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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075495
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】ひずみゲージ式変換器
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/00 20060101AFI20230524BHJP
【FI】
G01L9/00 303P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188426
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】521238074
【氏名又は名称】横田 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100123881
【弁理士】
【氏名又は名称】大澤 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100134625
【弁理士】
【氏名又は名称】大沼 加寿子
(74)【代理人】
【識別番号】100080931
【弁理士】
【氏名又は名称】大澤 敬
(72)【発明者】
【氏名】横田 和之
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA40
2F055BB20
2F055CC11
2F055DD20
2F055EE11
2F055FF49
2F055GG25
(57)【要約】
【課題】ひずみゲージを用いて圧力等の物理量を電気信号に変換して計測するひずみゲージ式変換器であって、設置後速やかに測定を開始でき、かつ取り回しも容易なひずみゲージ式変換器を、低コストで実現する。
【解決手段】ひずみゲージ式変換器である圧力計1において、外部から受ける力に応じて変形する起歪体14を備える筐体10と、起歪体14上に配置されたひずみゲージ16と、ひずみゲージ16に接続され、筐体10に設けられた透孔19を通して筐体10の外部に引き出された導線21と、導線21を覆う被覆材24であって、その一端が筐体10に密着し、導線21との間に間隙25を有する被覆材24と、外部装置に対して出力信号を供給するための導線41と、導線21及び導線41にそれぞれ接続された回路を有する基板31とを設け、間隙25を通って筐体10の内部から被覆材24の他端まで連続した通気路を形成した。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から受ける力に応じて変形する起歪体を備える筐体と、
前記起歪体上に配置されたひずみゲージと、
前記ひずみゲージに接続され、前記筐体に設けられた透孔を通して前記筐体の外部に引き出された第1導線と、
前記第1導線を覆う被覆材であって、その一端が前記筐体に密着し、前記第1導線との間に間隙を有する第1被覆材と、
外部装置に対して出力信号を供給するための第2導線と、
前記第1導線と前記第2導線とにそれぞれ接続された回路とを備え、
前記間隙を通り、前記筐体の内部から前記第1被覆材の他端まで連続した第1通気路が形成されることを特徴とするひずみゲージ式変換器。
【請求項2】
請求項1に記載のひずみゲージ式変換器であって、
前記第1被覆材の前記他端に密着するように設けられた、前記回路を収容する収容部材を備え、
前記第1通気路が、前記筐体の内部から前記間隙を通って前記収容部材の内部まで連続し、前記収容部材の表面に形成された開口部にて外気と接するものであり、
前記収容部材の外面の、前記開口部の周囲に、撥水性を有する撥水材を設けたことを特徴とするひずみゲージ式変換器。
【請求項3】
請求項1に記載のひずみゲージ式変換器であって、
前記第1被覆材の前記他端に密着するように設けられた、前記回路を収容する収容部材を備え、
前記第1通気路が、前記筐体の内部から前記間隙を通って前記収容部材の内部まで連続し、前記収容部材の表面に形成された開口部にて外気と接するものであり、
前記開口部を覆うように、撥水性を有しかつ通気性を有する撥水材を設けたことを特徴とするひずみゲージ式変換器。
【請求項4】
請求項1に記載のひずみゲージ式変換器であって、
前記第2導線に沿って形成された第2通気路を備え、
前記第1通気路及び前記第2通気路を含む、前記筐体の内部から前記第1被覆材の前記他端を通って前記第2導線の前記回路と反対側の端部付近までつながる連続した通気路が形成され、
前記第2通気路の断面積は、前記間隙の断面積よりも小さいことを特徴とするひずみゲージ式変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ひずみゲージを用いて圧力等の物理量を電気信号に変換して計測するひずみゲージ式変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ひずみゲージを用いて圧力等の物理量を電気信号に変換して計測するひずみゲージ式変換器が知られている。
ひずみゲージは、力を受けると電気抵抗率が変化する特性を持ち、この抵抗率の変化による微小な出力電気信号の変化を、ブリッジ回路やアンプで増幅して取り出すことができる。例えば、圧力を受けるとひずみを生じる起歪体にひずみゲージを貼り付けて出力電気信号の変化を記録することにより、起歪体にかかる圧力を計測することができる。
【0003】
ひずみゲージには、大きく分けて金属(箔)ひずみゲージと半導体ひずみゲージがあり、いずれかのひずみゲージを利用した圧力計や間隙水圧計が、ひずみゲージ式変換器として従来から製造販売されている。この他にも、例えば土圧計、水圧計、荷重計など、ひずみゲージ式変換器を、圧力や応力を計測する機器として用いることが行われている。
これら圧力計等は、造船、鉄道、建設、防災構造物、自然災害(津波の波圧、地震の揺れ、強風の風圧)などの幅広い分野で行われる、実物の構造物を縮小した模型実験等で使用され、社会インフラの整備に必要な技術開発や人の安全にかかわる研究に大きく寄与している。
上述のような圧力計としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。
また、医療分野で用いられる圧力計として、例えば特許文献2に記載のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-346042号公報
【特許文献2】特開平7-275211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したひずみゲージ式変換器には、水中での使用を想定し、ひずみゲージ及び起歪体を密閉された筐体内に収めたものもある。そして、このようなひずみゲージ式変換器において、特にわずかな圧力を検出可能な敏感な機器では、計測場所に設置してから計測可能な安定した状態になるまで、時には1日を要するなど、非常に時間がかかるという問題があった。
これは、ひずみゲージの出力(電気抵抗率)は、温度など周囲の環境変化の影響を受けやすい一方、筐体が密閉されていると、筐体外の環境が速やかに筐体内に反映されず、筐体内のひずみゲージ周辺の環境がゆっくりと変化する状況が長く続くためと考えられる。
【0006】
しかし、水中での使用を想定すると、筐体自体に開口を設けてその開口を通じて直接外部との間で通気出来るようにする構成は、その開口から容易に水が浸入してしまうため、回路がショートする原因ともなり、採用し難い。
このような問題は、精度が高く力の変化に対する反応が敏感な、半導体ひずみゲージを用いる場合に特に大きく表れる。
【0007】
このような問題に対処するためには、特許文献2に記載のように、内部にひずみゲージを配置したケースに開口を設け、その開口に通気ホースを接続して、通気ホースを通じてケース内部と外気との間で換気を行えるようにすることが考えられる。また、このような通気ホースを、ひずみゲージから信号を取り出すためのケーブルのジャケット内部に設けることも考えられる。
しかし、ケーブルと別に通気ホースを設けると構造が複雑になりコストや取り回しの点で好ましくないし、単純にケーブルのジャケット内部に通気路を設ける場合、ケーブルの太さや硬さが増し、取り回しがしづらくなることも考えられる。
【0008】
この発明は、このような問題を解決し、ひずみゲージを用いて圧力等の物理量を電気信号に変換して計測するひずみゲージ式変換器であって、設置後速やかに測定を開始でき、かつ取り回しも容易なひずみゲージ式変換器を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のひずみゲージ式変換器は、上記の目的を達成するため、外部から受ける力に応じて変形する起歪体を備える筐体と、上記起歪体上に配置されたひずみゲージと、上記ひずみゲージに接続され、上記筐体に設けられた透孔を通して上記筐体の外部に引き出された第1導線と、上記第1導線を覆う被覆材であって、その一端が上記筐体に密着し、上記第1導線との間に間隙を有する第1被覆材と、外部装置に対して出力信号を供給するための第2導線と、上記第1導線と上記第2導線とにそれぞれ接続された回路とを設け、上記間隙を通り、上記筐体の内部から上記第1被覆材の他端まで連続した第1通気路が形成されるものである。
【0010】
このようなひずみゲージ式変換器が、上記第1被覆材の上記他端に密着するように設けられた、上記回路を収容する収容部材を備え、上記第1通気路が、上記筐体の内部から上記間隙を通って上記収容部材の内部まで連続し、上記収容部材の表面に形成された開口部にて外気と接するものであるとよい。
さらに、上記収容部材の外面の、上記開口部の周囲に、撥水性を有する撥水材を設けるとよい。
あるいは、上記開口部を覆うように、撥水性を有しかつ通気性を有する撥水材を設けるとよい。
【0011】
また、上記のひずみゲージ式変換器が、上記第2導線に沿って形成された第2通気路を備え、上記第1通気路及び上記第2通気路を含む、上記筐体の内部から上記第1被覆材の上記他端を通って上記第2導線の上記回路と反対側の端部付近までつながる連続した通気路が形成され、上記第2通気路の断面積が、上記間隙の断面積よりも小さいとよい。
さらに、上記第1被覆材の上記他端に密着するように設けられた、上記回路を収容する収容部材を備え、上記第1通気路と上記第2通気路とが、上記収容部材の内部を通してつながっているとよい。
【0012】
また、以上説明した発明は、その説明した態様のみならず、ひずみゲージ式変換器を用いた圧力等の物理量の測定方法等の方法や、ひずみゲージ式変換器とその周辺装置とを含むシステム、ひずみゲージ式変換器を構成する部品等、任意の態様で実施することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のような本発明によれば、ひずみゲージを用いて圧力等の物理量を電気信号に変換して計測するひずみゲージ式変換器であって、設置後速やかに測定を開始でき、かつ取り回しも容易なひずみゲージ式変換器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、この発明のひずみゲージ式変換器の第1実施形態である圧力計の構成を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示した圧力計の模式的な平面図である。
図3図3A及び図3Bはそれぞれ、図2の圧力計が備えるケーブル20,40の断面を示す、A-A線及びB-B線に沿う模式的な断面図である。図3Cは、ケーブル20の図3Aと異なる状態を示す模式的な断面図である。
図4図4Aは、図2に示した圧力計のC-C線に沿う模式的な断面図である。図4Bは、図4Aのケーブル中継筒30の、矢印D側から見た端面の構成を示す模式的な端面図である。
図5図5A及び図5Bはそれぞれ、比較例のケーブルの断面を示す、図3Aと対応する断面図である。
図6図6Aは、この発明の第2実施形態である圧力計の構成を示す、図4Aの一部と対応する模式的な断面図である。図6Bは、図6Aのケーブル中継筒30の、矢印E側から見た端面の構成を示す模式的な端面図である。
図7図7は、第2実施形態の変形例の構成を示す、図6Bと対応する模式的な端面図である。
図8図8は、この発明の第3実施形態である圧力計の構成を示す、図6Aと対応しコネクタ50までの構成を示す模式的な断面図である。
図9図9は、図8の圧力計が備えるケーブル40の断面を示す、図3Bと対応する模式的な断面図である。
図10図10A及び図10Bはそれぞれ、第3実施形態の変形例において用いるケーブル40の断面を示す、図9と対応する模式的な断面図である。
図11図11は、この発明の第1変形例の構成を示す、図4Aと対応する断面図である。
図12図12A及び図12Bはそれぞれ、この発明の第2、第3変形例の構成を示す、図4Aと対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態:図1乃至図4B
この発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
はじめに、この発明のひずみゲージ式変換器の第1実施形態である圧力計1の構成の概略について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、圧力計1の構成を模式的に示す斜視図である。図2は、圧力計1の模式的な平面図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、圧力計1は、ほぼ円筒状の本体の側面から突起部15が突出した筐体10と、被覆付きのケーブル20と、ケーブル中継筒30と、ケーブル40と、コネクタ50とを備える。
筐体10は、図4を用いて後述するように、ダイヤフラム11、枠体12、裏蓋13及び突起部15により構成され、ひずみゲージ16を内蔵して、圧力を検出するセンシング部として機能する部分である。筐体10及びその内部の構成は、従来用いられている圧力計と同様でよい。
【0017】
ケーブル20は、筐体10に与えられた圧力に応じてひずみゲージ16が出力する電気信号を取り出すための導線に、絶縁及び防水のための被覆を施したケーブルである。
ケーブル中継筒30は、圧力計1を制御し、また圧力計1による圧力の測定結果を取得して記録する外部の制御機器とのインタフェースとなる基板31(図4A参照)を内蔵する、略円筒形の収容部材である。
コネクタ50は、圧力計1を外部の制御機器に接続して信号やデータを入出力するためのコネクタである。ケーブル40は、ケーブル中継筒30内の基板31とコネクタ50とを電気的に接続するためのケーブルである。
【0018】
以上の圧力計1において特徴的な点の一つは、ケーブル20の内部を通して形成される、筐体10の内外の通気を可能とするための通気路の構造である。この点について、図3A乃至図4Bも用いて次に説明する。
【0019】
まず図3Aに、ケーブル20の、図2のA-A線における断面を模式的に示す。
図3Aに示すように、ケーブル20は、4本の導線21a~21d(以後、個体を区別しない場合には符号「21」を用いる)を備える。これらはそれぞれ第1導線であり、ひずみゲージ16(図4A参照)に対する2対の入力線と出力線として機能する。各導線21a~21dは、表面を絶縁被覆材22により被覆され、他の導線とショートしないようになっている。絶縁被覆材22を含む各導線21a~21dは、互いに撚り合わされていてもよい。また、絶縁被覆材22の周囲には、4本の導線を束ね、また周囲の磁気からシールドするための、紙や金属箔、シールド線等からなる保護層23が設けられている。
【0020】
このように、複数の導線を、それぞれに絶縁被覆を施した上で束ね、さらにシールドを施したケーブルは、複数の電気信号を伝送するためのケーブルとして、種々市販されている。なお、図3Aでは、4本の導線21を被覆する各絶縁被覆材22に囲まれた中央部に一定のスペースがあり、そこが保護層23で埋められたようになっているが、これは、図を分かりやすくするために全体を模式的に示したためである。実際には、特に細いケーブルや4本の導線21が撚り合わされたケーブルでは、各絶縁被覆材22に囲まれた中央部にほとんど隙間はない。従って、この中央部に保護層23がなかったとしても、この中央部に、以下に説明する間隙25と同様な機能を持たせることは期待できない。この点は、図3B以降に示す各種ケーブルの断面についても同様である。
【0021】
ケーブル20は、以上のような保護層23の外側にさらに被覆材24を設け、導線21と被覆材24の間に層状の間隙25を設けたものである。被覆材24は、ケーブル20の一部を水中に沈めることを想定し、ポリ塩化ビニル(PVC)等の、防水性の材質であることが好ましい。ここでいう防水性は、圧力計1の使用が想定される深度で、内部へ液体の水を進入させない程度の性能で足りる。
また、間隙25は、ケーブル20が途中で折れたり曲がったりしても、ケーブル20の一端が密着する筐体10から、他端に接続されるケーブル中継筒30まで、連続した通気路(第1通気路)が形成できる程度に確保できればよい。通気路の確保の観点から、被覆材24は、水圧や自重で潰れずに内径を概ね維持できる程度の強度を持つことが好ましい。
【0022】
このようなケーブル20は、市販の入出力電源ケーブルを、当該電源ケーブルの外径よりも大きい内径を有する市販のPVC製チューブ内に挿入することで作成でき、低コストで実現できる。
例えば、外径が2.4mmで肉厚が0.4mmのPVC製チューブを被覆材24として用い、その中に、被覆材24の内径(図3AのR11)よりも0.15mm程度小さい約1.45mmの外径(図3AのR12)の入出力電源ケーブルを挿入することにより、ケーブル20を形成することができる。この構成の場合、被覆材24の製造誤差を考慮しても、被覆材24の内部空間のうち、長手方向に垂直な断面で見て15~20%程度が通気路として確保される。この程度のサイズ及び通気路の比率で十分な通気が可能である。しかし、サイズ、形状、材質、通気路の比率等につき、ここで説明したものはあくまで一例であり、必須ではない。
【0023】
なお図3Aでは、間隙25が保護層23の周囲に概ね均等な幅で形成されている例を示している。しかし実際には、図3Cに示すように、保護層23を含む導線21が、被覆材24内部で偏った位置にあったり、一部が被覆材24と接触したりするケースが多いと考えられる。そして、このような配置でも、ケーブル20の機能としては全く問題ない。
【0024】
上述のように入出力電源ケーブルを単にPVC製チューブ内に挿入するなど、チューブ内で入出力電源ケーブルを支持する構造がない場合、図3A図3Cの断面内における入出力電源ケーブル(保護層23)とチューブ(被覆材24)との位置関係は、ケーブル20を動かせば、当然変動することになる。しかし、このような変動があっても、圧力計1の動作としては全く問題ない。
【0025】
図3Bに、ケーブル40の、図2のB-B線における断面を模式的に示す。
図3Bに示すように、ケーブル40は、4本の導線41a~41d、絶縁被覆材42及び保護層43を備え、これらはそれぞれケーブル20の導線21a~21d、絶縁被覆材22及び保護層23と同様なものである。すなわち、ケーブル40としては、ケーブル20において被覆材24内に挿入する、市販の入出力電源ケーブルを利用することができる。導線41a~41dは、それぞれ第2導線に該当する。
圧力計1では、ケーブル中継筒30からコネクタ50までの部分は水中に沈めないことを想定しているため、ケーブル40には防水性を持たせていない。しかし、防水が必要であれば適宜に防水を行ってもよい。
【0026】
次に図4Aに、圧力計1の、図2のC-C線に沿う断面を模式的に示す。
図4Aに示すように、筐体10は、ダイヤフラム11を図で上側に設けたほぼ円筒状の枠体12に対し、図で下側から裏蓋13を嵌め合わせた構造となっている。また、枠体12の内部に起歪体14が固定されている。起歪体14は、外力に応じて、受けた外力に対する直線性が高い量の歪みを生じる部品である。
ダイヤフラム11の中央付近には、ダイヤフラム11が受けた圧力を起歪体14に伝えるための軸17が設けられ、起歪体14はこの軸17にも固定されている。起歪体14の両面にはそれぞれ、ひずみゲージ16が設けられている。ひずみゲージ16は、ここでは起歪体14の各面に1つずつ、計2つ設けているが、数はこれに限られない。各面のひずみゲージ16には、それぞれ入力用と出力用の1対の導線21が接続されている。
【0027】
また、枠体12の側面には、透孔19が設けられると共に中空の突起部15が設けられ、透孔19と、筐体10内部の空間18と、突起部15内部の空間15aとが連続した通気路を構成している。導線21は、透孔19及空間15aを通じて筐体10の外部に引き出される。
突起部15は例えば、真鍮やステンレス製のパイプを、透孔19の内側に接着や溶接等により固定して形成できる。
【0028】
また、ケーブル20の被覆材24は、一端(図で左側)が突起部15の外周側に嵌め込まれて接着され、被覆材24の内周面が突起部15の外周面に密着するように固定されている。このため、筐体10を水中に置いても、空間15aを通じて筐体10内に水が浸入することはない。この密着や固定は、接着以外の手段で行ってもよい。
絶縁被覆材22及び保護層23を含む導線21は、空間15a内に引き込まれている。透孔19付近において保護層23が剥き取られ、導線21a~21dが起歪体14の上下に2本ずつ引き出されて、それぞれひずみゲージ16に接続されている。
【0029】
また、ケーブル20の被覆材24の他端は、ケーブル中継筒30の一端(図で左側)に接着され、当該一端と密着するように固定されている。より具体的には、ケーブル中継筒30の、ケーブル20側の端部には、他の部分に比べてその内径が大きくなった薄肉部35が形成され、被覆材24の他端は、薄肉部35の内周面及び薄肉部35の終端にある段差部35aに接着されている。このことにより被覆材24とケーブル中継筒30との間に十分な接着面積を確保し、強度と防水性を向上させている。
【0030】
そして、被覆材24の他端側においては、保護層23が剥き取られて導線21a~21dが露出し、接続部32において、ケーブル中継筒30内の基板31に設けられた回路の端子に接続されている。
基板31は、図4Aには表れない支持部材によってケーブル中継筒30に固定され、その周囲には空間34が確保されている。また、接続部33では、コネクタ50に向かって延びるケーブル40の導線41が、基板31上に設けられた回路の端子に接続されている。
【0031】
ここで、図4Bに、図4Aの矢印D側から見たケーブル中継筒30の端面を示す。
図4Bに示すように、ケーブル中継筒30の図4Aで右側の面には、ケーブル40を接続した状態でも外部へ開放されている開口部30aを備える。破線30cの内側がケーブル中継筒30内部の空間34と対応し、開口部30aは、破線30cの内側のうちケーブル40が通らない部分の一部に設けている。残りの部分である支持部30bが、ケーブル40を支持している。図4Bにおいてハッチングを付した部分が、ケーブル40が位置する範囲である。
【0032】
また、開口部30aの周囲には、撥水性を有する撥水材により撥水層36を形成している。撥水層36は、撥水材による薄層や薄板を接着する、撥水性材料を塗布する等、任意の方法で形成することができる。撥水性の度合いは、求められる防水性能に応じて設定すればよい。
【0033】
以上の構成を有する圧力計1においては、ダイヤフラム11に図1及び図4Aの矢印P方向から圧力が加えられると、その圧力に応じてダイヤフラム11が変形すると共に、変形に応じた力が軸17を通じて起歪体14にも伝達され、起歪体14が変形する。起歪体14の変形に応じて、ひずみゲージ16の抵抗値が変化する。
【0034】
一方、外部の制御装置からの所定の制御信号がコネクタ50及びケーブル40を通して基板31に入力されると、基板31がケーブル20を通してひずみゲージ16に入力信号を与える。基板31上の回路と導線21とひずみゲージ16とによりホイートストンブリッジ回路が形成されており、入力信号に応じてひずみゲージ16から戻ってくる出力信号の電圧又は電流を測定することによってひずみゲージ16の抵抗値を求めることができる。また、これを換算してダイヤフラム11に与えられている圧力を求めることができる。基板31上の回路は、この圧力の値を示す出力信号を、ケーブル40及びコネクタ50を通じて外部の制御装置に出力することができる。
【0035】
また、圧力計1においては、被覆材24の一端を突起部15に、他端をケーブル中継筒30に密着させて固定することにより、概ね図2に矢印Rで示す範囲に、筐体10内部の空間18から、透孔19と、ケーブル20内部の間隙25を通してケーブル中継筒30内部の空間34に続く通気路を形成している。この通気路は、ケーブル中継筒30の開口部30aにおいて外気と接している。
【0036】
この通気路により、筐体10の周囲に、温度変化など圧力以外の環境変化が生じた場合に、これに応じて空間18内にも発生する環境変化の影響を速やかに外部と平衡させ、空間18の環境変化がゆっくり長期間に亘って生じることを防止できる。このため、ひずみゲージ16の抵抗値、ひいては圧力の測定値のベースラインを速やかに安定させることができる。
このことを考えた場合には、間隙25を含む通気路は、空間18内の空気と外気とが速やかに交換されるほど通気性がよいものでなくて構わず、一定程度の空気の移動が可能な連続した経路であれば足りる。
【0037】
なお、圧力計1においては、筐体10は透孔19以外の箇所では密閉され、かつ被覆材24が防水性であり、その一端が筐体10(の突起部15)に密着しているので、筐体10やケーブル20を水中に沈めても、この通気路に外部から水が浸入することはない。
【0038】
また、撥水層36を設けたことにより、水辺で圧力計1を使用しケーブル中継筒30に水しぶきがかかる可能性があるような場合でも、ケーブル中継筒30の外周に付着した水滴が開口部30aから内部に侵入することを防止できる。ケーブル中継筒30の外周を伝って流れる水滴を撥水層36にてはじき、開口部30aに到達しないようにすることができるためである。すなわち、撥水層36により、通気路の出口として開口部30aを設けた場合でもケーブル中継筒30内部に水が浸入するリスクを軽減し、圧力計1の防水性を高めることができる。
【0039】
なお、圧力計1を水中で使用することを想定せず、例えば防塵ができればよいのであれば、被覆材24が防水性を備えている必要はない。空間18内への塵の進入を防止する観点でも、筐体10の外壁に、空間18と外部とを直接(近距離で)つなぐ開口を設けることは好ましくないので、以上説明してきた通気路は十分に有用である。
【0040】
次に、上述した第1実施形態の圧力計1のいくつかの比較例について説明する。
図5A及び図5Bは、それぞれ異なる比較例における、ケーブル20と対応する位置に設けられるケーブルの断面を示す、図3Aと対応する断面図である。これらの各比較例は、筐体10とケーブル中継筒30とを結ぶケーブルの構成以外は、上述した第1実施形態の圧力計1と共通である。従って、符号も同じものを用いる。ただし、図5A及び図5Bに示すケーブルは、ケーブル20のような間隙を有しないので、図12Aを用いて後述する変形例の場合と同様、突起部15内部の空間15aを通してケーブル全体を筐体10の内部に引き込む構成である。
【0041】
まず、図5Aに示すケーブル40′は、図3Bに示したケーブルの周囲に被覆材24と同様な材質の被覆材44を設け、被覆材44の内部に間隙を設けない構成である。一般的な用途に用いられるケーブルでは、異物侵入防止や構造の安定性強化等のため、意図して間隙を設けることはないのが通常である。
しかし、このようなケーブル40′を用いる場合、被覆材44の内部に通気路を形成することができないため、上述した実施形態の場合のような、圧力の測定値のベースラインを速やかに安定させる効果を得ることはできない。
【0042】
次に、図5Bに示すケーブル80は、図5Aのケーブル40′と比較して、保護層43の内部に中空のスペーサ82を追加し、このことにより被覆材44の内部に空気層85を設けたものである。このようなケーブル80を用いれば、空気層85を通じて、筐体10内の空間18と外気との間に通気路を形成することはできる。しかし、ベースラインを短時間で安定させるために十分な量の通気が可能な程度の通気路を形成しようとすると、図3Aに示したケーブル20と比較して実質的な導線束の径である保護層43の径が増加し、これに伴いケーブル80が固くなって取り回しがしにくくなる。
【0043】
また、図3Aの間隙25の幅を考慮したとしても、ケーブル80の径は、ケーブル20に比べて太くなる。そして、そのケーブル80全体を、突起部15内部の空間15aに通す必要があることから、太い突起部15が必要となり、筐体10の小型化にも支障が生じる。さらに、図5Bのようなケーブルは一般的な構成と異なるため、コストも高くなる。
これらの点を考えると、図3Aのようなケーブル20を用いることにより、図5Bのようなケーブル80を用いる場合と比べ、低コストで、取り回しが容易な、小型の筐体10を備える圧力計1を構成することができるといえる。
【0044】
一般に、圧力計1の筐体10の高さがケーブルの外径より小さいと、ケーブルが水流に干渉する等して測定に悪影響があり、これが小型化の阻害要因となる。しかし、前述したような外径が2.4mmのPVC製チューブを被覆材24としたケーブル20を用いれば、筐体を厚さ(高さ)3mm程度まで問題なく小型化することができる。筐体の直径も、6mm程度まで小型化することができる。
【0045】
すなわち、以上説明してきた実施形態のような通気路を設ける構成は、小型のひずみゲージ式変換器を構成する場合に特に有用なものである。例えば筐体10の直径が50mm以下、厚さが20mm以下のひずみゲージ式変換機を構成する場合に、本実施形態で説明してきた構成が特に効果を発揮する。ケーブルやチューブの径は、ケーブル20の外径が筐体10の厚さを超えないように、かつ被覆材24の内部に十分な断面積の通気路が形成できるように定めればよい。
【0046】
また、間隙25による通気路を設けることにより、ベースラインを速やかに安定させることができるので、安定性の高い高価なひずみゲージを用いなくても、現実的な時間でベースラインを安定させることができる。一般に、感度の高い半導体ひずみゲージを用いる場合、ベースラインの安定性が劣るが、上述したケーブル20を用いる構成であれば、安価なバルクの半導体ひずみゲージを用いても、さほど長時間をかけずにベースラインを安定させることができる。
【0047】
発明者らの実験では、一例として、小型の筐体で構成した圧力計で、図5Aの比較例のケーブル40′を用いるとベースラインの安定に7時間程度かかる条件において、ケーブルを、間隙25を有するケーブル20に置き換えることにより、ベースラインの安定に要する時間を3~4時間に低減することができた。
なおもちろん、半導体ひずみゲージを用いることは必須ではなく、金属箔ひずみゲージなど、任意のものを用いることができる。
このように、上述した実施形態の圧力計1によれば、安定性が速く小型の圧力計を使用した多点計測が安価に実現可能になると考えられ、その計測結果は、社会インフラ整備や人命の安全に大きく寄与できると考えられる。
【0048】
なお、以上説明してきた圧力計1によれば、他の効果も得られる。この点について次に説明する。
まず、圧力計1では、筐体10に突起部15を設け、被覆材24を、突起部15の外周を覆うように突起部15に密着させている。このため、密着のための加工が容易であり、部品の材料やサイズ等の制約も少ない。
【0049】
例えば、図12Aを用いて後述するように、被覆材24を突起部15の空間15a内部に挿入する構造でも、被覆材24と突起部15とを密着させて、間隙25を含む通気路を形成することは可能である。しかし、空間15a内部で被覆材24を潰さずに間隙25を確保すること等を考えると、このような構造では材質やサイズの選定に制約が生じたりより精密な加工が必要になったりして、コスト増につながる。
【0050】
また、圧力計1においては、被覆材24の両端が十分に拡げられた状態で固定されているため、被覆材24を柔軟性のある構成とした場合でも、被覆材24がつぶれて通気路が塞がれるリスクを軽減できる。
ケーブル20は柔軟に変形可能であることが望まれるのに対し、ケーブル中継筒30は、圧力計1を構成する場合に通常設けられる、変形を想定しない部材である。このケーブル中継筒30を、被覆材24を支える部材として用いることにより、被覆材24の筐体10と反対側を拡げた状態で支持するための特別な部材を設ける必要がなく、部品点数を削減し、コストを削減することができる。
【0051】
また、筐体10を水中に沈めて使用することを想定した場合でも、コネクタ50に接続される制御機器まで水中で運用するのでなければ、ケーブル中継筒30の部分は水中に沈めず、空気中に置くことが通常想定される。ケーブル20を長くすれば筐体10を水中の所望の位置に配置できる一方、ケーブル中継筒30の防水にコストをかけてまでケーブル中継筒30を制御機器(又はコネクタ50)から離れた位置に置くメリットは通常ないためである。
【0052】
そうすると、筐体10内部の空間18から続く通気路は、ケーブル中継筒30の位置まで続いていれば足りると言える。圧力計1では、ケーブル中継筒30の開口部30aにおいて通気路が外気に接する構造としているため、ケーブル中継筒30を、通気路の終端(筐体10と反対側の端部)を確保するための部材としても機能させることができ、この点でも部品点数の増加を抑えることができる。
【0053】
また、ケーブル中継筒30のようにケーブル40よりも手前に通気路が外気と接する出口を設ければ、ケーブル40には通気路(例えばケーブル20におけるような間隙25)を設ける必要がない。従って、ケーブル40の太さは比較的細くすることができ、構造や材質の選択肢も広い。このことにより、外部装置に接続するコネクタ50の近辺のケーブル40を、取り回しを重視した設計とすることができる。
【0054】
例えば、多数の圧力計を1台の制御装置に接続して各圧力計の制御や検出信号の処理を行うような場合、制御装置の周辺ではケーブルが多数配線されることになり、取り回しの容易さに関する要求が大きい。ケーブル40よりも手前の、例えばケーブル中継筒30に通気路が外気と接する出口を設けることは、ベースラインの安定を確保しつつこのような要求に応えるためにも有用である。
【0055】
〔第2実施形態:図6A乃至図7
次に、この発明のひずみゲージ式変換器の第2実施形態である圧力計1及びそのいくつかの変形例について、図6A乃至図7を用いて説明する。
第2実施形態は、ケーブル中継筒30に開口部30a及び撥水材を設ける位置と、被覆材24とケーブル中継筒30との接続部の構造とが第1実施形態と異なる。従って、これらの点を中心に説明し、他の部分の説明は省略する。また、第1実施形態と対応する箇所には同じ符号を用いる。なお、これら2つの点は、第1実施形態に対する変形として独立に適用可能である。
【0056】
図6Aは、第2実施形態の圧力計1の構成を示す、図4Aの一部と対応する模式的な断面図であり、ケーブル中継筒30近傍の部分のみを示すものである。図6Bは、図6Aのケーブル中継筒30の、矢印E側から見た端面の構成を示す模式的な端面図である。
図6Aに示すように、第2実施形態の圧力計1においては、開口部30aを、ケーブル中継筒30の側面のうちケーブル40に近い側の端部付近に設けている。開口部30aの断面形状は図6Bに表れるように円形である。開口部30aの周囲に撥水材による撥水層36を設けた点は第1実施形態の場合と同様である。
なお、図6Bでは図を分かりやすくするために開口部30aを大きく示しているが、実際にはより小さいサイズの開口部でも十分な通気を行うことができる。この点は、後述の図7についても同様である。
【0057】
開口部30a及び撥水層36を図6A図6Bに示すような位置及び形状で設けた場合でも、第1実施形態の場合と同様に通気路の形成及び防水性向上の効果を得ることができる。
なお、開口部30aの断面が円形やそれに近い正多角形状のような対称性の高い形状であると、撥水層36による開口部30aへの水滴浸入防止の効果が高く、好ましい。また、筐体10を水中に置くことが想定される場合、ケーブル20側が水に近い位置に来るので、防水の観点から開口部30aはケーブル20側ではなくケーブル40に近い側に設けることが好ましい。しかし、開口部30aを設ける位置や開口部30aの形状は、これらに限られない。
【0058】
また、図6Aに示すように、第2実施形態の圧力計1においては、ケーブル中継筒30の、ケーブル20側の端部は、他の部分に比べてその外径を小さくする形で薄肉部37が形成され、被覆材24の他端は、薄肉部37の外周面及び薄肉部37の終端にある段差部37aに接着されている。この構造であっても、第1実施形態の薄肉部35の場合と同様、被覆材24とケーブル中継筒30との間に十分な接着面積を確保し、強度と防水性を向上させることができる。
【0059】
次に、上述した第2実施形態の変形例について説明する。この変形例は、撥水材の構成及び配置を図7に示すものとしている点が、上述の第2実施形態と異なるものである。
図7に示すのは、開口部30aと重なる部分をメッシュ状にして通気性を持たせた撥水材38を、開口部30aを覆うように設けた例である。開口部30aの周囲の部分には通気性は不要であるので、この部分をメッシュ状にする必要はない。
【0060】
このような撥水材を設ければ、開口部30aへ直接飛んでくる水滴や、周囲の撥水材により防ぎきれなかった水滴が開口部30aへ浸入することも防止でき、図6Bに示した構成に比べて防水性をさらに向上させることができる。
なお、撥水材38の通気性は、ベースラインの安定に足りる程度に通気路と外気との間の通気を確保できる程度あればよい。メッシュのように肉眼で見える程度の開口を有している必要はない。また、開口部30aを覆う撥水材を、ケーブル中継筒30の外周面上ではなく、開口部30aの内部やケーブル中継筒30の内周面上に設けることも妨げられない。
【0061】
〔第3実施形態:図8乃至図10B
次に、この発明のひずみゲージ式変換器の第3実施形態である圧力計1及びそのいくつかの変形例について、図8乃至図10Bを用いて説明する。
第3実施形態は、ケーブル中継筒30に開口部30aを設けず、筐体10内部の空間18からケーブル40のコネクタ50側端部付近まで続く通気路を設けた点が、第1実施形態と異なる。従って、これらの点についてのみ説明し、他の部分の説明は省略する。また、第1実施形態と対応する箇所には同じ符号を用いる。
【0062】
図8は、第3実施形態の圧力計1の構成を示す、図4Aと対応する模式的な断面図であり、ケーブル中継筒30近傍から、図4Aには表れていないコネクタ50までの部分を示すものである。図9は、図8の圧力計が備えるケーブル40の断面を示す、図3Bと対応する模式的な断面図である。
図8に示すように、第3実施形態の圧力計1においては、ケーブル中継筒30に開口部30aを設けておらず、ケーブル中継筒30は密閉されている。ケーブル20及びケーブル40との接合部も、接着等により、少なくとも水滴が内部に浸入しないように密閉されている。
【0063】
また、図9に示すように、ケーブル40として、ケーブル20の場合と同様な被覆材44を備え、導線41と被覆材44との間に導線41に沿う層状の間隙45を設けたケーブルを用いている。ただし、ケーブル40における被覆材44の内径(図9のR21)と保護層43の外径(図9のR22)との差は、ケーブル20における被覆材24の内径(図3AのR11)と保護層23の外径(図3AのR12)との差よりも、小さくしている。従って、間隙45に形成される通気路(第2通気路)の、ケーブル長手方向に垂直な断面での断面積は、間隙25に形成される通気路の対応する断面積よりも小さい。
【0064】
コネクタ50は、図8に示すように、外装51、コネクタピン52及び支持部材53を備える。コネクタピン52は、外部装置のインタフェースと接続するためのピンである。支持部材53はこれ支持する部材であり、導線41をコネクタピン52に接続するための端子を備える。
ケーブル40は、コネクタ50と接続される側の端部にチューブ状の保護材54を装着し、保護材54をコネクタ50に差し込むことでコネクタ50に固定される。ケーブル40の各導線41は、支持部材53上の端子に接続される。
【0065】
このとき、ケーブル40中の間隙45は、外装51内部で開放される。そして、外装51と支持部材53の間には間隙が設けられているので、この間隙を通じて間隙45と外気との間の通気が可能である。コネクタ50を外部装置に接続した状態でも、通常は外装51と外部装置とが密着することはないので、同様な通気が可能である。
【0066】
以上の構成により、圧力計1には、筐体10内部の空間18から、透孔19と、ケーブル20内部の間隙25による第1通気路と、ケーブル中継筒30内部の空間34と、ケーブル40内部の間隙45による第2通気路とを含み、コネクタ50まで続いて、コネクタ50でのみ外気に接する一連の通気路を形成している。
【0067】
この通気路により、第1実施形態の場合と同様、筐体10内部の空間18に発生する環境変化の影響を速やかに外部と平衡させ、ベースラインを速やかに安定させることができる。
また、第3実施形態の構成では、ケーブル中継筒30を密閉できるため、ケーブル中継筒30の防水性を極めて高いものとすることができる。
【0068】
なお、図8のように間隙45による第2通気路をコネクタ50内部まで連続させず、被覆材44をコネクタ50の少し手前までの長さとし、第2通気路が、導線41のコネクタ50側端部(基板31と反対側の端部)付近まで続いて、この位置で外気に接するようにしても、概ね同様な効果が得られる。しかし、図8のように被覆材44がコネクタ50に固定される構成の方が、構造の堅牢性の観点では好ましい。
【0069】
ここで、筐体10と接するケーブル20内に、一定の断面積を有する通気路を確保できれば、筐体10内部の空間18に生じた温度変化など圧力以外の環境変化の影響を、空間18よりもはるかに体積の大きい通気路内の空気との間で平衡させ、軽減することができる。当該平衡は、最終的には外気との間でも取る必要があるが、ケーブル20内の通気路と外気との間の通気やそれによる平衡化がゆっくりであっても、圧力計1による測定のベースラインに与える影響はさほど大きくない。
【0070】
このため、ケーブル40内に設ける通気路の断面積が小さくても、ベースラインを速やかに安定させる効果は相当程度に得ることができるので、第3実施形態ではこのような構成を採用している。このことにより、コネクタ50まで延びるケーブル40の太さを抑えることができ、防水性の高さとコネクタ50近傍での取り回しの容易さとを両立させることができる。
【0071】
第3実施形態におけるケーブル40の太さは、第1実施形態や第2実施形態の構成の場合に比べると若干太くなるが、筐体10やケーブル20の部分だけでなくケーブル中継筒30を含むコネクタ50近傍までの部分で高い防水性が大切である場合には、第3実施形態の構成も十分に有意義である。
【0072】
なお、コネクタ50近傍でのみケーブルの取り回しを容易にすればよいのであれば、ケーブル中継筒30以外の位置で通気路の断面積を変え、コネクタ50の近傍でのみ通気路を狭くして全体を細くしたケーブルを用いることも考えられる。しかし、長手方向の位置によって断面形状が異なるケーブルは、製造も困難であるし長さの変更にも対応しにくい。そこで、図8のように、ケーブルが一旦途切れるケーブル中継筒30の前後で使用するケーブルを変える構成とすることが好ましい。
【0073】
次に、上述した第3実施形態の変形例について説明する。この変形例は、ケーブル40の構成が上述した第3実施形態の場合と異なるものである。
図10A及び図10Bに、図9に示したものに代えて採用可能なケーブル40の断面を示す。
【0074】
図10Aに示すのは、保護層43の内部に中空のスペーサ47を追加し、このことにより被覆材44の内部に空気層46を設けた例である。このケーブル40を用いる場合、空気層46のケーブル中継筒30側端部はケーブル中継筒30内の空間34に露出させ、空気層46のコネクタ50側端部を外気に露出させることにより、空間34からコネクタ50付近まで、空気層46を通る通気路を形成することができる。
【0075】
上述のようにケーブル40内の通気路は断面積が小さくてよいので、ケーブル40内に求められる程度の通気路であれば、図5Bを用いて説明した比較例の場合と異なり、スペーサ47を用いてもケーブル40の太さや固さをさほど増加させることなく形成可能である。なお、スペーサ47及び空気層46を被覆材44の内部に設けることは必須ではなく、外部に設けることも考えられる。
【0076】
図10Bに示すのは、被覆材44の内部に導線41a~41dを緩めに配置することにより、その周囲に若干の空隙が形成されるようにした例である。図10Bのケーブル40においては、絶縁被覆材42の周囲には、密に充填されておらず一定の空隙を含んだ、例えば繊維状材料による保護層48が形成されている。
【0077】
図10Bのようなケーブル40を用いる場合、保護層48のケーブル中継筒30側端部をケーブル中継筒30内の空間34に露出させ、保護層48のコネクタ50側端部を外気に露出させることにより、空間34からコネクタ50付近まで、保護層48内の空隙を通る通気路を形成することができる。
ケーブル40内に最低限求められる程度の通気性を有する通気路は、この程度の空隙を通して形成することも考えられる。
【0078】
〔変形例:図11乃至図12B
次に、上述した各実施形態に適用可能な、さらに別の変形例について説明する。
まず、ここまで説明した各実施形態では、突起部15及び透孔19を枠体12の側面に設けていたが、突起部15及び透孔19を筐体10の他の部分に設けてもよい。
図11は、突起部15及び透孔19を裏蓋13の中央付近に設けた場合の圧力計1の構成を示す、図4Aと対応する断面図である。図11において、ケーブル20は筐体10付近のみ示しているが、ケーブル中継筒30やコネクタ50等、図11に表れない部分の構成は、図4A等の場合と同様である。
【0079】
このように、突起部15及び透孔19を筐体10のうち枠体12の側面以外の部分に設けた場合でも、筐体10内部の空間18から、透孔19と、ケーブル20内部の間隙25を通してケーブル中継筒30内部の空間34に続く通気路、あるいはさらにコネクタ50近傍までつながる通気路の形成は、図4A等の場合と同様に行うことができる。従って、ベースラインも速やかに安定させることができる。
【0080】
また、被覆材24と突起部15(筐体10)との密着部につき、図4A又は図6Aに示した構造とすることは必須ではない。
例えば図12Aのように、被覆材24を含むケーブル20の全体を、突起部15の内部を通過させて筐体10内に導くことも考えられる。この場合でも、被覆材24と突起部15とは接着等により密着させ、間から水や塵等が浸入しないようにする。
【0081】
あるいは図12Bのように、被覆材24の端部にアダプタ61を設け、当該アダプタと突起部15とを結合させてもよい。この場合、被覆材24だけでなくアダプタ61も、導線21の周囲を覆う被覆材として機能する。アダプタ61と突起部15との間の密着は、適宜公知の手段で確保すればよい。
さらに、突起部15を設けることは必須ではなく、被覆材24あるいはアダプタ61を、筐体10の外側側壁に対して直接接着あるいは結合することにより、被覆材と筐体とを密着させる構成も、考えられる。
【0082】
これらの構成でも、被覆材24と導線21(及びその外側の絶縁被覆材22及び保護層23)との間に設けた間隙25を通じて、十分な通気路を形成することができる。しかし、部品点数や製造の容易さ等を考慮すると、図12A及び図12Bの構成よりも、図4Aの構成の方が好ましいといえる。
【0083】
また、被覆材24とケーブル中継筒30との密着部についても、図4Aあるいは図6Aのように薄肉部35あるいは37を設けることは必須ではない。図12A及び図12Bに示すように、被覆材24の端部とケーブル中継筒30の端部とを接着等で固定するようにしてもよい。
【0084】
また、以上の実施形態では、ひずみゲージ式変換器を圧力計として構成する例について説明したが、この発明は、これに限られるものではない。土圧計、水圧計、荷重計、間隙水圧計など、測定対象に応じた名称で呼ばれるものも含め、与えられる圧力などの物理量を計測する機能を備える装置全般に適用可能である。
【0085】
以上で実施形態の説明を終了するが、この発明において、ひずみゲージ式変換器全体あるいは部品の具体的な形状、材質、サイズ等や、ひずみゲージ式変換器による測定方法は、実施形態で説明したものに限るものではない。
また、以上説明してきた各実施形態及び変形例の特徴は、矛盾しない範囲で組み合わせて用いることが可能である。また、一部の特徴のみ取り出して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0086】
1…圧力計、10…筐体、11…ダイヤフラム、12…枠体、13…裏蓋、14…起歪体、15…突起部、15a…空間、16…ひずみゲージ、17…軸、18…空間、19…透孔、20,40,40′,80…ケーブル、21a~21d,41a~41d…導線、22,42…絶縁被覆材、23,43,48…保護層、24,44…被覆材、25…間隙、30…ケーブル中継筒、30a…開口部、30b…支持部、31…基板、32,33…接続部、34…空間、35,37…薄肉部、35a,37a…段差部、36…撥水層、46,85…空気層、47,82…スペーサ、50…コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図11
図12