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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075320
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】使い捨てオートインジェクタ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20230523BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20230523BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
A61M5/20 572
A61M5/315 516
A61M5/32 510K
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043876
(22)【出願日】2023-03-20
(62)【分割の表示】P 2021140783の分割
【原出願日】2016-10-28
(31)【優先権主張番号】15191929.7
(32)【優先日】2015-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】500203709
【氏名又は名称】アムジェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンス・ステンベア・クヌーセン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・プラムベック
(72)【発明者】
【氏名】ラスムス・エーレンシュレーガー
(72)【発明者】
【氏名】ヨーウエン・ヨアンセン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】通常のゴミ箱に直接廃棄することさえされ得る、改良された使い捨てオートインジェクタを提供する。
【解決手段】人体への、薬のある処方量の注射のための、使い捨てオートインジェクタ1であって、ハウジング2と、ハウジングの少なくとも一部に配置された投薬ユニット3であって、ニードル4、薬を含む薬コンテナ5、コンテナ内で移動可能であるピストン、ピストンを移動させて薬を人体に搬送するための第1の機械的力を供給するための第1の機械的動力源、第1の機械的動力源の第1の機械的力を解放するように構成された作動機構8、及び、ピストンの移動を制御するための機械的退避機構を備えた、投薬ユニットと、を備える。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体(12)への、薬のある処方量の注射のための、使い捨てオートインジェクタ(1)であって、
ハウジング(2)と、
前記ハウジングの少なくとも一部に配置された投薬ユニット(3)であって、
ニードル(4)、
前記薬を含む薬コンテナ(5)、
前記コンテナ内で移動可能であるプランジャ(6)、
シャフトであって、シャフトがプランジャから離隔する第1の位置と、シャフトがプランジャと接触する第2の位置とを有する、シャフト、
前記プランジャを、シャフトを介して移動させて、薬を前記人体に搬送するための、第1の機械的力を供給するための第1の機械的動力源(7)、
前記第1の機械的動力源の前記第1の機械的力を解放するように構成された作動機構(8)、及び、
シャフトが第1の位置から第2の位置に移動するとき第1の機械的力に対抗するように構成されているダンパを備えた、
前記投薬ユニットと、を備え、
前記オートインジェクタが、第2の機械的力を供給するための第2の機械的動力源(11)を備え、前記オートインジェクタが、
前記ニードルが、ニードルの損傷または汚染から保護されている第1の状態、
前記ニードルが、前記薬の投与のために、前記人体に刺す準備がされている第2の状態、
前記ニードルが前記人体に刺され、投薬の準備がされている、第3の状態、及び、
前記ニードルが、意図しないニードルの突き刺しを避けるために保護されている第4の状態を有し、
前記第2の機械的動力源(11)が、前記オートインジェクタの状態を、前記第2の機械的動力を開放することにより、前記第3の状態から前記第4の状態にシフトするように構成されている、前記使い捨てオートインジェクタ。
【請求項2】
前記第4の状態において、前記ニードルを保護するように構成されたシールド(14)をさらに備えている、請求項1に記載の使い捨てオートインジェクタ。
【請求項3】
前記第2の機械的動力により、前記シールドを、前記第3の状態の後退位置から、前記第4の状態の突出位置に移動させて、前記ニードルを保護する、請求項2に記載の使い捨てオートインジェクタ。
【請求項4】
前記ニードル及び前記薬コンテナ、または投薬ユニット全体を、前記ハウジング内に移動することにより、前記第2の機械的動力が、前記ニードルを前記ハウジング内に、前記第3の状態から前記第4の状態に移動する、先行請求項のいずれか1項に記載の使い捨てオートインジェクタ。
【請求項5】
前記第2の機械的動力が、前記シールドを前記ハウジング内に後退させることによって生じる、請求項2または請求項3に記載の使い捨てオートインジェクタ。
【請求項6】
前記オートインジェクタを前記第4の状態にロックし、それにより、前記ニードルをロックするように構成されている、ロック要素(15)をさらに備えた、先行請求項のいずれか1項に記載の使い捨てオートインジェクタ。
【請求項7】
前記作動機構(8)が、前記ニードルを前記ハウジングから突出させるように、第3の機械的動力源(18)の第3の機械的動力を作動させるように構成されている、先行請求項のいずれか1項に記載の使い捨てオートインジェクタ。
【請求項8】
前記作動機構が、ユーザからの手動の力によって作動する、先行請求項のいずれか1項に記載の使い捨てオートインジェクタ。
【請求項9】
前記投薬ユニットの、意図しない作動を防止するように構成された投薬ロック(16)をさらに備えた、先行請求項のいずれか1項に記載の使い捨てオートインジェクタ。
【請求項10】
前記第1の機械的動力源(7)がらせん状のトーションバネである、先行請求項のいずれか1項に記載の使い捨てオートインジェクタ。
【請求項11】
前記シャフトへの動力の伝達を制御するための機械的伝達機構(19)をさらに備え、前記ダンパは、機械的脱進機構を備え、前記機械的伝達機構が、前記第1の機械的動力源(7)の動力を前記シャフトに伝達するための、前記第1の機械的動力源と前記機械的脱進機構とを係合させる第1のギアホイール(20)を備えている、先行請求項のいずれか1項に記載の使い捨てオートインジェクタ。
【請求項12】
前記機械的伝達機構が、前記ピストンに接続されたシャフト(22)を備え、前記シャフトが歯(23)を有し、前記シャフトの前記歯が、前記伝達機構の前記ギアホイール(28)と係合する、請求項11に記載の使い捨てオートインジェクタ。
【請求項13】
前記シャフトが折曲げ可能である、請求項12に記載の使い捨てオートインジェクタ。
【請求項14】
前記ダンパは、機械的脱進機構を備え、前記機械的脱進機構が、前記機械的伝達機構に係合する脱進機ギアホイール(24)と、前記アンカーホイールの回転ポイントから変位した質量を有する前記アンカーホイール(26)とを備えている、先行請求項のいずれか1項に記載の使い捨てオートインジェクタ。
【請求項15】
前記人体に注射される前記投薬量が、0.25ml~10mlの範囲、好ましくは、0.5ml~7.5mlの範囲、より好ましくは、0.75ml~5mlの範囲、さらにより好ましくは、1ml~2.5mlの範囲内にある、先行請求項のいずれか1項に記載の使い捨てオートインジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体への、ある処方量の薬の注射のための、使い捨てオートインジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の受領者の家で、投薬がますます頻繁に行われる傾向が強くなっている。このことは、投薬と、たとえば注射器などの機器の取扱いとが、取り扱うのに十分にシンプルで安全でなければならないことを暗示している。病院で薬を投与する場合、適切な投薬を確実にするために、設備を調整するためのより多くの様々なオプションを含む、高度に専門化した設備を使用することが、高い度合で可能である。
【0003】
薬は非常に高価であり、その内のいくつかは健康な人に有害であり、いくつかは毒性でさえある。このため、たとえば注射器により、これら薬を投与する際に、1回分の投薬量のすべてが患者に注射されることと、たとえば投薬を受ける者を補助する他の人が、注射器を使用した後のニードルから保護されることとが非常に重要である。さらに、注射中に不快で不安を感じるユーザが、しばしば、注射器または機器を不適切な方法で扱うことがわかっている。たとえば、ニードルは不適切に扱われ、使用前に、または薬の受領者の病気で、汚染される場合がある。したがって、使用前にニードルを保護し、使い捨てオートインジェクタをシャープコンテナまたはゴミ箱に廃棄する際に、安全に配置することが重要である。家庭での投薬に関し、オートインジェクタを作動させ、扱うユーザは、薬の実際の受領者ではない場合があり、したがって、そのようなユーザのための、使い捨てオートインジェクタの取扱いに関するリスクを避けるために、ニードルの保護が重要である。
【0004】
そのような薬のオートインジェクタの多くは、バッテリによって給電される電気モータによって駆動され、したがって、そのようなオートインジェクタは、薬の注射後に、環境上適切にゴミ箱に廃棄されない場合がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、従来技術の上述の不利な点及び欠点を、全体的または部分的に克服することである。より具体的には、通常のゴミ箱に直接廃棄することさえされ得る、改良された使い捨てオートインジェクタを提供することが目的である。
【0006】
使用後にニードルを保護する、改良された使い捨てオートインジェクタを提供することが、さらなる目的である。
【0007】
薬剤を含むコンテナ/カートリッジの破損のリスクを除去する、改良された使い捨てオートインジェクタを提供することが、本発明のさらに別の目的である。
【0008】
ノイズ及び/またはタクティール動作、たとえば、使用中にインジェクタの機構から生じる振動を最小にする、改良された使い捨てオートインジェクタを提供することが、本発明の目的である。
【0009】
以下の記載から明らかになる、複数の他の目的、利点、及び特徴とともに、上述の目的は、
人体への薬のある処方量の注射のための使い捨てオートインジェクタであって、
ハウジングと、
ハウジングの少なくとも一部に配置された投薬ユニットであって、
ニードル、
薬を含む薬コンテナ、
コンテナ内で移動可能であるプランジャ、
プランジャを、シャフトを介して移動させて、薬を人体に搬送するための、第1の機械的力を供給するための第1の機械的動力源、
第1の機械的動力源の第1の機械的力を解放するように構成された作動機構、及び、
シャフトを介してのプランジャの移動を制御するための機械的脱進機構を備えた、
投薬ユニットと、を備え、
オートインジェクタが、第2の機械的力を供給するための第2の機械的動力源を備え、オートインジェクタが、
ニードルが、ニードルの損傷または汚染から保護されている第1の状態、
ニードルが、薬の投与のために、人体に刺す準備がされている第2の状態、
ニードルが人体に刺され、投薬の準備がされている、第3の状態、及び、
ニードルが、意図しないニードルの突き刺しを避けるために保護されている第4の状態を有し、
第2の機械的動力源が、オートインジェクタの状態を、第2の機械的動力を開放することにより、第3の状態から第4の状態にシフトするように構成されている、使い捨てオートインジェクタによる、本発明に係る解決策によって達成される。
【0010】
本発明に係る使い捨てオートインジェクタは、第4の状態において、ニードルを保護するように構成されたシールドをさらに備え得る。
【0011】
さらに、第2の機械的動力により、シールドを、第3の状態の後退位置から、第4の状態の突出位置に移動させて、ニードルを保護し得る。
【0012】
さらに、ニードル及び薬コンテナ、または投薬ユニット全体を、ハウジング内に移動することにより、第2の機械的動力が、ニードルをハウジング内に、第3の状態から第4の状態に移動し得る。
【0013】
さらに、第2の機械的動力は、シールドをハウジング内に後退させることによって生じ得る。
【0014】
さらに、第2の機械的動力は、バネに荷重を加えることによって生じ得る。
【0015】
さらに、第2の機械的動力は、バネである場合がある。
【0016】
第2の機械的動力は、投薬ユニットをハウジング内に後退させることによって生じ得る。
【0017】
さらに、第2の機械的動力源は、第2の機械的動力によって予め荷重が加えられている場合がある。
【0018】
上述の使い捨てオートインジェクタは、オートインジェクタを第4の状態にロックし、それにより、ニードルを、その最終位置にロックするように構成されている、ロック要素をさらに備え得る。
【0019】
さらに、使い捨てオートインジェクタは、蓋またはキャップをさらに備え得る。
【0020】
使い捨てオートインジェクタは、ニードルキャップをさらに備え得る。
【0021】
やはり、第2の機械的動力源は、バネである場合がある。
【0022】
さらに、作動機構は、ニードルをハウジングから突出させるように、第3の機械的動力源の第3の機械的動力を作動させるように構成されている場合がある。
【0023】
前述の作動機構は、ユーザからの手動の力によって作動する場合がある。
【0024】
上述の使い捨てオートインジェクタは、投薬ユニットの、意図しない作動を防止するように構成された投薬ロックをさらに備えている場合がある。
【0025】
さらに、第1の機械的動力源は、らせん状のトーションバネである場合がある。この方法で、バネからのトルクに起因した、バネからの力の伝達を達成することが可能である。この方法で、人間工学的でコンパクトな設計を達成することが可能である。さらに、らせん状のトーションバネを使用することにより、バネのサイズを最小にするように影響する方法で、バネの力を適合させることが可能である。
【0026】
上述の使い捨てオートインジェクタは、シャフトへの動力の伝達を制御するための機械的伝達機構をさらに備える場合があり、機械的伝達機構が、第1の機械的動力源の動力をシャフトに伝達するために、第1の機械的動力源と機械的脱進機構とを係合させる第1のギアホイールを備えている。脱進機構は、メカニカルブレーキであると見なされる場合がある。脱進機構は、粘性ダンパとして作用するものとも見なされる場合があり、粘性ダンパは、この関係において、やはり、メカニカルブレーキであると見なされる。
【0027】
さらに、機械的伝達機構は、シャフトを備えている場合がある。プランジャの移動の間、シャフトはピストン/プランジャに接続されており、シャフトは歯を有し、シャフトの歯は、伝達機構のギアホイールと係合する場合がある。シャフトは、プランジャと接触しない位置に配置されている場合がある。すなわち、空隙を有している。この方法で、コンテナまたはカートリッジを設置することが容易である。さらに、空隙を有することで、たとえば輸送の間の、わずかな動きによる、シャフト、そしてひいてはプランジャの意図しない移動を生じなくすることが達成される。この意図しない移動により、不可欠な薬が失われることに繋がり得る。
【0028】
バネの力などの、内部の力によって駆動するオートインジェクタデバイスは、最初、すなわち、使用前は、通常、組立て中にプランジャとシャフトとをデバイス内に個別に挿入する場合、プランジャとシャフトとの間にクリアランス(空隙)が必要である。このことは、たとえばインジェクタにコンテナを挿入するために、自動インジェクタの様々なパーツの公差と組み合わせた、薬コンテナの必要な公差に起因している。さらに、プランジャとシャフトとの間には、コンテナに薬を充填した後のプランジャが、コンテナのリムに関して、コンテナ内にわずかに押し込まれる場合があるという事実に起因して、しばしば空隙が存在する。このため、シャフトの移動に対して垂直な方向にコンテナを挿入するために、クリアランス、空隙が必要である。
【0029】
空隙、すなわち、シャフトとプランジャとが最初は互いに接触していないことに起因して、プランジャからの背圧の欠如により、バネの力を解放する際に、シャフトがプランジャに向かって加速されることになり、このため、シャフトの速度が増大することになる。シャフトの端部(先端)がプランジャに達する際、速度、及び、それによる運動エネルギが、最大レベルとなり、このため、そうして、プランジャとシャフトとの間の衝撃時に、プランジャに伝達される力積も最大となる。前述の力積は、少なくとも部分的にプランジャに伝達されることになる。このため、シャフトの端部とプランジャとの間の衝撃の時間プロファイルに応じて、デバイスは、各構成要素の変形、または、デバイスもしくはコンテナの破損に繋がる高い力及び応力を被る場合がある。
【0030】
衝撃の時間が長く、減速がわずかである場合、反力は大きくない場合があるが、衝撃の時間が短い/一時的である場合、減速量が大きく、反力が依然として大であり得る。衝撃を被るインターフェースの設計は、反力に影響する。したがって、構成要素の剛性、及び、どのようにエネルギが分配されるかに応じて、システムのいくつかのインターフェースにおいて、高い反力が存在し得る。
【0031】
システムのパーツのいずれも、高速/高い衝撃の間に、高い力/応力を被らないことを確実にするように、各インターフェースの繋がりの動作を予期することは、大がかりで複雑な作業である。したがって、故障が生じることがないとの結論を下すこと、すなわち、システムの強固さを保証することは、困難である。
【0032】
衝撃の間のオートインジェクタ全体の剛性を確実にする必要性の代わりに、本発明の運動エネルギ及び力積により、駆動機構、すなわちシャフトの速度を制御することによる作動の後に、機械的機構の制御が提供される。
【0033】
概して、ある方向に一定の速度を有するために、力の合計は0でなければならない。システムが移動するために、移動方向において正の力を有することが必要である。速度のわずかな増大のみが必要とされている場合、加速度、及びそれによる結果としての力は、わずかでなければならない。
【0034】
メカニカルダンパ/ブレーキである脱進機構を使用すると、いくつかの利点が達成される。ブレーキ/ダンパは、最も多くの場合、速度に依存しており、速度が増大すると、結果として得られる力も増大することを意味する。力は、ダンパ及び速度に関し、減衰定数によって判定される(Force=c*v)。このことは、ダンパを、空隙内でシャフトが移動する間に作用させ、投薬の間に作用させないようにする、すなわち、薬をコンテナの外に出すプロセスの間に必ずしも作用しないことが意図されていることから、有利である。このため、高粘度の薬の投与の間、最小の減衰またはブレーキのみを生じさせることが達成される。この方法で、デバイス/インジェクタの損傷のリスクなしに、より強力なバネが使用され得、デバイスは、より大きい範囲の粘性に関して使用され得る。しかし、粘性の低い薬がコンテナから出される場合、薬からのわずかな背圧が生じる。この状況では、脱進機構を使用した減衰により、より低速かつより穏やかな方法での薬の処方が提供される。この方法で、薬に損害を生じるリスクが最小になる。さらに、注射の間のユーザの不快感のリスクが最小になる。
【0035】
ダンパとして作用する脱進機構が、速度に依存し、投薬の間の速度が比較的低いことから、ダンパからの、逆向きに作用する力も小さい。このため、特定の減衰定数を提供するための脱進機構(ダンパ)を特定し、それにより、駆動機構の速度が特定の所望の力の釣り合いに達するように制御することが可能である。この方法で、シャフトとプランジャとの間の衝撃の制御が達成される。このため、デバイスの全体的な剛性を増大させることにより、デバイスの故障のリスク、たとえば、コンテナの破損のリスクが低減される。
【0036】
一実施形態では、シャフトは折曲げ可能である場合がある。
【0037】
シャフトは、湾曲したシャフトまたは湾曲したピストンロッドを備える場合がある。シャフトは、その取り付けられた位置では、湾曲したシャフトまたは湾曲したピストンロッドである場合がある。
【0038】
さらに、第1の機械的動力源のバネからピストンまたはシャフトに作用する力は、1N~100N、または、好ましくは2N~75N、または、より好ましくは3N~50N、または、さらにより好ましくは4N~25Nである場合がある。この方法で、たとえば粘性に関し、異なる特性を有する異なるタイプの薬が、注射され得る。さらに、薬が注射される、身体の特定のポイントにより、必要な力が変化する場合がある。
【0039】
さらに、ハウジングは、機械的伝達機構の少なくともギアホイールのシャフトが通って延びる穴を有する第1のキャリアプレートを備えている場合がある。
【0040】
さらに、ハウジングは、第1のキャリアプレートとは反対側に配置された第2のキャリアプレートを備えている場合があり、伝達機構の少なくとも一部は、第1のキャリアプレートと第2のキャリアプレートとの間に配置されている場合がある。
【0041】
第2のキャリアプレートは、薬コンテナのための空間を形成するための切込みを有している場合がある。
【0042】
さらに、ギアホイールはシャフトを有する場合があり、また、金属、たとえばステンレス鋼で形成されている場合がある。
【0043】
さらに、ギアホイールは、プラスチックで形成され得るか、ギアホイールのシャフトが金属で形成され得る場合、部分的に金属で形成され得る。
【0044】
また、キャリアプレートは、ナイロンなどのプラスチックで形成され得、シャフトの、少なくともテーパが付された端部は、金属で形成され得る。
【0045】
ナイロンで形成されたプレートと、金属で形成されたシャフト端部とを有することにより、潤滑剤は必要とされない。薬を搬送する注射器には、潤滑剤は許容されないが、この理由は、そのような潤滑剤が人体に入るリスクが存在するためである。潤滑剤が人体に入ることは、許容されない。
【0046】
さらに、潤滑剤の劣化のリスクは、注射器のつかむ機能を弱める場合があり、それにより、エンドユーザの健康を危うくする場合がある。
【0047】
カートリッジは、0.25ml~50mlの容量を有する場合がある。カートリッジの容量は、10mlより大である場合がある。使い捨てオートインジェクタにより、人体に注入される投薬量は、0.25ml~10mlの範囲、好ましくは、0.5ml~7.5mlの範囲、より好ましくは、0.75ml~5mlの範囲、さらにより好ましくは、1ml~2.5mlの範囲内にある場合がある。
【0048】
ニードルは、状態1から状態4において、1mm~75mm、好ましくは、2mm~65mm、または、より好ましくは、3mm~55mm、または、さらにより好ましくは、4mm~45mm、または、もっとも好ましくは、5mm~35mmの距離だけ、突出及び/または後退し得る。
【0049】
ニードルは、約0.3mm~0.8mmの公称の外径、すなわち、約30G~21Gのニードルゲージを有する場合がある。
【0050】
さらに、機械的脱進機構は、機械的伝達機構に係合する脱進機ギアホイールと、アンカーホイールであって、アンカーホイールの回転ポイントから変位した質量を有するアンカーホイールとを備えている場合がある。この方法で、ピストンロッド/シャフトの移動を停止することにより、ピストン/プランジャの前方の移動を停止することが可能である。機械的脱進機構は、ブレーキ、ダンパ、または脱進機ブレーキとも名付けられる場合がある。脱進機構は、個別の方式で、第1の機械的力からの力を適用する時間をメーターアウト制御する。この方法で、ピストンロッド/シャフトに印可される背圧に関わらず、所望の力のみが開放されることが達成される。このため、たとえば空隙に起因して、シャフト/ロッドが互いに接触する際に、プランジャに印可される力が過剰になるリスクは存在しない。機械的脱進機構が存在しない場合、減衰されていない、または制御されていないバネ力からの位置エネルギに基づくピストン/シャフトの移動により、コンテナ/カートリッジ、またはインジェクタを破損させる場合がある運動エネルギを形成し得る。
【0051】
さらに、シャフト/ピストンロッドがプランジャ/ピストンと接触する前に、シャフト/ピストンロッドの動きを制御することが可能である。この方法で、接触によるコンテナの破損のリスクの除去が達成される。コンテナ/カートリッジの挿入後は、シャフトの接触端部と、プランジャ/ピストンとの間に、隙間、空隙が存在する場合がある。シャフトが、プランジャ/ピストンと過度な力で接触するように移動する場合、コンテナ/カートリッジの破損のリスクが高く、それにより、ユーザにとって危険な状況が生じ、重要で高価な薬が無駄になる。
【0052】
アンカーホイールは、アンカーホイールの質量を増大させるために、少なくとも1つの第2の材料を備えている場合がある。第2の材料は、金属である場合がある。第2の材料は、たとえばモールディングプロセスの間、アンカーホイール内に完全に囲まれている場合がある。
【0053】
最後に、人体に注射される投薬量は、0.25ml~10mlの範囲、好ましくは、0.5ml~7.5mlの範囲、より好ましくは、0.75ml~5mlの範囲、さらにより好ましくは、1ml~2.5mlの範囲内にある場合がある。
【0054】
本発明及びその多くの利点は、説明の目的のために、いくつかの非限定的実施形態を示す添付の概略的図面を参照して、以下により詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】使い捨てオートインジェクタを斜視図で示す。
図2】蓋が取り外された、図1の使い捨てオートインジェクタを示す。
図3】使い捨てオートインジェクタの投薬ユニットの斜視図を示す。
図4図4は、図3の投薬ユニットの分解図を示す。
図4a図4Aは、プランジャとシャフト/ピストンとの間の空隙の拡大図を示す。
図5A図5Aは、ニードルが、ニードルの損傷または汚染から保護されている第1の状態の、使い捨てオートインジェクタを示す。
図5B図5Bは、ニードルがシールドによって隠れ、薬の投与のために、人体に刺す準備がされている、第2の状態の、図5Aの使い捨てオートインジェクタを示す。
図5C図5Cは、ニードルが人体に刺され、投薬の準備がされている、第3の状態の、図5Aの使い捨てオートインジェクタを示す。
図5D図5Dは、第3の状態と第4の状態との間の中間の状態にある、図5Aの使い捨てオートインジェクタを示す。
図5E図5Eは、ニードルが、意図しないニードルの突き刺しを避けるために保護されている第4の状態の、図5Aの使い捨てオートインジェクタを示す。
図6A図6Aは、第3の機械的動力源が、ニードルをハウジングから突出させるために使用される、第1の状態の、別の使い捨てオートインジェクタを示す。
図6B図6Bは、蓋が取り外された第2の状態の、図6Aの使い捨てオートインジェクタを示す。
図6C図6Cは、ニードルが人体に刺され、投薬の準備がされている、第3の状態の、図6Aの使い捨てオートインジェクタを示す。
図6D図6Dは、ニードルが、意図しないニードルの突き刺しを避けるために保護されている、第4の状態の、図6Aの使い捨てオートインジェクタを示す。
図7A図7Aは、ニードルが、ニードルの損傷または汚染から保護されている、第1の状態の、別の使い捨てオートインジェクタを示す。
図7B図7Bは、ニードルが人体に刺され、投薬の準備がされている、第3の状態の、図7Aの使い捨てオートインジェクタを示す。
図7C図7Cは、ニードルが保護されるように、投薬ユニットがハウジング内で動かされた、第4の状態の、図7Aの使い捨てオートインジェクタを示す。
図8A図8Aは、ニードルが、ニードルの損傷または汚染から蓋によって保護されている、第1の状態の、さらに別の使い捨てオートインジェクタを示す。
図8B図8Bは、投薬ユニットをハウジング内で第1の方向に移動することにより、ニードルが突出し、人体に刺されている、第3の状態の、図8Aの使い捨てオートインジェクタを示す。
図8C図8Cは、投薬ユニットをハウジング内で第2の方向に移動することにより、ニードルが後退した、第4の状態の、図8Aの使い捨てオートインジェクタを示す。
図9A図9Aは、シールドが蓋内で突出している第1の状態の、さらに別の使い捨てオートインジェクタを示す。
図9B図9Bは、シールドが後退し、ニードルが身体に挿入された、第3の状態の、図9Aの使い捨てオートインジェクタを示す。
図9C図9Cは、シールドが投薬ユニットに対して突出し、ニードルを保護するように、投薬ユニットが第2の方向に移動した、第4の状態の、図9Aの使い捨てオートインジェクタを示す。
図10A図10Aは、シールドが、第2の機械的動力によって予め荷重がかけられている、第1の状態の、さらに別の使い捨てオートインジェクタを示す。
図10B図10Bは、ニードルが身体に刺さっており、シールドに依然として力が予め荷重が加えられている、第3の状態の、図10Aの使い捨てオートインジェクタを示す。
図10C図10Cは、シールドが、ニードルを保護するように突出している、第4の状態の、図10Aの使い捨てオートインジェクタを示す。
図11】ニードルシールドを備えた、別の投薬ユニットの斜視図を示す。
図12】シールドが取り外された、図11の投薬ユニットを示す。
図13図11の投薬ユニットの分解図を示す。
図14A図14Aは、第4の状態の、図11の使い捨てオートインジェクタを示す。
図14B図14Bは、第4の状態の、図11の使い捨てオートインジェクタを示す。
図14C図14Cは、第4の状態の、図11の使い捨てオートインジェクタを示す。
図14D図14Dは、第4の状態の、図11の使い捨てオートインジェクタを示す。
図15A図15Aは、脱進機構の動きのシークエンスを示す。
図15B図15Bは、脱進機構の動きのシークエンスを示す。
図15C図15Cは、脱進機構の動きのシークエンスを示す。
図15D図15Dは、脱進機構の動きのシークエンスを示す。
図15E図15Eは、脱進機構の動きのシークエンスを示す。
図15F図15Fは、脱進機構の動きのシークエンスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
すべての図は、高度に概略的であり、必ずしも原寸に比例したものではなく、これら図は、本発明を説明するために必要であるそれらパーツのみを示しており、他のバーツは、省略されているか、単に示唆されているのみである。
【0057】
図1は、人体への、薬のある処方量の注入のための、使い捨てオートインジェクタ1を示している。使い捨てオートインジェクタ1は、ニードルが、ニードルの損傷及び/または汚染から保護されている、第1の、最初の状態で示されている。蓋/キャップ10は、ハウジング2に取り付けられて示されている。図2では、使い捨てオートインジェクタの蓋10は、取り外されており、使い捨てオートインジェクタは、ニードルが、薬の投与のために、人体に刺される準備がされた、第2の状態にある。使い捨てオートインジェクタ1は、ハウジング2と、少なくとも部分的にハウジング内にある投薬ユニット3とを備え、それにより、投薬ユニット3のニードル4が、ハウジングから突出している。使い捨てオートインジェクタ1のハウジング2が、丸まっているハウジングの角を備えた、概して正方形の断面を有し得ることがわかる。使い捨てオートインジェクタの外側表面の一部は、たとえば、ユーザの手の内での、より良好な人間工学的配置を達成するために、アウトラインが半円形である場合がある。ハウジングは、断面において測定した、第2の寸法SDに対する第1の寸法FDの比が2:1より大であるサイズを有する場合がある。寸法は、同じ断面で測定される。この面は、使い捨てオートインジェクタの長手軸に対して垂直である。
【0058】
図3に示す投薬ユニット3は、ニードル4と、薬を含む薬コンテナ5とを備えている。薬コンテナ5は、支柱で支持されたニードル、注入器、またはニードルが取り付けられたカートリッジである場合がある。投薬ユニット3は、第1の端部41をさらに備えている。投薬ユニット3は、第1のキャリアプレート43及び第2のキャリアプレート45をさらに備えている。
【0059】
図4(及び図4a)に示す投薬ユニット3の分解図では、ピストン6が、薬コンテナ5内に移動可能に配置されている。折り曲げ可能なシャフト22を介して、ピストン6(プランジャ)は、薬をコンテナ5の外に押し出す。らせん状のトーションバネの形態の、第1の機械的動力源7から力が印可され、このため、薬を身体(図示せず)に搬送するように、ピストンを移動させるための第1の機械的力を供給する。らせん状のトーションバネ7が、らせんバネから搬送されたトルクが、第1のギアホイール20に伝達されるような方式で作用することがわかる。投薬ユニット3は、機械的動力源7の第1の機械的力を解放するように構成された作動機構8(図5Aに示す)をさらに備えている。投薬ユニット3は、機械的動力源の回転速度、すなわち、らせん状のトーションバネ7からの力の搬送を制御することにより、ピストン6の移動を制御するための、機械的な脱進機構9を備えている。脱進機構9は、ある質量を有するアンカーホイール25を備えている。脱進機ギアホイール24は、アンカーホイール25のアームと相互作用し、アンカーホイール25の回転方向の変化により、シャフト22の動作にブレーキをかける。この方法で、バネ7の著しい過度な力の、シンプルな方式での制御を可能とすることが達成され、それにより、同じタイムスパンにわたり、大きく異なる粘度の薬を投与することが可能である。このことは、大きい力をプランジャに印可することを必要とする、高粘度の薬さえ含意している。
【0060】
図4及び部分的に図4aを再度参照すると、投薬ユニット3は、ピストン6への力の伝達を制御するための、機械的伝達機構19をさらに備えている。機械的伝達機構19は、第1の機械的動力源7の動力をピストン6に伝達するための、第1の機械的動力源7と機械的脱進機構9とを係合させる第1のギアホイール20を備えている。機械的伝達機構19は、ピストン/プランジャ6に接続されたシャフト22を備え、このシャフトは、歯23を有している。この歯23は、伝達機構19のギアホイール28と係合する。シャフト22は、概して正方形の形状のハウジング2の丸い角に沿ってスライドできるように、折曲げ可能である。この方法で、使い捨てオートインジェクタ1の全体のサイズが低減され得ることが達成される。シャフト22は、使い捨てオートインジェクタ1の第1の端部41に配置され、ニードル4は、第1の端部とは反対側の第2の端部42に配置される。図4に示すように、使い捨てオートインジェクタは、移動する際にシャフトをガイドするためのガイド部44を有する基部プレートを形成する第1のキャリアプレート43を有している。使い捨てオートインジェクタ1は、図3に示すように、投薬ユニット3のカバー部を形成する第2のキャリアプレート45をさらに備えている。第2のキャリアプレート45は、薬コンテナ5のための空間を提供するように、切込み46を有している。
【0061】
機械的脱進機構9は、機械的伝達機構19に係合する脱進機ギアホイール24と、アンカー9a、9bを備えたアンカー機構26を有する(図15に詳細に示す)アンカーホイール25とを備えている。この方法で、第1の機械的動力源7が、機械的伝達機構19の第1のギアホイール20を回転させるように力を加え、こうして、シャフト及びピストンを移動させると、ギアホイール24は、第1のギアホイール20と係合する。脱進機ギアホイール24は、アンカー機構26と係合する。ギアホイール24が回転すると、アンカー機構26のアンカー9a、9bは、ちょうどアンカー9aがギアホイール24から係合解除した際、アンカー9bがギアホイール24と係合するか、その逆になるように、係合及び係合解除することになる。このことは、ギアホイール24との係合が2つのアンカー9a、9b間で切り替わる毎に、アンカーホイール25の回転方向を変化させる。アンカーホイール25の回転方向が逆になる毎に、加減速される質量をアンカーホイール25が有していることから、これにより、ギアホイール24の回転速度が制限されることになり、ひいては、シャフト22の速度が制限される。このことは次いで、シャフトの速度、及びそれによりプランジャ6を制御する。
【0062】
図4Aは、プランジャと、シャフト/ピストンロッド22の第1の端部22aとの間の空隙AGの拡大図を示している。空隙AGが存在する場合、シャフト22の最初の動作は、プランジャ/ピストン6からの背圧を生じることはない。このため、機械的脱進機構(状況は図示されていない)が存在せず、バネの位置エネルギがすべて、過度に速く開放される場合、シャフト22は潜在的に、コンテナまたはカートリッジ5を破損することになる。この理由は、シャフト22が、第1のシャフト端部22aとプランジャ6との衝撃による、コンテナ5への突然のショックを生じることになるためである。
【0063】
らせん状のトーションバネ7からの位置エネルギが開放される毎に(図4参照)、機械的脱進機構9は、バネにおいて、十分な力が利用可能である限り、同じ量のエネルギが開放されることを確実にする。この方法で、プランジャ6をコンテナ内全体で移動させるのに、力が十分であるように制御すること、すなわち、十分なバネの力がシャフトからプランジャに印可されることのみならず、結果として印可される力が、安全に、シャフトとプランジャとの間の最初の衝撃が生じた際に、コンテナ5の破損を生じるレベル未満にすることも可能である。図4aに示されているが、論じられていない参照符号は、図4aを図4に関連付けるために示されている。
【0064】
図5A図5Eは、使い捨てオートインジェクタ1が、第2の機械的力を供給するために示された第2の機械的動力源11をさらに備えていることを示している。第2の機械的動力源11は、第2の機械的動力源の力に対して過度な力が、長手方向、すなわち、ニードルに対して水平に、シールドに印可されない限り、シールド14を突出した状態に維持するように構成されている。そのような過度な力は、シールド14に、人間の肌/身体12に向かって力を加えることにより、ユーザによって印可され得る。第2の機械的動力源11は、使い捨てオートインジェクタ1の状態を、ニードルが、破線(図5C)で示した人体12に刺さり、投薬の準備がされている第3の状態から、ニードルの意図しない突き刺しを防止するようにニードルが保護された第4の状態にシフトする。第3の状態から第4の状態への状態のシフトは、第2の機械的動力/力を、第2の機械的動力源11から開放することによって実施される。
【0065】
使い捨てオートインジェクタ1は、図5Aでは、ニードル4が隠れ、ニードルの損傷または汚染から保護された、その第1の状態で、最初の位置で示されている。蓋またはキャップ10は、ハウジング2に取り付けられている。蓋10は、ニードル4のさらなる保護部を含んで示されている。ニードルのさらなる保護部は、シールド14の内側に延びている。
【0066】
図5Bは、第2の状態の使い捨てオートインジェクタ1を示している。キャップ/蓋10は取り外され、ニードル4は、患者の痛みを治すか和らげるための薬剤などの薬を投与するために、人体に刺さる準備がされている。
【0067】
図5Cでは、使い捨てオートインジェクタ1は、その第3の状態で示されている。この第3の状態では、ニードル4は人体12(身体の肌が破線で示されている)に刺さっており、使い捨てオートインジェクタ1は、薬を人体12に、たとえば皮膚の層内に、投与する準備がされている。ニードル4を身体に挿入する際に、シールド14が、ハウジング2内に押し込まれることが示されている。シールド14をハウジング2内に押し込む際に、バネ11、すなわち第2の機械的動力源は、引っ張られ、シールドをその状態2の位置(図5Bに示す)に押し戻す準備がされている。
【0068】
図5Dは、ロック要素15が作動している、使い捨てオートインジェクタ1の中間の状態を示している。ロック要素15は、ボタン8が押される際に作動する。ボタン8の押圧は、薬の注入をも開始する。図5Dの中間の状態は、使い捨てオートインジェクタ1を第3の状態から第4の状態に移動する際に生じる。
【0069】
使い捨てオートインジェクタ1は、図5Eでは、第4の状態で示されている。第4の状態では、ニードルが、意図しないニードルの突き刺しを避けるために保護されている。このため、使い捨てオートインジェクタ1は、安全に扱うことができ、ユーザの家庭における慣習的なゴミ箱に捨てることさえされ得る。このため、使い捨てオートインジェクタ1は、完全に機械的に作動し、バッテリまたは電気的配線を必要としない。このため、本発明の使い捨てオートインジェクタ1は、慣習的なゴミ箱に環境上適切に廃棄されることになる。さらに、使い捨てオートインジェクタ1は、冷蔵庫に、容易に貯蔵することができる。冷蔵庫は、しばしば、薬が予め挿入されたオートインジェクタには最適な貯蔵場所である。しかし、冷蔵庫に貯蔵することは、しばしば、既知の注射器に存在する電気的構成要素には良好ではなく、このため、注射器内に薬を貯蔵することは、しばしば不可能である。したがって、これら注射器は、バッテリをフィットさせるか、使用前に別様に準備する必要がある。このことは、ユーザがこれらを行うことが不可能であるリスクを生じ、このため、そのような既知の注射器の故障のリスクを生じる。
【0070】
図5A図5Eでは、使い捨てオートインジェクタ1は、第4の状態において、ニードルを保護するように構成されたシールド14を備えている。図からわかるように、図5Aから図5Eのニードル4は、ニードルが人体12に注射される前の第2の状態においても保護されており、このため、ニードル4は、やはり保護され、ひいては、ユーザから隠されている。このことは、鋭劣恐怖症(ニードルを怖がる)の人には特に有用である。図5Bから図5Cに示すように、第2の機械的動力源11の第2の機械的動力は、ニードル4が人体12に刺さる際に、シールド14が第2の状態の突出した位置から第3の状態の後退した位置に移動することで生じる。シールド14をハウジング2内に押し込む際に、バネである第2の機械的動力源11は、延ばされるか引っ張られ、このため、第2の機械的動力を生じる。図5C及び図5Eに示すように、第2の機械的動力源11の第2の機械的動力により、シールド14を、第3の状態の後退位置から、第4の状態の突出位置に移動させて、ニードル4を保護する。
【0071】
図5A図5Eの使い捨てオートインジェクタ1は、第4の状態において使い捨てオートインジェクタ1を維持するように構成されたロック要素15をさらに備えている。このことは、シールド14がニードル4を囲むとともに保護する突出位置に、シールド14をロックすることによって行われる。使い捨てオートインジェクタ1は、ニードル4が安全に人体12に注射され、ユーザが薬を受領する準備がされる前の、投薬ユニットの意図しない作動を防止するように構成された投薬ロック16をさらに備えている。投薬ロック16は、使い捨てオートインジェクタ1の作動していない状態において、ロック要素15と整列していない、開口17を有している。開口17は、動作状態では、ロック要素15と整列され、それにより、図5Dに示す中間位置に示すように、ロック要素15が開口内に延びるようになっている。薬の注射が完了した後は、シールド14がハウジング2から突出し、突出したシールドがロック要素15を超える。このため、ロック要素15は、開口17を通ってさらに突出し、シールド14の後方に位置することができ、それにより、シールドは、ハウジング2内に押し戻すことができないようになっている。図5Aに見ることができるように、使い捨てオートインジェクタ1は、ニードルキャップ31をさらに備えている。このニードルキャップ31は、蓋10の一部として構成されている。投薬ロック16は、使い捨てオートインジェクタの一方の端部で、作動機構8、たとえばボタンと接触しており、ボタンは、蓋10が依然として使い捨てオートインジェクタ1上に取り付けられている際には、押すことができない。
【0072】
図6A図6Dに示すように、作動機構8は、ニードル4をハウジング2から突出させるように、第3の機械的動力源18の第3の機械的動力を作動させるように構成されている。図6Aでは、作動機構8は、蓋10の安全部16bにより、ハウジングからニードルを突出させることが防止されている。ユーザは、キャップ10を取り外すことで、使い捨てオートインジェクタを作動状態にする。図6Bは、キャップ10が取り外されているが、依然としてニードルがハウジング2内に後退していることから、ニードル4が依然としてユーザには見えないことを示している。図6Cでは、作動機構8は、ユーザからの手動の力によって作動している。オートインジェクタを作動させる際に、第3の機械的動力源18は、投薬ユニット3に力を加え、それにより、ニードル4がハウジング2の外に出て、ニードルが人体12に刺さる。使い捨てオートインジェクタ1が図6Bに示す第2の状態から図6Cに示す第3の状態に移動すると、バネを含む第2の機械的動力源11は、バネ11、すなわち第2の機械的動力源を圧縮することにより、第2の機械的動力で荷重が加えられるか引っ張られる。シールド14は、シールド14の一方の端部がユーザの肌に触れていることに起因して、依然として、ハウジング2内の後退した位置に維持される。ユーザが使い捨てオートインジェクタ1を引き、こうしてニードル4を人体12から引き抜くと、第2の機械的動力源11は、シールド14を自動的にハウジング2の外に突出させ、それにより、ニードル4を保護する。ロック要素15は、シールド14が、突出位置に維持されるとともにロックされ、ひいては、ユーザ及び使い捨てオートインジェクタを扱う人を、ニードル4から保護する位置に維持されることを確実にする。
【0073】
図7A図7Cでは、使い捨てオートインジェクタ1は、第2の機械的動力源11の第2の機械的動力で予め荷重が加えられており、投薬の終了後は、第2の機械的動力により、ニードル4をハウジング2内に移動させる。すなわち、ニードル4、薬コンテナ5、及び投薬ユニット3全体を、ハウジング2内に、第1の端部41に向かって移動させることにより、第3の状態から第4の状態に移動する。この実施形態では、第2の機械的動力は、使い捨てオートインジェクタ1を製造する際にバネに荷重を加えることによって生成され得る。
【0074】
図8A図8Cに示すように、第2の機械的動力は、ニードル4を人体12に刺す際に、投薬ユニット3をハウジング2内に後退させることによって生じる。投薬ユニット3及びニードル4をハウジングの外に出すことは、ユーザによって行われる場合がある。このため、投薬ユニット3は、たとえばユーザにより、図8Aの位置から図8Bの状態/位置に移動し、これにより、投薬ユニットは、第1の端部41から第2の端部42に向かって、第1の方向に移動する。次いで、注射が完了した後は、投薬ユニット3及びニードル4は、第1の方向とは反対の第2の方向、そしてひいては、第1の端部41に向かって、投薬ユニット3を移動させることにより、図8Cに示す位置に移動される。投薬ユニット3のこの位置、ひいてはニードル4の位置では、ニードルは、ハウジング内に安全に後退しており、ハウジングは、ニードルが突き刺さることを防止するためのシールドとして作用する。安全性のレベルに応じて、蓋10は、たとえば、ニードルの突出が可能となる前に除去される、貫通できないエリアを含む膜である場合がある。
【0075】
図9A図9Cに見ることができるように、使い捨てオートインジェクタ1には、第2の機械的動力源11の第2の機械的動力が予め荷重が加えられている。図9Aは、蓋10が依然としてハウジング2上に取り付けられていることを示している。蓋10が取り外された後は、シールド14は、ハウジング2から依然として突出しており、このため、ニードル4を保護している。シールド14をユーザの肌12に向けて押圧する際、シールドは、ハウジング2内に向けて力が加えられ、このため、ニードル4を、ユーザの肌に刺すことが可能である。投薬が終了した後は、ユーザは、使い捨てオートインジェクタ1を取り外す。ユーザがインジェクタを取り外す際、シールド14は、肌と接触したままになり、したがって、ニードル4は、常に完全に保護される。シールド14は、シールド14を投薬ユニット3から突出させるように移動させ、ニードル4を囲む、追加の第2の機械的動力11Bにより、肌12と接触したままに維持される。さらに、投薬の終了後、シールド14がもはや肌と接触していない場合、第2の機械的動力11により、投薬ユニット3をハウジング2内に、ハウジングの第1の端部41に向かってさらに移動する。ニードルが人体12に刺さると、追加の第2の機械的動力が、バネ11Bを圧縮することによって生じる。
【0076】
図10A図10Cでは、第2の機械的動力源11は、第2の機械的動力、たとえばバネによって予め荷重が加えられている。投薬の終了時には、第2の機械的動力源11が作動し、シールド14が、ニードル4を保護するように突出する。
【0077】
図11では、投薬ユニット3が斜視図で示されており、ニードル4をカバーするニードルキャップ31を有している(ニードル4は、図12に示されている)。図13の分解図では、投薬ユニット3は、図4の投薬ユニットとほぼ同じ要素及び設計を有しているが、図13では、投薬ユニット3は、シールド14及びニードルキャップ31をさらに備えている。ニードル4がコンテナ5に、たとえばスタックされたニードルまたは注入器として、固定して取り付けられていることがわかる。たとえば、(図4に示すような)カートリッジなどの、異なるコンテナが使用され得ることを、当業者であれば理解するであろう。
【0078】
図14A図14Dに示す使い捨てオートインジェクタ1は、図1及び図2に示す使い捨てオートインジェクタ1よりも、より正方形の断面形状を有している。図14Aの使い捨てオートインジェクタ1は、その第1の状態、すなわち、蓋またはキャップが取り付けられた状態で示されており、図14Bでは、その第2の状態で示されている。図14Cでは、使い捨てオートインジェクタ1のニードル4は、その突出した位置にあり、ニードルは、人体(図示せず)に刺さっている。図14Dでは、使い捨てオートインジェクタ1は、その第4の、保護された状態にあり、この状態では、シールド14がニードル4を囲んでいる。
【0079】
図15は、機械的脱進機構9及び機能を詳細に示している。ブレーキングは、脱進機ギアホイール24の回転によって達成され、回転する際には、脱進機ギアホイール24により、機械的脱進機構9も回転するように力を加える必要がある。アンカー機構は、アンカーホイール25に取り付けられたアンカー9a、9bを備えている。機械的脱進機構9のアンカー9a、9bは、脱進機ギアホイール24と係合し、アンカーホイール25の質量、すなわち、脱進機構9の質量の回転方向をシフトさせるよう構成される。アンカーホイール25の、ひいては、脱進機構9の全体的な質量の、この回転方向のシフトにより、ブレーキ効果が生じる。アンカーホイール25は、図15C及び図15Fにおいて、矢印A1及び矢印A2に従って、回転方向をシフトする。アンカーホイール25は、図15A及び図15Bでは、時計回りに回転し、図15C図15D及び図15Eでは反時計回りに回転し、図15Fで再度時計回りに回転する。脱進機構9は、主な動力源、すなわち、第1の動力源が、その動力を制御された方式で開放することを確実にする。この方法で、シャフトと、薬コンテナに挿入されたプランジャ/ピストンとの間の隙間、すなわち空隙により、シャフトまたはステムからの、コンテナの故障またはひび割れを生じ得る、意図されていない突然の衝撃が生じないようになっている。
【0080】
本発明を、本発明の好ましい実施形態と関連して上述してきたが、当業者には、いくつかの変形が、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明から逸脱することなく、考えられることが明らかとなるであろう。
図1
図2
図3
図4
図4a
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
【手続補正書】
【提出日】2023-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤搬送装置であって、
開口を有するハウジングと、
ニードルおよびプランジャを含む薬剤収容コンテナであって、ニードルが投薬状態の間開口を通して部分的に延びる挿入端を有する、当該薬剤収容コンテナと、
シャフトであって、シャフトがプランジャから離隔する第1の位置、シャフトがプランジャと接触する第2の位置を有する、シャフトと、
第1の力をシャフトにかけ、シャフトを第1の位置から第2の位置に移動させ、続いてシャフトおよびプランジャを移動させて薬剤収容コンテナからの薬剤を排出する、第1の駆動部と、
少なくともプランジャが薬剤収容コンテナからの薬剤を排出する間に第1の力に抗するように構成されたダンパと、
を備え、
薬剤搬送装置は、さらに、
前記ニードルが、ニードルの損傷または汚染から保護されている第1の状態、および、
前記ニードルが、前記薬の投与のために、前記人体に刺す準備がされている第2の状態、
を含む、
薬剤搬送装置。
【請求項2】
開口に隣接して配置されたシールドであって、少なくとも投薬後の状態においてニードルの挿入端を覆うようにハウジングに対して移動するように構成された当該シールドを備えた、請求項1の薬剤搬送装置。
【請求項3】
少なくとも投薬後の状態においてニードルの挿入端を覆うようにハウジングに対してシールドを移動させるようにシールドに第2の力をかけるように構成された第2の駆動部を備えた、請求項2の薬剤搬送装置。
【請求項4】
第2の力は、シールドをハウジングにおける開口に押し入れることによって発生される、請求項3の薬剤搬送装置。
【請求項5】
第1の駆動部は、第1のバネを備える、請求項3の薬剤搬送装置。
【請求項6】
第1のバネは、トーションバネである、請求項5の薬剤搬送装置。
【請求項7】
第2の駆動部は、第2のバネを備える、請求項5の薬剤搬送装置。
【請求項8】
第1の駆動部の第1の力を解放するように構成された作動機構を備える、請求項1の薬剤搬送装置。
【請求項9】
作動機構は、ユーザからの手動の力によって作動される、請求項8の薬剤搬送装置。
【請求項10】
シャフトは折り曲げ可能である、請求項1の薬剤搬送装置。
【請求項11】
ダンパは、機械的脱進機構を備える、請求項1の薬剤搬送装置。
【請求項12】
薬剤収容コンテナに配される薬剤の量は、0.25ml~10mlの範囲内である、請求項1の薬剤搬送装置。
【請求項13】
ダンパーは、少なくともシャフトが第1の位置から第2の位置へと移動する間、第1の力に抗するように構成された、請求項1の薬剤搬送装置。