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  • 特開-気液分離装置及び吸引車 図1
  • 特開-気液分離装置及び吸引車 図2
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  • 特開-気液分離装置及び吸引車 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075491
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】気液分離装置及び吸引車
(51)【国際特許分類】
   B01D 45/12 20060101AFI20230524BHJP
   B04C 5/04 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
B01D45/12
B04C5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188422
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000192073
【氏名又は名称】株式会社モリタホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】山田 大二
【テーマコード(参考)】
4D031
4D053
【Fターム(参考)】
4D031AC04
4D031BA07
4D031BB10
4D031DA01
4D031EA01
4D053AA01
4D053AB01
4D053BA01
4D053BB02
4D053BC01
4D053BD04
4D053CA01
4D053CD01
4D053CD17
(57)【要約】
【課題】設置スペースや重量を殆ど増加させることなく、液体の流入量が過多の場合でも安定して効率的に気液分離を行える気液分離装置、及び当該気液分離装置を備えた吸引車を提供すること。
【解決手段】断面が円形の分離槽61の側面に流入口62が設けられており、分離槽61において、流入口62から流入した気液流体が旋回することにより気体と液体に分離され、気体は流入口62よりも上方に設けられた排気口から排出され、液体は流入口62よりも下方に設けられた流出口64から排出される気液分離装置60Bであって、分離槽61の側面のうち流入口62よりも下方には穴66があけられており、液体は穴66からも排出可能である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が円形の分離槽の側面に流入口が設けられており、
前記分離槽において、前記流入口から流入した気液流体が旋回することにより気体と液体に分離され、前記気体は前記流入口よりも上方に設けられた排気口から排出され、前記液体は前記流入口よりも下方に設けられた流出口から排出される気液分離装置であって、
前記分離槽の前記側面のうち前記流入口よりも下方には穴があけられており、前記液体は前記穴からも排出可能であることを特徴とする気液分離装置。
【請求項2】
前記穴は、複数のスリットであることを特徴とする請求項1に記載の気液分離装置。
【請求項3】
前記スリットが上下方向に所定数配置された領域が、円周方向に所定間隔で複数設けられていることを特徴とする請求項2に気液分離装置。
【請求項4】
前記スリットが、前記気液流体の旋回方向に沿って斜め下向きに形成されていることを特徴とする請求項3に記載の気液分離装置。
【請求項5】
外筒を更に備え、
前記外筒は、前記分離槽の前記側面のうち前記穴が設けられている箇所を外側から覆い、前記穴から排出された液体が前記流出口及び前記穴から排出された前記液体を貯留する貯留槽内において飛散するのを防ぐことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の気液分離装置。
【請求項6】
吸引した回収物を収容する収容タンクと、
シール及び冷却に水を要し前記収容タンクを減圧する真空ポンプと、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の気液分離装置とを備え、
前記気液分離装置は、前記真空ポンプから吐出された気液流体を気体と液体に分離することを特徴とする吸引車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気等の気体と水等の液体が混合した気液流体を旋回させることにより気体と液体に分離する気液分離装置、及び当該気液分離装置を備えた吸引車に関する。
【背景技術】
【0002】
湿式の真空ポンプと、真空ポンプの入口側に配置され集塵機能を有するセパレータ(3次キャッチャ)と、真空ポンプの出口側に配置され封入水分離機能及び封入水貯留機能を有する補給水タンク(4次キャッチャ)を備えた強力吸引車が知られている。
補給水タンクの封入水分離機能は、真空ポンプの排気に含まれる水分を気液分離装置によって分離するものである。この気液分離装置としては、気液流体を貯留液体の液面に衝突させて気体と液体に分離する液面衝突式や、気液流体を旋回させて気体と液体に分離するサイクロン式など、様々な構造が採用されている。
例えば、特許文献1には、多数の孔を有する第1孔明きプレートと第2孔明きプレートを所定の空間を隔てて上下に隔置し、孔明きプレート間の空間に排気口を接続し、第2孔明きプレートの下側に液体回収槽を配置し、上側の第1孔明きプレートに液体ミストを含む空気を衝突させ、液体ミストを第1孔明きプレートと第2孔明きプレートを貫通させて液体回収槽に落下させ、空気のみを排気口から排出する気液分離器が開示されている。
また、特許文献2には、ルーツブロワにて吸引される回収対象物を回収するレシーバタンクを備えた吸引車において、レシーバタンクの下流側であってルーツブロワの上流側に接続された3次キャッチャと、ルーツブロワの下流側に接続され、3次キャッチャとは別個に配置された4次キャッチャとを備え、4次キャッチャが、共通のタンク上に複数のサイクロン集塵機が車両の前後方向に並べて配置された吸引車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-87779号公報
【特許文献2】特開2010-19068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液面衝突式は、貯留液体の液面高さが変動すると、分離性能が変化する。一方、サイクロン式は、貯留液体の液面高さの影響は受けないが、真空ポンプから一度に大量の水が流入すると、旋回によっても気液を分離しきれず、排気口から空気と一緒に水が噴出してしまう可能性がある。例えば、真空ポンプが高真空状態で運転されている間は真空ポンプ内部及び排気配管内に封入水が滞留しているが、その状態から高真空状態が開放されると、真空ポンプの排気量が一気に増加し、増加した排気に引っ張られて、滞留していた大量の封入水が一度にサイクロン式の気液分離装置に流入する。そのような場合、気液分離装置内で旋回する多量の水の一部は壁面に寄らず中心付近において旋回しながら停滞しがちであり、その停滞している水が気体と一緒に上昇気流に乗って排出されてしまう。このような事象は、吸引作業中に回収物が無くなった場合や、営業先等において回収物を吸わない状態で吸引力の体感デモンストレーションを行っている場合などに発生しやすい。
この対策としては、流入する水量に合わせて段階的に大きさの異なる気液分離装置を複数設置することや、補給水タンクの前段にサイレンサを兼ねた気液分離装置を取り付けることも考えられるが、いずれも構成機器が増えて設置スペース及び重量が増加してしまうという問題がある。特に、強力吸引車など、気液分離装置の他にも多様な機器類を搭載する必要のある特装車両においては、個々の機器の設置スペースや重量を極力低減することが望まれている。
そこで、本発明は、設置スペースや重量を殆ど増加させることなく、液体の流入量が過多の場合でも安定して効率的に気液分離を行える気液分離装置、及び当該気液分離装置を備えた吸引車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明の気液分離装置60Bは、断面が円形の分離槽61の側面に流入口62が設けられており、分離槽61において、流入口62から流入した気液流体が旋回することにより気体と液体に分離され、気体は流入口62よりも上方に設けられた排気口から排出され、液体は流入口62よりも下方に設けられた流出口64から排出される気液分離装置60Bであって、分離槽61の側面のうち流入口62よりも下方には穴66があけられており、液体は穴66からも排出可能であることを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の気液分離装置60Bにおいて、穴66は、複数のスリットであることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に気液分離装置60Bにおいて、スリットが上下方向に所定数配置された領域αが、円周方向に所定間隔で複数設けられていることを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項3に記載の気液分離装置60Bにおいて、スリットが、気液流体の旋回方向に沿って斜め下向きに形成されていることを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の気液分離装置60Bにおいて、外筒65を更に備え、外筒65は、分離槽61の側面のうち穴66が設けられている箇所を外側から覆い、穴66から排出された液体が流出口64及び穴66から排出された液体を貯留する貯留槽60A内において飛散するのを防ぐことを特徴とする。
請求項6記載の本発明の吸引車は、吸引した回収物1を収容する収容タンク20と、シール及び冷却に水を要し収容タンクを減圧する真空ポンプ30と、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の気液分離装置60Bとを備え、気液分離装置60Bは、真空ポンプ30から吐出された気液流体を気体と液体に分離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、設置スペースや重量を殆ど増加させることなく、液体の流入量が過多の場合でも安定して効率的に気液分離を行える気液分離装置、及び当該気液分離装置を備えた吸引車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施例による吸引車の外観図
図2】同吸引車の主要構成を示す系統図
図3】同セパレータと補給水タンクを示す図
図4】同気液分離装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第1の実施の形態による気液分離装置は、断面が円形の分離槽の側面に流入口が設けられており、分離槽において、流入口から流入した気液流体が旋回することにより気体と液体に分離され、気体は流入口よりも上方に設けられた排気口から排出され、液体は流入口よりも下方に設けられた流出口から排出される気液分離装置であって、分離槽の側面のうち流入口よりも下方には穴があけられており、液体は穴からも排出可能としたものである。
本実施の形態によれば、設置スペースや重量を増すことなく、液体の流入量が過多の場合でも安定して効率的に気液分離を行え、排気口からの液体の噴出を防止することができる。
【0009】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による気液分離装置において、穴を複数のスリットとしたものである。
本実施の形態によれば、分離槽に設けられたスリットから多くの水を円滑に排出することができる。
【0010】
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態による気液分離装置において、スリットが上下方向に所定数配置された領域が、円周方向に所定間隔で複数設けられているものである。
本実施の形態によれば、分離槽に設けられたスリットから多くの水をより一層排出しやすくなる。
【0011】
本発明の第4の実施の形態は、第3の実施の形態による気液分離装置において、スリットが、気液流体の旋回方向に沿って斜め下向きに形成されているものである。
本実施の形態によれば、斜め下向きのスリットにより液体の旋回流を下方へ誘導して流出口及び穴からの排出を促進し、分離効率を高めることができる。
【0012】
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4のいずれか一つの実施の形態による気液分離装置において、外筒を更に備え、外筒は、分離槽の側面のうち穴が設けられている箇所を外側から覆い、穴から排出された液体が流出口及び穴から排出された液体を貯留する貯留槽内において飛散することを防ぐものである。
本実施の形態によれば、穴から排出された液体をすぐに落下させて貯留することができるため、穴から排出された液体が貯留槽内で飛散して流出口から逆流し排気口から噴出してしまうことを効果的に防止できる。
【0013】
本発明の第6の実施の形態による吸引車は、吸引した回収物を収容する収容タンクと、シール及び冷却に水を要し収容タンクを減圧する真空ポンプと、第1から第5のいずれか一つの実施形態による気液分離装置とを備え、気液分離装置は、真空ポンプから吐出された気液流体を気体と液体に分離するものである。
本実施の形態によれば、排気口からの液体の噴出を効果的に抑制する気液分離装置を備えた吸引車とすることができる。
【実施例0014】
以下、本発明の一実施例による気液分離装置及び吸引車について説明する。
図1は本実施例による吸引車の外観図であり、図1(a)は斜視図、図1(b)は側面図である。図2は本実施例による吸引車の主要構成を示す系統図であり、太矢印は吸引作業時の空気の流れを示し、二連矢印は排出作業時の空気の流れを示し、細矢印は補給水の流れを示し、点線矢印は回収物1の流れを示している。
【0015】
吸引車は、下水道・側溝清掃などで生じる汚泥や、建設現場で発生する土砂などといった回収物1を吸引して回収する。
吸引車は、吸入コック11を有し回収物1を吸引する吸引ホース10と、吸引ホース10が吸引した回収物1を収容する収容タンク20(1次キャッチャ)と、シール及び冷却に水を要し収容タンク20を減圧する水封式の真空ポンプ(湿式真空ポンプ)30と、収容タンク20から真空ポンプ30へ向かう空気と回収物1の混合流体から回収物1をある程度除去するサイクロン式の集塵機40(2次キャッチャ)と、集塵機40を経た混合流体が流入し、流入した混合流体を内部に貯留している水を利用して空気と回収物1に分離するセパレータ50(3次キャッチャ)と、真空ポンプ30に供給する水(補給水)を貯留すると共に、真空ポンプ30から吐出された気液流体を気体と液体に分離する補給水タンク60(4次キャッチャ)を備える。真空ポンプ30から補給水タンク60に流入する気液流体は、空気と水が混合したものである。
【0016】
収容タンク20は円筒形であり、荷台の後部において中心軸を水平方向かつ車体前後方向として設置されている。吸引ホース10は、後端が収容タンク20内に上向きに位置し、先端側が収容タンク20の外へ延出している。収容タンク20内には、吸引ホース10の後端近傍にて吸引ホース10の後端よりも上方に配置された衝突板21と、衝突板21から水平方向に所定距離あけた位置において上方へ突出した主マンホール22が設けられている。
吸引ホース10の先端から吸引された回収物1は、空気と共に吸引ホース10の後端から噴出して衝突板21に斜めの角度から衝突し、下方へ跳ね返されて収容タンク20の下部に溜まっていく。
主マンホール22には第一配管70の一端が接続しており、第一配管70の他端は集塵機40に接続している。第一配管70の途中にはメインバルブ71が設けられている。吸引作業時は、メインバルブ71が開となり、収容タンク20を出た混合流体(回収物1混じりの空気)が第一配管70を流れて集塵機40に流入する。回収物1は集塵機40内に生じる旋回流によって集塵機40内の下部に落ちて溜まり、空気は集塵機40の上部に一端が接続している第二配管80へ排出される。集塵機40を出た空気には回収物1がまだ混じっている可能性がある。
【0017】
第二配管80の他端はセパレータ50の上部に接続しており、集塵機40を出た空気はセパレータ50に下向きに流入する。セパレータ50内は、所定量の水が貯留されていると共にその上方は空間となっている。セパレータ50に流入した回収物1混じりの空気は水に衝突し、これによって回収物1が水に捕捉され、回収物1が分離された空気はセパレータ50の上部に一端が接続している第三配管90へ排出される。
【0018】
第三配管90の他端は真空ポンプ30に接続しており、セパレータ50を出た空気は真空ポンプ30に流入する。真空ポンプ30は、シールと冷却に水を用いるポンプである。本実施例では、真空ポンプ30として、1段側ポンプ室31と2段側ポンプ室32が直列につながれた湿式ルーツブロワを用いている。
1段側ポンプ室31の出口には第四配管100の一端が接続しており、第四配管100の他端は補給水タンク60の上部に接続している。第四配管100の途中には、一端が第四配管100に接続し他端が2段側ポンプ室32の入口に接続した第一分岐管101が設けられていると共に、チェッキ弁102が第一分岐管101との接続箇所よりも下流側に設けられている。
2段側ポンプ室32の出口には第五配管110の一端が接続しており、第五配管110の他端は第四配管100にチェッキ弁102よりも下流側の位置で接続している。第五配管110の途中には、一端が第五配管110に接続し他端が第一配管70に接続した第二分岐管111が設けられていると共に、第二分岐管111との接続箇所よりも下流側には、吸引作業時に開、排出作業時に閉となる加圧切替バルブ112が設けられている。第二分岐管111の途中には、第三分岐管113の一端が接続していると共に、その接続箇所よりも下流側には、吸引作業時に閉、排出作業時に開となる加圧バルブ114が設けられている。第三分岐管113の他端は第五配管110に加圧切替バルブ112よりも下流側の位置で接続しており、その途中には加圧安全弁115が設けられている。
また、第一配管70において、第二分岐管111との接続箇所よりも下流側にはドレントラップ140と圧力計150が設けられている。
【0019】
真空ポンプ30から排出された空気及び水からなる気液流体は、第四配管100を流れて補給水タンク60に流入する。
補給水タンク60の一部を構成する貯留槽60Aは、内部に所定量の水が貯留されていると共にその上方は空間となっている。補給水タンク60に流入した空気及び水のうち、水は補給水として利用するため回収され、空気は補給水タンク60の上部に設けられた排気管63から大気に放出される。
排気管63には第四分岐管130の一端が接続しており、第四分岐管130の他端は第二配管80に接続している。第四分岐管130の途中には、吸引作業時に閉、排出作業時に開となる負荷開放バルブ131が設けられている。
補給水タンク60の下部には、補給水を真空ポンプ30へ送出する送出配管120の一端が接続しており、送出配管120の他端は第三配管90のうち真空ポンプ30に近い位置に接続している。送出配管120には、補給水の供給有無を作業員等が目視確認するための透視管121が設けられている。
【0020】
図3はセパレータと補給水タンクを示す図であり、図3(a)は斜視図、図3(b)は内部構造を示すため一部透明化した図である。図4は気液分離装置を示す図であり、図4(a)は下方からの斜視図、図4(b)は上方からの斜視図、図4(c)は内部構造を示すため一部透明化した図である。
セパレータ50と補給水タンク60は隣接しており、荷台のうち収容タンク20よりも前方の位置において、中心軸を水平方向かつ車体幅方向として設置されている。
補給水タンク60は、真空ポンプ30に供給する水を貯留する貯留槽60Aと、サイクロン式の気液分離装置60Bを備える。気液分離装置60Bは、貯留槽60Aの上面を貫通し一部が貯留槽60Aの内部に収まった状態で鉛直向きに配置されている。
気液分離装置60Bは、中空で横断面が円形の分離槽61と、分離槽61の側面において分離槽61に対して略垂直に設けられた流入口62と、分離槽61から上方に突出した排気管63と、分離槽61の下端に位置する流出口64と、横断面が円形で分離槽61よりも大径の外筒65を備える。
上端を排気口とする排気管63は、鉛直向きに配置され、下端が分離槽61内において流入口62と略同じ高さに位置している。
分離槽61は、円筒形状の円筒部61Aと、円筒部61Aの下端に連接した逆円錐台形状のテーパー部61Bを有し、テーパー部61Bの下端が流出口64となっている。また、円筒部61Aの側面のうち概ね流入口62よりも下方には、穴66があけられている。
【0021】
流入口62から分離槽61の内壁に沿うように接線方向から流入した気液流体は、分離槽61内において円周方向に旋回する。この旋回により、空気よりも比重が大きい水分は遠心力により分離槽61の内壁に密着しつつテーパー部61Bに沿って下方へ移動する一方で、空気は上昇気流により上方へ移動することで、気液流体は空気と水に分離し、空気は排気管63を介して補給水タンク60外へ排出され、水は流出口64から落下し貯留槽60Aに溜まっていく。
このとき、上述のように従来であれば、気液流体に含まれる水量が多いと分離槽61の内壁に密着せずに旋回流の中心方向に移動する水が増え、そのような非密着の水は流出口64まで至らずに上昇気流に乗ってしまい排気口から水が噴出する原因となるが、本実施例の分離槽61の円筒部61Aには穴66が設けられているため、旋回する気液流体に含まれる水分は、テーパー部61Bに沿って流出口64から排出されるのみならず、円筒部61Aに設けられている穴66からも排出される。これにより、水が旋回流の中心方向に移動し上昇気流に乗って排気口から噴出することを効果的に防止できる。また、気体と液体との粘性の違いにより、穴66からは液体である水のみを分離排出できるため、気液分離をより一層効率的に行うことができる。
【0022】
穴66は、図4に示すような複数のスリットであることが好ましい。これにより、円筒部61Aに設けたスリットから多くの水を円滑に排出することができる。
また、上下方向に所定数のスリットを配置して一つの領域α(図4(a)において一点鎖線で囲った領域)とし、当該領域αを円周方向に所定間隔で複数設けることが好ましい。これにより、円筒部61Aに設けたスリットから多くの水をより一層排出しやすくなる。本実施例においては、領域αの数を九つとし、各領域αにおいて上下方向に7個のスリットを設けている。
また、スリットは、気液流体の旋回方向に沿って斜め下向きに形成されていることが好ましい。これにより、斜め下向きのスリットによって液体の旋回流を下方へ誘導して流出口64及び穴66からの排出を促進し、分離効率を高めることができる。
【0023】
外筒65は、分離槽61の側面のうち穴66が設けられている箇所を覆うように、円筒部61Aの外側に所定の隙間をもって配置されている。円筒部61Aが外筒65に囲繞されていることで、穴66から横向きに飛び出した液体は外筒65に衝突して下向きに方向転換する。これにより、穴66から排出された液体をすぐに落下させて貯留槽60Aに溜めることができるため、穴66から排出された液体が貯留槽60A内で飛散して流出口64から分離槽61内へ逆流し、排気管63を通って排気口から噴出することを効果的に防止できる。
【0024】
以上説明したように、分離槽61の側面のうち流入口62よりも下方に穴66を設け、穴66からも液体を排出可能とすることで、大きさの異なる気液分離装置60Bを段階的に複数設置したり、サイレンサを兼ねた気液分離装置60Bを前段に設けたりする場合と比べて、設置スペースや重量を増すことなく、一度に大量の液体が流入した場合でも安定して効率的に気液分離を行え、排気口からの液体の噴出を防止する気液分離装置60Bとすることができる。
また、この気液分離装置60Bを吸引車に搭載することで、吸引作業時や、客先におけるデモンストレーション時などにおいて、気液分離装置60Bから液体が噴出することを効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 回収物
20 収容タンク
30 真空ポンプ
60A 貯留槽
60B 気液分離装置
61 分離槽
62 流入口
64 流出口
65 外筒
66 穴(スリット)
α 領域

図1
図2
図3
図4