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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075467
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】電気装置およびポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/33 20160101AFI20230524BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
H02K11/33
H02K5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188390
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】矢沢 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 岳
【テーマコード(参考)】
5H605
5H611
【Fターム(参考)】
5H605AA08
5H605BB07
5H605BB14
5H605BB17
5H605CC06
5H605EC01
5H605EC05
5H605GG03
5H605GG06
5H611AA03
5H611BB01
5H611TT01
5H611TT05
5H611TT06
5H611UA04
5H611UB01
(57)【要約】
【課題】電気装置のハウジングに固定される基板に搭載される電子素子の質量に起因する端子半田付け部の損傷を抑制する。
【解決手段】ポンプ装置1のモータ10において、基板19は、巻線端子71が接続される第1端子半田付け部191、コネクタ端子75が接続される第2端子半田付け部192を備える。基板19は、第1固定部97および第2固定部98の2箇所でハウジング6に固定される。基板19上において最も質量が大きい最大質量素子である第1電子素子E1と、2箇所の固定部のうちで第1電子素子E1に最も近い近接固定部Aである第2固定部98との距離を第1距離d1とし、近接固定部Aと、複数の第1端子半田付け部191および複数の第2端子半田付け部192のうちで近接固定部Aに対して最も近い近接半田部Bとの距離を第2距離d2とする場合に、第1距離d1は、第2距離d2よりも小さい。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングに収容される電力消費部と、前記ハウジングの端部に固定される基板と、を有し、
前記基板は、前記電力消費部に接続される電力供給端子、および、前記ハウジングに保持されるコネクタ端子を含む複数の端子がそれぞれ1本ずつ半田付けされる複数の端子半田付け部を備え、
前記基板の縁を前記ハウジングに対して固定する固定部が2箇所に設けられ、
前記基板に固定される電子素子のうちで最も質量が大きい最大質量素子と、前記2箇所の固定部のうちで前記最大質量素子に最も近い近接固定部との距離を第1距離とし、
前記近接固定部と、前記複数の端子半田付け部のうちで前記近接固定部に対して最も近い近接半田部との距離を第2距離とする場合に、
前記第1距離は、前記第2距離よりも小さいことを特徴とする電気装置。
【請求項2】
前記最大質量素子は、前記2箇所の固定部を結ぶ仮想線上に配置されることを特徴とする請求項1に記載の電気装置。
【請求項3】
前記基板において、前記2箇所の固定部を結ぶ仮想線に対して一方側を第1領域とし、前記仮想線に対して前記第1領域とは反対側を第2領域とする場合に、
前記最大質量素子は、前記第1領域と前記第2領域のうちで面積が小さい側の領域に配置されることを特徴とする請求項1に記載の電気装置。
【請求項4】
前記基板は、円形もしくは前記円形の一部を切り欠いた形状であり、
前記2箇所の固定部を結ぶ仮想線は、前記円形の中心から外れた位置に位置し、
前記基板において、前記仮想線に対して一方側を第1領域とし、前記仮想線に対して前記第1領域とは反対側を第2領域とする場合に、
前記最大質量素子は、前記第1領域と前記第2領域のうちで前記中心を含まない側の領域に配置されることを特徴とする請求項1に記載の電気装置。
【請求項5】
前記複数の端子半田付け部は、前記コネクタ端子が半田付けされる第1端子半田付け部と、前記電力供給端子が接続される第2端子半田付け部を備え、
前記基板において、前記2箇所の固定部を結ぶ仮想線に対して一方側を第1領域とし、前記仮想線に対して前記第1領域とは反対側を第2領域とする場合に、
前記第1端子半田付け部は、前記第1領域と前記第2領域の一方に配置され、
前記第2端子半田付け部は、前記第1領域と前記第2領域の他方に配置されることを特徴とする請求項1に記載の電気装置。
【請求項6】
前記最大質量素子は、コンデンサであり、前記電子素子は、前記コンデンサの次に質量が大きいノイズカットフィルター素子を含み、
前記第1端子半田付け部、前記コンデンサ、および前記ノイズカットフィルター素子は、前記第1領域と前記第2領域のうちで面積が小さい側の領域に配置され、
前記ノイズカットフィルターは、前記コンデンサよりも前記第1端子半田付け部に近い位置に配置されることを特徴とする請求項5に記載の電気装置。
【請求項7】
前記固定部は、ねじまたはカシメにより前記ハウジングに固定されることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の電気装置。
【請求項8】
前記ハウジングは、前記基板の周りを囲む壁部を備え、
前記2箇所の固定部では、それぞれ、前記ハウジングにおいて前記壁部から離間する位置に設けられた柱状部に対して前記基板が接する状態で前記ねじが前記基板を貫通して前
記柱状部に止められていることを特徴とする請求項7に記載の電気装置。
【請求項9】
前記ハウジングには、周方向に並ぶ複数の突極を備えるステータコアおよび前記突極に巻かれるコイルを備えるステータが収容され、前記ステータの内側にロータが配置され、
前記電力消費部は、前記コイルであり、
前記電力供給端子は、前記コイルに接続される巻線端子であり、
前記コイルに通電することにより、前記ステータに対して前記ロータを回転させるモータであることを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載の電気装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電気装置と、前記電気装置によって回転駆動されるインペラと、を有することを特徴とするポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田により端子が接続される基板を備える電気装置、およびポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロータおよびステータを収容するハウジングを備えるモータが記載される。特許文献1に記載のモータにおいて、ハウジングには複数のコネクタ端子が接続される。ハウジングの端部には、コネクタ端子と巻線端子とを電気的に接続する基板が固定される。基板の外周縁には、ねじによってハウジングに固定される固定部が設けられている。コネクタ端子と巻線端子は、基板の外周縁に沿って並んでおり、基板を貫通する穴に通されて半田付けされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国実用新案登録第209233673号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、基板をハウジングにねじで固定する固定部が1箇所であるため、外部振動によって基板が撓みやすい。そこで、固定部を2箇所設けて基板を2箇所でハウジングに固定することにより、基板の撓みを低減させることが提案されている。
【0005】
しかしながら、基板にコンデンサなどの質量の大きい素子が搭載される場合、外部振動が加わったときに素子の位置に加わるモーメント力が大きい。そのため、基板を2箇所で固定した場合でも基板の変形量が大きくなり、端子を基板に半田付けした個所(端子半田付け部)の変形量が大きくなり、半田に大きなストレスが加わって半田クラックが発生するおそれがある。半田クラックが発生した箇所は導通不良となるおそれがある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、基板に搭載される素子の質量に起因する端子半田付け部の導通不良を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の電気装置は、ハウジングと、前記ハウジングに収容される電力消費部と、前記ハウジングの端部に固定される基板と、を有し、前記基板は、前記電力消費部に接続される電力供給端子、および、前記ハウジングに保持されるコネクタ端子を含む複数の端子がそれぞれ1本ずつ半田付けされる複数の端子半田付け部を備え、前記基板の縁を前記ハウジングに対して固定する固定部が2箇所に設けられ、前記基板に固定される電子素子のうちで最も質量が大きい最大質量素子と、前記2箇所の固定部のうちで前記最大質量素子に最も近い近接固定部との距離を第1距離とし、前記近接固定部と、前記複数の端子半田付け部のうちで前記近接固定部に対して最も近い近接半田部との距離を第2距離とする場合に、前記第1距離は、前記第2距離よりも小さいことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ハウジングと基板とが2箇所で固定されるため、1箇所で固定される場合よりも基板の撓みが少ない。基板の撓みを少なくすることにより、端子半田付け部に加わる応力を減らすことができるので、端子半田付け部の損傷を抑制できる。また、本発明では、基板に固定される最大質量素子と、最大質量素子に最も近い固定部(近接固定部
)との距離(第1距離)が、近接固定部に最も近い端子半田付け部(近接半田部)と近接固定部との距離(第2距離)よりも小さい。これにより、最大質量素子から基板に加わるモーメント力に起因する端子半田付け部の損傷を抑制できる。すなわち、上記のレイアウトにより、近接半田部の撓みが小さくなり、他の端子半田付け部の撓みも小さい。従って、端子半田付け部に加わる応力を減らすことができ、端子半田付け部の損傷を抑制できる。よって、端子半田付け部の導通不良を抑制できる。
【0009】
本発明において、前記最大質量素子は、前記2箇所の固定部を結ぶ仮想線上に配置されることが好ましい。このようにすると、最大質量素子からのモーメント力が加わる位置が変形しにくい。従って、基板の最大変形量を小さくできるので、端子半田付け部の撓みを小さくすることができる。よって、端子半田付け部の損傷を抑制でき、端子半田付け部の導通不良を抑制できる。
【0010】
本発明において、前記基板において、前記2箇所の固定部を結ぶ仮想線に対して一方側を第1領域とし、前記仮想線に対して前記第1領域とは反対側を第2領域とする場合に、前記最大質量素子は、前記第1領域と前記第2領域のうちで面積が小さい側の領域に配置されることが好ましい。このようにすると、最大質量素子からのモーメント力が加わる領域が変形しにくい。従って、基板の最大変形量を小さくできるので、端子半田付け部の撓みを小さくすることができる。よって、端子半田付け部の損傷を抑制でき、端子半田付け部の導通不良を抑制できる。
【0011】
本発明において、前記基板は、円形もしくは前記円形の一部を切り欠いた形状であり、前記2箇所の固定部を結ぶ仮想線は、前記円形の中心から外れた位置に位置し、前記基板において、前記仮想線に対して一方側を第1領域とし、前記仮想線に対して前記第1領域とは反対側を第2領域とする場合に、前記最大質量素子は、前記第1領域と前記第2領域のうちで前記中心を含まない側の領域に配置されることが好ましい。このようにすると、円形の基板において、固定部を結ぶ仮想線が基板の中心を通らない場合に、最大質量素子からのモーメント力が加わる領域が変形しにくい。従って、基板の最大変形量を小さくできるので、端子半田付け部の撓みを小さくすることができる。よって、端子半田付け部の損傷を抑制でき、端子半田付け部の導通不良を抑制できる。
【0012】
本発明において、前記複数の端子半田付け部は、前記コネクタ端子が半田付けされる第1端子半田付け部と、前記電力供給端子が接続される第2端子半田付け部を備え、前記基板において、前記2箇所の固定部を結ぶ仮想線に対して一方側を第1領域とし、前記仮想線に対して前記第1領域とは反対側を第2領域とする場合に、前記第1端子半田付け部は、前記第1領域と前記第2領域の一方に配置され、前記第2端子半田付け部は、前記第1領域と前記第2領域の他方に配置されることが好ましい。このようにすると、第1端子半田付け部と第2端子半田付け部が分散して配置されるため、固定部と端子半田付け部との距離を大きくしやすい。従って、ハウジングと基板との熱膨張係数の違いによって固定部に応力が発生しても、かかる応力が端子半田付け部に伝わりにくい。よって、端子半田付け部の損傷を抑制できる。
【0013】
本発明において、前記最大質量素子は、コンデンサであり、前記電子素子は、前記コンデンサの次に質量が大きいノイズカットフィルター素子を含み、前記第1端子半田付け部、前記コンデンサ、および前記ノイズカットフィルター素子は、前記第1領域と前記第2領域のうちで面積が小さい側の領域に配置され、前記ノイズカットフィルターは、前記コンデンサよりも前記第1端子半田付け部に近い位置に配置される構成とすることができる。このようにすると、質量の大きい2個の電子素子(コンデンサ、ノイズカットフィルター素子)をいずれも基板の変形量が小さい側に配置できるので、基板の最大変形量を小さくすることができる。従って、端子半田付け部の損傷を抑制できる。また、この配置は、
コネクタ端子(第1端子半田付け部)、ノイズフィルター素子、コンデンサの順で基板上に配列できるため、基板上に給電用の回路を構成する際に、素子間の接続が容易である。
【0014】
本発明において、前記固定部は、ねじもしくはカシメにより前記ハウジングに固定されることが好ましい。このようにすると、基板をハウジングに対して強固に固定できる。
【0015】
本発明において、前記ハウジングは、前記基板の周りを囲む壁部を備え、前記2箇所の固定部では、それぞれ、前記ハウジングにおいて前記壁部から離間する位置に設けられた柱状部に対して前記基板が接する状態で前記ねじが前記基板を貫通して前記柱状部に止められていることが好ましい。このようにすると、温度変化によってハウジングが膨張や収縮しても、かかる変形に起因する応力が壁部から柱状部を介して基板に伝わりにくい。よって、基板上の端子半田付け部の損傷を抑制できる。
【0016】
本発明に係る電気装置はモータとして用いることができ、この場合は、前記ハウジングには、周方向に並ぶ複数の突極を備えるステータコアおよび前記突極に巻かれるコイルを備えるステータが収容され、前記ステータの内側にロータが配置され、前記電力消費部は、前記コイルであり、前記電力供給端子は、前記コイルに接続される巻線端子であり、前記コイルに通電することにより、前記ステータに対して前記ロータを回転させる。このようにすると、モータの巻線端子およびコネクタ端子が半田付けされる基板において、端子半田付け部の損傷を抑制でき、端子半田付け部の導通不良を抑制できる。
【0017】
本発明に係るモータはポンプ装置に用いることができ、この場合は、ポンプ装置には、上記の電気装置(すなわち、モータ)によって回転駆動されるインペラが設けられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ハウジングと基板とが2箇所で固定されるため、1箇所で固定される場合よりも基板の撓みが少ない。基板の撓みを少なくすることにより、端子半田付け部に加わる応力を減らすことができるので、端子半田付け部の損傷を抑制できる。また、本発明では、基板に固定される最大質量素子と、最大質量素子に最も近い固定部(近接固定部)との距離(第1距離)が、近接固定部に最も近い端子半田付け部(近接半田部)と近接固定部との距離(第2距離)よりも小さい。これにより、最大質量素子から基板に加わるモーメント力に起因する端子半田付け部の損傷を抑制できる。すなわち、上記のレイアウトにより、近接半田部の撓みが小さくなり、他の端子半田付け部の撓みも小さい。従って、端子半田付け部に加わる応力を減らすことができ、端子半田付け部の損傷を抑制できる。よって、端子半田付け部の導通不良を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明を適用したポンプ装置の斜視図である。
図2図1に示すポンプ装置の断面図である。
図3図1に示すポンプ装置からカバーを外した状態を示す分解斜視図である。
図4図3に示す状態から基板を外した状態を示す分解斜視図である。
図5】基板をハウジングに固定する固定部、端子半田付け部、および電子素子のレイアウトを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係るモータおよびポンプ装置を説明する。以下の説明において、軸線方向とは、モータ10の中心軸線Lが延在している方向を意味し、径方向の内側および径方向の外側における径方向とは、中心軸線Lを中心とする半径方向を意味し、周方向とは、中心軸線Lを中心とする回転方向を意味する。
【0021】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したポンプ装置1の斜視図である。図2は、図1に示すポンプ装置1の断面図である。図1図2に示すように、ポンプ装置1は、吸入管21および吐出管22を備えたケース2と、ケース2に対して軸線方向の一方側L1に配置されたモータ10と、ケース2の内部のポンプ室20に配置されたインペラ25とを有する。インペラ25は、モータ10によって中心軸線L周りに回転駆動される。モータ10は、円筒状のステータ3と、ステータ3の内側に配置されたロータ4と、ステータ3を覆う樹脂製のハウジング6と、ロータ4を回転可能に支持する丸棒状の支軸5とを備える。支軸5は、金属製あるいはセラミック製である。本形態のポンプ装置1において、ポンプ室20を流れる流体は液体であり、ポンプ装置1は、環境温度や流体温度が変化しやすい条件で使用される。
【0022】
図2に示すように、ポンプ室20は、ケース2とハウジング6との間に設けられている。ケース2は、ポンプ室20の軸線方向の他方側L2の壁面23、および周方向に延在する側壁29を構成する。図1に示すように、ケース2は、モータ10の中心軸線Lに沿って延在する吸入管21と、モータ10の中心軸線Lに対して直交する方向に延在する吐出管22とを備える。吸入管21は、中心軸線Lに対して同心状に設けられている。
【0023】
モータ10において、ステータ3は、ステータコア31と、ステータコア31に保持されたインシュレータ32、33と、ステータコア31にインシュレータ32、33を介して巻回されたコイル35とを有する。
【0024】
ロータ4は、中心軸線Lに沿って延在する円筒部40を備える。円筒部40は、ステータ3の径方向の内側からポンプ室20に向けて延在し、ポンプ室20で開口している。円筒部40の外周面には、円筒状の磁石47が保持される。磁石47は、ステータ3に径方向の内側で対向する。磁石47は、例えば、ネオジムボンド磁石である。
【0025】
ロータ4において、円筒部40の軸線方向の他方側L2の端部には、円板状のフランジ部45が形成されており、フランジ部45には、軸線方向の他方側L2から円板26が連結される。円板26の中央には中央穴260が形成されている。円板26のフランジ部45と対向する面には、中央穴260の周囲から円弧状に湾曲しながら径方向の外側に延在する複数の羽根部261が等角度間隔に形成されており、円板26は、羽根部261を介してフランジ部45に固定される。従って、フランジ部45と円板26とによって、ロータ4の円筒部40に接続されたインペラ25が構成される。本形態において、円板26は、径方向の外側に向かうにしたがってフランジ部45の側に向かう方向に傾いている。
【0026】
ロータ4において、円筒部40の径方向の内側には円筒状のラジアル軸受11がカシメ等の方法で保持される。ロータ4は、ラジアル軸受11を介して支軸5に回転可能に支持される。支軸5の軸線方向の一方側L1の端部は、ハウジング6の底壁63に形成された軸穴65に保持される。ケース2には、支軸5の他方側L2の端部にポンプ室20の側で対向して支軸5のポンプ室20側への可動範囲を制限する受け部280が形成されている。ケース2は、吸入管21の内周面からモータ10の側に延在する3本の支持部27を備える。支持部27の端部には、支軸5が内側に位置する筒部28が形成されており、筒部28の軸線方向の他方側L2の底部に受け部280が設けられている。支軸5の他方側L2の端部には円環状のスラスト軸受12が装着されており、スラスト軸受12は、ラジアル軸受11と筒部28の間に配置されている。ここで、支軸5の一方側L1の端部および軸穴65は、少なくとも一部が断面D字形状である。また、支軸5の他方側L2の端部およびスラスト軸受12の穴は断面D字形状である。従って、ハウジング6に対する支軸5およびスラスト軸受12の回転が阻止される。
【0027】
ハウジング6は、ステータ3を径方向の両側、および軸線方向の両側から覆う樹脂封止部材60である。樹脂封止部材60は、ポリフェニレンサルファイド(PPS:Polyphenylene Sulfide)からなる。ステータ3は、インサート成形により樹脂封止部材60と一体化される。ハウジング6は、ポンプ室20の軸線方向の他方側L2の壁面23に対向する第1隔壁部61と、ステータ3と磁石47との間に介在する第2隔壁部62と、第2隔壁部62の一方側L1の端に設けられた底壁63とを有する隔壁部材である。また、ハウジング6は、ステータ3を径方向の外側から覆う円筒状の胴部66を備える。
【0028】
図3は、図1に示すポンプ装置1からカバー18を外した状態を示す分解斜視図である。図4は、図3に示す状態から基板19を外した状態を示す分解斜視図である。なお、図3および図4は、図1および図2に対して軸線方向に反転した方向から見た図であり、軸線方向の一方側L1を図面の上側としている。
【0029】
図2図3に示すように、ハウジング6の軸線方向の一方側L1の端部64には、軸線方向の一方側L1からカバー18が固定される。カバー18とハウジング6の底壁63との間には、コイル35に対する給電を制御する回路が設けられた基板19が配置される。
【0030】
図3図4に示すように、基板19およびハウジング6は、基板19の縁とハウジング6とを固定する固定部を2箇所に備える。本形態では、固定部として、第1固定部97と、第1固定部97に対して周方向に離間した第2固定部98とを備える。第2固定部98は、第1固定部97に対して径方向で反対側の位置から周方向にずれた位置に設けられている。ハウジング6は、底壁63から軸線方向の一方側L1に突出した第1柱状部67と、第1柱状部67に対して周方向に離間した位置において底壁63から軸線方向の一方側L1に突出した第2柱状部68を備える。また、基板19の縁には、周方向で離間した2箇所に切り欠き197、198が設けられている。一方の切り欠き197を貫通する第1ねじ91を第1柱状部67に止めることによって第1固定部97が構成され、他方の切り欠き198を貫通する第2ねじ92を第2柱状部68に止めることによって第2固定部98が構成される。第1ねじ91および第2ねじ92は、タッピングねじからなる。
【0031】
基板19には、ステータ3からハウジング6の底壁63を貫通して軸線方向の一方側L1に突出した金属製の巻線端子71が半田により接続された複数の第1端子半田付け部191と、ハウジング6に保持された金属製のコネクタ端子75が半田によって接続された第2端子半田付け部192とが設けられている。基板19には、第2端子半田付け部192と第1端子半田付け部191とを電気的に接続する回路が実装される。基板19に実装される回路は、後述する第1電子素子E1、第2電子素子E2、第3電子素子E3を含む複数の電子素子、および配線パターンによって構成される(図5参照)。
【0032】
ハウジング6は、ステータ3の外周側を囲む胴部66から径方向外側へ延びる筒状のコネクタハウジング69を備える。コネクタ端子75は、一端が基板19に接続され、他端がコネクタハウジング69の内側に位置する形状に曲げられている。従って、コネクタハウジング69にコネクタを連結すると、基板19に実装される回路で生成された駆動電流が第1端子半田付け部191および巻線端子71を介して各コイル35に供給される。その結果、ロータ4がモータ10の中心軸線L周りに回転する。これにより、ポンプ室20内でインペラ25が回転してポンプ室20の内部が負圧となるため、流体は吸入管21からポンプ室20に吸い込まれて、吐出管22から吐出される。
【0033】
図2に示すように、ステータ3において、ステータコア31は、円環状に延在する円環部311と、円環部311から径方向の内側へ突出する複数の突極312を備える。突極312は、一定のピッチで周方向に配列される。ステータコア31は、磁性材料からなる
薄い磁性板が積層されて形成された積層コアである。本形態において、ステータコア31は、直線状に延在する部材を円環状に曲げた後、円環部311の端部同士を溶接することにより製造される。
【0034】
インシュレータ32は、ステータコア31に対して軸線方向の一方側L1から重なり、インシュレータ33は、ステータコア31に対して軸線方向の他方側から重なる。インシュレータ32、33は、それぞれ、複数の突極312の各々に対応して周方向に分割された複数の分割インシュレータ320、330を備える。各分割インシュレータ320は、ステータコア31の円環部311に軸線方向から重なる外周側部分321と、突極312の径方向内側の端部で軸線方向に突出した内周側部分322と、外周側部分321と内周側部分322とを繋ぐ筒部形成部分323とを備える。同様に、各分割インシュレータ330は、ステータコア31の円環部311に軸線方向から重なる外周側部分331と、突極312の径方向内側の端部で軸線方向に突出した内周側部分332と、外周側部分331と内周側部分332とを繋ぐ筒部形成部分333とを備える。コイル35は、筒部形成部分323、333を介して突極312に巻回される。
【0035】
モータ10は3相モータである。従って、複数のコイル35は、U相コイル、V相コイル、およびW相コイルによって構成される。U相コイル、V相コイル、およびW相コイルは、周方向に順に配置される。本形態において、U相コイル、V相コイル、およびW相コイルは各々、3つずつ配置されており、コイル35の総数は計9個である。従って、分割インシュレータ320、330はそれぞれ9個配置されており、9個の分割インシュレータ320、330は同一の構成である。
【0036】
本形態では、3個のU相コイルは1本の巻線350で構成される。V相コイルおよびW相コイルも同様である。図2に示すように、9個の分割インシュレータ330の外周側部分321の外面には、コイル35を巻回する際に周方向に延びる巻線350(渡り線)を配置するガイド溝335が設けられている。
【0037】
(巻線端子)
図4に示すように、ハウジング6には、4本の巻線端子71(71(U)、71(V)、71(W)、71(C))が保持される。各巻線端子71は、胴部66の内周面に沿って周方向に配列される。4本の巻線端子71は、それぞれ、径方向に板厚方向を向けた板部710と、板部710の軸線方向の一方側L1において軸線方向に延びる基板接続部711と、板部710と基板接続部711との間で周方向に折り返す形状に蛇行する弾性部712を備える。また、巻線端子71は、板部710から軸線方向の他方側L2に延びて分割インシュレータ320に保持される脚部(図示せず)と、巻線350を保持する形状に曲げられた巻線保持部(図示せず)を備える。板部710の大部分と巻線保持部は、インサート成形によりハウジング6(樹脂封止部材60)に覆われており、弾性部712および基板接続部711は、ハウジング6の底壁63の一方側L1へ突出している。
【0038】
3個のU相コイルのうちの1つに対応する分割インシュレータ320には、U相コイルを構成する1本の巻線350の巻き始め側の端部に接続される巻線端子71(U)が保持される。3個のV相コイルのうちの1つに対応する分割インシュレータ320には、V相コイルを構成する1本の巻線350の巻き始め側の端部に接続される巻線端子71(V)が保持される。3個のW相コイルのうちの1つに対応する分割インシュレータ320には、W相コイルを構成する1本の巻線350の巻き始め側の端部に接続される巻線端子71(W)が保持される。更に、別の1つの分割インシュレータ320には、コモン端子(図示せず)と、コモン端子に接続される巻線端子71(C)が保持される。
【0039】
図3に示すように、巻線端子71の基板接続部711を基板19の穴に挿入して半田付
けすることにより、第2端子半田付け部192が構成される。巻線端子71には、脚部を介して分割インシュレータ320に固定される板部710と、基板19に半田付けされる基板接続部711との間に弾性部712が設けられているため、巻線端子71に加わった応力を弾性部712によって吸収できる。従って、巻線端子71から基板19への応力の伝達を弾性部712によって抑制できる。例えば、基板19に加わる応力によって基板19が撓む際、第2端子半田付け部192に応力が加わって第2端子半田付け部192の半田が損傷することを抑制できる。また、モータ10を駆動した際、コイル35で発生した熱が巻線端子71に伝わって巻線端子71が熱膨張した場合でも、巻線端子71を介して基板19に応力が加わることを抑制できるので、基板19が撓んで回路が損傷することを抑制できる。さらに、ステータ3を樹脂封止する際に、樹脂からの熱で巻線端子71が熱膨張したときでも、巻線端子71を介して基板19に応力が加わることを抑制でき、基板19が撓んで回路が損傷することを抑制できる。
【0040】
(基板)
図5は、基板19をハウジング6に固定する固定部、端子半田付け部、および電子素子のレイアウトを示す説明図である。本明細書において、モータ10の中心軸線Lに直交する方向を第1方向Xとし、中心軸線Lに直交し且つ第1方向Xに直交する方向を第2方向Yとする。第2方向Yは、コネクタハウジング69の周方向の中央と、モータ10の中心軸線Lとを結ぶ方向である。図5には、第1方向Xにおける基板19の中央線Cx、および第2方向Yにおける基板19の中央線Cyを一点鎖線で示す。中央線Cx、Cyの交点は、基板19の中心点Pである。モータ10の中心軸線Lは、基板19の中心点Pと交差する。
【0041】
図3図4図5に示すように、基板19は、モータ10の中心軸線Lを中心とする円形の一部を径方向に対して直交する直線で切り欠いた平面形状である。従って、基板19の外周縁は、円弧部19aと、径方向に対して直交する直線部19bを備える。ハウジング6の一方側L1の端部64は、基板19の円弧部19aの周りを囲む円弧状の壁部640と、基板19の直線部19bに沿って直線状に延びる平面部641を備える(図4参照)。平面部641は、第1方向Xに延びており、コネクタハウジング69の径方向内側に配置される。
【0042】
基板19の外周縁には、円弧状の壁部640から径方向内側に突出した係止突部645が嵌る係止凹部199が設けられている。基板19は、係止突部645と係止凹部199によって周方向で位置決めされる。図5に示すように、係止突部645および係止凹部199は、第1方向Xにおける基板19の中央線Cxに対して第2方向Yの一方側L1(すなわち、直線部19bとは径方向で反対側)において、周方向に離間した3個所に配置される。周方向の中央に位置する係止突部645と係止凹部199は、中央線Cxの近傍に配置される。他の2箇所の係止突部645と係止凹部199は、中央線Cxを挟んで反対側に配置され、中央線Cyの近傍に配置される。
【0043】
基板19とハウジング6とを固定する2箇所の固定部(第1固定部97および第2固定部98)と、複数の第1端子半田付け部191および複数の第2端子半田付け部192は、基板19の外周縁に沿うように配置される。
【0044】
図5に示すように、第1固定部97および第2固定部98は、第1方向Xの中央線Cxを基準として対称な位置に配置される。第1固定部97は、第1方向Xにおける基板19の中央より一方側X1に配置され、第2固定部98は、第1方向Xにおける基板19の中央より他方側X2に配置される。また、第1固定部97および第2固定部98は、第2方向Yにおける基板19の中央から外れた位置に配置され、第2方向Yの中央線Cyよりも第2方向の他方側Y2に配置される。
【0045】
図5には、第1固定部97と第2固定部98とを結ぶ仮想線Sを二点鎖線で示す。仮想線Sは、第1方向Xに延びており、第2方向Yに直交する。仮想線Sは、中央線Cx、Cyの交点(すなわち、基板19の中心点P)から外れた位置に位置しており、中心点Pに対して第2方向Yの他方側Y2にシフトした位置にある。
【0046】
複数の第1端子半田付け部191は、仮想線Sに対して第2方向Yの一方側Y1に位置する。本形態では、巻線端子71の本数は4であり、第1端子半田付け部191は4箇所である。4箇所の第1端子半田付け部191は、円弧部19aに沿って周方向に並ぶ。4箇所の第1端子半田付け部191は、第1方向Xにおける基板19の中央線Cxを基準として、第1方向Xの一方側X1と他方側X2にそれぞれ2箇所ずつ分散配置される。
【0047】
複数の第2端子半田付け部192は、仮想線Sに対して第2方向Yの他方側Y2に位置する。本形態では、コネクタ端子75の本数は4であり、第2端子半田付け部192は4箇所である。4箇所の第2端子半田付け部192は、直線部19bに沿って第1方向Xに一定間隔で並ぶ。4箇所の第2端子半田付け部192は、第1方向Xにおける基板19の中央線Cxを基準として、第1方向Xの一方側X1と他方側X2にそれぞれ2か所ずつ分散配置される。
【0048】
このように、本形態では、複数の第1端子半田付け部191が配置されている角度範囲、および、複数の第2端子半田付け部192が配置されている角度範囲はいずれも、基板19の第1方向Xの中央を含む領域である。
【0049】
(電子素子のレイアウト)
基板19には、コイル35に対して駆動電流を供給するための回路が実装されており、カバー18とは反対側の基板面には、第1電子素子E1、第2電子素子E2、第3電子素子E3を含む複数の電子素子が搭載される。図5において、第1電子素子E1、第2電子素子E2、第3電子素子E3が固定される位置を破線で示す。
【0050】
第1電子素子E1は、基板19上に配置される電子素子のうちで最も質量が大きい最大質量素子である。第2電子素子E2は、基板19上に配置される電子素子のうちで2番目に質量が大きい素子である。第3電子素子E3は、基板19上に配置される電子素子のうちで3番目に質量が大きい素子である。本形態において、第1電子素子E1(最大質量素子)は、コンデンサである。第2電子素子E2は、ノイズカットフィルター素子である。第3電子素子E3は、IC素子である。第1電子素子E1の質量は、例えば、0.82gである。第2電子素子E2の質量は、例えば、0.5gである。第3電子素子E3の質量は、例えば、0.13gである。なお、各電子素子の種類(機能)や質量は、上記とは異なっていてもよい。
【0051】
本形態では、質量が大きい電子素子から基板19に加わるモーメント力に起因する基板19の撓みを考慮した結果、基板19上の電子素子および端子半田付け部の配置を図5に示す配置としている。図5に示すように、最大質量素子である第1電子素子E1は、第1方向Xの中央線Cxよりも他方側X2に位置する。従って、最大質量素子である第1電子素子E1に対して最も近い固定部を近接固定部Aとすると、図5に示す配置では、近接固定部Aは第2固定部98である。
【0052】
また、全ての端子半田付け部のうちで最も近接固定部A(第2固定部98)に近い箇所を近接半田部Bとすると、図5に示す配置では、近接半田部Bは、近接固定部Aに対して周方向の一方側CWで隣り合う第1端子半田付け部191である。近接半田部Bは、基板の第2方向Yの他方側Y2の端部において周方向に並ぶ4箇所の第1端子半田付け部19
1のうちで、最も周方向の他方側CCWに位置する第1端子半田付け部191である。
【0053】
第1電子素子E1(最大質量素子)は、近接固定部Aと第1電子素子E1との距離を第1距離d1とし、近接固定部Aと近接半田部Bとの距離を第2距離d2とする場合に、d1<d2の条件を満たす位置に配置される。基板19に振動が加わったときは、第1電子素子E1の位置に加わるモーメント力が大きいので、第1電子素子E1の位置が大きく撓む。本形態では、d1<d2を満たすレイアウトを採用したため、近接半田部Bの位置における基板19の撓みが第1電子素子E1の位置の撓みより小さい。また、他の端子半田付け部と近接固定部Aとの距離は、いずれもd2よりも大きいので、他の端子半田付け部における基板19の撓みはさらに小さい。
【0054】
第1電子素子E1(最大質量素子)は、仮想線S上に位置する。ここで、「仮想線S上に位置する」とは、電子素子の一部が仮想線S上に位置していればよく、電子素子の重心が仮想線S上に位置する配置に限定されるものではない。図5に示す配置では、第1電子素子E1の重心P1は、仮想線S上ではなく、仮想線Sから第2方向Yの他方側Y2にずれた位置にあるが、第1電子素子E1の一部は仮想線S上に位置する。基板19は2箇所でハウジング6に固定されているので、2箇所の固定点を結ぶ仮想線Sを中心として基板19が撓む。そのため、電子素子からのモーメント力が加わる位置が仮想線S上であれば、基板19の撓みが小さい。
【0055】
基板19において、仮想線Sによって区画される2つの領域のうち、基板19の中心点Pを含まない領域を第1領域S1とし、中心点Pが位置する領域を第2領域S2とすると、第1領域S1は、第2領域S2よりも面積が小さい。本形態では、第1電子素子E1、第2電子素子E2、第3電子素子E3は、いずれも、仮想線S上か、もしくは、第1領域S1内に配置される。
【0056】
質量が大きい電子素子を仮想線S上から外れた位置に配置する場合は、第1領域S1と第2領域S2のうちで面積の小さい領域に配置する。本形態では、2番目に質量が大きい第2電子素子E2が第1領域S1内に配置される。面積の小さい領域は撓み量が小さいので、質量の大きい電子素子を第1領域S1に配置することにより、基板19の撓みを小さくすることができる。
【0057】
図5に示す配置では、第2電子素子E2(ノイズカットフィルター素子)は、第1電子素子E1(コンデンサ)よりも第1端子半田付け部191に近い位置に配置される。より詳細には、第2電子素子E2は、第1電子素子E1に対して第2方向Yの他方側Y2に位置しており、第2電子素子E2に対して第2方向Yの他方側Y2には、コネクタ端子75に接続される第2端子半田付け部192が配置される。給電回路を構成する際、コネクタ端子75から供給される電流は、第2電子素子E2(ノイズカットフィルター素子)を経由して第1電子素子E1(コンデンサ)に供給される。
【0058】
第3電子素子E3は、仮想線S上に位置する。第3電子素子E3は、第1方向Xの中央線Cxよりも一方側X1に位置する。
【0059】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本形態のポンプ装置1は、モータ10と、モータ10によって回転駆動されるインペラ25を備える。モータ10は、ステータ3を収容するハウジング6と、ハウジング6の端部に固定される基板19を有する。基板19は、ステータ3のコイル35に接続される複数の巻線端子71が1本ずつ半田付けされる複数の第1端子半田付け部191、および、ハウジング6に保持される複数のコネクタ端子75が1本ずつ半田付けされる複数の第2端子半田付け部192を備える。基板19の縁をハウジング6に対して固
定する固定部として、第1固定部97と第2固定部98の2箇所が設けられる。基板19に固定される電子素子のうちで最も質量が大きい最大質量素子である第1電子素子E1と、2箇所の固定部のうちで最大質量素子(第1電子素子E1)に最も近い近接固定部A(第2固定部98)との距離を第1距離d1とし、近接固定部Aと、複数の第1端子半田付け部191および複数の第2端子半田付け部192のうちで近接固定部Aに対して最も近い近接半田部Bとの距離を第2距離d2とする場合に、第1距離d1は、第2距離d2よりも小さい。
【0060】
本形態では、ハウジング6と基板19とが2箇所で固定される。従って、外乱等により基板19に振動が加わったとき、基板19が1箇所のみで固定される場合よりも基板19の撓みが少ない。基板19に撓みが発生しにくいと、基板19上の半田にクラックが発生しにくい。従って、第1端子半田付け部191および第2端子半田付け部192の半田にクラックが発生しにくいので、第1端子半田付け部191および第2端子半田付け部192の導通不良を抑制できる。
【0061】
また、本形態では、基板19に固定される最大質量素子(第1電子素子E1)と近接固定部Aとの距離(第1距離d1)が、近接半田部Bと近接固定部Aとの距離(第2距離d2)よりも小さい。これにより、最大質量素子から加わるモーメント力に起因する基板19の撓みが、近接半田部Bの位置において小さくなるように構成できる。また、他の端子半田付け部の位置における撓みは、近接半田部Bの位置における撓みよりもさらに少ない。従って、最大質量素子の質点から基板19に加わるモーメント力に起因する第1端子半田付け部191および第2端子半田付け部192の損傷(すなわち、半田クラックの発生)を抑制できるので、第1端子半田付け部191および第2端子半田付け部192の導通不良を抑制できる。
【0062】
本形態では、最大質量素子(第1電子素子E1)が第1固定部97と第2固定部98とを結ぶ仮想線S上に配置されるため、基板19は、第1電子素子E1からのモーメント力が加わる位置が変形しにくい。従って、基板19の変形量を小さくできるので、第1端子半田付け部191および第2端子半田付け部192の撓みを小さくすることができる。よって、第1端子半田付け部191および第2端子半田付け部192の損傷を抑制でき、第1端子半田付け部191および第2端子半田付け部192の導通不良を抑制できる。
【0063】
本形態では、基板19において、第1固定部97と第2固定部98とを結ぶ仮想線Sに対して一方側を第1領域S1とし、仮想線Sに対して第1領域S1とは反対側を第2領域S2とする場合に、最大質量素子(第1電子素子E1)は、第1領域S1と第2領域S2のうちで面積が小さい側の領域(第1領域S1)に配置される。従って、基板19は、第1電子素子E1からのモーメント力が加わる領域の面積が小さいので、変形しにくい。これにより、基板19の変形量を小さくできるので、第1端子半田付け部191および第2端子半田付け部192の撓みを小さくすることができる。よって、第1端子半田付け部191および第2端子半田付け部192の損傷を抑制できる。
【0064】
より具体的には、本形態の基板19は、円形の一部を切り欠いた形状であり、第1固定部97、第2固定部98を結ぶ仮想線Sは、円形の中心点Pから外れた位置に位置し、基板19において、仮想線Sに対して一方側を第1領域S1とし、仮想線Sに対して第1領域S1とは反対側を第2領域S2とする場合に、第1電子素子E1は、基板19の中心点Pを含まない側の領域に配置される。このような構成により、第1電子素子E1からのモーメント力が加わる領域が変形しにくくなり、基板19の変形量が小さくなる。従って、基板19の端部に配置される第1端子半田付け部191および第2端子半田付け部192の損傷を抑制できる。
【0065】
本形態では、基板19は、コネクタ端子75が半田付けされる第1端子半田付け部191と、巻線端子71が接続される第2端子半田付け部192を備える。基板19上におけるこれらの端子半田付け部のレイアウトは、第1固定部97と第2固定部98とを結ぶ仮想線Sに対して一方側を第1領域S1とし、仮想線Sに対して第1領域S1とは反対側を第2領域S2とする場合に、第1領域S1に第2端子半田付け部192が配置され、第1領域S1に第1端子半田付け部191が配置されるものとする。このようにすると、仮想線Sの両側に端子半田付け部(第1端子半田付け部191および第2端子半田付け部192)を分散配置できるので、固定部(第1固定部97、第2固定部98)と端子半田付け部との距離を大きくしやすい。よって、ハウジング6と基板19との熱膨張係数の違いによって固定部に応力が発生しても、かかる応力が第1端子半田付け部191および第2端子半田付け部192に伝わりにくいため、第1端子半田付け部191および第2端子半田付け部192が損傷しにくい。
【0066】
また、本形態では、第1端子半田付け部191および第2端子半田付け部192は、第1領域S1と第2領域S2において、それぞれ、基板19の第1方向Xの中央を含む領域に配置される。従って、第1端子半田付け部191および第2端子半田付け部192は、それぞれ、第1固定部97および第2固定部98から第2方向Yに離間している。よって、樹脂製のハウジング6と基板19との熱膨張係数の違いによって、第1固定部97および第2固定部98に応力が発生しても、かかる応力が第1端子半田付け部191および第2端子半田付け部192に伝わりにくいため、第1端子半田付け部191および第2端子半田付け部192が損傷しにくい。
【0067】
本形態では、最大質量素子(第1電子素子E1)は、コンデンサである。また、基板19に搭載される電子素子は、コンデンサ(第1電子素子E1)の次に質量が大きいノイズカットフィルター素子(第2電子素子E2)を含み、第1電子素子E1および第2電子素子E2は、第1領域S1に配置される。ノイズカットフィルター素子は、コンデンサ(第1電子素子E1)よりも第2端子半田付け部192に近い位置に配置される。このようにすると、質量の大きい2個の電子素子がいずれも第1領域S1(面積が小さい領域)に配置される。従って、基板19の撓みが小さいので、第1端子半田付け部191および第2端子半田付け部192の損傷を抑制できる。また、この配置は、コネクタ端子75(第2端子半田付け部192)、ノイズフィルター素子、コンデンサの順で並ぶ配列となるため、給電用の回路を構成する際に素子間の接続が容易である。
【0068】
本形態では、第1固定部97および第2固定部98は、ねじにより基板19をハウジング6に固定する構成であるが、固定方法は、ねじに限定するものではない。例えば、ハウジング6の端部64にカシメ部を設けてカシメ固定する構成を採用してもよい。ねじやカシメにより固定することにより、基板19をハウジング6に対して強固に固定できる。あるいは、カバー18とハウジング6との間に基板19の端部を挟むことにより基板19を固定する構成としてもよい。
【0069】
本形態では、ハウジング6は、基板19の周りを囲む壁部640を備え、第1固定部97および第2固定部98では、それぞれ、ハウジング6において壁部640から径方向の内側に離間する位置に設けられた第1柱状部67および第2柱状部68に対して基板19が接する状態で第1ねじ91および第2ねじ92が基板19を貫通して第1柱状部67および第2柱状部68に止められている。このようにすると、温度変化によってハウジング6が膨張や収縮しても、かかる変形に起因する応力が壁部640から第1柱状部67および第2柱状部68を介して基板19に伝わりにくい。従って、基板19の変形に起因する第1端子半田付け部191および第2端子半田付け部192の損傷を抑制できる。
【0070】
本形態においては、軸線方向からみたとき、第1柱状部67の少なくとも一部、および
第2柱状部68の少なくとも一部は、ステータコア31の円環部311に重なっている。ここで、ステータコア31には複数の分割インシュレータ320が保持されていることから、軸線方向からみたとき、第1柱状部67の少なくとも一部、および第2柱状部68の少なくとも一部は、複数の分割インシュレータ320のうち、隣り合う2つの分割インシュレータ320の間を介してステータコア31の円環部311に重なるように構成することできる。このようにすると、ハウジング6が温度変化に伴って膨張あるいは収縮した場合でも、第1柱状部67および第2柱状部68の変形をステータコア31によって抑制することができる。従って、ハウジング6の膨張あるいは収縮が第1柱状部67および第2柱状部68を介して基板19に伝わりにくい構成となる。
【0071】
[他の実施の形態]
上記実施形態では、ステータ3を収容するハウジング6、および、ハウジング6に固定される基板19を備え、ステータ3は、電力消費部としてのコイル35を備え、コイル35に対する電力供給端子として巻線端子71を備えるモータ10に本発明を適用したが、本発明は、モータ10以外の電気装置にも適用可能である。すなわち、ハウジングと、ハウジングに収容される電力消費部と、ハウジングの端部に固定される基板と、を有し、基板は、電力消費部に接続される電力供給端子、および、ハウジングに保持されるコネクタ端子を含む複数の端子がそれぞれ1本ずつ半田付けされる複数の端子半田付け部を備える電気装置に対して、本発明を適用可能である。電力消費部は、基板に接続される端子から電流が供給される任意の電気・電子部品やユニットとすることができる。
【0072】
また、本形態に係るモータ10はポンプ装置1に用いるものであるが、本発明は、ポンプ装置1以外の機器に使用されるモータにも適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…ポンプ装置、2…ケース、3…ステータ、4…ロータ、5…支軸、6…ハウジング、10…モータ、11…ラジアル軸受、12…スラスト軸受、18…カバー、19…基板、19a…円弧部、19b…直線部、20…ポンプ室、21…吸入管、22…吐出管、23…壁面、25…インペラ、26…円板、27…支持部、28…筒部、29…側壁、31…ステータコア、32、33…インシュレータ、35…コイル、40…円筒部、45…フランジ部、47…磁石、60…樹脂封止部材、61…第1隔壁部、62…第2隔壁部、63…底壁、64…端部、65…軸穴、66…胴部、67…第1柱状部、68…第2柱状部、69…コネクタハウジング、71、71(U)、71(V)、71(W)…、71(C)巻線端子、75…コネクタ端子、97…第1固定部、98…第2固定部、191…第1端子半田付け部、192…第2端子半田付け部、197、198…切欠き、199…係止凹部、260…中央穴、261…羽根部、280…受け部、311…円環部、312…突極、320、330…分割インシュレータ、321、331…外周側部分、322、332…内周側部分、323、333…筒部形成部分、335…ガイド溝、350…巻線、640…壁部、641…平面部、645…係止突部、710…板部、711…基板接続部、712…弾性部、A…近接固定部、B…近接半田部、CW…周方向の一方側、CCW…周方向の他方側、Cx…中央線、Cy…中央線、d1…第1距離、d2…第2距離、E1…第1電子素子、E2…第2電子素子、E3…第3電子素子、L…中心軸線、L1…軸線方向の一方側、L2…軸線方向の他方側、P…基板の中心点、P1…第1電子素子の重心、S…仮想線、S1…第1領域、S2…第2領域、X…第1方向、Y…第2方向
図1
図2
図3
図4
図5