(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075476
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】パーソナルモビリティ
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20230524BHJP
【FI】
G05D1/02 S
G05D1/02 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188405
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 拓哉
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301AA10
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG09
5H301LL01
5H301LL02
5H301LL03
5H301LL06
5H301LL07
5H301LL11
(57)【要約】
【課題】 傘の開閉状態に応じた走行制御が可能なパーソナルモビリティを提供する。
【解決手段】 本発明のパーソナルモビリティ100は、搭乗者が所持する傘20の開閉を判定する判定手段と、傘20が開かれていると判定された場合、傘が開かれたときの大きさ20Aを考慮してパーソナルモビリティの車体の大きさを決定する決定手段と、決定された車体の大きさに基づき走行を制御する制御手段とを含む。車体の大きさは、例えば、幅Wと高さHによって規定される。これにより、パーソナルモビリティ100の自動運転中に傘を開いても障害物への衝突を回避することができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動カート、電動車椅子、シニアカートなどを含むパーソナルモビリティであって、
傘の開閉を判定する判定手段と、
傘が開かれていると判定された場合、傘が開かれた大きさを考慮して車体の大きさを決定する決定手段と、
決定された車体の大きさに基づき走行を制御する制御手段と、
を含むパーソナルモビリティ。
【請求項2】
前記決定手段は、車体の大きさとして車体の幅および高さを決定する、請求項1に記載のパーソナルモビリティ。
【請求項3】
前記決定手段は、傘がさされた位置を考慮して車体の大きさを決定する、請求項1または2に記載のパーソナルモビリティ。
【請求項4】
前記決定手段は、右手で傘をさしているか左手で傘をさしているかを識別することで傘がさされた位置を決定する、請求項3に記載のパーソナルモビリティ。
【請求項5】
パーソナルモビリティはさらに、障害物を検出する検出手段を含み、
前記制御手段は、前記検出手段により検出された障害物を回避するように走行を制御する、請求項1ないし4いずれか1つに記載のパーソナルモビリティ。
【請求項6】
前記制御手段は、障害物までの距離が第1の値以下に到達したとき速度を減少させ、
傘が閉じていると判定されたときの第1の値よりも傘が開かれていると判定されたときの第1の値が大きい、請求項5に記載のパーソナルモビリティ。
【請求項7】
前記制御手段は、障害物までの距離が第2の値以下に到達したとき停止させ、
傘が閉じていると判定されたときの第2の値よりも傘が開かれていると判定されたときの第2の値が大きい、請求項5に記載のパーソナルモビリティ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動カート、電動車椅子、シニアカートなどのパーソナルモビリティに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルモビリティの自動運転を行うとき、経路のバリア情報(段差、傾斜、すべり)を表示したり、前方が歩行者で混雑しているとき、先導者を設定して先導者に後続するように走行を制御する技術が開示されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-112579号公報
【特許文献2】特開2019-215699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パーソナルモビリティでは、移動範囲や利用頻度が広がるにつれて、雨天時や晴天時に傘をさして屋外を移動する機会が存在する。
図1は、パーソナルモビリティ10でユーザー(搭乗者)が傘20をさした状態を例示している。パーソナルモビリティ10で傘をさした場合、傘20の大きさ20Aによってパーソナルモビリティ10の車体の面積または容積が疑似的に広がり、これによって予期しない接触が起こり得る。例えば、
図2(A)に示すように、歩道30においてパーソナルモビリティ10が自動運転されているとき、ユーザーが傘20をさすと、パーソナルモビリティ10の車体の大きさは、傘20をさしたときの大きさ20Aに疑似的に広がる。その結果、傘20と歩道30の壁40との間で接触または衝突)50が生じ得る。また、
図2(B)に示すように、前方から人60が向かってくるとき、傘20と人60との間で接触または衝突70が生じ得る。
【0005】
通常、パーソナルモビリティには、自動運転中に障害物との衝突を避けるため障害物検出センサーが搭載されている。自動運転中に周囲に障害物が検出された場合、障害物の距離に応じて減速または停止するような走行制御が行われる。
【0006】
図3(A)、(B)は、従来のパーソナルモビリティ10の走行制御の一例を説明する図である。パーソナルモビリティ10は、自車から一定の範囲に減速エリア80を設定し、さらに減速エリア80よりも狭い範囲に停止エリア82を設定する。
図3(A)、(B)に示すように、パーソナルモビリティ10の自動運転中に前方に障害物90が検出された場合、障害物90までの距離が減速エリア80に到達すると、パーソナルモビリティ10が減速され、停止エリア82に到達すると、パーソナルモビリティ10が停止される。
【0007】
傘20をさしたとき、傘20の大きさ20Aによって車体の大きさが疑似的に広がるため、それに合わせて減速エリア80や停止エリア82を拡張すると、傘をさしていないときに、不必要な減速や停止が行われてしまう。特に、屋内(玄関など)、スロープ、人混みなどの狭い道、スペースが少ない場所を走行するときに、減速や停止の回数が増えてしまう。
【0008】
図3(C)、(D)は、傘の大きさ20Aに合わせて減速エリア80A、82Aを拡張したときの走行例である。減速エリア80A、停止エリア82Aは、
図3(A)に示す減速エリア80、停止エリア82よりも拡張され、傘をさした場合、
図3(C)に示すように障害物90に接近すると減速や停止が適切に行われる。一方、傘をさしていない場合、
図3(D)に示すように、減速エリア80A、停止エリア82Aが拡張されたままであるため、障害物90までの距離が十分であるにもかかわらず不必要な減速や停止が行われてしまう。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決し、傘の開閉状態に応じた走行制御が可能なパーソナルモビリティを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るパーソナルモビリティは、電動カート、電動車椅子、シニアカートなどを含むものであって、傘の開閉を判定する判定手段と、傘が開かれていると判定された場合、傘が開かれた大きさを考慮して車体の大きさを決定する決定手段と、決定された車体の大きさに基づき走行を制御する制御手段とを含む。
【0011】
ある態様では、前記決定手段は、車体の大きさとして車体の幅および高さを決定する。ある態様では、前記決定手段は、傘がさされた位置を考慮して車体の大きさを決定する。ある態様では、前記決定手段は、右手で傘をさしているか左手で傘をさしているかを識別することで傘がさされた位置を決定する。ある態様では、パーソナルモビリティはさらに、障害物を検出する検出手段を含み、前記制御手段は、前記検出手段により検出された障害物を回避するように走行を制御する。ある態様では、前記制御手段は、障害物までの距離が第1の値以下に到達したとき速度を減少させ、傘が閉じていると判定されたときの第1の値よりも傘が開かれていると判定されたときの第1の値が大きい。ある態様では、前記制御手段は、障害物までの距離が第2の値以下に到達したとき停止させ、傘が閉じていると判定されたときの第2の値よりも傘が開かれていると判定されたときの第2の値が大きい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、傘の開閉を判定し、傘が開かれているときの大きさを考慮した車体の大きさを決定するようにしたので、
大きさを決定し、決定された車体の大きさに基づき走行を制御するようにしたので、傘の開閉状態に応じて正確な走行制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】パーソナルモビリティにおいて傘を開いた状態を示す図である。
【
図2】従来のパーソナルモビリティの課題を説明する図である。
【
図3】
図3(A)、(B)は、従来のパーソナルモビリティの走行例を説明する図、
図3(C)、3(D)は、従来のパーソナルモビリティの課題を説明する図である。
【
図4】本発明の実施例に係るパーソナルモビリティの電気的な構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施例に係る走行制御プログラムの機能的な構成を示す図である。
【
図6】本発明の実施例に係る傘開閉判定部および車体サイズ決定部の詳細を説明する図である。
【
図7】本発明の実施例に係る走行制御プログラムの動作フローを示す図である。
【
図8】本発明の実施例に係るパーソナルモビリティの走行例を示す図である。
【
図9】本発明の実施例に係るパーソナルモビリティの走行例を示す図である。
【
図10】本発明の実施例に係るパーソナルモビリティの走行例を示す図である。
【
図11】本発明の実施例に係るパーソナルモビリティの走行例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るパーソナルモビリティは、電動カート、電動車椅子、シニアカートなどの移動体である。パーソナルモビリティは、歩行者と同様に歩道を走行可能であり、LiDAR(Light Detection And Ranging)、ステレオカメラ、デプスカメラなどなどの3次元測位センサーにより障害物を検出し、障害物を回避しながら自動運転する機能を備えている。
【実施例0015】
次に、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。パーソナルモビリティは、バッテリーを動力源として走行する車両であり、
図1に示すように、前輪、後輪、椅子、ハンドル、座席などを備える。例えば、後輪には、バッテリーで駆動されるモータが接続される。また、ハンドルには、前輪および後輪を制動するためのブレーキレバーが取り付けられ、ハンドルを回転させることで前輪の舵を切ることができ、こうしたパーソナルモビリティは、低速走行が可能であり、歩行者と同様に歩道を走行することが許される。
【0016】
図4は、本実施例のパーソナルモビリティの電気的な構成を示しブロック図である。パーソナルモビリティ100は、障害物を検出する障害物検出部110、自車位置を検出する位置検出部120、撮像カメラ130、記憶部140、出力部150、駆動部160および制御部170を含んで構成される。但し、ここに示す構成は一例であり、必ずしもこの構成に限定されるものではない。
【0017】
障害物検出部110は、パーソナルモビリティの進行方向に存在する障害物を検出し、検出結果を制御部170に提供する。障害物検出部110は、特に限定されないが、例えば、LiDAR、ステレオカメラ、デプスカメラなどの3次元測位センサーによって障害物を検出する。
【0018】
位置検出部120は、特に限定されないが、例えば、GPS信号を受信するためのアンテナと、受信したGPS信号に基づきパーソナルモビリティ100の現在位置を算出する処理回路等とを含み、検出した自車位置を制御部170に提供する。
【0019】
撮像カメラ130は、パーソナルモビリティ100の周囲や座席を撮像し、撮像した画像データを制御部170に提供する。車載カメラ130の取り付け位置や取付け数は任意であるが、例えば、前方や側方を撮像する位置、乗車したユーザーを撮像する位置などに取り付けられる。
【0020】
記憶部140は、パーソナルモビリティ100の動作に必要な情報を格納する。また、パーソナルモビリティ100がナビゲーション機能を備える場合には、道路データや施設データなどを記憶したり、制御部170が実行するアプリケーションソフトウエアやプログラムを記憶することができる。
【0021】
出力部150は、例えば、パーソナルモビリティ100がナビゲーション機能を搭載していたり、メディアの再生機能を搭載している場合には、車載ディスプレイ上に音声や映像を出力する。駆動部160は、制御部170からの制御下においてパーソナルモビリティ100の後輪に接続されたモータを駆動したり、ハンドルに接続されたモータに接続されたモータを駆動し、これにより自動運転時にパーソナルモビリティ100の進行方向や走行速度を制御し、障害物との衝突を回避する。
【0022】
制御部170は、パーソナルモビリティ100の動作を制御するためのハードウエアやソフトウェアを含み、例えば、ROM/RAMに格納されたプログラムをマイクロプロセッサで実行することで種々の制御を行う。本実施例では、制御部170は、パーソナルモビリティ100に乗車したユーザーが所持する傘の開閉を判定し、この判定結果に基づきパーソナルモビリティ100の走行を制御する走行制御プログラムを実行する。
【0023】
図5に、走行制御プログラムの機能的な構成を示す。走行制御プログラム200は、傘識別部210、傘開閉判定部220、車体サイズ決定部230および走行制御部240を含んで構成される。
【0024】
傘識別部210は、搭載された撮像カメラ130によって撮像された画像データからユーザーが所持する傘を識別する。識別方法は特に限定されないが、例えば、
図6(A)に示すように、ユーザーがパーソナルモビリティ100に乗車する際に、パーソナルモビリティ100の前方を撮像する撮像カメラ130で傘20を撮像する。傘識別部210は、画像データを解析することで
図6(B)に示すように、傘20の色や特徴、傘の種類(折り畳み傘や通常の傘)を識別する。この識別結果は、傘開閉判定部220や車体サイズ決定部230に提供される。
【0025】
傘開閉判定部220は、傘識別部210により識別された傘の開閉を判定する。傘識別部210によって白い傘が識別されたならば、白い傘の開閉が判定される。判定方法は特に限定されないが、例えば、
図6(C)に示すように、パーソナルモビリティ100にユーザーが乗車しているとき、座席を撮像する撮像カメラ130でユーザーを含む傘20を撮像し、撮像した画像データに基づき識別された傘20の開閉を判定する。この判定結果は、車体サイズ決定部230および走行制御部240に提供される。
【0026】
車体サイズ決定部230は、傘開閉判定部220によって傘が開いていると判定された場合、傘が開いているときの大きさ20Aを考慮してパーソナルモビリティ100の車体サイズ(車体の大きさ)を決定する。
図6(B)に示したように、傘識別部210によって識別された白い傘の長さが65cmであれば、傘が開かれたときの大きさが65cmであり、青い折り畳み傘が識別された場合には、例えば、その長さを3倍した60cmを傘が開かれたときの大きさとする。
【0027】
傘の大きさ20Aを決定した後、車体サイズ決定部230は、
図6(D)に示すように、傘が開かれたときの大きさ20Aに基づきパーソナルモビリティ100の車体サイズSを決定する。ここでは車体サイズSは、傘20が開かれたときの大きさ20Aを考慮したパーソナルモビリティ100の幅Wと高さHを含み、言い換えれば、車体サイズSは、パーソナルモビリティ100と傘の大きさ20Aとを概ね包含する。幅Wは、パーソナルモビリティ100の水平方向の中心位置を基準にその左右の長さであり、高さHは、パーソナルモビリティ100の垂直方向の中心位置を基準にその上下の長さである。必要に応じて、車体サイズは、奥行Dを含むようにしてもよい。もし、奥行Dを含む場合には、車体サイズSは、直方体状の空間として表され、この空間内に、概ねパーソナルモビリティ100と傘の大きさ20Aとが包含される。
【0028】
幅Wと高さHの決定方法は特に限定されないが、例えば、傘が開かれたときの大きさ20Aと、幅Wおよび高さHとの関係を規定したルックアップテーブルを用意しておき、当該テーブルを参照して幅Wと高さHを決定するようにしてもよい、あるいは、傘の大きさ20Aと幅Wおよび高さHの関係を規定した数式を用意し、当該数式を用いて幅Wと高さHを算出するようにしてもよい。あるいは、撮像カメラ130によって撮像した画像データから幅Wと高さHとを算出するようにしてもよい。
【0029】
傘が開かれていないときの通常の車体サイズは、パーソナルモビリティ100の外形によって決定されるが、通常の車体サイズは、傘が開かれているときと同様に、幅Wa、高さHaを含むものであってもよい。また、必要に応じて、奥行Daを含むようにしてもよい。もし、傘をさしたときの大きさ20Aがパーソナルモビリティ100の外形からはみ出すならば、Wa<W、Ha<H、Da<Dの関係になり得る。
【0030】
走行制御部240は、車体サイズ決定部230で決定された車体のサイズに応じてパーソナルモビリティ100の走行を制御する。走行制御は、完全自動運転を行うものであっても良いし、ユーザーの運転を支援する半自動運転であってもよい。ある態様では、走行制御部240は、位置検出部120で検出された自車位置の変化から進行方向や進行速度を算出し、記憶部140に格納された道路データを参照しつつ走行を制御したり、あるいは、走行制御部240は、撮像カメラ130で撮像された前方の道路を認識し、認識した道路に沿うような走行制御を行う。このような走行制御下において、障害物検出部110によって障害物が検出された場合には、走行制御部240は、障害物を回避し障害物と接触しないような走行制御を行う。もし、傘が開かれている場合には、傘を開いているときの大きさ20Aを考慮した車体サイズSに基づき障害物に接触しないような走行制御が行われる。つまり、
図6(D)に示す車体の幅Wと高さHが障害物に接触しないようにパーソナルモビリティ100の自車位置や進行方向が制御される。走行制御部240による具体的な走行例については後述する。
【0031】
図7は、本実施例の走行制御プログラム200の動作を説明するためのフローである。先ず、傘識別部210は、パーソナルモビリティ100の前方の撮像カメラ130によって撮像された画像データに基づきユーザーが搭乗する際に所持している傘を認識し(S100)、認識した傘の色や大きさを識別する(S110)。
【0032】
次に、傘開閉判定部220は、登場したユーザーを撮像する撮像カメラ130の画像データに基づき識別された傘の開閉状態を判定する(S120)。傘が開いていると判定された場合(S130)、車体サイズ決定部230は、傘が開かれている大きさ20Aを考慮した拡張した車体サイズSを決定し(S140)、走行制御部240は、拡張した車体サイズSに基づき障害物と接触しないような走行制御を行う(S150)。他方、傘が開いていないと判定された場合(S130)、車体サイズ決定部230は、パーソナルモビリティ100の通常の車体サイズを決定し(S160)、走行制御部240は、拡張されていない通常の車体サイズで走行制御を行う(S170)。
【0033】
次に、本実施例による傘の開閉に応じた走行制御例を
図8ないし
図11を参照して説明する。
図8(A)、(B)は、障害物検出部110や撮像カメラ130によって壁40や人60が検出されたときの従来の走行例を示している。ユーザーが傘を開いたとき、その大きさ20Aがパーソナルモビリティの車体サイズを超えると、傘20と壁40との間で接触50が生じたり、前方からの人60と傘20との間で衝突70が生じ得る。
【0034】
本実施例では、
図8(C)に示すように、走行制御部240は、傘が開かれたと判定した場合には、傘の大きさ20Aを考慮した拡張した車体サイズSが壁40に接触しないようにパーソナルモビリティ100の走行を制御する。その結果、傘20と壁40との間には一定の間隙Mが保たれる。また、
図8(D)に示すように、走行制御部240は、傘の大きさ20Aを考慮した拡張した車体サイズSが人60に接触しないようにパーソナルモビリティ100の走行を制御する。その結果、傘20と人60との間には一定の間隙Mが保たれる。
【0035】
図9(A)は、従来の傘をさしたときの減速エリアと停止エリアを示し、
図9(B)は、従来の傘をさしていないときの減速エリアと停止エリアを示す。
図9(A)に示すように、傘をさしたとき、傘の大きさ20Aに合わせて減速エリア80Aと停止エリア82Aが拡張され、障害物90との衝突を回避する制御が行われる。しかし、傘をさしていないときでも、
図9(B)に示すように、減速エリア80Aと停止エリア82Aはそのままの大きさであうため、検出された障害物90との距離が十分であるにもかかわらず不必要な減速、停止が行われてしまう。
【0036】
本実施例では、
図9(C)に示すように、傘をさしたときの減速エリア80Aおよび停止エリア82Aは、傘の大きさ20Aに応じて拡張され、他方、傘をさしていないときの減速エリア80および停止エリア82は、パーソナルモビリティ100の通常の車体サイズに減少される。このため、障害物までの距離が十分であるときに従来のように不必要な減速、停止が行われるのを抑制することができる。
【0037】
図10(A)~(D)は、従来のパーソナルモビリティがエレベータに進入するときの走行例を示している。ここでは、エレベータの入口の大きさが、傘をさしたときの大きさ20Aよりも小さく、パーソナルモビリティの幅よりも大きいと仮定する。
図10(A)は、パーソナルモビリティ10の自動運転アシスト中に傘をさした状態でエレベータに進む様子を示している。
図10(B)に示すように、パーソナルモビリティ10がエレベータの入口に到達したとき、ユーザーは、傘の大きさ20Aがエレベータの入口よりも大きいと判断し、手動で自動運転アシストをオフし、
図10(C)に示すように傘を閉じ、その後、再び自動運転アシストをオンする。その結果、パーソナルモビリティ10は、自動運転によりエレベータ内に進入する。
【0038】
本実施例では、
図10(E)に示すように、パーソナルモビリティ100がエレベータの入口に向けて進行し、
図10(F)に示すように、パーソナルモビリティ100がエレベータの入口に到達したとき、ユーザーは、傘の大きさ20Aがエレベータの入口よりも大きいと判断し、
図10(G)に示すように傘を閉じる。これにより、パーソナルモビリティ100の車体サイズは通常の大きさに減少され、
図10(H)に示すようにパーソナルモビリティ100がエレベータ内に進入する。
【0039】
従来の走行制御では、ユーザーは、エレベータの入口に傘が接触しないようにするため自動運転アシストを手動でオフ/オンさせなければならず、このような操作はユーザーにとって煩雑であるが、本実施例の走行制御では、車体サイズSが自動的に縮小されるため自動運転アシストのオフ/オンの操作は不要であり、ユーザー利便性を高めることができる。
【0040】
次に本実施例の変形例について説明する。
図11(A)は、晴天時、傘をさしていないときの走行例であり、パーソナルモビリティ10は、壁40から一定の距離Mを維持した状態で走行される。
図11(B)、(C)は、従来の走行例であり、パーソナルモビリティ10は、傘を考慮していないためユーザーが傘を左手でさしたとき、左側の壁40と傘20との間に接触50を生じ得る。また、ユーザーが右手で傘をさしたとき、右側の人60と傘20との間に接触70を生じ得る。
【0041】
本変形例では、傘識別部210は、傘がユーザーの左手によってさされているのか右手によってさされているのかを識別する。この識別結果は、車体サイズ決定部230に提供され、車体サイズ決定部230は、傘が開かれたと判定されたとき、傘がさされた右手または左手に応じて傘の大きさ20Aを考慮した車体サイズの中心位置をオフセットさせる。つまり、傘が左手でさされた場合には、予め決められたオフセット量だけ傘の大きさ20Aを考慮した車体サイズの中心位置をパーソナルモビリティの中心から左側にオフセットさせ、傘が右手でさされた場合には、傘の大きさ20Aを考慮した車体サイズの中心位置をパーソナルモビリティの中心から左側にオフセットさせる。
【0042】
この結果、
図11(E)に示すようにユーザー左手で傘をさしたとき、走行制御部240は、拡張された車体サイズが壁40と接触しないように走行を制御するが、拡張された車体サイズの中心位置が左側にオフセットされているため、壁40との間により正確に一定の間隙Mが保たれる。また、
図11(F)に示すようにユーザーが右手で傘をさしたとき、走行制御部240は、拡張された車体サイズが人60と接触しないように走行を制御するが、拡張された車体サイズの中心位置が右側にオフセットされているため、人60との間により正確に一定の間隙Mが保たれる。
【0043】
このように本実施例によれば、傘をさしている位置に応じて車体サイズの中心位置を変化させるようにしたので、より正確に傘の大きさに応じた車体サイズを決定することができる。なお、上記の例では、傘をさしている左右の手を識別することで傘の位置を決定するようにしたが、これに限らず、ユーザーを撮像した画像データから傘の柄の部分を識別することで傘のさしている位置を決定するようにしてもよい。
【0044】
上記実施例では、傘が水平方向の壁や人と接触する例を示したが、傘が差された場合に車体サイズは垂直方向(高さH)も拡張されるので、高さ方向の障害物との接触も回避される。また、傘は、雨傘に限らず、晴天のときにさされる日傘であってもよい。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。