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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007546
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】押釦スイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/64 20060101AFI20230112BHJP
   H01H 36/00 20060101ALI20230112BHJP
   H01H 13/702 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
H01H13/64
H01H36/00 Y
H01H13/702
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110445
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】小林 佑輔
【テーマコード(参考)】
5G046
5G206
【Fターム(参考)】
5G046AA02
5G046AB02
5G046AC24
5G046AD02
5G046AD23
5G046AE02
5G206AS20Z
5G206AS27Z
5G206CS04J
5G206CS04K
5G206FS32J
5G206FS32K
5G206FU03
5G206HS17
5G206HU12
5G206HW44
5G206HW54
5G206HW63
5G206KS07
5G206KS15
5G206KS57
5G206KU15
5G206KU23
5G206NS04
(57)【要約】
【課題】
静電容量の変化に対する高い感度およびラバーキーの高い耐久性を兼ね備えた押釦スイッチを提供する。
【解決手段】
本発明は、回路基板15と、キーシート20と、キートップ10とを順に配置した押釦スイッチであって、キーシート20には、ドーム部22と、第1電極24とが備えられ、回路基板15には、キートップ10の回路基板15側への押下に伴うドーム部22の変形によって第1電極24と接触可能な第2電極16が備えられ、キートップ10がドーム部22の先端側に配置され、回路基板15には、平面視におけるキートップ10の外側に備えられる部分であって静電容量の変化を回路基板15の配線に伝達する信号伝達部45が備えられ、ドーム部22とキートップ10との間に位置する静電容量の検知部と、信号伝達部45とを電気的に接続する導電フィルム30を備える押釦スイッチ1に関する。
【選択図】図2C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、
厚さ方向の一方に開口する開口部を1または2以上備えるキーシートと、
キートップと、
を順に配置している押釦スイッチであって、
前記キーシートは、前記開口部の開口側と反対側に備えられ前記回路基板に向かって拡径するドーム部と、前記ドーム部の内側において前記回路基板側に対向する部位に備えられる第1電極と、を備え、
前記回路基板は、前記開口部の内部に、前記キートップの前記回路基板側への押下に伴う前記ドーム部の変形によって前記第1電極と接触可能な第2電極を備え、
前記キートップは、前記ドーム部の先端側に配置され、
前記回路基板は、平面視における前記キートップの外側に備えられる部分であって静電容量の変化を前記回路基板の配線に伝達する信号伝達部を備え、
前記ドーム部と前記キートップとの間に位置する静電容量の検知部と、前記信号伝達部とを電気的に接続する導電フィルムを備えることを特徴とする押釦スイッチ。
【請求項2】
前記キーシートは、前記ドーム部の先端側にヘッド部をさらに備え、
前記導電フィルムは、前記ヘッド部と前記キートップとの間から前記信号伝達部へと延出することを特徴とする請求項1に記載の押釦スイッチ。
【請求項3】
前記ドーム部の拡径部の外縁部から前記信号伝達部までの経路に溝が形成され、前記導電フィルムは、前記溝に沿って配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の押釦スイッチ。
【請求項4】
前記信号伝達部に電気的に接続され、前記キーシートの前記回路基板と反対側の面に露出する導電体を、さらに備え、
前記導電フィルムは、前記導電体を介して前記信号伝達部に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の押釦スイッチ。
【請求項5】
前記導電フィルムは、導電層と絶縁層との積層フィルムであって、前記導電層を前記信号伝達部に向けていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の押釦スイッチ。
【請求項6】
前記導電フィルムは、前記絶縁層と、前記導電層として前記絶縁層を挟む第1導電層および第2導電層とを備える三層構造を有しており、
前記絶縁層は、その長さ方向の途中に、前記絶縁層の厚さ方向に貫通するホールを備え、前記第1導電層と前記第2導電層とは、前記ホールを通じて接続しており、
前記キートップは、前記導電フィルム側と接する側を導電部材とし、
前記導電フィルムは、前記導電部材から前記第1導電層、前記第1導電層から前記ホールを通じて前記第2導電層、さらに前記第2導電層から前記信号伝達部へと通電可能となっていることを特徴とする請求項5に記載の押釦スイッチ。
【請求項7】
前記導電フィルムは、前記キートップからの押圧の負荷と解除によって弾性変形可能な弾性層と、前記弾性層の押圧方向両側を前記導電層で挟んだ構造を有することを特徴とする請求項5に記載の押釦スイッチ。
【請求項8】
前記導電フィルムは、前記ドーム部側と前記信号伝達部側との間を、それら両側に比べて狭い幅に形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の押釦スイッチ。
【請求項9】
前記導電フィルムの前記ドーム側を、当該フィルムの厚さ方向に透光性を有するようにしていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の押釦スイッチ。
【請求項10】
前記キーシートは、前記ドーム部を2以上備え、
前記導電フィルムは、前記ドーム部と前記キートップとの間にそれぞれ備えられ、
2以上の前記導電フィルムの間にグラウンド電極を備えていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の押釦スイッチ。
【請求項11】
前記2以上の前記導電フィルムおよび前記グラウンド電極は絶縁フィルム上に形成されていることを特徴とする請求項10に記載の押釦スイッチ。
【請求項12】
前記キーシートは、前記ドーム部の先端側に、内方に窪む凹部を備え、
前記導電フィルムは、その長さ方向一端に、前記凹部に嵌め込み可能な凸部を備え、
前記導電フィルムは、前記凸部を前記凹部に嵌め込んで、前記キーシートに固定されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の押釦スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押釦スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、押し下げによりスイッチのオンまたはオフを可能とする押下式スイッチの機能と、指等の操作部位の近接または接触によりスイッチのオンまたはオフを可能とする非接触型スイッチの機能とを併せ持つ押釦スイッチが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。押し下げ式スイッチの機能は、例えば、ドーム型のラバーキーの弾性的な動作を通じて、ドーム内にて回路基板側に突出する電極と、回路基板上の電極との電気的接触とその解除によって実現される。また、非接触型スイッチの機能は、例えば、ヒトの指等に代表される操作部位がキートップに近づくまたは接触することによる静電容量の変化を検知して実現される。
【0003】
特許文献1に開示される公知の押下型と静電容量型とを併せ持つ入力装置は、静電容量の検出の誤判定のおそれを排除し、回路構成や制御を簡素化することができ、しかも、操作体により操作を継続しても信号を適切に出力することのできるという特有の効果を発揮し得る優れた装置である。
【0004】
一方、ラバーキー自体を導電ゴムによって構成した静電容量型のスイッチ装置も知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-091803号公報
【特許文献2】特開2007-335374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に開示される公知の入力装置には、さらなる性能の向上が求められている。その性能とは、静電容量の検知感度の向上である。また、特許文献2に開示される公知のスイッチ装置は、導電ゴムのラバーキーを電極とする静電容量型のスイッチ装置である。このため、ラバーキーの耐久性が低いという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の要求に応えると共に上記問題を解決するためになされたものであり、静電容量の変化に対する高い感度およびラバーキーの高い耐久性を兼ね備えた押釦スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る押釦スイッチは、
回路基板と、
厚さ方向の一方に開口する開口部を1または2以上備えるキーシートと、
キートップと、
を順に配置している押釦スイッチであって、
前記キーシートは、前記開口部の開口側と反対側に備えられ前記回路基板に向かって拡径するドーム部と、前記ドーム部の内側において前記回路基板側に対向する部位に備えられる第1電極と、を備え、
前記回路基板は、前記開口部の内部に、前記キートップの前記回路基板側への押下に伴う前記ドーム部の変形によって前記第1電極と接触可能な第2電極を備え、
前記キートップは、前記ドーム部の先端側に配置され、
前記回路基板は、平面視における前記キートップの外側に備えられる部分であって静電容量の変化を前記回路基板の配線に伝達する信号伝達部を備え、
前記ドーム部と前記キートップとの間に位置する静電容量の検知部と、前記信号伝達部とを電気的に接続する導電フィルムを備える。
(2)別の実施形態に係る押釦スイッチにおいて、好ましくは、前記キーシートは、前記ドーム部の先端側にヘッド部をさらに備え、前記導電フィルムは、前記ヘッド部と前記キートップとの間から前記信号伝達部へと延出するようにしても良い。
(3)別の実施形態に係る押釦スイッチにおいて、好ましくは、前記ドーム部の拡径部の外縁部から前記信号伝達部までの経路に溝が形成され、前記導電フィルムは、前記溝に沿って配置されていても良い。
(4)別の実施形態に係る押釦スイッチは、好ましくは、前記信号伝達部に電気的に接続され、前記キーシートの前記回路基板と反対側の面に露出する導電体を、さらに備え、前記導電フィルムは、前記導電体を介して前記信号伝達部に電気的に接続されていても良い。
(5)別の実施形態に係る押釦スイッチにおいて、好ましくは、前記導電フィルムは、導電層と絶縁層との積層フィルムであって、前記導電層を前記信号伝達部に向けていても良い。
(6)別の実施形態に係る押釦スイッチにおいて、好ましくは、前記導電フィルムは、前記絶縁層と、前記導電層として前記絶縁層を挟む第1導電層および第2導電層とを備える三層構造を有しており、
前記絶縁層は、その長さ方向の途中に、前記絶縁層の厚さ方向に貫通するホールを備え、前記第1導電層と前記第2導電層とは、前記ホールを通じて接続しており、
前記キートップは、前記導電フィルム側と接する側を導電部材とし、
前記導電フィルムは、前記導電部材から前記第1導電層、前記第1導電層から前記ホールを通じて前記第2導電層、さらに前記第2導電層から前記信号伝達部へと通電可能となっていても良い。
(7)別の実施形態に係る押釦スイッチにおいて、好ましくは、前記導電フィルムは、前記キートップからの押圧の負荷と解除によって弾性変形可能な弾性層と、前記弾性層の押圧方向両側を前記導電層で挟んだ構造を有しても良い。
(8)別の実施形態に係る押釦スイッチにおいて、好ましくは、前記導電フィルムは、前記ドーム部側と前記信号伝達部側との間を、それら両側に比べて狭い幅に形成されていても良い。
(9)別の実施形態に係る押釦スイッチにおいて、好ましくは、前記導電フィルムの前記ドーム側を、当該フィルムの厚さ方向に透光性を有するようにしても良い。
(10)別の実施形態に係る押釦スイッチにおいて、好ましくは、前記キーシートは、前記ドーム部を2以上備え、前記導電フィルムは、前記ドーム部と前記キートップとの間にそれぞれ備えられ、2以上の前記導電フィルムの間にグラウンド電極を備えていても良い。
(11)別の実施形態に係る押釦スイッチにおいて、好ましくは、前記2以上の前記導電フィルムおよび前記グラウンド電極は絶縁フィルム上に形成されていても良い。
(12)別の実施形態に係る押釦スイッチにおいて、好ましくは、前記キーシートは、前記ドーム部の先端側に、内方に窪む凹部を備え、
前記導電フィルムは、その長さ方向一端に、前記凹部に嵌め込み可能な凸部を備え、
前記導電フィルムは、前記凸部を前記凹部に嵌め込んで、前記キーシートに固定されていても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、静電容量の変化に対する高い感度およびラバーキーの高い耐久性を兼ね備えた押釦スイッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る押釦スイッチの平面図を示す。
図2A図2Aは、図1の押釦スイッチのA-A線断面図を示す。
図2B図2Bは、図1の押釦スイッチのB-B線断面図を示す。
図2C図2Cは、図1の押釦スイッチのC-C線断面図を示す。
図3A図3Aは、図2Aのキーシートの平面図を示す。
図3B図3Bは、図3AのキーシートのD-D線断面図を示す。
図4A図4Aは、図3Aのキーシートの変形例の平面図を示す。
図4B図4Bは、図4AのキーシートのE-E線断面図を示す。
図5図5は、図2Cの導電フィルムの変形例の平面図および側面図を示す。
図6図6は、図2Cの導電フィルムの3種の変形例の各平面図を示す。
図7図7は、図6の導電フィルムの変形例の平面図を示す。
図8A図8Aは、図2Cの導電体の変形例の平面図を示す。
図8B図8Bは、図8Aの導電体のF-F線断面図を示す。
図9図9は、図2Aの回路基板の変形例の平面図および第2電極の拡大図を示す。
図10図10は、押釦スイッチのキートップの1つにヒトの指を近づける状態a、指をそのキートップに接触させた状態b、そのキートップを指で押し込んでドーム部を変形させてスイッチを入力した状態cを、経時的に、図2Aと同様の断面図にて示す。
図11A図11Aは、導電フィルムを回路基板上の信号伝達部に接続する構成の変形例を断面図にて示す。
図11B図11Bは、図11Aに示す変形例と異なる別の変形例を断面図にて示す。
図12図12は、図2Cのキートップを変えた押釦スイッチの図2Cと同視の断面図を示す。
図13図13は、図12の押釦スイッチに好適に使用可能な導電フィルムの平面図および側面図を示す。
図14A図14Aは、導電フィルムの変形例の平面図を示す。
図14B図14Bは、図14Aの導電フィルムを備えた押釦スイッチの図2Aと同視の断面図を示す。
図15A図15Aは、導電フィルムの変形例の平面図およびG-G線断面図を示す。
図15B図15Bは、図15Aの導電フィルムを2つに折りたたんだ状態の平面図およびH-H線断面図を示す。
図16A図16Aは、導電フィルムの変形例の側面図および底面図を示す。
図16B図16Bは、図16Aの導電フィルムをキーシートに固定する状況を断面図にて示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る押釦スイッチの平面図を示す。図2Aは、図1の押釦スイッチのA-A線断面図を示す。図2Bは、図1の押釦スイッチのB-B線断面図を示す。図2Cは、図1の押釦スイッチのC-C線断面図を示す。なお、C-C線断面図は、キートップが上になるように図示されている。
【0013】
本願において、「導電」または「導電性」は、20℃における体積抵抗率が0(Ohm・cm)を超え、1.0×10(Ohm・cm)以下の性質、より好ましくは1.0×10(Ohm・cm)以下の性質をいう。当該体積低効率は、定電流印加方式の規格ASTM D 991によって計測される。また、「絶縁」または「絶縁性」は、20℃における体積抵抗率が1.0×10(Ohm・cm)より大きい、より好ましくは1.0×1012(Ohm・cm)より大きい性質をいう。当該体積低効率は、定電圧印加方式の規格ASTM D 257によって計測される。
【0014】
この実施形態に係る押釦スイッチ1は、第1カバー2と第2カバー3とを重ねて形成される空間に、回路基板15とキーシート20を備える。第1カバー2と第2カバー3は、好ましくは、押釦スイッチ1の平面視にて四つ角の位置でネジ等の締結部材4により固定されている。押釦スイッチ1は、3つのキーを備えている。ただし、キーの数は、3つに限定されず、1つのみ、2つ、あるいは4つ以上でも良い。押釦スイッチ1は、第1カバー2を貫通する貫通孔5から、それぞれ、1つのキートップ10を露出させている。キートップ10は、第2カバー側の面に、貫通孔5よりも大径のフランジ部を備えており、貫通孔5から外方向に抜けないようになっている。この実施形態では、貫通孔5は、第1カバー2において平面視にて一直線上に形成されている。ただし、貫通孔5は、一直線上以外の位置関係で形成されていても良い。
【0015】
押釦スイッチ1は、第2カバー3から第1カバー2の方向に向かって、回路基板15と、キーシート20と、キートップ10とを順に配置した構造を有する。キーシート20は、その厚さ方向の一方に開口する開口部25を1または2以上備える。キーシート20は、開口部25の外周に位置する外周部21と、開口部25の開口側と反対側に備えられる部材であって平面視において回路基板15に向かって拡径するドーム部22と、ドーム部22の内側において回路基板15側に対向する部位に備えられる第1電極24と、を備える。この実施形態では、キーシート20は、ドーム部22の内側天面から回路基板15側に突出するプッシャー部を備え、当該プッシャー部の先端に第1電極24を備えている。しかし、プッシャー部はキーシート20にとって必須の構成部ではない、ドーム部22の内側天面に第1電極24を備えても良い。また、この実施形態では、キーシート20は、ドーム部22の先端側、すなわち、キートップ10側に、好ましくは、キートップ10の方向に突出するヘッド部23をさらに備える。キートップ10とヘッド部23との間には、後述する導電フィルム30の一端が挟持されている。当該一端は、ドーム部20とキートップ10との間に位置していてキートップ10を操作する操作部位(ヒトの指等)との間で静電容量を検知する検知部である。ただし、ヘッド部23は、キーシート20にとって必須の構成部ではない。その場合、導電フィルム30は、ドーム部22の外側天面とキートップ10との間に挟持されても良い。
【0016】
回路基板15は、開口部25の内部に、キートップ10の回路基板15側への押下に伴うドーム部22の変形によって第1電極24と接触可能な第2電極16を備える。第2電極16は、この実施形態では、互いに離れた2つの電極から成る。第1電極24が2つの第2電極16と接触することによって、2つの第2電極16間で通電可能となる。しかし、第2電極16を1つの電極とし、第1電極24と接触することによって、第1電極24と第2電極16との間で通電可能としても良い。
【0017】
回路基板15は、平面視におけるキートップ10の外側に備えられる電極であって、操作部位(例えば、ヒトの指)と、ドーム部22とキートップ10との間に位置する静電容量の検知部との間における静電容量の変化を回路基板15の配線に伝達する信号伝達部45を備える(図2Bおよび図2Cを参照。)。静電容量の変化に関連する信号は、上記配線を通じて、例えばCPU(不図示)に伝達される。信号伝達部45は、この実施形態では、回路基板15に、キートップ10の数と同数、すなわち3つ備えられている。また、信号伝達部45は、回路基板15上における第2電極16から離れた位置に固定されている。キーシート20は、ドーム部22によって覆われた開口部25の他に、後述する別の貫通孔26も備えている。貫通孔26は、回路基板15の信号伝達部45と対向する位置に形成されている。貫通孔26には、導電体40が固定されている。導電体40は、信号伝達部45に電気的に接続され、キーシート20の回路基板15と反対側の面に露出する電極である。回路基板15は、図示されないマイクロコンピュータを備え、第1電極24と第2電極16との接続に基づく入力や、静電容量の検知による入力を受け付け可能に構成されている。
【0018】
押釦スイッチ1は、ドーム部22とキートップ10との間から、信号伝達部45とを電気的に接続する導電フィルム30を備える。より具体的には、導電フィルム30は、その一端(静電容量を検知する部分)をヘッド部23とキートップ10との間に挟持され、その他端を信号伝達部45へと延出するように配置されている。また、導電フィルム30は、導電体40を介して信号伝達部45に電気的に接続されている。すなわち、導電フィルム30は、直接的に信号伝達部45とは接続されていないが、導電体40と接続されることで、信号伝達部45と電気的に接続されている。
【0019】
導電フィルム30は、キーシート20のヘッド部23と、ヘッド部23よりも回路基板15側に位置する導電体40との高低差Lのある両端をつないでいる(図2Cを参照。)。導電フィルム30は、キーシート20のヘッド部23および外周部21に対して平行な両端面と、当該両端面をつなぐ傾斜面とを備える薄い部材である。この実施形態では、導電フィルム30は、略S字型に変形可能な部材である。「導電フィルム」は「導電層」と称しても良い。導電フィルム30は、ドーム部22の変形に伴い、弾性的に変形可能である。後述する他の導電フィルムも、好適には、弾性変形可能である。
【0020】
キーシート20は、ドーム部22が弾性変形可能であれば、特に構成材料に制約はないが、好ましくは、ゴム状弾性体にて構成されている。ゴム状弾性体としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を挙げることができる。キーシート20は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂に代表される合成樹脂または天然樹脂にて形成されていても良い。キーシート20は、ヒトの指等の操作部位との間で静電容量を検知可能な部材ではない。キーシート20は、好ましくは、カーボンや金属等の導電性を有するフィラーを含まない。
【0021】
ヒトの指等の操作部位との間で静電容量を検知する機能は、ドーム部22よりキートップ10側に位置する導電フィルム30に付与されている。このため、ヒトの指等の操作部位がキートップ10に近づいた際に、従来よりも高感度にて静電容量の変化を検知できる。導電フィルム30は、好ましくは、導電性に優れた金属(金、銀、銅、アルミニウム、タングステン、SUS、鉄)、あるいはカーボンにて構成される。導電フィルム30は、PEDOT-PSSに代表される導電性ポリマー、あるいはインジウム錫系酸化物(ITO)にて構成されていても良い。また、導電フィルム30は、上記金属あるいはカーボン以外の材料を含んでいても良い。導電フィルム(後述の導電フィルムも含む)の厚さは、ヘッド部23と導電体40との高低差Lより小さければ特に制約はないが、好ましくは5~2000μm、より好ましくは25~1000μm、さらにより好ましくは25~100μmである。
【0022】
キートップ10は、特にその材料に制約はないが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム、セラミックス、木材、またはその複合物により好適に形成される。また、キートップ10は、後述するように、金属を含んでも良い。ただし、キートップ10の少なくとも天面は、金属以外で、金属よりも低硬度の材料(例えば、樹脂、ゴムまたは木材)で構成されている方が、接触時の感触を良くする面で好ましい。
【0023】
図3Aは、図2Aのキーシートの平面図を示す。図3Bは、図3AのキーシートのD-D線断面図を示す。
【0024】
キーシート20は、その厚さ方向において、3つのキートップ10の各直下位置に、ドーム部22とヘッド部23とを備える。ドーム部22の内側は、第1電極24が第2電極16との間で接続および分離可能な空間を備える。キーシート20は、平面視において、ドーム部22の外縁部外側の位置に、貫通孔26を備える。この実施形態では、貫通孔26は、キーシート20の平面視にてドーム部22からキーシート20の一辺に向かって離れた位置に形成されている。貫通孔26は、キーシート20の厚さ方向に貫通した孔であって、上述の通り、導電体40の挿入により閉塞される孔である。押釦スイッチ1は、導電体40を貫通孔26に挿入することで、回路基板15側への水の侵入リスクを低減でき、もって防水性の高いスイッチとなる。
【0025】
図4Aは、図3Aのキーシートの変形例の平面図を示す。図4Bは、図4AのキーシートのE-E線断面図を示す。
【0026】
キーシート20aは、上述のキーシート20の変形例であり、平面視におけるドーム部22と貫通孔26との間に、キーシート20aの厚さ方向内方に窪む溝27を有する。より具体的には、ドーム部22の拡径部の外縁部から信号伝達部45までの経路に溝27が形成されている。導電フィルム30のヘッド部23から貫通孔26までの部分の少なくとも一部は、溝27に沿って配置されている。
【0027】
図5は、図2Cの導電フィルムの変形例の平面図および側面図を示す。
【0028】
この変形例に係る導電フィルム30aは、上述の導電フィルム30と異なり、2つの層を積層した2層構造を有する。具体的には、導電フィルム30aは、導電層31と絶縁層32との積層フィルムである。押釦スイッチ1では、導電フィルム30aは、導電層31を信号伝達部45に向けて配置されている。導電層31は、上述の導電フィルム30の材料候補と同様の材料にて構成可能である。絶縁層32は、キーシート20の好適な材料候補と同様の材料にて構成可能である。導電層31は、例えば、メッキ、印刷などにより形成可能である。また、導電層31は、板状部材であって、絶縁層32に接着剤を介して接着され、あるいは接着剤等の介在層なく密着されていても良い。導電層31においてヘッド部23と接する部位は、平面視にて、ヘッド部23より大きな面積であっても良い。
【0029】
図6は、図2Cの導電フィルムの3種の変形例の各平面図を示す。
【0030】
変形例に係る導電フィルム30bは、ヒトの指等の操作部位との距離に応じた静電容量を検知する検知部33と、回路基板15上の信号伝達部45に接続される側の取り出し電極部34とを配線部35によって接続した形態を有する。配線部35は、検知部33および取り出し電極部34よりも平面視にて幅狭く形成されている。すなわち、導電フィルム30bは、平面視にて、ダンベル形状を有した部材である。配線部35を幅狭く形成すると、配線部35に操作部位を近づけても静電容量の変化を検出しにくくでき、誤検出防止を図ることができる。また、配線部35を幅狭く形成すると、キートップ10を回路基板15に向けて押し込んだ際にドーム部22の変形により生じるクリック感への悪影響を抑制できる。なお、検知部33の平面視の形状は、円形以外に、三角形、四角形、4角以上の多角形、円環形状でも良い。導電フィルム30bは、例えば、PETフィルム上に、銅を蒸着したフィルム、あるいは銅箔を積層させたフィルムを貼り付けた後に、ダンベル形状にカットすることにより好適に形成可能である。
【0031】
別の変形例に係る導電フィルム(導電層ともいう)30cは、絶縁フィルム(絶縁層ともいう)36の片面に、ダンベル型の導電層を形成したフィルムである。当該導電層は、前述の導電フィルム30bと同様の形状を有する。導電層は、好ましくは、金属、カーボンなどの導電性材料にて構成される。導電層は、例えば、カーボン等を含む導電インクを絶縁フィルム36の一例であるPETフィルム上にスクリーン印刷でパターニングすることによって好適に形成可能である。なお、絶縁フィルム36は、キーシート20の好適な材料候補と同様の材料にて構成可能である。
【0032】
別の変形例に係る導電フィルム30dは、前述の導電フィルム30cと同じ形態を有するが、検知部33の部分を検知部33aに変更したものである。検知部33aは、厚さ方向に光を透過させる透明の電極である。検知部33aの構成材料として、導電性ポリマーやITOを挙げることができる。導電フィルム30dを使用すると、ヘッド部23に、回路基板15側からキートップ10側に貫通する貫通孔を備え、回路基板15の当該貫通孔直下位置に光源を備え、キートップ10を厚さ方向に透光可能な部材で構成することにより、照光式の押釦スイッチ1を形成可能である。
【0033】
図7は、図6の導電フィルムの変形例の平面図を示す。
【0034】
変形例に係る導電フィルム30eは、前述の導電フィルム30cを3枚用意して、隣り合う導電フィルム30cの間を接続部37にて1枚に結合した形態を有する。接続部37は、絶縁フィルム36と別体であるか一体であるかを問わず、絶縁フィルム36に接続されている。このように、3つの導電フィルム30cを一体化したフィルムを形成しても、導電フィルム30cと同様の作用効果を得ることができる。導電フィルム30bに相当する導電層は、例えば、カーボン等を含む導電インクを、PETフィルムの絶縁フィルム36の部分にスクリーン印刷でパターニングすることによって好適に形成可能である。なお、取り出し電極部34を1か所に集約させても良い。
【0035】
図8Aは、図2Cの導電体の変形例の平面図を示す。図8Bは、図8Aの導電体のF-F線断面図を示す。
【0036】
変形例に係る導電体40aは、導電体40のような金属等の単一材料ではなく、2つの絶縁ゴム46の間に、導電ゴム47と絶縁ゴム46とを積層して備える、いわゆる「ゼブラコネクタ」である。圧接接続の場合、導電フィルム30との接続相手は、ゴムを用いたゼブラコネクタである方が好ましい。
【0037】
図9は、図2Aの回路基板の変形例の平面図および第2電極の拡大図を示す。
【0038】
変形例に係る回路基板15aは、各キートップ10の直下位置に1つの第2電極48を備えると共に、第2電極48から離れた位置に信号伝達部45を1つずつ備える。第2電極48は、電極16aと電極16aとを互いに分離して配置した電極対である。より具体的には、第2電極48は、T字型の電極16aとU字型の電極16aとを近づけて配置された電極対である。第1電極24が電極16a,16aに接触すると、電極16a,16a間が通電する。第2電極48は、櫛歯型の電極でも良い。
【0039】
図10は、押釦スイッチのキートップの1つにヒトの指を近づける状態a、指をそのキートップに接触させた状態b、そのキートップを指で押し込んでドーム部を変形させてスイッチを入力した状態cを、経時的に、図2Aと同様の断面図にて示す。
【0040】
状態aは、ヒトの指SFを導電フィルム30の検知部から距離T1の位置まで近づけて、静電容量の変化によって入力を実行した状態である。状態bは、状態aからさらに進んで、ヒトの指SFをキートップ10に接触させ、指SFと導電フィルム30の検知部との距離T2(<T1)の位置まで近づけて、静電容量の別の変化によって別の入力を実行した状態である。状態cは、指SFにてキートップ10を押し込んで、第1電極24と第2電極16とを接触させて別の入力を実行した状態である。距離T1の際の静電容量、距離T2の際の静電容量をそれぞれ閾値とすることにより、静電容量式の入力を2種、押し込み式の入力を1種の合計3種の入力が可能である。なお、距離T1または距離T2のいずれか一方のときの静電容量の閾値を設定すれば、静電容量式の入力を1種、押し込み式の入力を1種の合計2種の入力が可能である。距離T1の静電容量の閾値を設定すれば、指SFをキートップ10に対して非接触の状態で入力可能である。
【0041】
図11Aは、導電フィルムを回路基板上の信号伝達部に接続する構成の変形例を断面図にて示す。図11Bは、図11Aに示す変形例と異なる別の変形例を断面図にて示す。
【0042】
図11Aに示すように、キーシート20に貫通孔49を設け、導電フィルム30をヘッド部23から貫通孔49を通して、回路基板15上の信号伝達部45に接続しても良い。貫通孔49は、キーシート20の厚さ方向に貫通する孔であって、ドーム部22と信号伝達部45との間の途中に形成されている。この場合、前述の導電体40および貫通孔26は不要となるので、構成部材の削減を図ることができる。また、導電フィルム30において、ヘッド部23から信号伝達部45までに延出する部位の一部を、キーシート20の裏側(回路基板15側)に潜り込ませているので、静電容量の変化に伴う入力の誤検出を低減できる。
【0043】
図11Bに示すように、信号伝達部45に代えて、ZIFコネクタ50を回路基板15に設けて、導電フィルム30の端部をZIFコネクタ50に接続しても良い。ZIFコネクタ50は、挿入にほとんど力を必要としないタイプのコネクタであり、前述の信号伝達部45と同様、回路基板15の配線に静電容量の変化を伝達する信号伝達部一例である。ZIFコネクタ50を用いると、貫通孔26が不要となる。
【0044】
図12は、図2Cのキートップを変えた押釦スイッチの図2Cと同視の断面図を示す。図13は、図12の押釦スイッチに好適に使用可能な導電フィルムの平面図および側面図を示す。
【0045】
図12の押釦スイッチ1は、ヘッド部23側に導電部材10aを備えて導電部材10aよりも外側に絶縁部材10bを備えた2層構造のキートップ10を有する。図13に示すように、導電フィルム30fは、絶縁層32と、導電層31として、絶縁層32を挟む第1導電層31aおよび第2導電層31bとを備える三層構造を有している。絶縁層32は、その長さ方向の途中に、絶縁層32の厚さ方向に貫通するホール39を備えている。第1導電層31aと第2導電層31bとはホール39を通じて接続されている。このような導電フィルム30fは、スルーホール接続タイプの導電フィルムと称することができる。導電フィルム30fは、導電部材10aから第1導電層31a、第1導電層31aからホール39を通じて第2導電層31b、さらに第2導電層31bから信号伝達部45へと通電可能となっている。第1導電層31aおよび第2導電層31bは、絶縁層32の一例であるPETフィルム上に、カーボン等を含む導電インクをスクリーン印刷でパターニングすることによって好適に形成可能である。
【0046】
このように、キートップ10のヘッド部23側に導電部材10aを形成し、当該導電部材10aを導電フィルム30fの第1導電層31aに接続すると、指等の操作部位がキートップ10に近づく際の静電容量の変化に対応した入力感度を、より高くすることができる。
【0047】
図14Aは、導電フィルムの変形例の平面図を示す。図14Bは、図14Aの導電フィルムを備えた押釦スイッチの図2Aと同視の断面図を示す。
【0048】
図14Aに示す変形例に係る導電フィルム30gは、図7の導電フィルム30eの変形例である。導電フィルム30gは、ダンベル型の導電フィルム30bを備えた絶縁フィルム36同士の間に、絶縁フィルム36と同型の絶縁フィルム36aを配置している。絶縁フィルム36,36aの間は、接続部37により接続されている。導電フィルム30gは、合計5枚の絶縁フィルム36,36a,36,36a,36の長さ方向中間位置を接続部37にて接続した形態を有する。また、絶縁フィルム36aは、その少なくとも片面に、グラウンド電極60を備えている。グラウンド電極60は、絶縁フィルム36aのみならず、接続部37の一部まで延出して備えられている。ただし、グラウンド電極60は、ダンベル型の導電フィルム30bには接続されていない。グラウンド電極60は、如何なる形態であるかを問わず、この実施形態では、導電性の金属メッシュにて形成されている。導電フィルム30bに相当する導電層は、例えば、カーボン等を含む導電インクを、PETフィルムの絶縁フィルム36の部分にスクリーン印刷でパターニングすることによって好適に形成可能である。
【0049】
図14Bに示すように、導電フィルム30gは、断面視にて波型に変形され、押釦スイッチ1内に備えられている。この実施形態では、キーシート20は、ドーム部22を3つ(2以上)備えている。導電フィルム30bは、ドーム部22とキートップ21との間にそれぞれ備えられている。また、導電フィルム30gは、3つ(2以上)の導電フィルム30bの間にグラウンド電極60を備えている。3つの導電フィルム30bおよびグラウンド電極60は絶縁フィルム36,36a上に形成されている。絶縁フィルム36aとグラウンド電極60との積層体は、第1カバー2とキーシート20との間に挟持されている。絶縁フィルム36とダンベル型の導電フィルム30bとの積層体は、キートップ10とヘッド部23との間に挟持されている。導電フィルム30gを備えることにより、押釦スイッチ1は、グラウンド電極60に起因して、キートップ10の位置以外での誤検出を低減できる。なお、接続部37は、絶縁フィルム36,36aと別体であるか一体であるかを問わず、絶縁フィルム36,36aに接続されている。取り出し電極部34を1か所に集約させても良い点は、導電フィルム30eと同様である。
【0050】
図15Aは、導電フィルムの変形例の平面図およびG-G線断面図を示す。図15Bは、図15Aの導電フィルムを2つに折りたたんだ状態の平面図およびH-H線断面図を示す。
【0051】
変形例に係る導電フィルム62は、薄厚で矩形平面の絶縁層63と、同じく薄厚で矩形平面の絶縁層64とを折りたたみ可能に備える。この実施形態では、絶縁層64は、絶縁層63よりも小さい。絶縁層64は、その内部に、導電層66の一部を備えている。絶縁層63は、その内部に、導電層65と、導電層66の上記一部以外の別の部位とを、互いに非接触状態にて備えている。導電層65は、指等の操作部位がキートップ10に近づくことによる静電容量の変化を検知可能な薄厚で略円形の導電フィルム30hと、導電フィルム30hの径より小さい幅を持つ細長い導電フィルム30gとを備える。導電層66は、グラウンド電極30i(導電フィルムの一例)と、グラウンド電極30iの径より小さい幅を持つ細長い導電フィルム30jとを備える。導電層66の一部は、グラウンド電極30iと、グラウンド電極30iから延出する導電フィルム30jの一部とを含む。
【0052】
導電フィルム30hは、指等の操作部位をキートップ10に近づけた際に静電容量の変化を検知可能な検知部に相当する。グラウンド電極30iは、絶縁層63と絶縁層64とを折りたたんだ際に導電フィルム30hと対向するように、絶縁層64に備えられている。この実施形態では、導電フィルム30hとグラウンド電極30iとは、平面視にて同じ大きさの円形に形成されている。絶縁層63と絶縁層64とを折りたたむと、導電フィルム30hとグラウンド電極30iとは平面視にてほぼ完全に重なる。
【0053】
絶縁層63,64の材料は、好適には、キーシート20と同様の選択肢から選ばれる。絶縁層63,64の材料は、より好適には、弾性変形に富むゴム(発泡ゴム、スポンジなどを含む)であり、さらに好ましくはシリコーンゴムである。導電フィルム62における絶縁層63と絶縁層64とを折りたたみ重ねると、導電フィルム30hとグラウンド電極30iとの間に絶縁層63,64が重なった状態で厚さtの弾性層として位置する。かかる厚さtの弾性層は、指等の操作部位をキートップ10の天面から導電フィルム62に向けて押し込んだ際、圧縮されて厚さtを減じる。このような弾性層63,64の厚さの変化によって、静電容量の変化を生じさせ、別の入力が可能となる。なお、グラウンド電極30iは、導電フィルム30hと同様、指等の操作部位がキートップ10に近づくことによる静電容量の変化を検知可能な検知部であっても良い。また、グラウンド電極30iと導電フィルム30hとを、図15Bにおいて上下逆にしても良い。導電層65,66は、例えば、カーボン等を含む導電インクを、絶縁層63,64の一例であるPETフィルム上にスクリーン印刷でパターニングすることによって好適に形成可能である。
【0054】
以上のように、導電フィルム62は、折りたたみにより、導電層65と導電層66との間に、絶縁層63,64の弾性層を挟んだ積層フィルムとなる。導電フィルム62は、導電層65を信号伝達部45に向けている。上述のように、導電フィルム62は、キートップ10からの押圧の負荷と解除によって弾性変形可能な弾性層(絶縁層63,64)の押圧方向両側を、導電層66(より具体的にはグラウンド電極30i)と導電層65(より具体的には導電フィルム30h)とで挟んだ構造を有する。このため、弾性層の厚さの変化によって静電容量を変化させ、新たな入力を実行可能である。
【0055】
図16Aは、導電フィルムの変形例の側面図および底面図を示す。図16Bは、図16Aの導電フィルムをキーシートに固定する状況を断面図にて示す。
【0056】
この変形例に係る導電フィルム30kは、前述の導電フィルム30a(図5を参照)の変形例である。キーシート20は、ドーム部22の先端部(この実施形態では、ヘッド部23)に、内方に窪む凹部71を備える。導電フィルム30kは、その長さ方向一端に、凹部71に嵌め込み可能な絶縁性の凸部70を備える。凸部70は、好ましくは、導電層31側に形成されている。導電フィルム30kは、凸部70を凹部71に嵌め込んで、キーシート20に固定されている。この結果、導電フィルム30kはキーシート20に取り付けやすくなる。さらに、両者30k,20は分離しにくくなる。なお、凸部70は、絶縁性ではなく、導電性を有する部材(例えば、導電ゴム)でも良い。
【0057】
(その他の実施形態)
上述のように、本発明の好適な実施形態および変形例について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0058】
例えば、キーシート20は、外周部21と、ドーム部22と、ヘッド部23とを連接した一体型のシートである。しかし、キーシート20は、外周部21と、ドーム部22と、ヘッド部23とを別体とし、それらを接続したシートでも良い。その場合、ドーム部22のみを弾性変形可能な部材(例えば、ゴム)で形成し、外周部21とヘッド部23をゴム以外の材料で形成しても良い。
【0059】
上記実施形態では、キートップ10とドーム部22のセットは3つであるが、1つのみ、2つ、4つ以上でも良い。また、上記実施形態では、導電フィルム30等の数は、上記セットの数と等しいか、上記セットに共通する1つのみである。すなわち、上記セットの数が3つの場合、導電フィルム30等の数は3つか、1つである。しかし、上記セットの数が3つの場合において、導電フィルム30等を2つにしても良い。このように、導電フィルム30等は、複数の上記セットに共通して設けると共に、上記セットごとに設けても良い。また、信号伝達部の数は、上記セットの数と同数ではなく、上記セットの数より少なくとも良い。
【0060】
上記実施形態では、スルーホール型の導電フィルム30fは、導電フィルム30f側と接する側に導電部材10aを有するキートップ10を備えた押釦スイッチ1に配置されている。しかし、導電フィルム30fは、導電部材10aを有していないキートップ10を備えた押釦スイッチ1に配置されても良い。
【0061】
また、上述の各変形例は、互いに組み合わせ不可能な場合を除いて、自由に組み合わせ可能である。例えば、ZIFコネクタ50は、他の変形例と共に使用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る押釦スイッチは、静電容量検知型のスイッチ機能を有するスイッチに利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1・・・押釦スイッチ、10・・・キートップ、10a・・・導電部材、15,15a・・・回路基板、16・・・第2電極、20,20a・・・キーシート、22・・・ドーム部、23・・・ヘッド部、24・・・第1電極、25・・・開口部、26・・・貫通孔、27・・・溝、30,30a,30b,30c,30d,30e,30f,30g,30h,30j,30k・・・導電フィルム、30i・・・グラウンド電極(導電フィルムの一例)、31・・・導電層、31a・・・第1導電層(導電層の一例)、31b・・・第2導電層(導電層の一例)、32・・・絶縁層、33,33a・・・検知部、36,36a・・・絶縁フィルム、39・・・ホール、40,40a・・・導電体、45・・・信号伝達部、48・・・第2電極、50・・・ZIFコネクタ(信号伝達部の一例)、60・・・グラウンド電極、62・・・導電フィルム、63,64・・・弾性層、65,66・・・導電層、70・・・凸部、71・・・凹部。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B