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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075525
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】走行体及び建設機械
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/10 20060101AFI20230524BHJP
【FI】
B62D55/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188481
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】中司 健一
(72)【発明者】
【氏名】米田 有介
(72)【発明者】
【氏名】小川 洋平
(72)【発明者】
【氏名】垣内 和也
(57)【要約】
【課題】本発明は、走行体を拡幅した際に、走行部とアクスルとを容易に位置決めすることができる走行体、及び走行部とアクスルとを容易に固定することができる建設機械の走行体と、走行体を容易に拡幅することができる建設機械とを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の一態様は、左右一対の走行部と、この左右一対の走行部の幅を拡縮可能に支持するアクスルとを備える建設機械の走行体であって、上記走行部が、上記アクスルが挿入着されるフレームを有し、上記アクスルが、両端部が上記フレームに挿入着されることで上記一対の走行部の縮幅状態を得るアクスル本体と、このアクスル本体の両端部から延出可能に設けられると共に上記フレームに挿入着されることで上記一対の走行部の拡幅状態を得る延長部とを有し、上記拡幅状態で、上記アクスルと上記走行部とを固定するために、上記フレームと上記延長部との間に配されるシリンダユニットを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の走行部と、この左右一対の走行部の幅を拡縮可能に支持するアクスルとを備える建設機械の走行体であって、
上記走行部が、上記アクスルが挿入着されるフレームを有し、
上記アクスルが、両端部が上記フレームに挿入着されることで上記一対の走行部の縮幅状態を得るアクスル本体と、このアクスル本体の両端部から延出可能に設けられると共に上記フレームに挿入着されることで上記一対の走行部の拡幅状態を得る延長部とを有し、
上記拡幅状態で、上記フレームと上記延長部との間に配されるシリンダユニットをさらに備える走行体。
【請求項2】
上記延長部が、上記拡幅状態で上記フレームの一部と係合する突出部分を含む回動自在な係合部材を有する請求項1に記載の走行体。
【請求項3】
左右一対の走行部と、この左右一対の走行部の幅を拡縮可能に支持するアクスルとを備える建設機械の走行体であって、
上記走行部が、上記アクスルが挿入着されるフレームを有し、
上記アクスルが、両端部が上記フレームに挿入着されることで上記一対の走行部の縮幅状態を得るアクスル本体と、このアクスル本体の両端部から延出可能設けられると共に、上記フレームに挿入着されることで上記一対の走行部の拡幅状態を得る延長部とを有し、
この延長部が、上記フレームの一部と係合する突出部分を含む回動自在な係合部材を有する走行体。
【請求項4】
上記拡幅状態で、上記フレームと上記延長部との間に配されるシリンダユニットをさらに備える請求項3に記載の走行体。
【請求項5】
上記係合部材に接続され、上記係合部材を回動するための回動部材をさらに備える請求項2、請求項3又は請求項4に記載の走行体。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の走行体と、
この走行体に支持される旋回体と
を備える建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行体及び建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばクレーン、油圧ショベル、杭打ち機等の建設機械として、クローラ等を有する一対の走行部を含む走行体と、起伏可能なブーム等が取り付けられ、上記走行体に旋回可能に設けられる旋回体とを備えるものが知られている。
【0003】
このような建設機械は、作業中では安定性を確保するため、上記一対の走行部の幅は広いほうが好ましい。一方、上記建設機械は、トレーラ等に積載されて輸送されることがあるため、輸送時には上記一対の走行部の幅は狭いほうがこのましい。このように相反する要求を満たすため、一対の走行部の幅を拡縮可能な建設機械の走行体が発案されている(特許第3615720号公報)。この走行体は、一対のクローラユニット(走行部)のフレーム間に配置されるアクスルの両端に、回動可能なエクステンションビームを有する。
【0004】
上記走行体は、上記エクステンションビームを上記フレームと平行になるように折り畳み、上記アクスルの両端を上記フレームの嵌合用孔に固定して上記一対のクローラユニットの縮幅状態としている。上記走行体は、上記アクスルの長さを延長するように上記エクステンションビームを回動し、このエクステンションビームの端部を上記フレームの嵌合用孔に固定して上記一対のクローラユニットの拡幅状態としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3615720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記走行体は、上記拡幅状態で、上記エクステンションビームに形成されている固定用孔と、上記フレームに形成されている固定用孔とにピンを挿通することで上記フレームに対する上記アクスルの位置決めと固定とがされている。作業者は、上記縮幅状態から上記拡幅状態に移行する際に、上記エクステンションビームの固定用孔と、上記フレームの固定用孔との位置決めを行い、位置決めがされた2つの上記固定用孔に上記ピンを挿通しなければならない。このような煩雑な作業をすることなく、拡幅状態におけるアクスルとクローラユニットとの位置決めと固定とが容易にできることが求められている。
【0007】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、走行体を拡幅した際に、走行部とアクスルとを容易に位置決めすることができる走行体、及び走行部とアクスルとを容易に固定することができる走行体と、走行体を容易に拡幅することができる建設機械とを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、左右一対の走行部と、この左右一対の走行部の幅を拡縮可能に支持するアクスルとを備える建設機械の走行体であって、上記走行部が、上記アクスルが挿入着されるフレームを有し、上記アクスルが、両端部が上記フレームに挿入着されることで上記一対の走行部の縮幅状態を得るアクスル本体と、このアクスル本体の両端部から延出可能に設けられると共に上記フレームに挿入着されることで上記一対の走行部の拡幅状態を得る延長部とを有し、上記拡幅状態で、上記フレームと上記延長部との間に配されるシリンダユニットをさらに備える。
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明の他の一態様は、左右一対の走行部と、この左右一対の走行部の幅を拡縮可能に支持するアクスルとを備える建設機械の走行体であって、上記走行部が、上記アクスルが挿入着されるフレームを有し、上記アクスルが、両端部が上記フレームに挿入着されることで上記一対の走行部の縮幅状態を得るアクスル本体と、このアクスル本体の両端部から延出可能設けられると共に、上記フレームに挿入着されることで上記一対の走行部の拡幅状態を得る延長部とを有し、この延長部が、上記拡幅状態で、上記フレームの一部と係合する突出部分を含む回動自在な係合部材を有する。
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明のさらに他の一態様は、上記走行体と、この走行体に支持される旋回体とを備える建設機械である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の走行体は、拡幅した際に、走行部とアクスルとを容易に位置決めすることができる。また、本発明の他の走行体は、拡幅した際に、走行部とアクスルとを容易に固定することができる。本発明の建設機械は、走行体を容易に拡幅することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る建設機械の走行体を有する建設機械の一例を示す模式的側面図である。
図2図2は、図1の建設機械の走行体の平面視における模式的断面図である。
図3図3は、図2のA断面図である。
図4図4は、図2のアクスルの延長部の模式的斜視図である。
図5図5は、図4の延長部の模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の実施態様の説明]
以下、本発明の実施態様について説明する。なお、以下の説明で、「前後」とは、当該走行体の走行方向であり、「左右」とは、平面視で当該走行体の走行方向と直交する方向(車幅方向)であり、「上下」とは当該走行体の走行面(地面など)の鉛直方向を意味する。
【0014】
本発明の一態様は、左右一対の走行部と、この左右一対の走行部の幅を拡縮可能に支持するアクスルとを備える建設機械の走行体であって、上記走行部が、上記アクスルが挿入着されるフレームを有し、上記アクスルが、両端部が上記フレームに挿入着されることで上記一対の走行部の縮幅状態を得るアクスル本体と、このアクスル本体の両端部から延出可能設けられると共に、上記フレームに挿入着されることで上記一対の走行部の拡幅状態を得る延長部とを有し、上記拡幅状態で、上記フレームと上記延長部との間に配されるシリンダユニットをさらに備える。
【0015】
当該建設機械の走行体(以下、単に「走行体」ともいう)は、上記一対の走行部の縮幅状態では、上記アクスルにおけるアクスル本体の両端部が上記走行部のフレームに挿入され、上記走行部と上記アクスルとを接続する。上記一対の走行部の拡幅状態では、上記アクスルの延長部を上記走行部のフレームに挿入し、上記走行部と上記アクスルとを接続する。当該走行体は、上記フレームと上記延長部との間に配されるシリンダユニットを備える。上記延長部を上記フレームに挿入し、この間に配される上記シリンダユニットを伸長することで、上記アクスルと上記走行部とを容易に固定することができる。
【0016】
本発明の他の一態様は、左右一対の走行部と、この左右一対の走行部の幅を拡縮可能に支持するアクスルとを備える建設機械の走行体であって、上記走行部が、上記アクスルが挿入着されるフレームを有し、上記アクスルが、両端部が上記フレームに挿入着されることで上記一対の走行部の縮幅状態を得るアクスル本体と、このアクスル本体の両端部から延出可能設けられると共に、上記フレームに挿入着されることで上記一対の走行部の拡幅状態を得る延長部とを有し、この延長部が、上記拡幅状態で、上記フレームの一部と係合する突出部分を含む回動自在な係合部材を有する。
【0017】
当該走行体における上記延長部は回動自在な係合部材を有し、この係合部材は上記フレームの一部に係合可能である。上記一対の走行部の拡幅状態で、上記延長部が上記フレームに接続されると、上記係合部材が回動し、上記フレームの一部と上記係合部材の突出部分とが係合する。このようにして、上記走行部と上記アクスルとを容易に位置決めすることができる。また、上記部分と上記突出部分との係合により、上記アクスルに対する上記走行部の移動を規制することができる。
【0018】
当該走行体が、上記シリンダユニット及び上記係合部材を共に備えることが好ましい。このようにすることで、上記アクスルと上記走行部との位置決め及び固定の双方を容易にすることができる。
【0019】
当該走行体が、上記係合部材に接続され、上記係合部材を回動するための回動部材をさらに備えることが好ましい。このようにすることで、上記縮幅状態から上記拡幅状態への移行をより容易にすることができる。
【0020】
本発明のさらに他の一態様は、上記走行体と、この走行体に支持される旋回体とを備える建設機械である。
【0021】
当該建設機械は、上記走行体を備えるため、上記一対の走行部を容易に拡幅状態にすることができ、効率的な建設作業をすることができる。
【0022】
[本発明の実施形態の詳細]
以下では、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。なお、図は、本発明の構成を模式的に示したものであり、各図における各構成(各部材)の形状、縮尺などは実際のものと異なることがある。
【0023】
[建設機械]
本発明の走行体は、例えば、図1に示すようなクレーン1に用いられる。クレーン1は、走行体2と、この走行体2に支持される旋回体3とを主に備える。旋回体3は、走行体2の走行面(例えば、地面)と略平行な面内で回転可能に支持されている。本実施形態のクレーン1は、旋回体2に起伏可能に取り付けられるクレーンアタッチメント4をさらに備える。
【0024】
<旋回体>
旋回体3は、操縦者用キャビン、クレーンアタッチメント4を起伏させる起伏装置、エンジン、このエンジンによって駆動される油圧ポンプ等を備える。
【0025】
<クレーンアタッチメント>
クレーンアタッチメント4は、例えば、ラチスブームの先端にフック5を取り付けた構成とされる。このクレーンアタッチメント4は、建設資材などの荷を吊るして昇降する。
【0026】
<走行体>
走行体2は、図2に示すように、左右一対の走行部と、この左右一対の走行部の幅を拡縮可能に支持するアクスル21と、シリンダユニットとを備える。本実施形態では、走行部は、クローラユニット24である。走行体2は、クレーン1に自走能力を付与し、例えば、現場内での移動を可能とする。なお、図2で矢印Fの方向が走行体2の進行方向(前進方向)である。
【0027】
走行体2は、一対のクローラユニット24の幅を拡縮する拡縮装置22を備える。また、走行体2は、旋回体3を支持する支持部25を有する。支持部25は、旋回体3を支持するフレームであり、旋回体3を回転させるための旋回ベアリング等を有する。
【0028】
〔クローラユニット〕
左右一対のクローラユニット24は、離間して配置される。クローラユニット24は、クローラフレーム241(フレーム)及びこのクローラフレーム241に配設されるクローラ242を備える。なお、図2では、例示として、左側のクローラユニット24は縮幅状態を示し、右側のクローラユニット24は拡幅状態を示している。一対のクローラユニット24は、通常、共に縮幅状態、又は共に拡幅状態にして使用される。なお、「縮幅状態」とは、一対のクローラユニット24の幅(離間距離)を縮小した状態を意味し、「拡幅状態」とは、一対のクローラユニット24の幅を拡大した状態を意味する。
【0029】
クローラフレーム241は、それぞれの前後に2つの嵌合用孔241aを有する。嵌合用孔241aには、後述するアクスル21が挿入される。嵌合用孔241aは、側面視で略方形状の貫通孔である。嵌合用孔241aは、図3で示すように、上面に、後述するシリンダユニット23のピストン232の上面と係合する上面凹部分241bを有する。また、嵌合用孔241aは、下面に、後述する係合部材213の突出部分213aと係合する下面凹部分241cを有する。
【0030】
クローラフレーム241は、クローラ242を転動するための、ドライブスプロケット(不図示)、アイドラ241d及びローラ241eを有する。
【0031】
〔アクスル〕
アクスル21は、一対のクローラユニット24の幅を拡縮可能に支持する。アクスル21は、平面視で長手方向が走行体2の進行方向と略垂直になるように配置される。本実施形態では、走行体2は、支持部25の前後方向に一対のアクスル21を備える。
【0032】
アクスル21は、両端部がクローラフレーム241に挿入着されることで一対のクローラユニット24の縮幅状態を得るアクスル本体211と、このアクスル本体211の両端部から延出可能に設けられると共に、クローラフレーム241に挿入着されることで一対のクローラユニット24の拡幅状態を得る延長部212とを有する。
【0033】
(アクスル本体)
アクスル本体211は、上記縮幅状態で、両端部がクローラフレーム241の嵌合用孔241aに嵌合する。側面視におけるアクスル本体211の外形形状は、クローラフレーム241の嵌合用孔241aと略一致している。
【0034】
(延長部)
延長部212は、アクスル本体211の両端部に回動可能に設けられている。延長部212は、上記縮幅状態で、クローラフレーム241と略平行になるように回動されて格納される。この格納状態で、延長部212は、クローラフレーム241の左右方向における外側(一対のクローラユニット24が対向していない側)に突出しないように形成されることが好ましい。具体的には、延長部212は、図4で示すように、回転軸212aを有し、この回転軸212aを中心に左右方向と前後方向との間で回動可能に構成されている。延長部212は、図2の右側で示すように、拡幅状態では、クローラフレーム241と略垂直になるように、左右方向に回動され、図2の左側で示すように、縮幅状態では、クローラフレーム241と略平行になるように、前後方向に回動される。
【0035】
平面視における延長部212が嵌合用孔241aに挿入された状態(拡幅状態)で、延長部212の前後方向の厚み(幅)は、アクスル本体211の幅より小さく構成されている。延長部212の幅を小さく(薄く)して軽量化することにより、延長部212の回転を容易にすることができる。一方、延長部212の上下方向の厚み(高さ)は、旋回体3及びクレーンアタッチメント4を支持する支持部5を安定させるため、アクスル本体211の高さと略同一に構成されている。すなわち、延長部212の上下方向の高さは、嵌合用孔241aの高さと略同一である。平面視における上記拡幅状態で、延長部212の左右方向の厚み(長さ)は、先端(中心軸212aから離間している側の端部)が、嵌合用孔241aから突出しないような長さに形成される。
【0036】
延長部212は、軽量化を図るため、高さ方向の中部において肉抜き加工をした薄肉部分212eが形成されている。
【0037】
延長部212は、上記拡幅状態で、嵌合用孔241aの上面と当接する上当接面212bと、嵌合用孔241aの下面と当接する下当接面212cとを有する。延長部212は、旋回体3及びクレーンアタッチメント4の重量を、支持部25及びアクスル21を介して下当接面212cで主に支える。このため、下当接面212cの面積は、上当接面212bの面積より大きく形成されている。
【0038】
延長部212は、先端側に、後述するシリンダユニット23を載置する載置面212dをさらに有する。
【0039】
(係合部材)
延長部212は、回動自在な係合部材213を有する。具体的には、図5で示すように、延長部212の幅方向における一方の側面に、装着部材214を介して係合部材213が配置される。装着部材214は、係合部材213を回動自在に保持する中心軸214aを有する。この中心軸214aの軸方向は、延長部212の幅方向と略平行である。すなわち、上記拡幅状態において、上記中心軸214aの軸方向は、走行体2の前後方向と略平行である。
【0040】
装着部材214及び係合部材213は、延長部212から脱着可能に構成されてもよいし、脱着不可能に延長部212に固着されてもよい。
【0041】
係合部材213は、例えば、略円柱状のブロック部材であり、一部に径方向に突出している突出部分213aを有する。この突出部分213aの先端が、嵌合用孔241aに形成されている下面凹部分241cと係合する。このため、係合部材213は、突出部分213aの先端が下当接面212cより下方に位置することができるように延長部212に取り付けられている。
【0042】
係合部材213の突出部分213aには、係合部材213を作業者が任意で回動することができるように、回動部材215が接続されている。回動部材215は、例えば、紐状部材である。回動部材215は、一端が係合部材213の上記突出部分213aに接続される。回動部材215の他端は、作業者が把持できるように、延長部212の先端側に配置される。装着部材214は、回動部材215の他端を上記先端側に取り出すための挿通孔214bを有する。
【0043】
嵌合用孔241aの下面凹部分241cにおける内側(一対のクローラユニットが対向する側)の側壁面は、嵌合用孔241aの下面に対して略垂直になるように形成されている。下面凹部分241cにおける外側の側壁面は、この外側の側壁面と上記内側の側壁面とのなす角が鋭角になるように斜面として形成されている。
【0044】
一対のクローラユニット24の間隔を縮幅状態から拡幅状態にするには、一対のアクスル21の延長部212を左右方向に回動し、アクスル21を延長する。拡縮装置22によって、一方のクローラユニット24を外側の方向に移動する。この時、係合部材213の突出部分213aの先端は、自重によって下方に向くため、作業者が、回動部材215の上記他端を把持して突出部分213aの先端を嵌合用孔241aの下面から離間するよう引く。さらに、一方のクローラユニット24を外側の方向に移動させ、上記突出部分213aの先端が嵌合用孔241a内に入ると係合部材213を回動可能な状態にする。上記突出部分213aの先端は、嵌合用孔241aの下面に沿って移動し、下面凹部分241cの内側の垂直な側壁面に当接して、一方のクローラユニット24の移動を規制する。このようにして、拡幅状態における一方のクローラユニット24とアクスル21とを位置決めすることができる。一方のクローラユニット24を拡幅状態にした後、同様にして他方のクローラユニット24を拡幅状態にする。
【0045】
一対のクローラユニット24の間隔を拡幅状態から縮幅状態にするには、拡縮装置22によって、一方のクローラユニット24を内側の方向に移動させる。この時、係合部材213の突出部分213aの先端は、下面凹部分241cの外側の傾斜している側壁面に沿って移動するため、一方のクローラユニット24の移動は規制されない。さらに一方のクローラユニット24を内側の方向に移動させて延長部212を嵌合用孔241aから脱出させる。次に、一対のアクスル21の延長部212を前後方向に回動して一方のクローラユニット24を縮幅状態にする。その後、同様にして他方のクローラユニット24を縮幅状態にする。
【0046】
拡幅状態からアクスル21とクローラユニット24とを離間する場合は、一方のクローラユニット24を内側の方向に所定量移動し、係合部材213の突出部分213aの先端を下面凹部分241cの内側の垂直な側壁面から離間させる。次に、作業者が、回動部材215の上記他端を引いて突出部分213aの先端を嵌合用孔241aの下面から離間させる。次に、一方のクローラユニット24を外側の方向に移動することで、延長部212をクローラフレーム241から抜き取ることができる。
【0047】
〔シリンダユニット〕
走行体2は、クローラフレーム241と延長部212との間に配されるシリンダユニット23を備える。シリンダユニット23は、伸縮自在であり、有低筒状のシリンダ231と、このシリンダ231内に配置され、シリンダ231の軸方向に流体圧で移動可能なピストン232とを備える。シリンダユニット23は、手動で伸縮可能なものであってもよいし、自動で伸縮可能なものであってもよい。
【0048】
具体的には、シリンダユニット23は、上記拡幅状態で、延長部212の載置面212dと、嵌合用孔241aの上面との間で伸縮するように配される。嵌合用孔241aに延長部212を挿入して所定の位置に配置し、縮小状態のシリンダユニット23を伸長してピストンピン232の上端を嵌合用孔241aの上面凹部分241cに係合させる。このようにして、上記拡幅状態における一方のクローラユニット24とアクスル21との位置決めをすることができる。
【0049】
さらにシリンダユニット23を伸長すると、延長部212の下当接面212cが嵌合用孔241aの下面に押圧される。このようにすることで、嵌合用孔241aにおける延長部212の上下方向の遊び(ガタ)をなくすと共に、クローラユニット24にアクスル21を固定することができる。
【0050】
シリンダユニット23は、上記拡幅状態で延長部212の載置面212dに配されるようにしてもよいし、上記拡幅状態及び縮幅状態で載置面212dに配されていてもよい。すなわち、クローラユニット24が、シリンダユニット23を格納する格納部を有し、上記拡幅状態で、作業者がシリンダユニット23を上記格納部から取り出して載置面212dに載置し、上記縮幅状態で再び格納部に格納されてもよい。シリンダユニット23は、延長部212に固着され、上記拡幅状態及び縮幅状態で延長部212と一体的に回動してもよい。
【0051】
〔拡縮装置〕
拡縮装置22は、クローラフレーム241を左右方向に移動させ、一対のクローラユニット24の幅を拡縮する。本実施形態では、拡縮装置22は、一端側が支持部24に、他端側がクローラフレーム241に接合され、左右方向に伸縮可能な一対の油圧シリンダユニットである。
【0052】
[利点]
走行体2は、クローラユニット24の嵌合用孔241aに形成される下面凹部分241cと、この下面凹部分241cに係合する突出部分213aを含む係合部材213とを有するため、クローラユニット24に対するアクスル21の位置決めを容易にすることができる。また、下面凹部分241cと突出部分213aとの係合により、クローラユニット24が内側に移動することを規制できる。
【0053】
走行体2は、クローラユニット24の嵌合用孔241aに形成される上面凹部分241bと係合するシリンダユニット23を備えるため、クローラユニット24とアクスル21との位置決めをして固定することができる。
【0054】
クレーン1は、容易に拡幅状態にすることができる走行体1を備えるため、効率的な建設作業を行うことができる。
【0055】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0056】
上記実施形態では、走行体2が、シリンダユニット23及び係合部材213の双方を有する場合を説明したが、シリンダユニットのみを有する走行体や、係合部材のみを有する走行体も本発明の意図するところである。これらの走行体においても、一対のクローラユニットの間隔を容易に拡幅することができる。
【0057】
上記実施形態では、作業者が回動部材215を操作する態様で説明したが、回動部材は、クレーン1の操作者が制御部を介して操作可能なものであってもよい。
【0058】
上記実施形態では、クレーンアタッチメント4としてラチスブームの先端にフックを取り付けたもので説明したが、これに限定されるものではなく、伸縮可能なブームであってもよく、先端にバケット等を取り付けたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の建設機械の走行体は、クローラユニットの間隔の拡縮が容易に行えるため、建設機械に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 建設機械
2 走行体
21 アクスル
211 アクスル本体
212 延長部
212a 回転軸
212b 上当接面
212c 下当接面
212d 載置面
212e 薄肉部分
213 係合部材
213a 突出部分
214 装着部材
214a 中心軸
214b 挿通孔
215 回動部材
22 拡縮装置
23 シリンダユニット
231 シリンダ
232 ピストンピン
24 クローラユニット
241 クローラフレーム
241a 嵌合用孔
241b 上面凹部分
241c 下面凹部分
241d アイドラ
241e ローラ
242 クローラ
25 支持部
3 旋回体
4 クレーンアタッチメント
5 フック
F 走行体の進行方向(前進方向)
図1
図2
図3
図4
図5