(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075266
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】網膜神経線維層変性の治療に使用するためのRGM Aタンパク質に対するモノクローナル抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20230523BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230523BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230523BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230523BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230523BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230523BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
A61K39/395 N
A61P25/00
A61P27/02
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039323
(22)【出願日】2023-03-14
(62)【分割の表示】P 2021048171の分割
【原出願日】2010-12-08
(31)【優先権主張番号】61/267,446
(32)【優先日】2009-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】513144626
【氏名又は名称】アッヴィ・ドイチュラント・ゲー・エム・ベー・ハー・ウント・コー・カー・ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト・ケイ・ミユーラー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の病状で観察される網膜神経線維層(RNFL)変性の神経保護治療を与える手段を提供する。
【解決手段】RNFL変性の治療に使用するためのRGM Aに結合し、RGMタンパク質のRGM A受容体及び他のRGM A結合タンパク質に対する結合を妨げ、よってRGM Aの機能を中和する能力を有するRGM A結合タンパク質、特にモノクローナル抗体、とりわけそのCDRグラフト化ヒト化バージョン、並びにRNFL変性を防ぐために哺乳動物を治療上または予防上治療する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜神経線維層(RNFL)変性の治療に使用するためのヒトRGM Aに対する結合タンパク質。
【請求項2】
前記治療は治療上または予防上の、神経再生的または神経保護的、局所または全身治療である請求項1に記載の使用するための結合タンパク質。
【請求項3】
前記治療の結果として、
a)網膜ニューロン発芽が観察される;及び/または
b)網膜中のRGC(網膜神経節細胞)軸索が変性から保護される;
請求項1または2に記載の使用するための結合タンパク質。
【請求項4】
RNFL変性は糖尿病性網膜症、虚血性視神経症、X染色体連鎖性網膜分離症、薬物誘発性視神経症、網膜ジストロフィー、加齢黄斑変性、視神経乳頭ドルーゼンにより特徴づけられる眼病、光受容器変性の遺伝的決定因子により特徴づけられる眼病、常染色体劣性錐体-桿性ジストロフィー及び視神経症を伴うミトコンドリア障害から選択される疾患に関連する請求項1~3のいずれか1項に記載の使用するための結合タンパク質。
【請求項5】
両方とも表面プラズモン共鳴により測定して、1×10-7M以下のKD及び1×10-2s-1以下のkoff速度定数でヒトRGM Aから解離する請求項1~4のいずれか1項に記載の使用するための結合タンパク質。
【請求項6】
標準インビトロアッセイで測定して、ヒトRGM Aに結合し、ヒトRGM Aの神経突起伸長阻害活性を中和する請求項1~5のいずれか1項に記載の使用するための結合タンパク質。
【請求項7】
ヒト化抗体である請求項1~6のいずれか1項に記載の使用するための結合タンパク質。
【請求項8】
RGM分子のエピトープに結合し得、
a)配列番号59及び65、及び前記配列の1つに対して少なくとも50%の配列同一性を有する修飾CDRアミノ酸配列から構成されるCDR-H3グループアミノ酸配列;及び/または
b)配列番号62及び68、及び前記配列の1つに対して少なくとも50%の配列同一性を有する修飾CDRアミノ酸配列から構成されるCDR-L3グループアミノ酸配列;
からなる群から選択される少なくとも1つのCDRを含む抗原結合ドメインを含む請求項1~7のいずれか1項に記載の使用するための結合タンパク質。
【請求項9】
更に、
a)配列番号57及び63から構成されるアミノ酸配列のCDR-H1グループ;及び/または
b)配列番号60及び66から構成されるアミノ酸配列のCDR-L1グループ;及び/または
c)配列番号58及び64から構成されるアミノ酸配列のCDR-H2グループ;及び/または
d)配列番号61及び67から構成されるアミノ酸配列のCDR-L2グループ、
並びに前記配列の1つに対して少なくとも50%の配列同一性を有する修飾CDRアミノ酸配列
から選択される少なくとも1つのCDRを含む請求項1~8のいずれか1項に記載の使用するための結合タンパク質。
【請求項10】
【表1】
から構成される可変ドメインCDR組から選択される少なくとも3つのCDR、または前記した少なくとも3つのCDRの少なくとも1つが親配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有する修飾CDRアミノ酸配列である可変ドメイン組を含む請求項9に記載の使用するための結合タンパク質。
【請求項11】
少なくとも2つの可変ドメインCDR組を含む請求項10に記載の使用するための結合タンパク質。
【請求項12】
少なくとも2つの可変ドメインCDR組は
VH 5F9組とVL 5F9組;及び
VH 8D1組とVL 8D1組;
からなる群から選択される請求項11に記載の使用するための結合タンパク質。
【請求項13】
更に、ヒトアクセプターフレームワークを含む請求項1~12のいずれか1項に記載の使用するための結合タンパク質。
【請求項14】
配列番号35、36、37、38、39、40、41、42及び43から選択される少なくとも1つの重鎖可変ドメイン及び/または配列番号44、45及び46から選択される少なくとも1つの軽鎖可変ドメインを含む請求項1~13のいずれか1項に記載の使用するための結合タンパク質。
【請求項15】
ヒトアクセプターフレームワークはキー残基での少なくとも1つのフレームワーク領域アミノ酸置換を含み、前記キー残基は
(重鎖配列位置):1、5、37、48、49、88、98;
(軽鎖配列位置):2、4、41、51;
からなる群から選択される請求項13および14のいずれか1項に記載の使用するための結合タンパク質。
【請求項16】
結合タンパク質は
(重鎖配列)配列番号47、48、49、50;及び
(軽鎖配列)配列番号51、52、53及び54;
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの(フレームワーク突然変異した)可変ドメインを含む請求項1~15のいずれか1項に記載の結合タンパク質。
【請求項17】
5F9及び8D1から選択される抗体である請求項1~16のいずれか1項に記載の使用するための結合タンパク質。
【請求項18】
治療を要する哺乳動物に対して有効量の請求項1~17のいずれか1項に記載の単離結合タンパク質を含む組成物を投与するステップを含むRNFL変性の治療方法。
【請求項19】
治療は治療上または予防上の、神経再生的または神経保護的、局所または全身治療である請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、網膜神経線維層(RNFL)変性の治療に使用するためのRGM Aに結合し、RGMタンパク質のRGM A受容体及び他のRGM A結合タンパク質への結合を妨げ、従ってRGM Aの機能を中和する能力を有するRGM A結合タンパク質、特にモノクローナル抗体、とりわけそのCDRグラフト化ヒト化バージョン、並びにRNFL変性を防ぐために哺乳動物を治療上または予防上治療する方法を記載している。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物中枢神経系(CNS)内の損傷、炎症発作または神経変性疾患後の軸索再生はたいてい不可能である。結果は、CNS中の神経線維が再成長する固有の能力と病変またはダメージ部位の微環境中に局在し、損傷された線維路の再成長、よって再生を積極的に妨げるCNS内の阻害因子との間のバランスに依存する。
【0003】
乏突起膠細胞より生ずるCNSミエリン及び病変瘢痕がインビトロ及びインビボで成長円錐の退縮及び神経突起成長の阻害を引き起こし、これにより軸索再成長を直接阻害することにより損傷の早期における軸索成長に対する最も適切な非許容構造であることは確立されている。CNSミエリン及び瘢痕組織上の主要阻害因子であるRGMタンパク質は同定されている(Monnierら,Nature,419:392-395,2002;Schwabら,Arch.Neurol.,62:1561-8,2005a;Schwabら,Eur.J.Neurosci.,21:1569-76,2005b;Hataら,J.Cell Biol.,173:47-58,2006;概説については、Muellerら,Philos.Trans.R.Soc.Lond.B Biol.Sci.,361:1513-29,2006;Yamashitaら,Curr.Opin.Neurobiol.,17:29-34,2007を参照されたい)。RGMタンパク質は脳外傷または虚血性発作で死にかけている人のダメージまたは病変部位でアップレギュレートされており(Schwabら,Arch.Neurol.,62:1561-8,2005a)、脊髄損傷を有するラットの病変部位でアップレギュレートされている(Schwabら,Eur.J.Neurosci.,21:1569-76,2005b;Hataら,J.Cell Biol.,173:47-58,2006;概説については、Muellerら,Philos.Trans.R.Soc.Lond.B Biol.Sci.,361:1513-29,2006;Yamashitaら,Curr.Opin.Neurobiol.,17:29-34,2007を参照されたい)。加えて、多発性硬化症患者及び健康人からの臨床サンプルを用いた最初のデータから、ヒトRGM AがMSを患っている患者の脳脊髄液においてアップレギュレートされていることが示唆された(データ示さず)。
【0004】
RGM A特異的ポリクローナル抗体の再生促進ポテンシャルを評価するために、胸部レベル9/10で脊髄の約60%が横に切開されている脊髄損傷の中~重症モデルに抗体を投与した。組織学的検査で、前記病変が皮質脊髄路のすべての背側及び外側線維を切断していたことが明らかとなった。RGM A特異的ポリクローナル抗体をポンプを介して2週間局所投与すると、損傷された神経線維の長距離再生が誘導された(Hataら,J.Cell Biol.,173:47-58,2006)。
【0005】
数百の神経線維が病変部位を超えて伸長し、最長繊維は病変部を超えて10mm以上再生されたのに対して、対照抗体処理動物では再生線維が病変部から離れて存在しなかった。抗RGM A処理したラットの機能回復は対照抗体処理した脊髄損傷ラットと比較して有意に改善され、これによりRGM Aが強力な神経再生阻害剤及び軸索損傷または神経線維損傷により特徴づけられる適応症における回復を刺激するための有用な標的であることが立証された(Hataら,J.Cell Biol.,173:47-58,2006;Kyotoら,Brain Res.,1186:74-86,2007)。加えて、RGM Aタンパク質を機能遮断ポリクローナル抗体で中和すると、脊髄損傷ラットにおけるダメージを受けた神経線維の再成長が刺激されるだけでなく、シナプス形成が強化され、これによりダメージを受けたニューロン回路を再形成または修復できた(Kyotoら,Brain Res.,1186:74-86,2007)。
【0006】
rgm遺伝子ファミリーは3つの異なる遺伝子を包含し、そのうちの2つのrgm a及びbはRGM A及びRGM Bタンパク質を起源とする哺乳動物CNSにおいて発現され、第3のメンバーのrgm cは末梢において発現され(Muellerら,Philos.Trans.R.Soc.Lond.B Biol.Sci.,361:1513-29,2006)、RGM Cは鉄代謝において重要な役割を発揮する。インビトロで、RGM Aは、RGM受容体として同定されているネオゲニンに結合することにより神経突起伸長を阻害する(Rajagopalanら,Nat.Cell Biol.,6(8),756-62,2004)。ネオゲニンは最初ネトリン結合タンパク質として記載された(Keino-Masuら,Cell,87(2):175-85,1996)。ネトリン-1がネオゲニンまたはその均密に関連する受容体DCC(大腸癌で欠失している)へ結合すると神経突起成長が阻害されるよりむしろ刺激されると報告されているので(Braistedら,J.Neurosci.,20:5792-801,2000)、このことは重要な所見である。従って、RGM Aをブロックすると、ネオゲニンがその神経突起成長刺激リガンドのネトリンに結合できることによりRGM媒介成長阻害が解除される。これらの所見に基づいて、RGM Aを中和することがヒト脊髄損傷のモデルでネオゲニンを中和することより優れていると推測され得る。RGM Aのネオゲニンへの結合及び神経突起成長阻害の誘導に加えて、RGM AまたはBの骨形態形成タンパク質BMP-2及びBMP-4に対する結合は神経再生及び機能回復の成功に対する別の障害に相当し得る(Muellerら,Philos.Trans.R.Soc.Lond.B Biol.Sci.,361:1513-29,2006)。
【0007】
RNFLは網膜の最内層であり、主に視神経を構成する神経節細胞ニューロンからの軸索を構成する。RNFL内の軸索は眼の篩板を通過するまでミエリン形成されない。RNFLの厚さがミエリン変性に可能性ある構造的影響を与えることなく軸索の寄与を反映するので、RNFLのこの構造の特徴によりRNFLはCNS内の神経変性プロセスを調べるための理想的組織となる(Frohmanら,Arch.Neurol.,65(1):26-35,2008)(
図19も参照されたい)。
【0008】
Frisen,L.及びHoyl,W.F.は多発性硬化症(MS)患者におけるRNFLの減少を初めて報告した(Frisen,L. and Hoyl,W.F.,Arch.Opthalmol.,92:91-97,1974)。
【0009】
健康な個人の場合、RNFLは15才まで約110~120μmの厚さしかなく、多くの正常な個人では網膜の厚さが約0.017%/年ずつ減少、網膜の厚さは60才を超えると約10~20μmに等しい(Kanamori.A.ら,Ophthalmologica,217:273-278,2003)。これに反して、急性視神経炎(AON)を経験したMS患者の約75%が最初の炎症発症からたった約3~6ヶ月以内に10~40μmのRNFL厚さの損失を示した。RNFLが約75μmのレベル以下に減少すると視覚機能の減衰が生ずる(Costelloら,Ann.Neurol.,59:963-969,2006)。MS治療に応答して神経保護をモデル化する目的のRNFLの可能性ある有用性はFrohmanらが示唆しており、彼らはRNFL厚さを測定できる再生可能なイメージング技術として光干渉断層法(OTC)も記載している(上記したFrohmanらを参照されたい;Frohmanら,Nature Clinical Practice Neurology,4:12,664-675,2008)。
【0010】
RNFLの変性は、糖尿病性網膜症、虚血性視神経症、X染色体連鎖性網膜分離症、薬物誘発性視神経症、網膜ジストロフィー、加齢黄斑変性、視神経乳頭ドルーゼンにより特徴づけられる眼病、光受容器変性の遺伝的決定因子により特徴づけられる眼病、常染色体劣性錐体-桿性ジストロフィー、視神経症を伴うミトコンドリア疾患、すなわちフリードライヒ運動失調症、アルツハイマー病、軽度認知機能障害(MCI)、パーキンソン病、及びプリオン病、すなわちクロイツフェルト-ヤコブ病、スクレイピー、BSEのような多数の他の疾患の過程でも観察されている(Sakata LM,ら,Clin.Experiment Ophtalmol.,2009,37:90-99;Morris RWら,Optometry,2009,80,83-100;Kallenbach K. & Frederiksen J.,Eur.J.Neurol.,2007,14:841-849;Trickら,J.Neuroophtthalmol.,2006,26:284-295;Tantri A.ら,Surv.Ophtalmol.,49:214-230も参照されたい)。
【0011】
当業界ではRNFL変性を直接治療できる治療アプローチに対する要望がある。従って、本発明により解決すべき問題は直接的治療、特に複数の病状で観察されるRNFL変性の神経保護治療を与える手段を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Monnierら,Nature,419:392-395,2002
【非特許文献2】Schwabら,Arch.Neurol.,62:1561-8,2005a
【非特許文献3】Schwabら,Eur.J.Neurosci.,21:1569-76,2005b
【非特許文献4】Hataら,J.Cell Biol.,173:47-58,2006
【非特許文献5】Muellerら,Philos.Trans.R.Soc.Lond.B Biol.Sci.,361:1513-29,2006
【非特許文献6】Yamashitaら,Curr.Opin.Neurobiol.,17:29-34,2007
【非特許文献7】Kyotoら,Brain Res.,1186:74-86,2007)。
【非特許文献8】Rajagopalanら,Nat.Cell Biol.,6(8),756-62,2004
【非特許文献9】Keino-Masuら,Cell,87(2):175-85,1996
【非特許文献0】Braistedら,J.Neurosci.,20:5792-801,2000
【非特許文献11】Frohmanら,Arch.Neurol.,65(1):26-35,2008
【非特許文献12】Frisen,L. and Hoyl,W.F.,Arch.Opthalmol.,92:91-97,1974
【非特許文献13】Kanamori.A.ら,Ophthalmologica,217:273-278,2003
【非特許文献14】Costelloら,Ann.Neurol.,59:963-969,2006
【非特許文献15】Frohmanら,Nature Clinical Practice Neurology,4:12,664-675,2008
【非特許文献16】Sakata LM,ら,Clin.Experiment Ophtalmol.,2009,37:90-99
【非特許文献17】Morris RWら,Optometry,2009,80,83-100
【非特許文献18】Kallenbach K. & Frederiksen J.,Eur.J.Neurol.,2007,14:841-849
【非特許文献19】Trickら,J.Neuroophtthalmol.,2006,26:284-295
【非特許文献20】Tantri A.ら,Surv.Ophtalmol.,49:214-230
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の実施形態は、多数の病状で観察されるRNFL変性のRGM Aに結合できる抗体を用いる神経保護治療に関する。
【0014】
別の実施形態は、RGM Aをブロックし、RGM Aとその受容体及び/または結合タンパク質、すなわちネオゲニン及びBMP-2、BMP-4間の相互作用を妨げるモノクローナル抗体のRNFL変性の治療のための使用に関する。
【0015】
別の実施形態は、治療を要する哺乳動物に対して有効量のRGM Aに結合できる抗体を含む組成物を投与するステップを含むRNFL変性の治療方法である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】Aは、ELISAアッセイにおけるhRGM Aに対するモノクローナル抗体の結合を示す。Bは、HEK 293細胞で発現させたhRGM Aに対するモノクローナル抗体結合を示す。CはHEK 293細胞で発現させたラットRGM Aに対するモノクローナル抗体結合を示す。
【
図2】ネオゲニンに対する完全長RGM A結合を示す。MAB 5F9は完全長のfc結合したhRGM Aのネオゲニンに対する結合を阻害する。
【
図3】BMP-4に対する完全長RGM A結合を示す。MAB 5F9はfc結合した完全長hRGM A断片(47-422)のBMP-4に対する結合を阻害する。
【
図4】BMP-4に対するRGM A断片0結合を示す。MAB 5F9はfc結合したhRGM A断片0(47-168)のBMP-4に対する結合を阻害する。
【
図5】BMP-2に対する完全長RGM A結合を示す。MAB 5F9はfc結合した完全長hRGM A断片(47-422)のBMP-2に対する結合を阻害する。
【
図6】NTera細胞神経突起伸長アッセイにおけるRGM A断片のmAb 5F9中和を示す顕微鏡写真の組合せである。MAB 5F9は、ヒトNtera凝集物を用いる神経突起成長アッセイにおいてfcコンジュゲートした強力なhRGM A阻害剤断片の伸長阻害活性を中和する。A:対照培養物,ラミニン上のNteraニューロンの成長、B:ラミニン-hRGM A断片(47-168)基質上、C~E:0.1μg/mlのMAB 5F9(C)、1μg/mlのMAB 5F9(D)、10μg/mlのMAB 5F9(E)の存在下でのラミニン-hRGM A断片(47-168)基質上。
【
図7】NTera 2アッセイ結果の定量分析を示す。MAB 5F9は、ヒトNtera凝集物を用いる神経突起成長アッセイにおいてfcコンジュゲートした強力なhRGM A阻害剤断片(断片0,47-168)の伸長阻害活性を用量依存的に中和する。
【
図8】SH-SY5Yストライプアッセイの定量分析を示す。MAB 5F9は、ストライプ膜カーペットにおいてヒトSH-SY5Yニューロン細胞の完全長ヒトRGM Aから構成されるストライプにより誘導される反発を中和する。MAB 5F9(A)の非存在下または低MAB濃度の存在下で、SH-SY5YニューロンはRGM Aストライプを避けることを選択する。この挙動はMAB 5F9の濃度を増加させることにより後退する(B~D)。最高のMAB濃度(10μg/ml)(E)で、SH-SY5YニューロンはコラーゲンIストライプに比してRGM Aストライプに対して強い選択を示す。
【
図9】mAB 5F9及び8D1結合特性の定量分析を要約する。MAB 5F9及び8D1を異なる濃度でhRGM A-ネオゲニン、hRGM A-BMP-2及びhRGM A-BMP-4結合アッセイで評価する。
【
図10】SH-SY5Y走化性アッセイにおいてヒト化5F9抗体(h5F9.21、h5F9.23、h5F9.25)のhRGM Aの化学反発活性に対する中和活性を示す。
【
図11】視神経損傷の動物モデルにおける局所5F9適用のインビボ神経再生活性を示す。視神経挫滅のラット動物モデルにおいてMAB 5F9を局所適用すると、RGM Aは中和され、ダメージを受けた視神経軸索の再生成長が刺激される。5F9処理動物(A)では、多くのGAP-43ポジティブ線維がラットRGM Aを結合していない対照MAB 8D1(B)に比して挫滅部位を超えて伸長している。
【
図12A】視神経損傷の動物モデルにおける局所5F9適用の定量分析を示す。(A)対照MAB 8D1ではなく、5F9は再生GAP-43ポジティブ線維の数を有意に増加させた。5F9で処理した動物では距離200μm、400μm及び600μmで有意により多くの線維(p<0.05)が観察され、1200μmでは線維は5F9処理動物でのみ見られ、対照動物では見られなかった。(B)5F9は対照抗体8D1及びビヒクル対照PBSと比較して視神経病変部位でGAP-43ポジティブ面積を有意に増加させた。再生成長の面積(GAP-43ポジティブ面積)はAxiovisionソフトウェア(Zeiss)を用いて測定した。
【
図12B】視神経損傷の動物モデルにおける局所5F9適用の定量分析を示す。(A)対照MAB 8D1ではなく、5F9は再生GAP-43ポジティブ線維の数を有意に増加させた。5F9で処理した動物では距離200μm、400μm及び600μmで有意により多くの線維(p<0.05)が観察され、1200μmでは線維は5F9処理動物でのみ見られ、対照動物では見られなかった。(B)5F9は対照抗体8D1及びビヒクル対照PBSと比較して視神経病変部位でGAP-43ポジティブ面積を有意に増加させた。再生成長の面積(GAP-43ポジティブ面積)はAxiovisionソフトウェア(Zeiss)を用いて測定した。
【
図13】視神経損傷の動物モデルにおける5F9の全身適用のインビボ神経再生活性を示す。動物を0及び21日目にそれぞれ2mg/kg及び10mg/kgの5F9で処理した。抗体またはビヒクは腹腔内または静脈内投与した。ラット視神経の複合画像。5F9処理動物(A)では、多くのGAP-43ポジティブ線維がPBSで処理した対照動物(B)と対照的に挫滅部位を超えて伸長している。挫滅部位は左マージンに位置し、再生線維をGAP-4に対する抗体3で染色する。PBS動物ではなく、5F9処理動物において多くの繊維が視神経の上縁及び下縁で観察される。
【
図14A】視神経損傷の動物モデルにおいて5F9の全身適用の定量分析を示す。
【
図14B】視神経損傷の動物モデルにおいて5F9の全身適用の定量分析を示す。
【
図15】視神経損傷の動物モデルにおける5F9の全身適用のインビボ再ミエリン形成活性を示す。動物を0及び21日目にそれぞれ2mg/kg及び10mg/kgの5F9で処理した。抗体またはビヒクルを腹腔内または静脈内投与した。ラット視神経の複合画像。ミエリン形成をミエリンマーカーのミエリン塩基性タンパク質MBPに対する抗体を用いて可視化する。挫滅部位は複数の神経の中間に位置し、その域はビヒクル処理対照動物(A及びB)にはない。5F9処理動物(C及びD)では、多くのMBPポジティブ構造が視神経の中間域(挫滅中心)で観察される。
【
図16】視神経損傷の動物モデルにおける5F9の全身投与の再ミエリン形成の定量効果を示す。
【
図17】視神経挫滅を有する動物の眼由来のRNFLに対する抗体5F9の優れた保護効果を示す。5F9で全身処理した動物の網膜で有意に高密度の神経線維束が観察される。
【
図18】視神経挫滅を有する動物の眼由来の網膜内ニューロンに対する抗体5F9の影響を示す。5F9抗体で全身処理した動物の網膜で有意に多数の発芽網膜内ニューロンが観察される。
【
図19】硝子球に直接隣接する層である網膜神経線維層(RNFL)を示す。網膜神経節細胞の軸索により形成されている。他の層は、アマクリン及び双極ニューロンが網膜神経節細胞とのシナプス接触を形成している内網状層(IPL)である。光受容器、水平ニューロン及び双極ニューロンが外網状層(OPL)においてシナプスを構成する。光受容器(棒及び円錐)は光受容器層(PRL)中に位置している。RPEは網膜色素上皮である(スキームはFrohmanら,Arch.Neurol.,65,26-35,2008から)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.用語の定義
本明細書中別途定義されていない限り、本発明に関連して使用されている科学用語及び技術用語は当業者が通常理解している意味を有する。用語の意味及び範囲は明らかでなければならないが、潜在的意味不明の場合には本明細書中に与えられている定義が辞書または外部の定義に優先する。更に、別の文脈が要求されない限り、単数形の用語は複数を含み、複数形の用語は単数を含む。本明細書中、「または」の使用は別段の記述がない限り「及び/または」を意味する。更に、用語「含む(including)」及び「includes」及び「included」のような他の形は限定的でない。また、「エレメント」または「成分」のような用語は、別段具体的に記述されていない限り、1つの単位を含むエレメント及び成分、並びに2つ以上のサブユニットを含むエレメント及び成分の両方を包含する。
【0018】
一般的に、本明細書中に記載されている細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、タンパク質及び核酸化学、並びにハイブリダイゼーションに関連して使用されている命名法及びそれらの技術は当業界で公知であり、一般的に使用されている。本発明の方法及び技術は、別段の指示がない限り、通常当業界で公知であり、各種一般文献並びに本明細書中に引用、検討されているより具体的な文献に記載されている慣用方法に従って実施される。酵素反応及び精製技術は当業界で通常実施されているかまたは本明細書中に記載されているように製造業者の仕様書に従って実施される。本明細書中に記載されている分析化学、合成有機化学、並びに医化学及び医薬としての化学に関連して使用されている命名法並びにそれらの実験手順及び技術は当業界で公知であり、通常使用されているものである。化学合成、化学分析、医薬品、処方、デリバリー及び患者の治療のためには標準技術が使用される。
【0019】
本明細書及び添付されている特許請求の範囲を通じて、以下の用語は次の意味を有する:
用語「アクセプター」及び「アクセプター抗体」は、1つ以上のフレームワーク領域のアミノ酸配列の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または100%を与えるまたはエンコードする抗体または核酸配列を指す。幾つかの実施形態では、用語「アクセプター」は1つ以上の定常領域を与えるまたはエンコードする抗体アミノ酸または核酸配列を指す。更に別の実施形態では、用語「アクセプター」は、1つ以上のフレームワーク領域及び1つ以上の定常領域を与えるまたはエンコードする抗体アミノ酸または核酸配列を指す。特定実施形態では、用語「アクセプター」は、1つ以上のフレームワーク領域のアミノ酸配列の少なくとも80%、特に少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または100%を与えるまたはエンコードするヒト抗体アミノ酸または核酸配列を指す。この実施形態によれば、アクセプターはヒト抗体の1つ以上の特定位置に存在しないアミノ酸残基を少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、または少なくとも10個含み得る。アクセプターフレームワーク領域及び/またはアクセプター定常領域は、例えば生殖細胞系抗体遺伝子、成熟抗体遺伝子、機能抗体(例えば、当業界で公知の抗体、開発中の抗体または市販されている抗体)から誘導または入手し得る。
【0020】
本明細書中で使用されている用語「抗体」は、広義には免疫グロブリン(Ig)分子の本質的エピトープ結合特徴を保持している2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖の4本のポリペプチド鎖からなるIg分子、或いはその機能的断片、ミュータント、バリアントまたは誘導体を指す。前記したミュータント、バリアントまたは誘導体抗体フォーマットは当業界で公知である。その非限定的実施形態を以下に検討する。抗体が分子と特異的に反応して、これにより分子を抗体に結合し得るならば、抗体は分子に「結合し得る」と言われている。
【0021】
用語「抗体コンジュゲート」は、第2化学部分(例えば、治療薬または細胞傷害薬)に化学的に連結している結合タンパク質(例えば、抗体)を指す。用語「剤(薬、物質)」は化合物、化合物の混合物、生物学的マクロ分子、または生物学的材料から作成される抽出物を指す。特に、治療薬または細胞傷害薬には、百日咳毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール及びピューロマイシン、並びにそのアナログまたはホモログが含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書中で使用されている用語「抗体構築物」は、リンカーポリペプチドまたは免疫グロブリン定常ドメインに連結されている本発明の1つ以上の抗原結合部分を含むポリペプチドを指す。リンカーポリペプチドはペプチド結合により連結されている2つ以上のアミノ酸残基を含み、1つ以上の抗原結合部分を連結するために使用されている。リンカーポリペプチドは当業界で公知である(例えば、Holliger,P.ら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448;Poljak,R.J.ら(1994)Structure,2:1121-1123を参照されたい)。免疫グロブリン定常ドメインは重鎖または軽鎖定常ドメインを指す。ヒトIgG重鎖及び軽鎖定常ドメインアミノ酸配列は当業界で公知であり、表1に示す。
【0023】
【0024】
更に、抗体またはその抗原結合部分は、抗体または抗体部分の1つ以上の他のタンパク質またはペプチドとの共有または非共有結合により形成される大きな免疫接着分子の一部であり得る。前記免疫接着分子の例には、テトラマーscFv分子を作成するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov,S.M.ら(1995)Human Antibodies and Hybridomas,6:93-101)、及び二価のビオチニル化scFv分子を作成するためのシステイン残基、マーカーペプチド及びC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov,S.M.ら(1994)Mol.Immunol.,31:1047-1058)が含まれる。抗体部分、例えばFab及びF(ab’)2断片は、全抗体の一般的技術(例えば、それぞれパパインまたはペプシン消化)を用いて全抗体から作成され得る。更に、抗体、抗体部分及び免疫接着分子は本明細書中に記載されている標準組換えDNA技術を用いて得ることができる。
【0025】
本明細書中で使用されている用語抗体の「抗原結合部分」または「抗原結合断片」(または、単に「抗体部分」または「抗体断片」)は、抗原(例えば、hRGM A)に対して特異的に結合する能力を保持している抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能が完全長抗体の断片により果たされ得ることは判明している。抗体の実施形態は、2つ以上の異なる抗原に対して特異的に結合する双特異性、二重特異性または多重特異性フォーマットであり得る。用語抗体の「抗原結合部分」内に包含される結合断片の例には、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインから構成される一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結されている2つのFab断片からなる二価断片であるF(ab’)2断片;(iii)VH及びCH1ドメインから構成されるFd断片;(iv)抗体のシングルアームのVL及びVHドメインから構成されるFv断片;(v)単一可変ドメインを含むdAb断片(参照により本明細書に組み入れるWardら(1989)Nature,341:544-546;Winterら,PCT公開WO 90/05144 A1);及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。更に、Fv断片の2つのドメインVL及びVHは別の遺伝子によりコードされるが、これらは組換え方法を用いて、VL及びVH領域が対になって一価分子(一本鎖Fv(scFv)として公知;例えば、Birdら(1988)Science,242:423-426;及びHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:5879-5883)を参照されたい)を形成する単一タンパク質鎖として作成できる合成リンカーにより連結され得る。一本鎖抗体も用語抗体の「抗原結合部分」に包含されると意図される。ダイアボディのような他の形態の一本鎖抗体も包含される。ダイアボディは、VH及びVLドメインが単一ポリペプチド鎖上で発現されるが、同一鎖上の2つのドメイン間で対を形成するには余りに短いリンカーを用いてドメインは別の鎖の相補性ドメインと対を形成し、2つの抗原結合部位を形成する二価の双特異性抗体である(例えば、Holliger,P.ら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448;Poljak、R.J.ら(1994)Structure,2:1121-1123を参照されたい)。前記抗体結合部分は当業界で公知である(Kontermann and Dubel編,Antibody Engineering(2001)Springer-Verlag,New York,790pp.(ISBN 3-540-41354-5)。
【0026】
用語「抗原決定基」または「エピトープ」は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に対して特異的に結合し得るポリペプチド決定基を含む。ある実施形態では、エピトープ決定基は分子の化学的に活性な表面基(例えば、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリルまたはスルホニル)を含み、ある実施形態では特定の3次元構造特性及び/または特定の電荷特性を有し得る。エピトープは抗体により結合される抗原の領域である。ある実施形態では、抗体はタンパク質及び/またはマクロ分子の複合混合物中のその標的抗原を優先的に認識するとき抗原に特異的に結合すると言われている。
【0027】
用語「生物活性」は本明細書中に記載されているRGM Aのすべての固有生物特性を指す。
【0028】
用語「カノニカル残基」は、Chothiaら(いずれも参照により本明細書に組み入れるJ.Mol.Biol.,196:901-907(1987);Chothiaら,J.Mol.Biol.,227:799(1992))により定義されている特定のカノニカルCDR構造を規定するCDRまたはフレームワーク中の残基を指す。Chothiaらによれば、多くの抗体のCDRの重要な部分は、アミノ酸配列のレベルで多種多様であるにもかかわらず、ほぼ同一のペプチド骨格コンフォメーションを有している。各カノニカル構造は主にループを形成するアミノ酸残基の連続セグメントに対して1組のペプチド骨格ねじれ角を特定する。
【0029】
用語「キメラ抗体」は、1つの種由来の重鎖及び軽鎖可変領域配列及び別の種由来の定常領域配列を含む抗体、例えばヒト定常領域に連結されているマウス重鎖及び軽鎖可変領域を有する抗体を指す。キメラ抗体は組換え分子生物学的技術により産生され得、または物理的に一緒にコンジュゲートされ得る。
【0030】
用語「CDR」は、抗体可変配列内の相補性決定領域を指す。重鎖及び軽鎖の可変領域の各々の中に、その可変領域の各々に対してCDR1、CDR2及びCDR3と称されている3つのCDRがある。本明細書中で使用されている用語「CDR組」は、抗原に結合し得る単一可変領域中に存在する3つのCDRのグループを指す。これらのCDRの正確な境界は各種システムに従って異なるように規定される。カバットが記載しているシステム(Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md(1987)及び(1991))は、抗体の可変領域に対して適用可能な明白な残基ナンバリングシステムを与えるだけでなく、3つのCDRを規定する正確な残基境界も与える。これらのCDRはカバットCDRと称され得る。Chothia及び同僚(Chothia & Lesk,J.Mol.Biol.,196:901-917(1987)及びChothiaら,Nature,342:877-883(1989))は、アミノ酸配列のレベルで多種多様であるにもかかわらず、カバットCDR内のあるサブ部分はほぼ同一のペプチド骨格コンフォメーションを採用していることを知見した。これらのサブ部分はL1、L2及びL3、またはH1、H2及びH3と称され、ここで“L”及び“H”はそれぞれ軽鎖及び重鎖領域を指す。これらの領域はコチアCDRと称され得、カバットCDRと重複する境界を有している。カバットCDRと重複するCDRを規定する他の境界は、Padlan(FASEB J.,9:133-139(1995))及びMacCallum(J.Mol.Biol.,262(5):732-45(1996))により記載されている。さらに他のCDR境界規定は上記システムの1つに厳密に従わなくてもよいが、それでもカバットCDRと重複しており、特定の残基、残基のグループ、または全CDRすら抗原結合に有意な影響を与えないという予想または実験所見にてらして短縮または延長され得る。特定実施形態はカバットまたはコチア定義のCDRを使用しているが、本明細書中で使用される方法はこれらのシステムのいずれかに従って規定されるCDRを利用し得る。
【0031】
用語「CDRグラフト化抗体」は、1つの種由来の重鎖及び軽鎖可変領域配列を含むが、VH及び/またはVLのCDR領域の1つ以上の配列が別の種のCDR配列で置換されている抗体、例えばマウスCDRの1つ以上(例えば、CDR3)がヒトCDR配列で置換されているマウス重鎖及び軽鎖可変領域を有している抗体を指す。
【0032】
用語「結晶」及び「結晶化されている」は、結晶の形態で存在している抗体またはその抗原結合部分を指す。結晶は非晶質固体状態または液晶状態のような他の形態と区別される物質の固体状態の1つの形態である。結晶は原子、イオン、分子(例えば、抗体のようなタンパク質)または分子アセンブリ(例えば、抗原/抗体複合体)の規則的な反復三次元アレーから構成される。これらの三次元アレーは当分野で十分理解されている特定の数学的関係に従って配置される。結晶中で反復される基本的単位、すなわち構成ブロックは非対称単位と呼ばれる。所与の十分に規定された結晶学的対称に一致する配置中の非対称単位の反復により、結晶の「単位セル」が与えられる。すべての三次元での規則的平行移動による単位セルの反復により、結晶が生ずる。Giege,R. and Ducruix,A.Barrett,Crystallization of Nucleic Acids and Proteins,a Practical Approach,2nd ea.,p.20,1-16,Oxford University Press,New York,New York(1999)を参照されたい。
【0033】
用語「ドナー」及び「ドナー抗体」は1つ以上のCDRを与える抗体を指す。特定実施形態では、ドナー抗体はそこからフレームワーク領域が得られるまたは誘導される抗体とは異なる種由来の抗体である。ヒト化抗体に関連して、用語「ドナー抗体」は1つ以上のCDRを与える非ヒト抗体を指す。
【0034】
用語「有効量」は、障害またはその1つ以上の症状の重症度及び/または期間を軽減または改善させる、障害の進行を予防する、障害を後退させる、障害に関連する1つ以上の症状の再発、発生、発症または進行を予防する、障害を検出する、或いは別の治療(例えば、予防薬または治療薬)の1つ以上の予防または治療効果を強化または向上させるのに十分な治療の量を指す。
【0035】
用語「フレームワーク」または「フレームワーク配列」は、可変領域からCDRを差し引いた残りの配列を指す。CDR配列の正確な規定は各種システムにより決定され得るので、フレームワーク配列の意味は対応して異なって解釈される。6つのCDR(軽鎖のCDR-L1、-L2及び-L3、並びに重鎖のCDR-H1、-H2及び-H3)は軽鎖及び重鎖上のフレームワーク領域を各々の鎖上の4つのサブ領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)に分割し、CDR1はFR1とFR2の間に位置し、CDR2はR2とFR3の間に位置し、CDR3はFR3とFR4の間に位置する。特定のサブ領域をFR1、FR2、FR3またはFR4と特定しないが、他の方法により称されるフレームワーク領域は単一の天然に存在する免疫グロブリン鎖の可変領域内の合わさったFRを表す。本明細書中で使用されているFRは4つのサブ領域の1つを表し、FRはフレームワーク領域を構成する4つのサブ領域の2つ以上を表す。
【0036】
ヒト重鎖及び軽鎖アクセプター配列は当業界で公知である。本発明の1つの実施形態では、ヒト重鎖及び軽鎖アクセプター配列は表2及び表3に記載されている配列から選択される。ヒトフレームワーク配列FR1~FR4についての各種組合せがこれらの表に記載されている。
【0037】
【0038】
【0039】
用語「生殖細胞系抗体遺伝子」または「遺伝子断片」は、特定免疫グロブリンの発現のために遺伝子再配列及び成熟をもたらす成熟プロセスを受けていない非リンパ様細胞によりエンコードされる免疫グロブリン配列を指す(例えば、Shapiroら,Crit.Rev.Immunol.,22(3):183-200(2002);Marchalonisら,Adv.Exp.Med.Biol.,484:13-30(2001)を参照されたい)。本発明の各種実施形態により与えられる作用効果の1つは、生殖細胞系抗体遺伝子は成熟抗体遺伝子よりも種の中の個体の必須アミノ酸配列構造特性をより保存しそうであり、よってその種において治療のために使用する場合外来ソース由来と認識されにくいという認識から生ずる。
【0040】
本明細書中で使用されている用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列から誘導される可変及び定常領域を有する抗体を含むと意図される。本発明のヒト抗体は、例えばCDR、特にCDR3中のヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列(例えば、インビトロでランダムまたは部位特異的変異誘発により、またはインビボで体細胞突然変異により導入される突然変異)によりエンコードされないアミノ酸残基を含み得る。しかしながら、本明細書中で使用されている用語「ヒト抗体」は、別の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖細胞系から誘導されるCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフト化されている抗体を含むと意図されない。
【0041】
用語「ヒト化抗体」は、非ヒト種(例えば、マウス)由来の重鎖及び軽鎖可変領域配列を含むが、VH及び/またはVL配列の少なくとも一部がより「ヒト様」であるように、すなわちヒト生殖細胞系可変配列により類似するように改変されている抗体を指す。ヒト化抗体の1つのタイプは、対応する非ヒトCDR配列を置換するためにヒトCDR配列が非ヒトVH及びVL配列に導入されているCDRグラフト化抗体である。ヒト化抗体には、対象抗原に免疫特異的に結合し、実質的にヒト抗体のアミノ酸配列を有するフレームワーク(FR)領域及び実質的に非ヒト抗体のアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)を含む抗体、或いはそのバリアント、誘導体、アナログまたは断片である。CDRの関連で、本明細書中で使用されている用語「実質的に」は、非ヒト抗体CDRのアミノ酸配列に対して少なくとも50、55、60、65、70、75または80%、特に少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有するCDRを指す。ヒト化抗体は、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリン(すなわち、ドナー抗体)のものに相当し、フレームワーク領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)2、FabC、Fv)の実質的にすべてを含む。特に、ヒト化抗体は免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくも一部をも含む。幾つかの実施形態では、ヒト化抗体は軽鎖及び重鎖の少なくとも可変ドメインの両方を含む。抗体は重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3及びCH4領域をも含み得る。幾つかの実施形態では、ヒト化抗体はヒト化軽鎖のみを含む。幾つかの実施形態では、ヒト化抗体はヒト化重鎖のみを含む。特定実施形態では、ヒト化抗体は軽鎖のヒト化可変ドメイン及び/またはヒト化重鎖のみを含む。
【0042】
ヒト化抗体は、IgY、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEを含めた免疫グロブリンのクラス、及び非限定的にIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含めたイソタイプから選択され得る。ヒト化抗体は1つ以上のクラスまたはイソタイプ由来の配列を含み得、特定定常ドメインは当業界で公知の技術を用いて所望のエフェクター機能を最適化するために選択され得る。
【0043】
ヒト化抗体のフレームワーク及びCDR領域は親配列と正確に対応していなくてもよい。例えば、部位のCDRまたはフレームワーク残基がドナー抗体またはコンセンサスフレームワークに対応しないようにドナー抗体CDRまたはコンセンサスフレームワークが少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、挿入及び/または欠失により突然変異されていてもよい。しかしながら、特定実施形態では、突然変異は大規模でない。ヒト化抗体残基の通常少なくとも50、55、60、65、70、75または80%、特に少なくとも85%、より特に少なくとも90%、最も特に少なくとも95%が親FR及びCDR配列の残基に対応している。本明細書中で使用されている用語「コンセンサスフレームワーク」はコンセンサス免疫グロブリン配列中のフレームワーク領域を指す。本明細書中で使用されている用語「コンセンサス免疫グロブリン配列」は、関連する免疫グロブリン配列のファミリー中に最も頻繁に存在しているアミノ酸(または、ヌクレオチド)から形成される配列を指す(例えば、Winnaker,From Genes to Clones(Verlagsgesellschaft,Weinheim,Germany,1987を参照されたい)。免疫グロブリンのファミリーにおいて、コンセンサス配列中の各位置は前記ファミリー中のその位置に最も頻繁に存在しているアミノ酸で占められている。2つのアミノ酸がしばしば等しく存在しているならば、コンセンサス配列中にいずれかが含まれ得る。
【0044】
用語「ヒトRGM A」(本明細書中、hRGM Aと略す)は、450アミノ酸を有するグリコシルホスファチジル-イノシトール(gpi)アンカー糖タンパク質を指し、最初トポグラフィックな投射の発生過程中の神経突起成長忌避剤または神経突起成長阻害剤として記載された(Stahlら,Neuron,5:735-43,1990;Mueller,Molecular Basis of Axon Growth and Nerve Pattern Formation,H.Fujisawa編,Japan Scientific Societies Press,215-229,1997)。rgm遺伝子ファミリーは3つの異なる遺伝子を包含し、このうちの2つrgm a及びbは哺乳動物CNSにおいて発現され、第3メンバーのrgm cは末梢において発現され、そこで鉄代謝において重要な役割を果たす(Muellerら,Philos.Trans.R.Soc.Lond.B Biol.Sci.,361:1513-29,2006)。ヒトRGMタンパク質は43%~50%の配列同一性を有する。ヒト及びラットRGM Aのアミノ酸相同性は89%である。ヒトRGMタンパク質は他の公知のタンパク質と有意な配列相同性を共有していない。ヒトRGMタンパク質はRGD領域を含む富プロリンタンパク質であり、ヴァン・ヴィレブランド因子ドメインに対して構造相同性を有し、N末端アミノ酸168で未知のプロテアーゼにより開裂されて機能活性タンパク質を生ずる(Muellerら,Philos.Trans.R.Soc.Lond.B Biol.Sci.,361:1513-29,2006)。
【0045】
インビトロで、RGM AはRGM受容体として同定されたネオゲニンに対して結合することによりピコモル濃度で神経突起伸長を阻害する(Rajagopalanら,Nat Cell Biol.,6(8),756-62,2004)。ネオゲニンは最初ネトリン結合タンパク質として記載されていた(Keino-Masuら,Cell,87(2):175-85,1996)が、ネトリンに対するその親和性(Kd=2nM)はRGMに対する親和性(Kd=0.2nm)よりも1桁低い(Rajagopalanら,Nat.Cell Biol.,6(8),756-62,2004)。ネトリン-1のネオゲニンまたはその均密に関連する受容体DCC(大腸癌で欠失している)に対する結合が神経突起成長を阻害するよりもむしろ刺激すると報告されているので(Braistedら,J.Neurosci.,20:5792-801,2000)、このことは重要な所見である。
【0046】
RGM Aのネオゲニンに対する結合及び神経突起成長阻害の誘導に加えて、RGM AまたはBの骨形態形成タンパク質BMP-2及びBMP-4に対する結合はうまくいく神経再生及び機能回復に対する別の障害に相当する(Muellerら,Philos.Trans.R.Soc.Lond.B Biol.Sci.,361:1513-29,2006)。両クラスのタンパク質(ネオゲニン及びBMP)は2つの完全に異なる独立のシグナル伝達経路を介してRGM Aの神経突起成長阻害シグナルを伝達すると報告されている。通常、これらのBMPタンパク質の発現は成体CNSの多くの領域で比較的低いが、幾つかのBMP(例えば、BMP-2、BMP-6、BMP-7)の発現及び蓄積が損傷及び傷害に応答して急速に増加すると報告されている(Laiら,Neuroreport,8:2691-94,1997;Martinezら,Brain Res.,894:1-11,2001;Hall and Miller,J.Neurosci.Res.,76:1-8,2004;Setoguchiら,Exp.Neurol.,189:33-44,2004)。加えて、多発性硬化症のモデルの実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルにおいて、BMP-4、BMP-6及びBMP-7はマウス脊髄でアップレギュレートされた(Araら,J.Neurosci.Res.,86:125-35,2008)。BMP-2は、細胞表面RGM A、BMP受容体I及びIIに対して結合させることより及びLIMキナーゼを直接活性化することにより神経突起成長を阻害すると報告されており(Matsuuraら,Biochem Biophys Res Commun.,360:868-73,2007)、従ってRGM A-BMP-2相互作用をブロックするとCNS損傷後の機能回復が更に向上すると期待される。
【0047】
上記したように、脊髄損傷されているラット及び脳損傷のヒトは損傷部位に細胞RGMの大量蓄積を示し、ラットにおける脊髄病変部位のRGM Aの染色パターンはヒトにおけるpan RGM抗体染色に非常に類似している。このことから、ヒトにおけるpan RGM染色の多くはRGM A局在化に関連しているが、RGM B局在化に関連していないことが示唆される(Schwabら,Arch.Neurol.,62:1561-8,2005a;Schwabら,Eur.J.Neurosci.,21:1569-76,2005b;Hataら,J.Cell Biol.,173:47-58,2006)。健康なヒトの脳では、pan RGM染色(RGM A及びB免疫反応性)が白質線維、乏突起神経膠細胞、幾つかのニューロンの核周部、幾つかの血管平滑筋及び数個の内皮細胞で検出された。星状膠細胞の染色は観察されなかった。健康な成人脳でのRGM染色パターンは成体ラット脊髄で観察された染色パターンに非常に類似している(Schwabら,Eur.J.Neurosci.,21:1569-76,2005b;Hataら,J.Cell Biol.,173:47-58,2006)。
【0048】
脳及び脊髄損傷の病変部位でのRGM Aの蓄積に基づいて、その細胞神経突起成長阻害活性のために、タンパク質は神経突起成長阻害活性を示し、そのヒトRGM Aの少なくとも1つのエピトープに結合する抗体またはその抗原結合断片による中和により、損傷された神経線維の改良された再成長及び神経線維損傷及びRGM蓄積により特徴づけられる適応症での機能回復の強化が生ずると予想される。
【0049】
用語「RGM A」は他の種(例えば、マウスまたはラットのような齧歯類)から単離または得られるRGM A分子をも包含し、特にラット誘導分子は本明細書中「ラットRGM A」と呼称される。
【0050】
【0051】
用語「RGMのその受容体の1つに対する結合の阻害」は、受容体結合活性の部分的(例えば、約20%、40%、60%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上)または完全低下を包含する。「結合の阻害」は当業界で利用可能な適当な方法により、特に本明細書中に例示されている方法(例えば、ELISAに基づく結合アッセイ)により調べられ得る。
【0052】
本明細書中で使用されている「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体(例えば、hRGM Aに特異的に結合する単離抗体はhRGM A以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)を指すと意図される。しかしながら、hRGM Aに特異的に結合する単離抗体は他の種由来のRGM A分子のような他の抗原に対して交差反応性を有することがある。更に、単離抗体は他の細胞材料及び/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0053】
用語「単離ポリヌクレオチド」は、(例えば、ゲノム、cDNAまたは合成起源、或いはその幾つかの組合せの)ポリヌクレオチドを意味し、その起源により「単離ポリヌクレオチド」は「単離ポリヌクレオチド」が天然で存在するポリヌクレオチドの全部または一部と結合しておらず;天然で連結していないポリヌクレオチドに機能し得る形で連結しており;または、大きな配列の一部として天然に存在していない。
【0054】
用語「単離タンパク質」または「単離ポリペプチド」は、誘導のその起源またはソースによって天然状態で付随している天然結合成分と結合しておらず;同一種由来の他のタンパク質を実質的に含まず;異なる種由来の細胞により発現され;または天然に存在しないタンパク質またはポリペプチドである。よって、化学的に合成されるかまたは本来の起源の細胞とは異なる細胞系において合成されるポリペプチドは天然結合成分から単離されている。タンパク質は当業界で公知のタンパク質精製技術を用いて単離することにより天然結合成分を実質的に含まないようにし得る。
【0055】
用語「カバットナンバリング」、「カバット定義」及び「カバットラベリング」は本明細書中で互換可能に使用されている。当業界で認識されているこれらの用語は、抗体またはその抗原結合部分の重鎖及び軽鎖可変領域中の他のアミノ酸残基よりもより可変性(すなわち、高度可変性)であるアミノ酸残基をナンバリングするシステムを指す(Kabatら(1971)Ann.NY Acad.Sci.,190:382-391及びKabat,E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242)。重鎖可変領域の場合、高度可変領域はCDR1についてアミノ酸位置31-35、CDR2についてアミノ酸位置50-65、及びCDR3についてアミノ酸位置95-102の範囲である。軽鎖可変領域の場合、高度可変領域はCDR1についてアミノ酸位置24-34、CDR2についてアミノ酸位置50-56、及びCDR3についてアミノ酸位置89-97の範囲である。
【0056】
用語「Kd」は当業界で公知のように特定の抗体-抗原相互作用の解離定数を指す。
【0057】
用語「キー残基」は、可変領域内の、抗体(特に、ヒト化抗体)の結合特異性及び/または親和性に対してより多くの影響を有するある残基を指す。キー残基には、CDRに隣接する残基、潜在的なグリコシル化部位(N-またはO-グリコシル化部位であり得る)、レア残基、抗原と相互作用し得る残基、CDRと相互作用し得る残基、カノニカル残基、重鎖可変領域と軽鎖可変領域間の接触残基、バーニアゾーン内の残基、及び可変重鎖CDR1のクロチア定義と第1重鎖フレームワークのカバット定義間で重複する領域中の残基の1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
用語「kon」は、当業界で公知のように抗体/抗原複合体を形成するための抗体の抗原に対する会合に対するオン速度定数を指す。
【0059】
用語「k0ff」は、当業界で公知のように抗体/抗原複合体からの抗体の解離に対するオフ速度定数を指す。
【0060】
用語「標識された結合タンパク質」は、結合タンパク質の同定を与える組み込んだ標識を有するタンパク質を指す。特に、標識は検出可能なマーカー、例えば放射標識されたアミノ酸の取り込みまたはマークしたアビジン(例えば、光学または比色方法により検出され得る蛍光マーカーまたは酵素活性を含有するストレプトアビジン)により検出され得るビオチニル部分のポリペプチドへの結合である。ポリペプチドに対する標識の例には、放射性同位元素または放射性核種(例えば、3H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Hoまたは153Sm);蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド燐光体)、酵素標識(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ);化学発光マーカー;ビオチニル基;第2リポーターにより認識される前決定したポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、第2抗体に対する結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ);及び磁気物質(例えば、ガドリニウムキレート)が含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
用語「局所治療」は、本発明の結合タンパク質または該タンパク質を含む処方物を所望の神経保護または神経再生作用を誘導することが意図されている治療対象の哺乳動物の身体の意図する領域に直接投与する形態を指す。
【0062】
用語「モジュレートする」及び「調節する」は互換可能に使用されており、対象分子の活性(例えば、hRGM Aの生物活性)の変化または改変を指す。モジュレーションは対象分子のある活性または機能の大きさの増加または低下であり得る。分子の活性及び機能の例には、結合特性、酵素活性、細胞受容体活性化及びシグナル伝達が含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
相応して、用語「モジュレーター」は対象分子の活性または機能(例えば、hRGM Aの生物活性)を変化または改変させることができる化合物である。例えば、モジュレーターは、分子のある活性または機能の大きさをモジュレーターの非存在下で観察される該活性または機能の大きさと比較して増加または低下させ得る。本明細書中で使用されている用語「アゴニスト」は、対象分子と接触したとき分子のある活性または機能の大きさをアゴニストの非存在下で観察される該活性または機能の大きさと比較して増加させるモジュレーターを指す。特定の対象アゴニストには、hRGM A、或いはhRGM Aに結合するポリペプチド、核酸、炭水化物または他の分子が含まれるが、これらに限定されない。本明細書中で使用されている用語「アンタゴニスト」は、対象分子と接触したとき分子のある活性または機能の大きさをアンタゴニストの非存在下で観察される該活性または機能の大きさと比較して低下させるモジュレーターを指す。アンタゴニストの例には、タンパク質、ペプチド、抗体、ペプチボディ、炭水化物または小さい有機分子が含まれるが、これらに限定されない。ペプチボディは、例えばWO 01/83525に記載されている。
【0064】
特定の対象アンタゴニストには、hRGM Aの生物学的または免疫学的活性をブロックまたはモジュレートするものが含まれる。hRGM Aのアンタゴニストには、hRGM Aに結合するタンパク質、核酸、炭水化物または他の分子(例えば、RGM A分子と相互作用するモノクローナル抗体)が含まれるが、これらに限定されない。RGM Aとの相互作用により他のリガンド/細胞膜コンポーネントの結合及び中和が生じ、複数の疾患を防ぐために相和的または相乗的に機能させるために有用であり得ることに注目すべきである。
【0065】
用語「モノクローナル抗体」は、異なる抗体の混合物を含む「ポリクローナル抗体」調製物とは対照的に、共通の重鎖及び共通の軽鎖アミノ酸配列を共有する抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体は、ファージ、細菌、酵母またはリボソームディスプレーのような幾つかの新規テクノロジー、並びにハイブリドーマ-誘導抗体(例えば、標準のKohler and Milsteinハイブリドーマテクノロジー((1975)Nature,256:495-497)のようなハイブリドーマテクノロジーにより作成されるハイブリドーマより分泌される抗体)により例示される古典的方法により作成され得る。
【0066】
完全長抗体において、各重鎖は重鎖可変領域(本明細書中、HCVRまたはVHと略す)及び重鎖定常領域から成る。重鎖定常領域は3つのドメインCH1、CH2及びCH3から成る。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書中、LCVRまたはVLと略す)及び軽鎖定常領域から成る。軽鎖定常領域は1つのドメインCLから成る。VH及びVL領域は更に相補性決定領域(CDR)と称される高度可変性の領域に分割され得、CDRにはフレームワーク領域(FR)と称されるより保存性の領域が点在している。VH及びVLの各々は、アミノ末端からカルボキシ末端にFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順で配置されている3つのCDR及び4つのFRから構成されている。免疫グロブリン分子は任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)またはサブクラスを有し得る。
【0067】
用語「神経保護的」または「神経保護」は、ニューロン細胞、特にRNFLの細胞からなる細胞をダメージまたは変性から保護する治療(網膜中のRGC(網膜神経節細胞)軸索の変性からの保護、または上に規定したRNFL厚さの低下から測定可能な「異常な」RNFL変性の阻害を観察することにより分析可能である)を指す。
【0068】
用語「神経再生的」または「神経再生」は、ニューロン細胞、特にダメージを受けたRNFLの細胞を含む細胞の修復または再成長(例えば、視神経の拡散テンソル画像法である網膜の光干渉断層法(OCT)により分析可能である)、網膜ニューロン発芽をもたらす本発明に従う治療を指す。
【0069】
用語「中和する」は、結合タンパク質が標的タンパク質に特異的に結合するときの標的タンパク質の生物活性の中和を指す。中和するは、結合タンパク質の標的への各種様式の結合の結果であり得る。例えば、中和するは、標的分子への受容体結合に影響を与えない標的の領域での結合タンパク質の結合により生じ得る。或いは、結合タンパク質の結合により、標的に対する受容体結合の阻止が生じ得、この阻止は最終的に標的タンパク質活性を中和する。中和結合タンパク質は、そのhRGM Aへの結合によりhRGM Aの生物活性を中和させる中和抗体である。特に、中和結合タンパク質はhRGM Aに結合し、hRGM Aの生物活性を少なくとも約20%、40%、60%、80%、85%、またはそれ以上低下させる。hRGMの生物活性の中和結合タンパク質による中和は当業界で公知のhRGM A生物活性の1つ以上の指標を測定することにより評価され得る。例えば、hRGM Aを中和すると、Nteraニューロン伸長アッセイにおいて阻害が逆転する(以下の実施例3を参照されたい)。Ntera神経突起成長アッセイは神経突起伸長の阻害を検討する。阻害性RGM Aタンパク質または断片の非存在下及び伸長刺激基質ラミニンの存在下で、ニューロンNTera凝集物は伸長している神経突起の広範囲の濃密なネットワークを示す。RGM AまたはRGM A断片は神経突起伸長を阻害し、それにより神経突起の長さ及び数が減少する。機能阻止性RGM AアンタゴニストまたはMAB(例えば、mAb 5F9)は、分化したヒトNTeraニューロンの凝集物を用いる神経突起成長アッセイにおいてヒトRGM Aタンパク質の強力なfcコンジュゲートしたhRGM A軽鎖断片(アミノ酸47-168)の神経突起伸長阻害活性を中和し、これにより神経突起の長さ及び数は大きく増加する。
【0070】
用語「中和モノクローナル抗体」は、特定抗原に結合すると該抗原に対する天然リガンドの結合と競合し、阻害することができる抗体分子の調製物を指す。本発明の特定実施形態では、本発明の中和抗体は、ネオゲニン及び/またはBMP-2及び/またはBMP-4に対する結合についてRGM Aと競合し、RGM A生物活性または機能を妨げることができる。特に、本発明の中和抗体は、ネオゲニン及び/またはBMP-2及び/またはBMP-4に対する結合を妨げ、RGM A生物活性または機能を妨げるためにRGM Aと結合することができる。用語「活性」には、活性、例えば抗原に対する抗体(例えば、RGM A抗原に結合する抗hRGM A抗体)の結合特異性/親和性、及び/または抗体(例えば、実験セクションに下記されているhRGM A-ネオゲニン結合アッセイ、hRGM A-BMP-2結合アッセイまたはhRGM A-BMP-4結合アッセイで測定されるようなhRGM Aに対するその結合がhRGM Aの生物活性を阻害する抗hRGM A抗体)の中和力価が含まれる。
【0071】
RGM Aの生物活性は細胞遊走の調節として記載され得る。細胞遊走の具体例は、RGM Aタンパク質により妨害または阻害される神経突起成長である。加えて、RGMタンパク質がBMPタンパク質の活性をモジュレートすることは判明している。今までに公表されている例は、片側のBMP経路に対するRGMタンパク質の活性の相乗的強化活性及びBMP経路に対するRGMタンパク質の阻害活性を記載し、これは鉄代謝の調節、骨及び軟骨再生のために重要であり、再ミエリン形成及び再生のためにCNSにおいて重要である。
【0072】
用語「機能し得る形で連結された」は、記載されているコンポーネントが意図する様式で機能し得る関係にある並置を指す。コード配列に「機能し得る形で連結された」制御配列は、コード配列の発現が制御配列と適合し得る条件下で達成されるように連結されている。「機能し得る形で連結された」配列には、対象遺伝子に連続する発現制御配列及び対象遺伝子を制御するようにトランスでまたは少し離れて作用する発現制御配列が含まれる。本明細書中で使用されている用語「発現制御配列」は、連結されているコード配列の発現及びプロセッシングを生起するために必要なポリヌクレオチド配列を指す。発現制御配列には、適切な転写開始、終結、プロモーター及びエンハンサー配列;効率的なRNAプロセッシングシグナル、例えばスプライシング及びポリアデニル化シグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を高める配列(すなわち、コザックのコンセンサス配列);タンパク質安定性を高める配列;及び所望ならば、タンパク質分泌を高める配列が含まれる。制御配列の種類は宿主生物に依存して異なる。原核生物では、制御配列は通常プロモーター、リボソーム結合部位及び転写終結配列を含む。真核生物では、制御配列は通常プロモーター及び転写終結配列を含む。用語「制御配列」はその存在が発現及びプロセッシングのために必須であるコンポーネントを含むと意図され、その存在が有利である追加のコンポーネント、例えばリーダー配列及び融合パートナー配列をも含み得る。
【0073】
用語「ポリヌクレオチド」は、リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドのいずれかの2つ以上のヌクレオチドのポリマー形態、または各タイプのヌクレオチドの修飾形態を意味する。この用語はDNAの一本鎖及び二本鎖形態を含むが、特に二本鎖DNAである。
【0074】
用語「ポリペプチド」はアミノ酸のポリマー鎖を指す。用語「ペプチド」及び「タンパク質」は用語「ポリペプチド」と互換可能に使用されており、アミノ酸のポリマー鎖を指す。用語「ポリペプチド」は天然または人工タンパク質、タンパク質断片、及びタンパク質配列のポリペプチドアナログを包含する。ポリペプチドはモノマーまたはポリマーであり得る。
【0075】
用語「組換え宿主細胞」(または、単に「宿主細胞」)は、外来性DNAが導入されている細胞を指すと意図される。この用語は特定の被験者細胞だけでなく、前記細胞の子孫を指すと意図されると理解されるべきである。突然変異または環境的影響のためにある修飾は次世代で起こり得るので、子孫は実際親細胞と同一でないことがあるが、なお本明細書中で使用されている用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。特に、宿主細胞には生物界から選択される原核及び真核細胞が含まれる。具体的真核細胞には、原生生物、真菌、植物及び動物細胞が含まれる。最も特に、宿主細胞には原核細胞株大腸菌;哺乳動物細胞株CHO、HEK 293及びCOS;昆虫細胞株Sf9;及び真菌細胞サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)が含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)のために標準技術を使用し得る。酵素反応及び精製技術は製造業者の仕様書に従って、または当業界で通常実施されているかまたは本明細書中に記載されているように実施され得る。前記した技術及び手順は通常当業界で公知の慣用方法に従って、本明細書中に引用され、検討されている各種一般文献及びより具体的な文献に記載されているように実施され得る。例えば、参照により本明細書に組み入れるSambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))を参照されたい。
【0077】
本明細書中で使用されている用語「組換えヒト抗体」は、組換え手段により産生、発現、作成または単離されるすべてのヒト抗体、例えば宿主細胞にトランスフェクトした組換え発現ベクターを用いて発現させた抗体(以下のセクションIIに更に記載されている);組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離した抗体(Hoogenboom H.R.(1997)TIB Tech.,15:62-70;Azzazy H. and Highsmith W.E.(2002)Clin.Biochem.,35:425-445;Gavilondo J.V. and Larrick J.W.(2002)BioTechniques,29:128-145;Hoogenboom H. and Chames P.(2000)Immunology Today,21:371-378);ヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックな動物(例えば、マウス)から単離した抗体(例えば、Taylor,L.D.ら(1992)Nucl.Acids Res.,20:6287-6295;Kellermann S-A. and Green L.L.(2002)Current Opinion in Biotechnology,13:593-597;Little M.ら(2000)Immunology Today,21:364-370を参照されたい);またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む他の手段により作成、発現、作成または単離される抗体を含むと意図される。組換えヒト抗体はヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列から誘導される可変及び定常領域を有する。しかしながら、ある実施形態では、組換えヒト抗体をインビトロ変異誘発にかけ(または、ヒトIg配列に対してトランスジェニックな動物を使用するときにはインビボ体細胞変異誘発)、よって組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列はヒト生殖細胞系VH及びVL配列から誘導され、関連しているが、インビボでヒト抗体生殖細胞系レパートリー内に本来存在していないことがある配列である。
【0078】
用語「回収する」は、ポリペプチドのような化学種を単離により、例えば当業界で公知のタンパク質精製技術を用いて天然結合成分を実質的に含まないようにするプロセスを指す。
【0079】
用語「RNFL」は網膜の最内層であり、主に視神経を構成する神経節細胞ニューロン由来の軸索から構成されている。網膜層構造は最内RNFL、次いで内網状層(IPL)、外網状層(OPL)、光受容器層(PRL)及び網膜色素上皮(RPE)からなる。健康な個人の場合、RNFLは15才まで約110~120μmの厚さしかなく、多くの正常な個人では網膜の厚さが約0.017%/年ずつ低下し、60才を超えると約10~20μmに等しい厚さになる(RNFLの厚さの変化は、例えば上掲のFrohmanらに記載されているOCT方法により測定され得る)。こうした厚さの低下は「正常な」RNFL変性とも称され得る。
【0080】
「正常な」変性を超えるまたはそれ以上の変性または厚さの低下は「異常な」または「病気に関連する」RNFL変性とも称され得る。特に、厚さの異常な低下は1年あたり0.017%を超える(例えば、1年あたり0.02%を超える、0.1%を超える、1%を超える、5%を超える、10%を超える、または20%を超える)、例えば1月あたり1~10%または2~5%であり得る。
【0081】
用語「RNFL変性」は、RNFLの正常な及び特に異常な病気に関連する厚さの低下を包含する。
【0082】
用語「サンプル」は広義に使用されている。本明細書中で使用されている「生体サンプル」には、ある量の生き物または以前生きていた物由来の物質が含まれるが、これらに限定されない。生き物には、ヒト、マウス、ラット、サル、イヌ、家兎及び他の動物が含まれるが、これらに限定されない。前記物質には、血液、血清、尿、滑液、細胞、臓器、組織、骨髄、リンパ節及び脾臓が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
抗体、タンパク質またはペプチドの第2化学種との相互作用に関連して本明細書中で使用されている用語「特異的結合」または「特異的に結合する」は、相互作用が化学種上の特定構造物(例えば、以下に定義する「抗原決定基」または「エピトープ」)の存在に依存することを意味する。例えば、抗体は一般的にタンパク質よりもむしろ特定のタンパク質構造物を認識し、それに結合する。抗体がエピトープ“A”に対して特異的であるならば、標識“A”及び抗体を含む反応においてエピトープA(すなわち、遊離の非標識A)を含有する分子が存在すると抗体に結合した標識Aの量が減少する。
【0084】
用語「表面プラズモン共鳴」は、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を例えばBIAcore(登録商標)システム(Pharmacia Biosensor AB,スウェーデン国ウプサラ及びニュージャージー州ピスカタウェイ)を用いて検出することによりリアルタイム生物特異的相互作用を分析することができる光学現象を指す。更なる説明のために、Jonsson,U.ら(1993)Ann.Biol.Clin.,51:19-26;Jonsson,U.ら(1991)Biotechniques,11:620-627;Johnsson,B.ら(1995)J.Mol.Recognit.,8:125-131;及びJohnnson,B.ら(1991)Anal.Biochem.,198:268-277を参照されたい。
【0085】
用語「全身治療」は、本発明の結合タンパク質を血流を介して神経保護または神経再生作用の意図する場所に到達させるための本発明の結合タンパク質または該タンパク質を含有する処方物の治療対象の哺乳動物の身体への任意の形態の投与を指す。例えば、全身投与は本発明の結合タンパク質または該タンパク質を含有する処方物の注入または注射を包含する。
【0086】
「形質転換」は、外来性DNAを宿主細胞に入れるプロセスを指す。形質転換は当業界で公知の各種方法を用いて自然または人工条件下で起こり得る。形質転換は外来核酸配列を原核または真核宿主細胞に挿入するための公知方法に頼り得る。方法は形質転換しようとする宿主細胞に基づいて選択され、その中にはウイルス感染、エレクトロポレーション、リポフェクション及び粒子衝突が含まれるが、これらに限定されない。「形質転換された」細胞には、挿入されたDNAが自律複製プラスミドとしてまたは宿主染色体の一部として複製することができる安定的に形質転換された細胞が含まれる。挿入されたDNAまたはRNAを限られた期間一時的に発現している細胞も含まれる。
【0087】
用語「トランスジェニック生物」は、トランスジーンを含む細胞を有する生物を指し、生物(または、生物の先祖)に導入されたトランスジーンは生物では本質的に発現しないポリペプチドを発現する。「トランスジーン」は、トランスジェニック生物の1つ以上の細胞型または組織におけるコード化遺伝子産物の発現を指向すべくトランスジェニック生物を発生させる細胞のゲノムに安定的に機能し得る形で組み込まれるDNA構築物である。
【0088】
用語「RNFL変性の治療」は、RNFL変性の治療上(すなわち、急性)及び予防上治療の両方を指す、治療は「神経再生的」または「神経保護的」であり得る。治療は「局所」または「全身」治療の形態であり得る。
【0089】
用語「ベクター」は、連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。1つのタイプのベクターは、追加DNAセグメントが連結され得る環状二本鎖DNAループを指す「プラスミド」である。別のタイプのベクターは、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムに連結され得るウイルスベクターである。あるベクターは、該ベクターが導入されている宿主細胞において自律複製し得る(例えば、複製の細菌起源を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は宿主細胞に導入したときその宿主細胞のゲノムに組み込まれ得、よって宿主細胞ゲノムと共に複製される。更に、あるベクターは機能し得る形で連結された遺伝子の発現を指向させることができる。前記ベクターを本明細書では「組換え発現ベクター」(または、単に「発現ベクター」)と称する。通常、組換えDNA技術において有用な発現ベクターはしばしばプラスミドの形態を有している。プラスミドは最も一般的に使用されているベクターの形態であるので、「プラスミド」及び「ベクター」は本明細書中互換可能に使用され得る。しかしながら、本発明は、均等の機能を発揮する他の形態の発現ベクター、例えばウイルスベクター(例えば、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)を含むと意図される。
【0090】
用語「バーニアゾーン」は、Foote and Winter(参照により本明細書に組み入れる1992,J.Mol.Biol.,224:487-499)に記載されているようにCDR構造に隣接し、抗原への適合を微調節し得るフレームワーク残基の部分集合を指す。バーニアゾーン残基はCDRの下にある層を形成し、CDRの構造及び抗体の親和性に影響を与え得る。
【0091】
2.RGM A抗体の使用
RGM Aに対する中和モノクローナル抗体は、RGM Aのその受容体ネオゲニンに対する結合及びRGM Aの骨形態形成タンパク質2及び4(BMP-2、BMP-4)に対する結合を選択的に阻害する。中和モノクローナル抗体は、視神経損傷のインビボラットモデルにおいて損傷またはダメージを受けた神経線維の再成長及び再生神経線維の機能的シナプスの形成を刺激し、視長距離再生を誘導し、また病変及び再生神経線維の再ミエリン形成を強化する(PCT/EP2009/001437を参照されたい)。
【0092】
驚くことに、RGM Aに対する抗体は追加のまだ認識されていないRNFLに対する直接治療効果に関連することが観察された。特に、RNFL変性を伴うまたはRNFL変性のリスクを有する眼病を患っている患者を本明細書中に記載されている抗体分子で治療し得る。本発明は、全身投与した本発明の抗体は網膜中に局在化し、眼の患部に直接有益な効果を発揮するという驚くべき所見にも基づいている。
【0093】
よって、本発明では、RNFL変性からの保護を目的とし、または既に変性されているRNFLの再生を目的とする患者の特定群をRGM Aに結合できる抗体を用いて直接治療する方法が初めて提供される。
【0094】
別の実施形態は、複数の病状で見られるRNFL変性のRGM Aに結合できる抗体を用いる神経保護的治療に関する。
【0095】
別の実施形態は、RNFL変性の治療のためのRGM Aをブロックし、RGM Aとその受容体及び/または結合タンパク質(すなわち、ネオゲニン及びBMP-2、BMP-4)間の相互作用を妨げるモノクローナル抗体の使用に関する。
【0096】
本発明の別の実施形態は、RNFL変性の治療において使用するためのヒトRGM Aに対する結合タンパク質に関する。
【0097】
別の実施形態では、治療は治療上または予防上の神経再生的または神経保護的局所または全身治療である。
【0098】
別の実施形態では、治療の結果として、
a)網膜ニューロン発芽が観察される;及び/または
b)網膜中のRGC(網膜神経節細胞)軸索が変性から保護される。
【0099】
1つの態様によれば、本発明は、RNFL変性の治療に使用するための、両方とも表面プラズモン共鳴により測定して1×10-7M以下のKD及び1×10-2s-1以下のkoff速度定数でヒトRGM A(hRGM A)から解離する結合タンパク質を提供する。
【0100】
別の態様によれば、本発明は、RNFL変性の治療に使用するための、標準インビトロアッセイ(例えば、下記実施例3に例示されているNteraニューロン伸長アッセイ)で測定してヒトRGM Aに結合し、ヒトRGM Aの神経突起伸長阻害活性を中和する結合タンパク質、例えば上記カイネティック特徴を示す結合タンパク質に関する。
【0101】
別の実施形態は、次の追加の機能特性:
ラットRGM Aに対する結合;
ヒトRGM Cに対する結合;及び
ラットRGM Cに対する結合;
の少なくとも1つを有する上に規定した使用のための結合タンパク質にも関する。
【0102】
別の実施形態では、本明細書中に規定されている結合タンパク質はRGMのその受容体の少なくとも1つに対して結合する能力をモジュレートする。前記結合タンパク質はヒトRGM Aの受容体結合ドメインに結合する。RGM Aの場合、N及びC末端受容体結合ドメインは同定されている。本発明の結合タンパク質の特定実施形態は、N末端hRGM A断片(例えば、47-168)と受容体分子(例えば、ネオゲニン及びBMP-4)間の結合の阻害により例示されるようにRGM AのN末端受容体結合ドメインに結合する。N末端hRGM A断片は約30~約150または約30~約122アミノ酸残基の全長を有し得る。非限定例として、本明細書中に記載されているhRGM Aの断片0(N末端残基47-168に対応する)またはより短い受容体結合断片を挙げ得る。
【0103】
別の実施形態では、前記結合タンパク質は、次の相互作用:
ヒトRGM AのヒトBMP-4に対する結合;
hRGM Aのヒトネオゲニンに対する結合;
hRGM Cのヒトネオゲニンに対する結合;
ヒトRGM AのヒトBMP-2に対する結合;
の少なくとも1つをモジュレートまたは阻害する。
【0104】
特定実施形態によれば、本明細書中に規定されている結合タンパクはヒト化抗体である。
【0105】
上記した結合タンパク質は抗原結合ドメインを有し得、前記結合タンパク質はRGM分子のエピトープに結合することができ、前記抗原結合ドメインは
GTTPDY(配列番号59);
FQATHDPLT(配列番号62);
ARRNEYYGSSFFDY(配列番号65);
LQGYIPPRT(配列番号68);及び
前記配列の1つに対して少なくとも50%の配列同一性を有する修飾CDRアミノ酸配列;
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1つのCDRを含む。別の実施形態では、本発明は抗原結合ドメインを含む結合タンパク質に関し、前記結合タンパク質はRGM分子のエピトープに結合することができ、前記抗原結合ドメインは
GTTPDY(配列番号59);
FQATHDPLT(配列番号62);
ARRNEYYGSSFFDY(配列番号65);
LQGYIPPRT(配列番号68);及び
前記配列の1つに対して少なくとも50%の配列同一性(例えば、少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、95%の同一性)を有する修飾CDRアミノ酸配列;
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1つのCDRを含む。
【0106】
例えば、結合タンパク質は前記CDRの2つ(例えば、配列番号59と62、または配列番号65と68)を含み得、前記CDRの少なくとも1つは前記配列の1つに対して少なくとも50%の配列同一性(例えば、少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、95%の同一性)を有し、修飾されていてもよい。
【0107】
結合タンパク質は、更に配列番号57、58、60、61、63、64、66、67、及び前記配列の1つに対して少なくとも50%の配列同一性(例えば、少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、95%の同一性)を有する修飾CDRアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1つのCDRを含む。
【0108】
別の実施形態では、少なくとも1つのCDRは、
【0109】
【表5】
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0110】
別の実施形態では、結合タンパク質は、
【0111】
【表6】
から構成される可変ドメインCDR組から選択される少なくとも3つのCDR、或いは前記した3つのCDRの少なくとも1つが親配列に対して少なくとも50%の配列同一性(例えば、少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、95%の同一性)を有する修飾CDRアミノ酸配列である可変ドメイン組を含む。
【0112】
上記修飾の各々は、1つまたは複数のアミノ酸付加、欠失、または特に置換、或いはその組合せにより生じ得る。
【0113】
別の実施形態では、結合タンパク質は少なくとも2つの可変ドメインCDR組を含む。
【0114】
前記した少なくとも2つの可変ドメインCDR組は
VH 5F9組とVL 5F9組;及び
VH 8D1組とVL 8D1組;
からなる群から選択される。
【0115】
本発明の別の実施形態に従って使用される結合タンパク質は更にヒトアクセプターフレームワークを含む。
【0116】
ヒトアクセプターフレームワークは、配列番号15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32及び33からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含み得る。
【0117】
本発明の結合タンパク質は、以下の組:
(1)各々がJH3(配列番号18)、JH4(配列番号19)、JH6(配列番号20)から選択される更なるフレームワーク配列と組み合わされている
VH3-48組(配列番号15、16及び17)
VH3-33組(配列番号21、22及び23)
VH3-23組(配列番号24、25及び26);
または
(2)各々がJK2(配列番号2)から選択される更なるフレームワーク配列と組み合わされている
A18組(配列番号27、28及び29)
A17組(配列番号31、32及び33);
からなる群から選択される少なくとも1組のフレームワークを含み得る。
【0118】
上に規定されている結合タンパク質は、配列番号35、36、37、38、39、40、41、42及び43から選択される少なくとも1つのCDRグラフト化重鎖可変ドメイン及び/または配列番号44、45及び46から選択される少なくとも1つのCDRグラフト化軽鎖可変ドメインを含む。
【0119】
本発明の別の実施形態に従って使用される結合タンパク質は2つの可変ドメインの組合せを含み、前記した2つの可変ドメインは
配列番号35と44、36と44、37と44、38と44、39と44、40と44、41と44、42と44、43と44;
配列番号35と45、36と45、37と45、38と45、39と45、40と45、41と45、42と45、43と45;
配列番号35と46、36と46、37と46、38と46、39と46、40と46、41と46、42と46、43と46;
から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0120】
本発明の別の実施形態では、本発明に従って使用される結合タンパク質のヒトアクセプターフレームワークはキー残基での少なくとも1つのフレームワーク領域アミノ酸置換を含み、前記キー残基は
CDRに隣接する残基;
グリコシル化部位残基;
レア残基;
RGMエピトープと相互作用し得る残基;
CDRと相互作用し得る残基;
標準的な残基;
重鎖可変領域と軽鎖可変領域間の接触残基;
バーニアゾーン内の残基;
パラグルタメートを形成することができるN末端残基;及び
コチア定義されている可変重鎖CDR1とカバット定義されている第1重鎖フレームワーク間で重複している領域中の残基;
からなる群から選択される。
キー残基は、
(重鎖配列位置):1、5、37、48、49、88、98
(軽鎖配列位置):2、4、41、51
からなる群から選択される。
【0121】
特定実施形態では、本発明の別の実施形態に従って使用される結合タンパク質はコンセンサスヒト可変ドメインであり、またはそれを含む。
【0122】
本発明の別の実施形態に従って使用される結合タンパク質の別の実施形態によれば、ヒトアクセプターフレームワークは少なくとも1つのフレームワーク領域アミノ酸置換を含み、フレームワークのアミノ酸配列はヒトアクセプターフレームワークの配列と少なくとも65%(例えば、少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98または99%)同一であり、ヒトアクセプターフレームワークと同一の少なくとも70アミノ酸残基(例えば、少なくとも75、80または85残基)を含む。
【0123】
特定実施形態によれば、本発明の別の実施形態に従って使用される結合タンパク質は、配列番号47、48、49、50(VHドメイン)からなる群から選択されるアミノ酸配列及び/または配列番号51、52、53及び54(VLドメイン)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのフレームワーク突然変異した可変ドメインを含む。
【0124】
特に、結合タンパク質は2つの任意にフレームワーク突然変異した可変ドメインを含み、前記した2つの可変ドメインは
配列番号47と44、47と45、47と46、47と51、47と52、47と53、47と54;
配列番号48と44、48と45、48と46、48と51、48と52、48と53、48と54;
配列番号49と44、49と45、49と46、49と51、49と52、49と53、49と54;
配列番号50と44、50と45、50と46、50と51、50と52、50と53、50と54;
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0125】
本発明の別の実施形態に従って使用される本明細書中に記載されている結合タンパク質はRGM分子から選択される少なくとも1つの標的に結合することができる。結合タンパク質はヒトRGM A及び場合によりヒトを起源とするまたはカニクイザル、ラット、ひよこ、カエル及び魚類を起源とする少なくとも1つの更なるRGM分子に結合することができる。例えば、結合タンパク質は追加的にラットRGM A、ヒトRGM C及び/またはラットRGM Cに結合し得る。
【0126】
本発明の別の実施形態に従って使用される結合タンパク質は、上に規定したRGM分子から選択される標的の生物学的機能をモジュレートすることができ、特に中和または阻害することができる。
【0127】
特に、本発明の別の実施形態に従って使用される結合タンパク質は、RGMが少なくとも1つのその受容体(例えば、ネオゲニン、及びBMP-2やBMP-4のようなBMP)に結合する能力をモジュレートし、特に阻害する。例えば、結合タンパク質は、次の相互作用:
ヒトRGM AのヒトBMP-4に対する結合;
hRGM Aのヒトネオゲニンに対する結合;
hRGM Cのヒトネオゲニンに対する結合;
ヒトRGM AのヒトBMP-2に対する結合;
の少なくとも1つをモジュレートし、特に減衰し、とりわけ阻害する。
【0128】
本明細書中に開示されている機能的特徴の各種組合せを有し、従って異なる機能的プロフィールを示す結合タンパクも本発明の範囲内である。前記プロフィールの非限定例を以下にリストする。
【0129】
【0130】
例えば、プロフィール1は本発明により提供される抗体5F9及び本明細書中に記載されているその誘導体により満たされる。
【0131】
例えば、プロフィール2は本発明により提供される抗体8D1及び本明細書中に記載されているその誘導体により満たされる。
【0132】
本発明の別の実施形態に従って使用される結合タンパク質は、RGM、特にヒト、カニクイザル、ラット、ひよこ、カエル及び魚類から選択されるRGM Aの少なくとも1つの生物学的活性を阻害することができる。
【0133】
本発明の別の実施形態に従って使用される結合タンパク質は、次のカイネティック特徴:
(a)標的に対して、表面プラズモン共鳴により測定して少なくとも約102M-1s-1、少なくとも約103M-1s-1、少なくとも約104M-1s-1、少なくとも約105M-1s-1、少なくとも約106M-1s-1、及び少なくとも約107M-1s-1からなる群から選択されるオン速度定数(kon);
(b)標的に対して、表面プラズモン共鳴により測定して多くとも約10-2s-1、多くとも約10-3s-1、多くとも約10-4s-1、多くとも約10-5s-1、及び多くとも約10-6s-1からなる群から選択されるオフ速度定数(koff);または
(c)標的に対して多くとも約10-7M、多くとも約10-8M、多くとも約10-9M、多くとも約10-10M、多くとも約10-11M、多くとも約10-12M、及び多くとも10-13Mからなる群から選択される解離定数(KD);
の1つ以上を有している。
【0134】
更なる態様によれば、本発明は上記した結合タンパク質を含む抗体構築物を使用し、前記抗体構築物は更にリンカーポリペプチドまたは免疫グロブリン定常ドメインを含む。
【0135】
抗体構築物または結合タンパク質は、免疫グロブリン分子、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、ヒト化抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、ダイアボディ、多重特異性抗体、二重特異性抗体、二重可変ドメイン免疫グロブリン及び双特異性抗体からなる群から選択され得る。
【0136】
本発明の別の実施形態に従って使用される抗体構築物では、結合タンパク質は、
ヒトIgM定常ドメイン;
ヒトIgG1定常ドメイン;
ヒトIgG2定常ドメイン;
ヒトIgG3定常ドメイン;
ヒトIgG4定常ドメイン;
ヒトIgE定常ドメイン;
ヒトIgD定常ドメイン;
ヒトIgAl定常ドメイン;
ヒトIgA2定常ドメイン;
ヒトIgY定常ドメイン;及び
対応する突然変異定常ドメイン;
からなる群から選択される重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む。
【0137】
本発明の別の実施形態に従って使用される抗体構築物は、配列番号11、12、13及び14からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する免疫グロブリン定常ドメインを含む。
【0138】
別の態様によれば、本発明は本明細書中に記載されている抗体構築物を含む抗体コンジュゲートを使用し、前記抗体コンジュゲートは更に免疫接着分子、イメージング剤、治療薬及び細胞傷害剤からなる群から選択される物質を含み、前記物質は結合タンパク質に対してコンジュゲートされており、例えば共有結合されている。
【0139】
例えば、前記物質は放射性標識、酵素、蛍光標識、発光標識、生物発光標識、磁気標識及びビオチンからなる群から選択される。特に、イメージング剤は3H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho及び153Smからなる群から選択される放射性標識である。
【0140】
例えば、前記物質は代謝拮抗物質、アルキル化剤、抗生物質、増殖因子、サイトカイン、抗血管新生薬、抗有糸分裂剤、アントラサイクリン、毒素及びアポトーシス剤からなる群から選択される治療薬または細胞傷害薬である。
【0141】
別の実施形態によれば、本発明の別の実施形態に従って使用される結合タンパク質はヒトグリコシル化パターンを有している。
【0142】
更に、本発明の別の実施形態に従って使用される結合タンパク質、抗体構築物及び抗体コンジュゲートは結晶として(結晶質形態で)、特に生物活性を保持している結晶として(結晶質形態で)存在し得る。前記結晶は担体を含まない医薬徐放性結晶である。結晶形態のために、結合タンパク質、抗体または抗体コンジュゲートは対応する可溶性相当物に比して長いインビボ半減期を有する。
【0143】
別の態様で、本発明は、本明細書中に記載されている結合タンパク質アミノ酸配列、抗体構築物アミノ酸配列及び抗体コンジュゲートアミノ酸配列をエンコードする単離核酸を提供する。
【0144】
本発明の別の実施形態は、本明細書中に記載されている単離核酸を含むベクターにも関する。特に、ベクターはpcDNA、pTT、pTT3、pEFBOS、pBV、pJV及びpBJからなる群から選択される。
【0145】
本発明の別の実施形態は、前記ベクターを含む宿主細胞にも関する。特に、前記宿主細胞は原核細胞(例えば、大腸菌)であり、または真核細胞であり、原生生物、動物細胞、植物細胞及び真菌細胞からなる群から選択され得る。特に、真核細胞は哺乳動物細胞、鳥類細胞及び昆虫細胞からなる群から選択される動物細胞である。宿主細胞はHEK細胞、CHO細胞、COS細胞及び酵母細胞から選択される。酵母細胞はサッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)であり得、昆虫細胞はSf9細胞であり得る。
【0146】
本発明の別の実施形態は、本明細書中に規定されている宿主細胞をRGMに結合することができる結合タンパク質を産生するのに十分な条件下で培養培地中で培養することを含むRGMに結合することができるタンパク質の産生方法をも提供する。
【0147】
本発明の別の実施形態は、前記方法により産生されるタンパク質にも関する。
【0148】
別の実施形態は、
(a)本明細書中に規定されている結晶化産物タンパク質及び成分を含む処方物;及び
(b)少なくとも1つのポリマー担体;
を含む結合タンパク質を放出するための組成物を提供する。
【0149】
前記ポリマー担体は、ポリ(アクリル酸)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(デプシペプチド)、ポリ(エステル)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)すなわちPLGA、ポリ(b-ヒドロキシブチレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ホリ(エチレングリコール)、ポリ(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ[(有機)ホスファゼン]、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸-アルキルビニルエーテルコポリマー、プルーロニックポリオール、アルブミン、アルギネート、セルロース及びセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖、グリカミノグリカン、硫酸化多糖、そのブレンド及びコポリマーからなる群の1つ以上から選択されるポリマーである。
【0150】
前記成分は、アルブミン、スクロース、トレハロース、ラクチトール、ゼラチン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、メトキシポリエチレングリコール及びポリエチレングリコールからなる群から選択され得る。
【0151】
別の態様によれば、本発明は、哺乳動物に対して有効量の本明細書中に規定されている組成物を投与するステップを含む哺乳動物の治療方法を提供する。
【0152】
別の態様によれば、本発明は、産物(特に、本明細書中に上記されている結合タンパク質、構築物またはコンジュゲート)及び医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物を提供する。
【0153】
医薬的に許容され得る担体は、結合タンパク質の吸収または分散を向上させるために有用なアジュバントとして機能し得る。
【0154】
例えば、アジュバントはヒアルロニダーゼである。
【0155】
別の実施形態によれば、医薬組成物は更に、RGM活性が有害な障害を治療するための少なくとも1つの追加治療薬を含む。例えば、前記物質は、治療薬、イメージング剤、細胞傷害薬、血管形成インヒビター、キナーゼ阻害剤、共刺激分子ブロッカー、接着分子ブロッカー、抗サイトカイン抗体またはその機能性断片、メトトレキセート、シクロスポリン、ラパマイシン、FK506、検出可能標識またはレポーター、TNFアンタゴニスト、抗リウマチ薬、筋弛緩薬、麻薬、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋ブロッカー、抗微生物剤、抗乾癬薬、コルチコステロイド、タンパク同化ステロイド、エリスロポエチン、免疫化、免疫グロブリン、免疫抑制薬、成長ホルモン、ホルモン補充薬、放射線医薬品、抗うつ薬、抗精神病薬、興奮薬、喘息薬物療法、β-アゴニスト、吸入ステロイド、エピネフリンまたはアナログ、サイトカイン及びサイトカインアンタゴニストからなる群から選択される。
【0156】
本発明は、本発明の産物(特に、本明細書中に上記されている結合タンパク質、構築物またはコンジュゲート)を単独でまたは他の治療薬と一緒に投与するステップを含むRNFL変性を伴う障害のために被験者を治療するための方法にも関する。
【0157】
前記障害は、特に糖尿病性網膜症、虚血性視神経症、X染色体連鎖性網膜分離症、薬物誘発性視神経症、網膜ジストロフィー、加齢黄斑変性、視神経乳頭ドルーゼンを特徴とする眼病、光受容器変性の遺伝的決定因子を特徴とする眼病、常染色体劣性錐体-桿性ジストロフィー及び視神経症を有するミトコンドリア疾患からなる群から選択される疾患からなる。
【0158】
本明細書中に開示されている配列番号34の教示または参照は配列番号9に対しても同様に当てはまる。
【0159】
3.hRGM Aに結合するポリペプチドの使用
本発明の別の実施形態は、RGM Aタンパク質の少なくとも1つのエピトープに対して特異的に結合する単離タンパク質またはポリペプチドの上に同定した使用を含む。RGM Aタンパク質の少なくとも1つのエピトープに対して特異的に結合する単離タンパク質またはポリペプチドは、RGM Aのその受容体ネオゲニン及び/または骨形態形成タンパク質2及び4(BMP-2、BMP-4)、特にRGM Aまたはその抗原結合部分もしくは断片に結合する抗体に対する結合を阻害し得る。
【0160】
本発明の抗RGM A抗体は、例えば当業界で公知であるかまたは以下に記載されている幾つかのインビトロ及びインビボアッセイの1つにより評価してRGM A活性を低下または中和する高い能力を示す。
【0161】
本発明は、特にRGM Aのその受容体ネオゲニン及び骨形態形成タンパク質2及び4(BMP-2、BMP-4)に対する結合を選択的に妨げるRGM Aに対する中和モノクローナル抗体、並びにRGM Aのその補助受容体骨形態形成タンパク質2及び4(BMP-2、BMP-4)に対する結合を選択的に妨げるRGM Aに対する中和モノクローナル抗体の作成を使用する。
【0162】
特に、本発明のモノクローナル中和抗体はヒト抗体またはヒト化抗体である。用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に対応するまたはヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列から誘導される可変及び定常領域を有する抗体を指す(例えば、Kabatら.Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication,No.91-3242,1991を参照されたい)。しかしながら、本発明のヒト抗体は、例えばCDR、特にCDR3中にヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によりエンコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダムまたは部位特異的変異誘発により、またはインビボで体細胞変異により導入される突然変異)を含むことがある。
【0163】
各種実施形態では、抗体は組換え抗体またはモノクローナル抗体である。本発明の中和抗体の例を本明細書中ではmAb 5F9及びmAb 8Dl及びその機能的抗体断片と称し、低い解離カイネティック及び高い中和能力でのRGM Aに対する高い親和性結合のようなmAb5 F9及びmAb 8Dlと均等な特性を有する他の抗体及び機能性抗体断片が本発明の一部として意図される。本発明の抗RGM A抗体の免疫原性RGMポリペプチドまたはその断片に対する結合親和性及び解離速度は当業界で公知の方法により測定され得る。例えば、結合親和性は競合LISA、c RIA、BIAcoreまたはKinExAテクノロジーにより測定され得る。解離速度もBIAcoreまたはKinExAテクノロジーにより測定され得る。結合親和性及び解離速度は、例えばBIAcoreを用いる表面プラズモン共鳴により測定される。
【0164】
本発明のモノクローナル抗体の1つのmAb 5F9抗体は、配列番号9または34の配列を含む重鎖可変領域(VH領域)及び配列番号10の配列を含む軽鎖可変領域(VL領域)を含む配列と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有している。
【0165】
本発明のRGM Aと相互作用する単離モノクローナル抗体は抗体またはその抗原結合部分が1つ以上の炭水化物残基を含むグリコシル化結合タンパク質であり得るとも意図される。新生インビボタンパク質産生は翻訳後修飾として公知の更なるプロセッシングを受け得る。特に、糖(グリコシル)残基をグリコシル化として公知のプロセスで酵素的に付加し得る。生じた共有結合したオリゴ糖側鎖を有するタンパク質はグリコシル化タンパク質または糖タンパク質として公知である。タンパク質グリコシル化は対象タンパク質のアミノ酸配列及びタンパク質を発現させる宿主細胞に依存する。生物が異なると、異なるグリコシル化酵素(例えば、グリコシルトランスフェラーゼ及びグリコシダーゼ)が生じ得、利用し得る基質(クレオチド糖)も異なり得る。これらの要因のために、タンパク質グリコシル化パターン及びグリコシル残基の組成は特定タンパク質を発現させる宿主細胞に応じて異なり得る。本発明において有用なグリコシル残基には、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、n-アセチルグルコサミン及びシアル酸が含まれ得るが、これらに限定されない。特に、グリコシル化結合タンパク質は、グリコシル化パターンがヒトであるようにグリコシル残基を含む。
【0166】
本発明に従って使用される抗体は重鎖定常領域、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM、IgYまたはIgD定常領域を含む。更に、抗体はκ軽鎖定常領域またはλ軽鎖定常領域のいずれかの軽鎖定常領域を含み得る。抗体はκ軽鎖定常領域を含む。或いは、抗体部分は、例えばFab断片または一本鎖Fv断片であり得る。抗体エフェクター機能を改変するためのFc部分中のアミノ酸残基の置換は当業界で公知である(Winterらの米国特許Nos.5,648,260及び5,624,821)。抗体のFc部分は幾つかの重要なエフェクター機能、例えば抗体及び抗原-抗体複合体のサイトカイン誘導、ADCC、食作用、補体依存性細胞傷害性(CDC)及び半減期/クリアランス速度を媒介する。幾つかの場合には、これらのエフェクター機能は治療用抗体にとって望ましいが、他の場合には治療目的に応じて不必要であり有害なことさえあり得る。あるヒトIgGイソタイプ、特にIgG1及びIgG3はそれぞれFcγ Rs及び補体Clqに対する結合を介してADCC及びCDCを媒介する。新生Fc受容体(FcRn)は抗体の循環半減期を決定する重要なコンポーネントである。更に別の実施形態では、抗体のエフェクター機能が改変されるように抗体の定常領域(例えば、抗体のFc領域)中の少なくとも1つのアミノ酸残基を置換する。
【0167】
3.抗hRGM A抗体の作成
3.1 概説
本発明の抗体は、適当な宿主(例えば、ヒトを含めた脊椎動物、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、爬虫類、魚類、両生類、並びに鳥類、爬虫類及び魚類の卵)の免疫化により作成され得る。本発明の抗体を作成するためには、宿主を本発明の免疫原性RGMポリペプチドまたはその断片で免疫化する。本明細書中、用語「免疫化」は、免疫レパートリーが天然の遺伝子改変されていない生物、または人工ヒト免疫レパートリーを提示するために修飾されている物を含めたトランスジェニック生物中に存在しているかどうか抗原を免疫レパートリーに提示するプロセスを指す。同様に、「免疫原性調製剤」はアジュバントまたは抗原の免疫原性を強化する他の添加物を含有している抗原の処方物である。
【0168】
動物の免疫化は当業界で公知の任意の方法により実施され得る。例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor Press,1990を参照されたい。非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ及びウマ)を免疫化するための方法は当業界で公知である。例えば、Harlow and Lane及び米国特許No.5,994,619を参照されたい。特定実施形態では、RGM A抗原を免疫応答を刺激するためにアジュバントと一緒に投与する。前記アジュバントには、完全または不完全フロイントアジュバント、RIBI(ムラミルジペプチド)またはISCOM(免疫刺激複合体)が含まれる。アジュバントはポリペプチドを局所デポジット中で封鎖することにより急速分散から保護し得、またはアジュバントはマクロファージ及び免疫系の他のコンポーネントに対して化学走性のファクターを分泌するように宿主を刺激する物質を含み得る。特に、ポリペプチドを投与するならば、免疫化スケジュールは数週間にわたって2回以上のポリペプチドの投与を含む。
【0169】
動物宿主を無傷または破壊されている細胞の細胞膜に関連する抗原で免疫化し、本発明の免疫原性ポリペプチドに結合させることにより本発明の抗体を同定することが考えられる。動物宿主を抗原で免疫化した後、抗体はその動物から得られ得る。動物から血を抜いたり殺したりすることにより抗体含有血清を動物から得る。血清を動物から入手したまま使用しても、免疫グロブリン画分を血清から入手しても、または抗体を血清から精製してもよい。こうして得た血清または免疫グロブリンはポリクローナルであり、よって特性の不均質アレーを有している。
【0170】
3.2 ハイブリドーマテクノロジーを用いる抗RGM Aモノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え体及びファージディスプレイテクノロジー、またはその組合せの使用を含めた当業界で公知の各種技術を用いて作成され得る。例えば、モノクローナル抗体は、当業界で公知であり、例えばHarlowら,Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,第2版,1988);Hammerlingら,Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas,563-681(Elsevier,N.Y.,1981)(これらの文献の全文を参照により組み入れる)に教示されているものを含めたハイブリドーマ技術を用いて作成され得る。本明細書中で使用されている用語「モノクローナル抗体」はハイブリドーマテクノロジーにより産生される抗体に限定されない。用語「モノクローナル抗体」は、産生する方法ではなく、真核、原核またはファージクローンを含めた単クローンから誘導される抗体を指す。
【0171】
ハイブリドーマテクノロジーを用いて特定抗体を産生し、スクリーニングするための方法はルーチンであり、当業界で公知である。1つの実施形態では、本発明は、本発明の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養することを含む1つ以上のモノクローナル抗体を作成する方法およびその方法により産生される抗体を提供し、前記ハイブリドーマは本発明の抗原で免疫化したマウスから単離した脾細胞をミエローマ細胞と融合した後、融合により生じたハイブリドーマを本発明のポリペプチドに結合できる抗体を分泌するハイブリドーマクローンについてスクリーニングすることにより作成される。簡単に説明すると、マウスをRGM A抗原で免疫化し得る。別の実施形態では、RGM A抗原を免疫応答を刺激するためにアジュバントと一緒に投与する。前記アジュバントには、完全または不完全フロイントアジュバント、RIBI(ムラミルジペプチド)またはISCOM(免疫刺激複合体)が含まれる。アジュバントはポリペプチドを局所デポジット中に封鎖することによりポリペプチドを急速分散から保護し得、またアジュバントはマクロファージ及び免疫系の他のコンポーネントに対して化学走性であるファクターを分泌するように宿主を刺激する物質を含み得る。ポリペプチドを投与する場合、免疫スケジュールは数週間にわたってポリペプチドの2回以上の投与を含む。
【0172】
免疫応答が検出されたら、例えば抗原RGM Aに対して特異的な抗体がマウス血清中で検出されたなら、マウス脾臓を採取し、脾細胞を単離する。次いで、脾細胞を適当なミエローマ細胞、例えばATCCから入手し得る細胞株SP20由来の細胞と公知技術により融合させる。ハイブリドーマを選択し、限界希釈によりクローン化する。次いで、ハイブリドーマクローンを当業界で公知の方法により、RGM Aに結合できる抗体を分泌する細胞についてアッセイする。通常高レベルの抗体を含有している腹水は、マウスをポジティブハイブリドーマクローンで免疫化することにより作成され得る。
【0173】
別の実施形態では、抗体を産生する不死化ハイブリドーマを免疫化した動物から作成し得る。免疫化後、動物を殺し、脾臓B細胞を当業界で公知のように不死化ミエローマ細胞に融合させる。例えば、上掲のHarlow and Laneを参照されたい。別の実施形態では、ミエローマ細胞は免疫グロブリンポリペプチド(非分泌性細胞株)を分泌しない。融合及び抗体選択後、ハイブリドーマをRGM Aまたはその一部、或いはRGM Aを発現する細胞を用いてスクリーニングする。別の実施形態では、初期スクリーニングを酵素免疫測定法(ELISA)またはラジオイムノアッセイ(RIA)を用いて実施する。ELISAスクリーニングの例は、参照により本明細書に組み入れるWO 00/37504に記載されている。
【0174】
抗RGM A抗体産生ハイブリドーマを選択し、クローン化し、更にロバストなハイブリドーマ増殖、高い抗体産生、及び以下に更に検討する所望の抗体特性を含めた所望特性についてスクリーニングする。ハイブリドーマを培養し、インビボで同一遺伝子型動物で、免疫系を欠く動物(例えば、ヌードマウス)で、またはインビトロの細胞培養において増殖させ得る。ハイブリドーマを選択し、クローン化し、増殖させる方法は当業者に公知である。
【0175】
特定実施形態では、ハイブリドーマは上記したマウスハイブリドーマである。別の特定実施形態では、ハイブリドーマは非ヒト非マウス種(例えば、ラット、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシまたはウマ)において産生される。別の実施形態では、ハイブリドーマは、ヒト非分泌性ミエローマが抗RGM A抗体を発現するヒト細胞と融合されているヒトハイブリドーマである。
【0176】
特定エピトープを認識する抗体断片は公知技術により作成され得る。例えば、本発明のFab及びF(ab’)2断片は、酵素、例えばパパイン(Fab断片を産生するために)またはペプシン(F(ab’)2断片を産生するために)を用いて免疫グロブリン分子をタンパク質分解開裂にかけることにより作成され得る。F(ab’)2断片は可変領域、軽鎖定常領域及び重鎖のCHIドメインを含んでいる。
【0177】
3.3 SLAMを用いる抗RGM Aモノクローナル抗体
本発明の別の態様では、組換え抗体は単一単離リンパ球から米国特許No.5,627,052、PCT公開WO 92/02551及びBabcock,J.S.ら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:7843-7848に記載されている当業界で選択リンパ球抗体方法(SLAM)と称されている手順を用いて作成される。この方法では、対象抗体を分泌する単細胞、例えば上記した免疫化動物から誘導されるリンパ球を抗原RGM A、RGM Aのサブユニットまたはその断片をリンカー(例えば、ビオチン)を用いてヒツジ赤血球に結合させ、RGM Aに対して特異性を有する抗体を分泌する単細胞を同定するために使用する抗原特異的溶血プラークアッセイを用いてスクリーニングする。対象の抗体分泌細胞を同定した後、重鎖及び軽鎖可変領域cDNAを逆転写酵素-PCRにより細胞からレスキューし、次いでこれらの可変領域を哺乳動物宿主細胞(例えば、COSまたはCHO細胞)において適切な免疫グロブリン定常領域(例えば、ヒト定常領域)に関連して発現させ得る。次いで、インビボ選択リンパ球から誘導される増幅免疫グロブリン配列をトランスフェクトした宿主細胞に、例えばRGM Aに対する抗体を発現する細胞を単離するためにトランスフェクトした細胞をパンニングすることによりインビトロで更なる分析及び選択を施し得る。増幅した免疫グロブリン配列は更に例えばPCT公開WO 97/29131及びPCT公開WO 00/56772に記載されているようなインビトロ親和性成熟方法によりインビトロで操作され得る。
【0178】
3.4 トランスジェニック動物を用いる抗RGM Aモノクローナル抗体
本発明の別の実施形態では、抗体はヒト免疫グロブリン遺伝子座の一部または全部を含む非ヒト動物をRGM A抗原で免疫化することにより産生される。特定実施形態では、非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の大きい断片を含み、マウス抗体産生に欠ける工学操作したマウス系統であるXENOMOUSEトランスジェニックマウスである。例えば、Greenら,Nature Genetics,7:13-21(1994)、並びに米国特許5,916,771、5,939,598、5,985,615、5,998,209、6,075,181、6,091,001、6,114,598及び6,130,364を参照されたい。また、1991年7月25日に公開されたWO 91/10741、1994年2月3日に公開されたWO 94/02602、いずれも1996年10月31日に公開されたWO 96/34096及びWO 96/33735、1998年4月23日に公開されたWO 98/16654、1998年6月11日に公開されたWO 98/24893、1998年11月12日に公開されたWO 98/50433、1999年9月10日に公開されたWO 99/45031、1999年10月21日に公開されたWO 99/53049、2000年2月24に公開されたWO 00/09560及び2000年6月29日に公開されたWO 00/037504も参照されたい。XENOMOUSEトランスジェニックマウスは完全ヒト抗体の成体様ヒトレパートリーを産生し、抗原特異的ヒトMabを生ずる。XENOMOUSEトランスジェニックマウスはヒト重鎖遺伝子座及びx軽鎖遺伝子座のメガ塩基の大きさの生殖細胞系コンフィギュレーションYAC断片の導入によりヒト抗体レパートリーの約80%を含んでいる。その開示内容を参照により本明細書に組み入れるMendezら,Nature Genetics,15:146-156(1997);Green and Jakobovits,J.Exp.Med.,188:483-495(1998)を参照されたい。
【0179】
3.5 組換え抗体ライブラリーを用いる抗RGM Aモノクローナル抗体
本発明の抗体を産生するために、抗体ライブラリーをスクリーニングして、所望の結合特異性を有する抗体を同定するインビトロ方法も使用され得る。組換え抗体ライブラリーのスクリーニング方法は当業界で公知であり、例えばその各々の内容を参照により本明細書に組み入れるLadnerら,米国特許No.5,223,409;Kangら,PCT公開WO 92/18619;Dowerら,PCT公開WO 91/17271;Winterら,PCT公開WO 92/20791;Marklandら,PCT公開WO 92/15679;Breitlingら,PCT公開WO 93/01288;McCaffertyら,PCT公開WO 92/01047;Garrardら,PCT公開WO 92/09690;Fuchsら(1991)Bio/Technology,9:1370-1372;Hayら(1992)Hum.Antibod.Hybridomas,3:81-85;Huseら(1989)Science,246:1275-1281;McCaffertyら,Nature(1990)348:552-554;Griffithsら(1993)EMBO J.,12:725-734;Hawkinsら(1992)J.Mol.Biol.,226:889-896;Clacksonら(1991)Nature,352:624-628;Gramら(1992)PNAS,89:3576-3580;Garradら(1991)Bio/Technology,9:1373-1377;Hoogenboomら(1991)Nuc.Acid Res.,19:4133-4137;並びにBarbasら(1991)PNAS,88:7978-7982、米国特許出願公開20030186374及びPCT公開WO 97/29131に記載されている方法が含まれる。
【0180】
組換え抗体ライブラリーはRGM AまたはRGM Aの一部で免疫化した被験者由来であり得る。或いは、組換え抗体ライブラリーはナイーブ被験者(すなわち、RGM Aで免疫化されていない被験者)由来であり、例えばヒトRGM Aで免疫化されていないヒト被験者由来のヒト抗体ライブラリーである。本発明の抗体は、組換え抗体ライブラリーをヒトRGM Aを含むペプチドを用いてスクリーニングして、RGM Aを認識する抗体を選択することにより選択される。前記スクリーニング及び選択を実施するための方法は、前のパラグラフ中の文献に記載されているように当業界で公知である。ヒトRGM Aから特定のkoff速度定数で解離する抗体のようなhRGM Aに対して特定の結合親和性を有する本発明の抗体を選択するために、所望のkoff速度定数を有する抗体を選択するために表面プラズモン共鳴の当業界で公知の方法を使用し得る。特定のIC50を有している抗体のようなhRGM Aに対して特定の中和活性を有する本発明の抗体を選択するために、hRGM A活性の阻害を評価するための当業界で公知の標準方法を使用し得る。
【0181】
1つの態様で、本発明は、ヒトRGM Aに結合する単離抗体またはその抗原結合部分に関する。特に、抗体は中和抗体である。各種実施形態では、抗体は組換え抗体またはモノクローナル抗体である。
【0182】
例えば、本発明の抗体は当業界で公知の各種ファージディスプレイ方法を用いても作成され得る。ファージディスプレイ方法では、機能性抗体ドメインをエンコードするポリヌクレオチド配列を有するファージ粒子の表面上に機能性抗体ドメインを提示する。特に、前記ファージはレパートリーまたはコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒトまたはマウス)から発現させた抗原結合ドメインを提示させるために利用され得る。対象抗原に結合する抗原結合ドメインを発現するファージは抗原を用いて、例えば標識抗原、または固体表面またはビーズに結合または捕捉させた抗原を用いて選択または同定され得る。これらの方法で使用されるファージは、典型的にはファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに対して組換え融合させたFab、Fvまたはジスルフィド安定化Fv抗体ドメインを有するファージから発現させたfd及びMl3結合ドメインを含めた繊維状ファージである。本発明の抗体を作成するために使用され得るファージディスプレイ方法の例には、各々の全文を参照により本明細書に組み入れるBrinkmanら,J.Immunol.Methods,182:41-50(1995);Amesら,J.Immunol.Methods,184:177-186(1995);Kettleboroughら,Eur.J.Immunol.,24:952-958(1994);Persicら,Gene,187,9-18(1997);Burtonら,Advances in Immunology,57:191-280(1994);PCT出願PCT/GB91/01134;PCT公開WO 90/02809、WO 91/10737、WO 92/01047、WO 92/18619、WO 93/11236、WO 95/15982、WO 95/20401;並びに米国特許Nos.5,698,426、5,223,409、5,403,484、5,580,717、5,427,908、5,750,753、5,821,047、5,571,698、5,427,908、5,516,637、5,780、225、5,658,727、5,733,743及び5,969,108に開示されている方法が含まれる。
【0183】
上記文献に記載されているように、ファージ選択後、例えば以下に詳記されているようにファージ由来の抗体コード領域を単離し、ヒト抗体または他の所望抗原結合断片を含めた全抗体を作成するために使用し、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母及び細菌を含めた所望の宿主で発現させ得る。例えば、Fab、Fab’及びF(ab’)2断片を組換え産生するための技術は、例えばPCT公開WO 92/22324;Mullinaxら,BioTechniques,12(6):864-869(1992);Sawaiら,AJRI,34:26-34(1995);及びBetterら,Science,240:1041-1043(1988)(これらの文献の全文を参照により組み入れる)に開示されているような当業界で公知の方法を用いても使用され得る。一本鎖Fv及び抗体を産生するために使用され得る技術の例には、米国特許4,946,778及び5,258、498;Hustonら,Methods in Enzymology,203:46-88(1991);Shuら,PNAS,90:7995-7999(1993);及びSkerraら,Science,240:1038-1040(1988)中に記載されているものが含まれる。
【0184】
ファージディスプレイによる組換え抗体ライブラリーのスクリーニングの代わりに、大コンビナトリアルライブラリーをスクリーニングするための当業界で公知の他の方法を本発明の二重特異性抗体を同定するために適用し得る。代替発現系の1つのタイプは、Szostak and RobertsによるPCT公開WO 98/31700及びRoberts,R.W.and Szostak,J.W.(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:12297-12302に記載されている組換え抗体ライブラリーをRNA-タンパク質融合として発現させるものである。この系では、その3’末端にペプチジルアクセプター抗生物質のピューロマイシンを有する合成mRNAをインビトロ翻訳することによりエンコードするペプチドまたはタンパク質とmRNA間に共有融合が生ずる。よって、特定のmRNAは、mRNAのコンプレックス混合物(例えば、コンビナトリアルライブラリー)からエンコードされるペプチドまたはタンパク質(例えば、抗体またはその一部)の特性、例えば二重特異性抗原に対する抗体またはその一部の結合に基づいて濃縮され得る。ライブラリーのスクリーニングから回収した抗体またはその一部をエンコードする核酸配列を(例えば、哺乳動物宿主細胞において)上記した組換え手段により発現させ得、更に突然変異を始めに選択した配列に導入したmRNA-ペプチド融合物を更にスクリーニングすることによるかまたは上記した組換え抗体のインビトロ親和性成熟するための他の方法により更なる親和性成熟にかけ得る。
【0185】
別のアプローチでは、本発明の抗体は当業界で公知の酵母ディスプレイ方法を用いても作成され得る。酵母ディスプレイ方法では、抗体ドメインを酵母細胞壁に対してつなぎ、酵母の表面上で抗体ドメインを提示するために遺伝的方法を使用する。特に、酵母はレパートリーまたはコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒトまたはマウス)から発現させた抗原結合ドメインを提示するために利用され得る。本発明の抗体を作成するために使用され得る酵母ディスプレイ方法には、参照により本明細書に組み入れるWittrupらの米国特許No.6,699,658に開示されているものが含まれる。
【0186】
4.本発明の具体的組換えRGM A抗体の産生
本発明の抗体は当業界で公知の多数の技術により産生され得る。例えば、重鎖及び軽鎖をエンコードする発現ベクターを標準技術により宿主細胞にトランスフェクトする宿主細胞からの発現。用語「トランスフェクション」の各種形態は、外来性DNAを原核または真核宿主細胞に導入するために通常使用されている種々の技術、例えばエレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈降、DEAE-デキストラントランスフェクション等を包含すると意図される。本発明の抗体を原核または真核宿主細胞において発現させることができるが、真核細胞(及び、特に哺乳動物細胞)が原核細胞よりも正しく折り畳まれた免疫学的に活性な抗体を組立て、分泌しそうなので、抗体を真核細胞において発現させることが興味深く、哺乳動物宿主細胞において発現させることが特に興味深い。
【0187】
本発明の組換え抗体を発現するための具体的哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(Urlaub and Chasin,(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216-4220に記載されており、例えばR.J.Kaufman and P.A.Sharp(1982)Mol.Biol.,159:601-621に記載されているようにDHFR選択可能なマーカーと一緒に使用されるdhfr-CHO細胞が含まれる)、NS0ミエローマ細胞、COS細胞及びSP2が含まれる。抗体遺伝子をエンコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入するとき、宿主細胞において抗体を発現させ、またはより特に宿主細胞を増殖させる培養培地に抗体を分泌させるのに十分な時間宿主細胞を培養することにより抗体が産生される。抗体は標準のタンパク質精製方法を用いて培養培地から回収され得る。
【0188】
宿主細胞は、機能性抗体断片(例えば、Fab断片またはscFv分子)を産生させるためにも使用され得る。上記手順に対する変更が本発明の範囲内であると理解される。例えば、宿主細胞に本発明の抗体の軽鎖及び/または重鎖の機能性断片をエンコードするDNAをトランスフェクトすることが望ましいことがある。組換えDNA組換えテクノロジーが対象抗原に対する結合のために必要でない軽鎖及び/または重鎖をエンコードするDNAの一部または全部を除去するためにも使用され得る。末端切断型DNA分子から発現させた分子も本発明の抗体により包含される。加えて、1つの重鎖及び1つの軽鎖が本発明の抗体であり、他の重鎖及び軽鎖が本発明の抗体を標準的化学的架橋方法により二次抗体に架橋することにより対象抗原以外の抗原に対して特異的である二価抗体が産生され得る。
【0189】
本発明の抗体または抗原結合部分の組換え発現のための具体的系では、抗体重鎖及び抗体軽鎖の両方をエンコードする組換え発現ベクターをリン酸カルシウム媒介トランスフェクションによりdhfr-CHO細胞に導入する。組換え発現ベクター内で、抗体重鎖及び軽鎖遺伝子を高レベルで転写させるためにこれらの遺伝子は各々CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントに機能し得る形で連結されている。組換え発現ベクターはDHFR遺伝子をも有し、これによりベクターをトランスフェクトしたCHO細胞をメトトレキサート選択/増幅を用いて選択することができる。抗体重鎖及び軽鎖を発現させるために選択した形質転換体宿主細胞を培養し、完全な抗体を培養培地から回収する。標準の分子生物学的技術を使用して、組換え発現ベクターを作成し、宿主細胞にトランスフェクトし、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、培養培地から抗体を回収する。更に、本発明は、本発明の組換え抗体が合成されるまで本発明の宿主細胞を適当な培養培地において培養することにより本発明の組換え抗体を合成する方法を提供する。この方法は更に組換え抗体を培養培地から単離することを含み得る。
【0190】
4.1 抗RGM A抗体
表5は、本発明の具体的抗hRGM A抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列のリストである。
【0191】
【表8】
上記した単離抗RGM A抗体CDR配列は本発明に従って単離されたRGM A結合タンパク質の新規ファミリーを確立する。hRGM Aに関して特定のRGM A結合及び/または中和活性を有する本発明のCDRを作成し、選択するために、本発明の結合タンパク質を作成し、前記結合タンパク質のRGM A結合及び/または中和特性を評価するための当業界で公知の標準方法が使用され得、これらには本明細書中に具体的に記載されている方法が含まれるが、これらに限定されない。
【0192】
4.2 抗RGMキメラ抗体
キメラ抗体は、抗体の異なる部分が異なる動物種から誘導される分子、例えばマウスモノクローナル抗体から誘導される可変領域及びヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体である。キメラ抗体を産生するための方法は当業界で公知である。例えば、全文を参照により本明細書に組み入れるMorrison,Science,229:1202(1985);Oiら,BioTechniques,4:214(1986);Gilliesら(1989)J.Immunol.Methos,125:191-202;米国特許Nos.5,807,715、4,816,567及び4,816,397を参照されたい。加えて、適切な抗原特異性を有するマウス抗体分子由来の遺伝子及び適切な生物活性を有するヒト抗体分子由来の遺伝子を一緒にスプライシングすることによる「キメラ抗体」の産生のために開発された技術(全文を参照により本明細書に組み入れるMorrisonら,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.81:851-855;Neubergerら,1984,Nature,312:604-608;Takedaら,1985,Nature,314:452-454)を使用し得る。
【0193】
1つの実施形態では、本発明のキメラ抗体は、本明細書中に記載されているマウスモノクローナル抗ヒトRGM A抗体の重鎖定常領域をヒトIgG1定常領域で置換することにより産生される。
【0194】
4.3 抗RGM A CDRグラフト化抗体
本発明のCDRグラフト化抗体は、VH及び/またはVLの1つ以上のCDR領域が本発明の非ヒト(例えば、マウス)抗体のCDR配列で置換されているヒト抗体由来の重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む。ヒト抗体由来のフレームワーク配列はCDRグラフト化のためのテンプレートとして役立ち得る。しかしながら、前記フレームワークに対する直鎖置換により、しばしば抗原に対する結合親和性が若干低下する。ヒト抗体が元のマウス抗体に対してより相同であるならば、マウスCDRをヒトフレームワークと組み合わせると親和性が低下する恐れがある歪みがCDRに導入される可能性が少なくとなりそうである。従って、CDRとは別にマウス可変フレームワークを置換するために選択されるヒト可変フレームワークがマウス抗体可変領域フレームワークと少なくとも65%の配列同一性を有していることが特に興味深い。CDRとは別にヒト及びマウス可変領域が少なくとも70%の配列同一性を有していることがより特に興味深い。CDRとは別にヒト及びマウス可変領域が少なくとも75%の配列同一性を有していることがより特に興味深い。CDRとは別にヒト及びマウス可変領域が少なくとも80%の配列同一性を有していることが最も特に興味深い。CDRグラフト化抗体を産生するための方法は当業界で公知である(Jonesら,Nature,321:522-525(1986);米国特許No.5,225,539)。特定実施形態で、本発明は表6に記載されているVH及び/またはVL鎖を有するCDRグラフト化抗体を提供する。
【0195】
【表9】
mAb 5F9から誘導されるCDR配列は太字で示されている。対応する配列番号(表3及び4も参照されたい)を記述することにより特定フレームワーク配列(FR1~FR4)も言及される。
【0196】
4.4 抗RGM Aヒト化抗体
ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1つ以上の相補性決定領域(CDR)及びヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する所望の抗原に結合する非ヒト種抗体由来の抗体分子である。公知のヒトIg配列は、例えば各々の全文を参照により本明細書に組み入れる
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【0197】
ヒトフレームワーク領域中のフレームワーク残基をCDRドナー抗体由来の対応する残基で置換して、抗原結合を改変(特に、改善)してもよい。これらのフレームワーク置換は当業界で公知の方法により、例えばCDR及びフレームワーク残基の相互作用をモデル化して、抗原結合及び配列比較のために重要なフレームワーク残基を同定し、特定位置の異常なフレームワーク残基を同定することにより同定される(例えば、全文を参照により本明細書に組み入れるQueenら,米国特許No.5,585,089;Riechmannら,Nature,332:323(1988)を参照されたい)。これらの三次元免疫グロブリンモデルは通常入手可能であり、当業者に知られている。選択した候補免疫グロブリン配列のありそうな三次元コンフォメーション構造を図示し、ディスプレイするコンピュータープログラムが利用可能である。これらのディスプレイを精査すると、候補免疫グロブリン配列の機能時の残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グロブリンがその抗原へ結合する能力に影響を与える残基の分析が可能となる。こうして、FR残基が所望の抗体特性(例えば、1つ以上の標的抗原に対する高い親和性)が達成するようにコンセンサスな重要な配列から選択され、組み合わされ得る。通常、CDR残基は直接、殆ど実質的に抗原結合の影響に関与する。抗体は当業界で公知の各種技術を用いてヒト化され得、これらの技術の例には、各々の全文を参照により本明細書に組み入れるJonesら,Nature,321:522(1986);Verhoeyenら,Science,239:1534(1988);Simsら,J.Immunol.,151:2296(1993);Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.,196:901(1987);Carterら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,89:4285(1992);Prestaら,J.Immunol.,151:2623(1993);Padlan,Molecular Immunology,28(4/5),489-498(1991);Studnickaら,Protein Engineering,7(6):805-814(1994);Roguskaら,PNAS,91:969-973(1994);PCT公開WO 91/09967、PCT/US98/16280、US96/18978、US91/09630、US91/05939、US94/01234、GB89/01334、GB91/01134、GB92/01755、WO 90/14443、WO 90/14424、WO 90/14430、EP 229246、EP 592,106、EP 519,596、EP 239,400、米国特許Nos.5,565,332、5,723,323、5,976,862、5,824,514、5,817,483、5,814,476、5,763,192、5,723,323、5,766,886、5,714,352、6,204,023、6,180,370、5,693,762、5,530,101、5,585,089、5,225,539及び4,816,567及びこれらの中で引用されている参考文献に記載されている技術が含まれるが、これらに限定されない。
【0198】
5.本発明の抗体の更なる実施形態
5.1 融合抗体及びイムノアドヘシン
本出願は、別のポリペプチドに連結されている本発明のRGM A抗体の全部または一部を含む作成され得る融合抗体またはイムノアドヘシンをも記載する。幾つかの実施形態では、RGM A抗体の可変領域のみがポリペプチドに連結されている。他の実施形態では、本発明のRGM A抗体のVHドメインが第1ポリペプチドに連結されており、抗体のVLドメインはVH及びVLドメインが互いに相互作用して抗体結合部位を形成し得るように第1ポリペプチドと結合する第2ポリペプチドに連結されている。他の実施形態では、VHドメインはVH及びVLドメインを互いに相互作用し得るリンカーによりVLドメインから離れている(以下の一本鎖抗体を参照されたい)。次いで、VH-リンカーVL抗体は対象ポリペプチドに連結される。融合抗体はRGM Aを発現する細胞または組織に対してポリペプチドを指向させるために有用である。対象ポリペプチドは治療薬(例えば、毒素)であり得、または容易に可視化され得る診断薬(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼのような酵素)であり得る。加えて、2つ以上の一本鎖抗体が互いに連結されている融合抗体を作成し得る。これは、単一ポリペプチド鎖に対して二価または多価抗体を作成したいならば、または双特異性抗体を作成したいならば有用である。
【0199】
1つの実施形態は、本発明の抗体または抗体部分が別の機能性分子(例えば、別のペプチドまたはタンパク質)に誘導体化または連結されている標識結合タンパク質を提供する。例えば、本発明の標識結合タンパク質は、本発明の抗体または抗体部分を1つ以上の他の分子実体、例えば核酸、別の抗体(例えば、双特異性抗体またはダイアボディ)、検出可能物質、細胞傷害薬、薬剤、及び/または抗体または抗体部分の別の分子(例えば、ストレプトアビジンコア領域またはポリヒスチジンタグ)との結合を媒介し得るタンパク質またはペプチドに(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合または他の方法により)機能的に連結させることにより誘導され得る。
【0200】
本発明の抗体または抗体部分を誘導体化するために使用され得る有用な検出可能物質には蛍光化合物が含まれる。蛍光検出可能物質の例には、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5-ジメチルアミン-1-ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリスリン等が含まれる。抗体は、検出可能な酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ等)でも誘導体化され得る。抗体を検出可能な酵素で誘導体化する場合、検出可能な反応生成物を生成するために前記酵素が使用する追加の試薬を添加することにより検出される。例えば、検出可能物質のホースラディッシュペルオキシダーゼが存在するときには、過酸化水素及びジアミノベンジジンを添加すると、検出可能な着色反応生成物が生ずる。抗体は核酸、ビオチンでも誘導体化され、アビジンまたはストレプトアビジン結合を間接的に測定することにより検出され得る。
【0201】
5.2 一本鎖抗体
本発明は、本発明の免疫原性RGM Aに結合する一本鎖抗体(scFv)を含む。scFvを産生するためには、VH及びVL配列が連続一本鎖タンパク質として発現され得るようにVH及びVコード化DNAをフレキシブルリンカーをエンコードする(例えば、アミノ酸配列(Gly4-Ser)をエンコードする)DNAに対して機能し得る形で連結し、VL及びVH領域はフレキシブルリンカーにより連結される(例えば、Birdら(1988)Science,242:423-426;Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:5879-5883;McCaffertyら,30 Nature(1990)348:552-554を参照されたい)。一本鎖抗体は、1つのVH及びVLしか使用しないならば一価であり、2つのVH及びVLを使用するならば二価であり、或いは3つ以上のVH及びVLを使用するならば多価であり得る。前記scFv断片の2つをリンカーを介してカップリングさせたものは「ダイアボディ」と称され、これも本発明に包含される。
【0202】
5.3 双特異性抗体
本発明は更に、1つの特異性が本発明の免疫原性RGM ポリペプチドに対している双特異性抗体またはその抗原結合断片を含む。例えば、1つの結合ドメインを介して本発明の免疫原性RGM Aポリペプチドに対して、第2結合ドメインを介して第2分子に対して特異的に結合する双特異性抗体が作成され得る。加えて、本発明の免疫原性ポリペプチドに対して、及びミエリン媒介成長円錐退縮の減衰及び神経突起伸長及び発芽の阻害に関係する別の分子に対して特異的に結合する2つ以上のVH及びVLを含む一本鎖抗体が作成され得る。双特異性抗体は、例えばFangerら,Immunol Methods,4:72-81(1994)及び上掲のWright and Harris,20から公知である技術を用いて作成され得る。
【0203】
幾つかの実施形態では、双特異性抗体は本発明の抗体由来の1つ以上の可変領域を用いて作成される。別の実施形態では、双特異性抗体は該抗体由来の1つ以上のCDR領域を用いて作成される。
【0204】
5.4 誘導体化または標識されている抗体
本発明の抗体または抗原結合断片は別の分子(例えば、別のペプチドまたはタンパク質)に誘導体化または連結され得る。通常、抗体または抗原結合断片は、本発明の免疫原性ポリペプチドに対する結合が誘導体化または標識化により悪影響を受けないように誘導体化される。
【0205】
例えば、本発明の抗体または抗体部分を1つ以上の他の分子実体、例えば別の抗体(例えば、双特異性抗体またはダイアボディ)、検出可能物質、細胞傷害薬、薬剤、及び/または抗体または抗体結合断片の別の分子(例えば、ストレプトアビジンコア領域またはポリヒスチジンタグ)との結合を媒介し得るタンパク質またはペプチドに(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合または他の方法により)機能的に連結され得る。更に、抗体またはその抗原結合部分は、抗体または抗体部分を1つ以上の他のまたは別のタンパク質またはペプチドと共有または非共有結合させることにより形成される大きな免疫接着分子の一部であり得る。前記免疫接着分子の例には、テトラマーscFv分子を作成するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanovら(1995)Human Antibodies and Hybridomas,6:93-101)及び二価のビオチニル化scFv分子を作成するためのシステイン残基、マーカーペプチド及びC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanovら(1994)Molecular Immunology,31:1047-1058)が含まれる。Fab及びF(ab’)2断片のような抗体部分は全抗体から慣用の技術を用いて、例えば全抗体のそれぞれパパインまたはペプシン消化を用いて製造され得る。更に、抗体、抗体部分及び免疫接着分子は標準組換えDNA技術を用いて得られ得る。
【0206】
誘導体化抗体は、(例えば双特異性抗体を作成するために、同一タイプまたは異なるタイプの)2つ以上の抗体を架橋することにより作成され得る。適当な架橋剤には、適当なスペーサーにより分離されている2つの別々に反応する基を有するヘテロ二官能性である架橋剤(例えば、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、またはホモ二官能性である架橋剤(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)が含まれる。前記リンカーはイリノイ州ロックフォードに所在のPierce Chemical Companyから入手可能である。
【0207】
誘導体化抗体は標識化抗体でもあり得る。例えば、本発明の抗体または抗体部分を誘導体化するために使用され得る検出物質は、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5-ジメチルアミン-1-ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリスリン、ランタニド燐光体等を含めた蛍光化合物である。抗体を検出のために有用な酵素、例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ、ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ等で標識してもよい。検出可能酵素で標識されている実施形態では、抗体は検出可能な反応生成物を生成させるために酵素を使用する追加物質を添加することにより検出される。例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼと過酸化水素及びジアミノベンジジン。抗体をビオチンで標識し、アビジンまたはストレプトアビジン結合を間接的に測定することにより検出してもよい。また、抗体を二次リポーター(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体に対する結合部位、金属結合ドメイン、エピトープ:タグ)により認識される所定のポリペプチドエピトープで標識してもよい。RGM A抗体またはその抗原断片を放射性標識したアミノ酸で標識してもよい。放射性標識を診断または治療の両方の目的のために使用し得る。放射性標識したRGM A抗体は診断上、例えば被験者のRGM A受容体レベルを測定するために使用され得る。更に、放射性標識したRGM A抗体は治療上脊髄損傷を治療するために使用され得る。
【0208】
ポリペプチドに対する標識の例には、以下の放射性同位体または放射性ヌクレオチド15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho、153Smが含まれるが、これらに限定されない。RGM A抗体またはその抗原断片は化学基、例えばポリエチレングリコール(PEG)、メチルまたはエチル基、または炭水化物基を用いても誘導体化され得る。これらの基は抗体の生物学的特性を改善するために、例えば血清半減期を延長させたり、組織結合を増加させたりするために有用であり得る。また、ポリペプチドに対する標識には核酸、例えばPCRによる検出のためまたは遺伝子発現を高めるためのDNA、或いはRGM Aを有する細胞または組織における遺伝子発現を抑えるためのsiRNAが含まれ得る。
【0209】
RGM A抗体のクラス及びサブクラスは当業界で公知の方法により決定され得る。一般的に、抗体のクラス及びサブクラスは抗体の特定のクラス及びサブクラスに対して特異的な抗体を用いて決定され得る。前記抗体は市販されている。クラス及びサブクラスはELISA、ウェスタンブロット及び他の技術により決定され得る。或いは、クラス及びサブクラスは、抗体の重鎖及び/または軽鎖の定常ドメインの全部または一部を配列決定し、そのアミノ酸配列を免疫グロブリンの各種クラス及びサブクラスの公知アミノ酸配列と比較し、抗体のクラス及びサブクラスを決定することにより決定され得る。
【0210】
5.5 二重可変ドメイン免疫グロブリン
本明細書中で使用されている二重可変ドメイン(DVD)結合タンパク質または免疫グロブリンは2つ以上の抗原結合部位を含む結合タンパク質であり、多価(例えば、二価及び四価)結合タンパク質である。用語「多価結合タンパク質」は本明細書中で2つ以上の抗原結合部位を含む結合タンパク質を指すべく使用されている。多価結合タンパク質は特に2つ以上の抗原結合部位を有するように工学操作され、通常天然抗体でない。用語「多重特異性結合タンパク質」は、2つ以上の関連するまたは関連しない標的に結合することができる結合タンパク質を指す。DVDは単一特異性(すなわち、1つの抗原に結合することができる)または多重特異性(すなわち、2つ以上の抗原に結合することができる)であり得る。2つの重鎖DVDポリペプチド及び2つの軽鎖DVDポリペプチドを含むDVD結合タンパク質はDVD Igと称される。DVD Igの各半分は重鎖DVDポリペプチドと軽鎖DVDポリペプチド、及び2つの抗原結合部位を含む。各結合部位は重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、1つの抗原結合部位あたり全部で6個のCDRが抗原結合に関与する。DVD結合タンパク質及びDVD結合タンパク質の製造方法は参照により本明細書に組み入れる米国特許出願No.11/507,050に記載されている。本発明はRGM Aに結合できる結合タンパク質からなるDVD結合タンパク質を含むと意図される。特に、DVD結合タンパク質はRGM A及び第2標的に結合できる。第2標的は、抗炎症性MAB活性(IL-1、IL-6、IL-8、IL-11、IL-12、IL-17、IL-18、IL-23、TNF α/β、IFN-β、γ、LIF、OSM、CNTF、PF-4、血小板塩基性タンパク質(PBP)、NAP-2、β-TG、MIP-1、MCP2/3、RANTES、リンホタクチン);他の神経再生性MAB(NgR、Lingo、p75、CSPG(例えば、NG-2、ニューロカン、ブレビカン、ベルシカン、アグレカン)ヒアルロン酸、mAG、テネイシン、NI-35、NI-250、IMP、ペルレカン、ニューロカン、ホスファカン、ノゴA、OMGP、セマ4D、セマ3A、エフリンB3、エフリンA2、エフリンA5、MAG、EphA4、プレキシンB1、TROY、wnts、ryk rec、BMP-2、BMP-4、BMP-7)の輸送媒介タンパク質(インスリン受容体、トランスフェリン受容体、トロンビン受容体、レプチン受容体、LDL受容体);神経保護性MAB活性(EGF、EGFR、セマ3);抗アミロイドβ MAB(例えば、m266、3D6(バピニューズマブ)、抗グロブロマーMAB 7C6);CNSに位置する受容体及び輸送体(セロトニン受容体、ドーパミン受容体、DAT、Asc-1、GlyT1)からなる群から選択される。
【0211】
5.6 二重特異性抗体
本明細書は「二重特異性抗体」テクノロジーを記載している。二重特異性抗体はアゴニスト、アンタゴニスト、または各種組合せで両方として役立ち得る。二重特異性抗体は、WO 2008082651に例示されているようにVH鎖が第1抗原に結合し、VL鎖が別の抗原に結合している抗体である。
【0212】
5.7 結晶化抗体
本発明の別の実施形態は結晶化結合タンパク質を提供する。本明細書中で使用されている用語「結晶化」は、結晶の形態で存在する抗体またはその抗原結合部分を指す。結晶は、非晶質固体状態または液晶状態のような他の形態と区別される物質の固体状態の1つの形態である。結晶は原子、イオン、分子(例えば、抗体のようなタンパク質)または分子アセンブリ(例えば、抗原/抗体複合体)の規則的反復三次元アレーから構成される。これらの三次元アレーはこの分野で十分理解されている特定の数学的関係に従って配置される。結晶中で繰り返される基本的単位、すなわちビルディングブロックは非対称単位と呼ばれる。所与の十分に規定されている結晶対称に一致する配置での非対称単位の反復により、結晶の「単位セル」が与えられる。すべての三次元での単位セルの規則的並進による反復により、結晶が生ずる。Giege,R. and Ducruix,A.Barrett,Crystallization of Nucleic Acids and Proteins,a Practical Approach,第2版,p.20 1-16,Oxford University Press,New York,New York(1999)を参照されたい。
【0213】
特に、本出願は、本明細書中に開示されている全RGM A抗体及びその断片の結晶、並びに前記結晶を含む処方物及び組成物を記載している。1つの実施形態では、結晶化結合タンパク質は結合タンパク質の可溶性相対物に比してより長いインビボ半減期を有する。別の実施形態では、結合タンパク質は結晶化後生物活性を保持している。
【0214】
本発明の結晶化結合タンパク質は、当業界で公知であり、参照により本明細書に組み入れるWO 02072636に開示されている方法に従って作成され得る。
【0215】
5.8 グリコシル化抗体
本発明の別の実施形態は、抗体またはその抗原結合部分が1つ以上の炭水化物残基を含んでいるグリコシル化結合タンパク質を提供する。新生インビボタンパク質産生は翻訳後修飾として公知の更なるプロセッシングを受け得る。特に、糖(グリコシル)残基を酵素的に、グリコシル化として公知のプロセスにより付加し得る。生じた共有結合したオリゴ糖側鎖を有するタンパク質はグリコシル化タンパク質または糖タンパク質として公知である。抗体は、Fcドメイン及び可変ドメイン中に1つ以上の炭水化物残基を有する糖タンパク質である。Fcドメイン中の炭水化物残基は、Fcドメインのエフェクター機能に対して重要な影響を有するが、抗体の抗原結合または半減期に対する影響は小さい(R.Jefferis,Biotechnol.Prog.,21(2005),p.11-16)。対照的に、可変ドメインのグリコシル化は抗体の抗原結合活性に対して影響を有し得る。可変ドメインでのグリコシル化は、多分立体障害のために抗体結合親和性に対して負の影響を有し得(Co,M.S.ら,Mol.Immunol.(1993),30:1361-1367)、或いは抗原に対して高い親和性を生じ得る(Wallick,S.C.ら,Exp.Med.(1988),168:1099-1109;Wright、A.ら,EMBO J.(1991),10:2717-2723)。
【0216】
本発明の1つの態様は、結合タンパク質のO-またはN-連結グリコシル化が突然変異されているグリコシル化部位ミュータントの作成に関する。当業者は前記ミュータントを標準の公知テクノロジーを用いて作成することができる。生物活性を保持しているが、増加または減少した結合活性を有しているグリコシル化部位ミュータントは本発明の別の目的である。
【0217】
さらに別の実施形態では、本発明の抗体または抗原結合部分のグリコシル化を修飾する。例えば、非グリコシル化抗体(すなわち、抗体はグリコシル化を欠く)を作成し得る。グリコシル化は、例えば抗体の抗原に対する親和性を高めるように改変され得る。炭水化物修飾は、例えば抗体配列内の1つ以上のグリコシル化部位を改変することによりなし得る。例えば、1つ以上の可変領域グリコシル化部位を排除して、その部位でのグリコシル化を排除する1つ以上のアミノ酸置換をなし得る。非グリコシル化は抗体の抗原に対する親和性を増加させ得る。前記アプローチは、各々の全文を参照により本明細書に組み入れられるPCT公開WO 2003016466A2、並びに米国特許Nos.5,714,350及び6,350,861に更に詳細に記載されている。
【0218】
加えてまたは或いは、改変タイプのグリコシル化を有する本発明の修飾抗体、例えば少ない量のフコシル残基を有する低フコシル化抗体または高い二等分GlcNAc構造を有する抗体が作成され得る。改変グリコシル化パターンは抗体のADCC能力を高めると立証されている。炭水化物修飾は、例えば改変グリコシル化機構を有する宿主細胞中で抗体を発現させることによりなし得る。改変グリコシル化機構を有する細胞は当業界で公知であり、本発明の組換え抗体を発現させて改変グリコシル化を有する抗体を産生する宿主細胞として使用され得る。例えば、各々の全文を参照により本明細書に組み入れられるShields,R.L.ら,(2002),J.Biol.Chem.,277:26733-26740;Umanaら,(1999),Nat.Biotech.,17:176-1;並びに欧州特許EP 1,176,195;PCT公開WO 03/035835、WO 99/54342 80を参照されたい。
【0219】
タンパク質グリコシル化は、対象タンパク質のアミノ酸配列及びタンパク質を発現させる宿主細胞に依存する。生物が異なると、異なるグリコシル化酵素(例えば、グリコシルトランスフェラーゼ及びグリコシダーゼ)が産生し、利用可能な基質(ヌクレオチド糖)も異なる。これらの要因のために、タンパク質グリコシル化パターン及びグリコシル残基の組成は特定のタンパク質を発現させる宿主系に依存して異なり得る。本発明において有用なグリコシル残基には、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、n-アセチルグルコサミン及びシアル酸が含まれるが、これらに限定されない。特に、グリコシル化結合タンパク質は、グリコシル化パターンがヒトであるようにグリコシル残基を含む。
【0220】
タンパク質グリコシル化が異なると異なるタンパク質特性が生じ得ることは当業者に公知である。例えば、微生物宿主(例えば、酵母)において産生され、酵母内因性経路を用いてグリコシル化した治療用タンパク質の有効性は、哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞株)において発現させた同一タンパク質の有効性に比して低いことがある。前記糖タンパク質はヒトにおいても免疫原性であり得、投与後短いインビボ半減期を示し得る。ヒト及び他の動物中の特定受容体は特定グリコシル残基を認識し、タンパク質の血流からの迅速なクリアランスを促進し得る。他の悪影響には、タンパク質ホールディング、可溶性、プロテアーゼに対する感受性、トラフィッキング、輸送、区画化、分泌、他のタンパク質または因子による認識、抗原性またはアレルゲン性の変化が含まれ得る。従って、専門家は特定の組成及びグリコシル化パターン、例えばヒト細胞または意図する被験動物の種特異的細胞において産生されるものと同一または少なくとも類似のグリコシル化組成及びパターンを有する治療用タンパク質を選択し得る。
【0221】
宿主細胞とは異なるグリコシル化タンパク質の発現は、異種グリコシル化酵素を発現させるために宿主細胞を遺伝的に修飾させることによりなし得る。当業界で公知の技術を用いて、専門家はヒトタンパク質グリコシル化を発現する抗体またはその抗原結合部分を作成し得る。例えば、酵母菌株において産生されるグリコシル化タンパク質(糖タンパク質)が動物細胞、特にヒト細胞のものと同一のタンパク質グリコシル化を示すように天然に存在しないグリコシル化酵素を発現させるために酵母菌株を遺伝的に修飾させた(米国特許出願20040018590及び20020137134、並びにPCT公開WO 2005100584 A2)。
【0222】
更に、対象タンパク質は、宿主細胞のライブラリーのメンバーがバリアントグリコシル化パターンを有する対象タンパク質を産生するように各種グリコシル化酵素を発現させるために遺伝的に操作された宿主細胞のライブリーを用いて発現され得ることは当業者により認識されている。次いで、専門家は特定の新規グリコシル化パターンを有する対象タンパク質を選択し、単離し得る。特に選択した新規グリコシル化パターンを有するタンパク質は改善または改変された生物学的パターンを示す。
【0223】
5.9 抗イディオタイプ抗体
結合タンパク質に加えて、本発明は、本発明の結合タンパク質に対して特異的な抗イディオタイプ(抗Id)抗体にも関する。抗Id抗体は、通常別の抗体の抗原結合領域に結合する独自の決定基を認識する抗体である。抗Idは、動物を結合タンパク質またはそのCDR含有領域を用いて免疫化することにより産生され得る。免疫化された動物は、免疫化抗体のイディオタイプ決定基を認識し、応答し、抗Id抗体を産生し得る。抗Id抗体は、別の動物で免疫応答を引き出して所謂抗-抗Id抗体を産生するための「免疫原」としても使用され得る。
【0224】
6.医薬組成物
本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合部分及び医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物をも提供する。本発明の抗体を含む医薬組成物は、障害を診断、検出またはモニターする際、障害または1つ以上のその症状を予防、治療、管理または改善する際、及び/または研究において使用されるが、これらに限定されない。特定実施形態では、組成物は1つ以上の本発明の抗体を含む。別の実施形態では、医薬組成物は1つ以上の本発明の抗体及び本発明の抗体以外のRGM A活性が有害である障害を治療するための1つ以上の予防または治療薬を含む。特に、予防または治療薬は、障害または1つ以上のその症状の予防、治療、管理または改善のために有用であることが公知であり、または障害または1つ以上のその症状の予防、治療、管理または改善において使用されたかまたは現在使用されている。これらの実施形態によれば、組成物は更に担体、希釈剤または賦形剤を含み得る。
【0225】
本発明の抗体及び抗体部分は、被験者に投与するのに適した医薬組成物中に配合され得る。典型的には、医薬組成物は本発明の抗体及び抗体部分及び医薬的に許容され得る担体を含む。本明細書中で使用されている「医薬的に許容され得る担体」には、生理学的に適合し得るすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤、抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等が含まれる。医薬的に許容され得る担体の例には、1つ以上の水、食塩液、リン酸緩衝食塩液、デキストロース、グリセロール、エタノール等、及びその組合せが含まれる。多くの場合、等張剤、例えば糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール)、ソルビトールまたは塩化ナトリウムを組成物中に配合することが特に興味深い。医薬的に許容され得る担体は、更に抗体または抗体部分の保存寿命または有効性を高める補助物質、例えば湿潤または乳化剤、保存剤またはバッファーを少量含み得る。
【0226】
各種のデリバリーシステムが公知であり、本発明の1つ以上の抗体または本発明の1つ以上の抗体と障害または1つ以上のその症状を予防、管理、治療または改善するために有用な予防薬または治療薬の組合せを投与するために、例えばリポソーム中のカプセル化、ミクロ粒子、ミクロカプセル、抗体または抗体断片を発現できる組換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシス(例えば、Wu and Wu,J.Biol.Chem.,262:4429-4432(1987)を参照されたい)、レトロウイルスまたは他のベクターの一部としての核酸の構築等が使用され得る。本発明の予防または治療薬の投与方法には、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内及び皮下)、硬膜外投与、腫瘍内投与及び粘膜投与(例えば、鼻腔内及び口腔ルート)が含まれるが、これらに限定されない。加えて、例えば吸入器またはネブライザー、及びエアロゾル化剤を含む処方物を用いることにより肺内投与が使用され得る。例えば、各々の全文を参照により本明細書に組み入れる米国特許Nos.6,019,968、5,985,320、5,985,309、5,934,272、5,874,064、5,855,913、5,290,540及び4,880,078;及びPCT公開WO 92/19244、WO 97/32572、WO 97/44013、WO 98/31346及びWO 99/66903を参照されたい。1つの実施形態では、本発明の抗体、併用治療または本発明の組成物はAlkermes AIR(登録商標)肺内ドラッグデリバリーテクノロジー(Alkermes,Inc.,マサチューセッツ州ケンブリッジ)を用いて投与される。特定実施形態では、本発明の予防または治療薬は筋肉内、静脈内、腫瘍内、経口、鼻腔内、肺内または皮下投与される。予防または治療薬は任意の便利なルートにより、例えば注入またはボーラス注射により、上皮または粘膜皮膚ライニング(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜等)を介する吸収により投与され得、他の生理活性物質と一緒に投与され得る。投与は全身または局所でもよい。
【0227】
特定実施形態では、本発明の予防または治療薬を治療を要する区域に局所的に投与することが望ましいことがある。これは、非限定例として局所注入により、注射により、またはインプラントを用いて達成され得る。前記インプラントは、シラスティック膜、ポリマー、繊維質マトリックス(例えば、Tissuel(登録商標))またはコラーゲンマトリックスのような膜及びマトリックスを含めた多孔質または非孔質材料製である。1つの実施形態では、障害またはその症状を予防、治療、管理及び/または改善するために有効量の1つ以上の本発明の抗体を被験者の患部に局所投与する。別の実施形態では、障害または1つ以上のその症状を予防、治療、管理及び/または改善するために有効量の1つ以上の本発明の抗体を有効量の本発明の抗体以外の1つ以上の治療薬(例えば、1つ以上の予防または治療薬)と一緒に患部に局所投与する。
【0228】
別の実施形態では、予防または治療薬は制御放出または徐放システムでデリバリーされ得る。1つの実施形態では、制御放出または徐放を達成するためにポンプが使用され得る(上掲したLanger;Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.,14:20;Buchwaldら,1980,Surgery,88:507;Saudekら,1989,N.Engl.J.Med.,321,574を参照されたい)。別の実施形態では、本発明の治療薬の制御放出または徐放を達成するためにポリマー材料が使用され得る(例えば、Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Fla(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,New York(1984);Ranger and Peppas,1983,J,Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.,23:61を参照されたい。また、Levyら,1985,Science,228:190;Duringら,1989,Ann.Neurol.,25:351;Howardら,1989,J.Neurosurg.,71:105;米国特許No.5,679,377;米国特許No.5,916,597;米国特許No.5,912,015;米国特許No.5,989,463;米国特許No.5,128,326;PCT公開WO 99/15154;及びPCT公開WO 99/20253を参照されたい)。徐放性処方物中に使用されるポリマーの例には、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ無水物、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)及びポリオルトエステルが含まれるが、これらに限定されない。特定実施形態では、徐放性処方物中に使用されるポリマーは不活性であり、滲出する恐れがある不純物を含まず、保存時に安定であり、無菌であり、生物分解性である。さらに別の実施形態では、制御放出または徐放システムは、全身用量の分数しか必要としないように予防または治療標的の近くに配置し得る(例えば、上掲のGoodson,Medical Applications of Controlled Release,vol.2,p.115-138(1984)を参照されたい)。
【0229】
徐放システムはLanger(1990,Science,249:1527-1533)による概説の中で検討されている。1つ以上の本発明の治療薬を含む徐放性処方物を製造するために当業者に公知の技術が使用され得る。例えば、各々の全文を参照により本明細書に組み入れる米国特許No.4,526,938;PCT公開WO 91/05548;PCT公開WO 96/20698;Ningら,1996,“Intratumoral Radioimmunotheraphy of a Human Colon Cancer Xenograft Using a Sustained-Release Gel”,Radiotherapy & Oncology,39:179-189;Songら,1995,“Antibody Mediated Lung Targeting of Long-Circulating Emulsions”,PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology,50:372-397;Cleekら,1997,“Biodegradable Polymeric Carriers for a bFGF Antibody for Cardiovascular Application”,Pro.Int’l.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.,24:853-854;及びLamら,1997,“Microencapsulation of Recombinant Humanized Monoclonal Antibody for Local Delivery”,Proc.Int’l.Symp.Control Rel.Bioact.Mater.,24:759-760を参照されたい。
【0230】
本発明の組成物が予防または治療薬をエンコードする核酸である特定実施形態では、エンコード化予防または治療薬の発現を促進するために、核酸を適当な核酸発現ベクターの一部として構築し、例えばレトロウイルスベクター(米国特許No.4,980,286を参照されたい)を使用することにより、直接注射により、ミクロ粒子衝撃(例えば、遺伝子銃;Biolistic,Dupont)を使用することにより細胞内になるように投与することにより;または脂質、細胞表面受容体または形質移入剤でコーティングすることにより;または核に進入することが公知のホメオボックス様ペプチドへ結合させて投与することにより(例えば、Joliotら,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:1864-1868を参照されたい)、核酸をインビボで投与し得る。或いは、核酸を細胞内に導入し、相同組換えによる発現のために宿主細胞DNA内に取り込んでもよい。
【0231】
本発明の医薬組成物は意図する投与ルートと適合するように処方される。投与ルートの例には、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、経口、鼻腔内(例えば、吸入)、経皮(例えば、局所)、経粘膜及び直腸投与が含まれるが、これらに限定されない。特定実施形態では、組成物はヒトに対して静脈内、皮下、筋肉内、経口、鼻腔内または局所投与するのに適した医薬組成物としてルーチンの手順に従って処方される。典型的には、静脈内投与のための組成物は滅菌等張性水性バッファー中の溶液である。必要により、組成物は可溶化剤及び注射部位の痛みを楽にするために局所麻酔薬(例えば、リグノカイン)をも含み得る。
【0232】
本発明の組成物を局所投与するつもりならば、組成物は軟膏剤、クリーム剤、経皮パッチ、ローション剤、ゲル剤、シャンプー、スプレー剤、エアロゾル剤、溶液剤、エマルジョン剤の形態、または当業者の公知の他の形態で処方され得る。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences and Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms,第19版,Mack Pub.Co.,Easton,Pa(1995)を参照されたい。非スプレー式局所投与形態の場合、典型的には、担体、または局所適用に適合しており且つ特に水よりも高い動的粘度を有する1つ以上の賦形剤を含む粘性~半固体または固体形態が使用される。適当な処方物には、非限定的に溶液剤、懸濁液剤、エマルジョン剤、クリーム剤、軟膏剤、粉末剤、リニメント剤、軟膏剤等が含まれ、これらは所望により殺菌されており、または各種特性(例えば、浸透圧)に影響を与えるための補助剤(例えば、保存剤、安定化剤、湿潤剤、バッファーまたは塩)と混合される。他の適当な局所投与形態には、活性成分を特に固体または液体不活性担体と組み合わせて加圧揮発物質(例えば、フレオンのような気体状噴射剤)との混合物で、または絞り出し式容器中に包装されているスプレー式エアロゾル製剤が含まれる。所望ならば、湿潤剤または保湿剤を医薬組成物及び剤形に添加してもよい。前記追加成分の例は当業界で公知である。
【0233】
本発明の方法が組成物の鼻腔内投与を含むならば、組成物はエアロゾル形態、スプレー、ミストまたは滴剤の形態で処方され得る。特に、本発明に従って使用するための予防または治療薬を適当な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適当な気体)を用いて加圧パックまたはネブライザーからエアロゾルスプレー状の形態でデリバリーすることが好都合であり得る。加圧エアロゾルの場合、投与単位は定量をデリバリーするために弁を備えることにより決定され得る。吸入器または吹き入れ器中に使用するための化合物及び適当な粉末基剤(例えば、ラクトースまたは澱粉)の粉末ミックスを収容している(例えば、ゼラチンから構成される)カプセル剤及びカートリッジが調製され得る。
【0234】
本発明の方法が経口投与を含むならば、組成物は錠剤、カプセル剤、カシェ剤、ゲルキャップ剤、溶液剤、懸濁液剤等の形態で経口的に処方され得る。錠剤またはカプセル剤は、医薬的に許容され得る賦形剤、例えば結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、増量剤(例えば、ラクトース、結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ)、崩壊剤(例えば、ジャガイモ澱粉またはナトリウム澱粉グリコレート)、または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を用いて慣用の手段により製造され得る。錠剤を当業界で公知の方法によりコーティングしてもよい。経口投与用液体製剤は、非限定的に溶液剤、シロップ剤または懸濁液剤の形態をとり得、または使用前に水または他の適当なビヒクルで構成するための乾燥製品として提供され得る。液体製剤は医薬的に許容され得る添加剤、例えば懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または硬化食用脂)、乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア)、非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油状エステル、エチルアルコールまたは分画化植物油)、及び保存剤(例えば、メチルまたはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)を用いて慣用方法により製造され得る。製剤は、適当ならばバッファー塩、着香料、着色料及び甘味料をも含有し得る。経口投与用製剤は、予防または治療薬の徐放、制御放出または持続放出のために適当に処方され得る。
【0235】
本発明の方法は、エアロゾル化剤と共に処方した組成物の例えば吸入器またはネブライザーを用いた肺内投与を含み得る。例えば、各々の全文を参照により本明細書に組み入れる米国特許Nos.6,019,968、5,985,320、5,985,309、5,934,272、5,874,064、5,855,913、5,290,540及び4,880,078;並びにPCT公開WO 92/19244、WO 97/32572、WO 97/44013、WO 98/31346及びWO 99/66903を参照されたい。特定実施形態では、本発明の抗体、併用治療及び/または本発明の組成物はAlkermes AIR(登録商標)肺内ドラッグデリバリーテクノロジー(Alkermes,Inc.,マサチューセッツ州ケンブリッジ)を用いて投与される。
【0236】
本発明の方法は、非経口投与用に処方された組成物の注射(例えば、ボーラス注射または連続注入)による投与を含み得る。注射用処方物は、保存剤を添加した単位投与形態(例えば、アンプルまたは複数回投与容器)で提供され得る。組成物は油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンのような形態をとり得、製剤化剤(例えば、懸濁化剤、安定化剤及び/または分散剤)を含み得る。或いは、活性成分は使用前に適当なビヒクル(例えば、滅菌発熱物質非含有の水)を用いて構成するための粉末形態であり得る。本発明の方法は、更にデポ剤として処方される組成物の投与を含み得る。長時間作用する処方物は移植(例えば、皮下または筋肉内)により、または筋肉内注射により投与され得る。よって、例えば、組成物は適当な高分子または疎水性材料(例えば、許容され得る油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂と共に、或いは難溶性誘導体として(例えば、難溶性塩として)処方され得る。
【0237】
本発明の方法は、中性または塩の形態として処方される組成物の投与を包含する。医薬的に許容され得る塩には、アニオン(例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等から誘導されるアニオン)で形成される塩及びカチオン(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等から誘導されるカチオン)で形成される塩が含まれる。
【0238】
一般的に、組成物の成分は、別々にまたは一緒に混合して単位投与形態で、例えば活性物質の量が示されている密閉容器(例えば、アンプルまたはサッシェ)中の凍結乾燥粉末または水非含有濃厚物として供給される。投与モードが注入の場合、組成物は滅菌医薬グレードの水または食塩液を収容している注入ボトルを用いて分配され得る。投与モードが注射による場合、投与前に成分が混合され得るように注射用滅菌水または食塩液のアンプルを用意してもよい。
【0239】
1つ以上の本発明の予防または治療薬、或いは医薬組成物が物質の量が示されている密閉容器(例えば、アンプル、サッシェ)中に包装されている別の実施形態を提供する。1つの実施形態では、1つ以上の本発明の予防または治療薬、或いは医薬組成物は密閉容器中に乾燥滅菌凍結乾燥粉末または水非含有濃厚物として供給され得、被験者に投与するために適当な濃度に(例えば、水または食塩液を用いて)再構成され得る。特に、1つ以上の本発明の予防または治療薬、或いは医薬組成物は少なくとも5mg、より特に少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも35mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、少なくとも75mg、または少なくとも100mgの単位用量で密閉容器中に乾燥滅菌凍結乾燥粉末として供給される。本発明の凍結乾燥した予防または治療薬、或いは医薬組成物はその元の容器中に2℃~8℃で保存されなければならず、本発明の予防または治療薬、或いは医薬組成物は再構成してから1週間以内、特に5日以内、72時間以内、48時間以内、24時間以内、12時間以内、6時間以内、5時間以内、3時間以内、または1時間以内に投与されなければならない。代替実施形態では、1つ以上の本発明の予防または治療薬、或いは医薬組成物は物質の量及び濃度が示されている密閉容器中に液体形態で供給される。特に、液体形態の投与される組成物は少なくとも0.25mg/ml、より特に少なくとも0.5mg/ml、少なくとも1mg/ml、少なくとも2.5mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも8mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも15mg/kg、少なくとも25mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/ml、または少なくとも100mg/mlで密閉容器中に供給される。液体形態はその元の容器中に2℃~8℃で保存されなければならない。
【0240】
本発明の抗体及び抗体部分は非経口投与に適した医薬組成物中に配合され得る。特に、抗体または抗体部分は0.1~250mg/mlの抗体を含有する注射液として製造され得る。注射液は、フリントまたはアンバーバイアル、アンプルまたは充填済み注射器中の液体または凍結乾燥投与形態から構成され得る。バッファーはpH5.0~7.0(最適には、pH6.0)でL-ヒスチジン(1~50mM)、最適には5~10mMであり得る。他の適当なバッファーには、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウムが含まれるが、これらに限定されない。溶液の毒性を調節するために塩化ナトリウムが0~300mM(最適には、液体投与形態の場合150mM)の濃度で使用され得る。凍結乾燥投与形態に対して凍結防止剤、原則0~10% スクロース(最適には、0.5~1.0%)を配合し得る。他の適当な凍結防止剤にはトレハロース及びラクトースが含まれる。凍結乾燥投与形態に対して増量剤、原則1~10% マンニトール(最適には、2~4%)を配合し得る。安定化剤は液体及び凍結乾燥投与形態の両方で、原則1~50mM L-メチオニン(最適には、5~10mM)を使用し得る。他の適当な増量剤にはグリシン、アルギニンが含まれ、0~0.05% ポリソルベート-80(最適には、0.005~0.01%)として配合され得る。追加の界面活性剤には、ポリソルベート20及びBRIJ界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。非経口投与のための注射液として製造される本発明の抗体及び抗体部分を含む医薬組成物は更にアジュバントとして有用な物質、例えば治療用タンパク質(例えば、抗体)の吸収または分散を向上させるために使用される物質を含み得る。特に有用なアジュバントはヒアルロニダーゼ、例えばHylenex(登録商標)(組換えヒトヒアルロニダーゼ)である。注射液中にヒアルロニダーゼを添加すると、非経口投与後、特に皮下投与後のヒトバイオアベイラビリティーが改善される。痛み及び不快が少なく、注射部位反応の頻度が最小でより多い容量(すなわち、1ml以上)を注射することができる(参照により本明細書に組み入れるWO 2004078140及びUS 2006104968を参照されたい)。
【0241】
本発明の組成物は各種形態であり得る。これらには、例えば液体溶液剤(例えば、注射可能及び注入可能な溶液剤)、分散または懸濁液剤、錠剤、ピル剤、粉末剤、リポソーム剤及び座剤のような液体、半固体及び固体の剤形が含まれる。特定形態は意図する投与モード及び治療用途に依存する。典型的な特定組成物は注射可能または注入可能な溶液剤、例えばヒトを他の抗体で受動免疫化するために使用されている組成物に類似の組成物の形態である。特定の投与モードは非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。特定実施形態では、抗体は静脈内注入または注射により投与される。別の特定実施形態では、抗体は筋肉内または皮下注射により投与される。
【0242】
治療用組成物は、典型的には製造及び保存条件下で無菌であり、安定でなければならない。組成物は溶液、ミクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または高い薬物濃度に適した他の秩序構造として処方され得る。滅菌注射液は、適当な溶媒中に必要な量の活性化合物(すなわち、抗体または抗体部分)を所要により上に列記されている1つ以上の成分と共に配合した後、濾過滅菌することにより製造され得る。通常、分散液は、基本分散媒体及び上に列記されている成分からの必要な他の成分を含む滅菌ビヒクル中に活性成分を配合することにより製造される。滅菌注射液を調製するための滅菌凍結乾燥粉末の場合、具体的な製造方法は既に滅菌濾過されている溶液から活性成分及び追加の所望成分の粉末を得る真空乾燥及び凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えばコーティング(例えば、レシチン)を使用することにより、分散液の場合には所要の粒度を維持することにより、界面活性剤を使用することにより維持され得る。注射用組成物の長期間吸収は、組成物中に吸収を遅らす物質(例えば、モノステアレート塩及びゼラチン)を配合することによりもたらし得る。
【0243】
本発明の抗体及び抗体部分は当業界で公知の各種方法により投与され得るが、多くの治療用途の場合には、具体的な投与ルート/モードは皮下注射、静脈内注射または注入である。当業者には自明のように、投与ルート/モードは所望の結果に依存して異なる。ある実施形態では、活性化合物は、インプラント、経皮パッチ及びマイクロカプセル化デリバリーシステムを含めた制御放出性処方物のように化合物が迅速放出するのを保護する担体と共に製造され得る。生物分解性生物適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸が使用され得る。前記処方物を製造するための多くの方法は特許されており、または当業者に一般的に知られている。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。
【0244】
ある実施形態では、本発明の抗体または抗体部分は、例えば不活性希釈剤または同化性食用担体と共に経口投与され得る。化合物(及び、所望ならば他の成分)を硬または軟ゼラチンカプセル中に封入しても、錠剤に圧縮しても、または被験者の食事に直接取り込んでよい。経口治療投与の場合、化合物は賦形剤と共に配合され、摂取可能錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁液剤、シロップ剤、カシェ剤等の形態で使用され得る。本発明の化合物を非経口投与以外で投与するためには、化合物にその不活化を防ぐための材料をコーティングしても、または化合物を該材料と一緒に投与することが必要なことがある。
【0245】
補助活性化合物も組成物に配合し得る。ある実施形態では、本発明の抗体または抗体部分はRGM A活性が有害である障害を治療するために有用な1つ以上の追加治療薬と共処方しても及び/または共投与してもよい。例えば、本発明のRGM A抗体または抗体部分を他の標的に結合する1つ以上の追加抗体(例えば、サイトカインに結合する抗体または細胞表面分子に結合する抗体)と共処方しても及び/または共投与してもよい。更に、本発明の1つ以上の抗体を2つ以上の上記治療薬と併用してもよい。前記併用治療は、有利には投与する治療薬の用量を低下させ、よって各種単独治療に関連する起こり得る毒性または合併症を避けることができる。
【0246】
ある実施形態では、RGM Aに対する抗体またはその断片を当業界で公知の半減期を延長させるビヒクルに連結させる。前記ビヒクルには、Fcドメイン、ポリエチレングリコール及びデキストランが含まれるが、これらに限定されない。これらのビヒクルは、参照により本明細書に組み入れる米国特許出願No.09/428,082及び公開されたPCT出願WO 99/25044に記載されている。
【0247】
特定実施形態では、障害または1つ以上のその症状を遺伝子治療により治療、予防、管理または改善するために、本発明の抗体或いは本発明の別の予防または治療薬をエンコードするヌクレオチド配列を含む核酸配列を投与する。遺伝子治療は、被験者に対して発現させたまたは発現可能な核酸を投与することにより実施される治療を指す。本発明のこの実施形態では、核酸は予防または治療効果を媒介する本発明のコード化抗体、或いは予防または治療薬を産生する。
【0248】
当業界で利用可能な遺伝子治療のための方法が本発明に従って使用され得る。遺伝子治療の方法の概説については、Goldspielら,1993,Clinical Pharmacy,12:488-505;Wu and Wu,1991、Biotherapy,3:87-95;Tolstoshev,1993,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.,32:573-596;Mulligan,Science,260:926-932(1993);及びMorgan and Anderson,1993,Ann.Rev.Biochem.,62:191-217,May,1993,TIBTECH 11(5):155-215を参照されたい。使用され得る組換えDNAテクノロジーの業界で一般的に知られている方法は、Ausubelら(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1993);及びKriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990)に記載されている。遺伝子治療の各種方法の詳細説明は参照により本明細書に組み入れるUS 20050042664 A1に開示されている。
【0249】
抗酸化剤、ラジカルスカベンジャー、抗痙攣剤(例えば、フェニトイン)または貧血薬エリスロポエチンである神経保護剤は、神経保護剤なしの通常非常に短い治療ウィンドウを延長するために再生促進性RGM A抗体とのコンビナトリアル治療のために適している。
【0250】
本発明の抗体及び抗体部分は上記疾患を患っているヒトを治療するために使用され得る。
【0251】
本発明の抗体またその抗原結合部分は単独でまたは追加物質(例えば、治療薬)と組合せて使用され得、前記追加物質は意図する目的のために当業者により選択されると理解されるべきである。例えば、追加物質は、本発明の抗体により治療される疾患または状態を治療するために有用であると当業界で認識されている治療薬であり得る。追加物質は、治療用組成物に対して有利な属性を付与する物質、例えば組成物の粘度に影響を与える物質であり得る。
【0252】
更に、本発明に包含される組合せは意図する目的のために有用な組合せであると理解されるべきである。下記する物質は例示であり、限定すると意図されない。本発明の一部である組合せは本発明の抗体及び以下のリストから選択される少なくとも1つの追加物質であり得る。形成された組成物がその意図する機能を遂行するように組み合わされるならば、組合せには2つ以上の追加物質、例えば2つまたは3つの追加物質をも含み得る。
【0253】
本発明の抗体または抗体部分と組み合わされ得る多発性硬化症のための治療薬の非限定例には、コルチコステロイド、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、メトトレキサート、4-アミノピリジン、チザニジン、インターフェロンβ-1a(AVONEX;Biogen)、インターフェロンβ-1b(BETASERON;Chiron/Berlex)、インターフェロンα-n3(Interferon Sciences/Fujimoto)、インターフェロン-α(Alfa Wassermann/J&J)、インターフェロンβ-1Α-1F(Serono/Inhale Therapeutics)、ペグインターフェロンα-2b(Enzon/Schering-Plough)、コポリマー1(Cop-1;COPAXONE;Teva Pharmaceutical Industries,Inc.)、高圧酸素、静脈内免疫グロブリン、クラドリビン、他のヒトサイトカインまたは増殖因子及びその受容体(例えば、TNF、LT、IL-1、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-23、IL-15、IL-16、IL-18、EMAP-II、GM-CSF、FGF及びPDGF)に対する抗体またはこれらのアンタゴニストが含まれる。本発明の抗体またはその抗原結合部分は、細胞表面分子(例えば、CD2、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80、CD86、CD90)またはそのリガンドに対する抗体と組み合わされ得る。本発明の抗体またはその抗原結合部分は、メトトレキサート、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノミド、NSAID(例えば、イブプロフェン)、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾロン)、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アデノシンアゴニスト、抗血栓剤、補体インヒビター、アドレナリン作動薬、炎症促進性サイトカイン(例えば、TNFαまたはIL-1)によるシグナリングを干渉する物質(例えば、IRAK、NIK、IKK、p38またはMAPキナーゼ阻害剤)、IL-1β変換酵素阻害剤、TACEインヒビター、T細胞シグナリングインヒビター(例えば、キナーゼ阻害剤)、メタロプロテアーゼ阻害剤、スルファサラジン、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、可溶性サイトカイン受容体及びその誘導体(例えば、可溶性p55またはp75 TNF受容体、sIL-1RI、sIL-1RII、sIL-6R)及び抗炎症サイトカイン(例えば、IL-4、IL-10、IL-13及びTGFβ)のような物質とも組み合わされ得る。
【0254】
抗体またはその抗原結合部分と組み合わされ得る多発性硬化症のための治療薬の具体例には、インターフェロン-β(例えば、IFNβ1a及びIFNβ1b)、コパキソン、コルチコステロイド、カスパーゼ阻害剤(例えば、カスパーゼ-1の阻害剤)、IL-1インヒビター、TNFインヒビター、及びCD40リガンド及びCD80に対する抗体が含まれる。
【0255】
本発明の抗体またはその抗原結合部分は、アレムツズマブ、ドロナビノール、ユニメド、ダクリズマブ、ミトキサントロン、塩酸キサリプロデン、ファムプリジン、酢酸グラチラマー、ナタリズマブ、シンナビドール、a-イムノカインNNSO3、ABR-215062、AnergiX.MS、ケモカイン受容体アンタゴニスト、BBR-2778、カラグアリン、CPI-1189、LEM(リポソームカプセル化ミトキサントロン)、THC.CBD(カンナビノイドアゴニスト)MBP-8298、メソプラム(PDE4インヒビター)、MNA-715、抗IL-6受容体抗体、ニューロバクス、ピルフェニドン・アロトラップ1258(RDP-1258)、sTNF-R1、タランパネル、テリフルノミド、TGF-β2、チプリモチド、VLA-4アンタゴニスト(例えば、TR-14035、VLA4 Ultrahaler、Antegran-ELAN/Biogen)、インターフェロンγアンタゴニスト、IL-4アゴニストのような物質と組み合わされ得る。
【0256】
本発明の医薬組成物は、「治療有効量」または「予防有効量」の本発明の抗体または抗体部分を含み得る。「治療有効量」は、必要な用量で必要な期間に所望の治療結果を達成するのに有効な量を指す。抗体または抗体部分の治療有効量は当業者により決定され得、複数の要因、例えば個人の病的状態、年齢、性別及び体重、並びに個人において抗体または抗体部分の所望の応答を引き出す能力に従って変更可能である。治療有効量も、治療上有用な作用が抗体または抗体部分の中毒または有害作用を上回る量である。「予防有効量」は、必要な用量で必要な期間に所望の予防結果を達成するのに有効な量を指す。典型的には、予防用量は疾患の発症前またはより早期段階に被験者において使用されるので、予防有効量は治療有効量よりも少ない。
【0257】
投与レジメンは、最適の所望応答(例えば、治療または予防応答)を与えるために調節され得る。例えば、1回のボーラスを投与しても、複数の分割用量を時間をかけて投与しても、または用量を治療状況の緊急度により示されるように比例して減少または増加させてもよい。投与の容易さ及び用量の均一性のために非経口組成物を単位投与形態で処方することが特に有利である。本明細書中で使用されている「単位投与形態」は治療しようとする哺乳動物被験者に対する単位用量として適した物理的にばらばらの単位を指す。各単位は、所望治療効果を生ずるように計算した所定量の活性化合物を所要の医薬担体と一緒に含有している。本発明の投与単位形態の仕様は、(a)活性化合物の独自の特性及び達成しようとする具体的治療または予防効果、及び(b)個人における感受性の治療のために活性化合物をコンパウンドする業界に固有の制限により指示され、直接依存する。
【0258】
本発明の抗体または抗体部分の治療または予防有効量の例示的非限定範囲は0.1~20mg/kg、より特に1~10mg/kgである。用量の値は緩和しようとする状態のタイプ及び重症度により変更され得ることに留意されたい。更に、特定被験者に対する具体的容量レジメンは個人の必要性及び組成物を投与する人またはそれを監督する人の専門的判断に従って経時的に調節されなければならないこと、及び本明細書中に記載されている用量は例示にすぎず、特許請求されている組成物の範囲または実施を限定する意図はないことを理解すべきである。
【0259】
本明細書中に記載されている本発明の方法の他の適当な修飾及び改変は自明であり、本発明または本明細書中に開示されている実施形態の範囲を逸脱することなく適当な均等物を用いてなし得ることは当業者に容易に認識される。本発明を詳細に記載してきたが、例示の目的で含まれており、本発明を限定する意図のない以下の実施例を参照することにより本発明はより明確に理解されるであろう。
【実施例0260】
方法
以下の方法は実施例セクションで使用する実験手順を詳細に説明する。
【0261】
(i)直接結合ELISAプレートを炭酸塩バッファー中2μg/mLの濃度でhRGM A(R&D)でコーティングした。次いで、ウェルを2% ブロッキング溶液(Bio-Rad)で室温で1時間ブロックした。ビオチニル化抗体を0.1% BSA/PBSで1:5希釈係数で連続希釈し、室温で1時間インキュベートした。検出試薬は0.1% BSA/PBS中のストレプトアビジン-HRPの1:10,000希釈物であった。検出をTMB試薬を用いて実施し、2N H2SO4で停止し、ODを450nMで読み取った。
【0262】
(ii)FACS分析
hRGM Aを過剰発現するHEK293細胞またはラットRGM Aを過剰発現するBAF3細胞の安定なトランスフェクタントを0.1% BSA/PBSバッファー中で非標識5F9または8D1 MABでの染色に4℃で15分以上かけた。検出はマウス抗ラットIgG PE抗体を用いて実施した。
【0263】
(iii)hRGM A-ネオゲニン結合アッセイにおいてMAB 5F9を評価するための固相ELISAアッセイ
ELISAプレート(Immuno Plate Cert.Maxi Sorb.F96 NUNC,439454)を2.5μg/mlの濃度のHisタグ付きヒトネオゲニンタンパク質の細胞外ドメイン(ストック溶液の濃度:30μg/ml)で37℃で1時間コーティングした。インキュベートした後、非結合ネオゲニンを0.02% トゥイーン20を含有するPBSを用いる3回の別々の洗浄ステップで除去した。3% ウシ血清アルブミン(BSA)、PBS、トゥイーン20(0.02%)ブロッキング溶液(200μl/ウェル)を添加することによりネオゲニンをコーティングしたプレートをブロックした。37℃で1時間インキュベートした後、ブロッキング溶液を除去し、ヒトfcタグをコンジュゲートしたRGM A断片または完全長タンパク質を場合により抗体と共に添加した。幾つかの実験では、抗体をfcコンジュゲートしたhRGM Aタンパク質と室温で1時間プレインキュベートした。ネオゲニンをコーティングしたプレートをhRGM Aと場合により抗体と共に37℃で1時間インキュベートした。PBS-トゥイーン20(0.02%)を用いる3回の洗浄ステップ後、プレートをビオチン標識した抗ヒトfc抗体(1mg/ml;0.6% BSA、0.02% トゥイーン20を含有するPBSで1:200希釈した;Jackson ImmunoResearch,カタログ番号709-065-149)と37℃で1時間インキュベートした。PBS-トゥイーン20(0.02%)を用いる3回の洗浄ステップにより非結合抗体を除去した。ビオチン標識した抗fc抗体の結合を可視化するために、0.6% BSA、0.02% トゥイーン20を含有するPBSで1:5000希釈したストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ(Roche,カタログ番号11089153001)から構成される複合体を添加した後、37℃で1時間インキュベートした。非結合ペルオキシダーゼ複合体を3回の連続洗浄ステップ(PBS-トゥイーン20(0.02%))で除去した後、ペルオキシダーゼ基質(Immuno Pure TMB,Pierce,#34021)を添加した。ウェルに添加してから1~30分後、基質反応を2.5M H2SO4により停止させた。プレートをAnthos光度計を用いて450nmの波長で分析した(OD測定)。
【0264】
(iv)hRGM A-BMP-4結合アッセイにおいてMAB 5F9を評価するための固相ELISAアッセイ
ELISAプレート(Immuno Plate Cert.Maxi Sorb.F96 NUNC,439454)を2.5μg/mlの濃度の組換えヒトBMP-4タンパク質(R&D Systems,#314-BP,ロット番号BEM316061)を含有する溶液で37℃で1時間コーティングした。インキュベーション後、非結合BMP-4を0.02% トゥイーン20を含有するPBSを用いる3回の別々の洗浄ステップで除去した。3% ウシ血清アルブミン(BSA)、PBS、トゥイーン20(0.02%)ブロッキング溶液(200μl/ウェル)を添加することによりBMP-4をコーティングしたプレートをブロックした。37℃で1時間インキュベートした後、ブロッキング溶液を除去し、ヒトfcタグをコンジュゲートしたRGM A断片または完全長タンパク質を場合により抗体と共に添加した。幾つかの実験では、抗体をfcコンジュゲートしたhRGM Aタンパク質と室温で1時間プレインキュベートした。BMP-4をコーティングしたプレートをhRGM Aと場合により抗体と共に37℃で1時間インキュベートした。PBS-トゥイーン20(0.02%)を用いる3回の洗浄ステップ後、プレートをビオチン標識した抗ヒトfc抗体(1mg/ml;0.6% BSA、0.02% トゥイーン20を含有するPBSで1:200希釈した;Jackson ImmunoResearch カタログ番号709,065-149)と37℃で1時間インキュベートした。非結合抗体をPBS-トゥイーン20(0.02%)を用いる3回の洗浄ステップにより除去した。ビオチン標識した抗fc抗体の結合を可視化するために、0.6% BSA、0.02% トゥイーン20を含有するPBSで1:5000希釈したストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ(Roche,カタログ番号11089153001)から構成される複合体を添加した後、37℃で1時間インキュベートした。3回の連続洗浄ステップ(PBS-トゥイーン20(0.02%))で非結合ペルオキシダーゼ複合体を除去した後、ペルオキシダーゼ基質(Immuno Pure TMB,Pierce #34021)を添加した。ウェルに添加してから1~30分後、基質反応を2.5M H2SO4により停止させた。プレートをAnthos光度計を用いて450nmの波長で分析した(OD測定)。
【0265】
(v)hRGM A-BMP-2結合アッセイにおいてMAB 5F9を評価するための固相ELISAアッセイ
ELISAプレート(Immuno Plate Cert.Maxi Sorb.F96 NUNC,439454)を2.5μg/mlの濃度の組換えヒトBMP-2タンパク質(R&D Systems,#355-BM,ロット番号MSA04)を含有する溶液で37℃で1時間コーティングした。インキュベートした後、非結合BMP-2を0.02% トゥイーン20を含有するPBSを用いる3回の別々の洗浄ステップで除去した。BMP-2をコーティングしたプレートを3% ウシ血清アルブミン(BSA)、PBS、トゥイーン20(0.02%)ブロッキング溶液(200μl/ウェル)を添加することによりブロックした。37℃で1時間インキュベートした後、ブロッキング溶液を除去し、ヒトfcタグをコンジュゲートしたRGM A断片または完全長タンパク質と場合により抗体と共に添加した。幾つかの実験では、抗体をfcコンジュゲートしたhRGM Aタンパク質と室温で1時間プレインキュベートした。BMP-2をコーティングしたプレートをhRGM Aと場合により抗体と共に37℃で1時間インキュベートした。PBS-トゥイーン20(0.02%)での3回の洗浄ステップ後、プレートをビオチン標識した抗ヒトfc抗体(1mg/ml;0.6% BSA、0.02% トゥイーン20を含有するPBSで1:200希釈した;Jackson Immuno Research,カタログ番号709,065-149)と37℃で1時間インキュベートした。PBS-トゥイーン20(0.02%)を用いる3回の洗浄ステップにより非結合抗体を除去した。ビオチン標識した抗fc抗体の結合を可視化するために、0.6% BSA、0.02% トゥイーン20を含有するPBSで1:5000希釈したストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ(Roche,カタログ番号11089153001)から構成される複合体を添加した後、37℃で1時間インキュベートした。非結合ペルオキシダーゼ複合体を3回の連続洗浄ステップ(PBS-トゥイーン20(0.02%))で除去した後、ペルオキシダーゼ基質(Immuno Pure TMB,Pierce #34021)を添加した。ウェルに添加してから1~30分後、基質反応を2.5M H2SO4により停止させた。プレートをAnthos光度計を用いて450nmの波長で分析した(OD測定)。
【0266】
(vi)Ntera-2細胞培養
ヒトNtera-2細胞はGerman Collection of Microorganisms and Cell Cultures(DMSZ,ブラウンシュヴァイク)から得た。未分化Ntera-2細胞の凍結ストックを10% ウシ胎児血清(FBS;JRH Bioscience,米国カンザス州)及び5% ウマ血清(HS;Sigma,ドイツ国)を含有するDMEM培地において解凍した。細胞が80%のコンフルエンスに達するまで細胞を培養フラスコ(Greiner,ドイツ国)において増殖した。
【0267】
ニューロン分化のために、Ntera-2細胞を2.5×106細胞/175cm2の密度で分化培地(10% FBS、5% HS、1% ペニシリン-ストレプトマイシン、レチノイン酸 10μΜを含有するDMEM培地)に接種した。細胞を3週間分化し、培地は週2回交換した。
【0268】
分化後、細胞をトリプシン-EDTAを用いて分離し、1:6の比で分裂させた。48時間後、ニューロン細胞をタッピングにより下にある細胞から分離した。除去した細胞を新しい培地での凝集のために新しい振とう培養フラスコ(Corning,米国)に移した。分化したNtera-2細胞をB27(Gibco)、グルタミン(Gibco)及びペニシリン-ストレプトマイシンを補充したニューロバーサル培地(Gibco)においてスムーズな水平振とう条件下で37℃で24時間凝集させた。Ntera-2凝集物を24ウェルプレートに約20~30個の凝集物/カバーガラスの密度で接種した。予めポリリシンが予めコーティングされているカバーガラスにラミニン(20μg/ml,Sigma)及び10μg/mlの濃度の組換えfcをカップリングしたヒトRGM A断片#786(アミノ酸47-168)をコーティングした。接種後、培養物を培養培地に3つの異なる濃度(0.1μg/ml,1μg/ml,10μg/ml)で添加した5F9 MABで処理し、更にニューロバーサル培地において37℃で24時間インキュベートした。次いで、凝集物を4% パラホルムアルデヒドを用いて固定し(2時間、室温)、PBS中0.1% トリトンX-100を添加することにより透過性付与した(20分間,室温)。蛍光染色のために、培養物を1% BSAを含有するPBSを用いて室温で1時間ブロックした。ブロック後、Ntera細胞をβ-チューブリンイソタイプ3に対するマウスモノクローナル抗体(クローンSDL3D10,Sigma #T8660)と室温で2時間インキュベートした。非結合抗体を3つの異なる洗浄ステップ(各5~15分間)により除去し、Ntera細胞をPBS/0.5% BSA+0.5μg/ml ビスベンズイミドで1:350倍希釈したCy-3コンジュゲートしたロバ抗マウス抗体(Jackson ImmunoResearch,ロット62597)とインキュベートした。1時間インキュベートした後、培養物を3回洗浄して、非結合二次抗体を除去した。蛍光顕微鏡観察のために、カバーガラスをフルオロマウントG(Southern Biotech,エヒング)中に包埋した。
【0269】
Ntera-2凝集物の画像をZeiss Axiovert 200蛍光顕微鏡を用いて獲得し、培養物の伸長を社内画像獲得及び分析システムを用いて自動的に分析した。伸長の自動分析はImage Pro Plus 4.5を用いて行い、データの統計学的分析はGraph Pad Prism 4を用いて実施した。伸長をヒトRGM A断片#786の非存在下で増殖させた対照培養物に対して正規化した。
【0270】
(vii)SH-SY5Y培養
SH-SY5Y細胞(ATCC,CRL-2266)は転移性脳腫瘍由来のヒト神経芽細胞腫細胞である。これらの細胞を50% アール平衡塩溶液(Invitrogen Life Technologies,カタログ番号24010-043)及び50% F12(Ham)Nutrient Mix+GlutaMAX-1(Invitrogen Life Technologies、カタログ番号31765-027)から構成される培地において増殖させた。この培地には更に熱不活化10% ウシ胎児血清(FCS,JRH Biosciences,カンザス州,カタログ番号12107-1000M)、1% NEAA(MEM非必須アミノ酸溶液(Sigma-Aldrich,カタログ番号M1745)及び1% ペニシリン(10.000U/ml)/ストレプトノイシン(10.000μg/ml)(Invitrogen Life Technologies,カタログ番号15140-122)が補充されている。ニューロンプロセスのニューロン分化及び増殖を刺激するために、SH-SY5Y細胞を10μΜ レチノイン酸(RA,Sigma-Aldrich,カタログ番号R2625-050MG))を補充した培地において数日間培養した。分化したSH-SY5Y細胞を組織培養フラスコにおいて増殖させ、注意深くトリプシン処理することにより除去し、RGM Aタンパク質またはその断片及びコラーゲンIをストライプ状パターンでコーティングしたカバーガラス上で平板培養した。
【0271】
(viii)ストライプ状カバーガラスの作成
カバーガラスでのストライプアッセイの修飾バージョンを先に記載されている方法(Knoellら,Nature Protocols,2:1216-1224、2007)を僅かに変更して実施し、以下に要約する。
【0272】
精製タンパク質から構成されるストライプを作成するための滅菌シリコーンマトリックスをペトリ皿の表面上にマトリックスの粗面を上向きに押した。エタノール洗浄したきれいなカバーガラスをマトリックス上に置き、マトリックスのコーナーにカバーガラスの背面でボールペンで印を付ける。カバーガラスを載せたマトリックスを注意深く逆さまにし、カバーガラスをペトリ皿の底に向けた。Fcコンジュゲートした完全長阻害性RGM A、或いはそのfc断片または組換えヒトRGM A(R&D Systems,カタログ番号2459 RM)をFITC標識した抗マウス抗体(Fab特異的ヤギ抗マウスIgG,Sigma-Aldrich,カタログ番号F-4018)(10μl)と混合して、RGM Aストライプを可視化した。ハミルトンシリンジを用いてRGM A-FITC抗体溶液(50μl)を注意深く入口チャネルを介して注入する。過剰の流体は出口チャネルを介してマトリックスから離れ、クリネックスクロスで除去する。マトリックス-カバーガラスを37℃で2時間インキュベートした後、第1コーティング溶液(RGM Aを含有する)をPBS(100μl)を用いて洗い流した。次のステップで、RGM Aストライプを有するカバーガラスを24ウェルプレートに移し、RGM Aストライプ間の空スペースを埋めるためにコラーゲンI(ラット尾部コラーゲンI,Becton Dickinson Biosciences,カタログ番号354236)(500μl)をコーティングし、37℃で2時間インキュベートした。最後に、RGM A及びコラーゲンIの交互ストライプのパターンがカバーガラス上で生じた。インキュベートした後、非結合コラーゲンIをPBSを用いる3回の別々の洗浄ステップで洗い流し、分化したSH-SY5Y細胞をカバーガラス上に配置した。パターン化基質上でのSH-SY5Y細胞のインキュベーションをヒトRGM Aに対するモノクローナル抗体の存在下または非存在下で37℃で20~24時間持続した。
【0273】
免疫蛍光分析のために、細胞を4% パラホルムアルデヒド中に室温で2時間または4℃で一晩固定し、0.1% トリトンX-100を含有するPBSと室温で10~20分間インキュベートすることにより透過性付与した。3% BSAで60分間ブロックした後、細胞を一次抗体(モノクローナル抗β-チューブリンイソタイプ3 クローンSDL 3D10,Sigma-Aldrich,カタログ番号T8660)と室温で2時間インキュベートし、数回の洗浄ステップ後PBS+0.1% BSAで希釈した二次抗体(Cy-3ロバ抗マウス,Jacksonlmmuno Research,ロット62597)とインキュベートした。核をビスベンズイミドH33258(Riedel-De-Haen,カタログ番号A-0207)を用いて対比染色した。最後に、細胞をフルオロマウントG(Southern Biotechnology Associates Inc.,カタログ番号010001)中に包埋した。細胞をAxioplan2蛍光顕微鏡(Zeiss)を用いて分析した。
【0274】
(ix)組換え抗RGM A抗体の構築及び発現
ラット抗ヒトRGM Aモノクローナル抗体5F9及び8D1の重鎖可変領域のcDNA断片をエンコードするDNAを、2つのヒンジ領域アミノ酸突然変異を含むヒトIgG定常領域を含有するpHybE発現ベクターに細菌での相同組換えによりクローン化した。これらの突然変異は234及び235位(EUナンバリング,Lundら,1991,J.Immunol,147:2657)でのロイシンのアラニンへの変化である。5F9及び8D1モノクローナル抗体の軽鎖可変領域をヒトκ定常領域を含むpHybEベクターにクローン化した。典型的なpHyb-Eベクターには、pHybE-hCk及びpHybE-hCgl,z,non-a(米国特許出願No.61/021,282を参照されたい)が含まれる。pHybE発現プラスミドに連結したキメラ重鎖及び軽鎖cDNAをコトランスフェクトすることにより完全長抗体を293E細胞において一時的に発現させた。組換え抗体を含有する細胞上清をプロテインAセファロースクロマトグラフィーにより精製し、酸バッファーを添加することにより結合抗体を溶離させた。抗体を中和し、PBSに透析した。その後、精製した抗ヒトRGM Aモノクローナル抗体を実施例1に記載されているELISA及び実施例7に記載されている競合ELISAによりRGM Aに結合する能力について試験した。
【0275】
[実施例1]:抗ヒトRGM Aモノクローナル抗体の作成
抗ヒトRGM Aラットモノクローナル抗体を次のように得た。
【0276】
実施例1A:ラットのヒトRGM A抗原での免疫化
1日目に、4匹の6~8週齢Harlan Sprague Dawleyラットに完全フロイントアジュバント(Sigma)と混合した組換え精製したヒトRGM A(R&D Systems,カタログ番号2459-RM,ロットMRH02511A)(25μg)を皮下注射した。21、42及び63日目に、同一の4匹のHarlan Sprague Dawleyラットに不完全フロイントアジュバント(Sigma)と混合した組換え精製したヒトRGM A(24μg)を皮下注射した。144日目または165日目に、ラットに組換え精製したヒトRGM A(10μg)を静脈内注射した。
【0277】
実施例1B:ハイブリドーマの作成
実施例1.2.Aに記載した免疫化したラットから得た脾細胞をKohler,G.and Milstein,1975,Nature,256:495に記載されている確立されている方法に従ってSP2/O-細胞と2:1の比で融合して、ハイブリドーマを作成した。融合産物を96ウェルプレートにおいて1.5×105脾細胞/ウェルの密度でアザセリン及びヒポキサンチンを含有する選択培地中で平板培養した。融合から7~10日後、巨視的なハイブリドーマコロニーが観察された。ハイブリドーマコロニーを含有している各ウェルからの上清をヒトRGM Aに対する抗体の存在について直接ELISA(実施例2を参照されたい)により試験した。ELISAポジティブ細胞株をFACSにおいてヒト及び/またはラットRGM Aを発現する安定なトランスフェクトHEK293細胞に対して試験した。その後、これらのラットハイブリドーマ細胞株を直接ELISAにおいてラットRGM Aとの交差反応性及びHuRGM A 47-168融合タンパク質に対するELISA結合について試験した。
【0278】
【0279】
[実施例2]:
mAB 5F9及び8D1の直接ELISA結合
図1Aに示すように、上記セクション(i)に記載されているMAB 5F9及び8D1は同様の力価でhRGM Aに結合する。MAB 5F9はELISAにおいてラットRGM Aに結合することも判明したが、8D1はラットRGM Aに結合できない(データ示さず)。
図1Bは、MAB 5F9及び8D1がFACSにおいてhRGM Aを過剰発現するHEK293細胞に結合することを示す。
図1Cは、8D1ではなく5F9がFACSにおいてラットRGM Aを過剰発現するBAF3細胞に結合することができることを示す。FACSはセクション(ii)に記載されているように実施した。
【0280】
固相ELISAアッセイは、競合的hRGM A-ネオゲニン結合アッセイにおいてMAB 5F9結合を評価するために使用した。ELISAプレートを本明細書のセクション(iii)に記載されているように作成し、使用した。hRGM Aを0.5μg/mlの濃度で5F9抗体と一緒に37℃で1時間添加した。MAB 5F9を以下の濃度で、すなわち1.25μg/ml、0.63μg/ml、0.32μg/ml、0.16μg/ml、0.08μg/ml、0.04μg/ml、0.02μg/ml、0.01μg/mlで使用した。hRGM Aの結合をビオチン標識した抗fc抗体及びストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ複合体を用いて可視化した。プレートをAnthos光度計を用いて450nmの波長で分析した(OD測定)。
図2に示すように、3つの最高抗体濃度が完全長ヒトRGM Aのネオゲニンに対する結合を用量依存的に阻害した。
【0281】
固相ELISAアッセイは、競合的hRGM A-BMP-4結合アッセイにおいてMAB 5F9を評価するためにも使用した。ELISAプレートを本明細書のセクション(iv)に記載されているように作成し、使用した。hRGM Aを0.5μg/mlの濃度で5F9抗体と一緒に37℃で1時間添加した。MAB 5F9を以下の濃度で、すなわち1.25μg/ml、0.63μg/ml、0.32μg/ml、0.16μg/ml、0.08μg/ml、0.04μg/ml、0.02μg/ml、0.01μg/mlで使用した。hRGM Aの結合をビオチン標識した抗fc抗体及びストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ複合体を用いて可視化した。プレートをAnthos光度計を用いて450nmの波長で分析した(OD測定)。
図3に示すように、4つの最高抗体濃度が完全長ヒトRGM AのBMP-4に対するに対する結合を用量依存的に阻害した。
【0282】
固相ELISAアッセイは、BMP-4に対する断片0(47-168)hRGM AのMAB 5F9結合阻害を評価するためにも使用した。ELISAプレートを2.5μg/mlの濃度のヒト組換えBMP-4タンパク質で37℃で1時間コーティングした。hRGM A軽鎖(断片0,47-168)を0.5μg/mlの濃度で5F9抗体と一緒に37℃で1時間添加した。MAB 5F9を以下の濃度で、すなわち1.25μg/ml、0.63μg/ml、0.32μg/ml、0.16μg/ml、0.08μg/ml、0.04μg/ml、0.02μg/ml、0.01μg/mlで添加した。hRGM Aの結合をビオチン標識した抗fc抗体及びストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ複合体を用いて可視化した。プレートをAnthos光度計を用いて450nmの波長で分析した(OD測定)。
図4は、1.25μg/ml,0.63μg/ml及び0.32μg/mlの抗体濃度がヒトRGM A軽鎖のBMP-4に対する結合を用量依存的に阻害することを示している。
【0283】
固相ELISAアッセイは、競合的hRGM A-BMP-2結合アッセイにおいてMAB 5F9結合を評価するためにも使用した。ELISAプレートを本明細書のセクション(v)に記載されているように作成し、使用した。完全長hRGM Aを0.5μg/mlの濃度で5F9抗体と一緒に37℃で1時間添加した。MAB 5F9を以下の濃度で、すなわち5μg/ml、2.5μg/ml、1.25μg/ml、0.63μg/ml、0.32μg/ml、0.16μg/mlで使用した。hRGM Aの結合をビオチン標識した抗fc抗体及びストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ複合体を用いて可視化した。プレートをAnthos光度計を用いて450nmの波長で分析した(OD測定)。
図5は、抗体濃度5μg/ml、2.5μg/ml、1.25μg/ml、0.63μg/mlが完全長ヒトRGM AのBMP-2に対する結合を阻害することを示している。
【0284】
固相ELISAアッセイは、hRGM A-ネオゲニン、hRGM A-BMP-2及びhRGM A-BMP-4結合アッセイにおいてMAB 5F9及び8D1を評価するためにも使用した(
図9)。記載されているように、ELISAプレートを2.5μg/mlの濃度のHisタグ付きヒトネオゲニンタンパク質の細胞外ドメイン、或いは2.5μg/mlのBmp-2またはBMP-4で37℃で1時間コーティングした。完全長fcコンジュゲートしたhRGM Aを0.5μg/mlの濃度で抗体と一緒に37℃で1時間添加した。MAB 5F9及び8D1を以下の濃度で、すなわち5μg/ml、2.5μg/ml、1.25μg/ml、0.63μg/ml、0.32μg/ml、0.16μg/ml、0.08μg/mlで使用した。hRGM Aの結合をビオチン標識した抗fc抗体及びストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ複合体を用いて可視化した。プレートをAnthos光度計を用いて450nmの波長で分析した(OD測定)。
図9に示すように、ラットモノクローナル抗体8D1はヒトRGM AのBMP-2及びBMP-4に対する結合を阻害または低下させるが、そのネオゲニンに対する結合を阻害できない。
【0285】
[実施例3]:
分化したヒトNTeraニューロンの凝集物を用いる神経突起成長アッセイにおけるmAb 5F9活性
Ntera細胞を入手し、本明細書の方法セクション(vi)に記載されているように培養した。mAb 5F9は、分化したヒトNTeraニューロンの凝集物を用いる神経突起伸長アッセイにおいてヒトRGM Aタンパク質の有力なfcコンジュゲートされている軽鎖(アミノ酸47-168)の神経突起伸長阻害活性を中和した。
図6に示すように、阻害性RGM Aタンパク質または断片の非存在下及び伸長刺激基質ラミニンの存在下で、ニューロンNTera凝集物は伸長している神経突起の広範囲の濃密なネットワークを示す(A)。また、
図6に示すように、hRGM A軽鎖が存在すると、NTera神経突起の数、密度及び長さが劇的に低下し、hRGM A断片の有力な阻害活性を証明する。凝集物から離れた数個の神経突起は短く、きつく束ねられている(B)。
図6のパートC~Eは、培養物に添加したMAB 5F9の濃度が上昇すると、hRGM A軽鎖断片の神経突起成長阻害活性が用量依存的に中和または阻害されることを示している。MABの濃度の増加につれて、NTeraニューロン凝集物の伸長がRGM A阻害剤の存在にかかわらず完全に回復する(C:0.1μg/ml MAB 5F9;D:1μg/ml MAB 5F9;E:10μg/ml MAB 5F9)。
【0286】
ヒトRGM Aタンパク質の有力なfcコンジュゲートされている軽鎖阻害性断片(アミノ酸47-168)を試験するために、ヒトNTera凝集物を用いる神経突起成長アッセイにおけるMAB 5F9の中和活性の定量分析を実施した。凝集物をビスベンズイミドで染色することにより培養物の伸長を自動的に分析した後、写真撮影した。染色は伸長している神経突起ではなく凝集物のみに印をつけた。しかしながら、これらをβ3-チューブリンに対する抗体及び蛍光体標識二次抗体で染色した。凝集物及びそのプロセスのβ3-チューブリン染色面積から細胞体の面積を差し引くことにより求められる指標である神経突起伸長指標を計算することにより神経突起伸長を自動的に調べた。次いで、このファクターをLingorら,J.Neurochem.,103:181-189,2007に記載されているように細胞体の面積で割る。
図7は、MAB 5F9がヒトNtera凝集物を用いる神経突起成長アッセイにおいてfcコンジュゲートされている有力なhRGM A阻害剤断片(断片0,47-168;10μg)の伸長阻害活性を用量依存的に(0.1~10.0μg)中和したことを示している。
【0287】
[実施例4]:
hRGM A1コラーゲンIストライプにおけるmAb 5F9活性
SH-SY5Y細胞を本明細書のセクション(vii)に記載されているように培養し、使用した。RGM A及びコラーゲンIを含むストライプ状カバーガラスを本明細書のセクション(viii)に記載されているように作成した。文献(Knoellら,Nature Protocols,2:1216-1224,2007)に記載されているプロトコルに従う実験のためにhRGM A/コラーゲン及びコラーゲンIの交互ストライプを含むカーペットを作成した。5F9 MAB(A)の非存在下で、ニューロンSH-SY5Y細胞はコラーゲンIストライプに対する明らかな選択を示し、細胞の90%以上がhRGM AストライプよりもコラーゲンIストライプを選択する。MAB 5F9の濃度が増加するにつれて、ニューロンSH-SY5Y細胞はコラーゲンIストライプよりもhRGM Aストライプを選択する(B~E)。使用した最高のMAB濃度で(E)、SH-SY5YニューロンはコラーゲンIストライプと比較してhRGM Aストライプに対して強い選択を示す(
図8を参照されたい)。魅力的な活性でRGM Aの阻害性を変換したので、このことは5F9 MABのユニークな特性と解釈され得る。高濃度の5F9の存在下で、ニューロン細胞はコラーゲンIのような許容基質上ではなく、RGM A基質上で遊走し、増殖することを選択する。このユニークな特徴はモノクローナル抗体に対して今まで記載されていない。
【0288】
[実施例5]:CDRグラフト化抗体の構築
当業界で公知の標準方法を適用することにより、モノクローナル抗体5F9(上表5を参照されたい)のVH及びVL鎖のCDR配列を別のヒト重鎖及び軽鎖アクセプター配列にグラフト化する。配列VH及びVLの本発明のモノクローナル抗体5F9のVH及びVL配列とのアラインメントに基づいて、以下の公知のヒト配列を選択する:
a)重鎖アクセプター配列(上表3に従う)を構築するためにVH3-48、VH3-33及びVH3-23、並びに連結配列hJH3、hJH4及びhJH6;
b)軽鎖アクセプター配列(上表4に従う)を構築するためにA17及びA18、並びにhJK2。
【0289】
5F9の対応するVH及びVL CDRをアクセプター配列にグラフト化することにより、以下のCDRグラフト化ヒト化修飾VH及びVL配列、すなわちVH 5F9.1-GL、VH 5F9.2-GL、VH 5F9.3-GL、VH 5F9.4-GL、VH 5F9.5-GL、VH 5F9.6-GL、VH 5F9.7-GL、及びVH 5F9.8-GL;VL 5F9.1-GL、VL 5F9.2-GL及びVL 5F9.3-GLを作成した(上表6も参照されたい)。
【0290】
[実施例6]:CDRグラフト化抗体中のフレームワーク復帰突然変異の構築
ヒト化抗体フレームワーク復帰突然変異を作成するために、可変ドメインのデノボ合成及び/または変異誘発プライマー及びPCR、並びに当業界で公知の方法を用いることにより実施例5に従って作成したCDRグラフト化抗体配列に突然変異を導入する。CDRグラフトの各々に対して次のように復帰突然変異及び他の突然変異の各種組合せを構築する。
【0291】
重鎖VH 5F9.1-GL、VH 5F9.2-GL及びVH 5F9.3-GLに対して、以下のバーニヤ及びVH/VLインターフェース残基の1つ以上を次のよう復帰突然変異する:V37M→I、V48→I、S49→G及び/またはR98→K。
【0292】
重鎖VH 5F9.4-GL、VH 5F9.5-GL及びVH 5F9.6-GLに対して、以下のバーニヤ及びVH/VLインターフェース残基の1つ以上を次のよう復帰突然変異する:V37→I、V48→I、A49→G、R98→K。
【0293】
重鎖VH 5F9.7-GL、VH 5F9.8-GL及びVH 5F9.9-GLに対して、以下のバーニヤ及びVH/VLインターフェース残基の1つ以上を次のよう復帰突然変異する:V37→I、V48→I、S49→G。
【0294】
追加突然変異には、
重鎖VH 5F9.1-GL、VH 5F9.2-GL及びVH 5F9.3-GLに対して、D88→A、
重鎖VH 5F9.4-GL、VH 5F9.5-GL及びVH 5F9.6-GLに対して、Q1→E、及び
重鎖VH 5F9.7-GL、VH 5F9.8-GL及びVH 5F9.9-GLに対して、L5→V
が含まれる。
【0295】
軽鎖VL 5F9.1-GLに対して、以下のバーニヤ及びVH/VLインターフェース残基の1つ以上を次のよう復帰突然変異する:I2→V、M4→L、Y41→F。
【0296】
軽鎖VL 5F9.2-GLに対して、以下のバーニヤ及びVH/VLインターフェース残基の1つ以上を次のよう復帰突然変異する:M4→L、R51→L。
【0297】
軽鎖VL 5F9.3-GLに対して、以下のバーニヤ及びVH/VLインターフェース残基の1つ以上を次のよう復帰突然変異する:M4→L、Y41→F。
【0298】
[実施例7]:組換えヒト化抗RGM A抗体の構築及び発現
上記セクション(ix)に記載されているように、フレームワーク復帰突然変異を含む重鎖及び軽鎖を有するpHybE発現ベクターを293-6E細胞にコトランスフェクトして完全長ヒト化抗体を一時的に産生させる。実施例5に従って作成したCDRグラフト化抗体配列に突然変異を可変ドメインの新規合成により、及び/または変異誘発ブライマー及びPCR、並びに当業界で公知の方法を用いて導入した。ヒト化抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列を表8に開示する。
【0299】
具体的には、重鎖に対して、
VH 5F9.1、VH 5F9.5及びVH 5F9.9はQ1→E突然変異を有するVH 5F9.4-GLを含む。
【0300】
VH 5F9.2、VH 5F9.6、VH 5F9.10、VH 5F9.19、VH 5F9.20、VH 5F9.21及びVH 5F9.22はQ1→E突然変異及び以下のバーニヤ及びVH/VLインターフェース残基復帰突然変異:V37→I、V48→I、A49→G、R98→Kを有するVH 5F9.4-GLを含む。
【0301】
VH 5F9.3、VH 5F9.7及びVH 5F9.11はL5→V突然変異を有するVH 5F9.7-GLを含む。VH 5F9.4、VH 5F9.8、VH 5F9.12、VH 5F9.23、VH 5F9.24、VH 5F9.25及びVH 5F9.26はL5→V突然変異及び 以下のバーニヤ及びVH/VLインターフェース残基復帰突然変異:V37→M、V48→M、S49→Gを有するVH 5F9.7-GLを含む。
【0302】
軽鎖に対して、
VL 5F9.1、VL 5F9.2、VL 5F9.3及びVL 5F9.4はVL 5F9.1-GLと同一である。
【0303】
VL 5F9.5、VL 5F9.6、VL 5F9.7及びVL 5F9.8はVL 5F9.2-GLと同一である。
【0304】
VL 5F9.9、VL 5F9.10、VL 5F9.11及びVL 5F9.12はVL 5F9.3-GLと同一である。
【0305】
VL 5F9.19及びVL 5F9.23は以下のバーニヤ及びVH/VLインターフェース残基復帰突然変異:M4→L、R51→Lを含むVL 5F9.2-GLである。VL 5F9.20及びVL 5F9.24は以下のバーニヤ及びVH/VLインターフェース残基復帰突然変異:M4→Lを含むVL 5F9.2-GLを含む。
【0306】
VL 5F9.21及びVL 5F9.25は以下のバーニヤ及びVH/VLインターフェース残基復帰突然変異:M4→L、Y41→Fを有するVL 5F9.3-GLを含む。VL 5F9.22及びVL 5F9.26は以下のバーニヤ及びVH/VLインターフェース残基復帰突然変異:M4→Lを有するVL 5F9.3-GLを含む。
【0307】
【0308】
[実施例8]:ヒト化5F9抗体の競合ELISAを用いる特徴づけ
ELISAプレート(Costar 3369)を0.2M 炭酸-炭酸水素ナトリウムバッファー(pH9.4)中0.25μg/ml hRGM A(50μl/ウェル)で4℃で一晩コーティングし、洗浄バッファー(0.1% トゥイーン20を含有するPBS)で洗浄し、PBS中2% 脱脂粉乳(200μl/ウェル)を用いて室温で1時間ブロックした。洗浄バッファーで洗浄した後、50μl/ウェルのELISAバッファー中のビオチニル化キメラ5F9(0.1μg/mlの最終濃度)及び非標識競合試験抗体(50μg/mlの最終濃度から初めて、5倍連続希釈する)の混合物を2組添加した。プレートを室温で1時間インキュベートし、洗浄バッファーで洗浄した後、結合抗体をELISAバッファー中のHRPコンジュゲートしたストレプトアビジン(Fitzgerald)の1:10,000希釈物(100μl/ウェル)を用いて検出した。室温で1時間インキュベートし、洗浄バッファーで洗浄した後、TMBバッファー(Zymed)(100μl/ウェル)を添加することにより発色させた。室温で15分間インキュベートした後、1N 塩酸(50μl/ウェル)を添加することにより発色を停止した。吸光度を490nmで読み取った。
【0309】
表9は、コンピューターソフトウェアGraphPad Prism(GraphPad Software Inc.,カリフォルニア州サンジェゴ)を用いて得たヒト化5F9抗体のIC50値を示す。
【0310】
【0311】
[実施例9]:キメラ及びヒト化抗体のBIACOREテクノロジーを用いる親和性測定
BIACOREアッセイ(Biacore,Inc.,ニュージャージー州ピスカタウェイ)は、オン及びオフ速度定数のカイネティック測定で抗体の親和性を調べる。抗体の組換え精製したヒトRGM Aに対する結合を、25℃でランニングHBS-EP(10mM HEPES[pH7.4]、150mM NaCl、3mM EDTA及び0.005% 界面活性剤P20)を用いてBiacore(登録商標)3000計器(Biacore(登録商標)AB,スウェーデン国ウプサラ)での表面プラズモン共鳴に基づく測定により調べた。すべての化学物質はBiacore(登録商標)AB(スウェーデン国ウプサラ)から入手した。10mM 酢酸ナトリウム(pH4.5)で希釈した約5000RUのヤギ抗ヒトIgG,(Fcγ),断片特異的ポリクローナル抗体(Pierce Biotechnology Inc.,イリノイ州ロックフォード)を標準アミンカップリングキットを製造業者の使用説明書及び手順に従って使用してCM5研究グレードのバイオセンサーチップに25μg/mlで直接固定化した。バイオセンサー表面上の未反応部分をエタノールアミンでブロックした。フローセル2及び4中の修飾カルボキシメチルデキストラン表面を反応表面として使用した。フローセル1及び3中のヤギ抗ヒトIgGなしの未修飾カルボキシメチルデキストランを参照表面として使用した。ヤギ抗ヒトIgG特異的反応表面を捕捉するために精製抗体をHEPES緩衝食塩液で希釈した。リガンドとして捕捉しようとするヒト抗体(25μg/ml)を5μl/分の流速で反応マトリックスに注入した。会合及び解離速度定数kon(単位M-1s-1)及びkoff(単位s-1)を25μl/分の連続流速で測定した。0.39~50nmの範囲の10個の異なる抗原濃度でカイネティック結合を測定することにより速度定数を求めた。カイネティック分析のために、1:1ラングミュア結合モデルから誘導した速度式をBioevaluation 4.0.1ソフトウェアを用いて8個すべての注入の会合及び解離相に同時に(グローバルフィット分析を用いて)あてはめた。次いで、ヒト化抗体と組換え精製したヒトRGM A間の反応の平衡解離定数(単位M)をカイネティック速度定数から以下の式:KD=koff/konにより計算した。
【0312】
【0313】
[実施例10]:ヒト化5F9抗体はニューロンSH-SY5Y走化性アッセイにおいてヒトRGM Aの化学反発活性を中和する
走化性アッセイは、化学誘引または化学反発活性を示し得る拡散性因子に応答した細胞の走化挙動を調べる。RGM Aは膜結合した形態(接触依存性反発)及び可溶性拡散性形態(化学反発性)で作用するタンパク質と記載されており、従ってhRGM A走化性アッセイで評価されている。この目的のために、RGM受容体ネオゲニンを有するRGM A感受性ヒト神経芽細胞腫細胞SH-SY5Yを使用した(Schaffarら,J.Neurochemistry,107:418-431,2008)。SH-SY5Y細胞を10% ウシ胎児血清及び1% 非必須アミノ酸(MEM-NEAA)を補充したアール平衡塩溶液/F12(EBSS/F12)培地において増殖させた。神経突起伸長を誘導させるために、細胞を10μΜ レチノイン酸(RA)を補充した培地において培養した。5~6時間後、細胞をトリプシン処理し、24ウェルBoyden Chambers(BD Falcon 351185,HTS Multiwell System)で平板培養するためにカウントした。500μlの(l×105細胞に相当する)細胞懸濁液を各ウェルの内円に添加した。この内円を孔径8μmのPET膜により各ウェルの大きな外円から分離した。外円に培地±RGM A±抗体(600μl)をピペットで導入し、細胞をMultiwell Boyden Chambersにおいて37℃で一晩培養した。インキュベートした後、培地を吸引し、固定剤(2% パラホルムアルデヒド)で置換した。固定を室温で2時間継続し、PBSで数回洗浄した後、透過性付与を0.1% トリトン-X-100を含有するPBSを用いて実施した(15分、室温)。細胞をAlexa Fluor 488 ファロジン1:100(Invitrogen A12379)及びビスベンズイミド(H332456)1:100の溶液を用いて暗所で1時間インキュベートすることにより細胞染色を実施した。PBSで2回洗浄した後、培養物にPBSを充填し、パラフィルムでシールし、蛍光顕微鏡(Zeiss Axiovert)で分析するために暗所で保存した。
【0314】
hRGM Aの非存在下では、細胞は膜孔を介して移動し、固定及び染色後カウントし得る。細胞がPET膜を介して移動したので、膜の底に付着している細胞のみがカウントされる。固定手順前に、膜の上側にある細胞を注意深く除去した。この走化性アッセイは、hRGM Aの存在が膜を介して移動するSH-SY5Y細胞の数を80%以上有意に減少させたことを立証した。イソタイプ対照ラットモノクローナル抗体(p21)ではなく、ラットモノクローナル5F9、キメラヒト-ラット5F9及びヒト化5F9は10μg/mlでhRGM Aの化学反発活性を部分的または完全に中和し、膜の底に存在している多数の細胞として示された(
図10)。
【0315】
[実施例11]:5F9は視神経損傷のラットモデルにおいて挫滅、ダメージを受けたミエリン形成視神経軸索の再生を誘導する
視神経挫滅(または、視神経損傷)のモデルは、視神経線維の再生を刺激し、網膜神経節細胞の大量細胞死を減らす各種物質を試験するための動物モデルを提供する。
【0316】
実験は、Charles River(D)Laboratories(ドイツ)から入手した成体雄Sprague Dawley及び雌Wistarラットで実施した。動物を12:12時間の明暗周期で単一ケージに入れ、餌及び水は自由に摂取させた。視神経挫滅は常に左眼にのみ最小の前部手術により実施する。これは視神経損傷の最小侵襲性方法であり、ヒト前部視覚手術方法に従って我々が開発した。手術手順の前及びその間、セボフルラン(Abbott GmbH Co.and KG,ドイツ国Delkenheim)を用いて麻酔薬を吸入することにより動物に麻酔をかけ、四肢にジョークランプ及び接着テープを用いることにより手術台に固定した。動物を加熱パッド上に載せることにより体温低下を防止する。ラット視神経の前部挫滅手術のために、左眼の靱帯及び結合組織を注意深く取り除く。第1ステップとして、目尻の隣接組織を顕微鏡手術で切り取る(2~3mm)。次いで、視神経をピンセットを用いて露出させて、眼の筋肉及び涙腺を片側に寄せ、よって残しておく。次のステップで、髄膜をマイクロ剪刀を用いることにより縦方向に開いて視神経を露出させた。
【0317】
こうすると、眼の移動性が高まり、眼の左右回転及び左視神経への接近が可能となる。一定最大圧力を20~30秒間与えるように視神経をピンセットを用いて眼の後を約1~3mm損傷させる。眼への血管供給を傷つけないように特別の注意を払う。
【0318】
a)抗体及びバッファー溶液の局所投与
視神経を挫滅損傷させた後、雄Sprague Dawleyラットを5F9抗体(n=10匹の動物)、8D1対照抗体(n=10匹の動物)またはビヒクル対照PBS(n=10匹の動物)で局所処理した。実験は異なる治療群について盲検であった。局所抗体適用のために、小さいゲルフォームピース(長さ:2.5mm,幅:2.5mm,高さ:2.5mm)に10mg/mlの抗体溶液(20μl)またはPBS(20μl)を浸し、視神経病変部位の直接隣に置いた。最小侵襲手術及び抗体適用後、動物が動き始めるまで体温を管理するために加温器上に載せたクリーンケージ内のベーバータオルの上に置いた。細菌感染及び強膜の乾燥を避けるために抗生物質(Gentamytrex,Dr.Mann Pharma)を含有する軟膏を眼に適用した。術後疼痛治療のために、カルプロフェン(Rimadyl,5mg/kg,Pfizer GmbH,カールスルーエ)を手術直後、その後3日間1日2回腹腔内投与した。すべての動物が生き延び、麻酔及び手術から回復するように手術直後及び翌日動物を数時間定期的に観察し、管理した。手術及び抗体/ビヒクル適用から5週間後、動物を過剰量のナルコレン(40~60mg/kg)で麻酔し、心臓に4% パラホルムアルデヒド溶液を注射することにより潅流させた。視神経を単離し、組織を正しく固定するために4% パラホルムアルデヒド溶液に室温で1時間移した。後固定後、ラットの視神経を30% スクロース溶液(4℃)中に一晩保存した。翌日、視神経をTissue Tek中に包埋し、凍結し、厚さ16μmの縦切片をクライオスタットを用いて作成した。
【0319】
免疫染色のために、視神経切片を冷(-20℃)アセトン(10分間)で固定し、トリス緩衝食塩液(TBS,Fluka 93312)で3回(5分間)洗浄し、5% ウシ血清アルブミン及び1% トリトン-X-100を含有しているTBSを用いてブロックし、透過性付与した(室温,30分間)。残留するBSA及び洗浄剤をTBSを用いる2回の別々の洗浄ステップ(各々5分間)により除去した。切片を5% BSA/TBS溶液で1:100希釈したポリクローナル家兎抗GAP-43抗体(Abeam,ab 7562)と室温で1時間インキュベートした。TBS+0.1% トゥイーンを用いる3回の洗浄ステップ後、細胞核を可視化するために切片をビスベンズイミド(H33258,50μg/ml)の1:100 希釈物を含有する5% BSA/TBSで1:1000希釈したAlexa Fluor 488コンジュゲートしたヤギ抗家兎二次抗体(Molecular Probes A11034)と室温で1時間インキュベートした。包埋前に、染色した切片をTBS+0.1% トゥイーンで3回(各ステップ5分間)、蒸留水で洗浄した。切片をフルオロマウントG中に包埋し、カバーガラスを被せ、顕微鏡観察のために暗所で保存した。
【0320】
Zeiss蛍光顕微鏡を用いて、染色した縦切片の画像(
図11)をZeiss Axiovisonソフトウェアを用いて保存した。各神経の単一ピクチャーをPhotoshop画像分析ソフトウェア(Adobe)を用いる分析のために載せた。視神経の複合画像を用いて2つの異なる方法で定量分析を実施した。病変部位のGAP-43ポジティブ面積をAxiovisionソフトウェアを用いて測定した(
図12B)。第1の定量分析とは別に、単一再生線維(GAP-43ポジティブ)を挫滅部位を超える4つの異なる域、すなわち0~200μm、200~400μm、400~600μm及び600~1200μmでカウントした。データ分析及びデータの統計学的評価をGraphpad Prismソフトウェアを用いて実施した(
図12A)。
【0321】
b)抗体及びバッファー溶液の全身投与
全身抗体デリバリーのために、雄Wistarラットを5F9抗体(n=10匹の動物)またはビヒクル対照PBS(n=10匹の動物)で全身(腹腔内(ip)または静脈内(iv))処理した。動物に2回注射し、注射は神経挫滅を誘導した直後の0日目及び挫滅から21日目に実施した。投与した抗体の用量は0日目に2mg/kg、21日目に10mg/kgであった。挫滅損傷から5週後に動物を殺し、組織単離、切片の作成、染色及び定量分析を上記したように実施した。前と同様に、実験は2つの異なる治療群について盲検であった。ラット視神経の複合画像を
図13に示す。5F9処理動物(A)では、多くのGAP-43ポジティブ線維がPBSで処理した対照動物(B)に比して挫滅部位を超えて伸長している。挫滅部位は左マージンに位置し、再生線維をGAP-43に対する抗体で染色する。PBS動物ではなく、5F9処理動物の視神経の上縁及び下縁で多くの線維が観察される。
【0322】
ビヒクル対照PBSではなく、5F9は再生GAP-43ポジティブ線維の数を有意に増加させた。5F9で処理した動物ではビヒクル処理動物よりも300μm~1800μmの距離で有意に(p<0.001)より多くの線維が見られた。動物を0及び21日目にそれぞれ2mg/kg及び10mg/kgのSF9で処理した。抗体またはビヒクルを腹腔内または静脈内投与した。データは9匹の動物/群の分析から得る。動物1匹あたり3連続のクリオスタット切片を分析した(
図14A)。
【0323】
第2実験で、視神経損傷後、雄Wistarラットを5F9抗体(n=10匹の動物)、8D1対照抗体(n=10匹の動物)またはビヒクル対照PBS(n=10匹の動物)で全身(iv)処理した。ラットに2mg/kgの抗体を1週間に1回iv注射し、注射は視神経挫滅直後に開始した。すべてのラットが4回の注射を受け、挫滅損傷から5週後に動物を安楽死させた。実験は盲検であり、組織処理及び定量分析は上記したように実施した。ビヒクル対照PBSではなく、5F9は再生GAP-43ポジティブ線維の数を有意に増加させた。200μm~1400μmの距離でビヒクルまたは対照抗体処理動物よりも有意(p<0.001)により多くの線維が5F9で処理した動物で見られた。0日目から始めて動物を5F9(2mg/kg/投与)、対照抗体8D1(2mg/kg/投与)またはPBSで1週間1回、4週間iv処理した(
図14B)。
【0324】
[実施例12]:5F9は視神経損傷のラットモデルにおいて挫滅、ダメージを受けた視神経軸索の再ミエリン形成を誘導する
乏突起膠細胞及びミエリンに対するマーカーはミエリン塩基性タンパク質(MBP)である。各種治療群において再ミエリン形成に差が生じたかの質問に答えるためにMBPに対する抗体を使用した。再ミエリン形成のプロセスを可視化するために、全身治療した動物の視神経切片を冷(-20℃)アセトンで固定し(10分間)、トリス緩衝食塩液(TBS,Fluka 93312)で3回(5分間)洗浄し、5% ウシ血清アルブミン及び1% トリトン-X-100を含有するTBSでブロックし、透過性付与した(30分間,室温で)。残留するBSA及び洗浄剤をTBSを用いる2回の別々の洗浄ステップ(各々5分間)により除去した。切片を5% BSA/TBS溶液で1:50希釈したポリクローナル家兎抗MBP抗体(Abcam,ab 2404)と4℃で3時間または一晩インキュベートした。TBS+0.1% トゥイーンによる3つの洗浄ステップ後、細胞核を可視化するために切片をビスベンズイミド(H33258,50μg/ml)の1:100希釈物を含有する5% BSA/TBSで1:1000希釈したAlexa Fluor 488コンジュゲートしたヤギ抗家兎二次抗体(Molecular Probes Al1034)と室温で1時間インキュベートした。包埋前に、染色した切片をTBS+0.1% トゥイーンで3回(各ステップ5分間)、蒸留水で洗浄した。切片をフルオロマウントGに包埋し、カバーガラスを被せ、顕微鏡検査のために暗所で保存した。
【0325】
Zeiss蛍光顕微鏡を用いて、染色した縦切片の画像をZeiss Axiovisonソフトウェアを用いて保存した。Photoshop画像分析ソフトウェア(Adobe)を用いる分析のために各神経の単一ピクチャーを載せた。視神経の複合画像を用いて2つの異なる方法で定量分析を行った。病変部位のMBPポジティブ面積をAxiovisionソフトウェアを用いて調べた。データ分析及びデータの統計学的評価をGraphpad Prismソフトウェアを用いて行った。
【0326】
動物を0及び21日目にそれぞれ2mg/kg及び10mg/kgの5F9で処理した。抗体またはビヒクルを腹腔内または静脈内に投与した。ラット視神経の複合画像。
【0327】
ミエリン形成をミエリンマーカーのミエリン塩基性タンパク質MBPに対する抗体を用いて可視化する。挫滅部位は複合神経の中央にあり、ビヒクル処理する対照動物(A及びB)にはない。5F9処理動物(C及びD)では、視神経の中央域(挫滅中心)に多くのMBPポジティブ構造が観察される(
図15)。
【0328】
ミエリン形成をミエリンマーカーのミエリン塩基性タンパク質MBPに対する抗体を用いて可視化する。MBP面積をZeiss Axiovisonソフトウェアを用いて測定する。M1及びM2は2つの独立した測定値であり、Mは測定したMPBポジティブ面積の平均である。5F9は視神経挫滅部位のMBP面積を有意に(ビヒクル対照に対してp<0.001)3.5倍増加させる(
図16)。
【0329】
[実施例13]:5F9は網膜神経線維層(RNLF)を変性から保護し、変性RNFL中の網膜ニューロンの発芽を誘導する
RNLF変性の保護及び網膜ニューロン発芽の誘導を観察するために、新しい実験室アッセイを確立した。前記方法は、視神経挫滅(上記実施例11に記載されている)を有し、抗体5F9、対照抗体p21(ラットIgG1モノクローナル抗体)またはPBSビヒクルで全身処理したラットの眼由来の成体ラット網膜を説明し、分析することに基づいている。この実験を実施するために、視神経挫滅を有するラットを視神経挫滅を誘導したら直ぐに、その後1週間間隔でAbまたはPBSで処理した(5回;抗体用量2mg/kgまたは10mg/kg)。
【0330】
a)網膜調製及び免疫蛍光染色
動物にセボフルレン(8%;Abbott)で深麻酔した後、直ちに胸郭を開き、左心室に4% パラホルムアルデヒド(PFA)溶液を潅流させることにより殺した。眼を隣接する結合組織と解離し、網膜の調製を実施するまで4% PFA中に置いた。
【0331】
網膜の調製はハンクス平衡塩溶液(HBSS,マグネシウム及びカルシウム非含有;Invitrogen,#14170070)中で実施した。眼をピンセットにより結合組織に固定し、角膜のすぐ周りの強膜を丸くカットした。
【0332】
水晶体及び毛様体を開口部を介して、多くの場合網膜と一緒に注意深く取り出した。網膜が強膜にまだ付着している場合には、優しく剥がし、引きはがした。
【0333】
網膜の半球を4点で切り、開き、灰色ニトロセルロース膜(Sartorius,#13006-50-N)上に広げた。必要ならば、網膜を載せている膜を5~10秒間風乾した。
【0334】
その後、免疫蛍光染色を実施するまで、膜上の網膜を10% 中性リン酸緩衝ホルムアルデヒド溶液(pH7.3;Fisher Scientific,#F/1520/21)中に+4℃で置いた。
【0335】
染色を以下のプロトコルに従って実施する:
網膜調製物をTBSで洗浄した後、TBS中5% BSA、1% トリトンX-100で30分間ブロックし、透過性付与し、TBSで再び洗浄した。一次抗体(モノクローナルAb TUJ-1,マウス抗βIIIチューブリンAb,AbCam,#ab14545;TBS+5% BSAで1:500希釈)を暗所、室温で1時間添加した後、TBS+0.1% トゥイーン20で洗浄した、その後、二次抗体(ロバ抗マウスCy3;Jackson ImmunoResearch(Dianova)715-165-151,1:1000希釈)及びビスベンズイミド(50μg/ml,1:100希釈)(TBS+5% BSAを用いて)を暗所、室温で添加した後、TBS+0.1% トゥイーン20で洗浄し、脱塩H2Oで洗浄した。次いで、調製物にフルオロマウントGを載せ、暗所、+4℃で保存した。
【0336】
b)眼(RNFL)中の網膜線維に対する5F9の保護効果の研究
Axiovisionソフトウェアを用いて、各網膜のランダムに選択した画像(n=12)を選択し、画像毎の神経線維の数を調べた。
【0337】
実験のために、5F9 mab群、p21対照mab群及びPBSビヒクルの群の群毎に3つの挫滅視神経を有する網膜を使用した。データ分析及び統計学的分析をGraphPad prismプログラムを用いて実施した。
【0338】
結果を
図17に示す。本発明の5F9抗体で全身処理した動物の網膜で有意に高い密度の神経線維束が観察される。
【0339】
c)眼中の網膜ニューロンの発芽に対する5F9の効果の研究
Axiovisionソフトウェアを用いて、各外植した網膜のランダムに選択した画像(n=12)を選択し、画像毎の発芽しているニューロンの数を調べた。
【0340】
実験のために、5F9 mab群、p21対照mab群及びPBSビヒクルの群の群毎に3つの挫滅視神経を有する網膜を使用した。データ分析及び統計学的分析をGraphPad prismプログラムを用いて実施した。
【0341】
結果を
図18に示す。本発明の5F9抗体で全身処理した動物の網膜で有意に多い数の発芽している網膜内ニューロンが観察される。