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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075514
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】検査装置および検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/954 20060101AFI20230524BHJP
【FI】
G01N21/954 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188455
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(71)【出願人】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 雄太
(72)【発明者】
【氏名】宮地 航
(72)【発明者】
【氏名】比良田 麻樹子
(72)【発明者】
【氏名】倉林 秀幸
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA82
2G051AB01
2G051BA06
2G051CA04
2G051CB02
2G051CB10
2G051EB01
2G051ED11
(57)【要約】
【課題】検査対象品の孔の開き具合を精度良く評価する。
【解決手段】検査装置1は、孔21を含む検査対象領域2aに対して赤外線を照射する照射部11と、検査対象領域2aに臨み、赤外線を受光する受光部13と、受光部13による受光結果に基づいて、検査対象領域2aが映る赤外線画像を生成する生成部と、赤外線画像に映る孔21を、生成された赤外線画像に対してパターンマッチング処理を施すことによって検出する検出部と、検出された孔21の開き具合を評価する評価部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔を含む検査対象領域に対して赤外線を照射する照射部と、
前記検査対象領域に臨み、赤外線を受光する受光部と、
前記受光部による受光結果に基づいて、前記検査対象領域が映る赤外線画像を生成する生成部と、
前記赤外線画像に映る前記孔を、生成された前記赤外線画像に対してパターンマッチング処理を施すことによって検出する検出部と、
検出された前記孔の開き具合を評価する評価部と、
を備える、
検査装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記パターンマッチング処理において、複数の前記孔の位置関係と対応する位置関係で配置された複数の孔オブジェクトを含むテンプレートを用いる、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記評価部による前記孔の開き具合の評価結果が表示される評価結果画面を示す情報を出力する出力部を備える、
請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記評価部は、前記孔の開き具合を複数段階で評価し、
前記評価結果画面には、前記孔の開き具合の評価における各段階の評価数に関する情報が、前記評価結果として表示される、
請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
孔を含む検査対象領域に対して赤外線を照射するステップと、
前記検査対象領域に臨む受光部により赤外線を受光するステップと、
前記受光部による受光結果に基づいて、前記検査対象領域が映る赤外線画像を生成するステップと、
前記赤外線画像に映る前記孔を、生成された前記赤外線画像に対してパターンマッチング処理を施すことによって検出するステップと、
検出された前記孔の開き具合を評価するステップと、
を含む、
検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業界では、各種の検査対象品の検査時間を低減するために、自動で検査対象品を検査する技術が提案されている。例えば、特許文献1に開示されているように、検査対象品に対して赤外線を照射し、赤外線を受光する検査装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-148607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、孔を含む検査対象領域を有する検査対象品の検査においても、検査装置を用いて検査時間を低減することが求められている。孔を含む検査対象領域を有する検査対象品の検査では、孔の開き具合が評価される場合がある。そこで、検査対象品の孔の開き具合を検査装置によって精度良く評価することが望まれる。
【0005】
本開示の目的は、検査対象品の孔の開き具合を精度良く評価することが可能な検査装置よび検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の検査装置は、孔を含む検査対象領域に対して赤外線を照射する照射部と、検査対象領域に臨み、赤外線を受光する受光部と、受光部による受光結果に基づいて、検査対象領域が映る赤外線画像を生成する生成部と、赤外線画像に映る孔を、生成された赤外線画像に対してパターンマッチング処理を施すことによって検出する検出部と、検出された孔の開き具合を評価する評価部と、を備える。
【0007】
検出部は、パターンマッチング処理において、複数の孔の位置関係と対応する位置関係で配置された複数の孔オブジェクトを含むテンプレートを用いてもよい。
【0008】
評価部による孔の開き具合の評価結果が表示される評価結果画面を示す情報を出力する出力部を備えてもよい。
【0009】
評価部は、孔の開き具合を複数段階で評価し、評価結果画面には、孔の開き具合の評価における各段階の評価数に関する情報が、評価結果として表示されてもよい。
【0010】
上記課題を解決するために、本開示の検査方法は、孔を含む検査対象領域に対して赤外線を照射するステップと、検査対象領域に臨む受光部により赤外線を受光するステップと、受光部による受光結果に基づいて、検査対象領域が映る赤外線画像を生成するステップと、赤外線画像に映る孔を、生成された赤外線画像に対してパターンマッチング処理を施すことによって検出するステップと、検出された孔の開き具合を評価するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、検査対象品の孔の開き具合を精度良く評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の実施形態に係る検査装置の全体構成を示す模式図である。
図2図2は、本開示の実施形態に係る検査対象品の検査対象領域が映る赤外線画像を示す模式図である。
図3図3は、本開示の実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、本開示の実施形態に係る検査装置が行う検査対象品の検査に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5図5は、本開示の実施形態に係るパターンマッチング処理において用いられるテンプレートを示す模式図である。
図6図6は、本開示の実施形態に係る検査装置が行う孔の開き具合の評価における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7図7は、本開示の実施形態に係る孔の開き具合の評価において「Open」と評価される孔の様子を示す図である。
図8図8は、本開示の実施形態に係る孔の開き具合の評価において「Half Open」と評価される孔の様子を示す図である。
図9図9は、本開示の実施形態に係る孔の開き具合の評価において「Close」と評価される孔の様子を示す図である。
図10図10は、本開示の実施形態に係る評価結果画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る検査装置1の全体構成を示す模式図である。図1に示すように、検査装置1は、照射部11と、カバー12と、受光部13と、表示装置14と、制御装置15とを備える。
【0015】
照射部11は、赤外線を照射する。照射部11は、例えば、近赤外線の波長域の赤外線を照射する。ただし、照射部11により照射される赤外線の波長は、特に限定されない。照射部11は、カバー12によって覆われている。カバー12は、略球形状を有している。カバー12の底部12aは、平坦になっている。カバー12の頂部(底部12a側と逆側の部分)には、開口12bが設けられている。カバー12の内部空間のうち底部12aの近傍に、照射部11が配置される。
【0016】
照射部11は、カバー12の頂部側に向けて赤外線を照射する。照射部11から照射された赤外線は、カバー12の内周面を反射して、カバー12の内部空間の中央に向けて収束する。カバー12内には、検査対象品2が設けられている。検査対象品2は、カバー12の内部空間の中央付近に配置される。照射部11から照射された赤外線は、カバー12の内周面を反射した後、検査対象品2に照射される。カバー12が略球形状を有していることによって、検査対象品2が赤外線により一様に照らされる。
【0017】
検査対象品2は、孔21を含む検査対象領域2aを有する。例えば、検査対象品2は、平板形状を有する。検査対象品2の検査対象領域2aには、複数の孔21が検査対象品2の厚み方向に貫通して形成されている。カバー12内において、照射部11から照射された赤外線は、検査対象品2の検査対象領域2aに対して照射される。
【0018】
受光部13は、赤外線を受光する。受光部13は、例えば、赤外線を感知する複数の撮像素子を有するカメラである。受光部13は、検査対象品2の検査対象領域2aに臨む。図1の例では、受光部13は、カバー12の外部に配置され、カバー12の開口12bに臨む。受光部13は、カバー12の開口12bを介して、検査対象品2の検査対象領域2aと対向する。
【0019】
検査対象品2は、例えば、樹脂または樹脂を含む複合材料(例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)等)によって形成されている。このように、検査対象品2は、赤外線を吸収しやすい材質を有する。ゆえに、検査対象品2の検査対象領域2aに対して赤外線が照射されると、検査対象領域2aにおいて赤外線が吸収され、検査対象領域2aが発熱する。それにより、検査対象領域2aから赤外線が放射される。そして、検査対象品2の検査対象領域2aから発せられる赤外線が、受光部13によって受光される。検査装置1では、後述するように、受光部13による受光結果に基づいて、検査対象品2の検査対象領域2aが映る赤外線画像が生成される。生成された赤外線画像を用いて、孔21の開き具合の検査が行われる。孔21の開き具合は、孔21の開口部分の大きさとして想定している大きさに対する実際の大きさの程度を意味する。例えば、孔21の開き具合を示す指標として、孔21の開口面積の設計値に対する実際の開口面積の比率、または、当該比率に相当する指標等が用いられ得る。
【0020】
図2は、検査対象品2の検査対象領域2aが映る赤外線画像3を示す模式図である。図2に示すように、検査対象品2の検査対象領域2aには、複数の孔21が格子状に配置されている。赤外線画像3における孔21の形状は、例えば、円形状である。図2の例では、1つの孔21の周囲に、6つの孔21が配置されている。1つの孔21を囲むこれらの6つの孔21は、中央の1つの孔21を中心とした正六角形の頂点に位置する。ただし、検査対象領域2aにおける孔21の配置は、図2の例に限定されない。
【0021】
図2では、赤外線画像3における画素間での輝度の差が濃淡によって表されている。濃い部分ほど、輝度が高い。上述したように、検査対象品2は、赤外線を吸収して放射する。つまり、検査対象領域2aのうち孔21が形成されていない部分からは、赤外線が放射される。ゆえに、赤外線画像3において、検査対象領域2aのうち孔21が形成されていない部分の輝度は高くなる。一方、赤外線は孔21を通過するので、検査対象領域2aのうち孔21が形成されている部分からは、赤外線が放射されない。ゆえに、赤外線画像3において、検査対象領域2aのうち孔21が形成されている部分の輝度は低くなる。なお、照射部11から照射された赤外線が、受光部13に向かう方向に孔21を通過して受光部13に直接受光されることは無いようになっている。
【0022】
上記のように、本実施形態では、赤外線の照射および受光によって検査対象領域2aが映る赤外線画像3が得られる。このように得られる赤外線画像3では、検査対象領域2aのうち孔21が形成されていない部分と、孔21が形成されている部分との間で、輝度が明確に異なる(つまり、大きく異なる)。それにより、赤外線画像3に映る孔21を精度良く検出することが実現される。なお、孔21の検出等の画像処理の詳細については、後述する。
【0023】
ここで、孔21の開き具合の検査において、検査対象領域2aに対して可視光線を照射し、その反射光を受光することによって、検査対象領域2aが映る可視光画像を得ることが考えられる。このように得られる可視光画像では、検査対象領域2aのうち孔21が形成されていない部分と、孔21が形成されている部分との間で、輝度の差があまりない場合がある。例えば、検査対象品2が艶のある材質を有する場合、照射された可視光は、検査対象品2の表面において拡散反射せず、受光されにくくなる。それにより、得られる可視光画像において、検査対象領域2aのうち孔21が形成されていない部分の輝度が低くなり、孔21が形成されている部分の輝度と近くなってしまう場合がある。
【0024】
図1中の表示装置14は、情報を視覚的に表示する。表示装置14は、例えば、液晶ディスプレイ等である。
【0025】
制御装置15は、検査装置1の各装置の制御、および、画像処理を行う。制御装置15は、例えば、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、および、ワークエリアとしてのRAM等を含む。
【0026】
図3は、制御装置15の機能構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、制御装置15は、制御部15aと、画像処理部15bとを含む。
【0027】
制御部15aは、検査装置1の各装置の動作を制御する。例えば、制御部15aは、照射部11の動作を制御する。また、例えば、制御部15aは、受光部13の動作を制御する。また、例えば、制御部15aは、表示装置14の動作を制御する。
【0028】
画像処理部15bは、各種の画像処理を行う。画像処理部15bは、生成部15b1と、検出部15b2と、評価部15b3と、出力部15b4とを含む。
【0029】
生成部15b1は、受光部13による受光結果に基づいて、検査対象領域2aが映る赤外線画像3を生成する。検出部15b2は、赤外線画像3に映る孔21を検出する。評価部15b3は、検出された孔21の開き具合を評価する。出力部15b4は、図10を参照して後述する評価結果画面を示す情報を出力する。評価結果画面は、評価部15b3による孔21の開き具合の評価結果が表示される画面である。例えば、評価結果画面を示す情報は表示装置14に対して出力され、評価結果画面が表示装置14によって表示される。
【0030】
図4は、検査装置1が行う検査対象品2の検査に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。図4に示す処理フローは、例えば、検査対象品2の検査を開始させる開始操作がユーザによって行われた時に実行される。ユーザによる開始操作は、例えば、制御装置15によって受け付けられる。
【0031】
図4に示す処理フローが開始すると、ステップS101において、照射部11は、検査対象品2の検査対象領域2aに対して赤外線を照射する。照射部11による赤外線の照射は、制御部15aによって制御される。制御部15aは、例えば、ユーザによる開始操作を受け付けた場合、照射部11に赤外線の照射を行わせる。照射部11による赤外線の照射は、所定時間に亘って行われる。
【0032】
次に、ステップS102において、受光部13は、検査対象領域2aから発せられる赤外線を受光する。受光部13による赤外線の受光は、制御部15aによって制御される。制御部15aは、例えば、照射部11による赤外線の照射が行われている間、受光部13に赤外線の受光を行わせる。
【0033】
次に、ステップS103において、画像処理部15bの生成部15b1は、受光部13による受光結果に基づいて、検査対象領域2aが映る赤外線画像3を生成する。
【0034】
次に、ステップS104において、画像処理部15bの検出部15b2は、赤外線画像3に映る孔21を、生成された赤外線画像3に対してパターンマッチング処理を施すことによって検出する。
【0035】
パターンマッチング処理は、予め用意したテンプレートを用いた画像処理である。パターンマッチング処理では、処理の対象となる画像(つまり、赤外線画像3)の中でテンプレートと類似する幾何学的パターンを有する部分が特定される。
【0036】
図5は、パターンマッチング処理において用いられるテンプレート4を示す模式図である。図5に示すように、テンプレート4は、検査対象領域2aにおける孔21を示す孔オブジェクト41を含む。孔オブジェクト41の形状は、円形状である。孔オブジェクト41の寸法は、赤外線画像3における孔21の寸法として想定される寸法と同程度となっている。
【0037】
図5の例では、テンプレート4は、7つの孔オブジェクト41を含む。7つの孔オブジェクト41は、検査対象領域2aにおける複数の孔21の位置関係と対応する位置関係で配置される。具体的には、7つの孔オブジェクト41は、格子状に配置されている。中央の孔オブジェクト41の周囲に、6つの孔オブジェクト41が配置されている。中央の孔オブジェクト41を囲むこれらの6つの孔オブジェクト41は、中央の孔オブジェクト41を中心とした正六角形の頂点に位置する。隣り合う孔オブジェクト41の間の距離は、赤外線画像3における隣り合う孔21の間の距離として想定される距離と同程度となっている。
【0038】
検出部15b2は、パターンマッチング処理において、赤外線画像3上でテンプレート4を走査させながら、テンプレート4と類似する幾何学的パターンを有する部分を特定する。それにより、赤外線画像3に映る孔21が検出され、赤外線画像3上で孔21が存在する領域と孔21が存在しない領域とが区別される。さらに、検出部15b2は、赤外線画像3を二値化し、ラベリング処理を施す。検出部15b2は、ラベリング処理において、赤外線画像3上で同一の孔21に含まれる画素に対して同一の番号を付与し、孔21ごとに付与する番号を異ならせる。それにより、各孔21が区別される。
【0039】
上記のように、検出部15b2は、パターンマッチング処理において、複数の孔21の位置関係と対応する位置関係で配置された複数の孔オブジェクト41を含むテンプレート4を用いる。後述するように、一部の孔21が異物(例えば、検査対象品2を構成する部材間を接着するための接着剤等)により塞がれる場合がある。このような場合であっても、複数の孔オブジェクト41を含むテンプレート4を用いることによって、孔21を精度良く検出することができる。例えば、図5の例では、テンプレート4における7つの孔オブジェクト41と対応する位置に配置される7つの孔21のうちの一部の孔21が異物により塞がれている場合であっても、塞がれていない孔21とテンプレート4との類似度が比較されることによって、孔21を検出することができる。
【0040】
ただし、テンプレート4における孔オブジェクト41の数は、図5の例に限定されない。例えば、テンプレート4における孔オブジェクト41の数は、単数であってもよく、7つ以外の複数であってもよい。
【0041】
図4中のステップS104の次に、ステップS105において、画像処理部15bの評価部15b3は、検出された孔21の開き具合を評価する。
【0042】
図6は、検査装置1が行う孔21の開き具合の評価における処理の流れの一例を示すフローチャートである。図6に示す処理フローは、評価部15b3が行う図4中のステップS105における処理の流れの一例を示す。
【0043】
図6に示す処理フローが開始すると、ステップS201において、評価部15b3は、検出された複数の孔21の中から評価対象の孔21を決定する。
【0044】
なお、後述するステップS205でYESと判定され(つまり、未評価の孔21があると判定され)、ステップS201に戻った場合、評価部15b3は、検出された複数の孔21のうち開き具合の評価が終わっていない孔21の中から評価対象の孔21を決定する。
【0045】
次に、ステップS202において、評価部15b3は、評価対象の孔21の開口面積Sを算出する。
【0046】
ステップS202では、評価部15b3は、例えば、赤外線画像3上で評価対象の孔21に含まれる画素の数をカウントすることにより、評価対象の孔21の開口面積Sを算出する。なお、画素の数と面積との相関関係が予め特定されており、当該相関関係を用いて、カウントされた画素の数から面積が算出されてもよい。
【0047】
次に、ステップS203において、評価部15b3は、評価対象の孔21の真円度Cを算出する。
【0048】
ステップS203では、評価部15b3は、例えば、赤外線画像3上で評価対象の孔21が映る領域の幾何中心から当該領域の境界までの距離の最大値を半径とする円の面積に対する開口面積Sの割合を真円度Cとして算出する。
【0049】
次に、ステップS204において、評価部15b3は、開口面積Sおよび真円度Cに基づいて、「Open」、「Half Open」、「Close」の三段階で孔21の開き具合を評価する。
【0050】
図7は、孔21の開き具合の評価において「Open」と評価される孔21を示す図である。「Open」は、開き具合が最も高い評価である。図7に示すように、異物22(図8図9参照)がほぼ付着していない孔21の開き具合が、「Open」と評価される。
【0051】
図8は、孔21の開き具合の評価において「Half Open」と評価される孔21を示す図である。「Half Open」は、開き具合が「Open」の次に高い評価である。図8に示すように、一部が異物22により覆われている孔21の開き具合が、「Half Open」と評価される。
【0052】
図9は、孔21の開き具合の評価において「Close」と評価される孔21の様子を示す図である。「Close」は、開き具合が最も低い評価である。図9に示すように、全域が異物22により覆われている孔21の開き具合が、「Close」と評価される。
【0053】
ステップS204では、評価部15b3は、例えば、開口面積Sが第1面積閾値(例えば、開口面積Sの設計値の90%)より大きく、かつ、真円度Cが真円度閾値(例えば、90%)より大きい場合、孔21の開き具合を「Open」と評価する。評価部15b3は、例えば、開口面積Sが第1面積閾値以下、かつ、第2面積閾値(例えば、開口面積Sの設計値の5%)より大きい場合、孔21の開き具合を「Half Open」と評価する。第2面積閾値は、第1面積閾値より小さい値である。評価部15b3は、例えば、開口面積Sが第2面積閾値以下である場合、孔21の開き具合を「Close」と評価する。
【0054】
ただし、「Open」、「Half Open」、「Close」の各評価が行われる条件(つまり、評価条件)は、上記の例に限定されない。なお、評価部15b3は、「Open」、「Half Open」、「Close」のいずれの評価条件も満たされない場合、または、開口面積Sもしくは真円度Cが異常値である場合等には、「Open」、「Half Open」、「Close」と異なる評価を行ってもよい(例えば、「Error」等と評価してもよい)。
【0055】
上記のように、評価部15b3は、孔21の開き具合を複数段階で評価する。それにより、評価結果を確認するユーザは、孔21の開き具合を感覚的に把握しやすくなる。上記の例では、評価部15b3は、孔21の開き具合を三段階で評価した。ただし、評価部15b3は、孔21の開き具合を二段階で評価してもよく、四段階以上で評価してもよい。
【0056】
次に、ステップS205において、評価部15b3は、未評価の孔21があるか否かを判定する。未評価の孔21があると判定された場合(ステップS205/YES)、ステップS201に戻る。一方、未評価の孔21がないと判定された場合(ステップS205/NO)、ステップS206に進む。
【0057】
ステップS205でNOと判定された場合、ステップS206において、評価部15b3は、「Open」と評価した孔21の平均孔径を算出する。
【0058】
ステップS206では、評価部15b3は、例えば、「Open」と評価した孔21の中から所定数の孔21をランダムに抽出する。評価部15b3は、抽出した孔21のそれぞれについて、赤外線画像3上で孔21が映る領域の幾何中心から当該領域の境界までの代表距離(例えば、最大値または平均値等)を算出する。評価部15b3は、算出した各孔21の代表距離の平均値を、「Open」と評価した孔21の平均孔径として算出する。
【0059】
次に、ステップS207において、評価部15b3は、検査対象品2の検査対象領域2aにおける孔21の開口率を算出し、図6に示す処理フローは、終了する。検査対象領域2aにおける孔21の開口率は、検査対象領域2aにおける孔21の平均的な開き具合(つまり、検査対象領域2aにおいて孔21が平均的にどの程度開口しているか)を示す指標である。
【0060】
ステップS207では、評価部15b3は、例えば、孔の開き具合の評価における各段階(つまり、「Open」、「Half Open」、「Close」の各段階)と対応する開口率を、各段階の評価数で重み付け平均して得られる値を、検査対象領域2aにおける孔21の開口率として算出する。「Open」と評価された孔21の数が、「Open」の評価数(以下、Open評価数とも呼ぶ)である。「Half Open」と評価された孔21の数が、「Half Open」の評価数(以下、Half Open評価数とも呼ぶ)である。「Close」と評価された孔21の数が、「Close」の評価数(以下、Close評価数とも呼ぶ)である。このように、評価数は、孔21の開き具合を複数段階で評価した場合における各段階での評価された孔21の数を意味する。
【0061】
例えば、「Open」に100%が対応付けられ、「Half Open」に50%が対応付けられ、「Close」に0%が対応付けられているとする。この場合、評価部15b3は、Open評価数に100%を乗算して得られる値と、Half Open評価数に50%を乗算して得られる値と、Close評価数に0%を乗算して得られる値との合計値を、評価対象となった孔21の総数で除算する。評価部15b3は、このようにして得られる値を、検査対象領域2aにおける孔21の開口率として算出する。
【0062】
図4中のステップS105の次に、ステップS106において、画像処理部15bの出力部15b4は、評価結果画面を示す情報を表示装置14に出力し、評価結果画面が表示装置14によって表示され、図4に示す処理フローは、終了する。評価結果画面には、評価部15b3による孔21の開き具合の評価結果(例えば、上述した図6の処理フローによって得られる結果)が表示される。
【0063】
図10は、評価結果画面5の一例を示す図である。図10に示すように、評価結果画面5では、例えば、評価結果に関する情報が表示されるウィンドウ51が赤外線画像3に対して重畳される。ウィンドウ51には、孔21の開き具合の評価における各段階の評価数(以下、単に、各段階の評価数とも呼ぶ)が評価結果として表示される。図10の例では、ウィンドウ51に、Open評価数、Half Open評価数およびClose評価数が表示されている。また、ウィンドウ51には、「Open」と評価した孔21の平均孔径(図10中の「平均孔径」)が表示されている。また、ウィンドウ51には、検査対象領域2aにおける孔21の開口率(図10中の「開口率」)が表示されている。
【0064】
評価結果画面5には、孔21の開き具合の評価における各段階について、評価された孔21の位置を示す情報が表示されている。図10の例では、赤外線画像3上の各孔21に対して、評価結果が各孔21と対応する位置に、「O」、「H」、「C」の文字によって表示されている。「O」は「Open」を意味し、「H」は「Half Open」を意味し、「C」は「Close」を意味する。なお、赤外線画像3上の各孔21と対応する位置に、各孔21がどの段階に評価されたのかが、評価の段階ごとに異なる色によって表示されてもよい。このように、各段階について、評価された孔21の位置を示す情報が評価結果として評価結果画面5に表示されることによって、評価結果を確認するユーザは、検査対象領域2aにおける孔21の開き具合の分布を感覚的に把握しやすくなる。ここで、検査対象品2に対して照射された赤外線の一部は、検査対象品2を透過する。ゆえに、赤外線画像3には、検査対象品2の内部構造が映る場合がある。このような場合、検査対象品2の内部構造と孔21の開き具合の分布との位置関係を把握することもできる。
【0065】
上記では、図10を参照して評価結果画面5の一例を説明した。ただし、評価結果画面5に表示される情報は、図10の例に限定されない。例えば、ウィンドウ51において、各段階の評価数(つまり、孔21の開き具合の評価における各段階の評価数)に換えて、評価対象となった孔21の総数に対する各段階の評価数の割合が表示されてもよい。各段階の評価数、および、評価対象となった孔21の総数に対する各段階の評価数の割合は、各段階の評価数に関する情報に含まれる。また、例えば、図10の例に対して、評価結果画面5に表示される情報から一部の情報が省略されてもよく、評価結果画面5に表示される情報として図10に示す情報以外の情報が追加されてもよい。
【0066】
上記のように、評価結果画面5を示す情報が出力部15b4によって出力されることによって、ユーザは、検査対象品2の孔21の開き具合の評価結果を適切に把握することができる。さらに、各段階の評価数(つまり、孔21の開き具合の評価における各段階の評価数)に関する情報が評価結果として評価結果画面5に表示されることによって、評価結果を確認するユーザは、孔21の開き具合を感覚的に把握しやすくなる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態に係る検査装置1では、検査対象品2のうちの検査対象領域2aに対して赤外線が照射され、赤外線を受光する受光部13による受光結果に基づいて、検査対象領域2aが映る赤外線画像3が生成される。そして、赤外線画像3に映る孔21が、赤外線画像3に対してパターンマッチング処理を施すことによって検出される。上述したように、赤外線の照射および受光によって得られる赤外線画像3では、検査対象領域2aのうち孔21が形成されていない部分と、孔21が形成されている部分との間で、輝度が明確に異なる。ゆえに、このような赤外線画像3に対してパターンマッチング処理を施すことによって、赤外線画像3に映る孔21を精度良く検出することが実現される。よって、検査対象品2の孔21の開き具合を精度良く評価することができる。
【0068】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0069】
上記では、図1を参照して、検査装置1の構成要素を説明した。ただし、図1の例に対して、一部の構成要素が削除、変更または追加されてもよい。例えば、図1の例から表示装置14が省略されてもよい。
【0070】
本開示は、例えば、持続可能な開発目標(SDGs)の目標12「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 検査装置
2a 検査対象領域
3 赤外線画像
4 テンプレート
5 評価結果画面
11 照射部
13 受光部
15b1 生成部
15b2 検出部
15b3 評価部
15b4 出力部
21 孔
41 孔オブジェクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10