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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075464
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】駐車支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/06 20060101AFI20230524BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20230524BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
B60W30/06
B60W60/00
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188385
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村山 純哉
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA21
3D241BA51
3D241BC01
3D241BC02
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC11
3D241CC17
3D241CE04
3D241CE05
3D241DB01Z
3D241DB20Z
3D241DC25Z
3D241DC31Z
3D241DC34Z
3D241DC35Z
3D241DC39Z
3D241DC59Z
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF14
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL17
(57)【要約】
【課題】乗員の不安を低減できる駐車支援装置を提供する。
【解決手段】駐車支援装置10は、車両2の現在位置Paを取得する自車位置取得部20と、前記車両2の周囲の物体Kの位置に関する情報を含む物体情報Aを取得する物体情報取得部22と、前記現在位置Paと所定の駐車領域Pbの間に複数の経路MQを設定し、前記複数の経路MQのうち、前記物体Kとの距離が最も長い経路MQを特定し、特定した前記経路MQに基づいて、前記現在位置Paから前記所定の駐車領域Pbまで前記車両2が走行する目標経路Qを設定する目標経路設定部24と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置を取得する自車位置取得部と、
前記車両の周囲の物体の位置に関する情報を含む物体情報を取得する物体情報取得部と、
前記現在位置と所定の駐車領域の間に複数の経路を設定し、前記複数の経路のうち、前記物体との距離が最も長い経路を特定し、特定した前記経路に基づいて、前記現在位置から前記所定の駐車領域まで前記車両が走行する目標経路を設定する目標経路設定部と、
を備えることを特徴とする駐車支援装置。
【請求項2】
前記目標経路設定部は、
前記複数の経路のそれぞれに複数のノードを設定し、
前記ノードのそれぞれについて、当該ノードと前記物体との距離が大きいほど値が小さくなるノードコストを算出し、
前記複数の経路のそれぞれについて、当該経路に含まれている前記複数のノードのそれぞれの前記ノードコストを合計した値である経路コストを算出し、
前記複数の経路のうち、前記経路コストが最も小さい経路を特定し、特定した前記経路に基づいて前記目標経路を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項3】
前記ノードコストは、
前記ノードに位置した前記車両の側面と前記物体との最短距離が大きいほど小さな値となるパラメータである
ことを特徴とする請求項2に記載の駐車支援装置。
【請求項4】
前記目標経路設定部は、
前記ノードに位置した前記車両の側面を、当該ノードにおける前記車両の車速に応じて車両前後方向に延長した延長車両側面の範囲に存在する前記物体を対象に前記ノードコストを算出する
ことを特徴とする請求項2または3に記載の駐車支援装置。
【請求項5】
前記車両の自動運転を実行する、前記車両が備える自動運転システムに対し、前記目標経路設定部によって設定された目標経路に沿った前記車両の走行を指示する自動走行指示部を備え、
前記自動走行指示部は、
前記目標経路設定部によって設定された前記目標経路に、前記ノードコストが所定値以上の前記ノードが含まれている場合、前記ノードコストが所定値以上の前記ノードを通過するときの車速を所定速度以下とするように前記自動運転システムに指示する
を備えることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の駐車支援装置。
【請求項6】
前記目標経路設定部は、
前記現在位置から所定の駐車領域に到る経路を複数の経路区間に区切り、
前記複数の経路区間ごとに前記複数の経路を設定し、前記経路区間のそれぞれにおいて前記物体との距離が最も長い経路を特定し、特定した各経路に基づいて前記目標経路を設定する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の駐車支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
引用文献1は、自動駐車に用いる経路の選択に関する技術を開示する。引用文献1の要約書の「課題」の欄には、「一つの駐車空間への経路が複数ある場合に、駐車時間が短い経路で自動駐車することが出来ない。」ことが記載されている。同要約書の「解決手段」の欄には、「経路候補生成部301は、基準車速や経路形状を変更して、駐車開始位置から駐車目標位置に到達する経路を探索する。経路通過時間算出部302は、各経路候補に対して、基準車速と経路の長さに基づいて、その経路を通過するために必要な時間を算出する。状態切替時間算出部303は、各経路候補に対して、車両の前進・後退の切り替えに必要な時間および、車両が停止した状態で操舵して、所定の操舵角度まで変化させるために必要な時間を算出する。経路選択処理部305は、経路通過時間に基づいて、生成した経路から特定の経路、例えば駐車時間が短い経路を選択する。」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-127112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、選択される経路の周辺に物体が存在した場合、当該物体の傍らを車両が自動走行によって通過するときに、運転者などの乗員が不安を感じる場合があった。
本発明は、乗員の不安を低減できる駐車支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、車両の現在位置を取得する自車位置取得部と、前記車両の周囲の物体の位置に関する情報を含む物体情報を取得する物体情報取得部と、前記現在位置と所定の駐車領域の間に複数の経路を設定し、前記複数の経路のうち、前記物体との距離が最も長い経路を特定し、特定した前記経路に基づいて、前記現在位置から前記所定の駐車領域まで前記車両が走行する目標経路を設定する目標経路設定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、乗員の不安を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る駐車支援システムの構成を示す図である。
図2】駐車支援装置が実行する自動駐車制御処理のフローチャートである。
図3】経路設定処理のフローチャートである。
図4】経路設定処理に係る説明図である。
図5】経路設定処理に用いられるマルチパスの模式図である。
図6】経路コストが最小の経路特定を示す模式図である。
図7】車両側方距離の説明図である。
図8】ノードコストに応じた車速制御の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る駐車支援システム1の構成を示す図である。
駐車支援システム1は、駐車場内などの駐車領域Pb(図4)が存在し得る場所において、例えば運転者などの乗員によって開始指示が与えられた場合に、所定の駐車領域Pbまで現在位置Pa(図4)から車両2が自動走行し、当該所定の駐車領域Pbに車両2が自動駐車することで、車両2が駐車する際の運転者の運転を支援する車載システムである。自動走行、及び自動駐車は、自律的又は半自律的に車両2が走行、及び駐車することを言う。かかる駐車支援システム1は、図1に示すように、駐車支援装置10と、自動運転システム4と、物体検出部6と、自車位置検出部8と、を備え、これらが互いにCANなどの車載ネットワークを介して、或いは、直接的に接続されている。
【0009】
駐車支援装置10は、現在位置Paから所定の駐車領域Pbに到る目標経路Q(図4)を設定し、当該目標経路Qに沿って車両2が自動走行し、所定の駐車領域Pbへの駐車が完了する処理(自動駐車制御処理:図2)を実行する装置である。かかる駐車支援装置10は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(microprocessor)などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリデバイス(主記憶装置とも呼ばれる)と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などのストレージ装置(補助記憶装置とも呼ばれる)と、センサ類や周辺機器などを接続するためのインターフェース回路と、車載ネットワークを介して他の車載機器と通信する車載ネットワーク通信回路と、を備えたコンピュータ(本実施形態では、ECU(Electric Control Unit))を有する。そして、駐車支援装置10は、メモリデバイス又はストレージ装置に記憶されているコンピュータプログラムをプロセッサが実行することで、自動駐車制御に係る各種の機能的構成を実現する。これらの機能的構成については後述する。
【0010】
自動運転システム4は、車両2の自動運転を実行するシステムであり、自動運転に係る制御を実行する自動運転ECU4Aと、車両2が走行するための各種のアクチュエータ4Bと、を備える。自動運転システム4は、自動運転ECU4Aが各アクチュエータ4Bを駐車支援装置10の出力信号に基づいて制御することで、目標経路Qに沿って車両2が自動走行し、所定の駐車領域Pbに車両2が駐車する。
アクチュエータ4Bは、例えば、車両駆動アクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、及び操舵アクチュエータを含んでいる。車両駆動アクチュエータは、車両2の動力源(モータやエンジン)及び当該動力源を制御する制御装置(ECUなど)を含む装置又はシステムである。ブレーキアクチュエータは、車両2に設けられた制動装置を動作させる装置又はシステムである。操舵アクチュエータは、電動パワーステアリングシステムの操舵トルクを制御するアシストモータを動作させる装置又はシステムである。
なお、自動運転システム4には、車両2が自律的又は半自律的に走行可能な公知または周知の任意のシステムを用いることができる。
【0011】
物体検出部6は、車両2の周囲の物体K(図4)を検出し、検出信号(以下、「物体検出信号6S」という)を駐車支援装置10に出力する物体検出センサ6Aを備える。本実施形態では当該物体検出センサ6Aとして、車両2の周囲を撮影し、撮影データを駐車支援装置10に出力する車載カメラ(すなわち、CCDセンサ)が用いられている。かかる車載カメラは、車両2の前方を撮影するフロントカメラ、後方を撮影するリアカメラ、左側方を撮影する左サイドカメラ、及び、右側方を撮影する右サイドカメラを含み、これらのカメラの各撮影データを用いて、車両2の全周囲(360°の範囲)の撮影像が得られるようになっている。
物体Kは、車両2の走行路の指標となる物、並びに、車両2の進行の妨げになり得る物を含む。かかる物体Kは、例えば、通路、駐車区画、停止線、白線、他の車両、構造物(建物や壁、信号機、標識など)、及び歩行者などである。
また、物体検出部6の物体検出センサ6Aには、車載カメラの他にも、LiDAR(Light Detection and Ranging)やレーダ、ソナーなどの周知又は公知の任意のセンサを単独、又は互いに組み合わせて用いることができる。
【0012】
自車位置検出部8は、自身の車両2の位置を検出し、検出信号(以下、「自車位置検出信号8S」という)を駐車支援装置10に出力する位置検出器8Aを備える。位置検出器8Aには、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)の信号を受信する受信器や、自律航法に用いられるジャイロセンサ及び加速度センサ、その他の公知または周知の任意の機器を用いることができる。
【0013】
駐車支援装置10は、機能的構成として、自車位置取得部20と、物体情報取得部22と、目標経路設定部24と、自動走行指示部26と、を備えている。
自車位置取得部20は、自車位置検出部8の自車位置検出信号8Sに基づいて車両2の現在位置Paを計算することで、当該現在位置Paを取得する。
物体情報取得部22は、物体検出部6の物体検出信号6S(本実施形態では撮影データ)を解析することで、車両2の周囲の物体Kに関する情報(以下、「物体情報A」という)を取得する。
物体情報Aは、上記目標経路Qの設定に用いられる情報である。本実施形態の目標経路Qは、車両2が物体Kに接触することなく、かつ、物体Kの傍を車両2が通過するときに乗員に不安を感じることがない経路が設定される。物体情報Aは、かかる目標経路Qの設定のための情報として、物体Kの位置及び大きさ(外形や輪郭など)の情報を含んでいる。
なお、物体情報取得部22が物体情報Aを自身で解析する構成に代えて、物体検出部6、又は、他の適宜の装置が検出情報を解析して物体情報Aを生成し、当該物体情報Aを物体情報取得部22が取得する構成でもよい。物体検出部6の検出情報に基づく物体情報Aの解析及び生成手法には、例えば、画像認識処理などの公知又は周知の任意の手法を用いることができる。
【0014】
目標経路設定部24は、現在位置Pa、所定の駐車領域Pbの位置、及び物体情報Aに基づいて上記目標経路Qを設定する。
具体的には、目標経路設定部24は、車両2の周囲の物体Kの位置及び大きさに基づき、車両2が物体Kに接触することなく現在位置Paから所定の駐車領域Pbに到る経路であり、なおかつ、物体Kの傍を車両2が通過するときの乗員の不安感を低減できる経路を目標経路Qとして設定する。
なお、目標経路設定部24は、目標経路Qの設定において、周辺の地図を示す地図データを参照してもよい。地図データは、駐車支援装置10が予め記憶してもよいし、車両2の外の装置(例えば、駐車場を管理する装置)から電気通信回線(例えばインターネット)を介して受信してもよい。
また、所定の駐車領域Pbの設定手法は任意であり、例えば、地図上の場所を指定するなどして乗員が指示する手法や、車両2が駐車可能な領域を公知又は周知の手法を用いて検出し、当該領域を駐車領域に設定する手法などを用いることができる。
【0015】
自動走行指示部26は、目標経路設定部24によって設定された目標経路Qに沿って車両2が自動走行することを指示する出力信号を生成し、当該出力信号を自動運転システム4に出力する。また、自動走行指示部26は、所定の駐車領域Pbへ車両2が入庫するように自動運転システム4に指示する機能を備えている。なお、自動運転システム4を用いて車両2を駐車領域Pbに入庫させる手法には、公知または周知の任意の手法を用いることができる。
【0016】
図2は、駐車支援装置10が実行する自動駐車制御処理のフローチャートである。
乗員が車両2に設けられたスイッチや、自身が所持する携帯型電子機器(例えばスマートフォン)を操作して自動駐車の実行指示を入力すると、かかる実行指示が駐車支援装置10に入力され、当該駐車支援装置10が同図に示す自動駐車制御処理を開始する。
自動駐車制御処理において、先ず、自車位置取得部20が車両2の現在位置Paを取得し、また、物体情報取得部22が車両2の周囲の物体Kの物体情報Aを取得する(ステップSa1)。次いで、目標経路設定部24が後述する経路設定処理(図3)を実行することで上記目標経路Qを設定する(ステップSa2)。そして、自動走行指示部26が上記出力信号を自動運転システム4に出力することで、自動運転システム4に対して自動運転を指示する(ステップSa3)。これにより、車両2が自動運転システム4の制御によって目標経路Qに沿って自動走行し、所定の駐車領域Pbへの駐車を完了することとなる。
【0017】
図3は上述の経路設定処理のフローチャートであり、図4は経路設定処理に係る説明図である。図5は経路設定処理に用いられるマルチパスMの模式図である。
目標経路設定部24は、先ず、物体情報Aに基づいて、目標経路Qを設定(仮設定)する(ステップSb1)。このとき設定される目標経路Qは、図4に示すように、現在位置Paから所定の駐車領域Pbまで、車両2が物体Kに接触することがないように走行可能な経路である。すなわち、目標経路設定部24は、ステップSb1において、車両2の周囲の物体Kの位置及び大きさに基づき、これらの物体Kに接触することなく車両2が走行可能な周囲の領域を特定し、当該周囲の領域の範囲において現在位置Paから所定の駐車領域Pbに到る経路を設定する。
【0018】
次いで、目標経路設定部24は、かかる目標経路Qを調整する経路調整処理を実行する。経路調整処理は、車両2が物体Kの傍を通過するときの乗員の不安を低減できる経路に目標経路Qを調整する処理である。
具体的には、先ず、目標経路設定部24は、図4に示すように、ステップSb1で設定した目標経路Qを複数の経路区間Qaに区切る(ステップSb2)。本実施形態では、各経路区間Qaは所定の走行距離ごとに区切られる。この所定の走行距離の長さは任意であるが、本実施形態では、10メートルから20メートル(例えば車両2の車長の数倍)に設定されている。
【0019】
次いで、目標経路設定部24は、経路区間Qaごとに経路の調整を行う。
具体的には、先ず、目標経路設定部24は、経路区間Qaの両側の端点Rの間にマルチパスMを設定する(ステップSb3)。マルチパスMは、図5に示すように、経路区間Qaの両側の端点Rの間を繋ぐ少なくとも2以上(図示例では5本)の経路MQであって、進行方向Daに直交した横方向Db(車幅方向)における車両2の通過点が互いに異なる経路MQの集合である。
【0020】
本実施形態の目標経路設定部24は、かかるマルチパスMを次のように設定する。
すなわち、目標経路設定部24は、図5に示すように、経路区間Qaにおいて、両端の端点Rまでの距離Taが等しい中間点Roを特定し、この中間点Roを通って横方向Dbに延びる直線上に所定の間隔Tbで複数の第1ノードN1を設定する。なお、進行方向Daは、両側の端点Rを直線的に結ぶ方向であり、横方向Dbは当該進行方向Daに直交する方向である。次いで、目標経路設定部24は、第1ノードN1のそれぞれごとに、対象の第1ノードN1を経由して一方の端点Rから他方の端点Rに到る経路MQを設定する。これにより、複数の経路MQを含むマルチパスMが設定される。各経路MQの設定において、目標経路設定部24は、道路や白線といった走行路の指標となる物体Kの物体情報Aが得られている場合、当該物体情報Aを参照し、当該走行路の範囲内に経路MQを設定してもよい。
【0021】
前掲図3に戻り、目標経路設定部24は、マルチパスMの各経路MQのうち、車両2が物体Kの傍を通過するときに乗員が感じる不安を低減できる経路を特定する。詳述すると、乗員の不安感は、車両2が物体Kの傍を通過するときの接触についての不安であり、当該物体Kと車両2との間の距離(以下、「車両物体間距離」と言う)が小さいほど強くなる。このため、マルチパスMの各経路MQのうち、車両物体間距離が大きい経路MQを車両2に走行させることで、不安が低減されることとなる。
【0022】
本実施形態の目標経路設定部24は、車両物体間距離が大きい経路MQを次のようにして特定している。
すなわち、先ず、目標経路設定部24は、マルチパスMの各経路MQの経路コストCを算出する(ステップSb4)。経路コストCは、対象の経路MQについての車両物体間距離に基づいて算出されるパラメータであり、車両物体間距離が大きいほど値が小さくなるパラメータである。
次いで、目標経路設定部24は、マルチパスMの各経路MQのうち、経路コストCが最小となるもの、すなわち、車両物体間距離が最大となる経路MQを特定する(ステップSb5)。そして、目標経路設定部24は、経路区間Qaのそれぞれで特定した経路MQを連結して最終的な目標経路Qを設定する(ステップSb6)。
かかる目標経路Qを車両2が走行することで、いずれの経路区間Qaにおいても、マルチパスMのうち、図6に示すように、対象の経路区間Qaに存在する物体Kから最も離れた経路MQを車両2が走行するため、物体Kの傍らを車両2が通過するときの乗員の不安感を低減することができる。
【0023】
次いで、上述の経路コストCの算出方法について詳述する。
【0024】
本実施形態の目標経路設定部24は、次のようにしてマルチパスMの各経路MQについて経路コストCを算出する。すなわち、目標経路設定部24は、マルチパスMの各経路MQに対し、図5に示すように、第1ノードN1から一定距離ごとに第2ノードN2を設定し、これら第1ノードN1及び第2ノードN2のそれぞれについてノードコストCnを算出する。ノードコストCnは、対象の第1ノードN1及び第2ノードN2に車両2が位置したときの車両物体間距離が大きいほど値が小さくなるパラメータである。本実施形態において、かかる車両物体間距離には車両側方距離rsが用いられる。
【0025】
図7は車両側方距離rsの説明図である。なお、同図において、物体Kの一例として4台の他車両Ka1-Ka4が描かれている。
車両側方距離rsは、延長車両側面2SEから物体Kまでの最短距離Lminである。図7に示すように、延長車両側面2SEは、対象の第1ノードN1及び第2ノードN2における車両2の左右の側面2Sを当該車両2の前後方向に延長した面であり、車両側方距離rs(ノードコストCn)の算出対象とする物体Kの選別の指標となる基準面である。具体的には、この延長車両側面2SEの車両前後方向の範囲Vにおいて、当該延長車両側面2SEの横方向Dbに存在する各物体K(他車両Ka1-Ka4)が車両側方距離rsの算出対象として選別される。
【0026】
図7の例では、目標経路設定部24は、延長車両側面2SEの車両前後方向の範囲Vから外れている2台の他車両Ka3、Ka4を車両側方距離rsの算出対象から除外し、残りの2台の他車両Ka1、Ka2のそれぞれを車両側方距離rsの算出対象に選択する。
【0027】
なお、目標経路設定部24は、延長車両側面2SEの車両前後方向への延長量を、対象の第1ノードN1及び第2ノードN2を車両2が通過するときの車速に比例した長さに設定している。これにより、車速が速いほど、延長車両側面2SEの車両前後方向の範囲Vが拡張され、車両2から、より遠方の物体Kも車両側方距離rs(ノードコストCn)の算出対象として選択されることとなる。
【0028】
目標経路設定部24は、車両側方距離rsの算出対象の物体Kを選択すると、これらの物体Kのそれぞれの外形(輪郭)において、延長車両側面2SEに最も近い点Uを物体情報Aに基づいて特定し、それぞれの点Uと延長車両側面2SEとの間の最短距離Lminのうち、最も短い最短距離Lminを車両側方距離rsとする。図7の例では、他車両Ka1が他車両Ka2よりも近いため、目標経路設定部24は、当該他車両Ka1の外形上の点Uから延長車両側面2SEまでの最短距離Lminを車両側方距離rsとして算出することとなる。
【0029】
次いで、目標経路設定部24は、車両側方距離rsに基づき、次の式(1)を用いて、ノードコストCnを計算する。ただし、式(1)において、αは定数である。
Cn=α/(rs×rs) (1)
【0030】
そして、目標経路設定部24は、次式(2)を用いて、経路MQごとにノードコストCnの合計コスト値を上記経路コストCとして算出する。
経路コストC=ΣノードコストCn (2)
【0031】
かかる算出により、車両側方距離rsが大きい第1ノードN1及び第2ノードN2を多く含む経路MQほど、経路コストCの値が小さくなるため、当該経路コストCに基づいて、物体Kの傍らを車両2が通過するときの車両物体間距離が大きい経路MQを確実に特定できることとなる。
【0032】
なお、目標経路設定部24は、上記式(1)を用いたノードコストCnの算出において、延長車両側面2SEに重複する物体Kが存在する場合(すなわち、最短距離Lminがゼロ以下であり、車両2と衝突し得る物体Kが存在する場合)、ノードコストCnの値を非常に大きな値に設定する。これにより、車両2が物体Kと衝突し得る経路MQが最終的な目標経路Qに含まれることを確実に防止できる。
【0033】
また、本実施形態では、車両2が物体Kの傍らを通過するときの車両側方距離rsが比較的小さくなる場合には、車速を低速にすることで、乗員がより安心感を抱くようにする制御が実行される。
【0034】
具体的には、前掲図2に示した自動駐車制御処理のステップSa3において、自動走行指示部26は、出力信号を自動運転システム4に出力する際に、次の処理を実行する。すなわち、自動走行指示部26は、目標経路設定部24によって最終的に設定された目標経路Qに、ノードコストCnが所定値以上の第1ノードN1又は第2ノードN2が含まれているか否か、すなわち、所定値以下の車両側方距離rsで物体Kの傍らを車両2が通過する第1ノードN1又は第2ノードN2が含まれているか否かを判定する。そして、自動走行指示部26は、該当する第1ノードN1又は第2ノードN2が含まれている場合、該当の第1ノードN1又は第2ノードN2を通過するときの車速を通常車速よりも遅い所定の速度以下(低速)とするように自動運転システム4に指示する出力信号を出力する。
【0035】
より具体的には、例えば図8に示すように、ある第2ノードN2AのノードコストCnが所定値を超えている場合、自動走行指示部26は、当該第2ノードN2Aを通過する前の第2ノードN2A-1から車両2が通常車速(自動走行時の車速として予め設定されている車速)から減速し、当該第2ノードN2Aを通過した後の第2ノードN2A-2から車両2が通常車速に戻るように加速させる指示を出力する。
これにより、所定値以下の車両側方距離rsで物体Kの傍らを車両2が通過するときには、物体Kの手前から車両2が減速し、十分に低速になった状態で車両2が物体Kの傍らを通過するため、乗員は安心感を抱くことができる。
【0036】
なお、自動走行指示部26は、ノードコストCnが所定の閾値よりも小さい場合、すなわち、所定の閾値以上の車両側方距離rsで物体Kの傍らを車両2が通過する場合には、通常車速よりも車両2の車速を上げる指示を出力してもよい。
【0037】
本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0038】
本実施形態の駐車支援装置10は、車両2の現在位置Paと所定の駐車領域Pbの間に複数の経路MQを設定し、前記複数の経路MQのうち、前記物体Kとの距離が最も長い経路MQを特定し、特定した経路MQに基づいて、現在位置Paから所定の駐車領域Pbまで車両2が走行する目標経路Qを設定する目標経路設定部24を備える。
この構成によれば、物体Kから最も離れた経路MQが目標経路Qに設定されるため、物体Kの近くを通過する場合に比べ、乗員は物体Kの傍らを車両2が通過する際に感じる不安を低減できる。
【0039】
本実施形態の駐車支援装置10において、上記目標経路設定部24は、複数の経路MQのそれぞれに第1ノードN1及び第2ノードN2を設定し、第1ノードN1及び第2ノードN2のそれぞれについて、当該第1ノードN1及び第2ノードN2と物体Kとの距離が大きいほど値が小さくなるノードコストCnを算出する。次いで、上記目標経路設定部24は、複数の経路MQのそれぞれについて、当該経路MQに含まれている第1ノードN1及び第2ノードN2のそれぞれのノードコストCnを合計した値である経路コストCを算出する。そして、上記目標経路設定部24は、複数の経路MQのうち、経路コストCが最も小さい経路MQを特定し、特定した経路MQに基づいて目標経路Qを設定する。
この構成によれば、複数の経路MQのそれぞれについて、経路MQと物体Kとの距離を定量化し、正確に比較することができる。
【0040】
本実施形態の駐車支援装置10において、ノードコストCnは、第1ノードN1及び第2ノードN2に位置した車両2の側面2Sと物体Kとの最短距離Lminが大きいほど小さな値となるパラメータである。
これにより、物体Kの傍らを車両2が通過するとき(すなわち車両2の側方に物体Kが位置するとき)の車両2と物体Kの最短距離Lminに基づくノードコストCnを算出できる。
【0041】
本実施形態の駐車支援装置10において、上記目標経路設定部24は、第1ノードN1及び第2ノードN2に位置した車両2の側面2Sを、車両2の車速に応じて車両前後方向に延長した延長車両側面2SEの範囲Vに存在する物体Kを対象にノードコストCnを算出する。
これにより、第1ノードN1及び第2ノードN2を車両2が通過するときに、車両2の傍らに存在する物体Kだけを対象にノードコストCnを算出することができる。
【0042】
本実施形態の駐車支援装置10は、目標経路設定部24によって設定された目標経路Qに、ノードコストCnが所定値以上の第1ノードN1及び第2ノードN2が含まれている場合、ノードコストCnが所定値以上の第1ノードN1及び第2ノードN2を通過するときの車速を所定速度以下とするように自動運転システム4に指示する前記自動走行指示部26を備える。
この構成によれば、ノードコストCnが所定値以上となるほど短い車両側方距離rsで物体Kの傍らを車両2が通過するときには、車両2が所定速度以下まで減速する。これにより、十分に低速になった状態で車両2が物体Kの傍らを通過するため、乗員は車両側方距離rsが比較的短い場合でも安心感を抱くことができる。
【0043】
本実施形態の駐車支援装置10において、上記目標経路設定部24は、現在位置Paから所定の駐車領域Pbに到る目標経路Qを複数の経路区間Qaに区切り、これらの経路区間Qaごとに複数の経路MQ(マルチパスM)を設定し、経路区間Qaのそれぞれにおいて物体Kとの距離が最も長い経路MQを特定し、特定した各経路MQに基づいて目標経路Qを設定する。
この構成によれば、例えば目標経路Qの経路長が比較的長くなり、目標経路Qが多数の物体Kの傍らを延びる経路である場合でも、目標経路Qが複数の経路区間Qaに区切られ、それぞれの経路区間Qaにおいて物体Kとの距離が最も長い経路MQが特定されるため、乗員に不安を生じさせない距離を、それぞれの物体Kとの間に確保した目標経路Qを正確に設定することができる。
【0044】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
【0045】
例えば、前掲図2に示した自動駐車制御処理において、自動走行指示部26が自動運転システム4に指示を出力した後(ステップSb3)、駐車支援装置10は、物体検出部6の物体検出信号6Sに基づいて、目標経路Qに向かって移動する物体K(例えば、他車両や歩行者など)の有無を監視し、当該物体Kを検出した場合に自動走行指示部26が車両2の停止を自動運転システム4に指示してもよい。
【0046】
また例えば、目標経路設定部24は、物体Kの移動速度をノードコストCnに反映してもよい。例えば、目標経路設定部24は、第1ノードN1及び第2ノードN2への物体Kの移動速度が速いほどノードコストCnの値を大きくする。
【0047】
上述した実施形態において、図1に示す機能ブロックは、本願発明を理解容易にするために、駐車支援システム1、及び駐車支援装置10の構成要素を主な処理内容に応じて分類して示した概略図である。
したがって、駐車支援システム1、及び駐車支援装置10の構成要素は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素(機能ブロック)に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
さらに、図1に示す駐車支援装置10の各構成要素の処理は、1つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアにより実行されてもよい。また、各構成要素の処理は、1つのプログラムで実現されてもよいし、複数のプログラムで実現されてもよい。
【0048】
上述した実施形態における水平、及び垂直等の方向や各種の数値、形状、材料は、特段の断りがない限り、それら方向や数値、形状、材料と同じ作用効果を奏する範囲(いわゆる均等の範囲)を含む。
【符号の説明】
【0049】
1 駐車支援システム
2 車両
10 駐車支援装置
K 物体
Lmin 最短距離
M マルチパス
Q 目標経路
rs 車両側方距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8