(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075265
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】ヒト胎盤コラーゲン組成物、並びにそれらの製造方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
A61L 27/24 20060101AFI20230523BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20230523BHJP
A61L 27/26 20060101ALI20230523BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20230523BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20230523BHJP
A61K 35/50 20150101ALI20230523BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20230523BHJP
A61K 38/39 20060101ALI20230523BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230523BHJP
A61L 15/32 20060101ALI20230523BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230523BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230523BHJP
C12N 5/0735 20100101ALI20230523BHJP
C12N 5/074 20100101ALI20230523BHJP
C12N 5/0775 20100101ALI20230523BHJP
C12N 5/0789 20100101ALI20230523BHJP
C12N 5/00 20060101ALI20230523BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
A61L27/24
A61L27/22
A61L27/26
A61K9/70 401
A61K35/28
A61K35/50
A61K35/545
A61K38/39
A61K47/42
A61L15/32 100
A61L15/32 310
A61P17/02
A61P43/00 107
A61P43/00 121
C12N5/0735
C12N5/074
C12N5/0775
C12N5/0789
C12N5/00
A61L27/38
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039301
(22)【出願日】2023-03-14
(62)【分割の表示】P 2021059080の分割
【原出願日】2007-10-09
(31)【優先権主張番号】60/850,131
(32)【優先日】2006-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520169074
【氏名又は名称】セルラリティ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】モヒト ブハトイア
(72)【発明者】
【氏名】クフリス ルゴ
(72)【発明者】
【氏名】キアン イエ
(72)【発明者】
【氏名】ジャメス ダブリュー.エドインゲル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】哺乳動物の組織を増大し、又は置換するために有用な、ヒト胎盤テロペプチドコラーゲンを含む組成物、該組成物を調製する方法、これらの使用方法及び該組成物を含むキットを提供する。
【解決手段】塩基処理、界面活性剤処理テロペプチド胎盤コラーゲンを含む組成物であって、3重量%~5重量%のエラスチン、及び0.01重量%未満のラミニン又は0.01重量%未満のフィブロネクチンを更に含む、前記組成物とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基処理、界面活性剤処理テロペプチド胎盤コラーゲンを含む組成物であって、3重量%
~5重量%のエラスチン、及び0.01重量%未満のラミニン又は0.01重量%未満のフィブロネク
チンを更に含む、前記組成物。
【請求項2】
前記胎盤コラーゲンが、ヒト胎盤コラーゲンである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記コラーゲンが、架橋されている、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記コラーゲンが、グルタルアルデヒドで架橋されている、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
界面活性剤処理テロペプチド胎盤コラーゲンを含む組成物であって、検出可能な量のフ
ィブロネクチン、少なくとも乾燥重量で80%のコラーゲン、及び少なくとも乾燥重量で10%
のエラスチンを含む、前記組成物。
【請求項6】
複数の幹細胞を含む、請求項1又は請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記幹細胞が、胚幹細胞、胚生殖細胞、間葉幹細胞、骨髄由来幹細胞、末梢血液からの
造血幹細胞、胎児血液からの造血幹細胞、胎盤血液からの造血幹細胞、臍帯血液からの造
血幹細胞、胎盤潅流液からの造血幹細胞、体性幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞、膵臓幹細
胞、内皮幹細胞、心臓幹細胞、筋幹細胞、脂肪幹細胞、又はCD34-胎盤幹細胞である、請
求項6記載の組成物。
【請求項8】
前記CD34-胎盤幹細胞がCD200+である、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
前記CD34-胎盤幹細胞が、
a. CD200+又はHLA-G+であり;
b. CD73+、CD105+及びCD200+であり;
c. CD200+及びOCT-4+であり;
d. CD73+、CD105+及びHLA-G+であり、CD73+及びCD105+であり、胎盤細胞の集団にある
場合は、胚様体の形成を可能にする条件下で1つ以上の胚様体の形成を促進し;又は
e. OCT-4+であり、胎盤細胞の集団にある場合は、胚様体の形成を可能にする条件下で
培養されると、前記幹細胞を含む単離胎盤細胞の集団における1つ以上の胚様体の形成を
促進する、請求項7記載の組成物。
【請求項10】
2つ以上の型の幹細胞を含む、請求項6記載の組成物。
【請求項11】
複数の非幹細胞を含む、請求項1、5又は6記載の組成物。
【請求項12】
シートとして成形された、請求項1、5又は6記載の組成物。
【請求項13】
チューブとして成形された、請求項1、5又は6記載の組成物。
【請求項14】
メッシュとして成形された、請求項1、5又は6記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、創傷又は傷害の部位に適合するように成形される、請求項1、5又は6記
載の組成物。
【請求項16】
請求項1又は5記載の組成物を哺乳動物(ヒトを除く。)の組織に投与することを含む
、哺乳動物(ヒトを除く。)の組織を増大し、増量し、又は置換する方法。
【請求項17】
請求項1又は5記載の組成物と、該組成物を投与するための説明書を伴うラベルとを含む
、哺乳動物の組織を増大し、増量し、又は置換するためのキット。
【請求項18】
哺乳動物の胎盤組織からテロペプチド胎盤コラーゲンを含む組成物を調製するための方
法であって:
a.該組織を浸透圧ショック溶液と接触させて、コラーゲンを含む組成物を得る工程と;
b.該コラーゲンを含む組成物を界面活性剤と接触させる工程と;
c.該界面活性剤処理したコラーゲンを含む組成物を塩基性溶液と接触させる工程と;を
含み、
前記組成物が、3重量%~5重量%のエラスチン、及び0.01重量%未満のラミニン又は0.01
重量%未満のフィブロネクチンを含む、前記方法。
【請求項19】
前記浸透圧ショック溶液が、50mM NaCl未満の浸透ポテンシャルをもつ水を含む、請求
項18記載の方法。
【請求項20】
工程(a)が、前記組織を、少なくとも0.5M NaClの溶液の浸透ポテンシャルを有する溶液
と接触させることに先行又は後続する、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記塩基性溶液が、少なくとも0.5M NaOHを含む、請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記塩基処理、界面活性剤処理コラーゲン溶液を濾過する工程を更に含む、請求項18記
載の方法。
【請求項23】
前記コラーゲンを架橋して、架橋されたコラーゲンを得る工程を更に含む、請求項18記
載の方法。
【請求項24】
前記コラーゲンをグルタルアルデヒドで架橋する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記架橋されたコラーゲンを剪断する工程を更に含む、請求項18記載の方法。
【請求項26】
前記コラーゲン組成物を、1つ以上のウイルス粒子がフィルターを通過することができ
るが該コラーゲン組成物を保持するサイズのフィルターと接触させる工程を更に含む、請
求項18記載の方法。
【請求項27】
前記フィルターが約500kDa、約750kDa又は約1000kDaである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
請求項1記載の組成物を複数の幹細胞と接触させることを含む、組成物を製造する方法
。
【請求項29】
前記複数の幹細胞の少なくとも一部を前記組成物に接着させることを含む、請求項28記
載の方法。
【請求項30】
前記幹細胞を前記組成物上で増殖させることを含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記幹細胞が前記組成物上で密集するまで増殖する、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記幹細胞が、前記組成物と接触すると、検出可能な量のIL-6、IL-8及び/又はMCP-1を
生成する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
請求項1又は9記載の組成物を含む、溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1. 先行関連出願)
本出願は、その全体が引用により本明細書中に組み込まれている、2006年10月6日出願
の米国仮特許出願第60/850,131号の利益を主張するものである。
【0002】
(2. 発明の分野)
本発明は、コラーゲン、例えばヒト胎盤コラーゲンを含む組成物、該組成物を調製する
方法及びこれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(3. 発明の背景)
コラーゲンは、腱、骨、歯、並びに皮膚及び内部臓器を支持するシートを含む体の多く
の構造を形成するタンパク質である。コラーゲンは、三重らせんに巻きついた三本鎖で構
成される。該構造は、3アミノ酸の繰り返しから生じる。らせん体において、3アミノ酸毎
にグリシンがあり、残りのアミノ酸の多くは、プロリン又はヒドロキシプロリンである。
【0004】
コラーゲンは、商業的に、及び臨床的にしばらくの間使用されてきた。現在では、コラ
ーゲンは、皮膚、腱、軟骨、骨及び間質などの硬又は軟結合組織を置換し、又は増大する
ために使用することができる。固体コラーゲンは、外科的に移植されてきたが、現在は、
注射用コラーゲン製剤をより便利な投与のために利用できる。現在では、ザイダーム(Zyd
erm)(登録商標)、ザイプラスト(Zyplast)(登録商標)、コスモダーム(Cosmoderm)(登録商
標)及びコスモプラスト(Cosmoplast)(登録商標)を含むいくつかの注射用コラーゲン組成
物が市販されている。
【0005】
それぞれのコラーゲン組成物は、特定の技術におけるその使用について、有利又は不利
であり得る特定の物理的性質を有する。従って、当該技術分野において、当業者が利用で
きる組成物の選択を拡大するために、更なる物理的特性をもつコラーゲン組成物に対する
需要が依然として残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(4. 発明の要旨)
本発明は、一部において、例えば哺乳動物の組織を増大し、又は置換するために有用で
あるコラーゲン組成物の発見に基づいている。ある実施態様において、該コラーゲン組成
物は、供給源組織からの実質的に高収率のコラーゲンで調製される。ある実施態様におい
て、本発明のコラーゲン組成物は、汚染、例えば細胞及び/又は他のタンパク質汚染物質
による汚染が小さい。本発明のある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、有
利なことに低毒性を示す。本発明のある実施態様において、該コラーゲン組成物は、テロ
ペプチドコラーゲン組成物の調製のための有利な供給源を提供する。
【0007】
一つの態様において、塩基処理、界面活性剤処理テロペプチドコラーゲンを含む組成物
を本明細書に示す。当該組成物を、供給源として哺乳動物の組織から開始するのでさえも
、比較的少数の工程から容易に調製することができることが見出されている。本明細書に
示すある組成物は、細胞細片、細胞下細片及び/又はフィブロネクチン、ラミニン、サイ
トカイン及び成長因子などの汚染タンパク質が実質的にない。本明細書に示すある組成物
は、高コラーゲン含有量を含む。ある実施態様において、該組成物は、該組成物における
タンパク質の全量と比較した場合に少なくとも90%のコラーゲンを含む。ある他の実施態
様において、該コラーゲン組成物は、ラミニン及び/又はフィブロネクチンを実質的に欠
く(例えば、該組成物は、それぞれ乾燥重量で1%未満のラミニン及び/又はフィブロネクチ
ンを含み、或いは検出可能なフィブロネクチン及び/又はラミニンを欠く)。
【0008】
別の態様において、本発明は、本発明のコラーゲン組成物、例えば、複数の幹細胞を含
む塩基処理、界面活性剤処理テロペプチドコラーゲンを提供する。様々な実施態様におい
て、幹細胞は、胚幹細胞、胚生殖細胞、間葉幹細胞、骨髄由来幹細胞、造血性前駆細胞(
例えば、末梢血液、胎児血液、胎盤血液、臍帯血液、胎盤潅流液等由来の造血幹細胞)、
体性幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞、膵臓幹細胞、内皮幹細胞、心臓幹細胞、筋幹細胞及
び脂肪幹細胞等である。
【0009】
より具体的な実施態様において、幹細胞は、胎盤幹細胞である。より具体的な実施態様
において、前記胎盤幹細胞は、CD34-及び/又はCD200+である。該胎盤幹細胞は、CDlO、CD
73、CD105、CD200、HLA-G及び/又はOCT-4を発現することができ、CD34、CD38又はCD45の
発現を欠く。該胎盤幹細胞は、HLA-ABC(MHC-1)及びHLA-DRを発現することもできる。別の
具体的な実施態様において、本発明の組成物と組み合わせることができる幹細胞は、CD20
0+又はHLA-G+である。別の具体的な実施態様において、該胎盤幹細胞は、CD73+、CD105+
及びCD200+である。別の具体的な実施態様において、該胎盤幹細胞は、CD200+及びOCT-4+
である。別の具体的な実施態様において、該胎盤幹細胞は、CD73+、CD105+及びHLA-G+で
ある。別の具体的な実施態様において、該胎盤幹細胞は、CD73+及びCD105+であり、胎盤
細胞の集団にある場合は、胚様体の形成を可能にする条件下で1つ以上の胚様体の形成を
促進する。別の具体的な実施態様において、該胎盤幹細胞は、OCT-4+であり、胎盤細胞の
集団にある場合は、胚様体の形成を可能にする条件下で培養されると、前記幹細胞を含む
単離胎盤細胞の集団における1つ以上の胚様体の形成を促進する。
【0010】
幹細胞を含む組成物を、幹細胞と組み合わせる前又は後に、任意の形状に成形すること
ができる。一実施態様において、前記組成物は、シート、例えば、2つの面を有する乾燥
シートとして成形され、前記幹細胞は、前記面の少なくとも1つに存在する。別の実施態
様において、該組成物は、チューブとして成形され、該幹細胞は、チューブの少なくとも
内面又は外面に存在する。別の具体的な実施態様において、該幹細胞を、該組成物に接着
させる。上記実施態様のいずれかの具体的な実施態様において、該幹細胞は、該組成物と
接触すると、IL-6、IL-8及び/又はMCP-1(単球走化性タンパク質-1)を分泌する。
【0011】
別の態様において、本発明は、塩基処理、界面活性剤処理テロペプチドコラーゲンを調
製するための方法を提供する。胎盤組織の供与源は、いずれの哺乳動物であることもでき
るが、ある実施態様においてヒト胎盤が使用される。胎盤組織は、可溶性若しくは不溶性
又は両方であるかにかかわらず、羊膜、絨毛膜及び臍帯を含む胎盤のいずれの部分由来で
あることも、又は胎盤全体由来であることもができる。ある実施態様において、胎盤コラ
ーゲンは、臍帯の除去後のヒト胎盤全体から調製される。
【0012】
ある実施態様において、本方法は、胎盤組織の浸透圧ショックを含む。いずれの特定の
作動理論によって拘束されることも意図しないが、浸透圧ショックは、組織の細胞を破裂
させ、これにより細胞、細胞成分及び血液成分の除去を容易にすることができると考えら
れる。浸透圧ショック工程により、本発明のコラーゲン組成物を有利な純度で得ることが
できる。浸透圧ショックは、当業者に公知のいずれの浸透圧ショック条件で行うこともで
きる。特定の実施態様において、浸透圧ショックは、高い塩条件におけるインキュベーシ
ョン、続く水溶液中でのインキュベーションによって行われる。インキュベーションは、
当業者の判断に従って繰り返すことができる。ある実施態様において、それらは、2回以
上繰り返される。
【0013】
浸透圧ショックに続いて、得られたコラーゲン組成物を界面活性剤で処理することがで
きる。界面活性剤は、供給源組織のタンパク質及び脂質細胞構成要素を可溶化できること
が当業者に知られている任意の界面活性剤であり得る。ある実施態様において、該界面活
性剤は、ドデシル硫酸又はデオキシコール酸ナトリウムなどのイオン性界面活性剤である
。ある実施態様において、該界面活性剤は、TWEEN(登録商標)界面活性剤又はTRITON(登録
商標)-X界面活性剤などの非イオン性界面活性剤である。ある実施態様において、該界面
活性剤は、両性イオン性である。ある他の実施態様において、該界面活性剤は、硫酸ドデ
シルナトリウム(SDS)である。ある実施態様において、該コラーゲン組成物は、供給源組
織の細胞又は細胞下構成要素を可溶化するための当業者に明らかな条件下で界面活性剤と
接触される。当業者の判断に応じて界面活性剤処理を繰り返すことができる。ある実施態
様において、それは、2回以上繰り返される。
【0014】
ある実施態様において、該コラーゲン組成物を塩基性条件下で処理することができる。
例えば、ある実施態様において、該コラーゲン組成物をアルカリ性溶液、例えば、水酸化
アンモニウム、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム溶液と接触させることができる。あ
る実施態様において、該コラーゲン組成物は、本発明の組成物を得るのに十分な時間にわ
たって約0.5M水酸化ナトリウムでインキュベートされる。当業者の判断に応じて塩基処理
を繰り返すことができる。ある実施態様において、それは、2回以上繰り返される。
【0015】
ある実施態様において、該方法の工程は、任意の順序で実施される。ある実施態様にお
いて、少なくとも1つの浸透圧ショック工程が、界面活性剤処理又は塩基性条件下におけ
る処理に先行する。ある実施態様において、少なくとも1つの浸透圧ショック工程は、塩
基処理に後続する界面活性剤処理に先行する。
【0016】
更なる態様において、本発明は、本発明のコラーゲン組成物を、それを必要とする哺乳
動物に投与することにより、哺乳動物の組織を増大し、又は置換する方法を提供する。あ
る実施態様において、哺乳動物は、ヒトである。コラーゲン組成物は、当業者に公知のい
ずれの技術に従って投与することもできる。ある実施態様において、コラーゲン組成物は
、注射によって投与される。ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物の流動特
性は、有利となる。ある実施態様において、該コラーゲン組成物を、その内容がその全体
において引用により本明細書中に組み込まれている米国特許公開第2004/0048796号に記載
の方法に従って細胞外マトリックスとして使用することができる。
【0017】
もう一つの態様において、本発明は、本発明のコラーゲン組成物を、それを必要とする
哺乳動物に投与するためのキットを提供する。キットは、典型的には当業者に配布するた
めの便利なパッケージ内に本発明のコラーゲン組成物を含む。キットは、本発明のコラー
ゲン組成物を哺乳動物に投与するための手段を更に含むことができる。手段は、注射器、
注射器及び針、カニューレその他などの当業者に公知のコラーゲン組成物を投与するため
のいずれの手段であることもできる。ある実施態様において、手段は、本発明のコラーゲ
ン組成物で予め充填されている。
【0018】
別の態様において、本発明は、創傷の治癒を促進する方法であって、創傷を本発明のコ
ラーゲン組成物と接触させることを含み、前記接触は、該組成物と接触していない創傷と
比較して該創傷の様相の検出可能に大きな改善をもたらす、前記方法を提供する。具体的
な実施態様において、該方法は、前記創傷を複数の幹細胞と接触させることを含む。より
具体的な実施態様において、前記幹細胞を、前記組成物を前記創傷と接触させることとは
別に、前記創傷と接触させる。別の具体的な実施態様において、前記組成物は前記幹細胞
を含む。別の具体的な実施態様において、前記組成物は、2つの面を有するシートとして
成形され、前記幹細胞は、前記面の少なくとも1つに存在する。別の具体的な実施態様に
おいて、該幹細胞を、該組成物に接着させる。上記実施態様のいずれかの具体的な実施態
様において、該幹細胞は、該組成物と接触すると、IL-6、IL-8及び/又はMCP-1(単球走化
性タンパク質-1)を分泌する。より具体的な実施態様において、幹細胞は、胎盤幹細胞で
ある。より具体的な実施態様において、前記胎盤幹細胞は、CD34-及び/又はCD200+である
。別の具体的な実施態様において、前記創傷は、足潰瘍である。該足潰瘍は、静脈性足潰
瘍、動脈性足潰瘍、糖尿病性足潰瘍又は褥瘡性足潰瘍であり得る。別の具体的な実施態様
において、前記組成物は創傷充填剤として使用される。
【0019】
別の態様において、本発明は、本発明のコラーゲン組成物を複数の幹細胞と接触させる
ことを含む、組成物の製造方法を提供する。一実施態様において、該方法は、前記複数の
幹細胞の少なくとも一部を前記組成物に接着させることを含む。別の実施態様において、
該方法は、前記幹細胞が前記組成物上で増殖させることを含む。具体的な実施態様におい
て、該方法は、前記幹細胞が前記組成物上で密集するまで増殖させることを含む。ある実
施態様において、前記幹細胞は、前記組成物と接触すると、検出可能な量のIL-6、IL-8及
び/又はMCP-1を生成する。別の具体的な実施態様において、該方法は、前記幹細胞が検出
可能な量の少なくとも1つの細胞外マトリックスタンパク質を堆積した後に該組成物を脱
細胞化することを含む。より具体的な実施態様において、細胞外マトリックスタンパク質
は、コラーゲン(例えば、I型、II型、III型又はIV型)、フィブロネクチン又はエラスチン
である。
【0020】
上記に、及び下記の節において詳細に記述したように、本発明の組成物、工程、方法及
びキットは、コラーゲン組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与するための有用性を
有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
(5. 図面の簡単な説明)
【
図1】細胞外マトリックス(ECM)を単離するための方法のフローチャート図である。
【0022】
【
図2A】異なる方法で製造されたコラーゲン組成物上で成長した胎盤幹細胞からのIL-6の分泌を示す図である。横軸:組成物の種類及び該組成物上の細胞の成長の時間による具体的な成長条件。縦軸:1000個のECM結合細胞あたりピコグラム毎ミリリットル。NC=細胞なし。Purecol=精製コラーゲン。TCPS=組織培養ポリスチレン。
【0023】
【
図2B】異なる方法で製造されたコラーゲン組成物上で成長した胎盤幹細胞からのIL-8の分泌を示す図である。横軸:組成物の種類及び該組成物上の細胞の成長の時間による具体的な成長条件。縦軸:1000個のECM結合細胞あたりピコグラム毎ミリリットル。NC=細胞なし。Purecol=精製コラーゲン。TCPS=組織培養ポリスチレン。
【0024】
【
図2C】異なる方法で製造されたコラーゲン組成物上で成長した胎盤幹細胞からのMCP-1の分泌を示す図である。横軸:組成物の種類及び該組成物上の細胞の成長の時間による具体的な成長条件。縦軸:1000個のECM結合細胞あたりピコグラム毎ミリリットル。NC=細胞なし。Purecol=精製コラーゲン。TCPS=組織培養ポリスチレン。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(6. 本発明の詳細な説明)
(6.1 定義)
本明細書に使用される以下の用語は、以下の意味を有するものとする:
【0026】
「コラーゲン」という用語は、当業者に公知の任意のコラーゲンをいう。
【0027】
「テロペプチドコラーゲン」という用語は、1つ以上のテロペプチド領域を含む、当業
者に認識されているコラーゲンの形を指す。
【0028】
「アテロペプチドコラーゲン」という用語は、1つ以上のテロペプチド領域を欠いてい
る、当業者によって認識されるとおりのコラーゲンの形態をいう。ある実施態様において
、以下に詳細に論議するように、テロペプチド領域は、プロテアーゼ消化によって除去す
ることができる。
【0029】
本明細書に使用される「生体適合性」又は「生体適合性の」とは、生体組織において中
毒性、有害性若しくは免疫学的な反応又は拒絶反応を生じないことにより、生物学的に適
合性である特性をいう。未知の材料に対する身体反応は、体に人工材料を使用するときの
主要な懸念であり、それ故、材料の生体適合性は、このような材料の重要な設計事項であ
る。
【0030】
本明細書に使用される「非発熱性」とは、試験して、0.5EU/mL以下の発熱物質、例えば
内毒素を含むことが見いだされた材料をいう。1EUは、1ミリリットルあたりおよそ0.1~0
.2ngのエンドトキシンであり、調査される参照により異なる。
【0031】
「被験体」という用語は、制限されないが、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤ
ギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、その他を含む哺乳動物などの動物をい
う。ある実施態様において、被験体は、ヒトである。
【0032】
(6.2 本発明の実施態様)
本発明は、コラーゲン組成物、コラーゲン組成物を調製する方法、コラーゲン組成物を
含むキット及びこれらの使用方法に向けられる。
【0033】
(6.2.1 本発明のコラーゲン組成物)
一つの実施態様において、本発明は、例えば哺乳動物の組織を増大し、又は置換するた
めに有用なコラーゲン組成物を提供する。ある実施態様において、本発明のコラーゲン組
成物は、有利な耐久性、注射可能性及び流動特性を有する。ある他の実施態様において、
本発明は、空間充填特性を有し、かつ例えば、該組成物が接触する組織における血管系の
成長を促進及び支持するコラーゲン組成物を提供する。ある他の実施態様において、本発
明の組成物は、空気乾燥又は凍結乾燥され、有用な構造に成形される。ある他の実施態様
において、本発明の組成物は、水に不溶である。
【0034】
本発明の本態様において、コラーゲンは、当業者に公知のいずれのコラーゲンであるこ
ともできる。ある実施態様において、コラーゲンは、哺乳動物コラーゲンである。特定の
実施態様において、コラーゲンは、ヒト、ウシ、ヒツジ(ovine)、ヒツジ(sheep)、ラット
又はカンガルーコラーゲンである。一定の非哺乳動物の実施態様において、コラーゲンは
、魚コラーゲンである。コラーゲンは、これらの供与源のいずれに由来することもできる
が、ヒトコラーゲンが具体例である。
【0035】
コラーゲンは、供与源のいずれの部分に由来することもできる。有用な供与源には、ウ
シ皮膚、子ウシ皮膚、ラット尾、カンガルー尾及び魚皮膚を含む。特定の実施態様におい
て、コラーゲンは、胎盤コラーゲン、例えばウシ胎盤コラーゲン、ヒツジ胎盤コラーゲン
又はヒト胎盤コラーゲンである。一例は、ヒト胎盤コラーゲンである。
【0036】
コラーゲンは、当業者に公知のコラーゲンのいずれかの型又はこのようなコラーゲンの
混合物であることもできる。ある実施態様において、コラーゲンは、コラーゲンの1つ以
上の型を含むコラーゲン組成物の形態である。特定のコラーゲンには、I型コラーゲン、I
I型コラーゲン、III型コラーゲン及びIV型コラーゲンを含む。ある実施態様において、本
発明のコラーゲン組成物は、これらのコラーゲンの特定量を含む。特定の組成物には、I
型コラーゲンの相当量を含むが、IV型コラーゲンも富んでいる。ある実施態様において、
本発明のコラーゲン組成物は、1~15%の間のIV型コラーゲン、2~13%の間のIV型コラーゲ
ン、3~12%の間のIV型コラーゲン又は4~11%の間のIV型コラーゲンを含む。同時に、コラ
ーゲン組成物は、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少な
くとも95%又は少なくとも99%のI型コラーゲンを含むことができる。例えば、組成物は、7
0~95%の間のI型コラーゲン、74~92%の間のI型コラーゲン又は80~90%の間のI型コラー
ゲンを含むことができる。本発明の同じコラーゲン組成物には、III型コラーゲン、例え
ば1%まで、2%まで、3%まで、4%まで、5%まで、6%まで又は7%までのIII型コラーゲンの量
を含むことができる。ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、2~15%の間
のIV型コラーゲン、70~95%の間のI型コラーゲン及び6%までのIII型コラーゲンを含む。
【0037】
ある実施態様において、該コラーゲン組成物は、コラーゲンに加えて、1つ以上の細胞
外マトリックスタンパク質又は構成要素を含む。具体的な実施態様において、該コラーゲ
ン組成物が、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン及び/又はグリゴサミノグリカン
を含む。別の具体的な実施態様において、該コラーゲン組成物は、検出可能なフィブロネ
クチン又は検出可能なラミニンを含まない。別の具体的な実施態様において、該コラーゲ
ン組成物は、検出可能な量のフィブロネクチン及びラミニンを含む。別の具体的な実施態
様において、該コラーゲン組成物は、乾燥重量で約5%以上のエラスチンを含む。別の具体
的な実施態様において、該コラーゲン組成物は、乾燥重量で約10%以上のエラスチンを含
む。別の具体的な実施態様において、該コラーゲン組成物は、乾燥重量で約5%以下のエラ
スチンを含む。
【0038】
本発明のこれらのコラーゲン組成物は、当業者に明らかないずれの工程によって得るこ
ともできる。特定の処理を下記の節に詳述してある。
【0039】
ある実施態様において、本発明のこの態様のコラーゲン組成物は、架橋される。ある実
施態様において、該コラーゲン組成物を当業者に知られている方法に従ってグルタルアル
デヒドなどの架橋剤で架橋することができる。このような方法は、例えば米国特許第4,85
2,640号、第5,428,022号、第5,660,692号及び第5,008,116号に、及びMcPhersonらの論文,
1986, J. Biomedical Materials Res. 20:79-92に広範囲に記述されており、これらの内
容は、引用によりこれらの全体において本明細書に取り込まれている。
【0040】
更に例示的な架橋剤及び架橋コラーゲンのためのこれらの使用方法は、米国特許第5,88
0,242号及び第6,117,979号に、及びZeemanらの論文., 2000, J Biomed Mater Res.51(4):
541-8, van Wachemらの論文, 2000, J Biomed Mater Res. 53(1):18-27, van Wachemらの
論文, 1999, J Biomed Mater Res. 47(2):270-7, Zeemanらの論文, 1999, J Biomed Mate
r Res. 46(3):424-33, Zeemanらの論文, 1999, Biomaterials 20(10):921-31に記述され
ており、これらの内容は、その全体において引用により本明細書に取り込まれている。
【0041】
さらなる実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、1,4-ブタンジオールジグリ
シジルエーテルで架橋される。さらなる実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は
、ゲニピンで架橋される。ゲニピンは、無毒の天然に存在する架橋剤である。これは、ク
チナシ(Gardenia jasminoides)の果実から単離され得る、その親化合物のゲニポシドから
得ることができる。ゲニピンは、Challenge Bioproducts Co., Ltd., 7 Alley 25, Lane
63, TzuChiang St. 404 Taichung Taiwan R.0.C., Tel 886-4-3600852から商業的に得て
もよい。架橋試薬としてのゲニピンの使用は、米国特許出願公開第20030049301号に広範
に記述されており、その内容は、引用によりこれらの全体において本明細書に取り込まれ
ている。
【0042】
さらなる実施態様において、該コラーゲン組成物を当業者に知られている他の架橋剤で
架橋することができる。さらなる実施態様において、該コラーゲン組成物を当業者に知ら
れている任意の酵素媒介架橋技術で架橋することができる。例えば、本発明のコラーゲン
組成物は、当業者に公知の方法に従ってトランスグルタミナーゼによって架橋することが
できる。トランスグルタミナーゼは、コラーゲンのグルタミンとリジン残基との間のアミ
ド架橋の形成を触媒する。このような方法は、例えばOrbanらの論文,2004, J Biomedical
Materials Res. 68(4):756-62に記述されており、これらの内容は、引用によりこれらの
全体において本明細書に取り込まれている。
【0043】
本発明のコラーゲン組成物は、単一の架橋剤で、又は架橋剤の混合物で架橋することが
できる。ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、グルタルアルデヒドで架
橋された塩基処理、界面活性剤処理ヒト胎盤コラーゲンを含む。
【0044】
(6.3 本発明のコラーゲン組成物の調製方法)
もう一つの態様において、本発明は、本発明のコラーゲン組成物を調製する方法を提供
する。本方法は、例えば上記の本発明のコラーゲン組成物を調製するために有用である。
【0045】
ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、本明細書に記述した方法に従っ
て、ヒト胎盤から調製される。ヒト胎盤由来のコラーゲン組成物の調製の最初の工程は、
米国特許第5,428,022号、第5,660,692号及び第5,008,116号に、及び米国特許出願公開第2
0040048796号及び第20030187515号に詳述されており、これらの内容は、引用によりこれ
らの全体において本明細書に取り込まれている。
【0046】
胎盤組織は、可溶性若しくは不溶性又は両方であるかにかかわらず、羊膜、絨毛膜及び
臍帯を含む胎盤のいずれの部分由来であることも、又は胎盤全体由来であることもできる
。ある実施態様において、コラーゲン組成物は、臍帯のないのヒト胎盤全体から調製され
る。
【0047】
胎盤嚢は、疎性結合組織によって密接に結合された2層で構成される。これらは、羊水
層及び絨毛層として公知である。羊水層は、2層のうちの最も内側にあり、胎児を囲む羊
水と接触すると共に、これらは、羊膜腔を形成する。羊水層は、無血管であり、基底膜の
上を覆っている単純な円柱上皮により裏打ちされており、それは30~60ミクロンの厚さで
ある。柔毛膜は、嚢の外層にあり、これは、多数に細分化されている。血管樹は、胎盤で
始まり、絨毛層を通って胎盤膜に延びている。絨毛層は、疎性結合組織によって羊水層か
ら分離されて、合わさっており、2層は、120~180ミクロンである。胎盤膜は、ムコ多糖
類を積んだコラーゲンマトリックスを有し、これらが主に発生中の胎児のための保護嚢と
して役に立つと考えられる。また、膜は、母体循環に存在する感染性及び免疫学的因子の
ための障壁を維持する。胎盤膜は、能動的及び受動的な輸送の両方を有する。大部分の小
分子及びタンパク質は、これらを通って自由に移動することができるが、IgMなどの巨大
タンパク質は、基底層を通って横切ることができない。
【0048】
特定の実施態様において、本発明の方法に使用するための胎盤は、新生児の分娩後、で
きるだけ早く採取される。更にもう一つの特定の実施態様において、胎盤は、正常な健康
な乳児の帝王切開分娩に続いて、直ちに採取される。好都合には、胎盤は、滅菌条件下で
収集することができる。一部の実施態様において、胎盤は、さらなる処理の前に、分娩時
刻から48時間貯蔵される。その他の実施態様において、胎盤は、さらなる処理の前に、分
娩時刻から5日間まで貯蔵される。
【0049】
好都合には、胎盤、臍帯及び臍帯血は、更なる処理のために、分娩又は出産室から別の
位置、例えば研究室に輸送することができる。胎盤は、任意に熱的に絶縁された滅菌バッ
グ又は容器などの滅菌の輸送装置に輸送することができる。一部の実施態様において、胎
盤は、さらなる処理まで室温で貯蔵される。その他の実施態様において、胎盤は、さらな
る処理まで冷蔵され、すなわち約2℃~8℃の温度にて貯蔵される。更にその他の実施態様
において、胎盤は、さらなる処理の前に5日間まで滅菌条件下で貯蔵される。特定の実施
態様において、胎盤は、当業者に公知であるように、滅菌条件下で扱われ、処理される。
研究室には、HEPA濾過システム(クラス1000を有するか、又はより優れたクリーンルーム
分類によって定義されるもの)を備えることができる。特定の実施態様において、HEPA濾
過システムは、本発明の方法を実施するための研究室を使用する少なくとも1時間前にオ
ンにされる。
【0050】
ある実施態様において、胎盤を、失血させ、すなわち出生後に残っている臍帯血を完全
に排液させる。一部の実施態様において、胎盤は、70%が失血され、80%が失血され、90%
が失血され、95%が失血され、99%が失血される。
【0051】
本発明は、制限されないが、HIV、HBV、HCV、HTLV、梅毒、CMV及び胎盤の組織に混入す
ることが知られるその他のウイルス病原体を含む伝染病について、当業者に公知の標準的
技術を使用して、出産前の時点で妊婦をスクリーニングすることを包含する。好都合には
、方法は、連邦医薬品局によって記載された規制に従う伝染病をスクリーニングするため
に使用することができる。妊婦は、出生の1月以内に、特に出生の2週以内に、出生の1週
以内に、又は出産時にスクリーニングしてもよい(例えば、血液試料が、診断目的で採取
される)。母が上述の病原体に陰性又は非陰性反応を示したドナーから収集した組織のみ
を使用して、本発明のコラーゲン組成物を得る。好都合には、例えば特定の家族病歴を含
む、完全に父系、並びに医学的及び社会的歴史のドナーの胎盤膜を得ることができる。
【0052】
ある実施態様において、ドナーは、当業者に公知の標準的な血清学的及び細菌学的試験
を使用してスクリーニングされる。病原体を同定するいずれのアッセイ法又は診断試験も
、本発明の方法の範囲内であるが、特定のアッセイ法には、高スループットのための能力
と共に高い精度を合わせもつものである。具体的実施態様において、本発明は、抗原及び
/又は抗体のための当業者に公知の標準的技術を使用してドナーをスクリーニングするこ
とを包含する。抗原及び抗体の非限定的な例には:抗体スクリーン(ATY);アラニンアミノ
トランスフェラーゼスクリーニング(ALT);肝炎コア抗体(核酸及びELISA);B型肝炎表面抗
原;C型肝炎ウイルス抗体;HIV-1及びHIV-2;HTLV-1及びHTLV-2;梅毒試験(RPR);CMV抗体試験
;並びにC型肝炎及びHIV試験;を含む。使用されるアッセイ法は、当業者に公知のような、
核酸に基づいたアッセイ法又はELISAに基づいたアッセイ法であってもよい。
【0053】
本発明は、当業者に公知の標準的技術を使用して、新生児臍帯由来の血液を試験するこ
とを更に包含する(例えば、Cotorrueloらの論文,2002, Clin. Lab. 48(5 6):271 81; Mai
neらの論文,2001, Expert Rev. Mol. Diagn., 1(1):19 29; Nielsenらの論文,1987, J. C
lin. Microbiol. 25(8):1406 10を参照され、これらの全ては、引用によりこれらの全体
において本明細書に取り込まれている)。一つの実施態様において、新生児臍帯由来の血
液は、当業者に公知の標準的技術を使用して、細菌病原体(グラム陽性及びグラム陰性菌
を含むが、限定されない)及び真菌について試験される。具体的実施態様において、新生
児臍帯の血液の血液型及びRh因子は、当業者に公知の標準的技術を使用して決定される。
もう一つの実施態様において、差動的CBCは、当業者に公知の標準的方法を使用して、新
生児臍帯由来の血液から得られる。更にもう一つの実施態様において、好気的細菌培養は
、当業者に公知の標準的方法を使用して、新生児臍帯由来の血液から採取される。正常限
界の範囲内(例えば、正常レベルから全体で異常又は逸脱なし)のCBCを有し、血清学及び
細菌学的に試験陰性であり、かつ感染症及び混入について試験陰性又は非陰性のドナーか
ら収集した組織のみを使用して、本発明のコラーゲン組成物を作成する。
【0054】
一旦ヒト胎盤組織が得られたら、これを本発明のコラーゲン組成物を調製するために以
下の工程に従って処理することができる。以下の工程は、経時的順序で示してあるが、当
業者であれば、いくつかの工程の順序を本発明の範囲を越えることなく交換することがで
きることを認識するであろう。更にまた、いくつかの工程は、本発明の所望のコラーゲン
組成物の性質に応じて、任意として示してある。緩衝液交換、沈澱、遠心分離、再懸濁、
希釈及びタンパク質組成の濃縮などの当業者に直ちに明らかな技術は、詳細に説明する必
要はないものと思われる。例示的な調製を下記の実施例に記述してある。
【0055】
胎盤の任意の部分又は胎盤全体を本発明の方法に使用することができる。ある実施態様
において、コラーゲン組成物は、胎盤全体から調製される。しかし、ある実施態様におい
て、コラーゲン組成物は、胎盤の絨毛又は羊膜部分から得ることができる。
【0056】
これらの実施態様において、本発明は、臍帯が胎盤ディスクから分離されるように胎盤
膜を処理すること、及び羊膜を柔毛膜から分離を包含する。特定の実施態様において、羊
膜は、胎盤膜を切断する前に柔毛膜から分離される。柔毛膜からの羊膜の分離は、胎盤膜
の端から開始することができる。もう一つの実施態様において、羊膜は、鈍い切開を使用
して、例えば手袋をした指で柔毛膜から分離される。柔毛膜及び胎盤ディスクからの羊膜
の分離に続いて、臍帯断端を、例えばはさみで切断し、胎盤ディスクから剥離させる。あ
る実施態様において、羊膜及び絨毛膜の分離を、組織を裂くことのなく行うことができな
いときに、本発明は、1つの小片として胎盤ディスクから羊膜及び絨毛膜を切断し、次い
でこれらを剥がして離すことを包含する。
【0057】
羊膜、柔毛膜又は胎盤全体は、本発明の方法に使用する前に貯蔵することができる。貯
蔵技術は、当業者に明らかである。例示的な貯蔵技術は、米国特許出願公開第2004004879
6号及び第20030187515号に記述されており、これらの内容は、引用によりこれらの全体に
おいて本明細書に取り込まれている。
【0058】
本発明のいくつかの方法において、胎盤組織は、細胞除去(decellularized)される。胎
盤の組織は、米国特許出願公開第20040048796号及び20030187515号に詳述したものなどの
当業者に公知のいずれの技術に従って細胞除去させることもでき、これらの内容は、引用
によりこれらの全体において本明細書に取り込まれている。
【0059】
ある実施態様において、胎盤の組織は、浸透圧ショックにさらされる。浸透圧ショック
工程により、有利な純度で本発明のコラーゲン組成物を得ることができる。いずれの特定
の作動理論によって拘束されることも意図しないが、浸透圧ショックは、組織の細胞を破
裂させ、これにより細胞、細胞成分及び血液成分の除去を容易にすることができると考え
られる。浸透圧ショックは、任意の清澄工程に付加することもでき、又はこれは、当業者
の判断に従って単独の清澄工程であることができる。
【0060】
浸透圧ショックは、当業者に公知のいずれの浸透圧ショック条件においても行うことが
できる。このような条件は、高浸透ポテンシャルの、若しくは低浸透ポテンシャルの、又
は交互に高低の浸透ポテンシャルの溶液中で組織をインキュベートすることを含む。高浸
透ポテンシャル溶液は、NaCl(例えば、0.2~1.0M)、KCl(例えば、0.2~1.0又は2.0M)、硫
酸アンモニウム、単糖、二糖(例えば、20%ショ糖)、親水性重合体(例えば、ポリエチレン
グリコール)グリセロールなどの1つ以上を含む溶液などの当業者に公知の任意の高浸透ポ
テンシャル溶液であることができる。ある実施態様において、高浸透ポテンシャル溶液は
、塩化ナトリウム溶液である。一部の実施態様において、塩化ナトリウム溶液は、少なく
とも0.25M、0.5M、0.75M、1.0M、1.25M、1.5M、1.75M、2M又は2.5MのNaClである。一部の
実施態様において、塩化ナトリウム溶液は、約0.25~5M、約0.5~4M、約0.75~3M又は約1
.0~2.0M NaClである。
【0061】
低浸透ポテンシャル溶液は、水、例えば当業者に公知の任意の方法に従って脱イオンさ
れた水などの当業者に公知の任意の低浸透ポテンシャル溶液であることができる。いくつ
かの実施態様において、浸透圧ショック溶液は、50mM NaCl未満の浸透圧ショックポテン
シャルをもつ水を含む。
【0062】
ある実施態様において、浸透圧ショックは、塩化ナトリウム溶液中で、続いて水溶液中
でのものである。一部の実施態様において、塩化ナトリウム溶液は、少なくとも0.5M NaC
lである。ある実施態様において、塩化ナトリウム溶液は、少なくとも0.75M NaClである
。一部の実施態様において、塩化ナトリウム溶液は、少なくとも1.0M NaClである。一部
の実施態様において、塩化ナトリウム溶液は、少なくとも1.5M NaClである。一部の実施
態様において、塩化ナトリウム溶液は、少なくとも2.0M NaClである。ある実施態様にお
いて、1回の0.5M NaCl処理の後に1回の水洗浄が続く。ある実施態様において、2回の0.5M
NaCl処理の後に1回の水洗浄が続く。ある実施態様において、1回の2M NaCl処理の後に1
回の水洗浄が続く。これらの順序は、当業者の判断に従って繰り返することができる。
【0063】
ある実施態様において、浸透圧ショックにより得られるコラーゲン組成物を界面活性剤
とともにインキュベートすることができる。いずれの特定の作動理論によって拘束される
ことも意図しないが、界面活性剤は、該組成物に存在し得る細胞、細胞膜、細胞下膜及び
細胞細片を破壊することができると考えられる。該界面活性剤は、細胞又は細胞下膜を破
壊できることが当業者に知られている任意の界面活性剤であり得る。ある実施態様におい
て、該界面活性剤は、イオン性である。例えば、ある実施態様において、該界面活性剤は
、デオキシコール酸又はドデシル硫酸ナトリウムである。以下の作業例において、代表的
な界面活性剤処理は、デオキシコール酸による。ある実施態様において、該界面活性剤は
、両性イオン性である。ある実施態様において、該界面活性剤は、非イオン性である。例
えば、ある実施態様において、該界面活性剤は、TWEEN(登録商標)-20などのTWEEN(登録商
標)界面活性剤、又はトリトンX100などのトリトンX界面活性剤であり得る。該コラーゲン
組成物は、望ましくない構成要素を該組成物から除去するのに好適であると当業者に判断
される条件下で該界面活性剤と接触されるべきである。代表的な条件を以下の作業例に示
す。
【0064】
該界面活性剤処理を当業者の判断に応じて任意の温度で実施することができる。ある実
施態様において、該界面活性剤処理は、約0~30℃、約5~25℃、約5~20℃又は約5~15℃
で実施される。ある実施態様において、該界面活性剤処理は、約0℃、約5℃、約10℃、約
15℃、約20℃、約25℃又は約30℃で実施される。特定の実施態様において、該界面活性剤
処理は、約5~15℃で実施される。
【0065】
該界面活性剤処理を当業者の判断に応じて好適な時間にわたって実施することができる
。ある実施態様において、該界面活性剤処理を約1~24時間、約2~20時間、約5~15時間
、約8~12時間又は約2~5時間にわたって実施することができる。
【0066】
ある実施態様において、界面活性剤処理により得られるコラーゲン組成物を塩基性条件
でインキュベートすることができる。いずれの特定の作動理論によって拘束されることも
意図しないが、塩基処理は、該コラーゲン組成物を汚染し得るウイルス粒子を除去するこ
とができると考えられる。ある実施態様において、塩基洗浄は、エンドトキシンを除去す
るように作用する。該塩基性条件は、当業者に知られている任意の塩基性条件であり得る
。特に、ウイルス粒子を除去することが知られる任意のpHの任意の塩基を使用することが
できる。該塩基処理のための特定の塩基としては、生体適合性塩基、揮発性塩基、及び該
コラーゲン組成物から容易かつ安全に除去されることが当業者に知られている塩基が挙げ
られる。該塩基は、例えば、0.2~1.0Mの濃度の当業者に知られている任意の有機又は無
機塩基であり得る。ある実施態様において、該塩基は、水酸化アンモニウム、水酸化カリ
ウム及び水酸化ナトリウムからなる群から選択される。ある実施態様において、該塩基処
理は、水酸化ナトリウム溶液中で実施される。該水酸化ナトリウム溶液は、0.1MのNaOH、
0.25MのNaOH、0.5MのNaOH又は1MのNaOHであり得る。特定の実施態様において、該塩基処
理は、0.1M又は0.5MのNaOH中で実施される。
【0067】
該塩基処理を当業者の判断に応じて任意の温度で実施することができる。ある実施態様
において、該塩基処理は、約0~30℃、約5~25℃、約5~20℃又は約5~15℃で実施される
。ある実施態様において、該塩基処理は、約0℃、約5℃、約10℃、約15℃、約20℃、約25
℃又は約30℃で実施される。特定の実施態様において、該塩基処理は、約5~15℃で実施
される。
【0068】
該塩基処理を当業者の判断に応じて好適な時間にわたって実施することができる。ある
実施態様において、該塩基処理を約1~24時間、約2~20時間、約5~15時間、約8~12時間
又は約2~5時間にわたって実施することができる。
【0069】
様々な界面活性剤及びNaOH洗浄工程を用いて、いくつかの様々な最終ECM材料を生成す
ることができる。例えば、ある実施態様において、コラーゲン含有組織を約0.1M、0.2M、
0.3M、0.4M又は約0.5MのNaOHで約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、1
7、18、19、20、21、22、23又は約24時間にわたって処理することができる。
【0070】
ある他の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、塩基で処理せずに製造され
る。該方法を胎盤組織に適用する場合には、塩基処理工程を省略すると、典型的には、塩
基処理を含めて製造されたコラーゲン組成物より、比較的高量のエラスチン、フィブロネ
クチン及び/又はラミニンを含むコラーゲン組成物が得られる。
【0071】
ある実施態様において、該コラーゲン組成物を乾燥させることができる。乾燥は、該コ
ラーゲン組成物の保管及び梱包を容易にする。乾燥は、また、細胞構成要素を該組成物か
らより除去しやすくする。更に、上記工程のいずれかの後で、次の工程の前に該コラーゲ
ン組成物を乾燥させることができる。当業者に明らかな任意の乾燥技術に従って乾燥を実
施することができる。有用な乾燥技術は、その内容がその全体において引用により本明細
書中に組み込まれている米国特許公開第2004/0048796号に記載されている。代表的な乾燥
技術としては、以下の作業例で実証される凍結乾燥、真空乾燥、熱(例えば、約50℃未満)
凍結乾燥が挙げられる。
【0072】
ある実施態様において、上記工程のいずれかを無菌条件下で実施することができる。特
定の実施態様において、該塩基処理及びすべての後続の工程は、無菌条件下で実施される
。さらなる実施態様において、本明細書に記載の方法に従って調製された任意のコラーゲ
ン組成物を当業者に明らかな技術に従って更に滅菌することができる。
【0073】
ある実施態様において、本発明は、上記の浸透圧ショック工程、凍結乾燥工程、界面活
性剤処理工程、水洗工程、凍結乾燥工程、塩基処理工程、水洗工程及び凍結乾燥工程を含
む方法を提供する。ある実施態様において、これらの工程は、順番に実施される。ある実
施態様において、該界面活性剤は、1%デオキシコール酸塩である。ある実施態様において
、該塩基性処理は、4時間にわたる0.5NのNaOHである。ある実施態様において、第1の水洗
は、繰り返される(全部で2回の洗浄)。ある実施態様において、第2の水洗は、繰り返され
る(全部で3回の洗浄)。ある実施態様において、該界面活性剤は、1%のデオキシコール酸
塩であり、該塩基性処理は、4時間にわたる0.5NのNaOHであり、第1の水洗は、繰り返され
(全部で2回の洗浄)、第2の水洗は、2回繰り返される(全部で3回の洗浄)。ある実施態様に
おいて、当該方法は、約0.59%のグリコサミノグリカン、約3.5%のエラスチンを含み、フ
ィブロネクチンをほとんど又は全く含まず、ラミニンをほとんど又は全く含まない組成物
を提供することができる。
【0074】
ある実施態様において、本発明は、上記の浸透圧ショック工程、塩基処理工程及び水洗
工程を含む方法を提供する。ある実施態様において、これらの工程は、順番に実施される
。ある実施態様において、該塩基性処理は、4時間にわたる0.5NのNaOHである。ある実施
態様において、当該方法は、約0.28から約0.38%のグリコサミノグリカン、約3.2%から約4
.7%のエラスチンを含み、フィブロネクチンをほとんど又は全く含まず、ラミニンをほと
んど又は全く含まない組成物を提供することができる。
【0075】
ある実施態様において、本発明は、上記の浸透圧ショック工程、界面活性剤処理工程及
び水洗工程を含む方法を提供する。ある実施態様において、これらの工程は、順番に実施
される。ある実施態様において、該界面活性剤は、1%のデオキシコール酸塩である。ある
実施態様において、当該方法は、約0.4%のグリコサミノグリカン、約12%のエラスチン、
約0.6%のフィブロネクチン及び約0.16%のラミニンを含む組成物を提供することができる
。
【0076】
(6.3.1 任意のさらなる処理)
ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物をアテロペプチドコラーゲン組成物
のための供給源として使用することができる。該アテロペプチドコラーゲン組成物をアテ
ロペプチドコラーゲンに関する当業者に明らかな目的のために使用することができる。
【0077】
当該実施態様において、コラーゲン組成物を、コラーゲンからテロペプチドを部分的又
は完全に除去することが可能な酵素と接触させることができる。該酵素は、テロペプチド
をコラーゲンから除去することが可能な当業者に知られている任意のタンパク質分解酵素
であり得る。ある実施態様において、該酵素は、ペプシン又はパパインである。一般に、
該酵素は、当業者に知られているテロペプチドの除去に好適な条件下で該コラーゲン組成
物と接触される。
【0078】
テロペプチドを除去するためにコラーゲン組成物を酵素で処理する方法は、米国特許番
号4,511,653号、第4,582,640号、第5,436,135号及び第6,548,077号に詳述されており、こ
れらの内容は、引用によりこれらの全体において本明細書に取り込まれている。一般に、
該酵素は、当業者に公知のテロペプチドの除去のために適した条件下でコラーゲン組成物
と接触される。このような条件は、例えば適切なpHで、適切な酵素濃度にて、適切な溶液
の体積で、適切な温度にて、及び適切な時間、コラーゲン組成物と酵素を接触させること
を含む。
【0079】
コラーゲン組成物は、当業者の判断に従って低pH条件下で酵素と接触させることができ
る。ある実施態様において、コラーゲン位置は、pH約1~3又は約2~3にてペプシンと接触
される。
【0080】
ある実施態様において、酵素は、高温にてコラーゲン組成物と接触される。いずれの特
定の作動理論によって拘束されることも意図しないが、高温では、最終コラーゲン組成物
中のI型コラーゲンの収率を向上させることができると考えられる。ある実施態様におい
て、コラーゲン組成物は、約15~40℃、約20~35℃、約25~30℃、約20~30℃又は約23~
27℃にてペプシンと接触させる。特定の実施態様において、コラーゲン組成物は、約23~
27℃にてテロペプチドを除去するために十分な時間でペプシンと接触される。
【0081】
コラーゲン組成物は、当業者の判断に従ってテロペプチドを除去するために十分な時間
で酵素と接触される。ある実施態様において、コラーゲンは、少なくとも5、10、15、20
、25又は30時間ペプシンと接触される。ある実施態様において、これは、約5~30時間、
約10~25時間又は約20~25時間ペプシンと接触される。ある実施態様において、ある約8
、16、24又は32時間のペプシンと接触される。
【0082】
コラーゲン組成物は、当業者の判断に従ってテロペプチドを除去するために適切な量で
酵素と接触される。いくつかの実施態様において、約0.1g、0.5g、1.0g、2.0g又は5.0gペ
プシン/kg(凍結胎盤)がコラーゲン組成物と接触される。その他の実施態様において、約0
.1g、0.5g、1.0g、2.0g又は5.0gのペプシン/胎盤がコラーゲン組成物と接触される。ある
実施態様において、コラーゲン組成物は、約0.1~10.0g/L、約0.5~5/L、約1~2.5g/L又
は約0.5~1.5g/Lのペプシンと接触される。一部の実施態様において、コラーゲン組成物
は、約0.1g/L、約0.2g/L、約0.5g/L、約1.0g/L、約2.0g/L、5g/L又は10g/Lペプシンと接
触される。特定の実施態様において、コラーゲン組成物は、酢酸溶液中でpH約2~3で、約
23℃~27℃にて、約16~24時間、約0.5~1.0g/Lのペプシンと接触される。
【0083】
コラーゲン組成物は、当業者の判断に従ってテロペプチドを除去するために適した溶液
体積:胎盤で酵素と接触される。胎盤に対して高い体積比だとペプシンによる効果を最大
にすることができることが観察される。ある実施態様において、胎盤あたり約1、2、4、
又は8体積の酢酸溶液が使用される。特定の実施態様において、胎盤あたり約2体積の酢酸
溶液が使用される。
【0084】
必要に応じて、本発明のコラーゲン組成物は、原繊維化によって更に処理することがで
きる。原繊維化は、当業者に公知のコラーゲンを原繊維化するためのいずれの技術によっ
て行うこともできる。コラーゲン組成物の原繊維化は、米国特許第4,511,653号、第4,582
,640号及び第5,436,135号に広範に記述されており、これら内容は、引用によりこれらの
全体において本明細書に取り込まれている。必要に応じて、コラーゲン組成物は、原繊維
化の前に標準的技術に従って濃縮することができる。
【0085】
所望の場合、本発明のコラーゲン組成物は、架橋することができる。ある実施態様にお
いて、コラーゲン組成物は、架橋前に原繊維化される。架橋は、当業者に公知の任意の架
橋剤、例えば上記の節において論議した架橋剤であることができる。ある実施態様におい
て、架橋剤は、グルタルアルデヒドであることができ、架橋は、当業者に公知のコラーゲ
ンのグルタルアルデヒド架橋法に従って行うことができる。その他の実施態様において、
架橋剤は、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル又はゲニピンであることができる。
特定の実施態様において、架橋剤は、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルである。
【0086】
一部の実施態様において、架橋剤とコラーゲンとの間の共有結合は、例えば安定性を改
善するために、還元することができる。還元は、本発明のコラーゲン組成物を当業者に公
知の任意の還元剤と接触させることによって達成することができる。ある実施態様におい
て、還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、β-メルカプトエタノ
ール、メルカプト酢酸、メルカプトエチルアミン、ベンジルメルカプタン、チオクレゾー
ル、ジチオスレイトール又はトリブチルホスフィンなどのホスフィンである。水素化ホウ
素ナトリウムは、有用な例である。ある実施態様において、コラーゲンは、還元剤での還
元前に架橋される。コラーゲン組成物及び架橋されたコラーゲン組成物の還元は、米国特
許第4,185,011号、第4,597,762号、第5,412,076号及び第5,763,579号に広範に記述されて
おり、これらの内容は、これらの全体において引用により本明細書に取り込まれている。
【0087】
ある実施態様において、コラーゲン組成物は、当業者に公知の方法に従って機械的剪断
によって更に処理することができる。例示的剪断技術は、米国特許第4,642,117号に記述
され手織り、その内容は、その全体において引用により本明細書に取り込まれている。あ
る実施態様において、コラーゲン組成物は、当業者に公知の組織ホモジナイザーで剪断さ
れる。
【0088】
ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物中のプロテアーゼ活性を限定するため
の工程を行うことができる。金属イオンキレート剤、例えば1,10-フェナントロリン及び
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの添加物は、多くのタンパク質分解酵素にとって好ま
しくない環境を生じる。コラゲナーゼなどのプロテアーゼに対して最適以下条件を提供す
ることにより、コラーゲン組成物を分解から保護するのを助けてもよい。プロテアーゼに
対する最適以下条件は、溶液中で利用可能なカルシウム及び亜鉛イオンの量を除去するか
、又は制限するように組成物を製剤化することによって達成してもよい。多くのプロテア
ーゼは、カルシウム及び亜鉛イオンの存在下において活性であり、カルシウム及び亜鉛イ
オンのない環境では、これらの活性の多くを失う。好都合には、コラーゲン組成物は、pH
条件、カルシウム及び亜鉛イオンの利用能の減少、金属イオンキレート剤の存在及びコラ
ゲナーゼに特異的なタンパク分解阻害剤の使用を選択して調製される。例えば、コラーゲ
ン組成物には、水の緩衝された溶液、pH5.5~8又はpH7~8を含んでいてもよく、カルシウ
ム及び亜鉛イオンを含まず、EDTAなどの金属イオンキレート剤を含む。加えて、プロテア
ーゼの活性を制限するために、コラーゲン組成物の治療の間に温度及び時間パラメーター
の制御を使用してもよい。
【0089】
(6.4 コラーゲン組成物の特性付け)
(6.4.1 生物化学的性質)
当該技術分野において公知で、かつ本明細書において例証された生化学に基づいたアッ
セイ法を本発明のコラーゲン組成物の生化学的組成物を決定するために使用してもよい。
本発明は、例えば吸光度に基づいたアッセイ法及び比色に基づいたアッセイ法などの、試
料中の総タンパク質含有量を決定するための生化学に基づいたアッセイ法を包含する。吸
光度に基づいたアッセイ法は、280nm(例えば、Layne, E,分光光度的及び濁度のタンパク
質測定方法(Spectrophotometric and Turbidimetric Methods for Measuring Proteins),
Methods in Enzymology 3: 447-455, (1957); Stoscheck, CM,タンパク質の定量化(Quan
titation of Protein), Methods in Enzymology 182: 50-69, (1990)を参照されたい;こ
れらは、その全体において引用により本明細書に取り込まれている)、205nmにて吸光度を
測定するアッセイ法、及び試料の吸光係数に基づいたアッセイ法(例えば、Scopes, RK, A
nalytical Biochemistry 59: 277, (1974); Stoscheck, CM.タンパク質の定量化(Quantit
ation of Protein), Methods in Enzymology 182: 50-69, (1990)を参照されたい;これら
は、その全体において引用により本明細書に取り込まれている)を含むが、限定されない
。本発明は、限定されないが、コラーゲン(例えば、コラーゲンI型、III型、IV型)、ラミ
ニン、エラスチン、フィブロネクチン及びグリコサミノグリカンを含む本発明のコラーゲ
ン組成物中の特定タンパク質の総含量を決定するための方法を包含する。
【0090】
比色に基づいたアッセイ法は、修飾されたLowryアッセイ法、ビウレットアッセイ法、
ブラッドフォードアッセイ法、ビシンコニン酸(Smith)アッセイ法を含むが、限定されな
い(例えば、Stoscheck, CM,タンパク質の定量(Quantitation of Protein), Methods in E
nzymology 182: 50-69 (1990)を参照されたい)。
【0091】
具体的実施態様において、ブラッドフォード色素結合アッセイ法(Bradford, M., Analy
tical Biochemistry, 72, 248 (1976)、これは、その全体において引用により本明細書に
取り込まれている)を使用して本発明のコラーゲン組成物中の総タンパク質含有量を測定
する。本発明の方法に使用するための例示的なBradfordアッセイ法は、以下を含んでいて
もよい:アッセイ法は、BIO-RAD, Hercules, CA, USAを介して入手可能な、ブラッドフォ
ード色素結合アッセイ法を使用して行うことができる。タンパク質アッセイ法は、種々の
濃度のタンパク質に応答する色素クマシーブリリアントブルーR-250の色相の変化に基づ
く。本アッセイ法は、公知の濃度の一連のヒトコラーゲン標準吸光度(595ナノメートルに
て)を測定することによって標準較正曲線を作成することを含む。試験試料、例えば羊膜
の試料におけるコラーゲンの濃度は、標準曲線に参照することによって決定される。本ア
ッセイ法は、0.2~1.4mg/mLの範囲のコラーゲン濃度の測定が可能であり、微量アッセイ
法として25μgまでのタンパク質濃度を測定する標準的形式で展開される。標準的アッセ
イ法のためには、100mMクエン酸(pH2.4)に溶解したコラーゲンを0.1mLの総容積にて0.1~
1mg/mLの濃度にて1.5mLマイクロ遠心に分注する。それぞれのチューブに1mLのクマシーブ
ルー色素を添加する。試料をボルテックスし、室温で10分間静置させる。吸光度を595ナ
ノメートル(nm)にて測定する。微量アッセイ法のためには、100mMクエン酸(pH2.4)に溶解
したコラーゲンを0.1mL(2.5~30μg/mL)の総容積にて96ウェルプレートのウェルに分注す
る。それぞれのウェルに10μLの色素試薬を添加する。試料をボルテックスして、10分間
室温でインキュベートした後、プレートリーダーにおいて595nmの吸光度を測定する。本
発明のコラーゲン組成物のためには、試験試料を3回アッセイすることができる。タンパ
ク質濃度は、標準曲線を参照することによって決定される。タンパク質濃度は、膜の総乾
燥重量の割合として算出される。約10%のエラーの発生する余地内で、膜におけるそれぞ
れのタンパク質含有量は、本質的に膜の総乾燥重量の95%以上である。含水量は、低く、
実験誤差内(およそ、10%)であろう。
【0092】
本発明のコラーゲン組成物の総コラーゲン量の推定は、当業者に公知で、及び本明細書
において例証した方法を使用して特徴づけてもよい。特定の実施態様において、本発明の
コラーゲン組成物のコラーゲン量は、Biocolor Ltd, UKによって製造される定量的色素に
基づいたアッセイキット(SIRCOL)を使用して測定される。本アッセイ法では、特異的コラ
ーゲン結合色素として、Sirius Red(又は、Direct Red 80)を利用する。コラーゲンに結
合した色素は、UV-Vis分光光度計において540nmの吸光度の濃度依存的な増大を示す。本
アッセイ法は、公知の濃度の一連のウシコラーゲン標準吸光度を測定することによって標
準較正曲線を作成することを含む。試験試料中、例えば羊膜試料中のコラーゲンの濃度は
、標準曲線を参照することによって決定される。例示的アッセイ法において、コラーゲン
(1mg/mL)を、1.5mLのマイクロ遠心チューブに5~100μg/100μLの濃度にて分注する。試
料体積を水で100μLに合わせる。それぞれの試料に、1mLのSIRCOL色素試薬を室温で添加
する。試料チューブの蓋をして、室温で30mm間、機械的振盪しながらインキュベートさせ
る。次いで、試料を12,000×gにて15分間遠心分離し、ピペッターを使用して液体を排液
させる。それぞれのチューブの底の赤みがかった沈殿物を1mLの0.5M(水酸化ナトリウム)
に溶解する。試料についてのUV吸光度をBeckman DU-7400 UV-VIS分光光度計を使用して54
0nmにて測定する。標準的検量線をそれぞれの試料におけるコラーゲンの濃度対540nmにお
ける吸光度(OD)を使用してプロットする。実験誤差を決定するために、本アッセイ法を単
一の低濃度(10μg/100μL)のコラーゲン標準にて繰り返す(n=10)。膜試料を、同じプロト
コルを使用してアッセイし、試料を100μLの総容積で添加する。
【0093】
更にその他の実施態様において、当該技術分野において公知で、及び本明細書において
例証した標準的方法を使用して本発明のコラーゲン組成物のコラーゲン型を決定するため
に、例えばELISAアッセイ法を使用してもよい。本発明のコラーゲン組成物中の、コラー
ゲンの型、例えばコラーゲンI型、III型及びIV型を決定するための例示的アッセイ法は、
例えばAnthrogen-CIA Collagen-I from Chondrex, Inc., Redmond, WA, USAによってキッ
トとして提供されるサンドイッチELISAアッセイ法の使用を含む。III型及びIV型の研究の
ためには、一次抗体(捕獲抗体)及び二次抗体(検出抗体)、並びにコラーゲン標準をRockla
nd Immunochemicals, gilbertsville, PAから得てもよい。検出抗体は、ストレプトアビ
ジンペルオキシダーゼに結合するビオチン化されたヒトコラーゲンI型、III型又はIV型で
ある。色素生産性基質及び尿素及びH2O2との酵素反応により、黄色を示し、これが490nm
にてUV-Vis分光法を介して検出される。コラーゲン型の量を定量化するために、標準較正
曲線を公知の濃度の一連のヒトコラーゲン標準試料で作成する。羊膜試験試料におけるコ
ラーゲン濃度を、標準曲線を参照することによって決定する。アッセイプロトコルは、EL
ISAキットの推奨に従って展開される。標準較正曲線を作成するために、96ウェルトレー
の10~12ウェルを100×希釈したキットと共に提供される捕獲抗体の100μLを添加するこ
とによって捕獲抗体(抗ヒトI型コラーゲン抗体、抱合されていない)で被覆する。一晩イ
ンキュベーション後、ウェルを洗浄液緩衝液で3回洗浄し、結合していない抗体を除去す
る。次いで、ヒトコラーゲンI型を0~5μg/mLで濃度を増大して100μL体積でウェルに添
加する。室温で2時間インキュベーション後、ウェルを洗浄液緩衝液で3回洗浄して、結合
していないコラーゲンを除去する。次いで、ビオチン化されたコラーゲンI抗体をウェル
内の抗体-コラーゲン複合体に100μLの体積で添加し、2時間室温で結合させる。結合して
いない抗体を洗浄液緩衝液で3回洗浄する。次いで、検出酵素ストレプトアビジンペルオ
キシダーゼをキットと共に提供される酵素の200×希釈された試料を添加し、これを室温
で1時間インキュベートさせることによって抗体-コラーゲン-抗体複合体に結合させる。9
6ウェルプレートを繰り返し洗浄し(6回)、全ての結合していない酵素を除去する。色素生
産性基質+尿素/H2O2を各々のウェルに100μL体積で添加する。反応を室温で30分間進行さ
せる。反応を50μLの2.5N硫酸の添加によって終結させる。吸光度を490nmにて測定する。
【0094】
更にその他の実施態様において、本発明は、当該技術分野において公知で、及び本明細
書において例証した方法を使用して、本発明のコラーゲン組成物の総エラスチン含量を決
定するためのアッセイ法を包含する。本発明のコラーゲン組成物のエラスチン含量を測定
するための例示的アッセイ法は、Biocolor Ltd, UKによって製造される定量的色素に基づ
いたアッセイキット(FASTIN)を含み得る。本アッセイ法は、特異的エラスチン結合色素と
して5,10,15,20-テトラフェニル-21,23-ポルフリン(TPPS)を利用する。(例えば、Winklem
an, J. (1962), Cancer Research, 22,589-596を参照されたい、これは、その全体におい
て引用により本明細書に取り込まれている)。エラスチンに結合した色素は、UV-Vis分光
光度計において513nmの吸光度の濃度依存的増大を示す。本アッセイ法は、公知の濃度の
一連のウシエラスチン標準吸光度を測定することによって標準較正曲線を作成することを
含む。試験試料中、例えば羊膜試料中のエラスチンの濃度は、標準曲線を参照することに
よって決定される。エラスチン(1mg/mL)を5~100μg/100μLの濃度にて1.5mLのマイクロ
遠心チューブに分注する。試料体積を水で100μLに合わせる。それぞれの試料に、1mLの
エラスチン沈澱試薬(トリクロロ酢酸+アルギニン)を4℃にて添加し、同じ温度にて一晩貯
蔵する。一晩の沈澱工程に続いて、試料を12,000×gにて15分間遠心分離し、液体を、ピ
ペッターを使用して排液する。それぞれの試料に1mLのFASTIN色素試薬(TPPS)を100μLの9
0%の飽和硫酸アンモニウムと共に添加する。次いで、試料チューブの蓋をして、機械振盪
しながら室温で1時間インキュベートさせる。硫酸アンモニウムを作用させて、エラスチ
ン-色素複合体を沈殿させる。混合工程の1時間後、試料を12,000×gにて15分間遠心分離
し、液体を、ピペッターを使用して排液する。それぞれのチューブの底の茶色の沈殿物を
、グアニジンHClのI-プロパノール溶液である1mLのFASTIN解離試薬に溶解する。試料につ
いてのUV吸光度をBeckman DU-7400 UV-VIS分光光度計を使用して513nmにて測定する。そ
れぞれの試料のエラスチンの濃度対513nmにおける吸光度(OD)を使用して、標準検量線を
プロットする。本アッセイ法における実験誤差を決定するために、アッセイ法を単一の低
濃度(10μg/100μL)の標準エラスチンにて繰り返す(n=10)。膜試料を、同じプロトコルを
使用してアッセイし、試料を100μLの総容積で添加する。それぞれの試料を3回アッセイ
する。
【0095】
更にその他の実施態様において、本発明は、当該技術分野において公知で、及び本明細
書において例証した方法を使用して本発明のコラーゲン組成物の総グリコサミノグリカン
(GAG)含量を決定するためのアッセイ法を包含する。本発明のコラーゲン組成物におけるG
AGの存在は、Biocolor Ltd, UKによって製造される定量的色素に基づいたアッセイキット
(BLYSCAN)を使用して測定してもよい。本アッセイ法は、特異的GAG結合色素として1,9-ジ
メチル-メチレンブルーを利用する。GAGに結合した色素は、UV-Vis分光光度計において65
6nmの吸光度の濃度依存的な増大を示す。本アッセイ法は、公知の濃度の一連のウシGAG標
準吸光度を測定することによって標準較正曲線を作成することを含む。羊膜試験試料中の
GAGの濃度は、標準曲線を参照することによって決定される。ウシGAG(0.1mg/mL)を0.5~5
μg/100μLの濃度にて1.5mLのマイクロ遠心チューブに分注する。試料体積を水で100μL
に合わせる。それぞれの試料に1mLの1,9-ジメチル-メチレン色素試薬を室温で添加する。
試料チューブの蓋をして、機械的振盪しながら室温で30分間インキュベートさせる。次い
で、試料を12,000×gにて15分間遠心分離し、ピペッターを使用して液体を排液させる。
それぞれのチューブの底の赤みがかった沈殿物を1mLの色素解離試薬に溶解する。試料に
ついてのUV吸光度をBeckman DU-7400 UV-VIS分光光度計を使用して656nmにて測定する。
標準的検量線をそれぞれの試料におけるGAGの濃度対540nmにおける吸光度(OD)を使用して
プロットする。実験誤差を決定するために、本アッセイ法を単一の低濃度(10μg/100μL)
のGAG標準にて繰り返す(n=8)。膜試料を、同じプロトコルを使用してアッセイし、試料を
100μLの総容積で添加する。それぞれの試料を3回アッセイする。
【0096】
更にその他の実施態様において、本発明は、当該技術分野において公知で、及び本明細
書において例証した方法を使用して、本発明のコラーゲン組成物の総ラミニン含量を決定
するためのアッセイ法を包含する。本発明のコラーゲン組成物における総ラミニン含量を
決定するための例示的なアッセイ法には、以下を含んでいてもよい:Takara Bio Inc., Sh
iga、Japan(Cat # MKIO7)からキットとして提供されるサンドイッチELISAアッセイ法を使
用してもよい。キットには、ヒトラミニンに対するマウスモノクローナル抗体である一次
(捕獲抗体)でプレコートされた96ウェルプレートを含む。二次抗体(検出抗体)及びヒトラ
ミニン標準は、キットと共に提供される。検出抗体は、ペルオキシダーゼと抱合されたヒ
トラミニン抗体である。色素生産性基質テトラメチルベンジジン及びH2O2との酵素反応に
より、青色を示し、これが450nmにてUV-Vis分光法を介して検出される。ラミニンの量を
定量化するために、標準構成曲線を、公知の濃度の一連のヒトラミニン標準試料(キット
と共に提供される)で作成する。羊膜の試験試料中のラミニンの濃度は、標準曲線を参照
することによって決定される。アッセイプロトコルは、Elisaキットの推奨に従って展開
される。標準較正曲線を作成するために、ヒトラミニン標準を、キットと共に提供される
抗体がプレコートとされた96ウェルトレーの個々のウェルに5ng/mL~160ng/mLの濃度を増
大しつつ100μLの最終体積で添加する。室温で1時間のインキュベーション後、ウェルを3
回洗浄緩衝液で洗浄して(0.05% TWEEN(登録商標)を含むPBS)、結合していないラミニンを
除去する。次いで、ペルオキシダーゼ抱合ラミニン抗体をウェル内の抗体-ラミニン複合
体に100μL体積で添加し、室温で1時間結合させる。96ウェルプレートを繰り返し洗浄し(
4×)、あらゆる結合していない酵素/抗体複合体を除去する。色素生産性基質+ H2O2を各
々のウェルに100μL体積で添加する。反応を室温で30分間進行させる。反応を100μLの2.
5N硫酸の添加によって終結させる。吸光度を450nmにて測定する。可溶化された膜の試料
を1000ng/mLの濃度にて試験する。それぞれの膜試料を3回試験する。ラミニン濃度は、以
下に示すように総膜重量の濃度として示される。
【0097】
更にその他の実施態様において、本発明は、当該技術分野において公知で、及び本明細
書において例証した方法を使用して本発明のコラーゲン組成物の総フィブロネクチン含量
を決定するためのアッセイ法を包含する。本発明のコラーゲン組成物の総フィブロネクチ
ン含量を決定するための例示的アッセイ法は、以下を含んでいてもよい:Takara Bio Inc.
, Shiga, Japan(Cat # MK1 15)からキットとして提供されるサンドイッチELISAアッセイ
法を使用してもよい。キットには、一次(捕獲抗体)ヒトフィブロネクチンに対するマウス
モノクローナル抗体がプレコートされた96ウェルプレートを含む。二次抗体(検出抗体)及
びヒトフィブロネクチン標準は、キットと共に提供される。検出抗体は、西洋ワサビペル
オキシダーゼ抱合ヒトフィブロネクチン抗体である。色素生産性基質テトラメチルベンジ
ジン及びH2O2との酵素反応により、青色を示し、これが450nmにおけるUV-Vis分光法を介
して検出される。フィブロネクチンの量を定量化するために、標準較正曲線を公知の濃度
の一連のヒトフィブロネクチン標準試料(キットと共に提供される)で作成する。試験試料
中のフィブロネクチンの濃度を、標準曲線を参照することによって決定する。アッセイプ
ロトコルは、ELISAキットの推奨に従って展開される。標準較正曲線を作成するために、
ヒトフィブロネクチン標準を、キットと共に提供される抗体がプレコートとされた96ウェ
ルトレーの個々ウェルに12.5ng/mL~400ng/mLの濃度を増大しつつ100μLの最終体積で添
加する。室温で1時間のインキュベーション後、ウェルを3回洗浄緩衝液で洗浄して(0.05%
TWEEN(登録商標)を含むPBS)、結合していないフィブロネクチンを除去する。次いで、ペ
ルオキシダーゼ抱合フィブロネクチン抗体をウェル内の抗体-フィブロネクチン複合体に1
00μL体積で添加し、室温で1時間結合させる。96ウェルプレートを繰り返し洗浄し(4×)
、あらゆる結合していない酵素/抗体抱合体を除去する。色素生産性基質+ H2O2を各々の
ウェルに100μL体積で添加する。反応を室温で30分間進行させる。反応を100μLの2.5N硫
酸の添加によって終結させる。吸光度を450nmにて測定する。可溶化された膜の試料を100
0μg/mLの濃度にて試験する。それぞれの膜試料を3回試験する。
【0098】
(6.4.2 生体適合性研究)
本発明のコラーゲン組成物は、生物学的起源であり、有意な量のコラーゲンを含む。し
かし、動物供与源(ウシ及びブタ)に由来するコラーゲンとは異なり、ヒトコラーゲンは、
非免疫原性である。非免疫原性の人体組織は、他人の人体組織と本質的に生体適合性であ
るので、いくつかの標準的生体適合性試験(例えば、経皮刺激及び感作、急性全身毒性)を
行う必要がない。本発明は、本発明のコラーゲン組成物の生体適合性を決定するためのア
ッセイ法を包含する。本明細書に使用される生体適合性とは、生活組織において毒性の、
有害な、若しくは免疫学的な反応又は拒絶を生じないことによって、生物学的に適合性の
特性をいう。体に人工物質を使用していると、未知の材料に対する身体の反応が主要な懸
念となり、それ故、材料の生体適合性は、このような材料における重要な設計事項である
。本発明の範囲内に包含される生体適合性アッセイ法は、細胞障害性アッセイ法、ウサギ
眼刺激性試験、溶血アッセイ法及び発熱性アッセイ法を含むが、限定されない。本発明の
生体適合性アッセイ法は、細胞に基づいた、又は無細胞に基づいたアッセイ法である。
【0099】
更にもう一つの特定の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物の細胞障害性は、
ISO MEM溶出試験(実施例6.4.2.2)を使用して決定される。この研究の目的は、コラーゲン
組成物が、培養されたマウス線維芽細胞において細胞障害反応を誘発する能力を評価する
ことである。例示的アッセイ法において、5%のウシ胎児血清(FBS)を補ったイーグル最小
必須培地(EMEM)が抽出試験試料に使用される。また、培地には、以下の1つ以上が補充さ
れる:L-グルタミン、HEPES、ゲンタマイシン、ペニシリン、バンコマイシン及びアンフォ
テリシンB(ファンギゾン)。L-929細胞(マウス線維芽細胞)の培養液を培養し、空気中の5
±1%の二酸化炭素の加湿された雰囲気において37±1℃にて使い捨て組織培養実験器具の
単層として使用する。試験試料を、120cm2試料及び20ml-E-MEMプラス5%のFBSに等しい比
率を使用して無傷のまま抽出する。試験試料を37±1℃にてE-MEMプラス5%のFBS中で5±1%
の二酸化炭素にて24~25時間抽出する。抽出期間の後、維持培地を試験培養ウェルから除
去し、1mlの試験培地/抽出物と置き換えて、対照培地/抽出物及びポジティブ対照培地を
塩化カドミウムでスパイクする。ポジティブ、中間及びネガティブ対照を試験試料と並行
して実行する。塩化カドミウムでスパイクした試験培地/抽出物及び対照培地/抽出物及び
ポジティブ対照培地をプレートに3回まき、空気中の5±1%二酸化炭素の加湿された雰囲気
において37±1℃にて72±4時間インキュベートする。培養を24、48及び72±4時間インキ
ュベーション期間にて顕鏡観察によって細胞毒性について評価する。細胞障害性を評価す
るための基準は、肉芽形成、鋸歯状突起又は丸まりなどの細胞の形態学的変化及び溶解又
は分離による単層からの生細胞の喪失を含む。試験の妥当性は、ネガティブ対照培養が試
験の期間の全体にわたって健康な正常外見を維持することを必要とする。毒性の程度は、
以下の通りに記録される:
【0100】
0 なし:分散した細胞質内顆粒;細胞溶解なし。
1 軽微:細胞の20%以下が、丸く、ゆるく付着され、かつ細胞質内の顆粒がなく;随時の
溶解した細胞は、存在する。
2 軽度:細胞の50%以下が丸く、細胞質内顆粒を欠いている;広範な細胞溶解及び細胞間
空領域なし。
【0101】
3 中程度:細胞層の70%以下が丸い細胞を含み、及び/又は溶解されている。
4 重篤:ほとんど完全な細胞層の破壊。
【0102】
USPによれば、「0」、「1」又は「2」を記録する試験項目は、非中毒性であるとみなさ
れる。「3」又は「4」を記録する試験項目は、有毒であるとみなされる。ポジティブ対照
試料は、「3」又は「4」のスコアを有さなければならず、ネガティブ対照試料は、実証試
験について「0」のスコアを有さなければならない。
【0103】
ウサギの接眼面は、ヒト皮膚よりも感受性が高いことが公知であり、従って、ウサギ眼
刺激研究が本発明のコラーゲン組成物の生体適合性を評価するために使用される。例示的
アッセイ法において、試料を一次眼刺激についてスクリーニングする。羊膜を0.05%のデ
オキシコール酸一水和物ナトリウム塩(D-Cell)の水溶液を使用して清浄する。試験は、連
邦危険物法(FHSA)規則、16CFR 1500の指針に従って行うことができる。例示的アッセイ法
において、対照眼は、補助的光源で肉眼検査によって、ウサギについて臨床的に正常であ
ると判断される。いずれの既存の角膜傷害を検出するためにも、眼をフルオレッセイン染
料で処理し、0.9%のUSP生理的食塩水(PSS)で洗浄して、暗い部屋にて紫外線で観察する。
試料は、標準的技術に従ってそれぞれのウサギの片眼の下結膜嚢に滴下注入する。それぞ
れのウサギの反対の眼は、未処置のままにし、比較対照として役立てる。動物を処理後に
それらのケージに戻す。投薬の24、48及び72時間後にて、それぞれのウサギの試験眼を未
処置の対照眼と比較して補助的光源及び適切な拡大率で調べて、眼刺激について類別する
。角膜傷害を検出し、又は確認するためには、試験眼をフルオレッセイン染料で処理し、
PSSで洗浄して、24時間にて紫外線灯での暗条件下で調べる。FHSA修飾ドレーズスコアリ
ング基準に従って反応を記録する。有意な陽性反応を示す3匹の動物の1匹を境界知見とす
る。有意な陽性反応を示す3匹の動物のうちの2匹を有意な陽性反応とし、試験品を刺激物
とみなす。
【0104】
本発明は、当該技術分野において公知で、及び本明細書において例証した方法(実施例6
.4.2.4を参照されたい)を使用して本発明のコラーゲン組成物の溶血特性を決定すること
を包含する。溶血は、血液に接触するであろう試験試料の溶血特性を記述する。これは、
材料及び装置と接触する際の赤血球膜脆弱性を測定するので、これは特に有意なスクリー
ニング試験と考えられる。例示的アッセイ法において、手順には、血球懸濁液に試験材料
を曝露すること、次いで放出されるヘモグロビンの量を決定することを含む。試験は、静
状態下でヒト血液と試験試料の直接接触して実行する。赤血球によって放出されるヘモグ
ロビンの量を分光光度的に540nmにて(シアノメトヘモグロビンへの変換後)ネガティブ及
びポジティブ対照と共に測定する。試料及び対照のための溶血インデックスは、以下の通
りに算出する:
【0105】
溶血インデックス=ヘモグロビン放出(mg/ml)×100
【0106】
存在するヘモグロビン(mg/ml)
【0107】
ここで:ヘモグロビン放出(mg/ml)=(定数 + X 係数)×
【0108】
光学密度×16。存在するヘモグロビン(mg/mL)=希釈した血液10±1mg/mL。
【0109】
本発明は、当該技術分野において公知で、及び本明細書において例証した方法(実施例6
.4.2.5を参照されたい)を使用して本発明のコラーゲン組成物の発熱原性を決定するため
の方法を包含する。一つの実施態様において、本発明のコラーゲン組成物の発熱原性は、
例えばカブトガニ(Limulus Amebocyte)可溶化液(LAL)試験を使用して、本発明のコラーゲ
ン組成物中の細菌内毒素の存在を測定することによって決定する。この試験は、細菌内毒
素の検出及び定量化のためのインビトロでのアッセイ法である。例示的試験において、コ
ラーゲン組成物の98試料(ロットあたりn=1)をそれぞれ1×2cmで測定し、抽出について個
々に試験する。抽出は、それぞれの試料を30mLの抽出液体中で37~40℃にて40~60分間、
オービタルシェーカーでの断続的に回旋しつつ洗浄することによって行う。それぞれの試
料抽出物のpHは、pH紙で検証すると6~8の間である。発熱物質レベルは、1mLあたり0.05
の内毒素単位(EU)の試験感受性で、動力学的濁度比色試験(Kinetic Turbidimetric Color
imetric Test)によって測定する。試料あたりの総内毒素レベルは、検出された内毒素値(
EU/mL)を30mL(装置あたりの抽出体積)に、及び再び24(6×8cmの大きさの装置をシミュレ
ートするために)に乗じることによって算出する。
【0110】
(6.4.3 微生物学的研究)
本発明は、本発明のコラーゲン組成物における大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(K
lebsiella pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、糞便腸球菌(Enteroc
occus faecalis)、鵞口瘡カンジダ(Candida albicans)、尋常変形菌(Proteus vulgaris)
、ビリダンス連鎖球菌(Staphylococcus viridans)及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)
を含むが、限定されない微生物学的生物体の存在を決定するための、当該技術分野におい
て公知であり、及び本明細書に例証した方法を包含する。このような方法は、コラーゲン
組成物の調製のいずれの工程にて使用してもよい。処理の間の微生物学研究のための例示
的過程には、以下を含む:未処理の羊膜の微生物学的に「スパイクした」試料及び処理の
間に使用する設備の試験。試料を以下の通りの8種の微生物でスパイクした塩類溶液に5分
間浸漬し、試料を故意に汚染させる:
【0111】
1. 大腸菌(Escherichia coli) 5.鵞口瘡カンジダ(Candida albicans)。
【0112】
2. 肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae) 6.尋常変形菌(Proteus vulgaris)。
【0113】
3.黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus) 7.ビリダンス連鎖球菌(Staphylococcus vi
ridans)。
【0114】
4.糞便腸球菌(Enterococcus faecalis) 8.緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)。
【0115】
好都合には、本発明の細胞除去及びリンス法により、本発明のコラーゲン組成物での微
生物の数を減少させることができる。
【0116】
本発明は、本発明のコラーゲン組成物の生物負荷を決定するための、当該技術分野にお
いて公知で、及び本明細書において例証した方法を包含する。本明細書に使用される「生
物負荷」とは産業上滅菌法を受ける前の、所与の量の材料で見いだされる混入生物体の程
度である。例示的方法において、10-6の滅菌保証レベルで滅菌を達成するであろう最小E-
ビーム放射線量が決定される。膜は、Peptone-Tween(登録商標)溶液を使用して、液浸及
び手動振盪によって抽出する。平板分離法は、ダイズ-カゼイン消化寒天を使用する膜分
離である。好気条件については、プレートを30~35℃にて4日間インキュベートし、次い
で数え上げる。真菌については、プレートを20~25℃にて4日間インキュベートし、次い
で数え上げる。芽胞菌については、抽出部分を熱ショックして、濾過し、好気性菌につい
てと同様にプレートにまく。嫌気性菌については、プレートを30~35℃にて4日間インキ
ュベートし、数え上げ、プレートを嫌気的条件下で30~35℃にて4日間インキュベートし
、次いで数え上げる。利用した微生物は、クロストリジウム・スポロジェネス(Clostridi
um sporogenes)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、及びバシラス・アトロフェウス(Bac
illus atrophaeus)である。
【0117】
特定の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、好気性菌及び真菌について2
未満のコロニー形成単位(cfu)を、好気性菌及び真菌について1未満又は0cfuを有する。更
にその他の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、嫌気性菌及び胞子について
5.1未満のコロニー形成単位(cfu)を、2未満又は1未満のcfuを有する。
【0118】
特定の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、本明細書において例証され、
及び当業者に公知の方法(実施例6.4.3.2を参照されたい)を使用して決定すると静菌剤又
は静真菌剤ではない。本明細書に使用される静菌剤とは、細菌生育又は生殖を阻害するが
、細菌を殺さない薬剤をいう。本明細書に使用される、静真菌剤とは、非殺真菌性の化学
的又は物理的媒体の存在下で、真菌の増殖を防げる薬剤をいう。
【0119】
(6.4.4 コラーゲン組成物の貯蔵及び取扱い)
本発明は、室温(例えば、25℃)で、本発明のコラーゲン組成物を貯蔵することを包含す
る。ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、少なくとも0℃、少なくとも4
℃、少なくとも10℃、少なくとも15℃、少なくとも20℃、少なくとも25℃、少なくとも30
℃、少なくとも35℃又は少なくとも40℃の温度にて貯蔵することができる。一部の実施態
様において、本発明のコラーゲン組成物は、冷蔵されない。一部の実施態様において、本
発明のコラーゲン組成物は、約2~8℃の温度にて冷蔵してもよい。その他の実施態様にお
いて、本発明のコラーゲン組成物は、上で確認したいずれの温度においても長期間貯蔵す
ることができる。特定の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、滅菌及び非酸
化条件下で貯蔵される。ある実施態様において、本発明の方法に従って産生されるコラー
ゲン組成物は、規定温度のいずれにおいても、12月以上の間に生化学的又は構造的な統合
性に変化を伴わずに(例えば、分解なく)、コラーゲン組成物の生化学的又は生物物理学的
特性になんらの変化を伴わずに貯蔵することができる。ある実施態様において、本発明の
方法に従って産生されるコラーゲン組成物は、規定温度のいずれにおいても、数年間に生
化学的又は構造的な統合性に変化を伴わずに(例えば、分解なく)、コラーゲン組成物の生
化学的又は生物物理学的特性になんらの変化を伴わずに貯蔵することができる。ある実施
態様において、本発明の方法に従って調製される本発明のコラーゲン組成物は、無期限に
維持することが予想される。コラーゲン組成物は、長期貯蔵のために適切ないずれの容器
に貯蔵してもよい。好都合には、本発明のコラーゲン組成物は、滅菌の二重ピール嚢(pea
l-pauch)パッケージに貯蔵することができる。
【0120】
(6.4.5 滅菌)
本発明のコラーゲン組成物は、このような組成物を滅菌するための当業者に公知の技術
に従って滅菌することができる。
【0121】
ある実施態様において、コラーゲン組成物は、内毒素を通過させ、かつコラーゲン組成
物を保持するフィルターを通して濾過される。内毒素の濾過のために当業者に公知の任意
のサイズ、例えば30kDaのフィルターを使用することができる。ある実施態様において、
コラーゲン組成物は、コラーゲン組成物を保持すると共に、内毒素がフィルターを通過す
ることができる条件下でフィルターと接触させる。条件は、当業者に公知の濾過のための
任意の条件、例えば遠心分離又はポンピングであることができる。フィルターは、内毒素
がフィルターを通過することができる共に、コラーゲンを保持するサイズであるべきであ
る。ある実施態様において、フィルターは、5kDa~100kDaの間である。特定の実施態様に
おいて、フィルターは、約5kDa、約10kDa、約15kDa、約20kDa、約30kDa、約40kDa、約50k
Da、約60kDa、約70kDa、約80kDa、約90kDa又は約100kDaである。フィルターは、セルロー
ス、ポリエーテルスルホン及び当業者に明らかなその他のものなどのコラーゲン組成物に
適合性である当業者に公知のいずれの材料のものであることもできる。濾過は、当業者の
要望通りの回数繰り返すことができる。内毒素は、排除をモニターするための標準的技術
に従って検出することができる。
【0122】
ある実施態様において、コラーゲン組成物を濾過して、ウイルス粒子がないか、又は減
少したコラーゲン組成物を産生することができる。好都合には、本発明のこれらの実施態
様において、フィルターは、ウイルス粒子が通過することができる共に、コラーゲン組成
物を保持する。ウイルスを除くために有用な当業者に公知のいずれのフィルターを使用す
ることもできる。例えば、1000kDaのフィルターは、パルボウイルス、A型肝炎ウイルス及
びHIVの排除又は減少のために使用することができる。750kDaのフィルターは、パルボウ
イルス及びA型肝炎ウイルスの排除又は減少のために使用することができる。500kDaのフ
ィルターは、パルボウイルスの排除又は減少のために使用することができる。
【0123】
従って、本発明は、ウイルス粒子がないか、又は減少したコラーゲン組成物を産生する
方法であって、コラーゲン組成物を保持すると共に、1つ以上のウイルス粒子がフィルタ
ーを通過することができるサイズのフィルターとコラーゲン組成物を接触させる工程を含
む方法を提供する。ある実施態様において、コラーゲン組成物は、コラーゲン組成物を保
持すると共に、1つ以上のウイルス粒子がフィルターを通過することができる条件下でフ
ィルターと接触される。条件は、当業者に公知の濾過のための任意の条件、例えば遠心分
離又はポンピングであることができる。フィルターは、1つ以上のウイルス粒子がフィル
ターを通過することができる共に、コラーゲンを保持するサイズであるべきである。ある
実施態様において、フィルターは、500kDa~1000kDaの間である。特定の実施態様におい
て、フィルターは、約500kDa、約750kDa又は約1000kDaである。フィルターは、セルロー
ス、ポリエーテルスルホン及び当業者に明らかなその他のものなどのコラーゲン組成物に
適合性である当業者に公知のいずれの材料のものであることもできる。濾過は、当業者の
要望通りの回数繰り返すことができる。ウイルス粒子は、濾過をモニターするための標準
的技術に従って検出することができる。
【0124】
また、本発明のコラーゲン組成物の滅菌は、当業者に公知の方法、例えばGorham, D. B
yrom (ed.), 1991, Biomaterials, Stockton Press, New York, 55-122を使用して、電子
線照射によって行うことができる。少なくとも99.9%の細菌又はその他の潜在的に混入す
る生物体を殺すために十分な放射のいずれの用量も、本発明の範囲内である。特定の実施
態様において、本発明のコラーゲン組成物の末端滅菌を達成するために少なくとも18~25
kGyの用量が使用される。
【0125】
(6.5 コラーゲン組成物の製剤)
ある実施態様において、本発明は、コラーゲン組成物を提供する。コラーゲンは、本発
明のいずれかのコラーゲン、例えば本明細書の方法の1つによって調製されたコラーゲン
であることができる。有利なことには、コラーゲンを水又はリン酸緩衝食塩水中で製剤化
することができる。特定の実施態様において、コラーゲンは、リン酸緩衝食塩水中で製剤
化される。
【0126】
コラーゲンは、当業者に有用ないずれの濃度であることもできる。ある実施態様におい
て、本発明の製剤は、0.1~100mg/ml、1~100mg/ml、1~75mg/ml、1~50mg/ml、1~40mg/
ml、10~40mg/ml又は20~40mg/mlのコラーゲンを含む。ある実施態様において、本発明の
製剤は、約5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、35mg/ml、40mg/ml
、45mg/ml又は50mg/mlのコラーゲンを含む。特定の実施態様において、本発明は、約35mg
/mlのコラーゲンを含む製剤を提供する。
【0127】
本発明のある実施態様において、コラーゲン組成物を乾燥させ、当業者にとって有用な
形状に成形することができる。該形状は、シート、チューブ、プラグ及び球等を含む任意
の有意な形状であり得る。ある実施態様において、該コラーゲン組成物は、創傷又は傷害
の部位に適合するように成形される。成形したコラーゲン組成物を当業者に明らかな任意
の目的で使用することができる。成形コラーゲン組成物の代表的な使用方法を以下に示す
。
【0128】
胎盤から抽出された本発明の組成物は、典型的には白色ペーストである。このペースト
を、当該材料を成形するための当該技術分野で知られているあらゆる方法に従って成形す
ることができる。例えば、該組成物を金型に押し込み、又は金型の周囲に形成して、特定
の形状を作り、加熱乾燥、真空乾燥又は凍結乾燥することができる。該組成物を薄く引き
伸ばし、例えばゲル乾燥器上で、例えば真空を利用して乾燥させることもできる。
【0129】
ある実施態様において、本発明の組成物は、医薬として又は美容的に許容し得る担体と
組み合わせて、インビトロ又はインビボにおいて組成物として投与されてもよい。投与の
形態には、注射、溶液、クリーム、ゲル、インプラント、ポンプ、軟膏、エマルション、
懸濁液、微粒子、粒子、微小粒子、ナノ粒子、リポソーム、ペースト、パッチ、錠剤、経
皮デリバリー装置、スプレー、エアロゾル又は当該技術分野の当業者によく知られている
その他の手段を含むが、限定されない。このような医薬として又は美容的に許容し得る担
体は、当該技術分野の当業者に一般に公知である。本発明の医薬品製剤は、周知かつ容易
に利用できる成分を使用して、当該技術分野において公知の手順によって調製することが
できる。例えば、化合物は、一般的賦形剤、希釈剤又は担体と共に製剤化することができ
、錠剤、カプセル、懸濁液、粉末、その他の中に形成することができる。このような製剤
のために適切した賦形剤、希釈剤及び担体の例には、以下を含む:充填剤及び増量剤(例え
ば、デンプン、糖、マンニトール及びケイ素誘導体);結合剤(例えば、カルボキシメチル
セルロース及びその他のセルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチン並びにポリビニル-
ピロリドン);保湿剤(例えば、グリセロール);崩壊剤(例えば、炭酸カルシウム及び炭酸水
素ナトリウム);溶解を遅延させるための薬剤(例えば、パラフィン);再吸収促進剤(例えば
、四級アンモニウム化合物);界面活性剤(例えば、セチルアルコール、グリセロールモノ
ステアレート);吸着性担体(例えば、カオリン及びベントナイト);乳化剤;防腐剤;甘味料;
安定剤;着色剤;芳香剤;香味料;潤滑剤(例えば、タルク、カルシウム及びステアリン酸マ
グネシウム);固体ポリエチルグリコール;及びこれらの混合物である。
【0130】
「医薬として又は美容的に許容し得る担体」又は「医薬として又は美容的に許容し得る
媒体」という用語は、本明細書において、限定されることなく、有害な生理学的又は美容
的反応を生じさせることなく、生きている動物又は人体組織との接触に使用するために適
しており、かつ有害な様式で組成物のその他の成分と相互作用しない、水又は塩類溶液、
ゲル、クリーム、膏薬、溶媒、希釈剤、液体軟膏基剤、軟膏、ペースト、インプラント、
リポソーム、ミセル、巨大ミセル、その他を含むが、限定されない任意の液体、固体又は
半固体を意味するために使用される。当業者に公知のその他の医薬として若しくは美容的
に許容し得る担体又は媒体は、本発明の分子を送達するための組成物を作製するために使
用してもよい。
【0131】
製剤は、これらが活性成分のみを、又は好ましくは特定の位置に、おそらくある期間に
わたって放出するように構成することができる。このような組合せは、更に、放出動態を
制御するための更なる機序を提供する。コーティング、エンベロープ及び保護マトリック
スを、例えば高分子物質又は蝋から作製してもよい。
【0132】
本発明の組成物の、又はこのような組成物と本発明の種々の形態のために特に適した担
体などのその他の材料とを含む製剤のインビボ投与の方法は、経口投与(例えば、頬又は
舌下投与)、肛門投与、直腸投与、坐薬としての投与、局所適用、エアロゾル適用、吸入
法、腹腔内注射、静脈内投与、経皮投与、皮内投与、皮下投与、筋内投与、子宮内投与、
膣投与、体腔内投与、腫瘍又は内部損傷位置への外科的投与、器官の内腔又は実質への投
与、及び非経口投与を含むが、限定されない。上記の種々の形態の投与に有用な技術には
、局所適用、摂取、外科的投与、注射、スプレー、経皮デリバリー装置、浸透ポンプ、所
望の部位に対する直接電着、又は当該技術分野の当業者によく知られているその他の手段
を含むが、限定されない。適用の部位は、表皮上などの外部又は内部、例えば胃潰瘍、外
科的領域若しくはその他であることができる。
【0133】
本発明のコラーゲン組成物は、クリーム、ゲル、溶液、懸濁液、リポソーム、粒子又は
治療的及び美容的化合物の製剤化並びに送達の当業者に公知のその他の方法の形態で適用
することができる。治療薬の吸入送達のために超微細粒径のコラーゲン材料を使用するこ
とができる。皮下投与のための適切な製剤のいくつかの例には、インプラント、デポー、
針、カプセル及び浸透ポンプを含むが、限定されない。膣投与のための適切な製剤のいく
つかの例には、クリーム及びリングを含むが、限定されない。経口投与のための適切な製
剤のいくつかの例には、丸剤、液体、シロップ及び懸濁液を含むが、限定されない。経皮
投与のための適切な製剤のいくつかの例には、ゲル、クリーム、ペースト、パッチ、スプ
レー及びゲルを含むが、限定されない。皮下投与のための適切な送達機序のいくつかの例
には、インプラント、デポー、針、カプセル及び浸透ポンプを含むが、限定されない。非
経口投与のために適切な製剤は、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び製剤を意図されたレシ
ピエントの血液と等張性にする溶質を含んでいてもよい水性及び非水性滅菌注射溶液、並
びに懸濁剤及び糊料を含んでいてもよい水性及び非水性滅菌懸濁液を含むが、限定されな
い。即席注射溶液及び懸濁液は、当該技術分野の当業者によって一般に使用される滅菌の
粉末、顆粒及び錠剤から調製してもよい。
【0134】
本発明の組成物が、例えば1つ以上の「医薬として又は美容的に許容し得る担体」又は
賦形剤と組み合わせられる実施態様は、単位剤形に都合よく存在してもよく、従来の医薬
的技術によって調製してもよい。このような技術には、活性成分と医薬品担体(類)又は賦
形剤(類)とを含む組成物を結合させる工程を含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体
と一様かつ親密に結合させることによって調製される。特定の単位投薬量製剤は、投与さ
れる成分の、用量若しくは単位又はその適切な画分を含むものである。上で詳述した成分
に加えて、本発明の組成物を含む製剤は、当該技術分野の当業者によって一般に使用され
るその他の薬剤を含んでいてもよいことが理解されるはずである。投与体積は、投与経路
に応じて変化するであろう。例えば、筋肉内注射は、約0.1ml~1.0mlの体積の範囲であっ
てもよい。
【0135】
本発明の組成物は、所望の生理学的又は薬理学的結果を生じるであろう任意の用量範囲
にて物質を提供するようにヒト又は動物に投与してもよい。投薬量は、投与される物質又
は物質群、望まれる治療指標、作用部位における、又は体液中での所望有効濃度及び投与
のタイプに依存する。物質の適切な用量に関する情報は、当業者に公知であり、L. S. Go
odman及びA. Gilman, eds,治療学の医薬基礎(The Pharmacological Basis of Therapeuti
cs), Macmillan Publishing, New York, and Katzung, Basic & Clinical Pharmacology,
Appleton & Lang, Norwalk, Connecticut, (6th Ed. 1995)などの文献において見いださ
れるであろう。所望の療法の技術分野に熟練した臨床家が、投与される環境及び物質によ
って必要とされる具体的投薬量及び用量の範囲、並びに投与の頻度を選んでもよい。
【0136】
コラーゲン組成物は、コラーゲンではない1つ以上の化合物又は物質を含んでいてもよ
い。例えば、コラーゲン組成物は、製造の間又は外科手術のための準備の間のいずれにお
いても、生体分子と共に浸漬させてもよい。このような生体分子には、抗生物質(クリン
ダマイシン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、ゲンタマイシンなど)、ホルモン、成
長因子、抗腫瘍薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、疼痛薬物、抗ヒスタミン剤、抗炎症薬、銀
(硝酸銀及びスルファジアジン銀を含むが、限定されない銀塩など) を含むが限定されな
い抗感染症薬、元素の銀、抗生物質、殺菌性酵素(リゾゾーム(lysozome))など)、創傷治
癒薬(PDGF、TGFを含むが、限定されないサイトカイン;チモシンなど)、創傷治癒薬として
のヒアルロン酸、創傷シーラント(トロンビンを伴う又は伴わないフィブリンなど)、細胞
誘引剤及び足場試薬(フィブロネクチンなど)及びその他を含むが、限定されない。具体例
において、コラーゲン組成物は、少なくとも1つの成長因子、例えば線維芽細胞成長因子
、上皮成長因子などと共に浸漬させてもよい。また、コラーゲン組成物は、特定の生化学
的過程の特異的阻害剤、例えば膜受容体阻害剤、キナーゼ阻害剤、成長抑制物質、抗癌薬
、抗生物質、その他などの小有機分子と共に浸漬してもよい。
【0137】
更にその他の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、ヒドロゲルと組み合わ
せてもよい。当業者に公知の任意のヒドロゲル組成物が、本発明の範囲内に包含され、例
えば、任意のヒドロゲル組成物が以下の総説に開示されており:Graham, 1998, Med. Devi
ce Technol. 9(1): 18-22; Peppasらの論文,2000, Eur. J. Pharm. Biopharm. 50(1): 27
-46; Nguyenらの論文,2002, Biomaterials, 23(22): 4307-14; Heninclらの論文,2002, A
dv. Drug Deliv. Rev 54(1): 13-36; Skelhorneらの論文,2002, Med. Device. Technol.
13(9): 19-23; Schmedlenらの論文,2002, Biomaterials 23: 4325-32;これらは、これら
の全体において引用により本明細書に取り込まれている。具体的実施態様において、ヒド
ロゲル組成物は、コラーゲン組成物に適用され、すなわちコラーゲン組成物の表面に放出
される。ヒドロゲル組成物は、例えばコラーゲン組成物に吹き付けても、コラーゲン組成
物の表面で飽和させても、コラーゲン組成物と共に浸漬しても、コラーゲン組成物と共に
浸しても、又はコラージュコラーゲン組成物の表面に被覆してもよい。
【0138】
本発明の方法及び組成物に有用なヒドロゲルは、ポリビニルアルコール(PVA)、メタク
リル酸ポリヒドロキシエチル、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒアル
ロン酸、デキストラン又はそれらの誘導体及び類似体を含むが、限定されない、当該技術
分野において公知の任意の水相互作用的又は水溶性重合体から作製することもできる。
【0139】
一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、ヒドロゲルと組み合わせる前
に、更に1つ以上の生体分子と共に浸漬される。その他の実施態様において、ヒドロゲル
組成物は、本発明のコラーゲン組成物と組み合わせられる前に、更に1つ以上の生体分子
と共に浸漬される。このような生体分子には、抗生物質(クリンダマイシン、ミノサイク
リン、ドキシサイクリン、ゲンタマイシンなど)、ホルモン、成長因子、抗腫瘍薬、抗真
菌薬、抗ウイルス薬、疼痛薬物適用、抗ヒスタミン剤、抗炎症薬、銀(硝酸銀及びスルフ
ァジアジン銀を含むが、限定されない銀塩など)を含むが限定されない抗感染症薬、元素
の銀、抗生物質、殺菌性酵素(リゾゾーム(lysozome)など)、創傷治癒薬(PDGF、TGFを含む
が、限定されないサイトカイン;チモシンなど)、創傷治癒薬としてのヒアルロン酸、創傷
シーラント(トロンビンを伴う又は伴わないフィブリンなど)、細胞誘引剤及び足場試薬(
フィブロネクチンなど)及びその他を含むが、限定されない。具体例において、コラーゲ
ン組成物又はヒドロゲル組成物は、少なくとも1つの成長因子、例えば線維芽細胞成長因
子、上皮成長因子などと共に浸漬させてもよい。好都合には、生体分子は、治療薬である
ことができる。
【0140】
一部の実施態様において、ヒドロゲル組成物は、本発明のコラーゲン組成物を含む積層
物と組み合わせられる。
【0141】
ヒドロゲル/コラーゲン組成物は、限定されないが、創傷、火傷及び皮膚状態の治療(例
えば、瘢痕を治療するため)、美容的使用(例えば、整容手術)、並びにインプラントとし
ての任意の使用を含む医療分野における有用性を有する。一部の実施態様において、ヒド
ロゲル/コラーゲン組成物は、被験体に対して局所的に、すなわち例えば創傷の治療のた
めに皮膚の表面に適用される。その他の実施態様において、ヒドロゲル/コラーゲン組成
物は、被験体の内部に、例えば体内において永久的又は準永久的な構造になるようにイン
プラントとして使用してもよい。いくつかの実施態様において、ヒドロゲル組成物は、生
物分解性でないように製剤化される。更にその他の実施態様において、ヒドロゲル組成物
は、生体分解性であるように製剤化される。具体的実施態様において、ヒドロゲル組成物
は、数日以内に分解するように製剤化される。もう一つの特定の実施態様において、ヒド
ロゲル組成物は、数月以内に分解するように製剤化される。
【0142】
いくつかの実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、細胞が一様かつコンフル
エントであるように、細胞と共に形成される。本発明のコラーゲン組成物を形成するため
に使用することができる細胞は、幹細胞、ヒト幹細胞、ヒト分化した成人細胞、全能性幹
細胞、多能性幹細胞、多分化能幹細胞、組織特異的幹細胞、胚様幹細胞、コミットされた
前駆細胞、線維芽細胞様細胞を含むが、限定されない。その他の実施態様において、本発
明は、軟骨細胞、肝細胞、造血幹細胞、膵臓実質細胞、神経芽細胞及び筋肉前駆細胞を含
むが、限定されない前駆細胞の特異的クラスと共に本発明のコラーゲン組成物を形成する
ことを包含する。
【0143】
(6.6 幹細胞)
ある実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、複数の幹細胞を含む。該幹細胞
は、所定の目的に好適な任意の幹細胞であり、全能性幹細胞若しくは多能性幹細胞であり
、又は前駆細胞であり得る。好ましくは、該組成物は、米国出願公開第2003/0032179号及
び同第2003/0180269号並びに米国特許第7,045,148号に記載されているもののような胎盤
幹細胞を含む。しかし、該組成物は、任意の組織供給源からの幹細胞又は前駆細胞、好ま
しくは哺乳動物の幹細胞又は前駆細胞、例えば、胚幹細胞、胚生殖細胞、間葉幹細胞、骨
髄由来幹細胞、造血性前駆細胞(例えば、末梢血液、胎児血液、胎盤血液、臍帯血液、胎
盤潅流液等由来の造血幹細胞)、体性幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞、膵臓幹細胞、内皮
幹細胞、心臓幹細胞、筋肉幹細胞及び脂肪幹細胞等を含むことができる。該組成物は、い
くつかの種類の幹細胞の任意の組合せを含むことができる。好ましい実施態様において、
該幹細胞は、ヒト幹細胞、例えば、ヒト胎盤幹細胞である。
【0144】
一般に、本発明の組成物は、複数の前記幹細胞又は前駆細胞が該組成物に接着するのに
十分な時間にわたって複数の幹細胞又は前駆細胞と接触される。好ましい実施態様におい
て、本発明の組成物は、幹細胞又は前駆細胞と接触する前に、有用な構造、例えば、シー
ト、プラグ、チューブ又は他の構造に成形される。幹細胞又は前駆細胞と、本発明の組成
物との接触は、当該技術分野で知られている任意の方法で実施され、例えば、幹細胞又は
前駆細胞を含む培地を該組成物の表面上に分散させること;該組成物の一部又は全部を幹
細胞又は前駆細胞の懸濁液に浸すこと;及び複数の幹細胞又は前駆細胞が少なくとも1つの
細胞分裂にわたって増殖するのに十分な時間にわたって複数の幹細胞又は前駆細胞を該組
成物の表面上で培養すること;等を含むことができる。幹細胞、好ましくは胎盤幹細胞は
、本発明の組成物上に存在し得る。例えば、組成物表面の全体又は一部の該組成物の成形
体は、例えば、表面上にランダム、密集した状態等で存在し得る。
【0145】
任意の実施態様における本発明の組成物と接触される幹細胞又は前駆細胞の数は、異な
り得るが、少なくとも1×106、3×106、1×107、3×107、1×108、3×108、1×109、3×1
09、1×1010、3×1010、1×1011、3×1011又は1×1012個であってもよく、或いは1×106
、3×106、1×107、3×107、1×108、3×108、1×109、3×109、1×1010、3×1010、1×1
011、3×1011又は1×1012個以下の幹細胞又は前駆細胞であってもよい。
【0146】
ある他の実施態様において、本発明の組成物は、幹細胞によって堆積される1つ以上の
種類の細胞外マトリックスタンパク質を含む。一実施態様において、例えば、本発明のコ
ラーゲン組成物を複数の幹細胞と接触させること;幹細胞が検出可能な量の少なくとも1種
類の細胞外マトリックスタンパク質を堆積するのに十分な時間にわたって幹細胞を該組成
物上で培養すること;及び、該組成物を脱細胞化して、少なくとも1種類の細胞外マトリッ
クスタンパク質を含むコラーゲン組成物を製造すること;によって、本発明のコラーゲン
組成物に細胞外マトリックスタンパク質を含ませるように製造する。したがって、一実施
態様において、本発明の組成物は、脱細胞化細胞外マトリックスを含み、該脱細胞化細胞
外マトリックスは、幹細胞によって堆積又は生成される。様々な実施態様において、細胞
外マトリックスタンパク質は、コラーゲン(I型、II型、III型及び/又はIV型)、エラスチ
ン又はフィブロネクチンである。別の実施態様において、細胞外マトリックスタンパク質
は、増殖するが分化しない複数の幹細胞によって生成される。別の実施態様において、細
胞外マトリックスは、分化する複数の幹細胞、又は複数の幹細胞から分化した複数の細胞
によって生成される。上記実施態様の具体的な実施態様において、幹細胞は、胎盤幹細胞
、例えば、CD34-胎盤幹細胞又はCD200+胎盤幹細胞である。
【0147】
(6.6.1 胎盤幹細胞)
好ましい実施態様において、該組成物は、複数のCD34-胎盤幹細胞を含む。CD34-胎盤幹
細胞は、胎盤組織から入手可能であり、組織培養基質に接着し、非胎盤細胞型に分化する
能力を有する幹細胞である。胎盤幹細胞は、本来胎児細胞又は母体細胞であり得る(すな
わち、母胎又は胎児の遺伝型を有し得る)。胎盤幹細胞の集団、又は胎盤幹細胞を含む細
胞の集団は、本来胎児細胞又は母体細胞のみの胎盤幹細胞を含むことができ、或いは胎児
起源と母体起源の双方の胎盤幹細胞の混合集団を含むことができる。胎盤幹細胞、及び胎
盤幹細胞を含む細胞の集団を、以下に記載の形態学的特性、マーカー特性及び培養特性に
よって識別並びに選択することができる。
【0148】
胎盤幹細胞は、一次培養又は細胞培養で培養されると、組織培養基質、例えば、組織培
養容器表面(例えば、組織培養プラスチック)に接着する。培養における胎盤幹細胞は、一
般には、線維芽、星状の外観を呈し、いくつかの細胞質プロセスが中央細胞体から伸びて
いる。しかし、胎盤幹細胞は、線維芽細胞より多くの数の当該プロセスを示すため、同一
条件下で培養された線維芽細胞と形態学的に区別可能である。形態学的には、胎盤幹細胞
は、一般に培養中でより丸い又は玉石状の形態を呈する造血幹細胞とも区別可能である。
【0149】
胎盤幹細胞は、一般には、マーカーCD10、CD73、CD105、CD200、HLA-G及び/又はOCT-4
を発現し、CD34、CD38又はCD45を発現しない。胎盤幹細胞は、HLA-ABC(MHC-1)及びHLA-DR
を発現することもできる。したがって、一実施態様において、本発明の組成物と組み合わ
せることができる幹細胞は、CD200+又はHLA-G+である。別の実施態様において、該胎盤幹
細胞は、CD73+、CD105+及びCD200+である。別の実施態様において、該胎盤幹細胞は、CD2
00+及びOCT-4+である。別の実施態様において、該胎盤幹細胞は、CD73+、CD105+及びHLA-
G+である。別の実施態様において、該胎盤幹細胞は、CD73+及びCD105+であり、胎盤細胞
の集団においては、胚様体の形成を可能にする条件下で1つ以上の胚様体の形成を促進す
る。別の実施態様において、該胎盤幹細胞は、OCT-4+であり、胎盤細胞の集団においては
、胚様体の形成を可能にする条件下で培養されると、前記幹細胞を含む単離胎盤細胞の集
団における1つ以上の胚様体の形成を促進する。
【0150】
胎盤幹細胞を潅流によって得ることができる。例えば、本発明は、臍帯血を抜き、残留
血液を除去するために潅流された哺乳動物の胎盤を潅流すること;前記胎盤を潅流溶液で
潅流すること;及び、前記潅流溶液を回収することであって、潅流後の前記潅流溶液が、
胎盤幹細胞を含む胎盤細胞の集団を含むこと;並びに、複数の前記胎盤幹細胞を前記細胞
の集団から単離すること;を含む方法に従って生成される胎盤幹細胞の単離集団を提供す
る。具体的な実施態様において、該潅流溶液は、臍静脈及び臍動脈の両方に通され、胎盤
から滲出した後に回収される。この方法によって生成される胎盤幹細胞の集団は、典型的
には、胎児細胞と母体細胞の混合物を含む。別の具体的な実施態様において、該潅流溶液
は、臍静脈に通され、臍動脈から回収される、又は臍動脈に通され、臍静脈から回収され
る。この方法によって生成される胎盤幹細胞の集団は、本来実質的に専ら胎児細胞である
。すなわち、該集団における胎盤幹細胞の例えば90%、95%、99%又は99.5%より多くが本来
胎児細胞である。
【0151】
様々な実施態様において、胎盤の潅流により得られる細胞集団内に含まれる胎盤幹細胞
は、前記胎盤細胞集団の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%又は少なくとも9
9.5%である。別の具体的な実施態様において、潅流によって回収される胎盤幹細胞は、胎
児細胞及び母体細胞を含む。別の具体的な実施態様において、潅流によって回収される胎
盤幹細胞は、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%又は少なくとも99.5%胎児細
胞である。
【0152】
胎盤幹細胞を器官又はその一部の物理的破壊、例えば酵素消化によって哺乳動物の胎盤
から回収することもできる。例えば、胎盤又はその一部を破砕する、切断する、切り刻む
、さいの目に切る、細断する、浸軟する等しながら、本発明の幹細胞回収組成物と接触さ
せ、続いて組織を1つ以上の酵素で消化させることができる。胎盤又はその一部を1つ以上
の酵素で物理的に破壊・消化させ、次いで得られた材料を本発明の幹細胞回収組成物に浸
漬又は混入させることもできる。物理的破壊方法が、例えば、トリパンブルー排除で測定
された場合に前記器官における複数の、より好ましくは多くの、より好ましくは少なくと
も60%、70%、80%、90%、95%、98%又は99%の細胞を生存させることを条件として、任意の
物理的破壊方法を用いることができる。
【0153】
胎盤を物理的破壊及び/又は酵素消化並びに幹細胞回収の前に構成要素に分けることが
できる。例えば、胎盤幹細胞を羊膜、柔網膜、臍帯、胎盤葉又はそれらの任意の組合せか
ら得ることができる。好ましくは、胎盤幹細胞は、羊膜及び柔網膜を含む胎盤組織から得
られる。典型的には、胎盤幹細胞を胎盤組織の小ブロック、例えば、容量が約1、2、3、4
、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、60
0、700、800、900又は約1000立方ミリメートルである胎盤組織のブロックの破壊によって
得ることができる。
【0154】
好ましい幹細胞回収組成物は、1つ以上の組織破壊性酵素を含む。酵素消化には、好ま
しくは、酵素の組合せ、例えば、マトリックス金属プロテアーゼと中性プロテアーゼの組
合せ、例えば、コラゲナーゼとジスパーゼの組合せが使用される。一実施態様において、
胎盤組織の酵素消化には、コラゲナーゼと、ジスパーゼと、ヒアルロニダーゼとの組合せ
、又はLIBERASE(Boehringer Mannheim Corp.(インディアナ州Indianapolis))とヒアルロ
ニダーゼの組合せなどのマトリックス金属プロテアーゼと、中性プロテアーゼと、ヒアル
ロン酸の消化のための粘液溶解酵素との組合せが使用される。胎盤組織を破壊するのに使
用できる他の酵素としては、パパイン、デオキシリボヌクレアーゼ、トリプシンなどのセ
リンプロテアーゼ、キモトリプシン又はエラスターゼが挙げられる。セリンプロテアーゼ
は、血清中のアルファ2ミクログロブリンによって阻害され得るため、消化に使用される
培地は、通常血清を含まない。EDTA及びDNアーゼは、細胞回収の効率を高めるために酵素
消化手順に広く使用される。消化薬は、好ましくは、幹細胞を粘性消化物内に閉じ込める
のを回避するように希釈される。
【0155】
組織消化酵素の任意の組合せを使用することができる。組織消化酵素の典型的な濃度と
しては、例えば、コラゲナーゼI及びコラゲナーゼIVの50~200U/mL、ジスパーゼの1~10U
/mL及びエラスターゼの10~100U/mLが挙げられる。プロテアーゼを組み合わせて使用する
、すなわち2つ以上のプロテアーゼを同一の消化反応に使用することができ、又は胎盤幹
細胞を解放するために順次使用することができる。例えば、一実施態様において、胎盤又
はその一部を最初に30分間にわたって2mg/mlにて適切な量のコラゲナーゼIで消化し、続
いて37℃にて10分間にわたって0.25%のトリプシンで消化する。セリンプロテアーゼは、
好ましくは、他の酵素の使用後に続けて使用される。
【0156】
別の実施態様において、キレート剤、例えば、エチレングリコールビス(2-アミノエチ
ルエーテル)-N,N,N'N'-テトラ酢酸(EGTA)又はエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)を、幹
細胞を含む幹細胞回収組成物、又は組織が幹細胞の単離前に幹細胞回収組成物で破壊及び
/又は消化された溶液に添加することによって組織を更に破壊することができる。
【0157】
胎盤全体又は胎盤の一部が胎児細胞及び母体細胞を含む場合(例えば、胎盤の一部が柔
網膜又は子葉を含む場合)には、回収された胎盤幹細胞は、胎児供給源及び母体供給源の
双方に由来する胎盤幹細胞の混合物を含むことになる。胎盤の一部が、母体細胞(例えば
羊膜)を含まないか、無視できる数の母体細胞を含む場合には、回収された幹細胞は、ほ
ぼ全面的に胎児胎盤幹細胞を含むことになる。
【0158】
(6.6.1.1 胎盤幹細胞の単離及び特性決定)
哺乳動物の胎盤の幹細胞は、潅流によって得られても酵素消化によって得られても、例
えばフィコール比重差遠心によって他の細胞から最初に純化(例えば単離)され得る。当該
遠心は、遠心速度等について任意の標準的なプロトコルに準拠することができる。一実施
態様において、例えば、胎盤から回収された細胞は、細胞を例えば汚染細片及び血小板か
ら分離する室温での15分間にわたる5000×gの遠心によって潅流液から回収される。別の
実施態様において、胎盤潅流液は、約200mlまで濃縮され、フィコール上に静かに積層さ
れ、22℃にて20分間にわたって約1100×gで遠心され、細胞の低密度界面層がさらなる処
理のために回収される。
【0159】
細胞ペレットを新鮮な幹細胞回収組成物、又は幹細胞維持に好適な培地、例えば、2U/m
lのヘパリン及び2mMのEDTA(GibcoBRL、NY)を含有するIMDM無血清培地に再懸濁することが
できる。全単核細胞部分を、例えば、製造元が推奨する手順に従って、Lymphoprep(Nycom
ed Pharma(ノルウェー、Oslo))を使用して単離することができる。
【0160】
本明細書に用いられているように、胎盤幹細胞を「単離する」とは、無傷の哺乳動物の
胎盤において幹細胞が通常付随する細胞の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80
%、90%、95%又は99%を除去することを意味する。器官の幹細胞は、幹細胞が無傷の器官に
おいて通常付随する幹細胞の50%未満を含む細胞集団に存在するときに「単離」される。
【0161】
例えば、0.2%EDTAを含む0.05%トリプシンの溶液(Sigma(ミズーリ州St. Louis))を使用
する差別的トリプシン化によって、潅流又は消化によって得られた胎盤細胞を、例えば、
更に又は最初に単離することができる。胎盤幹細胞は、典型的には、約5分間以内でプラ
スチック表面から剥がれるのに対して、他の接着性集団は、典型的には、20~30分を超え
るインキュベーションを必要とするため、差別的トリプシン化が可能である。例えば、ト
リプシン中和溶液(TNS、Cambrex)を使用して、トリプシン化及びトリプシン中和の後に、
剥がれた胎盤幹細胞を収穫することができる。接着細胞の単離の一実施態様において、例
えば、約5~10×106個の細胞のアリコットをいくつかのT-75フラスコ、好ましくはフィブ
ロネクチンがコーティングされたT75フラスコの各々に入れる。当該実施態様において、
細胞を市販の間葉幹細胞成長培地(MSCGM)(Cambrex)で培養し、組織培養インキュベータ(3
7℃、5%CO2)に入れることができる。10から15日後、PBSで洗浄することによって無接着細
胞をフラスコから除去する。次いで、PBSをMSCGMで置換する。好ましくは、様々な接着細
胞型の存在、特に線維芽細胞群の特定及び拡大についてフラスコを毎日調べる。
【0162】
哺乳動物の胎盤から回収された細胞の数及び型を、例えば、流動細胞計測法、細胞分類
、免疫細胞化学(例えば、組織に特異的な抗体又は細胞マーカーに特異的な抗体による染
色)、蛍光活性化細胞分類(FACS)、磁気活性細胞分類(MACS)などの標準的な細胞検出技術
を用いて形態の変化及び細胞表面マーカーを測定すること、光学顕微鏡法又は共焦点顕微
鏡法を用いて細胞の形態を調べること、及び/又はPCR及び遺伝子発現プロファイリングな
どの当該技術分野でよく知られている技術を用いて遺伝子発現の変化を測定することによ
って監視することができる。これらの技術を用いて、1つ以上の特定のマーカーに対して
陽性の細胞を識別することもできる。例えば、CD34に対する抗体を使用し、上記技術を用
いて、細胞が検出可能な量のCD34を含むかどうかを判断することができ、含む場合は、該
細胞はCD34+である。同様に、細胞が、RT-PCRによって検出可能なほど十分なOCT-4RNA、
又は成体細胞より有意に多くのOCT-4RNAを生成する場合は、該細胞はOCT-4+である。細胞
表面マーカー(例えば、CD34などのCDマーカー)に対する抗体及びOCT-4などの幹細胞に特
異的な遺伝子の配列は、当該技術分野でよく知られている。
【0163】
胎盤幹細胞、特に、フィコール分離、差別的接着又は両方の組合せによって単離された
細胞を、蛍光活性化細胞ソーター(FACS)を使用して分類することができる。蛍光活性化細
胞分類(FACS)は、粒子の蛍光特性に基づいて、細胞を含む粒子を分離するためのよく知ら
れた方法である(Kamarch, 1987, Methods Enzymol, 151:150-165)。個々の粒子における
蛍光成分のレーザー励起は、混合物からの正粒子及び負粒子の電磁分離を可能にする小さ
い電荷を与える。一実施態様において、細胞表面マーカーに特異的な抗体又はリガンドを
異なる蛍光標識で標識する。細胞を細胞ソーターで処理して、使用する抗体に対して結合
するそれらの能力に基づいて細胞の分離を可能にする。FACS分類粒子を96ウェル又は384
ウェルプレートの個々のウェル内にそのまま堆積して、分離及びクローニングを容易にす
ることができる。
【0164】
1つの分類スキームにおいて、胎盤からの幹細胞をマーカーCD34、CD38、CD44、CD45、C
D73、CD105、OCT-4及び/又はHLA-Gの発現に基づいて分類する。これを、培養におけるそ
れらの接着特性に基づいて幹細胞を選択する手順に関連して遂行することができる。例え
ば、接着性選択スキームをマーカー発現に基づく分類の前又は後に遂行することができる
。一実施態様において、例えば、細胞を最初にCD34の発現に基づいて分類し、CD34-を保
持し、かつCD200+HLA-G+である細胞を他のすべてのCD34-細胞から分離する。別の実施態
様において、胎盤からの細胞は、それらのマーカーCD200及び/又はHLA-Gの発現に基づき;
例えば、これらのマーカーのいずれかを示す細胞をさらなる使用のために単離する。例え
ば、具体的な実施態様において、CD200及び/又はHLA-Gを発現する細胞を、CD73及び/又は
CD105の発現、又は抗体SH2、SH3若しくはSH4によって認識されるエピトープ、或いはCD34
、CD38又はCD45の発現の欠如に基づいて更に分類することができる。例えば、一実施態様
において、胎盤細胞は、CD200、HLA-G、CD73、CD105、CD34、CD38及びCD45の発現又はそ
の欠如によって分類され、CD200+、HLA-G+、CD73+、CD105+、CD34-、CD38-及びCD45-であ
る胎盤細胞は、さらなる使用のために他の胎盤細胞から単離される。
【0165】
別の実施態様において、磁気ビーズを使用して、細胞を分離することができる。磁気ビ
ーズ(直径0.5~100μm)を結合するそれらの能力に基づいて粒子を分離するための方法で
ある磁気活性化細胞分類(MACS)技術を用いて細胞を分類することができる。特定の細胞表
面分子又はハプテンを特異的に認識する抗体の共有結合性付加を含む様々な有用な改良を
磁気微球体に加えることができる。次いで、ビーズを細胞と混合して結合を可能にする。
次いで、細胞を磁場に通して、特定の細胞表面マーカーを有する細胞を分離する。一実施
態様において、次いで、これらの細胞を単離し、さらなる細胞表面マーカーに対する抗体
に結合された磁気ビーズと再混合する。細胞を再び磁場に通し、両抗体を結合した細胞を
単離する。次いで、当該細胞を希釈して、クローン単離のためのマイクロタイタ皿などの
個別の皿に入れる。
【0166】
細胞形態及び成長特性に基づいて胎盤幹細胞の特性決定及び/又は分類を行うこともで
きる。例えば、胎盤幹細胞を、例えば、培養における線維芽様外観を有するものとして特
徴付けること及び/又は該外観に基づいて選択することができる。胎盤幹細胞を、胚様体
を形成する能力を有するものとして特徴付けること及び/又は該能力に基づいて選択する
こともできる。一実施態様において、例えば、形状が線維芽様であり、CD73及びCD105を
発現し、かつ培養において1つ以上の胚様体を生成する胎盤細胞を他の胎盤細胞から単離
する。別の実施態様において、培養において1つ以上の胚様体を生成するOCT-4+胎盤細胞
を他の胎盤細胞から単離する。
【0167】
別の実施態様において、胎盤幹細胞を識別し、コロニー形成単位アッセイによってその
特性決定を行うことができる。MESENCULT(商標)培地(Stem Cell Technologies, Inc.,(コ
ロンビア州Vancouver British)などのコロニー形成単位アッセイは、当該技術分野で広く
知られている。
【0168】
トリパンブルー排除アッセイ、二酢酸フルオレセイン取込みアッセイ、ヨウ化プロピジ
ウム取込みアッセイ(生死を評価する);及びチミジン取込みアッセイ、MTT細胞増殖アッセ
イ(増殖を評価する)などの当該技術分野で知られている標準的な技術を用いて、胎盤幹細
胞を生死、増殖潜在性及び寿命について評価することができる。長時間の培養において倍
増する集団の最大数を求めることなどの当該技術分野でよく知られている方法によって寿
命を測定することができる。
【0169】
当該技術分野で知られている他の技術、例えば、所望の細胞の選択的成長(正の選択)、
望ましくない細胞の選択的破壊(負の選択);例えば大豆アグルチニンなどとの混合集団に
おける差別的細胞アグルチニン化に基づく分離;凍結溶解手順;濾過;従来の遠心及びゾー
ン遠心;遠心溶離(逆流遠心);単位重力分離;向流分配;及び電気泳動等を用いて、胎盤幹細
胞を他の胎盤細胞から分離することができる。
【0170】
(6.6.1.2 胎盤幹細胞の培養)
胎盤幹細胞を上記のように単離し、本発明の組成物と直に接触させることができる。胎
盤幹細胞を本発明の組成物との接触前にいくつかの世代にわたって、例えば、細胞培養で
培養することもできる。例えば、単離した胎盤幹細胞又は胎盤幹細胞集団、或いはそこか
ら胎盤幹細胞が成長する細胞又は胎盤組織を使用して、細胞培養を開始又は接種すること
ができる。細胞は、一般には、コーティングされていない、又はラミニン、コラーゲン(
例えば、原生又は変性)、ゼラチン、フィブロネクチン、オルニチン、ビトロネクチン及
び細胞外膜タンパク質(例えば、MATRIGEL(登録商標)(BD Discovery Labware(マサチュー
セッツ州Bedford))などの細胞外マトリックス若しくはリガンドでコーティングされた無
菌組織培養容器に移される。
【0171】
好ましい実施態様において、胎盤幹細胞を本発明のコラーゲン組成物上で培養する。あ
る実施態様において、該コラーゲン組成物は、検出可能な量のフィブロネクチン及びラミ
ニンを含む。他の実施態様において、該コラーゲン組成物は、検出可能な量のフィブロネ
クチン又はラミニンを含まない。他の実施態様において、該コラーゲン組成物は、乾燥重
量で少なくとも約5%、又は少なくとも約10%のエラスチンを含む。別の実施態様において
、該コラーゲン組成物は、乾燥重量で約5%以下のエラスチンを含む。
【0172】
ある実施態様において、胎盤幹細胞を培地から回収可能な特定のサイトカインの製造の
ために培養する。具体的な実施態様において、該サイトカインは、IL-6、IL-8及び/又は
単球走化性タンパク質-1(MCP-1)である。ある他の実施態様において、胎盤幹細胞をフィ
ブロネクチンの製造のために培養する。具体的な実施態様において、胎盤幹細胞を、約5%
未満のフィブロネクチンを含む本発明の組成物上で培養する。
【0173】
上記のように、本発明の胎盤コラーゲン組成物を有用な、例えば医学的に有用な任意の
形状に成形することができる。これらの組成物は、成形及び乾燥されると、水溶液中、例
えば組織培地又は緩衝液中で安定する。したがって、胎盤幹細胞などの幹細胞を成形組成
物上でそのまま培養することができる。当該培養を細胞培養皿、又は細胞培養に好適な他
の液体容器、例えばフラスコ内で行うことができる。
【0174】
胎盤幹細胞は、任意の培地で培養され、及びあらゆる条件下で、幹細胞の培養に許容し
得るものとして当該技術分野で認識され得る。好ましくは、培地は、血清を含む。胎盤幹
細胞を、例えば、ITS(インシュリン-トランスフェリン-セレニウム)、LA+BSA(リノレン酸
-ウシ血清アルブミン)、デキストロース、L-アスコルビン酸、PDGF、EGF、IGF-1及びペニ
シリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM-LG(ダルベッコの修飾必須培地、低グルコー
ス)/MCDB201(ニワトリ線維芽基本培地);10%ウシ胎児血清(FBS)を含むDMEM-HG(高グルコー
ス);15%FBSを含むDMEM-HG;10%FBS、10%ウマ血清及びヒドロコルチソンを含むIMDM(Iscove
の修飾ダルベッコ培地);10%FBS、EGF及びヘパリンを含むM199;10%FBS、GLUTAMAX(商標)及
びゲンタマイシンを含むy-MEM(最小必須培地);10%FBS、GLUTAMAX(商標)及びゲンタマイシ
ンを含むDMEM;等に培養することができる。好ましい培地は、2%FBS、ITS、LA+BSA、デキ
ストロース、L-アスコルビン酸、PDGF、EGF及びペニシリン/ストレプトマイシンを含むDM
EM-LG/MCDB-201である。
【0175】
胎盤幹細胞を培養するのに使用できる他の培地としては、DMEM(高又は低グルコース)、
イーグル基本培地、ハムF10培地(F10)、ハムF-12培地(F12)、Iscoveの修飾ダルベッコ培
地、間葉幹細胞成長培地(MSCGM)、リーボビッツL-15培地、MCDB、DMEM/F12、RPMI 1640、
高度DMEM(Gibco)、DMEM/MCDB201(Sigma)及びセル-グロフリーが挙げられる。
【0176】
例えば、血清(例えば、ウシ胎児血清(FBS)、好ましくは約2~15%(v/v);ウマ(equine)(
ウマ(horse)血清(ES);ヒト血清(HS));ベータ-メルカプトエタノール(BME)、好ましくは約
0.001%(v/v);1つ以上の成長因子、例えば、血小板由来成長因子(PDGF)、表皮成長因子(EG
F)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、インシュリン様成長因子-1(IGF-1)、白血病阻害
因子(LIF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)及びエリスロポイエチン(EPO);L-バリンを含む
アミノ酸;及び例えば、ペニシリンG、硫酸ストレプトマイシン、アムホテリシンB、ゲン
タマイシン及びナイスタチンなどの微生物汚染を抑制するための1つ以上の抗生物質及び/
又は抗真菌剤を含む1つ以上の構成要素を単独で、又は組み合わせて培地に補充すること
ができる。
【0177】
胎盤幹細胞を標準的な組織培養条件で、例えば、組織培養皿又はマルチウェルプレート
で培養することができる。懸滴法を用いて胎盤幹細胞を培養することもできる。この方法
では、胎盤幹細胞を約5mLの培地に1mLあたり約1×104個で胎盤幹細胞を懸濁させ、1滴以
上の培地を組織培養容器、例えば100mLペトリ皿の蓋の内側に落とす。該液滴は、例えば
、単一の液滴、又は例えばマルチチャネルピペッタからの複数の液滴であり得る。蓋を注
意深く逆転させ、皿の雰囲気中に水分を維持するのに十分な容量の液体、例えば無菌PBS
を含む皿の底面の上部に配置し、幹細胞を培養する。
【0178】
胎盤幹細胞を単離する、又は幹細胞集団を単離すると(例えば、幹細胞又は幹細胞集団
がインビボで通常付随する胎盤細胞の少なくとも50%から幹細胞又は幹細胞集団を分離す
ると)、幹細胞又は幹細胞集団を増殖させ、インビトロで拡大することができる。例えば
、胎盤幹細胞集団を組織培養容器、例えば、皿、フラスコ又はマルチウェルプレート等の
中で、幹細胞が70~90%コンフルエンスまで増殖するのに十分な時間にわたって、すなわ
ち幹細胞及びそれらの後代が組織培養容器の培養表面積の70~90%を占めるまで培養する
ことができる。
【0179】
胎盤幹細胞を、細胞成長を可能にする密度で培養容器に接種することができる。例えば
、細胞を低密度(例えば、約1,000から約5,000個/cm2)から高密度(例えば、約50,000個/cm
2以上)で接種できる。好ましい実施態様において、細胞を空気中約0から約5パーセント容
量のCO2で培養する。いくつかの好ましい実施態様において、細胞を空気中約2から約25パ
ーセントのO2、好ましくは空気中約5から約20パーセントのO2で培養する。細胞を好まし
くは約25℃から約40℃、好ましくは37℃で培養する。細胞を好ましくはインキュベータ中
で培養する。培地を静的なものとすることができ、又は例えばバイオリアクターを使用し
て撹拌することができる。胎盤幹細胞を、好ましくは、(例えば、グルタチオン、アスコ
ルビン酸、カタラ-ゼ、トコフェロール又はN-アセチルシステイン等を添加することによ
る)低酸化応力下で成長させる。
【0180】
70%~90%のコンフルエンスが得られると、細胞を継代することができる。例えば、当該
技術分野でよく知られている技術を用いて、細胞を酵素処理、例えば、トリプシン化して
、それらを組織培養表面から分離することができる。ピペット採取によって細胞を除去し
、細胞を計数した後に、約20,000~100,000個の幹細胞、好ましくは約50,000個の幹細胞
を、新鮮な培地を含む新しい培養容器に継代する。典型的には、新しい培地は、幹細胞が
除去されたのと同じ種類の培地である。少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12
、14、16、18若しくは20回又はそれより多く継代された胎盤幹細胞を本発明のコラーゲン
組成物と併用することができる。
【0181】
(6.6.2 非幹細胞)
幹細胞を含む本発明の組成物は、ある実施態様において、1つ以上の型の非幹細胞をも
含む。本明細書に用いられているように、「非幹細胞」は、最終分化細胞を指す。例えば
、一実施態様において、本発明の組成物は、複数の幹細胞及び複数の線維芽細胞を含む。
本発明の組成物に含めることができる非幹細胞としては、限定することなく、線維芽細胞
又は線維芽様細胞;内皮細胞、上皮細胞、筋細胞、心細胞、膵細胞等が挙げられる。ある
他の実施態様において、該組成物は、少なくとも2つの型の幹細胞及び少なくとも2つの型
の非幹細胞を含む。
【0182】
(6.7 コラーゲン組成物を使用する方法)
更なる態様において、本発明は、治療的に、予防的に、又は美容的に本発明のコラーゲ
ン組成物を使用する方法を提供する。
【0183】
本発明のコラーゲン組成物は、数多くの広範な使用可能性を有する。使用には、組織若
しくはマトリックス物質のパッチ又はプラグなどの操作された組織及び器官の製造、縫合
、補綴及びその他のインプラント、組織足場、創傷の修復剤又は包帯剤、止血装置、構造
、外科用及び整形用スクリュー並びに外科用及び整形用プレートなどの組織修復剤及び支
持体に使用するための装置、合成インプラントのための天然のコーティング又は成分、美
容用インプラント及び支持体、器官若しくは組織のための修復又は構造用支持材、物質送
達、生物工学プラットフォーム、細胞に対する物質の効果を試験するためのプラットフォ
ーム、細胞培養、並びに多くのその他の使用を含むが、限定されない。この使用可能性の
考察は、網羅的であることは意図されず、多くのその他の実施態様が存在する。更に、そ
の他の材料及び/又は具体的物質とコラーゲンの組合せに関して多くの具体例を下記に提
供してあるが、多くのその他の材料及び物質の組合せを使用してもよい。
【0184】
該コラーゲン組成物が創傷の治療又は充填に使用される用途において、該組成物が、周
囲の組織における幹細胞によるフィブロネクチンの生成を刺激することに有利であり得る
。当該実施態様において、創傷を、検出可能な量のフィブロネクチンを含まない本発明の
組成物と接触させることができる。
【0185】
細胞をコラーゲン材料に組み合わせる能力は、本発明の組成物を組織、器官又は器官様
組織を構築するために使用する能力を提供する。このような組織、又は器官に含まれる細
胞は、物質を送達する機能を果たす細胞、組織交替の開始をもたらすであろう播種された
細胞又は両方を含むことができる。組織又は器官を作製するために多くのタイプの細胞を
使用することができる。幹細胞、前駆細胞及び/又は分化細胞は、種々の実施態様で使用
される。これらの実施態様に使用される幹細胞の例には、肝臓又は腎臓などの器官又は器
官様組織を作製するために使用される胚幹細胞、骨髄幹細胞及び臍帯幹細胞を含むが、限
定されない。いくつかの実施態様において、組成物の形状は、細胞に対して所望の方法の
特定タイプに成長して、複製するためのシグナルを送るのを補助する。その他の物質、例
えば分化誘導因子を特定タイプの細胞増殖を促進するためにマトリックスに添加すること
ができる。更に、一部の実施態様において、細胞タイプの異なる混合物が組成物に組み込
まれる。コラーゲン材料及びマトリックスを生物工学によって作られた組織又は器官に使
用する能力により、多種多様な生物工学によって作られた組織置換適用が生み出される。
生物工学によって作られた成分の例には、骨、歯構造、関節、軟骨、骨格筋、平滑筋、心
筋、腱、メニスカス、靱帯、血管、ステント、心臓弁、角膜、鼓膜、神経ガイド、組織若
しくは器官パッチ又はシーラント、失われた組織のための充填剤、美容用修復剤のための
シート、皮膚(皮膚相当物を作製するために細胞が付加されたシート)、気管、喉頭蓋及び
声帯などの咽喉の軟部組織構造、鼻軟骨、瞼板、気管の環、甲状軟骨及び披裂軟骨などの
その他の軟骨構造、結合組織、血管移植及びこれらの成分、並びに局所適用のためのシー
ト、並びに肝臓、腎臓及び膵臓などの器官に対する修復剤又は置換を含むが、限定されな
い。一部の実施態様において、このようなマトリックスは、インプラントの機能を改善す
るであろう方法で、本発明の薬物及び物質送達マトリックスと組み合わせられる。例えば
、抗生物質、抗炎症薬、局所麻酔薬又はその組み合わせを生体工学によって作られた器官
のマトリックスに添加して、治癒過程の速度を上げ、及び不快感を減少させることができ
る。
【0186】
(6.7.1 美容用適用)
ヒト皮膚は、表皮及び真皮の複合材料である。皮膚の表皮層の最外層は、角質層である
。角質層の下が表皮である。表皮の下は、乳頭真皮と呼ばれる真皮の最外層、続いて網状
真皮及び皮下層である。
【0187】
皮膚は、保護、吸収、色素発生、感覚認知、分泌、排出、温度調節及び免疫過程の制御
を含む多くの機能を果たす。これらの皮膚機能は、例えば老化、過剰の日光暴露、喫煙、
外傷及び/又は環境要因によってネガティブな影響を受け、これが皮膚の構造変化を引き
起こして、皮膚の障壁機能の機能障害及び表皮細胞の代謝回転の減少を生じ得る。ダメー
ジを受けたコラーゲン及びエラスチンは、適切に縮む能力を失い、これにより、皮膚のし
わ及び表面の荒れを生じる。しわは、典型的には皮膚の老化と関連した皮膚の改変であり
、太陽に曝露された皮膚で優先して発生する。老化が進行すると、顔並びに体のその他の
領域は、例えば微笑む、噛む、及び目を細めるなどの顔面筋動作において、重力、日光暴
露及び年の効果を示し始める。皮膚が年をとり、又は病的になると、しわ、下落及び伸展
線をもたらし、荒れて、及びビタミンDを合成する能力が減少する。また、老化した皮膚
は、薄くなり、コラーゲン、エラスチン及びグリコサミノグリカンの変化のため、平らな
真皮表皮境界面を有する。典型的には、老化皮膚は、厚み、弾性及び基礎をなす組織に対
する付着の減少によって特徴づけることができる。
【0188】
老化、環境要因、太陽に対する曝露及び体重減少、出産、疾患(例えば、座瘡及び癌)及
び外科手術などのその他の要素による皮膚に対するダメージは、皮膚輪郭欠損及びその他
の皮膚異常を生じることが多い。皮膚の輪郭欠損及びその他の異常を修正するために、人
々は、フェイスリフト及び皮膚タックなどの美容手術に頼ることが多い。しかし、美容手
術は、一般に高価で、侵襲性であり、手術領域に瘢痕を残す可能性を有し、正常な生物学
的及び生理機能に影響を及ぼし得る。従って、代替療法の必要性が残る。
【0189】
本発明は、患者における皮膚増強のための方法を提供する。一つの実施態様において、
患者における皮膚増強のための方法には、本発明のコラーゲン組成物を、増強する必要が
ある患者の顔又は体の領域に注射し、又はさもなければ投与することを含み、患者の顔又
は体の領域は、コラーゲンの投与の前の領域と比較して増強される。本発明の状況におけ
る「皮膚増強」は、外部からの作用又は効果による患者の(例えば、ヒトの)皮膚及び関連
した領域の天然の状態の何らかの変化をいう。皮膚増強によって変化するであろう非限定
的な皮膚の領域には、表皮、真皮、皮下層、脂肪、立毛筋、毛幹、汗口、皮脂腺又はそれ
らの組合せを含む。
【0190】
一部の実施態様において、本発明の方法には、目尻のしわ、鼻唇溝(「笑線」)、マリオ
ネット線(marionette lines)、眉間の折り重なり(「まゆをひそめた線(frown lines)」)
又はそれらの組合せの治療のために、本発明のコラーゲン組成物を患者に注射するか、又
はさもなければ与えることを含む。本発明のコラーゲン組成物は、線、折り目及びその他
のしわを埋めるのを補助すること、及びより平滑な、より若い様子の外見を回復するのを
補助することができる。本発明のコラーゲン組成物は、単独で、又は1つ以上の更なる注
射用組成物、レーザー治療などの再表面手法若しくはフェイスリフトなどの痩身美容と組
み合わせて使用することができる。
【0191】
一つの実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、また、顔の折り目がついたか
、くぼんだ領域を増大するために、及び/又は患者の顔及び体の領域に肉付きを付加する
か、若しくは増やすために使用してもよい。増大が必要とされる顔及び/又は体の領域は
、例えば老化、外傷、疾患、病気、環境要因、体重減少、出産又はその組合せの結果であ
る。本発明のコラーゲン組成物を注射してもよい、又はさもなければ投与してもよい患者
の顔又は体の領域の非限定的な例は、眼の下、こめかみ、上頬、下頬、頤、口唇、下あご
の輪郭、額、眉間、眉外側、頬、上唇と鼻の間の領域、鼻(鼻橋など)、頚部、殿部、臀部
、胸甲又は顔若しくは体のその他のいずれかの部分又はそれらの組合せを含む。
【0192】
本発明のコラーゲン組成物は、しわ、くぼみ又はその他の折り目(例えば、まゆをひそ
めた線、心配線(worry line)、目尻のしわ、マリオネット線)、伸展線、内外の瘢痕(傷害
、創傷、事故、咬合又は外科手術により生じる瘢痕など)又はそれらの組合せを含むが、
限定されない皮膚欠損を治療するために使用してもよい。一部の実施態様において、本発
明のコラーゲン組成物は、例えば「くぼんだ」眼、暗い円を生じる目に見える血管、並び
に目に見える視涙のくぼみの矯正のために使用してもよい。また、本発明のコラーゲン組
成物は、例えば下部眼瞼形成術から眼の下の脂肪褥の積極的除去の後の眼の下の矯正又は
積極的な頬脂肪の抽出又は自然の喪失の後の下部頬の矯正のために使用してもよい。一つ
の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、造鼻術の結果、皮膚移植又は脂肪吸
引により生じるへこみなどのその他の外科的に誘導されたでこぼこを矯正するために使用
してもよい。その他の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、顔又は体の瘢痕
(例えば、創傷、水痘又は座瘡瘢痕)の矯正のために使用してもよい。一部の実施態様にお
いて、本発明のコラーゲン組成物は、顔の再造形のために患者に注射されるか、又はさも
なければ投与される。本発明の方法を使用する顔の再造形は、頚のゆるみをもつか、又は
やつれた顔、長い顔、下部が重い顔、非対称の顔、丸々した顔を有するか、又は局在化し
た脂肪萎縮、顔中央の下顎後退、くぼんだ眼及び/又はそれらのいずれかの組合せをもつ
顔を有する患者において完了してもよい。
【0193】
一つの実施態様において、本発明の方法は、癌若しくは座瘡などの疾患又は疾病によっ
て生じる皮膚欠損などの皮膚欠損を治療するために、患者に本発明のコラーゲン組成物を
注射する、又はさもなければ投与することを含む。欠損は、疾患又は疾病の直接的又は間
接的な結果であることができる。例えば、皮膚欠損は、疾患若しくは疾病によって引き起
こされ得る、又は疾患若しくは疾病の治療によって引き起こされ得る。
【0194】
(6.7.2 非美容適用)
(6.7.2.1 空隙充填物)
本発明は、患者の体内の空隙を封着し、充填し、及び/又はさもなければ治療するため
の方法を提供する。一部の実施態様において、本発明の方法は、患者の体内の空隙を充填
するために患者に本発明のコラーゲン組成物を注射するか、又はさもなければ投与するこ
とを含む。例えば、コラーゲン組成物は、患者に対して空隙が位置する領域に投与するこ
とができる。「空隙」という用語は、老化、疾患、外科手術、先天性異常又はその組合せ
によって生じた任意の望ましくない中空空間を包含することが意図される。例えば、空隙
は、患者の体からの腫瘍又はその他の塊の外科的除去後に生じ得る。本発明のコラーゲン
組成物を充填してもよい空隙の非限定的例には、患者の体の任意の器官若しくは組織にお
ける亀裂、瘻孔、憩室、動脈瘤、嚢胞、病変又はその他の任意の望ましくない中空空間を
含む。
【0195】
一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、組織、器官、又は体のその他
の構造(例えば、血管)内、或いは、血液、尿又はその他の体液などの体液の漏出を防止す
るための隣接組織、器官又は構造間の接合部内の間隙、亀裂、又は瘻孔を、全体的に若し
くは部分的に充填し、封着し、及び/又はさもなければ治療するために使用してもよい。
例えば、本発明のコラーゲン組成物は、内臓間の瘻孔に、又は患者の体の内臓から外側へ
の開口又は開口部に注射し、移植し、又はさもなければ投与することができる。本発明の
コラーゲン組成物は、これらの病理学的状態によって形成される空隙又はその他の欠損を
充填し、かつ組織の線維芽細胞浸潤、治癒及び内殖を刺激するために使用することができ
る。
【0196】
一つの実施態様において、本発明の方法は、治療を必要とする患者における瘻孔を充填
し、封着し、及び/又はさもなければ治療するために使用され、前記方法は、本発明のコ
ラーゲン組成物を患者に注射するか、又はさもなければ投与することを含む。本発明のコ
ラーゲン組成物は、瘻孔開口部の1つに針を介した注射によって患者に投与して、開口部
の枝分れのほとんど又は全てを充填することができる。或いは、コラーゲンの紐又はロッ
ドを、開口部を介して瘻孔病変に通すことができ、又はコラーゲンは、カテーテルで患者
に導入することができる。本発明のコラーゲン組成物又は方法により、肛門、動静脈、膀
胱、頸動脈空洞の、外部の、胃の、腸管の、頭頂部の、唾液の、膣の、及び肛門直腸の瘻
孔又はそれらの組合せなどの様々なタイプの瘻孔を充填すること、封着すること、及び/
又はさもなければ治療することができる。
【0197】
一つの実施態様において、本発明の方法は、治療を必要とする患者における憩室を充填
し、封着し、及び/又はさもなければ治療するために使用され、前記方法は、本発明のコ
ラーゲン組成物を患者に注射するか、又はさもなければ投与することを含む。憩室は、小
腸、膀胱、その他などの管状又は球状の器官からの窩又は嚢の開口部である異常な生理学
的構造であり、本発明のコラーゲン組成物を使用して充填し、又は増大することができる
。
【0198】
もう一つの実施態様において、本発明の方法は、治療を必要とする患者の嚢胞を充填し
、封着し、及び/又はさもなければ治療するために使用され、前記方法は、本発明のコラ
ーゲン組成物を患者に注射するか、又はさもなければ投与することを含む。嚢胞は、線に
沿ってガス、液体又は半固体材料を含む膜裏打ちを有する異常な嚢である。一部の実施態
様において、嚢胞は、偽嚢胞であり、これは、例えば液体の蓄積を有するが、上皮又はそ
の他の膜状の裏打ちを含まない。本発明によって充填し、封着し、及び/又はさもなけれ
ば治療することができる嚢胞の更なる非限定的例には、皮脂、類皮、骨若しくは漿液性嚢
胞又はそれらの組合せを含む。
【0199】
もう一つの実施態様において、本発明の方法は、不必要な、若しくは望ましくない増殖
、液体、細胞又は組織の患者からの外科的、化学的又は生物学的除去の結果として生じた
任意の空隙を全体に、又は部分的に充填するために本発明のコラーゲン組成物を注射する
か、又はさもなければ投与することを含む。コラーゲン組成物は、残りの組織及び周囲組
織を増大するために、治癒過程を助けるために、及び感染のリスクを最小にするために、
空隙の部位に局所的に注射するか、又はさもなければ投与することができる。この増強は
、乳癌外科手術、腫瘍状結合組織、外科手術、骨組織又は軟骨組織、その他の除去のため
の後などの腫瘍切除術後に生じる空隙部位のために特に有用である。
【0200】
本発明は、本発明のコラーゲン組成物を体に直接ではないが、体外で器官、器官の成分
又は組織に、前記組織、器官又は器官の成分を体内に含める前に注射するか、又はさもな
ければ投与することによって増強を生じさせる方法を更に提供する。
【0201】
(6.7.2.2 組織増量)
一つの実施態様において、本発明の方法は、組織増量のために、患者に本発明のコラー
ゲン組成物を投与することを含む。本発明の状況における「組織増量」とは、外部の作用
又は効果による、患者の(例えば、ヒトの)非経皮軟組織の天然の状態の何らかの変化をい
う。本発明に包含される組織には、筋組織、結合組織、脂肪及び神経組織を含むが、限定
されない。本発明に包含される組織は、限定されないが、括約筋、膀胱括約筋及び尿道を
含む多くの器官の一部又は体の一部であってもよい。
【0202】
(6.7.2.3 尿失禁)
尿失禁(ストレス性尿失禁を含む)は、咳嗽、くしゃみ、笑い又は運動などの腹腔内圧の
増大を生じる活動に伴って生じる尿の突発性の漏出である。これらの活動の間に、腹腔内
圧が一過性に尿道の耐性以上に上昇し、従って突発性に通常小量の尿の漏出を生じる。ス
トレス性失禁は、一般に、尿道括約筋の強度が減弱し、かつ腹部からの圧力が増加すると
きに、括約筋が尿の流れを防ぐことができない膀胱貯蔵の問題である。尿失禁は、膀胱及
び尿道を支持する骨盤筋が弱くなった結果として、又は尿道括約筋の機能不全のために生
じ得る。例えば、尿道領域に対する以前の外傷、神経性傷害及びいくつかの薬物適用は、
尿道を弱め得る。尿失禁は、最も一般的には、閉経、骨盤外科手術若しくは出産後、例え
ば多胎妊娠及び膣出産後の女性、又は骨盤の逸脱(膣空間への膀胱、尿道又は直腸の壁の
突出)を有し、膀胱瘤、膀胱尿道脱又は直腸瘤を伴う者において見られ、通常前膣補助の
喪失に関連がある。男性では、尿失禁は、前立腺外科手術、最も一般的には、根治的前立
腺切除後に観察され得るし、外部尿道括約筋に対する傷害があるかもしれない。
【0203】
本発明は、尿失禁又はそれによって生じる症候若しくは状態を管理又は治療するための
方法であって、これらの必要な患者に本発明のコラーゲン組成物を注射するか、又はさも
なければ投与することを含み、該患者の括約筋組織は、増大され、かつ患者における排泄
抑制能力が改善されるか、又は回復される、前記方法を包含する。コラーゲン組成物は、
尿失禁の処置及び/又は治療のために尿道周辺の組織容積を増大するために尿道周囲に注
射するか、又はさもなければ投与することができる。ストレス性失調症の改善は、組織容
積を増大させることにより、尿の流出に対する耐性を増大させることによって達成するこ
とができる。
【0204】
一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、例えば尿が漏れる尿道の穴を
閉じるために、又は尿道の壁の厚みを、尿が保持されている時にそれがしっかりと密閉す
るように確立するために、患者に対して尿道周辺領域に注射されるか、又はさもなければ
投与される。
【0205】
もう一つの実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、患者に対して、膀胱出口
の尿道の筋肉のすぐ外側の尿道周辺に注射されるか、又はさもなければ投与される。増量
材料の注射は、皮膚を介して、尿道を介して、又は女性では膣を介して行うことができる
。
【0206】
本発明のコラーゲン組成物の注射のために針が使用されるときは、針の配置は、尿道に
挿入した膀胱鏡を用いて誘導することができる。尿道の増量手順は、局所麻酔下で行うこ
とができるが、一部の患者には、一般的な局所麻酔又は脊髄麻酔が必要であるかもしれな
い。患者が注射後に立ち上がることができるように、局所麻酔薬を使用することができ、
これにより、排泄抑制能力が達成されたかどうかを決定することができる。排泄抑制能力
が回復されなかった場合、1回以上のその後の注射を患者に投与することができる。手順
は、膀胱対照を達成するために数月後に繰り返す必要があるかしれない。コラーゲン注射
は、尿道周辺の領域を増量し、従って括約筋を圧縮することにより、尿漏出の制御を補助
する。
【0207】
(6.7.2.4 膀胱尿管逆流)
膀胱尿管逆流(VUR)(又は尿逆流)は、膀胱から腎臓への尿の逆流によって特徴づけられ
る。未治療のVURは、腎機能及び全体的な患者の健康に対して破壊的な長期間の影響を生
じることがある。VUR患者は、尿路感染症、腎臓瘢痕、腎盂腎炎、高血圧症及び進行性腎
不全を発病するリスクが増加する。
【0208】
本発明は、VUR又はそれにより生じる症候若しくは状態の管理又は治療のための方法で
あって、これらの必要な患者に本発明のコラーゲン組成物を注射するか、又はさもなけれ
ば投与することを含み、該患者の尿管壁が増強されて、VURの症候が減少されるか、又は
解消される、前記方法を提供する。コラーゲン組成物は、当業者に公知のいずれかの方法
を使用して尿管口の下の排尿筋裏打ち内に、内視鏡誘導下などで、注射し(例えば、半三
角注射)又はさもなければ投与することができる。
【0209】
(6.7.2.5 胃食道逆流疾患)
胃食道逆流疾患(GERD)は、通常、食道を適切に胃に連結する筋肉弁である下部食道括約
筋(LES)が適切に閉じないか、弛緩するか、又は弱り、胃内容物が食道へ漏れて戻るか、
又は逆流するために生じる障害である。胃酸又は時に胆汁酸塩が食道と接触すると、これ
が大部分の私たちのほとんどが時折感じる胸焼けの灼熱感を生じさせる。逆流した胃酸が
食道の裏打ちに触れると、これが胸部又は咽喉における灼熱感(胸焼け)を生じさせ、口の
奥で液体の味がするかもしれない(酸不消化)。時間とともに、胃酸の逆流は、食道を裏打
ちする組織に損傷を与え、炎症及び疼痛を引き起こす。成人において、持続性の未治療の
GERDは、食道永久的な損傷及び時に更に癌に至ることがある。乳児、子供及び妊婦を含む
誰もが、GERDを有し得る。
【0210】
本発明は、GERD又はそれにより生じる症候若しくは状態の管理又は治療のための方法で
あって、これらの必要な患者に本発明のコラーゲン組成物を注射するか、又はさもなけれ
ば投与することを含み、該患者のLESは、増大され、GERDの症候が減少されるか、又は解
消される、前記方法を提供する。一部の実施態様において、コラーゲン組成物は、内視鏡
誘導下で食道胃接合部のレベルで食道壁に投与される。逆流を妨げることを意図して、増
量効果は、残分及び結果的な組織反応の組合せによって生じる。本発明のコラーゲン組成
物は、標準的な、又は大きな孔(例えば、大きなゲージ)の注射針を介して注射することが
できる。
【0211】
(6.7.2.6 声帯及び喉頭)
本発明は、疾患、障害(神経疾患など)、又は一方若しくは両方の声帯(皺襞)及び/又は
喉頭(Larynx)(喉頭(voice box))に影響を及ぼすその他の異常の管理又は治療のための方
法を提供する。このような喉頭及び声帯の疾患、障害又はその他の異常の非限定的例は、
声門不全、一側声帯麻痺、両側声帯麻痺、麻痺患者発声障害、非麻痺患者発声障害、痙攣
性発声障害又はそれらの組合せである。その他の実施態様において、本発明の方法は、ま
た、声帯の不全麻痺(「運動麻痺」)、一般に例えば老年での弱った声帯(「老人性喉頭炎
」)及び/又は声帯の瘢痕(例えば、以前の外科手術又は放射線療法による)などの、不適当
に閉じた声帯を生じる疾患、障害又はその他の異常を処置又は治療するために使用しても
よい。
【0212】
本発明は、声帯がかつて有していたかさ(声帯皺襞内反又は萎縮症においてなど)若しく
は運動性(麻痺においてなど)のない患者の声帯皺襞に対して補助又はかさを提供する方法
を包含する。一部の実施態様において、声帯及び/又はその他の喉頭の軟部組織は、本発
明のコラーゲン組成物で、単独で、又はその他の治療又は薬物適用と組み合わせて増強す
ることができる。一つの実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、一方(又は両
方)の声帯皺襞を増強し、かさを付加して、その結果、それをその他の声帯皺襞と接触さ
せることができる。
【0213】
当業者に周知の多数の手順いずれか1つを使用して、患者の声帯又は喉頭に本発明のコ
ラーゲン組成物を投与してよい。一部の実施態様において、湾曲した針を使用して、患者
の口を介して本発明のコラーゲン組成物を注射する。その他の実施態様において、針(よ
り高ゲージ、短い針など)を使用して、患者の皮膚及び喉仏を介して本発明のコラーゲン
組成物を直接注射してもよい。本発明のコラーゲン組成物は、ビデオモニターにて喉頭鏡
での患者の声帯皺襞をモニターしつつ、患者に投与することができる。
【0214】
(6.7.2.7 声門不全)
一つの実施態様において、本発明は、声門不全の管理又は治療のための方法を提供する
。経皮的喉頭コラーゲン増強は、当該技術分野において公知の方法を使用して、本発明の
コラーゲンを、針を使用して患者の生体内に注射することによって生じさせることができ
る。場合によっては、患者は、喉頭の声機能に影響を及ぼす発生不全及び/又は声門不全
、筋硬直の増加、及び甲状披裂筋の動作のための能力の減少を有する。もう一つの実施態
様において、発生不全は、パーキンソン病の結果である。一つの実施態様において、声門
不全の管理又は治療の必要がある患者における、そのための本発明の方法は、患者の声帯
に本発明のコラーゲン組成物を注射するか、又はさもなければ投与することを含み、注射
により、声帯が増大し、及び声門の閉鎖を改善し、その結果、患者の声門不全が減少され
るか、又は解消される。患者は、本発明のコラーゲン組成物の投与の前に、可動の声帯を
有していても、又は有していなくてもよい。
【0215】
(6.7.2.8 発声障害)
発声障害は、何らかの声の機能障害また話すことが困難なことである。発声障害は、喉
頭部又は声帯麻痺と関連していても、又は関連していなくてもよい。本発明は、麻痺患者
発声障害、非麻痺患者発声障害又は痙攣性発声障害などの発声障害の管理又は治療のため
の方法を提供する。一つの実施態様において、患者における筋緊張異常を管理又は治療す
るための方法は、これらの必要がある患者に本発明のコラーゲン組成物を注射するか、又
は投与することを含み、患者における筋緊張異常は、コラーゲン組成物の投与の前にと比
較して改善される。場合によっては、喉頭コラーゲン注射により、わずかな増加によって
、一方又は両方の声帯皺襞の内方転位(medialization)が更に可能になり、内方転位甲状
軟骨形成術と組み合わせて、又はその後で発声が改善する。
【0216】
(6.7.2.9 声帯麻痺)
声帯は、本質的に、粘膜で覆われた筋肉である。筋肉は、もはや筋肉が神経に接続して
いないときには、萎縮する。従って、典型的な麻痺した声帯は、大きさが小さく、曲がっ
ている。加えて、麻痺のタイプに応じて、声帯は、他方の声帯がそれに触れるようになる
ほど十分に中央近くに移動していても、又は移動していなくてもよい。声帯が交わること
ができないときは、患者が音(又は、少なくとも大きい音)を生じることは困難である。従
って、本発明は、声帯麻痺患者における萎縮した声帯を増強し、又はかさを増大するため
の方法であって、声帯が一緒になる能力が改善される、前記方法を提供する。
【0217】
一側声帯皺襞麻痺では、典型的には神経機能障害のために、一方の声帯皺襞が不動であ
り、たいてい喉頭を完全に閉じることができない。反回神経は、それぞれの声帯皺襞の大
部分の動作を担う主要な神経であり、例えば種々の疾患、特定の外科手術又はウイルス感
染による損傷を受け得る。一部の実施態様において、患者の声帯麻痺は、甲状腺癌、肺癌
、結核又はサルコイド(又は胸部においてリンパ節を拡大させる任意のもの)、脳卒中、神
経疾患(例えば、シャルコー・マリー・トゥース、シャイ・ドレーガー及び多系統萎縮症)
の症候又は結果である。
【0218】
両側声帯麻痺は、両方の声帯皺襞麻痺(通常正中線に近い)である。一部の実施態様にお
いて、患者における両側声帯皺襞麻痺は、例えば脳卒中又はその他の神経性状態(アルノ
ルト-キアーリ奇形など)、甲状腺癌、外科手術(主要な脳外科手術など)又は甲状腺摘除の
症候又は結果である。
【0219】
本発明は、声帯麻痺の管理又は治療に使用するための方法を提供する。一つの実施態様
において、方法は、患者において一側若しくは両側声帯麻痺又はそれに関連した症候を管
理するか、又は治療するための方法であって、患者に本発明のコラーゲン組成物を注射す
るか、又はさもなければ投与することを含み、該患者において声帯皺襞閉鎖が改善される
、前記方法が提供される。一つの実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、一方
(又は両方)の麻痺した声帯皺襞を、それが他方の声帯皺襞と接触することができるように
増強するか、又はかさを付加する。本発明のコラーゲン組成物の、これらの必要がある患
者に対する注射は、患者の口を介し、又は直接皮膚及び喉仏を介することができる。
【0220】
(6.7.2.10 薬物送達)
本発明のコラーゲン組成物は、薬物、例えば治療薬の制御された送達のための薬物送達
媒体として使用することができる。いくつかの実施態様において、コラーゲン組成物は、
被験体、例えばヒトに対して1つ以上の治療薬を送達する。本発明の範囲内に包含される
治療薬は、タンパク質、ペプチド、多糖体、多糖体抱合物、遺伝子に基づいたワクチン、
生きた弱毒ワクチン、細胞全体である。本発明の方法に使用するための薬物の非限定的な
例は、抗生物質、抗癌剤、抗バクテリア薬剤、抗ウイルス薬;ワクチン;麻酔薬;鎮痛剤;抗
ぜん息薬;抗炎症薬;抗うつ薬;抗関節炎薬剤;抗糖尿病性薬剤;抗精神病薬;中枢神経興奮薬
;ホルモン;免疫抑制薬;筋弛緩剤;プロスタグランジン;である。
【0221】
コラーゲン組成物は、被験体、例えばヒトに対する1つ以上の小分子の制御された送達
のための送達媒体として使用してもよい。いくつかの実施態様において、コラーゲン組成
物は、被験体、例えばヒトに対して1つ以上の小分子を送達する。本明細書に使用される
「小分子」という用語及び類似の用語は、ペプチド、ペプチド擬態、アミノ酸、アミノ酸
類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似
体、1モルあたり約10,000グラム未満の分子量を有する有機又は無機化合物(すなわち、ヘ
テロ有機化合物及び有機金属化合物を含む)、1モルあたり約5,000グラム未満の分子量を
有する有機又は無機化合物、1モルあたり約1,000グラム未満の分子量を有する有機又は無
機化合物、1モルあたり約500グラム未満の分子量を有する有機又は無機化合物、1モルあ
たり約100グラム未満の分子量を有する有機又は無機化合物、並びにこのような化合物の
塩、エステル及びその他の医薬として許容し得る形態を含むが、限定されない。このよう
な化合物の塩、エステル及びその他の医薬として許容し得る形態も包含される。
【0222】
ある実施態様において、薬物送達のための媒体としての本発明のコラーゲン組成物によ
り、薬物の吸収の増強;当該技術分野において公知のその他の薬物送達システムに相対的
な薬物動態学的なプロフィール及び薬物の全身分布の改善が生じる。薬物動態が改善され
ることにより、最大の血漿濃度を達成するための時間(Tmax);最大の血漿濃度の程度(Cmax
);検出可能な血液又は血漿濃度を誘発する時間(Tlag)などの標準的な薬物動態学的パラメ
ーターによって測定される薬物動態学的プロフィールの増強が達成されることを意味する
。吸収が増強されることにより、このようなパラメーターによって測定される薬物の吸収
が改善されたことを意味する。薬物動態学的パラメーターの測定は、当該技術分野のルー
チンで行われる。
【0223】
一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、1つ以上の成長因子、例えば
限定されないが、抗生物質、ホルモン、成長因子、抗腫瘍薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、
疼痛薬物、抗ヒスタミン剤、抗炎症薬、抗感染症薬、損傷治癒薬、創傷シーラント、細胞
誘引剤及び足場試薬、酵素、受容体アンタゴニスト又はアゴニスト、ホルモン、成長因子
、自己骨髄又はその他の細胞タイプ、抗生物質、抗菌薬及び抗体、その他、又はこれらの
組合せを含む1つ以上の生体分子、例えば治療薬を更に含む。具体例において、本発明の
コラーゲン組成物は、線維芽細胞成長因子、上皮性の成長因子などと共に含浸させてもよ
い。また、本発明のコラーゲン組成物は、限定されないが、特定の生化学的過程の特異的
阻害剤などの小有機分子、例えば膜受容器阻害剤、ホルモン、キナーゼ阻害剤、成長抑制
物質、抗癌剤、抗生物質、その他を含む1つ以上の小分子と共に含浸させてもよい。
【0224】
一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、その意図された使用に応じて
生産の間に、又は注射の前に生体分子と共に含浸される。一部の実施態様において、本発
明のコラーゲン組成物は、1つ以上のインターフェロン(α-IFN、β-IFN、γ-IFN)、コロ
ニー刺激因子(CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺
激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、神経成長因子(NGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、
リンホトキシン、上皮細胞成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮細胞成長
因子、エリスロポエチン、トランスフォーミング成長因子(TGF)、オンコスタチンM、イン
ターロイキン(IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11
、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、その他)、それら
のファミリーのメンバー又はそれらの組合せを含む。一部の実施態様において、本発明の
コラーゲン組成物は、このような成長因子若しくはその他の生体分子の生物学的に活性な
類似体、断片又は誘導体を含む。
【0225】
本発明の方法に使用するための特定の活性薬剤には、トランスフォーミング成長因子(T
GF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮細胞成長因子(EGF)、
結合組織活性化ペプチド(CTAP)、骨原性因子、並びにこのような成長因子の生物学的に活
性な類似体、断片、及び誘導体などの成長因子を含む。多機能性調節タンパク質であるト
ランスフォーミング成長因子(TGF)スーパーファミリーのメンバーは、有用である。TGFス
ーパー遺伝子ファミリーのメンバーには、βトランスフォーミング成長因子(例えば、TGF
-β1、TGF-β2、TGF-β3);骨形成タンパク質(例えば、BMP-1、BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP
-5、BMP-6、BMP-7、BMP-8、BMP-9);ヘパリン結合成長因子(例えば、線維芽細胞成長因子(
FGF)、上皮細胞成長因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン様増殖因子(IGF)
);インヒビン(例えば、インヒビンA、インヒビンB);増殖分化因子(例えば、GDF-1);及び
アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB)を含む。
【0226】
(6.7.2.11 創傷及び火傷)
本発明のコラーゲン組成物は、一部にはその物理的特性のために、硬及び/又は軟組織
修復を増強し、又は置き換えるための創傷被覆材として、当該技術分野において公知のそ
の他の生体材料、例えば米国特許第3,157,524号、第4,320,201号;第3,800,792号;第4,837
,285号;第5,116,620号に記述されたものと比較して増強された臨床的有用性を有すること
が予想される。本発明のコラーゲン組成物は、これがコラーゲンの天然の四次構造を保持
するので、コラーゲンマトリックスの間隔への細胞遊走を介した組織内増殖の改善をもた
らす。本発明のコラーゲン組成物は、細胞をコラーゲンマトリックス内に付着させて、増
殖させること、及びそれら自体の巨大分子を合成することができる。これにより、細胞は
、新たな組織を増殖させることができる新たなマトリックスを産生する。このような細胞
発生は、線維、羊毛及び可溶性コラーゲンなどのコラーゲンのその他の公知の形態では観
察されない。
【0227】
一部の実施態様において、本発明は、本発明のコラーゲン組成物を、創傷が、例えば絆
創膏を使用して覆われるように、創傷部位に対して、被験体の皮膚の上に、すなわち緻密
層に直接配置することによって創傷を治療することを包含する。その他の実施態様におい
て、本発明は、インプラントとして、例えば皮下埋込として本発明のコラーゲン組成物を
使用して創傷を治療することを包含する。
【0228】
本発明は、組織内増殖を促進することができる巨大分子を本発明のコラーゲン組成物に
添加することにより、創傷治癒の速度を増大させることを包含する。このような巨大分子
には、ヒアルロン酸、フィブロネクチン、ラミニン及びプロテオグリカンを含むが、限定
されない(例えば、Doillonらの論文(1987) Biomaterials 8:195 200; Doillon及びSilver
の論文(1986) Biomaterials 7:3 8を参照されたい)。
【0229】
一部の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、限定されないが、一部の層及
び全層の創傷、圧力性潰瘍、圧力性潰瘍、静脈潰瘍、糖尿病性潰瘍、慢性血管潰瘍、トン
ネル型/侵食型創傷、外科的創傷(例えば、ドナー部位/移植片、モース手術後、レーザー
手術後、足治療、創傷裂開)、傷部外傷(例えば、剥離、裂傷、二度熱傷及び皮膚涙)及び
疲労創傷を含む創傷の管理のために使用される。ある実施態様において、本発明のコラー
ゲン組成物は、一回使用が意図される。
【0230】
本発明は、本明細書において皮膚への送達のための5.4.2.7節に記述した本発明のコラ
ーゲン組成物及び上に記述したいずれかの生体分子中に、限定されないが、血小板由来増
殖因子、インスリン様増殖因子、上皮細胞成長因子、トランスフォーミング成長因子β、
血管形成誘導因子、抗生物質、抗真菌薬、殺精子薬剤、ホルモン、酵素、酵素阻害剤を含
む薬理活性薬を組み込むことを更に包含する。ある実施態様において、薬理活性薬剤は、
生理的に有効な量で提供される。
【0231】
一部の実施態様において、コラーゲン組成物は、限定されないが、創傷の部位に適用さ
れる前に、同種間の幹細胞、幹細胞及び自己の成人の細胞を含む生細胞によって更に占め
られる。
【0232】
本発明のコラーゲン組成物は、創傷感染、例えば創傷感染に続く外科的又は傷部外傷の
破壊の治療のために特に有用である。特定の実施態様において、コラーゲン組成物は、限
定されないが、抗生物質、抗菌薬及び抗バクテリア薬剤を含む創傷感染の治療に有用な薬
剤の治療上有効量と共に含浸される。本発明のコラーゲン組成物は、当該技術分野におい
て公知の任意の微生物、例えば病原体のための公知の貯蔵所である人体内から生じるか、
又は環境起源に由来する創傷に感染する微生物による創傷感染の治療において臨床的及び
治療的な有用性を有する。創傷におけるその増殖が本発明の方法及び組成物によって減少
され、又は予防されるであろう微生物の非限定的な例は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、S
t.エピダーミス(St. epidermis)、β溶血性連鎖球菌、大腸菌(E. coli)、クレブシエラ属
(Klebsiella)種及びシュードモナス属(Pseudomonas)種、並びに嫌気性菌のもの、主に深
部の傷部外傷ガス壊疸を生じさせるウェルチ菌(Clostridium welchii)又はタルチウム(ta
rtium)である。
【0233】
その他の実施態様において、本発明のコラーゲン組成物は、上皮創傷、皮膚創傷、慢性
創傷、急性創傷、外部創傷、内部創傷(例えば、コラーゲン組成物は、縫合線から血液の
漏出を防ぐために、及び体が縫合材料に対して接着するのを形成するのを防ぐために、外
科手術の間に吻合部位をくるんでもよい)、先天性創傷(例えば、ジストロフィー性表皮水
泡症)を含むが限定されない創傷治療のために使用される。特に、コラーゲン組成物は、
圧力性潰瘍(例えば、褥瘡性潰瘍)の治療における有用性を増強した。圧力潰瘍は、長期床
上安静を受けた患者被験体、例えば局所的圧力の効果による皮膚喪失に苦しむ四肢麻痺患
者及び対麻痺患者で頻繁に生じる。生じる床ずれにより、真皮糜爛、並びに表皮及び皮膚
付属器の喪失を示す。更にその他のより具体的実施態様において、本発明のコラーゲン組
成物は、一部の層及び全層の創傷、圧力性潰瘍、静脈潰瘍、糖尿病性潰瘍、慢性血管潰瘍
、トンネル型/侵食型創傷、外科的創傷(例えば、ドナー部位/移植片、モース手術後、レ
ーザー手術後、足治療、創傷裂開)、傷部外傷(例えば、剥離、裂傷、二度熱傷及び皮膚涙
)及び疲労創傷を含むが、限定されない創傷の処置のために使用される。
【0234】
また、本発明のコラーゲン組成物は、限定されないが、第一度火傷、第二度火傷(一部
の層火傷)、第三度火傷(全層熱傷)、火傷創傷の感染、切除された火傷創傷及び切除され
ていない火傷創傷の感染、移植された創傷の感染、ドナー部位の感染、以前に移植された
か、若しくは治癒された火傷創傷又は皮膚移植ドナー部位からの上皮の喪失及び火傷創傷
膿痂疹を含む火傷の治療に使用してもよい。
【0235】
(6.7.2.12 歯科用)
本発明のコラーゲン組成物は、歯学、例えば歯周部外科手術、歯周組織の再生のための
組織再生の誘導、骨再生の誘導及び根被覆において特定の有用性を有する。本発明は、限
定されないが、対応する両側歯周欠損、歯間骨内欠損、深部3壁性骨内欠損、2壁性骨内欠
損、並びに骨内欠損2及び3を含む歯周部の骨内欠損の再生を促進するための本発明のコラ
ーゲン組成物の使用を包含する。本発明のコラーゲン組成物は、当該技術分野において公
知のその他の技術、例えばQuteishらの論文,1992, J. Clin. Periodontol. 19(7): 476-8
4; Chungらの論文, 1990, J. Periodontol. 61(12): 732-6; Mattsonらの論文,1995, J.
Periodontol. 66(7): 635-45; Benqueらの論文,1997, J. Clin. Periodontol. 24(8): 54
4-9; Mattsonらの論文,1999, J. Periodontol. 70(5): 510-7に開示されたものなどの架
橋されたコラーゲン膜の使用と比べて、増強された治療的有用性及び増強された歯周部の
骨内欠損の治療のための臨床パラメーターを有することが予想される。本発明のコラーゲ
ン組成物を使用して改善される臨床パラメーターの例には、当業者に公知であるプラーク
及び歯肉のインデックス・スコアリング、プロービングポケット深度、プロービング付着
深度、並びに分岐部関与の分類及び骨欠損を含むが、限定されない。
【0236】
また、本発明は、限定されないが、両側欠損、対の頬側クラスII下顎軟骨大臼歯分岐部
欠損、及び両側の下顎分岐部欠損を含むクラスII分岐部欠損を治療する際の本発明のコラ
ーゲン組成物の使用を包含する。クラスII分岐部欠損の処理における本発明のコラーゲン
組成物の有用性は、部分的には、それが分岐部欠損の失われた歯根膜を再生する能力によ
って説明することができる。本発明のコラーゲン組成物は、Paulらの論文,1992, Int. J.
Periodontics Restorative Dent. 12: 123-31; Wangらの論文,1994, J. Periodontol. 6
5: 1029-36; Blumenthal, 1993, J. Periodontol. 64: 925-33; Blackらの論文,1994, J.
Periodontol. 54: 598-604; Yuknaらの論文,1995, J. Periodontol. 67: 650-7に開示し
たものなどのクラスII分岐部欠損の治療のために当該技術分野において使用されるコラー
ゲン膜と比べて、増強された治療的及び臨床的有用性を有することが予想される。
【0237】
本発明は、根被覆法における本発明のコラーゲン組成物の使用を更に包含する。根被覆
における本発明のコラーゲン組成物の有用性は、一部には、組織再生が誘導される原理に
基づいて、失われたか、ダメージを受けたか、又は病気の歯肉組織を置き換えるその能力
によるものと説明することができる。本発明のコラーゲン組成物は、上で挙げた理由のた
めに、Shiehらの論文,1997 J. Periodontol., 68: 770-8; Zahediらの論文,1998 J. Peri
odontol. 69: 975-81; Ozcanらの論文,1997 J. Marmara Univ. Dent. Fa. 2: 588-98; Wa
ngらの論文,1997 J. Dent. Res. 78 (Spec Issue): 119 (Abstr. 106)に開示されたもの
などの、根被覆のために当該技術分野において伝統的に使用されるコラーゲン膜と比較し
て、根被覆における増強された臨床的有用性を有することが予想される。
【0238】
本発明は、限定されないが、歯根膜炎及び歯肉炎を含む歯周病をもつ被験体におけるコ
ラーゲン組成物の使用を更に包含する。また、本発明のコラーゲン組成物は、スケーリン
グ及び根被覆のための補助としての臨床的有用性を有する。本発明は、本発明のコラーゲ
ン組成物を使用して歯周病である被験体を治療することを包含する。本発明のコラーゲン
組成物を使用することにより被験体における歯周病を治療するための例示的方法は、クロ
ルヘキシジングルコネートなどの抗菌剤と共に含浸させることができるコラーゲン組成物
を、被験体の1つ以上の、例えば5mm以上の歯周ポケットに挿入することを含む。好都合に
は、コラーゲン組成物は、生体分解性であり得る。
【0239】
歯科に使用するための本発明のコラーゲン組成物は、治療される歯の障害のタイプに応
じて、1つ以上の生体分子と共に含浸させてもよい。歯の障害の治療のための当該技術分
野において公知のいずれの生体分子も、本発明の方法及び組成物に包含される。具体的実
施態様において、感染と関連する歯の障害の治療に用されるコラーゲン組成物は、限定さ
れないが、ドキソサイクリン、テトラサイクリン、クロルヘキシジングルコネート及びミ
ノサイクリンを含む1つ以上の抗生物質と共に含浸させてもよい。
【0240】
(6.7.2.13 その他の使用)
また、本発明のコラーゲン組成物は、卵巣又は子宮角における術後癒着障壁として使用
してもよい。また、コラーゲン組成物は、(例えば、髄膜-大脳接着の予防において)脳に
おける接着障壁として使用してもよい。ここで、コラーゲン組成物は、硬膜及び軟髄膜を
分離する硬膜下腔を修復するために使用してもよい。一般に、コラーゲン組成物は、術後
の漏出を制御するための、傷ついた内部臓器、例えば脾臓に対する包装として、又は肺に
付着させるシートとして使用してもよい。また、コラーゲン組成物は、(鼓室の穿孔の際
の)鼓膜移植片の外科的療法を補助するために、又は乳様突起の空洞の裏打ちとして使用
してもよい。また、コラーゲン組成物は、膣新生術における裏打ち組織として使用しても
よい。心臓血管手術において、コラーゲン組成物を心臓周囲の閉鎖材料として使用しても
よい。また、コラーゲン組成物は、精管吻合術における吻合完了の際に使用してもよい。
【0241】
(6.7.3 幹細胞を含む組成物の使用)
上記の使用のいずれかの場面において、美容であっても美容以外であっても、該組成物
は、上記セクション5.6に記載したように、1つ以上の型の幹細胞、好ましくは胎盤幹細胞
を含むことができる。胎盤幹細胞は、本発明の組成物と接触すると、創傷の治癒を促進す
るサイトカイン、例えば、IL-6、IL-8及びMCP-1(単球走化性タンパク質-1)を分泌する。
本発明の組成物がフィブロネクチンを含まないか、又は無視し得る量のフィブロネクチン
を含む実施態様において、胎盤幹細胞は、該組成物に結合することが可能になると、フィ
ブロネクチンを含む細胞外マトリックスタンパク質を分泌する。したがって、該組成物は
、該組成物に結合した胎盤幹細胞と一緒になって、例えば、該組合せを受け入れる個体の
一部への、又はそれに沿う細胞移動を刺激し、及び可能にする表面又は導管を生成するよ
うに作用することができる。
【0242】
該組成物及び幹細胞を一緒に個体に投与することができる。例えば、一実施態様におい
て、該組成物は、該組成物を個体に投与する直前(例えば、10~20分以内)に該組成物と接
触された幹細胞を含むことができる。別の実施態様において、幹細胞を該組成物に結合さ
せるのに十分な投与前の時間に、典型的には、投与の少なくとも1時間前に幹細胞を該組
成物と接触させることができる。より具体的な実施態様において、投与前の時間は、幹細
胞が結合及び増殖するのに十分な時間、典型的には、投与前の少なくとも24時間から48時
間、又はそれより長い時間である。別のより具体的な実施態様において、該時間は、幹細
胞が、本発明の組成物に結合し、その上で増殖し、検出可能な量の細胞外マトリックスタ
ンパク質、例えば、フィブロネクチンを堆積するのに十分な時間である。
【0243】
該組成物及び幹細胞を個体に個別に投与することもできる。例えば、一実施態様におい
て、該組成物を、傷又は修復を必要とする組織の部位において、個体に投与し、続いて幹
細胞を投与することができる。別の実施態様において、幹細胞を、傷又は修復を必要とす
る組織の部位と接触させ、続いて該創傷又は修復を必要とする組織を本発明の組成物と接
触させる。
【0244】
したがって、一実施態様において、本発明は、創傷の治癒を促進する方法であって、該
創傷を、幹細胞、例えば、胎盤幹細胞を含む本発明の組成物と接触させることを含み、該
幹細胞は、IL-6、IL-8若しくはMCP-1又はそれらの任意の組合せを、或いはフィブロネク
チンを該創傷の少なくとも一部に分泌する、前記方法を提供する。幹細胞がフィブロネク
チンを分泌する場合には、本発明のコラーゲン組成物は、検出不能な量のフィブロネクチ
ンを含むことが好ましい。具体的な実施態様において、該組成物をほぼ創傷の形に成形又
は形成する。ある実施態様において、該創傷は、治癒しない創傷である。具体的な実施態
様において、該創傷は、足潰瘍、例えば、静脈足潰瘍、動脈足潰瘍、糖尿病性足潰瘍又は
褥瘡性(圧力)潰瘍である。該創傷が足潰瘍である場合には、該組成物を、好ましくは、潰
瘍の少なくとも一部を被覆するのに十分に大きいシートに形成し、該シートは、少なくと
も潰瘍と接触するシート面上に胎盤幹細胞を含む。様々な実施態様において、該創傷は、
事故創傷であり、又は外科手術によって引き起こされた、又は外科手術に付随する創傷で
ある。外科手術は、上述のように、本発明のコラーゲン組成物が有用である任意の外科手
術であり、美容外科手術又は非美容外科手術であり得る。
【0245】
別の実施態様において、本発明は、個体の身体の一部の欠陥の改善又は治癒を促進させ
る。当該欠陥は瘻孔、不完全心臓弁及び腹壁の穴などの自然に発生した、例えば遺伝子上
の欠陥であり得る。
【0246】
(6.8 コラーゲン組成物を含むキット)
もう一つの態様において、本発明は、本発明のコラーゲン組成物を含むキットを提供す
る。例えば、本発明は、哺乳動物の組織を増強するか、又は置き換えるためのキットを提
供する。キットは、当該技術分野に熟練した開業医に配布するためのパッケージ内に本発
明の1つ以上のコラーゲン組成物を含む。キットには、本発明の方法に従って哺乳動物の
組織を増大するか、又は置き換えるためのコラーゲン組成物の使用法に関する説明を伴う
ラベル又はラベリングを含むことができる。ある実施態様において、キットは、1つ以上
の注射器、カニューレ、カテーテル、その他などのコラーゲン組成物を投与するための手
段などの、本方法を実施するために有用な構成要素を含むことができる。ある実施態様に
おいて、キットは、コラーゲン組成物を投与するための手段を安全に処理するために有用
な構成要素(例えば、使用した注射器のための「シャープス(sharps)」容器)を含むことが
できる。ある実施態様において、キットは、事前に満たされた注射器、単位投与量又は使
用単位パッケージ内に組成物を含むことができる。
【0247】
ある他の実施態様において、本発明のキットは、本発明のコラーゲン組成物、及び幹細
胞集団の培養のための1つ以上の他の構成要素を含むことができる。例えば、該キットは
、幹細胞、例えば胎盤幹細胞の培養に好適な1つ以上の構造の本発明のコラーゲン組成物
、例えば、シート、チューブ及びメッシュ等の形態のコラーゲン組成物を含むことができ
る。該キットは、幹細胞の培養に使用される1つ以上の品目、例えば、細胞培養時に本発
明のコラーゲン組成物を収容することが可能な培養皿、プラスチック器具、シリンジ、ピ
ペットチップ、細胞培地、1つ以上のサイトカイン又は成長因子及び消耗品等を含むこと
ができる。
【0248】
他の実施態様において、該キットは、胎盤組織からの幹細胞の回収を促進する1つ以上
の構成要素を含むことができる。様々な具体的な実施態様において、該キットは、幹細胞
を回収するための胎盤の潅流を促す構成要素、例えば、潅流溶液;胎盤を収容するのに十
分に大きい1つ以上のトレー、潅流溶液を回収するためのガラス器具又はプラスチック器
具;潅流溶液を回収するための1つ以上の袋、臍血管を疎通するためのニードル及び/又は
カニューレ等を含む。他の具体的な実施態様において、該キットは、胎盤幹細胞を単離す
るための胎盤組織の酵素消化を促す1つ以上の構成要素、例えば、1つ以上の組織消化酵素
(例えば、トリプシン又はキモトリプシン等);細胞培養に好適なプラスチック器具(例えば
、培養皿及びマルチウェル培養プレート等);を含む。
【0249】
ある実施態様において、該キットは、少なくとも1つの医学的場面、例えば創傷の治癒
における本発明のコラーゲン組成物の使用説明書を含む。他の実施態様において、該キッ
トは、1つ以上の幹細胞群を本発明のコラーゲン組成物上で培養するための説明書を含む
。
【実施例0250】
(7. 実施例)
以下のセクションにおいて、「約23℃で」という語句は、室温を指し得ることを当業者
なら認識するであろう。
【0251】
(7.1 実施例1:胎盤からコラーゲンの単離)
本実施例は、胎盤からのコラーゲンの単離を例示する。
【0252】
凍結した胎盤を本明細書に記載の方法に従って得る。該胎盤を、水を含むNalgeneトレ
ーで1~4時間ラップすることによって解凍させる。次いで、それらをプラスチックラップ
から取り出し、更に解凍させるために水中に入れる。
【0253】
解凍した胎盤を挽肉機のステンレス鋼トレー上に載せる。臍帯片を各胎盤から切断し、
各胎盤を約23℃で約4つの細片にスライスする。それらの細片を約23℃にて挽肉機で粉砕
する。
【0254】
浸透圧ショック:得られた粉砕胎盤を、0.5MのNaCl(5リットル/胎盤)を含むNalgeneタン
クに添加し、75~100rpmの電動ミキサーを使用して(4~6℃で24時間)混合する。
【0255】
24時間後、ミキサーを停止し、約23℃で組織をミキサーの底部に沈降させる。#36TYGON
(登録商標)チューブを備えた蠕動ポンプを使用して組織及び体液を吸い出し、約23℃で#4
0篩にて濾過し、単離された組織を混合タンクに戻す。
【0256】
新鮮な0.5MのNaCl(5L/胎盤)を混合物に添加し、4~6℃で24時間混合する(電動ミキサー
、75~100rpm)。24時間後、上記の方法を用いて組織を単離する。
【0257】
組織を水(5L/胎盤)で洗浄し、4~6℃で24時間混合する(電動ミキサー、75~100rpm)。2
4時間後、上記の方法を用いて組織を単離する。
【0258】
上記の4つのパラグラフに従って、組織を再び0.5MのNaCl、再び0.5MのNaCl、及び次い
で水で更に洗浄する。
【0259】
凍結乾燥:得られた試料を凍結乾燥器容器にて200~400gの量に減量させ、-70℃で1~2
時間凍結させる。凍結した試料を凍結乾燥器で24~48時間凍結乾燥し、次いで取り出す。
凍結乾燥した試料をブレンダーにて滑らかな粉末に混合し、次いで清浄な混合タンクに移
す。
【0260】
界面活性剤処理:1%デオキシコール酸溶液(1L/胎盤)を、混合した凍結乾燥試料を含む混
合タンクに添加する。該試料と1%デオキシコール酸溶液を4~6℃で24時間混合する(電動
ミキサー、75~100rpm)。24時間後、ミキサーを停止し、上記のように組織を#40篩で単離
する。
【0261】
界面活性剤処理を4~6℃で24時間繰り返す(電動ミキサー、75~100rpm)。24時間後、ミ
キサーを停止し、上記のように組織を#40篩で単離する。
【0262】
水洗:組織を水(5L/胎盤)で洗浄し、4~6℃で24時間混合する(電動ミキサー、75~100rp
m)。24時間後、上記の方法を用いて組織を単離する。
【0263】
組織を再び水(5L/胎盤)で洗浄し、4~6℃で24時間混合する(電動ミキサー、100~150rp
m)。24時間後、上記の方法を用いて組織を単離する。
【0264】
組織を再び水(5L/胎盤)で洗浄し、4~6℃で24時間混合する(電動ミキサー、150rpm)。2
4時間後、上記の方法を用いて組織を単離する。
【0265】
任意に、組織を水(5L/胎盤)で4回洗浄し、4~6℃で24時間混合する(電動ミキサー、150
rpm)。24時間後、上記の方法を用いて組織を単離する。
【0266】
凍結乾燥:得られた試料を200gの量でブレンダーに添加する。200mLの脱イオン水を試料
に添加し、試料をブレンダーで滑らかなペーストに混合する。混合した試料を蓄積させ、
水(1L/胎盤)で濯ぐ。
【0267】
200~400gの量の試料を凍結乾燥器容器に添加する。試料を減量させ、-70℃で凍結する
。減量した試料を24~48時間凍結乾燥する。
【0268】
無菌塩基処理:凍結乾燥した試料を蓄積させる。水酸化ナトリウム溶液(0.5M、1L)を加
熱滅菌された無菌フラスコに添加する。低エンドトキシン水(1L)を、蓄積された凍結乾燥
試料に添加する。該試料及び水酸化ナトリウム溶液を約23℃で4時間にわたって250rpmで
シェーカー上にて混合する。
【0269】
無菌水洗:試料を無菌#70フィルターによる濾過によって回収し、1Lの無エンドトキシン
水で濯ぐ。無エンドトキシン水(1L)を添加し、試料を約23℃で18~24時間にわたって250r
pmでシェーカー上にて混合する。
【0270】
試料を無菌#70フィルターによる濾過によって回収する。無エンドトキシン水(1L)を添
加し、試料を約23℃で18~24時間にわたって250rpmでシェーカー上にて混合する。
【0271】
試料を無菌#70フィルターによる濾過によって回収し、1Lの無エンドトキシン水で濯ぐ
。無エンドトキシン水(1L)を添加し、試料を約23℃で18~24時間にわたって250rpmでシェ
ーカー上にて混合する。
【0272】
pHが9を超える場合は、試料を無エンドトキシン水で再び洗浄し、約18~24時間にわた
って約250RPMでシェーカー上にて混合する。
【0273】
pHが9以下の場合は、試料をそのまま製剤化できる。
【0274】
収量は、10g/胎盤以上であり得る。
【0275】
得られた試料を保管のために凍結乾燥することができる。使用に際して、試料を、例え
ば、シリンジ内でペーストとして使用するために、ブレンダー内で300~1000mg/mLのリン
酸緩衝食塩水に懸濁させることができる。試料を500~1000mg/mLのリン酸緩衝食塩水中で
成形し、例えば、シート、チューブ又はプラグ等として使用するために成形することがで
きる。
【0276】
(7.2 実施例2:テロペプチドコラーゲン試料の調製)
実施例1の浸透圧ショック工程、凍結乾燥工程、界面活性剤処理工程、水洗工程、凍結
乾燥工程、塩基処理工程、水洗工程及び凍結乾燥工程に従って7.5gのテロペプチドコラー
ゲンを調製した。
【0277】
実施例1の浸透圧ショック工程、凍結乾燥工程、界面活性剤処理工程、水洗工程、塩基
処理工程、水洗工程及び凍結乾燥工程に従って11.8gのテロペプチドコラーゲンを調製し
た。
【0278】
実施例1の浸透圧ショック工程、凍結乾燥工程、界面活性剤処理工程、水洗工程、塩基
処理工程、水洗工程及び凍結乾燥工程に従って12.0gのテロペプチドコラーゲンを調製し
た。
【0279】
実施例1の浸透圧ショック工程、界面活性剤処理工程、水洗工程、塩基処理工程、水洗
工程及び凍結乾燥工程に従って11.8gのテロペプチドコラーゲンを調製した。
【0280】
(7.3 実施例3:生化学分析)
実施例1及び2に従ってコラーゲン試料を調製した。標準的な技術による生化学分析は、
乾燥重量で80.40%のコラーゲン、11.0%の水並びに0.01%未満のフィブロネクチン、ラミニ
ン及びグリゴソアミノグリカンを示した。エラスチン含有量は、測定しなかった。
【0281】
実施例1及び2に従って調製された試料のアミノ酸分析は、34~35%のグリシン、約11%の
ヒドロキシプロリン及び10~11%のプロリンを示した。
【0282】
実施例1及び2に従って調製された試料の免疫分析は、74~92%のI型コラーゲン、4~6%
のIII型コラーゲン及び2~15%のIV型コラーゲンを示した。
【0283】
(7.4 実施例4:代替的なECMの製造方法、及びECM上での幹細胞の培養)
本実施例は、本発明のコラーゲン組成物を製造する代替的な方法を実証し、それらの方
法によって製造された材料の組成の分析を示す。
【0284】
(材料及び方法)
細胞外マトリックス(ECM)の単離:ECMを以下のようにして単離した。手短に述べると、
凍結したヒト胎盤を0.5Mの塩化ナトリウム中で解凍し、挽肉機で粉砕し、23℃でインキュ
ベータシェーカー中にて0.5Mの塩化ナトリウム及び水で繰り返し洗浄した後、1%のSDS又
は0.5%のデオキシコール酸などの界面活性剤で洗浄した。血液のない胎盤組織を3時間か
ら24時間の間の時間にわたって0.1~0.5Nの水酸化ナトリウムで処理して、胎盤葉組織を
可溶化させた後、リン酸緩衝食塩水(PBS)で濯いで、pHを中性にした。そのようにして製
造された材料は、安定したペーストであり、4℃で保管された。
【0285】
生化学分析:単離したECMの生化学組成を測定するために、1グラムの試料を凍結乾燥し
、乾燥重量を測定した。ECMを、70℃で100mMのHClに溶解させること、又は23℃で18時間
にわたって10mMのHClでECMのペプシン処理(1mg/gm)をすることによって可溶化させた。10
0mMのHClに溶解した組織を使用して、フィブロネクチン、ラミニン、GAG及びエラスチン
の含有量を測定した。ペプシン可溶化組織を使用して、コラーゲン含有量を測定した。
【0286】
サンドイッチELISAを用いて、フィブロネクチン及びラミニン濃度を測定した。色素ベ
ースのアッセイを用いて、エラスチン及びグリコサミノグリカン(GAG)の含有量を測定し
た。サンドイッチELISA(コンドレックス)を用いて、コラーゲンIの含有量の測定を実施し
た。II型コラーゲン及びIV型コラーゲンに対する一次抗体並びにHRP結合二次抗体を使用
するインハウスELISAを用いて、コラーゲンIII及びIVの含有量を測定した。
【0287】
ECM構造体の調製:ECM材料のシートを調製するために、水和ECMペーストの層を2つの医
薬グレードのTYVEK(登録商標)シートの間に挟んだ。この構造体をゲルドライヤーに充填
し、ECM膜が乾燥するまで23℃で終夜真空にした。シートを細胞培養試験のために適切な
サイズに切断した。ECMの三次元構造体を調製するために、ECMペーストを様々な金型に充
填し、凍結乾燥した。培地又は水におけるECMシート及び3D金型の安定性を調べる。該構
造体を水、食塩水又は細胞培地中で37℃にて1週間までインキュベートした。
【0288】
細胞培養:胎盤幹細胞を60%の低グルコースDMEM(Invitrogen(カリフォルニア州Carlsbad
))、40%のMCDB-201(Sigma(ミズーリ州St. Louis))、2%のウシ胎児血清(Hyclone(ユタ州Lo
gan))、1×インシュリン-トランスフェリン-セレニウム補充物(Invitrogen)、0.02%のリ
ノレン酸/ウシ血清アルブミン(Sigma)、10ng/mLの表皮成長因子(Sigma)、10ng/mLの血小
板由来成長因子(R&D Systems(ミネソタ州Minneapolis))、0.05Mのデキサメタソン(Sigma)
、0.1mMのアスコルビン酸2-リン酸塩(Sigma)及び100Uペニシリン/1000Uストレプトマイシ
ン(Invitrogen)で二次培養した。胎盤幹細胞(1ウェルあたり30,000個)を、24個のマルチ
ウェルクラスタプレート内に配置されたECM膜上に接種した。胎盤幹細胞を、また、コラ
ーゲン(Inamed(カリフォルニア州Fremont))で予めコーティングされたLabtekチャンバス
ライド(Nalgene Nunc International(ニューヨーク州Rochester))上に同等の密度で接種
した。細胞を37℃で3及び48時間インキュベートし、免疫蛍光顕微鏡検査のために処理し
た。
【0289】
免疫蛍光顕微鏡検査:ECM膜とともに3又は48時間インキュベートした後、胎盤幹細胞-EC
M構造体を3.7%のホルムアルデヒドで10分間固定し、0.5%トリトン-X100で20分間透過化処
理した。胎盤幹細胞をAlexaFluor488結合ファロイジンとともにインキュベートして、F-
アクチンを可視化した。フィブロネクチン染色では、試料を遮断緩衝液(3%ウシ血清アル
ブミン/1Xリン酸緩衝食塩水)中ウサギ抗ヒトフィブロネクチン抗体(Sigma)とともに1時間
インキュベートし、リン酸緩衝食塩水で洗浄し、遮断緩衝液中AlxaFluor594結合抗ウサギ
抗体とともに30分間更にインキュベートした。試料をリン酸緩衝食塩水で再び洗浄し、ス
ライド上に配置し、蛍光顕微鏡で観察した。
【0290】
サイトカイン分泌分析:胎盤幹細胞を含有する細胞培養ECMシート、並びに胎盤幹細胞を
含有する組織培養処理プレートから培地試料(100μl)を培養の0、3、24及び48時間目に取
り出した。試料を1mLのPBSで希釈し、サイトカインの存在について分析した。各サイトカ
インの濃度をサイトカインの既知の濃度の基準プロットから計算した。
【0291】
(結果)
ECMの単離:典型的な胎盤の乾燥重量は、約300g毎胎盤の湿重量に対応する約30gである
。
図1に示されるように、浸透圧ショック工程及び界面活性剤洗浄工程を用いて、多量の
非細胞外マトリックス組織を除去して、最終残留重量を約10gとすることができる。NaOH
を使用する可溶化と界面活性剤を併用すると、残留重量が約6gまで更に減少する。NaOHへ
の曝露時間及びNaOHの濃度は、胎盤から単離されるECMの全質量に影響することが判明し
た。様々な我々の界面活性剤洗浄工程及びNaOH洗浄工程を用いて、5種類の最終ECM材料を
生成した。典型的には、単一の胎盤から、約6gから約10gのECM材料が得られた。
【0292】
ECMの生化学組成:5種類のECMの生化学分析は、それらが基本的にコラーゲンで構成され
ていることを示した。I型は、主要コラーゲン(全コラーゲンの約74%から約90%)であり、I
II型(全コラーゲンの約4%から約6%)及びIV型(全コラーゲンの約2%から約15%)は、副次的
構成要素であった。胎盤ECMに見いだされる他の主要細胞外マトリックスタンパク質は、
エラスチンであった。表1に示されるように、エラスチンは、ECM-1からECM-4の全乾燥重
量の約3~5%を占めていた。しかし、NaOHを使用せずに生成されたECM-5は、約12%のエラ
スチンを含有していた。5つのすべての方法によって製造されたECM材料中にグリコサミノ
グリカンが特定されたが、乾燥重量%は、該単離方法におけるNaOHの使用に影響されてい
ないようであった。逆に、重要な接着タンパク質であるフィブロネクチン及びラミニンの
存在は、NaOHの使用に酷く影響された。フィブロネクチン及びラミニンは、NaOH処理に耐
えず、ECM1から4に見いだすことができなかった。しかし、NaOHを使用せずに単離されたE
CM-5は、接着タンパク質がより豊富な組成を有する(表1)。
【表1】
【0293】
細胞結合試験:播種の3時間後に、胎盤幹細胞の同様の結合レベルがすべてのECM(#1~5)
について観察された。ECMに対する幹細胞の結合のレベルは、精製されたコラーゲンにつ
いて観察されたものよりわずかに低かった。この時点におけるフィブロネクチンの免疫染
色により、細胞内染色が豊富で、検出可能な細胞外フィブロネクチンが存在しないことが
明らかになった。培養から48時間までに、胎盤幹細胞は、数が増加し、精製されたコラー
ゲン、ECM2及びECM4上に類似した十分に拡散した形態を採用していることが観察された。
対照的に、ECM1上で培養された胎盤幹細胞は、成長しなかった。観察された細胞がより少
なかっただけでなく、それらの形態が丸みを帯び、十分に拡散していなかった。ECM5上の
胎盤幹細胞は、他のECM又はコラーゲン上の胎盤幹細胞より長く、かつ偏っているように
思われた。
【0294】
ECM3上の細胞結合の測定は、乾燥による材料の表面の異質性により幾分支障があった。
1つの焦点面に沿って撮像するのが困難であったため、最初は、非常に少数の細胞しか結
合しないように思われた。しかし、異なる焦点面における観察により、ECM3上でのいくつ
かの細胞結合が明らかになった。
【0295】
48時間の時点におけるフィブロネクチンに対する免疫染色により、ECM1~ECM4上の細胞
外フィブロネクチンマトリックス原線維の大規模なネットワークが明らかになった。胎盤
幹細胞がECM上で培養されなかった対照は、フィブロネクチン原線維の形跡を示さなかっ
たため、これらのフィブロネクチンマトリックス原線維は、胎盤幹細胞によって結集され
ていた。ECM1~ECM4と対照的に、ECM5及びコラーゲンは、胎盤幹細胞によるフィブロネク
チンマトリックス結集を支持していなかった。これらの表面上に細胞外原線維フィブロネ
クチンが検出されなかった。
【0296】
サイトカインアレイ試験:我々は、ECM上での結合及び増殖の結果としての胎盤幹細胞か
らの重要サイトカイン/ケモカインの分泌を調べた。ECM上のサイトカイン分泌を、組織培
養処理細胞培養プレート上でインキュベートされた胎盤幹細胞からのそれと比較した。い
くつかのインターロイキン及びサイトカイン(Biosource)を含む標準25多重サイトカイン
アレイを使用した。それらのサイトカインは、IL-1β、IL-1Ra、IL-2R、IL-4、IL-5、IL-
6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12p40/p70、IL-13、IL-15、IL-17、TNF-α、IFN-α、IFN-γ
、GM-CSF、MIP-1α、MIP-1β、IP-10、MIG、エオタキシン、ランテス(Rantes)及びMCP-1
を含んでいた。胎盤幹細胞をECMシート上で培養した場合に、試験した25種のサイトカイ
ンのうち、IL-6、IL-8及びMCP-1の3つのサイトカインの分泌が、組織培養処理プレート上
で培養された胎盤幹細胞による分泌を上回って増加していることが観察された。
図2A~2C
は、5つのECM構造体上の胎盤幹細胞によるサイトカイン分泌(IL-6、IL-8&MCP-1)の時間依
存的増加を示す。すべてのデータを1cm
2あたり1000個の結合細胞に対して正規化した。EC
M-5は、MCP-1分泌が明らかに増加していないという点で異例であり、この細胞外マトリッ
クス上で培養された場合における胎盤幹細胞の細胞生理の変化を示唆していた。既に示し
たように、ECM-5は、ECM-1から4と全く異なり、フィブロネクチンの発現を支持しなかっ
た。ECM-5は、NaOHを使用せずに生成される唯一のマトリックスであり、2つの重要細胞接
着タンパク質であるフィブロネクチン及びラミニンを維持する生化学組成を有していたこ
とに注目すると興味深い。
【0297】
本明細書において引用される全ての刊行物及び特許出願は、あたかもそれぞれの刊行物
又は特許出願が引用により取り込まれていることが具体的かつ個々に示されたかのように
、引用により本明細書に取り込まれている。前述の発明は、理解の明快さのを目的として
例証及び実施例によっていくらか詳細に記述してあるが、本発明の教示を考慮して、添付
の請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなく、それに対して一定の変更及び修飾を
行ってもよいことは当業者に直ちに明らかであろう。