(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075433
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】太陽光発電設備の遠隔診断システム
(51)【国際特許分類】
H02S 50/00 20140101AFI20230524BHJP
【FI】
H02S50/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188339
(22)【出願日】2021-11-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】593207765
【氏名又は名称】株式会社アイテス
(71)【出願人】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】戸田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】森田 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】有松 健司
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151JA08
5F151JA27
5F151JA28
5F151KA02
5F151KA04
5F151KA08
5F151KA09
5F251JA08
5F251JA27
5F251JA28
5F251KA02
5F251KA04
5F251KA08
5F251KA09
(57)【要約】
【課題】太陽光発電設備が地理的に広い範囲に散在していても、太陽光発電設備を容易に診断することができるとともに、太陽光発電設備の不具合判定の精度を高めることができる太陽光発電設備の遠隔診断システムを提供する。
【解決手段】太陽電池ストリング30を有する太陽光発電設備3を監視する監視装置9と、監視装置9と通信回線NWを介して接続される診断装置15とを備える太陽光発電設備の遠隔診断システムであって、診断装置15は、太陽光発電設備3に対して夜間に行う監視によって監視装置9から提供される監視データに基づいて太陽光発電設備3の不具合を判定する判定部81と、判定部81の判定結果に関する判定データと、太陽光発電設備3に実際に生じた不具合に関する不具合データとに基づいて機械学習する学習部83とを備えるものとする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池ストリングを有する太陽光発電設備を監視する監視装置と、前記監視装置と通信回線を介して接続される診断装置とを備える太陽光発電設備の遠隔診断システムであって、
前記診断装置は、
前記太陽光発電設備に対して夜間に行う監視によって前記監視装置から提供される監視データに基づいて前記太陽光発電設備の不具合を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に関する判定データと、前記太陽光発電設備に実際に生じた不具合に関する不具合データとに基づいて機械学習する学習部と、
を備える太陽光発電設備の遠隔診断システム。
【請求項2】
前記太陽光発電設備で発電された電気エネルギーを蓄える蓄電装置を備え、
前記監視装置は、前記蓄電装置から供給される電気エネルギーにより作動される請求項1に記載の太陽光発電設備の遠隔診断システム。
【請求項3】
前記監視装置は、前記太陽電池ストリングのアドミタンス、順方向電圧、及び絶縁抵抗のうちの少なくとも一つを監視する請求項1又は2に記載の太陽光発電設備の遠隔診断システム。
【請求項4】
前記監視装置は、前記太陽電池ストリングの順方向電圧を監視し、
前記判定部は、前記順方向電圧に関する監視データと、前記順方向電圧の監視時の気温とに基づいて、前記太陽電池ストリングにおけるバイパスダイオードを有するバイパス回路の開放故障を判定する請求項1又は2に記載の太陽光発電設備の遠隔診断システム。
【請求項5】
前記太陽光発電設備は、前記太陽電池ストリングを複数有するとともに、複数の前記太陽電池ストリングが並列に接続される分散型パワーコンディショナーと、前記太陽電池ストリングの負極側から前記分散型パワーコンディショナーへの電流の流入を防止する逆流防止ダイオードとを有する請求項1~4の何れか一項に記載の太陽光発電設備の遠隔診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池ストリングを有する太陽光発電設備を監視する監視装置と、監視装置と通信回線を介して接続される診断装置とを備える太陽光発電設備の遠隔診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電設備は、家庭の屋根に設置する小規模な家庭用のものから、地域電力をまかなうことができる1メガワット以上の発電量を持つ大規模な産業用のものまで様々なものが存在する。例えば、産業用の太陽光発電設備では、複数の太陽電池パネルが直列に接続されて太陽電池ストリングを構成し、さらに複数の太陽電池ストリングが並列に接続されて太陽電池アレイを構成し、太陽電池アレイで発電された電気エネルギーがパワーコンディショナーに送られる。パワーコンディショナーでは、電力変換等を行って最終的な発電の出力となる。
【0003】
太陽光発電設備においては、不具合が発生していないかを定期的に診断する必要がある。このような診断に用いることができる検査装置として、例えば、太陽電池パネルの配線が集約されている接続箱を介して太陽電池パネルのインピーダンスを測定し、測定したインピーダンスの大きさから太陽電池パネルの断線や劣化等を判定するようにしたものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
太陽光発電設備は、地理的に広い範囲に設置することが想定される。このため、家庭用、産業用の如何に関わらず、太陽光発電設備を効率的に診断することが求められる。
【0006】
しかしながら、特許文献1の検査装置は、太陽光発電設備の接続箱において診断を実施するものであるため、診断を行うに際しては太陽光発電設備が設置された現地での作業が必要であり、太陽光発電設備が地理的に広い範囲に散在する場合、太陽光発電設備の診断に多大な時間と労力とを要し、事業者等にとって負担が極めて大きくなる。
【0007】
また、太陽光発電設備においては、設置工事のミスや、部品の欠陥、長年の使用による経年変化以外に、日射量の変化や、植物の成長による影の形成、飛来物の付着等による特有の外的要因から発電量の低下等の不具合が発生することがある。太陽光発電設備における不具合が、日射量変化等の一時的な外的要因による場合は致し方がないとしても、故障等による永続的な要因の場合は、できるだけ早く部品交換や修理等の対処を施すことが望ましい。
【0008】
しかしながら、太陽光発電設備における不具合が、日射量変化等の一時的な外的要因による影響であるか、故障等による影響であるかを正しく判定することは難しい。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、太陽光発電設備が地理的に広い範囲に散在していても、太陽光発電設備を容易に診断することができるとともに、太陽光発電設備の不具合判定の精度を高めることができる太陽光発電設備の遠隔診断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係る太陽光発電設備の遠隔診断システムの特徴構成は、
太陽電池ストリングを有する太陽光発電設備を監視する監視装置と、前記監視装置と通信回線を介して接続される診断装置とを備える太陽光発電設備の遠隔診断システムであって、
前記診断装置は、
前記太陽光発電設備に対して夜間に行う監視によって前記監視装置から提供される監視データに基づいて前記太陽光発電設備の不具合を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に関する判定データと、前記太陽光発電設備に実際に生じた不具合に関する不具合データとに基づいて機械学習する学習部と、
を備えることにある。
【0011】
本構成の太陽光発電設備の遠隔診断システムによれば、太陽光発電設備を監視する監視装置が通信回線を介して診断装置に接続されているので、太陽光発電設備が地理的に広い範囲に散在していても、太陽光発電設備を容易に診断することができる。また、診断装置における判定部は、太陽光発電設備に対して夜間に行う監視によって監視装置から提供される監視データに基づいて太陽光発電設備の不具合を判定する。これにより、日射量の変化や、植物の成長による影の形成、飛来物の付着等による特有の外的要因の影響を受けることなく、太陽光発電設備の不具合を判定することができる。さらに、診断装置における学習部は、判定部の判定結果に関する判定データと、太陽光発電設備に実際に生じた不具合に関する不具合データとに基づいて機械学習する。これにより、学習部は、実際に生じた不具合に関する不具合データを教師データとして、例えば、判定部での判定アルゴリズムにおいて利用するパラメータを調整することができる。そして、判定部は、パラメータの調整によって更新された判定アルゴリズムに基づいて太陽光発電設備の不具合を判定することができる。従って、太陽光発電設備の不具合判定の精度を高めることができる。
【0012】
本発明に係る太陽光発電設備の遠隔診断システムにおいて、
前記太陽光発電設備で発電された電気エネルギーを蓄える蓄電装置を備え、
前記監視装置は、前記蓄電装置から供給される電気エネルギーにより作動されることが好ましい。
【0013】
本構成の太陽光発電設備の遠隔診断システムによれば、日中において、太陽光発電設備で発電された電気エネルギーが蓄電装置に蓄えられる。夜間において、監視装置は、太陽光発電設備から直接電力の供給を受けることができなくても、蓄電装置から供給される電気エネルギーによって作動される。従って、監視装置は、太陽光発電設備に対する夜間の監視を確実に行うことができる。
【0014】
本発明に係る太陽光発電設備の遠隔診断システムにおいて、
前記監視装置は、前記太陽電池ストリングのアドミタンス、順方向電圧、及び絶縁抵抗のうちの少なくとも一つを監視することが好ましい。
【0015】
本構成の太陽光発電設備の遠隔診断システムによれば、監視装置は、太陽電池ストリングのアドミタンス、順方向電圧、及び絶縁抵抗のうちの少なくとも一つを監視する。監視装置が太陽電池ストリングの出力端子間のアドミタンスを監視することにより、診断装置の判定部は、監視装置から提供されるアドミタンスに関する監視データに基づいて、太陽電池ストリングの経時的な劣化による発電回路の高抵抗化、及び断線、並びに獣害等による偶発的な配線ケーブルの高抵抗化といった不具合の発生を、アドミタンスの変化により適切に診断することができる。監視装置が太陽電池ストリングの出力端子間の順方向電圧を監視することにより、診断装置の判定部は、監視装置から提供される順方向電圧に関する監視データに基づいて、雷害等による突発的なバイパス回路の短絡故障、発電回路の高抵抗化に伴うバイパス回路の長期間の常時通電に起因するバイパス回路の開放故障、及び獣害等により偶発的に発生する配線ケーブルの高抵抗化といった不具合の発生を、順方向電圧の変化により適切に診断することができる。監視装置が太陽電池ストリングの出力端子と接地端子との間の絶縁抵抗を監視することにより、診断装置の判定部は、監視装置から提供される絶縁抵抗に関する監視データに基づいて、太陽電池ストリングの経時的な劣化による絶縁性の低下といった不具合の発生を、絶縁抵抗の変化により適切に診断することができる。
【0016】
本発明に係る太陽光発電設備の遠隔診断システムにおいて、
前記監視装置は、前記太陽電池ストリングの順方向電圧を監視し、
前記判定部は、前記順方向電圧に関する監視データと、前記順方向電圧の監視時の気温とに基づいて、前記太陽電池ストリングにおけるバイパスダイオードを有するバイパス回路の開放故障を判定することが好ましい。
【0017】
本構成の太陽光発電設備の遠隔診断システムによれば、診断装置の判定部は、監視装置から提供される順方向電圧に関する監視データに加えて、バイパス回路に用いられるバイパスダイオードの特性に影響を与える監視時の気温に基づいて、太陽電池ストリングにおけるバイパス回路の開放故障を判定する。これにより、バイパス回路の開放故障の判定精度をより高めることができる。
【0018】
本発明に係る太陽光発電設備の遠隔診断システムにおいて、
前記太陽光発電設備は、前記太陽電池ストリングを複数有するとともに、複数の前記太陽電池ストリングが並列に接続される分散型パワーコンディショナーと、前記太陽電池ストリングの負極側から前記分散型パワーコンディショナーへの電流の流入を防止する逆流防止ダイオードとを有することが好ましい。
【0019】
本構成の太陽光発電設備の遠隔診断システムによれば、太陽光発電設備において、複数の太陽電池ストリングが分散型パワーコンディショナーに並列に接続される。これにより、複数の太陽電池ストリングの回路とパワーコンディショナーとを接続する際に必要とされる接続箱を省略することができ、設備構成の簡素化を図ることができる。また、逆流防止ダイオードは、太陽電池ストリングの負極側から分散型パワーコンディショナーへの電流の流入を防止するので、例えば、検査交流波を太陽電池ストリングの負極側から入力した場合、分散型パワーコンディショナーへの検査交流波の流入が逆流防止ダイオードによって防止される。また、例えば、太陽電池ストリングの出力端子間に電圧を印加する場合、太陽電池ストリングの負極側が高電位、正極側が低電位となるようにすれば、分散型パワーコンディショナーへの電流の流入が逆流防止ダイオードによって防止される。従って、太陽電池ストリングの負極側から検査交流波を入力し、正極側から減衰交流波を出力することにより、太陽電池ストリングのアドミタンスを正確に測定することができる。また、太陽電池ストリングの負極側が高電位、正極側が低電位となるように、太陽電池ストリングの出力端子間に電圧を印加することにより、正確に順方向電圧を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る太陽光発電設備の遠隔診断システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る太陽光発電設備の遠隔診断システムの概略構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、太陽電池アレイとパワーコンディショナーとの接続態様例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、監視装置、診断装置、及び管理者装置の機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、経時的な劣化により太陽電池パネルに発生する不具合の説明図である。
【
図6】
図6は、太陽光発電設備の遠隔診断システムにおける不具合の判定の概念図である。
【
図7】
図7は、監視装置、診断装置、及び管理者装置の間で行われる処理を説明するフローチャートである。
【
図8】
図8は、診断装置の学習部で行われる機械学習の処理を説明するフローチャートである。
【
図9】
図9は、バイパス回路のバイパスダイオード特性に係る順方向電圧と温度(気温)との関係の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、産業用の太陽光発電設備の遠隔診断に対して本発明が適用された例を挙げて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。
【0022】
<太陽光発電設備の遠隔診断システムの全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る太陽光発電設備の遠隔診断システム1の全体構成を示すブロック図である。
図1に示す太陽光発電設備の遠隔診断システム(以下、単に「遠隔診断システム」と称する。)1は、複数の太陽光発電設備3,5,7のそれぞれに対応して付設される複数の監視装置9,11,13と、複数の監視装置9,11,13と公衆通信回線(インターネット等)NWを介して通信可能に接続される診断装置15、及び管理者装置17とを備えている。遠隔診断システム1においては、太陽光発電設備3,5,7を監視する監視装置9,11,13から提供される監視データに基づいて、地理的に広い範囲に設置された複数の太陽光発電設備3,5,7を診断装置15、及び管理者装置17により遠隔で診断・管理するように構成されている。なお、
図1に示す遠隔診断システム1は、一例に過ぎず、遠隔で診断・管理する太陽光発電設備が2基以下、又は4基以上の態様もある。また、
図1に示す遠隔診断システム1は、産業用の太陽光発電設備の遠隔診断に対して本発明が適用された例であるが、家庭用の太陽光発電設備の遠隔診断に対しても本発明の主旨に沿って同様に適用し得る。
【0023】
図1に示す遠隔診断システム1においては、複数の太陽光発電設備3,5,7のうちの、例えば、太陽光発電設備3に関する診断・管理と、その他の残りの太陽光発電設備5,7に関する診断・管理とは、基本的に同様の手法により行われる。そこで、以下においては、複数の太陽光発電設備3,5,7のうちの一つの太陽光発電設備3に関する診断・管理について主に説明することとし、この説明をもって残りの太陽光発電設備5,7に関する診断・管理についても説明を行ったものとする。
【0024】
<太陽光発電設備>
図2は、遠隔診断システム1の概略構成を示す模式図である。
図2において、太陽光発電設備3は、太陽電池アレイ21と、接続箱23と、集中型パワーコンディショナー25Aとを備えている。
【0025】
図2に示す太陽電池アレイ21は、複数(本例では3基)の太陽電池ストリング30を並列に接続して組み合わせたものである。なお、
図2においては、紙面のスペースの関係上、複数の太陽電池ストリング30を重ね合わせるように描いているが、実際には、複数の太陽電池ストリング30は、それぞれが太陽光を受けることができるように、平面的に並べて配置されている。
【0026】
複数の太陽電池ストリング30の出力端子のそれぞれは、接続箱23の並列入力端子に接続されている。接続箱23の出力端子のそれぞれは、集中型パワーコンディショナー25Aの入力端子(直流入力端子)に接続されている。集中型パワーコンディショナー25Aの出力端子(交流出力端子)は、連携用遮断器27を介して商用電力系統29に接続されている。複数の太陽電池ストリング30で発電された直流は、集中型パワーコンディショナー25Aによって交流に変換され、必要に応じて商用電力として利用される。なお、
図2では、太陽電池アレイ21は、3基の太陽電池ストリング30を並列に接続した構成であるが、2基の太陽電池ストリング30を並列に接続した構成であっても、4基以上の太陽電池ストリング30を並列に接続した構成であってよい。
【0027】
<太陽電池ストリング>
太陽電池ストリング30は、複数の太陽電池パネル31が直列に接続されたものである。太陽電池パネル31は、複数の太陽電池セル33が直列に接続された発電回路と、当該発電回路にバイパスダイオード35が並列接続されたバイパス回路37とを有する太陽電池クラスタ39を含む。太陽電池ストリング30の各配線は一対の出力端子P、Nにより接続箱23に接続されている。太陽電池ストリング30は、感電、漏電火災等を防止するために、外郭金属部分が接続され接地端子Eにより接地される。なお、
図2では、太陽電池ストリング30は、2枚の太陽電池パネル31を直列に接続した構成であるが、1枚の太陽電池パネル31で構成したものや、3枚以上の太陽電池パネル31を直列に接続した構成であってよい。
【0028】
<パワーコンディショナー>
集中型パワーコンディショナー25Aは、太陽電池アレイ21によって発電された直流電力を交流電力に変換すると共に、歪みの少ない正弦波を生成する。集中型パワーコンディショナー25Aは、MPPT(最大電力点追従)機能を有し、太陽電池アレイ21から電力を効率よく取り出すことができる。
図2に示す例では、比較的変換効率が高い集中型パワーコンディショナー25Aを用いているが、これに限定されるものではなく、ハンドリングに優れると共に故障による発電への影響が分散される分散型パワーコンディショナー(マルチストロング型パワーコンディショナー)25B(
図3(b)及び(c)参照)を用いることもできる。
【0029】
図3は、太陽電池アレイ21とパワーコンディショナー25A,25Bとの接続態様例を示す模式図である。
図3(a)は、パワーコンディショナー25Aが集中型であり、接続箱23を用いる場合の接続態様例を示す図である。
図3(b)は、パワーコンディショナー25Bが分散型であり、点検箱50を用いる場合の接続態様例を示す図である。
図3(c)は、パワーコンディショナー25Bが分散型であり、点検箱50を用いない場合の接続態様例を示す図である。
【0030】
図3(a)には、太陽電池アレイ21と集中型パワーコンディショナー25Aとを接続箱23を用いて接続する
図2に示す接続態様の一例が示されている。
図3(a)に示すように、接続箱23は、箱本体41と、回路を開閉する直流開閉器43と、太陽電池ストリング30の負極側から集中型パワーコンディショナー25Aへの電流の流入を防止する逆流防止ダイオード45とを備え、箱本体41の内部に、太陽電池ストリング30の設置基数に応じた所要の直流開閉器43、及び逆流防止ダイオード45が組み込まれて構成されている。
【0031】
図3(a)において、太陽電池アレイ21を構成する複数(本例では3基)の太陽電池ストリング30の負極側それぞれの配線は、直流開閉器43、及び逆流防止ダイオード45を介して一出力に纏められて端子台の出力端子Nに接続され、正極側のそれぞれの配線は、直流開閉器43を介して一出力に纏められて端子台(図示省略)の出力端子Pに接続されている。出力端子P、及び出力端子Nのそれぞれは、集中型パワーコンディショナー25Aの入力端子に接続されている。
【0032】
図3(a)に示す接続態様においては、例えば、検査交流波を太陽電池ストリング30の負極側(出力端子N側)から入力した場合、より具体的には太陽電池ストリング30の負極側において、太陽電池ストリング30から逆流防止ダイオード45に至る電路の途中から入力した場合、集中型パワーコンディショナー25Aへの検査交流波の流入が逆流防止ダイオード45によって防止される。また、太陽電池ストリングの出力端子P,N間に電圧を印加する場合、太陽電池ストリング30の負極側(出力端子N側)が高電位、正極側(出力端子P側)が低電位となるようにすれば、集中型パワーコンディショナー25Aへの電流の流入が逆流防止ダイオード45によって防止される。従って、太陽電池ストリング30の負極側(出力端子N側)から検査交流波を入力し、正極側(出力端子N側)から減衰交流波を出力することにより、太陽電池ストリング30のアドミタンスを正確に測定することができる。また、太陽電池ストリング30の負極側(出力端子N側)が高電位、正極側(出力端子N側)が低電位となるように、太陽電池ストリング30の出力端子P,N間に電圧を印加することにより、正確に順方向電圧を測定することができる。
【0033】
図3(b)には、太陽電池アレイ21と分散型パワーコンディショナー25Bとを点検箱50を用いて接続する接続態様の一例が示されている。
図3(b)に示すように、点検箱50は、箱本体51と、回路を開閉する直流開閉器43と、太陽電池ストリング30の負極側から分散型パワーコンディショナー25Bへの電流の流入を防止する逆流防止ダイオード45とを備え、箱本体51の内部に、太陽電池ストリング30の設置基数に応じた所要の直流開閉器43、及び逆流防止ダイオード45が組み込まれて構成されている。
【0034】
図3(b)において、太陽電池アレイ21を構成する複数(本例では3基)の太陽電池ストリング30の負極側のそれぞれの配線は、直流開閉器43、及び逆流防止ダイオード45を介して分散型パワーコンディショナー25Bの入力端子に接続され、正極側のそれぞれの配線は、直流開閉器43を介して分散型パワーコンディショナー25Bの入力端子に接続されている。
【0035】
図3(b)に示す接続態様においては、例えば、検査交流波を太陽電池ストリング30の負極側(出力端子N側)から入力した場合、より具体的には太陽電池ストリング30の負極側において、太陽電池ストリング30から逆流防止ダイオード45に至る電路の途中から入力した場合、分散型パワーコンディショナー25Bへの検査交流波の流入が逆流防止ダイオード45によって防止される。また、太陽電池ストリング30の出力端子P,N間に電圧を印加する場合、太陽電池ストリング30の負極側(出力端子N側)が高電位、正極側(出力端子P側)が低電位となるようにすれば、分散型パワーコンディショナー25Bへの電流の流入が逆流防止ダイオード45によって防止される。従って、太陽電池ストリング30の負極側(出力端子N側)から検査交流波を入力し、正極側(出力端子P側)から減衰交流波を出力することにより、太陽電池ストリング30のアドミタンスを正確に測定することができる。また、太陽電池ストリング30の負極側(出力端子N側)が高電位、正極側(出力端子P側)が低電位となるように、太陽電池ストリング30の出力端子間に電圧を印加することにより、正確に順方向電圧を測定することができる。
【0036】
図3(c)には、太陽電池アレイ21と分散型パワーコンディショナー25Bとを、点検箱50(
図3(b)参照)を用いることなく接続する接続態様の一例が示されている。
図3(c)に示すように、太陽電池アレイ21を構成する複数(本例では3基)の太陽電池ストリング30の負極側のそれぞれの配線は、太陽電池ストリング30の負極側から分散型パワーコンディショナー25Bへの電流の流入を防止する逆流防止ダイオード45を介して分散型パワーコンディショナー25Bの入力端子に接続され、正極側のそれぞれの配線は、分散型パワーコンディショナー25Bの入力端子に直接接続されている。太陽電池ストリング30の負極側と逆流防止ダイオード45との間の電路において、太陽電池ストリング30の負極側の配線には、当該配線から分岐するように測定用配線53が接続されている。太陽電池ストリング30の正極側と分散型パワーコンディショナー25Bの入力端子との間の電路において、太陽電池ストリング30の正極側の配線には、当該配線から分岐するように測定用配線55が接続されている。測定用配線53,55は、別途設けられる収納箱60に収納された、後述する測定部9b等を構成する回路基板63に接続されている。
【0037】
図3(c)に示す接続態様において、例えば、検査交流波を測定用配線53から入力した場合、分散型パワーコンディショナー25Bへの検査交流波の流入が逆流防止ダイオード45によって防止される。また、太陽電池ストリング30の出力端子P,N間に電圧を印加する場合、測定用配線53側が高電位、測定用配線55側が低電位となるようにすれば、分散型パワーコンディショナー25Bへの電流の流入が逆流防止ダイオード45によって防止される。従って、測定用配線53から検査交流波を入力し、測定用配線55から減衰交流波を出力することにより、太陽電池ストリング30のアドミタンスを正確に測定することができる。また、測定用配線53側が高電位、測定用配線55側が低電位となるように、電圧を印加することにより、正確に順方向電圧を測定することができる。
【0038】
なお、上述した
図3(b)に示す接続態様では、太陽電池ストリング30の設置基数に応じた所要の開閉器43を箱本体51の内部に収納する必要があるとともに、箱本体51の入力側、及び出力側に太陽電池ストリング30の設置基数に応じた所要の配線ケーブルを接続する必要があるため、点検箱50が大型化する傾向にある。また、
図3(b)に示す接続態様では、複数の太陽電池ストリング30のうちの測定対象の太陽電池ストリング30に対し後述する測定部9bにより測定を行う際に、開閉器43の開閉操作により、複数の太陽電池ストリング30のうちの測定対象の太陽電池ストリング30の回路を閉じ、測定対象外の太陽電池ストリング30の回路を開く必要がある。これに対し、
図3(c)に示す接続態様では、太陽電池ストリング30の負極側のそれぞれの配線から分岐するように測定用配線53が接続され、及び太陽電池ストリング30の正極側のそれぞれの配線から分岐するように測定用配線55が接続され、測定用配線53,55が、別途設けられる収納箱60に収納された、後述する測定部9b等を構成する回路基板63に接続される構成とされる。このような構成であれば、開閉器43を用いなくても、複数の太陽電池ストリング30のうちの任意の太陽電池ストリング30に対し後述する測定部9bにより測定を行うことができる。このため、
図3(b)に示す接続態様では必要とされる、太陽電池ストリング30の設置基数に応じた所要の開閉器43が不要になり、これに伴い所要の開閉器43を収納するための箱本体51も不要になる。従って、
図3(c)に示す接続態様によれば、
図3(b)に示す接続態様よりも、装置構成の簡素化、及びコンパクト化を図ることができる。
【0039】
<蓄電装置>
図2に示すように、監視装置9には、太陽光発電設備3で発電された電気エネルギーの一部を蓄える蓄電装置65が付設されている。蓄電装置65は、詳細図示による説明は省略するが、主として、蓄電池と充放電コントローラとにより構成されている。蓄電池の種類は特に限定されないが、例えば、リチウムイオン電池や鉛電池を用いることができる。充電コントローラは、バッテリーマネジメントユニットとしての機能を有し、蓄電池の安全性やバランスの制御、及び電圧制御を行う。そのため、充電コントローラは、DC/DCコンバータを含み、太陽電池アレイ21の高い出力電圧を蓄電池の低い入力電圧まで降圧するとともに、蓄電池の出力電圧を監視装置9が必要とする電圧にまで調圧する機能を有している。
【0040】
日中において、蓄電装置65には、太陽光発電設備3で発電された電気エネルギーが蓄えられる。夜間において、監視装置9は、太陽光発電設備3から直接電力の供給を受けることができなくても、蓄電装置65から供給される電気エネルギーによって作動される。従って、監視装置9は、太陽光発電設備3に対する夜間の監視を確実に行うことができる。なお、本例では、蓄電装置65から供給される電気エネルギーによって監視装置9が作動される例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、商用電源から供給される電気エネルギーによって監視装置9が作動される態様や、蓄電装置65と商用電源とを併用し、蓄電装置65又は商用電源から供給される電気エネルギーによって監視装置9が作動される態様もある。
【0041】
図4は、監視装置9、診断装置15、及び管理者装置17の機能ブロック図である。
【0042】
<監視装置>
図4に示すように、監視装置9は、太陽光発電設備3を監視するものであり、コンピュータを主体に周辺機器が付設されて構成され、所定プログラムが実行されることにより、通信部9a、及び測定部9bのそれぞれの機能が発揮される。
【0043】
通信部9aは、測定部9bにおいて測定した測定値と、自装置(監視装置9)を一意に識別する識別情報とを、公衆通信回線NWを介して診断装置15等へ送信する手段として機能し、ネットワークインターフェースを含んで構成される。
【0044】
測定部9bは、アドミタンス測定部71、順方向電圧測定部73、及び絶縁抵抗測定部75を含む。
【0045】
アドミタンス測定部71は、監視項目の一つである太陽電池ストリング30の出力端子間のアドミタンスを測定する機能を有する。具体的には、アドミタンス測定部71は、太陽電池ストリング30が非発電状態である夜間に、出力端子P、Nの何れか一方の出力端子(
図3(a)に示す例では、出力端子N)から検査交流波を入力し、他方の出力端子(
図3(a)に示す例では、出力端子P)から出力される減衰交流波を計測する。太陽電池ストリング30に入力された検査交流波は、発電回路に通電し、出力端子間のインピーダンスによっていくらか減衰する。この減衰した交流波を検査交流波に対して減衰交流波と称する。ここで、検査交流波に対応する電圧をV0とし、減衰交流波に対応する電圧をV1とし、テスター本体内のインピーダンスをZ1とし、太陽電池ストリング30の出力端子間のインピーダンスをZ2とすると、以下のような分圧の式(1)が成り立つ。
【0046】
【0047】
式(1)から以下の式(2)を導くことができる。
【0048】
【0049】
式(2)において、V0は検査交流波を入力する際に設定される電圧であり、V1は減衰交流波の電圧であり、Z1は既知であるから、式(2)において、V1を計測すれば、太陽電池ストリング30の出力端子間のインピーダンスZ2の値を算出することができる。太陽電池ストリング30の出力端子間のアドミタンスは、このインピーダンスZ2の逆数として算出することができる。
【0050】
順方向電圧測定部73は、監視項目の一つである太陽電池ストリング30のバイパス回路37(
図2参照)における順方向電圧を測定する機能を有する。具体的には、順方向電圧測定部73は、太陽電池ストリング30が非発電状態である夜間に、出力端子Nを高電位、出力端子Pを低電位となるように出力端子間に電圧値を上昇させながら電圧を印加し、電流が流れ出したときの電圧値を順方向電圧として計測する。
【0051】
絶縁抵抗測定部75は、監視項目の一つである太陽電池ストリング30の出力端子P又は出力端子Nと接地端子Eとの間の絶縁抵抗を測定する機能を有する。具体的には、絶縁抵抗測定部75は、太陽電池ストリング30が非発電状態である夜間に、何れかの出力端子(
図3(a)に示す例では、出力端子N)と接地端子Eとの間に電圧を印加し、出力端子-接地端子間に流れる電流を計測することで、絶縁抵抗を算出することができる。
【0052】
<診断装置>
図4に示す診断装置15は、監視装置9からの監視データに基づいて太陽光発電設備3を診断するものであり、コンピュータを主体に周辺機器が付設されて構成され、所定プログラムが実行されることにより、通信部15a、記憶部15b、及び処理部15cのそれぞれの機能が発揮される。
【0053】
通信部15aは、監視装置9の通信部9aから送信された測定部9bによる測定値や、識別情報等を、公衆通信回線NWを介して受信したり、診断結果に関する診断データ等を、公衆通信回線NWを介して管理者装置17等へ送信したりする手段として機能し、ネットワークインターフェースを含んで構成される。
【0054】
記憶部15bは、コンピュータにおけるストレージであり、監視装置9の識別情報と、当該識別情報により識別される監視装置9に接続されている太陽光発電設備3の不具合を判定するための判定基準値とを対応付けた判定基準値データを記憶する。ここで、判定基準値としては、例えば、各監視装置9に接続されている太陽電池ストリング30について、アドミタンス、順方向電圧、及び絶縁抵抗の夫々の閾値を設定することができる。
【0055】
記憶部15bは、太陽光発電設備3に対して夜間に行う監視によって監視装置9から提供されるアドミタンスや、順方向電圧、絶縁抵抗等の測定値を、識別情報に時系列で対応付けた監視データとして記憶する。なお、記憶部15bにおいて監視データを時系列で記憶する場合、判定基準値には、各測定値の初期値に対する比率を用いることができる。各測定値の初期値に対する比率を判定基準値とすることで、予め太陽電池ストリング30毎に判定基準値となる閾値を設定する必要がなく、経時的な要因、及び突発的な要因の何れによる不具合の発生であっても適切に診断することができる。
【0056】
記憶部15bは、監視データに基づいて後述する判定部81が太陽光発電設備3の不具合を判定した結果を、識別情報に時系列で対応付けた、判定部81の判定結果に関する判定データとして記憶する。また、記憶部15bは、太陽光発電設備3に実際に生じた不具合の内容を、識別情報に時系列で対応付けた不具合データとして記憶する。さらに、記憶部15bは、太陽光発電設備3に対してサービス業者が実際に行った点検や修理等の内容を、識別情報に時系列で対応付けた点検・修理データとして記憶する。
【0057】
記憶部15bは、気象データを記憶する。気象データには、例えば、日時と場所を示す情報に関連付けて、太陽光発電設備3が設置されている場所における気温等を含む観測結果を示す情報が含まれている。通信部15aは、気象に関する気象情報を管理する事業者、又は官公庁に設置されているサーバに公衆通信回線NWを介してアクセスし、必要な気象データをダウンロードして記憶部15bに記憶させる。
【0058】
処理部15cは、判定部81、学習部83、及び警告部85を含む。
【0059】
<判定部>
判定部81は、記憶部15bに記憶されている判定基準値データ、及び監視データを読み込み、読み込んだ判定基準値データと監視データとに基づいて、所定の判定アルゴリズムに従い太陽光発電設備3の不具合の有無や内容等を判定する。
【0060】
<学習部>
学習部83は、記憶部15bに記憶されている判定データ、及び不具合データを読み出し、太陽光発電設備3に不具合が発生した可能性があるか否かをより精度良く判定できるようになるよう、機械学習する。
【0061】
警告部85は、判定部81において判定した太陽光発電設備3の不具合に関する警告情報を生成する。通信部15aは、警告部85によって生成された警告情報を、公衆通信回線NWを介して管理者装置17へ送信する。警告情報には、例えば、太陽光発電設備3に接続されている監視装置9の識別情報を時系列で対応付けて、不具合の種類、例えば、太陽電池ストリング30における発電回路の高抵抗化、発電回路の断線、バイパス回路37(
図2参照)の短絡故障、バイパス回路37の開放故障、及び絶縁性の低下、並びに配線ケーブルの高抵抗化等を示す情報を含むものであってもよい。
【0062】
図4に示すように、管理者装置17は、事業者が太陽光発電設備3等を管理するための装置であり、コンピュータを主体に周辺機器が付設されて構成され、所定プログラムが実行されることにより、通信部17a、記憶部17b、及び抽出部17cのそれぞれの機能が発揮される。
【0063】
通信部17aは、診断装置15の通信部15aから送信された警告情報等を、公衆通信回線NWを介して受信する手段として機能し、ネットワークインターフェースを含んで構成される。
【0064】
記憶部17bは、コンピュータにおけるストレージであり、監視装置9の識別情報と監視装置9に接続されている太陽光発電設備3の所在地(住所)とを対応付けた所在地データ、及び太陽光発電設備3のメンテナンス事業者と当該メンテナンス事業者のサービスエリアとを対応付けたサービスエリアデータ等を記憶する。
【0065】
抽出部17cは、通信部17aで受信した警告情報等に含まれる識別情報に基づいて、記憶部17bに記憶された所在地データから対応する所在地を取得し、さらに、この所在地をサービスエリアに含むメンテナンス事業者を、サービスエリアデータから抽出する。
【0066】
通信部17aは、メンテナンス事業者が管理する外部のサーバ(図示省略)へ、修繕依頼情報として、太陽光発電設備3の所在地を通知する。修繕依頼情報はさらに、不具合の種類、例えば、太陽電池ストリング30における発電回路の高抵抗化、発電回路の断線、バイパス回路の短絡故障、バイパス回路の開放故障、及び絶縁性の低下、並びに配線ケーブルの高抵抗化等を示す情報を含むものであってもよい。
【0067】
<不具合事例>
以上に述べたように構成される遠隔診断システム1において、太陽光発電設備3における不具合の一例について説明する。
図5は、経時的な劣化により太陽電池パネル31に発生する不具合の説明図である。
【0068】
発電時の太陽電池パネル31では、
図5(a)において太線矢印で示すように発電回路に通電するが、経時的な劣化の第一段階では、発電回路において太陽電池セル33間を接続する電路等が高抵抗化する。
図5では、破線で囲んだ位置で発電回路の高抵抗化が生じた例を示している。発電回路の高抵抗化が進むと、経時的な劣化の第二段階として、
図5(b)に示すように、発電時に発電回路の破線で囲んだ電路を迂回するように、バイパス回路37に常時通電するようになる。バイパス回路37に通電すると、バイパスダイオード35が発熱する。例えば、バイパスダイオード35の順方向電圧が0.5V、太陽電池パネル31の発電電流が8Aとすると、バイパスダイオード35での消費電力は4Wとなり、この消費電力に応じた発熱が生じる。バイパス回路37の常時通電が長期化すると、日中の発電時のバイパスダイオード35の発熱と、夜間の冷却とにより、バイパスダイオード35付近の半田が膨張伸縮を繰り返し、
図5(c)に示すように、第三段階として、バイパス回路37の断線に至ると考えられる。断線によりバイパス回路37がオープン状態(開放故障)となると、発電回路に通電するが、その結果、第四段階として、高抵抗化した電路が発熱し、
図5(d)に示すように断線に至る。発電回路が断線した状態で発電を継続すると、断線位置でのアーク放電により発火の危険が生じると考えられる。そのため、太陽光発電設備3の管理では、太陽電池ストリング30の発火を未然に防ぐため、経時的な劣化の第一段階(
図5(a)参照)となる発電回路の高抵抗化、第三段階(
図5(c)参照)となるバイパス回路の開放故障、及び第四段階(
図5(d)参照)となる発電回路の断線の発生を診断することが有効であると考えられる。
【0069】
太陽光発電設備3では、経時的な劣化として、太陽電池ストリング30の絶縁性の低下が発生することもある。また、経時的な劣化による不具合の他に、獣害等により発生する隣り合う太陽電池パネル31間又は太陽電池ストリング30と接続箱23との間の配線ケーブルの高抵抗化や、雷害等による突発的なバイパス回路37の短絡故障といった不具合が発生することもある。太陽光発電設備3の管理では、これらの不具合についても診断することが有効であると考えられる。
【0070】
<不具合判定>
図6は、太陽光発電設備の遠隔診断システム1における不具合の判定の概念図である。判定部81(
図4参照)は、記憶部15bに記憶されている判定基準値データ、及び監視データを読み込み、読み込んだ判定基準値データと監視データとに基づいて、所定の判定アルゴリズムに従い太陽光発電設備3に不具合が発生しているか否かを判定する。
図6に示す例では、一日毎に監視装置9から提供される監視データを記憶部15bにおいて時系列で記憶し、判定基準値として測定部9bによる測定値の初期値に対する比率を用いる場合を想定したものであり、出力端子間のアドミタンスの時系列データを実線、出力端子間の順方向電圧の時系列データを破線、出力端子-接地端子間の絶縁抵抗の時系列データを一点鎖線で示している。図中の矢印は、判定部81において不具合が発生していると判定されたときに、管理者装置17へ警告情報が送信され、その後、太陽光発電設備3が修繕されることによって、太陽光発電設備3の機能が回復したことを表わしている。
【0071】
太陽光発電設備3の使用開始後、太陽電池ストリング30の絶縁劣化F1が生じると、絶縁抵抗が徐々に低下する。そこで、判定部81は、受信した絶縁抵抗の初期値に対する比率を、絶縁抵抗に関する判定基準値(例えば、0.6)と比較することで、絶縁劣化F1の発生を診断することができる。この診断では、絶縁抵抗の初期値に対する比率が、判定基準値以下であれば、絶縁劣化F1の不具合が発生していると判定することができる。
【0072】
獣害等により配線ケーブルの高抵抗化F2が生じると、出力端子間の順方向電圧が急激に上昇する。そこで、判定部81は、受信した順方向電圧の初期値に対する比率を、順方向電圧に関する判定基準値(例えば、1.8)と比較することで、配線ケーブルの高抵抗化F2の発生を診断することができる。この診断では、順方向電圧の初期値に対する比率が、判定基準値以上であれば、配線ケーブルの高抵抗化F2の不具合が発生していると判定することができる。また、配線ケーブルの高抵抗化F2が生じると、出力端子間のアドミタンスが急激に低下する。そこで、判定部81によるケーブルの高抵抗化F2の診断では、受信したアドミタンスの初期値に対する比率を、アドミタンスに関する判定基準値(例えば、0.8)と比較してもよい。この診断では、アドミタンスの初期値に対する比率が、判定基準値以下であれば、配線ケーブルの高抵抗化F2の不具合が発生していると判定することができる。
【0073】
雷害等による突発的なバイパス回路37の短絡故障(ショート)F3が生じると、出力端子間の順方向電圧が急激に低下する。そこで、判定部81は、受信した順方向電圧の初期値に対する比率を、順方向電圧に関する判定基準値(例えば、0.8)と比較することで、バイパス回路37のショートF3の発生を診断することができる。この診断では、順方向電圧の初期値に対する比率が、判定基準値以下であれば、バイパス回路37のショートF3の不具合が発生していると判定することができる。
【0074】
太陽電池パネル31の経時的な劣化の第一段階である発電回路の高抵抗化F4が生じると、出力端子間のアドミタンスが徐々に低下する。経時的な劣化が第二段階であるバイパス回路37の常時通電F5まで進行すると、アドミタンスの低下は一旦収まるが、第三段階であるバイパス回路37の開放故障(オープン)F6まで進行することで、アドミタンスは急激に低下する。そこで、判定部81は、受信したアドミタンスの初期値に対する比率を、アドミタンスに関する判定基準値と比較することで、経時的な劣化の第一段階である発電回路の高抵抗化F4、又は第三段階であるバイパス回路37のオープンF6の発生を診断することができる。この診断では、順方向電圧の初期値に対する比率が、判定基準値以下であれば、発電回路の高抵抗化F4、又はバイパス回路のオープンF6の不具合が発生していると判定することができる。ここで、アドミタンスに関する判定基準値を比較的高い値(例えば、0.9)に設定することで、発電回路の高抵抗化F4の発生を診断することができるが、発電回路の高抵抗化F4は経時的な劣化の第一段階であり必ずしも即時の修繕を必要とするものではない。そのため、アドミタンスに関する判定基準値は、バイパス回路37のオープンF6の発生を診断できる程度に比較的低い値(例えば、0.8)に設定することが好ましい。また、太陽電池パネル31の経時的な劣化が第三段階であるバイパス回路37のオープンF6まで進行すると、出力端子間の順方向電圧は急激に上昇する。そこで、判定部81によるバイパス回路37のオープンF6の診断では、受信した順方向電圧の初期値に対する比率を、順方向電圧に関する判定基準値(例えば、1.8)と比較してもよい。この診断では、順方向電圧の初期値に対する比率が、判定基準値以上であれば、バイパス回路37のオープンF6の不具合が発生していると判定することができる。なお、
図6に示していないが、太陽電池パネル31の経時的な劣化がさらに進行し、第四段階である発電回路の断線が生じると、出力端子間のアドミタンスが第三段階であるバイパス回路37のオープンF6の状態よりさらに低下する。そこで、判定部81は、受信したアドミタンスの初期値に対する比率を、アドミタンスに関する判定基準値(例えば、0.1)と比較することで、発電回路の断線の発生を診断することができる。この診断では、アドミタンスの初期値に対する比率が、判定基準値以下であれば、発電回路の断線の不具合が発生していると判定することができる。
【0075】
<各装置の動作タイミング>
図7は、監視装置9、診断装置15、及び管理者装置17の間で行われる処理を説明するフローチャートである。
図7中記号「S」は、ステップを表わす(
図8においても同様)。監視装置9、診断装置15、及び管理者装置17の夫々の動作については、上述した内容と重複するため、その詳細を省略し、ここでは各装置の動作タイミングを説明する。
【0076】
監視装置9では、タイマーを24時間にセットし(S101)、タイマーのタイムアウト発生を待ち受ける(S102)。タイムアウト発生時(S102:YES)に太陽電池ストリング30の電圧を測定(S103)し、発電により電圧が生じている場合(S104:YES)、タイマーを1時間にセットし(S105)、S102において再度タイムアウト発生を待ち受ける。発電による電圧が生じていない場合(S104:NO)、測定部9bにより監視対象を測定し(S106)、測定値、及び自装置の識別情報を通信部9aにより診断装置15へ送信する(S107)。そして、S101~S107の処理を繰り返すことにより、監視装置9は、一日に一度、夜間に監視対象に対し測定部9bによる測定を行い、測定値等を含む監視データを診断装置15へ送信するよう動作する。
【0077】
診断装置15では、監視装置9のS107の動作において送信された監視データ(測定値、識別情報等)を、通信部15aにより受信する(S201)。判定部81は、識別情報に対応する判定基準値を記憶部15bに記憶されている判定基準値データから読み出して取得する(S202)。その後、判定部81において、測定値、及び判定基準値に基づいて不具合が発生しているか否かを判断する(S203)。不具合が発生している場合(S203:YES)、警告部85は、判定部81において判定した太陽光発電設備3の不具合に関する警告情報を生成し、通信部15aは、警告部85によって生成された警告情報を、公衆通信回線NWを介して管理者装置17へ送信する(S204)。不具合が発生していない場合(S203:NO)、S201へ処理を戻す。そして、S201~S204の処理を繰り返すことにより、診断装置15は、一日に一度、検査値を受信し不具合の発生を診断するよう動作する。
【0078】
管理者装置17では、診断装置15のS204の動作において送信された警告情報を、通信部17aにより受信し(S301)、抽出部17cにより、警告情報により示される太陽光発電設備3の所在地を所在地データベースから取得し(S302)、この所在地をサービスエリアに含むメンテナンス事業者を、サービスエリアデータベースから抽出する(S303)。その後、通信部17aにより、抽出したメンテナンス事業者へ、不具合が発生している太陽光発電設備3の所在地を通知する(S304)。そして、S301~S304の処理を繰り返すことにより、管理者装置17は、太陽光発電設備3に不具合が発生したと診断される毎に、メンテナンス事業者へ修繕等を依頼するよう動作する。
【0079】
<機械学習>
図8は、診断装置15の学習部83で行われる機械学習の処理を説明するフローチャートである。学習部83(
図4参照)は、記憶部15bに記憶されている判定データ、及び不具合データを一定期間毎に読み出す(S501)。不具合データには、実際の不具合の有無が含まれており、学習部83は、判定部81による判定結果と実際の不具合の有無とが可及的に合致するように、機械学習を行う。すなわち、学習部83は、実際に生じた不具合に関する不具合データを教師データとして、例えば、判定基準値に関する上限値、下限値、許容範囲等の不具合判定のアルゴリズム中で利用されるパラメータを調整する(S502)。学習部83は、パラメータの調整により、判定部81で用いる判定アルゴリズムを更新する(S503)。
【0080】
本実施形態の遠隔診断システム1によれば、太陽光発電設備3を監視する監視装置9が公衆通信回線NWを介して診断装置15に接続されているので、太陽光発電設備3が地理的に広い範囲に散在していても、太陽光発電設備3を容易に診断することができる。また、診断装置15における判定部81は、太陽光発電設備3に対して夜間に行う監視によって監視装置9から提供される監視データに基づいて太陽光発電設備3の不具合を判定する。これにより、日射量の変化や、植物の成長による影の形成、飛来物の付着等による特有の外的要因の影響を受けることなく、太陽光発電設備3の不具合を判定することができる。さらに、診断装置15における学習部83は、実際に生じた不具合に関する不具合データを教師データとして、判定部81での判定アルゴリズムにおいて利用するパラメータを調整する。これにより、判定部81は、パラメータの調整によって更新された判定アルゴリズムに基づいて太陽光発電設備3の不具合を判定することになり、太陽光発電設備3の不具合判定の精度を高めることができる。
【0081】
さらに、更新された判定アルゴリズムは、太陽光発電設備3以外の太陽光発電設備5,7での診断においても適用される。また、太陽光発電設備5,7での診断結果に基づいて判定アルゴリズムが更新される。こうして、遠隔診断システム1の不具合判定の精度を相乗的に高めることができる。
【0082】
以上、本発明の太陽光発電設備の遠隔診断システムについて、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0083】
(別実施形態)
上記の実施形態においては、監視装置9が、太陽電池ストリング30の順方向電圧を監視し、この監視データに基づいて、診断装置15の判定部81が、太陽電池ストリング30におけるバイパス回路37の開放故障を判定する例を示したが、これに限定されるものではない。判定部81は、監視装置9から提供される順方向電圧に関する監視データに加えて、バイパス回路37に用いられるバイパスダイオード35の特性に影響を与える監視時の気温に基づいて、太陽電池ストリング30におけるバイパス回路37の開放故障を判定するようにしてもよい。これにより、バイパス回路37の開放故障の判定精度をより高めることができる。このことについて、
図9(a)~(c)を参照しつつ以下に詳述する。
【0084】
図9は、バイパス回路37のバイパスダイオード特性に係る順方向電圧と温度(気温)との関係の説明図であり、(a)はバイパス回路37の開放故障がない場合の分布図、(b)はバイパス回路37の開放故障がある場合の分布図、(c)はバイパス回路37の開放故障の判定に係るグラフである。
図9(a)~(c)において、縦軸は、バイパス回路37の順方向電圧の測定値を示し、横軸は、順方向電圧の測定時の気温を示す。
図9(c)において、バイパスダイオード特性基準値ラインLの上方位置に示す上限値閾値ラインLaは、バイパスダイオード特性基準値ラインLに対し順方向電圧が所定値だけ高い水準を示すラインであり、バイパスダイオード特性基準値ラインLの下方位置に示す下限値閾値ラインLbは、バイパスダイオード特性基準値ラインLに対し順方向電圧が所定値だけ低い水準を示すラインである。
【0085】
順方向電圧を測定する夜間においては、日中と異なり、太陽電池ストリング30での発電によるジュール熱の発生がなく、屋外に設置されている太陽電池ストリング30の温度は、気温と略等しい。バイパス回路37のバイパスダイオード35の特性は、温度(気温)に依存するため、バイパスダイオード特性に係る順方向電圧と気温との間に相関関係がある。バイパスダイオード35に異常(バイパス回路37の開放故障)がない場合、
図9(a)に示すように、気温に対して順方向電圧が線形、又はそれから近い値で示される。これに対し、バイパスダイオード35に異常がある場合、
図9(b)に示すように、気温に対して順方向電圧が線形、又はそれから近い値とはならず、ばらついてしまう。
【0086】
図9(a)に示す相関関係から、線形回帰により、
図9(c)に示すように、バイパスダイオード35が正常であるときのバイパスダイオード特性の基準を示すバイパスダイオード特性基準値ラインLを設定する。また、
図9(a)及び(b)に示す相関関係から、
図9(c)に示すように、バイパスダイオード35の異常を判定する上限閾値を示す上限値閾値ラインLa、及び下限閾値を示す下限値閾値ラインLbを設定する。そして、診断装置15における判定部81(
図4参照)は、順方向電圧に関する監視データと、順方向電圧の監視時に対応する、気象データから得られる気温とによって特定される点が、
図9(c)において、上限値閾値ラインLaと下限値閾値ラインLbとの間に存在すれば、バイパス回路37が開放故障していないと判定し、上限値閾値ラインLaの上方、又は下限値閾値ラインLbの下方に存在すれば、バイパス回路37が開放故障していると判定する。このように、バイパスダイオード35の特性に影響を与える監視時の気温をも加味してバイパス回路37の開放故障について判定するので、バイパス回路37の開放故障の判定精度をより高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の太陽光発電設備の遠隔診断システムは、比較的小規模の家庭用の太陽光発電設備や、比較的大規模の産業用の太陽光発電設備を、遠隔で診断・管理する用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 太陽光発電設備の遠隔診断システム
3,5,7 太陽光発電設備
9,11,13 監視装置
15 診断装置
25A 集中型パワーコンディショナー
25B 分散型パワーコンディショナー
30 太陽電池ストリング
45 逆流防止ダイオード
65 蓄電装置
81 判定部
83 学習部
【手続補正書】
【提出日】2022-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池ストリングを有する太陽光発電設備を監視する監視装置と、前記監視装置と通信回線を介して接続される診断装置とを備える太陽光発電設備の遠隔診断システムであって、
前記太陽電池ストリングに接続されるパワーコンディショナーと、
前記太陽電池ストリングの負極側から前記パワーコンディショナーへの電流の流入を防止する逆流防止ダイオードと、
を備え、
前記監視装置は、前記太陽電池ストリングの負極側において前記太陽電池ストリングから前記逆流防止ダイオードに至る電路の途中から検査交流波を入力し、前記太陽電池ストリングの正極側から減衰交流波を出力することで前記太陽電池ストリングのアドミタンスを測定するアドミタンス測定部を備え、
前記診断装置は、
前記太陽光発電設備に対して夜間に行う監視によって前記監視装置から提供される前記アドミタンスに関する監視データに基づいて前記太陽光発電設備の不具合を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に関する判定データと、前記太陽光発電設備に実際に生じた不具合に関する不具合データとに基づいて機械学習する学習部と、
を備える太陽光発電設備の遠隔診断システム。
【請求項2】
前記太陽光発電設備で発電された電気エネルギーを蓄える蓄電装置を備え、
前記監視装置は、前記蓄電装置から供給される電気エネルギーにより作動される請求項1に記載の太陽光発電設備の遠隔診断システム。
【請求項3】
前記監視装置は、前記太陽電池ストリングの順方向電圧、及び絶縁抵抗のうちの少なくとも一つをさらに監視する請求項1又は2に記載の太陽光発電設備の遠隔診断システム。
【請求項4】
前記監視装置は、前記太陽電池ストリングの順方向電圧をさらに監視し、
前記判定部は、前記順方向電圧に関する監視データと、前記順方向電圧の監視時の気温とに基づいて、前記太陽電池ストリングにおけるバイパスダイオードを有するバイパス回路の開放故障を判定する請求項1又は2に記載の太陽光発電設備の遠隔診断システム。
【請求項5】
前記太陽光発電設備は、前記太陽電池ストリングを複数有し、複数の前記太陽電池ストリングが分散型の前記パワーコンディショナーに並列に接続される請求項1~4の何れか一項に記載の太陽光発電設備の遠隔診断システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
図3(a)に示す接続態様においては、例えば、検査交流波を太陽電池ストリング30の負極側(出力端子N側)から入力した場合、より具体的には太陽電池ストリング30の負極側において、太陽電池ストリング30から逆流防止ダイオード45に至る電路の途中から入力した場合、集中型パワーコンディショナー25Aへの検査交流波の流入が逆流防止ダイオード45によって防止される。また、太陽電池ストリングの出力端子P,N間に電圧を印加する場合、太陽電池ストリング30の負極側(出力端子N側)が高電位、正極側(出力端子P側)が低電位となるようにすれば、集中型パワーコンディショナー25Aへの電流の流入が逆流防止ダイオード45によって防止される。従って、太陽電池ストリング30の負極側(出力端子N側)から検査交流波を入力し、正極側(出力端子
P側)から減衰交流波を出力することにより、太陽電池ストリング30のアドミタンスを正確に測定することができる。また、太陽電池ストリング30の負極側(出力端子N側)が高電位、正極側(出力端子
P側)が低電位となるように、太陽電池ストリング30の出力端子P,N間に電圧を印加することにより、正確に順方向電圧を測定することができる。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池ストリングを有する太陽光発電設備を監視する監視装置と、前記監視装置と通信回線を介して接続される診断装置とを備える太陽光発電設備の遠隔診断システムであって、
前記太陽電池ストリングに接続されるパワーコンディショナーと、
前記太陽電池ストリングの負極側から前記パワーコンディショナーへの検査交流波の流入を防止する逆流防止ダイオードと、
を備え、
前記監視装置は、前記太陽電池ストリングが非発電状態である夜間に、前記太陽電池ストリングの負極側において前記太陽電池ストリングから前記逆流防止ダイオードに至る電路の途中から検査交流波を入力し、前記太陽電池ストリングの正極側から減衰交流波を出力することで前記太陽電池ストリングのアドミタンスを測定するアドミタンス測定部を備え、
前記診断装置は、
前記太陽光発電設備に対して夜間に行う監視によって前記監視装置から提供される前記アドミタンスに関する監視データに基づいて前記太陽光発電設備の不具合を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に関する判定データと、前記太陽光発電設備に実際に生じた不具合に関する不具合データとに基づいて機械学習する学習部と、
を備える太陽光発電設備の遠隔診断システム。
【請求項2】
前記太陽光発電設備で発電された電気エネルギーを蓄える蓄電装置を備え、
前記監視装置は、前記蓄電装置から供給される電気エネルギーにより作動される請求項1に記載の太陽光発電設備の遠隔診断システム。
【請求項3】
前記監視装置は、前記太陽電池ストリングの順方向電圧、及び絶縁抵抗のうちの少なくとも一つをさらに監視する請求項1又は2に記載の太陽光発電設備の遠隔診断システム。
【請求項4】
前記監視装置は、前記太陽電池ストリングの順方向電圧をさらに監視し、
前記判定部は、前記順方向電圧に関する監視データと、前記順方向電圧の監視時の気温とに基づいて、前記太陽電池ストリングにおけるバイパスダイオードを有するバイパス回路の開放故障を判定する請求項1又は2に記載の太陽光発電設備の遠隔診断システム。
【請求項5】
前記太陽光発電設備は、前記太陽電池ストリングを複数有し、複数の前記太陽電池ストリングが分散型の前記パワーコンディショナーに並列に接続される請求項1~4の何れか一項に記載の太陽光発電設備の遠隔診断システム。
【請求項6】
複数の前記太陽電池ストリングの負極側のそれぞれの配線は、前記逆流防止ダイオードを介して前記パワーコンディショナーの入力端子に接続され、
複数の前記太陽電池ストリングの正極側のそれぞれの配線は、前記パワーコンディショナーの入力端子に直接接続され、
前記太陽電池ストリングの負極側と前記逆流防止ダイオードとの間の電路において、前記太陽電池ストリングの負極側の配線には、当該配線から分岐するように測定用配線が接続され、
前記太陽電池ストリングの正極側と前記パワーコンディショナーの入力端子との間の電路において、前記太陽電池ストリングの正極側の配線には、当該配線から分岐するように測定用配線が接続され、
前記太陽電池ストリングの負極側の配線に接続される前記測定用配線、及び前記太陽電池ストリングの正極側の配線に接続される前記測定用配線のそれぞれは、前記アドミタンス測定部を構成する回路基板に接続されている請求項5に記載の太陽光発電設備の遠隔診断システム。