(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075324
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】ステント部材
(51)【国際特許分類】
A61F 2/915 20130101AFI20230523BHJP
【FI】
A61F2/915
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023044084
(22)【出願日】2023-03-20
(62)【分割の表示】P 2021091706の分割
【原出願日】2008-12-16
(31)【優先権主張番号】61/016,753
(32)【優先日】2007-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511193846
【氏名又は名称】クック・メディカル・テクノロジーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】COOK MEDICAL TECHNOLOGIES LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブロッカー,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ディアキング,ウィリアム・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】リーウッド,アラン・アール
(72)【発明者】
【氏名】チューター,ティモシー・エイ
(72)【発明者】
【氏名】シャルボワ,スティーブン・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ローダー,ブレイン・エイ
(72)【発明者】
【氏名】スウィフト,リチャード・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ゴパラクリシュナムルシー,シャラス
(72)【発明者】
【氏名】ヒューザー,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】クラッツバーグ,ジャリン
(72)【発明者】
【氏名】ラスムスン,イーレク・イー
(72)【発明者】
【氏名】ウーレンスレーヤ,ベント
(72)【発明者】
【氏名】モーゲルバング-イェンスン,キム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小さな外形の(low profile)非対称のステントを備えるステント部材を提供する。
【解決手段】医療処置において使用されるステント部材は、対向する曲線状の頂点の組を有する。一組の頂点の曲線部は、他の組の頂点の曲線部よりも大きい曲率半径を有する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の略直線部および第二の略直線部と、前記第一の略直線部および前記第二の略直線部の間に配置され第一の曲率半径を有する第一の曲線部と、を含む、少なくとも一つの遠位側の頂点と、
第三の略直線部および第四の略直線部と、前記第三の略直線部および前記第四の略直線部の間に配置され前記第一の曲率半径よりも大きい第二の曲率半径を有する第二の曲線部と、を含む、少なくとも一つの近位側の頂点と、を備え、
前記第一の略直線部と前記第二の略直線部との少なくとも一方は、前記第三の略直線部と前記第四の略直線部との少なくとも一方に連結する、ステント部材。
【請求項2】
前記第二の曲率半径は、前記第一の曲率半径の少なくとも二倍である、請求項1に記載のステント部材。
【請求項3】
略連続する複数の遠位側の頂点と近位側の頂点とを備え、その外面は略不変の円周を有する円筒を規定する、請求項1または請求項2に記載のステント部材。
【請求項4】
前記第一の曲率半径は、約0.5mm~約1.5mmである、請求項1から請求項3のいずれかに記載のステント部材。
【請求項5】
前記第二の曲率半径は、約4mm~約9mmである、請求項1から請求項4のいずれかに記載のステント部材。
【請求項6】
前記第一の曲率半径はほぼ1mmであり、前記第二の曲率半径はほぼ6mmである、請求項1から請求項5のいずれかに記載のステント部材。
【請求項7】
前記第二の曲率半径に対する前記第一の曲率半径の比は、約1:2.6~約1:18である、請求項1から請求項5のいずれかに記載のステント部材。
【請求項8】
前記近位側の頂点の各々は、周方向に前記遠位側の頂点からずれている、請求項1から請求項7のいずれかに記載のステント部材。
【請求項9】
略連続する複数の近位側の頂点と遠位側の頂点とを備え、その外面は円錐台を規定する、請求項1から請求項8のいずれかに記載のステント部材。
【請求項10】
前記近位側の頂点の少なくとも一つは、前記第二の曲線部から離れて配置された第一の丸みと第二の丸みとを備え、前記第一の丸みは第一の丸み曲率半径を有し、前記第二の丸みは第二の丸み曲率半径を有する、請求項1から請求項9のいずれかに記載のステント部材。
【請求項11】
前記第一の丸み曲率半径と前記第二の丸み曲率半径との各々はほぼ1mmの曲率半径を有し、前記第一の曲線部はほぼ0.5mmの曲率半径を有する、請求項10に記載のステント部材。
【請求項12】
前記第一および第二の丸み曲率半径に対する前記第一の曲線部の曲率半径の比は、約1:1~約1:10である、請求項10または10に記載のステント部材。
【請求項13】
グラフトをさらに備え、前記ステント部材の遠位側の頂点の少なくとも一つは一つ以上の縫合糸を使用して前記グラフトに取り付けられる、請求項1から請求項12のいずれかに記載のステント部材。
【請求項14】
グラフトをさらに備え、遠位側の頂点の少なくとも一つが前記グラフトに縫合され、近位側の頂点の少なくとも一つが前記グラフトの近位端を越えて延在して、前記ステントは前記グラフとの前記近位端に配置されている、請求項1から請求項12のいずれかに記載のステント部材。
【請求項15】
前記ステントは、前記曲線部と前記直線部とを有し略円筒を規定する金属線を含み、
前記第一の曲率半径は約1mmであり、
前記第二の曲率半径は約6mmである、請求項1から請求項3のいずれかに記載のステント部材。
【請求項16】
複数の近位側の頂点と、複数の略直線部によって前記近位側の頂点に連結された複数の遠位側の頂点と、を備え、
近位側の頂点の各々は第一の曲線部を含み、遠位側の頂点の各々は第二の曲線部を含み、
前記第一の曲線部と前記第二の曲線部との各々は、少なくとも一つの曲率半径を有し、前記近位側の頂点の少なくとも一つの前記曲率半径は前記遠位側の頂点の少なくとも一つの前記曲率半径よりも大きい、ステント部材。
【請求項17】
前記近位側の頂点の外周は、前記遠位側の頂点の外周よりも大きい、請求項16に記載のステント部材。
【請求項18】
グラフトをさらに備え、前記ステント部材の遠位側の頂点の少なくとも一つは一つ以上の縫合糸を使用して前記グラフトに取り付けられる、請求項16または請求項17に記載のステント部材。
【請求項19】
前記グラフトに取り付けられた第二のステント部材をさらに備え、前記第二のステント部材は、複数の近位側の頂点と、複数の略直線部によって前記近位側の頂点に連結された複数の遠位側の頂点と、を備え、
近位側の頂点の各々は第一の曲線部を含み、遠位側の頂点の各々は第二の曲線部を含み、
前記第一の曲線部と前記第二の曲線部との各々は、少なくとも一つの曲率半径を有し、前記遠位側の頂点の少なくとも一つの前記曲率半径は前記近位側の頂点の少なくとも一つの前記曲率半径よりも大きい、請求項18に記載のステント部材。
【請求項20】
少なくとも一つの分枝ステント、グラフト、またはその組合せをさらに備え、その一部は少なくとも近位側の頂点の内径を横に経由して配置される、請求項16から請求項19のいずれかに記載のステント部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ステント部材に関し、特に、小さな外形の(low profile)非対称のステン
トを備えるステント部材に関する。
【0002】
本発明は、概して、病状を治療するために体内の管で使用されるステントに関する。本発明のいくつかの局面は、より小さな外形を有し、不規則な血管の形状によりよく従い、および/または、従来のステント部材よりも高い封止力を有する、ステント部材を提供しようとするものである。
【背景技術】
【0003】
ステントは、種々の目的で、生体構造血管または導管内に挿入されることができる。ステントは、以前に閉塞または収縮された通路内の開存性を、たとえばバルーン血管形成処置を受けて、維持または回復できる。他のステントは、異なる処置のために使用されてもよい。たとえば、グラフトの内または周囲に設置されたステントは、動脈瘤を治療するために、グラフトを開いた形状に保持するために使用されている。加えて、グラフトの一端または両端に結合されたステントは、近位側または遠位側にグラフトから離れて延び、動脈瘤の疾患部分から離れた血管壁の健康な部分に係合して、血管内にグラフトを固定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステントは、自己拡張型またはバルーン拡張型のいずれかであってもよく、もしくは両方の型式のステントの性質を有してもよい。種々の現存する自己拡張型およびバルーン拡張型ステントの構造および形状は、略対称な端領域を備える。端領域は、一つ以上の頂点を含み、ニチノールまたは他の合金製の線で形成されて輪を形成する。この頂点は一般的に、比較的鋭い曲がりを備え、または幾分とがった表面を呈し、これにより、頂点の急角度の曲がりのために、比較的小さい送達形状へステントを圧縮することが容易になる。この利点を有するにもかかわらず、ある状況では、特に、たとえば胸大動脈のような、湾曲したまたはねじれた血管構造において、そのような比較的鋭いまたはとがった頂点は望まれないことがある。
【0005】
胸大動脈は、胸部動脈瘤または解離を治療するために使用されるステントグラフトにとって、困難な解剖学的構造を呈する。胸大動脈は、(心臓に近い)上行胸大動脈と(腹部大動脈へ向かって延びる)下行胸大動脈との間に延在する、胸管弓として知られる湾曲を備える。胸部ステントグラフトは、胸大動脈瘤を除去するために使用される。胸管弓のねじれた解剖学的構造に順応するためのステントグラフトの能力が、主な懸念である。現状の構造はときどき、(心臓に最も近い)ステントグラフトの近位端において、所望の封止能力を欠く。また、現状の胸部用の装置は比較的大きな外形を呈し、これにより、ある患者の解剖学的構造が問題になり得る。結局、現状のステントの多くは、比較的鋭い先端を有し、当該先端は、患者の体内で長期間経過した後に動脈の壁に望まない作用を起こす恐れのために、大動脈弓内でのステントの使用を妨げる。
【0006】
それゆえに、鋭い頂点のあるステントよりも、拡張された状態で組織を冒すことの少ない、少なくとも一つの比較的丸みのある頂点を有する概して非対称のステントは、上記の問題を軽減し得る一方、大動脈弓によりよく順応し、封止および/または調整ステントとして使用される場合には径方向の力をより増大させ、また丸められて容易に導入可能な径にされる所望の能力を提供し得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は概して、病状を治療するために体内の管で使用されるステントに関する。特に、本発明は、対向する湾曲した頂点の組を有し、一組の頂点の湾曲した部分が他の組の頂点の湾曲した部分よりも大きい曲率半径を有し、従来のステントよりも小さい外形を呈してもよい、ステントに関する。この構成は、非対称なステントを提供する。具体的には、現在示されている実施の形態のステントは、小さい外形を維持する一方、(たとえば、胸大動脈、特に動脈弓の領域内において見られる)大きくねじれた解剖学的構造によりよく順応し、現在のいくつかの装置に比較してより優れた径方向の封止力を与えることができる。他の局面では、現在示されているステントは、たとえば付属的なステントおよび/またはステントグラフトの設置を可能にするステントまたはステントグラフト装置という状況では、支持および空間を設けることができる。
【0008】
一実施例では、本発明は、少なくとも一つの近位側の頂点と、複数の略直線状の部分により近位側の頂点に連結された少なくとも一つの遠位側の頂点とを含み、各々の近位側の頂点は第一湾曲部を含み、各々の遠位側の頂点は第二湾曲部を備え、第一湾曲部と第二湾曲部との各々は少なくとも一つの曲率半径を含み、少なくとも一つの近位側の頂点の曲率半径は少なくとも一つの遠位側の頂点の曲率半径よりも大きい、ステントを含んでもよい。
【0009】
他の実施例では、本発明は、交互に対向し略湾曲した頂点の輪を含むステントに形成され、第一の方向における複数の頂点の曲率半径は反対方向における頂点の曲率半径よりも大きい、少なくとも一つの金属線を含んでもよい。
【0010】
有利には、丸みのある頂点が導管との組織を傷つけない接触を設け、一方、より丸みの大きい頂点とより丸みの小さい頂点との組合せが、導入中の望ましい圧縮性と、導管内に留置されたとき望ましい順応性および封止性のある外形とを含む、外形の小さいステントを提供してもよい。
【0011】
本発明は、以下の図面および説明を参照して、よりよく理解され得る。図中の構成要素は必ずしも縮尺通りではなく、その代わりに、強調して描かれ本発明の原理を図示している。さらに、図面では、異なる図の全体を通して、同様の参照番号が対応する部品を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】非対称のステントの一実施例を示す図である。
【
図5】
図4のステントの非対称の曲率半径を図式的に示す図である。
【
図6】模擬された動脈内にある
図4のステントを示す図である。
【
図7】非対称のステントの別の実施例を示す図である。
【
図8】さらに他の実施例のステントの非対称の曲率半径を図式的に示す図である。
【
図9】模擬された動脈内にある
図8のステントを示す図である。
【
図10】非対称のステントのさらに他の実施例の端面図を示す図である。
【
図13】模擬された動脈内にある
図10のステントを示す図である。
【
図14】
図10のステントを組み入れるステントグラフトの部分斜視図である。
【
図16】側枝を有するステントグラフトを示す図である。
【
図17】側枝を有するステントグラフトを示す図である。
【
図18】側枝を有するステントグラフトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好ましい実施例の詳細な説明
本発明は概して、病状を治療するために体内の管で使用されるステントに関する。特に、本発明は、対向する湾曲した頂点の組を有し、一組の頂点の湾曲した部分が他の組の頂点の湾曲した部分よりも大きな曲率半径を有し、従来のステントよりも小さい外形を呈してもよい、新規な非対称のステントに関する。より小さい外形は、特にねじれたまたは小径の導管に関する患者内での使用のために、利点を呈する。
【0014】
本出願において、「近位」の語は、医療処置中の心臓に概して最も近い方向をいい、一方「遠位」の語は、医療処置中の心臓から最も離れる方向をいう。本明細書を通して、近位側および遠位側の頂点が参照される。しかし、当該技術分野における当業者は、本発明のステントの近位-遠位の方位が本発明の範囲を超えることなく逆であってもよいことを認識するであろう。
【0015】
図4-15に示すように、この新規のステントは、対向する近位側の頂点と遠位側の頂点との曲率半径がステントの最上部と底部とで異なる点において、市場で入手可能な多くのステントのように対称ではない。ステントは、ステントグラフトのいずれかの端部に取り付けられて封止を設けてもよく、グラフト材料に対し内方または外方に使用されてグラフトに対する支持を与えてもよい。
【0016】
非対称のステントは、グラフトとともに使用されるとき、グラフト材料を動脈の壁に対して開いた状態に保持するために、グラフトの端部の開口において十分に強い径方向の力を与えるように形成されてもよい。また、患者の解剖学的構造に適応させるために十分な柔軟性をグラフトが含むように、ステントは長さが短いことが意図される。この柔軟性と強い径方向の力との組み合わせにより、グラフトと動脈壁との間のよりよい封止性が提供される。
【0017】
図1は、対称の頂点102,103を有する、従来のステント100を示す。具体的には、近位側の頂点102と遠位側の頂点103とは全て、略同一の曲率半径(r
1)を有する。この曲率半径は
図2に図式的に示される。
図3は、FEA外形シミュレーション(FEA contour simulation)から改作された、模擬された動脈110内のステント100を示し、ここでステント100は20%寸法を大きくされている。(丸く囲まれた)近位側の頂点102と遠位側の頂点103とは、動脈壁110に対してほとんどまたは全く圧力を作用しない。一方、中間領域107はより大きい圧力を作用し、一実施例では、0.178重量ポンドの径方向の全封止力を与える。この構成は、(たとえばカテーテルを介した導入のために)18フレンチに丸められてもよく、この場合頂点102,103において約5.8%の最大の曲げ歪みを有する。たとえば、典型的なニッケルチタン合金の金属線をステントに使用するとき、金属線の変形またはその耐久性への悪影響の可能性が増大するのを回避するために、9%の歪みを超えないことが望ましい。
【0018】
図4-7は、非対称のステント200の第一の実施例を示す。非対称のステント200は、中間の略直線部分によって互いに隔てられた、概して湾曲した非対称の近位側および遠位側の頂点部(複数の頂点)202,203を有する、金属線の輪として形成される。具体的には、遠位側の頂点203は全て、互いに略同一の曲率半径r
dを有する。しかし、遠位側の頂点の曲率半径は、近位側の頂点202の曲率半径(r
p)と異なる。遠位側の頂点203(
図14-15を参照して以下に説明されるステントグラフトのグラフト材
料に取り付けられ、グラフト材料によりほぼ覆われてもよい)は、従来のzステントと変わらない、概してきつい丸みを有する。しかし近位側の頂点203は、より大きい丸みを有する。近位側の頂点202と遠位側の頂点203との違いは、
図5に絵的に図示される。図示された例では、丸みのある近位側の頂点202は6.0mmの曲率半径を有する。一方、よりきつい遠位側の頂点202は、1.0mmの曲率半径を有する。本発明に係る非対称のステントの特定の実施例では、丸みのある近位側の頂点の曲率半径(
図5に示す方法で測定される)は、約4mm~約9mmであってもよく、よりきつい遠位側の頂点の曲率半径は、約0.5mm~約1.5mmであってもよい。
【0019】
これらのおよび他の実施例では、遠位側の頂点の曲率半径に対する近位側の頂点の曲率半径の比は、約2.6:1~約18:1であってもよく、望ましくは約6:1であってもよい。ステント200の外周は好ましくは、この構成においてステント200の周囲の堅固な外表面が円筒を形成するように、略不変である。もっとも、ステントはもっとも好ましくは、円筒よりも滑らかでない表面に順応するのであろうが。
【0020】
図6は、FEA外形シミュレーションから改作された、模擬された動脈210内のステント200を示し、ここでステント200は20%寸法を大きくされている。近位側および遠位側の頂点202,203(丸で囲まれている)は、動脈壁210にほとんどまたは全く圧力を作用しない。一方、中間領域204(角で囲まれている)は、より大きな圧力を作用し、図示された実施例では、合計約0.160重量ポンドの径方向の封止力を与える。この構成は、18フレンチに丸められてもよく、この場合頂点202,203において約6.5%の最大曲げ歪みを有する。
【0021】
図7は、他の非対称ステント250の実施の形態を示す。この実施の形態は、
図4-6の実施の形態と非常に類似するが、より小さな近位-遠位方向の長さを有する。
図4-7に示す実施例の各々は、現状のzステントと実質的に同一の方法に、近位側の頂点を遠位側の頂点よりも大きな曲率半径を含むように形成することのみを変更して、製造されてもよい。
【0022】
図8-9は、非対称のステント300の他の実施例を示す。非対称のステント300は、
図4-7を参照して上述された実施例の略半球状の形状ではなく、「丸屋根形状」の近位側の形状を有する。各々の近位側の頂点302の形状は、中央丸み(central fillet)302aと、一対の対称の対向する肩丸み(shoulder fillet)302bと、を含む。肩
丸み302bは、中央丸み302aから略等距離にあってもよく、異なる距離に配置されてもよい。ステント300の近位側の頂点として、中央丸み302aの各々は1.0mmの曲率半径を有し、肩丸み302bの各々は0.5mmの丸み曲率半径を有する。遠位側の頂点304は1.0mmの曲率半径を有する。丸屋根形状を有する他の実施例(図示せず)では、近位側の頂点の中央および肩丸みは各々、たとえば0.5mmの同一の曲率半径を有し、遠位側の頂点もまた0.5mmの曲率半径を有してもよい。他の実施例では、中央および肩丸み302a,302bは各々約0.5mm~約5mmの曲率半径を有し、遠位側の頂点は約0.5mm~約1.5mmの曲率半径を有してもよい。丸屋根形状を有する他の実施例(図示せず)では、近位側の頂点の中央丸みと各々の肩丸みとの曲率半径の比は約3:1であってもよい。
図8はまた、ステントの実施の形態において望ましい比を説明するために有用な三つの距離を示す。「X」は、肩丸み302bの頂点の先端間の距離を示す。「Y」は、遠位側の頂点304の先端間の距離を示す。「N」は、遠位側の頂点304の先端と近位側の丸み302aの頂点の先端との間の、長手軸に沿う距離を示す。望ましい実施の形態は、約1:3~約7:8のX:Yの比と、約1:1~約3:1のY:Nの比とを含んでもよい。さらに他の実施例(図示せず)では、この実施例の丸い頂点が、
図4-7を参照して述べられた実施例の略半球状の頂点に組み合わされてもよい。
【0023】
図9は、FEA外形シミュレーションから改作された、模擬された動脈310内のステント300を示し、ここでステント300は20%寸法を大きくされている。近位側および遠位側の頂点302,304は、動脈壁310にほとんどまたは全く圧力を作用しない。一方、中間領域は、より大きな圧力を作用し、図示された実施例では、合計約0.420重量ポンドの径方向の封止力を与える。この構成は、18フレンチに丸められてもよく、この場合頂点において9%以下の最大曲げ歪みを有する。この実施例のより大きな封止力は、既存のzステントと比較して、特定の環境におけるステントの配置および保持に対する利点を提供する。
【0024】
図10-13は、非対称のステント400の他の実施例を示す。非対称のステント400は、
図10に示すように、広げられた「花形状」を有する。具体的には、ステント400が広げられた形状のとき、より丸みの大きい近位側の頂点402の周囲の円周は、より丸みの小さい遠位側の頂点404の周囲の円周よりも大きい。このことは
図11-14により明確に示される。この構成において、広げられたステント400の周囲の堅固な外表面は円錐台を形成する。この構成は、
図4-7を参照して上述された実施例と同様の方法(すなわち、略均一な外周を有するステントを製造すること)に、より小さな径のグラフト材料に縫合する際に遠位側の頂点404をより小さな円周に引くことを含み得る追加のステップを加えて、製造されてもよい。その代わりとして、または加えて、ステント400は熱硬化され所望の形状にされてもよい。
【0025】
図13は、FEA外形シミュレーションから改作された、模擬された動脈410内のステント400を示し、ここでステント400は20%寸法を大きくされている。驚くべきことに、近位側および遠位側の頂点402,404と同様に中間領域に沿う圧力分布の形状は、ステントの周囲全体を通じて略均一である。図示された構成は、合計約0.187重量ポンドの径方向の封止力を与える。この略均一な圧力分布という特性は、特定の用途において封止を与える、および/または、より不均一な圧力分布を有するステントと比較してグラフト材料を介した管壁の磨耗をより少なくする、という利点を供し得る。
【0026】
図14-15は、
図10-13を参照して上述された本発明のステント400の実施例を使用したステントグラフト500の、二つの異なる図を示す。ステントグラフト500は、拡張した状態で示され、胸部大動脈瘤の治療で使用されるために形成されてもよい。ステント400は、略円筒状のグラフトスリーブ502の近位側端に配置され、その遠位側の頂点404は縫合糸504によってグラフトスリーブ502に固着されている。ステントグラフト500はまた、ステント400から遠位側に配置された、一連のzステント510a-dを含む。第一のzステント510aはグラフト502の内周に取り付けられ、他のzステント510b-510dはグラフト502の外径に取り付けられている。ステント400の近位側端は、患者の管(たとえば血管)内のグラフトの固定を容易にできるように、グラフトの近位側端を越えて延在している。
【0027】
ステントの丸みのある先端は、
図14-15に示すように、グラフト材料から僅かな距離のみ突出してもよい。この実施例では、むき出しの金属線の小さな部分のみが動脈壁に露出する。これらの特徴的な(大きな半径の)丸みのある先端は、異なるステント形状のより鋭い先端よりも、動脈壁を刺通する可能性がより少ない。有利には、この非対称のステント構造は、封止の効能を最大化する一方、動脈壁の状態を維持する。具体的には、ステントのよりきつい頂点は望ましい径方向の拡張/封止力を与え、丸みのあるより大きな頂点は望ましくは組織を傷つけない動脈壁との接触を提供する。
【0028】
図16-18は、より大きい丸みのある近位側の頂点604とよりきつい丸みのある遠位側の頂点606とを有する、非対称のステント602を含む、ステントグラフト600の実施の形態を示す。ステント602は、略円柱状のグラフト610の内面(図示せず)
または外面に縫合糸により取り付けられている。グラフト610は他のステント608を含む。グラフト材料612の第二層はまた、グラフト610の内周にその長手の中ほどに取り付けられ、ステント602の内周を経由して近位側へ延びる。
【0029】
図17の端面図に示すように、この構造は、枝構造614(たとえば、管状または非管状のステント、ステントグラフト、もしくは本明細書中に例示の目的で示された一般的な管状の構造として具体的に表現されてもよい)のための通路を設けるが、枝構造614は、二つの層610,612の間に形成された通路と、グラフト610の開口611とを通り抜ける。管状構造614は有利には、ステント602のより大きな丸みのある近位側の頂点604の内径をほぼ横に経由して配置されているが、これにより、グラフト610のための組織を傷つけない円柱状の支持と、筒状構造614用の固着とが設けられる。ステントグラフト600は、短いネック部を有し、効果的な近位側の封止を形成して現状入手可能な腹部大動脈瘤(AAA)ステントグラフトにおいて起こり得る近位側のタイプIのエンドリークを回避するために十分な接触面積を欠くような腎動脈のすぐ近くにある、または腎動脈を横切る、AAAの治療のために、特に有用であり得る。当該技術分野における当業者は、ステントグラフト600がAAAをほぼ閉塞させることができる一方、下行大動脈を経由する大動脈から腎動脈までの斬新な通路を設けることを認識するであろう。具体的には、ステントグラフト600の実施の形態のように形成されたステントグラフトは、分枝ステントおよび/またはステントグラフトを含むモジュール構造を含むが、腎動脈の上方と腹腔動脈および上腸間膜動脈の下方とに封止を形成することができる。また、
図16に示されるように、分枝管構造614のための付加的な組織を傷つけない支持を与える反対側の方位において第一の非対称のステント602に隣接して、第二の非対称のステント622が配置されてもよい。
【0030】
本発明のステントの実施例は、ニッケルチタン合金またはその他の現在公知または未だ開発中の材料により形成されてもよく、全て本発明の範囲内にある。ステントは好ましくはニチノールの金属線から作られ、それゆえにMRIに適合できる。ニチノールの超弾性特性は、小さい外形の送達装置の内部に丸められるステントの能力を促進するであろう。
【0031】
本発明の種々の実施例が開示されたが、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその均等物を考慮する他に、制限されるものではない。さらに、本明細書中に開示された利点は、必ずしも本発明の唯一の利点ではない。本発明の各実施例が開示された利点の全てを達成することは、必ずしも期待されない。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントであって、
複数の略直線部によって連結された複数の近位側の頂点および遠位側の頂点を含み、
各近位側の頂点は第1の曲線部を含み、各遠位側の頂点は第2の曲線部を含み、前記第1の曲線部および前記第2の曲線部は各々、少なくとも1つの曲率半径を含み、前記近位側の頂点のうちの少なくとも1つの前記曲率半径は、前記遠位側の頂点のうちの少なくとも1つの前記曲率半径よりも大きく、
前記近位側の頂点のうちの1つの第1の曲率半径は、約4mm~約9mmである、ステント。
【請求項2】
前記遠位側の頂点のうちの1つの第2の曲率半径は、約0.5mm~約1.5mmであり、
前記第1の曲率半径に対する前記第2の曲率半径の比は、約1:2.6~約1:18である、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記第2の曲率半径は約1mmであり、前記第1の曲率半径は約6mmである、請求項2に記載のステント。
【請求項4】
近位端および遠位端を有するグラフトをさらに含み、前記ステントの前記遠位側の頂点のうちの少なくとも1つは前記グラフトに取り付けられている、請求項1に記載のステント。
【請求項5】
前記ステントは、前記グラフトに対して径方向内向きまたは外向きに面する少なくとも1つの覆われていない領域を含む、請求項4に記載のステント。
【請求項6】
略連続する複数の近位側の頂点および遠位側の頂点を含み、それらの外面は略不変の円周を有する円筒を規定する、請求項1に記載のステント。
【請求項7】
前記近位側の頂点の各々は、周方向に前記遠位側の頂点からずれている、請求項1に記載のステント。
【請求項8】
略連続する複数の近位側の頂点および遠位側の頂点を含み、それらの外面は円錐台を規定する、請求項1に記載のステント。
【請求項9】
ステントであって、
複数の略直線部によって連結された複数の近位側の頂点および遠位側の頂点を含み、
各近位側の頂点は第1の曲線部を含み、各遠位側の頂点は第2の曲線部を含み、前記第1の曲線部および前記第2の曲線部は各々、少なくとも1つの曲率半径を含み、前記遠位側の頂点のうちの少なくとも1つの前記曲率半径は、前記近位側の頂点のうちの少なくとも1つの前記曲率半径よりも大きく、
前記遠位側の頂点のうちの1つの第1の曲率半径は、約4mm~約9mmである、ステント。
【請求項10】
前記近位側の頂点のうちの1つの第2の曲率半径は、約0.5mm~約1.5mmであり、
前記第1の曲率半径に対する前記第2の曲率半径の比は、約1:2.6~約1:18である、請求項9に記載のステント。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
【
図4】非対称のステントの一実施例を示す図である。
【
図5】
図4のステントの非対称の曲率半径を図式的に示す図である。
【
図6】模擬された動脈内にある
図4のステントを示す図である。
【
図7】非対称のステントの別の実施例を示す図である。
【
図8】さらに他の実施例のステントの非対称の曲率半径を図式的に示す図である。
【
図9】模擬された動脈内にある
図8のステントを示す図である。
【
図10】非対称のステントのさらに他の実施例の端面図を示す図である。
【
図13】模擬された動脈内にある
図10のステントを示す図である。
【
図14】
図10のステントを組み入れるステントグラフトの部分斜視図である。
【
図16】側枝を有するステントグラフトを示す図である。
【
図17】側枝を有するステントグラフトを示す図である。
【
図18】側枝を有するステントグラフトを示す図である。
【
図19】胸部大動脈解離の血管内治療用に構成されたステントグラフトデバイスの側面図である。
【外国語明細書】