(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075516
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】ねじ締め機
(51)【国際特許分類】
B23P 19/06 20060101AFI20230524BHJP
【FI】
B23P19/06 A
B23P19/06 K
B23P19/06 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188457
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安積 慶一
(57)【要約】
【課題】被締結部材に負荷される推力が小さいねじ締め機を提供する。
【解決手段】
ドライバビット33を内包可能な挿通穴341が形成されたビットガイド34を備えたドライバユニット30と、前記ドライバユニット30と一体に移動可能なドライバ台25を有する位置制御機構20と、前記ドライバビット33およびビットガイド34の軸線上にねじSを一旦保持するチャックユニット50とを備え、前記ドライバユニット30および移動部25の移動に制動を加える制動力発生部40と、前記チャックユニット50は、ねじSが通過可能な供給経路52と、ねじSを保持可能な保持穴57が形成された保持部材56と、保持穴57が供給経路52あるいは挿通穴341のどちらに連続するかを切り替える切替手段55を備えていることを特徴とするねじ締め機10による。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動源の駆動を受け回転可能に構成されたドライバビットおよびこのドライバビットを軸方向の相対移動可能に内包する挿通穴が形成されたビットガイドを備えたドライバユニットと、前記ドライバユニットと一体に移動可能なドライバ台を有する位置制御機構と、前記ドライバユニットの移動に制動を加える制動力発生部と、前記ドライバビットおよびビットガイドの軸線上にねじを一旦保持するチャックユニットとを備えた所定の被締結部材にねじを締め付けるねじ締め機において、
前記チャックユニットは、ねじが通過可能な供給経路と、ねじを保持可能な保持穴が形成された保持部材と、保持穴が供給経路あるいは挿通穴のどちらに連続するかを切り替える切替手段を備えていることを特徴とするねじ締め機。
【請求項2】
前記ドライバユニットには、ビットガイドに対するドライバビットの相対位置により、ねじ浮きの有無を検出するねじ浮き検出手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のねじ締め機。
【請求項3】
前記ドライバユニットは、ビットガイドを被締結部材側に付勢するクッションばねを有しており、
前記クッションばねは、その変形量が最大の時、ビットガイドの自重を含めて当該ビットガイドの重さの5倍以下の力で被締結部材側に付勢するように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のねじ締め機。
【請求項4】
前記ドライバユニットは、ビットガイドを被締結部材側に付勢するクッションばねを有しており、
前記クッションばねは、その変形量が最小の時、ビットガイドの自重を含めて当該ビットガイドの重さの1.5倍から4倍の範囲内の力で被締結部材側に付勢するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載のねじ締め機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじを用いて複数の部材を締結するためのねじ締め機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のねじ締め機として、特許文献1に示すように、ねじと嵌合可能なドライバビットおよびドライバビットを内包する筒状のビットガイドを備えたドライバユニットと、このドライバユニットを昇降させる位置制御機構と、前記ドライバビットおよびビットガイドの軸線上に配置され、外部の部品供給装置から供給されたねじを一旦保持するチャックユニットとを備えたねじ締め機が知られている。このねじ締め機のドライバビットは、その下端が前記ビットガイドの下端に対して奥方に配されるとともに、前記ビットガイドの上方に配されたクッションばねの作用を受けて前記ビットガイドの一端から突出可能に構成されている。このため、ビットガイドが被締結部材の表面と当接し、前記クッションばねが撓んで前記ビットのみが前進することで、ビットガイドに吸着保持されたねじとドライバビットが嵌合できる。
【0003】
また、前記ねじ締め機のチャックユニットは、前記ビットガイドが挿通可能に構成されたチャック本体と、このチャック本体の一端に揺動自在に配された一対のチャック爪とを有しており、そのチャック爪は、圧縮ばねによって先端が閉じる方向に強く付勢されている。このため、チャック爪は、外部の供給装置がねじを圧送した際、当該ねじがチャック爪を押し開けて外部に飛び出すことを防止する一方、ビットガイドがチャック爪に向かい下降した際、当該ビットガイドに押し開かれる構造となる。このため、ビットガイドの軸線上にねじを一旦保持可能かつ、ビットガイドが当該ねじを吸着保持して被締結部材に向かい下降可能な構造となる。しかしながら、特許文献1に記載のねじ締め機は、締め付け時、位置制御機構による下向きの推力およびドライバユニットの自重等が被締結部材に負荷されていたため、比較的柔らかい樹脂製品等にねじ締めを行うと、被締結部材が湾曲する等の問題を有していた。
【0004】
そこで、特許文献2に記載されるようなねじ締め機が創成されている。このねじ締め機は、位置制御機構によるドライバユニットの移動に制動を加える制動力発生部を備えており、この制動力発生部は、所望の推力と実際にねじに付与される推力との差分に相当する上向き推力でドライバユニットを上方に付勢するように構成されているため、制動力発生部の上向き推力とドライバユニットの自重とが相殺し合うので、ドライバビットには、所望の推力に相当する荷重のみを付与し、被締結部材の湾曲等を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-005948号公報
【特許文献2】特開2007-313614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のねじ締め機のチャックユニットは、ねじを吸着保持したビットガイドをクッションばねによって被締結部材側に付勢し、チャック爪を押し開けていく構造である。このため、ビットガイドがチャック爪を押し開ける際にクッションばねが撓まないよう高いばね定数を有するものを用いなければならなかった。一方、ねじを締結する際にビットガイドからドライバビットを突出させるために、ビットガイドを強い力で被締結部材に押し付けてクッションばねを撓ませる必要がある。このため、高いばね定数のばねでは、被締結部材に付与される推力が大きくなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて創生されたものであり、低い推力での締め付けが可能なねじ締め機の提供を目的とする。この目的を達成するために本発明は、回転駆動源の駆動を受け回転可能に構成されたドライバビットおよびこのドライバビットを軸方向の相対移動可能に内包する挿通穴が形成されたビットガイドを備えたドライバユニットと、前記ドライバユニットと一体に移動可能なドライバ台を有する位置制御機構と、前記ドライバユニットの移動に制動を加える制動力発生部と、前記ドライバビットおよびビットガイドの軸線上にねじを一旦保持するチャックユニットとを備えた所定の被締結部材にねじを締め付けるねじ締め機において、前記チャックユニットは、ねじが通過可能な供給経路と、ねじを保持可能な保持穴が形成された保持部材と、保持穴が供給経路あるいは挿通穴のどちらに連続するかを切り替える切替手段を備えていることを特徴とする。なお、前記ドライバユニットには、ビットガイドに対するドライバビットの相対位置により、ねじ浮きの有無を検出するねじ浮き検出手段が設けられていることが好ましい。また、前記ドライバユニットは、ビットガイドを被締結部材側に付勢するクッションばねを有しており、前記クッションばねは、その変形量が最大の時、当該ビットガイドの自重を含めて5倍以下の力で被締結部材側に付勢するように構成されていることが好ましい。前記ドライバユニットは、ビットガイドを被締結部材側に付勢するクッションばねを有しており、前記クッションばねは、その変形量が最小の時、ビットガイドの自重を含めて1.5倍から4倍の範囲内の力で被締結部材側に付勢するように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、保持穴が供給経路と連続する位置および挿通穴と連続する位置との間で往復移動する構造であり、従来のようにビットガイドでチャック爪を押し開ける工程が存在しないため、ビットガイドを被締結部材に向かい強く付勢する必要がなくなる。このため、低いばね係数を有するクッションばねを用いることが可能となる。このように、本発明のねじ締め機は、制動力発生部によりドライバビットおよびねじが被締結部材に負荷する推力が小さくなるに加え、低いばね係数を有するクッションばねを用いることによりビットガイドが基板に負荷する推力も小さくなるため、被締結部材に与える推力が非常に小さいものとなり、被締結部材の変形を防止可能等の利点がある。なお、被締結部材に当接させたビットガイドを基準にねじ浮きを判定することにより、精度の良いねじ締めが可能になる等の利点もある。特にクッションばねが、その変形量が最大の時、前記ビットガイドを当該ビットガイドの自重を含めて5倍以下の力にて被締結部材側に付勢するように構成されており、被締結部材に与える力が弱いため、被締結部材が比較的変形し易い樹脂製品等であってもビットガイドを当接させることが可能になる等の利点もある。また、クッションばねが、その変形量が最小の時であっても、前記ビットガイドを当該ビットガイドの自重を含めて1.5倍から4倍の範囲の力にて被締結部材側に付勢するように構成されているため、ビットガイドの振動等が防止される等の利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本発明に係るねじ締め機の一部断面側面図である。
【
図3】本発明に係るねじ締め機のチャックユニットの動作を示す図面であり、(a)は
図2の要部拡大断面側面図であり、(b)は(a)の状態から次の状態へ移行した状態を示す要部拡大断面側面図である。
【
図4】本発明に係るねじ締め機の動作を示す一部断面正面図である。
【
図5】
図4の状態から次の状態へ移行する動作を示す一部断面正面図である。
【
図6】
図5の状態から次の状態へ移行する動作を示す一部断面正面図である。
【
図7】
図6の状態から次の状態へ移行する動作を示す一部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1ないし
図7において、10は、被締結部材Wに形成された下穴W1に対して頭部および軸部を備えたねじSを締め付けるねじ締め機10である。このねじ締め機10は、水平多関節ロボット(図示せず)の駆動を受けて水平移動する位置制御機構20と、この位置制御機構20の駆動を受けて昇降するドライバユニット30と、このドライバユニット30の昇降に制動を加える制動力発生部40と、前記ドライバユニット30の移動経路状にねじSを保持するチャックユニット50と、これらの駆動を制御する制御部60とを有している。
【0011】
前記ねじ締め機10の位置制御機構20は、
図2に示すように鉛直方向に延びるフレーム21を備えており、このフレーム21の上下端部には、水平方向に延びる上板22および下板23が一体に固定されている。この上板22および下板23の間には、フレーム21と平行に延びるガイドロッド24が設けられており、このガイドロッド24には、摺動自在に構成されたドライバ台25が昇降自在に装着されている。また、前記上板22には、昇降駆動源の一例である昇降用ACサーボモータ26(以下、昇降モータ26という)が載置されており、この昇降モータ26の出力軸には、ボールねじ27が一体に回転可能に連結されている。このボールねじ27は、前記上板22および下板23の間に設けられており、このボールねじ27には、その回転によって昇降する移動部の一例である駆動ナット28が螺合している。この駆動ナット28には、前記ドライバ台25が一体に昇降するよう連結されている。このため、前記ドライバ台25は、前記昇降モータ26の回転駆動を受けて昇降する。
【0012】
前記ドライバユニット30は、回転駆動源の一例であるACサーボモータ31(以下、締付モータ31とする)を有しており、この締付モータ31は、その出力軸(図示せず)を下方に向けて前記ドライバ台25上に載置されている。この締付モータ31の出力軸には、前記ドライバ台25を回転自在に貫通している連結軸32が連結されており、この連結軸32には、ドライバビット33が装着されている。なお、前記連結軸32は、前記ドライバビット33を挿入可能な有底穴(図示せず)と、この有底穴に直交するとともに連結軸32の軸方向に延びる長穴321を有している。この有底穴には、ドライバビット33を常時下方に付勢するビット付勢ばね(図示せず)が封入されており、前記長穴321には、前記ドライバビット33の上端に固定されるピン331が挿入されている。このため、ドライバビット33は、連結軸32を介して、締付モータ31の出力軸と一体に回転可能かつ、締付モータ31および連結軸32に対して軸方向に相対移動可能となる。
【0013】
一方、前記ドライバ台25の下部には、前記連結軸32およびドライバビット33を内包可能な挿通穴341が貫通形成されたビットガイド34が設けられている。このビットガイド34は、前記フレーム21の下板23を昇降自在に貫通しており、待機状態において、その下端が下板23より下方に位置する所定の長さに設定されている。また、前記ビットガイド34には、エアホース継手35を介して、コンプレッサ等の吸気手段(図示せず)が連結されており、この吸気手段の駆動を受けて、挿通穴341の下端にねじSを吸着保持するよう構成されている。さらに、ビットガイド34と、ドライバ台25との間には、クッションばね36が設けられている。このクッションばね36は、ビットガイド34を常時下方に向けて付勢されており、このクッションばね36の伸縮により、ビットガイド34がドライバ台25およびドライバビット33に対して軸方向に相対移動可能になるとともに、ビットガイド34の振動等を防止する。
【0014】
また、前記クッションばね36は、
図4に示す待機状態のようにその変形量が最小の状態において、当該ビットガイド34の自重を含めて1.5倍から4倍の範囲の力でビットガイド34を被締結部材W側に付勢する一方、
図7に示すねじ締め完了状態のようにその変形量が最大の状態において、当該ビットガイド34の自重を含めて5倍以下の力で被締結部材W側に付勢するように設定されている。このため、本実施形態のねじ締め機10ように、下方に配された被締結部材Wに対してねじ締めを行う場合、クッションばね36は、変形量が最小の時のばね荷重(以下、セッティング荷重という)がビットガイド34の重さの0.5倍から3倍の範囲となり、なおかつ変形量が最大の時のばね荷重(以下、圧縮荷重という)がビットガイド34の重さの4倍以下の範囲となるように設計されている。このようにビットガイド34がクッションばね36に付勢されていることにより、位置制御機構20の駆動によりビットガイド34が振動したり、吸気手段の駆動によりビットガイド34が締付モータ31側へ移動したりすることを防止できる。一方、クッションばね36が上述のように設定されていることにより、ねじSを締結する際にビットガイド34が被締結部材Wに与えるばね荷重が弱くなるため、被締結部材Wがビットガイド34の破損が防止されるとともに、ビットガイド34の寿命が延びることとなる。
【0015】
例えばねじ締め機10において、ビットガイド34が質量約0.26kgである場合、ビットガイド34の重さは、ビットガイド34の質量(0.26kg)に重力加速度を(9.8m/s2)をかけた値(2.548N)となる。この場合、前記クッションばね36は、セッティング荷重がビットガイド34の重さの0.5倍の1.274Nから3倍の7.644Nの間に設定され、圧縮荷重がその4倍の10.192N以下に設定されている圧縮ばねであることが好ましい。
【0016】
さらに、前記ドライバユニット30には、ねじ浮きが発生しているかを判定可能なねじ浮き判定部37が設けられている。このねじ浮き判定部37は、ビットガイド34に対するドライバビット33の下降量を測定するように構成されており、前記ドライバ台25に取り付けられた接触センサ371と、前記ビットガイド34に取り付けられたドグ373とから構成されている。この接触センサ371は、その接触子372をドグ373に向けて設置されており、この接触子372の軸方向の撓み量を測定可能に構成されている。一方、前記ドグ373は、接触センサ371の接触子372の移動経路上に配置されており、
図7に示すようにドライバビット33の先端に係合したねじSが被締結部材Wに着座するより前に接触子372が当該ドグ373に当接する高さに固定されている。このため、前記ビットガイド34が被締結部材W上面に当接している状態において、接触子372の撓み量を測定することでねじSの頭部座面が被締結部材Wに着座しているか否かつまりねじ浮きが発生しているか否かを判定可能となる。
【0017】
前記制動力発生部40は、前記ドライバ台25に取り付けられた制動駆動源の一例である低摩擦シリンダ41と、前記下板13に固定された当接部材43とから構成されている。この低摩擦シリンダ41には、所定のエア駆動源が接続されており、そのピストンロッド42を常時下方に向けて伸張するように加圧されている。一方、前記当接部材43は、低摩擦シリンダ41のピストンロッド42の移動経路上に配置されており、前記ビットガイド34の下端が被締結部材Wに当接するより前にピストンロッド42が当該当接部材43に当接するよう所定の高さに固定されている。このため、ドライバユニット30は、制動力発生部40によって制動された後に被締結部材Wに当接するため、ビットガイド34およびドライバビット33の先端に保持されたねじSが被締結部材Wに当接した際の衝撃力が軽減される。また、前記エア駆動源は、低摩擦シリンダ41のエアの圧力を調節可能に構成されており、低摩擦シリンダ41が前記ドライバユニット30およびドライバ台25の自重より大きくなおかつ前記ドライバ台25の推力より小さい範囲に設定された制動力を出力するように調節されている。このため、制動力発生部40は、ドライバユニット30およびドライバ台25の自重と、昇降モータ26の回転駆動にともなって発生する推力の一部と相殺しあうこととなり、差分がドライバビット33およびねじSに付与される。なお、低摩擦シリンダ41の制動力は、前記ドライバビット33およびねじSに付与される推力との差分がねじSの適正推力となるように調節されている。また、低摩擦シリンダ41からなるため、その作動時に生じる抵抗力および当該抵抗力が小さく、所定の推力を精度良く出力できる。
【0018】
前記チャックユニット50は、フレーム21の下板23に固定され、ねじSを案内する案内部材51と、この案内部材51を通過したねじSを受け取る保持部材54とを有する。案内部材51は、その下面が待機状態の前記ビットガイド34の下端と同じ高さになるように配されており、その内部には、ねじSが通過可能な供給経路52が貫通形成されている。この供給経路52は、その穴径がねじSの頭部径より大きく、なおかつねじSが当該供給経路52に対しての傾斜が40度未満になるような寸法にて設定されている。また、この供給経路52の上端には、ねじ供給ホース継手53が接続されている。このねじ供給ホース継手53には、外部の部品供給装置(図示せず)のねじ供給用ホース(図示せず)が連続しており、このねじ供給用ホース用も前記供給経路52と同様にねじSが通過可能かつ通過途中に反転しないような寸法に設定されている。このため、前記部品供給装置から供給されたねじSは、反転することなく、ねじ供給用ホースおよび案内部材51を通過して保持部材54まで到達できる。一方、保持部材54は、下板23の下面に固定されるチャックシリンダ55と、このチャックシリンダ55の駆動部551に装着された保持部材56とから構成されている。この保持部材56は、その上面と前記案内部材51の下面との隙間がねじSの長さに比べて十分短くなるように配置されており、その上面には、保持穴57が形成されている。なお、チャックシリンダ55のストロークは、
図2に示すように駆動部551が前進している時、保持穴57が前記案内部材51の供給経路52に連続する一方、
図3に示すように駆動部551が後退している時、保持穴57が前記ビットガイド34の挿通穴341に連続するような寸法に設定されている。つまり保持穴57は、チャックシリンダ55の駆動により、供給経路52あるいは、挿通穴341の何れに連続するかが切替えられている。また、保持部材56には、駆動部551が前進し、前記保持穴57が前記供給経路52に連続する際に前記ビットガイド34の直下となる位置にビットガイド34の外径より十分大きな穴径を有する通過穴561が形成されている。
【0019】
前記保持穴57は、その内部にねじSを吊り下げた状態で収容可能に構成された貫通穴であり、その下側には、保持穴57内の空気を吸引する吸気駆動源(図示せず)が連続している。このため、保持穴57内の供給されたねじSは、確実に吸着保持されるとともに、その表面に付着した付着物が回収される。また、保持部材56には、保持穴57に直行する光通過穴58が貫通形成されており、この光通過穴58の両端には、これを塞ぐように一対の光学センサが対向配置されている。この光学センサは、対向して配置されている一方から他方に向けて投光するように構成されており、この投光された光が保持穴57内のねじSの軸部に遮断されることで、保持穴57内にねじSが吊下げ保持されていることを検出するように構成されている。さらに保持穴57および前記供給経路52には、直交する方向に貫通する通気穴が設けられており、この通気穴を通じて、部品供給装置がねじSをエア圧送により供給した際の圧縮エアが排出されている。
【0020】
前記制御部60は、前記位置制御機構20と、ドライバユニット30と、制動力発生部40と、前記チャックユニット50と、吸気手段および部品供給装置等の外部装置等に接続されており、これらから出力される各種信号を受信し、その信号に基づいて各種駆動源の動作を制御可能に構成されている。なお、制御部60は、前記昇降モータ26および前記低摩擦シリンダ41が各種部品間で働く摩擦力や昇降モータ26に供給される電流に生じるノイズの影響による出力値の変化等の外乱より十分大きな力で駆動するようにその出力を制御している。このように制御された昇降モータ26と前記低摩擦シリンダ41とが互いに相殺して、その差分が適正推力となるように構成されているため、低い適正推力を出力するにも関わらず外乱の影響の影響を受けることなく安定した推力での駆動が可能となる。さらに、制御部60は、ドライバビット33の高さ毎に締付モータ31および昇降モータ26のトルクを調節可能に構成されており、締め付けの段階毎に適した推力、締め付けトルクを出力させることが可能に構成されている。
【0021】
次に上記のように構成されたねじ締め機10の作用を説明する。
駆動信号が入力されると、制御部60は、水平多関節ロボットを駆動して、前記ドライバビット33が被締結部材Wの下穴W1の延長線上に位置する所定のねじ締め位置までねじ締め機10を移動させる。ねじ締め機10がねじ締め位置に到達すると、制御部60は、
図2の(a)に示すように前記チャックシリンダ55のピストンロッド42を伸張させて、保持穴57が前記供給経路52に連通するまで保持部材56を移動させる。保持穴57が供給経路52に連通すると、制御部60は、前記部品供給装置を駆動させてねじSを圧送する。この時、前記供給ホースおよび供給経路52の穴径が前述の寸法に構成されているため、部品供給装置から圧送されたねじSは、途中で反転することが無く保持穴57まで供給される。この時、保持穴57に供給されたねじSにより光通過穴58が遮られるため、制御部60は、保持穴57内にねじSが到達したことを検出する。その後、制御部60は、前記チャックシリンダ55のピストンロッド42を収縮駆動させ、
図2の(b)に示すように前記保持穴57が前記供給経路52に連通するまで保持部材56を移動させる。保持穴57がビットガイド34に連続すると、制御部60は、前記吸気手段を駆動させる。これにより、ビットガイド34は、挿通穴341内にねじSを吸引する。
【0022】
上述のようにねじSがビットガイド34に吸引されると、ねじSにより遮断されていた光通過穴58が開放され、光学センサが他方からの光を受信可能となる。これにより、制御部60は、ねじSが挿通穴341内に吸引されたことを検出し、再度
図2の(a)に示すように前記チャックシリンダ55のピストンロッド42を再度伸張させて、前記保持穴57が前記供給経路52に連通するまで保持部材56を移動させる。この時、前記保持部材56の通過穴561がビットガイド34の直下に到達する。通過穴561がビットガイド34の直下に到達すると、制御部60は、前記昇降モータ26に駆動指令を出力してドライバユニット30を被締結部材Wに向かって下降させる。また、制御部60は、ドライバユニット30の下降し始めるのと同時に前記締付モータ31を被締結部材WにねじSが螺入される方向に回転させる。この時、ビットガイド34は、前述のようなセッティング荷重を有するクッションばね36により被締結部材W側に付勢されているため、振動やモータ側への相対移動が防止される。このため、ビットガイド34が吸着保持したねじSを脱落することなく安定して被締結部材Wに向けて下降可能となる。
【0023】
上述のように下降するドライバユニット30は、
図5に示すようにドライバビット33の下端が被締結部材Wに当接するより前に前記低摩擦シリンダ41のピストンロッド42が当接部材43に当接する。これにより、ドライバユニット30には、位置制御機構20の下向き推力と制動力発生部40の上向き推力の両方が負荷されており、これらが互いに相殺することでドライバユニット30の下降速度が低下する。この時、低摩擦シリンダ41の制動力がドライバ台25の推力より小さく設定されているため、前記ドライバユニット30は、低摩擦シリンダ41のピストンロッド42を収縮させながら徐々に下降する。その後、
図6に示すように前記ビットガイド34が被締結部材Wに当接する。このように被締結部材Wに当接したビットガイド34は、位置制御機構20の付勢を受け、徐々にクッションばね36を撓ませながら前記ドライバビット33を下方に相対移動させる。これにより、ドライバビット33は、ビットガイド34の挿通穴341内に吸着保持されたねじSと嵌合し、その後、ドライバビット33に押されたねじSが被締結部材Wに当接する。この時、低摩擦シリンダ41の制動力により、ドライバユニット30の下降が低速となっているため、ビットガイド34およびねじSが被締結部材Wに当接した際の衝撃が小さくなり、被締結部材Wの破損が防止される。このように、被締結部材Wに当接したねじSは、締付モータ31の回転駆動を受けて被締結部材Wに締め付けられる。なお、位置制御機構20は、
図7に示すようにねじSが被締結部材Wに着座して、締め付け完了となるまでドライバユニット30を下方に付勢し続ける。
【0024】
なお、上記ねじ締め過程において、前記制御部60は、ねじSがドライバビット33から外れないように段階的に位置制御機構20の推力を調節している。このため、精度の良いねじ締めが可能となる。また、低摩擦シリンダ41の制動力が前記ドライバユニット30およびドライバ台25の自重より大きく調節されており、この制動力がドライバユニット30およびドライバ台25の自重と昇降モータ26の回転駆動にともなって発生する推力の一部と相殺しあう。このため、被締結部材Wには、その差分であるねじSの適正推力と、ビットガイド34の自重およびクッションばね36の反力とのみが付与されることとなる。この時、上述のようにクッションばね36が比較的弱い設定になっているため、被締結部材Wに付与される推力がより小さくなる。これにより、基板等湾曲し易い被締結部材Wにおいても、ビットガイド34を被締結部材Wに当接させることが可能となる。また、クッションばね36が弱く設定されているため、ビットガイド34に係る負荷も軽減され、ビットガイド34の寿命が延びるという利点も有する。
【0025】
その後、ねじSが被締結部材Wに締結され、前記締付モータ31の締め付けトルクが予め設定された値に到達すると、制御部60は、前記ねじ浮き判定部37の接触センサ371からの信号に基づきねじ浮き判定を行う。この時、ビットガイド34が被締結部材Wに当接しているため、下穴W1周辺の高さを基準面としてねじ浮きを判定可能となる。これにより、例えば被締結部材Wが下向きに湾曲し、下穴W1が当初設定された高さより低い位置に位置していても何ら変わりなくねじSを締め付けることが可能となる。このような、ねじ浮き判定において、接触センサ371の接触子372の撓み量が所定の範囲内であれば、制御部60は、ねじ浮きが発生していないと判定し、前記締付モータ31を停止させるとともに昇降モータ26を駆動させて、ドライバユニット30を当初の高さまで復帰させる。
【0026】
なお、チャックユニット50は、前記通過穴561がビットガイド34の直下に到達した際、前記保持穴57も供給経路52に連通するように構成されており、ねじ締め動作中に次段のねじSを供給することができるため、ねじ締め動作終了後、別途ねじSを供給するものより、サイクルタイムが短くなる。
【0027】
なお、本発明に係るねじ締め機10は、前述したものに限定するものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、前記ねじ浮き判定部37は、ビットガイド34とドライバビット33との相対距離を測定する測定手段として、接触センサ371を備えていたがこれに限定されることなく、近接センサや非接触式の距離センサ等であっても何ら問題無い。また、チャックシリンダ55は、保持穴57が供給経路52あるいは挿通穴341のどちらに連続するかを切り替える切替手段の一例であり、ボールねじ機構等、他の手段であっても何ら問題無い。さらに、前記クッションばね36は、ビットガイド34を当該ビットガイド34の自重を含めて1.5倍から4倍の範囲の力で被締結部材W側に付勢するセッティング荷重と、当該ビットガイド34の自重を含めて5倍以下の力で被締結部材W側に付勢する圧縮荷重とを有する圧縮ばねで構成されるよう、ビットガイド34の角度の角度によって変更されることが好まれる。例えばねじ締め機10の上方に配置された被締結部材Wに対してしてねじSを締結する場合、クッションばね36は、セッティング荷重がビットガイド34の重さの2.5倍から5倍の範囲となり、なおかつ圧縮荷重がビットガイド34の重さの6倍以下の範囲となるように設計されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0028】
10 … ねじ締め機
20 … 位置制御機構
30 … ドライバユニット
31 … 締付モータ
33 … ドライバビット
34 … ビットガイド
341… 挿通穴
40 … 制動力発生部
41 … 制動駆動源
43 … 当接部材
50 … チャックユニット
51 … 案内部材
52 … 供給経路
54 … 保持部
56 … 保持部材
57 … 保持穴
S … ねじ