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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075257
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】高レバウジオシドM含有ステビア植物
(51)【国際特許分類】
   A01H 6/14 20180101AFI20230523BHJP
   A01H 4/00 20060101ALI20230523BHJP
   A01H 5/06 20180101ALI20230523BHJP
   A01H 5/12 20180101ALI20230523BHJP
   A01H 5/02 20180101ALI20230523BHJP
   C12P 19/44 20060101ALI20230523BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230523BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20230523BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230523BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20230523BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20230523BHJP
   A61K 36/28 20060101ALN20230523BHJP
【FI】
A01H6/14 ZNA
A01H4/00
A01H5/06
A01H5/12
A01H5/02
C12P19/44
A23L33/105
C12Q1/6876 Z
C12Q1/686 Z
C12N15/11 Z
A61K47/46
A61K36/28
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038830
(22)【出願日】2023-03-13
(62)【分割の表示】P 2019548252の分割
【原出願日】2018-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2017198515
(32)【優先日】2017-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100135943
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 規樹
(72)【発明者】
【氏名】岩城 一考
(72)【発明者】
【氏名】宮川 克郎
(72)【発明者】
【氏名】平井 正良
(72)【発明者】
【氏名】興津 奈央子
(72)【発明者】
【氏名】竹山 沙織
(57)【要約】      (修正有)
【課題】レバウジオシドMの含有量が高いステビア植物を提供する。
【解決手段】本発明は、野生型ステビア種と比べレバウジオシドMをより高い含量で含む高レバウジオシドM含有型非遺伝子組み換えステビア植物体を提供する。本発明はまた、そのような高レバウジオシドM含有型非遺伝子組み換えステビア植物体を作出する方法、そのような植物体から得られる乾燥葉も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
葉に含まれる総ステビオール配糖体量に対し2%以上のレバウジオシドMを含むことを特徴とする高レバウジオシドM含有非遺伝子組み換えステビア植物体。
【請求項2】
葉に含まれる総ステビオール配糖体量に対し9.5%以上のレバウジオシドDをさらに含む、請求項1に記載の植物体。
【請求項3】
以下の(1)~(5)の少なくとも1つの遺伝的特徴を有する、請求項1又は2に記載の植物体。
(1)配列番号35の44位に相当する位置の塩基がTであるアレルについてホモ接合性である。
(2)配列番号37の40位に相当する位置の塩基がTであるアレルについてホモ接合性である。
(3)配列番号39の41位に相当する位置の塩基がCであるアレルについてホモ接合性である。
(4)配列番号42の55~72位に相当する部分が欠失しているアレルについてホモ接合性である。
(5)配列番号43の50位に相当する位置の塩基がAであるアレルについてホモ接合性である。
【請求項4】
P01~P05からなる群より選択される少なくとも一つの多型マーカーについて陽性である、請求項1~3のいずれか一項に記載の植物体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の植物体の種子、組織、組織培養物又は植物培養細胞。
【請求項6】
胚、分裂組織細胞、花粉、葉、根、根端、花弁、プロトプラスト、葉の切片及びカルスである請求項5記載の組織、組織培養物又は植物培養細胞。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載のステビア植物体と第2のステビア植物体とを交雑させる工程を含む、葉に含まれる総ステビオール配糖体量に対し2%以上のレバウジオシドMを含むことを特徴とする高レバウジオシドM含有ステビア植物体を作出する方法。
【請求項8】
第2の植物体が請求項1~4のいずれか一項に記載のステビア植物体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載の植物体、請求項5に記載の種子、組織、組織培養物又は細胞の抽出物。
【請求項10】
請求項9に記載の抽出物を含む飲食品、甘味組成物、香料又は医薬品。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか一項に記載の植物体、請求項5に記載の種子、組織、組織培養物又は細胞から抽出物を得る工程を含む、レバウジオシドM含有抽出物の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のレバウジオシドM含有抽出物からレバウジオシドMを精製する工程を含む、レバウジオシドMの製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法により得られる抽出物及び/又は請求項12に記載の方法により得られるレバウジオシドMと他の成分とを混合する工程を含む、飲食品、甘味組成物、香料又は医薬品の製造方法。
【請求項14】
被験植物のゲノムから以下の(1)~(5)の少なくとも1つの遺伝的特徴の存在及び/又は不在を検出する工程を含む、高レバウジオシドM含有型ステビア植物体をスクリーニングする方法。
(1)配列番号35の44位に相当する位置の塩基がTであるアレルについてホモ接合性である。
(2)配列番号37の40位に相当する位置の塩基がTであるアレルについてホモ接合性である。
(3)配列番号39の41位に相当する位置の塩基がCであるアレルについてホモ接合性である。
(4)配列番号42の55~72位に相当する部分が欠失しているアレルについてホモ接合性である。
(5)配列番号43の50位に相当する位置の塩基がAであるアレルについてホモ接合性である。
【請求項15】
被験植物のゲノムからP01~P05からなる群より選択される少なくとも一つの多型マーカーを検出する工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
さらに、葉組織のレバウジオシドMの含有量を測定する工程を含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
(1)配列番号1における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマー及び配列番号2における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、
(2)配列番号3における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマー及び配列番号4における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、
(3)配列番号5における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマー及び配列番号6における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、
(4)配列番号7における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマー及び配列番号8における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、あるいは
(5)配列番号9における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマー及び配列番号10における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、
からなる群より選択されるいずれか一つ以上のプライマーセットであり、前記任意の連続する15塩基以上の配列は各プライマーの3‘末端に位置する、前記プライマーセット。
【請求項18】
請求項17に記載のプライマーセットと、場合により制限酵素とを含むキットであり、
前記プライマーセットが配列番号1における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマーを含む場合は、制限酵素XbaIを含み、
前記プライマーセットが配列番号3における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマーを含む場合は、制限酵素KpnIを含み、
前記プライマーセットが配列番号5における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマーを含む場合は、制限酵素AflIIを含み、
前記プライマーセットが配列番号9における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマーを含む場合は、制限酵素PvuIを含む、
前記キット。
【請求項19】
検出可能な標識と結合していてもよい、配列番号55~64のいずれか一つに示す塩基配列を含むプローブ。
【請求項20】
蛍光標識、色素又は結合部分を有する請求項19に記載のプローブ。
【請求項21】
P01~P05からなる群より選択される少なくとも一つの多型マーカーを検出することを目的として被験植物のゲノムDNAに対し請求項17に記載のプライマーセットを用いてPCR増幅を行う工程、及び前記多型マーカーがP01~P03及びP05からなる群より選択される少なくとも一つである場合、前記PCR増幅により得られたPCR産物を制限酵素で処理し、制限酵素処理産物を検出する工程を含む、高レバウジオシドM含有非遺伝子組み換えステビア植物体のスクリーニング方法。
【請求項22】
前記制限酵素がXbaI、KpnI、AflII及びPvuIからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記多型マーカーがP02及びP05を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記制限酵素がKpnI及びPvuIを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
スクリーニングにより得られる植物体が葉に含まれる総ステビオール配糖体量に対し2%以上のレバウジオシドMを含む、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レバウジオシドMの含有量が高いステビア植物に関する。
【背景技術】
【0002】
多様化する消費者ニーズに対応すべく、様々な飲料が開発され、市販されている。ショ糖等の糖類は、甘味を与える等の目的で飲料にごく普通に配合される成分であるが、過剰摂取による健康への影響が指摘されてきており、より低カロリーであり、かつ天然由来の甘味料に対するニーズが高まりつつある。例えば特許文献1は、ビタミン、高甘味度甘味料、及び甘味改善組成物を含有する機能性甘味料組成物を開示している。
【0003】
レバウジオシド(Rebaudioside、以下「Reb」ともいう)は、ステビア抽出物に含まれる甘味成分として知られている。ステビア抽出物は、ステビアの葉から抽出、精製されたものである。ステビアは南米パラグアイを原産地とする菊科多年生植物で、学名をステビア・レバウディアナ・ベルトニー(Stevia Rebaudiana Bertoni)という。ステビアは砂糖の約300倍以上の甘味を持つ成分を含むので、この甘味成分を抽出して天然甘味料として用いる為に栽培されている。Rebとしては、RebA、RebB、RebC、RebD、RebE、RebM等、様々な配糖体の存在が報告されている(特表2012-504552)。様々なRebの中で、例えばRebAは、高甘味度と良質甘味を有する甘味料として評価されており、広く用いられている。その他のRebについても、その独自の甘さ及び付随する味を有することが判明しつつある。
【0004】
そのような状況において、レバウジオシドM及びDを乾燥葉あたりそれぞれ0.38重量%、3.28重量%含むステビア植物体が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009-517043号明細書
【特許文献2】特表2016-515814号明細書
【特許文献3】US2016/0057955A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レバウジオシドMはステビオール配糖体の中では味質が良いとされているが、天然のステビア植物体からは多くを得ることができず、その入手が問題とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、野生型ステビア種と比べて高含有量でレバウジオシドMを含む高レバウジオシドM含有型非遺伝子組み換えステビア植物体並びに当該植物体の作出方法及びスクリーニング方法を提供する。
【0008】
具体的には、本発明は以下を提供する。

[1-1]
葉に含まれる総ステビオール配糖体量に対し2%以上のレバウジオシドMを含むことを特徴とする高レバウジオシドM含有非遺伝子組み換えステビア植物体。
[1-2]
葉に含まれる総ステビオール配糖体量に対し9.5%以上のレバウジオシドDをさらに含む、[1-1]に記載の植物体。
[1-3]
以下の(1)~(5)の少なくとも1つの遺伝的特徴を有する、[1-1]又は[1-2]に記載の植物体。
(1)配列番号35の44位に相当する位置の塩基がTであるアレルについてホモ接合性である。
(2)配列番号37の40位に相当する位置の塩基がTであるアレルについてホモ接合性である。
(3)配列番号39の41位に相当する位置の塩基がCであるアレルについてホモ接合性である。
(4)配列番号42の55~72位に相当する部分が欠失しているアレルについてホモ接合性である。
(5)配列番号43の50位に相当する位置の塩基がAであるアレルについてホモ接合性である。
[1-4]
P01~P05からなる群より選択される少なくとも一つの多型マーカーについて陽性である、[1-1]~[1-3]のいずれか一項に記載の植物体。
【0009】
[1-5]
[1-1]~[1-4]のいずれか一項に記載の植物体の種子、組織、組織培養物又は植物培養細胞。
[1-6]
胚、分裂組織細胞、花粉、葉、根、根端、花弁、プロトプラスト、葉の切片及びカルスである[1-5]に記載の組織、組織培養物又は植物培養細胞。
[1-7]
[1-1]~[1-4]のいずれか一項に記載のステビア植物体と第2のステビア植物体とを交雑させる工程を含む、葉に含まれる総ステビオール配糖体量に対し2%以上のレバウジオシドMを含むことを特徴とする高レバウジオシドM含有ステビア植物体を作出する方法。
[1-8]
第2の植物体が[1-1]~[1-4]のいずれか一項に記載のステビア植物体である、[1-7]に記載の方法。
【0010】
[1-9]
[1-1]~[1-4]のいずれか一項に記載の植物体、[1-5]に記載の種子、組織、組織培養物又は細胞の抽出物。
[1-10]
[1-9]に記載の抽出物を含む飲食品、甘味組成物、香料又は医薬品。
[1-11]
[1-1]~[1-4]のいずれか一項に記載の植物体、[1-5]に記載の種子、組織、組織培養物又は細胞から抽出物を得る工程を含む、レバウジオシドM含有抽出物の製造方法。
[1-12]
[1-11]に記載のレバウジオシドM含有抽出物からレバウジオシドMを精製する工程を含む、レバウジオシドMの製造方法。
[1-13]
[1-11]に記載の方法により得られる抽出物及び/又は[1-12]に記載の方法により得られるレバウジオシドMと他の成分とを混合する工程を含む、飲食品、甘味組成物、香料又は医薬品の製造方法。
【0011】
[1-14]
被験植物のゲノムから以下の(1)~(5)の少なくとも1つの遺伝的特徴の存在及び/又は不在を検出する工程を含む、高レバウジオシドM含有型ステビア植物体をスクリーニングする方法。
(1)配列番号35の44位に相当する位置の塩基がTであるアレルについてホモ接合性である。
(2)配列番号37の40位に相当する位置の塩基がTであるアレルについてホモ接合性である。
(3)配列番号39の41位に相当する位置の塩基がCであるアレルについてホモ接合性である。
(4)配列番号42の55~72位に相当する部分が欠失しているアレルについてホモ接合性である。
(5)配列番号43の50位に相当する位置の塩基がAであるアレルについてホモ接合性である。
[1-15]
被験植物のゲノムからP01~P05からなる群より選択される少なくとも一つの多型マーカーを検出する工程を含む、[1-14]に記載の方法。
[1-16]
さらに、葉組織のレバウジオシドMの含有量を測定する工程を含む、[1-14]又は[1-15]に記載の方法。
【0012】
[1-17]
(1)配列番号1における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマー及び配列番号2における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、
(2)配列番号3における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマー及び配列番号4における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、
(3)配列番号5における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマー及び配列番号6における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、
(4)配列番号7における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマー及び配列番号8における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、あるいは
(5)配列番号9における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマー及び配列番号10における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、
からなる群より選択されるいずれか一つ以上のプライマーセットであり、前記任意の連続する15塩基以上の配列は各プライマーの3‘末端に位置する、前記プライマーセット。
[1-18]
[1-17]に記載のプライマーセットと、場合により制限酵素とを含むキットであり、
前記プライマーセットが配列番号1における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマーを含む場合は、制限酵素XbaIを含み、
前記プライマーセットが配列番号3における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマーを含む場合は、制限酵素KpnIを含み、
前記プライマーセットが配列番号5における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマーを含む場合は、制限酵素AflIIを含み、
前記プライマーセットが配列番号9における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマーを含む場合は、制限酵素PvuIを含む、
前記キット。
【0013】
[1-19]
検出可能な標識と結合していてもよい、配列番号55~64のいずれか一つに示す塩基配列を含むプローブ。
[1-20]
蛍光標識、色素又は結合部分を有する[1-19]に記載のプローブ。
[1-21]
P01~P05からなる群より選択される少なくとも一つの多型マーカーを検出することを目的として被験植物のゲノムDNAに対し[1-17]に記載のプライマーセットを用いてPCR増幅を行う工程、及び前記多型マーカーがP01~P03及びP05からなる群より選択される少なくとも一つである場合、前記PCR増幅により得られたPCR産物を制限酵素で処理し、制限酵素処理産物を検出する工程を含む、高レバウジオシドM含有非遺伝子組み換えステビア植物体のスクリーニング方法。
[1-22]
前記制限酵素がXbaI、KpnI、AflII及びPvuIからなる群より選択される少なくとも一つである、[1-21]に記載の方法。
[1-23]
前記多型マーカーがP02及びP05を含む、[1-21]に記載の方法。
[1-24]
前記制限酵素がKpnI及びPvuIを含む、[1-23]に記載の方法。
[1-25]
スクリーニングにより得られる植物体が葉に含まれる総ステビオール配糖体量に対し2%以上のレバウジオシドMを含む、[1-21]~[1-24]のいずれか一項に記載の方法。
【0014】
本発明はまた、以下を提供する。
[2-1]
乾燥葉に含まれる総ステビオール配糖体量に対し2%以上のレバウジオシドMを含むことを特徴とする高レバウジオシドM含有非遺伝子組み換えステビア植物体。
[2-2]
乾燥葉に含まれる総ステビオール配糖体量に対し9.5%以上のレバウジオシドDをさらに含む、前記[2-1]に記載の植物体。
[2-3]
P01、P02、P03、P04及びP05からなる群より選択される少なくとも一つの多型マーカーについて陽性である、前記[2-1]又は[2-2]に記載の植物体。
[2-4]
前記[2-1]~[2-3]のいずれか一つに記載の植物体の種子。
[2-5]
前記[2-1]~[2-3]のいずれか一つに記載の植物体の乾燥葉。
[2-6]
前記[2-1]~[2-3]のいずれか一つに記載の植物体の組織培養物又は植物培養細胞。
[2-7]
胚、分裂組織細胞、花粉、葉、根、根端、花弁、プロトプラスト、葉の切片及びカルスである前記[2-6]に記載の組織培養物又は植物培養細胞。
【0015】
[2-8]
前記[2-1]~[2-3]のいずれか一つに記載のステビア植物体と第2のステビア植物体とを交雑させる工程を含む、乾燥葉に含まれる総ステビオール配糖体量に対し2%以上のレバウジオシドMを含むことを特徴とする高レバウジオシドM含有ステビア植物体を作出する方法。
[2-9]
第2の植物体が前記[2-1]~[2-3]のいずれか一つに記載のステビア植物体である、前記[2-8]に記載の方法。
[2-10]
前記[2-1]~[2-3]のいずれか一つに記載の植物体、前記[2-4]に記載の種子又は前記[2-5]に記載の乾燥葉の抽出物。
[2-11]
前記[2-10]に記載の抽出物を含む飲食品、甘味組成物、香料又は医薬品。
【0016】
[2-12]
前記[2-1]~[2-3]のいずれか一つに記載の植物体、前記[2-4]に記載の種子又は前記[2-5]に記載の乾燥葉から抽出物を得る工程を含む、レバウジオシドM含有抽出物の製造方法。
[2-13]
前記[2-12]に記載のレバウジオシドM含有抽出物からレバウジオシドMを精製する工程を含む、レバウジオシドMの製造方法。
[2-14]
前記[2-12]に記載の方法により得られる抽出物及び/又は前記[2-13]に記載の方法により得られるレバウジオシドMと他の成分とを混合する工程を含む、飲食品、甘味組成物、香料又は医薬品の製造方法。
[2-15]
被験植物のゲノムからP01、P02、P03、P04及びP05からなる群より選択される少なくとも一つの多型マーカーを検出する工程を含む、高レバウジオシドM含有型ステビア植物体をスクリーニングする方法。
[2-16]
さらに、葉組織のレバウジオシドMの含有量を測定する工程を含む、前記[2-15]に記載の方法。
【0017】
[2-17]
(1)配列番号1における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマー及び配列番号2における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、
(2)配列番号3における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマー及び配列番号4における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、
(3)配列番号5における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマー及び配列番号6における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、
(4)配列番号7における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマー及び配列番号8における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、あるいは
(5)配列番号9における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマー及び配列番号10における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、
からなる群より選択されるいずれか一つ以上のプライマーセットであり、前記任意の連続する15塩基以上の配列は各プライマーの3‘末端に位置する、前記プライマーセット。
[2-18]
前記[2-17]に記載の(1)~(5)より選択される少なくとも1つのプライマーセットと制限酵素を含むキットであり、
前記プライマーセットが(1)の場合は、前記制限酵素はXbaIであり、
前記プライマーセットが(2)の場合は、前記制限酵素はKpnIであり、
前記プライマーセットが(3)の場合は、前記制限酵素はAflIIであり、
前記プライマーセットが(5)の場合は、前記制限酵素はPvuIである、
前記キット。
【0018】
[2-19]
検出可能な標識と結合していてもよい、配列番号1~10のいずれか一つに示す塩基配列を含むプローブ。
[2-20]
蛍光標識、色素又は結合部分を有する前記[2-19]に記載のプローブ。
[2-21]
P01、P02、P03、P04及びP05からなる群より選択される少なくとも一つの多型マーカーを検出することを目的として被験植物のゲノムDNAに対し前記[2-17]に記載のプライマーセットを用いてPCR増幅を行う工程、及び
前記多型マーカーがP01、P02、P03及びP05からなる群より選択される少なくとも一つである場合、前記PCR増幅により得られたPCR産物を制限酵素で処理し、制限酵素処理産物を検出する工程、
を含む、高レバウジオシドM含有非遺伝子組み換えステビア植物体のスクリーニング方法。
[2-22]
前記制限酵素がXbaI、KpnI、AflII及びPvuIからなる群より選択される少なくとも一つである、前記[2-21]に記載の方法。
[2-23]
前記多型マーカーがP02及びP05である、前記[2-21]に記載の方法。
[2-24]
前記制限酵素がKpnI及びPvuIである、前記[2-23]に記載の方法。
[2-25]
スクリーニングにより得られる植物体が乾燥葉に含まれる総ステビオール配糖体量に対し2%以上のレバウジオシドMを含む、前記[2-21]~[2-24]のいずれか一つに記載の方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によって、レバウジオシドMをより多く含むステビア植物体の取得、そのような植物体を作出するための手段、そのような植物体より得られる葉、この葉より得られたレバウジオシドMを含む食物や飲料などの提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は第I個体群のマーカー検出で得られた電気泳動図を示す。
図2図2は第II個体群のマーカー検出で得られた電気泳動図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をそのような実施の形態のみに限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施をすることができる。
なお、本明細書において引用した全ての文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。また、本明細書は、2017年10月12日に出願された本願優先権主張の基礎となる日本国特許出願(特願2017-198515号)の明細書及び図面に記載の内容を包含する。
【0022】
1.本発明の高レバウジオシドM含有型非遺伝子組み換えステビア植物体
本発明は、葉(例えば、乾燥葉又は新鮮葉)に含まれる総ステビオール配糖体量に対し2%以上のレバウジオシドMを含むことを特徴とする高レバウジオシドM含有非遺伝子組み換えステビア植物体(以下、「本発明の植物体」又は「本発明のステビア植物体」と称する場合がある)を提供する。
本発明のステビア植物体は、野生種のステビア植物体から派生した種であるが、レバウジオシドMが高くなるように遺伝子に変異が生じたものである。かつ当該遺伝子の変異は非遺伝子組換え的に生じるものである(後述)。
本発明において、高レバウジオシドM含有非遺伝子組み換えステビア植物体のうち、葉(例えば、乾燥葉又は新鮮葉)に含まれる総ステビオール配糖体量に対し2~4.6%のレバウジオシドMを含むことを特徴とするステビア植物体を高レバウジオシドM含有非遺伝子組み換えステビア植物体と称することがあり、4.7%以上のレバウジオシドMを含むことを特徴とするステビア植物体は超高レバウジオシドM含有非遺伝子組み換えステビア植物体と称することもある。
【0023】
総ステビオール配糖体(Total Steviol Glycoside:TSG)とは、未知のステビオール配糖体を含むものではなく、また検出限界未満で存在するステビオール配糖体も含まない。好ましくは、総ステビオール配糖体とは、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF、レバウジオシドI、レバウジオシドJ、レバウジオシドK、レバウジオシドN、レバウジオシドM、レバウジオシドO、レバウジオシドQ、レバウジオシドR、ズルコシドA、ルブソシド、ステビオール、ステビオールモノシド、ステビオールビオシド及びステビオシドからなる群より選択される2つ以上の任意の組み合わせである。例えば、ある実施形態では、総ステビオール配糖体は、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドF、レバウジオシドM及びステビオールからなり、別の実施形態では総ステビオール配糖体は、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドM、レバウジオシドD、レバウジオシドF、レバウジオシドM、レバウジオシドN、レバウジオシドO及びステビオールからなるものであってもよい。
【化1】
【0024】
葉に含まれる総ステビオール配糖体量に対し2%以上のレバウジオシドMを含むとは、レバウジオシドM(RebM)の含量を、葉(例えば、乾燥葉又は新鮮葉)から得られたステビオール配糖体総量に対する比率としてRebM/TSG%で表した場合、RebM/TSGの値の下限が2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、12%以上、14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、22%以上、24%以上、26%以上、28%以上、30%以上、32%以上、34%以上、36%以上、38%以上であることを特徴とする。一方、RebM/TSGの値の上限は、15%以下、16%以下、18%以下、20%以下、22%以下、24%以下、26%以下、28%以下、30%以下、32%以下、34%以下、36%以下、38%以下、40%以下であることを特徴とする。この下限と上限の組み合わせは、上限値が下限値を上回る組み合わせであれば特に限定されないが、2%以上かつ4.7%未満のものを高レバウジオシドM含有表現型、4.7%以上かつ15%以下のものを超高レバウジオシドM含有表現型と称することがある。
【0025】
また、本発明の植物体は、乾燥葉100g中に0.19g以上のレバウジオシドMを含むものであってもよい。これは、本発明の植物体から乾燥葉を得た場合、当該乾燥葉100g当たりレバウジオシドMが0.19g以上、0.20g以上、0.25g以上、0.30g以上、0.35g以上、0.40g以上、0.45g以上、0.50g以上、0.55g以上、0.60g以上、0.65g以上、0.70g以上、0.75g以上、0.80g以上、0.85g以上、0.90g以上、0.95g以上、1.00g以上、1.05g以上、1.10g以上、1.15g以上、1.20g以上、1.25g以上、1.30g以上、1.35g以上、1.40g以上、1.45g以上の量で存在することを意味する。
【0026】
ここで本発明の植物体の乾燥葉とは、本発明のステビア植物体の新鮮葉を乾燥させることにより含水量を3~4重量%にまで減らしたものをいう。
【0027】
ここで、本発明の植物体は、乾燥葉100g中に1.00g以上、1.05g以上、1.10g以上、1.15g以上、1.20g以上、1.25g以上、1.30g以上、1.35g以上、1.40g以上、1.45g以上、1.50g以上、1.55g以上、1.60g以上、1.65g以上、1.70g以上、1.75g以上、1.80g以上、1.85g以上、1.90g以上、1.95g以上、2.00g以上、2.05g以上、2.10g以上、2.15g以上、2.20g以上、2.25g以上、2.30g以上、2.35g以上、2.40g以上、2.45g以上、2.50g以上、2.55g以上、2.60g以上、2.65g以上、2.70g以上、2.75g以上、2.80g以上、2.85g以上、2.90g以上、2.95g以上、3.00g以上、3.05g以上、3.10g以上、3.15g以上、3.20g以上、3.25g以上、3.30g以上、3.35g以上、3.40g以上、3.45g以上、3.50g以上、3.55g以上又は3.57g以上のレバウジオシドDをさらに含んでいてもよい。
ここで、レバウジオシドMとDとの含量の組み合わせは特に限定されず、任意である。
好ましくは、本発明の植物体は、乾燥葉100g中に1.03g以上のレバウジオシドMと1.1g以上のレバウジオシドDを含む。
【0028】
あるいは、本発明の植物体の葉(例えば、乾燥葉又は新鮮葉)は、野生型ステビア植物体の葉100g当たりに含まれるレバウジオシドMの量(g)を100%とした場合に、野生型ステビア種と比べレバウジオシドMを300%以上、400%以上、500%以上、600%以上、700%以上、800%以上、900%以上、1100%以上、1200%以上、1300%以上、1400%以上、1500%以上、1600%以上、1700%以上、1800%以上、1900%以上、2000%以上、2100%以上、2200%以上、2300%以上、2400%以上、2500%以上、2600%以上、2700%以上、2800%以上、2900%以上、3000%以上高い含量で含んでいてもよい。
【0029】
また、本発明のステビア植物体は、葉(例えば、乾燥葉又は新鮮葉)中のレバウジオシドM(RebM)及びレバウジオシドD(RebD)の含量をRebM/RebDの比率で表した場合、RebM/RebDの値の下限が0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.8以上、1.0以上であることを特徴とする。一方、RebM/RebDの値の上限は、0.3以下、0.4以下、0.5以下、0.6以下、0.8以下、1.0以下、1.1以下、1.2以下であることを特徴とする。この下限と上限の組み合わせは、上限値が下限値を上回る組み合わせであれば特に限定されないが、好ましくは0.2以上かつ1.2以下、あるいは0.6以上かつ1.1以下である。
また、本発明のステビア植物体は、葉(例えば、乾燥葉又は新鮮葉)中のレバウジオシドM(RebM)及びレバウジオシドD(RebD)の含量をステビオール配糖体総量に対する比率として(RebD+RebM)/TSG%で表した場合、(RebD+RebM)/TSGの値の下限が14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、22%以上、24%以上、26%以上、28%以上、30%以上、32%以上、34%以上、36%以上、38%以上であることを特徴とする。一方、(RebD+RebM)/TSGの値の上限は、18%以下、20%以下、22%以下、24%以下、26%以下、28%以下、30%以下、32%以下、34%以下、36%以下、38%以下、40%以下であることを特徴とする。この下限と上限の組み合わせは、上限値が下限値を上回る組み合わせであれば特に限定されないが、好ましくは14%以上かつ40%以下、あるいは16%以上かつ40%以下である。
【0030】
別の実施態様において、本発明の植物体は、ステビオール配糖体総量が野生型より少ないものであってもよい。具体的には乾燥葉100g中に19g未満のステビオール配糖体総量を含むものであってもよい。これは、本発明の植物体から乾燥葉を得た場合、当該乾燥葉100g当たりステビオール配糖体総量が19g未満、18g未満、17g未満、16g未満、15g未満、14g未満、13g未満、12g未満、11g未満、10g未満、9g未満、8g未満、7g未満の量であることを意味する。
【0031】
また、本発明のステビア植物体は、葉(例えば、乾燥葉又は新鮮葉)100g中のレバウジオシドM(RebM)及びレバウジオシドA(RebA)の含量をRebM/RebAの比率で表した場合、RebM/RebAの値の下限が0.03以上、0.04以上、0.05以上、0.06以上、0.08以上、0.10以上、0.12以上、0.14以上であることを特徴とする。一方、RebM/RebAの値の上限は、0.08以下、0.10以下、0.12以下、0.14以下、0.16以下、0.18以下、0.20以下、0.24以下、0.26以下であることを特徴とする。この下限と上限の組み合わせは、上限値が下限値を上回る組み合わせであれば特に限定されないが、好ましくは0.03以上かつ0.26以下、あるいは0.10以上かつ0.26以下である。
【0032】
また、本発明のステビア植物体は、葉(例えば、乾燥葉又は新鮮葉)100g中のレバウジオシドM(RebM)及びレバウジオシドA(RebA)の含量をステビオール配糖体総量に対する比率として(RebA+RebM)/TSGで表した場合、(RebA+RebM)/TSGの値の下限が4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、12%以上、14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、22%以上、24%以上、26%以上、28%以上、30%以上、32%以上、34%以上、36%以上、38%以上であることを特徴とする。一方、(RebA+RebM)/TSGの値の上限は、10%以下、12%以下、14%以下、16%以下、18%以下、20%以下、22%以下、24%以下、26%以下、28%以下、30%以下、32%以下、34%以下、36%以下、38%以下、40%以下であることを特徴とする。この下限と上限の組み合わせは、上限値が下限値を上回る組み合わせであれば特に限定されないが、好ましくは4%以上かつ40%以下、あるいは16%以上かつ40%以下である。
【0033】
前述のとおり、本発明のステビア植物体は、レバウジオシドMが高くなる変異が生じたものである。この変異は、以下の(1)~(5)の少なくとも1つの遺伝的特徴(以下、「本発明の遺伝的特徴」と称する場合がある)を有する。
(1)配列番号35の44位に相当する位置の塩基がTであるアレルについてホモ接合性である。
(2)配列番号37の40位に相当する位置の塩基がTであるアレルについてホモ接合性である。
(3)配列番号39の41位に相当する位置の塩基がCであるアレルについてホモ接合性である。
(4)配列番号42の55~72位に相当する部分が欠失しているアレルについてホモ接合性である。
(5)配列番号43の50位に相当する位置の塩基がAであるアレルについてホモ接合性である。
【0034】
「~に相当する位置(又は部分)」とは、ゲノム中に基準配列(例えば、配列番号35、37、39、42、43など)と同一の配列が存在する場合は、ゲノム中に存在するその配列中の位置又は部分(例えば、44位、40位、41位、55~72位、50位など)を意味し、ゲノム中に基準配列と同一の配列が存在しない場合は、ゲノム中の基準配列に相当する配列中の、基準配列中の位置又は部分に相当する位置又は部分を意味する。ゲノム中に基準配列と同一又はそれに相当する配列が存在するかどうかは、例えば、基準配列をPCRで増幅し得るプライマーで、対象となるステビア植物のゲノムDNAを増幅し、増幅産物のシーケンシングを行い、得られた配列と基準配列とのアラインメント解析を行うことで決定することができる。基準配列に相当する配列の非限定例としては、例えば、基準配列に対し60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、98.1%以上、98.4%以上、98.7%以上、99%以上、99.2%以上、99.5%以上又は99.8%以上の配列同一性を有する塩基配列が挙げられる。ゲノム中の基準配列に相当する配列中の、基準配列中の位置又は部分に相当する位置又は部分は、基準配列中の位置又は部分の前後の塩基配列等を考慮して決定することができる。例えば、基準配列とゲノム中の基準配列に相当する配列とのアライメント解析により、ゲノム中の基準配列に相当する配列中の、基準配列中の位置又は部分に相当する位置又は部分を決定することができる。
【0035】
例えば、遺伝的特徴(1)の「配列番号35の44位に相当する位置」を例にとると、ステビア植物体のゲノムが配列番号35と同一の塩基配列からなる部分を有している場合、「配列番号35の44位に相当する位置」はゲノム中の配列番号35と同一の塩基配列からなる部分の5’側から44位である。一方、ステビア植物体のゲノムが配列番号35と同一ではないがこれに相当する塩基配列からなる部分を有している場合、ゲノムは配列番号35と同一の塩基配列からなる部分を有しないため、「配列番号35の44位に相当する位置」は、必ずしも配列番号35に相当する部分の5’側から44位に該当するわけではないが、配列番号35の44位の前後の塩基配列等を考慮し、かかるステビア植物のゲノムにおける「配列番号35の44位に相当する位置」を特定することができる。例えば、ステビア植物のゲノムにおける配列番号35に相当する部分の塩基配列と、配列番号35の塩基配列とのアライメント解析により、ステビア植物のゲノムにおける「配列番号35の44位に相当する位置」を特定することができる。
【0036】
「配列番号35に相当する塩基配列からなる部分」は、例えば、配列番号35の塩基配列に対し、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、98.1%以上、98.4%以上、98.7%以上、99%以上、99.2%以上、99.5%以上又は99.8%以上の配列同一性を有する塩基配列からなる部分を意味する。
【0037】
一部の態様において、「配列番号35に相当する塩基配列からなる部分」には、配列番号35の5’末端から15~25塩基長の部分の相補配列にハイブリダイズするフォワードプライマーと、配列番号35の3’末端側から15~25塩基長の部分にハイブリダイズするリバースプライマーとを用いたPCRにより増幅され得るステビア植物体のゲノムの部分が含まれる。
ここでは簡潔のため遺伝的特徴(1)を例に説明したが、遺伝的特徴(2)~(5)についても同様である。
【0038】
特定の態様において、「配列番号35に相当する塩基配列からなる部分」には、例えば、配列番号45の塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号46の塩基配列を含むリバースプライマーとを用いたPCRにより増幅され得るステビア植物のゲノムの部分が含まれる。
特定の態様において、「配列番号37に相当する塩基配列からなる部分」には、例えば、配列番号47の塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号48の塩基配列を含むリバースプライマーとを用いたPCRにより増幅され得るステビア植物のゲノムの部分が含まれる。
特定の態様において、「配列番号39に相当する塩基配列からなる部分」には、例えば、配列番号49の塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号50の塩基配列を含むリバースプライマーとを用いたPCRにより増幅され得るステビア植物のゲノムの部分が含まれる。
特定の態様において、「配列番号42に相当する塩基配列からなる部分」には、例えば、配列番号51の塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号52の塩基配列を含むリバースプライマーとを用いたPCRにより増幅され得るステビア植物のゲノムの部分が含まれる。
特定の態様において、「配列番号43に相当する塩基配列からなる部分」には、例えば、配列番号53の塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号54の塩基配列を含むリバースプライマーとを用いたPCRにより増幅され得るステビア植物のゲノムの部分が含まれる。
【0039】
特定の態様において、「配列番号35の44位に相当する位置の塩基がTであるアレル」は、配列番号55、65又は75の塩基配列を含む。
特定の態様において、「配列番号37の40位に相当する位置の塩基がTであるアレル」は、配列番号57、67又は77の塩基配列を含む。
特定の態様において、「配列番号39の41位に相当する位置の塩基がCであるアレル」は、配列番号59、69又は79の塩基配列を含む。
特定の態様において、「配列番号42の55~72位に相当する部分が欠失しているアレル」は、配列番号61、71又は81の塩基配列を含む。
特定の態様において、「配列番号43の50位に相当する位置の塩基がAであるアレル」は、配列番号63、73又は83の塩基配列を含む。
【0040】
ここで、(1)配列番号35の44位に相当する位置、(2)配列番号37の40位に相当する位置、(3)配列番号39の41位に相当する位置、(4)配列番号42の55~72位に相当する部分、及び(5)配列番号43の50位に相当する位置からなる群から選択される位置を、「本発明の多型部位」又は「本発明の変異部位」と称することがある。
また、(1)配列番号35の44位に相当する位置におけるAからTへの変異、(2)配列番号37の40位に相当する位置におけるCからTへの変異、(3)配列番号39の41位に相当する位置におけるGからCへの変異、(4)配列番号42の55~72位に相当する部分の欠失、及び(5)配列番号43の50位に相当する位置におけるGからAへの変異からなる群から選択される変異を、「本発明の多型」又は「本発明の変異」と称することがある。
【0041】
上記の遺伝的特徴は、PCR法、TaqMan PCR法、シーケンス法、マイクロアレイ法、インベーダー法、TILLING法、RAD(random amplified polymorphic DNA)法、制限酵素断片長多型(RFLP)法、PCR-SSCP法、AFLP(amplified fragment length polymorphism)法、SSLP(simple sequence length polymorphism)法、CAPS(cleaved amplified polymorphic sequence)法、dCAPS(derived cleaved amplified polymorphic sequence)法、アレル特異的オリゴヌクレオチド(ASO)法、ARMS法、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)法、CCM(chemical cleavage of mismatch)法、DOL法、MALDI-TOF/MS法、TDI法、パドロックプローブ法、分子ビーコン法、DASH(dynamic allele specific hybridization)法、UCAN法、ECA法、PINPOINT法、PROBE(primer oligo base extension)法、VSET(very short extension)法、Survivor assay、Sniper assay、Luminex assay、GOOD法、LCx法、SNaPshot法、Mass ARRAY法、パイロシークエンス法、SNP-IT法、融解曲線分析法等により検出することが可能であるが、検出方法はこれらに限定されるものではない。
【0042】
特定の態様において、上記の遺伝的特徴は、本発明者らが開発した多型マーカーを用いて「多型マーカー陽性」のものとして検出することが可能である。
ここで多型マーカーはP01~P05からなる群より選択される少なくとも一つである。
【0043】
P01について陽性とは、候補植物体のゲノムDNAに対し、配列番号1に示す塩基配列を有するフォワードプライマー及び配列番号2に示す塩基配列を有するリバースプライマーを用いてPCR増幅を行い、得られたPCR産物(約383bp長:例えば、配列番号21又は22)にXbaI制限酵素処理を行っても約383bp長のバンド(例えば、配列番号21)しか得られないことを意味する。反対に、上記PCR産物に対しXbaI制限酵素処理を行った場合に約344bpの制限酵素処理産物(例えば、配列番号23)を生じた場合、その候補植物体はP01陰性となる。
P02について陽性とは、候補植物体のゲノムDNAに対し、配列番号3に示す塩基配列を有するフォワードプライマー及び配列番号4に示す塩基配列を有するリバースプライマーを用いてPCR増幅を行い、得られたPCR産物(297bp長)(例えば、配列番号24又は25)に対しKpnI制限酵素処理を行っても約297bp長のバンド(例えば、配列番号24)しか得られないことを意味する。反対に、約258bpの制限酵素処理産物(例えば、配列番号26)を生じる場合、その候補植物体はP02陰性となる。
P03について陽性とは、候補植物体のゲノムDNAに対し、配列番号5に示す塩基配列を有するフォワードプライマー及び配列番号6に示す塩基配列を有するリバースプライマーを用いてPCR増幅を行い、得られたPCR産物(約390bp長)(例えば、配列番号27又は28)に対しAflII制限酵素処理を行っても約390bp長のバンド(例えば、配列番号27)しか得られないことを意味する。反対に、約347bpの制限酵素処理産物(例えば、配列番号29)を生じる場合、その候補植物体はP03陰性となる。
【0044】
P04について陽性とは、候補植物体のゲノムDNAに対し、配列番号7に示す塩基配列を有するフォワードプライマー及び配列番号8に示す塩基配列を有するリバースプライマーを用いてPCR増幅を行った場合に約140bpのPCR産物(例えば、配列番号30)のみを生じることを意味し、140bp(例えば、配列番号30)及び158bp(例えば、配列番号34)のPCR産物を生じる場合は陰性であることを意味する。
P05について陽性とは、候補植物体のゲノムDNAに対し、配列番号9に示す塩基配列を有するフォワードプライマー及び配列番号10に示す塩基配列を有するリバースプライマーを用いてPCR増幅を行い、得られたPCR産物(約288bp長)(例えば、配列番号31又は32)に対しPvuI制限酵素処理を行っても約288bp長のバンド(例えば、配列番号31)しか得られないことを意味する。反対に、約240bpの制限酵素処理産物(例えば、配列番号33)を生じる場合、その候補植物体はP05陰性となる。
上記bp長に関し、「約」とは、±5bpを意味する。制限酵素処理は、使用する各制限酵素の販売元が推奨する条件に従って行うことができる。
【0045】
本発明の植物体のスクリーニング方法の詳細については、後述の項目「3.本発明の植物体のスクリーニング方法」を参照することができる。
上記遺伝的特徴(例えば、上記多型マーカー陽性の多型)は、高レバウジオシドM含有及び/又は高レバウジオシドD含有という表現型と統計学上の相関関係を有することが実施例において確認されている。
【0046】
レバウジオシドM及びDは、本発明の植物体の新鮮葉又は乾燥葉に適切な溶媒(水等の水性溶媒又はアルコール、エーテル及びアセトン等の有機溶媒)を反応させることにより抽出液の状態で抽出することができる。抽出条件等はOhta et al.,J. Appl. Glycosci.、 Vol. 57、 No. 3 (2010)又はWO2010/038911に記載の方法や、後述の実施例に記載の方法を参照することができる。
さらに、このようにして得られた抽出液に対し、酢酸エチルその他の有機溶媒:水の勾配、高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography:HPLC)、ガスクロマトグラフィー、飛行時間型質量分析(Time-of-Flight mass spectrometry:TOF-MS)、超高性能液体クロマトグラフィー(Ultra (High) Performance Liquid chromatography:UPLC)等の公知の方法を用いることによりレバウジオシドMを精製することができる。
【0047】
本発明に係るレバウジオシドM含量は、Ohta et al., J. Appl. Glycosci.、 Vol. 57、 No. 3 (2010)又はWO2010/038911に記載の方法や、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。具体的には本発明のステビア植物体から新鮮葉をサンプリングし、LC/MS-MSを行うことにより測定することができる。
【0048】
本発明の植物体には植物体全体のみならず、植物器官(例えば葉、花弁、茎、根、種子など)、植物組織(例えば表皮、師部、柔組織、木部、維管束、柵状組織、海綿状組織など)あるいは種々の形態の植物細胞(例えば、懸濁培養細胞)、プロトプラスト、葉の切片、カルスなどが含まれ得る。また、葉は先に述べた乾燥葉であってもよい。
【0049】
また、本発明の植物体には、組織培養物又は植物培養細胞も含まれ得る。このような組織培養物又は植物培養細胞を培養することにより、植物体を再生することができるからである。本発明の植物体の組織培養物又は植物培養細胞の例としては、胚、分裂組織細胞、花粉、葉、根、根端、花弁、プロトプラスト、葉の切片及びカルス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
2.本発明の植物体の作出方法
本発明は、別の実施態様において、本発明のステビア植物体と第2のステビア植物体とを交雑させる工程を含む、葉(例えば、乾燥葉又は新鮮葉)に含まれる総ステビオール配糖体量に対し2%以上のレバウジオシドMを含むことを特徴とする高レバウジオシドM含有ステビア植物体を作出する方法(以下、「本発明の作出方法」と称する場合がある)を提供する。
当該方法により作出される「葉に含まれる総ステビオール配糖体量に対し2%以上のレバウジオシドMを含むことを特徴とする高レバウジオシドM含有ステビア植物体」は、本発明の植物体と同じ表現型と遺伝的性質を有する。
【0051】
具体的には、本発明の作出方法によって得られた植物体から葉(例えば、乾燥葉又は新鮮葉)を得た場合、葉に含まれる総ステビオール配糖体量に対し2%以上のレバウジオシドMを含む。これはレバウジオシドM(RebM)の含量を、葉から得られたステビオール配糖体総量に対する比率としてRebM/TSG%で表した場合、RebM/TSGの値の下限が2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、12%以上、14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、22%以上、24%以上、26%以上、28%以上、30%以上、32%以上、34%以上、36%以上、38%以上であることを特徴とする。一方、RebM/TSGの値の上限は、15%以下、16%以下、18%以下、20%以下、22%以下、24%以下、26%以下、28%以下、30%以下、32%以下、34%以下、36%以下、38%以下、40%以下であることを意味する。この下限と上限の組み合わせは、上限値が下限値を上回る組み合わせであれば特に限定されないが、好ましくは2%以上かつ20%以下、あるいは7%以上かつ15%以下である。
【0052】
また、本発明の作出方法によって得られた植物体は、乾燥葉100g中に0.19g以上のレバウジオシドMを含むものであってもよい。これは、本発明の植物体から乾燥葉を得た場合、当該乾燥葉100g当たりレバウジオシドMが0.19g以上、0.20g以上、0.25g以上、0.30g以上、0.35g以上、0.40g以上、0.45g以上、0.50g以上、0.55g以上、0.60g以上、0.65g以上、0.70g以上、0.75g以上、0.80g以上、0.85g以上、0.90g以上、0.95g以上、1.00g以上、1.05g以上、1.10g以上、1.15g以上、1.20g以上、1.25g以上、1.30g以上、1.35g以上、1.40g以上、1.45g以上の量で存在することを意味する。
【0053】
ここで、本発明の作出方法によって得られた植物体は、乾燥葉100g中に1.00g以上、1.05g以上、1.10g以上、1.15g以上、1.20g以上、1.25g以上、1.30g以上、1.35g以上、1.40g以上、1.45g以上、1.50g以上、1.55g以上、1.60g以上、1.65g以上、1.70g以上、1.75g以上、1.80g以上、1.85g以上、1.90g以上、1.95g以上、2.00g以上、2.05g以上、2.10g以上、2.15g以上、2.20g以上、2.25g以上、2.30g以上、2.35g以上、2.40g以上、2.45g以上、2.50g以上、2.55g以上、2.60g以上、2.65g以上、2.70g以上、2.75g以上、2.80g以上、2.85g以上、2.90g以上、2.95g以上、3.00g以上、3.05g以上、3.10g以上、3.15g以上、3.20g以上、3.25g以上、3.30g以上、3.35g以上、3.40g以上、3.45g以上、3.50g以上、3.55g以上又は3.57g以上のレバウジオシドDをさらに含んでいてもよい。
ここで、レバウジオシドMとDとの含量の組み合わせは特に限定されず、任意である。
好ましくは、本発明の作出方法によって得られた植物体は、乾燥葉100g中に1.03g以上のレバウジオシドMと1.1g以上のレバウジオシドDを含む。
【0054】
あるいは、本発明の作出方法によって得られた植物体の葉は、野生型ステビア植物体の葉(例えば、乾燥葉又は新鮮葉)100g当たりに含まれるレバウジオシドMの量(g)を100%とした場合に、野生型ステビア種と比べレバウジオシドMを300%以上、400%以上、500%以上、600%以上、700%以上、800%以上、900%以上、1100%以上、1200%以上、1300%以上、1400%以上、1500%以上、1600%以上、1700%以上、1800%以上、1900%以上、2000%以上、2100%以上、2200%以上、2300%以上、2400%以上、2500%以上、2600%以上、2700%以上、2800%以上、2900%以上、3000%以上高い含量で含んでいてもよい。
【0055】
また、本発明の作出方法によって得られた植物体は、葉(例えば、乾燥葉又は新鮮葉)中のレバウジオシドM(RebM)及びレバウジオシドD(RebD)の含量をRebM/RebDの比率で表した場合、RebM/RebDの値の下限が0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.8以上、1.0以上であることを特徴とする。一方、RebM/RebDの値の上限は、0.3以下、0.4以下、0.5以下、0.6以下、0.8以下、1.0以下、1.1以下、1.2以下であることを特徴とする。この下限と上限の組み合わせは、上限値が下限値を上回る組み合わせであれば特に限定されないが、好ましくは0.2以上かつ1.2以下、あるいは0.6以上かつ1.1以下である。
また、本発明の作出方法によって得られた植物体は、葉(例えば、乾燥葉又は新鮮葉)中のレバウジオシドM(RebM)及びレバウジオシドD(RebD)の含量をステビオール配糖体総量に対する比率として(RebD+RebM)/TSG%で表した場合、(RebD+RebM)/TSGの値の下限が14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、22%以上、24%以上、26%以上、28%以上、30%以上、32%以上、34%以上、36%以上、38%以上であることを特徴とする。一方、(RebD+RebM)/TSGの値の上限は、18%以下、20%以下、22%以下、24%以下、26%以下、28%以下、30%以下、32%以下、34%以下、36%以下、38%以下、40%以下であることを特徴とする。この下限と上限の組み合わせは、上限値が下限値を上回る組み合わせであれば特に限定されないが、好ましくは14%以上かつ40%以下、あるいは16%以上かつ40%以下である。
【0056】
別の実施態様において、本発明の作出方法によって得られた植物体は、ステビオール配糖体総量が野生型より少ないものであってもよい。具体的には乾燥葉100g中に19g未満のステビオール配糖体総量を含むものであってもよい。これは、本発明の植物体から乾燥葉を得た場合、当該乾燥葉100g当たりステビオール配糖体総量が19g未満、18g未満、17g未満、16g未満、15g未満、14g未満、13g未満、12g未満、11g未満、10g未満、9g未満、8g未満、7g未満の量であることを意味する。
【0057】
また、本発明の作出方法によって得られた植物体は、葉(例えば、乾燥葉又は新鮮葉)100g中のレバウジオシドM(RebM)及びレバウジオシドA(RebA)の含量をステビオール配糖体総量に対する比率として(RebA+RebM)/TSGで表した場合、(RebA+RebM)/TSGの値の下限が4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、12%以上、14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、22%以上、24%以上、26%以上、28%以上、30%以上、32%以上、34%以上、36%以上、38%以上、40%以上であることを特徴とする。一方、(RebA+RebM)/TSGの値の上限は、30%以下、32%以下、34%以下、36%以下、38%以下、40%以下、42%以下、44%以下、46%以下、48%以下、50%以下、52%以下、54%以下、56%以下、58%以下、60%以下、62%以下、64%以下、66%以下、68%以下、70%以下、72%以下、74%以下、76%以下、78%以下、80%以下であることを特徴とする。この下限と上限の組み合わせは、上限値が下限値を上回る組み合わせであれば特に限定されないが、好ましくは4%以上かつ80%以下、あるいは40%以上かつ80%以下である。
【0058】
本発明の作出方法によって得られた植物体は、レバウジオシドMが高くなる以下の(1)~(5)の少なくとも1つの遺伝的特徴を有する。
(1)配列番号35の44位に相当する位置の塩基がTであるアレルについてホモ接合性である。
(2)配列番号37の40位に相当する位置の塩基がTであるアレルについてホモ接合性である。
(3)配列番号39の41位に相当する位置の塩基がCであるアレルについてホモ接合性である。
(4)配列番号42の55~72位に相当する部分が欠失しているアレルについてホモ接合性である。
(5)配列番号43の50位に相当する位置の塩基がAであるアレルについてホモ接合性である。
かかる遺伝的特徴は、本発明者らが開発した多型マーカーを用いて「多型マーカー陽性」のものとして検出することが可能である。
ここで多型マーカーはP01~P05からなる群より選択される少なくとも一つである。
【0059】
P01について陽性とは、候補植物体のゲノムDNAに対し、配列番号1に示す塩基配列を有するフォワードプライマー及び配列番号2に示す塩基配列を有するリバースプライマーを用いてPCR増幅を行い、得られたPCR産物(約383bp長:例えば、配列番号21又は22)にXbaI制限酵素処理を行っても約383bp長のバンド(例えば、配列番号21)しか得られないことを意味する。反対に、上記PCR産物に対しXbaI制限酵素処理を行った場合に約344bpの制限酵素処理産物(例えば、配列番号23)を生じた場合、その候補植物体はP01陰性となる。
P02について陽性とは、候補植物体のゲノムDNAに対し、配列番号3に示す塩基配列を有するフォワードプライマー及び配列番号4に示す塩基配列を有するリバースプライマーを用いてPCR増幅を行い、得られたPCR産物(297bp長)(例えば、配列番号24又は25)に対しKpnI制限酵素処理を行っても約297bp長のバンド(例えば、配列番号24)しか得られないことを意味する。反対に、約258bpの制限酵素処理産物(例えば、配列番号26)を生じる場合、その候補植物体はP02陰性となる。
P03について陽性とは、候補植物体のゲノムDNAに対し、配列番号5に示す塩基配列を有するフォワードプライマー及び配列番号6に示す塩基配列を有するリバースプライマーを用いてPCR増幅を行い、得られたPCR産物(約390bp長)(例えば、配列番号27又は28)に対しAflII制限酵素処理を行っても約390bp長のバンド(例えば、配列番号27)しか得られないことを意味する。反対に、約347bpの制限酵素処理産物(例えば、配列番号29)を生じる場合、その候補植物体はP03陰性となる。
【0060】
P04について陽性とは、候補植物体のゲノムDNAに対し、配列番号7に示す塩基配列を有するフォワードプライマー及び配列番号8に示す塩基配列を有するリバースプライマーを用いてPCR増幅を行った場合に約140bpのPCR産物(例えば、配列番号30)のみを生じることを意味し、140bp(例えば、配列番号30)及び158bp(例えば、配列番号34)のPCR産物を生じる場合は陰性であることを意味する。
P05について陽性とは、候補植物体のゲノムDNAに対し、配列番号9に示す塩基配列を有するフォワードプライマー及び配列番号10に示す塩基配列を有するリバースプライマーを用いてPCR増幅を行い、得られたPCR産物(約288bp長)(例えば、配列番号31又は32)に対しPvuI制限酵素処理を行っても約288bp長のバンド(例えば、配列番号31)しか得られないことを意味する。反対に、約240bpの制限酵素処理産物(例えば、配列番号33)を生じる場合、その候補植物体はP05陰性となる。
上記bp長に関し、「約」とは、±5bpを意味する。制限酵素処理は、使用する各制限酵素の販売元が推奨する条件に従って行うことができる。
【0061】
本発明の作出方法において、「交雑させる」とは、本発明の植物体(第一代(S1))と、第2の植物体(S1)とを交配させることにより、その子植物体(本発明の作出方法により作出される植物体(第二代(S2)))を得ることを意味する。交雑方法としては、戻し交雑が好ましい。「戻し交雑」とは、本発明の植物体と第2の植物体との間に生まれた子植物体(S2)を、さらに本発明の植物体(つまり、本発明の遺伝的特徴を有する植物体)(S1)と交雑させて、本発明の遺伝子的特徴を有する植物体を作出する手法である。本発明の作出方法に用いられる第2の植物体(S1)が、本発明の植物体と同じ表現型と遺伝的性質を有する場合には、実質的に戻し交雑となる。本発明の遺伝子多型はメンデルの法則に従って遺伝し、これに伴って当該遺伝子多型と相関する表現型、つまり高レバウジオシドM含有という表現型も、メンデルの法則に従って遺伝する。
【0062】
あるいは、本発明の植物体は自殖により作出することもできる。自殖は、本発明の植物体のおしべの花粉を本発明の植物体のめしべに自家受粉させることにより行うことができる。
【0063】
本発明の作出方法により作出される植物体は、表現型及び遺伝的性質が本発明の植物体と同じであるため、本発明の作出方法により作出される植物体をさらに第3のステビア植物体とを交雑させることにより、葉(例えば、乾燥葉又は新鮮葉)に含まれる総ステビオール配糖体量に対し2%以上のレバウジオシドMを含むことを特徴とする高レバウジオシドM含有ステビア植物体を作出することも可能である。
【0064】
別の態様として、本発明の植物体は、先に述べた組織培養物又は植物培養細胞を培養することにより植物体を再生することで作出することも可能である。培養条件については、野生型ステビア植物の組織培養物又は植物培養細胞を培養する条件と同じであり、公知である(Protocols for In Vitro cultures and secondary metabolite analysis of aromatic and medicinal plants、 Method in molecular biology、 vo. 1391、 pp113-123.)。
【0065】
あるいは、本発明の植物体は非遺伝子組み換え体であるので、野生型のステビア植物体に非遺伝子組換え的手法により上記多型を組み込むことによって作成することもできる。「非遺伝子組換え的手法」の例としては、外来遺伝子の導入を行わずに宿主細胞(又は宿主植物体)の遺伝子に変異を誘発する方法が挙げられる。そのような方法としては植物細胞の変異誘発剤を作用させる方法が挙げられる。そのような変異誘発剤としては、エチルメタンスルホン酸(EMS)及びアジ化ナトリウム等が挙げられる。例えば、エチルメタンスルホン酸(EMS)は、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%などの濃度で植物細胞を処理することができる。処理時間は1~48時間、2~36時間、3~30時間、4~28時間、5~26時間、6~24時間である。処理の手順自体は公知であるが、吸水過程を経た吸水種子を上記濃度で変異誘発剤を含む処理液に、上記処理時間浸漬することで行うことができる。
【0066】
あるいは、非遺伝子組換え的手法の例としてX線、γ線、紫外線などの放射線や光線を植物細胞に照射する方法もできる。この場合、適当な紫外線の照射量(紫外線ランプ強さ、距離、時間)を用いて照射した細胞を、選択培地などで培養させた後、目的の形質を有する細胞、カルス、植物体を選択できる。その際の照射強度は0.01~100Gr、0.03~75Gr、0.05~50Gr、0.07~25Gr、0.09~20Gr、0.1~15Gr、0.1~10Gr、0.5~10Gr、1~10Grであり、照射距離は1cm~200m、5cm~100m、7cm~75m、9cm~50m、10cm~30m、10cm~20m、10cm~10mであり、照射時間は1分~2年、2分~1年、3分~0.5年、4分~1か月、5分~2週間、10分~1週間である。照射の強度、距離及び時間は、放射線の線種や照射対象となる状態(細胞、カルス、植物体)により異なるが、当業者であれば適宜調整することができる。
【0067】
また、細胞融合、葯培養(半数体育成)、遠縁交雑(半数体育成)などの手法も公知である。
一般に、植物細胞は、培養の間に変異を伴うことがあるため、より安定した形質維持のために植物個体に戻すことが好ましい。
なお、本発明の植物体は非遺伝子組み換えステビア植物体であるが、本発明の植物体を宿主として事後的に遺伝子組み換え(例えばゲノム編集等により)を行って得られた植物体(例えば、本発明の植物体を宿主として遺伝子組み換えを行って、さらに別の形質を付加した植物体)も、本発明の範囲から除外されるものではない。
【0068】
3.本発明の植物体のスクリーニング方法
本発明の植物体及び本発明の植物体と同じ表現型と遺伝的性質を有する植物体は、当該植物体の組織から本発明の遺伝的特徴を検出することによりスクリーニングすることができる。ここで、「スクリーニング」とは、本発明の植物体とそれ以外の植物体とを識別し、本発明の植物体を選択することを意味する。
したがって、本発明は、別の実施形態として、被験植物のゲノムから以下の(1)~(5)の少なくとも1つの遺伝的特徴の存在及び/又は不在を検出する工程を含む、高レバウジオシドM含有型ステビア植物体をスクリーニングする方法(以下、「本発明のスクリーニング方法」と称する場合がある)を提供する。
(1)配列番号35の44位に相当する位置の塩基がTであるアレルについてホモ接合性である。
(2)配列番号37の40位に相当する位置の塩基がTであるアレルについてホモ接合性である。
(3)配列番号39の41位に相当する位置の塩基がCであるアレルについてホモ接合性である。
(4)配列番号42の55~72位に相当する部分が欠失しているアレルについてホモ接合性である。
(5)配列番号43の50位に相当する位置の塩基がAであるアレルについてホモ接合性である。
本発明のスクリーニング方法は、上記(1)~(5)の少なくとも1つの遺伝的特徴の存在が検出された植物体を被験植物の中から選択する工程をさらに含んでもよい。
【0069】
本発明の遺伝的特徴の存在は、
(A)配列番号35の44位に相当する位置の塩基がTであるアレル、
(B)配列番号37の40位に相当する位置の塩基がTであるアレル、
(C)配列番号39の41位に相当する位置の塩基がCであるアレル、
(D)配列番号42の55~72位に相当する部分が欠失しているアレル、及び
(E)配列番号43の50位に相当する位置の塩基がAであるアレル
からなる群から選択されるアレルの存在の検出、及び/又は、
(a)配列番号35の44位に相当する位置の塩基がAであるアレル、
(b)配列番号37の40位に相当する位置の塩基がCであるアレル、
(c)配列番号39の41位に相当する位置の塩基がGであるアレル、
(d)配列番号42の55~72位に相当する部分が欠失していないアレル、及び
(e)配列番号43の50位に相当する位置の塩基がGであるアレル
からなる群から選択されるアレルの不在の検出
により決定することができる。
【0070】
本発明の遺伝的特徴の不在は、
(A)配列番号35の44位に相当する位置の塩基がTであるアレル、
(B)配列番号37の40位に相当する位置の塩基がTであるアレル、
(C)配列番号39の41位に相当する位置の塩基がCであるアレル、
(D)配列番号42の55~72位に相当する部分が欠失しているアレル、及び
(E)配列番号43の50位に相当する位置の塩基がAであるアレル
からなる群から選択されるアレルの不在の検出、及び/又は、
(a)配列番号35の44位に相当する位置の塩基がAであるアレル、
(b)配列番号37の40位に相当する位置の塩基がCであるアレル、
(c)配列番号39の41位に相当する位置の塩基がGであるアレル、
(d)配列番号42の55~72位に相当する部分が欠失していないアレル、及び
(e)配列番号43の50位に相当する位置の塩基がGであるアレル
からなる群から選択されるアレルの存在の検出
により決定することができる。
【0071】
本発明の遺伝的特徴の検出方法の具体例としては、PCR法、TaqMan PCR法、シーケンス法、マイクロアレイ法、インベーダー法、TILLING法、RAD法、RFLP法、PCR-SSCP法、AFLP法、SSLP法、CAPS法、dCAPS法、ASO法、ARMS法、DGGE法、CCM法、DOL法、MALDI-TOF/MS法、TDI法、パドロックプローブ法、分子ビーコン法、DASH法、UCAN法、ECA法、PINPOINT法、PROBE法、VSET法、Survivor assay、Sniper assay、Luminex assay、GOOD法、LCx法、SNaPshot法、Mass ARRAY法、パイロシークエンス法、SNP-IT法、融解曲線分析法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
PCR法の場合、3’末端部分が本発明の多型部位に相補的な配列を有するようなプライマーを作製することが好ましい。このように設計されたプライマーを用いると、鋳型となるサンプルが多型を有する場合には、プライマーが完全に鋳型にハイブリダイズするため、ポリメラーゼ伸長反応が進むが、鋳型が本発明の変異を有しない場合には、プライマーの3’末端のヌクレオチドが鋳型とミスマッチを生じるので、伸長反応は起こらない。したがって、このようなプライマーを用いてPCR増幅を行い、増幅産物をアガロースゲル電気泳動などによって分析し、所定のサイズの増幅産物が確認できれば、サンプルである鋳型が変異を有していることになり、増幅産物が存在しない場合には、鋳型が変異を有していないものと判断できる。
あるいは、本発明の多型とプライマー配列とは重複させず、かつ本発明の遺伝子変異をPCR増幅させることが可能なようにプライマー配列を設計し、増幅されたヌクレオチド断片の塩基配列をシーケンスすることにより、本発明の遺伝的特徴を検出することができる。
PCR及びアガロースゲル電気泳動については、以下を参照:Sambrook, Fritsch and Maniatis, ”Molecular Cloning: A Laboratory Manual” 2nd Edition (1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press。
【0073】
TaqMan PCR法とは、蛍光標識したアレル特異的オリゴとTaq DNAポリメラーゼによるPCR反応とを利用した方法である(Livak, K.J. Genet. Anal. 14, 143 (1999); Morris T. et al., J. Clin.Microbiol. 34, 2933 (1996))。
シークエンス法とは、変異を含む領域をPCRにて増幅させ、Dye Terminatorなどを用いてDNA配列をシークエンスすることで、変異の有無を解析する方法である(Sambrook, Fritsch and Maniatis, ”Molecular Cloning: A Laboratory Manual” 2nd Edition (1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press)。
DNAマイクロアレイは、ヌクレオチドプローブの一端が支持体上にアレイ状に固定されたものであり、DNAチップ、Geneチップ、マイクロチップ、ビーズアレイ等を包含する。本発明の多型と相補的な配列を含むプローブを用いることで、網羅的に本発明の多型の有無を検出することができる。DNAチップなどのDNAマイクロアレイアッセイとしてはGeneChipアッセイが挙げられる(Affymetrix社;米国特許第6,045,996号、同第5,925,525号、及び同第5,858,659号参照)。GeneChip技術は、チップに貼り付けたオリゴヌクレオチドプローブの小型化高密度マイクロアレイを利用するものである。
【0074】
インベーダー法とは、SNP等の多型のそれぞれのアレルに特異的な2種類のレポータープローブ及び1種類のインベーダープローブの鋳型DNAへのハイブリダイゼーションと、DNAの構造を認識して切断するという特殊なエンドヌクレアーゼ活性を有するCleavase酵素によるDNAの切断を組み合わせた方法である(Livak, K. J. Biomol. Eng. 14, 143-149 (1999); Morris T. et al., J. Clin.Microbiol. 34, 2933 (1996); Lyamichev, V. et al., Science, 260, 778-783 (1993)等)。
TILLING(Targeting Induced Local Lesions IN Genomes)法とは、変異導入した突然変異体集団のゲノム中の変異ミスマッチをPCR増幅とCEL Iヌクレアーゼ処理によってスクリーニングする方法である。
【0075】
一態様において、本発明のスクリーニング方法は、被験植物のゲノムから本発明の多型マーカー陽性を検出する工程を含んでもよい。かかる工程は、被験植物からゲノムDNAを抽出し、当該ゲノムDNAに対して本発明の多型マーカーを検出する操作を含む。多型マーカーはすでに述べたとおり、P01~P05からなる群より選択される少なくとも一つである。また、多型マーカー陽性とは、P01~P05からなる群より選択される少なくとも一つのマーカーについて陽性であることを意味する。
P01~P05の陽性の検出方法については既に述べた通りである。
この態様において、本発明のスクリーニング方法は、本発明の多型マーカー陽性が検出された植物体を被験植物の中から選択する工程をさらに含んでもよい。
【0076】
ある実施態様では、被験植物のゲノムDNAに対し下記のプライマーセット(1)~(5)の少なくとも一つを用いてPCR増幅を行う工程、
前記PCR増幅により得られたPCR産物を制限酵素で処理し、制限酵素処理産物を検出する工程、
を含む、高レバウジオシドM含有非遺伝子組み換えステビア植物体のスクリーニング方法が提供される。

(1)配列番号1に示す塩基配列を含むフォワードプライマー及び配列番号2に示す塩基配列を含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、
(2)配列番号3に示す塩基配列を含むフォワードプライマー及び配列番号4に示す塩基配列を含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、
(3)配列番号5に示す塩基配列を含むフォワードプライマー及び配列番号6に示す塩基配列を含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、
(4)配列番号7に示す塩基配列を含むフォワードプライマー及び配列番号8に示す塩基配列を含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、又は
(5)配列番号9に示す塩基配列を含むフォワードプライマー及び配列番号10に示す塩基配列を含むリバースプライマーを含む、プライマーセット。 PCR増幅の条件についてはすでに述べたとおりである。
【0077】
但し、プライマーセットは配列番号1~10の配列を有するものに限定されるものではなく、例えばフォワードプライマーとしては配列番号1、3、5、7又は9の3‘側末端から15塩基上流までの配列(下記表参照)を3’末端に有するものであればよくリバースプライマーとしては配列番号2、4、6、8又は10の3‘側末端から15塩基上流までの配列(下記表参照)を3’末端に有するものであればよい。このようなプライマーは、15~50塩基長、20~45塩基長の長さにあってもよい。
【表1】
【0078】
プライマーセットは配列番号1~10の配列を有するものに限定されるものではなく、例えばフォワードプライマーとしては配列番号1、3、5、7又は9における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むものであればよく、リバースプライマーとしては配列番号2、4、6、8又は10における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むものであればよい。

(1’’)配列番号1における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマー及び配列番号2における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、
(2’’)配列番号3における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマー及び配列番号4における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、
(3’’)配列番号5における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマー及び配列番号6における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、
(4’’)配列番号7における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマー及び配列番号8における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むリバースプライマーを含む、プライマーセット、あるいは
(5’’)配列番号9における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマー及び配列番号10における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むリバースプライマーを含む、プライマーセット。 このようなプライマーは、前記任意の連続する15塩基以上の配列が3‘側末端に存在すれば、15~50塩基長、20~45塩基長、30~65塩基長の長さにあってもよい。
【0079】
本発明のスクリーニング方法は、本発明の遺伝的特徴が検出された被験ステビア植物の組織(例えば葉)のRebMの含有量を測定する工程をさらに含んでもよい。RebM含有量の測定は、本発明の植物体の項に記載したとおりである。また、この態様において、本発明の遺伝的特徴が検出された被験ステビア植物体のうち、RebMの含有量が高い個体を選択して、これを他のステビア植物体と交配し、得られた子植物体について、本発明のスクリーニング方法を適用してもよい。したがって、本発明のスクリーニング方法は、以下の1以上の工程を含み得る。
(i)被験ステビア植物のゲノムから、本発明の遺伝的特徴を検出する工程、
(ii)本発明の遺伝的特徴が検出された被験ステビア植物組織のRebMの含有量を測定する工程、
(iii)本発明の遺伝的特徴が検出された被験ステビア植物体のうち、RebMの含有量が高い個体を選択する工程、
(iv)選択したRebMの含有量が高い個体を他のステビア植物体と交配する工程、
(v)交配により得られた子植物体のゲノムから、本発明の遺伝的特徴を検出する工程、
(vi)本発明の遺伝的特徴が検出された子植物組織のRebMの含有量を測定する工程、
(vii)本発明の遺伝的特徴が検出された子植物体のうち、RebMの含有量が高い個体を選択する工程。
【0080】
選択するRebMの含有量が高い個体は、例えば、本発明の遺伝的特徴が検出された被験ステビア植物体のうち、RebMの含有量の高さに関し上位50%まで、上位40%まで、上位30%まで、上位20%まで、上位10%まで、上位5%まで、上位4%まで、上位3%まで、上位2%まで又は上位1%までの個体などであってよい。また、交配する他のステビア植物体は、本発明の遺伝的特徴を含んでいても含んでいなくてもよい。上記態様において、工程(iv)~(vii)は、複数回繰り返すことができる。このようにして、RebMの含有量がより高いステビア植物体をスクリーニングすることができる。
【0081】
本発明のスクリーニング方法において、被験ステビア植物体は、天然植物体であっても、非遺伝子組換植物体であってもよい。非遺伝子組換植物体については、本発明の植物体の項に記載したとおりである。
本発明のスクリーニング方法において、被験ステビア植物体は、突然変異誘発処理を行ったステビア植物及びその子孫植物を含んでもよい。突然変異誘発処理については、本発明の植物体の項に記載したとおりであり、変異誘発剤による処理や、放射線又は光線の照射による処理等を含む。
【0082】
また、本発明は、上記に記載されたプライマーセット、例えば、上記(1)~(5)、(1’)~(5’)及び(1’’)~(5’’)からなる群より選択されるいずれか一つ以上のプライマーセットを提供する。本発明は、さらに、配列番号35~44からなる群から選択される塩基配列を有する領域をPCRにより増幅し得るプライマーセット、例えば、配列番号45の塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号46の塩基配列を含むリバースプライマーとのプライマーセット、配列番号47の塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号48の塩基配列を含むリバースプライマーとのプライマーセット、配列番号49の塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号50の塩基配列を含むリバースプライマーとのプライマーセット、配列番号51の塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号52の塩基配列を含むリバースプライマーとのプライマーセット、配列番号53の塩基配列を含むフォワードプライマーと、配列番号54の塩基配列を含むリバースプライマーとのプライマーセットを提供する。
【0083】
さらに、本発明は、本発明の遺伝的特徴の存在及び/又は不在を検出し得るプローブ(以下、「本発明のプローブ」と称する場合がある)を提供する。本発明のプローブは、本発明の遺伝的特徴の存在及び/又は不在の各種検出方法に適した構造を有し得る。例えば、本発明のプローブは、本発明の変異部位を含むゲノムの部分に相補性を有する塩基配列を含み得る。かかるプローブの非限定例としては、配列番号55~64から選択される塩基配列を含むものが挙げられる。これらの配列のうち、配列番号55、57、59、61及び63は本発明の変異を含むアレルに特異的であり、配列番号56、58、60、62及び64は、本発明の変異を含まないアレルに特異的である。本発明の遺伝的特徴の存在は、本発明の変異を含むアレルの検出及び/又は本発明の変異を含まないアレルの非検出により検出することができ、本発明の遺伝的特徴の不在は、本発明の変異を含むアレルの非検出及び/又は本発明の変異を含まないアレルの検出により検出することができる。本発明のプローブは、好ましくは標識を有する。かかる標識の非限定例としては、蛍光標識、発光標識、放射性標識、色素、酵素、クエンチャー、検出可能な標識との結合部分等が挙げられる。特定の態様において、本発明のプローブは、配列番号55~64から選択される塩基配列と、標識とを有する。
【0084】
本発明はさらに、上記(1)~(5)、(1’)~(5’)及び(1’’)~(5’’)からなる群より選択されるいずれか一つ以上のプライマーセットと、場合により制限酵素とを含む、スクリーニング用キットを提供する。
当該キットにおいて、(1)、(1’)及び(1’’)からなる群より選択される選択されるいずれか一つ以上のプライマーセットを用いる場合、前記キットに含まれる制限酵素はXbaIである。
当該キットにおいて、(2)、(2’)及び(2’’)からなる群より選択される選択されるいずれか一つ以上のプライマーセットを用いる場合、前記キットに含まれる制限酵素はKpnIである。
当該キットにおいて、(3)、(3’)及び(3’’)からなる群より選択される選択されるいずれか一つ以上のプライマーセットを用いる場合、前記キットに含まれる制限酵素はAflIIである。
当該キットにおいて、(5)、(5’)及び(5’’)からなる群より選択される選択されるいずれか一つ以上のプライマーセットを用いる場合、前記キットに含まれる制限酵素はPvuIである。
【0085】
当該キットの別の態様において、
前記プライマーセットが配列番号1における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマーを含む場合は、前記制限酵素はXbaIを含み、
前記プライマーセットが配列番号3における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマーを含む場合は、前記制限酵素はKpnIを含み、
前記プライマーセットが配列番号5における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマーを含む場合は、前記制限酵素はAflIIを含み、
前記プライマーセットが配列番号9における任意の連続する15塩基以上の配列を有する又は含むフォワードプライマーを含む場合は、前記制限酵素はPvuIを含む。
【0086】
本発明はまた、配列番号35~44からなる群から選択される塩基配列を有する領域をPCRにより増幅し得るプライマーセットと、本発明のプローブとを含む、スクリーニング用キットを提供する。
【0087】
これらのプライマーセット、プローブ及びキットは、本発明の遺伝的特徴を検出するために用いること、本発明のスクリーニング方法に用いることなどが可能である。また、これらのプライマーセット及びキットには、本発明の遺伝的特徴の検出や、本発明のスクリーニング方法に関する説明を含む指示、例えば、使用説明書や、使用方法に関する情報を記録した媒体、例えば、フレキシブルディスク、CD、DVD、ブルーレイディスク、メモリーカード、USBメモリーなどが含まれていてもよい。
【0088】
5.植物体由来抽出物の製造方法及び当該抽出物を用いた製品
本発明のさらなる態様において、本発明の植物体、又は当該植物体の種子若しくは葉(例えば、乾燥葉又は新鮮葉)から抽出物を得る工程を含む、レバウジオシドM含有抽出物の製造方法(以下、「本発明の抽出物の製造方法」と称する場合がある)が提供される。さらに、本発明の抽出物の製造方法により得られた抽出物からレバウジオシドMを精製する工程を含む、レバウジオシドMの製造方法(以下、「本発明のレバウジオシドMの製造方法」と称する場合がある)が提供される。
具体的には、本発明の高レバウジオシドM含有型ステビア植物体、本発明のスクリーニング方法により選別された高レバウジオシドM含有型ステビア植物体又は本発明の方法により製造された高レバウジオシドM含有型ステビア植物体からレバウジオシドM、レバウジオシドD又はその両方を含む抽出物を得る工程を含む、レバウジオシドM、レバウジオシドD又はその両方の製造方法が提供される。
レバウジオシドM、レバウジオシドD又はその両方を含む抽出物は、本発明の植物体の新鮮葉又は乾燥葉に適切な溶媒(水等の水性溶媒又はアルコール、エーテル及びアセトン等の有機溶媒)を反応させることにより得ることができる。抽出条件等はOhta et al.、J. Appl. Glycosci.、 Vol. 57、 No. 3 (2010)又はWO2010/038911に記載の方法や、後述の実施例に記載の方法を参照することができる。
また、レバウジオシドM、レバウジオシドD又はその両方を含む抽出物を酢酸エチルその他の有機溶媒:水の勾配、高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography:HPLC)、ガスクロマトグラフィー、飛行時間型質量分析(Time-of-Flight mass spectrometry:TOF-MS)、超高性能液体クロマトグラフィー(Ultra (High) Performance Liquid chromatography:UPLC)等の公知の方法を用いることによりレバウジオシドM、レバウジオシドD又はその両方を精製することができる。
【0089】
本発明の抽出物の製造方法により得られた抽出物(以下、「本発明の抽出物」という)は、野生型ステビア種と比べレバウジオシドM、レバウジオシドD又はその両方をより高い含量で含む。
本発明の抽出物は、野生型ステビア種から得られた抽出物と比べレバウジオシドM、レバウジオシドD又はその両方を300%以上、400%以上、500%以上、600%以上、700%以上、800%以上、900%以上、1100%以上、1200%以上、1300%以上、1400%以上、1500%以上、1600%以上、1700%以上、1800%以上、1900%以上、2000%以上、2100%以上、2200%以上、2300%以上、2400%以上、2500%以上、2600%以上、2700%以上、2800%以上、2900%以上、3000%以上、3100%以上、3200%以上、3300%以上、3400%以上、3500%以上、3600%以上、3700%以上、3800%以上、3900%以上、4000%以上、4100%以上、4200%以上、4300%以上、4400%以上、4500%以上、4600%以上、4700%以上、4800%以上、4900%以上、5000%以上高い含量で含んでいてもよい。ここで、本発明の抽出物と、野生型ステビア種から得られた抽出物は、同じ方法で得られたものであってよい。
【0090】
このようにして得られた本発明の抽出物及び/又は本発明のレバウジオシドM、レバウジオシドD又はその両方の製造方法により得られるレバウジオシドM、レバウジオシドD又はその両方と他の成分とを混合することにより、レバウジオシドM、レバウジオシドD又はその両方の含量を高めた新規な医薬品、香料又は飲食品を製造することができる。そこで、本発明は、別の実施態様として、本発明の抽出物及び/又は本発明のレバウジオシドM、レバウジオシドD又はその両方の製造方法により得られるレバウジオシドM、レバウジオシドD又はその両方と他の成分とを混合する工程を含む、医薬品、香料又は飲食品の製造方法を提供する。さらに、本発明は、前記製造方法により得られた、レバウジオシドM、レバウジオシドD又はその両方の含量を高めた新規な医薬品、香料又は飲食品を提供する。ここで飲食品とは、飲料及び食品を意味する。したがって、ある実施態様では、本発明は新規な医薬品、香料、飲料又は食品を提供し、また、当該医薬品、香料、飲料又は食品の製造方法を提供する。
【実施例0091】
以下に本発明に関する実験例、実施例等を記載するが、本発明はこれらの具体的な態様に限定されるものではない。
【0092】
[実施例1]高RebMステビア植物の作製
1.育種素材の導入及び初期選抜
2014年8月に市販ステビア種子を播種、育苗し、同年10月~2015年3月までの間に約3、000個体について生育状況及び葉形態によって選抜を行った。2015年4月に得られた115個体についてLC-MS/MSを用いた定量分析により各ステビオール配糖体の含有量及び含有率を測定し、RebD及びRebMの含有率が高い3個体(2成分合計でTSGに占める割合が20%以上の個体)を選抜した。同時に、総ステビオール配糖体(TSG)含量によっても選抜も実施し、TSG収率(単位リーフ乾物重より得られる測定可能なステビオール配糖体の総量)が20%以上の14個体を得た。
【0093】
2.自殖系統の作製及び選抜
上記で得られた115個体より、生育状況が良い高RebA型の5個体を選抜し、2015年1月より個体間もしくは個体内で人工授粉を行い、同年3月に集団採種を実施して自殖第一代(S1種子)を得た。さらに、これらS1種子を播種・育苗し、105個体のS1個体群を得た。2015年6月、これらのS1個体群を個体別に育成し、個体内での人工授粉により自殖第二代(S2種子)を得た。得られたS2種子は得られたS1個体ごとに系統として区別し105系統のS2個体群を得た。その後、得られたS2個体の生育状況を確認し、生育良好な個体について各個体の葉を4枚サンプリングし、LC-MS/MSを用いてステビオール配糖体量の定量分析を行った。得られた分析結果より、RebD含量、RebM含量及びTSG量を算出し、葉100g当たりのRebD含量+RebM含量の合算値が2g(=2%)を超える個体を優良個体として選抜した。
【0094】
3.雑種系統の作製及び選抜
成分分析によって選抜した高RebDかつ高RebM植物体(3個体)、及び高TSG植物体(6個体)を育種母本として合計53組合せの交雑試験に供した。上記選抜個体は2015年4月に挿し木によって栄養繁殖を行い同年6月に苗を確立し、同年11月までの間に養生してそれぞれ複数株の親株を確立した。2016年1月より人工交配を開始し、各組合せ1、000粒程度の雑種種子(F1種子)を得たのち、同年3月より得られたF1種子の播種・育苗を行った。その後、得られたF1個体の生育状況を確認し、生育良好な個体について各個体の葉を4枚サンプリングし、LC-MS/MSを用いてステビオール配糖体量の定量分析を行った。得られた分析結果より、RebD含量、RebM含量及びTSG量を算出し、RebD含量+RebM含量の合算値が2g/100g(=2%)を超える個体を優良個体として選抜した。
【0095】
4.遺伝マーカーの作製
初期選抜で得られた10個体を用いて遺伝マーカーの作製を行った。2015年6月、RebD+RebM含量率の合算値に基づいて高(29.16%以上)・低(6.06%以下)の2グループに分類し、二次代謝物の生合成経路を活性化することで知られているWRKYコード領域及びWD40コード領域において各グループに共通する多型探索を実施、特定の一塩基多型(SNP)を取得した。得られたSNPに基づいてプライマー設計と制限酵素の選択を行い、特定のSNPの識別を可能とする多型マーカー(1)~(5)を確立した。
【0096】
(1)P01
マーカーP01の検出には以下のプライマーを用いてPCRを行い、PCR産物に制限酵素(XbaI)を添加し、37℃で酵素反応を行い、制限酵素による処理を行った。制限酵素処理後、マイクロチップ型電気泳動装置LabChip GX Touch HTにより電気泳動を行い、電気泳動後のバンドパターンによってマーカーの識別を行った。
プライマーの配列は以下のとおり。
Fwプライマー:5’-AAGGTTCTTTATTTTTAAACTTATGTTAATTTATTGTATCTAG-3’(配列番号1)
Rvプライマー:5’-CCTTATGTACACATGCTACAC-3’(配列番号2)
得られたPCR産物(約383bp長)に対しXbaI制限酵素処理を行い、約344bpの制限酵素処理産物(例えば、配列番号23)を生じなかったものをP01陽性とした。
【0097】
(2)P02
マーカーP02の検出には以下のプライマーを用いてPCRを行い、PCR産物に制限酵素(KpnI)を添加し、37℃で酵素反応を行い、制限酵素による処理を行った。制限酵素処理後、マイクロチップ型電気泳動装置LabChip GX Touch HTにより電気泳動を行い、電気泳動後のバンドパターンによってマーカーの識別を行った。
プライマーの配列は以下のとおり。
Fwプライマー:5’-TAATCATCCAAACCCTAATCTCGCCAAACAACCGGGTAC-3’(配列番号3)
Rvプライマー:5’-GAGGAAGACATTGGCAACTC-3’(配列番号4)
得られたPCR産物(約297bp長)に対しKpnI制限酵素処理を行い、約260bpの制限酵素処理産物(例えば、配列番号26)を生じなかったものをP02陽性とした。
【0098】
(3)P03
マーカーP03の検出には以下のプライマーを用いてPCRを行い、PCR産物に制限酵素(AflII)を添加し、37℃で酵素反応を行い、制限酵素による処理を行った。制限酵素処理後、マイクロチップ型電気泳動装置LabChip GX Touch HTにより電気泳動を行い、電気泳動後のバンドパターンによってマーカーの識別を行った。
プライマーの配列は以下のとおり。
Fwプライマー:5’-CGATGGTTTTTGCTACATGAAAACCCTAGAAGACGAAACCCGCTTAA-3’(配列番号5)
Rvプライマー:5’-ACCAGCAATAATCCTTGAATTAG-3’(配列番号6)
得られたPCR産物(約390bp長)に対しAflII制限酵素処理を行い、約347bpの制限酵素処理産物(例えば、配列番号29)を生じなかったものをP03陽性とした。
【0099】
(4)P04
マーカーP04の検出には以下のプライマーを用いてPCRを行った。PCR産物をマイクロチップ型電気泳動装置LabChip GX Touch HTで電気泳動させ、電気泳動後のバンドパターンによってマーカーの識別を行った。
プライマーの配列は以下のとおり。
Fwプライマー:5’-CGCAAACACGTATACTAATC-3’(配列番号7)
Rvプライマー:5’-TTTAGCATGGTATGTACAAC-3’(配列番号8)
約140bpのPCR産物のみ(例えば、配列番号30)を生じたものをP04陽性とした。
【0100】
(5)P05
マーカーP05の検出には以下のプライマーを用いてPCRを行い、PCR産物に制限酵素(PvuI)を添加し、37℃で酵素反応を行い、制限酵素による処理を行った。制限酵素処理後、マイクロチップ型電気泳動装置LabChip GX Touch HTにより電気泳動を行い、電気泳動後のバンドパターンによってマーカーの識別を行った。
プライマーの配列は以下のとおり。
Fwプライマー:5’-ATACAAAAACACAACCCATATGGTCAAATCAACCCATTCATGAGCGATC-3’(配列番号9)
Rvプライマー:5’-CCCTTGTAAATCCCATATGTAG-3’(配列番号10)
得られたPCR産物(約288bp長)に対しPvuI制限酵素処理を行い、約240bpの制限酵素処理産物(例えば、配列番号33)を生じなかったものをP05陽性とした。
【0101】
5.遺伝マーカーの検証
上記で確立した多型マーカーと第I個体群を用いて、マーカーの検証実験を実施した。第I個体群192個体の成分分析を行い、RebM含量値に基づいて、上位8個体(0.35%以上)・下位8個体(0.12%以下)を選抜し、上記のとおりマーカー検定を行った。その結果、RebM含量が高い上位8個体のみが目的の多型を陽性に持つ個体として選抜された(図1)。
第II個体群についても同様に検証実験を行った。第II個体群137個体の成分分析を行い、RebM含量値に基づいて、上位8個体(0.24%以上)・下位8個体(0.01%以下)を選抜し、マーカー検定を行った。その結果、RebM含量が高い上位8個体のみが目的の多型を持つ個体として選抜された(図2)。図1及び2では高RebM表現型を有する個体にのみ目的サイズのバンドが生じていることが分かる。
【0102】
6.サンプル集団の増加
遺伝マーカーの検証時に用いた2つの分離集団、第I及び第II個体群について、さらなる検証のために個体数を増加して実験を行った。上記の個体数を含めてそれぞれ、62個体、109個体を用いた。RebM含量に基づいて0.2%以上、0.1%以上~0.2%未満、0%以上~0.1%未満の3群に分割し、マーカー検定を行った結果、0.2%以上群が本マーカーにより優先的に検出される結果となり、陽性個体の出現頻度が群間で統計的に有意に異なることが証明された(カイ二乗検定による適合度検定、帰無仮説はマーカー検定結果と表現型が紐づかず頻度分布が均等であると仮定。検定結果は下表を参照)。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0103】
7.高RebM植物体の選抜
上記で得られた遺伝マーカーを用いて高RebM植物体の選抜を行ったところ、検証用集団以外の分離集団においても下表のとおりRebM比率が2%以上の個体を選抜することができ、実用的な選抜マーカーになり得ることを確認した。高RebM植物体の選抜結果を以下の表に示す。表中の「○」はマーカー検定結果が陽性であることを表す。
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明によってレバウジオシドM及びDがより効率的に提供可能になるので、レバウジオシドM及びDを十分な量含むことによって上質な味質の医薬品、香料又は飲食品などを提供することができる。
図1
図2
【配列表】
2023075257000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書または図面に記載の発明