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特開2023-75254非天然アミノ酸含有タンパク質の産生を促進する方法および組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075254
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】非天然アミノ酸含有タンパク質の産生を促進する方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/52 20060101AFI20230523BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230523BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230523BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230523BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230523BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230523BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230523BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230523BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230523BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230523BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20230523BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20230523BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20230523BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20230523BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20230523BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20230523BHJP
   A61K 38/27 20060101ALI20230523BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
C12N15/52 Z
C12N5/10 ZNA
C12P21/02 C
C12P21/08
C12P21/02 K
C12P21/02 H
A61K39/00 B
A61K39/395 B
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P31/00
A61K48/00
A61P43/00 111
A61K38/16
A61K38/17
A61K38/18
A61K38/19
A61K38/20
A61K38/21
A61K38/22
A61K38/27
A61K38/28
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038441
(22)【出願日】2023-03-13
(62)【分割の表示】P 2019565862の分割
【原出願日】2018-06-02
(31)【優先権主張番号】62/514,754
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508048481
【氏名又は名称】アンブルックス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ambrx,Inc.
【住所又は居所原語表記】10975 North Torrey Pines Road,Suite 100,La Jolla,California 92037,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シジェン
(72)【発明者】
【氏名】ル,インチュン
(72)【発明者】
【氏名】ティアン,フェン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ゲノム工学技術を用いた、非天然アミノ酸含有タンパク質の産生を促進するための細胞株を作製する方法および組成物を提供する。
【解決手段】非天然アミノ酸をタンパク質に組み込むための細胞株を作製する方法であって、前記方法は、セレクターコドンを含有する目的の遺伝子を発現する細胞において、不活性化の標的とされる1つ以上の部位または領域を含み、ここで、細胞は、直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)および直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含む。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非天然アミノ酸をタンパク質に組み込むための細胞株を作製する方法であって、前記方法は、セレクターコドンを含有する目的の遺伝子を発現する細胞において、不活性化の標的とされる1つ以上の部位または領域を含み、細胞は、直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)および直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含む、方法。
【請求項2】
前記細胞または細胞株が、真核生物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞または細胞株が、COS、CHO、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28-G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0-Ag14、HeLa、またはHEK293から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記非天然アミノ酸が、O-メチル-L-チロシン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチル-フェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、p-プロパルギルオキシ-L-フェニルアラニン、トリ-O-アセチル-GlcNAcβ-セリン、L-Dopa、フッ化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アジド-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、またはイソプロピル-L-フェニルアラニンから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記目的の遺伝子が、生物学的治療遺伝子または生物学的治療産物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的治療遺伝子または生物学的治療産物が、ワクチンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記目的の遺伝子が、抗体、scFv、scFv融合タンパク質、Fc融合タンパク質、
第VII因子、第VIII因子、または第IV因子である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記目的の遺伝子が、抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記目的の遺伝子が、サイトカイン、インターロイキン、インターフェロン、ケモカイン、成長因子、ホルモン、およびこれらのレセプター、類似体、二重特異性またはこれらの断片である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記目的の遺伝子が、HER2、CD-70、PSMA、5T4、EGFR、TROP2、CD3、IL-2、IL-3、IL-10、IL-15、GPC3、DLL3、ROR1、レプチン、FGF-21、FGF-23、HGH、FcR、インスリン、TNFR1、TRAIL、EPO、およびこれらの類似体、二重特異性またはフラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
不活性化の標的とされる前記1つ以上の部位または領域が、GS、Bcl-2、IGFBP4、AQP1、Maf1、eRF1、FUT8、P53、カスパーゼ3、UPF1、Smg1、Smac/DIABLO、Apaf-1、カスパーゼ-6、カスパーゼ-7、カスパーゼ-9、カスパーゼ-10、PARP、アルファ ホドリン、NuMA、AIF、CAD、Puma、Noxa、14-3-3、Aven、Myc、またはHtrA2/Omiである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
不活性化の標的とされる前記部位または領域が、外因性選択マーカー遺伝子である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記選択マーカー遺伝子が、ゼオシン、ハイグロマイシン、またはピューロマイシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
不活性化の標的とされる前記部位または領域が、Bcl-2部位または領域である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
不活性化の標的とされる前記部位または領域が、BaxまたはBakである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
不活性化の標的とされる前記部位または領域が、完全にまたは部分的に不活性化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記セレクターコドンが、ナンセンスコドン、希少コドン、または4塩基コドンである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記セレクターコドンが、オーカーコドン、オパールコドン、またはアンバーコドンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
非天然アミノ酸を組み込んでいるタンパク質またはポリペプチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記非天然アミノ酸が、部位特異的に組み込まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞または細胞株が、一過性の、安定な細胞集団または安定なクローン細胞株である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
細胞または細胞株におけるアポトーシスを減少または低減させるための、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
非天然アミノ酸を組み込んでいるタンパク質またはポリペプチドの収率を改善するための、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法に係る単離された細胞。
【請求項25】
非天然アミノ酸を組み込んでいるタンパク質を得るための、請求項22に係る単離された細胞。
【請求項26】
非天然アミノ酸をタンパク質に組み込むための細胞または細胞株であって、前記細胞は、セレクターコドンを含有する目的の遺伝子を発現し、前記目的の遺伝子は、直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)および直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含み、前記細胞は、不活性化の標的とされる1つ以上の部位または領域を含む、細胞または細胞株。
【請求項27】
直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)および直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含む、非天然アミノ酸をタンパク質に組み込むための細胞または細胞株であって、前記細胞は、不活性化の標的とされる1つ以上の部位または領域を含む、細胞または細胞株。
【請求項28】
目的の遺伝子を発現する細胞または細胞株であって、前記目的の遺伝子は、直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)、直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含み、前記細胞は、不活性化の標的とされる1つ以上の部位または領域を含む、細胞または細胞株。
【請求項29】
直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)および直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含む細胞におけるアポトーシスを減少または低減させる方法であって、前記細胞における1つ以上のアポトーシス促進部位または領域を、不活性化の標的とする工程を含む、方法。
【請求項30】
セレクターコドンを含有する目的の遺伝子を発現する細胞において、不活性化の標的とされる1つ以上の部位または領域を不活性化することができる核酸分子を提供する工程、および
直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)および直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含み、セレクターコドンを含有する目的の遺伝子を発現する細胞へ、前記核酸分子を導入する工程
を含む、非天然アミノ酸をタンパク質に組み込むための細胞を作製する方法。
【請求項31】
前記核酸分子が、配列番号1~42から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記核酸分子が、不活性化の標的とされる1つ以上の部位または領域を不活性化する、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
不活性化の標的とされる前記1つ以上の部位または領域が、同じであるか、または異なる、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
不活性化の標的とされる前記部位または領域が、GS、Bcl-2ファミリー、IGFBP4、AQP1、Maf1、eRF1、FUT8、P53、カスパーゼ3、UPF1、Smg1、ゼオシン、ハイグロマイシン、ピューロマイシン、Smac/DIABLO、Apaf-1、カスパーゼ-6、カスパーゼ-7、カスパーゼ-9、カスパーゼ-10、PARP、アルファ ホドリン、NuMA、AIF、CAD、Puma、Noxa、14-3-3、Aven、Myc、またはHtrA2/Omiである、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
不活性化の標的とされる前記部位または領域が、外因性選択マーカー遺伝子である、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記選択マーカー遺伝子が、ゼオシン、ハイグロマイシン、またはピューロマイシンである、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
不活性化の標的とされる前記部位または領域が、Bcl-2部位または領域である、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
不活性化の標的とされる前記部位または領域が、BaxまたはBakである、請求項30に記載の方法。
【請求項39】
不活性化の標的とされる部位または領域が、完全にまたは部分的に不活性化されている、請求項30に記載の方法。
【請求項40】
前記細胞が、一過性の、安定な細胞集団または安定なクローン細胞である、請求項30に記載の方法。
【請求項41】
細胞におけるアポトーシスを減少または低減させるための、請求項30に記載の方法。
【請求項42】
部位特異的に組み込まれた非天然アミノ酸を有するタンパク質またはポリペプチドの収率を改善するための、請求項30に記載の方法。
【請求項43】
前記非天然アミノ酸が、O-メチル-L-チロシン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチル-フェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、p-プロパルギルオキシ-L-フェニルアラニン、トリ-O-アセチル-GlcNAcβ-セリン、L-Dopa、フッ化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アジド-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、またはイソプロピル-L-フェニルアラニン、パラ-アセチルフェニルアラニン、p-ニトロフェニルアラニン、p-スルホチロシン、p-カルボキシフェニルアラニン、O-ニトロフェニルアラニン、m-ニトロフェニルアラニン、p-ボロニルフェニルアラニン、o-ボロニルフェニルアラニン、m-ボロニルフェニルアラニン、p-アミノフェニルアラニン、o-アミノフェニルアラニン、m-アミノフェニルアラニン、p-アシルフェニルアラニン、o-アシルフェニルアラニン、m-アシルフェニルアラニン、p-OMeフェニルアラニン、o-OMeフェニルアラニン、m-OMeフェニルアラニン、p-スルホフェニルアラニン、o-スルホフェニルアラニン、m-スルホフェニルアラニン、5-ニトロHis、3-ニトロTyr、2-ニトロTyr、ニトロ置換されたLeu、ニトロ置換されたHis、ニトロ置換されたDe、ニトロ置換されたTrp、2-ニトロTrp、4-ニトロTrp、5-ニトロTrp、6-ニトロTrp、7-ニトロTrp、3-アミノチロシン、2-アミノチロシン、O-スルホチロシン、2-スルホオキシフェニルアラニン、3-スルホオキシフェニルアラニン、O-カルボキシフェニルアラニン、m-カルボキシフェニルアラニン、p-アセチル-L-フェニルアラニン、p-プロパルギル-フェニルアラニン、O-メチル-L-チロシン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチル-フェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAcβ-セリン、L-Dopa、フッ化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アジド-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、またはp-プロパルギルオキシ-フェニルアラニンである、請求項30に記載の方法。
【請求項44】
前記細胞が、COS、CHO、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28-G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0-Ag14、HeLa、またはHEK293である、請求項30に記載の方法。
【請求項45】
請求項30に記載の方法に係る単離された細胞。
【請求項46】
直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)および直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含み、セレクターコドンを含有する目的の遺伝子を発現する細胞株を提供する工程、
前記細胞における1つ以上の標的部位を不活性化することができる核酸分子を、前記細胞へ導入する工程、および
非天然アミノ酸を前記細胞に提供する工程
を含む、非天然アミノ酸を含む細胞株を作製する方法。
【請求項47】
細胞における不活性化の標的とされる1つ以上の部位または領域を不活性化することができる核酸分子を提供する工程、および
直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)および直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含む前記細胞へ、前記核酸分子を導入する工程
を含む、非天然アミノ酸をタンパク質に組み込むための細胞を作製する方法。
【請求項48】
上述の請求項のいずれか1項に係る単離された細胞または細胞株。
【請求項49】
直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)および直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含む、安定な細胞または細胞株を得るための、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
前記安定な細胞または細胞株が、プラットフォームもしくは産生細胞または細胞株である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記細胞が、直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)および直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含む、産生細胞株の開発を最適化するための、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
細胞または細胞株における非天然アミノ酸含有ポリペプチドの収率を最適化するための、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
細胞または細胞株におけるアポトーシスを減少させるための、請求項1に記載の方法。
【請求項54】
非天然アミノ酸を含む、請求項1に係る単離されたポリペプチド。
【請求項55】
請求項1に係る単離された細胞または細胞株。
【請求項56】
非天然アミノ酸含有タンパク質またはポリペプチドを産生するための、請求項28に係る単離された細胞または細胞株。
【請求項57】
前記非天然アミノ酸含有タンパク質の収率が、細胞における不活性化の標的とされる1つ以上の部位または領域を不活性化しない場合の少なくとも0.5倍以上大きい、請求項1に記載の細胞または細胞株。
【請求項58】
請求項26~28のいずれか1項に係るワクチン。
【請求項59】
上述の請求項のいずれか1項に記載の方法によって得られるワクチン。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の参照〕
本出願は2017年6月2日に出願された「Methods andCompositions for Promoting Non-Natural Amino Acid-Containing Protein Production」という名称の米国仮出願第62/514,754号の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔配列表〕
本出願は、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ASCIIコピーが、2018年5月29日に作成され、名称はAMBX_0223_PCT_SL.txtであり、サイズは13,172バイトである。
【0003】
〔技術分野〕
本開示は、非天然アミノ酸含有ポリペプチドを産生するためのゲノム工学および細胞株の作製の分野に関する。本発明は一般に、非天然アミノ酸含有ポリペプチドおよびタンパク質の細胞株の作製、開発、および産生の分野に関する。
【0004】
〔背景技術〕
非天然アミノ酸を含むタンパク質の遺伝的産生における飛躍的発展として、真核細胞(EuCODE)における化学的に直交する方向付けられた操作系の適用(Feng et al, (2013), A general approach to site-specific antibody drugconjugates, PNAS 111(5): 1766-1771;Schultz et al, USPN7,083,970、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる)がある。近年、この技術は抗体薬物結合(ADC)の分野において急速な進歩を遂げている(例えば、米国特許出願公開第20150018530号、第20150141624号、第20150152187号および第20150152190号を参照のこと。それぞれが参照により本明細書に組み込まれる)。しかしながら、産業界における非天然アミノ酸含有タンパク質のより広範な適用は、哺乳動物細胞における比較的低い収率によって妨げられてきた。
【0005】
タンパク質産生の低収率の原因となる可能性のある主要な因子は、システムにおける過剰なチャージされていないtRNAによって引き起こされた誘導アポトーシスかもしれないことが、観察によって示されている。当該分野で公知のように、アポトーシスは、産生プロセスを含む、細胞培養物中の種々の内因子または外因子によって引き起こされ得る。タンパク質産生の低収率の原因となる他の課題は、バイオリアクタープロセスにおけるスケールアップ時に内因性アポトーシス経路を活性化することができる細胞ストレッサーである。したがって、非天然アミノ酸含有タンパク質の産生を促進および増加させる改善された方法および組成物が、産業界において必要とされている。本発明の開示は、以下の記載から明らかなように、これらおよび他の必要性に対処する。
【0006】
〔発明の概要〕
本明細書には非天然アミノ酸含有タンパク質の産生を促進するための方法および組成物が開示される。非天然アミノ酸含有タンパク質の産生を促進するための細胞および細胞株もまた、本明細書中に開示される。一実施形態において、本発明の開示は非天然アミノ酸をタンパク質に組み込むための細胞株を作製する方法を提供し、この方法はセレクターコドンを含有する目的の遺伝子を発現する細胞において不活性化の標的となれる1つ以上の部位または領域を含み、ここで、細胞は、直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)および直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含む。別の実施形態では、細胞または細胞株は真核生物である。他の実施形態では、細胞または細胞株がCOS、CHO、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28-G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0-Ag14、HeLa、またはHEK293から選択される。他の一実施形態では、細胞または細胞株は、一過性の、安定な細胞集団または安定なクローン細胞株である。別の実施形態では、細胞は単離された細胞である。単離された細胞は、非天然アミノ酸を組み込んでいるタンパク質を得るためのものである。
【0007】
別の実施形態において、本発明は、非天然アミノ酸を組み込んでいるタンパク質またはポリペプチドを含む。別の実施形態において、非天然アミノ酸は、部位特異的に組み込まれている。別の実施形態において、非天然アミノ酸は、パラ-アセチルフェニルアラニン、p-ニトロフェニルアラニン、p-スルホチロシン、p-カルボキシフェニルアラニン、O-ニトロフェニルアラニン、m-ニトロフェニルアラニン、p-ボロニルフェニルアラニン、o-ボロニルフェニルアラニン、m-ボロニルフェニルアラニン、p-アミノフェニルアラニン、o-アミノフェニルアラニン、m-アミノフェニルアラニン、p-アシルフェニルアラニン、o-アシルフェニルアラニン、m-アシルフェニルアラニン、p-OMeフェニルアラニン、o-OMeフェニルアラニン、m-OMeフェニルアラニン、p-スルホフェニルアラニン、o-スルホフェニルアラニン、m-スルホフェニルアラニン、5-ニトロHis、3-ニトロTyr、2-ニトロTyr、ニトロ置換されたLeu、ニトロ置換されたHis、ニトロ置換されたDe、ニトロ置換されたTrp、2-ニトロTrp、4-ニトロTrp、5-ニトロTrp、6-ニトロTrp、7-ニトロTrp、3-アミノチロシン、2-アミノチロシン、O-スルホチロシン、2-スルホオキシフェニルアラニン、3-スルホオキシフェニルアラニン、O-カルボキシフェニルアラニン、m-カルボキシフェニルアラニン、p-アセチル-L-フェニルアラニン、p-プロパルギル-フェニルアラニン、O-メチル-L-チロシン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチル-フェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAcβ-セリン、L-Dopa、フッ化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アジド-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、またはp-プロパルギルオキシ-フェニルアラニンである。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態において、非天然アミノ酸は、O-メチル-L-チロシン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチル-フェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、p-プロパルギルオキシ-L-フェニルアラニン、トリ-O-アセチル-GlcNAcβ-セリン、L-Dopa、フッ化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アジド-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニンp-アミノ-L-フェニルアラニンまたはイソプロピル-L-フェニルアラニンから選択される。
【0009】
他の実施形態において、本発明は、目的の遺伝子またはセレクターコドンを含有する目的の遺伝子を提供する。セレクターコドンは、ナンセンスコドン、希少コドン、または4塩基コドンである。別の実施形態では、セレクターコドンは、オーカーコドン、オパールコドン、またはアンバーコドンを含む。cetain実施形態において、セレクターコドンは、アンバーコドンである。
【0010】
本発明の実施形態において、目的の遺伝子またはセレクターコドンを含有する目的の遺伝子は、ワクチンまたは抗体を含む生物学的治療遺伝子または生物学的治療産物である。目的の遺伝子またはセレクターコドンを含有する目的の遺伝子は、抗体、scFv、scFv融合タンパク質、Fc融合タンパク質、第VII因子、第VIII因子、または第IV因子である。他の実施形態において、目的の遺伝子またはセレクターコドンを含有する目的の遺伝子は、サイトカイン、インターロイキン、インターフェロン、ケモカイン、成長因子、ホルモン、およびこれらのレセプター、類似体、二重特異性またはこれらの断片である。別の実施形態において、目的の遺伝子は、HER2、CD-70、PSMA、5T4、EGFR、TROP2、CD3、IL-2、IL-3、IL-10、IL-15、GPC3、DLL3、ROR1、レプチン、FGF-21、FGF-23、HGH、FcR、インスリン、TNFR1、TRAIL、EPO、およびこれらの類似体、二重特異性またはフラグメントである。他の実施形態において、目的の遺伝子またはセレクターコドンを含有する目的の遺伝子は、サイトカイン、成長因子、成長因子受容体、インターフェロン、インターロイキン、炎症性分子、癌遺伝子産物、ペプチドホルモン、シグナル伝達分子、ステロイドホルモン受容体、エリスロポエチン(EPO)、インスリン、ヒト成長ホルモン、アルファ-1抗トリプシン、アンギオスタチン、抗体、アポリポタンパク質、アポタンパク質、心房性ナトリウム利尿因子、心房性ペプチド、c-X-cケモカイン、T39765、NAP-2、ENA-78、Gro-a、Gro-b、Gro-c、IP-10、GCP-2、NAP-4、SDF-1、PF4、MIG、カルシトニン、c-kitリガンド、サイトカイン、CCケモカイン、単球化学誘引タンパク質-1、単球化学誘引タンパク質-2、単球化学誘引タンパク質-3、単球炎症タンパク質-1α、単球炎症タンパク質-1β、RANTES、I309、R83915、R91733、HCC1、T58847、D31065、T64262、CD40、CD40リガンド、c-Kitリガンド、コラーゲン、コロニー刺激因子(CSF)、補体因子5a、補体阻害剤、補体受容体1、サイトカイン、DHFR、上皮好中球活性化ペプチド-78、Groα/MGSA、Groβ、Groγ、MIP-1α、MIP-1δ、MCP-1、上皮成長因子(EGF)、上皮好中球活性化ペプチド、エリスロポエチン(EPO)、表皮剥脱毒素、第IX因子、第VII因子、第VIII因子、第X因子、線維芽細胞増殖因子(FGF)、フィブリノーゲン、G-CSF、GM-CSF、グルコセレブロシダーゼ、ゴナドトロピン、成長因子、成長因子受容体、ヘッジホッグタンパク質、ヘモグロビン、肝細胞増殖因子(HGF)、ヒルジン、ヒト血清アルブミン、ICAM-1、ICAM-1受容体、LFA-1、LFA-1受容体、インスリン、インスリン様増殖因子(IGF-1)、IGF-I、IGF-II、インターフェロン、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、インターロイキン、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、ラクトフェリン、白血病抑制因子、ルシフェラーゼ、ニュールツリン、好中球阻害因子(NIF)、オンコスタチン M、骨形成タンパク質、癌遺伝子産物、副甲状腺ホルモン、PD-ECSF、PDGF、ペプチドホルモン、ヒト成長ホルモン、プレイオトロピン、プロテインA、プロテインG、連鎖球菌発熱外毒素A、BまたはC、リラキシン、レニン、SCF、可溶性補体受容体I、可溶性I-CAM 1、可溶性インターロイキン受容体、可溶性TNF受容体、ソマトメジン、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ストレプトキナーゼ、スーパー抗原、ブドウ球菌エンテロトキシン、SEA、SEB、SEC1、SEC2、SEC3、SED、SEE、ステロイドホルモン受容体、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、トキシックショック症候群毒素、チモシンアルファ1、組織プラスミノーゲンアクチベーター、
腫瘍成長因子(TGF)、TGF-α、TGF-β、腫瘍壊死因子、腫瘍壊死因子α、腫瘍壊死因子β、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)、VLA-4タンパク質、VCAM-1タンパク質、血管内皮増殖因子(VEGEF)、ウロキナーゼ、Mos、Ras、Raf、Met、p53、Tat、Fos、Myc、Jun、Myb、Rel、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、テストステロン受容体、アルドステロン受容体、LDL受容体、SCF/C-kit、CD40L/CD40、VLA-4/VCAM-1、ICAM-1/LFA-1、ヒアルリン/CD44、およびコルチコステロンである。
【0011】
他の実施形態では、本発明は不活性化、切除、破壊またはノックアウトの標的とされる1つ以上の部位または領域を提供する。不活性化の標的とされる1つ以上の部位または領域は、GS、Bcl-2、IGFBP4、AQP1、Maf1、eRF1、FUT8、P53、カスパーゼ3、UPF1、Smg1、Smac/DIABLO、Apaf-1、カスパーゼ-6、カスパーゼ-7、カスパーゼ-9、カスパーゼ-10、PARP、アルファ ホドリン、NuMA、AIF、CAD、Puma、Noxa、14-3-3、Aven、Myc、またはHtrA2/Omiである。
【0012】
一実施形態において、不活性化の標的とされる部位または領域は、外因性選択マーカー遺伝子である。別の実施形態において、選択マーカー遺伝子は、ゼオシン、ハイグロマイシン、またはピューロマイシンである。別の実施形態において、不活性化の標的とされる部位または領域は、Bcl-2部位または領域である。別の実施形態において、不活性化の標的とされる部位または領域は、BaxまたはBakである。他の実施形態において、不活性化の標的とされる部位または領域は、完全にまたは部分的に不活性化されている。部分的に不活性化された、破壊された、ノックアウトされた、または切除された部位または領域は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の不活性化された、破壊された、ノックアウトされた、または切除された部位または領域を含んでもよい。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、非天然アミノ酸をタンパク質に組み込むための細胞または細胞株であって、細胞は、セレクターコドンを含有する目的の遺伝子を発現し、目的の遺伝子は、直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)および直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含み、細胞は、不活性化の標的とされる1つ以上の部位または領域を含む細胞または細胞株を提供する。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)、直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含む、非天然アミノ酸をタンパク質に組み込むための細胞または細胞株であって、前記細胞は、不活性化の標的とされる1つ以上の部位または領域を含む、細胞または細胞株を提供する。
【0015】
他の実施形態では、本発明は、目的の遺伝子を発現する細胞または細胞株であって、直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)、直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含み、細胞は、不活性化の標的とされる1つ以上の部位または領域を含む、細胞または細胞株を提供する。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)および直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含む細胞におけるアポトーシスを減少または低減させる方法であって細胞における1つ以上のアポトーシス促進部位または領域を不活性の標的とする工程を含む方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、細胞または細胞株のアポトーシスを減少または低減させるための細胞または細胞株を提供する。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、セレクターコドンを含有する目的の遺伝子を発現する細胞において、不活性化の標的とされる1つ以上の部位または領域を不活性化することができる核酸分子を提供する工程、および直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)および直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含み、セレクターコドンを含有する目的の遺伝子を発現する細胞へ、核酸分子を導入する工程を含む、非天然アミノ酸をタンパク質に組み込むための細胞を作製する方法を提供する。他の実施形態では、核酸分子は、配列番号1~42から選択される。別の実施形態において、核酸分子は、不活性化の標的とされる1つ以上の部位または領域を不活性化する。1つの他の実施形態において、不活性化の標的とされる1つ以上の部位または領域は、同じであるか、または異なる。
【0018】
別の実施形態において、本発明は、非天然アミノ酸を組み込んでいるタンパク質またはポリペプチドの収率を改善するための方法または細胞または細胞株を提供する。いくつかの実施形態では、細胞が一過性の、安定な細胞集団または安定なクローン細胞である。本発明の別の実施形態では、細胞におけるアポトーシスを減少または減少させるための方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、非天然アミノ酸部位特異的に組み込まれたタンパク質またはポリペプチドの収率を改善するための方法を提供する。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)および直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含み、セレクターコドンを含有する目的の遺伝子を発現する細胞株を提供する工程、細胞における1つ以上の標的部位を不活性化することができる核酸分子を、細胞へ導入する工程、および非天然アミノ酸を細胞に提供する工程を含む、非天然アミノ酸を含む細胞株を作製する方法を提供する。
【0020】
他の実施形態において、本発明は、細胞における不活性化の標的とされる1つ以上の部位または領域を不活性化することができる核酸分子を提供する工程、および直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)および直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含む細胞へ、核酸分子を導入する工程を含む、非天然アミノ酸をタンパク質に組み込むための細胞を作製する方法を提供する。
【0021】
別の実施形態において、本発明は、請求項のいずれか1項に係る単離された細胞または細胞株を提供する。他の実施形態では、本発明は、直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)および直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含む、安定な細胞または細胞株を得るための方法を提供する。他の実施形態では、安定な細胞または細胞株は、プラットフォームもしくは産生細胞または細胞株である。
【0022】
別の実施形態では、本発明が直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)および直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含む、産生細胞株の開発を最適化するための方法を提供する。他の一実施形態では、本発明が非天然アミノ酸を含む単離ポリペプチドを提供する。別の実施形態において、本発明は、非天然アミノ酸含有タンパク質の収率が、細胞における不活性化の標的とされる1つ以上の部位または領域を不活性化しない場合の少なくとも0.5倍以上大きい細胞または細胞株を提供する。
【0023】
本発明の一実施形態では、1つ以上の操作された核酸分子が細胞株に導入される。1つ以上の操作された核酸分子は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の操作された核酸分子を含み得る。他の実施形態において、1つ以上の操作された核酸分子は、同じかまたは異なる標的部位または領域に由来する。いくつかの実施形態では、操作された核酸分子が細胞中の同じ標的部位または領域由来の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の操作された核酸分子を含み得る。いくつかの実施形態において、操作された核酸分子は、異なる標的部位または領域由来の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の操作された核酸分子を含み得る。
【0024】
他の実施形態では細胞における不活性化、切除、ノックアウトまたは破壊を標的とする1つ以上の部位または領域を認識するポリヌクレオチドは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の部位または領域を認識するポリヌクレオチドを含み得る。
【0025】
他の実施形態では、細胞または細胞株が提供される。特定の実施形態において、安定な産生細胞株が提供される。他の実施形態では、細胞または細胞株は真核細胞または細胞株である。他の実施形態において、真核細胞または細胞株は例えば、哺乳動物細胞、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞、昆虫細胞のいずれかを含み得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、真核生物細胞または細胞株は脊椎動物細胞または細胞株である。いくつかの実施形態では、真核細胞または細胞株は、哺乳動物またはヒト細胞または細胞株である。他の実施形態において、細胞または細胞株はCOS、CHO(例えば、CHO-S、CHO-K1、CHO-DG44、CHO-DUXB11、CHO-DUKX、CHOK1SV)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28-G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0-Ag14、HeLa、またはHEK293(例えば、HEK293-F、HEK293-H、HEK293-T)細胞または細胞株を含み得るが、これらに限定されない。他の実施形態では、細胞または細胞株が例えば、CHO-S、CHO-K1、CHO-DG44、CHO-DUXB11、CHO-DUKX、CHOK1SVを含むCHO細胞または細胞株である。他の実施形態では、細胞または細胞株がCHO-K1、MDCKまたはHEK293細胞または細胞株である。特定の実施形態では、細胞または細胞株がCHO-K1細胞または細胞株である。
【0026】
他の実施形態では非天然アミノ酸含有ポリペプチドまたはタンパク質の収率を最適化、または増強、または増加、または改善することは、不活性化、切除、破壊またはノックアウトの標的とされる1つ以上の部位または領域を認識するポリヌクレオチドを含む核酸分子の不存在下で、少なくとも0.5倍、少なくとも1倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍以上、収率を最適化、または増強、または増加、または改善することを含み得る。
【0027】
別の実施形態では、本発明は本明細書に開示される方法および細胞のいずれかで製造されるワクチンを提供する。
【0028】
〔図面の簡単な説明〕
本発明の新規な特色を、添付の特許請求の範囲に詳細に記載する。本発明の原理が利用される例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することによって、本発明の開示の特徴および利点のより良好な理解が得られるだろう。
【0029】
図1)パネルAおよびB。非天然アミノ酸含有タンパク質を産生するために、産業および製薬会社においてプラットフォーム細胞株を利用する方策。図1は、産業(図1A)および製薬会社(図1B)におけるプラットフォーム細胞株を使用することの重要な役割を示す。
【0030】
図2)高産生細胞株の開発においてプラットフォーム細胞株を利用する一般的な手順。
【0031】
図3)パネルA、B、C。高産生細胞株の開発を最適化するための方策。図3は、FACS依存性単細胞沈着(図3A)、CRISPRノックアウト(図3B)、および細胞株開発プロセス最適化(図3C)等のいくつかの態様からの高産生細胞株開発の最適化を示す。
【0032】
図4)パネルAおよびB。プラットフォーム細胞株4E2由来の細胞におけるアポトーシスの観察。Annexin Vアッセイによって、パラ-アセチル-L-フェニルアラニンを特異的に組み込んでいる、直交対tRNA/アミノアシル-tRNAシンセターゼを遺伝的に組み込まれる形で含む、CHO-S細胞(図4A)およびプラットフォーム細胞株4E2(図4B)の生存率を評価した。図4に示すように、CHO-S細胞(生存率は96%)と比較して、4E2は過剰なアポトーシスを示した(生存率は85%)。
【0033】
図5)CHO細胞における標的BAX遺伝子のCRISPR gRNA設計。図5は、3つのgRNA配列に注釈を付けたCHO細胞におけるBAX遺伝子のゲノムDNA配列を示す。BAX遺伝子、エキソン1およびエキソン2のゲノムDNA配列を灰色の陰影で示す。BAXの他のシーケンスは通常の文字で示されている。PCRおよび配列決定において使用されるプライマーは、フォワードプライマーおよびリバースプライマーとして、それぞれ配列の先頭および末尾に示される。
【0034】
図6)CHO細胞における標的BAK遺伝子のCRISPR gRNA設計。図6は、2つのgRNA配列に注釈を付けたCHO細胞におけるBAK遺伝子のゲノムDNA配列を示す。BAK遺伝子、エキソン2およびエキソン3のゲノムDNA配列を灰色の陰影で示す。BAKの他のシーケンスは通常の文字で示されている。PCRおよび配列決定において使用されるプライマーは、フォワードプライマーおよびリバースプライマーとして、それぞれ配列の先頭および末尾に示される。
【0035】
図7)BAXまたはBAK CRISPR構築物。図7は、BAXまたはBAKノックアウト実験において使用されるCRISPRプラスミドの設計を示す。Geneart CRISPRヌクレアーゼベクター(pGCNV)は、Thermo Fisher scientific(San Diego、CA)製の市販のベクターである。pGCNVプラスミドの完成形は、遺伝子部位を個別に標的化するために特定の19ヌクレオチド長のgRNA配列を用いて設計されたオリゴ二重鎖のためのスロットを含む、切断により開いたpGCNVベクターに、オリゴ二重鎖を挿入することによって調製される(本明細書中の表1を参照のこと)。
【0036】
図8)本発明の代表的な非天然アミノ酸の構造を示す。
【0037】
図9)CRISPRを用いてBAXまたはBAKをノックアウトした抗HER2発現細胞集団のSurveyorアッセイ。図9は、CRISPRを用いたBAXまたはBAKノックアウト中のノックアウト効率のSurveyorアッセイ分析を示す。上部バンドの縮小および底部の新しいバンドの出現は、Image Jソフトウェアによる走査画像の濃度測定分析によって定量化できる当該効率を示す。CRISPRノックアウト(KO)の前後の元のバンドの比率を使用して、ノックアウト効率を測定した。BAXおよびBAKについてのノックアウト効率はそれぞれ30%および70%であり、計算の結果、約21%の二重ノックアウト効率をもたらした。
【0038】
図10)CRISPRを用いてノックアウトされたBAXおよびBAK遺伝子を有する抗HER2発現単細胞クローンのDNA分析。図10は、CRISPRを用いたBAKノックアウト後の20個の単細胞クローンのDNA配列決定結果を示す。頂部DNA配列(Bak-CHO-gDNA1)は、元のBAK遺伝子のゲノム領域のDNA配列である。「ZA_112_K32_BakI-II」クローンのみが、元のBAK遺伝子と同一の配列を有する。図に示される他の遺伝子は、前記配列に欠失または挿入のいずれかを有する。
【0039】
図11)CRISPRを用いた抗HER2発現BAXノックアウトクローニングにおけるBAXノックアウト確認のウェスタンブロット分析。BAXは、遺伝子ノックアウトを有さず、野生型BAXタンパク質を発現するL082細胞においてバンドとして示される21-KDタンパク質である。他のクローニングは、残留BAX発現を示すクローニングUBB3を除いて、BAXタンパク質の検出可能な発現を示さなかった。
【0040】
図12)パネルAおよびB。BAX/BAKノックアウト細胞株を発現する抗HER2のアポトーシス分析。図12は、親細胞株L082(図12A)およびBAX/BAK二重ノックアウト細胞株BB15(図12B)のAnnexin Vアポトーシス分析を示す。表に示すように、細胞生存率は、BAXおよびBAKノックアウト後に40%から80%に改善される。同時に、アポトーシス細胞は53%から17%に減少する。
【0041】
図13)パネルA~D。一括培養におけるBAX/BAKノックアウト細胞株における抗HER2抗体産生の促進。図13は、BAX/BAK二重ノックアウト細胞株におけるタンパク質産生の変化を示す。タンパク質産生を一括産生の間に分析する。生細胞密度(VCD、図13A)。細胞生存率(図13B)。一括生産の間(7日目)、BAX/BAK二重ノックアウト細胞株は、150mg/Lから270mg/Lへの力価増加を示した(図13C)。比生産性(Qp)(図13D)。
【0042】
図14)パネルA~D。流加培養におけるBAX/BAKノックアウト細胞株における抗HER2抗体産生の促進。図14は、BAX/BAK二重ノックアウト細胞株におけるタンパク質産生の変化を示す。タンパク質産生は、流加生産の間に分析される。生細胞密度(VCD、図14A)。細胞生存率(図14B)。流加生産(day14)の間、BAX/BAK二重ノックアウト細胞株は、450mg/Lから1500mg/Lへの力価増加を示す(図14C)。比生産性(Qp)(図14D)。
【0043】
図15)CRISPRを用いてBAXまたはBAKをノックアウトした抗PSMA発現細胞集団のSurveyorアッセイを示す。図15は、CRISPRを用いたBAXまたはBAKノックアウト中のノックアウト効率のSurveyorアッセイ分析を示す。CRISPRノックアウト(KO)の前後の元のバンドの比率を、Image Jソフトウェアによる走査画像の濃度分析によって定量し、ノックアウト効率を測定するために使用した。BAXおよびBAKについてのノックアウト効率はそれぞれ42%および53%であり、計算の結果、約20%の二重ノックアウト効率をもたらした。
【0044】
図16)パネルAおよびB。抗PSMA発現クローンにおけるBAXおよびBAKノックアウト確認のウェスタンブロット分析。CRISPRを用いた抗PSMA発現クローンにおけるBAXノックアウト確認(図16A)。抗PSMA発現クローンにおけるBAKノックアウト確認(図16B)。コントロールは、野生型BAXタンパク質を発現するL082細胞、21-KDでのバンド、およびBB15細胞を発現する抗HER2-BAX/BAK二重ノックアウトである。
【0045】
図17)BAX/BAKノックアウト抗PSMA発現細胞株のアポトーシス分析。図17は、単一KOクローニング(PSMA-882)または非ノックアウトクローニング(PSMA-484)における約35~37%と比較して約85%の細胞生存率を有するBAX/BAK二重ノックアウト細胞株PSMA-192およびPSMA 719のAnnexin Vアポトーシス分析を示す。
【0046】
図18)パネルA~C。流加培養におけるBAX/BAKノックアウト細胞株における抗PSMA抗体産生の促進。図18はBAX/BAK二重ノックアウト細胞株(例えば、細胞株PSMA-BBKO-192)におけるタンパク質産生量の変化を示す。タンパク質産生は、流加生産の間に分析される。生細胞密度(VCD、図18A)。細胞生存率(図18B)。流加生産(14日目)の間、BAX/BAK二重ノックアウト細胞株は、500mg/Lから1400mg/Lへの力価増加を示した(図18C)。
【0047】
図19)CRISPRを用いてBAXまたはBAKをノックアウトした抗CD70発現細胞集団のSurveyorアッセイ。図19は、CRISPRを用いたBAXまたはBAKノックアウト中のノックアウト効率のSurveyorアッセイ分析を示す。CRISPRノックアウト(KO)の前後の元のバンドの比率を、Image Jソフトウェアによる走査画像の濃度分析によって定量し、ノックアウト効率を測定するために用いた。BAXおよびBAKについてのノックアウト効率はそれぞれ51%および23%であり、計算の結果、約10%の二重ノックアウト効率をもたらした。
【0048】
図20)パネルAおよびB。抗CD70発現クローンにおけるBAXおよびBAKノックアウト確認のウェスタンブロット分析。抗CD70発現クローンにおけるBAXノックアウト確認(図20A)。抗CD70発現クローンにおけるBAKノックアウト確認(図20B)。コントロールは野生型BAXタンパク質を発現するL082細胞、21-KDのバンド、およびBAK野生型タンパク質、24 KDのバンド。
【0049】
図21)BAX/BAKノックアウト抗CD70発現細胞株のアポトーシス分析。図21はBAX/BAK二重ノックアウト細胞株(例えばCD70-BBKO-563)のAnnexin Vアポトーシス分析において、細胞生存率が親細胞株のCD70-MW-108と比較して18%から60%に増加したことを示す。アッセイアポトーシス細胞は80%から40%に減少した。
【0050】
図22)パネルA~C。流加培養におけるBAX/BAKノックアウト細胞株の抗CD70抗体産生の促進。図22は、振盪フラスコおよびベンチトップバイオリアクター中のBAX/BAK二重ノックアウト抗CD70発現細胞株の産生状態を示す。生細胞密度(VCD、図22A)。細胞生存率(図22B)。BAX/BAK二重ノックアウト細胞株(例えばCD70-BBKO-563)は1000mg/Lの高い力価を示す。(図22C
〔詳細な説明〕
本発明を詳細に説明する前に、本発明は特定の方法論、または組成物、または生物学的系に限定されず、これらは当然、変化し得ることが理解されるべきである。また、本明細書で用いられる用語は特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことを理解されたい。本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる場合、単数形「a」、「an」および「the」は別として明確に指示をしない限り、含有量としては複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「セル」への言及は、2つ以上のセルの組み合わせ等を含む。
【0051】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に開示され、説明されてきたが、上記のような実施形態が単に例として提供されることは、当業者にとって明らかだと言える。当業者は本発明から逸脱しない範囲で、数々の変化、変更、置き換えを実施できる。本願で説明した本発明の実施形態において、様々な代替物を採用して本発明を実施することができることは明らかである。添付の請求項は本発明の範囲を定義し、それにより、前記請求項およびその等価物の範囲内の方法および構成を含むことを目的としている。
【0052】
本明細書において、または本明細書の以降の部分において、以下で別の定義がない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0053】
〔定義〕
本明細書で用いられる用語「核酸」は、デオキシリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシドまたはリボヌクレオチド、および一本鎖または二本鎖のいずれかの形態のこれらのポリマーを指す。単なる例として、このような核酸および核酸ポリマーは(i)参照核酸と同様の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと同様の様式で代謝される天然ヌクレオチドの類似体;(ii)PNA(ペプチド核酸)、アンチセンス技術において用いられるDNAの類似体(ホスホロチオエート、ホスホロアミデート等)を含む、ただしこれらに限定されない、オリゴヌクレオチド類似体;(iii)、前記核酸が保存的に改変された変異体(縮重コドン置換を含むが、これらに限定されない)、ならびに明示的に示される相補的配列および配列を含むが、これらに限定されない。例として、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(または全ての)コドンの第3の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基(Batzer et al, Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsuka et al, J.Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985); and Rossolini et al, Mol. Cell. Probes8:91-98 (1994))で置換される配列を作製することによって達成され得る。
【0054】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書中で互換的に用いられる。すなわち、ポリペプチドに関する説明は、ペプチドの説明およびタンパク質の説明に等しく適用され、逆もまた同様である。この用語は、天然に存在するアミノ酸ポリマー、ならびに1つ以上のアミノ酸残基が非天然アミノ酸であるアミノ酸ポリマーに適用される。さらに、このような「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は全長タンパク質を含む任意の長さのアミノ酸鎖を含み、ここで、アミノ酸残基は、共有ペプチド結合によって連結される。
【0055】
本明細書中で用いられる場合、用語「直交」は細胞の内因性構成要素と共に機能する分子(例えば、直交tRNA(O-tRNA)および/または直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS))をいう。前記分子は、細胞または翻訳系に内因性であるか、または細胞の内因性構成要素と共に機能しない、対応する分子と比較して、低い効率で機能する。tRNAおよびアミノアシルtRNAシンセターゼに言及する場合、直交とは、内因性tRNAシンセターゼと共に機能する内因性tRNAと比較した、内因性tRNAシンセターゼと共に機能する直交tRNAの、あるいは内因性tRNAと共に機能する直交アミノアシルtRNAと比較した、内因性tRNAと共に機能する内因性tRNAシンセターゼの、不活性または減少した効率を意味する。前記効率は、例えば、20%未満の効率、10%未満の効率、5%未満の効率、または1%未満の効率を意味する。直交分子は、細胞内に機能的な内因性相補的分子を欠く。例えば、細胞中の直交tRNAは、内因性RSによる内因性tRNAのアミノアシル化と比較した場合、細胞の任意の内因性RSによって、減少した、またはゼロ効率でアミノアシル化される。別の例では、直交RSは内因性RSによる内因性tRNAのアミノアシル化と比較して、減少した、またはゼロ効率で、目的の細胞中の任意の内因性tRNAをアミノアシル化する。第2の直交分子は第1の直交分子と共に機能する細胞に導入され得る。例えば、直交tRNA/RSペアは対応するtRNA/RS内因性ペアの効率(例えば、50%の効率、60%の効率、70%の効率、75%の効率、80%の効率、90%の効率、95%の効率、または99%以上の効率)で機能する導入された相補的構成要素を含む。
【0056】
用語「セレクターコドン」は、翻訳プロセスにおいてO-tRNAによって認識されるが、内因性tRNAによっては認識されないコドンをいう。O-tRNAアンチコドンループはmRNA上のセレクターコドンを認識し、前記アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸)を、ポリペプチド中のアンチコドンループの部位に組み込む。セレクターコドンは例えば、アンバー、オーカー、およびオパールコドンといった終止コドンであるナンセンスコドン、4つ以上の塩基コドン、希少コドン、天然または非天然の塩基対および/または類似物に由来するコドンを含み得る。
【0057】
用語「サプレッサーtRNA」は例えば、セレクターコドンに応答してアミノ酸をポリペプチド鎖に組み込むための機構を提供することにより、所定の翻訳系におけるメッセンジャーRNA(mRNA)の読み取りを変化させるtRNAを意味する。例として、サプレッサーtRNAは、例えば、終止コドン、4塩基コドン、希少コドン等を介して読み取ることができる。
【0058】
用語「翻訳系」は、天然に存在するアミノ酸を伸長するポリペプチド鎖(タンパク質)に組み込む構成要素の集合体をいう。翻訳系の要素としては、例えば、リボソーム、tRNA、シンセターゼ、mRNA、アミノ酸等が挙げられ得る。本発明の成分(例えば、ORS、OtRNA、非天然アミノ酸等)はin vitroまたはin vivoの翻訳系、例えば、真核生物細胞、脊椎動物細胞、例えば、酵母細胞、哺乳動物細胞、植物細胞、藻類細胞、真菌細胞、昆虫細胞等に添加することができる。
【0059】
用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸および非天然のアミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物をいう。天然にコードされるアミノ酸は、20種類の共通アミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリン)ならびにピロリジンおよびセレノシステインである。アミノ酸類似体とは、天然に存在するアミノ酸と基本的に同じ化学構造を有する化合物をいい、単なる例としては、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合したα-炭素を指す。このような類似体は修飾されたR群(例として、ノルロイシン)を有し得るか、または天然に存在するアミノ酸と同じ群本化学構造をなお保持しながら、修飾されたペプチド骨格を有し得る。アミノ酸類似体としては、以下に限定されるものではないが、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムが含まれる。
【0060】
アミノ酸配列において、個々の置換、コードされた配列中の、核酸への付加または欠失、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列に対する置換、コードされた配列中の単一の天然および非天然アミノ酸、または数パーセントの天然および非天然アミノ酸の付加あるいは欠失は、「保存的に修飾された変異体」であり、ここで、変化は、アミノ酸の欠失、アミノ酸の付加、または天然および非天然アミノ酸への、化学的に類似したアミノ酸による置換を引き起こす。機能的に類似した天然アミノ酸を示す保存的置換表は、当該分野では公知である。前記保存的に改変された変異体は、本明細書中に記載される方法および組成物の多型改変体、種間相同体、および対立遺伝子に加えられ、いずれも除外されることはない。
【0061】
機能的に類似したアミノ酸を示す保存的置換表は、当該分野では公知である。以下の8つの群はそれぞれ、一つ以上の保存的置換されるアミノ酸を含む:
1) アラニン(A)、グリシン(G);
2) アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3) アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4) アルギニン(R)、リジン(K);
5) イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6) フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7) セリン(S)、スレオニン(T)
8) システイン(C)、メチオニン(M);
(例えば、Creighton, Proteins: Structures andMolecular Properties (W H Freeman & Co.; 2nd edition (December 1993を参照のこと。)
本明細書中で用いられる場合、用語「非天然アミノ酸」は、20の共通のアミノ酸またはピロリジンまたはセレノシステイン以外のアミノ酸をいう。用語「非天然アミノ酸」と同義的に用いられ得る他の用語は、「非天然にコードされるアミノ酸」、「人工(unnatural)アミノ酸」、「非天然で存在しているアミノ酸」、ならびにこれらの種々の連結体および非連結体である。用語「非天然アミノ酸」は天然にコードされるアミノ酸(20個の共通アミノ酸またはピロリジンおよびセレノシステインを含むが、これらに限定されない)の改変によって天然に生じるが、これらに限定されず、翻訳複合体によって伸長されるポリペプチド鎖に組み込まれないアミノ酸を含む。天然にコードされずに、天然に発生するアミノ酸の例としては、N-アセチルグルコサミニル-L-セリン、N-アセチルグルコサミニル-L-トレオニン、およびO-ホスホチロシンが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、用語「非天然アミノ酸」は天然に存在せず、合成的に得られ得るか、または非天然アミノ酸の修飾によって得られ得るアミノ酸を含むが、これらに限定されない。非天然アミノ酸中の反応性基は、20個のカノニカルアミノ酸中に存在する官能基からは入手できないことを留意されたい。従って、これらの反応性基は、ポリペプチド部位を特異的かつ均質に改変するために用いられ得る。
【0062】
本明細書中で用いられる用語「抗体」は分析対象物(抗原)に特異的に結合し、そして認識する、免疫グロブリン遺伝子または複数の免疫グロブリン遺伝子、またはその断片によって実質的にコードされるポリペプチドを含むが、これらに限定されない。例としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、および一本鎖抗体等が挙げられる。Fab断片を含む免疫グロブリンの断片、およびファージディスプレイを含む発現ライブラリーによって産生される断片もまた、本明細書中で用いられる場合、用語「抗体」に含まれる。抗体の構造および用語については、例えば、Paul, Fundamental Immunology, 4th Ed., 1999, Raven Press, New Yorkを参照のこと。抗体断片は、全長形態以外の抗体の任意の形態を指す。本明細書中の抗体断片は、全長抗体内に存在するより小さい成分である抗体、および操作された抗体を含む。
抗体断片としてはFv、Fc、Fab、および(Fab’)2、単鎖Fv(scFv)、二量体、三量体、四量体、二機能性ハイブリッド抗体、CDR1、CDR2、CDR3、CDRの組み合わせ、可変領域、フレームワーク領域、定常領域、重鎖、軽鎖、および可変領域、ならびに代替のスキャフォールド非抗体分子、二重特異性抗体等が挙げられるが、これらに限定されない(Maynard & Georgiou, 2000, Annu. Rev. Biomed. Eng. 2:339-76;Hudson, 1998, Curr. Opin. Biotechnol. 9:395-402)。別の機能的構造は、ペプチドリンカー(S-z Hu et al, 1996, Cancer Research, 56, 3055-3061)によって共有結合された免疫グロブリン重鎖および軽鎖の可変領域からなる単鎖Fv(scFv)である。これらの小さい(分子量 25,000)タンパク質は一般に、単一のポリペプチド中の抗原に対する特異性および親和性を保持し、より大きな抗原特異的分子に対して都合のいい構築ブロックを提供し得る。特に断らない限り、「抗体(antibody)」または「抗体(antibodies)」という用語を用いる記述および特許請求の範囲は、「抗体断片(antibosy fragment)」および「抗体断片(antibodyfragments)」を特に含む。
【0063】
本明細書で用いられる用語「単離された」は、均一または不均一な細胞株から細胞またはクローンを分離および除去することを指す。本発明の実施形態では、単離されたという用語は、細胞株または細胞集団から得られた、単離されたまたは単一の細胞を含む。細胞またはクローンは、目的とする所望の細胞またはクローンに何らかの選択的有利を提供する培地中で培養することによって、他の細胞株またはクローニング集団よりも選択され得る。例えば、所定の細胞培養において、特定の細胞型は、特定の成長因子およびサイトカインを添加することによって濃縮され得る。これは、所望の細胞またはクローンを獲得するために、特定の系統および分化段階の集団を濃縮することと、特定の細胞を増殖させ他の細胞の成長を阻害することを可能にする、抗生物質または特定の増殖阻害剤、または当業者に周知の上記のような選択物の組み合わせによる、選択的な培地の使用を含み得る。例えば、選択的な培地はしばしば、トランスフェクションされた細胞を単離するために用いられる。哺乳類の細胞選択に用いられる一般的な抗生物質にはブレオマイシン、ピューロマイシンおよびハイグロマイシンが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で用いられる用語「単離された」はまた、目的の成分を目的ではない成分から分離および除去することを指す。単離された物質は乾燥状態または半乾燥状態のいずれかであり得るか、または溶液(水溶液を含むが、これに限定されない)であり得る。単離された構成要素は均質な状態であってもよく、または単離された構成要素は追加の薬学的に許容可能な担体および/または賦形剤を含む医薬組成物の一部であってもよい。純度および均質性は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーを含むが、これらに限定されない分析化学技術を用いて決定され得る。さらに、目的の成分が単離され、かつ調製物中に主に存在する成分である場合、この成分は、実質的に精製されたものとして本明細書中に記載される。本明細書で用いられる用語「精製された」は、少なくとも85%の純粋な、少なくとも90%の純粋な、少なくとも95%の純粋な、少なくとも99%以上の純粋な目的の成分を指し得る。単なる一例ではあるが、核酸、ポリペプチドまたはタンパク質が、上記の核酸、ポリペプチドまたはタンパク質として「単離された」というのは、天然の状態でこれらが関連する、少なくとも複数の細胞成分を含まない場合、または核酸、ポリペプチドまたはタンパク質がそのin vivoまたはin vitro産生の濃度よりも高いレベルに濃縮されている場合をいう。また、例として、遺伝子が単離されるというのは、遺伝子に隣接している、目的の遺伝子以外のポリペプチドまたはタンパク質をコードするオープンリーディングフレームから分離される場合をいう。
【0064】
本明細書中で用いられる場合、用語「真核生物」は系統発生ドメインEucaryaに属する生物をいい、動物(哺乳類、昆虫、は虫、鳥等を含むがこれらに限定されない)、繊毛虫、植物(単子葉植物、双子葉植物、および藻類を含むがこれらに限定されない)、真菌、酵母、べん毛虫、ミクロスポリジア、および原生生物を含むがこれらに限定されない。用語「脊椎動物」および「真核生物」は、本明細書において互換的に用いられ得る。
【0065】
本発明の実施形態において、CHO細胞中タンパク質に対する、培養培地中で提供される、非天然アミノ酸の効率的な取り込みのために、直交サプレッサーtRNA/アミノアシル-tRNAシンセターゼペアを安定に発現する目的で、CHOK1から作製されるプラットフォーム細胞株を提供する(例えば、Tian Fら、2014を参照のこと)。産生細胞株は、GS(グルタミンシンセターゼ)発現系における、目的の遺伝子を含有するアンバーナンセンスコドンを、プラットフォーム細胞株の宿主にトランスフェクションさせることによって、非天然アミノ酸組み込みタンパク質の生産を作製できる。製造細胞株を作製するために、GS発現系においては、安定な細胞株が成長する間、宿主細胞のゲノムと関連した産物遺伝子の安定なトランスフェクションの選択のための選択可能なマーカー遺伝子として、グルタミンシンセターゼを用いる。プラットフォーム細胞株は、改善された非天然アミノ酸取り込み効率およびクローン選択効率で十分に特徴付けられ、開発されている。プラットフォーム細胞株は、バイオリアクターへの急速な進行を目的として、懸濁液での成長に予め適合させた。
【0066】
産業上の観点から、プラットフォーム細胞株は医薬品開発におけるあらゆる段階をサポートするための、段階的で適切な材料を提供するために用いられ得るが、それだけでなく、臨床への製品の導入および商業化の前に、安定で十分に特徴付けられた産生細胞株を作製するためにも用いられ得る。したがって、製薬会社では、細胞株および細胞株群が交差的な機能活性に密接に関与している。例えば、発見チームは標的を同定し、候補分子を作製する。プラットフォーム細胞株宿主における一過性のトランスフェクションおよび安定なプールの作製を実施して、候補分子の発現を評価し、開発研究(精製、接合および分析方法開発)およびリード分子を同定するための機能的アッセイのための材料を提供する。一旦、リード分子が選択されると、次いで、所望の品質の特性を有する高収率の産物を産生するために、安定な細胞株が作製される。最良のクローンの選択は、臨床試験および商業化を支援するために、産業での標準的製造において拡張可能で、安定した、十分に特徴付けられた産生細胞株を同定するための細胞株、プロセスの開発および分析機能を含む。細胞培養プロセスの開発は細胞株の作製および選択から始まり、続いて、高スループットスクリーニング目的のために、96ウェルプレート、振盪フラスコおよびベンチスケールバイオリアクターを含む小規模システムにおけるプロセスおよび培地の最適化が行われる。一旦、条件が定義されると、プロセスはしばしば、パイロットスケールでは拡張可能性を試験し、前臨床毒性試験のための材料を製造し、次いで、現在の良好な製造実行(cGMP)の規則下で臨床材料を製造するための大規模製造へと移行する。生物学的産物の産生のための商業的細胞培養プロセスの開発が実験室およびパイロットスケールで完了すると、商業化プロセスは、プロセスの特徴付け、スケールアップ、技術移転、および製造プロセスの検証から始まる。細胞株の開発、細胞培養プロセスの開発および製造、またはこれらの代替のためのほとんどの上記のような方法は、当該分野で周知である。例えば、Weishou Hu, et al, Cell Culture Process Engineering(2013)を参照のこと。
【0067】
本発明では、プラットフォーム細胞株を親細胞として用いて、3~4ヶ月で5~10PCDを有し、6ヶ月で20~30PCDを有する産生細胞株を得るために、安定な細胞株を開発する方策が行われた。本明細書の実施例も参照されたい。産生細胞株は少なくとも8週間の安定性試験に合格し、12,000Lまでのバイオリアクター製造規模を与えた。マスターセルバンク(MCB)に用いるクローニングを、増殖、生産性および生産物の品質に基づいて選択した。CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いた、さらなる細胞株の操作は、0.5g/Lまたは500mg/Lを産生する産生細胞株に対して、細胞増殖を改善し、1.5g/Lまたは1500mg/Lまで体積の力価を増加させることを実証した。産生細胞株のために開発された流加法は、臨床材料調製のための2000L単回使用バイオリアクター(SUB)スケールでの拡張可能性を実証した。従って、他の実施形態において、本発明は、高産生細胞株の開発の最適化を提供する。高産生細胞株の開発の上記のような最適化はFACS依存性単細胞沈着、CRISPRノックアウト手順、および産生スケールアップを含むがこれらに限定されず、当技術分野で周知の方法および技術によって達成することができる。
【0068】
方法と技術
本発明は、当技術分野で周知の、分子生物学、細胞培養、生化学等における多くの従来技術を用いる。細胞株の開発、細胞培養プロセスの開発および製造のための方法および技術は例えば、Weishou Hu, et al, Cell Culture Process Engineering (2013)に十分に記載されている。分子生物学的技術を記載する一般的なテキストには、以下が含まれる:Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods inEnzymology volume 152 Academic Press, Inc., San Diego, CA (Berger); Sambrook etal, Molecular Cloning - A Laboratory Manual (2nd Ed.), Vol. 1-3, Cold SpringHarbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1989 (“Sambrook”) and CurrentProtocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel et al, eds., Current Protocols, ajoint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley &Sons, Inc., (supplemented through 1999) (“Ausubel”))。これらのテキストはベクター、プロモーター、および例えば、非天然アミノ酸、直交tRNA、直交シンセターゼ、およびこれらの対を含むタンパク質の産生のためのセレクターコドンを含む遺伝子の作製に関連する多くの他の関連する項目の使用について記載する。
【0069】
他の手順は、以下の刊行物およびその中で引用される参考文献で確認され得る。:Linget al, Approaches to DNA mutagenesis: an overview, Anal Biochem. 254(2):157-178 (1997); Dale et al, Oligonucleotide-directed random mutagenesis usingthe phosphorothioate method, Methods Mol. Biol. 57:369-374 (1996); Smith, Invitro mutagenesis, Ann. Rev. Genet. 19:423-462(1985); Botstein & Shortle,Strategies and applications of in vitro mutagenesis, Science229:1193-1201(1985); Carter, Site-directed mutagenesis, Biochem. J. 237:1-7(1986); Kunkel, The efficiency of oligonucleotide directed mutagenesis, inNucleic Acids & Molecular Biology (Eckstein, F. and Lilley, D.M.J. eds.,Springer Verlag, Berlin)) (1987); Kunkel, Rapid and efficient site-specificmutagenesis without phenotypic selection, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488-492(1985); Kunkel et al, Rapid and efficient site-specific mutagenesis withoutphenotypic selection, Methods in Enzymol. 154, 367-382 (1987); Bass et al,Mutant Trp repressors with new DNA-binding specificities, Science 242:240-245(1988); Methods in Enzymol. 100: 468-500 (1983); Methods in Enzymol. 154:329-350 (1987); Zoller & Smith, Oligonucleotide-directed mutagenesis usingM13-derived vectors: an efficient and general procedure for the production ofpoint mutations in any DNA fragment, Nucleic Acids Res. 10:6487-6500 (1982);Zoller & Smith, Oligonucleotide-directed mutagenesis of DNAfragments cloned into M13 vectors, Methods in Enzymol. 100:468-500 (1983);Zoller & Smith, Oligonucleotide-directed mutagenesis: a simple method usingtwo oligonucleotide primers and a single-stranded DNA template, Methods inEnzymol. 154:329-350 (1987); Taylor et al, The use of phosphorothioate-modified DNA in restriction enzyme reactions to prepare nicked DNA, Nucl. Acids Res.13: 8749-8764 (1985); Taylor et al, The rapid generation ofoligonucleotide-directed mutations at high frequency using phosphorothioate-modified DNA, Nucl. Acids Res. 13: 8765-8787 (1985); Nakamaye & Eckstein,Inhibition of restriction endonuclease Nci I cleavage by phosphorothioategroups and its application to oligonucleotide-directed mutagenesis, Nucl. AcidsRes. 14: 9679-9698 (1986); Sayers et al, Y-T Exonucleases inphosphorothioate-based oligonucleotide-directed mutagenesis, Nucl. Acids Res.16:791-802 (1988); Sayers et al, Strand specific cleavage ofphosphorothioate-containing DNA by reaction with restriction endonucleases inthe presence of ethidium bromide, (1988) Nucl. Acids Res. 16: 803-814; Krameret al, The gapped duplex DNA approach to oligonucleotide-directed mutationconstruction, Nucl. Acids Res. 12: 9441-9456 (1984); Kramer & FritzOligonucleotide-directed construction of mutations via gapped duplex DNA,Methods in Enzymol. 154:350-367 (1987); Kramer et al, Improved enzymatic invitro reactions in the gapped duplex DNA approach to oligonucleotide-directedconstruction of mutations, Nucl. Acids Res. 16: 7207 (1988); Fritz et al,Oligonucleotide-directed construction of mutations: a gapped duplex DNAprocedure without enzymatic reactions in vitro, Nucl. Acids Res. 16: 6987-6999(1988); Kramer et al, Point Mismatch Repair, Cell 38:879-887 (1984); Carter etal, Improved oligonucleotide site-directed mutagenesis using M13 vectors, Nucl.Acids Res. 13: 4431-4443 (1985); Carter, Improved oligonucleotide-directedmutagenesis using M13 vectors, Methods in Enzymol. 154: 382-403 (1987);Eghtedarzadeh & Henikoff, Use of oligonucleotides to generate largedeletions, Nucl. Acids Res. 14: 5115 (1986); Wells et al, Importance ofhydrogen-bond formation in stabilizing the transition state of subtilisin,Phil. Trans. R. Soc. Lond. A 317: 415-423 (1986); Nambiar et al, Total synthesisand cloning of a gene coding for the ribonuclease S protein, Science 223:1299-1301 (1984); Sakamar and Khorana, Total synthesis and expression of a genefor the a-subunit of bovine rod outer segment guanine nucleotide-bindingprotein (transducin), Nucl. Acids Res. 14: 6361-6372 (1988); Wells et al,Cassette mutagenesis: an efficient method for generation of multiple mutationsat defined sites, Gene 34:315-323 (1985); Grundstrom et al,Oligonucleotide-directed mutagenesis by microscale 'shot-gun' gene synthesis,Nucl. Acids Res. 13: 3305-3316 (1985); Mandecki, Oligonucleotide-directeddouble-strand break repair in plasmids of Escherichia coli: a method forsite-specific mutagenesis, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83:7177-7181 (1986);Arnold, Protein engineering for unusual environments, Current Opinion inBiotechnology 4:450-455 (1993); Sieber, et al, Nature Biotechnology, 19:456-460(2001). W. P. C. Stemmer, Nature 370, 389-91 (1994); and, I. A. Lorimer, I.Pastan, Nucleic Acids Res. 23, 3067-8 (1995)。多くの上記方法に関するさらなる詳細は酵素学第154巻の方法において確認でき、これはまた、種々の突然変異誘発法に関する問題を解決するための有用な手段を記載する。
【0070】
本発明のポリペプチドおよびタンパク質の精製および検出のための様々な技法および方法は、当該分野で公知である。これらの技術および方法論は、本明細書中に記載されるような非天然アミノ酸を含むタンパク質の検出および精製に適用され得る。一般に、抗体は、ELISA、ウェスタンブロッティング、免疫化学、アフィニティークロマトグラフィー法、表面プラズモン共鳴(SPR)、Annexin V、FACSおよび多くの他の方法のための有用な試薬である。本明細書中の参考文献は、ELISAアッセイ、ウェスタンブロット、SPR等を実施する方法に関する詳細を提供する。本発明の他の技術および方法論は、インタクト質量分析(MS)およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を含み得る。完全質量分析法は、タンパク質の正確な質量およびそのアイソフォームの相対的存在量に関する情報を提供する。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は当技術分野では分子篩クロマトグラフィーとしても知られており、溶液中の分子をこれらのサイズによって分離し、ある程度のケース重量を分離するクロマトグラフィー法である。
【0071】
ゲノム編集技術
いくつかの実施形態において、本発明は、遺伝子編集ツールを用いて、細胞における標的部位または領域の不活性化、破壊、切除またはノックアウトのためのポリヌクレオチドを提供する。本明細書中で用いられる場合、用語「標的」、「標的」、「標的化された」または「標的化された」ノックアウト、切除、不活性化または破壊は、切除、不活性化、破壊またはノックアウトされた細胞または遺伝子中の部位あるいは領域をいう。いくつかの遺伝子編集ツールを用いて、標的のDNA二本鎖切断(DSB)を誘導することによって遺伝子を正確に改変することができる。当該技術分野で周知のこのような遺伝子編集ツールにはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、およびホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)としても当該技術分野で知られているメガヌクレアーゼ(MN)(Gajら、2013; Guhaら、2017)、およびクラスター化された規則的に間隔を置いた短絡パリンドローム反復(CRISPR)が含まれ得るが、これらに限定されない。本発明の態様において、遺伝子編集ツールは、目的の遺伝子を発現する細胞または産生細胞における標的部位または領域を認識するための構築物を設計するためと、トランスフェクション後に標的遺伝子に二本鎖切断を起こすために用いた。
【0072】
ZFNは、FokI制限エンドヌクレアーゼ由来のジンクフィンガーDNA結合ドメインおよび非特異的DNA切断ドメインからなる人工融合タンパク質である。ジンクフィンガードメインは遺伝子編集を達成し得るために、特定のDNA配列を認識し得るように操作できる。また、TALENも人工融合タンパク質であり、TALEタンパク質由来のDNA結合ドメインおよびFokI制限エンドヌクレアーゼ由来の非特異的DNA切断ドメインからなる。TALE(転写活性化因子様エフェクター)はキサントモナス細菌由来のタンパク質であり、DNA結合ドメインは、特定のDNA配列に結合するように操作され得る。ZFNと同様に、TALENは、遺伝子不活性化が達成され得るようにDSBを誘導し得る。当技術分野でホーミングエンドヌクレアーゼとしても知られているMNは、二本鎖DNAの作製において、部位特異性が高いエンドヌクレアーゼである。MNは、18~44塩基対のDNAを認識することができる大きな部位特異的認識部位を有する。MNのファミリーメンバーの中で、LAGLIDADGは、ゲノム編集の適用において最も広く研究され、操作されている。Clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)技術は、RNA誘導ヌクレアーゼ(Cas9は最も広く用いられているIIタイプヌクレアーゼである)を用いて標的DNA二本鎖切断(DSB)を形成する最近のゲノム編集技術である。細胞における標的化DSBの自己修復処理の間に、ヌクレオチドの欠失および挿入がしばしば起こり、そして標的化タンパク質のコード領域の対応するゲノム配列のフレームシフトおよび最終的にこれらの機能の喪失を生じる。CRISPRはウイルス侵入を防御する際の原核細胞の免疫系として最初に発見されたが、ゲノム編集ツールとしての真核細胞におけるその適用は首尾よく開発されている(例えば、Congら、2013; Hsuら、2014; Jinekら、2012; Ranら、2013を参照のこと)。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)および転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ならびにDSBの形成を誘導するために特異的DNA結合ドメインを用いるメガヌクレアーゼ(MN)(例えば、USPN 8,597,912)等の他のゲノム編集技術と比べると、CRISPR技術は、特定のDNA配列に対するワトソン-クリック塩基対形成を用いる誘導RNA(gRNA)の補助を得ることで、DNAの切断を触媒する。
【0073】
本明細書中に記載される遺伝子編集ツールのいずれも、本発明と共に用いられ得るが、CRISPR技術は種々の細胞および生物に適用され得る、より効率的で高度に特異的な技術を提供するために例示される(Hsuら、2014)。本明細書中の実施例に例示されるように、目的の遺伝子を発現する細胞におけるノックアウト、切除、不活性化または破壊を行うgRNA標的化部位または領域は、CHO-K1ゲノムに特定オンラインCRISPR gRNA設計ツールを用いることで設計され得る(インターネット上のstaff.biosustain.dtu.dk/laeb/crispy/を参照のこと)。目的の遺伝子においてノックアウト、除去、不活性化または破壊され得る部位または領域標的遺伝子の例を、以下の表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
本発明の他の態様において、オリゴヌクレオチドを合成し、そして以下の表2に示すように、上記の表に開示されるgRNAのゲノムDNA遺伝子座を増幅するために用いた。これらの技術は全て、文献で説明されている。例えば、 Sambrook et al MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, Secondedition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989 and Third edition, 2001;Ausubel et al, CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons,New York, 1987および定期的な更新を参照する。
【0076】
【表2】
【0077】
〔遺伝子編集標的〕
本発明の実施形態において、目的の遺伝子を発現する細胞におけるノックアウト、破壊、切除または不活性化を標的とする遺伝子が提供される。標的ノックアウト遺伝子、標的または標的化されたアブレーション遺伝子、標的または標的化された不活性化遺伝子、標的または標的化された破壊遺伝子という用語は、本明細書中で用いられる場合、遺伝子編集によるノックアウト、アブレーション、または不活性化のために標的化される遺伝子をいう。本発明のいくつかの態様において、標的または標的化された部位あるいは領域は、アポトーシス経路に関与する。本発明の他の実施形態において、細胞または細胞株におけるノックアウト、破壊、切除または不活性化された標的遺伝子を提供する。ノックアウト、破壊された、除去された、または不活性化された、標的化された遺伝子は、細胞増殖、分化、調節等を調節する遺伝子を含み得る。他の実施形態では、目的の遺伝子を発現する細胞におけるノックアウト、破壊、切除または不活性化のための標的遺伝子は、アポトーシス経路に関与する遺伝子、例えば、アポトーシス促進遺伝子、癌遺伝子等を含む。ノックアウト、破壊、切除、または不活性化のための標的遺伝子はGS、Bcl-2ファミリー、
IGFBP4、AQP1、Maf1、eRF1、FUT8、P53、カスパーゼ3、UPF1、Smg1、ならびに任意の外因性で追加された選択的マーカー遺伝子(適用可能な場合)であるゼオシン、ハイグロマイシン、ピューロマイシン等、Smac/DIABLO、Apaf-1、カスパーゼ-6、カスパーゼ-7、カスパーゼ-9、カスパーゼ-10、PARP、アルファ ホドリン、NuMA、AIF、CAD、Puma、Noxa、14-3-3,Aven、Myc、HtrA2/Omi等を含み得るが、これらに限定されない。ノックアウト、破壊、切除または不活性化のための標的遺伝子は、Bcl-x1、Bak、Bax、Bcl-xs、Bid、Bim、BadおよびBikのようなbcl-2ファミリーを含み得る。特定の実施形態において、ノックアウト、破壊、切除または不活性化のための標的は、BAXおよび/またはBAKである。他の実施形態では前記標的化された、ノックアウト、破壊、除去または不活性化遺伝子は完全にまたは部分的にノックアウト、除去または不活性化される。部分的に不活性化された、破壊された、ノックアウトされた、または除去された遺伝子は、不活性化された、破壊された、ノックアウトされた、または除去された遺伝子を、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%含み得る。
【0078】
〔生物学的治療遺伝子〕
本発明の開示は、プラットフォーム細胞株において発現される目的の遺伝子を提供する。目的の上記遺伝子は、サイトカイン、成長因子、ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、他の調節ペプチドおよびタンパク質ならびに抗体を含むが、これらに限定されない生物学的治療剤であり得る。本発明の生物学的治療剤は、遺伝子操作された細菌、酵母、真菌、または細胞由来の任意の生物学的産物を含み得る。本発明の生物学的治療剤には、DNA、RNA、組換えDNA、タンパク質、ポリペプチドが含まれる。いくつかの実施形態では生物学的治療剤はワクチンであり、ワクチンは本発明の任意の方法または細胞によって得られる。
【0079】
他の実施形態において、本発明は例えば、目的の遺伝子を発現するプラットフォーム細胞または細胞株を提供するが、これらに限定されず、例えばアルファ-1抗トリプシン、アンギオスタチン、抗溶血因子、抗体、アポリポタンパク質、アポタンパク質、心房性ナトリウム利尿因子、心房性ナトリウムペプチド、心房性ペプチド、カルシトニン、CD40リガンド、C-キットリガンド、コラーゲン、コロニー刺激因子(CSF)、補体因子5a、補体阻害剤、補体受容体1、サイトカイン(例えば、上皮好中球活性化ペプチド-78、GROα/MGSA、GROβ、GROγ、MIP-1α、MIP-1δ、MCP-1)、上皮成長因子(EGF)、エリスロポエチン(「EPO」)、剥脱毒素AおよびB、第XI因子、第VII因子、第VIII因子を含むが、第X因子、線維芽細胞増殖因子(FGF)、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、GM-CSF、GM-CSF、CD116、M-CSF、CSF-1R、グルコセレブロシダーゼ、ゴナドトロピン、成長因子、ヘッジホッグタンパク質(例えば、Sonic、Indian、Desert)、ヘモグロビン、ヘパトサイト増殖因子(HGF)、ヒルジン、ヒト血清アルブミン、インスリン、インスリン様増殖因子(IGF)、インターフェロン(例えば、IFN-α、IFN-β、IFN-γ)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、ラクトフェリン、白血病阻止因子、ルシフェラーゼ、ニュールツリン、好中球阻害因子(NIF)、オンコスタチンM、骨形成タンパク質、副甲状腺ホルモン、PD-ECSF、PDGF、ペプチドホルモン(例えば、ヒト成長ホルモン)、プレイオトロピン、プロテインA、プロテインG、発熱性外毒素A、B、およびC、リラキシン、レニン、SCF、可溶性補体受容体I、可溶性I-CAM可溶性インターロイキン受容体(IL-1、2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15)、可溶性TNF受容体、ソマトメジン、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ストレプトキナーゼ、スーパー抗原、すなわちブドウ球菌エンテロトキシン(SEA、SEC1、SEC2、SEC3、SED、SEE)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、トキシックショック症候群毒素(TSST-1)、チモシンα1、組織プラスミノーゲンアクチベーター、TGFβ、およびMIF、血管内皮増殖因子(VEGF)、ウロキナーゼ等も含む。
【0080】
他の実施形態において、目的の遺伝子は、これらに限定されるものではないが、IL-1およびCD121a、IL-2およびCD25/CD122/CD137、IL-3およびCD123、IL-5およびCD125、IL-6およびCD126、IL-7およびCD127/CD132、IL-9およびIL-9R、IL-10およCRF2-4、IL-11およびIL-11R、IL-12およびIL-12Rβ1c/IL-12Rβ2、IL-13およびIL-13R、IL-15およびCD122/CD132、IL-16およびCD4、IL-17およびCD217、IL-18およびIL-1Rrp、IL-19およびIL-20Rα/10Rβc、IL-21およびIL-21R/CD132、IL-22およびIL-22Rαc/IL-10Rβc等のインターロイキンを含み得るが、これらに限定されない。IL-23およびIL-23R、、IL-24およびIL-22Rαc/IL-10Rβc、IL-25およびIL-17BR、IL-26およびIL-20Rα/IL-10Rβc、IL-27およびWSX-1/CD130c、IL-28およびIL-28Rαc/IL-10Rβc、IL-29およびIL-28Rαc/IL-10Rβc、IL-29およびIL-28Rαc/IL-10Rβc、IL-30およびWSX-1/CD130c、IL-31およびIL-31A/OSMR、IL-32、IL-33およびST2/IL1RAP、IL-34およびCSF-1R、IL-35およびIL-12RB2、IL-36およびIL-1Rrp2、IL-37およびIL-18Rα、TSLPおよびTSLPR、LIFおよびLIFR、OSMおよびOSMR等のインターロイキンを含む。
【0081】
本発明のいくつかの態様において、目的の遺伝子は、これらに限定されるものではないが、腫瘍壊死因子β(TNFβ)、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)、腫瘍壊死因子α(TNFα)およびp55/p75、LT-αおよびp55/p75、LT-βおよびp55/p75、CD40LおよびCD40、FasLおよびCD95、CD27LおよびCD27、CD30LおよびCD30、4-1BBLおよび4-1BB、TrailおよびDR4、RANK-LおよびRNAK、APRILおよびTAC1、LIGHTおよびHVEM、TWEAKおよびTWEAKR、BAFFおよびTAC1等を含むが、これらに限定されない腫瘍壊死因子TNFを含み得る。
【0082】
目的の遺伝子はC-X-Cケモカイン(例えば、T39765、NAP-2、ENA-78、Gro-a、Gro-b、Gro-C、IP-10、GCP-2、NAP-4、SDF-1、PF4、MIG)を含み得、CXCL1およびCXCR2、CXCL2およびCXCR2、CXCL3およびCXCR2、CXCL4およびCXCR3B、CXCL5およびCXCR2、CXCL6およびCXCR2、CXCL7およびCXCR1/CXCR2、CXCL8およびCXCR1/CXCR2、CXCL9およびCXR3A/3B、CXCL10およびCXCRA/3B、CXCL11およびCXCR3A/3B/CRCR7、CXCR12およびCXCR4/CXCR7、CXCL13およびCXCR5、CXCL14、CXCL15、CXCL16およびCXCR6等を含み得る。目的の遺伝子はまた、CCケモカイン(例えば、単球ケモアトラクタントタンパク質-1、単球ケネアトラクタントタンパク質-2、単球ケモアトラクタントタンパク質-3、単球炎症タンパク質-1α、単球炎症タンパク質-1β、RANTES、I309、R83915、R91733、HCC1、T58847、D31065、T64262)、CCL1およびCCR6、CCL2およびCCR2、CCL3およびCCR1/5、CCL4およびCCR5、CCL5およびCCR1/CCR3、CCR5、CCL6およびCCR1、CCL7およびCCR1/CCR2/CCR3/CCR5、CCL8およびCCR1/CCR2/CCR5、CCL9およびCCR1、CCL11およびCCR3、CCL12およびCCL2、CCL13およびCCR2/3、CCL14およびCCR1/3/5、CCL15およびCCR1/3、CCL16およびCCR1/2/5/8、CCL17およびCCR4、CCL18およびPITPNM3、CCL19およびCCR7、CCL20およびCCR6、CCL21およびCCR7、CCL22およびCCR4、CCL23およびCCR1/FPRL-1、CCL24およびCCR3、CCL25およびCCR9、CCL26およびCCR3、CCL27およびCCR10、CCL28およびCCR10を含み、また、XCL1およびXCR1、XCL2およびXCR1、CX3CL1およびCX3CR1等を含む。
【0083】
本明細書に記載の方法、組成物、方策および技術は、ポリペプチドまたはタンパク質の特定種類、クラスまたはファミリーに限定されない。実際、実質的には、任意のポリペプチドが本明細書に記載される少なくとも1つの「改変されたまたは改変されていない」非天然アミノ酸を含むように設計または改変され得る。単なる例であるが、ポリペプチドは、本明細書中に記載される生物学的治療用または治療用タンパク質と相同であり得る。少なくとも1つの非天然アミノ酸を有する目的のタンパク質またはポリペプチドが、本発明の特徴である。本発明はまた、本発明の組成物および方法を用いて産生される少なくとも1つの非天然アミノ酸を有するポリペプチドまたはタンパク質を含む。賦形剤(例えば、薬学的に許容可能な賦形剤)もまた、タンパク質と共に存在し得る。
【0084】
脊椎動物細胞に組み込まれた少なくとも1つの非天然アミノ酸を有する目的のタンパク質またはポリペプチドを産生することによって、タンパク質またはポリペプチドは、典型的には脊椎動物翻訳後修飾を含む。特定の実施形態では、タンパク質が少なくとも1つの非天然アミノ酸と、脊椎動物細胞によりin vivoで作製される少なくとも1つの翻訳後修飾とを含み、上記翻訳後修飾は原核細胞によっては行われない。例えば、翻訳後修飾には、例として、アセチル化、アシル化、脂質修飾、パルミトイル化、パルミチン酸付加、リン酸化、糖脂質結合修飾、グリコシル化等が含まれる。
【0085】
本発明の開示には、セレクターコドンを含有する遺伝子または目的の遺伝子が含まれる。目的の遺伝子は治療用タンパク質またはポリペプチドを含み得、遺伝子は細胞増殖、分化、調節、炎症、癌遺伝子等に関与するが、これらに限定されない。他の実施形態では、本発明の開示がセレクターコドンを含有する抗体遺伝子を含む。他の実施形態では抗体が抗Her2、抗CD-70、抗PSMA、5T4、EGFR、TROP2、CD3、インターロイキン(2、3、10を含むが、これらに限定されない)、GPC3、DLL3、ROR1、レプチン、FGF-21およびFGF-23を含むFGFファミリー、HGH、FcR、インスリン、TNFR1、TRAIL、エリスロポエチン、ならびにこれらに限定されない類似体、二重特異性およびその断片等を含むが、これらに限定されない、任意の対象抗体であり得る。いくつかの実施形態において、本発明は、セレクターコドンを含有する抗体遺伝子を含む。本発明の抗体は例えば、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、一本鎖、Fabフラグメント、Fab発現ライブラリーによって産生されるフラグメント等であり得る。本発明の抗体は例えば、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)または補体媒介性溶解(CML)による破壊のために腫瘍細胞を標的化することによって腫瘍増殖を停止させる腫瘍特異的MAbを含み得るが、これらに限定されない(これらの一般的なタイプのAbは時に「魔法弾(Magic bullets)」と呼ばれる)。一例としては、非ホジキンリンパ腫の治療のための、抗CD20 MAbであるリツキサンは、腫瘍増殖の重要な構成要素を阻害する抗体である(Scott (1998) Rituximab: a new therapeutic monoclonal antibody fornon-Hodgkin's lymphoma Cancer Pract 6: 195-7)。ハーセプチンは転移性乳癌の治療のための抗HER-2モノクローナル抗体であり、この作用メカニズムを有する抗体の例を提供する(Baselga et al (1998) Recombinant humanized anti-HER2 antibody(Herceptin) enhances the antitumor activity of paclitaxel and doxorubicinagainst HER2/neu overexpressing human breast cancer xenografts [publishederratum appears in Cancer Res (1999) 59(8):2020], Cancer Res 58: 2825-31)。別の例では、細胞毒性化合物(毒素、放射性核種等)を腫瘍または目的の他の部位に直接送達するための抗体に関する。例えば、前立腺腫瘍細胞に対して、直接放射線標識を行う90Y結合抗体であるCYT-356がある(Deb et al (1996) Treatment of hormone-refractory prostate cancerwith 90Y-CYT-356 monoclonal antibody Clin Cancer Res 2: 1289-97)。他の例としては、腫瘍に局在化した酵素が腫瘍周辺に全体的に投与されたプロドラッグを活性化する、抗体特異的酵素プロドラッグ療法が挙げられる。例えば、結腸直腸癌の治療のためにカルボキシペプチダーゼAに結合した抗Ep-CAM1抗体が開発されている(Wolfe et al (1999) Antibody-directed enzyme prodrug therapy with theT268G mutant of human carboxypeptidase A1: in vitro and in vivo studies withprodrugs of methotrexate and the thymidylate synthase inhibitors GW1031 andGW1843 Bioconjug Chem 10: 38-48)治療上の恩恵のために正常な細胞機能を特異的に阻害するように設計された他の抗体(例えば、アンタゴニスト)も含まれ得る。例としては、Johnson and Johnsonが提供する急性臓器移植拒絶反応を抑制するための抗CD3 MabであるOrthoclone OKT3が挙げられる。(Strate et al (1990) Orthoclone OKT3 as first-line therapy in acuterenal allograft rejection Transplant Proc 22: 219-20)。別のクラスの抗体には、アゴニストが含まれる。これらのMAbは正常な細胞機能を特異的に増強して治療に役立てるように設計されている。例えば、神経治療のためのアセチルコリン受容体のMAbベースのアゴニストが開発中である(Xie et al (1997) Direct demonstration of MuSK involvement inacetylcholine receptor clustering through identification of agonist ScFv Nat.Biotechnol. 15: 768-71)。これらの抗体はいずれも、1つ以上の治療特性(特異性、結合活性、血清半減期等)を増強するために、1つ以上の非天然アミノ酸を含むように修飾することができる。別の例としては、酵素の触媒能力を模倣するように操作されたIg配列のような触媒抗体を含んでもよい。(Wentworth and Janda (1998) Catalytic antibodies Curr Opin Chem Biol2: 138-44)。触媒抗体はまた、1つ以上の目的の特性を改善するために、1つ以上の非天然アミノ酸を含むように改変され得る。
【0086】
本発明のセレクターコドンは、タンパク質生合成機構の遺伝子コドンフレームワークを拡張する。例えば、セレクターコドンは、固有の3塩基コドン、アンバーコドン(UAG)、オパールコドン(UGA)といった終止コドンのようなナンセンスコドン、非天コドン、少なくとも4塩基のコドン、希少コドン等を含む。例えば、1つかそれ以上、2つかそれ以上、3つ以上、あるいはその他の数の、複数のセレクターコドンを所望の遺伝子に導入することができる。遺伝子は与えられたセレクターコドンの複数のコピー、または複数の異なるセレクターコドン、またはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。一実施形態において、本発明の方法および組成物は、本明細書中に開示される、セレクターコドンを含有する遺伝子または目的の遺伝子の使用を含む。一実施形態では、本発明の方法および組成物は、セレクターコドンが重鎖、軽鎖、またはその両方に存在し得るセレクターコドンを含有する抗体の使用を含む。従って、本発明のセレクターコドンは、真核生物におけるin vivoでの非天然アミノ酸の取り込みのための終止コドンを含む。
【0087】
〔産生細胞〕
いくつかの実施形態において、本発明の開示は、目的の遺伝子を発現する産生細胞、細胞株、およびこれらから作製されたクローニングを提供する。このような産生細胞または細胞株は一過性にトランスフェクトされた細胞集団、安定な大量の細胞集団(例えば、細胞の混合またはプール)、安定なミニ細胞集団(例えば、ミニプールまたはマスターウェル集団)、および安定なクローン細胞株(例えば、単細胞由来)を含むが、これらに限定されない。本明細書中で用いられる一過性のトランスフェクションをされた細胞集団とは、目的の遺伝子がゲノム中に導入され、かつゲノム中に安定に組み込まれていない細胞プールをいう。本明細書中で用いられる安定な細胞または安定な産生細胞株とは、目的の遺伝子がゲノムに導入され、そして安定にゲノムに組み込まれる細胞をいう。安定な小細胞集団は、安定な大量の細胞集団よりも不均一性が少ない可能性がある。
【0088】
いくつかの実施形態において、本発明は直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)、直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)、および非天然アミノ酸が組み込まれたセレクターコドンを含有する目的の遺伝子、ならびに標的ノックアウト、除去、不活性化または破壊された遺伝子を含む安定な産生細胞株に関する。他の実施形態において、本発明の開示は、目的の遺伝子および標的ノックアウト、除去、不活性化または破壊された遺伝子を発現する、産生細胞、細胞株およびこれらから作製されたクローニングに関する。他の実施形態では標的ノックアウト、除去、不活性化、または破壊された遺伝子は細胞増殖および生産性の促進に関与する遺伝子である。他の実施形態では、標的ノックアウト、除去、不活性化、または破壊された遺伝子はアポトーシス経路に関与する遺伝子、例えば、プロアポトーシス遺伝子である。例示的な実施形態において、本発明の開示は非天然に組み込まれたアミノ酸および1つ以上の標的ノックアウト、破壊、切除または不活性化遺伝子(例えば、BAXおよび/またはBAK)を有する、目的の遺伝子を発現する細胞、または細胞株を作製するための方法および組成物を提供する。他の標的ノックアウト遺伝子は、ミトコンドリア経路を介してアポトーシスによる細胞死を制御する能力について、当該分野で周知のタンパク質のBcl-2ファミリーを含み得る。Bcl-2およびBcl-x1等の相同体のいくつかは、アポトーシスを阻害することが知られている。他の公知のプロアポトーシスBcl-2ファミリーメンバーには、Bak、Bax、Bcl-xs、Bid、Bim、BadおよびBikが含まれる。適切な刺激により、Baxおよび/またはBakは、アポトーシスを誘導または促進することができる。タンパク質のBcl-2ファミリーは、類似した配列および構造の相同性を共有する。このタンパク質ファミリーは、Bcl-2相同ドメインとして知られる配列相同性の4つまでの領域を特徴とする。例えば、Baxタンパク質は、Bcl-2と高度に保存されたドメインを共有する。これらのドメインのいくつかは、アポトーシスシグナルに応答する細胞生存または細胞死に重要であると考えられるBax/Bcl-2ヘテロダイマー形成に関与する。活性化すると、Baxはミトコンドリア外膜に移動し、そこでオリゴマー化し、膜を透過性にし、チトクロームCを含むいくつかの死滅促進因子を放出する(Scorrano et al (2003) Biochem. Biophys. Res. Commun. 304:437-444)。Baxは、Baxをミトコンドリアから隔離するKu70タンパク質との相互作用を介して、正常細胞において不活性化できる(Sawada et al (2003) Nat. Cell Biol. 5:320-329)。Baxと同様に、Bak遺伝子産物は、適切な刺激の存在下でアポトーシスによる細胞死を増強する。Bakはまた、細胞死を促進し、Bcl-2のアポトーシス保護を阻害する。Bakは、種々の細胞型における公知の強力なアポトーシス誘導因子である。従って、本発明の開示は、例示的な方法において、目的の遺伝子および非天然アミノ酸が組み込まれた細胞または細胞株において、BAK遺伝子および/またはBAX遺伝子のうちの1つ以上の部分的または完全な不活性化を伴う、産生細胞株の作製方法および組成物を提供する。目的の遺伝子を発現する細胞におけるアポトーシス剤(例えば、BAXおよび/またはBAK)を不活性化することは、細胞にアポトーシスに対する抵抗性を与え、そして組換えタンパク質(例えば、抗体、組換えウイルスベクターを含むがこれらに限定されない)の産生を改善した細胞株を作製するため、およびワクチンの製造のために用いられ得る。
【0089】
本開示の細胞株は、組換えタンパク質産生のために利用され得る。組換えタンパク質には本明細書の他の箇所に開示されるような抗体、抗原、治療用タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明は、真核生物または脊椎動物の細胞または細胞株(哺乳類、昆虫、は虫、鳥等を含むがこれらに限定されない)、または繊毛虫、植物(単子葉植物、双子葉植物、および藻類を含むがこれらに限定されない)、真菌、酵母、べん毛虫、ミクロスポリジア、および原生生物を含む。真核細胞は、非天然アミノ酸のin vivoへの取り込みのために用いられ得る。細胞は本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のポリヌクレオチドを含む構築物、例えば、クローニングベクターまたは発現ベクターであり得る、本発明のベクターを用いて遺伝子操作(例えば、形質転換、形質導入またはトランスフェクション)するために用いられ得る。ベクターは例えば、プラスミド、細菌、ウイルス、裸のポリヌクレオチド、または共役ポリヌクレオチドの形成であり得る。ベクターはエレクトロポレーション法(et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82, 5824 (1985)より、ウイルスベクターによる感染、微小ビーズまたは粒子のマトリックス内、または表面上の、いずれかの核酸と微小粒子による高速弾道浸透(high velocity ballistic penetration)を含む標準的な方法によって、細胞および/または微生物に導入される(Klein et al, Nature 327, 70-73 (1987))。
【0090】
核酸を細胞に導入するいくつかの周知の方法が利用可能であり、そのいずれも本発明において用いることができる。これらには、レシピエント細胞と、DNAを含有する細菌プロトプラストとの融合、エレクトロポレーション、発射体衝撃(projectile bombardment)、およびウイルスベクター(以下でさらに記載する)による感染等が含まれる。細菌細胞を用いて、本発明のDNA構築物を含むプラスミドの数を増幅することができる。細菌を対数増殖期まで増殖させ、細菌内のプラスミドを、当該分野で公知の種々の方法によって単離し得る(例えば、Sambrookを参照のこと)。さらに、細菌からプラスミドを精製するための多数のキットが市販されている(例えば、EasyPrep(商標)、FlexiPrep(商標)、Pharmacia Biotechの両方を参照、StrataClean(商標)、StratageneのQIAprep(商標)、QiagenのQIAprep(商標)を参照のこと)。次いで、単離および精製されたプラスミドをさらに操作して、他のプラスミドを産生し、細胞をトランスフェクトするために使用、または関連するベクターに組み込んで、生物に感染させる。典型的なベクターは、転写および翻訳ターミネーター、転写および翻訳開始配列、ならびに目的の特定の核酸の発現の調節に有用なプロモーターを含む。ベクターは任意に、少なくとも1つの独立したターミネーター配列、真核生物もしくは原核生物、またはその両方におけるカセットの複製を可能にする配列(例えば、シャトルベクター)、および原核生物系および脊椎動物系の両方についての選択マーカーを含む一般的な発現カセットを含む。ベクターは、原核生物、真核生物、好ましくはその両方における複製および組み込みに適している。Giliman & Smith, Gene 8:81 (1979); Roberts, et al, Nature, 328:731(1987); Schneider, B., et al, Protein Expr. Purif. 6435:10 (1995); Ausubel,Sambrook, Berger (all supra)参照。クローニングに有用な細菌およびバクテリオファージのカタログは例えば、ATCC(例えばThe ATCC Catalogue of Bacteria and Bacteriophage(1992) Gherna et al (eds) published by the ATCC)によって提供される。配列決定、クローニング、および分子生物学の他の態様のためのさらなる基本的な手順、ならびに基礎となる理論的考察もまた、Watson et al (1992) Recombinant DNA Second Edition ScientificAmerican Books, NYで確認できる。さらに、本質的に任意の核酸(および標準であろうと非標準であろうと、実質的に任意の標識核酸)は種々の市販品(例えば、the Midland Certified Reagent Company (Midland, TX mcrc.com), TheGreat American Gene Company (Ramona, CA available on the World Wide Web atgenco.com), ExpressGen Inc. (Chicago, IL available on the World Wide Web atexpressgen.com), Operon Technologies Inc. (Alameda, CA) および多くの他の市販品)のいずれかから特注で購入または標準的に購入できる。
【0091】
本開示の細胞または細胞株は例えば、スクリーニング工程、プロモーターの活性化、または形質転換体の選択のような活性について適切に改変された従来の栄養培地中で培養され得る。これらの細胞は、必要に応じて、トランスジェニック生物中で培養され得る。他の有用な参考文献としては、例えば、細胞単離および培養(例えば、その後の核酸単離)については、Freshney (1994) Culture of Animal Cells, a Manual of BasicTechnique, third edition, Wiley- Liss, New York and the references citedtherein; Payne et al (1992) Plant Cell and Tissue Culture in Liquid SystemsJohn Wiley & Sons, Inc. New York, NY; Gamborg and Phillips (eds) (1995)Plant Cell, Tissue and Organ Culture; Fundamental Methods Springer Lab Manual,Springer-Verlag (Berlin Heidelberg New York) and Atlas and Parks (eds) TheHandbook of Microbiological Media (1993) CRC Press, Boca Raton, FLが含まれる。
【0092】
従来の培地(midium)または培地(media)は、本明細書中で用いられる場合、細胞および/またはこのような細胞によって発現および/または分泌される産物を増殖および採取するために用いられる任意の培地をいう。このような「培地」または「培地」は例えば、細菌宿主細胞、酵母宿主細胞、昆虫宿主細胞、植物宿主細胞、真核宿主細胞、哺乳動物宿主細胞、CHO細胞、原核宿主細胞、大腸菌、またはシュードモナス宿主細胞、および細胞内容物を含む、任意の宿主細胞を支持または含有し得る溶液、固体、半固体、または剛性支持体を含むが、これらに限定されない。上記のような「培地」または「培地」は増殖工程の前または後のいずれかの培地を含む、ポリペプチドが分泌された宿主細胞が増殖された培地または培地を含むが、これらに限定されない。上記のような「培地」または「培地」は、宿主細胞の溶解物を含む緩衝液または試薬(例えば、細胞内で産生されたポリペプチド)を含み、そして宿主細胞はポリペプチドを放出するために溶解または破壊されるが、これらに限定されない。本発明の他の実施形態では、培地が完全細胞培養培地、従来の細胞培養培地、または化学的に規定された培地であってもよい。完全細胞培養培地はしばしば、2つの主要なカテゴリーの構成要素:基礎培地および成長補助剤を有する。基礎培地は、糖、アミノ酸、ビタミン、種々の塩等を含む低分子量成分からなる栄養混合物である。基礎培地はエネルギーを供給し、新しい細胞塊および産物を作製するための栄養源を単に提供するだけでなく、細胞増殖を可能にするために、バランスのとれた塩濃度および浸透圧を提供する。しかし、基礎培地は「最適である」増殖条件に必要な増殖因子または他の因子を含まないので、基礎培地単独で提供される場合、ほとんどの細胞は増殖しない。基礎培地に添加され得る増殖補助剤には、成長因子、リン脂質、大豆加水分解物、血清等が含まれる。これらの補助剤は特定のシグナル伝達経路のための構成成分を提供することによって細胞増殖を促進し得、または特別な栄養要求性(例えば、コレステロールを送達すること)を満たし得、そして細胞分化を指向し得る。従来の細胞培養培地は、基礎培地に加えて15%までの動物血清を含有する。血清は、化学組成が非常に複雑な流体である。上記のような媒体は大部分が未定義の化学組成を含み、複合媒体と呼ばれる。工業プロセスで一般的に用いられる多くの補助剤、例えば、植物加水分解物、大豆リン脂質もまた、このカテゴリーに入る。上記のような補助剤の使用は、媒体の化学組成を不明確にする。化学的に定義された培地はその化学組成が知られており、特徴付けられており、その化学種のすべてが指定されている成分のみを含む。上記培地は、未知または未定義の組成を有する構成要素のいかなる混合物も含まない。例えば、「脂質」または「リン脂質」は明確に定義された化合物ではないが、化合物クラスの混合物であり、化学的に特定されていない。化学的に規定された培地はしばしば、成長因子、サイトカイン、およびキャリアタンパク質を含む。したがって、化学的に定義された培地は、必ずしもタンパク質を含まないわけではない。
【0093】
本発明の実施形態では、バッチおよび流加生産が利用される。バッチおよび流加生産のための標準的な方法は、当技術分野において十分に理解されている。バッチ工程において、浸透圧モル濃度の制約は、最初に添加され得る栄養素の量を制限する。この低栄養レベルは、培養物が高い細胞および産物濃度を達成することを妨げる。流加培養では、培養中に培地を添加して栄養素の枯渇を防ぐことで、したがって増殖期を延長し、最終的に細胞および産物濃度を増加させる。非常に単純なものから非常に複雑で自動化されたものまでの様々な流加操作が、現在の生産設備で利用されている。バッチおよび流加の両方で用いられる培地は、市販されているか、または自社で開発された独自の培地であり得る。培地の種類は大部分が未定義の化学組成を含有する複合培地、または既知であり、特徴付けられ、その化学物質のすべてが指定された化学組成を有する成分を含む化学的に定義された培地とすることができる。いくつかの実施形態では、化学的に定義された培地は、その化学組成が既知であり、特徴付けられ、その化学物質のすべてが指定されている成分のみを含む。他の実施形態では、利用される培地の種類が未定義の化学組成および化学的に定義された組成を含有する混合物であってもよい。別の実施形態では、未定義の化学組成と化学的に定義された組成とが、それぞれ99%~90%および1%~10%、またはそれぞれ89%~80%および11%~20%、またはそれぞれ79%~70%および21%~30%、またはそれぞれ69%~60%および31%~40%、またはそれぞれ59%~50%および41%~50%;またはそれぞれ1%~10%と99%~90%、11%~20%と89%~80%、21%~30%と79%~70%、31%~40%と69%~60%、41%~50%と59%~50%のうちの組み合わせのいずれかである。ほとんどの上記のような方法または、代替の方法は、当業者に周知である。例えば、Weishou Hu, et al, Cell Culture Process Engineering (2013)を参照のこと。
【0094】
本発明の方法および組成物は、大量の有用な量の非天然アミノ酸を含有するまたは含むタンパク質またはポリペプチドの作製のための高い生産性真核細胞または細胞株を提供する。一態様では、組成物が任意に、例えば、非天然アミノ酸を含むタンパク質のポリペプチドの少なくとも10マイクログラム、少なくとも50マイクログラム、少なくとも75マイクログラム、少なくとも100マイクログラム、少なくとも200マイクログラム、少なくとも250マイクログラム、少なくとも500マイクログラム、少なくとも1ミリグラム、少なくとも10ミリグラム以上、またはin vivoタンパク質産生方法で達成することができる量を含む。別の態様では、タンパク質が例えば、細胞溶解物、緩衝液、医薬緩衝液、または他の液体懸濁液(例えば、約1nl~約100Lのいずれかの体積)中に、例えば、1リットル当たり少なくとも10マイクログラムのタンパク質、1リットル当たり少なくとも50マイクログラムのタンパク質、1リットル当たり少なくとも75マイクログラムのタンパク質、1リットル当たり少なくとも100マイクログラムのタンパク質、1リットル当たり少なくとも200マイクログラムのタンパク質、1リットル当たり少なくとも250マイクログラムのタンパク質、1リットル当たり少なくとも500マイクログラムのタンパク質、1リットル当たり少なくとも1ミリグラムのタンパク質、または1リットル当たり少なくとも10ミリグラム以上のタンパク質の濃度で組成物中に任意に存在する。少なくとも1つの非天然アミノ酸を含む真核生物または脊椎動物細胞におけるタンパク質の大量(例えば、他の方法(例えば、in vitro翻訳)で典型的に可能であるよりも多い)の産生は、本発明の特徴である。
【0095】
いくつかの実施形態では、本発明の細胞が「宿主細胞」とも呼ばれる、操作または組み換え宿主細胞またはプラットフォーム細胞である。このようなプラットフォーム、操作もしくは組み換え宿主細胞、または宿主細胞は外因性のポリヌクレオチドを含む細胞をいい、ここで、外因性のポリヌクレオチドを細胞に挿入するために用いられる方法は直接取り込み、形質導入、f接合、または組み換え宿主細胞を作製するための当該分野で公知の他の方法を含むが、限定されない。単なる例として、このような外因性ポリヌクレオチドは非組み込みベクター(プラスミドを含むが、これに限定されない)であり得るか、または宿主ゲノムに組み込まれ得る。本発明の他の態様において、目的の遺伝子はプラットフォーム、または操作もしくは組み換え宿主細胞にトランスフェクションされて、生物学的治療剤(抗体を含むが、これに限定されない)を作製または製造するための産生細胞株を作製し得る。本発明の別の実施形態において、産生細胞株は、目的の遺伝子を有する細胞株である。本発明の他の実施形態において、サイレンシングまたはノックアウトされた、切除された、不活性化された、または破壊された目的の遺伝子を有する産生細胞株は、プラットフォーム細胞株となり得る。本発明のいくつかの態様において、プラットフォーム細胞は、目的の遺伝子を有さない直交tRNA/RSシステムを含む細胞株であり得る。
【0096】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、実質的に精製され得る。本明細書で用いられる用語「実質的に精製された」は、精製前に目的の成分に通常付随するかまたは相互作用する他の成分を実質的にまたは本質的に含まない目的の成分をいう。単なる例として、目的の成分の調製物が、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満の汚染成分を含有する場合、目的の成分は「実質的に精製」され得る。従って、目的の「実質的に精製された」成分は、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、またはそれ以上の純度レベルを有し得る。単なる例として、天然アミノ酸ポリペプチドまたは非天然アミノ酸ポリペプチドは、組み換え的に産生された天然アミノ酸ポリペプチドまたは非天然アミノ酸ポリペプチドの場合には天然細胞または宿主細胞から精製され得る。例として、天然アミノ酸ポリペプチドまたは非天然アミノ酸ポリペプチドの調製物は、調製物が約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満の汚染物質を含有する場合、「実質的に精製」され得る。例として、天然アミノ酸ポリペプチドまたは非天然アミノ酸ポリペプチドが宿主細胞によって組み換え的に産生される場合、天然アミノ酸ポリペプチドまたは非天然アミノ酸ポリペプチドは、細胞の乾燥重量の約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、約4%、約3%、約2%、または約1%以下で存在し得る。例として、天然アミノ酸ポリペプチドまたは非天然アミノ酸ポリペプチドが宿主細胞によって組み換え的に産生される場合、天然アミノ酸ポリペプチドまたは非天然アミノ酸ポリペプチドは、細胞の乾燥重量の約5g/L、約4g/L、約3g/L、約2g/L、約1g/L、約750mg/L、約500mg/L、約250mg/L、約100mg/L、約50mg/L、約10mg/L、または約1mg/L以下で培養培地中に存在し得る。例として、「実質的に精製された」天然アミノ酸ポリペプチドまたは非天然アミノ酸ポリペプチドはSDS/PAGE分析、RP-HPLC、SEC、およびキャピラリー電気泳動を含むがこれらに限定されない適切な方法によって決定されるように、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、またはそれ以上の純度レベルを有し得る。本発明のポリペプチドまたはタンパク質は賦形剤(例えば、緩衝液、水、薬学的に許容可能な賦形剤であるが、これに限定されない)を含み得る。
【0097】
特定の実施形態では、本発明が本発明の操作された核酸、直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)、直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)、セレクターコドンを含有する抗体遺伝子を含むベクター(例えば、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルスであるが、これらに限定されない)を提供する。一実施形態では、ベクターは発現ベクターである。別の実施形態において、発現ベクターは、本発明のポリヌクレオチドの1つ以上に作動可能に連結されたプロモーターを含む。別の実施形態において、細胞は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクトルを含む。ベクターは、レポーターをさらに含んでもよい。本明細書中で用いられる場合、用語「レポーター」は、目的のシステムの標的成分を選択するために用いられ得る成分をいう。例えば、レポーターは蛍光スクリーニングマーカー(例えば、緑色蛍光タンパク質)、発光マーカー(例えば、ホタルルシフェラーゼタンパク質)、親和性に基づくスクリーニングマーカー、または選択可能なマーカー遺伝子(例えば、his3、ura3、leu2、lys2、lacZ、β-gal/lacZ(β-ガラクトシダーゼ)、Adh(アルコールデヒドロゲナーゼ)等)を含み得る。
【0098】
本発明の方法および組成物は、遺伝子、ポリペプチドまたはタンパク質をスクリーニングまたは選択するための薬剤、物質およびマーカーを含み得る。本明細書中で用いられる選択またはスクリーニング剤は、存在する場合、集団からの特定の成分の選択/スクリーニングを可能にする薬剤をいう。例えば、選択またはスクリーニング剤は栄養素、抗生物質、光の波長、抗体、発現されたポリヌクレオチド(例えば、転写モジュレータータンパク質)等を含むが、これらに限定されない。選択剤は例えば、濃度、強度等によって変化させることができる。他の実施形態では、本発明の方法および組成物が検出可能な物質を含む。検出可能な物質を用いることもできる。用語「検出可能な物質」は、本明細書中で用いられる場合、活性化、改変、発現等される場合、集団からの特定の成分の選択/スクリーニングを可能にする薬剤をいう。例えば、検出可能な物質は化学物質、例えば、5-フルオロ酸(5-FOA)であり得、これは、特定の条件、例えば、URA3レポーターの発現下で、検出可能になり、例えば、URA3レポーターを発現する細胞を殺す毒性産物である。さらに、本発明の方法、組成物、細胞または細胞株は、陽性および/または陰性の選択またはスクリーニングマーカーを含む。本明細書中で用いられる場合、用語「陽性の選択またはスクリーニングマーカー」は存在する場合(例えば、発現、活性化等)、陽性の選択マーカーを有さないものからの陽性の選択マーカーを有する細胞の同定をもたらすマーカーをいう。本明細書中で用いられる場合、用語「陰性の選択またはスクリーニングマーカー」は存在する場合(例えば、発現、活性化等)、所望の特性を有さない細胞の同定を可能にするマーカーをいう(例えば、所望の特性を有する細胞と比較して)。
【0099】
〔直交tRNAおよび直交アミノアシルtRNAシンセターゼ〕
いくつかの実施形態において、本発明は直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)、直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)、およびセレクターコドンを含有する目的の遺伝子(例えば、抗体を含む生物学的治療剤)を含む安定な産生細胞株に関する。真核生物細胞において、遺伝コードによって課される化学的制約を超えて、タンパク質の構造を直接遺伝的に改変する能力は細胞プロセスをプローブし、操作するための強力な分子ツールを提供する。本発明は、脊椎動物細胞において遺伝的にコードされるアミノ酸の数を拡大する翻訳成分を提供する。これらには、tRNA(例えば、直交tRNA(O-tRNA))、アミノアシル-tRNAシンセターゼ(例えば、直交シンセターゼ(O-RS))、O-tRNA/O-RSのペア、および非天然アミノ酸が含まれる。
【0100】
直交ペアは、O-tRNA、例えばサプレッサーtRNA、フレームシフトtRNA等、およびO-RSから構成される。O-tRNAは内因性シンセターゼによってアシル化されず、in vivoでO-tRNAによって認識されるセレクターコドンを含むポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質への非天然アミノ酸の取り込みを媒介することができる。O-RSはO-tRNAを認識し、脊椎動物細胞においてO-tRNAを非天然アミノ酸で優先的にアミノアシル化する。このような方法によって生成された直交ペアと共に直交ペアを生成するための方法、および脊椎動物細胞において用いるための直交ペアの組成物は、「Methods and compositions for the production of orthogonaltRNA-aminoacyltRNA synthetase pairs.」と題する国際特許出願WO2002/086075に記載されている。Forster et al, (2003) Programming peptidomimetic synthetases bytranslating genetic codes designed de novo PNAS 100(11):6353-6357;およびFeng et al, (2003), Expanding tRNA recognition of a tRNA synthetaseby a single amino acid change, PNAS 100(10): 5676-5681も参照のこと;各々は本明細書中に参考として組み込まれる。複数の直交tRNA/シンセターゼペアの開発は、脊椎動物細胞における異なるコドンを用いて、複数の非天然アミノ酸の同時取り込みを可能にし得る。
【0101】
直交tRNAおよび直交アミノアシル-tRNAは、当該分野で公知である。例えば、WO2008/030612、WO2008/030614、WO2008/030613、WO2006/068802、WO2007/021297、WO2007/070659、USPN8,420,792、USPN9,133,495;USPN7,736,872;USPN7,846,689;USPN7,883,866;USPN7,838,265;USPN7,829,310;USPN7,858,344;USPN7,632,823;およびUSPN9,586,988を参照のこと、各々は参照により本明細書に組み込まれる。O-RSを製造するためのさらなる詳細は、「Methods and compositions for the production of orthogonaltRNA-aminoacyltRNA synthetase pairs」と題するWO2002/086075に見出すことができる。Hamano-Takaku et al, (2000) A mutant Escherichia coli Tyrosyl-tRNASynthetase Utilizes the Unnatural Amino Acid Azatyrosine More Efficiently thanTyrosine, Journal of Biological Chemistry, 275(51):40324-40328; Kiga et al(2002), An engineered Escherichia coli tyrosyl-tRNA synthetase forsite-specific incorporation of an unnatural amino acid into proteins in vertebratetranslation and its application in a wheat germ cell-free system, PNAS 99(15):9715-9723;およびFrancklyn et al, (2002), Aminoacyl-tRNAsynthetases: Versatile players in the changing theater of translation; RNA,8:1363-1372も参照のこと。
【0102】
脊椎動物細胞における直交O-tRNA/O-RSペアは非効率的な交差種アミノアシル化を有する異なる生物から、ペア、例えば、ナンセンスサプレッサーペアを移入することによって産生され得る。O-tRNAとO-RSは脊椎動物細胞で効率的に発現およびプロセシングされ、O-tRNAは核から細胞質に効率的に輸送される。例えば、そのようなペアの1つは、大腸菌由来のチロシルtRNAシンセターゼ/tRNACUAペアである(例えば、H. M. Goodman, et al, (1968), Nature 217:1019-24;およびD. G. Barker, et al, (1982), FEBS Letters 150:419-23を参照のこと)。大腸菌チロシルtRNAシンセターゼは両者がS. cerevisiaeの細胞質に発現すると、その同族の大腸菌tRNACUAを効率的にアミノアシル化するが、S. cerevisiaetRNAをアミノアシル化しない。例えば、H. Edwards,& P. Schimmel, (1990), Molecular & Cellular Biology 10:1633-41;およびH. Edwards, et al, (1991), PNAS United States of America 88:1153-6を参照のこと。さらに、大腸菌のチロシルtRNACUAはS. cerevisiaeのアミノアシルtRNAシンセターゼ(例えば、 V. Trezeguet,et al, (1991), Molecular & Cellular Biology 11:2744-51を参照のこと)の基質としては不十分であるが、S. cerevisiaeのタンパク質翻訳においては効率的に機能している。例えば、H.Edwards, & P. Schimmel, (1990) Molecular & Cellular Biology 10:1633-41;H. Edwards, et al, (1991), PNAS United States of America 88:1153-6;およびV. Trezeguet, et al, (1991), Molecular & Cellular Biology11:2744-51を参照のこと。さらに、大腸菌TyrRSは、tRNAに連結された非天然アミノ酸を校正する編集メカニズムを有さない。
【0103】
〔非天然アミノ酸〕
非天然または人工アミノ酸の組み込みは、サイズ、酸性度、求核性、水素結合、疎水性、プロテアーゼ標的部位の接近性(accessibility)、部分への標的(例えば、タンパク質アレイについて)等を変化させることを含む、タンパク質の構造および/または機能の変化を調整するために行われ得る。非天然アミノ酸を含むタンパク質は、増強された、または全く新しい触媒特性または物理特性を有し得る。例えば、以下の特性:毒性、生体分布、構造特性、分光特性、化学的および/または光化学的特性、触媒能力、半減期(例えば、血清半減期)、他の分子と反応する能力(例えば、共有結合的または非共有結合的)等が、タンパク質へのアノン天然(anon-natural)アミノ酸の包含によって任意に改変される。少なくとも1つの非天然アミノ酸を含むタンパク質を含む組成物は、例えば、新規な治療薬、診断薬、触媒酵素、工業用酵素、結合タンパク質(例えば、抗体)、ならびに例えば、タンパク質の構造および機能の研究に有用である。例えば、Dougherty, (2000) Unnatural Amino Acids as Probes of Protein Structureand Function, Current Opinion in Chemical Biology, 4:645-652を参照のこと。
【0104】
本明細書中に記載される方法および組成物において用いられる非天然アミノ酸は以下の4つの特性のうちの少なくとも1つを有する:(1)非天然アミノ酸の側鎖上の少なくとも1つの官能基が20の共通の遺伝的にコードされるアミノ酸(すなわち、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリン)の化学反応性に直交する、または非天然アミノ酸を含むポリペプチド中に存在する天然に存在するアミノ酸の化学反応性に少なくとも直交する、少なくとも1つの特徴および/もしくは活性および/もしくは反応性を有する;(2)導入された非天然アミノ酸は、20の共通の遺伝的にコードされたアミノ酸に対して実質的に化学的に不活性である;(3)非天然アミノ酸は好ましくは天然に存在するアミノ酸と同等の安定性で、または典型的な生理学的条件下で、ポリペプチドに安定的に組み込むことができ、さらに好ましくは、そのような組み込みはin vivo系を介して行うことができる;ならびに(4)非天然アミノ酸は好ましくは非天然アミノ酸を含むポリペプチドの生物学的特性を破壊しない条件下で(もちろん、このような生物学的特性の破壊が修飾/変換の目的である場合を除いて)、または変換が約4~約8のpHの水溶液条件下で起こり得るか、または非天然アミノ酸上の反応性部位が求電子性部位である場合に、試薬と反応することによってオキシム官能基またはオキシム基に変換され得る官能基を含む。任意の数の非天然アミノ酸をポリペプチドに導入することができる。非天然アミノ酸はまた、保護されたもしくはマスクされたオキシム、または保護されたもしくはマスクされた基を含み得、これは、保護された基の脱保護またはマスクされた基のアンマスキングの後にオキシム基に変換され得る。非天然アミノ酸はまた、保護されたまたはマスクされたカルボニルまたはジカルボニル基を含み得、これは、保護された基の脱保護またはマスクされた基のアンマスキング後にカルボニルまたはジカルボニル基に変換され得、そしてそれによってヒドロキシルアミンまたはオキシムと反応してオキシム基を形成するために利用可能である。
【0105】
本明細書中に記載される方法および組成物において用いられ得る非天然アミノ酸には新規官能基を有するアミノ酸を含むアミノ酸、他の分子と共有結合的または非共有結合的に相互作用するアミノ酸、糖置換セリン等のグリコシル化アミノ酸、他の炭水化物修飾アミノ酸、ケト含有アミノ酸、アルデヒド含有アミノ酸、ポリエチレングリコールまたは他のポリエーテルを含むアミノ酸、重原子置換アミノ酸、化学的に切断可能および/または光切断可能なアミノ酸、天然アミノ酸と比較して伸長した側鎖を有するアミノ酸(ポリエーテルまたは長鎖炭化水素(約5よりも多いまたは約10よりも多い炭素を含む炭化水素を含むが、これらに限定されない)を含むが、これらに限定されない)、炭素結合糖含有アミノ酸、酸化還元活性アミノ酸、アミノチオ酸含有アミノ酸、ならびに1つ以上の毒性部分を含むアミノ酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0106】
いくつかの実施形態において、非天然アミノ酸は糖部分を含む。
そのようなアミノ酸の例には、N-アセチル-L-グルコサミニル-L-セリン、N-アセチル-L-ガラクトサミニル-L-セリン、N-アセチル-L-グルコサミニル-L-トレオニン、N-アセチル-L-グルコサミニル-L-アスパラギンおよびO-マンノサミニル-L-セリンが含まれる。そのようなアミノ酸の例はまた、アミノ酸と糖との間の天然に存在するN-またはO-結合が、天然に一般に見出されない共有結合(アルケン、オキシム、チオエーテル、アミド等を含むが、これらに限定されない)によって置換される例を含む。このようなアミノ酸の例には、2-デオキシ-グルコース、2-デオキシガラクトース等の天然に存在するタンパク質に一般に見出されない糖類も含まれる。
【0107】
人工アミノ酸の具体例としてはp-アセチル-L-フェニルアラニン、p-プロパルギルオキシフェニルアラニン、O-メチル-L-チロシン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチル-フェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAcβ-セリン、L-Dopa、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アジド-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
非天然アミノ酸のこのようなポリペプチドへの組み込みを介してポリペプチドに組み込まれる化学部分は、ポリペプチドの種々の利点および操作を提供する。例えば、カルボニルまたはジカルボニル官能基(ケトまたはアルデヒド官能基を含む)の特有の反応度は、in vivoおよびin vitroでの多数のヒドラジンまたはヒドロキシルアミン含有試薬のいずれかによるタンパク質の選択的修飾を可能にする。重原子非天然アミノ酸は、例えば、x線構造データを位相合わせするために有用であり得る。非天然アミノ酸を用いた重原子の部位特異的導入はまた、重原子の位置を選択するときの選択性および柔軟性を提供する。光反応性非天然アミノ酸(ベンゾフェノンおよびアリールアジド(フェニルアジドを含むが、これに限定されない)側鎖を有するアミノ酸を含むが、これらに限定されない)は例えば、ポリペプチドの効率的なin vivoおよびin virto光架橋を可能にする。光反応性非天然アミノ酸の例としては、p-アジド-フェニルアラニンおよびp-ベンゾイル-フェニルアラニンが挙げられるが、これらに限定されない。次いで、光反応性非天然アミノ酸を有するポリペプチドは、光反応性基の励起によって架橋され得、時間的制御を提供する。非限定的な例において、非天然アミノのメチル基は核磁気共鳴および振動分光法の使用を含むがこれらに限定されない、局所の構造および動力学のプローブとして、メチル基を含むがこれらに限定されない同位体標識で置換され得る。
【0109】
真核細胞による非天然アミノ酸の取り込みは、非天然アミノ酸(ポリペプチドまたはタンパク質への取り込みを含むが、これらに限定されない)を設計および選択する場合に典型的に考慮される1つの問題である。例えば、α-アミノ酸の高い電荷密度は、これらの化合物が細胞透過性である可能性が低いことを示唆する。天然アミノ酸は、タンパク質ベースの輸送系の収集を介して真核細胞に取り込まれる。非天然アミノ酸がもしあれば、細胞によって取り込まれるかを評価する迅速なスクリーニングを行うことができる。例えば、例えばその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2004/198637号、名称「Protein Arrays」における毒性アッセイおよびLiu, D.R. &Schultz, P.G. (1999) Progress toward the evolution of an organism with anexpanded genetic code. Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 96:4780-4785を参照のこと。取り込みは種々のアッセイで容易に分析されるが、細胞取り込み経路に従い得る非天然アミノ酸を設計することの代替は生合成経路を提供して、in vivoでアミノ酸を作製することである。
【0110】
典型的には本明細書に記載されるような細胞取り込みを介して産生される非天然アミノ酸が効率的なタンパク質生合成に十分な濃度で産生され、これには他のアミノ酸の濃度または排出細胞資源に影響を及ぼす程度ではないが、天然細胞量が含まれるが、これに限定されない。このようにして産生される典型的な濃度は、約10mM~約0.05mMである。
【0111】
多くの生合成経路が、アミノ酸および他の化合物の産生のための細胞に既に存在する。特定の非天然アミノ酸のための生合成方法は、天然(細胞を含むが、これに限定されない)に存在し得ないが、本明細書に記載される方法および組成物はそのような方法を提供する。例えば、非天然アミノ酸のための生合成経路は、新しい酵素を添加するか、または既存の宿主細胞経路を改変することによって、宿主細胞において作製され得る。さらなる新しい酵素には、天然に存在する酵素または人工的に進化した酵素が含まれる。例えば、p-アミノフェニルアラニンの生合成(「In vivo incorporation of unnatural amino acids」と題するWO2002/085923の実施例に提示されるように)は、他の生物由来の公知の酵素の組み合わせの添加に依存する。これらの酵素の遺伝子は、遺伝子を含むプラスミドで細胞を形質転換することによって真核細胞に導入することができる。遺伝子は、細胞中で発現される場合、所望の化合物を合成するための酵素経路を提供する。任意に添加される酵素のタイプの例は、本明細書中に提供される。さらなる酵素配列は例えば、Genbankに見られる。人工的に進化した酵素は、同じ様式で細胞に添加され得る。このようにして、細胞の細胞機構およびリソースは、非天然アミノ酸を産生するように操作される。
【0112】
生合成経路における使用のための、または既存の経路の進化のための新規酵素を産生するために、種々の方法が利用可能である。例えば、再帰的組み換え(Maxygen、Inc.(maxygen.comのワールドワイドウェブ上で入手可能)によって開発されたものを含むが、これに限定されない)を用いて、新規酵素および経路を開発することができる。例えば、Stemmer (1994), Rapid evolution of a protein in vitro by DNAshuffling, Nature 370(4):389-391;およびStemmer, (1994), DNAshuffling by random fragmentation and reassembly: In vitro recombination formolecular evolution, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 91:10747-10751を参照のこと。同様に、Genencorによって開発されたDesignPath(商標)(Gencor.comのワールドワイドウェブ上で入手可能)は代謝経路操作(細胞中に非天然アミノ酸を作製するための経路を操作することを含むが、これに限定されない)のために任意に用いられる。この技術は、新しい遺伝子(機能的ゲノム学、分子進化および設計によって同定されたものを含むが、これらに限定されない)の組み合わせを用いて、宿主生物における既存の経路を再構築する。Diversa Corporation(diversa.comのワールドワイドウェブ上で入手可能)はまた、遺伝子および遺伝子経路のライブラリーを迅速にスクリーニングするための技術(非天然アミノ酸を生合成的に産生するための新たな経路を作製することを含むが、これに限定されない)を提供する。
【0113】
典型的には本明細書に記載されるような操作された生合成経路を用いて産生される非天然アミノ酸が効率的なタンパク質生合成に十分な濃度(他のアミノ酸の濃度または排出細胞資源に影響を及ぼす程度ではないが、天然の細胞量を含むが、これに限定されない)で産生される。このようにしてin vivoで産生される典型的な濃度は、約10mM~約0.05mMである。一旦、細胞が特定の経路に所望される酵素を産生するために用いられる遺伝子を含むプラスミドで形質転換され、そして非天然アミノ酸が作製されると、in vivo選択は、必要に応じて、リボソームタンパク質合成および細胞増殖の両方のための非天然アミノ酸の産生をさらに最適化するために用いられる。本明細書に記載される非天然アミノ酸は、当技術分野に記載される方法論を用いて、または本明細書に記載される技術を用いて、またはこれらの組み合わせによって合成されてもよい。
【0114】
〔産物の特徴付け〕
生物学的治療剤の包括的な特徴付けは、規制当局によって設定された安全性基準を満たし、タンパク質の薬物の有効性を保証するのを助けるために必要である。医薬品の開発および製造のすべての段階を通して、生物薬剤学的な特徴付けが必要である。従って、産物の品質および生産性がクローンおよび細胞培養条件の両方に依存することが多いので、適切なクローンが選択されることを確実にするために、細胞株の開発、操作、および細胞培養プロセスの開発の各段階の間、産物の品質をモニターすることが最重要である。クローン選択プロセスの間、クローン特異的である可能性が高い産物の品質パラメーターに重点が置かれる。これらのパラメーターは、例えば、グリコシル化およびタンパク質分解性クリッピングのような酵素プロセス、ならびに突然変異、フレームシフト、およびスプライスのような遺伝的問題を含むが、これらに限定されない。また、生物学的活性に寄与することが知られている分子パラメーターにも重点が置かれる。例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)はフコシル化に依存し、補体依存性細胞傷害(CDC)はガラクトシル化に依存する。酸化または脱アミド化のような化学修飾の程度においてクローン間で観察される差異は、精製プロセスの最適化によって、または細胞培養プロセスパラメーターの調節によって、狭められ得るかまたは排除され得、そしてそれほど有意ではない。(Lewis et al, 2010)。
【0115】
本発明の実施形態において、CRISPR-Cas9ゲノム編集および単細胞クローニングが、生物学的治療剤を発現する細胞または細胞株の産物の品質に及ぼす影響を試験する。CRISPR-Cas9操作細胞のクローン選択の間に評価される産物の品質属性は、分子完全性、凝集、グリコシル化、および電荷不均一性を含み得るが、これらに限定されない。分子完全性はクローン依存性であり、遺伝的問題またはタンパク質分解性クリッピングによって引き起こされ得る。当業者に周知の種々の方法論、技術およびアッセイを用いて、アミノ酸配列突然変異または切断抗体を回避するための基準を用いて分子の完全性を評価することができる。このような方法論、技術およびアッセイは、cDNA配列決定、ペプチドマッピング、CE-SDSまたはSDS-PAGEを含み得るが、これらに限定されない。凝集は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて測定することができる。この分析の基準は、免疫原性であり得る高レベルの凝集を回避することである。いくつかのレベルの凝集は、細胞培養プロセスの最適化によって減少され得るか、または精製プロセスの最適化によって除去され得る。グリコシル化は、細胞株に高度に依存する別の重要な分子的および翻訳後属性である。当技術分野で周知のHPLCまたはCEベースのグリカンアッセイは、高レベルの異常なグリコシル化形態を回避することを目的として、クローン選択段階でのグリコシル化評価に一般に用いられる。化学修飾により起こり得る電荷の不均一性は、細胞培養プロセスに非常に依存し、従ってクローン選択段階の間、あまり重要でない役割を有する。従って、本発明の実施形態において、本開示は例えば、抗Her2、抗CD70、または抗PSMA発現細胞または細胞株を含むがこれらに限定されない、本発明の生物学的治療剤を発現する細胞または細胞株のクローン特異的な産物の品質パラメーターを決定するための方法、技術およびアッセイを提供する。
【0116】
インタクト質量分析(MS)は、タンパク質の正確な質量およびそのアイソフォームの相対的存在量に関する情報を提供する。分子ふるいクロマトグラフィーとしても知られるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、溶液中の分子がこれらのサイズ、場合によっては分子量によって分離されるクロマトグラフィー法である。本発明において、作製された、操作されたクローンおよび親細胞株について、一次アミノ酸配列がmAbの同定を確認するときにcDNA配列から推定されるものと同じであることを実証するときにMSを利用した。改変され、そして作製されたモノクローナル抗体(mAb)の純度および製造の整合性の決定のためにもSECを利用した。
【0117】
〔キット〕
キットはまた、本発明の特徴であり、ここで、キットは、本発明の成分のいずれかを含む1つ以上の容器を含む。このキットは、直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)、および/または直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)、および/またはセレクターコドンを含有する目的の遺伝子を含むかまたはコードする、操作された核酸分子またはポリヌクレオチド配列の1つ以上を含み得る。キットは、少なくとも1つの人工アミノ酸を含み得る。別の実施形態では、キットが直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)、直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)、またはセレクターコドンを含有する目的の遺伝子と一緒に、または別々に、細胞または株を含み得る。本明細書に開示される成分、材料のいずれも、1つ以上の容器内で別々に、または一緒に提供することができる。別の実施形態において、キットは、目的のポリペプチドまたはタンパク質を産生するための説明資料をさらに含む。
【0118】
〔実施例〕
本明細書に記述された実施例および実施形態は説明のみを目的とするものであり、これらに関する様々な改変または変更は、当業者に対して示唆され、本出願の精神および範囲、ならびに添付された特許請求の範囲内に含まれるべきであると理解される。
【0119】
(実施例1:薬剤開発産業においてプラットフォーム細胞株エンジニアリングを利用する方策:発見から製造まで)
産業の観点において、プラットフォーム細胞株開発は、段階的に適切な材料を提供することによって薬剤開発のあらゆる段階を支援するだけでなく、産物を臨床および商業化に導入する前に、安定で十分に特徴付けられた産生細胞株を生成する(図1)。薬剤開発のあらゆる段階を効率的に支援するために、図1に示すように、一過性の安定な大量のプールを含む材料を提供するための複数の方法を開発し、安定な細胞株を開発した。抗体候補分子の選択のために、一過性発現を利用して少量の産物を迅速に提供した。安定な大量のプールは、8週間でIND許可毒性試験(100~200g)までの開発可能性試験(精製、調合、分析法開発)のための大量の材料を提供する代替法である。一旦、リード分子が決定されると、安定な細胞株は、6ヶ月で、1.5g/Lまでの力価で生成された。これは、臨床試験および潜在的な商業化のための支持を与える。
【0120】
(実施例2:高産生細胞株の開発においてプラットフォーム細胞株を利用する一般的な手順)
図2は、安定な細胞株の開発のためのフローチャートを示す。本発明者らはこの戦略を用いて、産業での標準的製造に拡張可能で、高い生産性の、安定な、十分に特徴付けられた生産細胞株を生成し、治療薬の所望の安全性および有効性の特性を維持しながら、臨床試験および商業化を支援した。目的の遺伝子(GOI)および選択可能なマーカーを有する哺乳動物発現ベクターを、操作されたCHOプラットフォーム細胞株にトランスフェクトして、96ウェル中にミニプール(MP)を生成した。選択およびスクリーニング後、FACSを用いてウェル当たり単細胞として最良のMPをプレートし、続いて高分解能イメージングを行ってクローン細胞株を誘導した。単細胞由来の細胞株をスクリーニングし、最良のクローンをプロセスの開発のために細胞培養群に移した。臨床材料を製造するための最終クローン選択は、増殖、生産性およびPQに基づいた。全CLDプロセスは6ヶ月を要し、細胞特定生産性は1日当たり細胞当たり20~30ピコグラムであった。12,000Lのバイオリアクター製造を支持するために10週間よりも長く安定な、細胞株および流加プロセスは、現在進行中の臨床試験を支持するために、これまでのところ2000Lまでにスケールアップすることができる。
【0121】
(実施例3:高産生細胞株開発の最適化)
FACS依存性単細胞沈着(図3A)、CRISPRノックアウト手順(図3B)、および細胞株開発プロセス最適化(図3C)等のいくつかの態様から、高産生細胞株開発の最適化を達成することができる。
【0122】
調節ガイダンス(ICH Q5D)は細胞株の開発の間に、「単細胞前駆体から」細胞基質をクローニングすることを指示する。過去数年の間に、クローン性の高い保証を提供するという期待が、FDAおよび産業界によって確立されてきた(Kennett, 2014; Novak, 2017; Welch, 2017)。FDAは、十分に低い播種密度(<0.5細胞/ウェル)での2ラウンドの限界希釈クローニング(LDC)が、細胞株がクローン性である許容可能な確率を提供することを推奨している。さらに最近では、イメージング技術の使用等、十分な裏付けとなる妥当性を有するFACSまたはLDCによる1ラウンドのクローニングが検証された方法を用いる場合、クローン性の許容可能な保証を提供している。このように、本発明者らは高分解能イメージングと組み合わせたFACS単細胞沈着(FACS SCD)を、細胞株開発プロセスにおけるクローニング工程の1ラウンドとして改変し、検証して、タイムラインを短縮し、クローン性を保証するための規制要件を満たした。
【0123】
ここに示すように(図3A)、従来の限界希釈クローニング(LDC)と比較して、FACS SCDは、匹敵する沈着および増殖速度を生じた。しかしながら、FACSアプローチを用いたモノクローナル増殖を単離する効率(単細胞由来のコロニーを含むウェルの数をウェルの総数で割った比率)はLDCを用いたものの1.5倍(49%対32%)であり、イメージングおよびスクリーニングにおける有意な時間およびリソースを節約する。各ウェルについての徹底的な画像分析と共に、FACS計測および遠心分離g力変動における広範な最適化を実施して、このアプローチを検証した。単細胞由来コロニーのモノクローナル性の確率は>99.5%であることが観察された。
【0124】
CRISRR-cas9ゲノム編集技術を用いた産生細胞株の遺伝子工学は、所望の産物品質を維持しながら、細胞増殖および生産性を改善するために、遺伝子のパネルを標的とするために試験されている。CRISPRノックアウト手順を図3Bに示す。ウェブベースの標的発見ツール、CRISPyを用いて、好ましくはCHO-K1細胞中のゼロオフ標的を有する初期のエキソン中のgRNA標的配列を迅速に同定した。gRNAを、CHOコドン最適化バージョンのCas9と共発現する哺乳動物発現ベクターpGNCVにクローニングした。産生細胞株をベクターpGNCVでトランスフェクションして細胞のプールを生成し、続いてクローニングして遺伝子ノックアウトした単細胞単離物を同定した。複数のプロジェクトの複合結果からのインデル(挿入/欠失)頻度は、細胞および単細胞分離株のプールについて、それぞれ30~90%および50~80%であった。ウェスタンブロットは、ノックアウト効率がDNA配列決定について50~90%であることを再確認し、ノックアウト単細胞単離物を検証した。ノックアウト単細胞クローンを、生産性、増殖、アポトーシスアッセイおよび産物品質についてさらなる評価を行い、cGMP製造のための産生クローンを選択した。ノックアウトのために用いた検証された標的を、産生細胞株を用いて試験した。これは、生産性および増殖を評価するために有益であることが証明され、CRISPRを用いてプラットフォーム細胞株宿主における破壊に適用可能であり、目的の将来の遺伝子のために高産生細胞株を単離する効率を増加させた。
【0125】
細胞株開発プロセスはまた、プラットフォーム細胞株開発と共に最適化されている。第1のプラットフォーム細胞株を宿主として用いると、力価0.5~1g/Lを産生する産生細胞株を生成するのに3~4工程(または9ヶ月~12ヶ月)を要する(図3C)。現在の細胞株の開発プロセスは、(図2)に示すようにプラットフォーム細胞株の改善および1工程クローニングに起因して、2工程または6ヶ月に短縮されている。
【0126】
(実施例4:プラットフォーム細胞株は、培養物中で過剰なアポトーシスを示す)
Annexin Vアッセイを用いて、CHO-S細胞およびパラ-アセチル-L-フェニルアラニンに特有のtRNA/アミノアシル-tRNAシンセターゼの遺伝的に組み込まれた直交対を含むプラットフォーム細胞株4E2の生存率を評価した。図4に示すように、CHO-S細胞(生存率は96%)と比較して、4E2は過剰なアポトーシスを示した(生存率は85%)。観察はtRNAシンセターゼおよびtRNA対(例えば、非天然アミノ酸パラアセチルアラニン、pAFに特異的)を組み込んでいる4E2細胞が、その対応する細胞、CHO-S細胞よりも過剰なアポトーシスを示したことを示す。
【0127】
(実施例5:BAX-およびBAK-CRISPR構築物の設計および調製)
CRISPR構築物はBAXまたはBAK遺伝子中の標的部位を認識し、トランスフェクション後にCHO細胞中で二本鎖切断を行うように設計した。例示的な設計を図5図6および図7に示す。
【0128】
遺伝子のノックアウトは、連続的または同時の手順を用いて行うことができる。BAXおよびBAKの二重ノックアウトはまた、連続ノックアウト手順によって達成され得る。一般に、第1の工程は、抗HER2発現細胞株上に3つのBAX標的gRNA構築物を適用することである。同時ノックアウト手順において用いた同様の産生後、BAXノックアウトを有する細胞株を単離する。この細胞株を用いて、2つのBAK標的化gRNA構築物を適用して、BAKノックアウトを達成する。ゲノムDNA配列決定による検証の後、BAXおよびBAKダブルノックアウト細胞株は、このような連続手順によって達成されていることを確認する。
【0129】
CHO細胞における標的BAX遺伝子のCRISPR gRNA設計を図5に示す。示されるように、CHO細胞におけるBAX遺伝子を標的とする3つのgRNA部位を、CHO-K1ゲノムに特有のオンラインCRISPR gRNA設計ツールを用いて設計した(staff.biosustain.dtu.dk/laeb/crispy/のワールドワイドウェブを参照のこと)。BAX遺伝子、エキソン1およびエキソン2のゲノムDNA配列を灰色の陰影で示す。BAXの他の配列は平文で示されている。PCR配列決定において用いたプライマーを、フォワードプライマーおよびリバースプライマーとして、それぞれ配列の始めおよび終わりに示す。表1に示すように、3つのBAX部位(それぞれが19ヌクレオチド長の配列を有し、図7に示すように、切り開かれた、2つのくっつく末端を有するプラスミドpGCNVの性質のために、設計中に-NGG PAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)配列が省略される)は以下の通りである:部位-I(AGGCACTCGCTCAACTTCG)(配列番号1)、部位-II(TGAGTGTGACCGGCTGTTG)(配列番号2)および部位-III(TTTCATCCATGTATCGAGCT)(配列番号3)。
【0130】
図6に示すように、CRISPRを用いて、CHO細胞中の標的BAK遺伝子のgRNAを設計した。図6は、2つのgRNA配列に注釈を付けたCHO細胞におけるBAK遺伝子のゲノムDNA配列を示す。BAK遺伝子、エキソン2およびエキソン3のゲノムDNA配列を灰色の陰影で示す。BAKの他の配列は平文で示されている。PCR配列決定において用いたプライマーを、フォワードプライマーおよびリバースプライマーとして、それぞれ配列の始めおよび終わりに示す。表1に示す3つのBAK部位は以下の通りである:
(配列番号4) BAK-IGAACAAATTGTCCATCTCG エキソン2、
(配列番号5) BAK-IIATGCTGTAAGAACGGGAGT エキソン3、
(配列番号6) BAK-IIIGAAGCCGGTCAAACCACGT エキソン3。
【0131】
BAXまたはBAKノックアウト実験において用いたCRISPRプラスミドはまた、市販のベクター、Geneart CRISPRヌクレアーゼベクター(pGCNV)(Thermo Fisher Scientific)を用いて、図7に示すように設計した。完全な形態のpGCNVプラスミドを、オリゴ二重鎖のためのスロットを含む切り開かれたpGCNVベクターにオリゴ二重鎖を挿入することによって調製し、そして遺伝子部位を個別に標的化するために特定の19ヌクレオチド長のgRNA配列を用いて設計した(本明細書の他の箇所の表1を参照のこと)。
【0132】
pGCNVに挿入することができるオリゴ二重鎖を形成するために、5つの(5)ペアのオリゴを以下の表3に開示するように合成した。
【0133】
【表3】
【0134】
二本鎖オリゴヌクレオチドを生成するために、各オリゴペアを、オリゴヌクレオチドアニーリング緩衝液中、95℃で4分間、50uMの最終濃度でインキュベートした後、25℃まで5~10分間冷却する。10倍希釈(5uM)後、オリゴヌクレオチド二重鎖をライゲーション手順に用いることができる。ライゲーションは、Roche quick ligation kit(Roche)を用いて行うことができる。21ulの反応物中、3ulのpGCNVベクター、1ulのオリゴ二重鎖、2ulのDNA希釈緩衝液、4ulの水、10ulのT4 DNAリガーゼ緩衝液および1ulのT4リガーゼを含んでいる。反応混合物を室温で5分間インキュベートした。3ulのライゲーション混合物を大腸菌の形質転換に用いて、陽性クローンをスクリーニングすることができる。
【0135】
(実施例6:本発明に用いられる非天然アミノ酸の例)
本発明は、本明細書中の他の箇所で議論される直交アミノアシル-tRNAシンセターゼ/転移RNAペアを用いる、目的の遺伝子における非カノニカルまたは非天然アミノ酸の部位特異的組み込みを包含する。図8は、用いることができる非天然アミノ酸の代表的な数を提供する。例示的な様式では、1つのそのような非天然アミノ酸パラ-アセチル-L-フェニルアラニン(pAF)を培養培地に添加して、pAFの部位特異的組み込みを伴う、例えばモノクローナル抗体を含む生物学的治療剤等の、目的の完全に集合した遺伝子の産生を開始した。
【0136】
(実施例7:BAX/BAK欠失抗HER2発現細胞株の生成および分析)
CRISPR技術を用いて、BAXおよびBAKの同時切除を行った。抗HER2発現細胞株L082上の3つのBAX標的gRNA構築物および2つのBAK標的gRNA構築物を用いて、一過性トランスフェクションを行った。プラスミドのトランスフェクションをエレクトロポレーションで行った。エレクトロポレーションの間、600万個の細胞を100ulのエレクトロポレーション水溶液中で2ugのDNAプラスミドと混合した。プログラムU-023を用いて細胞をAmaxa Nucleofector II(Lonza)にトランスフェクトし、0.5mlの温培地中に回収した。実施例3、図3Bに開示されるように、ノックアウト効率を測定するために、トランスフェクトされた細胞のプールについてSurveyorを行った。3つのBAX標的gRNA構築物を2つのBAK標的gRNA構築物と同時にトランスフェクトした7日後、細胞を、限界希釈法を用いて、96ウェルプレート中に0.5細胞/ウェルの播種密度で単クローンにサブクローニングした。96ウェルプレート中の各単細胞を約2~3週間増殖させて、さらなる遺伝子分析に用いるために十分な数の細胞を作製した。単細胞由来クローンを選択し、そして生産性、増殖、および標的DNA配列決定による遺伝子型決定について、96ウェル、24ウェルおよび24ディープウェルによりスクリーニングした。
【0137】
(実施例8:BAXおよびBAK欠失抗HER2発現クローンのDNA分析)
BAXおよびBAK不活性CHO細胞を作製し、遺伝子レベルで分析した。BAK部位を標的とする3つの異なるgRNA配列をコードする3つのプラスミドを、pAF-RSおよびpAF-tRNA+抗HER2遺伝子またはその断片を有するように操作されたCHO細胞由来の安定な細胞株にコトランスフェクションした。トランスフェクションの72時間後、ゲノムDNAを単離し、BAK遺伝子座の一部を、オリゴK-I-II-FおよびK-I-II-Rを用いてPCR増幅した(表2;5’CAGACAGCCTTCTCTTGCT-3’(配列番号45)および5’AGAGCTCCTGAGAGGCATGA-3’(配列番号46))。PCRは、Phusion High-Fidelity PCRマスターミックス(New England Biolabs、Ipswich、MA)を用いて行った。条件は以下の通りであった:95℃で2分間の初期変性の後、95℃で20秒間の変性で30サイクルのPCRを行い、続いて60℃で30秒のアニーリングする工程を行い、続いて72℃で1分間の伸長を行った。30サイクル後、反応物を72℃で5分間、次いで4℃で無期限にインキュベートした。ノックアウト効率を評価するために、PCR産物をSurveyorアッセイ分析で用いた。Surveyorアッセイ検出は、IDT(Integrated DNA Technology、San Diego、CA)からのSurveyor突然変異検出キットを用いて行った。加熱したオリゴ混合物の自然冷却手順を模倣するために、サーモサイクラーを用いてヘテロ二重鎖を形成した。ヘテロ二重鎖の形成に以下の手順を用いた:95℃で10分間、
続いて95℃から85℃への冷却(-2.0℃/s)、85℃で1分間のインキュベーション;85℃から75℃への冷却(-0.3℃/s)、75℃で1分間のインキュベーション;75℃から65℃への冷却(-0.3℃/s)、65℃で1分間のインキュベーション;65℃から55℃への冷却(-0.3℃/s)、55℃で1分間のインキュベーション;55℃から45℃への冷却(-0.3℃/s)、45℃で1分間のインキュベーション;45℃から35℃への冷却(-0.3℃/s)、35℃で1分間のインキュベーション;35℃から25℃への冷却(-0.3℃/s)、25℃で1分間のインキュベーション;その後無期限に4℃。ヘテロ二重鎖DNA(20ul)を、1ulのSurveyor Enhancer S(2ul)およびSurveyor Nuclease S(1ul)と共に42℃で60分間インキュベートした。10ulの消化サンプルを、10ulの未消化サンプルと並べて1%アガロースゲル上で泳動した。図9に示すように、実施例3、図3Bに開示されるように、ノックアウト効率を測定するために、細胞のトランスフェクションされたプールに対してSurveyorアッセイを行った。ノックアウト効率の分析を、抗HER2発現細胞集団において行った。一番上のバンドが減少し、底部の新しいバンドが出現することは、Image Jソフトウェアによる走査画像の濃度分析によって定量化することができる効率を示している。CRISPR KOの前後の元のバンドの比率を用いてノックアウト効率を測定した。BAXおよびBAKについてのノックアウト効率はそれぞれ30%および70%であり、適切に21%の計算された二重ノックアウト効率をもたらした。
【0138】
96ウェルプレートを含む単細胞の複製プレートを用いて、ゲノムDNA単離およびDNA配列決定を行った。QuickExtract水溶液をゲノムDNAのハイスループット単離に用いた。150ulの細胞培養物の上清を培養物から除去した後、150ulのQuickExtract水溶液を添加した。室温で10分間溶解した後、細胞溶解物を新しいマイクロチューブに移し、65℃で6分間、続いて98℃で2分間加熱ブロック上で加熱した。
【0139】
ゲノムDNA抽出物をPCR増幅に用いた。次いで、PCR産物を精製し、配列決定した。配列決定の結果を、Vector NTIソフトウェア一式中のアラインメントツールを用いて分析した。CHOgenome.orgでワールドワイドウェブ上で得られた遺伝子(この場合、BAK遺伝子)のゲノム配列を、アライメント分析の間の野生型配列として用いた。図10は、CRISPRを用いたBAKノックアウト後の20個の単細胞クローンのDNA配列決定結果を示す。一番上のDNA配列(Bak-CHO-gDNA1)は、元のBAK遺伝子のゲノム領域のDNA配列である。「ZA_112_K32_BakI-II」クローンのみが、元のBAK遺伝子と同一の配列を有する。示される他の遺伝子は、これらの配列中に欠失または挿入のいずれかを有する。BAXでも同様の観察が認められた(データは示さず)。
【0140】
(実施例9:抗HER2発現クローンにおけるBAXおよびBAKノックアウトのタンパク質分析)
BAXおよびBAKノックアウト抗HER2発現単細胞由来細胞株を、ウェスタンブロット分析を用いてBAXタンパク質発現について試験した(図11)。600万個のBAX/BAK二重ノックアウト細胞株からの溶解物を、100ulのRIPA緩衝液(Abcam)+プロテアーゼインヒビター(Sigmaタブレット、Sigma)に再懸濁することによって調製した。溶解物を氷上で1時間インキュベートした後、12,000rpmで20分間遠心分離した。タンパク質濃度は、BCAキット(Pierce)によって測定した。20ugのタンパク質をウェスタンブロットに用いた。異なる細胞株からのタンパク質抽出物を、抗BAX抗体(Abcam)でプローブした。図11に示すように、BB15、BB12およびBBS19等のBAX/BAK二重ノックアウト細胞株は、検出可能なBAXタンパク質を発現しなかった。対照的に、陽性対照細胞株として、L082は、21-KDタンパク質である全長BAXの発現を示した。遺伝子配列決定により遺伝的にBAX欠失であることが特徴付けられたが、UBB3細胞株は残留BAXを発現したことが認められた。BAKでも同様の観察が認められた(データは示さず)。
【0141】
(実施例10:アポトーシスは、BAX/BAK欠失抗HER2発現細胞株において妨げられる)
BAX/BAK二重ノックアウト細胞株を、アポトーシスに対するこれらの耐性について試験した。アポトーシス耐性の特性を、流加手順の間に評価した。流加バッチ中の12日目の細胞のAnnexin V染色のフローサイトメトリー分析を行った。BD BiosciencesからのFITC Annexin Vアポトーシス検出キットを用いる標準プロトコルを、製品の推奨条件下で追跡した。細胞は、アポトーシスアッセイの間に4つの段階および/または集団に分けることができる:正常な生存細胞段階(四分円3、Q3)、アポトーシスの初期段階(四分円4、Q4)、アポトーシスの後期段階(四分円2、Q2)、および死細胞段階(四分円1、Q1)。図12Aに示すように、ノックアウトしていない正常(対照)L082細胞はQ4(11.8%)およびQ2(41.8%)に示すように、重度のアポトーシスを示した。対照的に、BAX/BAK二重ノックアウト細胞株(BB15)は、図12Bに示すように、はるかに改善された生存率(Q3、80.9%)およびアポトーシスに対する耐性(Q4、13.2%;Q2、3.5%)を示した。従って、アポトーシス細胞は53%から17%に減少することが観察された。
【0142】
(実施例11:組み換えタンパク質の産生は、BAX/BAK欠失抗HER2発現細胞株において増加する)
抗体の産生を、バッチ手順および流加手順の両方で評価した(それぞれ、図13および14)。バッチ培養条件下で、非天然アミノ酸pAFを3日目に培養培地に添加して、pAFの部位特異的取り込みを伴う完全に集合した抗HER2抗体の産生を開始した。抗アポトーシス工学について予想されるように、ノックアウト細胞の生細胞密度(VCD)によって測定されるピーク細胞密度(図13A)は親細胞よりも25%高く、そして生産時間(図13B)は親細胞について7日から10日まで延長された。驚くべきことに、ノックアウト細胞の7日目の1日のQp(図13D)はおそらく抗アポトーシス工学から生じる維持された細胞活性のために、親細胞よりも50%改善された。BAX/BAK二重ノックアウト細胞株は、産生の7日目に親細胞(図13C)と比較して力価の1.8倍の増加(270mg/L対150mg/L)を示した。
【0143】
流加培養条件下(図14)、図14Aに示すようなピーク細胞密度(VCD)に基づく増殖の改善の組み合わせ、産生時間(図14B)、および細胞特定生産性(図14D)では、親細胞株(L082、450mg/L)と比較して1500mg/Lの力価を有するBB15クローンを示すBAX/BAK二重ノックアウト細胞株(図14C)について力価の3.3倍の増加をもたらした。
【0144】
(実施例12:BAX/BAK欠失抗HER2発現細胞株の産物品質)
抗HER2発現親細胞株およびBAX/BAK二重ノックアウト抗HER2発現細胞株から流加産生によって産生された試料を用いて、インタクト質量分析(MS)およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって産物の品質を分析した(表4)。操作されたクローンおよび親細胞株の一次アミノ酸配列はmAbの同定を確認するcDNA配列から推定されたものと同じであることが、MSによって観察された(データは示さず)。
【0145】
【表4】
【0146】
表4に示すように、親およびBAX/BAK二重ノックアウト抗HER2発現細胞株から流加産生によって産生された試料を用いて、産物の品質を分析した。MSによって評価された糖型特性は、ノックアウト前(HER2-L082)およびノックアウト後(HER2-BB15)で同等であり、クローン選択段階でのmAbの正規分布範囲内であった。SECは高分子量(HMW)凝集体および低分子量(LMW)分解種の割合が両方とも5%未満であり、操作の前後で同等であることを示し、ノックアウトおよび単細胞クローニング手順が産物の純度に負の影響を与えなかったことを示した。
【0147】
(実施例13:BAX/BAK欠失抗PSMA発現細胞株の作製)
CRISRP技術を用いたBAXおよびBAKの同時切除を、3つのBAX標的gRNA構築物および2つのBAK標的gRNA構築物の抗PSMA発現細胞株KO183へのトランスフェクションによって行った。この実験で用いたBAXおよびBAK構築物は、上記の実施例に記載され、図5~7および表1~3に示すように設計し、調製した。抗PSMAに関するノックアウト実験において用いたCRISPRプラスミドはまた、市販のベクター、Geneart CRISPRヌクレアーゼベクター(pGCNV)(Thermo Fisher Scientific)を用いて、図7に示すように設計した。pGCNVに挿入されたオリゴ二重鎖は、配列番号83~配列番号92の5つの(5)ペアの合成オリゴを含んでいた。
【0148】
BAX部位を標的とする3つの異なるgRNA配列をコードする3つのプラスミドおよびBAK部位を標的とする2つの異なるgRNA配列をコードする2つのプラスミドを、pAF-RSおよびpAF-tRNA+抗PSMA遺伝子またはその断片を有するように操作されたCHO細胞由来の安定な細胞株にコトランスフェクトした。トランスフェクションの72時間後、ゲノムDNAを単離し、そしてBAK遺伝子座の一部を、実施例8に記載されるように、配列番号45および46のオリゴを用いてPCR増幅した。代わりに配列番号43および44のオリゴを用いてBAX遺伝子座をPCR増幅した。BAXおよびBAK欠失抗PSMA発現クローンのDNA分析を、上記の実施例に記載のように行った。図15に示すように、CRISPR編集技術に基づいて、抗PSMA発現細胞集団におけるノックアウト効率を決定するために、Surveyorアッセイを行った。CRISPR KOの前後の元のバンドの比率を用いてノックアウト効率を測定した。BaxおよびBakについてのノックアウト効率はそれぞれ42%および53%であり、約20%の計算された二重ノックアウト効率をもたらした。
【0149】
7日後、細胞のトランスフェクションされたプールを、FACSを用いて、1細胞/ウェルの播種密度で40プレートにサブクローニングした。約1000の画像確認された単細胞由来クローンを選択し、そして生産性、増殖および標的DNA配列決定による遺伝子型決定について、96ウェル、24ウェルおよび24ディープウェルによりスクリーニングした。
【0150】
BAXおよびBAK欠失抗PSMA発現クローンのDNA分析を、実施例8に記載のように行った(データは示さず)。最良のKO183 BAX/BAK二重KOクローン(KO183 BB KO)を、2ヶ月の安定性研究による増殖および生産性のさらなる評価のために、およびウェスタンブロッティングによるノックアウト状態の確認のために選択した。
【0151】
図16に示すように、抗PSMA発現クローンにおけるBAXおよびBAKノックアウトのタンパク質分析を、ウェスタンブロットを用いることによって評価した。600万個のBAX/BAK二重ノックアウト細胞株からの溶解物を、100ulのRIPA緩衝液(Abcam)+プロテアーゼインヒビター(Sigmaタブレット; Sigma)に再懸濁することによって調製した。溶解物を氷上で1時間インキュベートした後、12,000rpmで20分間遠心分離した。タンパク質濃度は、BCAキット(Pierce)によって測定した。20ugのタンパク質をウェスタンブロットに用いた。異なる細胞株からのタンパク質抽出物を、抗BAX抗体(Abcam)でプローブした。
【0152】
図16Aは、CRISPRを用いて操作された抗PSMA発現クローンにおけるBAXノックアウトを示す。図16B、CRISPRを用いて操作された抗PSMA発現クローンにおけるBAKノックアウト。示された上位15クローンのうち、5クローンはBAX/BAK二重ノックアウトであった。L082は、野生型または全長BAX、21KDタンパク質および野生型BAK、24KDタンパク質を発現する陽性対照細胞株である。BB15細胞を発現する抗HER2を二重ノックアウト対照として用いた。
【0153】
アポトーシスの分析を、Annexin-V結合アポトーシスアッセイによって、本発明の抗PSMA発現クローンにおいてさらに行った。図17に示すように、BAX/BAK二重ノックアウトクローン、例えばPSMA-192およびPSMA-719は、単一ノックアウトクローン、例えばPSMA-882および非ノックアウトクローン、例えばPSMA-484で観察された約35~37%と比較して、約85%の細胞生存率を示した。
【0154】
(実施例14:組み換えタンパク質の産生は、BAX/BAK欠失抗PSMA発現クローンにおいて増加する)
ウェスタンブロッティングおよびAnnexin V分析による抗PSMA発現BAXおよびBAKクローンの分析に基づいて、さらなる最適化のために多数の安定なクローンを選択した。3つの(3)安定なクローン192、719(両方ともBAX/BAKノックアウトを有する)および882(BAKノックアウト)をプロセス最適化のために選択して、それぞれについて観察される高い生産性、強い増殖および2ヶ月の安定性に基づいて力価を改善した。
【0155】
抗体の産生は、図18に示すような流加プロセスにおいて評価した。流加培養条件下、BAX/BAK二重ノックアウト細胞株(PSMA-BBKO-192)は、産物の10日目の力価において3倍の増加(1400mg/L対500mg/L)(図18C)を示した。同時に、生存率も90%を超えて有意に改善された(図18B)。操作されていない細胞株PSMA-S-164を対照として用いた。
【0156】
(実施例15:BAX/BAK欠失抗PSMA発現細胞株の産物の品質)
表5に開示されるような抗PSMA発現対照細胞株(PSMA-S-164)、およびBAX/BAK二重ノックアウト抗PSMA発現細胞株(PSMA-BBKO-192)から流加産生によって産生された試料を用いて、インタクト質量分析およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって産物の品質を分析した。操作されたクローンおよび親細胞株の一次アミノ酸配列はmAbの同定を確認するcDNA配列から推定されたものと同じであることが、MSによって観察された(データは示さず)。
【0157】
【表5】
【0158】
表5に示すように、MSによって評価された糖型特性は、操作されていない細胞株(PSMA-S-164)とBAX/BAK二重ノックアウト細胞株(PSMA-BBKO-192)との間で同等であり、クローン選択段階でのmAbの正規分布範囲内であった。SECは高分子量(HMW)凝集体の割合を測定し、nrCE-SDSは低分子量(LMW)分解種の割合を測定した。HMW凝集体およびLMW分解種の両方は5%未満であり、抗PSMA発現の操作されていない細胞株と操作された細胞株との間で同等であった。これらの品質特性は、CRISPR-Cas9操作およびその後の単細胞クローニングが抗PSMA発現細胞株の産物の品質に悪影響を及ぼさなかったことを示す。
【0159】
(実施例16:BAX/BAK欠失抗CD70発現細胞株の作製)
CRISRP-Cas9編集技術を用いたBAXおよびBAKの同時切除を、3つのBAX標的gRNA構築物および2つのBAK標的gRNA構築物の抗CD70発現ミニプール細胞集団(CD70-MW-108)へのトランスフェクションによって行った。この実験で用いたBAXおよびBAK構築物は、上記の実施例に記載され、図5~7および表1~3に示すように設計し、調製した。抗CD70に関連するノックアウト実験において用いたCRISPRプラスミドはまた、市販のベクター、Geneart CRISPRヌクレアーゼベクター(pGCNV)(Thermo Fisher Scientific)を用いて、図7に示すように設計した。pGCNVに挿入されたオリゴ二重鎖は、配列番号83~配列番号92の5つの(5)ペアの合成オリゴを含んでいた。
【0160】
BAX部位を標的とする3つの異なるgRNA配列をコードする3つのプラスミドおよびBAK部位を標的とする2つの異なるgRNA配列をコードする2つのプラスミドを、pAF-RSおよびpAF-tRNA+抗PSMA遺伝子またはその断片を有するように操作されたCHO細胞由来の安定な細胞株にコトランスフェクションした。トランスフェクションの72時間後、ゲノムDNAを単離し、そしてBAK遺伝子座の一部を、実施例5に記載されるように、配列番号45および46のオリゴを用いてPCR増幅した。代わりに配列番号43および44のオリゴを用いてBAX遺伝子座をPCR増幅した。図19に示すように、CRISPR編集技術に基づいて、抗CD70発現細胞集団におけるノックアウト効率を決定するために、Surveyorアッセイを行った。CRISPR KOの前後の元のバンドの比率を、Image Jソフトウェアによる走査画像の濃度分析によって定量し、ノックアウト効率を測定するために用いた。BAXおよびBAKについてのノックアウト効率はそれぞれ51%および23%であり、約10%の計算された二重ノックアウト効率をもたらした。このアッセイでは、非特異的バンドが観察された。このバンドは、細胞集団のミニプールの性質によるものであり得ると考えられる。
【0161】
7日後、細胞のトランスフェクションされたプールを、FACSを用いて、1細胞/ウェルの播種密度で40プレートにサブクローニングした。約1000個の画像確認された単細胞由来クローンを選択し、そして生産性、増殖および標的DNA配列決定による遺伝子型決定について、96ウェル、24ウェルおよび24ディープウェルによりスクリーニングした。BAXおよびBAK欠失抗CD70発現クローンのDNA分析を、実施例8に記載のように行った(データは示さず)。作製された抗CD70発現クローンの数から、BAX/BAK二重ノックアウトクローンを、2ヶ月の安定性研究による増殖および生産性のさらなる評価のため、ならびにウェスタンブロッティングによるノックアウト状態の確認のために選択した。
【0162】
図20に示すように、抗CD70発現クローンにおけるBAXおよびBAKノックアウトのタンパク質分析を、ウェスタンブロットを用いることによって評価した。600万個のBAX/BAK二重ノックアウト細胞株からの溶解物を、100ulのRIPA緩衝液(Abcam)+プロテアーゼインヒビター(Sigmaタブレット;Sigma)に再懸濁することによって調製した。溶解物を氷上で1時間インキュベートした後、12,000rpmで20分間遠心分離した。タンパク質濃度は、BCAキット(Pierce)によって測定した。20ugのタンパク質をウェスタンブロットに用いた。異なる細胞株からのタンパク質抽出物を、抗BAX抗体(Abcam)でプローブした。図20Aは、CRISPRを用いて操作された抗CD70発現クローンにおけるBAXノックアウトを示す。図20Bに示すように、CRISPRを用いて操作された抗CD70発現クローンにおけるBAKノックアウトが、多数のクローンにおいて観察された。示された上位13クローンのうち、8クローンはBAX/BAK二重ノックアウトであった。クローン108親細胞株は残留BAKタンパク質発現を保持していたことに注目されたい。L082は、野生型または全長BAX、21-KDタンパク質およびBAK野生型タンパク質、24KDのバンドを発現する陽性対照細胞株である。
【0163】
アポトーシスの分析を、Annexin-V結合アポトーシスアッセイによって、本発明の抗CD70発現クローンにおいてさらに行った。図21に示すように、BAX/BAK二重ノックアウトクローン、例えばCD70-BBKO-563は、親細胞株CD70-MW-108において観察された約18%と比較して、約60%の細胞生存率を示した。同時に、アポトーシス細胞は各細胞株についてQ2およびQ4から観察されるように、80%から40%に減少した。
【0164】
(実施例17:組み換えタンパク質の産生は、BAX/BAK欠失抗CD70発現クローンにおいて増加する)
ウェスタンブロッティングおよびAnnexin V分析による抗CD70発現BAXおよびBAKクローンの分析に基づいて、さらなる最適化のために多数の安定なクローンを選択した。図21に示すように、BAX/BAKノックアウトの両方を有する安定なクローンの9つ(9)を、プロセスの最適化のために選択して、それぞれについて観察される高い生産性、強力な増殖および2ヶ月間の安定性に基づいて力価を改善した。
【0165】
抗体の産生は、図22に示すような流加プロセスにおいて評価した。流加培養条件下、抗CD70発現BAX/BAK二重ノックアウト細胞株(CD70-BBKO-563)は、産物の14日目において、振盪フラスコおよびベンチトップバイオリアクターの両方の条件において1000mg/Lの力価(図22C)を示した。振盪フラスコおよびベンチトップバイオリアクター条件の両方の条件下での細胞生存率(図22B)は、約90%であった。全体として、振盪フラスコおよびバイオリアクター条件下での産生特性、VCD、生存率および力価は同等であり、プロセスが拡張可能であることを支持した。さらなる研究を、分析された同等の生産性および増殖特性に基づいて、バイオリアクター条件およびプロセス下で行った(データは示さず)。この研究は、アポトーシスを制御または調節する遺伝子をノックアウトするためのCRISPR技術を用いることによって、バイオリアクターの条件下で細胞増殖に影響を及ぼすアポトーシスストレッサーを制御する本発明の実施形態を支持する。
【0166】
(実施例18:BAX/BAK欠失抗CD70発現細胞株の産物の品質)
表6に開示されるようなバイオリアクターおよび振盪フラスコ条件下で、抗CD70発現BAX/BAK二重ノックアウト細胞株をからの流加産生によって産生された試料を用いて、インタクト質量分析(MS)およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、産物の品質を分析した。
【0167】
【表6】
【0168】
表5に示すように、MSによって評価された糖型特性は振盪フラスコ条件とバイオリアクター条件との間で同等であり、クローン選択段階でmAbの正規分布範囲内であった。SECは、高分子量(HMW)凝集体の割合および低分子量(LMW)分解種の割合を測定した。HMW凝集体およびLMW分解種の両方は、クローン選択段階で正常範囲内であった。5%よりわずかに高いHMWは、精製後に2~3%に減少することが観察された(データは示さず)。これらの品質特性は、CRISPRおよびその後の単細胞クローニングが抗CD70発現細胞株の産物品質に悪影響を与えなかったことを示す。また、バイオリアクター条件における産物品質属性(凝集体、完全性および糖型)は振盪フラスコ条件における対応物と一致し、このプロセスが拡張可能であることを証明したことにも注目されたい。
【0169】
本明細書中に記載される方法および組成物は、本明細書中に記載される特定の方法論、プロトコル、細胞株、構築物、および試薬に限定されず、変更を施し得ることが理解されるべきである。また、本明細書で用いられている専門用語は特定の実施形態を記載する目的のためのみに用いられているのであって、本明細書に記載の方法および組成物の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。なお、本明細書に記載の方法および組成物の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0170】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられるように、単数形「a」、「an」、および「the」は文脈が明らかに異なったことを示さない限り、複数の対象を含む。
【0171】
別段の定義がない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語および科学用語は、本明細書で開示され、説明される発明が属する当業者に通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法、装置、および材料を、本明細書に記載される本発明の実施または試験において用いることができるが、好ましい方法、装置、および材料はここに記載されているものである。
【0172】
本明細書で言及される全ての刊行物および特許は、例えば現在記載されている発明に関連して用いられ得る、刊行物に記載されている構築物および方法を記載および開示する目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ここで述べる刊行物は、単に、本出願の出願日以前における開示を提供するためのものである。本明細書に記載された発明者は、先行発明によって、または任意の他の理由によって、そのような開示に先行する権利を有さないという承認として、本明細書のいかなるものも解釈されるべきではない。
【0173】
上記の発明は明確さおよび理解の目的のために、ある程度詳細に記載されているが、本開示を読むことから、本発明の真の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更をなすことができることが、当業者には明らかである。例えば、本明細書で説明されるすべての技術および装置は、様々な組合せで用いることができる。本明細書に記述された実施例および実施形態は説明のみを目的とするものであり、これらに関する様々な改変または変更は、当業者に対して示唆され、本出願の精神および範囲、ならびに添付された特許請求の範囲の内に含まれるべきであると理解される。
【0174】
〔参照による援用〕
本出願において引用される全ての刊行物、特許、特許出願、および/または他の文献はあたかも同じ個々の刊行物、特許、特許出願、および/または他の文献が全ての目的のために参照により組み込まれるように個々に示されたかのように、全ての目的のためにその全体が参照により組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0175】
図1】パネルAおよびB。非天然アミノ酸含有タンパク質を産生するために、産業および製薬会社においてプラットフォーム細胞株を利用する方策。図1は、産業(図1A)および製薬会社(図1B)におけるプラットフォーム細胞株を使用することの重要な役割を示す。
図2】高産生細胞株の開発においてプラットフォーム細胞株を利用する一般的な手順。
図3】パネルA、B、C。高産生細胞株の開発を最適化するための方策。図3は、FACS依存性単細胞沈着(図3A)、CRISPRノックアウト(図3B)、および細胞株開発プロセス最適化(図3C)等のいくつかの態様からの高産生細胞株開発の最適化を示す。
図4】パネルAおよびB。プラットフォーム細胞株4E2由来の細胞におけるアポトーシスの観察。Annexin Vアッセイによって、パラ-アセチル-L-フェニルアラニンを特異的に組み込んでいる、直交対tRNA/アミノアシル-tRNAシンセターゼを遺伝的に組み込まれる形で含む、CHO-S細胞(図4A)およびプラットフォーム細胞株4E2(図4B)の生存率を評価した。図4に示すように、CHO-S細胞(生存率は96%)と比較して、4E2は過剰なアポトーシスを示した(生存率は85%)。
図5】CHO細胞における標的BAX遺伝子のCRISPR gRNA設計。図5は、3つのgRNA配列に注釈を付けたCHO細胞におけるBAX遺伝子のゲノムDNA配列を示す。BAX遺伝子、エキソン1およびエキソン2のゲノムDNA配列を灰色の陰影で示す。BAXの他のシーケンスは通常の文字で示されている。PCRおよび配列決定において使用されるプライマーは、フォワードプライマーおよびリバースプライマーとして、それぞれ配列の先頭および末尾に示される。
図6】CHO細胞における標的BAK遺伝子のCRISPR gRNA設計。図6は、2つのgRNA配列に注釈を付けたCHO細胞におけるBAK遺伝子のゲノムDNA配列を示す。BAK遺伝子、エキソン2およびエキソン3のゲノムDNA配列を灰色の陰影で示す。BAKの他のシーケンスは通常の文字で示されている。PCRおよび配列決定において使用されるプライマーは、フォワードプライマーおよびリバースプライマーとして、それぞれ配列の先頭および末尾に示される。
図7】BAXまたはBAK CRISPR構築物。図7は、BAXまたはBAKノックアウト実験において使用されるCRISPRプラスミドの設計を示す。Geneart CRISPRヌクレアーゼベクター(pGCNV)は、Thermo Fisher scientific(San Diego、CA)製の市販のベクターである。pGCNVプラスミドの完成形は、遺伝子部位を個別に標的化するために特定の19ヌクレオチド長のgRNA配列を用いて設計されたオリゴ二重鎖のためのスロットを含む、切断により開いたpGCNVベクターに、オリゴ二重鎖を挿入することによって調製される(本明細書中の表1を参照のこと)。
図8】本発明の代表的な非天然アミノ酸の構造を示す。
図9】CRISPRを用いてBAXまたはBAKをノックアウトした抗HER2発現細胞集団のSurveyorアッセイ。図9は、CRISPRを用いたBAXまたはBAKノックアウト中のノックアウト効率のSurveyorアッセイ分析を示す。上部バンドの縮小および底部の新しいバンドの出現は、Image Jソフトウェアによる走査画像の濃度測定分析によって定量化できる当該効率を示す。CRISPRノックアウト(KO)の前後の元のバンドの比率を使用して、ノックアウト効率を測定した。BAXおよびBAKについてのノックアウト効率はそれぞれ30%および70%であり、計算の結果、約21%の二重ノックアウト効率をもたらした。
図10】CRISPRを用いてノックアウトされたBAXおよびBAK遺伝子を有する抗HER2発現単細胞クローンのDNA分析。図10は、CRISPRを用いたBAKノックアウト後の20個の単細胞クローンのDNA配列決定結果を示す。頂部DNA配列(Bak-CHO-gDNA1)は、元のBAK遺伝子のゲノム領域のDNA配列である。「ZA_112_K32_BakI-II」クローンのみが、元のBAK遺伝子と同一の配列を有する。図に示される他の遺伝子は、前記配列に欠失または挿入のいずれかを有する。
図11】CRISPRを用いた抗HER2発現BAXノックアウトクローニングにおけるBAXノックアウト確認のウェスタンブロット分析。BAXは、遺伝子ノックアウトを有さず、野生型BAXタンパク質を発現するL082細胞においてバンドとして示される21-KDタンパク質である。他のクローニングは、残留BAX発現を示すクローニングUBB3を除いて、BAXタンパク質の検出可能な発現を示さなかった。
図12】パネルAおよびB。BAX/BAKノックアウト細胞株を発現する抗HER2のアポトーシス分析。図12は、親細胞株L082(図12A)およびBAX/BAK二重ノックアウト細胞株BB15(図12B)のAnnexin Vアポトーシス分析を示す。表に示すように、細胞生存率は、BAXおよびBAKノックアウト後に40%から80%に改善される。同時に、アポトーシス細胞は53%から17%に減少する。
図13】パネルA~D。一括培養におけるBAX/BAKノックアウト細胞株における抗HER2抗体産生の促進。図13は、BAX/BAK二重ノックアウト細胞株におけるタンパク質産生の変化を示す。タンパク質産生を一括産生の間に分析する。生細胞密度(VCD、図13A)。細胞生存率(図13B)。一括生産の間(7日目)、BAX/BAK二重ノックアウト細胞株は、150mg/Lから270mg/Lへの力価増加を示した(図13C)。比生産性(Qp)(図13D)。
図14】パネルA~D。流加培養におけるBAX/BAKノックアウト細胞株における抗HER2抗体産生の促進。図14は、BAX/BAK二重ノックアウト細胞株におけるタンパク質産生の変化を示す。タンパク質産生は、流加生産の間に分析される。生細胞密度(VCD、図14A)。細胞生存率(図14B)。流加生産(day14)の間、BAX/BAK二重ノックアウト細胞株は、450mg/Lから1500mg/Lへの力価増加を示す(図14C)。比生産性(Qp)(図14D)。
図15】CRISPRを用いてBAXまたはBAKをノックアウトした抗PSMA発現細胞集団のSurveyorアッセイを示す。図15は、CRISPRを用いたBAXまたはBAKノックアウト中のノックアウト効率のSurveyorアッセイ分析を示す。CRISPRノックアウト(KO)の前後の元のバンドの比率を、Image Jソフトウェアによる走査画像の濃度分析によって定量し、ノックアウト効率を測定するために使用した。BAXおよびBAKについてのノックアウト効率はそれぞれ42%および53%であり、計算の結果、約20%の二重ノックアウト効率をもたらした。
図16】パネルAおよびB。抗PSMA発現クローンにおけるBAXおよびBAKノックアウト確認のウェスタンブロット分析。CRISPRを用いた抗PSMA発現クローンにおけるBAXノックアウト確認(図16A)。抗PSMA発現クローンにおけるBAKノックアウト確認(図16B)。コントロールは、野生型BAXタンパク質を発現するL082細胞、21-KDでのバンド、およびBB15細胞を発現する抗HER2-BAX/BAK二重ノックアウトである。
図17】BAX/BAKノックアウト抗PSMA発現細胞株のアポトーシス分析。図17は、単一KOクローニング(PSMA-882)または非ノックアウトクローニング(PSMA-484)における約35~37%と比較して約85%の細胞生存率を有するBAX/BAK二重ノックアウト細胞株PSMA-192およびPSMA 719のAnnexin Vアポトーシス分析を示す。
図18】パネルA~C。流加培養におけるBAX/BAKノックアウト細胞株における抗PSMA抗体産生の促進。図18はBAX/BAK二重ノックアウト細胞株(例えば、細胞株PSMA-BBKO-192)におけるタンパク質産生量の変化を示す。タンパク質産生は、流加生産の間に分析される。生細胞密度(VCD、図18A)。細胞生存率(図18B)。流加生産(14日目)の間、BAX/BAK二重ノックアウト細胞株は、500mg/Lから1400mg/Lへの力価増加を示した(図18C)。
図19】CRISPRを用いてBAXまたはBAKをノックアウトした抗CD70発現細胞集団のSurveyorアッセイ。図19は、CRISPRを用いたBAXまたはBAKノックアウト中のノックアウト効率のSurveyorアッセイ分析を示す。CRISPRノックアウト(KO)の前後の元のバンドの比率を、Image Jソフトウェアによる走査画像の濃度分析によって定量し、ノックアウト効率を測定するために用いた。BAXおよびBAKについてのノックアウト効率はそれぞれ51%および23%であり、計算の結果、約10%の二重ノックアウト効率をもたらした。
図20】パネルAおよびB。抗CD70発現クローンにおけるBAXおよびBAKノックアウト確認のウェスタンブロット分析。抗CD70発現クローンにおけるBAXノックアウト確認(図20A)。抗CD70発現クローンにおけるBAKノックアウト確認(図20B)。コントロールは野生型BAXタンパク質を発現するL082細胞、21-KDのバンド、およびBAK野生型タンパク質、24 KDのバンド。
図21】BAX/BAKノックアウト抗CD70発現細胞株のアポトーシス分析。図21はBAX/BAK二重ノックアウト細胞株(例えばCD70-BBKO-563)のAnnexin Vアポトーシス分析において、細胞生存率が親細胞株のCD70-MW-108と比較して18%から60%に増加したことを示す。アッセイアポトーシス細胞は80%から40%に減少した。
図22】パネルA~C。流加培養におけるBAX/BAKノックアウト細胞株の抗CD70抗体産生の促進。図22は、振盪フラスコおよびベンチトップバイオリアクター中のBAX/BAK二重ノックアウト抗CD70発現細胞株の産生状態を示す。生細胞密度(VCD、図22A)。細胞生存率(図22B)。BAX/BAK二重ノックアウト細胞株(例えばCD70-BBKO-563)は1000mg/Lの高い力価を示す。(図22C
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【配列表】
2023075254000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非天然アミノ酸をタンパク質に組み込むためのアポトーシスが低減された細胞株を作製する方法であって、前記方法は、細胞内の1つ以上の標的部位または領域を不活性化する工程を含み、前記1つ以上の標的部位または領域はアポトーシス経路に関与するアポトーシス促進遺伝子であり、前記アポトーシス促進遺伝子は、BaxおよびBakから選択され、前記細胞はセレクターコドンを含有する目的の遺伝子を発現し、前記細胞は、直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)および直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含む、方法。
【請求項2】
前記細胞内の前記1つ以上の標的部位または領域を不活性化することができる核酸分子を提供する工程と、前記核酸分子を前記細胞内に導入する工程とをさらに含み、前記核酸分子は前記1つ以上の標的部位または領域を不活性化し、任意に前記核酸分子は、配列番号1~6から選択される、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記細胞または細胞株が、真核細胞株である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
記細胞株が、COS、CHO、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28-G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0-Ag14、HeLa、またはHEK293から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞株が一過性の細胞株、安定な細胞株集団、または安定なクローン細胞株である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記非天然アミノ酸が、パラ-アセチルフェニルアラニン、p-ニトロフェニルアラニン、p-スルホチロシン、p-カルボキシフェニルアラニン、O-ニトロフェニルアラニン、m-ニトロフェニルアラニン、p-ボロニルフェニルアラニン、o-ボロニルフェニルアラニン、m-ボロニルフェニルアラニン、p-アミノフェニルアラニン、o-アミノフェニルアラニン、m-アミノフェニルアラニン、p-アシルフェニルアラニン、o-アシルフェニルアラニン、m-アシルフェニルアラニン、p-OMeフェニルアラニン、o-OMeフェニルアラニン、m-OMeフェニルアラニン、p-スルホフェニルアラニン、o-スルホフェニルアラニン、m-スルホフェニルアラニン、5-ニトロHis、3-ニトロTyr、2-ニトロTyr、ニトロ置換されたLeu、ニトロ置換されたHis、ニトロ置換されたDe、ニトロ置換されたTrp、2-ニトロTrp、4-ニトロTrp、5-ニトロTrp、6-ニトロTrp、7-ニトロTrp、3-アミノチロシン、2-アミノチロシン、O-スルホチロシン、2-スルホオキシフェニルアラニン、3-スルホオキシフェニルアラニン、O-カルボキシフェニルアラニン、m-カルボキシフェニルアラニン、p-アセチル-L-フェニルアラニン、p-プロパルギル-フェニルアラニン、O-メチル-L-チロシン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチル-フェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAcβ-セリン、L-Dopa、フッ化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アジド-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、およびp-プロパルギルオキシ-L-フェニルアラニンから選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記非天然アミノ酸が部位特異的に前記タンパク質に組み込まれている、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記目的の遺伝子が、生物学的治療遺伝子であり、任意に前記生物学的治療遺伝子が、ワクチンである請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記目的の遺伝子が、抗体、scFv、scFv融合タンパク質、Fc融合タンパク質、第VII因子、第VIII因子、または第IV因子をコードし、任意に前記目的の遺伝子が抗体をコードする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記目的の遺伝子が、
a)サイトカイン、インターロイキン、インターフェロン、ケモカイン、成長因子、ホルモン、およびこれらのレセプター、類似体、二重特異性またはこれらの断片をコードする;または、
b)HER2、CD-70、PSMA、5T4、EGFR、TROP2、CD3、IL-2、IL-3、IL-10、IL-15、GPC3、DLL3、ROR1、レプチン、FGF-21、FGF-23、HGH、FcR、インスリン、TNFR1、TRAIL、EPO、およびこれらの類似体、二重特異性またはこれらの断片をコードする、
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
a)前記1つ以上の標的部位または領域が、完全にまたは部分的に不活性化されている;および/または
b)前記1つ以上の標的部位または領域が、同じであるかまたは異なる、
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記セレクターコドンが、
a)ナンセンスコドン、希少コドン、または4塩基コドンである;または
b)オーカーコドン、オパールコドン、またはアンバーコドンである、
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞株における非天然アミノ酸含有タンパク質の収率を最適化するための方法であって;任意に、前記非天然アミノ酸含有タンパク質の収率は、前記1つ以上の標的部位または領域を不活性化しない場合の少なくとも0.5倍以上大きい、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
胞におけるアポトーシスを減少または低減させる方法であって、前記細胞はセレクターコドンを含有する目的の遺伝子を発現し、前記細胞は直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)および直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含み、前記方法は、前記細胞における1つ以上の標的部位または領域を、不活性化する工程を含み、前記1つ以上の標的部位または領域は、アポトーシス経路に関与するアポトーシス促進遺伝子であり、前記アポトーシス促進遺伝子はBaxおよびBakから選択される、方法。
【請求項15】
直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)および直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含み、セレクターコドンを含有する目的の遺伝子を発現する細胞または細胞株を提供する工程、
前記細胞または細胞株におけるアポトーシス経路に関与する1つ以上の標的部位または領域を不活性化することができる核酸分子を、前記細胞株へ導入する工程であって、前記1つ以上の標的部位または領域はアポトーシス経路に関与するアポトーシス促進遺伝子であり、前記アポトーシス促進遺伝子はBaxおよびBakから選択され、任意に、核酸分子は配列番号1~6から選択される工程、
および、さらに任意に、非天然アミノ酸を前記細胞または細胞株に提供する工程を含む、非天然アミノ酸をタンパク質に組み込むためのアポトーシスが低減された細胞または細胞株を作製する方法。
【請求項16】
BaxおよびBakの両方を不活性化する工程を含み、前記目的の遺伝子が抗体をコードする、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞における前記アポトーシス促進標的部位または領域が、遺伝子編集ツールを使用して不活性化され、任意で前記遺伝子編集ツールが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFNs)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALENs)、メガヌクレアーゼ(MNs)、およびクラスター化された規則的に間隔を置いた短絡パリンドローム反復(CRISPR)から選択される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
さらに、前記細胞または細胞株を、バッチまたは流加生産を使用して培養する工程をさらに含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞株が、CHO-S、CHO-K1、CHO-DG44、CHO-DUXB11、CHO-DUKX、CHOK1SVから選択される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
非天然アミノ酸をタンパク質に組み込むための、アポトーシスが低減された細胞または細胞株であって、前記細胞はセレクターコドンを含有する目的の遺伝子を発現し、前記細胞は、直交アミノアシルtRNAシンセターゼ(O-RS)および直交サプレッサーtRNA(O-tRNA)を含み、前記細胞は1つ以上の不活性化された部位または領域を含み、前記1つ以上の不活性化された部位または領域は、アポトーシス経路に関与するアポトーシス促進遺伝子であり、前記アポトーシス促進遺伝子はBaxおよびBakから選択される、細胞または細胞株。
【請求項21】
前記細胞内の前記1つ以上の標的部位または領域を不活性化することができる核酸分子を含み、任意に前記核酸分子は、配列番号1~6から選択される、請求項20に記載の細胞または細胞株。
【請求項22】
a)前記細胞または細胞株が:
(i)真核細胞株である;および/または
(ii)一過性の細胞株、安定な細胞株集団、または安定なクローン細胞株から選択される;
または、
b)前記細胞または細胞株がCOS、CHO、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28-G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0-Ag14、HeLa、またはHEK293から選択される;および/または
c)前記セレクターコドンが、
i)ナンセンスコドン、希少コドン、4塩基コドン;または
ii)オーカーコドン、オパールコドン、またはアンバーコドンである、
請求項20または21に記載の細胞または細胞株。
【請求項23】
前記目的の遺伝子が、生物学的治療遺伝子であり、任意に前記生物学的治療遺伝子が、ワクチンである請求項20~22のいずれか1項に記載の細胞または細胞株。
【請求項24】
前記目的の遺伝子が、
a)抗体、scFv、scFv融合タンパク質、Fc融合タンパク質、第VII因子、第VIII因子、または第IV因子をコードする;
b)サイトカイン、インターロイキン、インターフェロン、ケモカイン、成長因子、ホルモン、またはこれらのレセプター、類似体、二重特異性またはこれらの断片をコードする;または、
c)HER2、CD-70、PSMA、5T4、EGFR、TROP2、CD3、IL-2、IL-3、IL-10、IL-15、GPC3、DLL3、ROR1、レプチン、FGF-21、FGF-23、HGH、FcR、インスリン、TNFR1、TRAIL、EPO、またはこれらの類似体、二重特異性またはこれらの断片をコードする、
請求項20~23のいずれか1項に記載の細胞または細胞核。
【請求項25】
前記BaxおよびBakの両方が不活性化されており、前記目的の遺伝子が抗体をコードする、請求項20~24のいずれか1項に記載の細胞または細胞株。
【請求項26】
請求項1~19のいずれか1項に記載の方法により製造された、単離された細胞または細胞株。
【請求項27】
非天然アミノ酸含有タンパク質を得るための、請求項26に記載の単離された細胞または細胞株。
【請求項28】
前記細胞における前記アポトーシス促進標的部位または領域が、遺伝子編集ツールを使用して不活性化され、任意で前記遺伝子編集ツールが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFNs)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALENs)、メガヌクレアーゼ(MNs)、およびクラスター化された規則的に間隔を置いた短絡パリンドローム反復(CRISPR)から選択される、請求項20~27のいずれか1項に記載の細胞または細胞株。
【請求項29】
バッチまたは流加生産を使用して培養された、請求項20~28のいずれか1項に記載の細胞または細胞株。
【請求項30】
前記細胞株が、CHO-S、CHO-K1、CHO-DG44、CHO-DUXB11、CHO-DUKX、CHOK1SVから選択される、請求項20~29のいずれか1項に記載の細胞または細胞株。