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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075401
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】刃先交換式ラジアスエンドミル
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/20 20060101AFI20230524BHJP
   B23C 5/06 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
B23C5/20
B23C5/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188280
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】三浦 亮
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 翔太
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022HH01
3C022HH05
3C022HH18
3C022LL01
(57)【要約】
【課題】切削インサートのインサート取付座への着座安定性を安定して高めることができる刃先交換式ラジアスエンドミルを提供する。
【解決手段】工具本体2と、円板状の切削インサートと、を備え、切削インサートの外周面は、インサート周方向に並ぶ複数の拘束面を有し、インサート取付座21は、インサート周方向に互いに間隔をあけて配置され、拘束面がそれぞれ接触する一対の着座面21c,21dを有し、一対の着座面21c,21dは、工具径方向の外側へ向かうに従い工具軸方向の先端側に向けて延びる外側着座面21cと、工具径方向の外側へ向かうに従い工具軸方向の後端側に向けて延びる内側着座面21dと、を有し、工具回転方向からインサート取付座21を正面に見て、外側着座面21cが工具中心軸に対して傾斜する第1傾斜角θ1は、内側着座面21dが工具中心軸に対して傾斜する第2傾斜角θ2よりも大きい。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具中心軸を中心とする工具本体と、
前記工具本体の先端外周部に配置されるインサート取付座に着脱可能に取り付けられる円板状の切削インサートと、を備え、
前記切削インサートは、
インサート中心軸が延びるインサート軸方向において、互いに反対側を向く一対の板面と、
前記インサート中心軸と直交するインサート径方向の外側を向く外周面と、
前記一対の板面のうち、少なくとも前記工具中心軸回りの工具回転方向を向く一方の板面と、前記外周面とが接続される稜線部に配置される切刃と、を有し、
前記外周面は、前記インサート中心軸回りのインサート周方向に並ぶ複数の拘束面を有し、
前記インサート取付座は、前記インサート周方向に互いに間隔をあけて配置され、前記拘束面がそれぞれ接触する一対の着座面を有し、
前記一対の着座面は、
前記工具中心軸と直交する工具径方向の外側へ向かうに従い、前記工具中心軸が延びる工具軸方向の先端側に向けて延びる外側着座面と、
前記外側着座面よりも前記工具径方向の内側に配置され、前記工具径方向の外側へ向かうに従い、前記工具軸方向の後端側に向けて延びる内側着座面と、を有し、
前記工具回転方向から前記インサート取付座を正面に見て、前記外側着座面が前記工具中心軸に対して傾斜する第1傾斜角θ1は、前記内側着座面が前記工具中心軸に対して傾斜する第2傾斜角θ2よりも大きい、
刃先交換式ラジアスエンドミル。
【請求項2】
前記切刃は、前記インサート周方向に並ぶ複数の凸曲線刃を有し、
前記複数の凸曲線刃のうち、前記工具軸方向の先端部かつ前記工具径方向の外端部に配置される所定の前記凸曲線刃は、前記インサート周方向の一端部が、前記切刃において最も前記工具軸方向の先端側に位置する、
請求項1に記載の刃先交換式ラジアスエンドミル。
【請求項3】
前記外周面は、前記インサート周方向に隣り合う前記拘束面間に配置され、前記拘束面よりも前記インサート径方向の外側に突出する突部を有し、
前記突部は、前記外周面に、前記拘束面と前記インサート周方向に交互に並んで複数設けられ、
前記複数の突部のうち、前記工具軸方向の先端部に配置される所定の前記突部は、前記外周面において最も前記工具軸方向の先端側に位置する、
請求項1または2に記載の刃先交換式ラジアスエンドミル。
【請求項4】
前記複数の拘束面は、前記インサート周方向に等ピッチで並び、
前記切刃は、前記インサート周方向に等ピッチで並ぶ複数の凸曲線刃を有し、
前記拘束面の前記インサート周方向の中心と、前記凸曲線刃の前記インサート周方向の中心とが、前記インサート周方向において互いにずらされており、かつ、
前記インサート周方向に隣り合う一対の前記拘束面間の中心と、前記凸曲線刃の前記インサート周方向の中心とが、前記インサート周方向において互いにずらされている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の刃先交換式ラジアスエンドミル。
【請求項5】
前記拘束面は、
前記インサート中心軸と平行な平面部と、
前記平面部と前記インサート軸方向に並んで配置され、前記平面部から前記インサート軸方向に離れるに従い前記インサート径方向の外側に向けて延びる傾斜面部と、を有し、
前記外側着座面は、前記平面部及び前記傾斜面部のうち一方と接触し、
前記内側着座面は、前記平面部及び前記傾斜面部のうち他方と接触する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の刃先交換式ラジアスエンドミル。
【請求項6】
前記複数の拘束面は、
前記工具回転方向に前記平面部が配置され、前記工具回転方向とは反対側に前記傾斜面部が配置される第1拘束面と、
前記工具回転方向に前記傾斜面部が配置され、前記工具回転方向とは反対側に前記平面部が配置される第2拘束面と、を含み、
前記第1拘束面と前記第2拘束面とが、前記インサート周方向に交互に配置される、
請求項5に記載の刃先交換式ラジアスエンドミル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃先交換式ラジアスエンドミルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工具中心軸を中心とする工具本体と、工具本体の先端外周部に配置されるインサート取付座に着脱可能に取り付けられる円板状の切削インサートと、を備えた刃先交換式ラジアスエンドミルが知られている(例えば特許文献1)。
一般に刃先交換式ラジアスエンドミルは、粗加工や中仕上げ加工など、高切り込み・高送りで切削インサートに大きな切削抵抗が作用するような切削加工に用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2012-525268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の刃先交換式ラジアスエンドミルでは、切削加工時に、切削インサートが切削抵抗を受けた際、インサート取付座への取り付け状態(着座安定性)が不安定になるおそれがあった。
【0005】
本発明は、切削インサートのインサート取付座への着座安定性を安定して高めることができる刃先交換式ラジアスエンドミルを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の刃先交換式ラジアスエンドミルの一つの態様は、工具中心軸を中心とする工具本体と、前記工具本体の先端外周部に配置されるインサート取付座に着脱可能に取り付けられる円板状の切削インサートと、を備え、前記切削インサートは、インサート中心軸が延びるインサート軸方向において、互いに反対側を向く一対の板面と、前記インサート中心軸と直交するインサート径方向の外側を向く外周面と、前記一対の板面のうち、少なくとも前記工具中心軸回りの工具回転方向を向く一方の板面と、前記外周面とが接続される稜線部に配置される切刃と、を有し、前記外周面は、前記インサート中心軸回りのインサート周方向に並ぶ複数の拘束面を有し、前記インサート取付座は、前記インサート周方向に互いに間隔をあけて配置され、前記拘束面がそれぞれ接触する一対の着座面を有し、前記一対の着座面は、前記工具中心軸と直交する工具径方向の外側へ向かうに従い、前記工具中心軸が延びる工具軸方向の先端側に向けて延びる外側着座面と、前記外側着座面よりも前記工具径方向の内側に配置され、前記工具径方向の外側へ向かうに従い、前記工具軸方向の後端側に向けて延びる内側着座面と、を有し、前記工具回転方向から前記インサート取付座を正面に見て、前記外側着座面が前記工具中心軸に対して傾斜する第1傾斜角θ1は、前記内側着座面が前記工具中心軸に対して傾斜する第2傾斜角θ2よりも大きい。
【0007】
この種の刃先交換式ラジアスエンドミルでは、切削加工時に、切削インサートの切刃のうち、工具軸方向の先端部かつ工具径方向の外端部に位置する円弧状の部分(外側コーナ)が、被削材に切り込んでいく。このとき、切削インサートが切削により受ける力(切削抵抗)は、工具径方向の内側へ向かう分力と、工具軸方向の後端側へ向かう分力と、を含む。前記各分力の合力の向きは、工具中心軸に対して傾斜した方向となる。具体的に、この合力の向きは、工具回転方向からインサート取付座を正面に見て、前記円弧状の部分(被削材の切削部位)から工具径方向の内側へ向かうに従い工具軸方向の後端側に向かう傾斜方向となる。
【0008】
なお詳しくは、工具回転方向からインサート取付座または切削インサートのすくい面を正面に見て、前記合力の向きは、被削材の切込み量の最上点と切刃との交点(集中荷重点)を通る切刃の接線に対して、直交する方向となる。
【0009】
本発明の刃先交換式ラジアスエンドミルによれば、外側着座面と工具中心軸との間に形成される第1傾斜角θ1が、内側着座面と工具中心軸との間に形成される第2傾斜角θ2よりも大きくされている。したがって、前記合力の向きに対して外側着座面が傾斜する角度と、前記合力の向きに対して内側着座面が傾斜する角度とを、互いに近似した値または同一の値とすることができる。
【0010】
このため、切削加工時に、切削インサートが一対の着座面によって略均等に支持され、切削インサートに対してインサート周方向への回転力が作用しにくくされている。したがって、切削インサートのインサート取付座への着座安定性が安定して高められる。そして、切削インサートによる加工精度が良好に維持され、かつ切削インサートの工具寿命も延長する。
【0011】
なお、切削インサートの切刃のうち、工具軸方向の先端部かつ工具径方向の内端部に位置する別の円弧状の部分(内側コーナ)を用いて、被削材にランピング加工を施す場合には、工具回転方向からインサート取付座を正面に見て、切削インサートが切削により受ける合力の向きが、外側着座面が延びる方向に対して、略垂直な方向とされる。
このため、ランピング加工時においても、インサート取付座が切削インサートを安定して支持することができ、切削インサートの着座安定性が向上する。
【0012】
前記刃先交換式ラジアスエンドミルにおいて、前記切刃は、前記インサート周方向に並ぶ複数の凸曲線刃を有し、前記複数の凸曲線刃のうち、前記工具軸方向の先端部かつ前記工具径方向の外端部に配置される所定の前記凸曲線刃は、前記インサート周方向の一端部が、前記切刃において最も前記工具軸方向の先端側に位置することが好ましい。
【0013】
この場合、切刃が複数の凸曲線刃を有しており、切削加工時には、工具軸方向の先端部かつ工具径方向の外端部に位置する所定の凸曲線刃(外側コーナ)が、被削材に切り込んでいく。所定の凸曲線刃のインサート周方向の一端部は、工具軸方向の最先端に位置しており、被削材の加工面を仕上げ加工する仕上げ刃として機能する。また、所定の凸曲線刃のインサート周方向の一端部以外の部分は、被削材の加工面に大きく切り込んで切屑生成に主な役割を果たす主切刃として機能する。
上記構成によれば、凸曲線刃のインサート周方向の各位置で切刃を安定して機能させることができる。
【0014】
前記刃先交換式ラジアスエンドミルにおいて、前記外周面は、前記インサート周方向に隣り合う前記拘束面間に配置され、前記拘束面よりも前記インサート径方向の外側に突出する突部を有し、前記突部は、前記外周面に、前記拘束面と前記インサート周方向に交互に並んで複数設けられ、前記複数の突部のうち、前記工具軸方向の先端部に配置される所定の前記突部は、前記外周面において最も前記工具軸方向の先端側に位置することが好ましい。
【0015】
この場合、切刃のうち工具軸方向の最先端に位置する部分の工具回転方向とは反対側(反工具回転方向)に、所定の突部が配置される。すなわち、切削インサートの工具軸方向の最先端位置での肉厚が確保される。切削インサートの工具軸方向の最先端位置での強度を高めることができる。
【0016】
前記刃先交換式ラジアスエンドミルにおいて、前記複数の拘束面は、前記インサート周方向に等ピッチで並び、前記切刃は、前記インサート周方向に等ピッチで並ぶ複数の凸曲線刃を有し、前記拘束面の前記インサート周方向の中心と、前記凸曲線刃の前記インサート周方向の中心とが、前記インサート周方向において互いにずらされており、かつ、前記インサート周方向に隣り合う一対の前記拘束面間の中心と、前記凸曲線刃の前記インサート周方向の中心とが、前記インサート周方向において互いにずらされていることが好ましい。
【0017】
本発明の刃先交換式ラジアスエンドミルでは、上述したように、外側着座面の第1傾斜角θ1と内側着座面の第2傾斜角θ2とが互いに異なるため、凸曲線刃のインサート周方向の中心が、拘束面のインサート周方向の中心、及び、インサート周方向に隣り合う一対の拘束面間の中心と、それぞれインサート周方向にずらされることで、切削加工に用いられる凸曲線刃を、効果的に機能させることができる。
【0018】
前記刃先交換式ラジアスエンドミルにおいて、前記拘束面は、前記インサート中心軸と平行な平面部と、前記平面部と前記インサート軸方向に並んで配置され、前記平面部から前記インサート軸方向に離れるに従い前記インサート径方向の外側に向けて延びる傾斜面部と、を有し、前記外側着座面は、前記平面部及び前記傾斜面部のうち一方と接触し、前記内側着座面は、前記平面部及び前記傾斜面部のうち他方と接触することが好ましい。
【0019】
この場合、外側着座面または内側着座面が平面部と接触することにより、インサート取付座に対して切削インサートをインサート周方向に容易に位置決めすることができ、かつ、切削加工時に切削インサートがインサート周方向に回動することが抑制される。
また、外側着座面または内側着座面が傾斜面部を押さえることにより、前述の平面部と同様の効果が得られ、かつ、切削加工時に切削インサートが切削抵抗を受けたときに、インサート取付座に対する切削インサートの浮き上がりが抑制される。
【0020】
前記刃先交換式ラジアスエンドミルにおいて、前記複数の拘束面は、前記工具回転方向に前記平面部が配置され、前記工具回転方向とは反対側に前記傾斜面部が配置される第1拘束面と、前記工具回転方向に前記傾斜面部が配置され、前記工具回転方向とは反対側に前記平面部が配置される第2拘束面と、を含み、前記第1拘束面と前記第2拘束面とが、前記インサート周方向に交互に配置されることが好ましい。
【0021】
この場合、前述の作用効果を奏しつつ、切削インサートを表裏反転対称形状の両面タイプとすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の前記態様の刃先交換式ラジアスエンドミルによれば、切削インサートのインサート取付座への着座安定性を安定して高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本実施形態の刃先交換式ラジアスエンドミルを示す斜視図であり、複数の切削インサートのうちの1つを図示し、他の切削インサートの図示は省略している。
図2図2は、刃先交換式ラジアスエンドミルを工具軸方向から見た下面図であり、複数の切削インサートのうちの1つを図示し、他の切削インサートの図示は省略している。
図3図3は、図2のIII矢視を示す刃先交換式ラジアスエンドミルの側面図である。
図4図4は、図2のIV矢視を示す刃先交換式ラジアスエンドミルの側面図である。
図5図5は、刃先交換式ラジアスエンドミルの一部を示す側面図であり、詳しくは、工具回転方向から切削インサート及びインサート取付座を正面に見た図である。
図6図6は、工具本体の一部を示す側面図であり、詳しくは、工具回転方向からインサート取付座を正面に見た図である。
図7図7は、工具本体のインサート取付座近傍を示す斜視図である。
図8図8は、図5のVIII-VIII断面を示す断面図である。
図9図9は、図5のIX-IX断面を示す断面図である。
図10図10は、切削インサートを示す斜視図である。
図11図11(a)は、切削インサートをインサート軸方向から見た平面図であり、図11(b)は、切削インサートをインサート径方向から見た側面図である。
図12図12は、図11(a)のXII-XII断面を示す断面図である。
図13図13は、図11(a)のXIII-XIII断面を示す断面図である。
図14図14は、第1変形例の刃先交換式ラジアスエンドミルの一部(外側着座面近傍)を示す側面図である。
図15図15は、第1変形例の刃先交換式ラジアスエンドミルの一部(内側着座面近傍)を示す下面図である。
図16図16は、第2変形例の刃先交換式ラジアスエンドミルが備える切削インサートを示す斜視図である。
図17図17は、第2変形例の切削インサートを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態の刃先交換式ラジアスエンドミル10について、図面を参照して説明する。
【0025】
〔刃先交換式ラジアスエンドミルの概略構成〕
本実施形態の刃先交換式ラジアスエンドミル10は、金属製等の被削材に対して転削加工(切削加工)を施す転削工具(切削工具)である。刃先交換式ラジアスエンドミル10は、例えば粗加工や中仕上げ加工など、主に高切り込み・高送りの切削条件とされる転削加工に用いられる。なお刃先交換式ラジアスエンドミル10は、刃先交換式高送りカッタや刃先交換式転削工具等と言い換えてもよい。
【0026】
図1図4に示すように、刃先交換式ラジアスエンドミル10は、工具中心軸Oを中心とする柱状または筒状の工具本体2と、工具本体2の外周部に配置される円板状の切削インサート3と、切削インサート3を工具本体2に固定する固定部材4と、を備える。また切削インサート3は、工具本体2の外周部に、互いに間隔をあけて複数設けられる。なお図1図4では、工具本体2に取り付けられる複数の切削インサート3のうちの1つを図示し、前記1つ以外の他の切削インサート3の図示は省略している。
【0027】
〔方向の定義〕
本実施形態では、工具本体2の工具中心軸Oが延びる方向、つまり工具中心軸Oに沿う方向を、工具軸方向と呼ぶ。工具軸方向のうち、工具本体2の第1端部2aから第2端部2bへ向かう方向を後端側と呼び、第2端部2bから第1端部2aへ向かう方向を先端側と呼ぶ。
【0028】
工具中心軸Oと直交する方向を工具径方向と呼ぶ。工具径方向のうち、工具中心軸Oに近づく方向を工具径方向の内側と呼び、工具中心軸Oから離れる方向を工具径方向の外側と呼ぶ。
【0029】
工具中心軸O回りに周回する方向を工具周方向と呼ぶ。工具周方向のうち、切削加工時に工具本体2が回転させられる向きを工具回転方向Tと呼び、これとは反対の回転方向を、工具回転方向Tとは反対側または反工具回転方向と呼ぶ。
本実施形態では、図2に示すように、工具軸方向から工具本体2の第1端部2aを正面に見て(つまり工具軸方向の先端側から工具本体2を見て)、工具中心軸Oを中心とする反時計回りの回転方向が工具回転方向Tに相当し、時計回りの回転方向が反工具回転方向に相当する。
【0030】
また本実施形態では、図10図13に示すように、切削インサート3のインサート中心軸Aが延びる方向、つまりインサート中心軸Aに沿う方向を、インサート軸方向と呼ぶ。インサート軸方向は、切削インサート3の板厚方向に相当する。切削インサート3は、インサート軸方向において互いに反対側を向く一対の板面31,32を有する。インサート軸方向のうち、一方の板面(表面)31から他方の板面(裏面)32へ向かう方向を、インサート軸方向の裏面側と呼び、他方の板面32から一方の板面31へ向かう方向を、インサート軸方向の表面側と呼ぶ。
【0031】
インサート中心軸Aと直交する方向をインサート径方向と呼ぶ。インサート径方向のうち、インサート中心軸Aに近づく方向をインサート径方向の内側と呼び、インサート中心軸Aから離れる方向をインサート径方向の外側と呼ぶ。
【0032】
インサート中心軸A回りに周回する方向をインサート周方向と呼ぶ。インサート周方向のうち、所定の回転方向をインサート周方向の一方側C1と呼び、これとは反対の回転方向をインサート周方向の他方側C2と呼ぶ。
本実施形態では、図11(a)に示すように、インサート軸方向から一方の板面31を正面に見て(つまりインサート軸方向の表面側から切削インサート3を見て)、インサート中心軸Aを中心とする時計回りの回転方向がインサート周方向の一方側C1に相当し、反時計回りの回転方向がインサート周方向の他方側C2に相当する。
【0033】
〔工具本体〕
工具本体2は、例えば鋼製等の金属製である。図1図4に示すように、工具本体2は、工具中心軸Oを中心とする略円柱状または略円筒状である。なお工具本体2は、円盤状等であってもよい。工具本体2は、図示しない工作機械の主軸に着脱可能に装着される。具体的に、工作機械の主軸は、工具本体2の少なくとも第2端部2bつまり後端部を保持する。切削加工時に工具本体2は、工作機械の主軸によって、工具回転方向Tに回転させられる。本実施形態では、工具本体2の工具軸方向の先端部の外径が、後端部の外径よりもわずかに大きい。
【0034】
工具本体2は、インサート取付座21と、チップポケット22と、を有する。特に図示しないが、工具本体2は、さらにクーラント孔を有していてもよい。
【0035】
インサート取付座21は、工具本体2の工具軸方向の先端部かつ工具径方向の外端部に配置される。すなわち、インサート取付座21は、工具本体2の先端外周部に配置される。インサート取付座21は、工具本体2の先端面及び外周面から窪む凹状である。
【0036】
インサート取付座21は、工具本体2に複数設けられる。複数のインサート取付座21は、工具周方向に互いに間隔をあけて配置される。本実施形態ではインサート取付座21が、工具周方向に並んで7つ設けられる。複数のインサート取付座21は、互いに同一形状とされている。各インサート取付座21には、それぞれ切削インサート3が取り付けられる。
【0037】
図6及び図7に示すように、インサート取付座21は、底面21aと、雌ネジ孔21bと、一対の着座面21c,21dと、を有する。
【0038】
底面21aは、工具回転方向Tを向く平面状である。本実施形態では底面21aが、円形リング状の平面である。底面21aは、工具中心軸Oに対して傾斜する。具体的に、底面21aは、工具軸方向の後端側へ向かうに従い工具回転方向Tに向けて延びる傾斜面である。
【0039】
雌ネジ孔21bは、底面21aの内部(中央部)に開口する。雌ネジ孔21bは、底面21aが拡がる方向と略直交する方向に延びる貫通孔または止め穴である。本実施形態では雌ネジ孔21bが貫通孔であり、この雌ネジ孔21bが配置されるインサート取付座21の反工具回転方向に隣り合うチップポケット22にも開口する。雌ネジ孔21bは、その内周面に雌ネジ部を有する。
【0040】
一対の着座面21c,21dは、底面21aよりも工具回転方向Tに配置される。一対の着座面21c,21dは、雌ネジ孔21bの孔中心軸回りに互いに間隔をあけて配置される。すなわち、インサート取付座21に切削インサート3が取り付けられた状態では、一対の着座面21c,21dは、インサート周方向に互いに間隔をあけて配置される(図5を参照)。
【0041】
図6に示すように、一対の着座面21c,21dは、工具径方向の外側へ向かうに従い工具軸方向の先端側に向けて延びる外側着座面21cと、外側着座面21cよりも工具径方向の内側に配置され、工具径方向の外側へ向かうに従い工具軸方向の後端側に向けて延びる内側着座面21dと、を有する。
【0042】
図6に符号O´で示す一点鎖線は、図示しない切削インサート3のインサート中心軸Aと交差し、工具中心軸Oと平行な仮想直線を表している。図6に示すように、工具回転方向Tからインサート取付座21を正面に見て、外側着座面21cが仮想直線O´つまり工具中心軸Oに対して傾斜する第1傾斜角θ1は、内側着座面21dが仮想直線O´つまり工具中心軸Oに対して傾斜する第2傾斜角θ2よりも、大きい。
【0043】
第1傾斜角θ1は、例えば、60°以上75°以下である。また第2傾斜角θ2は、例えば、15°以上30°以下である。第1傾斜角θ1と第2傾斜角θ2との差(θ1-θ2)は、例えば、30°以上60°以下である。第1傾斜角θ1と第2傾斜角θ2との和(θ1+θ2)は、例えば、90°である。なお和(θ1+θ2)は、例えば、80°以上100°以下であることが好ましい。
本実施形態では、例えば、第1傾斜角θ1が67.5°であり、第2傾斜角θ2が22.5°である。また、差(θ1-θ2)が45°であり、和(θ1+θ2)が90°である。
【0044】
図7に示すように、外側着座面21cは、平面状である。本実施形態では外側着座面21cが、四角形状の平面であり、具体的には、インサート周方向に延びる長方形状の平面である。また、内側着座面21dは、平面状である。本実施形態では内側着座面21dが、四角形状の平面であり、具体的には、インサート周方向に延びる長方形状の平面である。
【0045】
本実施形態では外側着座面21cが、内側着座面21dよりも工具回転方向Tに位置する。言い換えると、外側着座面21cは、内側着座面21dよりもインサート軸方向の表面側に位置する。
【0046】
図1図4に示すように、チップポケット22は、工具本体2の工具軸方向の先端部かつ工具径方向の外端部に配置される。すなわち、チップポケット22は、工具本体2の先端外周部に配置される。チップポケット22は、工具本体2の先端面及び外周面から窪む凹状である。チップポケット22は、インサート取付座21よりも大きな切り欠き状である。
【0047】
チップポケット22は、工具本体2に複数設けられる。複数のチップポケット22は、工具周方向に互いに間隔をあけて配置される。本実施形態ではチップポケット22が、工具周方向に並んで7つ設けられる。各チップポケット22は、各インサート取付座21の工具回転方向Tに隣り合って配置され、各インサート取付座21と接続される。
【0048】
チップポケット22が工具本体2の先端面から工具軸方向の後端側に向けて窪む長さ、つまり工具軸方向の深さは、インサート取付座21が工具本体2の先端面から工具軸方向の後端側に向けて窪む長さよりも大きい。チップポケット22が工具本体2の外周面から工具径方向の内側に向けて窪む長さ、つまり工具径方向の深さは、インサート取付座21が工具本体2の外周面から工具径方向の内側に向けて窪む長さよりも大きい。
【0049】
特に図示しないが、工具本体2がクーラント孔を有する場合には、例えば下記の構成を採用することができる。
クーラント孔は、工具本体2の内部を延び、工具本体2を貫通する。クーラント孔は、工具本体2に複数設けられる。複数のクーラント孔は、工具周方向に互いに間隔をあけて配置される。クーラント孔の数は、インサート取付座21の数と同じか、またはその倍数などである。クーラント孔は、工作機械の主軸の内部流路や配管等を通して、ポンプ等のクーラント供給手段と接続される。クーラント孔には、クーラント供給手段から切削液や圧縮エア等のクーラントが供給される。
【0050】
クーラント孔の工具径方向の外側の端部つまり噴出口は、チップポケット22に開口する。クーラント孔は、インサート取付座21に装着された切削インサート3の切刃34及び被削材の加工部位等に向けて、クーラントを噴出する。
【0051】
〔切削インサート〕
次に、切削インサート3について説明する。切削インサート3は、例えば超硬合金製である。切削インサート3は、インサート取付座21に着脱可能に取り付けられる。切削インサート3の数は、インサート取付座21の数と同じであり、本実施形態では7つである。複数の切削インサート3は、工具本体2の先端外周部に、工具周方向に互いに間隔をあけて配置される。
【0052】
切削インサート3は、いわゆる丸駒インサートであり、インサート中心軸Aを中心とする円板状である。本実施形態の切削インサート3は、表裏反転対称形状である。すなわち、切削インサート3は、インサート軸方向に反転させた姿勢でインサート取付座21に装着しても切削加工を行うことが可能な、両面タイプのインサートである。
【0053】
図10図13に示すように、切削インサート3は、インサート中心軸Aと略垂直な方向に広がる一対の板面31,32と、インサート径方向の外側を向き、一対の板面31,32と接続される外周面33と、一対の板面31,32のうち、少なくとも一方の板面31と外周面33とが接続される稜線部に配置される切刃34と、一対の板面31,32に開口する貫通孔35と、を有する。なお本実施形態では、切削インサート3が両面タイプであり、他方の板面32と外周面33とが接続される稜線部にも、切刃34が配置される。
【0054】
一方の板面31は、インサート軸方向の表面側を向く。一方の板面31は、表面31と言い換えてもよい。他方の板面32は、インサート軸方向の裏面側を向く。他方の板面32は、裏面32と言い換えてもよい。
【0055】
本実施形態では切削インサート3が両面タイプであり、一対の板面31,32は、互いに同じ構成を有する。このため本実施形態では、一方の板面31について説明し、他方の板面32については説明を省略する。なお特に図示しないが、一対の板面31,32の少なくともいずれかに、各板面31,32を識別するための識別用マークを設けてもよい。
【0056】
板面31は、インサート中心軸Aを中心とする略円形リング状である。板面31は、取付面31aと、インサート周方向に並ぶ複数のすくい面31bと、インサート周方向に並ぶ複数の傾斜面31cと、を有する。
【0057】
取付面31aは、板面31のうちインサート径方向の内側部分に配置される。取付面31aは、インサート中心軸Aと垂直な方向に広がる平面状である。取付面31aは、円形リング状の平面である。
【0058】
すくい面31bは、板面31のうち外周部に配置される。すくい面31bは、切刃34のインサート径方向の内側に、切刃34と隣接して配置される。すくい面31bは、インサート周方向に並んで複数設けられ、本実施形態では、インサート周方向に等ピッチで4つ設けられる。
【0059】
図11(a)に示すように、切削インサート3をインサート軸方向から見た平面視で、各すくい面31bは、インサート周方向に延びる略円弧形の帯状をなす。本実施形態では、すくい面31bのインサート径方向の長さ(幅)が、インサート周方向に沿って一定である。また図10に示すように、本実施形態では板面31の各すくい面31bが、インサート軸方向の表面側に向けて凸となる凸曲面状をなす。
【0060】
図12及び図13に示すように、板面31のすくい面31bは、切刃34からインサート径方向の内側へ向かうに従い、インサート軸方向の裏面側に向けて延びる。すなわち、すくい面31bは、インサート中心軸Aと垂直な方向に広がる図示しない仮想平面に対して傾斜する傾斜面状である。なお、すくい面31bは、インサート中心軸Aと垂直な方向に広がる平面状等であってもよい。
【0061】
図10に示すように、傾斜面31cは、板面31のうち、インサート径方向において取付面31aとすくい面31bとの間の部分に配置される。傾斜面31cの内周部は、取付面31aと接続され、傾斜面31cの外周部は、すくい面31bと接続される。傾斜面31cは、インサート周方向に並んで複数設けられ、本実施形態では、インサート周方向に等ピッチで4つ設けられる。
【0062】
図11(a)に示すインサート平面視で、各傾斜面31cは、インサート周方向に延びる略円弧形の帯状をなす。本実施形態では、傾斜面31cのインサート径方向の長さ(幅)が、インサート周方向の一方側C1へ向かうに従い大きくなる。
【0063】
図12及び図13に示すように、板面31の傾斜面31cは、インサート径方向の内側へ向かうに従い、インサート軸方向の裏面側に向けて延びる。すなわち、傾斜面31cは、インサート中心軸Aと垂直な方向に広がる図示しない仮想平面に対して傾斜する傾斜面状である。また、傾斜面31cが前記仮想平面に対して傾斜する角度は、インサート周方向の他方側C2へ向かうに従い大きくなる。
傾斜面31cのインサート径方向に沿う単位長さあたりのインサート軸方向へ向けた変位量(つまり傾き)は、すくい面31bの前記変位量よりも大きい。
【0064】
図10図13に示すように、外周面33は、インサート周方向に延びる。外周面33は、インサート中心軸Aを中心とする環状である。具体的に、外周面33は、略円筒面状である。
外周面33は、逃げ面33aと、インサート周方向に並ぶ複数の拘束面36と、インサート周方向に隣り合う拘束面36間に配置される突部33bと、を有する。
【0065】
逃げ面33aは、外周面33のうち少なくともインサート軸方向の表面側の端部に配置される。逃げ面33aは、切刃34とインサート軸方向に隣接して配置される。逃げ面33aは、インサート周方向に延びる。なお本実施形態では、切削インサート3が両面タイプであり、外周面33のうちインサート軸方向の裏面側の端部にも、逃げ面33aが配置される。
【0066】
複数の拘束面36は、インサート周方向に互いに間隔をあけて配置される。本実施形態では拘束面36が、インサート周方向に沿って8つ設けられる。複数の拘束面36は、インサート周方向に等ピッチで並ぶ。すなわち、本実施形態では8つの拘束面36が、インサート軸方向から見て、インサート中心軸Aを中心とする中心角45°のピッチで、インサート周方向に配列する。
【0067】
拘束面36は、外周面33のうち拘束面36以外の部分よりも、インサート径方向の内側に窪む。拘束面36は、平面部36aと、傾斜面部36bと、を有する。
平面部36aは、インサート中心軸Aと平行な平面状である。本実施形態では、平面部36aが四角形状であり、具体的には、インサート周方向に延びる長方形状である。
【0068】
傾斜面部36bは、平面部36aとインサート軸方向に並んで配置される。本実施形態では、傾斜面部36bと平面部36aとが、インサート軸方向において互いに接続される。傾斜面部36bは、インサート中心軸Aに対して傾斜する平面状である。傾斜面部36bは、平面部36aからインサート軸方向に離れるに従い、インサート径方向の外側に向けて延びる。
【0069】
本実施形態では、傾斜面部36bが四角形状であり、具体的には、台形状である。台形状の傾斜面部36bの下底に相当する辺部は、平面部36aと接続される。台形状の傾斜面部36bの上底に相当する辺部は、逃げ面33aとインサート軸方向に隣り合って配置される。
傾斜面部36bのインサート周方向の寸法は、インサート軸方向に沿って平面部36aから離れるに従い小さくなる。
【0070】
複数の拘束面36は、第1拘束面36Aと、第2拘束面36Bと、を含む。
第1拘束面36Aは、インサート軸方向の表面側に平面部36aが配置され、インサート軸方向の裏面側に傾斜面部36bが配置される。第2拘束面36Bは、インサート軸方向の表面側に傾斜面部36bが配置され、インサート軸方向の裏面側に平面部36aが配置される。
【0071】
第1拘束面36Aは、インサート周方向に沿って複数設けられ、本実施形態ではインサート周方向に等ピッチで4つ設けられる。第2拘束面36Bは、インサート周方向に沿って複数設けられ、本実施形態ではインサート周方向に等ピッチで4つ設けられる。第1拘束面36Aと第2拘束面36Bとは、インサート周方向に交互に配置される。すなわち、本実施形態では4つの第1拘束面36Aが、インサート軸方向から見て、インサート中心軸Aを中心とする中心角90°のピッチで、インサート周方向に配列する。また、4つの第2拘束面36Bが、インサート軸方向から見て、インサート中心軸Aを中心とする中心角90°のピッチで、インサート周方向に配列する。
【0072】
突部33bは、拘束面36よりもインサート径方向の外側に突出する。本実施形態では、突部33bのインサート径方向の位置が、逃げ面33aのインサート径方向の位置と同じである。突部33bは、外周面33に、拘束面36とインサート周方向に交互に並んで複数設けられる。本実施形態では突部33bが、インサート周方向に等ピッチで8つ設けられる。
【0073】
突部33bは、インサート軸方向に延びる。突部33bのインサート周方向の長さ(幅)は、突部33bのインサート軸方向の中央部から両端部へ向かうに従い大きくなる。すなわち、突部33bのインサート周方向の長さは、インサート軸方向に沿って切刃34に近づくに従い大きくなる。
【0074】
切刃34は、インサート周方向に並ぶ複数の凸曲線刃34aを有する。本実施形態では、複数の凸曲線刃34aがインサート周方向に等ピッチで並び、具体的には、4つの凸曲線刃34aがインサート周方向に配列する。各凸曲線刃34aは、インサート軸方向の表面側に向けて凸となる凸曲線状をなす。凸曲線刃34aのインサート周方向の中央部は、凸曲線刃34aのインサート周方向の両端部よりも、インサート軸方向の表面側に位置する。
【0075】
図11(a)に示すインサート平面視で、各凸曲線刃34aは、インサート中心軸Aを中心とする円弧状をなす。このインサート平面視で、4つの凸曲線刃34aは、インサート中心軸Aを中心とする図示しない1つの仮想円上に位置する。
【0076】
凸曲線刃34aのインサート径方向の内側には、インサート径方向の内側へ向けて、すくい面31bと傾斜面31cとがこの順に配置される。インサート径方向に並ぶ凸曲線刃34a、すくい面31b及び傾斜面31cは、インサート周方向の長さが互いに略同じである。詳しくは、インサート径方向に並ぶ凸曲線刃34a、すくい面31b及び傾斜面31cのうち、凸曲線刃34aのインサート周方向の一方側C1の端部と、すくい面31bのインサート周方向の一方側C1の端部と、傾斜面31cのインサート周方向の一方側C1の端部とは、インサート周方向の位置が互いに略同じである。また、インサート径方向に並ぶ凸曲線刃34a、すくい面31b及び傾斜面31cのうち、凸曲線刃34aのインサート周方向の他方側C2の端部と、すくい面31bのインサート周方向の他方側C2の端部と、傾斜面31cのインサート周方向の他方側C2の端部とは、インサート周方向の位置が互いに略同じである。
【0077】
図10に示すように、本実施形態では、インサート軸方向に隣り合う拘束面36及び凸曲線刃34aのうち、拘束面36のインサート周方向の中心Bと、凸曲線刃34aのインサート周方向の中心Eとは、インサート周方向において互いにずらされている。具体的に、第1拘束面36Aのインサート周方向の中心Bと、凸曲線刃34aのインサート周方向の中心Eとは、インサート周方向において互いにずらされている。また第2拘束面36Bのインサート周方向の中心Bと、凸曲線刃34aのインサート周方向の中心Eとは、インサート周方向において互いにずらされている。
【0078】
また、インサート周方向に隣り合う一対の拘束面36と、前記一対の拘束面36とインサート軸方向に隣り合う1つの凸曲線刃34aと、に関して、一対の拘束面36間のインサート周方向の中心(つまり突部33bのインサート周方向の中心)Dと、凸曲線刃34aのインサート周方向の中心Eとは、インサート周方向において互いにずらされている。
【0079】
また本実施形態では、第1拘束面36Aのインサート周方向の他方側C2かつ第2拘束面36Bのインサート周方向の一方側C1に配置される突部33bのインサート周方向の中心Dと、凸曲線刃34aのインサート周方向の一方側C1の端部(一端部)と、のインサート周方向の位置が、互いに略同じである。
なお、上記各インサート周方向の中心B,D,Eは、それぞれ、各インサート周方向の中心を通りインサート軸方向に延びる中心線B,D,E、または単に、各インサート周方向の中心線B,D,Eと言い換えてもよい。
【0080】
図12及び図13に示すように、貫通孔35は、切削インサート3をインサート軸方向に貫通する。貫通孔35は、切削インサート3の内部をインサート軸方向に延び、板面31,32の各中央部に開口する。貫通孔35は、インサート中心軸Aを中心とする多段円孔状である。貫通孔35のインサート軸方向の両端部つまり一対の開口部の内径は、貫通孔35のインサート軸方向の中央部の内径よりも大きい。
【0081】
〔固定部材〕
図8及び図9に示すように、固定部材4は、例えば、クランプネジ等である。固定部材4は、雄ネジ部を有する。固定部材4は、切削インサート3の貫通孔35に挿入される。固定部材4の雄ネジ部は、インサート取付座21の雌ネジ孔21bの雌ネジ部に螺着される。これにより固定部材4は、切削インサート3をインサート取付座21に固定する。
【0082】
〔切削インサートのインサート取付座への装着姿勢など〕
次に、切削インサート3が固定部材4によりインサート取付座21に固定された状態における装着姿勢、配置等を含む各構成について、説明する。
【0083】
図1図5に示すように、インサート取付座21に配置された切削インサート3の一対の板面31,32のうち、一方の板面(表面)31は、工具回転方向Tを向き、他方の板面(裏面)32は、反工具回転方向を向く。特に図示しないが、インサート取付座21に配置された切削インサート3のインサート中心軸Aは、工具回転方向Tへ向かうに従い工具軸方向の先端側に向けて延びる(図4参照)。
【0084】
図8及び図9に示すように、インサート取付座21の底面21aには、他方の板面32の取付面31aが接触する。インサート取付座21の一対の着座面21c,21dには、拘束面36がそれぞれ接触する。
【0085】
図4に示すように、切削インサート3がインサート取付座21に装着された状態で、第1拘束面36Aは、工具回転方向Tに平面部36aが配置され、反工具回転方向に傾斜面部36bが配置される。また、第2拘束面36Bは、工具回転方向Tに傾斜面部36bが配置され、反工具回転方向に平面部36aが配置される。
【0086】
図8に示すように、一対の着座面21c,21dのうち、外側着座面21cは、拘束面36の平面部36a及び傾斜面部36bのうち一方と接触し、本実施形態では平面部36aと接触する。詳しくは、外側着座面21cは、複数の第1拘束面36Aのうち、1つの第1拘束面36Aの平面部36aと接触する。
【0087】
図9に示すように、一対の着座面21c,21dのうち、内側着座面21dは、拘束面36の平面部36a及び傾斜面部36bのうち他方と接触し、本実施形態では傾斜面部36bと接触する。詳しくは、内側着座面21dは、複数の第1拘束面36Aのうち、前記1つの第1拘束面36Aとは別の第1拘束面36Aの傾斜面部36bと接触する。
【0088】
図5に示すように、インサート取付座21に配置された切削インサート3の切刃34は、工具本体2から工具軸方向の先端側及び工具径方向の外側に出っ張る。つまり切刃34は、工具本体2の先端面よりも工具軸方向の先端側に突出して配置される部分と、工具本体2の外周面よりも工具径方向の外側に突出して配置される部分と、を有する。
【0089】
具体的に、本実施形態では、切刃34が有する複数の凸曲線刃34aのうち、1つの凸曲線刃34aが、工具本体2から工具軸方向の先端側かつ工具径方向の外側に出っ張る。切削加工時には、切刃34のうち前記1つの凸曲線刃34aが、被削材Wに切り込む。以下では、前記1つの凸曲線刃34aを、所定の凸曲線刃34aと呼ぶ。
【0090】
所定の凸曲線刃34aは、工具軸方向の先端部かつ工具径方向の外端部に配置される。所定の凸曲線刃34aは、そのインサート周方向の一方側C1の端部つまり一端部が、切刃34において最も工具軸方向の先端側に位置する。また、所定の凸曲線刃34aは、そのインサート周方向の他方側C2の端部つまり他端部が、切刃34において最も工具径方向の外側に位置する。
【0091】
また、インサート取付座21に配置された切削インサート3の複数の突部33bのうち、工具軸方向の先端部に配置される1つの突部33b(以下、所定の突部33bと呼ぶ)は、外周面33において最も工具軸方向の先端側に位置する。
すなわち、所定の凸曲線刃34aのインサート周方向の一方側C1の端部(一端部)と、所定の突部33bとは、インサート周方向において略同じ位置に配置される。
【0092】
〔本実施形態による作用効果〕
本実施形態の刃先交換式ラジアスエンドミル10では、切削加工時に、切削インサート3の切刃34のうち、工具軸方向の先端部かつ工具径方向の外端部に位置する所定の凸曲線刃34a(外側コーナ)が、被削材Wに切り込んでいく。このとき、切削インサート3が切削により受ける力(切削抵抗)は、図5に示すように、工具径方向の内側へ向かう分力F1と、工具軸方向の後端側へ向かう分力F2と、を含む。前記各分力F1,F2の合力F3の向きは、工具中心軸Oに対して傾斜した方向となる。具体的に、この合力F3の向きは、図5に示すように工具回転方向Tからインサート取付座21を正面に見て、所定の凸曲線刃34a(被削材Wの切削部位)から工具径方向の内側へ向かうに従い工具軸方向の後端側に向かう傾斜方向となる。
【0093】
なお詳しくは、工具回転方向Tからインサート取付座21または切削インサート3のすくい面31b(表面31)を正面に見て、前記合力F3の向きは、被削材Wの切込み量の最上点と切刃34との交点(集中荷重点)Pを通る切刃34の接線Lに対して、直交する方向となる。
【0094】
本実施形態の刃先交換式ラジアスエンドミル10によれば、図6に示すように、外側着座面21cと工具中心軸O(仮想直線O´)との間に形成される第1傾斜角θ1が、内側着座面21dと工具中心軸O(仮想直線O´)との間に形成される第2傾斜角θ2よりも大きくされている。したがって、前記合力F3の向きに対して外側着座面21cが傾斜する角度αと、前記合力F3の向きに対して内側着座面21dが傾斜する角度βとを、互いに近似した値または同一の値とすることができる。
【0095】
このため、切削加工時に、切削インサート3が一対の着座面21c,21dによって略均等に支持され、切削インサート3に対してインサート周方向への回転力が作用しにくくされている。したがって、切削インサート3のインサート取付座21への着座安定性が安定して高められる。そして、切削インサート3による加工精度が良好に維持され、かつ切削インサート3の工具寿命も延長する。
【0096】
なお、切削インサート3の切刃34のうち、工具軸方向の先端部かつ工具径方向の内端部に位置する別の凸曲線刃34a(内側コーナ)を用いて、被削材にランピング加工を施す場合には、工具回転方向Tからインサート取付座21を正面に見て、切削インサート3が切削により受ける図示しない合力の向きが、外側着座面21cが延びる方向に対して、略垂直な方向とされる。
このため、ランピング加工時においても、インサート取付座21が切削インサート3を安定して支持することができ、切削インサート3の着座安定性が向上する。
【0097】
また本実施形態では、切刃34が複数の凸曲線刃34aを有しており、切削加工時には、工具軸方向の先端部かつ工具径方向の外端部に位置する所定の凸曲線刃34a(外側コーナ)が、被削材Wに切り込んでいく。所定の凸曲線刃34aのインサート周方向の一端部は、工具軸方向の最先端に位置しており、被削材Wの加工面を仕上げ加工する仕上げ刃として機能する。また、所定の凸曲線刃34aのインサート周方向の一端部以外の部分は、被削材Wの加工面に大きく切り込んで切屑生成に主な役割を果たす主切刃として機能する。
上記構成によれば、所定の凸曲線刃34aのインサート周方向の各位置で切刃34を安定して機能させることができる。
【0098】
また本実施形態では、切削インサート3が有する複数の突部33bのうち、工具軸方向の先端部に配置される所定の突部33bは、外周面33において最も工具軸方向の先端側に位置する。
この場合、切刃34のうち工具軸方向の最先端に位置する部分(所定の凸曲線刃34aのインサート周方向の一端部)の工具回転方向Tとは反対側(反工具回転方向)に、所定の突部33bが配置される。すなわち、切削インサート3の工具軸方向の最先端位置での肉厚が確保される。切削インサート3の工具軸方向の最先端位置での強度を高めることができる。
【0099】
また本実施形態では、複数の拘束面36がインサート周方向に等ピッチで並び、複数の凸曲線刃34aがインサート周方向に等ピッチで並び、拘束面36のインサート周方向の中心Bと、凸曲線刃34aのインサート周方向の中心Eとが、インサート周方向において互いにずらされており、かつ、インサート周方向に隣り合う一対の拘束面36間の中心(突部33bのインサート周方向の中心)Dと、凸曲線刃34aのインサート周方向の中心Eとが、インサート周方向において互いにずらされている。
本実施形態の刃先交換式ラジアスエンドミル10では、上述したように、外側着座面21cの第1傾斜角θ1と内側着座面21dの第2傾斜角θ2とが互いに異なるため、凸曲線刃34aのインサート周方向の中心Eが、拘束面36のインサート周方向の中心B、及び、インサート周方向に隣り合う一対の拘束面36間の中心Dと、それぞれインサート周方向にずらされることで、切削加工に用いられる凸曲線刃34aを、効果的に機能させることができる。
【0100】
また本実施形態では、外側着座面21cが、拘束面36の平面部36a及び傾斜面部36bのうち一方(本実施形態では平面部36a)と接触し、内側着座面21dが、拘束面36の平面部36a及び傾斜面部36bのうち他方(本実施形態では傾斜面部36b)と接触する。
この場合、外側着座面21cまたは内側着座面21dが平面部36aと接触することにより、インサート取付座21に対して切削インサート3をインサート周方向に容易に位置決めすることができ、かつ、切削加工時に切削インサート3がインサート周方向に回動することが抑制される。
また、外側着座面21cまたは内側着座面21dが傾斜面部36bを押さえることにより、前述の平面部36aと同様の効果が得られ、かつ、切削加工時に切削インサート3が切削抵抗を受けたときに、インサート取付座21に対する切削インサート3の浮き上がりが抑制される。
【0101】
また本実施形態では、複数の拘束面36が第1拘束面36Aと第2拘束面36Bとを含み、第1拘束面36Aと第2拘束面36Bとは、インサート周方向に交互に配置される。
この場合、前述の作用効果を奏しつつ、切削インサート3を表裏反転対称形状の両面タイプとすることができる。具体的に、切削インサート3を表裏反転させてインサート取付座21に取り付けた場合には、一対の着座面21c,21dが、一対の第2拘束面36Bのうち一方の第2拘束面36Bの平面部36aと、他方の第2拘束面36Bの傾斜面部36bとに接触することで、前述と同様の作用効果が得られる。
【0102】
また本実施形態では、第1傾斜角θ1が、60°以上75°以下である。また第2傾斜角θ2が、15°以上30°以下である。また第1傾斜角θ1と第2傾斜角θ2との差(θ1-θ2)が、30°以上60°以下である。
第1傾斜角θ1が60°以上とされたり、第2傾斜角θ2が30°以下とされたり、差(θ1-θ2)が30°以上とされたりすることで、前記合力F3の向きに対して外側着座面21cが傾斜する角度αと、前記合力F3の向きに対して内側着座面21dが傾斜する角度βとを、より安定して互いに近づけることができる。
また、第1傾斜角θ1が75°以下とされたり、第2傾斜角θ2が15°以上とされたり、差(θ1-θ2)が60°以下とされたりすることで、外側着座面21cの工具中心軸Oに対する傾きが大きくなり過ぎたり、内側着座面21dの工具中心軸Oに対する傾きが小さくなり過ぎたりすることが抑制されて、切削インサート3が一対の着座面21c,21dによって略均等に支持されるという前述の作用効果が、安定して奏功される。
【0103】
〔本発明に含まれるその他の構成〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。なお、変形例の図示においては、前述の実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付し、下記では主に異なる点について説明する。
【0104】
前述の実施形態では、外側着座面21cが、内側着座面21dよりも工具回転方向Tに位置する例を挙げたが、これに限らない。
図14は、前述の実施形態で説明した刃先交換式ラジアスエンドミル10の第1変形例の一部(外側着座面21c近傍)を示す側面図であり、図15は、刃先交換式ラジアスエンドミル10の第1変形例の一部(内側着座面21d近傍)を示す下面図である。
【0105】
図14及び図15に示す第1変形例では、外側着座面21cが、内側着座面21dよりも工具回転方向Tとは反対側(反工具回転方向)に位置する。
そして、図14に示すように、外側着座面21cは、拘束面36の平面部36a及び傾斜面部36bのうち一方と接触し、この第1変形例では傾斜面部36bと接触する。詳しくは、外側着座面21cは、複数の第1拘束面36Aのうち、1つの第1拘束面36Aの傾斜面部36bと接触する。
【0106】
また図15に示すように、内側着座面21dは、拘束面36の平面部36a及び傾斜面部36bのうち他方と接触し、この第1変形例では平面部36aと接触する。詳しくは、内側着座面21dは、複数の第1拘束面36Aのうち、前記1つの第1拘束面36Aとは別の第1拘束面36Aの平面部36aと接触する。
この第1変形例においても、前述の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0107】
前述の実施形態では、切削インサート3の拘束面36が、平面部36aと、傾斜面部36bと、を有する例を挙げたが、これに限らない。
図16は、前述の実施形態で説明した刃先交換式ラジアスエンドミル10の第2変形例が備える切削インサート3を示す斜視図であり、図17は、この第2変形例の切削インサート3のインサート中心軸Aに沿う断面図(縦断面図)である。
【0108】
図16及び図17に示す第2変形例では、切削インサート3の拘束面36が、インサート軸方向に並ぶ一対の傾斜面部36bを有している。一対の傾斜面部36bは、インサート軸方向の表面側に配置される一方の傾斜面部36baと、インサート軸方向の裏面側に配置される他方の傾斜面部36bbと、を有する。一方の傾斜面部36baは、他方の傾斜面部36bbからインサート軸方向に離れるに従い、インサート径方向の外側に向けて延びる。他方の傾斜面部36bbは、一方の傾斜面部36baからインサート軸方向に離れるに従い、インサート径方向の外側に向けて延びる。
【0109】
特に図示しないが、この切削インサート3がインサート取付座21に装着された状態において、一方の傾斜面部36baは、工具回転方向Tに配置され、他方の傾斜面部36bbは、工具回転方向Tとは反対側に配置される。
外側着座面21cは、一方の傾斜面部36baと接触し、内側着座面21dは、他方の傾斜面部36bbと接触する。ただしこれに限らず、内側着座面21dが一方の傾斜面部36baと接触し、外側着座面21cが他方の傾斜面部36bbと接触してもよい。
【0110】
この第2変形例では、外側着座面21cまたは内側着座面21dが一方の傾斜面部36baと接触することにより、インサート取付座21に対して切削インサート3をインサート周方向に容易に位置決めすることができ、かつ、切削加工時に切削インサート3がインサート周方向に回動することが抑制される。
また、外側着座面21cまたは内側着座面21dが他方の傾斜面部36bbを押さえることにより、前述の一方の傾斜面部36baと同様の効果が得られ、かつ、切削加工時に切削インサート3が切削抵抗を受けたときに、インサート取付座21に対する切削インサート3の浮き上がりが抑制される。
【0111】
前述の実施形態では、切削インサート3が表裏反転対称形状の両面タイプである例を挙げたが、これに限らない。切削インサート3は、非表裏反転対称形状の片面タイプであってもよい。
【0112】
特に図示しないが、本発明は、前述の実施形態とは勝手の異なる刃先交換式ラジアスエンドミルにも適用可能である。
具体的に、前述の実施形態では、図2に示すように工具軸方向の先端側から工具本体2を見て、工具中心軸Oを中心とする反時計回りの回転方向が工具回転方向Tに相当し、時計回りの回転方向が反工具回転方向に相当する例を挙げたが、これに限らない。すなわち、工具軸方向の先端側から工具本体2を見て、工具中心軸Oを中心とする時計回りの回転方向が工具回転方向Tに相当し、反時計回りの回転方向が反工具回転方向に相当することとしてもよい。この場合、図11(a)のようにインサート軸方向の表面側から切削インサート3を見て、インサート中心軸Aを中心とする反時計回りの回転方向がインサート周方向の一方側C1に相当し、時計回りの回転方向がインサート周方向の他方側C2に相当することとなる。
【0113】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態及び変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の刃先交換式ラジアスエンドミルによれば、切削インサートのインサート取付座への着座安定性を安定して高めることができる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0115】
2…工具本体
3…切削インサート
10…刃先交換式ラジアスエンドミル
21…インサート取付座
21c…外側着座面(着座面)
21d…内側着座面(着座面)
31…一方の板面(表面)
32…他方の板面(裏面)
33…外周面
33b…突部
34…切刃
34a…凸曲線刃
36…拘束面
36a…平面部
36b…傾斜面部
36ba…一方の傾斜面部
36bb…他方の傾斜面部
36A…第1拘束面
36B…第2拘束面
A…インサート中心軸
B…拘束面のインサート周方向の中心
D…インサート周方向に隣り合う一対の拘束面間のインサート周方向の中心(突部のインサート周方向の中心)
E…凸曲線刃のインサート周方向の中心
O…工具中心軸
O´…工具中心軸と平行な仮想直線
T…工具回転方向
θ1…第1傾斜角
θ2…第2傾斜角
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