイプコントロールで38週間にわたり毎週処理された5xFAD動物のポールテストを示す図である。抗体処理された5xFAD群を、300μgのアイソタイプコントロールで処理された野生型動物と比較する。動物を50cmの高さのポール(直径1.5cm)上で頭を上部に向けて置いた。動物から手を放して、(A)動物が向きを変える(全ての単足が地面へと向けられると定義される)までの時間、及び(B)動物の全ての足が地面に達するまでの時間を計数した。サンプルサイズは、1群当たり少なくとも10匹の動物からなっていた(一部の群には1匹又は2匹多い動物が含まれていた)。統計分析は、ボンフェローニの多重比較検定を使用して実施した。
*はp≦0.05を意味する。
**はp≦0.01を意味する。
***はp≦0.001を意味する。
【
図19】300μgのK11、3D6及びアイソタイプコントロールで38週間にわたり毎週処理された5xFAD動物のモーリスの水迷路試験を示す図である。抗体処理された5xFAD群を、300μgのアイソタイプコントロールで処理された野生型動物と比較する。試験動物は、円形のプールに入れられて、水から逃避することを可能にする見えないプラットフォームを見つける必要がある。円形のプールは、4つの等しい四分円に分割されている。試験動物を第1の四分円に入れて、プラットフォームに到達するまでの時間を計数した。少なくとも5分間休止した後に、試験動物を第2の四分円に入れ、同じ手順に曝した。動物を再び休止させた後に、動物を四分円3に入れ、引き続きもう一度休止を行い、動物を再び四分円2に入れた。最後に、試験動物がプラットフォームに到達するまでの時間を計数し、1日当たり4回の試験において全てのマウスについて合計した。グラフは、4日目に動物がプラットフォームに到達するまでの平均試験時間を示している。サンプルサイズは、1群当たり少なくとも10匹の動物からなっていた(一部の群には1匹又は2匹多い動物が含まれていた)。統計分析は、ボンフェローニの多重比較検定を使用して実施した。
*はp≦0.05を意味する。
**はp≦0.01を意味する。
***はp≦0.001を意味する。
【
図20】K11、3D6及びアイソタイプコントロールの添加後の野生型Aβ(A)ペプチド及びisoD7-Aβ(B)ペプチドの凝集を示す図である。合成の野生型Aβ(1-40)ペプチド及びisoD7-Aβ(1-40)ペプチドは、それらをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)中に溶解させることにより単量体化された。HFIPを一晩蒸発させ、ペプチドを1容量の0.1MのNaOH中に溶解させた後に、18容量のPBS及び1容量の0.1MのHClを添加した。続いて、抗体K11、3D6及びアイソタイプコントロールを5μMの最終濃度まで添加し、こうして10μMのAβペプチドの濃度に至った。200μMのThT(チオフラビンT)の添加後に、435nm/485nm(励起波長/蛍光波長)の蛍光を、マイクロプレートリーダー(FluoStar Optima、BMG Labtech社)において振盪条件(600rpm)下にて37℃でトラッキングした。
【発明を実施するための形態】
【0019】
抗体
第1の態様では、本発明は、isoAsp7アミロイドβ(Aβ)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントであって、前記抗体と配列番号44との間の相互作用のKDが、前記抗体と配列番号8との間の相互作用のKDよりも少なくとも10倍小さい、抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。好ましい実施形態では、該抗体と配列番号48との間の相互作用のKDは、該抗体と配列番号8との間の相互作用のKDよりも少なくとも10倍小さい。好ましくは、KDは表面プラズモン共鳴又は等温滴定型熱量測定により測定される。より好ましくは、KDは表面プラズモン共鳴により25℃で測定される。
【0020】
代替的な態様では、本発明は、pE3(位置3にL-ピログルタミン酸を含む)isoAsp7アミロイドβ(Aβ)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントであって、該抗体と配列番号48との間の相互作用のKDが、該抗体と配列番号8との間の相互作用のKDよりも少なくとも10倍小さい、抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0021】
配列番号44は、isoAsp7 Aβ(1-18)であり、以下の配列:
DAEFRHXSGYEVHHQKLV
(ここで、XはL-isoAspである)を有する。
【0022】
配列番号8は、Aβ(1-18)であり、以下の配列:
DAEFRHDSGYEVHHQKLV
を有する。
【0023】
配列番号48は、pE3-isoD7-Aβ(3-18)であり、以下の配列:
ZFRHXSGYEVHHQKLV
(ここで、XはL-isoAspであり、ZはL-ピログルタミン酸である)を有する。
【0024】
本明細書で使用される場合に、「抗体」という用語は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメイン配列を含むタンパク質を指す。抗体という用語には、例えば全長抗体及び成熟抗体が含まれる。例えば、抗体は、重(H)鎖可変ドメイン配列(本明細書ではVHと略される)及び軽(L)鎖可変ドメイン配列(本明細書ではVLと略される)を含み得る。別の例では、抗体分子は、2つの重(H)鎖可変ドメイン配列及び2つの軽(L)鎖可変ドメイン配列を含み、それによりFab、Fab’、F(ab’)2、Fc、Fd、Fd’、Fv、一本鎖抗体(例えばscFv)、単一可変ドメイン抗体、ダイアボディ(Dab)(二価及び二重特異性)及びキメラ(例えばヒト化)抗体のように2つの抗原結合部位が形成され、それらは、全体抗体又はde novo合成された抗体の組み換えDNA技術を使用した改変により作製され得る。これらの機能的抗体フラグメントは、それらの各抗原又は受容体と選択的に結合する能力を保持している。抗体及び抗体フラグメントは、限定されるものではないが、IgG、IgA、IgM、IgD及びIgEを含む抗体の任意のクラス並びに抗体の任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4)に由来し得る。本発明の抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであってもよい。抗体はまた、ヒト抗体、ヒト化抗体、CDR移植抗体又はin vitroで作製された抗体であってもよい。抗体は、例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4から選択される重鎖定常領域を有し得る。抗体はまた、例えばκ又はλから選択される軽鎖を有し得る。
【0025】
抗原結合フラグメントの例としては、(i)Fab断片、すなわちVLドメイン、VHドメイン、CLドメイン及びCH1ドメインのみからなる一価断片、(ii)F(ab’)2フラグメント、すなわちヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント、(iii)VHドメイン及びCH1ドメインのみからなるFdフラグメント、(iv)抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインのみからなるFvフラグメント、(v)1つのVHドメインのみからなるダイアボディ(dAb)フラグメント、(vi)ラクダ科の又はラクダ化された可変ドメイン、(vii)一本鎖Fv(scFv)、例えばBird et al. (1988) Science 242:423-426及びHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照、(viii)単一ドメイン抗体が挙げられる。これらの抗体フラグメントは、当業者に知られる従来の技術を使用して得られ、フラグメントもインタクト抗体と同様に有用性についてスクリーニングされる。
【0026】
「抗体」という用語には、インタクトな分子が含まれる。抗体の定常領域が改変、例えば突然変異されることで、抗体の特性は変化(例えば、Fc受容体結合、抗体のグリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能又は補体機能の1つ以上が増加又は減少)し得る。
【0027】
抗体分子は単一ドメイン抗体でもあり得る。単一ドメイン抗体は、相補性決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である抗体を含み得る。例としては、限定されるものではないが、重鎖抗体、軽鎖を天然に欠いている抗体、従来の4鎖抗体に由来する単一ドメイン抗体、操作された抗体及び抗体に由来するもの以外の単一ドメイン足場が挙げられる。単一ドメイン抗体は、当該技術分野のいずれか又は任意の将来の単一ドメイン抗体であり得る。単一ドメイン抗体は、限定されるものではないが、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、魚、サメ、ヤギ、ウサギ及びウシを含むあらゆる種に由来し得る。本発明の別の態様によれば、単一ドメイン抗体は、軽鎖を欠いている重鎖抗体として知られる天然に存在する単一ドメイン抗体である。そのような単一ドメイン抗体は、例えば国際公開第9404678号に開示される。明確にするために、軽鎖を天然に欠いている重鎖抗体に由来するこの可変ドメインは、本明細書では4鎖免疫グロブリンの従来のVHと区別するためにVHH又はナノボディとして知られている。そのようなVHH分子は、ラクダ科の種、例えばラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカ及びグアナコにおいて産生された抗体に由来し得る。ラクダ科以外の他の種が、軽鎖を天然に欠いている重鎖抗体を産生することができ、そのようなVHHは本発明の範囲内である。
【0028】
VH領域及びVL領域は、「フレームワーク領域」(FR又はFW)と呼ばれるより保存された領域が点在する、「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれる超可変領域に細分化することができる。
【0029】
フレームワーク領域及びCDRの範囲は、多くの方法により正確に定義されている(例えば、Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No.91-3242、Chothia, C. et al. (1987) J. Mol. Biol.196:901-917、及びOxford Molecular社のAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用されるAbM定義を参照)。一般的に、例えばAntibody Engineering Lab Manual(編集:Duebel, S.及びKontermann, R.
、Springer出版社、ハイデルベルク)におけるProtein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains.を参照。
【0030】
本明細書で使用される「相補性決定領域」及び「CDR」という用語は、抗原特異性及び結合親和性を与える抗体可変領域内のアミノ酸の配列を指す。一般的に、各重鎖可変領域には3つのCDRが存在し(HCDR1、HCDR2、HCDR3)、各軽鎖可変領域には3つのCDRが存在する(LCDR1、LCDR2、LCDR3)。
【0031】
所与のCDRの正確なアミノ酸配列の境界は、Kabat et al. (1991), "Sequences of Proteins of Immunological Interest," 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(「Kabat」番号付けスキーム)、Al-Lazikani et
al., (1997) JMB 273,927-948(「Chothia」番号付けスキーム)によって記載されたスキームを含む多くのよく知られたスキームのいずれかを使用して決定され得る。本明細書で使用される場合に、「Chothia」番号付けスキームに従って定義されるCDRは、「超可変ループ」と呼ばれることもある。
【0032】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特
異性及び親和性を示す。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術によって又はハイブリドーマ技術を使用しない方法(例えば、組み換え法)によって作製することができる。
【0033】
抗体又はその抗原結合フラグメントは、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体であってもよい。他の実施形態では、抗体は組み換えにより産生され、例えばファージディスプレイ法又はコンビナトリアル法により産生され得る。好ましくは、抗体又はその抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0034】
抗体を作製するためのファージディスプレイ法及びコンビナトリアル法は、当該技術分野で知られている(例えば、Ladnerらの米国特許第5,223,409号、Kangらの国際公開第92/18619号、Dowerらの国際公開第91/17271号、Winterらの国際
公開第92/20791号、Marklandらの国際公開第92/15679号、Breitlingら
の国際公開第93/01288号、McCaffertyらの国際公開第92/01047号、Garrardらの国際公開第92/09690号、Ladnerらの国際公開第90/02809号、Fuchs et al. (1991) Bio/Technology 9:1370-1372、Hay et al. (1992) Hum Antibod Hybridomas 3:81-85、Huse et al. (1989) Science 246:1275-1281、Griffths et al. (1993) EMBO J 12:725-734、Hawkins et al. (1992) J Mol Biol 226:889-896、Clackson et al.
(1991) Nature 352:624-628、Gram et al. (1992) PNAS 89:3576-3580、Garrad et al. (1991) Bio/Technology 9:1373-1377、Hoogenboom et al. (1991) Nuc Acid Res 19:4133-4137、及びBarbas et al. (1991) PNAS 88:7978-7982に記載され、それらの全ての内容
は、引用することにより本明細書の一部をなす)。
【0035】
1つの実施形態では、抗体は完全ヒト抗体(例えば、ヒト免疫グロブリン配列から抗体を産生するように遺伝子操作されたマウスで作製された抗体)又は非ヒト抗体、例えば齧歯類(マウス又はラット)抗体、ヤギ抗体、霊長類(例えばサル)抗体、ラクダ抗体である。好ましくは、非ヒト抗体は、齧歯類(マウス抗体又はラット抗体)である。齧歯類抗体の産生方法は、当該技術分野で知られている。
【0036】
ヒトモノクローナル抗体は、マウス系ではなくヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスを使用して作製され得る。対象の抗原で免疫化されたこれらのトランスジェニックマウスからの脾細胞を使用して、ヒトタンパク質からのエピトープに特異的な親和性を有するヒトmAbを分泌するハイブリドーマを作製する(例えば、Woodらの国際出願の国際公開第91/00906号、KucherlapatiらのPCT出願の国際公開第91/10741号、Lonbergらの国際出願の国際公開第92/03918号、Kayらの国際出願の国際公開第92/03917号、Lonberg, N. et al.1994 Nature 368:856-859、Green, L.L. et al.1994 Nature Genet. 7:13-21、Morrison, S.L. et al.1994 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855、Bruggeman et al. 1993 Year Immunol 7:33-40、Tuaillon et al.1993 PNAS 90:3720-3724、Bruggeman et al.1991 Eur J Immunol 21:1323-1326を参照)。
【0037】
抗体は、可変領域又はその一部、例えばCDRが非ヒト生物、例えばラット又はマウスにおいて作製される抗体であり得る。キメラ抗体、CDR移植抗体及びヒト化抗体は、本発明の範囲内である。非ヒト生物、例えばラット又はマウスにおいて作製された後に、例えば可変フレームワーク領域又は定常領域において改変させて、ヒトでの抗原性を低下させた抗体は本発明の範囲内である。
【0038】
キメラ抗体は、当該技術分野において知られる組み換えDNA技術によって産生され得る(Robinsonらの国際出願PCT/US86/02269号、Akiraらの欧州特許出願第
184,187号、Taniguchi, M.の欧州特許出願第171,496号、Morrisonらの欧
州特許出願第173,494号、Neubergerらの国際出願の国際公開第86/01533
号、Cabillyらの米国特許第4,816,567号、Cabillyらの欧州特許出願第125,023号、Better et al. (1988 Science 240:1041-1043)、Liu et al. (1987) PNAS 84:3439-3443、Liu et al., 1987, J. Immunol.139:3521-3526、Sun et al. (1987) PNAS 84:214-218、Nishimura et al., 1987, Canc. Res.47:999-1005、Wood et al. (1985) Nature 314:446-449及びShaw et al., 1988, J. Natl Cancer Inst.80:1553-1559を参照)。
【0039】
ヒト化抗体又はCDR移植抗体は、ドナーCDRで置き換えられた少なくとも1つ又は2つの、しかし一般的に3つ全てのレシピエントCDR(免疫グロブリン重鎖及び/又は軽鎖)を有することとなる。抗体は、非ヒトCDRの少なくとも一部で置き換えられてもよく、又はCDRの幾つかだけが非ヒトCDRで置き換えられていてもよい。isoAsp7 Aβへのヒト化抗体の結合に必要とされる数のCDRを置き換えることだけが必要とされる。好ましくは、ドナーは齧歯類抗体、例えばラット抗体又はマウス抗体であり、レシピエントはヒトフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークである。典型的に、CDRを提供する免疫グロブリンは「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供する免疫グロブリンは「アクセプター」と呼ばれる。1つの実施形態では、ドナー免疫グロブリンは、非ヒト(例えば齧歯類)免疫グロブリンである。アクセプターフレームワークは、天然に存在する(例えばヒト)フレームワーク若しくはコンセンサスフレームワーク、又はそれらと約85%以上、好ましくは90%、95%、99%以上同一の配列である。
【0040】
本明細書で使用される場合に、「コンセンサス配列」という用語は、関連配列のファミリーの中で最も頻繁に存在するアミノ酸(又はヌクレオチド)から形成される配列を指す(例えば、Winnaker, From Genes to Clones (Verlagsgesellschaft, Weinheim, Germany
1987)を参照)。或るタンパク質ファミリーにおいては、コンセンサス配列中の各位置は、該ファミリーのその位置で最も頻繁に存在するアミノ酸によって占められている。2つのアミノ酸が同じ頻度で存在する場合に、どちらかがコンセンサス配列中に含まれ得る。「コンセンサスフレームワーク」とは、コンセンサス免疫グロブリン配列におけるフレームワーク領域を指す。
【0041】
抗体は、当該技術分野において知られる方法によってヒト化され得る(例えば、Morrison, S. L., 1985, Science 229:1202-1207、Oi et al.よる1986, BioTechniques 4:214、並びにQueenらによる米国特許第5,585,089号、米国特許第5,693,761
号及び米国特許第5,693,762号を参照、それらの全ての内容は、引用することにより本明細書の一部をなす)。
【0042】
ヒト化抗体又はCDR移植抗体は、CDR移植又はCDR置換によって作製され得て、免疫グロブリン鎖の1つ、2つ又は全てのCDRが置き換えられ得る。例えば、米国特許第5,225,539号、Jones et al.1986 Nature 321:552-525、Verhoeyan et al.1988 Science 239:1534、Beidler et al.1988 J. Immunol.141:4053-4060、Winterの米国特
許第5,225,539号を参照(それらの全ての内容は、引用することにより明確に本明細書の一部をなす)。Winterは、本発明のヒト化抗体を調製するために使用することができるCDR移植法を記載しており(1987年3月26日に出願された英国特許出願である英国特許出願公開第2188638号、Winterの米国特許第5,225,539号)、それらの内容は、引用することにより明確に本明細書の一部をなす。
【0043】
また、特定のアミノ酸が置換、欠失又は付加されたヒト化抗体も、本発明の範囲内である。ドナーからアミノ酸を選択するための基準は、米国特許第5,585,089号、例えば米国特許第5,585,089号の第12欄~第16欄、例えば米国特許第5,585,089号の第12欄~第16欄に記載されており、それらの内容は、引用することにより本明細書の一部をなす。抗体をヒト化するためのその他の技術は、1992年12月23日に公開されたPadlanらの欧州特許出願公開第519596号に記載されている。
【0044】
抗体は、一本鎖抗体であり得る。一本鎖抗体(scFV)を操作することができる(例えば、Colcher, D. et al. (1999) Ann N Y Acad Sci 880:263-80及びReiter, Y. (1996)
Clin Cancer Res 2:245-52を参照)。一本鎖抗体を二量体化又は多量体化して、同じ標
的タンパク質の異なるエピトープに対する特異性を有する多価抗体を作製することができる。
【0045】
更に他の実施形態では、抗体は、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD及びIgEの重鎖定常領域から選択される重鎖定常領域、特に例えば、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4の(例えば、ヒト)重鎖定常領域から選択される重鎖定常領域を有する。別の実施形態では、抗体は、例えばκ又はλの(例えば、ヒト)軽鎖定常領域から選択される軽鎖定常領域を有する。定常領域が改変、例えば突然変異されることで、抗体の特性は変化(例えば、Fc受容体結合、抗体のグリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能及び/又は補体機能の1つ以上が増加又は減少)し得る。1つの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有し、補体を固定化し得る。他の実施形態では、抗体は、エフェクター細胞を動員しない又は補体を固定化しない。別の実施形態では、抗体は、Fc受容体に結合する能力が低減されているか又は該能力を有しない。例えば、抗体は、Fc受容体への結合に対応しないアイソタイプ若しくはサブタイプ、フラグメント又はその他の突然変異体であり、例えば抗体は、突然変異又は欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0046】
抗体の定常領域を改変する方法は、当該技術分野において知られている。改変された機能、例えば細胞上のFcR又は補体のC1成分等のエフェクターリガンドについての改変された親和性を有する抗体は、抗体の定常部分における少なくとも1つのアミノ酸残基を異なる残基と置き換えることにより作製され得る(例えば、欧州特許出願第388,151号、米国特許第5,624,821号及び米国特許第5,648,260号を参照、それらの全ての内容は、引用することにより本明細書の一部をなす)。マウス又は他の種の免疫グロブリンに適用される場合にこれらの機能を低下させる又は排除することとなる同様の種類の改変が記載され得る。
【0047】
抗体を、誘導体化することができる又は別の機能的分子(例えば、別のペプチド又はタンパク質)に結合させることができる。本明細書で使用される場合に、「誘導体化された」抗体分子は、修飾された抗体分子である。誘導体化の方法としては、限定されるものではないが、蛍光部分、放射性ヌクレオチド、トキシン、酵素又はビオチン等の親和性リガンドの付加が挙げられる。したがって、本発明の抗体分子は、免疫接着分子を含む本明細書に記載される抗体の誘導体化形及びその他には修飾形を含むと解釈される。例えば、抗体分子は、1つ以上の他の分子実体、例えば別の抗体(例えば、二重特異性抗体又はダイアボディ)、検出可能な作用物質、細胞傷害性作用物質、医薬品作用物質及び/又は抗体若しくは抗体部分と別の分子(例えば、ストレプトアビジンコア領域又はポリヒスチジンタグ)との会合を媒介し得るタンパク質若しくはペプチドに機能的に結合され得る(化学的結合、遺伝子融合、非共有結合等)。
【0048】
誘導体化された抗体分子の1つの種類は、(同じ種類又は例えば二重特異的抗体の作製のために異なる種類の)2つ以上の抗体を架橋させることによって作製される。適切な架橋剤としては、適切なスペーサーによって隔離された2つの反応性が異なる基を有するヘテロ二官能性である架橋剤(例えば、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)又はホモ二官能性である架橋剤(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)が挙げられる。そのようなリンカーは、Pierce Chemical Company(イリノイ州、
ロックフォード)から入手可能である。
【0049】
抗体分子は、別の分子実体、典型的には標識又は治療剤(例えば、細胞傷害性作用物質又は細胞増殖抑制剤)又は部分にコンジュゲートされ得る。放射性同位体は、診断用途又は治療用途に使用され得る。そのような放射性同位体としては、限定されるものではないが、ヨウ素(131I又は125I)、イットリウム(90Y)、ルテチウム(177Lu)、アクチニウム(225Ac)、プラセオジム、アスタチン(211At)、レニウム(186Re)、ビスマス(212Bi又は213Bi)、インジウム(111In)、テクネチウム(99mTc)、リン(32P)、ロジウム(188Rh)、硫黄(35S)、炭素(14C)、トリチウム(3H)、クロム(51Cr)、塩素(36Cl)、コバルト(57Co又は58Co)、鉄(59Fe)、セレン(75Se)又はガリウム(67Ga)が挙げられる。例えば診断に使用される標識として有用な放射性同位体としては、ヨウ素(131I又は125I)、インジウム(111In)、テクネチウム(99mTc)、リン(32P)、炭素(14C)及びトリチウム(3H)又は上記列挙の治療用同位体の1つ以上が挙げられる。
【0050】
本発明は、放射標識された抗体分子及びそれを標識する方法を提供する。1つの実施形態では、抗体分子を標識する方法が開示される。この方法は、抗体分子をキレート化剤と接触させて、それによりコンジュゲートされた抗体を作製することを含む。コンジュゲートされた抗体は、放射性同位体、例えば111インジウム、90イットリウム及び177ルテチウムで放射性標識され、それにより標識された抗体分子が作製される。
【0051】
抗体分子は、治療剤にコンジュゲートされ得る。抗体は標識され得る。例えば、抗体は、ビオチン分子、酵素又は蛍光体で標識され得る。
【0052】
「isoAsp7 アミロイドβ」、「isoAsp7 Aβ」、「isoD7 Aβ」及び「isoD7 アミロイドβ」という用語は、位置7のAspが異性体化されたアミロイドβ(Aβ)ポリペプチドを指す。したがって、isoAsp7 Aβは、配列番号44を含むAβポリペプチドを指し、isoAsp7 Aβに特異的な抗体は、配列番号44に存在するL-isoAspを含むエピトープに選択的に結合することとなる。
【0053】
「KD」という用語は、解離定数を指す。好ましい実施形態では、KDは表面プラズモン共鳴又は等温滴定型熱量測定により測定される。好ましくは、KDは表面プラズモン共鳴により25℃で測定される。
【0054】
好ましい実施形態では、抗体と配列番号44との間の相互作用のKDは、該抗体と配列番号8との間の相互作用のKDよりも少なくとも100倍小さい。より好ましくは、抗体と配列番号44との間の相互作用のKDは、該抗体と配列番号8との間の相互作用のKDよりも少なくとも150倍、200倍、250倍、300倍、350倍又は400倍小さい。好ましくは、KDは表面プラズモン共鳴又は等温滴定型熱量測定により測定される。より好ましくは、KDは表面プラズモン共鳴により25℃で測定される。
【0055】
好ましい実施形態では、25℃での抗体又は抗原結合フラグメントと配列番号44との相互作用のKDは、100nM未満である。好ましくは、KDは50nM、40nM、30nM、20nM又は10nM未満である。より好ましくは、KDは50nM未満である。最も好ましくは、KDは10nM未満である。好ましくは、KDは表面プラズモン共鳴又は等温滴定型熱量測定により測定される。より好ましくは、KDは表面プラズモン共鳴により25℃で測定される。
【0056】
好ましい実施形態では、前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)を含み、前記VLはLCDR1ポリペプチド、LCDR2ポリペプチド及びLCDR3ポリペプチドを含み、VHはHCDR1ポリペプチド、HC
DR2ポリペプチド及びHCDR3ポリペプチドを含み、該ポリペプチドは、
(a)LCDR1が、KSSQSLLNSRNRKNYLA(配列番号9)であり、LCDR2が、WASTRDS(配列番号11)であり、LCDR3が、KQSYNLRT(配列番号13)であり、HCDR1が、GFSLTSYGVH(配列番号14)であり、HCDR2が、ALWASGNTDYSSTLMS(配列番号15)であり、かつHCDR3が、DRGILTGGYFDV(配列番号17)である、
(b)LCDR1が、KSSQSLFNSRTRKNYVA(配列番号27)であり、LCDR2が、WASTRES(配列番号29)であり、LCDR3が、KQSYNLRA(配列番号30)であり、HCDR1が、GFTFTDYYMS(配列番号32)であり、HCDR2が、FIRNKANGYTTEYSASVKG(配列番号34)であり、かつHCDR3が、DIPTIMDY(配列番号35)である、
(c)LCDR1が、KSSQSLLNX1RX2RKNYLA(配列番号10)であり、LCDR2が、WASTRX3S(配列番号12)であり、LCDR3が、KQSYNLRT(配列番号13)であり、HCDR1が、GFSLTSYGVH(配列番号14)であり、HCDR2が、X4LWASGX5TDYX6SX7LMS(配列番号16)であり、かつHCDR3が、DRGIX8TGGYFDV(配列番号18)であり、ここで、X1はS又はRであり、X2はN又はTであり、X3はD又はEであり、X4はA又はVであり、X5はN又はRであり、X6はS又はNであり、X7はT又はAであり、かつX8はL、T又はMである、及び、
(d)LCDR1が、KSSQX1LX2NSRTRKNYX3A(配列番号28)であり、LCDR2が、WASTRES(配列番号29)であり、LCDR3が、X4QSYNLRX5(配列番号31)であり、HCDR1が、GFTFX6DYYMX7(配列番号33)であり、HCDR2が、FIRNKANGYTTEYSASVKG(配列番号34)であり、かつHCDR3が、DIPTIMDY(配列番号35)であり、ここで、X1はS又はNであり、X2はF又はLであり、X3はV又はLであり、X4はK又はMであり、X5はA又はTであり、X6はT又はSであり、かつX7はS又はNである、
からなる群より選択される。
【0057】
好ましい実施形態では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、VL及びVHを含み、ここで、VL及びVHは、(a)配列番号19のVL及び配列番号20のVHと、(b)配列番号36のVL及び配列番号37のVHと、(c)配列番号19のVL及び配列番号37のVHと、(d)配列番号36のVL及び配列番号20のVHとからなる群より選択されるポリペプチドである。
【0058】
配列番号19は、K11中に存在するVL断片であり、以下の配列を有する:
DIVMSQSPTSLAVSAGEKVTMSCKSSQSLLNSRNRKNYLAWYQQKPGQSPK11IYWASTRDSGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYYCKQSYNLRTFGGGTKLEIK
【0059】
配列番号20は、K11中に存在するVH断片であり、以下の配列を有する:
QVQLKESGPGLVAPSQSLSITCTVSGFSLTSYGVHWVRQPPGKGLEWLGALWASGNTDYSSALMSRLSISKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAMYYCARDRGIMTGGYFDVWGAGTTVTVSS
【0060】
配列番号36は、K119中に存在するVL断片であり、以下の配列を有する:
DIVMSQSPSSLAVSAGEKATMSCKSSQSLFNSRTRKNYVAWLQQKPGQSPK11ISWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFALTITNVQAEDLAVYYCKQSYNLRAFGGGTKLEIT
【0061】
配列番号37は、K119中に存在するVH断片であり、以下の配列を有する:
EVKLVESGGGLVQPGGSLRLSCATSGFTFTDYYMSWVRQPPGKALEWLGFIRNKANGYTTEYSASVKGRFTISRDNSQSILYLQMNTLRTEDSATYYCTRDIPTIMDYWGQGTSVTVSS
【0062】
好ましい実施形態では、前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、軽鎖(LC)及び重鎖(HC)を含み、前記LC及び前記HCは、
(a)配列番号21のLC及び配列番号22のHCと、
(b)配列番号38のLC及び配列番号39のHCと、
(c)配列番号21のLC及び配列番号39のHCと、
(d)配列番号38のLC及び配列番号22のHCと、
からなる群より選択されるポリペプチドである。
【0063】
配列番号21は、K11中に存在するLCであり、以下の配列を有する:
DIVMSQSPTSLAVSAGEKVTMSCKSSQSLLNSRNRKNYLAWYQQKPGQSPK11IYWASTRDSGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYYCKQSYNLRTFGGGTKLEIKRADAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC
【0064】
配列番号22は、K11中に存在するHCであり、以下の配列を有する:
QVQLKESGPGLVAPSQSLSITCTVSGFSLTSYGVHWVRQPPGKGLEWLGALWASGNTDYSSTLMSRLSISKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAMYYCARDRGILTGGYFDVWGAGTTVTVSSAKTTPPSVYPLAPGSAAQTNSMVTLGCLVKGYFPEPVTVTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVPSSTWPSETVTCNVAHPASSTKVDKKIVPRDCGCKPCICTVPEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVDISKDDPEVQFSWFVDDVEVHTAQTQPREEQFNSTFRSVSELPIMHQDWLNGKEFKCRVNSAAFPAPIEKTISKTKGRPKAPQVYTIPPPKEQMAKDKVSLTCMITDFFPEDITVEWQWNGQPAENYKNTQPIMDTDGSYFVYSKLNVQKSNWEAGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPGK
【0065】
配列番号38は、K119中に存在するLCであり、以下の配列を有する:
DIVMSQSPSSLAVSAGEKATMSCKSSQSLFNSRTRKNYVAWLQQKPGQSPK11ISWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFALTITNVQAEDLAVYYCKQSYNLRAFGGGTKLEITRADAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC
【0066】
配列番号39は、K119中に存在するHCであり、以下の配列を有する:
EVKLVESGGGLVQPGGSLRLSCATSGFTFTDYYMSWVRQPPGKALEWLGFIRNKANGYTTEYSASVKGRFTISRDNSQSILYLQMNTLRTEDSATYYCTRDIPTIMDYWGQGTSVTVSSAKTTAPSVYPLAPVCGDTTGSSVTLGCLVKGYFPEPVTLTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVTSSTWPSQSITCNVAHPASSTKVDKKIEPRGPTIKPCPPCKCPAPNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGK
【0067】
好ましい実施形態では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、2つのLC及び2つのHCを含み、ここで、各LC及び各HCは、(a)配列番号21のLC及び配列番号22のHCと、(b)配列番号38のLC及び配列番号39のHCと、(c)配列番号21のLC及び配列番号39のHCと、(d)配列番号38のLC及び配列番号22のHCとからなる群より選択されるポリペプチドである。
【0068】
好ましい実施形態では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、LC及びHCを含むヒト化抗体又はその抗原結合フラグメントであり、ここで、LCは、配列番号53及び配列番号55から選択されるポリペプチドを含み、HCは、配列番号61及び配列番号63から選択されるポリペプチドを含む。好ましくは、LCは配列番号53を含み、HCは配列番号61を含む。
【0069】
好ましい実施形態では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、2つのLC及び2つのHCを含むヒト化抗体又はその抗原結合フラグメントであり、ここで、各LCは、配列番号53及び配列番号55から選択されるポリペプチドを含み、各HCは、配列番号61及び配列番号63から選択されるポリペプチドを含む。好ましくは、各LCは配列番号53
を含み、各HCは配列番号61を含む。
【0070】
配列番号53は、以下の配列を有する:
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLNSRNRKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRDSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCKQSYNLRTFGQGTKLEIK
【0071】
配列番号55は、以下の配列を有する:
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCKSSQSLLNSRNRKNYLAWYQQKPGQAPRLLIYWASTRDSGIPDRFSGSGSGTDYTLTISRLEPEDFAVYYCKQSYNLRTFGGGTKVEIK
【0072】
配列番号61は、以下の配列を有する:
QVQLQESGPGLVKPSGTLSLTCAVSGFSLTSYGVHWVRQPPGKGLEWLGALWASGNTDYSSTLMSRVTISVDKSKNQFSLRLSSVTAADTAVYYCARDRGILTGGYFDVWGKGTTVTVSS
【0073】
配列番号63は、以下の配列を有する:
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGFSLTSYGVHWIRQPPGKGLEWLGALWASGNTDYSSTLMSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARDRGILTGGYFDLWGRGTLVTVSS
【0074】
好ましい実施形態では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、LC及びHCを含むヒト化抗体又はその抗原結合フラグメントであり、ここで、LCは、配列番号57及び配列番号59から選択され、HCは、配列番号65及び配列番号67から選択される。好ましくは、LCは配列番号57であり、HCは配列番号65である。
【0075】
好ましい実施形態では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、2つのLC及び2つのHCを含むヒト化抗体又はその抗原結合フラグメントであり、ここで、各LCは、配列番号57及び配列番号59から選択され、各HCは、配列番号65及び配列番号67から選択される。好ましくは、各LCは配列番号57であり、各HCは配列番号65である。
【0076】
配列番号57は、以下の配列を有する:
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLNSRNRKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRDSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCKQSYNLRTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0077】
配列番号59は、以下の配列を有する:
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCKSSQSLLNSRNRKNYLAWYQQKPGQAPRLLIYWASTRDSGIPDRFSGSGSGTDYTLTISRLEPEDFAVYYCKQSYNLRTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0078】
配列番号65は、以下の配列を有する:
QVQLQESGPGLVKPSGTLSLTCAVSGFSLTSYGVHWVRQPPGKGLEWLGALWASGNTDYSSTLMSRVTISVDKSKNQFSLRLSSVTAADTAVYYCARDRGILTGGYFDVWGKGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0079】
配列番号67は、以下の配列を有する:
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGFSLTSYGVHWIRQPPGKGLEWLGALWASGNTDYSSTLMSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARDRGILTGGYFDLWGRGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGG
PSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0080】
好ましい実施形態では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、Fraunhofer-Institut fuer Zelltherapie und Immunologie IZI(Perlickstr. 1; 04103 ライプツィヒ、ドイツ)により寄託されたハイブリドーマ細胞系統:
(a)MWT 11-1-3(寄託番号:DSM ACC3314、寄託日:2016年12月1日)、又は、
(b)MWT 119-8-6(寄託番号:DSM ACC3316、寄託日:2016年12月1日)、
から取得される又は取得可能である。
【0081】
ハイブリドーマ細胞系統は、ブダペスト条約に従って寄託されており、ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ)(Inhoffenstr. 7b, 38124 ブラウンシュバイク、ドイ
ツ)で取得可能である。
【0082】
好ましい実施形態では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0083】
別の実施形態では、本発明は、循環及び組織、特に脳内のisoAsp7 Aβペプチドに結合する抗体及びその機能的フラグメントを提供する。本発明の抗体は、単量体、二量体、三量体等、又は多量体形、凝集体、オリゴマー、繊維、フィラメントの形、又はプラークの凝集形のisoAsp7 Aβペプチド分子に結合することが可能である。
【0084】
更なる実施形態では、本発明は、isoAsp7 Aβのイソアスパラギン酸修飾に特異的に結合する抗体及びその抗原結合フラグメントを提供する。
【0085】
医薬組成物
第2の態様では、本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントと薬学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0086】
本明細書で使用される場合に、「薬学的に許容可能な担体」又は「薬学的に許容可能な希釈剤」は、医薬品投与と適合可能な任意の全ての溶剤、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤を意味する。医薬品活性物質用のそのような媒体及び作用物質の使用は、当該技術分野でよく知られている。許容可能な担体、賦形剤又は安定剤は、使用される投与量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、本発明の範囲を限定するものではないが、追加の緩衝剤、保存剤、共溶媒、アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤、EDTA等のキレート化剤、金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体)、ポリエステル類等の生分解性ポリマー、ナトリウム、多価糖アルコール等の塩形成対イオン、アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸及びトレオニン等のアミノ酸、ラクチトール、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース(myoinisitose)、ミオイニシトール(myoinisitol)、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール類(例
えば、イノシトール)、ポリエチレングリコール等の有機糖類又は糖アルコール、尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール及びチオ硫酸ナトリウム等の硫黄含有還元剤、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン又は他の免疫グロブリン等の低分子量タンパク質、並びにポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーが挙げられる。
【0087】
本明細書に記載される医薬組成物は、その他の物質も含有し得る。これらの物質としては、限定されるものではないが、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、界面活性剤、増量剤、酸化防止剤及び安定化剤が挙げられる。幾つかの実施形態では、医薬組成物は凍結乾燥されていてもよい。
【0088】
本明細書で使用される「凍結保護剤」という用語は、抗体表面から優先的に排除されることにより凍結誘導ストレスに対して抗体に安定性を与える作用物質を含む。凍結保護剤は、一次乾燥及び二次乾燥並びに長期産物貯蔵の間の保護も提供し得る。凍結保護剤の非限定的な例としては、スクロース、グルコース、トレハロース、マンニトール、マンノース及びラクトース等の糖類、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン及びポリエチレングリコール等のポリマー、ポリソルベート等の界面活性剤(例えば、PS-20又はPS-80)並びにグリシン、アルギニン、ロイシン及びセリン等のアミノ酸が挙げられる。生物系における毒性が低い凍結保護剤が一般的に使用される。
【0089】
1つの実施形態では、凍結乾燥保護剤が本明細書に記載される医薬組成物に添加される。本明細書で使用される「凍結乾燥保護剤」という用語は、非晶質のガラス質マトリックスを提供し、水素結合により抗体表面と結合することで、乾燥過程の間に除去される水分子と置き換えることにより、凍結乾燥又は脱水過程(一次凍結乾燥サイクル及び二次凍結乾燥サイクル)の間に抗体に安定性を与える作用物質を含む。凍結乾燥保護剤は、凍結乾燥サイクルの間の産物の分解を最小限にして長期産物安定性を改善するのを助ける。凍結乾燥保護剤の非限定的な例としては、スクロース又はトレハロース等の糖類、グルタミン酸モノナトリウム、非結晶性グリシン又はヒスチジン等のアミノ酸、ベタイン等のメチルアミン、硫酸マグネシウム等のリオトロピック塩、三価以上の糖アルコール、例えばグリセリン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトール等のポリオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プルロニック類及びそれらの組み合わせが挙げられる。医薬組成物に添加される凍結乾燥保護剤の量は一般に、医薬組成物が凍結乾燥されたときに、許容することができない株の分解をもたらさない量である。
【0090】
幾つかの実施形態では、増量剤が医薬組成物に含まれる。本明細書で使用される「増量剤」という用語は、医薬製品と直接的に相互作用せずに凍結乾燥産物の構造をもたらす作用物質を含む。薬学的に洗練されたケークを提供することに加えて、増量剤はまた、崩壊温度の変更、凍結融解保護の提供及び長期貯蔵にわたる株安定性の向上に関して有用な品質を与えることもできる。増量剤の非限定的な例としては、マンニトール、グリシン、ラクトース及びスクロースが挙げられる。増量剤は結晶性(例えば、グリシン、マンニトール又は塩化ナトリウム)又は非晶質(例えば、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン)であってもよく、一般的に製剤中で0.5%~10%の量で使用される。
【0091】
Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に記載さ
れるようなその他の薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は安定剤が本明細書に記載される医薬組成物中に含まれていてもよいが、但し、それらは医薬組成物の所望の特性に悪影響を及ぼさないものとする。本明細書で使用される場合に、「薬学的に許容可能な担体」は、医薬品投与と適合可能な任意の全ての溶剤、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤を意味する。医薬品作用物質用のそのような媒体及び作用物質の使用は、当該技術分野でよく知られている。許容可能な担体、賦形剤又は安定剤は、使用される投与量及び濃度で、レシピエントに対して非毒性であり、追加の緩衝剤、保存剤、共溶媒、アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤、EDTA等のキレート化剤、金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体)、ポリエステル類等の生分解性ポリマー、ナトリウム、多価糖アルコール等の塩形成対イオン、アラニン、グリシン、グル
タミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸及びトレオニン等のアミノ酸、ラクチトール、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース、ミオイニシトール、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えば、イノシトール)、ポリエチレングリコール等の有機糖類又は糖アルコール、尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール及びチオ硫酸ナトリウム等の硫黄含有還元剤、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン又は他の免疫グロブリン等の低分子量タンパク質並びにポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーを含む。
【0092】
医薬組成物は、経口投与、舌下投与、バッカル投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、腹腔内投与、結膜投与、直腸投与、経皮投与、髄腔内投与、局所投与及び/又は吸入媒介投与用に調製され得る。好ましい実施形態では、医薬組成物は、静脈内投与、筋肉内投与、結膜投与、経皮投与、腹腔内投与及び/又は皮下投与に適した溶液であり得る。代替的な実施形態では、医薬組成物は、髄腔内投与に適したゲル剤又は液剤であり得る。
【0093】
医薬組成物は、技術水準において知られる一般的な賦形剤及び担体を更に含み得る。固形医薬組成物の場合に、例えば医薬品グレードのマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウム等を含む慣用の非毒性の固形担体が使用され得る。注射用の溶液の場合に、医薬組成物は、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、界面活性剤、増量剤、酸化防止剤、安定化剤及び薬学的に許容可能な担体を更に含み得る。エアロゾル投与の場合に、医薬組成物は一般的に、界面活性剤及び噴射剤と一緒に微細化された形で供給される。界面活性剤は、当然ながら非毒性であり、一般的に噴射剤中に可溶性である。そのような作用物質の代表例は、6個~22個の炭素原子を含む脂肪酸、例えばカプロン酸、オクタン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、オレステリン酸(olesteric acid)及びオレイン酸と脂肪族多価アルコール又はその環状無水物とのエステル又は部分エステルである。混合グリセリド又は天然グリセリド等の混合エステルが使用され得る。必要に応じて、例えば鼻腔内送達用のレシチンのような担体も含まれ得る。坐剤の場合に、従来の結合剤及び担体としては、例えば、ポリアルキレングリコール類又はトリグリセリドが挙げられ得る。
【0094】
好ましい実施形態では、医薬組成物は、ドネペジル、ガランタミン(正:galantamine
)、メマンチン、リバスチグミン、β-セクレターゼ阻害剤、γ-セクレターゼモジュレーター、アデュカヌマブ、バピネオズマブ、クレネズマブ、ガンテネルマブ、ソラネズマブのようなpan-Aβ特異的抗体の群から選択される追加の抗体及び/又は翻訳後リン酸化若しくはニトロ化されたAβペプチドに特異性を有する抗体を更に含む。
【0095】
医学的利用
第3の態様では、本発明は、医薬として使用される、本発明の抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は本発明の医薬組成物を提供する。第4の態様では、本発明は、神経変性疾患の治療及び/又は予防に使用される、本発明の抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は本発明の医薬組成物を提供する。
【0096】
本出願で使用される「治療」及び「療法」という用語は、疾患及び/又は症状を治癒及び/又は緩和する目的と共に健康上の問題の改善を目標として使用される一連の衛生的手段、薬理学的手段、外科的手段及び/又は物理的手段を指す。「治療」及び「療法」という用語には、予防法及び治癒法が含まれる。それというのも、両者とも個体又は動物の健康の維持及び/又は回復に向けられるからである。症状、疾患及び廃疾の原因にかかわらず、健康上の問題を軽減及び/又は治癒するために適した医薬の投与は、本出願の文脈内
の治療又は療法の形として解釈されるべきである。
【0097】
本出願で使用される「予防」という用語は、疾患及び/又は症状の発病及び/又は発症を防ぐために使用される一連の衛生的手段、薬理学的手段、外科的手段及び/又は物理的手段を指す。「予防」という用語は未然防止法を包含する。それというのも、未然防止法は動物又は個体の健康を維持するために使用されるからである。
【0098】
「治療的有効量」という用語は、治療効果を有し、神経疾患を緩和及び/又は治癒することが可能な抗体又はそのフラグメントの量を指す。
【0099】
「個体」、「患者」又は「被験体」という用語は、本出願において区別なく使用され、決して限定することを意図するものではない。「個体」、「患者」又は「被験体」は、任意の年齢、性別及び身体状態であってもよい。
【0100】
本発明の文脈において、「神経変性障害」又は「神経変性疾患」という用語は、進行性神経系機能不全を特徴とする任意の遺伝性及び/又は孤発性の状態と解釈される。これらの障害はしばしば、神経系の冒された中枢構造又は末梢構造の萎縮と関連している。好ましい実施形態では、神経変性疾患はAβ関連疾患である。好ましくは、神経変性疾患は、isoAsp7 Aβを含むプラークの形成と関連している。
【0101】
特定の実施形態では、生体液及び組織中のisoAsp7 Aβペプチドに結合し、それを取り除く又は除去することが可能な本発明の抗体は、isoAsp7 Aβ含有のプラーク、例えば脳内の拡散斑、老人斑及び脳血管斑の形成と関連する病態の予防及び/又は治療のために有用である。
【0102】
本発明の抗体のその免疫学的に反応性のフラグメントを含む本発明の抗体の投与により、上記プラーク又はその他の生物学的複合体からisoAsp7 Aβは取り除かれ又は除去され得る。したがって、本発明のヒト化抗体は、循環、他の体液において容易に輸送され、そして上述のプラーク及び/又はその他の生物学的複合体が形成される部位又はisoAsp7 Aβが損傷作用を示す他の場所に容易に輸送される。
【0103】
さらに、本発明の抗体のその免疫学的に反応性のフラグメントを含む本発明の抗体によるプラーク又はその他の生物学的複合体からのisoAsp7 Aβの除去は、プラークの不溶性形の可溶化をもたらすため、脳組織等の冒された組織から完全なプラークが除去される。これはまた神経変性疾患、例えば軽度認知障害(MCI)、例えば孤発性アルツハイマー病(SAD)又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)等のような家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のような臨床的又は前臨床的アルツハイマー病(AD)、ダウン症候群における神経変性及び臨床的又は前臨床的CAAと診断された患者における認知の改善をもたらし得る。
【0104】
好ましい実施形態では、本発明は、神経変性障害を治療及び/又は予防する方法を提供する。好ましくは、該方法は、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントを患者に投与することを含む。
【0105】
好ましい実施形態では、本発明は、アルツハイマー病を治療する方法を提供する。好ましくは、該方法は、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントを患者に投与することを含む。
【0106】
循環又は他の体液における本発明の抗体又は抗原結合フラグメントのisoAsp7 Aβへの結合は、循環形又は可溶性形のisoAsp7 Aβの除去を更にもたらし得る
。isoAsp7 Aβは、その他の修飾又は非修飾Aβペプチドに対して高い親和性を有するため、アミロイドプラーク等のオリゴマー構造及び超分子構造の形成がもたらされる。特に、これらのオリゴマー構造は神経毒性が高いことが分かっている。オリゴマー構造の形成は、細胞損傷及び神経細胞の死をもたらす。したがって、循環型又は可溶性型のisoAsp7のAβ又は更にはisoAsp7 Aβを含むオリゴマーの除去は、細胞損傷及び/又は神経毒性の予防につながる。したがって、本発明はまた、神経変性疾患、例えば軽度認知障害(MCI)、例えば孤発性アルツハイマー病(SAD)又は家族性英国型認知症(FBD)及び家族性デンマーク型認知症(FDD)等のような家族性アルツハイマー型認知症(FAD)のような臨床的又は前臨床的アルツハイマー病(AD)、ダウン症候群における神経変性及び臨床的又は前臨床的CAAを予防する方法を提供する。
【0107】
本発明は、アミロイド様タンパク質、特にisoAsp7のAβに基づく又はそれと関連するその他の疾患、例えば進行性核上性麻痺、多発性硬化症、クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症糖尿病に関連した認知症、老人性心臓アミロイドーシス及び黄斑変性を含むその他の疾患を予防及び/又は治療する方法を更に提供する。
【0108】
好ましい実施形態では、前記神経変性疾患は、軽度認知障害、臨床的又は前臨床的アルツハイマー病、ダウン症候群における神経変性、臨床的及び前臨床的アミロイド血管症、進行性核上性麻痺、多発性硬化症、クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症糖尿病に関連した認知症、老人性心臓アミロイドーシス及び筋変性からなるリストより選択される。好ましくは、該疾患は臨床的又は前臨床的アルツハイマー病である。
【0109】
ハイブリドーマ細胞系統
第5の態様では、本発明は、以下のように寄託されたハイブリドーマ細胞系統:
(a)MWT 11-1-3(寄託番号:DSM ACC3314、寄託日:2016年12月1日)、及び/又は、
(b)MWT 119-8-6(寄託番号:DSM ACC3316、寄託日:2016年12月1日)、
を提供する。
【0110】
MWT 11-1-3は、モノクローナル抗体K11を分泌し、MWT 119-8-6は、モノクローナル抗体K119を分泌する。
【0111】
代替的な態様では、本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントのいずれか一つを発現し得るハイブリドーマ細胞系統を提供する。
【0112】
本発明はまた、(i)本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸、(ii)該核酸を含むベクター並びに(iii)該核酸及び/又は該ベクターを含む細胞を提供する。好ましくは、細胞は哺乳動物細胞である。
【0113】
診断
第6の態様では、本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントの、神経変性疾患の診断及び/又は予後診断のための使用を提供する。
【0114】
好ましい実施形態では、抗体又は抗原結合フラグメントは、以前に論じられた任意の方法で誘導体化される。例えば、抗体をハイドロジェンペルオキシダーゼに融合させて、ELISAで使用することで、神経変性疾患を診断及び/又は予後診断することができる。
【0115】
本発明は更に、生物学的試料、例えば髄液(脳脊髄液)又は血清試料、好ましくは血清試料又は組織試料におけるAβ変異体、特にisoAsp7 Aβの定量的測定を可能にする高感度であると共に頑健な検出技術における、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントの使用を想定している。これは、血液中のこれらのisoAsp7 Aβペプチドの存在量が少ないことを考慮すれば非常に大きな課題である。しかしながら、そのような検出技術が利用可能な状態にあることは、薬物スクリーニング及び薬物開発プログラムにおける小分子阻害剤の有効性を研究するための前提条件である。
【0116】
第7の態様では、本発明は、単離された試料を本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントと接触させる工程を含むL-isoAsp7 Aβを検出する方法を提供する。
【0117】
上記方法は、直接的ELISA又は間接的ELISA、凝集アッセイ、免疫クロマトグラフィーアッセイ、放射免疫アッセイ、プルダウンアッセイ、免疫蛍光アッセイ又は免疫染色アッセイの方法工程を含み得る。
【0118】
好ましい実施形態では、上記方法は、(a)サンドイッチイムノアッセイの使用によりL-isoAsp7含有ペプチドの量を定量化することを含み、ここで、固定化される捕捉抗体又はその抗原結合フラグメントは、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントであり、検出抗体は、配列番号1を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0119】
好ましい実施形態では、単離された試料は、単離された血清、髄液/脳脊髄液若しくは別の体液又は組織試料である。血清試料が好ましい。
【0120】
第8の態様では、本発明は、単離された試料における配列番号1の位置7にL-isoAspを含むAβペプチドのパーセンテージを決定する方法を提供する。好ましい実施形態では、該方法は、(a)サンドイッチイムノアッセイの使用によりL-isoAsp含有ペプチドの量を定量化することと、
ここで、固定化された捕捉抗体又はその抗原結合フラグメントは、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントであり、検出抗体は、配列番号1を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントである;
(b)サンドイッチイムノアッセイの使用によりAβの総量を定量化することと、
ここで、固定化された捕捉抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号1を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントであり、検出抗体は、配列番号1を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントである;
(c)工程(a)及び(b)において得られた値を使用することによりパーセンテージ値を決定することと、
を含む。
【0121】
サンドイッチイムノアッセイは、当該技術分野において一般的である。利用可能な文献が沢山存在する。例えば、Cox KL, Devanarayan V, Kriauciunas A, et al. Immunoassay
Methods. 2012 May 1 [Updated 2014 Dec 24]. In: Sittampalam GS, Coussens NP, Brimacombe K, et al., editors. Assay Guidance Manual [Internet]. Bethesda (MD): Eli
Lilly & Company and the National Center for Advancing Translational Sciences; 2004。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK92434/から入手可能である。好ましい実
施形態では、サンドイッチイムノアッセイは、直接的ELISA又は間接的ELISAである。
【0122】
「特異的に結合する」という用語は、非標的化合物よりも少なくとも2倍高い親和性、
例えば少なくとも4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、25倍、50倍又は100倍高い親和性で標的に結合する分子(例えば、抗体又は抗体フラグメント)を指す。
【0123】
好ましい実施形態では、配列番号1を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号1の残基1~残基6及び残基8~残基42により包含される位置のいずれか一つに見られるエピトープに結合する。言い換えれば、エピトープは、配列番号1の位置7にアスパラギン酸を含まない。
【0124】
本発明はまた、以下の項目を含む:
[1]isoAsp7アミロイドβ(Aβ)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントであって、前記抗体と配列番号44との間の相互作用のKDが、前記抗体と配列番号8との間の相互作用のKDよりも少なくとも10倍小さい、抗体又はその抗原結合フラグメント。
[2]前記抗体と配列番号44との間の相互作用のKDが、前記抗体と配列番号8との間の相互作用のKDよりも少なくとも100倍小さい、項目[1]に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[3]前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)を含み、前記VLはLCDR1ポリペプチド、LCDR2ポリペプチド及びLCDR3ポリペプチドを含み、かつVHはHCDR1ポリペプチド、HCDR2ポリペプチド及びHCDR3ポリペプチドを含み、該ポリペプチドは、
(a)LCDR1が、KSSQSLLNSRNRKNYLA(配列番号9)であり、LCDR2が、WASTRDS(配列番号11)であり、LCDR3が、KQSYNLRT(配列番号13)であり、HCDR1が、GFSLTSYGVH(配列番号14)であり、HCDR2が、ALWASGNTDYSSTLMS(配列番号15)であり、かつHCDR3が、DRGILTGGYFDV(配列番号17)である、
(b)LCDR1が、KSSQSLFNSRTRKNYVA(配列番号27)であり、LCDR2が、WASTRES(配列番号29)であり、LCDR3が、KQSYNLRA(配列番号30)であり、HCDR1が、GFTFTDYYMS(配列番号32)であり、HCDR2が、FIRNKANGYTTEYSASVKG(配列番号34)であり、かつHCDR3が、DIPTIMDY(配列番号35)である、
(c)LCDR1が、KSSQSLLNX1RX2RKNYLA(配列番号10)であり、LCDR2が、WASTRX3S(配列番号12)であり、LCDR3が、KQSYNLRT(配列番号13)であり、HCDR1が、GFSLTSYGVH(配列番号14)であり、HCDR2が、X4LWASGX5TDYX6SX7LMS(配列番号16)であり、かつHCDR3が、DRGIX8TGGYFDV(配列番号18)であり、ここで、X1はS又はRであり、X2はN又はTであり、X3はD又はEであり、X4はA又はVであり、X5はN又はRであり、X6はS又はNであり、X7はT又はAであり、かつX8はL、T又はMである、及び
(d)LCDR1が、KSSQX1LX2NSRTRKNYX3A(配列番号28)であり、LCDR2が、WASTRES(配列番号29)であり、LCDR3が、X4QSYNLRX5(配列番号31)であり、HCDR1が、GFTFX6DYYMX7(配列番号33)であり、HCDR2が、FIRNKANGYTTEYSASVKG(配列番号34)であり、かつHCDR3が、DIPTIMDY(配列番号35)であり、ここで、X1はS又はNであり、X2はF又はLであり、X3はV又はLであり、X4はK又はMであり、X5はA又はTであり、X6はT又はSであり、かつX7はS又はNである、
からなる群より選択される、項目[1]又は[2]に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[4]前記抗体又はその抗原結合フラグメントはVL及びVHを含み、前記VL及び前記VHは、
(a)配列番号19のVL及び配列番号20のVHと、
(b)配列番号36のVL及び配列番号37のVHと、
(c)配列番号19のVL及び配列番号37のVHと、
(d)配列番号36のVL及び配列番号20のVHと、
からなる群より選択されるポリペプチドである、項目[1]~[3]のいずれか一つに記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[5]前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、軽鎖(LC)及び重鎖(HC)を含み、前記LC及び前記HCは、
(a)配列番号21のLC及び配列番号22のHCと、
(b)配列番号38のLC及び配列番号39のHCと、
(c)配列番号21のLC及び配列番号39のHCと、
(d)配列番号38のLC及び配列番号22のHCと、
からなる群より選択されるポリペプチドである、項目[1]~[4]のいずれか一つに記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[6]前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、2つのLC及び2つのHCを含み、各LC及び各HCは、
(a)配列番号21のLC及び配列番号22のHCと、
(b)配列番号38のLC及び配列番号39のHCと、
(c)配列番号21のLC及び配列番号39のHCと、
(d)配列番号38のLC及び配列番号22のHCと、
からなる群より選択されるポリペプチドである、項目[5]に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[7]上記抗体又はその抗原結合フラグメントは、ハイブリドーマ細胞系統:
(a)MWT 11-1-3(寄託番号:DSM ACC3314、寄託日:2016年12月1日)、又は、
(b)MWT 119-8-6(寄託番号:DSM ACC3316、寄託日:2016年12月1日)、
から取得される又は取得可能である、項目[1]~[6]のいずれか一つに記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[8]前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントである、項目[1]~[7]のいずれか一つに記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[9]項目[1]~[8]のいずれか一つに記載の抗体又はその抗原結合フラグメントと、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む医薬組成物。
[10]前記組成物は、ドネペジル、ガランタミン、メマンチン、リバスチグミン、β-セクレターゼ阻害剤、γ-セクレターゼモジュレーター、アデュカヌマブ、バピネオズマブ、クレネズマブ、ガンテネルマブ、ソラネズマブのようなpan-Aβ特異的抗体の群から選択される追加の抗体及び/又は翻訳後リン酸化若しくはニトロ化されたAβペプチドに特異性を有する抗体を更に含む、項目[9]に記載の医薬組成物。
[11]医薬として使用される、項目[1]~[8]のいずれか一つに記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は項目[9]若しくは[10]に記載の医薬組成物。
[12]神経変性疾患の治療及び/又は予防に使用される、項目[1]~[8]のいずれか一つに記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は項目[9]若しくは[10]に記載の医薬組成物。
[13]前記神経変性疾患は、軽度認知障害、臨床的又は前臨床的アルツハイマー病、ダウン症候群における神経変性、臨床的及び前臨床的アミロイド血管症、進行性核上性麻痺、多発性硬化症、クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症糖尿病に関連した認知症、老人性心臓アミロイドーシス及び筋変性からなるリストより選択される、項目[12]に記載の使用のための抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は医薬組成物。
[14]前記神経変性疾患は、臨床的又は前臨床的アルツハイマー病である、項目[12]又は[13]に記載の使用のための抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は医薬組成物。
[15]以下の通りに寄託されたハイブリドーマ細胞系統:
(a)MWT 11-1-3(寄託番号:DSM ACC3314、寄託日:2016年12月1日)、及び/又は、
(b)MWT 119-8-6(寄託番号:DSM ACC3316、寄託日:2016年12月1日)。
[16]神経変性疾患の診断及び/又は予後診断のための、請求項[1]~[8]のいずれか一つに記載の抗体又はその抗原結合フラグメントの使用。
[17]isoAsp7 Aβを検出する方法であって、単離された試料を請求項[1]~[8]のいずれか一つに記載の抗体又はその抗原結合フラグメントと接触させる工程を含む、方法。
【実施例0125】
実施例1:isoAsp7-Aβに対するモノクローナル抗体の調製及びスクリーニング
目的は、isoAsp7-Aβ及び位置7にイソアスパラギン酸を含むそのより短いペプチドと反応するが、位置7にアスパラギン酸を有する同じ分子とは反応しないモノクローナル抗体を作製することであった。
【0126】
免疫化のために、ペプチドisoD7-Aβ(1-12)Cys(配列番号3)及びisoD7-Aβ(5-9)repCys(配列番号4)の混合物を使用した。末端システイン残基のスルフヒドリル基を使用して、ペプチドを担体としての細菌トランスグルタミナーゼ(BTG)にコンジュゲートさせた。BTGを、架橋剤SMPH(スクシンイミジル-6-[(β-マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート])を使用して活性化させた。
【0127】
モノクローナル抗体の作製のために、8週齢の雌のBALB/cマウスを、ペプチド-BTGコンジュゲートで免疫化した。両方の抗原を等容量のフロイント完全アジュバント(初回刺激)又は不完全アジュバント(追加免疫)中で乳化させることにより調製された油中水エマルジョンで、マウスを腹腔内免疫化した。
【0128】
マウスが血清中で十分な抗体力価を示した後に、マウスを頸部脱臼により屠殺した。脾臓を無菌的に摘出し、プールし、ホモジナイズし、ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ GmbH社、ブラウンシュバイク)から購入した骨髄腫細胞系統SP2/0-Agl4
を使用した細胞融合により不死化させた。
【0129】
得られたハイブリドーマクローンを、配列番号3-BSAコンジュゲート、配列番号4-BSAコンジュゲート、isoD7-Aβ(1-18)-PEG-ビオチン(配列番号5)に結合するが、野生型ペプチドAβ(1-18)-PEG-ビオチン(配列番号6)に結合しないそれらの能力に従ってスクリーニングした。BSAにコンジュゲートされた抗原のスクリーニングは、直接酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を介して行った。ペプチドをストレプトアビジン被覆プレートに適用した後に直接ELISAを行うことにより、ビオチン化抗原への結合を分析した。
【0130】
安定的な抗体産生ハイブリドーマを選択し、続いてハイブリドーマのモノクローナル性を保証するために、限外希釈により再度クローニングを行った。ハイブリドーマのサブクローンを、再びELISAによりスクリーニングし、凍結保存、アイソタイピング及びマイコプラズマ試験に最良のクローンを選択した。
【0131】
実施例2:ドットブロット分析によるモノクローナル抗体のキャラクタリゼーション
単純なドットブロットプロトコルを達成することで、抗体の特異性及び交差反応性についての一般概念が得られた。ヒトAβに基づく以下のペプチド2μlを、漸減濃度(200μM~0.02μM)でニトロセルロースメンブレン上にスポッティングした:1 -
isoD7-Aβ(1-17)(配列番号7);2 - isoD7-Aβ(5-9)repCys(配列番号4);3 - Aβ(1-18)(配列番号8);4 - isoD7-Aβ(1-18)(配列番号44)。分析のために、室温で穏やかに振盪させながらTBST-M(TBST(トリス緩衝生理食塩水+0.05%(容量/容量)のTween-20)+5%(重量/容量)のスキムミルク)で、メンブレンを1時間ブロッキングした。その後に、メンブレンを、等容量のTBST-Mにて1μg/mlに希釈された抗体K11、K119及び6E10と一緒に4℃で3時間から一晩インキュベートした。アルカリ性ホスファターゼとコンジュゲートされた抗マウス二次抗体を、標準的な手順に従ってシグナル検出のために使用した。
【0132】
結果:
図1A及び
図1Bに示されるように、K11及びK119は、Aβペプチドの位置7のL-イソアスパラギン酸に特異的である(レーン4)。本発明者らのisoAsp7-Aβ抗体とは対照的に、6E10はAβ(1-18)に特異的であり、isoAsp7修飾Aβペプチドを認識しない。K11の場合には、対応するD-イソアスパラギン酸を有するペプチドの最高濃度で、弱い反応性しか観察されなかった(レーン1)。位置7にアスパラギン酸を含む野生型ペプチド(レーン3)は認識されなかった。IsoD7 Aβ(1-18)ペプチド濃度が0.5μMまで下がると、K11により明らかに検出されたが、K119では検出されなかった。
【0133】
実施例3:SPR分析によるモノクローナル抗体のキャラクタリゼーション
方法:
種々のAβ種に対するK11及びK119の結合親和性を、25℃の温度でBiacore 3000を使用して測定した。分析する抗体K11及びK119をCM5センサーチップ(GE Healthcare社、製品コードBR100012)に結合させるために、約15
000RU~20000RUのヤギ抗マウスIgG(Thermo Fisher Scientific社、PA1 28555)をまず固定化した。抗マウスIgGを固定化するために、センサーチップのカルボキシメチル化デキストラン表面を、0.1MのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)と0.4MのN-エチル-N’-(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)とを1:1で混合することにより活性化させた。EDC/NHSを、10μl/分の流速でセンサーチップに10分間適用した。ヤギ抗マウスIgGを、10mMの酢酸ナトリウム(pH5.5)にて50μg/mlに希釈し、10μl/分の流速で3分間にわたり2回注入した。1Mのエタノールアミン(pH8.5)で10μl/分の流速で7分間にわたり2回不活性化させた後に、0.1Mのグリシン(pH1.7)を、30μl/分の流速でセンサーチップに3分間適用し、続いてHBS-EPバッファー(GE Healthcare社、製品コードBR100188)による洗浄工程を行った。
【0134】
約2000RUの抗isoAsp7-Aβ抗体の結合を、10μl/分の流速で行った。これを達成するために、抗体をHBS-EPバッファーにて25μg/mlに希釈し、センサーチップに適用した後に、RUシグナルが一定になるまでHBS-EPで洗浄した。
【0135】
速度定数を、Aβペプチドを種々の濃度で適用することにより測定し、組み合わされたデータセットからBIAevaluationソフトウェア(Biacore AB社)の使用により計算した(
図2A及び
図3)。
【0136】
結果:
表1は、K11及びK119によるisoD7-Aβ(1-18)の結合について得られた速度定数を示している。K11は、L-isoAsp含有抗原isoD7-Aβ(1-18)(配列番号44)に6.3nMのKD値で結合する。K119は、その抗原に対してより低い親和性を有する(68.5nMのKD値)。D-イソアスパラギン酸異性体を含むペプチド誘導体isod7-Aβ(1-17)(配列番号7)及び適切な野生型配列Aβ(1-18)(配列番号8)への結合に関しては、ずっと高いKD値が得られた(表2)。両方の抗体は、L-イソアスパラギン酸7で修飾されたAβペプチドに対する強力な抗原特異性を共有する。
【0137】
表3は、K11によるisoAsp7-Aβの結合が、ペプチドの長さに依存しないことを示している。さらに、AD患者のアミロイドプラークに見られる多くの翻訳後修飾Aβペプチドを試験した。驚くべきことに、N末端が位置3のL-ピログルタミン酸のみからなる場合(配列番号48)に、K11によるisoD7-Aβペプチドの結合は増強される。
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
実施例4:等温滴定型熱量測定(ITC)によるモノクローナル抗体のキャラクタリゼーション
SPR分析により得られたKD値を検証し、更にK11のisoD7-Aβ(1-18)(配列番号44)、Aβ(1-18)(配列番号8)及びisod7-Aβ(1-17)(配列番号7)への結合カイネティクスをより詳細に分析するために、会合定数KA、反応エンタルピーΔH及び反応エントロピーΔSを、VP-ITCマイクロ熱量計(MicroCal社)を使用して測定した。
【0142】
抗体を、ITCバッファー(25mMのKH2PO4、25mMのNa2HPO4、150mMのNaCl、1mMのEDTA、pH7.4)に対して4℃で一晩透析した。凍結乾燥したペプチドをITCバッファー中に溶解して、50μM~240μMの濃度にした。その後に抗体及びペプチドの正確な濃度を、280nmでの吸光度及び各吸光係数から計算した。5分毎の抗体溶液中への1×2μl及び21×14μlの抗原の滴定により、結合熱を25℃で記録した。Aβペプチドの希釈に起因する熱発生を評価するために、これらの値を、規定の条件及び機器設定を使用して透析バッファー中へのペプチドの滴定によって測定した。データのプロットは、MicroCal社のORIGINソフトウェアによって行った。計算された結合熱を、抗原の希釈に起因する熱によって補正した。得られた曲線を「One Set of Sites」結合モデルによってフィッティングした。このモデルを使用して、化学量論、会合定数、反応エンタルピー及び反応エントロピーを計算することができる。
【0143】
結果:
図4及び
図5における上部のグラフは、抗体による熱量測定セル中での抗原の滴定から得られる滴定曲線を示す(K11については
図4を、K119については
図5を参照)。下部のグラフは、モル比に対する、注入物1モルにつき正規化された積算された熱パルスを示している。SPR分析とは対照的に、K11のAβ(1-18)(配列番号8)及びisod7-Aβ(1-17)(配列番号7)への結合は検出されなかった。
【0144】
表4には、isoD7-Aβ(1-18)(配列番号44)に結合するK11及びK119に関する化学量論、会合定数、反応エンタルピー及び反応エントロピーについての計算値の一覧が示されている。異なる方法から受け取ったカイネティクスパラメーターを比較するために、SPR分析及びITCによって得られたKD値が示されている。
【0145】
【0146】
実施例5:マウス脳試料の免疫組織化学(IHC)染色
アミロイドプラーク中のisoAsp7-Aβ修飾の同定のための本発明者らの抗体の用法を検証するために、異なる齢の5xFADマウスモデルの動物から脳組織の切片を調製した。5xFADトランスジェニックマウスは、スウェーデン型(K670N、M671L)、フロリダ型(I716V)及びロンドン型(V717I)のFAD突然変異を有する突然変異ヒトAPP(695)を、2つのFAD突然変異のM146L及びL286Vを有するヒトPS1と一緒に過剰発現する。これらの突然変異の結果として、それらのマウスはアルツハイマー病の表現型を発生し始める。該マウスは、Oakleyら(Oakley et al., (2006) J. Neurosci. 26(40):10129-40)によって初めて記載され、それ以来数多くの薬理学的評価において使用されている(Ardestani et al., (2017) Neuropharmacology
116:371-386、Ano et al., (2017) J. Biol. Chem. 292(9):3720-3728、Cha et al., (2017) Stem Cells Transl. Med. 6(1):293-305、Torika et al., (2017) Brain Behav. Immun. 64:80-90、MacPherson et al., (2017) Neurobiol. Dis. 102:81-95)。雄及び雌の5xFADマウスをペントバルビタールナトリウムで麻酔した後に、脳を取り出した。脳をパラホルムアルデヒドで固定し、0.1Mのリン酸緩衝液中の30%(重量/容量)のスクロース中で3日間インキュベートし、メチルブタン中で急速凍結させて、更に使用するまで-20℃で貯蔵した。凍結させた脳を、Cryostar NX70を使用することにより30μm厚の切片にスライスした。免疫染色を、HSUらにより記載されるアビジ
ンビオチンペルオキシダーゼ複合体(ABC)法(HSU et al (1981) J Histochem Cytochem. 29(4):577-80)によって行った。TBSで5分間にわたり3回洗浄した後に、脳切
片を1%(容量/容量)のH2O2、60%(容量/容量)のメタノール中で30分間インキュベートした後に、別の洗浄工程とブロッキング溶液(5%(容量/容量)のヤギ血清、TBS中の2.3%(容量/容量)のM.O.M.(商標)ブロッキング試薬に加えて0.3%(容量/容量)のTriton-X100)中での30分間のインキュベートを行った。5%(容量/容量)のヤギ血清、TBS中の0.1%(容量/容量)のTriton-X100中の2μg/mlの一次抗体K11、K119又は6E10(Hiss Diagnostics社)と一緒に4℃で一晩インキュベートを行った。TBSで5分間にわたり3回洗浄した後に、ビオチン化ヤギ抗マウスIgG(Thermo Fisher Scientific社)を、2%のBSAを含むTBSにて1:1000で希釈し、試料と一緒に60分間インキュベートした。ExtrAvidin-ペルオキシダーゼ(Sigma-Aldrich社)を、3回の5分間
の洗浄工程の後に2%(容量/容量)のBSAを含むTBSにて1:1000で添加し、60分間インキュベートし、その後にTBSで5分間にわたり3回洗浄し、更に0.05MのTris-HCl(pH7.6)で5分間の洗浄工程を行った。発色基質の3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)(0.05%(重量/容量)のDAB、0.05MのTris-HCl(pH7.6)中の0.015%(容量/容量)のH2O2)を4分間~7分間にわたり添加した。
【0147】
結果:
アミロイドプラーク形成は、生後約6か月で5xFADマウスにおいて生ずる(
図6C及び
図6H)。3ヶ月齢の動物において、AβのN末端に特異的な抗体6E10は、皮質(
図6G、矢印1)、錐体細胞層(
図6G、矢印2)及び扁桃体基底外側部(
図6G、矢印3)における細胞と反応する。これは恐らく、合成されたばかりのAβ、つまりAPPの形の膜結合型Aβ種の染色によるものである。6E10とは対照的に、isoAsp7-Aβ特異的抗体K11は、沈着Aβ種と老化Aβ種とのみからなると思われる細胞外プラークのみを染色する。6E10及びK11の陽性染色により示されるアミロイドプラークの量及び増殖は、5xFADマウスの加齢の間に更に進行する(
図6C~
図6E、
図6H~
図6J)。野生型マウスの脳にはisoAsp7-Aβ染色は存在しないが(
図6A)、抗体6E10は、異なる脳領域に分布する単一のAβ凝集体と反応する(
図6F)。
【0148】
図7は、K119(A)、K11(B)、6E10(C)及び二次抗体なし(D)の12ヶ月齢の5xFADマウスの脳切片の比較染色を示している。さらに、野生型の脳切片においては、抗体K119によるisoAsp7-Aβ染色は存在しない(E)。K119は、K11と同様の染色結果を示す。
【0149】
実施例6:isoAsp7-Aβ特異的ELISAにおけるK11の適用
方法:
生物学的試料中のisoD7-Aβの量を測定するために、間接的なサンドイッチELISAを確立した。したがって、K11をPBSにて2μg/mlに希釈し、ポリスチレン製96ウェルマイクロタイタープレート上に4℃で一晩固定化した。ELISA Blocker(Thermo Fisher Scientific社)を用いて4℃で2時間ブロッキングを行った。標準曲線の作成のために、合成isoD7-Aβ(1-30)を、ELISA Blocker+Tween(Thermo Fisher Scientific社)で150pg/mlから1.6pg/mlまで連続希釈し、2連でウェルに加えた。ELISA Blocker+Tweenで満たされた2つのウェルは、標準曲線値0pg/mlに相当する。室温で2時間のインキュベート期間後に、プレートをTBS-Tで6回洗浄した。結合されたisoD7-Aβ種の検出のために、HRPにコンジュゲートされた抗Aβ抗体クローン4G8(Biolegends社)を、ELISA Blocker+Tweenにて1μg/mlの最終濃度に希釈し、試料と一緒に4℃で1時間インキュベートした。TBS-Tで3回の洗浄工程後に、市販のHRP基質TMB(SureBlue Reserve TMBマイクロウェルペルオキシダーゼ基質(1成分)、KPL社)による呈色反応を行い(暗所、室温で3
0分間インキュベートする)、その後に1.2NのH2SO4を添加することにより停止させた。450nm/540nmでの吸光度を、Tecan Sunriseプレートリーダーにより測定した。標準曲線は、4パラメーターロジスティックフィット:y=(A2+(A1-A2)/(1+(x/x0)p)によって測定された吸光度から計算した。
【0150】
総Aβの量を決定するために、K11に代えて、96ウェルマイクロタイタープレート上にAβのN末端に特異的な抗体3D6(ATCCマウスハイブリドーマ細胞株RB96
3D6.32.2.4)を固定化することにより、比較ELISAを確立した。3D6は、isoAsp7修飾とは無関係にAβ(1-X)のN末端を認識する(
図8Bを参照)。
【0151】
結果:
抗isoD7-Aβ特異的抗体K11を使用することにより、1.6pg/mlまでのisoD7-Aβの定量的検出のために間接的サンドイッチELISAを開発した。
図8Aは、isoAsp7-Aβ特異的ELISAに特徴的な標準曲線を示している。そのグラフは更に、非修飾Aβペプチドが検出されないことを示している。
【0152】
isoAsp7修飾とは無関係にAβを検出する総Aβ ELISAの開発により、一方でアミロイドプラーク中のisoAsp7パーセント含有率の測定を可能にする。他方で、そのELISAは、非isoAsp7修飾Aβペプチドに対するK11抗体処理の影響を測定することを可能にする(実施例7+実施例8を参照)。
【0153】
実施例7:5xFADマウスモデルにおけるK11の適用
方法:
K11が5xFADマウスモデルにおいてAβプラーク負荷を低減する能力を評価した。これを行うために、K11を、Hek293細胞においてIgG2aサブタイプと一緒に発現させて、プロテインGアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。
【0154】
適切なK11処理用量を決定するために、3ヶ月齢の5xFADマウスを、第1試験に
おいてPBS中の500μg、150μgのK11又は500μgのアイソタイプコントロールで週に1回腹腔内処理した。この最初の試験において、処理12週間後にマウスを屠殺した。一方の脳の半球を免疫組織染色のために使用し(方法については実施例5を参照)、もう一方をELISA分析のために使用し、小脳及び脳幹をIgG2a定量化のために使用した(実施例8を参照)。最後の抗体適用は、脳の調製の7日前に行った。
【0155】
海馬脳切片における対象領域(ROI)を、2μg/mlの6E10(一般的なAβのため)及び2μg/mlのisoAsp7-Aβ特異的抗体K11(isoAsp7-Aβのため)で染色することにより選択した。全ての写真は、顕微鏡Biorevo BZ-9000(Keyence社)を使用して透過光モード及び露出時間1/200秒で記録した
。isoAsp7-Aβのパーセント面積(ROIのisoD7(%))を、ROIの総面積に対してBZ II解析プログラムを使用して定量化した。
【0156】
ELISA分析のためのマウスの脳を調製するために、脳の左半球を、T-Perバッファー(Thermo Fisher Scientific社)中でProtease Inhibitor Cocktail Tablets(Roche社)と一緒にPrecellysホモジナイザ
ー(VWR社)を使用することによってホモジナイズした後に、10秒間超音波処理した。
ホモジネートを100000×gで1時間遠心分離した。得られたペレットを5Mの塩酸グアニジン(5MのGdmCl)中に150mg/mlまで溶解した後に、オーバーヘッドシェーカーにおいて室温で3時間インキュベート工程を行った。遠心分離工程(100000×gで1時間)の後に、上清を収集し、使用するまで-20℃で貯蔵した。ELISA測定の実施方法の詳細については、実施例6を参照のこと。
【0157】
結果:
isoAsp7及び総Aβ特異的ELISAを使用することにより、アイソタイプコントロール群と比較したisoAsp7-Aβ及び総Aβプラーク負荷の用量依存的な減少が示された(
図9)。
【0158】
K11によるプラーク染色後の免疫組織学的評価は、アイソタイプコントロール群と比較したAβプラーク負荷の明らかな減少も示している(
図10及び
図11)。
図1のドットブロット分析により示されているように、市販の抗体6E10は、非修飾Aβペプチドに特異的であり、isoAsp7-Aβとは反応しない。
図12は、6E10を使用することによるK11処理された5xFADマウスの脳切片の免疫組織染色を示す。6E10がisoAsp7-Aβを認識しないにもかかわらず、K11処理後にAβプラーク負荷の明らかな減少が見られた。これは、isoAsp7-Aβの標的化により非修飾の総Aβプラーク負荷が減少することを明確に裏付けている(
図12)。
【0159】
実施例8:5xFADマウスにおけるK11の脳内浸透
5xFADマウスでは小脳及び脳幹はプラーク負荷を有しないか又は非常に低いプラーク負荷しか有しないので、それらのマウスはIgG2a含量の定量化のために使用されている。したがって、小脳及び脳幹を、ELISA Blocker+Tween(Thermo
Fisher Scientific社)中でPrecellysホモジナイザー(VWR社)を使用するこ
とによりホモジナイズした後に、25000×gで30分間遠心分離した。得られた上清中のタンパク質濃度を、BCAアッセイ(Thermo Fisher Scientific社)を使用することにより測定した。IgG2a濃度を、マウスIgG2a特異的ELISAにより定量化した。したがって、ラット抗マウスIgG2a(BD Bioscience社)をPBSにて1μg/
mlに希釈し、ポリスチレン製96ウェルマイクロタイタープレート上に4℃で一晩固定化した。ELISA Blocker(Thermo Fisher Scientific社)を使用して、室温で2時間ブロッキングを行った。標準曲線の作成のために、組み換えIgG2aサブタイプK11を、ELISA Blocker+Tween(Thermo Fisher Scientific社)
にて500ng/mlから0.7ng/mlまで連続希釈し、2連でウェルに加えた。ELISA Blocker+Tweenで満たされた2つのウェルは、標準曲線値0pg/mlに相当する。室温で2時間のインキュベート期間後に、プレートをTBS-Tで3回洗浄した。結合されたIgG2a分子の検出のために、ヤギ抗マウスHRP(KPL社)
を、ELISA Blocker+Tweenにて1:5000で希釈し、試料と一緒に4℃で1時間インキュベートした。呈色反応及び標準曲線の計算については、isoAsp7-Aβ特異的ELISAを参照のこと(実施例6)。
【0160】
結果:
図13は、未処理のコントロール群と比較した、K11を5xFADマウスに適用した後の脳IgG2aの用量依存的な増加を示している。
【0161】
実施例9:5xFADマウスモデルにおけるK11の適用(38週間の処理)
方法:
実施例7と対照的に、3ヶ月齢の5xFADマウスを、38週間にわたり300μgのK11、300μgの3D6及び300μgのアイソタイプコントロールで処理した。ポジティブコントロール抗体3D6を、マウスハイブリドーマ細胞株RB96 3D6.32.2.4(ATCC)における発現後に精製した。12ヶ月齢の5xFADマウスは野生型動物と比較して著しい記憶欠損を示すので、ELISA(実施例6を参照)に加えて、行動試験を実施した。アイソタイプコントロール抗体の一切の影響を排除するために、野生型マウスも1週間当たり300μgのアイソタイプコントロールで処理した。
【0162】
高架式十字迷路(EPM)
EPMは、試験動物が開放空間を嫌がることに基づく不安の測定のための試験である。試験動物を、2本の開いたアームと2本の閉じたアームとを備える高架式十字(+)装置(Bioserve GmbH社、ドイツ、ボン)の規定の閉じたアームの端に頭を向けて置いた。そ
の後10分間の間、試験動物の全ての動きを記録した。開いたアーム内で動物が過ごした時間を合計することで、曝露区画における%を計算した。
【0163】
開いたアーム内に動物全体(尾を除く)が存在した場合に、動きをアーム進入として定義した。
【0164】
恐怖条件付け(FC)
FCは、嫌悪刺激(電気ショック)が特定の中立刺激(音)に関連付けられている学習測定のための試験である。学習に成功すると、中立刺激だけで恐怖の状態(すくみ行動)が引き起こされることとなる。試験動物を、自動式の恐怖条件付けシステム(TSE Systems社、ドイツ、バート・ホンブルク)に置き、以下の手順:休止(180秒)、音(28
秒)、電気刺激(0.7mAを2秒間)を受けさせた。24時間後に、試験動物を再び恐怖条件付けシステムに置き、そこに210秒間放置して取り出した。1時間後に動物をコンテナに戻し、それらを180秒の休止の後に180秒の音(中性刺激)に曝した。180秒の休止の間のすくみ行動時間を計数して、180秒の音の間のすくみ行動時間から減算した。
【0165】
ポールテスト:
これは、運動協調性の測定のための試験である。動物を50cmの高さのポール(直径1.5cm)の上部に頭を向けて置いた。動物から手を放した直後に、動物が向きを変える(全ての単足が地面へと向けられると定義される)ために要した時間量と、全ての足が地面に達するために要した時間量とを記録した。
【0166】
モーリスの水迷路(MWM)試験:
これは、空間学習及び記憶の測定のための試験である。試験動物は円形のプールに入れられ、水から逃避することを可能にする見えないプラットフォームを見つける必要があった。それにより、動物はプールの縁にある遠位の目印を参照点として使用して、自分の位置を確認する。円形のプールは、4つの等しい四分円に分割されており、それらは目印によって視覚的に区別することができる。試験動物を第1の四分円に入れて、プラットフォームに到達するまでの時間を計数した。60秒後にプラットフォームに到達しなかった場合にマウスをそこに誘導した。少なくとも5分間休ませた後に、試験動物を第2の四分円に入れ、同じ手順に曝した。動物を再び休ませた後に、動物を四分円3に入れ、引き続きもう一度休ませ、その次に動物を再び四分円2に入れた。最後に、試験動物がプラットフォームに到達するのにかかった時間を記録し、1日当たり4回の試験において全てのマウスについて合計した。
【0167】
結果:
T-Per(組織タンパク質抽出試薬、Thermo Fisher Scientific社)は穏やかな界面活性剤を含有し、様々な細胞区画、例えば形質膜から標的タンパク質を抽出することが分かった。T-Per画分には、主に単量体及びオリゴマーのAβペプチドが存在すると想定されている。GdmClは、折り畳まれたタンパク質構造物の強力な変性剤である。線維構造からのAβペプチドは、5MのGdmCl画分中に溶解されることとなる。
【0168】
図14は、3種の異なる抗体で38週間処理した後のT-Per画分中のisoAsp7-Aβ及び総Aβの量を示している。ELISAの結果は、K11で処理された動物におけるisoD7-Aβの有意な減少を示している(
図14B)。驚くべきことに、アイソタイプコントロールで処理された動物と比較して、総Aβレベルも有意に減少している(
図14A)。5MのGdmClの脳画分の分析後に、同様の結果が得られた(
図15)。本発明者らの抗isoD7-Aβ抗体K11で処理された5xFADマウスの脳の左半球において、総Aβレベル及びisoD7-Aβレベルが有意に減少している。ポジティブコントロール抗体3D6での処理により、T-Per画分及び5MのGdmCl画分においてより低いAβ含有量も得られたが、統計的有意差はT-Per画分に見られる総Aβの量についてのみ観察された(
図14A)。
【0169】
EPM試験は、アイソタイプコントロールで処理された野生型マウスと5xFADマウスとの間に有意差を示している(
図16)。K11及び3D6での処理により、動物が開いたアームで費やした時間の差が減少した(
図16A)。アーム進入の回数を考慮すると、K11での処理は、野生型動物で得られた結果と同じ結果に導く(
図16B)。
【0170】
アイソタイプコントロールで処理された5xFAD動物は、恐怖条件付け試験において野生型群と比較して、すくみ行動時間が有意により少ないことを示している(
図17)。K11での処理により、野生型動物と有意差がないレベルまですくみ行動時間が増える。3D6での処理は、総すくみ行動時間に対してより低い効果を有する。
【0171】
ポールテストは、アイソタイプコントロールで処理された野生型マウスと5xFADマウスとの間に有意差を示している(
図18)。3D6による処理は、ポールテストにおいて行動結果に影響を及ぼさない。K11処理により、動物が向きを変えるまでの時間(
図18A)と地面に達するまでの時間(
図18B)とが短縮され、野生型群と比較して非有意差が得られた。
【0172】
アイソタイプコントロールで処理された5xFAD動物は、野生型動物と比較して、MWM試験においてプラットフォームに到達するまでに有意により長い時間を必要とした(
図19)。3D6で処理された動物において観察される差は依然として有意であるが、K11で処理された動物は、野生型との有意差を示さない。
【0173】
実施例10:Aβ凝集の阻害
方法:
ペプチドをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)中に溶解させて、それらの単量体形を得た。HFIPを一晩蒸発させ、次いでAβペプチドを1容量の0.1MのNaOH中に溶解させた後に、18容量のPBS及び1容量の0.1MのHClを添加した。引き続き、抗体K11、3D6及びアイソタイプコントロールを5μMの最終濃度まで添加し、こうして10μMのAβペプチドの最終濃度に至った。200μMのThT(チオフラビンT)の添加後に、435nm/485nm(励起波長/蛍光波長)の蛍光を、マイクロプレートリーダー(FluoStar Optima、BMG Labtech社)において
振盪条件(600rpm)下にて37℃で測定した。
【0174】
結果:
図20は、抗体K11、3D6及びアイソタイプコントロールの添加の有無による野生型Aβ(1-40)(
図20A)及びisoD7-Aβ(1-40)(
図20B)の凝集を示している。N末端に特異的な抗体3D6は、野生型Aβ及びisoD7-Aβの凝集を阻害する。isoD7-Aβ特異的抗体K11は、isoD7-Aβの凝集を阻害し、野生型Aβの凝集の遅延を誘導する。アイソタイプコントロール抗体は、両方のAβペプチドの凝集に影響を及ぼさない。しかしながら、最大ThT蛍光シグナルは、野生型Aβ(1-40)とK11との相互作用によって増強される(
図20A)。
【0175】
実施例11:CDR移植によるクローンK11のヒト化
方法:
K11の軽鎖及び重鎖の可変ドメインにおけるCDRの定義は、「Enhanced Chothia Numbering Scheme」(http://www.bioinf.org.uk/abs/)に準拠している。
【0176】
移植のために、適切なヒトフレームワーク配列を特定した。これらは、非ヒト抗体と最も高い類似性を有するヒトフレームワーク配列であり、IMGT生殖細胞系ライブラリー(IMGT germline library)(http://www.imgt.org/blast/)に対するBlast解析の
実施により特定した。マウス抗体クローンK11のCDRを各ヒト抗体フレームワークと組み合わせることで、ヒト化抗体を作製した。ヒトIgG1の重鎖定常領域は、「インタクトな」抗体のために使用した。軽鎖可変ドメインを、ヒトκ鎖定常領域に融合させた(表5)。
【0177】
【0178】
実施例12:組み換え発現されたヒト化抗体K11変異体のキャラクタリゼーション
方法:
クローニング
ヒト化抗体の軽鎖及び重鎖の配列を、哺乳動物発現ベクターpVITRO-neoに別々にクローニングした。VLフレームワークとVHフレームワークとの最適な組み合わせを特定するために、種々のプラスミドの組み合わせを使用して、HEK293F細胞における一過性発現を実施した。
【0179】
一過性トランスフェクション及び精製
トランスフェクションは、2×106個のHEK293細胞/mlを含む15mlの培地中で単一のプラスミドの組み合わせ(各プラスミドにつき1μg/ml)と混合された3μg/mlのポリエチレンイミン(PEI)を使用することにより行った。6日目に、上清を収集し、プロテインAクロマトグラフィーで精製した。
【0180】
表面プラズモン共鳴測定
測定の間の物質移動及びアビディティー効果を防ぐために、次の手順を使用した。最初に、ポリクローナル抗ヒト抗体をSPRチップにカップリングさせ、続いてRUが1000を超えるまでヒト化抗体をロードした。
【0181】
カイネティクス測定を、isoD7-Aβ(1-18)ペプチドの種々の濃度(5nM~1000nM)で実施した。koff及びkonの速度定数を決定する単純な1:1相互作用モデル(ラングミュアフィット)に従って結果を評価する(表6)。
【0182】
【0183】
CDR移植によるK11のヒト化により、祖先マウス抗体K11の配列番号44に対する結合親和性の保存に成功した抗体が得られた(表2によれば6.3nM)。