(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075196
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】結核菌(Mycobacterium Tuberculosis)感染の診断および治療のための新規な抗-LAMおよび抗-PIM6/LAMモノクローナル抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/12 20060101AFI20230523BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230523BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20230523BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
C07K16/12 ZNA
A61K39/395 N
A61P31/06
A61K45/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023031004
(22)【出願日】2023-03-01
(62)【分割の表示】P 2021063301の分割
【原出願日】2017-02-01
(31)【優先権主張番号】62/293,406
(32)【優先日】2016-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
2.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】517349186
【氏名又は名称】ラトガース ザ ステイト ユニバーシティー オブ ニュージャージー
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ピンター,アブラハム
(72)【発明者】
【氏名】チョードリー,アロック
(57)【要約】 (修正有)
【課題】結核菌(Mycobacterium tuberculosis)感染の診断および治療のための新規な抗-LAMおよび抗-PIM6/LAMモノクローナル抗体(mAb)を提供する。
【解決手段】Ara4構造、Ara6構造、またはそれらの組み合わせを含むLAMエピトープに特異的に結合する、ヒトモノクローナル抗-LAM抗体、またはその抗原結合部分において、前記抗-LAM抗体が、それぞれ特定の配列またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変軽領域、CDR2可変軽領域、CDR3可変軽領域、CDR1可変重領域、CDR2可変重領域、およびCDR3可変重領域を含むことを特徴とするヒトモノクローナル抗-リポアラビノマンナン抗体、またはその抗原結合部分を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ara4構造、Ara6構造、またはそれらの組み合わせを含むLAMエピトープに特異的に結合する、ヒトモノクローナル抗-リポアラビノマンナン(抗-LAM)抗体、またはその抗原結合部分において、前記抗-LAM抗体が、配列番号1またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変軽領域、配列番号2またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変軽領域、配列番号3もしくは配列番号26またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変軽領域、配列番号4またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変重領域、配列番号5またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変重領域、および配列番号6もしくは配列番号23またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変重領域を含むことを特徴とするヒトモノクローナル抗-リポアラビノマンナン抗体、またはその抗原結合部分。
【請求項2】
請求項1に記載のヒトモノクローナル抗-LAM抗体またはその抗原結合部分において、前記抗体が、配列番号21および配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号24および配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含むことを特徴とするヒトモノクローナル抗-LAM抗体またはその抗原結合部分。
【請求項3】
請求項1に記載のヒトモノクローナル抗-LAM抗体またはその抗原結合部分において、前記抗-LAM抗体が、scFv-IgG、およびIgGaまたはIgM抗体であることを特徴とするヒトモノクローナル抗-LAM抗体またはその抗原結合部分。
【請求項4】
マンノースでキャッピングされたAra4構造およびマンノースでキャッピングされたAra6構造の少なくとも1つを含むLAMエピトープに特異的に結合することを特徴とするヒトモノクローナル抗-LAM抗体またはその抗原結合部分。
【請求項5】
請求項4に記載のヒトモノクローナル抗-LAM抗体またはその抗原結合部分において、前記抗-LAM抗体が、配列番号7またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変軽領域、配列番号8またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変軽領域、配列番号9もしくは配列番号32またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変軽領域、配列番号10またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変重領域、配列番号11またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変重領域、および配列番号12もしくは配列番号29またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変重領域を含むことを特徴とするヒトモノクローナル抗-LAM抗体またはその抗原結合部分。
【請求項6】
請求項5に記載のヒトモノクローナル抗-LAM抗体またはその抗原結合部分において、前記抗体が、配列番号43のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号44のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含むことを特徴とするヒトモノクローナル抗-LAM抗体またはその抗原結合部分。
【請求項7】
請求項5に記載のヒトモノクローナル抗-LAM抗体またはその抗原結合部分において、前記抗-LAM抗体がIgMまたはIgA抗体であることを特徴とするヒトモノクローナル抗-LAM抗体またはその抗原結合部分。
【請求項8】
Ara4またはAra6の非還元末端で付着されたα-Manp(1→2)連結構造を含むLAMエピトープに特異的に結合する、ヒトモノクローナル抗-LAM抗体、またはその抗原結合部分において、前記抗-LAM抗体が、配列番号7またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変軽領域、配列番号8またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変軽領域、配列番号9またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変軽領域、配列番号10またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変重領域、配列番号11またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変重領域、および配列番号12またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変重領域を含むことを特徴とするヒトモノクローナル抗-LAM抗体、またはその抗原結合部分。
【請求項9】
請求項8に記載のヒトモノクローナル抗-LAM抗体またはその抗原結合部分において、前記抗-LAM抗体がIgMまたはIgA抗体であることを特徴とするヒトモノクローナル抗-LAM抗体またはその抗原結合部分。
【請求項10】
少なくとも1つのポリマンノース構造を含む、LAMおよびPIM6中に存在するエピトープに特異的に結合することを特徴とするヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体、またはその抗原結合部分。
【請求項11】
請求項10に記載のヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体、またはその抗原結合部分において、前記エピトープがPIM6マンナンドメイン内に存在し、かつマイコバクテリアのリポマンナン(LM)中にも存在することを特徴とするヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体、またはその抗原結合部分。
【請求項12】
請求項10に記載のヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体、またはその抗原結合部分において、前記抗-PIM6/LAM抗体が、配列番号13またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変軽領域、配列番号14またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変軽領域、配列番号15またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変軽領域、配列番号16またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変重領域、配列番号17またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変重領域、および配列番号18またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変重領域を含むことを特徴とするヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体、またはその抗原結合部分。
【請求項13】
請求項10に記載のヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体、またはその抗原結合部分において、前記抗体が、配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含むことを特徴とするヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体、またはその抗原結合部分。
【請求項14】
請求項12に記載のヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体またはその抗原結合部分において、前記抗-PIM6/LAM抗体がIgM抗体であることを特徴とするヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体またはその抗原結合部分。
【請求項15】
請求項12に記載のヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体またはその抗原結合部分において、前記抗-PIM6/LAM抗体がIgAまたはIgG抗体であることを特徴とするヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体またはその抗原結合部分。
【請求項16】
少なくとも1つのLAMエピトープを検出するためのキットにおいて、
(a)LAMエピトープに特異的に結合する少なくとも第1の抗-LAM抗体;
(b)前記少なくとも第1の抗-LAM抗体が結合される支持体;
(c)LAMに特異的に、または前記少なくとも第1の抗-LAM抗体に特異的に結合する、レポーター分子で標識された検出抗体;および
(d)緩衝液
を含み、ここで前記少なくとも第1の抗-LAM抗体が請求項1、5または8に記載のヒトモノクローナル抗-LAM抗体であることを特徴とするキット。
【請求項17】
請求項16に記載のキットにおいて、前記検出抗体がLAMに特異的に結合する第2の抗-LAM抗体であることを特徴とするキット。
【請求項18】
請求項17に記載のキットにおいて、前記第1の抗-LAM抗体および前記第2の抗-LAM抗体の少なくとも1つがscFv-IgGまたはIgM抗体であり、かつ配列番号1またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変軽領域、配列番号2またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変軽領域、配列番号3もしくは配列番号26またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変軽領域、配列番号4またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変重領域、配列番号5またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変重領域、および配列番号6もしくは配列番号23またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変重領域を含むことを特徴とするキット。
【請求項19】
請求項18に記載のキットにおいて、前記第1の抗-LAM抗体および前記第2の抗-LAM抗体の少なくとも1つが、配列番号21および配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号24および配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含むことを特徴とするキット。
【請求項20】
個体における活動性結核感染を診断する方法において、
(a)LAMを含むかまたは含むことが疑われる個体から試料を得るステップと;
(b)個体のLAMエピトープを曝露するように前記試料を処理するステップと;
(c)前記試料を、前記LAM上の第1のエピトープに特異的に結合する少なくとも第1の抗体と接触させるステップと;
(d)前記試料を、LAMに特異的に、または前記少なくとも第1の抗体に特異的に結合する検出抗体と接触させるステップと;
(e)前記少なくとも第1の抗体のLAM上の前記第1のエピトープへの結合を検出するステップと;
(f)前記患者を活動性結核感染を有すると診断するステップと、
を含むことを特徴とし、ここで前記少なくとも第1の抗体のLAM上の前記第1のエピトープへの前記結合が活動性結核感染を示し、かつ
前記少なくとも第1の抗体が、請求項1、5または8に記載のヒトモノクローナル抗-LAM抗体、または請求項12に記載のヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体である、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、前記検出抗体がLAMに特異的に結合する抗-LAM抗体であることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、前記少なくとも第1の抗体および前記検出抗体が各々、配列番号1またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変軽領域、配列番号2またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変軽領域、配列番号3もしくは配列番号26またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変軽領域、配列番号4またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変重領域、配列番号5またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変重領域、および配列番号6もしくは配列番号23またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変重領域を含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法において、前記一次抗体および前記検出抗体の少なくとも1つが、scFv-IgGまたはIgM抗体であり、かつ配列番号1またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有する可変軽領域を有するCDR1領域、配列番号2またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変軽領域、配列番号3もしくは配列番号26またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変軽領域、配列番号4またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変重領域、配列番号5またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変重領域、および配列番号6もしくは配列番号23またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変重領域を含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項20に記載の方法において、前記個体がヒトであることを特徴とする方法。
【請求項25】
個体における結核感染を治療する方法において、請求項1、5または8に記載の少なくとも1つのヒトモノクローナル抗-LAM抗体、または請求項12に記載のヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体を治療有効量で前記個体に投与するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法において、少なくとも1つの抗生物質を治療有効量で前記個体に投与するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項25に記載の方法において、前記結核感染が多剤耐性(MDR-TB)結核感染であることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年2月10日に出願された米国仮特許出願第62/293,406号明細書(その全体が参照により本明細書中に援用される)に対する優先権を主張する。
【0002】
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)感染の診断、予防および治療のための、リポアラビノマンナン(LAM)リポマンナン(LM)およびホスファチジル-ミオ-イノシトールマンノシド6(PIM6)にて見出されるエピトープに特異的な抗体を含む組成物、キット、ベクター、および方法が本明細書に記載される。
【0003】
配列表
本願は、EFS-WEBを介してASCIIフォーマットで提出されている配列表を含み、ここでその全体が参照により援用される。2017年2月1日に作成された前記ASCIIコピーは、096747.00337_ST25.txtと称され、サイズは29,097バイトである。
【背景技術】
【0004】
A.結核菌(Mycobacterium Tuberculosis)
結核(TB)は、現在世界人口の約3分の1に感染する、世界的な史上最悪の感染性疾患の1つであり続けている。WHO Global Tuberculosis Report,2014:Tuberculosisによると、2013年、推定上900万人がTBを発症し、1,500万人がその疾患で死亡した。現在、TBに対する有効な薬物が利用可能であるが、これらは複数の抗生物質を用いた長期間の治療を必要とし、最近の感染の約3.5%に現在関与している多剤耐性(MDR-TB)株の発生により易感染性が高まっている。これらの株は、治療がはるかに困難化し、有意に低下した治癒率を有している。また広範囲薬剤耐性TB(XDR-TB)株が伝播しており、それは治療がMDR-TB株よりもさらに高価になりかつ困難化し、今や世界中100か国で報告されている。結果的に、TB感染のより早期の診断および治療のための新しい手法が必要とされている。
【0005】
B.リポアラビノマンナン(LAM)
糖脂質リポアラビノマンナン(LAM)は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体のメンバーの細胞壁の主要な構成および抗原成分であり、それは増殖性感染および疾患の発生を促進する幾つかの重要な機能を媒介する。LAMはまた、特にHIV-1に同時感染した患者において、TBによる活動性感染を検出するための重要な免疫診断標的、および有望なワクチン標的である。LAMの免疫診断標的としての重要性および結核菌(M.tb)感染の生理および病原性におけるその有意義な役割にもかかわらず、意外にもこの抗原に向けてのヒト体液性応答の性質についてはほとんど知られていない。以前に利用可能なLAMに特異的なモノクローナル抗体は、ライ菌(Mycobacterium leprae)または結核菌(Mycobacterium tuberculosis)のいずれかから精製されたLAMで免疫されたマウスから得られており、免疫または結核菌(Mycobacterium tuberculosis)による感染のいずれかに応答して誘導されているLAMに対するヒトモノクローナル抗体については全く記載がなされていない。
【0006】
リポマンナン(LM)は、LAMに対する即時型前駆物質であり、アラビノース側鎖でなく、短いα(1→2)-マンノピラノシル側鎖と置換されたα(1→6)連結Manp骨格からなるマンナンドメインにより修飾されたホスファチジル-ミオ-イノシトールドメインを有する。
【0007】
C.ホスファチジル-ミオ-イノシトールマンノシド6(PIM6)
PIM6は、LMおよびLAMに共通の前駆物質であるPIM2の産物である。これらの分子のコアは、2および6位でManp単位でグリコシル化されたミオ-イノシトール構造である。PIM6では、6位でのManp単位は、ManLAM上のマンノースキャップに一致する2つの末端α-Manp(1→2)連結糖によりさらに置換される。これらの分子は、4もの脂肪酸鎖によりアシル化され、イノシトール頭部基およびコアMan残基に付着され、これらの分子は細胞エンベロープの内膜および外膜に非共有結合的に固定される。PIM6は、C型レクチンおよびDC-SIGN(樹状細胞上の主要な受容体)に結合し、かつ強力な抗炎症活性を有するHIV複製の強力なTLR2作動薬およびエンハンサーであることが報告された。
【発明の概要】
【0008】
本明細書に記載されるのは、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)感染の診断および治療のための新規な抗-LAMおよび抗-PIM6/LAMモノクローナル抗体(mAb)である。結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の糖脂質に特異的なこれらの新規なヒト抗体、例えばLAMエピトープに特異的なヒトmAb、およびLAMおよびPIM6によって共有されるエピトープに特異的なヒトmAbなどの単離および特徴づけが下記に記載される。
【0009】
したがって、本明細書に記載されるのは、Ara4構造、Ara6構造、またはそれらの組み合わせを含むLAMエピトープに特異的に結合するヒトモノクローナル抗-リポアラビノマンナン(抗-LAM)抗体、またはその抗原結合部分であり、ここで抗-LAM抗体は、配列番号1またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変軽領域、配列番号2またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変軽領域、配列番号3もしくは配列番号26またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変軽領域、配列番号4またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変重領域、配列番号5またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変重領域、および配列番号6もしくは配列番号23またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変重領域を含む。ヒトモノクローナル抗-LAM抗体またはその抗原結合部分は、配列番号21および配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号24および配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。抗-LAM抗体は、scFv-IgG、およびIgGaまたはIgM抗体であり得る。抗-LAM抗体の例として、A194が挙げられる。
【0010】
さらに本明細書に記載されるのは、マンノースでキャッピングされたAra4構造およびマンノースでキャッピングされたAra6構造の少なくとも1つを含むLAMエピトープに特異的に結合するヒトモノクローナル抗-LAM抗体またはその抗原結合部分である。抗-LAM抗体は、配列番号7またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変軽領域、配列番号8またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変軽領域、配列番号9もしくは配列番号32またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変軽領域、配列番号10またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変重領域、配列番号11またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変重領域、および配列番号12もしくは配列番号29またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変重領域を含み得る。該抗体は、配列番号43のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号44のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。抗-LAM抗体は、例えばIgMまたはIgA抗体であり得る。抗-LAM抗体の例として、P3B09が挙げられる。
【0011】
さらに本明細書に記載されるのは、Ara4またはAra6の非還元末端で付着されたα-Manp(1→2)連結構造を含むLAMエピトープに特異的に結合するヒトモノクローナル抗-LAM抗体、またはその抗原結合部分であり、ここで抗-LAM抗体は、配列番号7またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変軽領域、配列番号8またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変軽領域、配列番号9またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変軽領域、配列番号10またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変重領域、配列番号11またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変重領域、および配列番号12またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変重領域を含む。抗-LAM抗体(例えばP3B09)は、例えばIgMまたはIgA抗体であり得る。
【0012】
さらに本明細書に記載されるのは、LAMおよびPIM6中に存在するエピトープに特異的に結合する、ヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体、またはその抗原結合部分であり、ここでエピトープは、少なくとも1つのポリマンノース構造を含む。エピトープは、PIM6マンナンドメイン内に存在し、かつマイコバクテリアのリポマンナン(LM)中にも存在する。抗-PIM6/LAM抗体は、配列番号13またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変軽領域、配列番号14またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変軽領域、配列番号15またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変軽領域、配列番号16またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変重領域、配列番号17またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変重領域、および配列番号18またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変重領域を含み得る。該抗体は、例えば、配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。抗-PIM6/LAM抗体は、例えば、IgM、IgAまたはIgG抗体であり得る。抗-PIM6/LAM抗体の例として、P95C1が挙げられる。
【0013】
さらに本明細書に記載されるのは、少なくとも1つのLAMエピトープを検出するためのキットである。キットは、(a)LAMエピトープに特異的に結合する少なくとも第1の抗-LAM抗体;(b)少なくとも第1の抗-LAM抗体が結合される支持体;(c)LAMに特異的に結合するか、または少なくとも第1の抗-LAM抗体に特異的に結合する、レポーター分子で標識された検出抗体;および(d)緩衝液、を含む。少なくとも第1の抗-LAM抗体は、例えば本明細書に記載のようなヒトモノクローナル抗-LAM抗体である。検出抗体は、例えばLAMに特異的に結合する第2の抗-LAM抗体であり得る。一部の実施形態では、第1の抗-LAM抗体および第2の抗-LAM抗体の少なくとも1つは、scFv-IgGまたはIgM抗体であり、配列番号1またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変軽領域、配列番号2またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変軽領域、配列番号3もしくは配列番号26またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変軽領域、配列番号4またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変重領域、配列番号5またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変重領域、および配列番号6もしくは配列番号23またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変重領域を含む。キットの一部の実施形態では、第1の抗-LAM抗体および第2の抗-LAM抗体の少なくとも1つは、配列番号21および配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号24および配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0014】
さらに本明細書に記載されるのは、個体における活動性結核感染を診断する方法であって、(a)LAMを含むかまたは含むことが疑われる個体から試料を得るステップと;(b)前記試料を個別のLAMエピトープに曝露するように処理するステップと;(c)前記試料を、前記LAM上の第1のエピトープに特異的に結合する少なくとも第1の抗体と接触させるステップと;(d)前記試料を、LAMに特異的に結合するか、または少なくとも第1の抗体に特異的に結合する検出抗体と接触させるステップと;(e)少なくとも第1の抗体のLAM上の前記第1のエピトープへの結合を検出するステップと;(f)前記患者を活動性結核感染を有するものとして診断するステップと、を含み、ここで少なくとも第1の抗体のLAM上の前記第1のエピトープへの結合が活動性結核感染を示す、方法である。少なくとも第1の抗体は、例えば、本明細書に記載のようなヒトモノクローナル抗-LAM抗体またはヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体である。検出抗体は、例えばLAMに特異的に結合する抗-LAM抗体であり得る。該方法の一部の実施形態では、少なくとも第1の抗体および検出抗体の各々は、配列番号1またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変軽領域、配列番号2またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変軽領域、配列番号3もしくは配列番号26またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変軽領域、配列番号4またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変重領域、配列番号5またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変重領域、および配列番号6もしくは配列番号23またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変重領域を含む。該方法の一部の実施形態では、一次抗体および検出抗体の少なくとも1つは、scFv-IgGまたはIgM抗体であり、配列番号1またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有する可変軽領域を有するCDR1領域、配列番号2またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変軽領域、配列番号3もしくは配列番号26またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変軽領域、配列番号4またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変重領域、配列番号5またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変重領域、および配列番号6もしくは配列番号23またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変重領域を含む。一部の実施形態では、個体はヒトである。
【0015】
さらに本明細書に記載されるのは、個体(例えばヒト)における結核感染を治療する方法である。該方法は、少なくとも1つの本明細書に記載のようなヒトモノクローナル抗-LAM抗体またはヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体を治療有効量で前記個体に投与するステップを含む。該方法は、少なくとも1つの抗生物質を治療有効量で前記個体に投与するステップをさらに含み得る。結核感染は、多剤耐性(MDR-TB)結核感染であり得る。
【0016】
さらに本明細書に記載されるのは、本明細書に記載の抗体の重鎖および軽鎖(可変領域を含む)をコードするヌクレオチド配列である。
【0017】
A.抗-LAM抗体および抗-PIM6/LAM抗体
一部の実施形態では、本発明は、抗-LAM抗体、またはその抗原結合部分を提供する。一部の実施形態では、本発明は、抗-PIM6/LAM抗体、またはその抗原結合部分を提供する。本明細書に記載のような抗-LAM抗体(またはその抗原結合部分)は、LAMエピトープに特異的に結合する。本明細書に記載のような抗-PIM6/LAM抗体(またはその抗原結合部分)は、LAMエピトープおよびPIM6エピトープの双方に特異的に結合する。一部の実施形態では、LAMおよびPIM6エピトープは、様々なマイコバクテリア種に由来する。さらなる実施形態では、様々なマイコバクテリア種は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の毒性メンバーである。さらなる実施形態では、マイコバクテリア種は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)である。一部の実施形態では、抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体は、モノクローナル抗体(mAb)である。さらなる実施形態では、抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体は各々、ヒトモノクローナル抗-LAM抗体またはヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体である。他の実施形態では、抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体は各々、ヒト化モノクローナル抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体である。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、Ara4およびAra6構造に結合する。
【0018】
一部の実施形態では、LAMエピトープは、キャップのないアラビノース鎖である。一部の実施形態では、LAMエピトープは、末端MTX置換の有無にかかわらず、キャップのないまたは単一のマンノースでキャッピングされたアラビノース鎖である。
【0019】
一部の実施形態では、LAMエピトープは、マンノースでキャッピングされたAra4構造およびマンノースでキャッピングされたAra6構造である。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、Ara4/Ara6構造またはポリマンノース構造のいずれかに連結され得るα(1→2)連結ジマンノース構造に特異的に結合する(
図8)。一部の実施形態では、PIM6エピトープは、マイコバクテリアのリポマンナン(LM)中にも存在する少なくとも1つのポリマンノース構造を含む。一部の実施形態では、抗-PIM6/LAM抗体は、PIM6マンナンドメイン内に少なくとも1つのポリマンノース構造を含むPIM6エピトープに特異的に結合する。一部の実施形態では、LAMエピトープは、少なくとも1つのメチルチオキシロース(MTX)またはメチルシルフィニルキシロフラノシル(methylsylfinylxylofuranosyl)(MSX)置換を含む。一部の実施形態では、LAMエピトープは、少なくとも1つのホスファチジル-ミオ-イノシトール置換(PILAM)を含む。一部の実施形態では、LAMエピトープは、少なくとも1つのマンノースでキャッピングされたアラビノース鎖、すなわち、マンノシル化Man-LAMエピトープである。さらなる実施形態では、キャッピングされたアラビノース鎖は、Ara4および/またはAra6構造を含む。一部の実施形態では、Man-LAMエピトープは、モノマンノース置換アラビノース鎖、ジマンノース置換アラビノース鎖、トリマンノース置換アラビノース鎖、またはそれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、Man-LAMエピトープは、ジマンノースまたはトリマンノースでキャッピングされたAra4および/またはAra6構造を含む。一部の実施形態では、Man-LAMエピトープは、ジマンノースでキャッピングされたAra6である。一部の実施形態では、抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体は、IgG抗体を含む。さらなる実施形態では、IgG抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体は、IgG1、IgG2またはIgG3のサブクラスを含む。一部の実施形態では、抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体は、IgG抗体でない。他の実施形態では、抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体は、IgA抗体を含む。他の実施形態では、抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体は、IgM抗体を含む。一部の実施形態では、抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体は、最初に単離されたアイソタイプからスイッチしている第2のアイソタイプを含む。一部の実施形態では、抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体は、組換え抗体を含む。一部の実施形態では、組換え抗体は、多価IgM抗体を含む。さらなる実施形態では、組換え抗体は、五価IgM抗体を含む。他の実施形態では、組換え抗体は、ScFv-IgG抗体を含み、ここで1つの抗体の一本鎖Fv断片は、それかまたは異なる抗-LAM mAbの重鎖のN末端に連結される。さらなる実施形態では、組換え抗体は、多価ScFv-IgG抗体を含む。さらなる実施形態では、組換え抗体は、scFvドメインが構築物中に存在するIgGの可変領域から誘導された、相同な四価ScFv-IgG抗体を含む。さらなる実施形態では、組換え抗体は、scFv領域が、含まれるIgG領域と異なる抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体から誘導された、異種の四量体scFv-IgG抗体を含む。一部の実施形態では、scFvドメインは、前記抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体の可変軽(VL)ドメインに連結された第2の抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体の可変重(VH)領域に連結されたリーダー配列を含む。他の実施形態では、scFvドメインは、第2の抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体の可変重(VH)領域に連結された第1の抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体の可変軽鎖領域に連結されたリーダー配列を含む。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、LAMエピトープ(例えば、Ara4およびAra6またはそれらの組み合わせの1つ、Ara4/Ara6構造、またはポリマンノース構造のいずれかに連結され得るα(1→2)連結ジマンノース構造)に特異的に結合する単離された抗-LAM抗体である。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、CS-35およびFIND25と競合しない。一部の実施形態では、抗-PIM6/LAM抗体は、マイコバクテリアのリポマンナン(LM)中の少なくとも1つのポリマンノース構造に特異的に結合する単離された抗-PIM6/LAM抗体である。
【0020】
一部の実施形態では、抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体は、可動性リンカーを含む。一部の実施形態では、可動性リンカーは、対応する重鎖および軽鎖ドメインを一本鎖分子に連結する。一部の実施形態では、可動性リンカーは、免疫グロブリン軽鎖(IgVL)を免疫グロブリン重鎖(IgVH)に接続する。さらなる実施形態では、可動性リンカーは、式(GGSGG)n(配列番号19)(式中、nは、1~200の間、例えば、1~5、1~10、1~15、1~25、1~50、5~10、5~25、10~25、10~50、1~100、1~150の間の任意の範囲、およびあらゆる介在範囲の任意の正の整数である)からなる。
【0021】
一部の実施形態では、抗-LAM抗体(例えば、P30B9、A194-01)は、少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ)の相補性決定領域(CDR)(例えば、CDR1、CDR2、CDR3)を有する。一部の実施形態では、CDR1の可変軽領域は、本質的に配列番号1またはその抗原断片からなる。他の実施形態では、CDR1領域の可変軽領域は、本質的に配列番号7またはその抗原断片からなる。他の実施形態では、CDR1領域の可変軽領域は、本質的に配列番号13またはその抗原断片からなる。一部の実施形態では、CDR1の可変重領域は、本質的に配列番号4またはその抗原断片からなる。他の実施形態では、CDR1領域の可変重領域は、本質的に配列番号10またはその抗原断片からなる。他の実施形態では、CDR1領域の可変重領域は、本質的に配列番号16またはその抗原断片からなる。
【0022】
一部の実施形態では、CDR2の可変軽領域は、本質的に配列番号2またはその抗原断片からなる。他の実施形態では、CDR2の可変軽領域は、本質的に配列番号8またはその抗原断片からなる。他の実施形態では、CDR2の可変軽領域は、本質的に配列番号14またはその抗原断片からなる。一部の実施形態では、CDR2の可変重領域は、本質的に配列番号5またはその抗原断片からなる。他の実施形態では、CDR2の可変重領域は、本質的に配列番号11またはその抗原断片からなる。他の実施形態では、CDR2の可変重領域は、本質的に配列番号17またはその抗原断片からなる。
【0023】
一部の実施形態では、CDR3の可変軽領域は、本質的に配列番号3またはその抗原断片からなる。他の実施形態では、CDR3の可変軽領域は、本質的に配列番号9またはその抗原断片からなる。他の実施形態では、CDR3の可変軽領域は、本質的に配列番号15またはその抗原断片からなる。一部の実施形態では、CDR3の可変重領域は、本質的に配列番号6またはその抗原断片からなる。他の実施形態では、CDR3の可変重領域は、本質的に配列番号12またはその抗原断片からなる。他の実施形態では、CDR3の可変重領域は、本質的に配列番号18またはその抗原断片からなる。
【0024】
一部の実施形態では、抗-PIM6/LAM抗体(例えばP95C1)は、少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ)のCDR(例えば、CDR1、CDR2、CDR3)を有する。一部の実施形態では、CDR1の可変軽領域は、本質的に配列番号13またはその抗原断片からなる。一部の実施形態では、CDR1の可変重領域は、本質的に配列番号16またはその抗原断片からなる。一部の実施形態では、CDR2の可変軽領域は、本質的に配列番号14またはその抗原断片からなる。一部の実施形態では、CDR2の可変重領域は、本質的に配列番号17またはその抗原断片からなる。一部の実施形態では、CDR3の可変軽領域は、本質的に配列番号15またはその抗原断片からなる。一部の実施形態では、CDR3の可変重領域は、本質的に配列番号18またはその抗原断片からなる。
【0025】
B.診断キットおよび方法
一部の実施形態では、本発明は、ヒト対象の生体液中でのLAMおよび/またはPIM6の存在を検出するためのキットを提供する。一部の実施形態では、このアッセイの構成成分は、側方流動装置内で構築される(World Health Organization 2015, The use of lateral flow urine lipoarabinomannan assay(LF-LAM)for the diagnosis and screening of active tuberculosis in people living with HIVを参照)。一部の実施形態では、キットは、第1の抗-LAM(例えば、A194-01、P30B9)または抗-PIM6/LAM(例えばP95C1)捕捉抗体、レポーター分子で標識された第2の抗-LAMまたは抗-PIM6/LAM検出器(検出)抗体、第1の抗-LAMまたは抗-PIM6/LAM抗体が結合される支持体、および緩衝液を含む。一部の実施形態では、第1の抗-LAMまたは抗-PIM6/LAM抗体および第2の抗-LAMまたは抗-PIM6/LAM抗体の少なくとも1つは、Ara4およびAra6もしくはそれらの組み合わせの1つに特異的に結合するヒトモノクローナル抗-LAM抗体、またはLAM(およびリポマンナン(LM))のマンナンドメインに特異的に結合するヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体である。一部の実施形態では、第1の抗-LAM抗体および第2の抗-LAM抗体は、単一のLAM分子上の複数のコピー中に存在する同じLAMエピトープに結合する。他の実施形態では、第1の抗-LAM抗体および第2の抗-LAM抗体は、単一のLAM分子上に存在する異なるエピトープに結合する。LAMおよびPIM6エピトープは、本明細書に記載のLAMおよびPIM6エピトープのいずれかであってもよい。他の実施形態では、第2の抗体の非競合部位に結合する第3の検出器(検出)抗体が含まれる。一部の実施形態では、第1の抗体および第2の抗体は、同じアイソタイプである。他の実施形態では、第1の抗体および第2の抗体は、異なるアイソタイプである。捕捉アッセイの一部の実施形態では、単に捕捉抗体または検出抗体のいずれかは、本明細書に記載のような抗-LAM抗体(例えば、A194-01、P30B9)または抗-PIM6/LAM抗体(例えばP95C1)である。
【0026】
本明細書に記載の抗体は、さらなる検出および診断用途に用いることができる。例えば、1つの診断アッセイでは、本明細書に記載の抗体(例えば、A194-01、P30B9、P95C1)の1つ以上は、患者から得られる組織を染色し、TBまたはTB感染細胞を含むことが疑われる病変(例えば肉芽腫)におけるLAMの存在を検出するため、用いることができる。これは、例えば、高感度検出を可能にする標識とコンジュゲートされた本明細書に記載のような単一の抗体(例えば、A194-01、P30B9、P95C1)を用いて行うことができる。かかる方法またはアッセイでは、PIM6または関連分子のP95C1による検出は、感染組織内で行うことができる。別の例では、固定化されたP95C1によるPIM6の標識形態の捕捉が被疑者の生体液(例えば血液または尿)中に存在する可溶性PIM6により競合されるPIM6競合アッセイにおいて、P95C1を用いることができる。可溶性PIM6の不在下であれば、これはシグナルの捕捉をもたらすことになり、それは可溶性PIM6の存在により競合されることになる(World Health Organization 2015,PolicyGuidance-The use of lateral flow urine lipoarabinomannan assay(LF-LAM)for the diagnosis and screening of active tuberculosis in people living with HIVを参照)。
【0027】
一部の実施形態では、本発明は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の病原性メンバーと結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の非病原性メンバーとの間で区別するためのキットを提供する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、ManもしくはMTX-Man置換の有無と無関係にAra4およびAra6構造もしくはそれらの組み合わせの1つに特異的に結合するヒトモノクローナル抗-LAM抗体、またはPIM6中またはLAMマンナンドメイン内の少なくとも1つのポリマンノース構造に特異的に結合する抗-PIM6/LAM抗体である。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、Man-LAMエピトープ、例えば、ジマンノース置換側鎖、トリマンノース置換側鎖、またはそれらに対する組み合わせに特異的に結合する。さらなる実施形態では、抗-LAM抗体は、Man-LAMエピトープ、例えば、ジマンノースまたはトリマンノースでキャッピングされたAra4および/またはAra6構造に特異的に結合する。さらなる実施形態では、抗-LAM抗体は、ジマンノースでキャッピングされたAra6構造に特異的に結合する。
【0028】
一部の実施形態では、本発明は、個体における活動性結核感染を診断するための方法を提供する。一部の実施形態では、抗-LAMまたは抗PIM6/LAM抗体は、高感度タグで修飾し、TB感染および局在化についての診断として組織試料中のマイコバクテリアのPIM6またはLAMに関連した材料を同定するため、用いることができる。一部の実施形態では、該方法は、可溶性LAMの捕捉を包含し、かつ、(a)LAMを含む個体から試料を得るステップと;(b)前記LAMを単離するかまたは曝露させるため、試料を処理するステップと、(c)前記単離または曝露されたLAMを、前記LAM上の第1のエピトープに結合する第1の抗-LAM抗体を用いて捕捉するステップと;(d)前記単離または曝露されたLAMを、前記LAM上の第2のエピトープに結合する第2の抗-LAM抗体と接触させるステップと;(e)前記第1の抗-LAM抗体および前記第2の抗-LAM抗体の少なくとも1つの前記LAMへの結合を検出するステップと;(f)前記患者を活動性結核感染を有するものとして診断するステップと、を含み、ここで前記第1の抗-LAM抗体および前記第2の抗-LAM抗体の少なくとも1つの前記LAMへの結合の前記存在は、活動性結核感染を示す。一部の実施形態では、第1の抗-LAM抗体および第2の抗-LAM抗体の少なくとも1つは、Ara4およびAra6またはそれらの組み合わせの1つに特異的に結合するヒトモノクローナル抗-LAM抗体である。一部の実施形態では、第1および第2の抗体の少なくとも1つは、LAMマンナンドメイン内の少なくとも1つのポリマンノース構造に特異的に結合するヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体である。さらなる実施形態では、第1の抗体および第2の抗体は、異なるアイソタイプである。一部の実施形態では、第1の抗体および第2の抗体の少なくとも1つは、組換え抗体である。他の実施形態では、第1の抗体と第2の抗体のいずれもが組換え抗体でない。さらに他の実施形態では、第1の抗体および第2の抗体の双方ともが組換え抗体である。
【0029】
一部の実施形態では、本発明は、試料中に存在するLAMおよび/またはPIM6の量を定量化する方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、(a)LAMおよび/またはPIM6を含む試料を得るステップと;(b)前記試料を抗-LAM抗体および/または抗-PIM6抗体と接触させるステップと;(c)抗-LAM抗体の前記LAMへの特異的結合および/または抗-PIM6/LAM抗体の前記LAMまたは前記PIM6への結合の存在を検出するステップと;(d)前記試料中のLAMまたはPIM6の量を定量化するステップと、を含む。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、Ara4およびAra6またはそれらの組み合わせの1つに特異的に結合するヒトモノクローナル抗-LAM抗体である。一部の実施形態では、抗-PIM6/LAM抗体は、PIM6マンナンドメイン内の少なくとも1つのポリマンノース構造(例えば、マイコバクテリアのリポマンナン(LM)中の少なくとも1つのポリマンノース構造)に特異的に結合するヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体である。一部の実施形態では、LAMおよび/またはPIM6の前記量の定量化は、そのシグナル強度を既知の濃度のLAMおよび/またはPIM6を有する連続希釈された対照試料のシグナル強度と比較することにより達成される。
【0030】
一部の実施形態では、本発明は、個体を結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に感染している者として診断するための方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、(a)LAMまたはPIM6を含む試料を得るステップと;(b)前記試料を抗-LAM抗体および/または抗-PIM6抗体と接触させるステップと、(c)抗-LAM抗体の前記Man-LAMへの特異的結合の存在および/または抗-PIM6/LAM抗体の前記PIM6への特異的結合の存在を検出するステップと、を含み、ここで抗-LAM抗体は、少なくとも1つの5-デオキシ-5-メチルチオペントフラノシル(MTX)置換を有するMan-LAMを含むLAMエピトープに特異的に結合し、また抗-PIM6/LAM抗体は、LAMマンナンドメイン内の少なくとも1つのポリマンノース構造を含むエピトープに特異的に結合する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、Ara4およびAra6またはそれらの組み合わせの1つに特異的に結合するヒトモノクローナル抗-LAM抗体である。一部の実施形態では、抗-PIM6/LAM抗体は、PIM6マンナンドメイン内の少なくとも1つのポリマンノース構造に特異的に結合するヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体(例えばP95C1)である。
【0031】
一部の実施形態では、該方法は、検出方法の感度を高める増幅ステップを含む。例として、Tyramide Signal Amplificationキット(Perkin-Elmer)の使用による追加的な標的部位の生成またはELISA Amplification System(Thermo Fisher)の使用による初期シグナルの増幅が包含される。
【0032】
一部の実施形態では、本発明は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の病原性メンバーと結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の非病原性メンバーとの間を区別する方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、(a)LAMおよび/またはPIM6を含む試料を得るステップと;(b)前記試料を、ジマンノース置換側鎖、トリマンノース置換側鎖、もしくはそれらの組み合わせを含むMan-LAMエピトープに特異的に結合する抗-LAM抗体、またはPIM6マンナンドメイン内の少なくとも1つのポリマンノース構造に特異的に結合する抗-PIM6/LAM抗体と接触させるステップと;(c)抗-LAM抗体の前記Man-LAMへの特異的結合の存在、または抗-PIM6/LAM抗体のPIM6マンナンドメイン内の前記少なくとも1つのポリマンノース構造への特異的結合の存在を検出するステップと、を含み、ここで前記特異的結合の存在は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の病原性メンバーの存在を示す。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、Ara4およびAra6またはそれらの組み合わせの1つに特異的に結合するヒトモノクローナル抗-LAM抗体である。さらなる実施形態では、Man-LAMエピトープは、ジマンノースまたはトリマンノースでキャッピングされたAra4および/またはAra6構造を含む。さらなる実施形態では、Man-LAMエピトープは、ジマンノースでキャッピングされたAra6である。一部の実施形態では、抗-PIM6/LAM抗体は、PIM6マンナンドメイン内の少なくとも1つのポリマンノース構造に特異的に結合するヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体である。
【0033】
C.治療組成物、方法、ワクチン、およびベクター
一部の実施形態では、本発明は、個体における結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の毒性メンバーによる感染を治療するための方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、少なくとも1つの抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体を治療有効量で感染性結核菌(M.tb)に曝露された個体に投与するステップを含む。さらなる実施形態では、該方法は、少なくとも1つの抗生物質の投与を含む。一部の実施形態では、TB感染は活動性である。他の実施形態では、TB感染は潜在性である。一部の実施形態では、感染は、結核の多剤耐性(MDR)株を伴う。他の実施形態では、感染は、結核の広範囲薬剤耐性(XDR)株を伴う。
【0034】
一部の実施形態では、本発明は、個体における結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の毒性メンバーによる感染を治療するための併用療法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、非置換LAM、モノマンノシル化Man-LAM、MSX置換LAM、およびそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む第1のLAMエピトープに特異的に結合する第1の抗-LAM抗体、またはPIM6およびLAMマンナンドメイン内の少なくとも1つのポリマンノース構造に特異的に結合する第1の抗-PIM6/LAM抗体を治療有効量で投与するステップと;ジマンノース置換Man-LAM、トリマンノース置換Man-LAM、およびそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む第2のLAMエピトープに特異的に結合する第2の抗-LAM抗体を治療有効量で投与するステップと、を含む。一部の実施形態では、第1の抗体および第2の抗体は、(例えば、単一の組成物中で、または同時に投与される2つの組成物中で)同時に投与される。他の実施形態では、第1の抗体および第2の抗体は、異なる時点に投与される。一部の実施形態では、第1の抗-LAM抗体および第2の抗-LAM抗体の少なくとも1つは、Ara4およびAra6またはそれらの組み合わせの1つに特異的に結合するヒトモノクローナル抗-LAM抗体である。一部の実施形態では、抗-PIM6/LAM抗体は、PIM6中および/またはLAMのPIM6交差反応性マンナンドメイン内の少なくとも1つのポリマンノース構造に特異的に結合するヒトモノクローナル抗-PIM6抗体である。一部の実施形態では、第1の抗-LAM抗体および第2の抗-LAM抗体、または抗-PIM6/LAM抗体は、異なるアイソタイプである。一部の実施形態では、第1の抗-LAM抗体および第2の抗-LAM抗体の少なくとも1つ、および抗-PIM6/LAM抗体は、組換え抗体である。他の実施形態では、第1の抗-LAM抗体、第2の抗-LAM抗体、抗-PIM6/LAM抗体のいずれもが組換え抗体でない。さらに他の実施形態では、第1の抗-LAM抗体と第2の抗-LAM抗体の双方、または抗-PIM6/LAM抗体は、組換え抗体である。さらなる実施形態では、該方法は、少なくとも1つの抗生物質の投与を含む。かかる実施形態では、少なくとも1つの抗生物質は、第1および第2の抗体と同時に投与(例えば同時投与)され得るか、または少なくとも1つの抗生物質は、第1および第2の抗体の投与の時点と異なる時点で投与され得る。一部の実施形態では、感染は活動性である。他の実施形態では、感染は潜在性である。一部の実施形態では、感染は、多剤耐性(MDR)結核感染である。他の実施形態では、感染は、広範囲薬剤耐性(XDR)結核感染である。
【0035】
一部の実施形態では、本発明は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の毒性メンバーによる感染を予防するためのワクチンまたは医薬組成物を提供する。一部の実施形態では、本発明は、患者における宿主免疫応答を刺激する方法であって、LAM抗原および/またはPIM6抗原を治療有効量で前記患者に投与するステップを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、これらの抗原は、免疫原性タンパク質担体にコンジュゲートされ、かつ/または糖脂質抗原に対する免疫応答を強力に刺激するアジュバントと同時投与される。一部の実施形態では、ワクチンまたは医薬組成物は、Man-LAMエピトープに特異的に結合する抗-LAM抗体、および/またはPIM6マンナンドメイン内の少なくとも1つのポリマンノース構造に特異的に結合する抗-PIM6/LAM抗体を誘導する。さらなる実施形態では、ワクチンまたは医薬組成物中に存在するMan-LAMエピトープは、ジマンノースまたはトリマンノースでキャッピングされたAra4および/またはAra6構造を含む。さらなる実施形態では、Man-LAMエピトープは、ジマンノースでキャッピングされたAra6である。一部の実施形態では、Man-LAMエピトープは、少なくとも1つのMTX置換を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体および/または抗-PIM6/LAM抗体は、IgM抗体である。他の実施形態では、抗-LAM抗体および/または抗-PIM6/LAM抗体は、組換え抗体である。
【0036】
一部の実施形態では、本発明は、個体における結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の毒性メンバーによる感染を保護抗体の受動投与により予防する方法を提供する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、Ara4およびAra6またはそれらの組み合わせの1つに特異的に結合するヒトモノクローナル抗-LAM抗体である。一部の実施形態では、抗-PIM6/LAM抗体は、PIM6およびLAMマンナンドメイン内の少なくとも1つのポリマンノース構造に特異的に結合するヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体である。一部の実施形態では、該方法は、Man-LAMエピトープに特異的に結合する抗-LAM抗体、および/またはPIM6エピトープ(例えば、PIM6およびLAMによって共有されるエピトープ)に特異的に結合する抗-PIM6抗体を治療有効量で個体に投与するステップを含む。さらなる実施形態では、標的化されるManLAMエピトープは、ジマンノースまたはトリマンノースでキャッピングされたAra4および/またはAra6構造を含む。さらなる実施形態では、ManLAMエピトープは、ジマンノースでキャッピングされたAra6である。一部の実施形態では、ManLAMエピトープは、少なくとも1つのMTX置換を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体は、IgM抗体である。他の実施形態では、抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体は、組換え抗体である。
【0037】
一部の実施形態では、本発明は、組換えベクターを介した保護抗体の受動投与を提供する。一部の実施形態では、組換えベクターは、抗-LAM抗体のIgVLをコードする第1の核酸および抗-LAM抗体のIgVHをコードする第2の核酸を含み、ここで核酸の各々は、プロモーター領域に作動可能に連結される。一部の実施形態では、IgVLおよびIgVHの少なくとも1つは、Ara4およびAra6またはそれらの組み合わせの1つに特異的に結合するヒトモノクローナル抗-LAM抗体から誘導される。他の実施形態では、組換えベクターは、抗-PIM6/LAM抗体のIgVLをコードする第1の核酸および抗-PIM6/LAM抗体のIgVHをコードする第2の核酸を含み、ここで核酸の各々は、プロモーター領域に作動可能に連結される。一部の実施形態では、組換えベクターは、追加的な転写調節エレメントを含む。一部の実施形態では、第1の核酸配列および第2の核酸配列の少なくとも1つは、オペロン内に組織化される。一部の実施形態では、第1の核酸配列および第2の核酸配列の少なくとも1つは、発現カセット内に組織化される。一部の実施形態では、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、単一の発現カセット内に組織化される。一部の実施形態では、第1の核酸および第2の核酸は、同じクローニングベクター内に位置する。他の実施形態では、第1の核酸および第2の核酸は、異なるクローニングベクター内に位置する。一部の実施形態では、第1の核酸および第2の核酸の発現は、同時的であり得る。他の実施形態では、第1の核酸および第2の核酸の発現は、別々に誘導可能である。一部の実施形態では、第1の核酸の発現は、第2の核酸の発現と時間的に分離され得る。一部の実施形態では、組換えベクターは、プラスミドである。他の実施形態では、組換えベクターは、非増殖性ウイルスである。さらなる実施形態では、組換えベクターは、アデノ随伴ウイルスである。
【0038】
一部の実施形態では、本発明は、個体における結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の毒性メンバーによる感染を治療する方法について提供する。一部の実施形態では、該方法は、抗-LAM抗体のIgVHをコードする第1の核酸、および抗-LAM抗体のIgVLをコードする第2の核酸を個体に投与するステップを含み、ここで核酸の各々は、プロモーター領域に作動可能に連結される。他の実施形態では、該方法は、抗-PIM6/LAM抗体のIgVHをコードする第1の核酸、および抗-PIM6/LAM抗体のIgVLをコードする第2の核酸を個体に投与するステップを含み、ここで核酸の各々は、プロモーター領域に作動可能に連結される。一部の実施形態では、IgVLおよびIgVHの少なくとも1つは、Ara4およびAra6またはそれらの組み合わせの1つに特異的に結合するヒトモノクローナル抗-LAM抗体から、またはPIM6マンナンドメイン内の少なくとも1つのポリマンノース構造に特異的に結合するヒトモノクローナル抗-PIM6/LAM抗体から誘導される。一部の実施形態では、第1の核酸および第2の核酸は、同じクローニングベクター内に位置する。他の実施形態では、第1の核酸および第2の核酸は、異なるクローニングベクター内に位置する。一部の実施形態では、組換えベクターは、プラスミドである。他の実施形態では、組換えベクターは、非増殖性ウイルスである。さらなる実施形態では、組換えベクターは、アデノ随伴ウイルスである。
【0039】
さらなる実施形態、特徴および利点は、本明細書に提供される開示に基づき、当業者に容易に理解されるであろう。他の特徴は、以下の説明および特許請求の範囲から、パッケージが関係する当業者により十分に理解されるであろう。本明細書に記載される場合に類似または相当する抗体、組成物、キットおよび方法が本発明の実行または試験において使用可能であるが、好適な抗体、組成物、キットおよび方法が以下に記載される。本明細書中で言及されるすべての出版物、特許出願、および特許は、それら全体が参照により援用される。コンフリクトの場合、定義を含む本明細書はコントロールする。以下に考察される特定の実施形態は、あくまで例示的なものであり、限定は意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1Aは、結合競合アッセイにて用いられるA194-01のIgG型およびその断片のモデルである。これらは、一価scFvおよびFab構造、ならびに二価scFv二量体および天然IgGを含んだ。
図1Bは、A194-01の一価形態が二価形態よりも大して有効に競合しなかったことを示す競合曲線である。
図1Cは、A194-01のより高い結合価の形態の構造である。これは、正常な重鎖の各々のN末端に連結されたA194-01 scFvドメインを有する、相同な四価A194-01 scFv-IgGを表す。
【
図2】
図2Aは、P30B9 IgGおよびIgM型、ならびにVH領域内の6つのアミノ酸挿入物が欠失されたか、またはVH領域内の9つの体細胞突然変異が最も近い生殖系列配列、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のManLAMに復帰されたIgMの結合活性である。6つのアミノ酸挿入物は、9つの体細胞突然変異よりも大きい程度で反応性に寄与した。
図2Bおよび2Cは、P30B9 IgMおよびIgG型、ならびに結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のManLAM(B)およびスメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)由来のPILAM(C)に対する重鎖における6つのアミノ酸欠失を伴う突然変異の反応性を比較する。IgM型は、IgG型と異なり、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のManLAM(2B)と特異的に反応したが、PILAM(2C)とは特異的に反応せず、Δ6アミノ酸突然変異体のManLAMに対する反応性は非常に低下し、PILAMに対しては陰性であった。
【
図3】
図3は、2つのヒトmAbおよび4つのマウスmAbの、左パネルでのPILAM、また右パネルでの結核菌(Mycobacterium tuberculosis)のH37Rv株から単離されたManLAMに対する反応性を比較する。曲線は、これらの試薬の異なる分子量について制御するため、抗体のモル濃度を用いてプロットされた。
【
図4A】
図4Aは、LAM中に存在するモチーフに関係する微生物のグリカン構造を表す25の合成オリゴ糖の構造である。これらの構造は、BSA担体タンパク質にカップリングされ、エピトープ特異性を探索するために用いられた。
【
図4B】
図4Bは、25の合成オリゴ糖のパネルに対する6つのLAMに特異的なモノクローナル抗体における結合特性である。結合結果は、3つの濃度に対して示され、抗体のこれらの抗原に対する相対的親和性が適定パターンにより示される。
【
図5】
図5は、左側パネルが、IgA1(A)、IgA2(B)および二量体IgA1-J二量体複合体(C)の構造である。右側パネルが、DTTによる還元の前と後の双方での、精製されたP30B9 IgA1、IgA2およびIgA3タンパク質のSDS-PAGEゲルである。P30B9 IgA3は、より長いヒンジ領域を伴うPCRの人為的結果であることが後に示された。
【
図6】
図6は、IgM型、次いでIgA型に対して最大活性を示し、IgG型に対して反応性を有しない、P30B9の異なるアイソタイプのManLAMへの結合曲線である。
【
図7】
図7は、指定濃度のManLAMがCS-35により捕捉され、ビオチンで標識された指定のmAbにより検出された、CS-35捕捉アッセイにおける可溶性ManLAMの検出時のビオチン化モノクローナル抗体プローブの効率の比較である。
【
図8】
図8は、様々なマンノースでキャッピングされたAra4構造、またはテトラおよびペンタマンノース構造へのP30B9の結合曲線である。関連α-Manp(1→2)-Manp結合を有する構造3(ジマンノース-Ara4)および59において優先的結合が見られた。
【
図9】
図9は、反応性に対する構造的要件を判定するための、様々なキャップのないLAM関連複合糖質に対するモノクローナル抗-LAM抗体の適定である。
図9Aは、Ara4配列の非還元末端からの最後から2番目の位置でのAra-α(1→5)-Ara結合の重要性の分析である。
図9Bは、Ara4配列の末端位置でのAra-β(1→2)-Ara結合の依存性の分析である。
【
図10】
図10は、抗体反応性に対する異なるキャッピングモチーフの効果を示す、様々なAra6を有する複合糖質に対するA194-01 IgGおよび3つのマウス抗-LAM抗体の結合曲線である。
【
図11】
図11は、個別の抗-LAM抗体の、プローブ抗体のManLAM抗原への結合に対して競合する能力を測定するための結合競合試験である。抗体は、同じ種由来の抗体に対する試験時、ビオチン化された。A194-01がビオチン化P30B9に対して競合できないことに注意されたい。
【
図12】
図12は、抗-LAMモノクローナル抗体の結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のLAM(ManLAM)およびスメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)由来のLAM(PILAM)への結合の競合である。ManLAMに対するFIND25とP30B9との間の効率的競合は、ジマンノース置換Ara6の支配に合致する一方で、これら2つのmAbのA194による競合の欠如は、ジマンノースでキャッピングされた構造とのその低い反応性に合致する。FIND25対PILAMに対するA194の効率的競合は、この構造中のジマンノースキャッピングの不在に合致する。
【
図13】
図13は、ビオチン化プローブモノクローナル抗体と天然LAM抗原および選択された複合糖質に対する余分な非修飾抗体との結合競合である。
図13Aは、ビオチン化A194-01 IgG、CS-35およびFIND25のMAnLAMへの結合の4つのmAbによる競合であり;
図13Bは、FIND25のManLAMとPILAMの双方への結合の3つのmAbによる競合であり;
図13Cは、P30B9 IgMのMAnLAMおよび2つの合成複合糖質抗原への結合の4つのmAbによる競合である。
【
図14】A194-01の改変された変異体および/または誘導体は、A194-01のIgGアイソタイプによって低く認識されるジおよびトリマンノース置換形態を含む、より広範囲の複合糖質と反応する。
【
図15】
図15は、A194-01 IgGならびにA194-01の改変された変異体および/または誘導体の、FIND25およびP30B9 IgMのManLAMへの結合に対する差次的競合である。A194 IgGはManLAMに対するP30B9またはFIND25と競合しないが、多量体形態は、これらの形態のより広範なエピトープ特異性に合致して確かに競合する。上で示されるように、A194 IgGは、PILAMに対してFIND25と大して競合しない。
【
図16】
図16は、CS-40、A194-01およびP30B9 mAbの反応性に対するマンノースキャッピングの効果の分析についての比較である。抗体結合特異性は、異なるマンノース置換を有する特定の複合糖質に対してELISAにより測定された。抗体滴定は、
図16Aに示され、マンノース含有グリカン抗原の構造は
図16Bに示される。
【
図17】
図17Aは、相同scFv-IgGである。この例では、IgGおよびscFvドメインの双方は同じ抗体に由来する。これは、増加した結合価(二価に対する四価)をもたらすが、標的特異性を直接的に修飾しない。
図17Bは、異種scFv-IgGである。結合価における増加に加えて、広範化された特異性も導入され、それは、単一抗原分子中の異なるエピトープの認識を可能にし得る。
図17Cは、異種scFv-IgMである。この製剤では、異なるscFvがIgM構築物と組み合わされる。一例としては、A194-01 scFvとP30B9 IgMとの連結が挙げられる。結合価における増加に加えて、この場合、追加的なエピトープ特異性を導入することになり、それは、相同scFv-IgMによって認識されないことがある異なるエピトープの多価認識を可能にし、親和性の増加をもたらし得る。
【
図18A】
図18は、新しいmAbによって認識されるエピトープのマッピングである。P95C1のエピトープ特異性が、2つの前述されたmAbのA194-01およびP30B9、ならびに2つの前述されたmAbに関連するエピトープを認識する2つの新しいmAbのP61H5およびP83A8の場合と比較された。
図18Aは、LAMに特異的なmAbのLAM前駆物質分子に対する反応性である。P30B9およびP61H5は、PILAMよりもManLAMに特異的であった一方で、A194-01、P83A8およびP95C1は、LAMの両形態を認識した。P95C1はまた、LMおよびPIM6と効率的に結合した。他のmAbのLMおよびPIM6に対する弱い反応性は、少なくとも一部にはManLAMによるこれらの材料の汚染に起因する。
【
図18C】
図18Cは、以前から公知のmAbと対照的に、P95C1は、ポリアラビノース構造のいずれも認識しない唯一の抗体であったが、PIM6中ならびにLMおよびLAMの塩基でのマンナンドメイン内に存在する構造に類似する、2つのポリマンノース構造YB-BSA-05およびYB-BSA-11と特異的に反応した。
【
図19】
図19は、P95C1およびP30B9のManLAMおよびPI-LAMへの結合に対するアイソタイプスイッチの効果である。P95C1においては、IgM、IgAおよびIgGアイソタイプはすべて、IgGとしてではなくIgMおよびIgA型のみで専らManLAMと反応するP30B9と異なり、ManLAMおよびPILAMの双方に対して同等の結合活性を有する。
【
図20】
図20は、P95C1とLAMおよび追加的な結核菌(M.tb)糖脂質との交差反応性のウエスタンブロット解析である。
図20(A):精製されたLAMに関連した糖脂質は、12%SDS-PAGEゲル上で分離され、その後、過ヨウ素酸シッフ染色で糖分子の酸化および染色が行われ、反応性グリカンを含有する材料を呈した。
図20(B):並行ブロットがmAbのA194 IgG1、P30B9 IgM、およびP95C1 IgMで探索され、その後、アルカリホスファターゼが抗ヒトIgGおよびIgM二次抗体にコンジュゲートされ、bcip/nbt発色基質で処理された。A194-01は、結核菌(M.tb)由来のManLAMおよびスメグマ菌(M.smeg)由来のPILAMと交差反応する。P30B9は、結核菌(M.tb)のManLAMに特異的である。P95C1は、LAM、ならびに結核菌(M.tb)から単離されるLMおよびPIM6の両種を認識する。LAMと共遊走するLMおよびPIM6中のバンドのA194-01による弱い染色は、明らかにこれらの試料のLAMによる微量な汚染に起因する。
【
図21】
図21は、A194重鎖および軽鎖可変領域配列におけるアミノ酸配列の整列ならびにそれらの最も近い生殖系列配列とのそれらの比較である。上部の整列化では、上からの第1のアミノ酸配列(A194-VH)は、CDR3配列(配列番号23)を有しないA194重鎖可変領域配列である。CDR3を有しない重鎖可変領域配列は、配列番号21である。上部の整列化では、第2のアミノ酸配列(生殖系列Homsap IGHV3-20
*01)は、配列番号22である。上部の整列化では、第3のアミノ酸配列は、A194重鎖可変領域のCDR3であり、配列番号23である。下部の整列化では、上からの第1のアミノ酸配列(A-194-Vk)は、CDR3配列(配列番号26)を有しないA194軽鎖可変領域である。CDR3を有しない軽鎖可変領域配列は、配列番号24である。下部の整列化では、第2のアミノ酸配列(生殖系列Homsap IGKV3-15
*01)は、配列番号25である。下部の整列化では、第3の配列は、A194軽鎖可変領域のCDR3であり、配列番号26である。
【
図22】
図22は、P30B9-IgM重鎖および軽鎖可変領域配列におけるアミノ酸配列ならびにそれらの最も近い生殖系列とのそれらの比較である。上部の整列化では、上からの第1のアミノ酸配列(P30B9-Vh)は、CDR3配列(配列番号29)を有しないP30B9-IgM重鎖可変領域配列である。CDR3を有しない重鎖可変領域配列は、配列番号27である。第2のアミノ酸配列(Homsap IGHV4-34
*01F)は、配列番号28である。第3のアミノ酸配列は、P30B9-IgM重鎖可変領域のCDR3であり、配列番号29である。下部の整列化では、上からの第1のアミノ酸配列(P30B9-Vk)は、CDR3配列(配列番号32)を有しないP30B9軽鎖可変領域である。CDR3を有しない軽鎖可変領域配列は、配列番号30である。下部の整列化では、第2のアミノ酸配列(生殖系列Homsap IGKV1-5
*03)は、配列番号31である。下部の整列化では、第3の配列は、P30B9軽鎖可変領域のCDR3であり、配列番号32である。
【
図23】
図23は、P95C1-IgM重鎖および軽鎖可変領域配列におけるアミノ酸配列の整列ならびにそれらの最も近い生殖系列配列とのそれらの比較である。上部の整列化では、上からの第1のアミノ酸配列(P95C1-VH)は、CDR3配列(配列番号18)を有しないP95C1重鎖可変領域配列である。CDR3を有しない重鎖可変領域配列は、配列番号33である。上部の整列化では、第2のアミノ酸配列(生殖系列Homsap IGHV4-4
*02)は、配列番号34である。上部の整列化では、第3のアミノ酸配列は、P95C1-gM重鎖可変領域のCDR3であり、配列番号18である。下部の整列化では、上からの第1のアミノ酸配列(P95C1-Vk)は、CDR3配列(配列番号15)を有しないP95C1軽鎖可変領域である。CDR3を有しない軽鎖可変領域配列は、配列番号36である。下部の整列化では、第2のアミノ酸配列(生殖系列Homsap IGKV4-1
*01F)は、配列番号37である。下部の整列化では、第3の配列は、P95C1軽鎖可変領域のCDR3であり、配列番号15である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
詳細な説明
A.定義
特段の定義がされていない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されている場合と同じ意味を有する。
【0042】
抗-LAM抗体は、本明細書で開示される通り、当該技術分野における極めて多数の形態の1つをとってもよい。抗体は、一部には、その結合対象の抗原によって規定され、故に「抗-LAM抗体」は、本明細書に記載される、リポアラビノマンナン(LAM)の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合するような任意の抗体である。抗体が、ジスルフィド結合により相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質、またはその抗原結合部分であることは当該技術分野で理解されている。重鎖は、重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)からなる。軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)からなる。重鎖および軽鎖双方の可変領域は、フレームワーク領域(FWR)および相補性決定領域(CDR)を含む。4つのFWR領域が比較的保存される一方で、CDR領域(CDR1、CDR2およびCDR3)は、超可変領域を表し、NH2末端からCOOH末端にかけて、FWR1、CDR1、FWR2、CDR2、FWR3、CDR3、FWR4のように配列される。重鎖および軽鎖の可変領域が抗原と相互作用する結合ドメインを含む一方で、アイソタイプに応じて、定常領域は、免疫グロブリンの宿主組織または因子への結合を媒介し得る。
【0043】
抗-PIM6/LAM抗体は、本明細書で開示される通り、当該技術分野における極めて多数の形態の1つをとってもよい。「抗-PIM6/LAM抗体」は、本明細書に記載される、ホスファチジルイノシトールマンノシド6(PIM6)およびLAMによって共有される少なくとも1つのエピトープに特異的に結合するような任意の抗体である。本明細書に記載されるLAMおよびPIM6によって共有されるエピトープに特異的なヒトmAbは、PIM6中ならびにLMおよびLAMのPIM6関連マンナンドメイン内の少なくとも1つのポリマンノース構造に特異的に結合するP95C1である。P95C1は、共通の(共有された)エピトープを認識することから、LAMおよびPIM6双方に結合し、それ故、本明細書中で「抗-PIM6/LAM抗体」または「抗-PIM6/LAMモノクローナル抗体」、「ヒト抗-PIM6/LAM抗体」または「ヒト抗-PIM6/LAMモノクローナル抗体」と称される。
【0044】
モノクローナルおよび他の抗体を操作し、組換えDNA技術の技法を用いて、元の抗体の特異性を保持する他の抗体またはキメラ分子を産生することが可能であることは当該技術分野で公知である。かかる技法は、抗体の免疫グロブリン可変領域、またはCDRをコードするDNAを、異なる免疫グロブリンの定常領域、または定常領域+フレームワーク領域に導入することを含んでもよい。
【0045】
用語「抗体」(Ab)は、本明細書で用いられるとき、最も広義に用いられ、また詳細には、天然であるかまたは部分的もしくは全体的に合成により産生される任意の免疫グロブリン、例えば限定はされないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多選択性抗体(例えば、二重特異性抗体および多反応性抗体)、および抗体断片を含んでもよい。したがって、用語「抗体」は、本願中の任意の文脈で用いられるとき、限定はされないが、任意の特異的結合メンバー、免疫グロブリンクラスおよび/またはアイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、およびIgE)、ならびに生物学的に関連のある断片またはその特異的結合メンバー、例えば限定はされないが、Fab、F(ab’)2、scFv(一本鎖または関連実体)および(scFv)2を含むことを意味する。
【0046】
用語「抗体断片」は、本明細書で用いられるとき、本明細書で概説される通り、当業者にとって容易に理解され、利用可能な技術を用いて得られる抗体断片を含んでもよい。したがって、用語「抗体」は、インタクトな抗体の一部、例えばインタクトな抗体の抗原結合または可変領域を含む任意のポリペプチドまたはタンパク質を表す。これらは、天然供給源から誘導され得るか、または部分的または全体的に合成により産生されてもよい。抗体断片の例として、限定はされないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片;二重特異性抗体、および直鎖抗体が挙げられる。特に、本明細書で用いられるとき、「一本鎖Fv」(「sFv」または「scFv」)は、単一のポリペプチド鎖内に接続されたVHおよびVL抗体ドメインを含む抗体断片である。sFvポリペプチドは、例えばscFvが抗原結合にとって所望される構造形成することを可能にするVHおよびVLドメイン間の可動性ポリペプチドリンカーなどのリンカーをさらに含み得る。
【0047】
用語「モノクローナル抗体」または「mAb」は、本明細書で用いられるとき、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体、すなわちその集団を含む個別の抗体が、少量で存在し得る、天然に存在する可能性がある突然変異を除いて同一であることを指してもよい。
【0048】
用語「変異体」、「誘導体」、および/または「変異体および/または誘導体」は、本明細書で用いられるとき、前述の化合物が構造的に類似する、すなわち元の非修飾抗体と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の、またはそれより大きい配列同一性があるような同一性の程度を保持する、かつ/または、構造的同一性と無関係に元の非修飾抗-LAMおよび抗-PIM6/LAM抗体と機能的に類似し得る、すなわち、LAMの少なくとも1つのエピトープまたは共有されたPIM6/LAMエピトープに各々特異的に結合する能力を保持する限り、天然供給源から得られるかまたは部分的もしくは全体的に合成により産生される抗体、抗体断片、組換え抗体、ならびにタンパク質、タンパク質断片、およびポリペプチドを指してもよい。例えば、かかる変異体および/または誘導体は、変異体Fcドメイン、キメラ抗体、融合タンパク質、二重特異性抗体、または他の組換え抗体を伴う抗-LAMまたは抗-PIM6/LAM抗体を含んでもよい。かかる変異体および/または誘導体抗体は、LAM、またはPIM6の1つ以上のエピトープに対してより大きい結合特異性を必ずしも有する必要がなくてよく、かつ/またはさらなるLAMまたはPIM6エピトープに結合可能であってもよい。
【0049】
用語「生体試料」は、生物(例えば患者)または生物の構成成分(例えば細胞)から得られる試料を指す。試料は、任意の生物学的組織、細胞または体液であってもよい。試料は、対象、例えばヒト患者由来の試料である「臨床試料」であってもよい。かかる試料は、限定はされないが、唾液、痰、血液、血球(例えば白色細胞)、羊水、血漿、精液、骨髄、および組織もしくは微小針生検試料、尿、腹水、および胸水、またはそれらに由来する細胞を含む。生体試料はまた、組織学的目的のために採取される凍結切片などの組織の切片を含んでもよい。生体試料はまた、「患者試料」と称されてもよい。生体試料はまた、実質的に精製または単離されたタンパク質、膜標本、または細胞培養液を含んでもよい。
【0050】
用語「有効量」または「治療有効量」は、本明細書で用いられるとき、治療対象における医学的に望ましい結果をもたらす能力がある化合物または薬剤の量を指してもよい。治療方法は、インビボまたは生体外で、単独でまたは他の薬物すなわち治療薬と併用して実施され得る。治療有効量は、1回以上の投与、適用または用量で投与され得、特定の製剤または投与経路に限定されることは意図されない。
【0051】
用語「抗原結合断片」または「Fab」は、本明細書で用いられるとき、抗原に結合する抗体上の領域を指してもよい。当業者は、Fabが抗体の重鎖および軽鎖の各々の1つの定常ドメインおよび1つの可変ドメインからなることを理解するであろう。
【0052】
本明細書で用いられるとき、用語「特異的結合」、「選択的結合」、「選択的に結合する」および「特異的に結合する」は、他の抗原でない、所定の抗原上のエピトープへの抗体の結合を指してもよい。典型的には、抗体は、(i)例えば、分析物として所定の抗原、例えばLAMエピトープ、またリガンドとしてその抗体を用いる、BIACORE(登録商標)2000表面プラズモン共鳴装置での表面プラズモン共鳴(SPR)技術、または抗体の抗原陽性細胞への結合のスキャッチャード分析により測定されるとき、約10-6M未満、例えば約10-7M未満、10-8M、10-9Mまたは10-10Mのまたはさらに低い平衡解離定数(KD)で結合し、かつ(ii)所定の抗原または密接に関連した抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合におけるその親和性よりも少なくとも2倍高い親和性で所定の抗原に結合する。
【0053】
用語「保存的配列修飾」または「保存的置換」は、本明細書で用いられるとき、アミノ酸配列を有する抗体の結合特性を有意に影響または改変しないアミノ酸修飾を指してもよい。かかる保存的修飾は、アミノ酸置換、付加および欠失を含む。修飾は、当該技術分野で公知の標準的技術、例えば部位特異的変異誘発およびPCR介在性突然変異誘発により、本発明の抗体に導入され得る。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似側鎖を有するアミノ酸残基と置換される場合である。類似側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。したがって、本発明の抗体のCDR領域内の1つ以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基と置換され得、改変された抗体は、本明細書に記載の機能的アッセイを用いて、保持された機能について試験され得る。
【0054】
用語「同一性」は、本明細書で用いられるとき、2つの組成物間で共有される構造の存在を指してもよい。タンパク質との関連での用語「同一性」は、2つ以上のアミノ酸および/またはペプチド配列間での重複の(例えば百分率で表される)量を指してもよい。核酸との関連では、該用語は、2つ以上の核酸配列間での重複の(例えば百分率で表される)量を指してもよい。本明細書で用いられるとき、2つの配列間のパーセント(%)同一性は、その2つの配列間のパーセント同一性に等しい。2つの配列間のパーセント同一性は、ギャップの数、および各ギャップの長さ(2つの配列の最適な整列化のために導入される必要がある)を考慮して、それら配列によって共有される同一位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一位置の数/位置の総数×100)。配列の比較および2つの配列間のパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを用いて行われ得る。かかる同一性は、局所整列化ツールおよび/またはアルゴリズムを介して当該技術分野で十分に説明されており、ペアワイズアラインメント、複数の配列整列化法、構造的整列化法、および/または系統発生分析法を含んでもよい。特定例が以下に挙げられる。2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)中に組み込まれているE.MeyersおよびW.Millerのアルゴリズム(Comput.Appl.Biosci.,4:11-17(1988))を用い、PAM120重量残基表、12のギャップ長ペナルティおよび4のギャップペナルティを用いて決定され得る。さらに、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで入手可能)中のGAPプログラム中に組み込まれているNeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.48:444-453(1970))アルゴリズムを用い、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6、もしくは4のギャップ重量および1、2、3、4、5、もしくは6の長さ重量を用いて決定され得る。追加的または代替的に、本発明のタンパク質配列は、例えば関連配列を同定するため、公的データベースに対する探索を実施するための「クエリー配列」としてさらに用いることができる。かかる探索は、Altschul,et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-10のXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて実施され得る。BLASTタンパク質探索は、本発明の抗体分子に相同なアミノ酸配列を得るため、XBLASTプログラム(スコア=50、ワード長=3)を用いて実施され得る。比較目的でギャップ化整列を得るため、Altschul et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402に記載のように、ギャップ化BLASTを利用することができる。BLASTおよびギャップ化BLASTプログラムを利用するとき、各プログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを用いることができる。
【0055】
用語「同時投与」、「同時投与される」および「~と組み合わせた」は、本明細書で用いられるとき、少なくとも2つの薬剤すなわち治療薬の対象への投与を指してもよい。一部の実施形態では、2つ以上の薬剤/治療薬の同時投与は同時的である。他の実施形態では、第1の薬剤/治療薬は、第2の薬剤/治療薬に先立ち投与される。当業者は、用いられる様々な薬剤/治療薬の配合および/または投与経路が変動してもよいことを理解している。
【0056】
用語「担体」は、本明細書で用いられるとき、用いられる用量および濃度でそれに曝露されている細胞または哺乳動物に対して非毒性である薬学的に許容できる担体、賦形剤、または安定剤を含んでもよい。生理学的に許容できる担体は、水性pH緩衝液であることが多い。生理学的に許容できる担体の例として、限定はされないが、緩衝液、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸;抗酸化剤、例えば限定はされないが、アスコルビン酸;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば限定はされないが、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば限定はされないが、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば限定はされないが、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン;単糖、二糖、および他の炭水化物、例えば限定はされないが、グルコース、マンノース、またはデキストリン;キレート剤、例えば限定はされないが、EDTA;糖アルコール、例えば限定はされないが、マンニトールまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えば限定はされないが、ナトリウム;および/または非イオン性界面活性剤、例えば限定はされないが、TWEEN;ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS、が挙げられる。
【0057】
疾患の「治療(treating)」または「治療(treatment)」という用語は、疾患の徴候または症状を緩和する努力において、1つ以上の薬剤を患者(ヒトまたはその他)に投与するステップを含んでもよいプロトコルを実行することを指す。軽減は、疾患の徴候または症状の出現前、ならびにそれらの出現後に生じ得る。したがって、疾患の「治療(treating)」または「治療(treatment)」は、疾患の「予防(preventing)」または「予防(prevention)」を含む。用語「予防する(prevent)」または「予防(preventing)」は、予防的(prophylactic)および/または予防的(preventative)処置を指し、その目的は、標的化される病的状態または障害を予防または遅延化することである。例えば、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の毒性株による感染の場合、「予防(preventing)」または「予防(prevention)」は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の毒性株による感染を例えば保護抗体のワクチン接種または受動投与を通じて予防するかまたは停止させるため、治療経過が進んだ状況下で行われてもよい。かかる「予防(preventing)」または「予防(prevention)」はまた、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)による潜在的感染の場合に行われ、その場合の目的は、活動性感染を予防し、かつ/または患者から前記潜在的感染を排除することとなる。さらに、「治療(treating)」または「治療(treatment)」は、徴候または症状の完全な軽減を必要とせず、治癒を必要とせず、詳細にはあくまで患者に対する限界効果を有するプロトコルを含む。
【0058】
用語「患者」、「対象」および「個体」は、本明細書中で交換可能に用いられ、治療薬が投与され得る生体系を指してもよい。生体系は、例えば、個別細胞、細胞セット(例えば細胞培養液)、臓器、組織、または多細胞生物を含み得る。「患者」、「対象」または「個体」は、ヒト患者、対象もしくは個体または非ヒト患者、対象もしくは個体を指し得る。
【0059】
用語「エピトープ」は、本明細書で用いられるとき、抗体またはT細胞が結合する抗原の領域を指してもよい。「抗原」は、免疫学的反応を誘発するかまたはその反応の生成物に結合する物質を指す。
【0060】
本明細書で用いられるとき、用語「ベクター」は、それが連結されている相手の別の核酸を輸送する能力がある核酸分子を意味する。ベクターが作動可能に連結される相手の遺伝子の発現を駆動する能力があるベクターは、本明細書中で「発現ベクター」と称される。
【0061】
本明細書で用いられるとき、「タンパク質」および「ポリペプチド」は、長さまたは翻訳後修飾、例えばグリコシル化またはリン酸化と無関係に、アミノ酸の任意のペプチド結合鎖を意味するように同義的に用いられる。
【0062】
用語「標識される」は、抗体、核酸、ペプチド、ポリペプチド、細胞、またはプローブと関連して、検出可能な物質を抗体、核酸、ペプチド、ポリペプチド、細胞、またはプローブとカップリングする(すなわち物理的に連結する)ことによる、抗体、核酸、ペプチド、ポリペプチド、細胞、またはプローブの直接的標識を包含することが意図される。
【0063】
用語「精製された」または「単離された」ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、本明細書で用いられるようなペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を指し、天然に会合される他のタンパク質、脂質、および核酸から分離されているペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を指してもよい。ポリペプチド/タンパク質は、精製された調製物の乾燥重量で少なくとも10%(すなわち、10%~100%の間の任意の百分率、例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、および99%)を構成し得る。純度は、任意の適切な標準的方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析により測定され得る。本発明に記載される単離されたポリペプチド/タンパク質(例えば抗-LAM抗体)は、組換えDNA技術により産生され得る。
【0064】
B.結核菌(Mycobacterium tuberculosis)
結核(TB)は、現在世界人口の約3分の1に感染する、世界的な史上最悪の感染性疾患の1つであり続けている。2013年、推定上900万人がTBを発症し、推定上1,500万人がその疾患で死亡した。現在、抗生物質治療が利用可能であるが、これらは長期間の治療を必要とし、最近の感染の約3.5%に現在関与している多剤耐性(MDR-TB)株の発生により易感染性が高まっている。これらの株は、治療がはるかに困難化し、有意に低下した治癒率を有している。また広範囲薬剤耐性TB(XDR-TB)株が伝播しており、それは治療がMDR-TB株よりもさらに高価になりかつ困難化し、今や世界中100か国で報告されている。
【0065】
TBに対する免疫が専ら細胞防御機構に依存するという長く確立されたパラダイムがある。しかし、HIV分野における試験では、ヒト体液性免疫系が著しい中和幅および効力を有する多様な抗体を産生する著しい能力が重視され、本発明では、体液性免疫系が複数のLAMエピトープを認識する高親和性抗体を産生する能力が重視される。これは、TBに対する抗体媒介性防御において重要な役割を示すことが過去困難であったことの多くが過去の試験で用いられた抗体の品質および供給源における制限に起因し得ることと、慢性的に感染したヒト患者からより高度に進化した抗体を産生することへの本発明の方法の適用が、TBに対する免疫における体液性応答の重要な役割を例示し得ることを示唆する。
【0066】
本発明の一部の実施形態は、感染したヒトからのメモリーB細胞のインビトロ培養および単一細胞からのIgG重(H)鎖および軽(L)鎖の可変領域の分子クローニングのための方法を対象とする。これらの方法は、主要表面抗原LAMに対するヒトモノクローナル抗体を産生するため、利用されてもよい。本発明は、固有のエピトープ特異性および結合特性を有するような抗体、およびこれらの抗体の改変された誘導体、ならびにこれらの抗体の免疫診断および免疫療法用途に関する。
【0067】
C.リポアラビノマンナン(LAM)
本発明の抗体の1つの顕著な抗原標的は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体メンバーの細胞壁の主要な構成成分である、表面糖脂質のリポアラビノマンナン(LAM)である。本発明では、LAMの抗原構造ならびに感染および免疫に応答したLAMに対する体液性免疫応答における、以前は価値を認められてなかった異質性が同定される。LAMの構造は、Khoo et al.,“Variation in Mannose-capped Terminal Arabinan Motifs of Lipoarabinomannan from Clinical Isolates of Mycobacterium tuberculosis and Mycobacterium avium Complex,”Journal of Biological Chemistry Vol276,No.6,Feb9,2001(その全体が参照により本明細書中に援用される)に詳述されている。LAMの構造は、4つの異なる構造ドメイン;ホスファチジルイノシトール脂質アンカー(マンノシル-ホスファチジル-ミオ-イノシトール)、末端にα(1→2)-Manp連結側鎖を有するα(1→6)連結D-マンナン骨格、複数のテトラ-/ヘキサ-アラビノフラノシド分枝を有するD-アラビナン鎖、および様々なキャッピングモチーフを伴う全体的な三者構造を呈する複合体である。LAMは、異なる生物学的特性を有する複数のアイソフォームに分解可能な分子の異質性集団からなる。この異質性は、様々な長さのマンナンおよびアラビノ鎖、異なる分岐パターン、様々な数のかかる分枝、ならびにマンノースキャッピング、MTX付加、および脂肪酸、コハク酸および乳酸によるアシル化によるアラビノ側鎖の修飾に起因する。
【0068】
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の毒性株は、モノ-、ジ-、およびトリ-α(1→2)-D-Manp糖単位で広範にキャッピングされる一方で、スメグマ菌(M.smegmatis)のような迅速に増殖する非病原性株は、キャップのない末端またはホスファチジル-ミオ-イノシトールキャップ(PILAM)を有する。結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の病原性株からのLAMの非還元末端の40~70%がマンノースでキャッピングされると推定されており、毒性MT103臨床株における異なるキャップモチーフの相対的存在量の分析によると、ジマンノシル単位が主要な構造モチーフである(75~80%)一方で、マンノシルおよびトリマンノシルモチーフがより低い濃度(10~13%)で存在することが示された。この広範なキャッピングは、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の毒性株を非毒性/非病原性株、例えばスメグマ菌(M.smegmatis)から分化させる上での固有のマーカーを提示し得、本発明の抗-LAM抗体の治療的使用にとって有望な抗原標的をさらに提供し得る。さらに、結核菌(M.tuberculosis)株中に見出されるManLAM中の末端マンノース糖の一部は、キャッピングモチーフに感受性を示す異なるmAb、例えばA194-01およびP30B9に対する免疫反応性に影響する、固有の構造5-デオキシ-5-メチル-チオ-ペントフラノース(MTX)のα(1→4)付加によりさらに修飾され;MTX付加は、A194-01との反応性を増強し、P30B9に対する反応性を低下させる。この置換は、低存在量で存在し、結核菌(M.tuberculosis)、潜在的にはさらに結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の他の毒性メンバー、例えばウシ型結核菌(M.bovis)およびマイコバクテリウム・アフリカヌム(M.africanum)から同定するための固有のマーカーを提示し得、本発明の抗-LAM抗体の治療的使用にとって有望な抗原標的をさらに提供し得る。
【0069】
LAMの分泌型は、結核菌(M.tuberculosis)複合体の病原性メンバーによる感染の免疫診断アッセイにおける重要な標的である。さらに、大量な一連の証拠によると、LAMが増殖性感染および病原性を促進する幾つかの機能の重要なメディエーターであることが示される。LAMは、細胞壁の完全性およびβラクタム抗生物質に対する耐性を維持することに関与する。細菌表面上でのLAMの発現低下は、欠損マクロファージの侵入、ファゴソーム-リソソーム融合の阻害、マクロファージにおける減衰、および獲得免疫に対する感受性増強と相関し、ManLAMの末端マンノシル単位のマクロファージ表面上のマンノース受容体への結合については、マイコバクテリアの食細胞への取り込みにおける重要な段階として記載されている。理論に拘束されたくないが、ManLAMが、樹状細胞上のC型レクチン、例えば、樹状細胞特異性の細胞間接着分子-3(ICAM-3)略奪性非インテグリン(DC-SIGN)マクロファージマンノース受容体(MMR)およびデクチン2と相互作用すると考えられる。一旦マクロファージ内部にあれば、LAMは、細菌の破壊をもたらし、それにより細菌がマクロファージ内部で存続することを可能にするファゴソーム-リソソーム融合を阻害すると考えられる。
【0070】
LAMはまた、細菌の表面から分泌され、細胞外LAMは、DC-SIGNおよびデクチン2を含む樹状細胞-表面受容体に結合する。これらの相互作用は、樹状細胞機能を抑制し、宿主免疫系に干渉することで、免疫回避に寄与すると考えられる。LAMが活動性感染中に比較的大量に存在することから、それは、例えば本発明の1つ以上の抗-LAM抗体により、感染患者の血中および尿中で検出され得る。これらは、例えば診断キットおよび前記診断キットに関する方法にて用いられてもよい。
【0071】
D.抗-LAMおよび抗-PIM6/LAM抗体
本発明の抗-LAM抗体は、リポアラビノマンナン(LAM)上の少なくとも1つのエピトープを認識するヒトモノクローナル抗体の単離、培養、または改変された変異体および/または誘導体を含んでもよい。本明細書に記載のような抗-PIM6/LAM抗体(例えばP95C1)は、PIM6中およびLAMのPIM6交差反応性マンナンドメイン内の少なくとも1つのポリマンノース構造に特異的に結合する。本発明の抗-LAMおよび抗-PIM6/LAM抗体は、当該技術分野で公知の方法に従って精製されてもよい。かかる方法は、例えば限定はされないが、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、固定化金属キレートクロマトグラフィー、チオフィリック吸着、生理化学的分画(physiochemical fractionation)、または他の抗原特異的なアフィニティー法、例えばプロテインA、G、およびL抗体結合リガンドを含む方法を含んでもよい。かかる精製抗体は、精製されていないヒトモノクローナル抗体と異なる構造特徴を有する場合または有しない場合がある。例えば、精製時、ヒトモノクローナル抗体における立体構造エピトープの変化が生じることがある。抗体は、精製時に除去されるさらなる分子に結合されてもよい。したがって、かかる精製抗体は、異なる機能的活性を有する場合または有しない場合がある。本発明の抗-LAMおよび抗-PIM6/LAM抗体は、幾つかの構造修飾を有してもよい。例えば、本発明の抗-LAMおよび抗-PIM6/LAM抗体は、グリコシル化、PEG化、またはその他として、安定性、機能、バイオアベイラビリティ、エピトープ認識、もしくは他の機能的活性に影響するような様式で化学修飾されてもよい。本発明の抗-LAMおよび抗-PIM6/LAM抗体は、以下に記載される抗体の改変された変異体および/または誘導体であってもよく、機能的または構造的等価物を有する場合もしくは有しない場合がある。したがって、かかる変異体および/または誘導体は、少なくとも一部には単離されたヒトモノクローナル抗-LAMまたは抗-PIM6/LAM抗体から誘導もしくは改変され、かつ/またはLAM上の少なくとも1つのエピトープを認識する限り、本発明の範囲内でさらに検討される。
【0072】
1.A194-01
一部の実施形態では、本発明は、ヒトモノクローナル抗体A194-01、例えばその変異体および/または誘導体などを対象とする。A194-01はLAMに特異的である。A194-01は、LAMに対して非常に高い結合活性を有し、例えば、A194-01のIgGアイソタイプは、約20ng/mlの濃度で抗体の最大結合活性の50%を示し、故にLAMに対する高親和性を示し得る。A194-01は、最初に単離され、IgGとして精製されたが、A194-01は、幾つかのアイソタイプ、ならびに限定はされないが、IgG、IgA、IgM、一価一本鎖Fv(scFv)断片、Fabタンパク質、二価scFv断片、一本鎖scFv断片(単量体)、および2つのscFv単量体が互いに連結された二量体scFvタンパク質を含む改変および組換えアイソタイプとして存在し得、ここで個別の可変軽および可変重領域は、例えば可動性リンカーによって連結される(
図1A)。A194-01の一部の特定の改変された変異体および/または誘導体は、限定はされないが、以下を含む。A194-01の1つの改変された変異体および/または誘導体は、A194-01 scFv抗原をA194-01 IgGのN末端に連結することによって形成される四価scFv-IgGを含み(
図1B、
図17)、それは結合親和性を増加させ、認識されるエピトープの範囲を拡大し得る(この例が
図14および15に示される)。四価scFv-IgGは、リーダー-VH-VL-IgGを含んでもよく、またはリーダー-VL-VH-IgGを含んでもよい。改変されたscFv-IgG変異体および/または誘導体がまさに四価を超える結合価を有してもよいことを当業者は理解するであろう。A194-01の別の改変された変異体および/または誘導体は、二量体A194-01 IgGをヒトIgM含有ドメインに変換することによって作製される五価IgMを含み、かかる五価IgMは10の結合部位を含む(
図1B)。当業者は、A194-01抗原断片、特にA194-01に特異的な相補性決定領域(CDR)を呈する抗体断片のさらなる組み合わせが可能であり、本発明の範囲内で考えられることを理解するであろう。
【0073】
A194-01のIgGアイソタイプは、非修飾Ara4およびAra6側鎖ならびに単一のマンノースを有する側鎖で発現される固有の複合エピトープを認識する。A194-01はジまたはトリマンノース置換を有する側鎖を認識しないが、それら側鎖がMSX置換基でさらに修飾される場合、A194-01はかかる構造と確かに反応する。したがって、A194-01のIgGアイソタイプは、PILAMおよびManLAMに高い親和性で結合し、ひいてはAra4およびAra6構造双方のキャップのないバージョンと強力に結合し、単一のマンノースでキャッピングされたMSX置換Ara4/Ara6構造への結合はいくらかあまり強力でないが、ジ置換およびトリ置換ManLAMに対してはあるにしても弱い(
図4)。理論に拘束されたくないが、モノマンノシル化Ara4構造の末端マンノースに対するマンノース対MSXの付着の顕著に異なる効果は、マンノースのα(1→2)結合とMSX置換α(1→4)結合との間の差異を反映し得る。A194-01の改変された変異体および/または誘導体、例えばより高い結合価を有するものは、A194-01 IgGアイソタイプよりも広範なエピトープ特異性を示し得(
図14)、LAMに対する増強された親和性をさらに示し得る(
図15)。例えば、四価scFv-IgGで改変されたA194-01ならびに改変されたIgAおよびIgMアイソタイプは、A194-01 IgGアイソタイプよりも高い親和性でAra4およびAra6構造双方に結合するだけでなく、さらに、IgGアイソタイプが弱く結合する、ジマンノースでキャッピングされた構造およびトリマンノースでキャッピングされた構造を認識する(
図14)。結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の病原性種が主にジマンノースでキャッピングされた構造を示すことから、A194-01のこれらの改変された変異体および/または誘導体、例えばscFv-IgGおよびIgMアイソタイプは、診断キットおよび方法、ならびに治療使用にとって特に有用であることが判明し得る。
【0074】
A194-01のさらに改変された変異体および/または誘導体は、IgG1 Fcドメインがよりオプソジェニック(opsogenic)IgG3に、すなわち多量体バージョンを作製することにより、IgG1定常ドメインを二量体IgAまたは五量体もしくは六量体IgMにより置換することにより変換された抗体を含む。理論に拘束されたくないが、これは、抗-LAM抗体の結合活性を、親和性に寄与する二価および多価結合の可動性および範囲を増加させることにより著しく増強し得る(
図1)。これは、従来の抗生物質で有効に治療され得ない、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)のMDRまたはX-MDR株による曝露または感染の場合に治療が特に有用になると、潜在的な臨床的重要性がある。
【0075】
表1.A194-01の相補性決定領域(CDR)
軽鎖
CDR1-RSIRSA(配列番号1)
CDR2-GAS(配列番号2)
CDR3-QQYDFWYTF(配列番号3)
重鎖
CDR1-GFNFEDFG(配列番号4)
CDR2-ISWNGANI(配列番号5)
CDR3-IDWYRDDYYKMDV(配列番号6)
【0076】
当業者は、CDRが抗原特異性の多様性にとって重要であることを理解するであろう。当業者は、CDR3がCDR領域で最も可変であり、それ故に最重要性を有し、可変重鎖のCDR3領域における多様性が大部分の抗体特異性にとって十分であることをさらに理解するであろう。したがって、一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、可変軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域(各々、配列番号1、2および3で示される)を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、保存的配列修飾を伴う可変軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域(各々、配列番号1、2および3で示される)を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号1、2、および3の各々と最大95%の同一性を有する可変軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号1、2、および3の各々と最大90%の同一性を有する可変軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号1、2、および3の各々と最大85%の同一性を有する可変軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号1、2、および3の各々と最大80%の同一性を有する可変軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号3で示されるような可変軽鎖のCDR3領域を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、保存的配列修飾を伴う配列番号3で示されるような可変軽鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号3と最大95%の同一性を有する可変軽鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号3と最大90%の同一性を有する可変軽鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号3と最大85%の同一性を有する可変軽鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号3と最大80%の同一性を有する可変軽鎖のCDR3領域を有する。
【0077】
一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号4、5および6の各々に示されるような可変重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、保存的配列修飾を伴う配列番号4、5および6の各々に示されるような可変重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号4、5および6の各々と最大95%の同一性を有する可変重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号4、5および6の各々と最大90%の同一性を有する可変重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号4、5および6の各々と最大85%の同一性を有する可変重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号4、5および6の各々と最大80%の同一性を有する可変重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号6で示されるような可変重鎖のCDR3領域を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、保存的配列修飾を伴う配列番号6で示されるような可変重鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号6と最大95%の同一性を有する可変重鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号6と最大90%の同一性を有する可変重鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号6と最大85%の同一性を有する可変重鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号6と最大80%の同一性を有する可変重鎖のCDR3領域を有する。
【0078】
本明細書に記載の実験では、A194-01抗体は、Expi293細胞へのHおよびL鎖ベクターの遺伝子導入により発現され、標準のExpi293無血清培地中で数日間培養された。分泌された抗体は、プロテインAまたはプロテインGリガンドとコンジュゲートされたカラム上でのアフィニティークロマトグラフィーにより培養上清から精製された。結合された抗体は、低pH緩衝液(0.2Mグリシン-HCl、pH2.5)による処理によりリガンドから放出され、1/50体積の2Mトリス緩衝液(pH8.8)で中和された。緩衝液は、透析または遠心分離フィルター(Amicon Ultra遠心分離フィルター、30K mwの限界)での数回の濃縮により、PBSと交換された。
【0079】
A194重鎖および軽鎖配列におけるアミノ酸(aa)および核酸(nt)配列は以下の通りである。
A194重鎖nt配列:
A194重鎖aa配列:
A194軽鎖nt配列(κ):
A194軽鎖aa配列(κ):
【0080】
2.P30B9
一部の実施形態では、本発明は、組換えヒトモノクローナル抗体P30B9、例えばその変異体および/または誘導体などを対象とする。P30B9はLAMに特異的である。P30B9は、最初にIgMとして単離および精製されたが、P30B9は、幾つかのアイソタイプ、ならびに改変された組換えアイソタイプ、例えば限定はされないが、IgM、IgG、IgA、ならびにそれらの抗原断片、例えば限定はされないが、一価一本鎖Fv(scFv)断片、Fabタンパク質、二価scFv断片、一本鎖scFv断片(単量体)(個別の可変軽および可変重領域は、例えば可動性リンカーにより連結される)2つのscFv単量体が相互に連結された二量体scFvタンパク質で存在してもよい。
【0081】
P30B9のIgMアイソタイプは、Manp-α(1→2)-Manp-(1→5)-Araf構造を有するジマンノース置換Ara4およびAra6 LAMエピトープに最も強力に結合するが(
図4、16および18)、他のManp-α置換構造(例えば、
図8中の構造2、4および59)についても、より低い親和性で認識され得る。ジマンノースでキャッピングされたLAMに対するP30B9の優先的認識は、ジマンノースキャップが結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の毒性株に対するドミナントなLAM修飾であることが報告されていることから、潜在的な臨床的意義を有する。理論に拘束されたくないが、末端のマンノシル単位が、免疫機能の攪乱および安定な感染の確立をもたらす、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の毒性株からのLAMのヒトマクロファージおよび他の免疫細胞への結合を媒介すると考えられる。理論に拘束されたくないが、マンノースキャップのマンノース受容体への結合は、ファゴソーム-リソソーム(P-L)融合を制限し、かつ感染マクロファージにおける細菌の生存を促進すると考えられる。P30B9のジマンノースでキャッピングされたLAMに対する特異性は、このmAbのこの構造を有する複合糖質に対する特異性により、また、P30B9のIgMアイソタイプが、いずれかの結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のLAMに特異的に結合するが、ジマンノースでキャッピングされたLAMエピトープを有しないスメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)またはライ菌(Mycobacterium leprae)由来のLAMに特異的に結合しないという事実において示される。これは、PILAM、キャップのないAra4/Ara6残基、およびモノマンノースでキャッピングされたLAMエピトープ(これらのすべてはスメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)およびライ菌(Mycobacterium leprae)において共通である)に結合する、A194-01のIgGアイソタイプと対照的である。P30B9のIgMアイソタイプと同様、A194-01のIgMアイソタイプは、おそらくは結合活性の増強に起因して、ジマンノースでキャッピングされたLAMエピトープおよびトリマンノースでキャッピングされたLAMエピトープに結合することができる(
図14)。
【0082】
したがって、P30B9のIgMアイソタイプは、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の毒性メンバーによる感染を検出し、それがジマンノースでキャッピングされたLAMに特異的であることから、前記毒性メンバーを他の非病原性マイコバクテリア種から区別するための重要な免疫診断試薬として役立ち得る。さらに、P30B9抗体のIgMアイソタイプならびにA194-01の改変された変異体および/または誘導体は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の毒性メンバーの感染および病態形成を制限する免疫治療活性を有し得るか、伝統的な抗生物質、追加的な抗体との組み合わせまたは単独のいずれかでの治療における使用に適し得るか、または受動免疫療法薬として用いられ得る。P30B9のIgMアイソタイプは、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に由来するManLAMに高い親和性で特異的に結合するが(
図2A、B)、スメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)に由来するPILAMにはそうではない(
図2C)。
【0083】
P30B9の改変された変異体および/または誘導体は、例えば、二量体IgA1およびIgA2を含むIgAアイソタイプにおいて発現されるP30B9を含んでもよい。理論に拘束されたくないが、この抗体がIgMとして単離され、IgGとして発現されるときに活性を示さないことから、多価性がP30B9の機能に要求されると考えられる。本発明は、P30B9が、二量体IgA1およびIgA2を含む改変されたIgAアイソタイプにおいて活性があることを示す。これはP30B9 VHドメインをIgA1およびIgA2ベクターに移すことにより試験された。IgA1は、プロリン、セリン、およびスレオニン中に豊富に存在する8個のアミノ酸のリピートからなり、かつ3~6個のO結合型オリゴ糖で修飾された16のアミノ酸挿入の存在により、IgA2と異なる[
図5]。P30B9の改変されたIgA型のManLAMに対する結合活性が、IgGおよびIgM型の場合と比較された。IgM型が最高の活性を有した一方で、IgA型は双方ともManLAMに結合することができ、IgA2形態はIgA1形態よりも弱い活性を示し、IgG型はManLAMに対するELISAにおいて不活性であった(
図6)。
【0084】
表2.P30B9の相補性決定領域(CDR)
軽鎖
CDR1-QSINSN(配列番号7)
CDR2-KAS(配列番号8)
CDR3-QQYKAFKTF(配列番号9)
重鎖
CDR1-GGSFSGYY(配列番号10)
CDR2-FDLGGSITHSRGT(配列番号11)
CDR3-RGLAMGGTKEFDS(配列番号12)
【0085】
当業者は、CDRが抗原特異性の多様性にとって重要であることを理解するであろう。当業者は、CDR3がCDR領域で最も可変であり、それ故に最重要性を有し、可変重鎖のCDR3領域における多様性が大部分の抗体特異性にとって十分であることをさらに理解するであろう。したがって、一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、可変軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域(各々、配列番号7、8および9で示される)を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、保存的配列修飾を伴う可変軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域(各々、配列番号7、8および9で示される)を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号7、8、および9の各々と最大95%の同一性を有する可変軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号7、8、および9の各々と最大90%の同一性を有する可変軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号7、8、および9の各々と最大85%の同一性を有する可変軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号7、8、および9の各々と最大80%の同一性を有する可変軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号9で示されるような可変軽鎖のCDR3領域を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、保存的配列修飾を伴う配列番号9で示されるような可変軽鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号9と最大95%の同一性を有する可変軽鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号9と最大90%の同一性を有する可変軽鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号9と最大85%の同一性を有する可変軽鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号9と最大80%の同一性を有する可変軽鎖のCDR3領域を有する。
【0086】
一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号10、11および12の各々に示されるような可変重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、保存的配列修飾を伴う配列番号10、11および12の各々に示されるような可変重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号10、11および12の各々と最大95%の同一性を有する可変重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号10、11および12の各々と最大90%の同一性を有する可変重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号10、11および12の各々と最大85%の同一性を有する可変重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号10、11および12の各々と最大80%の同一性を有する可変重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号12で示されるような可変重鎖のCDR3領域を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、保存的配列修飾を伴う配列番号12で示されるような可変重鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号12と最大95%の同一性を有する可変重鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号12と最大90%の同一性を有する可変重鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号12と最大85%の同一性を有する可変重鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号12と最大80%の同一性を有する可変重鎖のCDR3領域を有する。
【0087】
本明細書に記載の実験では、P30B9抗体は、Expi293細胞へのHおよびL鎖ベクターの遺伝子導入により発現され、標準のExpi293無血清培地中で数日間培養された。分泌された抗体は、プロテインLリガンドとコンジュゲートされたカラム上でのアフィニティークロマトグラフィーにより培養上清から精製された。結合された抗体は、低pH緩衝液(0.2Mグリシン-HCl、pH2.5)による処理によりリガンドから放出され、1/50体積の2Mトリス緩衝液(pH8.8)で中和された。緩衝液は、透析または遠心分離フィルター(Amicon Ultra遠心分離フィルター、30K mwの限界)での数回の濃縮により、PBSと交換された。
【0088】
P30B9重鎖および軽鎖配列におけるアミノ酸配列ならびにその最も近い生殖系列とのそれらの比較は
図22に示される。CDR3領域を含むP30B9におけるアミノ酸およびヌクレオチド配列は以下に複写される。
P30B9-重鎖可変領域:
P30B9-軽鎖可変領域:
P30B9-重鎖DNA配列:
P30B9-軽鎖:
【0089】
3.P95C1
一部の実施形態では、本発明は、組換えヒトモノクローナル抗体P95C1、例えばその変異体および/または誘導体などを対象とする。P95C1は、LAM、LMおよびPIM6によって共有されるエピトープに特異的である。P95C1は、最初にIgMとして単離および精製されたが、P95C1は、他のアイソタイプ、例えば限定はされないが、IgGおよびIgA型で発現されるとき、活性がある。
【0090】
当業者は、CDRが抗原特異性の多様性にとって重要であることを理解するであろう。当業者は、CDR3がCDR領域で最も可変であり、それ故に最重要性を有し、可変重鎖のCDR3領域における多様性が大部分の抗体特異性にとって十分であることをさらに理解するであろう。したがって、一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、可変軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域(各々、配列番号13、14および15で示される)を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、保存的配列修飾を伴う可変軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域(各々、配列番号13、14および15で示される)を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号13、14および15の各々と最大95%の同一性を有する可変軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号13、14および15の各々と最大90%の同一性を有する可変軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号13、14および15の各々と最大85%の同一性を有する可変軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号13、14および15の各々と最大80%の同一性を有する可変軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号15で示されるような可変軽鎖のCDR3領域を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、保存的配列修飾を伴う配列番号15で示されるような可変軽鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号15と最大95%の同一性を有する可変軽鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号15と最大90%の同一性を有する可変軽鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号15と最大85%の同一性を有する可変軽鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号15と最大80%の同一性を有する可変軽鎖のCDR3領域を有する。
【0091】
一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号16、17および18の各々に示されるような可変重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、保存的配列修飾を伴う配列番号16、17および18の各々に示されるような可変重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号16、17および18の各々と最大95%の同一性を有する可変重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号16、17および18の各々と最大90%の同一性を有する可変重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号16、17および18の各々と最大85%の同一性を有する可変重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号16、17および18の各々と最大80%の同一性を有する可変重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号18で示されるような可変重鎖のCDR3領域を有する。一部の実施形態では、抗-LAM抗体は、保存的配列修飾を伴う配列番号18で示されるような可変重鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号18と最大95%の同一性を有する可変重鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号18と最大90%の同一性を有する可変重鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号18と最大85%の同一性を有する可変重鎖のCDR3領域を有する。他の実施形態では、抗-LAM抗体は、配列番号18と最大80%の同一性を有する可変重鎖のCDR3領域を有する。
【0092】
表3.P95C1の相補性決定領域(CDR)
軽鎖
CDR1:QNVLDSANNRNY(配列番号13)
CDR2:WAS(配列番号14)
CDR3:TQYHRLPHT(配列番号15)
重鎖
CDR1:GGSINTNNW(配列番号16)
CDR2:IHRHGDT(配列番号17)
CDR3:CPLGYCSGDDCHRVA(配列番号18)
【0093】
P95C1 IgM/κ抗体が、BCL6/Bcl-xLが形質導入されたメモリーB細胞の上清中で最初に同定され、標準のRT-PCRプロトコルを用いて、これらの細胞からIgM/κ発現ベクターにクローン化された。抗体は、HおよびL鎖ベクターのExpi293細胞への遺伝子導入により発現され、標準のExpi293無血清培地中で数日間培養された。分泌された抗体は、プロテインLリガンドとコンジュゲートされたカラム上でのアフィニティークロマトグラフィーにより培養上清から精製された。結合された抗体は、低pH緩衝液(0.2Mグリシン-HCl、pH2.5)による処理によりリガンドから放出され、1/50体積の2Mトリス緩衝液(pH8.8)で中和された。緩衝液は、透析または遠心分離フィルター(Amicon Ultra遠心分離フィルター、30K mwの限界)での数回の濃縮により、PBSと交換された。
【0094】
P95C1重鎖および軽鎖におけるアミノ酸配列ならびにその最も近い生殖系列とのそれらの比較は
図23に示される。CDR3領域を含むP95C1におけるアミノ酸およびヌクレオチド配列は以下に複写される。
P95C1-重鎖可変領域:
P95C1-軽鎖可変領域:
P95C1-重鎖:
P95C1-軽鎖:
【0095】
E.さらなる変異体および/または誘導体
A194-01、P30B9、およびP95C1のCDR領域を考慮すると、本明細書に開示される抗-LAM抗体の多数の改変された変異体および/または誘導体が構築され得ることを当業者は理解するであろう。例えば、本発明の抗-LAM抗体は、1つ以上のLAMエピトープに対して親和性を示すキメラ抗体、ヒト化抗体、およびキメラ/ヒト化抗体に改変されてもよい。抗体は、二重特異性抗体に改変されてもよく、または単一の抗体構築物が複数のLAMエピトープに結合するように改変されてもよい。
【0096】
本明細書に記載の通り、本発明の抗-LAM抗体は、相同scFv-IgG構築物または異種scFv-IgG構築物として設計されてもよい。A194-01の相同scFv-IgG構築物は、本願中に詳述されている(
図17A)。異種scFv-IgG構築物の一非限定例であれば、P30B9のVHおよびVL鎖がリンカーによりA194-01 IgGに連結された場合となるが(
図17B)、他のVH/VL鎖、例えばマウス抗-LAM抗体などの他の抗-LAM抗体を用いることができる。これは、単一抗原分子中の異なるエピトープの認識を可能にし得、多価結合を増強し、親和性の増加をもたらし得る。あるいは、異種scFv-IgG構築物は、さらなるVH/VL鎖がLAM以外の抗原を標的にする場合、二重特異性抗体をもたらし得る。
【0097】
本発明の抗-LAM抗体はまた、相同および異種scFv-IgM構築物の双方を含むscFv-IgM構築物を作出するように改変されてもよい。相同scFv-IgMの非限定例であれば、P30B9 VH/VL鎖がP30B9 IgMに連結される場合となる。この構築物中であれば、すべての結合部位が同じエピトープ特異性を有することになる。異種scFv-IgM構築物の非限定例は、A194-01 scFvが、IgG定常ドメインとは対照的に、P30B9 IgMに連結される場合である[非限定[
図17C]。かかる改変された変異体および/または誘導体構築物であれば、親P30B9 mAbのジマンノースエピトープのIgM依存性認識を保持し、A194-01 scFvのさらなる結合特異性を追加することになる。これは、固有のエピトープアレイの認識を可能にし、親和性の増加をもたらし得、その場合、ポイントオブケア抗原検出アッセイの改善にとって有用であり得る。
【0098】
F.診断キットおよび方法
本発明の一実施形態は、試料中のLAMおよび/またはPIM6の検出および/または定量化のための診断キットおよび方法に関する。本明細書に記載の通り、抗-LAM抗体A194-01およびP30B9、ならびに抗-PIM6/LAM抗体P95C1、例えばその改変された変異体および/または誘導体などは、試料中に存在するLAMおよび/またはPIM6の量の検出および/または定量化において有効であり得る。LAMまたはPIM6は、任意の供給源由来、例えば結核菌(Mycobacterium tuberculosis)もしくはスメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)由来、または患者、例えば結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の毒性株に感染した患者からの血清もしくは尿試料由来であってもよい。LAMは、例えば、他のマイコバクテリア株、例えばらい菌(M.leprae)からのPILAM、ManLAM、または非キャッピング/非修飾AraLAMであってもよい。これらの株は、発生するキャッピングの性質および程度が異なり、その場合、異なる抗体の組み合わせが異なる形態に対して異なる特異性を有することになり、幾らかのレベルでの分化またはタイピングが実施可能になる。特に、P30B9のIgMおよび改変されたIgA1アイソタイプ、ならびにA194-01の改変されたIgMおよびscFv-IgGアイソタイプであれば、環境によっては前記LAMの80%を含んでもよい、TB患者からの試料中のジマンノース置換ManLAMを検出および/または定量化するのに十分に適することになり、P30B9の様々なアイソタイプであれば、本明細書に記載のように、特に結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に由来するLAM上に広がるジマンノース置換Ara6残基を有するLAMの検出および/または定量化時に特に有効となる。P95C1エピトープがLAMのすべての種において高度に保存されることから、この抗体は、適切な特異性を有する二次抗体とカップリングされる場合、試料中の様々なタイプのLAMの検出および/または定量化に適することになる。A194-01のIgGアイソタイプは、様々な形態のLAM、特に非置換LAM、モノマンノシル化LAM、およびPILAMに非常に有効に結合し、その場合、マイコバクテリアの様々な株に由来するLAMの検出および/または定量化時、有効となる。改変されたIgMおよびscFv-IgGアイソタイプであっても、非置換LAM、モノマンノシル化LAM、およびPILAMの量の検出および/または定量化時、かなり有効となり、加えてジおよびトリマンノース置換LAMに結合し得る。これは、A194-01の改変された変異体および/または誘導体に、A194-01のIgGアイソタイプまたはP30B9のIgMアイソタイプよりも大きいエピトープ認識を授けるが、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の毒性株に特異的なLAMエピトープのみに対する特異性を犠牲にする。一部の実施形態では、LAMおよび/またはPIM6に対する前記特異性の定量化は、様々な直接的結合アッセイまたは抗原捕捉アッセイにおいて既知の濃度のLAMおよび/またはPIM6を有する連続希釈された対照試料のシグナル強度を比較することにより達成される。
【0099】
A194-01のIgGアイソタイプ、P30B9のIgM/IgAアイソタイプ、およびP95C1の様々なアイソタイプは、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の異なる株中で不定に発現される異なるLAMエピトープに結合することから、LAMの供給源の始まりを区別するため、これらの特定のアイソタイプを用いることができ;ジマンノース置換LAM、特にジマンノース置換Ara6残基は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の毒性株中のLAM残基の大部分を含む一方で、非置換LAM/PILAM残基は、迅速に増殖する非毒性株、例えばスメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)中のLAM残基の大部分を含む。例えば、A194-01 IgGのみに結合し、P30B9 IgMに結合しないLAMを含む試料は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の毒性株に起源をもつ可能性が高い一方で、P30B0 IgMおよびA194-01 IgG双方に結合する試料は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の毒性株または類似のキャッピングモチーフを導入するマイコバクテリアの種に起源をもつ可能性が高い。
【0100】
P30B9のIgM/IgAアイソタイプは、本明細書で詳述のように結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の毒性株におけるドミナントな形態である、ジマンノース置換ManLAMに特異的であることから、P30B9の前記アイソタイプは、患者を結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の毒性株の感染を受けているとして診断するのに用いられる診断キットおよび方法における候補として理想的である。さらに、A194-01の改変されたIgMおよびscFv-IgGの変異体および/または誘導体は、ジマンノース置換ManLAMエピトープおよびトリマンノース置換ManLAMエピトープも認識する場合のような使用に適し得る。かかる患者の場合、進行性または活動性感染を有し得るか、または感染は潜在性であり得る。その株は、多剤耐性(MDR)または広範囲薬剤耐性(XDR)であり得る。具体的には潜在的感染を有する患者に関しては、濃度の増加が活動性感染に対する変化を示し得ることから、血清または尿中のLAM濃度における変化は特に重要であり得る。あるいは、活動性感染を有する個体における濃度の減少は、治療が有効であり、継続されるべきであることを示し得、または治療中の濃度の増加は、現在の治療が有効でなく、排除、変更および/または修正されるべきであることを示し得る。
【0101】
感染を診断するための方法は、前記患者からの生体試料、例えば、血液、血漿、尿、痰、または他の体液を、本発明の少なくとも1つの抗-LAM抗体および/または少なくとも1つの抗-PIM6/LAM抗体、特にジマンノース置換ManLAMを認識する抗-LAM抗体およびPIM6マンナンドメイン内の少なくとも1つのポリマンノース構造を認識する抗-PIM6/LAM抗体と接触させることを含んでもよい。これらは、例えば、P30B9のIgMおよびIgAアイソタイプ、A194-01の改変されたIgA、IgMおよびscFv-IgGアイソタイプ、ならびにP95C1の様々なアイソタイプ(IgG、IgM、IgA)を含む。
【0102】
検出試薬として用いられる抗体は、レポーター分子、例えば当該技術分野で公知のものに結合されてもよい。抗体は、例えばサンドイッチアッセイの基質または一部に結合された、キットの一部であってもよい。キットは、第1の抗-LAMまたは抗-PIM6/LAM捕捉抗体、レポーター分子に結合される第2の抗-LAMまたは抗-PIM6/LAM検出器(検出)抗体、および捕捉抗-LAMまたは抗-PIM6/LAM抗体の結合対象である支持体を含んでもよい。第1および第2の抗-LAM抗体は、単一のLAM分子上の複数のコピー中の同じLAMエピトープに結合してもよく、または好ましくは、それらは、単一のLAM分子上に存在する異なるエピトープに結合してもよい。LAMおよびPIM6エピトープは、本明細書に記載されるもののいずれかであってもよい。キットは、第1および第2の抗体の非競合部位に結合する第3の捕捉または検出器(検出)抗体を含んでもよい。これは、捕捉される分子の数および結合される検出器分子の数および対応するシグナルの強度を増加させ得る。
【0103】
キットは、使用説明書を含んでもよく、また様々な試薬、溶媒、希釈剤、および/または薬学的に許容できる保存剤をさらに含んでもよい。かかるアッセイでは、異なるビオチン標識抗-LAMモノクローナル抗体の感度について実行された[
図7]。このアッセイでは、ManLAMを溶液から捕捉するため、マウス抗-LAM抗体CS-35が用いられた。この抗体は、その広範な特異性を理由に選択された。ManLAMを異なる濃度を有する溶液から捕捉するため、CS-35(250ng/ウェル)が用いられ、次に捕捉ウェル中でのManLAMの存在について探索するため、異なるビオチン化モノクローナル抗体が用いられた。バックグラウンドの3×SDのカットオフを用いて、最も高感度のプローブはA194-01 IgMであり、それはManLAMの最高希釈(0.016ng/ウェル)に対して強力なシグナル(1.8OD)をもたらした。これは、このタイプのアッセイにおいて最も有用なプローブであると以前から考えられている2つのFINDマウス抗体より優れていた。
【0104】
G.治療組成物、方法、ワクチン、およびベクター
本発明の一実施形態は、本発明の少なくとも1つの抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体を含む医薬組成物、ならびにそれを必要とする患者の治療におけるそれらの使用方法を対象とする。患者は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の毒性株による潜在性または活動性感染を有してもよく、特に有用には、その株は、伝統的な治療法/抗生物質に対して、多剤耐性(MDR)または広範囲薬剤耐性(XDR)であってもよい。これらの組成物および方法において利用される抗-LAMおよび抗-PIM6/LAM抗体は、本発明の任意の抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体であってもよいが、特に有用には、ジマンノースでキャッピングされたManLAM、特にジマンノースでキャッピングされたAra6残基、例えば、P30B9 IgMまたはIgA1/IgA2アイソタイプおよび五価A194-01 IgMまたは四価scFv-IgGアイソタイプおよびP95C1の様々なアイソタイプを認識する抗-LAM抗体であってもよい。
【0105】
患者への投与に適した薬学的に許容できる抗-LAM抗体および/または抗-PIM6/LAM抗体組成物は、有効量の抗-LAMもしくは抗-PIM6/LAM抗体または生物学的活性を保持するとともに、許容できる温度範囲内での貯蔵中に最大安定性を促進する製剤中の抗体を含有することになる。医薬組成物はまた、所望される製剤に依存し、薬学的に許容できる希釈剤、薬学的に許容できる担体および/または薬学的に許容できる賦形剤、または動物またはヒト投与用に医薬組成物を調合するために一般に用いられるような任意の溶媒を含み得る。希釈剤は、その組み合わせの生物学的活性に影響しないように選択される。かかる希釈剤の例として、蒸留水、生理学的リン酸緩衝食塩水、リンゲル液、ブドウ糖溶液、およびハンクス溶液が挙げられる。本発明の医薬組成物または製剤において有用な賦形剤の量は、抗体を、それを必要とする対象に送達される必要があるときに均一に分散され得るように、組成物全体に均一に分布させる役割を果たす量である。それは、所望される有利な対症的または根治的結果をもたらすと同時に、高過ぎる濃度から生じ得る任意の有害な副作用を最小化する濃度に抗体を希釈する役割を果たし得る。それはまた、保存剤効果を有してもよい。したがって、高い生理学的活性を有する抗体においては、より多くの賦形剤が利用されることになる。他方、より低い生理学的活性を呈する任意の活性成分においては、より少量の賦形剤が利用されることになる。
【0106】
薬学的に許容できる抗-LAM抗体および/または抗-PIM6/LAM抗体組成物は、液体形態または固体形態であってもよい。固体製剤は、単回または複数回投与いずれかでの投与前に、一般に凍結乾燥され、溶液にされる。製剤は、熱変性を回避するように、極端な温度またはpHに曝露されるべきではない。したがって、本発明の抗体組成物を生物学的に適切なpH範囲内で調合することは必須である。貯蔵中に適切なpH範囲を維持するために緩衝化される溶液は、特に調合と投与との間でより長期間貯蔵される液体製剤においては必要性がある。現在まで、液体および固体製剤の双方は、安定性をより長期間保持するため、より低い温度(通常、2~8℃)での貯蔵を必要とする。製剤化された抗体組成物、特に液体製剤は、貯蔵中にタンパク質加水分解を阻止または最小化するため、限定はされないが、有効濃度(通常、<1%w/v)のベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、クロロブタノール、メチルパラベン、および/またはプロピルパラベンを含む静菌剤を含有してもよい。静菌剤は、一部の患者に対して禁忌であってもよい。したがって、凍結乾燥製剤は、かかる成分を含有する溶液または含有しない溶液のいずれかで再構成されてもよい。追加的成分は、緩衝液または固形抗体製剤のいずれか、例えば限定はされないが、抗凍結剤としての糖(必ずしも限定はされないが、ソルビトール、マンニトール、グリセロールおよびズルシトールなどのポリヒドロキシ炭化水素ならびに/またはスクロース、ラクトース、麦芽糖もしくはトレハロースなどの二糖を含む)や、場合によっては適切な塩(限定はされないが、NaCl、KClまたはLiClを含む)に添加されてもよい。かかる抗体製剤、特に長期貯蔵用に選出される液体製剤は、2~8℃またはそれより高い温度で長期安定性を促進するとともに、非経口注射にとって有用な製剤を作製するため、総モル浸透圧濃度の有用な範囲に依存することになる。総モル浸透圧濃度(溶液中の分子の総数)の有効範囲は、約200mOs/L~約800mOs/Lである。溶液の総モル浸透圧濃度を適切な範囲内に維持するため、抗凍結剤、例えばスクロースまたはソルビトールの量が製剤中の塩の量に依存することは明らかであろう。したがって、塩を含まない製剤は、約5%~約25%のスクロースを含有してもよく、ここでスクロースの好ましい範囲は約7%~約15%であり、塩を含まない製剤中での特に好ましいスクロース濃度は10%~12%である。あるいは、塩を含まないソルビトールに基づく製剤は、ソルビトールを約3%~約12%の範囲内、約4%~7%の好ましい範囲で含有してもよく、特に好ましい範囲は、塩を含まない製剤中で約5%~約6%のソルビトールである。当然ながら、塩を含まない製剤では、有効なモル浸透圧濃度レベルを維持するため、各々の抗凍結剤の範囲の増加が認められることになる。これらの製剤はまた、二価カチオン(例えば必ずしも限定はされないが、MgCl2、CaCl2およびMnCl2);および非32イオン性界面活性剤(non-32 ionic surfactant)(例えば必ずしも限定はされないが、ポリソルベート80(TWEEN80(登録商標))、ポリソルベート60(TWEEN60(登録商標))、ポリソルベート40(TWEEN40(登録商標))およびポリソルベート20(TWEEN20(登録商標))、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えば限定はされないが、Brij58(登録商標)、Brij35(登録商標)、ならびにその他、例えば、トリトンX100(登録商標)、トリトンX114(登録商標)、NP40(登録商標)、Span85および非イオン性界面活性剤のPluronicシリーズ(例えば、Pluronic 121))を含有してもよい。静菌剤の考えられる封入を含む、かかる成分の任意の組み合わせは、本発明の抗体含有製剤を充填するのに有用であり得る。本発明の抗体組成物はまた、通常、免疫グロブリン分子の一部ではない追加的な化学的部分(例えばペグ化)を含有する抗体を示す「化学的誘導体」であってもよい。かかる部分は、塩基分子の溶解度、半減期、吸収などを改善し得る。あるいは、その部分は、塩基分子の望ましくない副作用を減弱させ得るかまたは塩基分子の毒性を低減し得る。
【0107】
具体的な実施形態は、本明細書で考察され、さらに当該技術分野で公知のようなPLGAマイクロスフェア、ならびにポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル;PEVAc)を含むポリマーに基づく非分解性の媒体を含む。加えて、抗体に基づく治療薬の徐放性および局在化送達が、Grainger,et al.,2004,Expert Opin.Biol.Ther.4(7):1029-1044)(ここでその全体が参照により援用される)中にレビューされている。抗体を封入する能力がある好適なマイクロカプセルは、コアセルベーション技術または界面重合により調製されるヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリメチルメタクリレートマイクロカプセルも含んでもよい。タンパク質がPLGAマイクロスフェア中に封入される、「Method for Producing IGF-1 Sustained-Release Formulations」という表題のPCT公開の国際公開第99/24061号パンフレット(この参照についてはその全体が参照により本明細書中に援用される)を参照のこと。さらに、マイクロエマルションまたはコロイド状薬物送達システム、例えばリポソームおよびアルブミンマイクロスフェアもまた用いてもよい。他の好ましい徐放性組成物としては、抗体を投与部位に保持するため、生体付着剤が用いられる。上述の通り、徐放性製剤は、抗体が内部処理される生分解性ポリマーを含んでもよく、それにより非即時型放出がもたらされ得る。非注射用デバイスは、「インプラント」、「薬物デポーインプラント」、「デポーインプラント」、「非注射用デポー」または何らかのかかる類似用語として本明細書に記載され得る。一般のデポーインプラントは、限定はされないが、固体の生分解性および非生分解性ポリマーデバイス(延伸ポリマーまたは同軸ロッド状デバイスなど)、ならびにやはり当該技術分野で公知の極めて多数のポンプシステムを含んでもよい。注射用デバイスはボーラス注射に分割され(注射後の薬物の放出および散逸)、貯蔵リザーバーを注射部位に提供する持続性またはデポー注射は、生物学的製剤の経時的徐放を可能にする。抗体の経時的な遷延性放出のための適切なリザーバーを提供するように、デポーインプラントが送達部位に外科的に繋留され得る。かかるデバイスは、予め選択された期間にわたる治療用に治療的または予防的に必要とされるような量で製剤を運搬できることになる。デポーインプラントはまた、製剤に対して治療の持続時間にわたる体内プロセス(プロテアーゼなど)による分解からの保護をもたらし得る。当該技術分野で公知の通り、用語「徐放」は、かかる薬剤の長期間にわたるブロックポリマーマトリックスからの逐次的な(連続的または不連続的)放出を指す。具体的なデバイスとは無関係に、抗-LAM抗体および/または抗-PIM6/LAM抗体組成物の徐放は、抗体の局所的な生物学的有効濃度をもたらすことになる。生物学的製剤の徐放は、製剤に応じて、1日、数日、1週以上の期間にわたることになるが、1か月以上、または最大で約6か月間が最も可能性が高い。当該技術分野で公知の天然または合成高分子は、万能な分解動態、安全性、および生体適合性などの特性により、デポーインプラントとして有用となる。これらの共重合体は、活性成分の薬物動態を改良し、薬剤を酵素攻撃からシールドするとともに、付着または注射の部位で経時的に分解するように操作され得る。当業者は、これらの共重合体の特性、例えば、各々の産生プロセス、用いられる触媒、および徐放性デポーインプラントまたはデポー注射の最終分子量を操作するため、当該技術分野には十分な教示内容があることを理解するであろう。天然高分子は、限定はされないが、タンパク質(例えば、コラーゲン、アルブミンまたはゼラチン);多糖(セルロース、デンプン、アルギン酸、キチン、キトサン、シクロデキストリン、デキストラン、ヒアルロン酸)および脂質を含む。生分解性合成高分子は、限定はされないが、様々なポリエステル、L-グルタミン酸およびγエチル-L-グルタミン酸塩の共重合体(Sidman et al.,1983,Biopolymers 22:547-556)、ポリ乳酸([PLA];米国特許第3,773,919号明細書および欧州特許第058,481号明細書)、ポリ乳酸ポリグリコール酸(PLGA)、例えば、ポリ乳酸-コ-グリコリド(例えば、米国特許第4,767,628号明細書および米国特許第5,654,008号明細書を参照)、ポリグリコリド(PG)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)のポリエチレングリコール(PEG)コンジュゲート、ポリオルトエステル、ポリアスピリン、ポリホスファゲン、ビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA-g-PLGA、PEGT-PBT共重合体(ポリアクティブ)、メタクリル酸、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、PEO-PPO-PEO(pluronics)、PEO-PPO-PAA共重合体、PLGA-PEO-PLGA、ポリオルトエステル(POE)、またはそれらの任意の組み合わせ(上記の通り)(例えば、米国特許第6,991,654号明細書および米国特許出願第20050187631号明細書を参照(それらの各々はその全体が参照により本明細書中に援用される)、ハイドロゲル(例えば、Langer et al.,1981,J.Biomed.Mater.Res.15:167-277;Langer,1982,Chem.Tech.12:98-105を参照、非分解性エチレン-酢酸ビニル(例えば、エチレン酢酸ビニルディスクおよびポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル))、分解性乳酸-グリコール酸共重合体、例えば、Lupron Depot(商標)、ポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133,988号明細書)、ヒアルロン酸ゲル(例えば、米国特許第4,636,524号明細書を参照)、アルギン酸懸濁液、ポリオルトエステル(POE)などを含んでもよい。ポリ乳酸(PLA)およびそのグリコリドとの共重合体(PLGA)は、Lupron Depot(商標)の商品化がPLAポリマーを用いる最初の非経口徐放性製剤として1989年に認可されたことから、当該技術分野でよく知られている。活性成分の徐放を達成するための賦形剤としてPLAおよびPLGAを用いる製品のさらなる例として、Amidox(PLA;歯周病)、Nutropin Depot(PLGA;hGHを伴う)、およびTrelstar Depot(PLGA;前立腺がん)が挙げられる。他の合成高分子は、限定はされないが、ポリ(c-カプロラクトン)、ポリ3-ヒドロキシ酪酸、ポリ(β-リンゴ酸)およびポリ(ジオキサノン)];ポリ無水物、ポリウレタン(国際公開第2005/013936号パンフレットを参照)、ポリアミド、 シクロデストラン(cyclodestrans)、ポリオルトエステル、n-ビニルアルコール、ポリエチレンオキシド/ポリエチレンテレフタレート、ポリリン酸、ポリホスホン酸、ポリオルトエステル、ポリシアノアクリレート、ポリエチレングリコール、ポリジヒドロピラン、およびポリアセタールを含んだ。非生分解性デバイスは、限定はされないが、様々なセルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸酢酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、シリコンベースのインプラント(ポリジメチルシロキサン)、アクリルポリマー、(ポリメタクレート、ポリメタクリル酸メチル、ポリヒドロキシ(エチルメチルアクリレート)、ならびにポリエチレン-コ-(酢酸ビニル)、ポロクサマー、ポリビニルピロリドン、ポロキサミン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリエチレン-クロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFEまたは「テフロン(商標)」)、スチレン・ブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド-ポリスチレン、ポリ-a-クロロ-p-キシレン、ポリメチルペンテン、ポリスルホンおよび他の関連する生物学的に安定なポリマーを含む。徐放デポー製剤に適した担体は、限定はされないが、マイクロスフェア、フィルム、カプセル剤、粒子、ゲル剤、コーティング剤、マトリックス、ウェーハ、丸剤または他の医薬送達組成物を含む。かかる徐放性製剤の例が、上に記載される。米国特許第6,953,593号明細書;米国特許第6,946,146号明細書;米国特許第6,656,508号明細書;米国特許第6,541,033号明細書;および米国特許第6,451,346号明細書(それら各々の内容は参照により本明細書中に援用される)も参照のこと。剤形は、予め選択された期間にわたる治療用に治療的に必要とされるような量および濃度で製剤を運搬できる必要があり、かつ製剤に対して治療の持続時間にわたる体内プロセスによる分解からの十分な保護をもたらす必要がある。例えば、剤形は、代謝過程からの分解や、例えば、漏出、クラッキング、破損、または歪みのリスクに対して保護するための特性を有する材料からなる外側によって囲まれ得る。これは、例えば、対象による正常な関節およびその他の運動の結果として、薬剤放出デバイス上、すなわち例えば対流性薬物送達デバイス内で発揮される物理的力、リザーバー内部で生成される圧力に関連した物理的力に起因して使用中に受けることになるストレス下での制御されない様式での剤形内容物の排出を阻止し得る。薬剤リザーバーまたは薬物を保持もしくは含有するための他の手段はまた、活性製剤との意図されない反応を回避するような材料からなる必要があり、好ましくは生体適合性である(例えば、剤形が移植される場合、対象の身体または体液に対して実質的に非反応性である)。一般に、各々の生物学的製剤は、少なくとも12時間から少なくとも1週間、個体に投与され、また必要に応じて、少なくとも10、20、30、100日間または少なくとも4か月間、または少なくとも6か月以上の間、薬剤を送達するように設計されたインプラントを介する可能性が最も高い。抗-LAM抗体および/または抗-PIM6/LAM抗体は、製剤が放出される部位近傍での組織障害または外傷を最小化するような比較的低い体積速度、例えば約0.001ml/日~1ml/日で送達され得る。製剤は、特定の生物学的製剤に応じて、低用量で、例えば、約0.01μg/時間もしくは0.1μg/時間、0.25μg/時間、1μg/時間、一般に最大で約200μg/時間の速度で放出されてもよく、または製剤は、低い体積速度、例えば、約0.001ml/日~約1ml/日、例えば0.01μg/日、最大で約20mg/日の体積速度で送達される。用量は、用いられる活性成分(例えばIgG抗体)の効力、バイオアベイラビリティ、および毒性、ならびに対象の要求などの幾つかの要素に依存する。
【0108】
ヒトおよび非ヒト患者のインビボ治療においては、患者に、本発明の少なくとも1つの抗-LAM抗体および/または少なくとも1つの抗-PIM6/LAM抗体を含む医薬製剤が投与または提供される。インビボ治療用に用いられるとき、本発明の抗-LAMまたは抗-PIM6/LAM抗体は、治療有効量(すなわち総細菌負荷を除去または低減する量)で患者に投与される。抗体は、公知の方法、例えば静脈内投与に従い、例えばボーラスとしてかまたは長期にわたる連続注入により、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液嚢内、髄腔内、経口、局所、または吸入経路により、ヒト患者に投与される。抗体は、非経口的に、可能であれば、標的細胞部位に、または静脈内に投与され得る。一部の実施形態では、抗体は、静脈内または皮下投与により投与される。本発明の治療組成物は、患者または対象に全身的に、非経口的に、または局所的に投与されてもよい。疾患における巧みな治療および改善を評価するための上記パラメータは、医師が精通した通常の手順により容易に測定可能である。
【0109】
非経口投与においては、抗-LAMおよび抗-PIM6/LAM抗体は、薬学的に許容できる非経口媒体と関連した単位用量の注射剤型(溶液、懸濁液、乳剤)で製剤化されてもよい。かかる媒体の例として、限定はされないが、水、生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖溶液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。非水性媒体は、限定はされないが、不揮発性油およびオレイン酸エチルを含む。リポソームは、担体として用いることができる。媒体は、少量の添加剤、例えば等張性および化学安定性を増強する物質、例えば緩衝液および保存剤などを含有してもよい。
【0110】
本発明の抗-LAMおよび抗-PIM6/LAM抗体は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の毒性株による感染に対して治療的処置を施すのに十分な量で、当該技術分野で利用可能な任意の様式、方法および/または組み合わせで宿主に投与されてもよい。これらの組成物は、当該技術分野で公知の種々の経路、特に非経口経路、例えば限定はされないが、静脈内(IV)、筋肉内(IM);または皮下(SC)投与などの非経口経路により個体に提供されてもよく、ここでIV投与は治療抗体投与に関する当該技術分野の中の標準である。これらの組成物は、分割または複数回投与(すなわち、治療レジームを通じた製剤の滅菌状態を維持することによる時間差での抗体の投与)として投与されてもよい。
【0111】
用量および投与計画は、医師により容易に決定される種々の要素、例えば感染の性質、例えば、その治療指数、患者、および患者の病歴に依存する。一般に、治療有効量の抗体が患者に投与される。一部の実施形態では、投与される抗体の量は、約0.01mg/kg~約1000mg/kg(患者体重)の範囲内、およびその間の任意の範囲である。感染のタイプおよび重症度に応じて、抗体の約0.1mg/kg~約50mg/kg体重(例えば、約0.1~15mg/kg/用量)は、例えば、1回以上の分割投与によるか、または持続注入による、患者への投与のための初期候補用量である。この治療の進行は、通常の方法およびアッセイにより、また医師または他の当業者に公知の判断基準に基づき、容易に監視される。疾患における巧みな治療および改善を評価するための上記パラメータは、医師が精通した日常的手順により容易に測定可能である。
【0112】
これらの抗体はまた、所与の抗体の対合した重鎖および軽鎖を発現する遺伝子ベクターを介して投与されてもよい。これは、これらの遺伝子を効率的に発現するプラスミドまたはウイルスベクター、例えばアデノウイルスもしくはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを含み得る。これらのベクターは、筋肉組織への注射により送達され得、また用量に応じて、比較的大量の分泌抗体を循環中に比較的長期間にわたり分泌し得る。
【0113】
他の治療計画は、本発明の抗-LAMおよび/または抗-PIM6/LAM抗体の投与、例えば、別の抗-LAM抗体、例えば限定はされないが、当該技術分野で公知の抗-LAM抗体、例えばマウス抗-LAM抗体またはそのヒト化バージョン、または医薬化合物、例えば限定はされないが抗生物質と組み合わされてもよい。本発明の抗-LAMおよび/または抗-PIM6/LAM抗体との同時投与に適した抗生物質は、限定はされないが、イソニアジド、リファンピン、リファペンチン、エタンブトール、ピラジナミド、ベダキリン、カプレオマイシン、シクロセリン、デキサメタゾン、カナマイシン、およびチノコルジン(tinocordin)を含む。組み合わせ投与は、分割製剤または単一の医薬製剤を用いる同時投与、およびいずれかの順序での連続投与を含み、ここで好ましくは、双方の(またはすべての)活性薬剤がそれらの生物学的活性を同時に発揮する間にはある期間が存在する。かかる組み合わせ治療は、相乗的治療効果をもたらし得る。疾患における巧みな治療および改善を評価するための上記パラメータは、医師が精通した日常的手順により容易に測定可能である。
【0114】
別の実施形態によると、本発明は、本発明の少なくとも1つの抗-LAMおよび/または抗-PIM6/LAM抗体および薬学的に許容できる担体を含む受動的ワクチンまたは医薬組成物を提供する。一実施形態によると、ワクチンまたは医薬組成物は、本明細書に記載の少なくとも1つの抗体および薬学的に許容できる担体を含む組成物である。ワクチンは、本明細書に記載の特性を任意の組み合わせで有する複数の抗体を含み得、他の抗-LAM抗体、例えば本発明のものおよび当該技術分野で公知のもの、例えばマウス抗-LAM抗体またはそのヒト化バージョンをさらに含み得る。受動的ワクチンは、当該技術分野で公知である、1つ以上の薬学的に許容できる保存剤、担体、および/または賦形剤を含んでもよい。
【0115】
別の実施形態によると、本発明は、少なくとも1つの抗原のLAMまたはPIM6エピトープを患者に投与することを含む、能動的ワクチンまたは医薬組成物を包含する。利用されるべき特定のエピトープは、TB感染および/または病態形成に対する適切な動物モデルにおける本特許に記載の抗体の治療活性を試験することにより決定され得る。このモデル種は、マウス、またはモルモット、またはウサギ、または霊長類であり得る。例えば、A194-01が最も保護的である場合、A194-01エピトープの一形態を有するワクチンが用いられることになる一方、P30B9が保護的である場合、ジマンノース置換Ara6残基が適切な体液性応答の生成に最も有効であり得る。能動的ワクチンは、当該技術分野で公知である1つ以上のアジュバント、例えば、ミョウバン、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、パラフィン油、およびサイトカイン、例えば、IL-1、IL-2、IL-12を含んでもよい。能動的ワクチンは、当該技術分野で公知である1つ以上の薬学的に許容できる保存剤、担体、および/または賦形剤を含んでもよい。
【0116】
一部の実施形態では、本発明は、組換えベクター、例えば、抗-LAM抗体または抗-PIM6/LAM抗体の免疫グロブリン重鎖(Ig VH)をコードする核酸、および免疫グロブリン軽鎖(Ig VL)をコードする第2の核酸を含むプラスミドを対象とする。他の実施形態では、第1の核酸および第2の核酸は、2つの異なる組換えベクター内に存在する。別の実施形態によると、本発明は、個体における結核感染を治療する方法であって、抗-LAMまたは抗-PIM6/LAM抗体の免疫グロブリン重鎖(Ig VH)をコードする第1の核酸および抗-LAMまたは抗-PIM6/LAM抗体の免疫グロブリン軽鎖(Ig VL)をコードする第2の核酸を前記個体に投与するステップを含み、核酸の各々はプロモーター領域に作動可能に連結される、方法を包含する。第1の核酸および第2の核酸は、同じ組換えベクター内または2つの異なる組換えベクター内に存在してもよい。組換えベクターは、非複製ウイルスベクター、例えばアデノ随伴ウイルス(AAV)であってもよく、またはプラスミドであってもよい。特定の実施形態では、本発明は、本明細書に開示される1つ以上のベクターで形質転換される細胞を対象とする。
【0117】
上記の抗体および抗体組成物、ワクチン組成物、およびベクターは、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の毒性株による感染の予防的および治療的処置のため、投与され得る。
【0118】
H.均等物
ある範囲の値が与えられる場合、その範囲の上限と下限との間の、文脈上別途明確な断りがない限りは下限の単位の10分の1までの各介在値と、その記述範囲内の任意の他の記述値または介在値が本発明の範囲内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限(そのより小さい範囲内に独立して含まれ得る)もまた、記述範囲内でいずれかの限界が具体的に除かれることを条件として、本発明の範囲内に包含される。記述範囲がそれら限界の一方または双方を含む場合、それらに含まれる限界のいずれかまたは双方を除く範囲もまた本発明に含まれる。
【0119】
特に規定されない限り、本明細書で用いられるすべての科学技術用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されている場合と同じ意味を有する。本明細書に記載の場合に類似するかまたは等しい任意の方法および材料が本発明の実施または試験においても用いることができるが、ここでは好ましい方法および材料が記載される。本明細書中で言及されるすべての出版物は、それら全体が参照により本明細書中に援用される。
【0120】
本明細書で用いられるとき、また添付の特許請求の範囲では、単数形「a」、「and」および「the」は、文脈上別途明確な断りがない限り、複数の参照物を含む。
【0121】
用語「約」は、当業者によりベースライン値と実質的に異なると考えられることのない値の範囲を指す。例えば、用語「約」は、記述値の20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%の範囲内に含まれる値、ならびにかかる記述値に介在する値を指してもよい。
【0122】
本明細書中に開示される出版物は、あくまで本発明の出願日に先立つそれらの開示のために提供される。本明細書中のいずれも、先行発明の理由から本発明にかかる出版物に先行する権利が与えられないことの承認として解釈されるべきではない。さらに、提供される刊行日は、独立して確認される必要があり得る実際の刊行日と異なることがある。
【0123】
本文書中で引用される出願および特許の各々、ならびに出願および特許(発行された各特許の審査中;「出願に引用される文書」を含む)の各々に引用される各々の文書または参考文献、患者または非患者の文献、ならびにこれらの出願および特許のいずれかに対応するかつ/またはそれから優先権を主張するPCTおよび外国出願または特許の各々、ならびに出願に引用される文書の各々の中で引用または参照される文書の各々は、ここでそれら全体が参照により本明細書中に明確に援用される。より一般的には、文書または参考文献は、このテキスト中で特許請求の範囲の前の参考文献リスト中;またはテキスト自体の中のいずれかで引用され;かつ、これらの文書または参考文献の各々(「本明細書中に引用される参考文献」)、ならびに本明細書中に引用される参考文献の各々の中に引用される各々の文書または参考文献(任意の製造業者の仕様、使用説明書などを含む)は、ここで参照により本明細書中に明確に援用される。
【0124】
以下の非限定例が、本発明をさらに例示するのに役立つ。
【実施例0125】
実施例1-本明細書に記載の方法を利用して、メモリーB細胞をインビトロで培養し、免疫グロブリン可変領域遺伝子を分子的にクローン化し、LAMに特異的な幾つかの新規なヒトモノクローナル抗体(mAb)を単離した。当業者は、本明細書に記載のこれらの方法を調整することで、患者の血液中を循環するメモリーB細胞100,000個からわずか1個存在し得る、非常に高い親和性を有する希少な抗体を選択的に同定できることを理解するであろう。
【0126】
モノクローナル抗体
マウスモノクローナル抗体:Dr.Delphi Chatterjee’s labから得られる、LAMに特異的なマウスモノクローナル抗体CS-35およびCS-40を産生するハイブリドーマ細胞株を再クローン化して均一化し、抗体をプロテインAクロマトグラフィーにより精製した。
【0127】
抗体906.41、906.7、908.1および922.5は、Dr.John Spencerによって提供され、FIND25およびFIND170は、FINDでTobias Brogerによって提供された。
【0128】
抗原
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のH37Rvリポアラビノマンナン(LAM)(NR-14848)およびスメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)由来のLAM(NR-14860)は、BEI resourcesを通じてColorado State Universityから入手した。LAM由来の複合糖質は、Lowary labにて合成した。
【0129】
ELISAアッセイ
Man-LAM(H37Rv)およびPI-LAM(スメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)由来)をCBC緩衝液(7.5mM炭酸ナトリウム、17.4mM重炭酸ナトリウム、pH9.0)で希釈し、96ウェルのELISAプレート内、100ng/ウェルの濃度で蒔いた。プレートの4℃で一晩のインキュベーション後、ウェルを0.05%TWEEN-20を含有するpH7.4のPBS(PBST)で洗浄し、次にPBS緩衝液中1%BSA(Sigma)でブロッキングした。PBSTで洗浄したプレートを、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に感染した個体に由来する血漿および対照血漿(2%FBSを含有するRPMI培地で希釈)とともに37℃で1時間インキュベートした。次にPBSTで洗浄したプレートを、アルカリホスファターゼコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(γ特異的)(Millipore)、またはIgM(μ特異的)(Millipore)、またはIgA(α特異的)の1:1000希釈物とともに1時間インキュベートした。PBST洗浄後、DEA緩衝液50μLで発色させた。分光光度計により、ODを405nmで測定した。力価は、BSAでコーティングしたプレートで取得したバックグラウンドODの減算後にODをもたらす相互希釈と定義し、指数関数的内挿により決定した。
【0130】
血漿滴定
2つの精製した抗原は、BEI Repositoryから入手し、2μg/mlの濃度での96ウェルELISAプレート上、4℃で一晩蒔き、次にプレートを1×PBS中1%BSAでブロッキングした。血漿のLAMに特異的な力価を、連続希釈試料を37℃で1時間インキュベートすることによって試験し、それに続いてプレートをPBS+0.1%Tween20で3回洗浄した。結合抗体を、アルカリホスファターゼコンジュゲートヤギ抗ヒトκおよびヤギ抗ヒトλのPBS中1%BSAで1:1,000希釈時の混合物を用いて検出し、アルカリ性リン酸塩基質をDEA緩衝液に添加することによりシグナルを展開した。30分後、反応性をOD405で測定した。
【0131】
ヒト対象
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)による活動性感染を有する患者を、Global Tuberculosis InstituteのLattimore practiceに登録した。活動性感染は、培養証明された結核疾患または臨床結核の診断により定義した。このグループは、最近結核と診断された患者、治療2か月目の患者を含んだ。非感染患者は、HIV血清陰性、ツベルクリン皮膚検査陰性で、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)ワクチン接種の履歴を有さず、インターフェロンγ放出アッセイ(IGRA)陰性の健常ボランティアであった(Quantiferon Gold In-Tube,Cellestis Inc,Valencia,CA)。インフォームドコンセント文書は参加者から得て、試験はRutgers University Institutional Review Boardにより認可された。
【0132】
表4.ヒト対象の人口統計
1.A194-01(IgGアイソタイプ)の培養および単離
ヒトモノクローナル抗-LAM抗体A194-01(アイソタイプIgG)を、TB感染患者TB-194から得た培養したメモリーB細胞から単離した。インビトロ培養系の重要な構成要素は、B細胞の表面上に発現され、T細胞依存性免疫グロブリンのクラススイッチおよびメモリーB細胞の発達を媒介するのに必須の役割を担うTNF受容体スーパーファミリーのメンバーであるCD40のリガンドCD40Lにより刺激をもたらし得る好適な支持細胞の存在である。メモリーB細胞は、CD40Lを発現するMS40L低細胞の支持細胞層上に播種した。これらの細胞は、CD40Lを低レベルで発現し、メモリーB細胞の複製およびそれらの形質細胞への成熟を効率的に支持することが以前に示されている(Luo,X.,et al.,Blood,2009.113(7)。これらの細胞は、B系統成長因子IL-7を提供するマウス間質性MS5細胞を、最初にOrigene(Rockville,MD)から入手したヒトCD40Lを形質導入するウイルスFUW-CD40Lに感染させることにより作製した。メモリーB細胞は、Miltenyi製のMACSヒトメモリーB細胞単離キット(カタログ番号130-093-546)を用いて単離した。非B細胞は、細胞表面マーカーCD2、CD3、CD14、CD16、CD36、CD43、CD56、CD66bおよびグリコホリンAに対する抗体を含有する磁気ビーズを用いる陰性選択により、PBMCから排除した。ナイーブB細胞をさらに除去するため、メモリーB細胞亜集団を、ナイーブB細胞上でなく形質細胞上で低レベルで発現されるメモリーB細胞に対するマーカーである細胞表面マーカーCD27に対する抗体にカップリングされた磁気ビーズを用いて陽性選択した。CD40Lを発現する支持細胞の存在下で、これらの条件は、メモリーB細胞の複製およびそれらの形質芽細胞への分化を支持し、Igを比較的高い力価で培養上清中に分泌する。
【0133】
培養上清の半分を新しい培地と交換することにより、培養物を1週間隔で再栄養した。2~3週後、分泌された抗体を約1~5μg/ml産生するための十分なB細胞が存在した。各ウェル内に100~1,000個の異なるクローンの存在を仮定すると、これは、平均濃度1~10ng/mLのIg/B細胞クローンに対応した。この濃度はかなり低いことから、この方法は、標的抗原に対して比較的高い親和性を有する抗体にバイアスした。約80,000細胞のメモリーB細胞は、この患者の血液から精製し、約800細胞/ウェルの初期密度において96ウェル培養プレートの96ウェル内で培養した。
【0134】
培養上清における結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のLAMに対する抗体の存在について、ELISAによりスクリーニングした。LAMを、96ウェルのELISAプレートの炭酸水素塩コーティング緩衝液50μL/ウェル中、2μg/mLの濃度でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートをPBST(1×PBS中0.1%TWEEN20)で4回洗浄し、1×PBS中2%脱脂乳200μL、37℃で1時間ブロッキングした。培養上清100μlを、LAMを含有するELISAプレートの対応するウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。追加的な洗浄ステップ後、APコンジュゲートマウス抗ヒトFab抗体を添加し、結合されたヒト抗体を検出した。37℃でのインキュベーションの30分後、DEA緩衝液中のAP基質100μLをELISAウェルに添加し、反応性を、405nmで吸光度を測定することにより比色測定的に測定した。
【0135】
陽性シグナル(1時間で約1のOD)が96ウェル中の1ウェルのみで検出され、これはこの試料中のこれらの細胞が希少であることを示す。陽性細胞からの細胞を、96ウェルプレートの10ウェル内で、5~10細胞/ウェルの密度で再培養し、LAMに対する活性について再スクリーニングした。この結果、約6の陽性ウェル(1時間で約1のOD)が得られ、LAM反応性細胞が低頻度であることに再び合致し、これは最初の陽性ウェルが単一のLAM陽性B細胞クローンのみを含有したことを示唆する。幾つかの陽性サブクローンからの細胞を溶解させ、HおよびL鎖の可変領域を単離するように用い、次にHおよびL鎖発現ベクターにクローン化した。全部で10の多様なVHおよび9のVL配列をこれらのウェルから単離し、次にこれらを、個別の組み合わせを293細胞に遺伝子導入することにより活性について試験した。試験した90の組み合わせの内、重鎖(p9045-IgG1-VH)および軽鎖(p9044-Vk)の単一の組み合わせのみがLAMに対する陽性シグナルをもたらした。抗体は、製造業者によって記載される通り、Expi-292細胞内の対応する重鎖および軽鎖プラスミドの同時導入により発現させ、無血清培地中で増殖した。抗体は、プロテインAビーズ(IgG用)またはプロテインLビーズ(IgG用)のいずれかに対するアフィニティークロマトグラフィーにより精製し、低pH緩衝液で溶出した。精製抗体を濃縮し、サイズおよび純度についてSS-PAGEにより特徴づけた。
【0136】
2.P30B9のIgMアイソタイプの単離および培養
ヒトモノクローナル抗-LAM抗体P30B9、アイソタイプIgMを、TB感染患者TB-314から得た培養したメモリーB細胞から単離した。PBMCは、患者TB-314の血液からフィコール密度勾配での遠心分離により単離し、約30,000個のメモリーB細胞を、Miltenyi製のMACSヒトメモリーB細胞単離キットを用いて上記のように精製した。精製したメモリーB細胞を、IL-21(100ng/mL)、IL-10(100ng/mL)、IL-2(10ng/mL)、IL-4(2ng/mL)、およびCpG(1μM)の存在下で、96ウェルプレート内で増殖したMS40-L細胞の単層上に400細胞/ウェルで蒔くことにより14日間培養し、細胞上清を、H37Rv ManLAMへの結合についてELISAによりスクリーニングした。ManLAMを、96ウェルのELISAプレートの炭酸水素塩コーティング緩衝液50μL/ウェル中、2μg/mLの濃度でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートをPBST(1×PBS中0.1%TWEEN20)で4回洗浄し、1×PBS中1%BSA100μL、37℃で1時間ブロッキングした。50μlの培養上清または希釈抗体を、LAMを含有するELISAプレートの対応するウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。追加的な洗浄ステップ後、APコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(H+L)抗体を添加し、結合されたヒト抗体を検出した。37℃でのインキュベーションの30分後、DEA緩衝液中のAP基質50μLをELISAウェルに添加し、反応性を、405nmで黄色を測定することにより測定した。二次ヤギ抗ヒトIgG、IgA、IgM、κ鎖試薬による探索時、78ウェル中の1ウェルのみが陽性シグナルを生成した。増殖後、このウェルに、自己切断型ブタテッショウウイルス-1(P2A)ペプチド配列によって連結されたBCL6およびBcl-xLを形質導入し、その後、GFPレポーター遺伝子をIRESにより駆動させる。これら2つの遺伝子は、メモリーB細胞における長期複製を安定化させ、BCRの会合による抗原陽性細胞の選択後であっても細胞の培養を可能にする。レトロウイルスベクターを、RペプチドがC末端TMドメインから欠失したテナガザル白血病ウイルス(GaLV)のエンベロープ糖タンパク質でシュードタイプ化した。一次B細胞の巧みな形質導入により、BCL-6、Bcl-xLおよびマーカータンパク質GFPの発現がもたらされた。蛍光顕微鏡下でGFP陽性293T細胞を計数することにより、ウイルス力価を判定した。ポリブレン/レトロネクチンの存在下で、活性化されたB細胞にレトロウイルスベクターを形質導入した。
【0137】
さらなる増殖後、形質導入細胞を、IL-21(100ng/mL)およびIL-2(10ng/mL)の存在下で限界希釈で継代した。プレート30上のウェルB9(P30B9)を、その強力なLAM結合活性および単クローンの存在の顕微鏡的実証に基づいて選択した。P30B9の上清は、スメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)由来のLAMまたはαクリスタリンでコーティングしたウェルではなく、H37Rv-LAMでコーティングしたウェルに排他的に結合した。このウェルからの細胞を溶解し、RNeasy miniキット(Qiagen)を用いてRNAを単離し、次いでsuperscript III cDNA合成システム(Invitrogen)を用いてオリゴ(dT)でcDNA合成した。Smith-Tillerのプライマーを用いて抗体重鎖および軽鎖可変領域を増幅し、ヒト重鎖および軽鎖発現ベクターにクローン化した。重鎖可変領域を最初に標準のIgGベクターにクローン化した。しかし、ヒトκ鎖発現ベクターにクローン化した軽鎖配列と組み合わせるとき、LAM結合活性は検出されなかった。その時点で、最初の安定に形質導入されたポリクローナルウェル内で産生されるManLAM反応性抗体は、アイソタイプに特異的な試薬で再探索し、排他的にIgMであることが判明した。その後、P30B9 VH配列をIgM H鎖定常領域発現ベクターにクローン化し、対応するκ鎖との同時導入時、良好な結合活性が得られた。
【0138】
3.A194-01 IgGおよびP30B9 IgMおよびLAMに対するマウス抗-LAM抗体のエピトープ特異性の特徴づけ
A.A194-01 IgGおよびP30B9 IgMによって認識されるエピトープを規定するため、前記抗体の結合活性を、LAM中に存在する異なる構造を表す合成グリカンがウシ血清アルブミンにコンジュゲートされた一連の25の複合糖質に対する、幾つかのマウスLAMに特異的なモノクローナル抗体(CS-35、CS-40、FIND25、FIND170、および908.1によって表されるモノクローナル抗体の900シリーズ)の場合と比較した(
図4A)。これらはサイズが4~26の炭水化物環の範囲であり、様々なマイコバクテリアのLAM中に存在することが知られる構造モチーフの範囲、例えば、キャップのない幾つかのポリアラビノース構造とホスホイノシトールでキャッピングされたものとの双方、α(1→2)連結モノ、ジ-およびトリ-Manpマンノース構造、および5-デオキシ-5-メチルチオペントフラノシル(methylthiopentofuranosyl)(MTX)モチーフ、ならびに様々なキャッピングされたAra4およびAra6構造を表した。
【0139】
6つの異なる反応性パターンが、これらのモノクローナル抗体に対するこの抗原パネルで得られた(
図4B)。これらの抗原に対するモノクローナル抗体の相対的親和性を適定特性により示し;高い親和性反応が中間希釈で高い反応性を保持する一方で、低い親和性が反応性における急速な低下によって示される。結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のLAMおよびスメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)由来のLAMと中程度の親和性で反応し、塩基性Ara4およびAra6モチーフを有するキャッピングされた構造またはキャップのない構造の双方を認識するマウスmAb CS-35において、最も広範なパターンが見られ、これはこのmAbのβ-D-Araf-(1→2)-α-D-Araf-(1→5)-α-D-Araf-(1→5)-α-D-Arafモチーフに対する既知の特異性に合致した。
【0140】
ヒトモノクローナル抗-LAM抗体A194-01 IgGはまた、これらの構造の大きい画分を認識し、多くの場合、最強の親和性を有した。A109-01 IgGは、すべてのキャップのないAra4およびAra6構造およびホスホイノシトールでキャッピングされたAra4構造に強力に結合し、マンノースでキャッピングされた構造のサブセットには大して強力に結合しなかった。A109-01 IgGは、モノマンノースでキャッピングされた構造と十分に結合した反面、ジおよびトリマンノース構造とは非常に弱く結合したが、後者の構造との反応性は、MTX置換が存在したときには増強された。(908.1によって表される)マウスモノクローナル抗体の900シリーズの4つは、すべてのキャップのないAra4およびAra6構造と比較的弱い親和性で反応したが、キャッピングされた構造のいずれとも反応しなかった。FIND(FIND25、KI25とも称される)からの2つのマウスモノクローナル抗体は、すべてのAra6構造とキャッピングの存在または不在とは無関係に強力に結合したが、Ara4構造を全く認識しなかった。ManLAMと特異的に反応することで知られるCS-40は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のLAMと弱く反応し、モノマンノースでキャッピングされたAra4およびAra6構造と優先的に結合した。
【0141】
ヒトモノクローナル抗-LAM抗体P30B9 IgMは、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のManLAMや、ジマンノースでキャッピングされたAra4およびAra6構造と強力にかつ高い特異性で反応し、また他のマンノース含有構造とは大幅により弱い活性を示した。この残基の活性の可視化は、アッセイ条件に依存し、一部のアッセイ形式で見られるが(例えば、
図4b、8)、その他では見られない(例えば、
図16、18)。理論に拘束されたくないが、P30B9 IgMのジマンノースでキャッピングされた構造に対する相対的特異性は、末端マンノシル単位が、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の毒性株からのリポアラビノマンナンのヒトマクロファージへの結合を媒介することが公知であり、さらにジマンノースキャップが、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のLAMのドミナントな修飾であることが公知であることから、潜在的には臨床的に意義がある。
【0142】
A104-01 IgGおよびP30B9 IgMのエピトープ特異性をより大きい炭水化物抗原パネルに対するマイクロアレイアッセイにおいてさらにマッピングした時、同様の結果が得られた。このパネルは、P30B9 IgMによって認識されるが他の試験抗体のいずれによっても認識されない、幾つかのさらなるポリマンノース構造を含んだ(
図8)。これは、P30B9 IgMのジマンノースでキャッピングされたAra4およびAra6構造、特に(必ずではないが)末端アラビノースに連結されたMan-α(1→2)-Man-α(1→5)を有するものに対する優先度に一致した。P30B9 IgMはまた、Man-α(1→2)-Man-α(1→6)を有するペンタマンノース構造(59.AS-3-71)に強力に反応したが、Man-α(1→3)-Man-α(1→6)(50.YB-BSA-18)を有する類似構造に対してはわずかであった。α(1→2)結合に対するその優先度にもかかわらず、P30B9 IgMは、2番目のマンノースに対する追加的なマンノース結合α(1→6)とともにMan-α(1→2)結合を有するテトラマンノース構造AS-2-91と反応しなかった。理論に拘束されたくないが、これは、P30B9のIgMアイソタイプの特異性では、ジマンノースモチーフの両糖が追加的置換を全く含まないことが必要であり得ることを示唆する。
【0143】
B.これらのモノクローナル抗体のLAM由来のグリカンに対する精密な特異性をマッピングするためのより正確な適定により、Ara4構造の抗体認識における末端β-D-Araf-(1→2)-α-D-Araf-(1→5)二糖の重要な役割が実証された。Ara4構造は、β-D-Araf-(1→2)-α-D-Araf-(1→5)-α-D-Araf-(1→5)-α-D-Araf四糖からなる一方で、Ara6構造は、2番目の糖に追加的なβ-D-Araf-(1→2)-α-D-Araf-(1→3)二糖分岐を有する。モノクローナル抗体の3つは、マンノースキャッピングと無関係に、Ara4およびAra6構造双方に結合した。3つ全部のモノクローナル抗体が、Ara4構造(YB-8-099)と、還元末端に4つの追加的なα-D-Araf-(1→5)糖を伴うAra4構造に対応するYB-BSA-03に結合した(
図9A)。しかし、モノクローナル抗体の中で、Ara6構造の低級分岐に対応する末端β-D-Araf-(1→2)-α-D-Araf-(1→3)二糖を有する、関連の八糖(MJ-LZ-2)に結合するものはなかった。これは、β-D-Araf-(1→2)-α-D-Araf-(1→5)結合を有するAra6構造の高級分岐がこれらのモノクローナル抗体によって認識され、β-D-Araf-(1→2)-α-D-Araf-(1→3)二糖を有する低級分岐が認識されないことを示した。
【0144】
抗体認識における末端β-D-Araf-(1→2)結合の役割を、これらのモノクローナル抗体およびAra6依存性FIND25抗体の末端二糖の切断形態を有する3つの関連するポリα-D-Araf-(1→5)構造に対する反応性を探索することによって試験した(
図9B)。3つ全部の構造はまた、内部α-D-Araf-(1→3)分岐を有した。YB-BSA-07は、線状α-D-Araf-(1→5)構造内で終結し、抗-LAM抗体のすべてと完全に反応性を示さなかった。YB-BSA-09は、Ara6分岐の構造に似ている、2つのより長い分枝の最後から2番目の糖での(1→3)分岐を介して付着された追加的なα-D-Araf糖を有した。この構造は、試験されるより高濃度のA194-01のIgGアイソタイプおよびCS-35により、わずかに認識された。YB-BSA-10は、多糖の非還元末端で2つの完全なAra6構造を形成する分枝の各々に末端β-D-Araf-(1→2)糖を含んだ。この構造は、モノクローナル抗体の全部により、天然LAM抗原に対するそれらの親和性に一致する相対的結合強度で認識された。これらのアッセイでは、末端β-D-Araf-(1→2)-α-D-Araf-(1→5)二糖が、利用可能なアラビノース反応性のLAMに特異的なモノクローナル抗体すべての重要な成分であることが示された。
【0145】
C.結核菌(Mycobacterium tuberculosis)およびマイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)などの結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の病原性株とスメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)などの急速に増殖する非病原性株との決定的差異は、病原性株におけるマンノースでキャッピングされた末端の存在である。そうであれば、異なるマンノシル化構造に特異的なモノクローナル抗体は、構造試験にとって、またこれらの修飾の機能的寄与を判定するのに有用であり得る。この試験で特徴づけられるモノクローナル抗体の2つであるCS-35およびFIND25/170の活性は、マンノースキャップの存在または不在による影響を全く受けなかった。他方で、モノクローナル抗体の900シリーズの結合は、任意の種類のマンノシル化により完全に抑制された(
図4)。
【0146】
他方、CS-40は、非修飾Ara4グリカン(YB-8-099)とわずかに結合したが、単一のマンノースキャップを有するAra4(YB-8-101)およびAra6(YB-8-149)構造と強く結合した。この実験では、
図4で用いる天然マウス抗体と比べてより高感度な結合の検出をもたらすことから、マウス重鎖ドメインがヒトIgG1定常配列と置換された修飾CS-40を用いた。CS-40とキャップのないアラビノフラノース構造との弱い反応性は、そのスメグマ菌(M.smegmatis)LAMとの結核菌(M.tb)LAMと比べての弱い反応性に反映された。α(1→4)連結MSX糖の末端マンノースへの付着(すなわち、YB-8-141およびYB-8-149)は、結合親和性に対する効果を有しなかった一方、ジマンノースキャップを作製するための2番目のα(1→2)連結マンノース糖の付着(YB-8-111およびYB-8-125)は、CS-40の反応性を完全に抑制した(
図16)。
【0147】
A194-01は、より複雑な反応性パターンを有した。A194-01は、キャップのないアラビノフラノシル側鎖ならびにモノマンノースでキャッピングされたAra4(YB-8-101)およびAra6(YB-8-123)構造と強力に結合したが、このmAbは、ジマンノースでキャッピングされたAra4(YB-8-111)とはわずかに、またトリマンノースでキャッピングされたAra4(YB-8-113)とはさらにより弱く反応し、ジマンノースでキャッピングされたAra6(YB-8-125)とはほとんど反応しなかった。CS-40において見られたように、モノマンノース構造に対するMTX置換(YB-8-141、YB-8-149)は、A104-01の結合を阻害せず、特に興味深いことに、MSX付加は、ジマンノースでキャッピングされたAra4構造およびトリマンノースでキャッピングされたAra4構造(YB-8-133、YB-8-143)の認識を有意に改善した。P30B9のManLAMに対する高い選択性に一致して、mAbは、ジマンノースでキャッピングされたAra4(YB-111)およびAra6(YB-8-125)構造と特異的に結合した。CS-40およびA194-01の結合に対するMSX置換の良好または有益な効果と対照的に、この置換は、追加的なマンノースの付加によりトリマンノースでキャッピングされた構造が形成されたことから、P30B9の反応性の完全な欠如をもたらした。これらの結果は、異なるモノクローナル抗体がLAM構造の異なる領域および構造的態様を認識し、一部が専らアラビノフラノース側鎖に結合し、それ以外がキャッピングモチーフに異なるレベルの特異性で結合することを示唆した。
【0148】
Ara6反応性抗体の相対的な結合特異性および親和性を、代表的な複合糖質について比較した(
図11)。全体的パターンは、天然抗原のPILAMおよびManLAMにおいて得られたもの(
図3)および複合糖質に対する予備適定において得られたもの(
図4)に一致した。ヒトA194-01 IgGは、キャップのない構造のすべておよびMSX置換Ara6モノマンノース構造(YB-8-149)に対してより高い相対的親和性を有し、単一のマンノースキャップを有するAra6構造と等価な親和性で反応したが、ジマンノースまたはトリマンノースキャップを有する構造を認識しなかった。FIND25は、標準のAra6構造を有するすべての構造(いずれもキャッピングされた形態またはキャップのない形態)に、CS-35と同様のまたはCS-35よりもやや高い親和性で結合したが、分枝の1つが分岐点から離れた非還元末端で伸びた、2つの構造(YB-BSA-06およびYB-BSA-08)に結合しなかった。908.1は、後者2つを含む、キャップのない構造のすべてにより弱い親和性で結合したが、マンノースでキャッピングされた構造4のいずれも認識しなかった。
【0149】
抗-LAMモノクローナル抗体Aを含む競合試験、概要
個別抗体がビオチン化プローブmAbのLAMへの結合に対して競合する能力をELISAにより滴定した。抗-LAM抗体A194-01、CS-35、FIND25およびP30B9の4つについての典型的な競合曲線を
図16に示す。予想通り、ビオチン化抗体はすべて、それらの過剰量のそれらの非標識バージョンによって競合された。マウス抗-LAM抗体908.6は、その他の抗体に対して、仮に競合したとしても弱く競合した。これは、ある程度、この抗体の弱い親和性に起因したが、908.6のキャップのない構造に対する結合上の制限も反映し、またキャッピングされた構造がCS-35およびFIND25によって認識されるManLAM中のドミナントな標的であったことを示唆する。
【0150】
CS-35は、その広範な反応性に一致して、プローブ抗体のすべての結合に対して完全に競合したが、そのビオチン化A194-01との競合は、CS-35のLAMに対するより低い親和性に一致して、A194-01単独よりも大して強力でなかった。CS-35は、ビオチン化FIND25に対して完全に競合したが、FIND25は、標識CS-35に対して単に部分的に競合し(約74%の最大競合)、A194-01に対してはさらに大して有効的でなかった(約50%)。理論に拘束されたくないが、この結果は、おそらくは、Ara6モチーフに排他的に結合する、FIND25によらず、A194-01およびCS-35によって認識されるAra4構造の存在を反映する。FIND25がCS-35の結合の大半と競合したという事実は、Ara6構造がAra4構造よりも一般的であることを示唆した。A194-01は、その高い親和性にもかかわらず、それ自身に対してのみ競合し、CS-35またはFIND25のいずれに対しても競合せず、これはさらに、後の2つの抗体によって認識されるLAM中の標的が主にA194-01によって認識されない構造(例えば、ジマンノースでキャッピングされた構造およびトリマンノースでキャッピングされた構造)からなることを示唆した。この結果と対照的に、A194-01は、ManLAMにおける競合の欠如におけるAra6構造の効率的なマンノースキャッピングにおける役割に一致して、FIND25の非マンノシル化PILAMへの結合に対してまさに完全かつ効率的に競合した。
【0151】
抗体P30B9を用いる競合試験は、さらに、ManLAM中のAra6構造の大半がジマンノースでキャッピングされ、かつジマンノースキャップの大部分がAra6構造上に存在するという結論を支持した。P30B9は、ManLAMに対するFIND25の結合の約70%およびCS-35の結合の約80%と競合し、これらのマウスmAbによって認識される構造の大半がまた、P30B9によって認識されることが確認された。P30B9のManLAMへの結合は、それ自身により、またCS-35およびFIND25双方により効率的に競合された。FIND25によるP30B9との競合のレベルは100%に近く、ジマンノース依存性P30B9結合部位の本質的にすべてがAra6部位上に位置し、Ara4構造上にほとんど位置しないことが示された。予想通り、これらの抗体によるジマンノースでキャッピングされた構造の不十分な認識に一致し、A194-01は、P30B9のManLAMへの結合に対して非常に弱く競合し、908.7は全く競合しなかった。後者の抗体がP30B9の結合に対して効率的に競合できないことにより、この効果が、競合するmAbのプローブmAbと同じ分岐への結合を必要とし、かつ同じ分子の隣接した分岐上に位置する異種エピトープに対する結合が有効な競合をもたらさないことが確認された。
【0152】
B.競合アッセイによる相対的なA194-01 IgGおよびP30B9 IgM親和性
A194-01のIgGアイソタイプおよびP30B9のIgMアイソタイプを含む個別のモノクローナル抗-LAM抗体の特異的なグリカン構造に対する反応性をマッピングすることは、抗体競合試験によるLAM中の前記特異的なグリカン構造の分布の特徴づけを可能にした(
図10)。これらの競合アッセイでは、1つの抗体が第2の(それらが同じ種に由来する場合にはビオチン化された)抗体の結合に対して競合するため、天然分子中で2つのエピトープが潜在的には(必ずではないが)同じまたは隣接するアラビナン分岐上で相互に近接している必要があることを仮定した。このモデルは、例えば、キャップのない、モノマンノシル化、またMSX置換Ara4およびAra6構造のいずれにも結合するビオチン化IgG A194-01が、それ自身により、またA194-01の改変された変異体および/または誘導体により効率的に競合しても、Ara6構造にのみ結合するマウスモノクローナル抗体FIND25によっては部分的にすぎない場合での非対照な競合パターンによって支持された。他方、すべてのAra4およびAra6構造に結合するマウスモノクローナル抗体CS-35は、より完全な競合をもたらすが、おそらくはその比較的低い親和性に起因して大して効率的でない。
【0153】
これらのアッセイの結果は、一部では意外かつ想定外の特性を示した。例えば、すべてのジマンノースでキャッピングされたManLAM構造に結合する、P30B9のIgMアイソタイプは、それ自身、CS-35およびFIND170により強力かつ完全に競合された。理論に拘束されたくないが、マウスモノクローナル抗-LAM抗体FIND25によるP30B9の効率的競合は、天然LAM中のジマンノースでキャッピングされた構造が、FIND抗体によって認識されるAra6構造に主に局在化され、Ara4構造上に明確に発現されないことを示唆する。これにより、ジマンノースキャッピングが結核菌(Mycobacterium tuberculosis)複合体の毒性株中に見出されるLAMのドミナントな形態と考えられることから、ジマンノースでキャッピングされたAra6残基に対して標的化し、特異的に結合することができることの重要性が強調される。ビオチン化FIND25のA194-01の改変された変異体であるIgMアイソタイプによる高度に効率的な競合は、A194-01のIgMアイソタイプによるマンノシル化された構造の認識増加についてのさらなる証拠である。
【0154】
C.ManLAMおよびPILAMに対するA194-01 IgGおよびP30B9 IgMおよびマウス抗-LAM抗体の競合試験
異なる抗-LAMモノクローナル抗体間の結合競合アッセイを用いて、LAM中の様々な構造形態の分布を分析した。A194-01のIgGアイソタイプは、非修飾Ara4およびAra6側鎖の双方または単一のマンノースキャップを有する鎖を認識したが、ジマンノースまたはトリマンノースキャッピングモチーフのいずれかを有する側鎖に結合しなかった。2つのFINDマウス抗体は、Ara6のすべての形態と反応したが、任意のAra4構造と反応しなかった。P30B9 IgMは、ジマンノースキャップを有するAra4およびAra6構造に対して比較的特異的であった。
【0155】
増加した結合価を有するA194-01構築物に対する反応性における広範化に一致して、これらの構築物は、抗体競合活性における効力の増強を示した。ManLAMに対するビオチン化A194-01 IgGの結合に対して競合する能力について試験するとき、十量体A194-01 IgMおよび四量体scFv-IgG変異体は、A194-01 IgGアイソタイプ自身よりも効率的に競合し(
図11)、それ故、潜在的な治療的および診断的有用性の増大を示した一方で、単量体FabおよびscFv形態は、大して効果的に競合しなかった(
図1)。A194-01の改変された変異体および/または誘導体の二量体scFvは、A194-01 IgGアイソタイプと同様、等しく競合した。
【0156】
A194-01の改変された変異体および/または誘導体のエピトープ特異性をA194-01 IgGの場合と比較したとき、それらがより広範な反応性を有することが認められた(
図14)。一方ではIgGアイソタイプがジマンノース(YB-8-123、YB-8-125)およびトリマンノース(YB-BSA-113、YB-BSA-13)で置換された構造に明確には結合しなかったが、IgMはこれらの構造を認識し、scFv-IgG型は、同様にこれらの構造の一部に対して増強された活性を有した。ジマンノースキャッピング、特にジマンノースでキャッピングされたAra6が毒性結核菌(Mycobacterium tuberculosis)中のドミナントなLAMモチーフであることから、これは潜在的には、治療および診断用途におけるA194-01のこれらの改変形態の高められた有用性を示唆する。
【0157】
非標識A194-01 IgGは、ビオチン化A194-01 IgGの、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のLAM(ManLAM)(
図12A)またはスメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)由来のLAM(PILAM)(
図12D)のいずれかへの結合に対して競合した一方で、マウスモノクローナル抗体FIND170およびP30B9は、A194-01のいずれかの抗原への結合に対して競合することができなかった(
図12A、D)。これは、Ara6に特異的なFIND170、またはジマンノースキャッピング残基に依存したP30B9 IgMのいずれかでなく、A194-01 IgGアイソタイプによって認識されるAra4構造のドミナントな認識に一致した。同様に、A194-01は、ビオチン化FIND25(
図12B)またはP30B9 IgM(
図12C)のいずれかのManLAMへの結合と競合せず、これはこれらの抗体に対する異なるエピトープ特異性に合致した。A194-01 IgGがFIND25のManLAMへの結合に対して競合できないことと対照的に、A194-01 IgGは、FIND25のPILAMへの結合の約90%と強力に競合し(
図12E)、これは公知のPILAM中でのマンノースキャッピングの不在およびA194-01のキャップのないAra4およびAra6構造に対する高親和性に合致した。
【0158】
A194-01 IgGによる非効率的な競合と対照的に、P30B9 IgMは、FIND25の結合の約80%と競合し、FIND170は、P30B9の結合とほぼ完全に競合した(
図12B、C)。これは、FINDマウス抗体によって認識されるAra6構造の大半がジマンノースキャップを有し、ひいてはP30B9 IgMによっても認識され、またP30B9によって認識されるジマンノースでキャッピングされた構造の大半がAra6構造上に存在することを強く示唆した。これは、ジマンノースでキャッピングされたAra6が、毒性結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のLAMモチーフ中のドミナントな免疫学的モチーフであることを示唆する。
【0159】
D.さらなる競合試験
LAMが不確実な異質性のある複合抗原であるという事実に光を当てるため、さらなる競合試験を行った。LAM反応性モノクローナル抗体の異なるエピトープ特異性の決定は、天然LAM中の様々なエピトープの分布を調べるための結合競合アッセイの使用を可能にした。様々な抗体がビオチン化プローブモノクローナル抗体のLAMおよび合成複合糖質への結合に対して競合する能力をELISAにより滴定した。3つのモノクローナル抗-LAM抗体A194-01 IgG、CS-35、およびFIND25についての典型的な競合曲線を
図13Aに示す。ビオチン化プローブモノクローナル抗体は、十分過剰に存在するときのそれらの非標識バージョンによって競合された。マウスモノクローナル抗体908.6は、その他の抗体に対して、仮に競合したとしても弱く競合した。これは、ある程度、この抗体の弱い親和性に起因したが、908.6のキャップのない構造に対する結合上の制限も反映し、またマンノースでキャッピングされた構造がCS-35およびFIND25によって認識されるManLAM中のドミナントな標的であることをさらに示唆した。CS-35は、その広範な反応性に一致して、ビオチン化A194-01 IgGの結合に対して競合したが、A104-01 IgGのLAMに対するより高い親和性に一致して、A194-01 IgG単独の場合よりも大して効率的でなかった。CS-35はまた、ビオチン化FIND25に対して完全に競合した一方で、FIND25は、標識CS-35に対して単に部分的に競合し(約74%の最大競合)、A194-01 IgGに対してはさらに大して有効的でなかった(約50%)。この結果は、おそらくは、Ara6骨格を有する構造に排他的に結合する、FIND25によらず、A194-01 IgGおよびCS-35によって認識されるAra4構造の存在を反映する。A194-01 IgGは、そのLAMに対する全体的に高い親和性にもかかわらず、それ自身に対してのみ競合し、CS-35またはFIND25のいずれに対しても競合しなかった。これは、マウスモノクローナル抗体によって認識されるLAM中の部位が、A194-01 IgGによって認識されないジマンノースでキャッピングされた構造およびトリマンノースでキャッピングされた構造によって支配されることを示唆した。
【0160】
ジマンノースでキャッピングされたManLAMに特異的に結合するP30B9 IgMを用いる追加的な競合試験は、ManLAM中のAra6構造の大半がジマンノースでキャッピングされ、かつジマンノースキャップの大部分が結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のManLAM中のAra6構造上に存在するという臨床的に有意な結論をさらに支持した。P30B9 IgMは、FIND25のManLAMへの結合の約80%と競合し(
図13B)、これはFIND25によって認識されるAra6構造の大半がP30B9 IgMによっても認識されることに合致した。P30B9 IgMは、FIND25のPILAMへの結合に対して競合せず、これは、PILAMにおけるマンノシル化の欠如に起因する、PILAM中でのP30B9ジマンノースエピトープの不在に合致した。さらに、A194-01 IgGは、FIND25のManLAMへの結合に対して競合せず、これはさらに、ジマンノースキャップを有するAra6構造の大半がA194-01 IgGによって認識されないことに合致した。この効果におけるマンノシル化の役割を確認すると、A194-01 IgGは、FIND25のPILAMへの結合に対して非常に効率的に競合し、これは、A194-01のPILAMに対する高い親和性およびこの抗原中でのマンノースキャッピングの不在に合致した。
【0161】
ビオチン化P30B9 IgMの結合についての競合データは、この結論をさらに支持した。ビオチン化P30B9 IgMの結合は、それ自身により、また等しい効率でCS-35およびFIND25により、最も効率的に競合されたが、A194-01 IgGによってはわずかに不完全であった(
図13C)。FIND25による競合のレベルは100%に近く、これはジマンノース依存性P30B9 IgM結合部位の本質的にすべてがAra6構造上に位置することを示した。この解釈に合致して、CS-35はまた、P30B9のジマンノースでキャッピングされたAra4(YB-8-111)およびジマンノースでキャッピングされたAra6(YB-8-125)への結合に対して競合した一方で、FIND170は後者の抗原に対してのみ競合し、A194-01 IgGはいずれに対しても競合しなかった。ManLAMおよび均一なYB-8-125複合糖質における競合曲線間の一般的類似性は、競合結果が単一の炭水化物側鎖上での関連エピトープの存在または不在と相関し、かつ抗体のより離れた異種部位への結合に起因する間接的な立体的効果が競合における役割を(もしあるにしても)ほとんど果たさないことを示した。
【0162】
1つの意外かつ想定外の結果は、A194-01 IgG対CS-35およびFIND25の間での競合の完全な欠如である。CS-35がA194-01 IgGのManLAMへの結合に対して競合する能力は、CS-35によるすべてのA194-01 IgG標的の認識に基づいて予想され、A194-01 IgG自身によるよりもCS-35による大して効率的でない競合は、これらの抗体のManLAMに対する相対的親和性に合致する(
図3)。同様に、A194-01 IgGの結合のFIND25による不完全な競合は、後者の抗体ではなく前者の抗体によって認識されるAra4標的の存在により説明され得る。
【0163】
ビオチン化P30B9 IgMの結合のCS-35およびFIND170の双方による効率的かつ完全な競合は、P30B9 IgMによって認識されるジマンノースキャップが、臨床的および診断的有意性がある、FIND mAbによって認識されるAra6構造とほぼ排他的に存在したことを示唆する。これは、FIND25のManLAMへの結合活性の約80%を遮断するがPILAMに対する効果を有しない、P30B9 IgMによるFIND25の結合の比較的効率的な競合により支持された。これは、FIND25によって認識されるManLAM中のAra6部位の約80%がジマンノースキャップを有し、かつジマンノースキャップの本質的にすべてがAra6上に存在し、Ara4構造上に存在しないことを強く示唆する。A194-01 IgGがCS-35またはFIND25と競合できないことと相まって、これらの結果は、ジマンノース置換Ara6が、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のManLAMに対するドミナントな免疫原性構造であり、ひいては非常に重要な抗原標的を表すことを示す。
【0164】
患者血漿中でのLAMに特異的な抗体応答に関する試験は、マッピングと無関係に、応答が線状Ara4/Ara6構造に特異的なIgG2アイソタイプによって支配されることを示す。CS-35およびFIND25などのアラビノフラノース依存性エピトープに特異的なIgGモノクローナル抗-LAM抗体によるP30B9 IgMの効率的競合は、患者血漿中のかかるエピトープに対するドミナントなIgG2応答であれば、より低い力価で産生され得る、ジマンノース依存性の任意のManLAMに特異的な抗体に対しても競合することになることを示唆する。したがって、たとえ抗体の後者のクラスがより有効な抗菌活性を有し得るとしても、これらの効果が、患者血清中に存在するアラビノース依存性エピトープに特異的なドミナントな非機能的IgG2抗体による結合に対する競合により制限され得る可能性が高い。理論に拘束されたくないが、ドミナントな体液性応答は、実際には、より希少な抗体、例えばP30B9 IgMのような多価抗体、またはA194-01の改変された変異体および/または誘導体、例えば感染および病原性に対する免疫調節を提供し得る五価IgMアイソタイプまたは四価scFv-IgGの潜在的効果に対して細菌を保護し得る。
【0165】
5.A194-01の結合に対する結合価の効果
ジマンノース反応性P30B9のそのIgMアイソタイプに依存した反応性についての発見が、多価が抗体のLAMに対する親和性に寄与し得ることを示唆した。理論に拘束されたくないが、これは、単一のLAM分子がLAMの既知の分岐構造および複雑性に合致して複数の抗体結合部位またはエピトープを有し、かつより高い結合価を有する抗体が二価抗体よりも多い部位に結合でき、より高い親和性をもたらすことを示唆した。LAMに対する結合効率への抗体結合価の効果を、ビオチン化A194-01 IgGを標的として用いる結合競合アッセイにおいて、ヒトモノクローナル抗体A194-01の様々な改変された変異体および/または誘導体形態および/またはアイソタイプについて試験した。抗体形態は、VHおよびVL領域が可動性ペプチドリンカーによって連結された一価一本鎖scFv、一価Fabタンパク質、2つのscFvドメインが可動性リンカーによって連結された二量体scFvタンパク質、天然二量体IgG(
図1A)、および2つのより高い結合価形態の四価A194-01 scFv-IgG、および五価(結合部位に対して十価)IgMアイソタイプ(
図1B)を含んだ。インタクトな二価IgGを一価Fabに変換した結果、結合活性の非常に大きな低下がもたらされ、IgGのそれ自身に対する場合と比べて、濃度における>100倍の増加がビオチン化A194-01 IgGの結合活性の50%に対して競合するのに必要であった(
図1C)。一本鎖はまた、非効率に競合し、活性が33倍低下した。他方、scFv二量体は、A194-01のIgGアイソタイプと同様の効率で競合した。理論に拘束されたくないが、これは、A194-01の二価形態のLAMへの効率的結合には、抗原の単一分子中の隣接した標的への両結合部位の付着が必要であることを示唆した。より高い結合価形態は、モルベースでより効率的に競合した。これは単純に、追加的な結合部位の存在に起因し得るが、より高い結合価形態の増加した親和性をさらに反映し得る。
【0166】
A194-01の四量体scFv-IgG変異体および/または誘導体とA194-01の十量体IgMアイソタイプの双方の特異性を、上記の合成複合糖質パネルに対するA194-01のIgGアイソタイプの場合と比較した(
図14)。これは、改変されたscFv-IgG変異体および改変されたIgMアイソタイプの双方が、IgGアイソタイプがわずかに認識するかまたは全く認識しないグリカンの一部とのより広範な反応性を有することを示した。ジマンノースでキャッピングされた構造(YB-8-111、YB-8-125、YB-8-133)およびトリマンノースでキャッピングされた構造(YB-8-113、YB-8-143、YB-BSA-13)の一部との増強された結合が見られ、A194-01の改変されたIgMアイソタイプは最も広範な反応性パネルを有した。ジマンノースキャッピングの有意性を仮定すると、これは有意な診断および治療可能性を有する。興味深いことに、増強された反応性はまた、試験したモノクローナル抗-LAM抗体にいずれによっても認識されない、末端β-D-Araf-(1→2)結合(YB-BSA-09)が欠損しているアラビノース構造を有するA194-01 IgMアイソタイプにおいて見られた。理論に拘束されたくないが、これは、結合価の増加により、A194-01のIgMアイソタイプのその塩基性アラビノース含有エピトープに対する結合活性の増強が、末端置換の阻害効果が克服されるに至るまで生じることを示唆した。
【0167】
A194-01 IgGならびにA194-01の改変されたIgMおよびscFv-IgG型の反応性特性を、ManLAMまたはPILAMのいずれかに対する相互の結合競合実験によりさらに分析した。3つすべての形態がビオチン化抗体のPILAMへの結合およびA194-01 IgGのManLAMへの結合に対して交差競合した一方で、A194-01のより高い結合価のscFv-IgGおよびIgM型のみが修飾抗体のManLAMへの結合と効率的に競合した。競合活性におけるこれらの差異は、改変された形態のより広範な結合特性に一致し、それらがIgG型によって認識されないLAM上の部位に結合することを示唆した。
【0168】
この結論は、A194-01の異なるアイソタイプがビオチン化FIND25 IgGおよびP30B9 IgMのManLAMへの結合と競合した相互の競合試験によりさらに支持された。A194-01 IgGがP30B9 IgMおよびFIND25のManLAMへの結合と競合しなかった一方で、A194-01のscFv-IgGおよびIgM型の双方は、これら2つのモノクローナル抗体の結合とほぼ完全に競合した(
図15A、B)。予想通り、A194-01の3つすべての形態がFIND25のPILAMへの結合と競合し(
図15C)、これはPILAM中でのマンノシル化の不在に合致した。この増強された活性は、これらの修飾がこの抗体の免疫診断用途における潜在的有用性を高めることになるとともに、免疫療法を目的として、これらの試薬の有効性をさらに高め得ることを示唆した。
【0169】
実施例2-結核菌(M.tb)の糖脂質に特異的な新規なヒトモノクローナル抗体の単離および特徴づけ-LAMおよびPIM6によって共有されるエピトープに特異的な第1のmAbの単離
P95C1抗体重鎖および軽鎖は、潜在性結核感染(LTBI)を有する患者から、ManLAMとの反応性をスクリーニングすることにより、単一のB細胞クローンから単離した。P95C1は、ManLAMおよびPILAMの双方に結合するIgMアイソタイプ抗体である。これは、P95C1がキャップのないまたは様々なマンノース構造でキャッピングされた様々なアラビノース側鎖を発現するいずれの分子にも結合しないことを示す複合糖質結合試験により示された。認識される唯一の構造は、PIM6と様々なLAMとの間に保存されるマンナン塩基中に存在する構造モチーフを有する2つのポリマンノース構造であった(
図18(A)、18(B)、18(C))。このLAM-PIM6交差反応は、A194-01およびP30B9がLAMのみに結合する一方で、P95C1がLAM前駆物質の糖脂質分子LMおよびPIM6とも反応することを示すウエスタンブロットアッセイにより確認した(
図20(A)、20(B))。
【0170】
P95C1が、P30B9と同様、IgMとして天然に発現された一方で、P30B9と対照的にそれは、IgAまたはIgGアイソタイプのいずれかに変換されるとき、反応性を保持した(
図19)。これは、LAM分子のマンナン領域内のエピトープまたはots位置の性質の反映であり得るか、またはより成熟した抗体配列に合致した、P95C1可変領域内でのより多くの数の突然変異に関連し得る。P95C1重鎖および軽鎖の可変領域は、その最も近い生殖系列抗体配列からの19および13のアミノ酸点突然変異を各々有する。
【0171】
近年、潜在性疾患を有する個体によって作製される抗体が、ファゴリソソーム融合、インフラマソーム活性化、および内部移行されるマイコバクテリアのマクロファージ殺傷を促進する上で、活動性結核を有する個体よりも機能的に優れていることが示されている(Lu et al.2016)。それ故、P95C1がLTBI患者から単離されたことと、その可変領域内に、P30B9および異なるManLAMエピトープ特異性を有する同じLTBI患者から単離された2つの他のLAMに特異的なmAbよりも多くの突然変異を有することは興味深い。
【0172】
結核菌(M.tb)感染に対するヒト体液性免疫応答の性質についてはほとんど知られていない。結核菌(M.tb)の表面糖脂質がマクロファージおよび樹状細胞の活性の阻害に寄与することは周知であるが、マンノースでキャッピングされたリポアラビノマンナン(ManLAM)またはホスファチジルイノシトールマンノシド6(PIM6)が結核菌(M.tb)の主要な免疫抑制性表面成分であるか否かについて、矛盾した情報がある。この問題は、PIM6の精製製剤のManLAMによる(およびその逆)一般的な汚染により、さらに複雑化される。この問題に対処する一方法は、これら2つの修飾物質に特異的な抗体がこれらの阻害活性を阻害する能力を試験することである。しかし、これは、これら2つの抗原に特異的である十分に特徴づけられた抗体の不在が原因で可能でなかった。現在まで、PIM6を認識する抗体は報告されておらず、本発明はPIM6を認識する第1の高親和性mAbを記載する。PIM(PIM2およびPIM4)は、ManLAMに対する前駆物質であり、ManLAMのマンナンドメインとPIM6のポリマンノース構造との間に何らかの構造的関係が存在する。
【0173】
抗体は、1)宿主細胞侵入の直接的遮断および細菌産物の中和による、また2)間接的にFc媒介性補体およびFc受容体を通じた細胞活性化機構による2つの方法で、その機能を発揮し得る。抗体介在性エフェクター機能は、主に抗体アイソタイプにより冒される。最近の試験によると、結核菌(M.tb)に対するヒトアイソタイプ依存性の阻害抗体応答が示され、異なる結核菌(M.tb)表面抗原に特異的なIgA(IgGでない)抗体が、肺上皮細胞による結核菌(M.tb)の取り込みを、IgA Fc受容体の発現と無関係に遮断し得ることが示された。LAMの結合に対するP95C1アイソタイプの効果を試験するため、P95C1-IgM重鎖の定常領域をCH-IgAおよびCH-IgGと置換し、P95C1-IgAおよびP95C1-IgGを作製した。P95C1アイソタイプ(IgM、IgA、IgG)とManLAMおよびPILAMとの結合親和性は同等であった(
図19)。
【0174】
他の実施形態
抗体、組成物、キットおよび方法の一部または全部においては、任意の改善を行ってもよい。本明細書で引用される出版物、特許出願、および特許を含むすべての参考文献は、ここで参照により援用される。ありとあらゆる例、または本明細書に提供される例示的用語(例えば、「~など(such as)」)の使用は、本発明を例示することが意図され、特に要求されない限り、本発明の範囲に対して制限を設けることはない。本発明のまたは好ましい実施形態の性質または利益に関しての本明細書中の任意の記載内容は、限定されることが意図されず、添付の特許請求の範囲は、かかる記載内容によって限定されるものとみなされるべきではない。より一般的には、本明細書中の用語は、任意の請求されない要素を本発明の実施にとって必須なものとして示すように解釈されるべきではない。本発明は、本明細書に添付される特許請求の範囲中に挙げられる主題のすべての修飾および均等物を適用法によって許容されるものとして含む。さらに、そのあらゆる可能なバリエーションにおける上記要素の任意の組み合わせは、本明細書中で別段の指示がないか、またはそれ以外として文脈により明確に禁忌とされない限り、本発明によって包含される。
Ara4構造、Ara6構造、またはそれらの組み合わせを含むLAMエピトープに特異的に結合する、ヒトモノクローナル抗-リポアラビノマンナン(抗-LAM)抗体、またはその抗原結合部分において、前記抗-LAM抗体が、配列番号1またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変軽領域、配列番号2またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変軽領域、配列番号3もしくは配列番号26またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変軽領域、配列番号4またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR1可変重領域、配列番号5またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR2可変重領域、および配列番号6もしくは配列番号23またはその抗原断片との少なくとも80%の同一性を有するCDR3可変重領域を含むことを特徴とするヒトモノクローナル抗-リポアラビノマンナン抗体、またはその抗原結合部分。