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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075470
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】レンズユニット
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20230524BHJP
【FI】
G02B7/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188393
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】神崎 陽介
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AB02
2H044AB08
2H044AB25
2H044AB26
(57)【要約】
【課題】接合レンズのレンズ面の周りに入射した光の特定方向への反射を抑制することのできるレンズユニットを提供すること。
【解決手段】レンズユニット100は、物体側L1に配置された第1レンズ6と、像側L2に配置され、第1レンズ6と接着剤8によって接合された接合レンズ50を構成する第2レンズと、を備える。第2レンズ7の第2フランジ面74には、物体側L1に向けて突出した凸部75が設けられる。第1レンズ6の第1フランジ面64には、凸部75の径方向内側の傾斜部76に沿って傾斜した対向部66が設けられる。接合レンズ50の有効半径をRaとし、有効半径Raにおける第1レンズ6のレンズ面62と第2レンズ7のレンズ面71との第1間隔をGaとし、第1間隔Gaの3倍の第2間隔をGbとし、対向部66と凸部75との間で第2間隔Gbとなる外周側半径をRbとすると、以下の条件式を満たす。
1.100<Rb/Ra
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズと、前記複数のレンズを保持するレンズ鏡筒と、を有するレンズユニットにおいて、
前記複数のレンズは、第1方向側に配置された第1レンズと、前記第1方向側とは反対方向である第2方向側に配置され、前記第1レンズと接着剤によって接合された接合レンズを構成する第2レンズと、を備え、
前記第1レンズは、前記第2レンズの側を向いた凹面形状の第1レンズ面と、前記第1レンズ面を径方向外側で囲む第1フランジ面と、を備え、
前記第2レンズは、前記第1レンズ面に対応する凸面形状であって前記第1レンズ面と重なる第2レンズ面と、前記第2レンズ面を径方向外側で囲む第2フランジ面と、を備え、
前記第2フランジ面には、前記第1方向側に向けて突出した凸部が形成され、
前記第1フランジ面には、前記凸部の径方向内側の傾斜部に沿って傾斜した対向部が形成され、
前記接着剤は、前記第1レンズ面と前記第2レンズ面との間から前記対向部と前記凸部とを超えた径方向の外側位置まで設けられ、
前記接合レンズの有効半径をRaとし、
前記有効半径Raにおける前記第1レンズ面と前記第2レンズ面との第1間隔をGaとし、
前記第1間隔Gaの3倍の第2間隔をGbとし、
前記対向部と前記凸部との間で前記第2間隔Gbとなる外周側半径をRbとすると、以下の条件式
1.100<Rb/Ra
を満たすことを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記接合レンズの有効半径をRaとし、
前記有効半径Raにおける前記第1レンズ面と前記第2レンズ面との第1間隔をGaとし、
前記第1間隔Gaの3倍の第2間隔をGbとし、
前記対向部と前記凸部との間で前記第2間隔Gbとなる外周側半径をRbとすると、以下の条件式
1.100<Rb/Ra<1.500
を満たすことを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記対向部と前記凸部との間隔は、前記第1レンズ面と前記対向部との第1境界部分および前記第2レンズ面と前記傾斜部との第2境界部分から径方向外側に向かうに従って広くなることを特徴とする請求項1または2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記第1レンズ面と前記対向部とは、湾曲しながら連続し、
前記第2レンズ面と前記凸部の前記傾斜部とは、湾曲しながら連続することを特徴とする請求項1から3のうち何れか一項に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記第1フランジ面には、前記第1方向側に向けて凹んだ接着剤溜まり部が形成され、
前記接着剤溜まり部は、径方向内側に前記対向部を備えることを特徴とする請求項1から4のうち何れか一項に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記接着剤溜まり部は、前記対向部と連続して前記第2方向側を向く底部を備え、
前記底部は、前記第1方向側に向けて湾曲することを特徴とする請求項5に記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記底部の径方向の中央は、前記凸部より径方向外側に位置することを特徴とする請求項6に記載のレンズユニット。
【請求項8】
前記第2フランジ面には、前記第1方向側に向けて突出した段部を備え、
前記接着剤溜まり部は、前記底部の径方向外側から前記第2方向側に向けて直線状に延びるとともに、前記段部に径方向外側から当接する当接面部を備えることを特徴とする請求項6または7に記載のレンズユニット。
【請求項9】
前記第1フランジ面と前記第2フランジ面とにおいて、前記接着剤が設けられる部分には、磨き加工が施された磨き面が設けられることを特徴とする請求項1から8のうち何れか一項に記載のレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のレンズがレンズ鏡筒に保持されたレンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のレンズがレンズ鏡筒に保持されたレンズユニットでは、収差を低減することを目的に接合レンズが用いられることがある。このようなレンズユニットは、例えば特許文献1に記載されている。同文献では、第1レンズと、第1レンズの像側に配置された第2レンズとが接着剤によって接合された接合レンズが用いられている。第1レンズは、第2レンズ側に位置する第1レンズ面と、第1レンズ面を外周側で囲む第1フランジ面と、を備える。第2レンズは、第1レンズ側に位置する第2レンズ面と、第2レンズ面を外周側で囲む第2フランジ面と、を備える。接着剤は、第1レンズ面と第2レンズ面との間から第1フランジ面と第2フランジ面との間まで設けられる。第1フランジ面と第2フランジ面との間隔は、径方向外側に向かって、第1レンズ面と第2レンズ面との間隔より、徐々に広くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-97019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、第1レンズ面と第2レンズ面との間隔に対して、第1フランジ面と第2フランジ面との間隔が広くなると、接着剤の中に空気が介在しやすくなる。この接着剤に空気が介在した気泡部分が、第1レンズ面および第2レンズ面に近い場合には、接合レンズは、気泡部分によって拡散された光の影響を受けやすい。このため、接合レンズに入射した光が、気泡部分によって拡散されると、レンズユニットにおいて、拡散された光に起因してゴーストが発生しやすいという問題点がある。かかる問題に対して、特許文献1には、気泡部分と第1レンズ面および第2レンズ面との位置関係が記載されておらず、特許文献1に記載の構成では、この問題を解消することが困難である。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、接合レンズのレンズ面の周りに入射した光の特定方向への反射を抑制することのできるレンズユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るレンズユニットは、複数のレンズと、前記複数のレンズを保持するレンズ鏡筒と、を有するレンズユニットにおいて、前記複数のレンズは、第1方向側に配置された第1レンズと、前記第1方向側とは反対方向である第2方向側に配置され、前記第1レンズと接着剤によって接合された接合レンズを構成する第2レンズと、を備え、前記第1レンズは、前記第2レンズの側を向いた凹面形状の第1レンズ面と、前記第1レンズ面を径方向外側で囲む第1フランジ面と、を備え、前記第2レンズは、前記第1レンズ面に対応する凸面形状であって前記第1レンズ面と重なる第2レンズ面と、前記第2レンズ面を径方向外側で囲む第2フランジ面と、を備え、前記第2フランジ面には、前記第1方向側に向けて突出した凸部が形成され、前記第1フランジ面には、前記凸部の径方向内側の傾斜部に沿って傾斜した対向部が形成され、前記接着剤は、前記第1レンズ面と前記第2レンズ面との間から前記対向部と前記凸部とを超えた径方向の外側位置まで設けられ、前記接合レンズの有効半径をRaとし、前記有効半径Raにおける前記第1レンズ面と前記第2レンズ面との第1間隔をGaとし、前記第1間隔Gaの3
倍の第2間隔をGbとし、前記対向部と前記凸部との間で前記第2間隔Gbとなる外周側半径をRbとすると、以下の条件式
1.100<Rb/Ra
を満たすことを特徴とする。
【0007】
本発明では、接合レンズは、接合レンズの有効半径をRaとし、有効半径Raにおける第1レンズ面と第2レンズ面との第1間隔をGaとし、第1間隔Gaの3倍の第2間隔をGbとし、対向部と凸部との間で第2間隔Gbとなる外周側半径をRb、条件式
1.100<Rb/Ra
を満たしている。ここで、第1間隔Gaの3倍である第2間隔Gbでは、接着剤に空気が介在しやすくなり、気泡部分が発生しやすい。したがって、このようにすれば、接着剤に空気が介在した気泡部分を、接合レンズの有効半径から適切な位置とすることができる。この結果、本発明では、接着剤に空気が介在した気泡部分における光の拡散によるゴーストの発生を抑制することができる。すなわち、条件式の値が下限を超える場合には、接着剤に空気が介在した気泡部分が第1レンズ面および第2レンズ面に近くなり、気泡部分における光の拡散の影響を受けるので、レンズユニットにゴーストが発生しやすい。
【0008】
本発明において、レンズユニットは、前記接合レンズの有効半径をRaとし、前記有効半径Raにおける前記第1レンズ面と前記第2レンズ面との第1間隔をGaとし、前記第1間隔Gaの3倍の第2間隔をGbとし、前記対向部と前記凸部との間で前記第2間隔Gbとなる外周側半径をRbとすると、以下の条件式
1.100<Rb/Ra<1.500
を満たすことが好ましい。このようにすれば、接着剤に空気が介在した気泡部分における光の拡散によるゴーストの影響を受けにくくするとともに、レンズユニットが大型化することを抑制できる。すなわち、条件式の値が上限を超える場合には、接合レンズが大きくなるので、レンズユニットが大型化する。
【0009】
本発明において、前記対向部と前記凸部との間隔は、前記第1レンズ面と前記対向部との第1境界部分および前記第2レンズ面と前記傾斜部との第2境界部分から径方向外側に向かうに従って広くなることが好ましい。このようにすれば、第1レンズと第2レンズとを接合する際に、第1レンズ面と第2レンズ面との間の余分な接着剤は、径方向外側に向けてスムーズに排出されやすい。
【0010】
本発明において、前記第1レンズ面と前記対向部とは、湾曲しながら連続し、前記第2レンズ面と前記凸部の前記傾斜部とは、湾曲しながら連続することが好ましい。このようにすれば、第1レンズ面と第2レンズ面との間の余分な接着剤が接着剤溜まり部に流入する際に、接着剤に気泡が発生しにくい。
【0011】
本発明において、前記第1フランジ面には、前記第1方向側に向けて凹んだ接着剤溜まり部が設けられ、前記接着剤溜まり部は、径方向内側に前記対向部を備えることが好ましい。このようにすれば、第1レンズと第2レンズとを接合する際に、第1レンズ面と第2レンズ面との間の余分な接着剤8は、接着剤溜まり部に溜まる。このため、接着剤の途切れや気泡が発生しないように十分な量の接着剤を塗布することができる。また、接着剤が接合レンズの外側に流出することを抑制することができる。
【0012】
本発明において、前記接着剤溜まり部は、前記対向部と連続して前記第2方向側を向く底部を備え、前記底部は、前記第1方向側に向けて湾曲することが好ましい。このようにすれば、接着剤が接着剤溜まり部に流入する際に、接着剤に気泡が発生しにくい。
【0013】
本発明において、前記底部の径方向の中央は、前記凸部より径方向外側に位置すること
が好ましい。このようにすれば、接着剤溜まり部は、凸部より径方向外側に広がる。これにより、光軸方向から見た場合、接着剤の接着面積を大きくすることができるので、第1レンズと第2レンズ7の接合強度を確保しやすい。
【0014】
本発明において、前記第2フランジ面には、前記第1方向側に向けて突出した段部を備え、前記接着剤溜まり部は、前記底部の径方向外側から前記第2方向側に向けて直線状に延びるとともに、前記段部に径方向外側から当接する当接面部を備えることが好ましい。このようにすれば、第1レンズと第2レンズとを接合する際に、当接面部と段部とが径方向において当接するので、第1レンズと第2レンズとの光軸Lが位置合わせされる。
【0015】
本発明において、前記第1フランジ面と前記第2フランジ面とにおいて、前記接着剤が設けられる部分には、磨き加工が施された磨き面が設けられることが好ましい。このようにすれば、接着剤が設けられる部分である磨き面には磨き加工が施されているので、表面は滑らかである。よって、接着剤は表面に密着しやすいので、第1レンズと第2レンズとは剥がれにくい。
【発明の効果】
【0016】
本発明において、接合レンズの有効半径をRaとし、有効半径Raにおける第1レンズ面と第2レンズ面との第1間隔をGaとし、第1間隔Gaの3倍の第2間隔をGbとし、対向部と凸部との間で第2間隔Gbとなる外周側半径をRbとすると、以下の条件式
1.100<Rb/Ra
を満たしている。これにより、接合レンズを備えるレンズユニットにおいて、接着剤の気泡部分における光の拡散によるゴーストの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を適用したレンズユニットの断面図である。
図2】接合レンズの断面図である。
図3】第1レンズの斜視図である。
図4】第2レンズの斜視図である。
図5】接合レンズの端部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材の数や縮尺を異ならしめてある。また、以下の説明では、光軸Lが延在している光軸L方向において、物体側にL1を付し、像側にL2を付して説明する。
【0019】
(レンズユニット)
図1は、本発明を適用したレンズユニットの断面図である。本形態のレンズユニット100は、撮像装置等の光学装置に用いられる。レンズユニット100は、光軸L周りの全体にわたって略同様な構成を有している。図1に示すレンズユニット100は、複数のレンズ10と、複数のレンズ10を保持するレンズ鏡筒20とを有する。レンズ鏡筒20の像側L2には、撮像素子が設けられる。撮像素子は、CMOSなどである。
【0020】
図1に示すように、複数のレンズ10は、光軸Lに沿って配置されている。複数のレンズ10は、レンズ1、レンズ2、レンズ3、レンズ4、およびレンズ5からなる。レンズ1は、最も物体側(第1方向側)L1に配置され、レンズ5は、最も像側(第2方向側)L2に配置される。レンズ4は、ホルダ13に保持された状態で、レンズ鏡筒20に保持されている。本形態では、レンズ1は、レンズ鏡筒20の物体側開口部20aを塞ぐように配置される。最も像側L2に位置する透光性板状部材14は、レンズ鏡筒20の像側開
口部20bを塞ぐように配置されている。
【0021】
レンズ1は、物体側L1のレンズ面に凸面形状を備え、像側L2のレンズ面に凹面形状を備える。レンズ2は、物体側L1のレンズ面に凸面形状を備え、像側L2のレンズ面に凹面形状を備える。レンズ3は、物体側L1のレンズ面に凸面形状を備え、像側L2のレンズ面に凸面形状を備える。レンズ4は、物体側L1のレンズ面に凸面形状を備え、像側L2のレンズ面に凸面形状を備える。レンズ5は、物体側L1のレンズ面に凹面形状を備え、像側L2のレンズ面に凸面形状を備える。レンズ5は、接合レンズ50からなる。
【0022】
レンズユニット100は、レンズ2とレンズ3との間に円環状の遮光シート11を有する。レンズユニット100は、レンズ4とレンズ5との間に円環状の絞り12を有している。
【0023】
(接合レンズ50)
図2は、接合レンズ50の断面図である。図3は、第1レンズ6の斜視図である。図4は、第2レンズ7の斜視図である。図1および図2に示すように、接合レンズ50は、物体側L1(第1方向側)に配置された第1レンズ6と、物体側L1とは反対側(反対方向)である像側L2(第2方向側)に配置された第2レンズ7とからなる。第1レンズ6と第2レンズ7とは接着剤8によって接合されている。本形態において、接着剤8は、UV硬化型接着剤である。接着剤8は、硬化後も弾性を有する材質であることが好ましい。
【0024】
第1レンズ6は、樹脂製である。図2および図3に示すように、第1レンズ6は、物体側L1のレンズ面61に凹面形状を備え、像側L2のレンズ面62(第1レンズ面)に凹面形状を備える。第1レンズ6は、レンズ面61およびレンズ面62を径方向外側で囲む第1フランジ部63を備える。したがって、第1レンズ6は、レンズ面62を径方向外側で囲む第1フランジ面64を備える。
【0025】
第2レンズ7は、樹脂製である。図2および図4に示すように、第2レンズ7は、物体側L1のレンズ面71(第2レンズ面)に凸面形状を備え、像側L2のレンズ面72に凸面形状を備える。第2レンズ7は、レンズ面71およびレンズ面72を径方向外側で囲む第2フランジ部73を備える。したがって、第2レンズ7は、レンズ面71を径方向外側で囲む第2フランジ面74を備える。レンズ面71は、レンズ面62に対応する凸面形状であってレンズ面62と重なる。レンズ面71は、レンズ面62と曲率半径が略等しい。
【0026】
第2フランジ面74には、レンズ面71に隣接するとともに、物体側L1に向けて突出した凸部75が設けられる。図3に示すように、凸部75は、円環状に延在する。凸部75は、断面が円弧状である。凸部75の径方向内側の傾斜部76とレンズ面71とは、湾曲しながら連続する。言い換えれば、傾斜部76とレンズ面71とは、像側L2に向けて湾曲した湾曲面70を介して連続する。
【0027】
第2フランジ面74には、凸部75より径方向外側において、物体側L1に向けて突出した取付面部77が設けられる。図3に示すように、取付面部77は、周方向に延在し、周方向に等間隔で3つ設けられる。取付面部77の物体側L1を向く平面79は、光軸Lに対して交差する。取付面部77の平面79は、第1レンズ6と第2レンズ7とを接合した際に、第1フランジ面64に当接する。取付面部77には、それぞれ、物体側L1に向けて突出した段部78が設けられる。段部78の周方向の幅は、取付面部77の周方向の幅より狭い。段部78は、第1レンズ6と第2レンズ7とを接合した際に、後述する接着剤溜まり部65に挿入されて、接着剤溜まり部65の当接面部68に径方向内側から当接する。
【0028】
図2および図3に示すように、第1フランジ面64には、レンズ面62に隣接するとともに、物体側L1に向けて凹んだ接着剤溜まり部65が設けられる。接着剤溜まり部65は、円環状に延在する。第1レンズ6と第2レンズ7とを接合した際に接着剤溜まり部65には、凸部75が挿入される。接着剤溜まり部65は、径方向内側に位置する対向部66と、対向部66と連続して像側L2を向く底部67と、底部67の径方向外側から像側L2に向けて延びる当接面部68とを備える。
【0029】
対向部66は、レンズ面62に隣接するとともに、傾斜部76に沿って傾斜する。対向部66とレンズ面62とは、湾曲しながら連続する。言い換えれば、対向部66とレンズ面62とは、像側L2に向けて湾曲した湾曲面60を介して連続する。
【0030】
底部67は、物体側L1に向けて湾曲する。底部67の径方向の中央は、凸部75より径方向外側に位置する。すなわち、接着剤溜まり部65は、凸部75より径方向外側に広がっている。当接面部68は、像側L2に向けて直線状に延びる。当接面部68は、第1レンズ6と第2レンズ7とを接合した際に、段部78の径方向外側の側面78aと径方向に当接する。
【0031】
第1フランジ面64には、接着剤溜まり部65より径方向外側で、光軸Lに対して交差する平面69が設けられる。平面69は、第1レンズ6と第2レンズ7とを接合した際に、取付面部77の平面79に当接する。
【0032】
図2に示すように、接着剤8は、レンズ面62とレンズ面71との間、および第1フランジ面64と第2フランジ面74との間を含む第1レンズ6と第2レンズ7との間の全体に設けられている。より具体的には、接着剤8は、レンズ面62とレンズ面71との間から対向部66と傾斜部76とを超えた径方向外側の位置まで設けられている。ここで、第1フランジ面64と第2フランジ面74とにおいて、接着剤8が設けられる部分には、磨き面Cが設けられる。磨き面Cには、機械加工によって、鏡面仕上げと同等程度まで磨き加工が施されている。
【0033】
図2に示すように、本形態において、第1レンズ6は第2レンズ7より外径が大である。このため、第1フランジ部63の外周部分は、第2フランジ部73より径方向外側に張り出している。一方、レンズ鏡筒20では、第1フランジ部63において第2フランジ部73より径方向内側に張り出した外周部分を像側L2で支持する段部21が形成されている。また、レンズ鏡筒20には、段部21より像側L2に円環状の端板部22が径方向内側に突出している。ここで、端板部22の中央部分には、像側開口部20bが形成されており、端板部22の像側L2の端面に透光性板状部材14が固定されている。
【0034】
(接着剤によるレンズの接合についての詳細)
接着剤8による第1レンズ6と第2レンズ7との接合について説明する。図5は、接合レンズ50の端部を拡大して示す断面図である。
【0035】
本形態では、第1レンズ6と第2レンズ7とを接合する際、例えば、第1レンズ6のレンズ面62の側に接着剤8を塗布した後、第1レンズ6と第2レンズ7とを重ねる。その結果、図5に示すように、第1レンズ6と第2レンズ7との間で接着剤8が広がるので、その後、接着剤8を硬化すれば、第1レンズ6と第2レンズ7とを接着剤8によって接合される。かかる接合工程で、第1レンズ6と第2レンズ7との間で接着剤8が広がる際、接着剤8は、第1レンズ6と第2レンズ7との間から外側に流出しようとするが、接着剤8は接着剤溜まり部65に溜まる。したがって、接着剤8が第1レンズ6と第2レンズ7の間から外側に流出する量を少なくすることができるので、第1レンズ6と第2レンズ7との間には、接着剤8の途切れ部分が発生しにくい。
【0036】
第1レンズ6と第2レンズ7とを接合する際に、平面69と平面79とが当接することによって、第1レンズ6と第2レンズ7とが光軸L方向に位置に位置決めされる。また、第1レンズ6と第2レンズ7とを接合する際に、当接面部68と側面78aとが当接することによって、第1レンズ6と第2レンズ7との光軸Lが位置合わせされる。これにより、第1レンズ6と第2レンズ7との間隔を適正な寸法に制御することができる。よって、第1レンズ6と第2レンズ7との間には、接着剤8の途切れ部分が発生しにくい。また、対向部66と凸部75との間隔は、レンズ面62と対向部66との第1境界部分600およびレンズ面71と傾斜部76との第2境界部分700から径方向外側に向かうに従って広くなる。これにより、第1レンズ6と第2レンズ7とを接合する際に、レンズ面62とレンズ面71との間の余分な接着剤8は、接着剤溜まり部65に向けてスムーズに排出されやすい
【0037】
また、図5に示すように、接合レンズ50において、接合レンズ50の有効半径をRaとし、有効半径Raにおけるレンズ面62とレンズ面71との第1間隔をGaとし、第1間隔Gaの3倍の第2間隔をGbとし、対向部66と凸部75との間で第2間隔Gbとなる外周側半径をRbとすると、以下の条件式
1.100<Rb/Ra<1.500
を満たしている。本形態において、有効半径Raは、1.27mm、第1間隔Gaは、0.012mm、第2間隔Gbは、0.038mm、外周側半径Rbは、1.724mmである。よって、Rb/Raは、1.358である。
【0038】
(作用効果)
本形態のレンズユニット100は、接合レンズ50の有効半径をRaとし、有効半径Raにおけるレンズ面62とレンズ面71との第1間隔をGaとし、第1間隔Gaの3倍の第2間隔をGbとし、対向部66と凸部75との間で第2間隔Gbとなる外周側半径をRbとすると、以下の条件式
1.100<Rb/Ra<1.500
を満たしている。ここで、第1間隔Gaの3倍である第2間隔Gbでは、接着剤8に空気が介在しやすくなり、気泡部分が発生しやすい。したがって、本形態では、上記の条件式を満たしているので、接着剤8に空気が介在した気泡部分を、接合レンズ50の有効半径Raから適切な位置とすることができる。この結果、接合レンズ50を備えるレンズユニット100において、接着剤8に空気が介在した気泡部分における光の拡散によるゴーストの発生が抑制される。すなわち、条件式の値が下限を超える場合には、接着剤8に空気が介在した気泡部分がレンズ面62およびレンズ面71に近くなり、気泡部分における光の拡散の影響を受けるので、レンズユニット100にゴーストが発生しやすい。条件式の値が上限を超える場合には、接合レンズ50が大きくなるので、レンズユニット100が大型化する。
【0039】
本形態では、対向部66と凸部75との間隔は、レンズ面62と対向部66との第1境界部分600およびレンズ面71と傾斜部76との第2境界部分700から径方向外側に向かうに従って広くなる。これにより、第1レンズ6と第2レンズ7とを接合する際に、レンズ面62とレンズ面71との間の余分な接着剤8は、接着剤溜まり部65に向けてスムーズに排出されやすい。
【0040】
本形態では、レンズ面62と対向部66とは、湾曲しながら連続する。また、レンズ面72と凸部75の傾斜部76とは、湾曲しながら連続する。よって、レンズ面62とレンズ面71との間の余分な接着剤8が接着剤溜まり部65に流入する際に、接着剤8に気泡が発生しにくい。
【0041】
第1フランジ面64には、物体側L1に向けて凹んだ接着剤溜まり部65が設けられる。接着剤溜まり部65は、径方向内側に、第1レンズ面62に隣接する対向部66を備える。これにより、第1レンズ6と第2レンズ7とを接合する際に、レンズ面62とレンズ面71との間の余分な接着剤8は、接着剤溜まり部65に溜まる。このため、接着剤8の途切れや気泡が発生しないように十分な量の接着剤8を塗布することができる。また、接着剤8が接合レンズ50の外側に流出することを抑制することができる。
【0042】
本形態では、接着剤溜まり部65は、対向部66と連続して像側L2を向くとともに、物体側L1に向けて湾曲する底部67を備える。これにより、接着剤8が接着剤溜まり部65に流入する際に、接着剤8に気泡が発生しにくい。
【0043】
底部67の径方向の中央は、凸部75より径方向外側に位置する。すなわち、接着剤溜まり部65は、凸部75より径方向外側に広がっている。このようにすれば、光軸L方向から見た場合、接着剤8の接着面積を大きくすることができるので、第1レンズ6と第2レンズ7との接合強度を確保しやすい。
【0044】
第2フランジ面74には、物体側L1に向けて突出した段部78を備える。接着剤溜まり部65は、底部67の径方向外側から像側L2に向けて直線状に延びるとともに、段部78の側面78aに径方向外側から当接する当接面部68を備える。よって、第1レンズ6と第2レンズ7とを接合する際に、当接面部68と側面78aとが径方向において当接するので、第1レンズ6と第2レンズ7との光軸Lが位置合わせされる。
【0045】
また、本形態では、第1フランジ面64と第2フランジ面74とにおいて、接着剤8が設けられる部分には、磨き面Cが設けられる。磨き面Cには、機械加工によって、鏡面仕上げと同等程度まで磨き加工が施されている。ここで、第1フランジ面64と第2フランジ面74とに磨き加工が施されていない場合には、表面の凹凸の細部まで接着剤8が流れ込みにくいので、接着剤8は表面に密着しにくい。このため、第1レンズ6と第2レンズ7とは剥がれやすくなる。これに対して、本形態では、接着剤8が設けられる部分である磨き面Cには磨き加工が施されているので、表面は滑らかである。よって、接着剤8は表面に密着しやすいので、第1レンズ6と第2レンズ7とは剥がれにくい。
【0046】
(他の実施例)
上記形態では、第1レンズ6が物体側L1(第1方向側)に配置され、第2レンズ7が像側L2(第2方向側)に配置されていたが、第1レンズ6が像側L2(第2方向側)に配置され、第2レンズ7が物体側L1(第1方向側)に配置されてもよい。
【0047】
上記形態では、第1フランジ面64と第2フランジ面74とにおいて、接着剤8が設けられる部分には、磨き面Cが設けられていたが、磨き面Cは設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…レンズ、2…レンズ、3…レンズ、4…レンズ、5…レンズ、6…第1レンズ、7…第2レンズ、8…接着剤、10…複数のレンズ、11…遮光シート、12…絞り、13…ホルダ、14…透光性板状部材、20…レンズ鏡筒、20a…物体側開口部、20b…像側開口部、21…段部、22…端板部、50…接合レンズ、60…湾曲面、61…レンズ面、62…レンズ面(第1レンズ面)、63…第1フランジ部、64…第1フランジ面、65…接着剤溜まり部、66…対向部、67…底部、68…当接面部、69…平面、70…湾曲面、71…レンズ面(第2レンズ面)、72…レンズ面、73…第2フランジ部、74…第2フランジ面、75…凸部、76…傾斜部、77…取付面部、78…段部、78a…側面、79…平面、100…レンズユニット、600…第1境界部分、700…第2境界部分、C…磨き面、Ga…第1間隔、Gb…第2間隔、L…光軸、L1…物体側(第
1方向側)、L2…像側(第2方向側)、Ra…有効半径、Rb…外周側半径
図1
図2
図3
図4
図5