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特開2023-75545照明装置キャリブレーション方法及び照明システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075545
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】照明装置キャリブレーション方法及び照明システム
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/105 20200101AFI20230524BHJP
   H05B 47/165 20200101ALI20230524BHJP
   H05B 45/22 20200101ALI20230524BHJP
【FI】
H05B47/105
H05B47/165
H05B45/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188514
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】西村 昌史
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA10
3K273QA28
3K273QA29
3K273RA12
3K273RA13
3K273RA17
3K273SA03
3K273SA09
3K273SA21
3K273SA23
3K273SA35
3K273SA45
3K273SA60
3K273TA08
3K273TA15
3K273TA28
3K273TA36
3K273TA38
3K273TA62
3K273TA77
3K273TA78
3K273UA17
3K273UA21
3K273UA22
3K273UA28
(57)【要約】
【課題】設定電流と駆動電流の正確な対応関係を求めることにより照明装置をキャリブレーションする方法を提供する。
【解決手段】照明装置キャリブレーション方法は、照明装置の駆動部に供給する設定電流と、前記設定電流に基づいて前記駆動部が光源に供給する駆動電流と、の関係をキャリブレーションする方法である。照明装置キャリブレーション方法は、第1工程と、第2工程と、を含む。第1工程では、照明装置に供給する設定電流を変化させながら光源の出力の不安定度を測定し、不安定度が極大となるときの設定電流である基準設定電流を求める。第2工程では、基準設定電流と、基準設定電流に対応する既知の基準駆動電流と、設定電流の変化に対する駆動電流の変化を示す既知の変化割合と、に基づいて、設定電流と駆動電流の対応関係を求める。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明装置の駆動部に供給する設定電流と、前記設定電流に基づいて前記駆動部が光源に供給する駆動電流と、の関係をキャリブレーションする照明装置キャリブレーション方法において、
前記照明装置は、
第1スイッチング素子と、第2スイッチング素子と、を備え、
前記駆動電流が閾値未満の場合は、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の少なくとも一方を用いる第1組合せでパルス状の前記駆動電流を生成し、
前記駆動電流が閾値以上の場合は、前記第1組合せとは異なる、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の少なくとも一方を用いる第2組合せでパルス状の前記駆動電流を生成し、
前記照明装置に供給する前記設定電流を変化させながら前記光源の出力の不安定度を測定し、前記不安定度が極大となるときの前記設定電流である基準設定電流を求める第1工程と、
前記基準設定電流と、前記基準設定電流に対応する既知の基準駆動電流と、前記設定電流の変化に対する前記駆動電流の変化を示す既知の変化割合と、に基づいて、前記設定電流と前記駆動電流の対応関係を求める第2工程と、
を含むことを特徴とする照明装置キャリブレーション方法。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置キャリブレーション方法であって、
前記第1スイッチング素子は、電源部と前記光源の間に設けられており、
前記第2スイッチング素子は、前記第1スイッチング素子の出力端と接地部の間に設けられており、
前記照明装置は、
前記駆動電流が閾値未満の場合は、前記第1スイッチング素子を用いてかつ前記第2スイッチング素子を用いずにパルス状の前記駆動電流を生成し、
前記駆動電流が閾値以上の場合は、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の両方を用いてパルス状の前記駆動電流を生成することを特徴とする照明装置キャリブレーション方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の照明装置キャリブレーション方法であって、
前記第1スイッチング素子は電界効果トランジスタを含み、
前記第2スイッチング素子は電界効果トランジスタを含むことを特徴とする照明装置キャリブレーション方法。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の照明装置キャリブレーション方法であって、
前記第1工程では、前記光源の出力を光検出装置により検出し、
前記光源の出力の前記不安定度は、前記光検出装置の光検出値の分散値であることを特徴とする照明装置キャリブレーション方法。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の照明装置キャリブレーション方法であって、
前記照明装置は面発光装置であることを特徴とする照明装置キャリブレーション方法。
【請求項6】
設定電流を生成する制御装置と、
前記制御装置から供給された前記設定電流に基づいて駆動電流を生成する駆動部と、
前記駆動部から供給された前記駆動電流により発光する光源と、
を備え、
前記駆動部は、第1スイッチング素子と、第2スイッチング素子と、を備え、
前記駆動電流が閾値未満の場合は、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の少なくとも一方を用いる第1組合せでパルス状の前記駆動電流を生成し、
前記駆動電流が閾値以上の場合は、前記第1組合せとは異なる、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の少なくとも一方を用いる第2組合せでパルス状の前記駆動電流を生成し、
前記制御装置は、前記設定電流を変化させながら前記光源の出力の不安定度を測定し、前記不安定度が極大となるときの設定電流である基準設定電流を求め、
前記制御装置は、前記基準設定電流と、前記基準設定電流に対応する既知の基準駆動電流と、前記設定電流の変化に対する前記駆動電流の変化を示す既知の変化割合と、に基づいて、前記設定電流と前記駆動電流の対応関係を求めることを特徴とする照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、照明装置をキャリブレーションする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、発光素子に駆動電流を供給する発光素子駆動回路を開示する。発光素子駆動回路には、電流源回路が設けられている。電流源回路には、0と1の組合せからなるパルス状の入力信号が入力される。このパルス信号の0と1の比率がマーク率である。電流源回路は、入力信号のマーク率に比例した電流を増幅素子に供給する。これにより、増幅素子の出力電流は常に入力信号のマーク率に比例した値となる。従って、駆動電流のピーク値は、増幅素子の個体差又は温度等によらず一定となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-226740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、0と1の組合せからなるパルス状の信号を入力とするタイプの照明装置を開示する。これに対し、入力された設定電流の電流値に応じて発光するタイプの照明装置が知られている。この種の照明装置では、設定電流の電流値に応じた駆動電流を生成して、駆動電流を用いて光源を発光させる。この種の照明装置では、部品の個体差又は経年変化等に起因して、設定電流と駆動電流の対応関係が装置毎に異なる。そのため、設定電流と駆動電流の正確な対応関係を求めるキャリブレーションを行う必要があった。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、設定電流と駆動電流の正確な対応関係を求めることにより照明装置をキャリブレーションする方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の第1の観点によれば、以下の照明装置キャリブレーション方法が提供される。即ち、照明装置キャリブレーション方法は、照明装置の駆動部に供給する設定電流と、前記設定電流に基づいて前記駆動部が光源に供給する駆動電流と、の関係をキャリブレーションする方法である。前記照明装置は、第1スイッチング素子と、第2スイッチング素子と、を備える。前記照明装置は、前記駆動電流が閾値未満の場合は、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の少なくとも一方を用いる第1組合せでパルス状の前記駆動電流を生成する。前記照明装置は、前記駆動電流が閾値以上の場合は、前記第1組合せとは異なる、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の少なくとも一方を用いる第2組合せでパルス状の前記駆動電流を生成する。照明装置キャリブレーション方法は、第1工程と、第2工程と、を含む。第1工程では、照明装置に供給する設定電流を変化させながら光源の出力の不安定度を測定し、不安定度が極大となるときの設定電流である基準設定電流を求める。第2工程では、基準設定電流と、基準設定電流に対応する既知の基準駆動電流と、設定電流の変化に対する駆動電流の変化を示す既知の変化割合と、に基づいて、設定電流と駆動電流の対応関係を求める。
【0008】
スイッチング素子の第1組合せと第2組合せの切替時に光源の出力は不安定になり、その際の駆動電流(基準駆動電流)は既知である。これにより、基準設定電流と基準駆動電流の関係を求めることができる。更に、設定電流に対する駆動電流の変化割合は既知であるため、この変化割合を用いることにより、設定電流に対する駆動電流の正確な対応関係(部品の個体差又は経年変化等に起因するバラツキが修正された対応関係)を求めることができる。
【0009】
前記の照明装置キャリブレーション方法においては、以下のようにすることが好ましい。即ち、前記第1スイッチング素子は、電源部と前記光源の間に設けられている。前記第2スイッチング素子は、前記第1スイッチング素子の出力端と接地部の間に設けられている。前記駆動電流が閾値未満の場合は、前記第1スイッチング素子を用いてかつ前記第2スイッチング素子を用いずにパルス状の前記駆動電流を生成する。前記駆動電流が閾値以上の場合は、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の両方を用いてパルス状の前記駆動電流を生成する。
【0010】
これにより、一般的に使用される2段式の照明装置において、設定電流に対する駆動電流の正確な対応関係を求めることができる。
【0011】
前記の照明装置キャリブレーション方法においては、以下のようにすることが好ましい。即ち、前記第1スイッチング素子は電界効果トランジスタを含む。前記第2スイッチング素子は電界効果トランジスタを含む。
【0012】
電界効果トランジスタの部品精度又は個体差に起因する、設定電流と駆動電流の対応関係のバラツキを修正することができる。
【0013】
前記の照明装置キャリブレーション方法においては、以下のようにすることが好ましい。即ち、前記第1工程では、前記光源の出力を光検出装置により検出する。前記光源の出力の前記不安定度は、前記光検出装置の光検出値の分散値である。
【0014】
これにより、簡単な演算で不安定度を的確に検出できる。
【0015】
前記の照明装置キャリブレーション方法においては、前記照明装置は面発光装置であることが好ましい。
【0016】
これにより、面発光装置をキャリブレーションできる。
【0017】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の照明システムが提供される。即ち、照明システムは、制御装置と、駆動部と、光源と、を備える。前記制御装置は、設定電流を生成する。前記駆動部は、前記制御装置から供給された前記設定電流に基づいて駆動電流を生成する。前記光源は、前記駆動部から供給された前記駆動電流により発光する。前記駆動部は、第1スイッチング素子と、第2スイッチング素子と、を備える。前記駆動電流が閾値未満の場合は、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の少なくとも一方を用いる第1組合せでパルス状の前記駆動電流を生成する。前記駆動電流が閾値以上の場合は、前記第1組合せとは異なる、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の少なくとも一方を用いる第2組合せでパルス状の前記駆動電流を生成する。前記制御装置は、前記設定電流を変化させながら前記光源の出力の不安定度を測定し、前記不安定度が極大となるときの設定電流である基準設定電流を求める。前記制御装置は、前記基準設定電流と、前記基準設定電流に対応する既知の基準駆動電流と、前記設定電流の変化に対する前記駆動電流の変化を示す既知の変化割合と、に基づいて、前記設定電流と前記駆動電流の対応関係を求める。
【0018】
スイッチング素子の第1組合せと第2組合せの切替時に光源の出力は不安定になり、その際の駆動電流(基準駆動電流)は既知である。これにより、基準設定電流と基準駆動電流の関係を求めることができる。更に、設定電流に対する駆動電流の変化割合は既知であるため、この変化割合を用いることにより、設定電流に対する駆動電流の正確な対応関係(部品の個体差又は経年変化等に起因するバラツキが修正された対応関係)を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る照明システムのブロック図。
図2】駆動部の主要な回路構成を示す図。
図3】照明装置のキャリブレーションに関する処理を示すフローチャート。
図4】光源の出力の不安定度と駆動電流の関係を示すグラフ。
図5】設定電流と駆動電流の対応関係を示すグラフ。
図6】設定電流と駆動電流の対応関係を用いて、目標値から設定値を算出することを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、図1を参照して、照明システム1について説明する。
【0021】
図1に示す照明システム1は、制御装置10と、照明装置20と、光検出装置30と、を備える。照明システム1は、照明装置20の出力(全光束)を変更可能である。具体的には、制御装置10は、目標の出力に応じた設定電流を生成して照明装置20に供給する。照明装置20は、設定電流に応じた駆動電流を生成して、駆動電流を用いて発光する。
【0022】
本実施形態の照明システム1は、例えば、面発光装置に適用される。具体的には、照明装置20が複数の光源22を備え、複数の光源22が平面状に配置されている。なお、照明システム1は、面発光装置に限られず、様々な発光装置に用いることができる。例えば、暗所での被写体の撮影を行う撮影システムに照明システム1を適用できる。
【0023】
また、照明システム1は、キャリブレーションを行うことが可能である。照明装置20は、供給される設定電流が同じであっても、構成部品の個体差又は経年変化等により、生成される駆動電流が装置毎に異なることがある。キャリブレーションとは、設定電流と駆動電流の正確な対応関係を求めることである。キャリブレーションを行って求めた対応関係を用いることにより、構成部品の個体差又は経年変化に関係なく、目標の駆動電流、強いては目標の照明装置20の出力を得ることができる。
【0024】
以下、照明システム1の構成要素について説明し、その後にキャリブレーションについて説明する。
【0025】
制御装置10は、CPU等の演算装置と、フラッシュメモリ等の記憶装置と、を備える。制御装置10の演算装置は、記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、照明システム1に関する様々な制御を実行する。例えば、制御装置10は、外部から受信した指令に基づいて、設定電流を生成したり、上述のキャリブレーションを行ったりする。
【0026】
照明装置20は、駆動部21と、光源22と、を備える。駆動部21は、供給された設定電流に応じた駆動電流を生成する。また、図2に示すように、照明装置20には、電源部40から電流が供給される。電源部40は、例えば、直流電源と、定電流回路と、を含む。
【0027】
駆動部21は、アナログ回路であり、公知の2段構成のスイッチング素子を有している。駆動部21は、スイッチングにより駆動電流を制御して、パルス状の駆動電流を生成する。この種のアナログ回路は公知であるため、以下では簡単に説明する。図2に示すように、駆動部21は、ドライバIC21aと、第1スイッチング素子21bと、第2スイッチング素子21cと、を備える。
【0028】
ドライバIC21aは、第1スイッチング素子21b及び第2スイッチング素子21cに制御信号を出力する。制御信号は、FETのゲートに付与する電圧である。第1スイッチング素子21bは、並列に配置された2つのFET(電界効果トランジスタ)で構成される。第1スイッチング素子21bの入力端は電源部40に接続されている。第2スイッチング素子21cは、並列に配置された2つのFETで構成される。第2スイッチング素子21cは、第1スイッチング素子21bの出力端と接地部との間に配置される。
【0029】
ドライバIC21aが第1スイッチング素子21b及び第2スイッチング素子21cを切り替えることで、電流値が一定であって、設定電流に応じた電流値のパルス状の駆動電流が生成されて光源22に供給される。
【0030】
ドライバIC21aは、駆動部21から出力する駆動電流が閾値未満の場合は、第1スイッチング素子21bを用いてかつ第2スイッチング素子21cを用いない第1組合せでパルス状の駆動電流を生成する。ドライバIC21aは、駆動部21から出力する駆動電流が閾値以上の場合は、第1スイッチング素子21b及び第2スイッチング素子21cの両方を用いる第2組合せでパルス状の駆動電流を生成する。これにより、駆動電流が低い場合と高い場合の両方において、駆動電流を安定させることができる。
【0031】
なお、駆動部21は、少なくとも2通りのスイッチング素子の組合せを用いるのであれば、本実施形態とは異なる組合せを用いてもよい。例えば、第1組合せを本実施形態と同じにして、第2組合せとして、第1スイッチング素子21bを用いずにかつ第2スイッチング素子21cを用いてもよい。また、スイッチング素子の種類又は段数は、本実施形態とは異なっていてもよい。例えば、スイッチング素子として、FET以外にも、サイリスタ又はIGBTを用いてもよい。また、スイッチ構成は2段に限られず、3段以上であってもよい。
【0032】
光源22は、半導体レーザである。光源22は、供給された駆動電流の大きさに応じた出力で発光する。照明装置20は、複数の半導体レーザ光源を備えた垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)アレイ素子である。照明装置20は、例えば、加工用レーザによりワークの加工を行うレーザ加工機に備えられ、レーザ加工時のワークにおける加工部位の性状をモニタリングするため当該部位を撮影する観察光学系の光源として用いられる。光源22は半導体レーザに限られず、例えばLED(発光ダイオード)であってもよい。
【0033】
光検出装置30は、カメラ31と、画像処理装置32と、を備える。
【0034】
カメラ31は、光源22が照らした物体の像を検出する。キャリブレーションを行う場合、光源22は白色のテストプレート(キャリブレーション用のテスト部材)の像を検出する。照明システム1が撮影システムに適用される場合、撮影システムが備える撮影装置を用いてテストプレートの像を検出してもよい。また、カメラ31に代えて、フォトダイオード等の光センサを用いてもよい。
【0035】
画像処理装置32は、カメラ31から入力された像に画像処理を行い、テストプレートの明るさ(照度)を示す光検出値を算出して、制御装置10に送信する。なお、画像処理装置32が行う処理の少なくとも一部を制御装置10が行ってもよい。
【0036】
次に、図3から図5を参照して、制御装置10が行うキャリブレーションについて説明する。
【0037】
本実施形態では、図3に示すステップS101~S108の処理は、オペレータが適宜の操作を行ったことをトリガとして制御装置10が行う。これに代えて、ステップS101~S108の少なくとも何れかの処理をオペレータの手作業を含んで行ってもよい。
【0038】
初めに、制御装置10は、設定電流を照明装置20に供給する(S101)。次に、制御装置10は、光検出装置30に指示してテストプレートの撮影及び画像解析を行わせて、光検出装置30から光検出値を取得する(S102)。次に、制御装置10は、光検出値の分散値を算出する(S103)。なお、分散値を算出するための光検出値が十分に集まっていない場合は、ステップS103を省略してもよい。
【0039】
ここで、図4を参照して、光検出値の不安定度と駆動電流の関係について説明する。不安定度とは、光源22の出力のバラツキの程度であり、駆動電流が一定の状況で光源22の出力が大きく上下するほど不安定度が高い。本実施形態では、不安定度として分散値を用いているが、分散値とは異なる方法で算出した値を不安定度として用いてもよい。
【0040】
上述したように、駆動部21は、駆動電流が閾値以上か未満かに応じてスイッチング方式が異なる。そのため、駆動電流が閾値の近傍にある場合、スイッチング方式が切り替わることに起因して、光源22の制御が不安定になり、光源22がチラついたりする。その結果、光源22の不安定度が大幅に上昇する。詳細には、駆動電流が閾値に一致する状態で不安定度が極大となる。言い換えれば、不安定度が極大となった状態においては、駆動電流が閾値に一致している。以下では、このときの駆動電流を基準駆動電流と称する。
【0041】
制御装置10は、分散値の算出後、分散値の極大を特定できたか否かを判定する(S104)。制御装置10は、分散値の極大が特定できない場合、設定電流を変化させて(S105)、再びステップS101からS104の処理を行う。設定電流の変化方法は様々であるが、例えば以下のように変化させる。即ち、設定電流の初期値は、基準駆動電流よりも大幅に大きい駆動電流が生成される値とする。そして、設定電流を徐々に小さくする。あるいは、設定電流の初期値を基準駆動電流よりも大幅に小さい駆動電流が生成される値として、設定電流を徐々に大きくしてもよい。
【0042】
分散値の極大の特定は、例えば以下のようにして行う。即ち、設定電流を徐々に小さく又は大きく変化させることにより、分散値が上昇して所定の閾値以上になり、その後に分散値が下降することになる。そして、分散値が最も大きくなった箇所を分散値の極大と特定する。なお、スイッチング素子が3段構成の場合、分散値が2つ存在することになる。その場合は、例えば駆動電流が小さい方の分散値を特定して、2段構成の場合と同じ処理を行えばよい。
【0043】
制御装置10は、分散値の極大を特定した場合、分散値が極大となった時点の設定電流を基準設定電流として記憶する(S106)。ここで、図5を参照して、設定電流と駆動電流の関係について説明する。上述したように、設定電流が同じ場合であっても、駆動部21の個体差又は経年変化等に起因して、生成される駆動電流が異なる場合がある。そのため、目標となる駆動電流を発生させるためには、駆動部21の個体差又は経年変化等を考慮して、設定電流と駆動電流の対応関係を求める必要がある。
【0044】
また、基準駆動電流すなわち照明装置20におけるスイッチングの閾値に相当する駆動電流は既知であり、設定電流と駆動電流の変化割合(傾き)も既知である。これらは、照明装置20を用いて予め実験を行うことにより、求めることができ、予め制御装置10に記憶されている。実験の方法は様々であるが、例えば、基準設定電流を供給した場合の駆動電流を計測することで基準駆動電流を求めることができる。また、複数の設定電流を供給したときのそれぞれの駆動電流を計測して、設定電流の変化量と駆動電流の変化量の比を求めることで変化割合を求めることができる。
【0045】
基準駆動電流と変化割合は個体差に関係なく略同じ値を取るため、単一の照明装置20に対して実験を行うことにより、同じ仕様の照明装置20に対する実験を省略できる。基準駆動電流と変化割合は経年変化の影響を受けにくいので、照明システム1の稼動後の再実験は不要である。なお、照明装置20の販売元等が基準駆動電流(閾値)と変化割合のデータを公開している場合は、そのデータを用いてもよい。
【0046】
制御装置10は、上述した方法で求めて記憶された、基準駆動電流と、設定電流と駆動電流の変化割合(傾き)と、を読み出す(S107)。次に、制御装置10は、設定電流と駆動電流の対応関係を作成する(S108)。なお、制御装置10は、既に作成した対応関係が存在する場合は、対応関係を更新する。設定電流と駆動電流が比例関係にあることは知られている。そのため、制御装置10は、ステップS106で求めた基準設定電流と、ステップS107で読み出した基準駆動電流及び変化割合と、に基づいてこの対応関係を算出できる。
【0047】
以上の処理を行うことにより、駆動部21の個体差又は経年変化に関係なく、目標の駆動電流、強いては目標の照明装置20の出力を得ることができる。このキャリブレーションは、照明システム1の稼動前(例えば出荷時又は設置時等)に行われる。その後、照明システム1の稼動時間が所定時間を超えたタイミングで、再びキャリブレーションが行われる。
【0048】
最後に、図6を参照して、設定電流と駆動電流の対応関係の利用方法を簡単に説明する。制御装置10は、照明装置20の出力と駆動電流の対応関係を予め記憶している。照明装置20の出力と駆動電流の対応関係は、個体差及び経年変化の影響は殆どない。そして、制御装置10は、目標とする照明装置20の出力に応じて、必要な駆動電流を特定する。次に、制御装置10は、駆動電流の目標値(図6)を得るための設定電流の設定値(図6)を、設定電流と駆動電流の対応関係に基づいて特定する。そして、制御装置10は、特定した設定値の設定電流を生成して駆動部21に供給する。
【0049】
以上に説明したように、本実施形態では、以下に示す方法で、照明装置キャリブレーション方法が行われている。照明装置20は、第1スイッチング素子と、第2スイッチング素子21cと、を備える。照明装置20は、駆動電流が閾値未満の場合は、第1スイッチング素子21b及び第2スイッチング素子21cの少なくとも一方を用いる第1組合せでパルス状の駆動電流を生成する。照明装置20は、駆動電流が閾値以上の場合は、第1組合せとは異なる、第1スイッチング素子21b及び第2スイッチング素子21cの少なくとも一方を用いる第2組合せでパルス状の駆動電流を生成する。照明装置キャリブレーション方法は、第1工程と、第2工程と、を含む。第1工程では、照明装置20に供給する設定電流を変化させながら光源の出力の不安定度を測定し、不安定度が極大となるときの設定電流である基準設定電流を求める。第2工程では、基準設定電流と、基準設定電流に対応する既知の基準駆動電流と、設定電流の変化に対する駆動電流の変化を示す既知の変化割合と、に基づいて、設定電流と駆動電流の対応関係を求める。
【0050】
スイッチング素子の第1組合せと第2組合せの切替時に光源の出力は不安定になり、その際の駆動電流(基準駆動電流)は既知である。これにより、基準設定電流と基準駆動電流の関係を求めることができる。更に、設定電流に対する駆動電流の変化割合は既知であるため、この変化割合を用いることにより、設定電流に対する駆動電流の正確な対応関係(部品の個体差又は経年変化等に起因するバラツキが修正された対応関係)を求めることができる。
【0051】
本実施形態の照明装置キャリブレーション方法では、第1スイッチング素子21bは、電源部40と光源22の間に設けられている。第2スイッチング素子21cは、第1スイッチング素子21bの出力端と接地部の間に設けられている。駆動電流が閾値未満の場合は、第1スイッチング素子21bを用いてかつ第2スイッチング素子21cを用いずにパルス状の駆動電流を生成する。駆動電流が閾値以上の場合は、第1スイッチング素子21b及び第2スイッチング素子21cの両方を用いてパルス状の駆動電流を生成する。
【0052】
これにより、一般的に使用される2段構成のスイッチング素子を有する照明装置20において、設定電流に対する駆動電流の正確な対応関係を求めることができる。
【0053】
本実施形態の照明装置キャリブレーション方法では、第1スイッチング素子21bは電界効果トランジスタを含む。第2スイッチング素子21cは電界効果トランジスタを含む。
【0054】
電界効果トランジスタの部品精度又は個体差に起因する、設定電流と駆動電流の対応関係のバラツキを修正することができる。
【0055】
本実施形態の照明装置キャリブレーション方法において、第1工程では、光源22の出力を光検出装置30により検出する。光源22の出力の不安定度は、光検出装置30の光検出値の分散値である。
【0056】
これにより、簡単な演算で不安定度を的確に検出できる。
【0057】
本実施形態の照明装置キャリブレーション方法において、照明装置20は面発光装置である。
【0058】
これにより、面発光装置をキャリブレーションできる。
【符号の説明】
【0059】
1 照明システム
10 制御装置
20 照明装置
21 駆動部
21a ドライバIC
21b 第1スイッチング素子
21c 第2スイッチング素子
22 光源
30 光検出装置
31 カメラ
32 画像処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6