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特開2023-7552トンネルセントルのコンクリート打設装置
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  • 特開-トンネルセントルのコンクリート打設装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007552
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】トンネルセントルのコンクリート打設装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20230112BHJP
   E04G 21/04 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
E21D11/10 B
E04G21/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110461
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000158725
【氏名又は名称】岐阜工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】大久保 常秀
(72)【発明者】
【氏名】本田 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】伊勢 善英
(72)【発明者】
【氏名】木村 厚之
(72)【発明者】
【氏名】山本 将
【テーマコード(参考)】
2D155
2E172
【Fターム(参考)】
2D155BA05
2D155BB02
2D155DA08
2D155GA05
2E172CA33
2E172CA40
2E172CA61
2E172CA63
2E172DB13
(57)【要約】
【課題】コンクリート供給支管の配管を不要としつつコストの低減を図ったトンネルセントルのコンクリート打設装置を提供する。
【解決手段】トンネルセントル1の円弧状枠体11の内周面に沿って上下方向の複数カ所に配設されて、ポンプから供給されたコンクリートを枠体11の外周面から枠体11外の打設空間S内へ分配するコンクリート分配機構3A~3Cを備え、コンクリート分配機構3A~3Cは、コンクリート供給管4の下位の供給管部41,42,43に回動可能に連結されて下端開口を中心に上端開口が旋回可能な旋回管31と、当該旋回管31を旋回移動させる駆動手段33を備え、旋回方向の一位置で前記旋回管31の上端開口が、打設空間Sへ連通するコンクリート打設管2B,2C,2Dに連通するとともに、旋回方向の他位置で旋回管31の上端開口が、コンクリート供給管4の上位の供給管部42,43,44に連通する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルセントルの円弧状枠体の内周面に沿って上下方向の少なくとも一カ所に配設されて、ポンプから供給されたコンクリートを前記枠体の外周面から枠体外の打設空間内へ分配するコンクリート分配機構を備え、前記コンクリート分配機構は、コンクリート供給管の下位の供給管部に回動可能に連結されて下端開口を中心に上端開口が旋回可能な旋回管と、当該旋回管を旋回移動させる駆動手段を備え、旋回方向の一位置で前記旋回管の上端開口が、前記打設空間へ連通するコンクリート打設管に連通するとともに、旋回方向の他位置で前記旋回管の上端開口が、前記コンクリート供給管の上位の供給管部に連通することを特徴とするトンネルセントルのコンクリート打設装置。
【請求項2】
前記旋回管の上端開口に対しその旋回方向の異なる位置に洗浄水供給管を前記旋回管と一体に旋回可能に設け、前記上端開口が前記コンクリート供給管の上位の供給管部に連通する位置で、前記洗浄水供給管が前記コンクリート打設管の開口に臨む位置に至る請求項1に記載のトンネルセントルのコンクリート打設装置。
【請求項3】
前記旋回管の上端開口に対しその旋回方向の異なる位置に残コン排出管を前記旋回管と一体に旋回可能に設け、前記上端開口が前記コンクリート供給管の上位の供給管部に連通する位置で、前記残コン排出管が前記コンクリート打設管の開口に連通する請求項1に記載のトンネルセントルのコンクリート打設装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトンネルセントルの枠体外周とトンネル内周との間に形成された覆工空間内へコンクリートを打設するためのトンネルセントルのコンクリート打設装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トンネルセントルの枠体外周に開口する各打設口へ中央の切替装置からそれぞれコンクリート供給支管を配管して、ポンプから延びるコンクリート供給主管を上記切替装置で順次上記コンクリート供給支管に切り替え連通させて所望の打設口からコンクリートを覆工空間内へ供給するようにしたコンクリート打設装置が示されている。
【0003】
これに対して特許文献2には、各打設口に回転弁体を設けて、回転弁体を回転させることによって、当該打設口を閉鎖すると同時に下位のコンクリート供給管を上位の打設口に至るコンクリート供給管に連通させるようにして、各打設口へのコンクリート供給支管の配管を不要としたコンクリート打設装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-73893
【特許文献2】特開2020-117996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載のコンクリート打設装置は、特許文献1におけるコンクリート供給支管の配管を不要とした点で、限られた枠体内空間での煩雑な配管作業を解消するとともに当該内空間に配設される機器の設置の自由度を向上させたものであるが、回転弁体の構造が複雑でその製作精度が要求されることからコスト高になるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、コンクリート供給支管の配管を不要としつつコストの低減を図ったトンネルセントルのコンクリート打設装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本第1発明では、トンネルセントル(1)の円弧状枠体(11)の内周面に沿って上下方向の少なくとも一カ所に配設されて、ポンプから供給されたコンクリートを前記枠体(11)の外周面から枠体(11)外の打設空間(S)内へ分配するコンクリート分配機構(3A,3B,3C)を備え、前記コンクリート分配機構(3A~3C)は、コンクリート供給管(4)の下位の供給管部(41,42,43)に回動可能に連結されて下端開口を中心に上端開口が旋回可能な旋回管(31)と、当該旋回管(31)を旋回移動させる駆動手段(33)を備え、旋回方向の一位置で前記旋回管(31)の上端開口が、前記打設空間(S)へ連通するコンクリート打設管(2B,2C,2D)に連通するとともに、旋回方向の他位置で前記旋回管(31)の上端開口が、前記コンクリート供給管(4)の上位の供給管部(42,43,44)に連通する。
【0008】
本第1発明によれば、旋回管を旋回させる簡単な構造で、従来のように高さ位置に応じた複数のコンクリート供給支管を配管することなく、異なる高さ位置から打設空間内への覆工コンクリートの供給が可能になるから、コストを大きく低減することができる。
【0009】
本第2発明では、前記旋回管(31)の上端開口に対しその旋回方向の異なる位置に洗浄水供給管(81)を前記旋回管(31)と一体に旋回可能に設け、前記上端開口が前記コンクリート供給管(4)の上位の供給管部(42,43,44)に連通する位置で、前記洗浄水供給管(81)が前記コンクリート打設管(2B,2C,2D)の開口に臨む位置に至る。
【0010】
本第2発明によれば、使用後のコンクリート打設管内の洗浄を自動化することが可能になる。
【0011】
本第3発明では、前記旋回管(31)の上端開口に対しその旋回方向の異なる位置に残コン排出管(83)を前記旋回管(31)と一体に旋回可能に設け、前記上端開口が前記コンクリート供給管(4)の上位の供給管部(42,43,44)に連通する位置で、前記残コン排出管(83)が前記コンクリート打設管(2B,2C,2D)の開口に連通する。
【0012】
本第3発明によれば、使用後のコンクリート打設管に残った残存コンクリートを適切に排出することができる。
【0013】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明のトンネルセントルのコンクリート打設装置によれば、コンクリート供給支管の配管を不要としつつコストの大幅な低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態における、トンネルセントルの切羽側端部の透視側面図である。
図2】旋回管が一方の旋回端にある時のコンクリート分配機構の拡大側面図で、トンネルセントルの切羽側の端面方向から図1のA部を見たものである。
図3】旋回管が一方の旋回端にある時のコンクリート分配機構を下方から見た拡大平面図である。
図4】旋回管が他方の旋回端にある時のコンクリート分配機構を下方から見た拡大平面図である。
図5】旋回管が他方の旋回端にある時のコンクリート分配機構の拡大側面図である。
図6】本発明の第2実施形態における、旋回管が一方の旋回端にある時のコンクリート分配機構の拡大側面図である。
図7】旋回管が他方の旋回端にある時のコンクリート分配機構の拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0017】
(第1実施形態)
図1には、トンネルセントル1の切羽側端部の透視側面図を示す。トンネルセントル1の枠体11の外周はトンネルTの内周面に対して所定の間隔を保った内方に位置して湾曲する略円弧状をなし、これらの間に覆工コンクリートの打設空間Sが形成されている。そして枠体11には、下方から上方へ間隔をおいて複数位置に、上記打設空間に開口するコンクリート打設管2A~2Dが位置させられている。各コンクリート打設管2A~2Dはこれに付設した公知の旋回式開閉弁21によってその開口が開閉されるようになっている。
【0018】
上述のコンクリート打設管2A~2Dのうち、枠体11側面の上下方向の三位置にある打設管2B~2Dはそれぞれ、本実施形態では、上記枠体11の外周面に開口する閉鎖可能な点検口12内にその上端開口が位置し、一方、これらコンクリート打設管2B~2Dの各下端はそれぞれ詳細を以下に説明するコンクリート分配機構3A~3Cに至っている。
【0019】
三個のコンクリート分配機構3A~3Cは上下に延びるコンクリート供給管4に所定の間隔で設けられており、これらコンクリート分配機構3A~3Cはそれぞれ上下の供給管部41,42、43,44間に介在している。最下位の供給管部41は公知の支管切替装置51に至り、これを介して、トンネルセントル1の本実施形態では切羽側端部に突設された架台13上に設けた公知の主管切替装置52に連結されている。
【0020】
主管切替装置52には図略のコンクリートポンプから延びる配送管6が連結されており、主管切替装置52は配送管6を上記コンクリート供給管4と、さらにトンネルセントル後方へ延びるコンクリート供給管7へ適宜切替え連通させる。
【0021】
支管切替装置51には水平に延びるコンクリート打設管2Aが連結されて、枠体11側面の最下位置で打設空間Sに開口し、旋回式開閉弁21によってその開口が開閉される。また、コンクリート供給管4の最上位部44はコンクリート打設管を兼ねて枠体側面の最上位置で打設空間Sに開口し、旋回式開閉弁21によってその開口が開閉されるようになっている。
【0022】
図2はコンクリート分配機構3Aの拡大側面図で、トンネルセントル1の切羽側の端面方向から図1のA部を見た拡大側面図である。なお、他のコンクリート分配機構3B,3Cも同様の構造である。図2において、支管切替装置51(図1)から延びるコンクリート供給管4の最下位の供給管部41が上方へ立ち上がったその上端開口に、旋回管31の下端開口が回動可能に連結されている。旋回管31は下端から上端へ向けて湾曲しており、下端を中心にして旋回管31が回動するとその上端は円周方向へ旋回させられる。
【0023】
旋回管31の下端外周には操作円板32が嵌着されており、操作円板32の外周の一カ所に駆動シリンダ33(図3)のロッド先端が結合されている。駆動シリンダ33のロッドが伸長ないし収縮すると、これに応じて旋回管31はその下端を中心に正逆回動されられてその上端が正逆旋回させられる。
【0024】
旋回管31の上端開口の外周には、旋回管31の下端と中心が一致する略扇状の旋回板34がその板面略中央で固定されている。また、旋回板34の一端周面には、旋回管31の上端開口と同径で、旋回中心から径方向の同位置に円形開口341が形成されて、この円形開口341に、下方から至った洗浄水供給管81(図2)と排水管82が開口する盲板が覆着されている。
【0025】
図2において、コンクリート打設管2Bは、打設空間Sに開口し開閉弁21によって開閉されるその上端開口から下方へ湾曲して、その下端開口が、旋回時に旋回管31の上端開口と上記円形開口341(図3)が通過する、上記旋回板34の上面に接して位置している。また、上方のコンクリート分配機構3B(図1)へ向かうコンクリート供給管4の供給管部42の下端も、旋回管31の上端開口と上記円形開口341が通過する、上記旋回板34の上面に、周方向の異なる位置で接している。なお、コンクリート打設管2Bの下端と供給管部42の下端は、トンネルセントル1の図略の構造材に設けられた共通の支持板14にそれぞれ固定されている。
【0026】
以上の構造のコンクリート打設装置において、駆動シリンダ33のロッドを伸長させた図3に示す状態では、旋回板34は図3で時計方向回転端にあり、この状態では図2に示すように旋回管31の上端開口はコンクリート打設管2Bの下端開口に対向してこれに連通している。そこで開閉弁21を開放すれば、コンクリートポンプから主管切替装置52(図1)と支管切替装置51を経てコンクリート供給管4の供給管部41に至ったコンクリートは、旋回管31を経てコンクリート打設管2Bから、枠体11の外方に形成された打設空間S内へ供給される。
【0027】
打設が完了した後は、コンクリートポンプを吐出から吸引に切り替えてコンクリートの先端液面を供給管部41内へ戻す(図2の斜線部)。その後、駆動シリンダ33のロッドを収縮させて操作円板32を介して旋回管31を半時計方向へ回転させると(図4)、旋回板34もこれと一体に同方向へ旋回して反時計方向端へ至り、図5に示すように、旋回管31の上端開口はコンクリート供給管4の供給管部42の下端開口に対向してこれに連通する。
【0028】
同時に、洗浄水供給管81と排水管82がコンクリート打設管2Bの下端開口に対向する位置に至るから、開閉弁21を閉鎖した状態で洗浄水供給管81から洗浄水をコンクリート打設管2B内へ噴出させて、当該打設管2B内に残存したコンクリートを洗浄除去する。除去されたコンクリートを含む排水は排水管82を経て流出させられる。
【0029】
この状態で、再びコンクリートポンプを吐出に切り替えれば、コンクリートは供給管部41から旋回管31を経て供給管部42へ供給され、上位のコンクリート分配機構3B(図1)の旋回管31を図3に示すように時計方向へ旋回させておくことで、コンクリートはさらに供給管部42から旋回管31、コンクリート打設管2C(図1)を経て、枠体11外の打設空間S内のさらに高い位置へ供給される。
【0030】
このようにして、本実施形態によれば、旋回管31を旋回させる簡単な構造で、従来のように高さ位置に応じた複数のコンクリート供給支管を配管することなく、異なる高さ位置から打設空間S内へのコンクリートの供給が可能になるから、コストを大きく低減することができる。
【0031】
(第2実施形態)
高さの低い低位のコンクリート分配機構2B等において、コンクリートポンプを吸引に切り替えても、コンクリート打設管2B内に供給されているコンクリートが供給管部31に戻りきらず管内に残ってしまうことがある。そこで、本実施形態では、第1実施形態の洗浄水供給管81および排水管82に代えて、図6に示すように、旋回板34の開口に下方から残コン排出管83の上端開口を連結する。
【0032】
これにより、旋回板34を図3における反時計方向回転端へ回転させると、図7に示すように、旋回管31を介して供給管部41が供給管部42に連通すると同時に、残コン排出管83の上端開口がコンクリート打設管2Bの下端開口に対向する位置に至り、開閉弁21を閉鎖した状態でコンクリート打設管83内の残存コンクリート(図中の斜線)が残コン排出管83を経て流出させられる。
【0033】
(その他の実施形態)
上記第1実施形態において、排水管は省略しても良い。また上記両実施形態において、洗浄水供給管81および排水管82、あるいは残コン排出管83を設けることは必須ではない。
【符号の説明】
【0034】
1…トンネルセントル、11…枠体、2B,2C、2D…コンクリート打設管、3A,3B,3C…コンクリート分配機構、31…旋回管、33…駆動シリンダ(駆動手段)、4…コンクリート供給管、41,42,43,44…供給管部、81…洗浄水供給管、83…残コン排出管、S…打設空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7