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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075420
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】溶着構造
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/08 20060101AFI20230524BHJP
   F16B 11/00 20060101ALI20230524BHJP
   F16B 5/08 20060101ALI20230524BHJP
   B29C 65/56 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
B29C65/08
F16B11/00 E
F16B5/08 B
B29C65/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188313
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】右馬 就也
【テーマコード(参考)】
3J001
3J023
4F211
【Fターム(参考)】
3J001FA01
3J001JD11
3J001KA12
3J023CA20
3J023DA03
3J023EA03
4F211TA01
4F211TA06
4F211TC23
4F211TD02
4F211TD15
4F211TN22
4F211TN78
(57)【要約】
【課題】低コスト化することができる溶着構造を提供する。
【解決手段】樹脂材料からなる第1部材3と、樹脂材料からなり、第1部材3に溶着される第2部材5とを備えた溶着構造1において、第1部材3に、第2部材5に向けて突出する突部11を設け、第2部材5に、突部11が挿入される開口13を設け、開口13に、開口13の縁15から突部11の挿入方向に向けて延出され、突部11との当接により弾性変形可能な変形部17を設け、変形部17の先端19を、開口13の縁15より開口13の内部側に配置した。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料からなる第1部材と、
樹脂材料からなり、前記第1部材に溶着される第2部材と、
を備え、
前記第1部材には、前記第2部材に向けて突出する突部が設けられ、
前記第2部材には、前記突部が挿入される開口が設けられ、
前記開口には、前記開口の縁から前記突部の挿入方向に向けて延出され、前記突部との当接により弾性変形可能な変形部が設けられ、
前記変形部の先端は、前記開口の縁より前記開口の内部側に配置されている溶着構造。
【請求項2】
前記突部の先端側には、前記変形部の先端と前記突部の抜け方向に係合可能な係止部が設けられている請求項1に記載の溶着構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶着構造としては、樹脂材料からなる第1部材と、樹脂材料からなり、第1部材に溶着される第2部材とを備えたものが知られている(特許文献1参照)。この溶着構造では、例えば、超音波溶着のように、超音波による振動を利用して、第1部材と第2部材との接合部を溶着させる。
【0003】
このような溶着構造では、第1部材に、第2部材に向けて突出する突部としてのピンが設けられている。第2部材には、ピンが挿入される開口が設けられている。開口は、半円状に形成された部分を対向して配置された一対のブロック部からなる。一対のブロック部は、ピンとの当接によってピンと共に揺動可能なように、蛇腹状の薄肉片持ち部材を介して第2部材に連結されている。
【0004】
このような溶着構造では、ピンを開口に挿入することにより、溶着時における第1部材と第2部材との互いの位置ズレを防止する。溶着時には、ピンと開口との間に発生する振動が、薄肉片持ち部材の変形によって吸収される。このため、溶着時における振動によって、ピンが破損することを防止でき、第1部材と第2部材との位置ズレを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-181999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1の溶着構造では、溶着時における振動を吸収する構造が、蛇腹状の薄肉片持ち部材のように、複雑であり、高コスト化していた。
【0007】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、低コスト化することができる溶着構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態に係る溶着構造は、樹脂材料からなる第1部材と、樹脂材料からなり、前記第1部材に溶着される第2部材とを備え、前記第1部材には、前記第2部材に向けて突出する突部が設けられ、前記第2部材には、前記突部が挿入される開口が設けられ、前記開口には、前記開口の縁から前記突部の挿入方向に向けて延出され、前記突部との当接により弾性変形可能な変形部が設けられ、前記変形部の先端は、前記開口の縁より前記開口の内部側に配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低コスト化することができる溶着構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る溶着構造の第1部材の斜視図である。
図2】本実施形態に係る溶着構造の第1部材の斜視図である。
図3】本実施形態に係る溶着構造の第2部材の斜視図である。
図4】本実施形態に係る溶着構造の第2部材の斜視図である。
図5】本実施形態に係る溶着構造の突部を開口に挿入する前の断面図である。
図6】本実施形態に係る溶着構造の突部を開口に挿入しているときの断面図である。
図7】本実施形態に係る溶着構造の突部を開口に挿入したときの断面図である。
図8】本実施形態に係る溶着構造の振動方向の一側に振動したときの断面図である。
図9】本実施形態に係る溶着構造の振動方向の他側に振動したときの断面図である。
図10】本実施形態に係る溶着構造の第1部材と第2部材とを溶着したときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本実施形態に係る溶着構造について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0012】
図1図10に示すように、本実施形態に係る溶着構造1は、例えば、車体パネルとしての第1部材3と、車両に搭載される搭載部品としての第2部材5との固定に適用される。第1部材3と第2部材5とは、互いに溶着可能な樹脂材料からなる。なお、第1部材3と第2部材5とは、互いに溶着可能な樹脂材料であればよく、同一の樹脂材料でなくてもよい。
【0013】
第1部材3は、例えば、平板状に形成されている。第1部材3の第2部材5と対向する面は、第2部材5に溶着される接合面7となっている。
【0014】
第2部材5は、例えば、筐体状に形成されている。第2部材5の第1部材3と対向する面には、第1部材3の接合面7に溶着される複数の接合部9が、第1部材3側に向けて突出して形成されている。
【0015】
このような第1部材3と第2部材5とは、まず、例えば、超音波溶着装置(不図示)の互いに近接可能で、離間可能な一対の治具台にそれぞれ配置される。次に、一対の治具台を近接するように操作し、第1部材3の接合面7と第2部材5の複数の接合部9とを当接させる。そして、一対の治具台を近接するように操作して、図8図9で示す加圧方向Pに向けて加圧しながら超音波を発生させ、複数の接合部9を接合面7に溶着させる。
【0016】
このような第1部材3と第2部材5との溶着では、超音波によって、第1部材3と第2部材5との間に、例えば、図8図9で示す振動方向Vに高速な振動が発生する。溶着時における振動は、溶着後に、第1部材3と第2部材5との位置ズレを起こすことがあり、取付精度が低下する可能性がある。そこで、第1部材3と第2部材5とには、それぞれ突部11と開口13とが設けられている。
【0017】
突部11は、第1部材3の接合面7から第1部材3と連続する一部材で第2部材5側に向けて突出して形成されている。突部11は、接合面7に沿って延出する板状に形成されている。なお、突部11は、板状に限らず、円柱状、角柱状などであってもよい。加えて、突部11は、1つに限らず、複数設けてもよい。
【0018】
開口13は、第2部材5の第1部材3と対向する壁部を貫通して形成されている。開口13は、突部11を挿入可能なように、一対の長辺部分と一対の短辺部分とを有するように、長方形状に開口されている。開口13の一対の長辺部分の間は、突部11の厚さより広くなるように設定されている。なお、開口13は、長方形状に限らず、突部11が円柱状、角柱状に形成されている場合には、円形状、正方形状などであってもよい。加えて、突部11が複数設けられている場合には、突部11に合わせて、開口13を複数設けてもよい。
【0019】
このような突部11と開口13は、第1部材3と第2部材5とを重ね合わせたときに、突部11が開口13に挿入される。突部11が開口13に挿入された状態では、突部11の周囲(ここでは溶着時における振動方向Vの両側)に、開口13の縁15,15が配置される。開口13に挿入された突部11は、溶着時における振動が発生したとき、振動方向Vの両側に位置する開口13の縁15,15に当接する。突部11と開口13の縁15,15との当接により、溶着後の第1部材3と第2部材5との位置ズレを抑制でき、取付精度を向上することができる。
【0020】
ところで、開口13の縁15,15は、突部11と当接したときに、溶着時における振動を吸収するように変形することがない。このため、突部11には、溶着時における高速な振動によって、開口13の縁15,15との当接を繰り返し行うことにより、変形や破損が生じる可能性がある。突部11に変形や破損が生じると、溶着後の第1部材3と第2部材5との位置ズレが大きくなる可能性がある。そこで、第2部材5には、変形部17が設けられている。
【0021】
変形部17は、第2部材5の開口13の縁15,15にそれぞれ設けられている。変形部17は、開口13の縁15から開口13に対する突部11の挿入方向に向けて第2部材5と連続する一部材で板状に延出されている。変形部17は、開口13の縁15を基端とし、延出方向の先端19を自由端とするように、第2部材5に弾性変形可能に設けられている。変形部17と開口13が形成された壁部との間に形成される角度θは、直角より大きく設定されている。このため、変形部17の先端19は、開口13を正面から見たときに、開口13の縁15より開口13の内部側に配置されている。変形部17の弾性変形力は、溶着時の振動によって、変形部17が弾性変形したときに、突部11と開口13の縁15,15とが当接しないように設定されている。なお、変形部17と開口13が形成された壁部との間に形成される角度θは、例えば、100°に設定されているが、これに限らず、溶着時の振動、変形部17の弾性変形力などを考慮し、適宜選択することができる。
【0022】
このような変形部17は、突部11が開口13に挿入された状態で、先端19が突部11の外面に対して対向して配置される。なお、変形部17の先端19は、突部11が開口13に挿入された状態で、突部11に対して付勢力を付与しながら当接されていてもよい。第1部材3と第2部材5との溶着を開始すると、振動方向V側に向けて振動が発生し、変形部17の先端19と突部11とが当接する。変形部17の先端19と突部11との当接により、変形部17が、振動方向V側に向けて弾性変形し、溶着時における振動を吸収する。このとき、変形部17の弾性変形力の設定により、変形部17が弾性変形しても、突部11が、開口13の縁15,15に当接することがない。このため、変形部17の弾性変形によって、突部11にかかる溶着時の振動を吸収することができ、突部11の変形や破損を防止することができる。従って、溶着後の第1部材3と第2部材5との位置ズレを抑制でき、取付精度を向上することができる。
【0023】
ここで、突部11の先端側には、変形部17,17の先端19,19と、開口13に対する突部11の抜け方向に係合可能な係止部21,21が設けられている。係止部21,21は、突部11の外面から外方に向けて突出し、突部11の先端側から開口13側に向けて拡がるように傾斜されている。係止部21,21の幅は、一方の変形部17が弾性変形状態であり、他方の変形部17が自由状態であるときの変形部17,17の先端19,19の間より広く設定されている。
【0024】
このような係止部21は、突部11を開口13に挿入するとき、変形部17と当接し、変形部17を弾性変形させる。弾性変形された変形部17は、突部11が開口13に完全に挿入されると、係止部21との当接を終了し、復元される。復元された変形部17の先端19は、係止部21と、開口13に対する突部11の抜け方向に対向して配置される。変形部17の先端19と係止部21との係合により、突部11が開口13から抜け出すことがなく、溶着前の状態で、第1部材3と第2部材5とを仮固定することができる。このため、溶着前の第1部材3と第2部材5との位置ズレを抑制でき、取付精度を向上することができる。加えて、係止部21,21の幅は、一方の変形部17が弾性変形状態であり、他方の変形部17が自由状態であるときの変形部17,17の先端19,19の間より広く設定されている。このため、第1部材3と第2部材5の溶着時に、突部11が開口13から抜け出すことがなく、溶着後の第1部材3と第2部材5との位置ズレを抑制でき、取付精度を向上することができる。
【0025】
このような溶着構造1における第1部材3と第2部材5との溶着は、まず、第1部材3と第2部材5とを、超音波溶着装置の一対の治具台にそれぞれ配置する。次に、一対の治具台を近接させ、突部11を開口13に挿入し、第1部材3の接合面7と第2部材5の接合部9とを当接させる。そして、一対の治具台を近接させながら加圧し、超音波による振動によって接合部9を接合面7に溶着させ、第1部材3と第2部材5との溶着を完了する。
【0026】
このような溶着構造1では、樹脂材料からなる第1部材3と、樹脂材料からなり、第1部材3に溶着される第2部材5とを備えている。また、第1部材3には、第2部材5に向けて突出する突部11が設けられている。さらに、第2部材5には、突部11が挿入される開口13が設けられている。また、開口13には、開口13の縁15から突部11の挿入方向に向けて延出され、突部11との当接により弾性変形可能な変形部17が設けられている。そして、変形部17の先端19は、開口13の縁15より開口13の内部側に配置されている。
【0027】
第1部材3の突部11は、第2部材5の開口13に挿入されるので、溶着時における第1部材3と第2部材5との位置ズレを抑制することができ、第1部材3と第2部材5との取付精度を向上することができる。また、開口13には、開口13の縁15から突部11の挿入方向に向けて延出され、突部11との当接により弾性変形可能な変形部17が設けられているので、溶着時における突部11にかかる振動を変形部17の弾性変形によって吸収することができる。さらに、変形部17の先端19は、開口13の縁15より開口13の内部側に配置されているので、溶着時における突部11と開口13の縁15との干渉を抑制することができる。
【0028】
従って、このような溶着構造1では、簡易な構造の変形部17で、溶着時における突部11にかかる振動を吸収し、突部11の変形や破損を抑制することができ、低コスト化することができる。
【0029】
また、突部11の先端側には、変形部17の先端19と突部11の抜け方向に係合可能な係止部21が設けられている。このため、開口13から突部11が抜け出ることがなく、第1部材3と第2部材5との位置ズレを抑制することができ、第1部材3と第2部材5との取付精度を向上することができる。
【0030】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0031】
例えば、本実施形態においては、変形部が、突部に対して、振動方向の両側のみに配置されているが、これに限らず、変形部を、突部の周囲、すなわち開口の縁の全域に配置してもよい。この場合には、簡易な構造の変形部で、溶着時におけるあらゆる方向の振動に対しても、対応することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 溶着構造
3 第1部材
5 第2部材
11 突部
13 開口
15 開口の縁
17 変形部
19 変形部の先端
21 係止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10