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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007539
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】閉鎖型太陽熱集熱システム
(51)【国際特許分類】
   F24S 50/40 20180101AFI20230112BHJP
   F24H 1/00 20220101ALI20230112BHJP
   F24S 10/50 20180101ALI20230112BHJP
   F24S 40/52 20180101ALI20230112BHJP
【FI】
F24S50/40
F24H1/00 621D
F24S10/50
F24S40/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110430
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】渥美 佑樹
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA24
3L122AB30
3L122BA17
3L122BB02
3L122DA01
3L122EA05
3L122EA21
3L122EA47
3L122GA09
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で熱媒の気化を抑制することができ、かつ、熱媒で加熱した貯留を利用することができる閉鎖型太陽熱集熱システムを提供する。
【解決手段】制御部10は、熱媒温度T1が媒体所定温度α以下であり、かつ、貯留水温度T2が貯留水所定温度β以下である場合には、調光フィルムに電源11からの電圧を印加する印加状態とすることによって調光フィルム3で前記太陽光を透過して当該太陽光を受けて熱媒を加熱する一方、測定された前記熱媒温度T1が媒体所定温度αより大きい場合、または、測定された貯留水温度T2が貯留水所定温度βより大きい場合には、調光フィルム3に前記電源11からの電圧を印加しない非印加状態とすることによって印加状態よりも調光フィルムで太陽光の透過量を減少させて集熱器において熱媒の加熱を行わない。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒を一時的に収容する集熱管を有し、太陽光を受けて前記集熱管に収容された前記熱媒を加熱する集熱器と、
前記集熱器に設けられ、太陽と前記集熱管との間に介在し、電源からの電圧の印加に応じて太陽光の透過量を変更する調光フィルムと、
貯留水を貯留し、前記集熱器において加熱された前記熱媒の熱を受けて前記貯留水を加熱する熱交換器を有するタンクと、
前記集熱器と前記熱交換器との間で前記熱媒を循環させるポンプと、
前記集熱器における熱媒温度を測定する第1温度センサと、
前記タンクにおける貯留水温度を測定する第2温度センサと、
前記ポンプの駆動および停止を制御し、かつ、前記第1温度センサおよび前記第2温度センサの検知結果に基づいて前記調光フィルムに印加する電圧を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
測定された前記熱媒温度が媒体所定温度以下であり、かつ、測定された前記貯留水温度が貯留水所定温度以下である場合には、前記調光フィルムに前記電源からの電圧を印加する印加状態とすることによって前記調光フィルムで前記太陽光を透過して当該太陽光を受けて前記熱媒を加熱する一方、
測定された前記熱媒温度が媒体所定温度より大きい場合、または、測定された前記貯留水温度が貯留水所定温度より大きい場合には、前記調光フィルムに前記電源からの電圧を印加しない非印加状態とすることによって前記印加状態よりも調光フィルムで前記太陽光の透過量を減少させて前記集熱器において前記熱媒の加熱を行わない、
ことを特徴とする閉鎖型太陽熱集熱システム。
【請求項2】
前記制御部は、
測定された前記熱媒温度と、測定された貯留水温度との温度差が所定温度差以下である場合、前記ポンプの駆動を停止して前記熱媒の循環を行わない一方、
測定された前記熱媒温度と、測定された前記貯留水温度との温度差が前記所定温度差よりも大きい場合、前記ポンプを駆動して前記熱媒の循環を行う、
請求項1に記載の閉鎖型太陽熱集熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉鎖型太陽熱集熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
閉鎖型太陽熱集熱システムは、太陽光を受けて熱媒を加熱し、当該加熱した熱媒の熱を受けて貯留水を加熱し、加熱した貯留水を家庭内における風呂等で利用する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
仮に、太陽光を受けて熱媒の加熱を継続することで熱媒の沸点を超えた場合には、熱媒が気化してシステム内部の圧力が上昇し、これによってシステムを構成する各部品に大きな力が加わるおそれがある。また、熱媒は、当該熱媒の気化により劣化が進行するおそれがある。さらに、システム内部の圧力の上昇を防止するためにシステム内部から気化した熱媒を放出した場合には、システム内部の熱媒の容量が減少してシステム内部に熱媒を補充しなければならなくなる。
【0004】
そこで、従来の閉鎖型太陽熱集熱システムの中には、システム内部の圧力を検知する圧力センサと、熱媒を冷却する冷却装置または放熱器を設けたものがある。
【0005】
そして、当該圧力センサでシステム内部の圧力上昇を検知した場合、制御部は、冷却装置または放熱器に熱媒を送り、当該冷却装置または放熱器で熱媒を冷却することによって熱媒が気化することを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60-207855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、閉鎖型太陽熱集熱システムにおいて、熱媒の気化を抑制するため、熱媒を冷却する冷却装置または放熱器を設けた場合には、システムが複雑化する問題があった。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、簡単な構成で熱媒の気化を抑制することができ、かつ、熱媒で加熱した貯留を利用することができる閉鎖型太陽熱集熱システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る閉鎖型太陽熱集熱システムは、熱媒を一時的に収容する集熱管を有し、太陽光を受けて前記集熱管に収容された前記熱媒を加熱する集熱器と、前記集熱器に設けられ、太陽と前記集熱管との間に介在し、電源からの電圧の印加に応じて太陽光の透過量を変更する調光フィルムと、貯留水を貯留し、前記集熱器において加熱された前記熱媒の熱を受けて前記貯留水を加熱する熱交換器を有するタンクと、前記集熱器と前記熱交換器との間で前記熱媒を循環させるポンプと、前記集熱器における熱媒温度を測定する第1温度センサと、前記タンクにおける貯留水温度を測定する第2温度センサと、前記ポンプの駆動および停止を制御し、かつ、前記第1温度センサおよび前記第2温度センサの検知結果に基づいて前記調光フィルムに印加する電圧を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、測定された前記熱媒温度が媒体所定温度以下であり、かつ、測定された前記貯留水温度が貯留水所定温度以下である場合には、前記調光フィルムに前記電源からの電圧を印加する印加状態とすることによって前記調光フィルムで前記太陽光を透過して当該太陽光を受けて前記熱媒を加熱する一方、測定された前記熱媒温度が媒体所定温度より大きい場合、または、測定された前記貯留水温度が貯留水所定温度より大きい場合には、前記調光フィルムに前記電源からの電圧を印加しない非印加状態とすることによって印加状態よりも前記調光フィルムで前記太陽光の透過量を減少させて前記集熱器において前記熱媒の加熱を行わない、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システムは、上記構成を有するため、簡単な構成で熱媒の気化を抑制することができ、かつ、熱媒で加熱した貯留水を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システムの構成を模式的に示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システムが備える集熱器の概略断面図である。
図3図3は、集熱器の断面図である。
図4図4は、本実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システムが備える調光フィルムの概略断面図である。
図5図5は、本実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システムのフロー図である。
図6図6は、変形例に係る閉鎖型太陽熱集熱システムにおける媒体所定温度α、貯留水所定温度β、および、所定温度差γを示す説明図である。
【0012】
以下に、本発明に係る閉鎖型太陽熱集熱システムの実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態]
図1は、本実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1の構成を模式的に示すブロック図である。図2は、本実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1が備える集熱器2の概略断面図である。図3は、集熱器2の断面図である。図4は、本実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1が備える調光フィルム3の概略断面図である。図5は、本実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1のフロー図である。
【0014】
本実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、集熱器2と、調光フィルム3と、第1温度センサS1と、ストレージタンク(タンク)4と、第2温度センサS2と、循環ポンプ(ポンプ)5と、管部材6と、膨張タンク7と、安全弁8と、熱媒充填装置9と、制御部10と、電源11と、を備える。
【0015】
集熱器2は、例えば、家屋の屋根に設けられる。そして、図2に示す集熱器2は、例えば、集熱板20と、ハウジング21と、複数の集熱管22と、分岐管23と、合流管24と、断熱材26と、調光カバー27と、を備える。そして、集熱器2は、熱媒を一時的に収容する集熱管22を有し、太陽光を受けて集熱管22に収容された熱媒を加熱する。
【0016】
熱媒は、例えば、水、合成油であり、集熱器2において太陽光を受けて集めた熱を、ストレージタンク4が有する熱交換器41に移送する。
【0017】
集熱板20は、矩形状に形成された2枚のプレート20a、20bを有し、これらの2枚のプレート20a、20b同士を貼り合わせることによって形成される。プレート20a,250は、例えば0.2~0.4mm程度の薄いステンレスの板材を使用することができる。
【0018】
集熱板20は、熱媒を一時的に収容する集熱管22と、各集熱管22に熱媒を流入させる分岐管23と、各集熱管22から熱媒を流出させる合流管24とを有する。
【0019】
各集熱管22は、集熱板20の内部に熱媒を流通させる流路であり、例えば2枚のプレート20a、20bの双方を互いに離隔するように波形に形成することで構成される。なお、各集熱管22は、2枚のプレート20a、20bのいずれか一方を波形に形成することで構成してもよい。複数の集熱管22は、互いに平行に配列される。そして、各集熱管22は、上下方向に対して傾斜するように設置される。
【0020】
集熱管22は、熱媒を収容し、長さ方向における一方の端部が分岐管23に連結され、長さ方向における他方の端部が合流管24に連結される。
【0021】
分岐管23の一方の端部は、循環ポンプ5と集熱器2とを接続する第1管部材61の端部に接続される。そして、分岐管23の他方の端部は、複数の集熱管22に接続される。
【0022】
合流管24の一方の端部は、集熱器2と熱交換器41とを接続する第2管部材62の端部に接続される。そして、合流管24の他方の端部は、複数の集熱管22に接続される。
【0023】
ハウジング21は、開口21oを有する筐体21aと、光を透過する透過体で形成されて当該開口21oを閉塞するカバー21bと、を備える。そして、集熱器2は、筐体21aとカバー21bとによって形成される収容空間21sを有する。透過体は、例えばガラス、透明な合成樹脂で形成される。
【0024】
調光フィルム3は、集熱器2に設けられ、太陽と集熱管22との間に介在する。より具体的に説明すると調光フィルム3は、カバー21bの外側表面に配置される。調光フィルム3は、図4に示すように、液晶層31と、一対の透明電極32a、32bと、一対の透明保護層33a、33bとを有する。液晶層31は、多数の液晶分子を含む。そして、液晶層31は、一対の透明電極32a、32bを介して電源11から直流電圧が印加された状態では、液晶分子が液晶層31の表面に対して直交した状態で配置されることによって液晶層31で光が透過される。一方、液晶層31は、電源11から一対の透明電極32a、32bを介して電圧が印加されていない非印加状態では、多数の液晶分子が無秩序に配置されることによって、印加状態と比して液晶層31で太陽光の透過量が減少される。つまり、調光フィルム3は、制御部10からの指令に応じて電源11からの電圧の印加に応じて太陽光の透過量を変化させる。より具体的に説明すると、制御部10は、電源11からの電圧を印加する印加状態とした場合には、太陽光の透過量を増加する一方、電源11からの電圧を印加しない非印加状態とした場合には、印加状態に比して太陽光の透過量を減少させる。調光フィルム3を印加状態とした場合には、例えば、太陽光の透過量の割合が60~95%となる一方、調光フィルム3を非印加状態とした場合には、例えば、太陽光の透過量の割合が5~40%となる。なお、太陽光の透過量の割合が100%とは、ある物体を太陽光が透過する際、太陽光が減衰することなく透過することをいう。また、太陽光の透過量の割合が0%とは、ある物体を太陽光が透過する際、すべての太陽光が遮断されることをいう。また、調光フィルム3は、印加状態として太陽光の透過量を増加させた場合には当該太陽光で熱媒が加熱される一方、非印加状態として太陽光の透過量を減少させた場合には熱媒が冷却される。
【0025】
一対の透明電極32a、32bは、液晶層31を挟んで当該液晶層31の厚さ方向に配置される。一対の透明電極32a、32bのうち、一方の透明電極32aは例えば電源11の正極に対して電気的に接続される一方、他方の透明電極32bは例えば電源11の負極に対して電気的に接続される。そして、一対の透明電極32a、32bは、電源11からの直流電圧を液晶層31に印加する。
【0026】
一対の透明保護層33a、33bは、一対の透明電極32a、32bを挟んで液晶層31の厚さ方向に配置される。一対の透明保護層33a、33bは、液晶層31および各透明電極32a、32bを外部から保護する。
【0027】
調光カバー27は、透明な合成樹脂で形成され、調光フィルム3の表面であって、カバー21bの反対面に配置され、調光フィルム3を外部から保護する。
【0028】
第1温度センサS1は、例えば、熱電対または測温抵抗体であり、集熱器2における熱媒温度T1を測定する。また、後述する媒体所定温度αは、例えば90℃である。
【0029】
ストレージタンク(タンク)4は、貯留水を貯留し、集熱器2において加熱された熱媒の熱を受けて貯留水を加熱する熱交換器41を有する。また、ストレージタンク4に貯留される貯留水は、家屋で温水として風呂等で使用される。
【0030】
第2温度センサS2は、例えば、熱電対または測温抵抗体であり、ストレージタンク4における貯留水温度T2を測定する。また、後述する貯留水所定温度βは、例えば80℃である。
【0031】
循環ポンプ(ポンプ)5は、集熱器2と熱交換器41との間で熱媒を循環させる。つまり、循環ポンプ5は、集熱器2において加熱された熱媒を熱交換器41へ送り、かつ、熱交換器41における水との熱交換によって冷却された熱媒を集熱器2へ送る。換言すると、循環ポンプ5は、後述する熱媒循環装置12で熱媒を循環させる。
【0032】
管部材6は、円筒状に形成されて熱媒を収容する。本実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、第1管部材61と、第2管部材62と、第3管部材63と、を備える。
【0033】
第1管部材61は、循環ポンプ5と集熱器2とを接続する。第2管部材62は、集熱器2と熱交換器41とを接続する。第3管部材63は、熱交換器41と循環ポンプ5とを接続する。
【0034】
閉鎖型太陽熱集熱システム1は、上述した集熱器2と、ストレージタンク4と、循環ポンプ5と、菅部材と、膨張タンク7と、安全弁8とによって、熱媒循環装置12を構成する。
【0035】
膨張タンク7は、熱媒循環装置12に収容された熱媒が温度上昇等によって膨張した場合に、当該膨張した容積を吸収する。膨張タンク7は、第3管部材63の途中に設けられる。
【0036】
安全弁8は、例えば、調光フィルム3の故障等によって集熱器2において太陽光の透過量を減少させることができずに熱媒が気化する緊急事態時には、閉鎖型太陽熱集熱システム1の内部から気化した熱媒を放出する。安全弁8は、例えば、後述する第2管部材62の途中に設けられる。
【0037】
熱媒充填装置9は、熱媒循環装置12を一定期間運転した後、熱媒循環装置12において循環する熱媒を交換する場合に使用される。熱媒充填装置9は、リザーブタンク91と、熱媒充填ポンプ92と、流入制御弁93と、を備える。また、熱媒充填装置9は、何らかの故障によって熱媒の温度上昇を抑制することができず、熱媒が気化した緊急事態の後、気化した熱媒を放出することによって熱媒循環装置12から減少した熱媒を補充する場合にも使用される。
【0038】
リザーブタンク91は、熱媒循環装置12における熱媒を交換または補充する場合、熱媒循環装置12に充填または補充する熱媒を貯留する。
【0039】
熱媒充填ポンプ92は、リザーブタンク91に貯留される熱媒を熱媒循環装置12に充填または補充する場合には駆動し、駆動することによってリザーブタンク91に貯留される熱媒を熱媒循環装置12に充填または補充する。
【0040】
流入制御弁93は、熱媒充填装置9から熱媒循環装置12に流入する熱媒を制御し、閉状態と、開状態とに切り替え可能に形成される。流入制御弁93は、閉状態に切り替えられた場合には、熱媒充填装置9から熱媒循環装置12に流入する熱媒が規制される。一方、流入制御弁93は、開状態に切り替えられた場合には、熱媒循環装置12にリザーブタンク91に貯留される熱媒を充填および補充することが可能になる。流入制御弁93は、通常、閉状態に切り替えられ、緊急事態後の場合または熱媒を交換する場合には、開状態に切り替えられる。
【0041】
制御部10は、閉鎖型太陽熱集熱システム1の各部を統括的に制御する。より具体的に説明すると、制御部10は、循環ポンプ5および熱媒充填ポンプ92の駆動および停止を制御し、かつ、第1温度センサS1および第2温度センサS2の検知結果に基づいて調光フィルム3に印加する電圧を制御する。
【0042】
次に、上述した構成を有する閉鎖型太陽熱集熱システム1のフローについて、図5を用いて説明する。先ず、制御部10は、測定された貯留水温度T2が貯留水所定温度β以下であるか否かを判断する(ステップS01)。制御部10は、測定された貯留水温度T2が貯留水所定温度β以下である場合には、ステップS02に進む(ステップS01:Yes)。一方、制御部10は、測定された貯留水温度T2が貯留水所定温度βより大きい場合には、ステップS03に進む(ステップS01:No)。
【0043】
次に、制御部10は、測定された熱媒温度T1が媒体所定温度α以下であるか否かを判断する(ステップS02)。制御部10は、測定された媒体所定温度α以下である場合には、ステップS05に進む(ステップS02:Yes)。一方、制御部10は、測定された熱媒温度T1が媒体所定温度αより大きい場合には、ステップS03に進む(ステップS02:No)。
【0044】
次に、制御部10は、電源11からの直流電圧を調光フィルム3に印加しない非印加状態とし、太陽光の透過量を減少させてステップS04に進む(ステップS03)。
【0045】
次いで、制御部10は、循環ポンプ5を停止した後(ステップS04)、ステップS01に戻る。
【0046】
次いで、制御部10は、電源11からの直流電圧を調光フィルム3に印加する印加状態とし、太陽光の透過量を増加させてステップS06に進む(ステップS05)。
【0047】
次に、制御部10は、測定された熱媒温度T1と、測定された貯留水温度T2との温度差ΔTが所定温度差γ以下であるか否かを判断する(ステップS06)。制御部10は、測定された前記熱媒温度T1と、測定された貯留水温度T2との温度差ΔTが所定温度差γ以下である場合(ステップS06:Yes)ステップS07に進む。制御部10は、測定された前記熱媒温度T1と、測定された前記貯留水温度T2との温度差ΔTが所定温度差γよりも大きい場合(ステップS06:No)ステップS08に進む。所定温度差γは、例えば5℃である。
【0048】
次いで、制御部10は、循環ポンプ5の駆動を停止(ステップS07)してステップS01に戻る。熱媒ポンプの駆動を停止した場合には、熱媒循環装置12において熱媒循環を行わない。熱媒温度T1と貯留水温度T2との温度差ΔTが小さい状態では、温度の高い熱媒を利用して貯留水温度T2を上昇することが困難である。この状態において、循環ポンプ5を駆動して熱媒を循環させても、無駄にエネルギーを消費することになる。そのため、本実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、熱媒温度T1と貯留水温度T2との温度差ΔTが小さい状態では、循環ポンプ5の駆動を停止して熱媒の循環を行わない。このため、本実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、無駄なエネルギーの消費を防止することができるとともに、熱媒の移動を規制して熱媒の温度が低下することを抑制することができる。
【0049】
次に、制御部10は、循環ポンプ5を駆動(ステップS08)してステップS01に戻る。熱媒温度T1と貯留水温度T2との温度差ΔTが大きい状態では、温度の高い熱媒を利用して貯留水温度T2を上昇させることできる。そのため、制御部10は、循環ポンプ5を駆動して、集熱器2とストレージタンク4との間で熱媒を循環する。そして、閉鎖型太陽熱集熱システム1は、集熱器2において太陽光を受けて熱媒の温度が上昇し、ストレージタンク4において熱媒の熱を受けて貯留水の温度が上昇し、家屋で温水を利用することができる。
【0050】
本実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、以下の構成を有する。制御部10は、測定された熱媒温度T1が媒体所定温度α以下であり、かつ、測定された貯留水温度T2が貯留水所定温度β以下である場合には、調光フィルム3を印加状態とすることによって調光フィルム3で透過する太陽光を増加させて当該太陽光を受けて熱媒を加熱する。制御部10は、測定された熱媒温度T1が媒体所定温度αより大きい場合、または、測定された貯留水温度T2が貯留水所定温度βより大きい場合には、調光フィルム3を非印加状態とすることによって印加状態よりも調光フィルム3で透過する太陽光を減少させて集熱器2において熱媒の加熱を行わない。そのため、本実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1によれば、熱媒温度T1が媒体所定温度α以下であり、かつ、貯留水温度T2が貯留水所定温度β以下である場合には、調光フィルム3で透過する太陽光を増加させて当該太陽光を受けて熱媒の加熱を行うため、熱媒で加熱した貯留水を利用することができる。その上、本実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1によれば、熱媒温度T1が媒体所定温度αより大きい場合、または、貯留水温度T2が貯留水所定温度βより大きい場合には、調光フィルム3によって透過する太陽光を減少させて熱媒の加熱を抑制するため、熱媒の気化を抑制することができる。しかも、本実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、集熱器2において太陽と集熱管22との間に介在する調光フィルム3の制御によって太陽光の透過量を減少させて熱媒の温度を直接的に低下させる。このため、例えば、システムに放熱器または冷却装置を設けて熱媒の温度を間接的に低下させる場合と比べて簡単な構成で熱媒の気化を抑制することができる。
【0051】
本実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、以下の構成を有する。制御部10は、測定された熱媒温度T1と、測定された貯留水温度T2との温度差ΔTが所定温度差γ以下である場合、循環ポンプ5の駆動を停止して熱媒の循環を行わない。また、制御部10は、測定された熱媒温度T1と、測定された貯留水温度T2との温度差ΔTが所定温度差γよりも大きい場合、循環ポンプ5を駆動して熱媒の循環を行う。それらのため、本実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、熱媒温度T1と貯留水温度T2との温度差ΔTが大きい場合には、循環ポンプ5を駆動して加熱した貯留水を利用することができる。その上、本実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、例えば、当該システムの立ち上げ時に熱媒温度T1と貯留水温度T2との温度差ΔTが低いことにより、熱媒の熱を貯留水に利用できない場合には、循環ポンプ5の駆動を停止して無駄なエネルギー消費を防止することができるとともに、熱媒の移動を規制して熱媒の温度が低下することを抑制することができる。
【0052】
なお、上述した実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、ハウジング21のカバー21bと、調光カバー27との間に調光フィルム3を設けるもので説明した。しかし、本実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、それに限られず、カバー21bの内面に調光フィルム3を貼り付け、調光カバー27を設けなくてもよい。つまり、ハウジング21の内部に調光フィルム3を設けてもよい。
【0053】
[実施形態の変形例]
次に、上述した実施形態の変形例を説明する。図6は、変形例に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1における媒体所定温度α、貯留水所定温度β、および、所定温度差γを示す説明図である。上述した実施形態の制御部10は、調光フィルム3を印加状態とする媒体所定温度αと、調光フィルム3を非印加状態とする媒体所定温度αとが同一であるものを説明した。
【0054】
一方、変形例に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、図6に示すように、調光フィルム3を印加状態とする媒体所定温度α1と、調光フィルム3を非印加状態とする媒体所定温度α2とが異なる。より具体的に説明すると、制御部10は、調光フィルム3を非印加状態とする媒体所定温度α2を、調光フィルム3を印加状態とする媒体所定温度α1よりも低くする。例えば、制御部10は、媒体所定温度α2が85℃となった場合、調光フィルム3を非印加状態として太陽光の透過量を減少する一方、媒体所定温度α1は90℃となるまで、調光フィルム3を印加状態として太陽光の透過量を増加する。つまり、変形例に係る媒体所定温度αは、ある一定の幅を有する。
【0055】
変形例に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、調光フィルム3で太陽光の透過量を減少する媒体所定温度α2を、調光フィルム3で太陽光の透過量を増加する媒体所定温度α1よりも低くする。そのため、変形例に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、低い媒体所定温度α2で太陽光の透過量を減少させるため、熱媒の気化を一層抑制することができる。
【0056】
また、上述した実施形態の制御部10は、調光フィルム3を印加状態とする貯留水所定温度βと、調光フィルム3を非印加状態とする貯留水所定温度βとが同一であるものを説明した。
【0057】
一方、変形例に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、調光フィルム3を印加状態とする貯留水所定温度β1と、調光フィルム3を非印加状態とする貯留水所定温度β2とが異なる。より具体的に説明すると、制御部10は、調光フィルム3を非印加状態とする貯留水所定温度β2を、調光フィルム3を印加状態とする貯留水所定温度β1よりも低くする。例えば、制御部10は、貯留水所定温度β2が75℃となった場合、調光フィルム3を非印加状態として太陽光の透過量を減少する一方、貯留水所定温度β1は80℃となるまで、調光フィルム3を印加状態として太陽光の透過量を増加する。つまり、変形例に係る貯留水所定温度βは、ある一定の幅を有する。
【0058】
変形例に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、調光フィルム3で太陽光の透過量を減少する貯留水所定温度β2を、調光フィルム3で太陽光の透過量を増加する貯留水所定温度β1よりも低くする。そのため、変形例に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、低い貯留水所定温度β2で太陽光の透過量を減少させるため、熱媒の気化を一層抑制することができる。
【0059】
さらに、上述した実施形態の制御部10は、循環ポンプ5を駆動する所定温度差γと、循環ポンプ5の駆動を停止する所定温度差γとが同一であるものを説明した。
【0060】
一方、変形例に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、循環ポンプ5の駆動を停止する所定温度差γ1と、循環ポンプ5を駆動する所定温度差γ2とが異なる。より具体的に説明すると、制御部10は、循環ポンプ5の駆動を停止する所定温度差γ2を、循環ポンプ5を駆動する所定温度差γ1よりも低くする。例えば、制御部10は、温度差ΔTが所定温度差γ2である3℃となった場合、循環ポンプ5の駆動を停止する一方、温度差ΔTが所定温度差γ1である5℃となった場合、循環ポンプ5を駆動する。つまり、変形例に係る所定温度差γは、ある一定の幅を有する。
【0061】
変形例に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、循環ポンプ5の駆動を停止する所定温度差γ2を、循環ポンプ5を駆動する所定温度差γ1よりも小さくする。そのため、変形例に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、一旦、循環ポンプ5の駆動を停止した直後に、循環ポンプ5を駆動することを防止することができる。その結果、変形例に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、循環ポンプ5の駆動と停止を繰り返すことを防止することができ、無駄なエネルギー消費を確実に防止することができる。
【0062】
なお、上述した実施形態および変形例に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、集熱器2として、2枚のプレート20a、20b同士を貼り合わせることによって形成される集熱板2を備えるものを説明した。しかし、本実施形態に係る閉鎖型太陽熱集熱システム1は、それに限られず、他の構造の集熱板を用いてもよいし、周知の集熱器を用いてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 閉鎖型太陽熱集熱システム
11 電源
2 集熱器
22 集熱管
3 調光フィルム
4 ストレージタンク(タンク)
41 熱交換器
5 循環ポンプ(ポンプ)
10 制御部
S1 第1温度センサ
S2 第2温度センサ
T1 熱媒温度
T2 貯留水温度
α 媒体所定温度
β 貯留水所定温度
γ 所定温度差
ΔT 温度差
図1
図2
図3
図4
図5
図6