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特開2023-7538差動通信用コネクタ及び基板用コネクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007538
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】差動通信用コネクタ及び基板用コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6463 20110101AFI20230112BHJP
   H01R 13/514 20060101ALI20230112BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20230112BHJP
【FI】
H01R13/6463
H01R13/514
H01R12/71
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110425
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】正田 宗二朗
(72)【発明者】
【氏名】佐分 主税
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佳吾
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
5E223
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB02
5E021FB10
5E021FC20
5E087EE02
5E087EE14
5E087FF03
5E087FF06
5E087FF12
5E087GG26
5E087GG32
5E087GG35
5E087HH01
5E087MM02
5E087MM05
5E087RR02
5E223AB58
5E223AB65
5E223BA01
5E223BA06
5E223BA07
5E223BB01
5E223CB24
5E223CB26
5E223CC12
5E223CD01
5E223DA25
5E223DA33
5E223DB09
5E223DB11
5E223EA02
5E223EA07
5E223EA13
5E223EA14
(57)【要約】
【課題】EMC特性の低下を抑制する。
【解決手段】差動通信用コネクタは、回路基板31の実装面31Sと平行に並ぶように配置される複数の雌側ハウジング16と、複数の雌側ハウジング16に収容された複数の雌端子金具22と、を備え、1つの雌側ハウジング16に収容された一対の雌端子金具22が、1つの差動ペア伝送路29を構成し、1つの差動ペア伝送路29を構成する一対の雌端子金具22は、実装面31Sと直角な方向に並ぶように配置されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の実装面と平行に並ぶように配置される複数の雌側ハウジングと、
複数の前記雌側ハウジングに収容された複数の雌端子金具と、を備え、
1つの前記雌側ハウジングに収容された一対の前記雌端子金具が、1つの差動ペア伝送路を構成し、
1つの前記差動ペア伝送路を構成する前記一対の雌端子金具は、前記実装面と直角な方向に並ぶように配置されている差動通信用コネクタ。
【請求項2】
1つの前記差動ペア伝送路を構成する前記一対の雌端子金具は、1本の差動ケーブルを構成するツイストペア線に接続されている請求項1に記載の差動通信用コネクタ。
【請求項3】
前記回路基板に取り付けられる基板側ハウジングと、
前記基板側ハウジングに取り付けられ、前記差動ペア伝送路を構成する複数の雄端子金具とを備え、
1つの前記差動ペア伝送路を構成する一対の前記雄端子金具が、同じ長さに設定されている請求項1又は請求項2に記載の差動通信用コネクタ。
【請求項4】
前記差動ペア伝送路を構成する前記一対の雄端子金具は、前記回路基板と直角な方向に並ぶように配置されたタブと、前記雌側ハウジングの並び方向と平行に並ぶように配置された基板接続部とを有する請求項3に記載の差動通信用コネクタ。
【請求項5】
回路基板の実装面に取り付けられる基板側ハウジングと、
全体として細長い形状であり、前記基板側ハウジングに取り付けられた複数の第1雄端子金具と、
全体として細長い形状であり、前記基板側ハウジングに取り付けられた複数の第2雄端子金具とを備え、
前記第1雄端子金具の長さと前記第2雄端子金具の長さが同じ寸法に設定されている基板用コネクタ。
【請求項6】
前記基板側ハウジングは、前記回路基板と直角な端子保持部を有し、
前記第1雄端子金具は、
前記端子保持部を前後方向に貫通する第1端子本体部と、
前記基板側ハウジングの外部において、前記第1端子本体部の後端から延出して前記回路基板に接続される第1基板接続部とを有し、
前記第2雄端子金具は、
前記端子保持部を前後方向に貫通する第2端子本体部と、
前記基板側ハウジングの外部において、前記第2端子本体部の後端から延出して前記回路基板に接続される第2基板接続部とを有し、
前記第1基板接続部と前記第2基板接続部は、寸法と形状が同一であり、
複数の前記第1基板接続部と複数の前記第2基板接続部が、一列に並んで配置されている請求項5に記載の基板用コネクタ。
【請求項7】
前記第1端子本体部の前端部と前記第2端子本体部の前端部が、前記回路基板と直交する高さ方向に間隔を空けて並ぶように配置され、
前記第1端子本体部は、後方に向かうほど前記回路基板に接近するように傾斜した第1傾斜部を有し、
前記第2端子本体部は、後方に向かうほど前記回路基板から遠ざかるように傾斜した第2傾斜部を有している請求項6に記載の基板用コネクタ。
【請求項8】
前記第1端子本体部は、前記第1傾斜部の後端から鈍角をなして後方へ延出し、前記第1基板接続部と直角に繋がる第1繋ぎ部を有し、
前記第2端子本体部は、前記第2傾斜部の後端から鈍角をなして後方へ延出し、前記第2基板接続部と直角に繋がる第2繋ぎ部を有している請求項7に記載の基板用コネクタ。
【請求項9】
前記第1端子本体部は、前記第1傾斜部よりも幅広であって前記第1傾斜部の前端に連なる第1基部と、前記第1基部から前方へ突出した形状であって前記基板側ハウジングに対して後方から圧入された第1圧入部とを有し、
前記第2端子本体部は、前記第2傾斜部よりも幅広であって前記第2傾斜部の前端に連なる第2基部と、前記第2基部から前方へ突出した形状であって前記基板側ハウジングに対して後方から圧入された第2圧入部とを有し、
前記第1圧入部と前記第1傾斜部が、幅方向に位置ずれして配置され、
前記第2圧入部と前記第2傾斜部が、幅方向に位置ずれして配置されている請求項7又は請求項8に記載の基板用コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、差動通信用コネクタ及び基板用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハウジング内に、差動ペアを構成する複数の対の接触要素を収容した差動通信用のコネクタが開示されている。この差動通信用コネクタでは、1つの接触要素対を構成する2つの接触要素が、左右方向に並べて配置されている。そして、複数の接触要素対も、左右方向に並べて配置されている。
【0003】
特許文献2には、フード部を有するハウジングと、ハウジングに取り付けた複数の端子とを備えた基板用コネクタが開示されている。各端子は、棒状の材料からなり、接続端子部と実装端子部とをL字形に繋げた形状をなす。接続端子部は、ハウジングの仕切壁部を貫通し、接続端子部の先端部はフード部内に収容されている。実装端子部は、仕切壁部の後方において接続端子部の後端から下向きに延出し、水平な回路基板に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2015-528625号公報
【特許文献2】特開2020-009708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたコネクタでは、隣り合う接触要素対のうち一方の接触要素対からノイズが発せられたときに、他方の接触要素対では、2つの接触要素が受けるノイズの影響が異なっている。即ち、他方の接触要素対を構成する接触要素のうち一方の接触要素が、ノイズ源に近いのに対し、他方の接触要素はノイズ源から遠い。このように1つの接触要素対においてノイズ源からの距離に差異があると、クロストークが大きくなり、EMC特性が低下する。
【0006】
特許文献2に記載された基板用コネクタを多極化しようとする場合、複数の接続端子部を、回路基板と直角な上下方向に間隔を空けて並べ、複数の実装端子を、仕切壁部と直角な前後方向に間隔を空けて並べることになる。この場合、接続端子部が回路基板から遠く、実装端子が仕切壁部から遠い端子の長さは、接続端子部が回路基板に近く、実装端子が仕切壁部に近い端子の長さよりも長くなる。そのため、端子の材料として、長さの異なる複数種類のものを用意する必要があり、材料コストが高くなる。
【0007】
また、特許文献2に記載された基板用コネクタを、多極化した上で差動通信用コネクタとして用いる場合、接続端子部が上下に並び、実装端子部が前後に並ぶ端子同士を差動ペアにすることが考えられる。この場合、差動ペアとなる2つの端子は、接続端子部の長さが互いに異なり、実装端子部の長さも互いに異なる。そのため、1つの差動ペアにおいて、一方の端子からなる伝送路の伝送長と、他方の端子からなる伝送路の伝送長とが異なることになり、EMC特性が低下するという問題がある。
【0008】
本開示の差動通信用コネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、EMC特性の低下を抑制することを目的とする。本開示の基板用コネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、材料コストを抑えること、又は材料コストを抑えるとともにEMC特性の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の開示の差動通信用コネクタは、
回路基板の実装面と平行に並ぶように配置される複数の雌側ハウジングと、
複数の前記雌側ハウジングに収容された複数の雌端子金具と、を備え、
1つの前記雌側ハウジングに収容された一対の前記雌端子金具が、1つの差動ペア伝送路を構成し、
1つの前記差動ペア伝送路を構成する前記一対の雌端子金具は、前記実装面と直角な方向に並ぶように配置されている。
【0010】
第2の開示の基板用コネクタは、
回路基板の実装面に取り付けられる基板側ハウジングと、
全体として細長い形状であり、前記基板側ハウジングに取り付けられた複数の第1雄端子金具と、
全体として細長い形状であり、前記基板側ハウジングに取り付けられた複数の第2雄端子金具とを備え、
前記第1雄端子金具の長さと前記第2雄端子金具の長さが同じ寸法に設定されている。
【発明の効果】
【0011】
第1の開示によれば、EMC特性の低下を抑制することができる。第2の開示によれば、材料コストを抑えること、又は材料コストを抑えるとともにEMC特性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例1の差動通信用コネクタにおいて、基板側モジュールとハーネス側モジュールを分離した状態をあらわす斜視図である。
図2図2は、ハーネス側モジュールにおいて、アウタハウジングとインナモジュールを分離した状態をあらわす斜視図である。
図3図3は、ハーネス側モジュールのインナモジュールを、組付け時の向きにして分解した状態をあらわす斜視図である。
図4図4は、差動通信用コネクタの正断面図である。
図5図5は、差動通信用コネクタの側断面図である。
図6図6は、基板側モジュールの正面図である。
図7図7は、基板側モジュールの背面図である。
図8図8は、図7のA-A線断面図である。
図9図9は、図7のB-B線断面図である。
図10図10は、差動ペア伝送路を構成する第1雄端子金具と第2雄端子金具の斜視図である。
図11図11は、差動ペア伝送路を構成する第1雄端子金具と第2雄端子金具の正面図である。
図12図12は、差動ペア伝送路を構成する第1雄端子金具と第2雄端子金具の側面図である。
図13図13は、本実施例1を適用した実施例モデルと従来モデルのANEXTを示すグラフである。
図14図14は、本実施例1を適用した実施例モデルと従来モデルのANEXTDCを示すグラフである。
図15図15は、本実施例1を適用した実施例モデルと従来モデルのAFEXTを示すグラフである。
図16図16は、本実施例1を適用した実施例モデルと従来モデルのAFEXTDCを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
第1の開示の差動通信用コネクタは、
(1)回路基板の実装面と平行に並ぶように配置される複数の雌側ハウジングと、複数の前記雌側ハウジングに収容された複数の雌端子金具と、を備え、1つの前記雌側ハウジングに収容された一対の前記雌端子金具が、1つの差動ペア伝送路を構成し、1つの前記差動ペア伝送路を構成する前記一対の雌端子金具は、前記実装面と直角な方向に並ぶように配置されている。本開示の構成によれば、いずれかの雌端子金具からノイズが発生したときに、ノイズ源とは異なる雌側ハウジング内に収容されている一対の雌端子金具は、ノイズの影響を同等程度に受ける。差動ペア伝送路を構成する一対の雌端子金具の間では、クロストークが低減されるので、EMC特性の低下が抑制される。
【0014】
(2)1つの前記差動ペア伝送路を構成する前記一対の雌端子金具は、1本の差動ケーブルを構成するツイストペア線に接続されていることが好ましい。この構成によれば、雌端子金具と差動ケーブルを含む差動ペア伝送路のEMC特性が向上する。
【0015】
(3)前記回路基板に取り付けられる基板側ハウジングと、前記基板側ハウジングに取り付けられ、前記差動ペア伝送路を構成する複数の雄端子金具とを備え、1つの前記差動ペア伝送路を構成する一対の前記雄端子金具が、同じ長さに設定されていることが好ましい。この構成によれば、差動ペア伝送路において、一方の雄端子金具によって構成される伝送路と、他方の雄端子金具によって構成される伝送路が同じ長さになるので、EMC特性に優れている。
【0016】
(4)(3)において、前記差動ペア伝送路を構成する前記一対の雄端子金具は、前記回路基板と直角な方向に並ぶように配置されたタブと、前記雌側ハウジングの並び方向と平行に並ぶように配置された基板接続部とを有することが好ましい。この構成によれば、複数の基板接続部を一列に並べて配置することができるので、回路基板の実装面のうち基板接続部の接続領域以外の領域において、回路や実装部品のレイアウトに関する設計の自由度が高い。
【0017】
第2の開示の基板用コネクタは、
(5)回路基板の実装面に取り付けられる基板側ハウジングと、全体として細長い形状であり、前記基板側ハウジングに取り付けられた複数の第1雄端子金具と、全体として細長い形状であり、前記基板側ハウジングに取り付けられた複数の第2雄端子金具とを備え、前記第1雄端子金具の長さと前記第2雄端子金具の長さが同じ寸法に設定されている。この構成によれば、第1雄端子金具と第2雄端子金具の材料コストを抑えることができる。第1雄端子金具と第2雄端子金具によって差動ペア伝送路を構成する場合は、EMC特性が向上する。
【0018】
(6)前記基板側ハウジングは、前記回路基板と直角な端子保持部を有し、前記第1雄端子金具は、前記端子保持部を前後方向に貫通する第1端子本体部と、前記基板側ハウジングの外部において、前記第1端子本体部の後端から延出して前記回路基板に接続される第1基板接続部とを有し、前記第2雄端子金具は、前記端子保持部を前後方向に貫通する第2端子本体部と、前記基板側ハウジングの外部において、前記第2端子本体部の後端から延出して前記回路基板に接続される第2基板接続部とを有し、前記第1基板接続部と前記第2基板接続部は、寸法と形状が同一であり、複数の前記第1基板接続部と複数の前記第2基板接続部が、一列に並んで配置されていることが好ましい。この構成によれば、回路基板の実装面のうち第1基板接続部及び第2基板接続部の接続領域以外の領域において、回路や実装部品のレイアウトに関する設計の自由度が高い。
【0019】
(7)(6)において、前記第1端子本体部の前端部と前記第2端子本体部の前端部が、前記回路基板と直交する高さ方向に間隔を空けて並ぶように配置され、前記第1端子本体部は、後方に向かうほど前記回路基板に接近するように傾斜した第1傾斜部を有し、前記第2端子本体部は、後方に向かうほど前記回路基板から遠ざかるように傾斜した第2傾斜部を有していることが好ましい。この構成によれば、第1傾斜部と第2傾斜部によって、第1端子本体部の前端部と第2端子本体部の前端部の高低差が吸収される。第1端子本体部の後端部と第1基板接続部とを直角な曲げ部で繋ぐ場合に比べると、第1雄端子金具の全長を短くすることができる。第2端子本体部の後端部と第2基板接続部とを直角な曲げ部で繋ぐ場合に比べると、第2雄端子金具の全長を短くすることができる。
【0020】
(8)(7)において、前記第1端子本体部は、前記第1傾斜部の後端から鈍角をなして後方へ延出し、前記第1基板接続部と直角に繋がる第1繋ぎ部を有し、前記第2端子本体部は、前記第2傾斜部の後端から鈍角をなして後方へ延出し、前記第2基板接続部と直角に繋がる第2繋ぎ部を有していることが好ましい。第2傾斜部と第2基板接続部とを直接的に繋げた場合は、第2傾斜部と第2基板接続部が鋭角をなすことになり、鋭角に繋がる部位でノイズが発生し易いので好ましくない。上記構成によれば、第2傾斜部と第2基板接続部との間に第2繋ぎ部を介在させたことによって、第2雄端子金具には鋭角をなす部位が存在しなくなるので、ノイズの発生を抑制できる。
【0021】
(9)(7)又は(8)において、前記第1端子本体部は、前記第1傾斜部よりも幅広であって前記第1傾斜部の前端に連なる第1基部と、前記第1基部から前方へ突出した形状であって前記基板側ハウジングに対して後方から圧入された第1圧入部とを有し、前記第2端子本体部は、前記第2傾斜部よりも幅広であって前記第2傾斜部の前端に連なる第2基部と、前記第2基部から前方へ突出した形状であって前記基板側ハウジングに対して後方から圧入された第2圧入部とを有し、前記第1圧入部と前記第1傾斜部が、幅方向に位置ずれして配置され、前記第2圧入部と前記第2傾斜部が、幅方向に位置ずれして配置されていることが好ましい。この構成によれば、第1傾斜部が第1圧入部に対して幅方向に位置ずれしているので、第1圧入部を基板側ハウジングに圧入するときには、第1基部の後面のうち第1圧入部の真後ろの領域を治具で押すことができる。第2傾斜部が第2圧入部に対して幅方向に位置ずれしているので、第2圧入部を基板側ハウジングに圧入するときには、第2基部の後面のうち第2圧入部の真後ろの領域を治具で押すことができる。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示の差動通信用コネクタ及び基板用コネクタを具体化した実施例1を、図1図16を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本実施例1において、図1,2,5,8~10,12におけるX-X方向を前後方向と定義する。図1,2,4,6~11におけるY-Y方向を左右方向と定義する。左右方向と幅方向を同義で用いる。図1,2,4~7,10~12におけるZ-Z方向を上下方向と定義する。図1,2,4~7,10~12にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。
【0023】
<差動通信用コネクタ>
本実施例1の差動通信用コネクタは、ハーネス用コネクタ11を有するハーネス側モジュール10と、基板用コネクタ32を有する基板側モジュール30とを備えて構成されている。ハーネス用コネクタ11と基板用コネクタ32は、嵌合面同士を対向させた状態で嵌合される。ハーネス側モジュール10における前後の方向については、基板用コネクタ32に対するハーネス用コネクタ11の嵌合方向を前方と定義する。即ち、即ち図1,2における斜め左下方が、ハーネス側モジュール10における前方である。基板側モジュール30における前後の方向については、ハーネス用コネクタ11に対する基板用コネクタ32の嵌合方向を、前方と定義する。即ち、図1おける斜め右上方、及び図5における右方が前方である。
【0024】
<ハーネス側モジュール10>
図1,2に示すように、ハーネス側モジュール10は、1つのハーネス用コネクタ11と4本の差動ケーブル25とを備えて構成されている。ハーネス用コネクタ11は、合成樹脂製のアウタハウジング12と、インナモジュール14とを備えている。アウタハウジング12は、前後両面が開放された角筒状をなす。アウタハウジング12は、上下方向の高さ寸法に対して左右方向の幅寸法が大きい偏平な形状である。アウタハウジング12の内部には、インナモジュール14を収容する収容空間13が形成されている。
【0025】
図3に示すように、インナモジュール14は、1つのインナハウジング15と、4対の雌端子金具22とを備えている。図2~4に示すように、インナハウジング15は、4つの雌側ハウジング16と、1つのカバー17とを組み付けて構成されている。図3に示すように、雌側ハウジング16は、前後方向に細長く、側面が開放された箱形をなす。雌側ハウジング16は、前壁部18と、隔壁部19で仕切られた上下一対の端子収容室20とを有する。前壁部18には、雌側ハウジング16の前面を一対の端子収容室20に個別に連通させる上下一対の貫通孔21が形成されている。
【0026】
図3,5に示すように、雌端子金具22は、前後方向に細長い形状である。雌端子金具22は、雌端子金具22の前端側領域に配置された角筒部23と、雌端子金具22の後端部に形成された圧着部24とを有する。上下一対の端子収容室20内には、一対の雌端子金具22が個別に収容されている。
【0027】
差動ケーブル25は、2本の被覆電線27を撚り合わせたツイストペア線26と、ツイストペア線26を包囲するシース28とを備えている。ツイストペア線26を構成する2本の被覆電線27の前端部には、一対の雌端子金具22の圧着部24が個別に接続されている。ツイストペア線26と、ツイストペア線26に接続された一対の雌端子金具22は、1系統の差動ペア伝送路29を構成する。1系統の差動ペア伝送路29を構成する一対の雌端子金具22は、1つの雌側ハウジング16に収容されている。
【0028】
雌端子金具22が収容された4つの雌側ハウジング16は、左右方向に並ぶように組み付けられている。組付けの際には、図3に示すように、端子収容室20が上方に開口するように各雌側ハウジング16の向きを変え、各雌側ハウジング16において、一対の端子収容室20に差動ペア伝送路29を構成する一対の雌端子金具22を収容する。雌端子金具22を収容した4つの雌側ハウジング16を、上下に積層するように組み付ける。最上部に位置する雌側ハウジング16の開口部を、カバー17で閉塞する。
【0029】
4つの雌側ハウジング16とカバー17を組み付けると、インナハウジング15内に4対の雌端子金具22を収容した状態のインナモジュール14が構成される。組み付けられたインナモジュール14は、4つの雌側ハウジング16が左右方向に並ぶ向きで、アウタハウジング12の収容空間13内に収容される。インナモジュール14においては、1系統の差動ペア伝送路29を構成する一対の雌端子金具22が、上下に間隔を空けて配置される。4系統の差動ペア伝送路29は、左右方向に並ぶ。1系統の差動ペア伝送路29を構成する一対の雌端子金具22が並ぶ方向と、4系統の差動ペア伝送路29が並ぶ方向は、互いに直交する後方である。
【0030】
<基板側モジュール30>
図1,4,6,7に示すように、基板側モジュール30は、回路基板31と、1つの基板用コネクタ32とを備えている。回路基板31は、実装面31Sを上向きにして水平に配置される。基板用コネクタ32は、実装面31Sに載置した状態で回路基板31に取り付けられている。基板用コネクタ32は、基板側ハウジング33と、4本の第1雄端子金具40と、4本の第2雄端子金具50とを備えている。
【0031】
基板側ハウジング33は、実装面31Sと直角な板状をなす端子保持部34と、端子保持部34の外周縁から前方へ突出した角筒状のフード部35とを有する単一部品である。図7に示すように、端子保持部34には、同じ高さで左右方向に間隔を空けて一列に並ぶように配置された4つの第1圧入孔36と、同じ高さで左右方向に間隔を空けて一列に並ぶように配置された4つの第2圧入孔37が形成されている。第1圧入孔36は第2圧入孔37よりも高い位置に配置されている。第1圧入孔36と第2圧入孔37は、上下方向に間隔を空けて並ぶように配置されている。
【0032】
1つの第1雄端子金具40と1つの第2雄端子金具50は、対をなし、1系統の差動ペア伝送路29を構成する。第1雄端子金具40と第2雄端子金具50は、互いに同一形状の部位と、互いに異なる形状の部位とを有する。第1雄端子金具40と第2雄端子金具50は、全体として細長い金属製の棒状部材に曲げ加工を施したものである。第1雄端子金具40の全長と第2雄端子金具50の全長は、同じ寸法である。
【0033】
<第1雄端子金具40>
図10~12に示すように、第1雄端子金具40は、第1端子本体部41と、第1タブ46と、第1基板接続部47とを有する単一部品である。第1端子本体部41は、第1基部42と、第1圧入部43と、第1傾斜部44と、第1繋ぎ部45とを有する。第1雄端子金具40を実装面31Sと直交する方向に見た平面視おいて、第1基部42は、前後方向の寸法よりも左右方向の幅寸法が大きい長方形の板状をなす。
【0034】
第1圧入部43は、第1基部42の前端縁から同じ高さで前方へ突出した棒状の部位である。平面視において、第1圧入部43は、第1基部42よりも幅寸法が小さく、第1基部42の幅方向中央よりも右方へ偏った位置に配置されている。第1タブ46は、第1圧入部43の前端から前方へ直線状に突出している。第1圧入部43と第1タブ46は、高さ方向及び幅方向において同じ位置に配置され、前後方向に直線状に延びている。
【0035】
第1傾斜部44は、第1基部42の後端縁から斜め下後方へ延出した棒状の部位である。第1雄端子金具40を左右方向に見た側面視において、第1基部42と第1傾斜部44は鈍角をなして繋がっている。平面視において、第1傾斜部44は、第1基部42よりも幅寸法が小さく、第1基部42の幅方向中央よりも左方へ偏った位置に配置されている。第1圧入部43と第1傾斜部44は、第1基部42の左右方向中央に関して、左右反対側へ偏った位置に配置されている。幅方向において、第1傾斜部44と第1繋ぎ部45は、第1タブ46に対して左方へずれた位置に配置されている。
【0036】
第1繋ぎ部45は、第1傾斜部44の後端から後方へ延出した棒状の部位であり、第1基部42よりも低い位置にある。第1繋ぎ部45は、全長に亘って一定の高さを保つ。側面視において、第1傾斜部44と第1繋ぎ部45は鈍角をなして繋がっている。第1傾斜部44と第1繋ぎ部45は、幅方向において同じ位置に配置され、平面視において前後方向に直線状に延びている。第1基部42と第1繋ぎ部45との間に第1傾斜部44を介在させたことにより、第1基部42と第1繋ぎ部45は、側面視において高低差のある位置関係である。平面視において、第1傾斜部44と第1繋ぎ部45は、第1圧入部43及び第1タブ46に対して左方へ位置ずれしている。
【0037】
第1基板接続部47は、側面視においてL字形をなす。第1基板接続部47は、上下方向に延びた第1脚部48と、第1脚部48の下端から後方へ片持ち状に延出した第1実装部49とを有する。第1脚部48は、第1繋ぎ部45の後端から下方へ延出している。側面視において、第1繋ぎ部45と第1脚部48は直角をなして繋がっている。第1繋ぎ部45と第1実装部49は、幅方向において同じ位置に配置され、平面視において前後方向に直線状に延びている。
【0038】
<第2雄端子金具50>
図10~12に示すように、第2雄端子金具50は、第2端子本体部51と、第2タブ56と、第2基板接続部57とを有する単一部品である。第2端子本体部51は、第2基部52と、第2圧入部53と、第2傾斜部54と、第2繋ぎ部55とを有する。平面視おいて、第2基部52は、前後方向の寸法よりも左右方向の幅寸法が大きい長方形の板状をなす。第1基部42と第2基部52は、形状及び寸法が同一の部位である。
【0039】
第2圧入部53は、第2基部52の前端縁から同じ高さで前方へ突出した棒状の部位である。平面視において、第1圧入部43は、第1基部42よりも幅寸法が小さく、第1基部42の幅方向中央よりも左方へ偏った位置に配置されている。第1圧入部43と第2圧入部53は、形状及び寸法が同一の部位である。第2タブ56は、第2圧入部53の前端から前方へ直線状に突出している。第2圧入部53と第2タブ56は、高さ方向及び幅方向において同じ位置に配置され、前後方向に直線状に延びている。第1タブ46と第2タブ56は、形状及び寸法が同一の部位である。
【0040】
第2傾斜部54は、第2基部52の後端縁から斜め上後方へ延出した棒状の部位である。側面視において、第2基部52と第2傾斜部54は鈍角をなして繋がっている。平面視において、第2傾斜部54は、第2基部52よりも幅寸法が小さく、第2基部52の幅方向中央よりも右方へ偏った位置に配置されている。第2圧入部53と第2傾斜部54は、第2基部52の左右方向中央に関して、左右反対側へ偏った位置に配置されている。幅方向において、第2傾斜部54と第2繋ぎ部55は、第2タブ56に対して右方へずれた位置に配置されている。
【0041】
第1傾斜部44と第2傾斜部54は、平面視における形状と、平面視における長さ寸法が同一の部位である。第1傾斜部44と第2傾斜部54は、側面視において長さ寸法が同一の部位である。側面視において、第1傾斜部44と第2傾斜部54は、水平方向に対する傾斜角度は同じであるが、勾配の向きは互いに逆向きである。
【0042】
第2繋ぎ部55は、第2傾斜部54の後端から後方へ延出した棒状の部位であり、第2基部52よりも高い位置にある。第2繋ぎ部55は、全長に亘って一定の高さを保つ。側面視において、第2傾斜部54と第2繋ぎ部55は鈍角をなして繋がっている。第2傾斜部54と第2繋ぎ部55は、幅方向において同じ位置に配置され、平面視において前後方向に直線状に延びている。第2基部52と第2繋ぎ部55との間に第2傾斜部54を介在させたことにより、第2基部52と第2繋ぎ部55は、側面視において高低差のある位置関係である。平面視において、第2傾斜部54と第2繋ぎ部55は、第2圧入部53及び第2タブ56に対して右方へ位置ずれしている。第1繋ぎ部45と第2繋ぎ部55は、形状と寸法が同一の部位である。
【0043】
第2基板接続部57は、側面視においてL字形をなす。第2基板接続部57は、上下方向に延びた第2脚部58と、第2脚部58の下端から後方へ片持ち状に延出した第2実装部59とを有する。第2脚部58は、第2繋ぎ部55の後端から下方へ延出している。側面視において、第2繋ぎ部55と第2脚部58は直角をなして繋がっている。第2繋ぎ部55と第2実装部59は、幅方向において同じ位置に配置され、平面視において前後方向に直線状に延びている。第1基板接続部47と第2基板接続部57は、形状と寸法が同一の部位である。
【0044】
<基板用コネクタ32>
基板側ハウジング33に第1雄端子金具40と第2雄端子金具50を組み付けることによって、基板用コネクタ32が構成される。第1雄端子金具40は、基板側ハウジング33の後方から端子保持部34に組み付けられ、第1圧入孔36に第1圧入部43を圧入することによって組付け状態に保持されている。第2雄端子金具50は、基板側ハウジング33の後方から端子保持部34に組み付けられ、第2圧入孔37に第2圧入部53を圧入することによって組付け状態に保持されている。第1基部42は第1圧入孔36内に収容され、第2基部52は第2圧入孔37内に収容される。
【0045】
第1タブ46と第2タブ56は、端子保持部34から前方へ突出し、フード部35内に収容されている。全ての第1タブ46は、同じ高さで幅方向に並列するように配置されている。全ての第2タブ56は、第1タブ46よりも低い位置に配置されている。全ての第2タブ56は、同じ高さで幅方向に並列するように配置されている。
【0046】
第1傾斜部44と第1繋ぎ部45と第1基板接続部47と第2傾斜部54と第2繋ぎ部55と第2基板接続部57は、基板側ハウジング33の外部に露出し、端子保持部34の後方に配置されている。全ての第1繋ぎ部45と全ての第2繋ぎ部55は、前後方向において同じ位置に配置されている。第1繋ぎ部45と第2繋ぎ部55は、同じ高さで幅方向に交互に並ぶように並列配置されている。全ての第1基板接続部47と全ての第2基板接続部57は、前後方向において同じ位置に配置されている。第1基板接続部47と第2基板接続部57は、同じ高さで幅方向に交互に並ぶように並列配置されている。
【0047】
第1雄端子金具40と第2雄端子金具50が取り付けられた基板用コネクタ32は、基板側ハウジング33を実装面31Sに載置した状態で、回路基板31に取り付けられている。基板用コネクタ32を回路基板31に取り付けた状態では、第1実装部49と第2実装部59が、実装面31Sに対して半田付けによって表面実装される。
【0048】
第1雄端子金具40と第2雄端子金具50を基板側ハウジング33に組み付けた状態では、上下に並ぶ第1圧入孔36と第2圧入孔37に圧入された第1雄端子金具40と第2雄端子金具50が、1系統の差動ペア伝送路29を構成する。1系統の差動ペア伝送路29を構成する第1雄端子金具40と第2雄端子金具50の位置関係等について説明する。
【0049】
第1圧入部43と第2圧入部53は、幅方向において少しずれた位置関係で配置されている。平面視において、第1圧入部43と第2圧入部53は部分的に重なるように配置されている。第1圧入部43は第2圧入部53よりも高い位置に配置されている。第1タブ46と第2タブ56は、幅方向において同じ位置に配置されている。第1タブ46は第2タブ56よも高い位置に配置されている。
【0050】
第1繋ぎ部45は、第2繋ぎ部55と同じ高さに配置され、第2繋ぎ部55の左方に間隔を空けて並んでいる。第1基板接続部47は、第2基板接続部57と同じ高さに配置され、第2基板接続部57の左方に間隔を空けて並んでいる。
【0051】
第1傾斜部44は、第2傾斜部54の左方に間隔を空けて配置されている。第1傾斜部44の前端は、第2傾斜部54の前端よりも高い位置に配置されている。第1傾斜部44と第2景趣部の勾配の向きが前後逆向きに設定されているので、第1傾斜部44の後端と第2傾斜部54の後端は同じ高さに配置されている。第1傾斜部44と第2傾斜部54とによって第1タブ46と第2タブ56の高低差が吸収され、第1基板接続部47の上端と第2基板接続部57の上端が同じ高さに設定されている。これにより、第1基板接続部47と第2基板接続部57を同一形状、同一寸法に設定されている。
【0052】
上記のハーネス側モジュール10は、フード部35収容することによって基板側モジュール30と嵌合される。両モジュール10,30を嵌合した状態では、上下に並ぶ一対の雌端子金具22と、上下に並ぶ第1雄端子金具40及び第2雄端子金具50とが接続される。1本の差動ケーブル25を構成するツイストペア線26と、一対の雌端子金具22と、一対の雄端子金具である第1雄端子金具40及び第2雄端子金具50とによって、1系統の差動ペア伝送路29が構成される。
【0053】
<実施例1の作用及び効果>
差動通信用コネクタは、回路基板31の実装面31Sと平行に並ぶように配置される複数の雌側ハウジング16と、複数の雌側ハウジング16に収容された複数の雌端子金具22とを備えている。1つの雌側ハウジング16に収容された一対の雌端子金具22は、1つの差動ペア伝送路29を構成する。1つの差動ペア伝送路29を構成する一対の雌端子金具22は、実装面31Sと直角な方向に並ぶように配置されている。
【0054】
隣り合う雌側ハウジング16間において、一方の雌側ハウジング16に収容されている雌端子金具22と、他方の雌側ハウジング16に収容されている雌端子金具22との距離は、ほぼ同じ距離である。いずれかの雌端子金具22からノイズが発生したときに、ノイズ源とは異なる雌側ハウジング16内に収容されている一対の雌端子金具22は、ノイズの影響を同等程度に受ける。差動ペア伝送路29を構成する一対の雌端子金具22の間では、クロストークが低減されるので、EMC(Electro-Magnetic Compatibility)特性の低下が抑制される。
【0055】
図13のグラフは、本実施例1を適用した実施例モデルと従来モデルのANEXT(Alien Near End Crosstalk)を示す。図14のグラフは、実施例モデルと従来モデルのANEXTDC(Alien Near End Cross conversion loss Common to Differential)を示す。図15のグラフは、実施例モデルと従来モデルのAFEXT(Alien Far End Crosstalk)を示す。図16のグラフは、実施例モデルと従来モデルのAFEXTDC(Alien Far End Cross conversion loss Common to Differential)を示す。図13図16のグラフにおいて、破線は、100MBps Ethernet 規格 Open Alliance 100Base-T1を示し、実線Leは実施例モデルのクロストークを示し、実線Lcは従来モデルのクロストークを示す。
【0056】
実施例モデルでは、複数の差動ペア伝送路29が左右方向に並び、1系統の差動ペア伝送路29を構成する一対の雌端子金具22が上下上下に並び、左右方向に隣り合う差動ペア伝送路29のピッチが5.6mmである。複数の差動ペア伝送路29の並び方向と、1系統の差動ペア伝送路29を構成する一対の雌端子金具22の並び方向が直交する方向である。したがって、実施例モデルでは、隣り合う差動ペア伝送路29間における雌端子金具22の間隔は、いずれの雌端子金具22間においても、概ね同じ距離である。
【0057】
従来モデルでは、複数の差動ペア伝送路29の並び方向と、1系統の差動ペア伝送路29を構成する一対の雌端子金具22の並び方向が、いずれも左右方向であり、隣り合う差動ペア伝送路29間における雌端子金具22間の最小間隔が5.6mmである。従来モデルでは、全ての雌端子金具22が同じ高さで一列に並ぶので、隣り合う差動ペア伝送路29間における雌端子金具22の間隔は、雌端子金具22相互の位置関係によって相違する。隣り合う差動ペア伝送路29間において、遠端の位置関係となる雌端子金具22間の距離は、近端の位置関係となる雌端子金具22間の距離(5.6mm)よりも大きい。
【0058】
図13のグラフに示すANEXTについては、破線の値と従来モデルの値Lcとの差が25.8dBであり、実施例モデルの値Leとの差は24.6dBである。実施例モデルよりも従来モデルの方が若干良好であるが、その差は僅かであり、ANEXTは規格からのマージンが大きいので、従来モデルの優位性はEMC特性向上という点ではさほど有効ではない。図14のグラフに示すANEXTDCについては、50MHzにおける破線の値と従来モデルの値Lcとの差が5.9dBであるのに対し、実施例モデルの値Leとの差は10.9dBであり、実施例モデルの方が従来モデルに比べて大幅に改善されている。ANEXTDCは規格からのマージンが小さいので、従来モデルに対する実施例モデルの優位性は、EMC特性向上という点で効果的である。
【0059】
図15のグラフに示すAFEXTについては、破線の値と従来モデルの値Lcとの差が39.6dBであり、実施例モデルの値Leとの差は33.7dBである。実施例モデルよりも従来モデルの方が良好であるが、AFEXTは規格からのマージンが大きいので、従来モデルの優位性はEMC特性向上という点ではさほど有効ではない。図16に示すAFEXTDCについては、200MHzにおける破線の値と従来モデルの値Lcとの差が9.8dBであるのに対し、実施例モデルの値Leとの差は11.6dBであり、実施例モデルの方が従来モデルに比べて大幅に改善されている。ANEXTDCは規格からのマージンが小さいので、従来モデルに対する実施例モデルの優位性は、EMC特性向上という点で効果的である。
【0060】
1つの差動ペア伝送路29を構成する一対の雌端子金具22は、1本の差動ケーブル25を構成するツイストペア線26に接続されている。この構成によれば、雌端子金具22と差動ケーブル25を含む差動ペア伝送路29のEMC特性が向上する。
【0061】
差動通信用コネクタは、回路基板31に取り付けられる基板側ハウジング33と、基板側ハウジング33に取り付けられ、差動ペア伝送路29を構成する複数の第1雄端子金具40及びた第2雄端子金具50とを備えている。1つの差動ペア伝送路29を構成する一対の雄端子金具である第1雄端子金具40と第2雄端子金具50は、同じ長さに設定されている。この構成によれば、差動ペア伝送路29において、第1雄端子金具40によって構成される伝送路と、第2雄端子金具50によって構成される伝送路が同じ長さになるので、EMC特性に優れている。
【0062】
差動ペア伝送路29を構成する第1雄端子金具40と第2雄端子金具50は、回路基板31と直角な方向に並ぶように配置された第1タブ46及び第2タブ56と、雌側ハウジング16の並び方向と平行に並ぶように配置された第1基板接続部47及び第2基板接続部57とを有する。この構成によれば、複数の第1基板接続部47と第2基板接続部57を一列に並べて配置することができるので、回路基板31の実装面31Sのうち第1基板接続部47及び第2基板接続部57の接続領域以外の領域において、回路や実装部品のレイアウトに関する設計の自由度が高い。
【0063】
本実施例1の基板用コネクタ32は、回路基板31の実装面31Sに取り付けられる基板側ハウジング33と、複数の第1雄端子金具40と、複数の第2雄端子金具50とを備えている。第1雄端子金具40は、全体として細長い形状であり、基板側ハウジング33に取り付けられている。第2雄端子金具50は、全体として細長い形状であり、基板側ハウジング33に取り付けられている。
【0064】
第1雄端子金具40と第2雄端子金具50は、曲げ加工する前の展開状態では、左右対称な形状である。換言すると、展開状態の第1雄端子金具40と第2雄端子金具50は、上下反転させた形状である。つまり、第1雄端子金具40と第2雄端子金具50は、同一形状に打ち抜いた金属部材によって成形されたものである。第1雄端子金具40の長さと第2雄端子金具50の長さが同じ寸法に設定されている。この構成によれば、第1雄端子金具40と第2雄端子金具50の材料コストを抑えることができる。第1雄端子金具40と第2雄端子金具50によって差動ペア伝送路29においては、EMC特性が向上する。
【0065】
基板側ハウジング33は、回路基板31と直角な端子保持部34を有する。第1雄端子金具40は、端子保持部34を前後方向に貫通する第1端子本体部41と、第1基板接続部47とを有する。第1基板接続部47は、基板側ハウジング33の外部において、第1端子本体部41の後端から延出して回路基板31に接続される。第2雄端子金具50は、端子保持部34を前後方向に貫通する第2端子本体部51と、第2基板接続部57とを有する。第2基板接続部57は、基板側ハウジング33の外部において、第2端子本体部51の後端から延出して路基板に接続される。第1基板接続部47と第2基板接続部57は、寸法と形状が同一である。複数の第1基板接続部47と複数の第2基板接続部57が、幅方向において一列に交互に並んで配置されている。この構成によれば、回路基板31の実装面31Sのうち第1基板接続部47及び第2基板接続部57の接続領域以外の領域において、回路や実装部品のレイアウトに関する設計の自由度が高い。
【0066】
第1端子本体部41の前端部と第2端子本体部51の前端部は、回路基板31と直交する高さ方向に間隔を空けて並ぶように配置されている。第1端子本体部41は、後方に向かうほど回路基板31に接近するように傾斜した第1傾斜部44を有する。第2端子本体部51は、後方に向かうほど回路基板31から遠ざかるように傾斜した第2傾斜部54を有する。この構成によれば、第1傾斜部44と第2傾斜部54によって、第1端子本体部41の前端部と第2端子本体部51の前端部の高低差が吸収される。第1端子本体部41の後端部と第1基板接続部47とを直角な曲げ部で繋ぐ場合に比べると、第1雄端子金具40の全長を短くすることができる。第2端子本体部51の後端部と第2基板接続部57とを直角な曲げ部で繋ぐ場合に比べると、第2雄端子金具50の全長を短くすることができる。
【0067】
第1端子本体部41は、第1繋ぎ部45を有する。第1繋ぎ部45は、第1傾斜部44の後端から鈍角をなして後方へ延出し、第1基板接続部47と直角に繋がている。第2端子本体部51は、第2繋ぎ部55を有する。第2繋ぎ部55は、第2傾斜部54の後端から鈍角をなして後方へ延出し、第2基板接続部57と直角に繋がっている。第2傾斜部54と第2基板接続部57とを直接的に繋げた場合は、第2傾斜部54と第2基板接続部57が鋭角をなすことになり、鋭角に繋がる部位でノイズが発生し易いので好ましくない。本実施例1の構成によれば、第2傾斜部54と第2基板接続部57との間に第2繋ぎ部55を介在させたことによって、第2雄端子金具50には鋭角をなす部位が存在しなくなるので、ノイズの発生を抑制できる。
【0068】
第1端子本体部41は、第1基部42と第1圧入部43とを有する。第1基部42は、第1傾斜部44よりも幅広であり、第1傾斜部44の前端に連なっている。第1圧入部43は、第1基部42から前方へ突出した形状であり、基板側ハウジング33の第1圧入孔36に対して後方から圧入されている。第2端子本体部51は、第2基部52と第2圧入部53とを有する。第2基部52は、第2傾斜部54よりも幅広であり、第2傾斜部54の前端に連なっている。第2圧入部53は、第2基部52から前方へ突出した形状であり、基板側ハウジング33の第2圧入孔37に対して後方から圧入されている。第1圧入部43と第1傾斜部44は、幅方向に位置ずれして配置されている。第2圧入部53と第2傾斜部54が、幅方向に位置ずれして配置されている。
【0069】
この構成によれば、第1傾斜部44が第1圧入部43に対して幅方向に位置ずれしているので、第1圧入部43を基板側ハウジング33に圧入するときには、第1基部42の後面のうち第1圧入部43の真後ろの領域を治具(図示省略)で押すことができる。第2傾斜部54が第2圧入部53に対して幅方向に位置ずれしているので、第2圧入部53を基板側ハウジング33に圧入するときには、第2基部52の後面のうち第2圧入部53の真後ろの領域を治具(図示省略)で押すことができる。
【0070】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
実施例1では、差動ペア伝送路を構成する一対の雌端子金具がツイストペア線に接続されているが、第1の開示によれば、差動ペア伝送路を構成する一対の雌端子金具は、捻られずに配索されて編組線等のシールド部材で包囲された電線に接続してもよい。
実施例1では、差動ペア伝送路を構成する一対の雄端子金具が同じ長さに設定されているが、第1の開示によれば、差動ペア伝送路を構成する一対の雄端子金具が、異なる長さに設定されていてもよい。
実施例1では、差動ペア伝送路を構成する一対の雄端子金具の基板接続部が、雌側ハウジングの並び方向と平行に並ぶように配置されているが、第1の開示によれば、差動ペア伝送路を構成する一対の雄端子金具の基板接続部が、雌側ハウジングの並び方向と直角な方向に並ぶように配置されていてもよい。
実施例1では、第1雄端子金具と第2雄端子金具が差動ペア伝送路を構成するか、第2の開示によれば、第1雄端子金具と第2雄端子金具は、差動ペア伝送路を構成しないものであってもよい。
実施例1では、複数の第1基板接続部と複数の第2基板接続部が一列に並ぶように配置されているが、第2の開示によれば、複数の第1基板接続部と複数の第2基板接続部が2列に分かれて並ぶように配置されていてもよい。
実施例1では、第1端子本体部が第1傾斜部を有しているが、第2の開示によれば、第1端子本体部は傾斜部を有しない形状であってもよい。
実施例1では、第2端子本体部が第2傾斜部を有しているが、第2の開示によれば、第2端子本体部は傾斜部を有しない形状であってもよい。
実施例1では、第1傾斜部と第1基板接続部との間に第1繋ぎ部を介在させたが、第2の開示によれば、第1傾斜部と第1基板接続部が鈍角をなして直接的に繋がっていてもよい。
実施例1では、第2傾斜部と第2基板接続部との間に第2繋ぎ部を介在させたが、第2の開示によれば、第2傾斜部と第2基板接続部が鈍角をなして直接的に繋がっていてもよい。
上記実施例1では、第1圧入部と第1傾斜部が幅方向に位置ずれして配置されているが、第2の開示によれば、第1圧入部と前記第1傾斜部は幅方向において同じ位置に配置されていてもよい。
上記実施例1では、第2圧入部と第2傾斜部が幅方向に位置ずれして配置されているが、第2の開示によれば、第2圧入部と第2傾斜部は幅方向において同じ位置に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10…ハーネス側モジュール
11…ハーネス用コネクタ
12…アウタハウジング
13…収容空間
14…インナモジュール
15…インナハウジング
16…雌側ハウジング
17…カバー
18…前壁部
19…隔壁部
20…端子収容室
21…貫通孔
22…雌端子金具
23…角筒部
24…圧着部
25…差動ケーブル
26…ツイストペア線
27…被覆電線
28…シース
29…差動ペア伝送路
30…基板側モジュール
31…回路基板
31S…実装面
32…基板用コネクタ
33…基板側ハウジング
34…端子保持部
35…フード部
36…第1圧入孔
37…第2圧入孔
40…第1雄端子金具
41…第1端子本体部
42…第1基部
43…第1圧入部
44…第1傾斜部
45…第1繋ぎ部
46…第1タブ
47…第1基板接続部
48…第1脚部
49…第1実装部
50…第2雄端子金具
51…第2端子本体部
52…第2基部
53…第2圧入部
54…第2傾斜部
55…第2繋ぎ部
56…第2タブ
57…第2基板接続部
58…第2脚部
59…第2実装部
図1
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