(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075571
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】円筒形電池及び円筒形電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/533 20210101AFI20230524BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20230524BHJP
H01M 50/56 20210101ALI20230524BHJP
H01M 50/107 20210101ALI20230524BHJP
【FI】
H01M50/533
H01M50/545
H01M50/56
H01M50/107
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188555
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢幡 洋
(72)【発明者】
【氏名】花村 玲
(72)【発明者】
【氏名】眞野 司
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA04
5H011AA09
5H011CC06
5H043AA01
5H043AA19
5H043BA07
5H043BA19
5H043CA03
5H043CA12
5H043DA03
5H043EA06
5H043EA22
5H043EA39
5H043GA22
5H043GA27
5H043HA02E
5H043HA16E
5H043HA17E
5H043JA01E
5H043JA06E
5H043KA07E
5H043LA02E
5H043LA11E
5H043LA21E
5H043LA22E
5H043LA25E
5H043LA35E
(57)【要約】
【課題】円筒形電池の外装缶の湾曲した内側側面とタブとの接続強度のばらつきを抑える。
【解決手段】円筒形電池の外装缶の湾曲した内側側面に接続されるタブ、例えば、外装缶内に収容される巻取体の負極層に接続される負極タブ40として、突起41群を備えたものを用いる。負極タブ40は、外装缶の湾曲した内側側面と対向する面42に設けられその面42の基準点43を中心とした円周44上に位置する3つ以上の突起41群を備え、それら突起41群で外装缶の湾曲した内側側面と抵抗溶接により接続される。負極タブ40にこのような突起41群を設けることで、外装缶の湾曲した内側側面との接続強度のばらつきを抑える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形の外装缶と、
前記外装缶の湾曲した内側側面と対向する第1面を有し、前記第1面に設けられ前記第1面の基準点を中心とした円周上に位置する3つ以上の第1突起群を備え、前記第1突起群で前記内側側面と接続されたタブと
を含むことを特徴とする円筒形電池。
【請求項2】
前記外装缶に収容された電極層を含み、
前記タブは、一端部が前記内側側面と接続され、他端部が前記電極層に接続されることを特徴とする請求項1に記載の円筒形電池。
【請求項3】
前記タブは、前記基準点に設けられた第2突起を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の円筒形電池。
【請求項4】
前記タブから前記内側側面に向かう方向に見た時の平面視で、前記第1突起群と前記内側側面との各接続部の接続面積は、前記第2突起と前記内側側面との接続部の接続面積よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の円筒形電池。
【請求項5】
前記タブから前記内側側面に向かう方向に見た時の平面視で、前記第1突起群と前記内側側面との各接続部の対向する両端間の最大距離は、前記第2突起と前記内側側面との接続部の対向する両端間の最大距離よりも大きいことを特徴とする請求項3又は4に記載の円筒形電池。
【請求項6】
前記基準点は、前記タブの、前記外装缶の軸線方向と直交する方向の幅の中心に位置し、
前記タブは、前記外装缶の軸線方向と平行な方向であって且つ前記基準点を通る軸線に対し、前記第1面側からの平面視で、左右対称の形状を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の円筒形電池。
【請求項7】
前記第1突起群の隣接するもの同士の距離は、互いに等しいことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の円筒形電池。
【請求項8】
前記タブは、前記第1面とは反対側の第2面に凹部群を有し、前記凹部群にそれぞれ対応する前記第1面の箇所に突起形状の凸部群を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の円筒形電池。
【請求項9】
円筒形の外装缶を準備する工程と、
前記外装缶の湾曲した内側側面と対向する第1面を有し、前記第1面に設けられ前記第1面の基準点を中心とした円周上に位置する3つ以上の第1突起群を備えたタブを準備する工程と、
前記タブを前記第1突起群で前記内側側面と接続する工程と
を含むことを特徴とする円筒形電池の製造方法。
【請求項10】
前記タブを準備する工程は、前記第1突起群と、前記基準点に設けられた第2突起とを備える前記タブを準備する工程を含み、
前記第2突起の前記第1面に対する高さは、前記第1突起群の前記第1面に対する高さよりも低いことを特徴とする請求項9に記載の円筒形電池の製造方法。
【請求項11】
前記第2突起の前記第1面に対する高さは、前記第1突起群の前記第1面に対する高さの20%~60%の範囲であることを特徴とする請求項10に記載の円筒形電池の製造方法。
【請求項12】
前記タブは、
前記第1面とは反対側の第2面に凹部群を有し、前記凹部群にそれぞれ対応する前記第1面の箇所に突起形状の凸部群を有し、
前記凸部群の任意の凸部における厚さの、前記第1面と前記第2面との間の厚さに対する差異が20%以下であることを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の円筒形電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形電池及び円筒形電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外装缶の内部に正負極の電極を含む発電要素(電池要素)が収容される電池が知られている。このような電池に関し、外装缶と発電要素とを、外装缶の内部で導電部材(リード、タブ等)を用いて接続する技術が知られている。
【0003】
例えば、正負極板を含む電極群を収納する電池ケースの内底面に、正負一方の電極板から引き出したリードを接続する技術や(特許文献1)、正負極板を含む電極群が収容される電池容器の内底部に、正負一方の電極板から導出されるリード板を、それらを直接溶接する時よりも溶接性の高い金属材料を介在させて溶接する技術が知られている(特許文献2)。このほか、正負極板を含む電極群が収容される電池缶の内底面に、正負一方の電極板の集電体に接続されるリード板が溶接される電池において、そのリード板の溶接部分に複数の突起を設ける技術が知られている(特許文献3)。
【0004】
また、金属製の有底ケースに収納される正負極板を含む極板群の下端に接続する下部集電体の、極板群の中心部の中空の面積内に、少なくとも3つの突起部を設け、その少なくとも1つを介して有底ケースの底面と下部集電体とを溶接する技術が知られている(特許文献4)。このほか、下部集電体又は金属ケースの、極板群の中空円筒部に対向する部分と周縁部の間の領域内の同心円上の複数箇所にプロジェクションを配置する技術、中空円筒部に対向する部分にもプロジェクションを配置する技術、このプロジェクションを同心円上の複数箇所のプロジェクションの高さよりも低くする技術が知られている(特許文献5)。
【0005】
また、電池要素に接合される導電接続タブにプロジェクション溶接用突起を形成し、導電接続タブをそのプロジェクション溶接用突起を電池缶の内壁面に接触させて溶接する技術が知られている(特許文献6)。このほか、正負極板を含む電極群を収納する円筒形の金属ケースの側壁内面に、正負一方の電極板に接続された集電リードを溶接する技術や(特許文献7)、円筒形電池缶の内側壁に接続するリード部材の、その内側壁に接続する領域の長手方向と垂直な断面を、所定角度のV字状とする技術が知られている(特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-228153号公報
【特許文献2】特開2006-32072号公報
【特許文献3】特開平6-275253号公報
【特許文献4】特開2008-282696号公報
【特許文献5】特開2005-100949号公報
【特許文献6】特開2002-216739号公報
【特許文献7】特開2014-222670号公報
【特許文献8】特開2010-108870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、発電要素となる電極群の巻取体を円筒形の外装缶に収容し、その巻取体と接続される導電性のタブを外装缶の内側底面に抵抗溶接により溶接(接続)する円筒形電池では、タブを外装缶の内側底面に溶接する際に外装缶の上側開口から内側底面まで溶接用電極棒を貫通させるための孔空間を巻取体の中心部に設けることを要する。そのため、そのような孔空間を巻取体に設ける分、外装缶内に収容できる巻取体の容積が減り、放電容量が減ってしまう。一方、外装缶の内側側面にタブを溶接する場合には、巻取体に溶接用電極棒を貫通させるための孔空間を設けることを要しないため、外装缶内に収容する巻取体の容積を増やし、放電容量を増やすことができるという利点がある。
【0008】
しかし、円筒形の外装缶の内側側面にタブを溶接する場合には、湾曲した内側側面に溶接を行うため一部に溶接電流が集中し、溶接強度(接続強度)のばらつきが大きくなることがあった。外装缶の内側側面と抵抗溶接されるタブの面にプロジェクションと呼ばれる突起を複数設け、その突起群の部分に溶接電流を集中させて溶接を行おうとすると、それら突起群の配置によっては、外装缶の内側側面に対する突起群の溶接が不均一となり、タブと外装缶との接続強度のばらつきが大きくなることがあった。
【0009】
1つの側面では、本発明は、円筒形電池の外装缶の湾曲した内側側面とタブとの接続強度のばらつきを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様では、円筒形の外装缶と、前記外装缶の湾曲した内側側面と対向する第1面を有し、前記第1面に設けられ前記第1面の基準点を中心とした円周上に位置する3つ以上の第1突起群を備え、前記第1突起群で前記内側側面と接続されたタブとを含む円筒形電池が提供される。
【0011】
また、別の態様では、円筒形の外装缶を準備する工程と、前記外装缶の湾曲した内側側面と対向する第1面を有し、前記第1面に設けられ前記第1面の基準点を中心とした円周上に位置する3つ以上の第1突起群を備えたタブを準備する工程と、前記タブを前記第1突起群で前記内側側面と接続する工程とを含む円筒形電池の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
1つの側面では、円筒形電池の外装缶の湾曲した内側側面とタブとの接続強度のばらつきを抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】円筒形電池の一例について説明する図(その1)である。
【
図2】円筒形電池の一例について説明する図(その2)である。
【
図3】巻取前の発電要素の一例について説明する図である。
【
図4】発電要素の巻取体の外装缶への挿入の一例について説明する図である。
【
図6】負極タブの突起群の配置例について説明する図(その1)である。
【
図7】負極タブの突起群の配置例について説明する図(その2)である。
【
図8】負極タブの突起群の配置例について説明する図(その3)である。
【
図9】負極タブの突起形成について説明する図である。
【
図10】負極タブと外装缶の湾曲した内側側面との抵抗溶接の第1の例について説明する図である。
【
図11】突起群が円周上及びその中心に配置された負極タブの一例について説明する図である。
【
図12】負極タブと外装缶の湾曲した内側側面との抵抗溶接の第2の例について説明する図である。
【
図13】負極タブと外装缶の湾曲した内側側面との抵抗溶接後の状態の一例について説明する図である。
【
図14】突起群が円周上及びその中心に配置された負極タブの形状の一例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1及び
図2は円筒形電池の一例について説明する図である。
図1には円筒形電池の一例の要部外観斜視図を模式的に示している。
図2には円筒形電池の一例の要部断面図を模式的に示している。尚、
図2は
図1の面S0での切断面図である。
【0015】
図1及び
図2に示す円筒形電池1は、外装缶10、巻取体20、正極タブ30、負極タブ40、絶縁板50、絶縁板60、非水電解液70、封口体80、ガスケット90、及び正極端子100を備える。
【0016】
外装缶10は、円筒形を有し、一方の端部が開口された有底の導電性の容器である。外装缶10には、ステンレス、ニッケルめっきを施した鉄等の金属材料が用いられる。外装缶10の開口端部は、ガスケット90を介して正極端子100が設けられた封口体80によって封口される。
【0017】
巻取体20は、円筒形電池1の外装缶10内に収容される発電要素の一例である。巻取体20は、電極層である正極層21及び負極層22と、それらの間に介在されるセパレータ23とを含む。微孔性フィルムや不織布が用いられたシート状のセパレータ23の一方の面に、正極活物質を含む正極層21が形成され、そのセパレータ23の他方の面に、負極活物質を含む負極層22が形成される。これにより、正極層21、セパレータ23及び負極層22が順に積層されたシート状積層体が形成される。このようなシート状積層体が円筒形となるようにスパイラル状に巻き取られ、外装缶10内に非水電解液70と共に収容される。外装缶10内には、その底部11、及び収容される巻取体20の上部に、それぞれ絶縁板50及び絶縁板60が設けられる。
【0018】
正極タブ30及び負極タブ40には、ニッケル等の金属材料が用いられる。正極タブ30は、その一端部が、外装缶10内に収容される巻取体20の正極層21に接続され、他端部が、封口体80にガスケット90を介して設けられる正極端子100に接続される。また、負極タブ40は、その一端部が、外装缶10内に収容される巻取体20の負極層22に接続され、他端部が、外装缶10の内側側面12に接続される。外装缶10は、巻取体20の負極層22と負極タブ40を通じて接続され、円筒形電池1の負極として機能する。
【0019】
円筒形電池1は、例えば、リチウム一次電池又はリチウム二次電池とすることができる。円筒形電池1をリチウム一次電池とする場合、巻取体20の正極層21には、正極活物質として二酸化マンガン等が用いられ、巻取体20の負極層22には、負極活物質としてリチウム金属やリチウム合金等が用いられる。円筒形電池1をリチウム二次電池とする場合、巻取体20の正極層21には、正極活物質としてコバルト酸リチウム等が用いられ、巻取体20の負極層22には、負極活物質としてリチウム金属やリチウム合金等が用いられる。円筒形電池1の非水電解液70には、非水系溶媒にリチウム塩を溶解させた非水系有機電解液が用いられる。
【0020】
続いて、円筒形電池1の製造方法の一例について、
図3~
図5を参照して説明する。
図3は巻取前の発電要素の一例について説明する図である。
図3には巻取前の発電要素の一例の要部平面図を模式的に示している。
【0021】
円筒形電池1の巻取体20は、
図3に示すようなシート状の発電要素20aが円筒形となるようにスパイラル状に巻き取られることで形成される。発電要素20aは、シート状のセパレータ23と、セパレータ23の一方の面23a(
図3の紙面奥行側)に設けられるシート状の正極層21(
図3では図示せず)と、セパレータ23の他方の面23b(
図3の紙面手前側)に設けられるシート状の負極層22とを含む。
【0022】
セパレータ23の面23a側に設けられる正極層21には、正極タブ30の一端部が接続され、他端部はセパレータ23の外側に引き出される。正極タブ30は、平面視で帯状の部材の一端部を正極層21に接続したものであってもよいし、正極活物質を含む正極材料が形成される板状又は網状の集電体の一部を当該正極材料の外側に引き出したものであってもよい。
【0023】
セパレータ23の面23b側に設けられる負極層22には、平面視で帯状の負極タブ40の一端部が接続され、他端部はセパレータ23の外側に引き出される。セパレータ23の内側に位置する負極タブ40の部分には、絶縁テープ24が貼り付けられて保護される。負極タブ40の、セパレータ23の外側に引き出される部分には、円筒形電池1の外装缶10の内側側面12と対向される面42に、複数の突起41(プロジェクション)が配置される。尚、
図3並びに後述の
図4及び
図5に示す突起41群の配置は一例である。負極タブ40の突起等の配置の詳細については後述する。
【0024】
図4は発電要素の巻取体の外装缶への挿入の一例について説明する図である。
図4(A)には巻取体の外装缶への挿入時の状態の一例の要部斜視図を模式的に示し、
図4(B)には巻取体の外装缶への挿入後の状態の一例の要部斜視図を模式的に示している。
【0025】
上記
図3に示したようなシート状の発電要素20aが、円筒形となるようにスパイラル状に巻き取られ、
図4(A)に示すような巻取体20が形成される。巻取体20は、別途準備された有底の円筒形の外装缶10の、その底部11(
図2)と軸線10aの方向(軸線方向)Zにおいて対向する開口端部から、外装缶10内に挿入される。尚、巻取体20の挿入前に、外装缶10内の底部11には、絶縁板50が予め挿入される。
【0026】
巻取体20が外装缶10内に挿入されることで、
図4(B)に示すような、巻取体20が外装缶10内に収容された状態が得られる。巻取体20の負極層22に接続されて巻取体20の外側に引き出された負極タブ40は、それに配置された突起41群を介して、外装缶10の内側側面12に、抵抗溶接によって溶接(接続)される。
【0027】
図5は抵抗溶接の一例について説明する図である。
図5(A)には溶接用電極棒の一例の要部斜視図を模式的に示し、
図5(B)には抵抗溶接時の一例の要部平面図を模式的に示し、
図5(C)には抵抗溶接時の一例の要部断面図を模式的に示している。尚、
図5(C)は
図5(B)のV-V断面図である。
【0028】
巻取体20の負極層22に接続されて巻取体20の外側に引き出された負極タブ40と、外装缶10の湾曲した内側側面12との抵抗溶接には、例えば、
図5(A)に示すような一対の溶接用電極棒210及び溶接用電極棒220が用いられる。一方の溶接用電極棒210の先端部211が、外装缶10の内側の負極タブ40に当接され、他方の溶接用電極棒220の先端部221が、外装缶10の外側(外側側面)に当接されて、溶接用電極棒210と溶接用電極棒220との間で通電が行われる。
【0029】
溶接用電極棒210は、それが当接される負極タブ40の面46(突起41群が配置される面42とは反対側の面であって溶接用電極棒210の先端部211が当接される前の面)と平行な方向の断面が円形状となる円柱状部材である。外装缶10の内側の負極タブ40に当接される溶接用電極棒210の先端部211は、負極タブ40の面46側に凸となるような湾曲した表面(湾曲表面、球面又はR面)になっている。
【0030】
抵抗溶接の際、
図5(B)及び
図5(C)に示すように、負極タブ40は、突起41群が配置される面42と、外装缶10の湾曲した内側側面12とが対向するように、設けられる。そして、負極タブ40に溶接用電極棒210が近付けられてその先端部211が当接され、外装缶10の外側に溶接用電極棒220が近付けられてその先端部221が当接される。負極タブ40は、溶接用電極棒210によって外装缶10の内側側面12の側に所定の加圧力で押され、外装缶10は、溶接用電極棒220によって負極タブ40の側に所定の加圧力で押される。負極タブ40の突起41群は、後述のような配置(円周44上の配置)とされ、溶接用電極棒210の湾曲表面の先端部211が当接されることで、均一性良く外装缶10の湾曲した内側側面12に加圧される。
【0031】
このような状態で溶接用電極棒210と溶接用電極棒220との間に所定の電流(溶接電流)が流されることで、負極タブ40の突起41群と、外装缶10の湾曲した内側側面12とが溶接(抵抗溶接)される。
【0032】
尚、負極タブ40と外装缶10の内側側面12との溶接後は、外装缶10内の巻取体20の上部に絶縁板60が挿入される。更に、巻取体20の正極層21に接続されて巻取体20の外側に引き出された正極タブ30が、封口体80にガスケット90を介して設けられる正極端子100に抵抗溶接等によって接続される。そして、封口体80が、外装缶10の開口端部にレーザー溶接等によって接続され、外装缶10が封口される。これにより、上記
図1及び
図2に示したような円筒形電池1が得られる。
【0033】
続いて、円筒形電池1の負極タブ40に配置される突起群について説明する。
図6~
図8は負極タブの突起群の配置例について説明する図である。
図6(A)~
図6(C)、
図7(A)~
図7(C)、
図8(A)及び
図8(B)にはそれぞれ、突起群が配置される面側から見た負極タブの一例の要部平面図を模式的に示している。
【0034】
図6(A)~
図6(C)は、抵抗溶接の際に円筒形の外装缶10の湾曲した内側側面12と対向される負極タブ40の面42に、負極タブ40の軸線40aに沿って直線的に突起41群が並ぶ配置例を示したものである。ここで、負極タブ40の軸線40aは、負極タブ40が外装缶10の内側側面12と溶接される時の、外装缶10の軸線方向Zと平行な方向の軸線であって、外装缶10の軸線方向Zと直交する方向Xの面42の幅の中心を通る軸線である。
【0035】
図6(A)の例では、負極タブ40の軸線40a上に2つの突起41群が一列に並んで配置される。
図6(B)の例では、負極タブ40の軸線40a上に3つの突起41群が一列に並んで配置される。
図6(C)の例では、負極タブ40の軸線40aを挟んだ両側にそれぞれ、軸線40aと平行に、3つの突起41群が一列に並んで配置される。
【0036】
また、
図7(A)~
図7(C)は、抵抗溶接の際に外装缶10の内側側面12と対向される負極タブ40の面42の、軸線40a上の基準点43を中心とする円周44上に、突起41群が位置する配置例を示したものである。
【0037】
図7(A)の例では、負極タブ40の基準点43を中心とする円周44上に3つの突起41群が配置される。例えば、
図7(A)の3つの突起41群は、1つが軸線40a上に配置され、残りの2つが軸線40aを挟んだ両側にそれぞれ配置され、3つの突起41群の隣接するもの同士の距離が等しくなるように配置される。
【0038】
図7(B)の例では、負極タブ40の基準点43を中心とする円周44上に4つの突起41群が配置される。例えば、
図7(B)の4つの突起41群は、軸線40aを挟んだ両側にそれぞれ2つずつ配置され、4つの突起41群の隣接するもの同士の距離が等しくなるように配置される。
【0039】
図7(C)の例では、負極タブ40の基準点43を中心とする円周44上に6つの突起41群が配置される。例えば、
図7(C)の6つの突起41群は、2つが軸線40a上に配置され、残りの4つが軸線40aを挟んだ両側にそれぞれ2つずつ配置され、6つの突起41群の隣接するもの同士の距離が等しくなるように配置される。
【0040】
また、
図8(A)及び
図8(B)はそれぞれ、
図7(A)及び
図7(B)に示した突起41群が位置する円周44の中心である基準点43の位置に、更に突起45を設けた配置例を示したものである。
【0041】
図6(A)~
図6(C)、
図7(A)~
図7(C)、
図8(A)及び
図8(B)に示す負極タブ40は、突起41群、又は突起41群及び突起45が配置される面42側から見た平面視で、その軸線40aに対して左右対称となるような形状とされる。
【0042】
図7(A)~
図7(C)、
図8(A)及び
図8(B)の負極タブ40の、円周44上に配置される突起41群の隣接するもの同士の距離は、外装缶10の軸線方向Zと直交する方向Xの面42の幅よりも狭くなるように設定される。
【0043】
図9は負極タブの突起形成について説明する図である。
図9(A)及び
図9(B)にはそれぞれ、突起を形成した負極タブの一例の要部断面図を模式的に示している。
負極タブ40は、例えば、
図9(A)に示すように、負極タブ40の面42とは反対側の面46に凹部47を有し、面42の、凹部47と対応する位置に、凹部47によって押し出された突起形状の凸部を有し、その突起形状の凸部を突起41として備える。例えば、半抜き加工(プロジェクション加工)により、パンチが平板状の負極タブ40の面46側から押し込まれ、それによって反対の面42側に突起形状の凸部(膨出部)が押し出されることで、突起41が形成される。所定の厚さT0の負極タブ40に対する面46側からの押し込み量、面42側への押し出し量が調整され、所定の高さH0の突起41が形成される。
【0044】
尚、負極タブ40に突起41群を配置する場合、このようなプロジェクション加工による突起41群の形成は、複数が一括で行われてもよいし、1つずつ個別に行われてもよい。また、円周44上に突起41群を配置し、その円周44の中心に突起45を配置する場合には、その突起45も同様に、このようなプロジェクション加工によって突起41群と一括で又は個別に形成することができる。
【0045】
また、負極タブ40は、上記のようなプロジェクション加工によらず、例えば、
図9(B)に示すように、平板状の負極タブ40の面42上に突起41を形成したものであってもよい。例えば、平板状の負極タブ40の面42側からのプレス加工や、面42側の切削加工によって、或いは負極タブ40と同種又は異種の金属材料の面42上への堆積によって、突起41を形成することもできる。負極タブ40とは異種の金属材料の面42上への堆積によって突起41を形成する場合、その金属材料には、例えば、外装缶10の内側側面12に対する溶接性が負極タブ40の金属材料よりも良好な金属材料を用いることもできる。
【0046】
尚、負極タブ40に突起41群を配置する場合、このようなプレス加工や切削加工或いは金属材料堆積による突起41群の形成は、複数が一括で行われてもよいし、1つずつ個別に行われてもよい。また、円周44上に突起41群を配置し、その円周44の中心に突起45を配置する場合には、その突起45も同様に、このようなプレス加工や切削加工或いは金属材料堆積によって突起41群と一括で又は個別に形成することができる。
【0047】
例えば、上記
図6(A)~
図6(C)、
図7(A)~
図7(C)、
図8(A)及び
図8(B)に示したような負極タブ40が、外装缶10の湾曲した内側側面12に抵抗溶接される。
【0048】
図10は負極タブと外装缶の湾曲した内側側面との抵抗溶接の第1の例について説明する図である。
図10(A)及び
図10(B)にはそれぞれ、負極タブと外装缶の内側側面との抵抗溶接時の状態の一例の要部平面図を模式的に示している。
【0049】
図10(A)及び
図10(B)には、負極タブ40と外装缶10の内側側面12との抵抗溶接時の状態の一例の、外装缶10の軸線方向Zから見た要部平面図を模式的に示している。
図10(A)及び
図10(B)には便宜上、外装缶10の軸線方向Zから見た平面視で3つの突起41群を図示しているが、これに限定されるものではない。
【0050】
抵抗溶接の際、例えば、
図10(A)に示すように、負極タブ40は、突起41群が配置される面42と、外装缶10の湾曲した内側側面12とが対向するように、設けられる。そして、負極タブ40に溶接用電極棒210の先端部211が当接され、外装缶10の外側(外側側面)に溶接用電極棒220の先端部221が当接される。負極タブ40は、溶接用電極棒210によって外装缶10の内側側面12の側に所定の加圧力で押される。負極タブ40は、溶接用電極棒210の先端部211の湾曲表面が当接されて加圧されることで、当該湾曲表面に沿って湾曲した形状となり得る。また、外装缶10は、溶接用電極棒220によって負極タブ40の側に所定の加圧力で押される。このような状態で溶接用電極棒210と溶接用電極棒220との間に所定の溶接電流が流される。
【0051】
負極タブ40を流れる溶接電流は、負極タブ40の突起41群(又は突起41群及び突起45)に集中的に流れ易い。負極タブ40の突起41群に溶接電流を集中させて発熱させることで、突起41群を設けない場合に比べて、負極タブ40が外装缶10の湾曲した内側側面12に溶接され易くなる。
【0052】
抵抗溶接の進行に伴い、例えば、
図10(B)に示すように、負極タブ40の突起41群の先端部が溶融して外装缶10の湾曲した内側側面12に溶接され、その結果、負極タブ40と外装缶10との間(溶接用電極棒210,220間)の導通抵抗が小さくなると共に、突起41群の高さが低くなる。このようにして、負極タブ40の突起41群と外装缶10の湾曲した内側側面12とが溶接される。
【0053】
尚、ここでは負極タブ40の突起41群と外装缶10の湾曲した内側側面12との抵抗溶接を例にしたが、突起41群が配置される円周44の中心に突起45が配置される場合も同様に、突起45に溶接電流が流れ、突起45と外装缶10の湾曲した内側側面12とが溶接され得る。
【0054】
図7(A)~
図7(C)、
図8(A)及び
図8(B)に示したような、円周44上に配置された突起41群、更にその円周44の中心に配置された突起45を有する負極タブ40の場合、溶接用電極棒210の先端部211の湾曲表面が当接されることで、突起41群、又は突起41群及び突起45が、均一性良く外装缶10の湾曲した内側側面12に加圧されるようになる。例えば、負極タブ40の円周44の基準点43(突起45が配置される位置)に対応する箇所に、溶接用電極棒210の先端部211の湾曲表面の頂点が当接されて加圧されることで、突起41群、又は突起41群及び突起45が、均一性良く外装缶10の湾曲した内側側面12に加圧されるようになる。
【0055】
負極タブ40は、その突起41群、又は突起41群及び突起45と、外装缶10の湾曲した内側側面12との溶接途中及び溶接後には、湾曲した形状となり得る。即ち、負極タブ40は、当接される溶接用電極棒210による加圧力又は溶接後の内側側面12との接合力により、溶接用電極棒210の先端部211の湾曲表面に沿って湾曲した形状、或いは外装缶10の湾曲した内側側面12に沿って湾曲した形状となり得る。例えば、負極タブ40には、このように溶接途中及び溶接後に湾曲した形状となり得るような可撓性を示す材料が用いられる。或いは、負極タブ40は、そのような可撓性を示すように、その厚さが設定される。
【0056】
続いて、上記
図6(A)~
図6(C)、
図7(A)~
図7(C)、
図8(A)及び
図8(B)に示した8種類の負極タブ40について、外装缶10の湾曲した内側側面12との溶接強度(接続強度)及びそのばらつきを評価した結果について述べる。
【0057】
ここでは、
図6(A)~
図6(C)、
図7(A)~
図7(C)、
図8(A)及び
図8(B)に示した8種類の負極タブ40として、厚さT0=0.1mm(
図9(A))のニッケル製の負極タブ40の所定の位置に、高さH0=0.15mm(
図9(A))の突起41群が形成されるようにプロジェクション加工を施したものを用いた。このようにして形成された8種類の負極タブ40の各々の、突起41群、又は突起41群及び突起45が設けられた面42を、ニッケルめっきが施された鉄製の外装缶10の湾曲した内側側面12に対向させた。そして、溶接用電極棒210,220を用い、1.6kAの溶接電流を流し、負極タブ40の突起41群、又は突起41群及び突起45の、外装缶10の湾曲した内側側面12に対する抵抗溶接を行った。溶接した8種類の負極タブ40の各々と外装缶10との引張り強度を測定し、これを溶接強度とした。
【0058】
8種類の負極タブ40の各々について、外装缶10と溶接した10個の試料を作製し、それら10個の試料の溶接強度の平均値及びばらつき(標準偏差σ)を求めた。また、8種類の負極タブ40の各々について、10個の試料の、溶接電流の過剰通電による外装缶10の孔あきの有無を確認した。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
表1に示した試料No.1は、
図6(A)に示した負極タブ40、即ち、突起41群が直線上に2つ配置された負極タブ40を、外装缶10の湾曲した内側側面12に溶接した試料である。
【0060】
表1に示した試料No.2は、
図6(B)に示した負極タブ40、即ち、突起41群が直線上に3つ配置された負極タブ40を、外装缶10の湾曲した内側側面12に溶接した試料である。
【0061】
表1に示した試料No.3は、
図6(C)に示した負極タブ40、即ち、突起41群が直線上に3つ配置されたものが2列、合計6つ配置された負極タブ40を、外装缶10の湾曲した内側側面12に溶接した試料である。
【0062】
表1に示した試料No.4は、
図7(A)に示した負極タブ40、即ち、突起41群が円周44上に3つ配置された負極タブ40を、外装缶10の湾曲した内側側面12に溶接した試料である。
【0063】
表1に示した試料No.5は、
図7(B)に示した負極タブ40、即ち、突起41群が円周44上に4つ配置された負極タブ40を、外装缶10の湾曲した内側側面12に溶接した試料である。
【0064】
表1に示した試料No.6は、
図7(C)に示した負極タブ40、即ち、突起41群が円周44上に6つ配置された負極タブ40を、外装缶10の湾曲した内側側面12に溶接した試料である。
【0065】
表1に示した試料No.7は、
図8(A)に示した負極タブ40、即ち、突起41群が円周44上に3つ、突起45が中心に1つの、合計4つの突起が配置された負極タブ40を、外装缶10の湾曲した内側側面12に溶接した試料である。
【0066】
表1に示した試料No.8は、
図8(B)に示した負極タブ40、即ち、突起41群が円周44上に4つ、突起45が中心に1つの、合計5つの突起が配置された負極タブ40を、外装缶10の湾曲した内側側面12に溶接した試料である。
【0067】
表1より、突起41群が直線上に配置される負極タブ40を用いた試料No.1~3(
図6(A)~
図6(C))に比べ、円周44上に配置される負極タブ40を用いた試料No.4~6(
図7(A)~
図7(C))の方が、外装缶10の湾曲した内側側面12に対する溶接強度のばらつきが小さくなる傾向が認められる。負極タブ40の突起41群の数が等しいがそれらが直線上に配置されるか円周44上に配置されるかの違いのある試料、例えば、試料No.2と試料No.4(
図6(B)と
図7(A))を比較すると、互いの溶接強度の平均値は同程度でも、突起41群が円周44上に配置される負極タブ40を用いた試料No.4の方が溶接強度のばらつきが小さく抑えられる。同様のことが試料No.3と試料No.6(
図6(C)と
図7(C))についても言える。
【0068】
更に、突起41群が直線上に配置される負極タブ40を用いた試料No.1~3のうち、突起41群の数が2つの負極タブ40を用いた試料No.1(
図6(A))では10個の試料中3個の試料で外装缶10の孔あきが認められ、突起41群の数が3つの負極タブ40を用いた試料No.2(
図6(B))では10個の試料中1個の試料で外装缶10の孔あきが認められた。これに対し、突起41群が円周44上に配置される負極タブ40を用いた試料No.4~6では、各々、10個の試料のいずれにも外装缶10の孔あきは認められなかった。
【0069】
また、試料No.7(
図8(A))の負極タブ40は、試料No.4(
図7(A))の負極タブ40の突起41群が配置される円周44の中心(基準点43)に更に突起45を配置したものに相当する。試料No.4と試料No.7とを比較すると、互いの溶接強度の平均値は同程度で、溶接強度のばらつきは、試料No.7の方が試料No.4よりも更に小さく抑えられる。同様に、試料No.8(
図8(B))の負極タブ40は、試料No.5(
図7(B))の負極タブ40の突起41群が配置される円周44の中心(基準点43)に更に突起45を配置したものに相当する。試料No.5と試料No.8とを比較すると、互いの溶接強度の平均値は同程度で、溶接強度のばらつきは、試料No.8の方が試料No.5よりも更に小さく抑えられる。
【0070】
更に、試料No.7及び試料No.8でも、各々、10個の試料で外装缶10の孔あきは認められなかった。
表1の結果から、円周44上に3つ以上の突起41群が配置される負極タブ40を用いると、外装缶10の湾曲した内側側面12と抵抗溶接により溶接する場合にも、溶接強度のばらつきを抑えた安定的な溶接が可能になると言うことができる。負極タブ40の突起41群を円周44上に3つ以上配置することで、溶接用電極棒210,220によって挟まれて外装缶10の湾曲した内側側面12に加圧される際の力が均一化され、それによって溶接強度のばらつきが効果的に抑えられるものと考えられる。
【0071】
また、表1の結果から、負極タブ40の突起41群を円周44上に3つ以上配置すると共に、その円周44の中心(基準点43)にも突起45を配置することで、溶接強度のばらつきを一層抑えることが可能になると言うことができる。
【0072】
突起41群が配置される円周44の中心に突起45が配置される形態の負極タブ40について、更に説明する。
図11は突起群が円周上及びその中心に配置された負極タブの一例について説明する図である。
図11(A)には負極タブの一例の要部平面図を模式的に示し、
図11(B)には負極タブの一例の要部断面図を模式的に示している。尚、
図11(B)は
図11(A)のXI-XI断面図である。
【0073】
図11(A)及び
図11(B)には一例として、円周44上に4つの突起41群が配置され、その円周44の中心に突起45が配置された負極タブ40を示している。
図11(A)及び
図11(B)に示すような負極タブ40は、例えば、半抜き加工により、パンチが平板状の負極タブ40の面46側から押し込まれて凹部47が形成され、それによって反対の面42側に突起形状の凸部群が押し出されることで、その突起形状の凸部群が突起41群及び突起45として形成される。突起41群が配置される円周44の中心に突起45が配置される形態の負極タブ40では、
図11(B)に示すように、その中心の突起45の高さH2を、円周44上の突起41群の高さH1よりも低くすることもできる。
【0074】
図12は負極タブと外装缶の湾曲した内側側面との抵抗溶接の第2の例について説明する図である。
図12(A)及び
図12(B)にはそれぞれ、負極タブと外装缶の内側側面との抵抗溶接時の状態の一例の要部平面図を模式的に示している。
【0075】
図12(A)及び
図12(B)には、上記
図11(A)及び
図11(B)に示したような負極タブ40と外装缶10の内側側面12との抵抗溶接時の状態の一例の、外装缶10の軸線方向Zから見た要部平面図を模式的に示している。
【0076】
抵抗溶接の際、
図12(A)に示すように、負極タブ40は、円周44上の突起41群及び中心の突起45が配置される面42と、外装缶10の湾曲した内側側面12とが対向するように、設けられる。この時、負極タブ40の円周44上の突起41群は、外装缶10の湾曲した内側側面12に接し、それら突起41群よりも高さの低い中心の突起45は、当該内側側面12に接しない状態となり得る。そして、負極タブ40に溶接用電極棒210の先端部211が当接され、外装缶10の外側(外側側面)に溶接用電極棒220の先端部221が当接される。負極タブ40は、溶接用電極棒210によって外装缶10の内側側面12の側に所定の加圧力で押される。負極タブ40は、溶接用電極棒210の先端部211の湾曲表面が当接されて加圧されることで、当該湾曲表面に沿って湾曲した形状となり得る。また、外装缶10は、溶接用電極棒220によって負極タブ40の側に所定の加圧力で押される。このような状態で溶接用電極棒210と溶接用電極棒220との間に所定の溶接電流が流される。
【0077】
負極タブ40を流れる溶接電流は、まず、溶接前の高さが比較的高く外装缶10の湾曲した内側側面12と接している突起41群に集中的に流れる。これにより、
図12(B)に示すように、突起41群の先端部が溶融して外装缶10の湾曲した内側側面12に溶接され、突起41群の高さが低くなっていく。このような突起41群の溶接の進行に伴い、溶接前の高さが比較的低く外装缶10の湾曲した内側側面12と接していなかった或いは十分に接していなかった中心の突起45が、
図12(B)に示すように、当該内側側面12と接するようになる。そして、その中心の突起45にも溶接電流が流れ、突起45が外装缶10の湾曲した内側側面12に溶接されるようになる。円周44上に配置された突起41群及び円周44の中心に配置された突起45を有する負極タブ40では、例えばこのようにして外装缶10の湾曲した内側側面12との溶接が行われる。
【0078】
円周44上に配置された突起41群、及びその円周44の中心に配置された突起45を有する負極タブ40の場合、中心の突起45が内側側面12と接する前は、溶接用電極棒210の先端部211の湾曲表面が当接されることで、円周44上の突起41群が、均一性良く外装缶10の湾曲した内側側面12に加圧されるようになる。中心の突起45が内側側面12と接した後は、そのような溶接用電極棒210の先端部211が当接されることで、突起41群及び突起45が、均一性良く外装缶10の湾曲した内側側面12に加圧されるようになる。例えば、負極タブ40の円周44の基準点43(突起45が配置される位置)に対応する箇所に、溶接用電極棒210の先端部211の湾曲表面の頂点が当接されて加圧されることで、突起41群、又は突起41群及び突起45が、均一性良く外装缶10の湾曲した内側側面12に加圧されるようになる。
【0079】
負極タブ40は、その突起41群及び突起45と、外装缶10の湾曲した内側側面12との溶接途中及び溶接後には、湾曲した形状となり得る。即ち、負極タブ40は、当接される溶接用電極棒210による加圧力又は溶接後の内側側面12との接合力により、溶接用電極棒210の先端部211の湾曲表面に沿って湾曲した形状、或いは外装缶10の湾曲した内側側面12に沿って湾曲した形状となり得る。
【0080】
また、
図13は負極タブと外装缶の湾曲した内側側面との抵抗溶接後の状態の一例について説明する図である。
図13には、上記
図11(A)及び
図11(B)に示したような負極タブ40と外装缶10の内側側面12との抵抗溶接後の状態の一例の、外装缶10の軸線方向Zから見た要部平面図を模式的に示している。
図13には更に、負極タブ40と外装缶10の内側側面12との溶接部分(接続部)について、負極タブ40から内側側面12に向かう方向に見た時の、それらの溶接部分の要部平面図を併せて模式的に示している。
【0081】
突起41群が配置される円周44の中心に突起45が配置され、溶接前の突起41群の高さよりも、溶接前の突起45の高さが低い形態の負極タブ40の場合、
図13に示すように、負極タブ40と外装缶10の内側側面12との溶接後において、突起41群と内側側面12との溶接部分48と、突起45と内側側面12との溶接部分49とが、異なる形状となり得る。
【0082】
例えば、上記のように外装缶10の湾曲した内側側面12に対し、溶接前の高さが比較的高い突起41群の溶接に続いて、溶接前の高さが比較的低い突起45の溶接が進行する場合、突起41群と内側側面12との溶接部分48の溶接面積AR1(接続面積)は、突起45と内側側面12との溶接部分49の溶接面積AR2(接続面積)よりも大きくなる。また、例えば、上記のように外装缶10の湾曲した内側側面12に対し、溶接前の高さが比較的高い突起41群の溶接に続いて、溶接前の高さが比較的低い突起45の溶接が進行する場合、突起41群と内側側面12との溶接部分48の対向する端から端まで(対向する両端間)の最大距離L1は、突起45と内側側面12との溶接部分49の対向する端から端まで(対向する両端間)の最大距離L2よりも長くなる。突起41群と内側側面12との溶接部分48と、突起45と内側側面12との溶接部分49とには、それらの間の高さの相違から、溶接後にこのような形状の差異が生じ得る。
【0083】
尚、突起41群及び突起45の高さが同じ場合でも、外装缶10の内側側面12の湾曲形状、溶接用電極棒210の先端部211の湾曲形状や加圧力によっては、突起41群の溶接部分48と突起45の溶接部分49との間に、この
図13に示したような形状の差異が生じ得る。
【0084】
また、
図14は突起群が円周上及びその中心に配置された負極タブの形状の一例について説明する図である。
図14には負極タブの一例の要部断面図を模式的に示している。
図14には、突起41群が配置される円周44の中心に突起45が配置され、溶接前の突起41群の高さよりも、溶接前の突起45の高さが低い形態の負極タブ40の一例を示している。
図14に示すような負極タブ40は、例えば、半抜き加工により、パンチが平板状の負極タブ40の面46側から押し込まれて凹部47が形成され、それによって反対の面42側に突起形状の凸部群が押し出されることで、その突起形状の凸部群が突起41群及び突起45として形成される。平板状の負極タブ40に対する面46側からの押し込み量(或いは面42側への押し出し量)が調整され、所定の高さH1の突起41群及び所定の高さH2の突起45が形成される。
【0085】
ここで、突起41群及び突起45の形成後の負極タブ40の、突起41群形成部位及び突起45形成部位の全体厚さMは、0.27mmよりも小さくなるように設定されることが好ましい。突起41群及び突起45の形成前(或いは形成後であって突起41群及び突起45が形成されていない部位)の負極タブ40の厚さT0に対する当該全体厚さMの比M/T0は、2.7よりも小さくなるように設定されることが好ましい。
【0086】
即ち、負極タブ40における突起41群形成部位の全体厚さM=T0+H1は、0.27mmよりも小さくなることが好ましく、T0=0.1mmとした場合、厚さT0に対する当該全体厚さMの比M/T0は、2.7よりも小さくなる。同様に、負極タブ40における突起45形成部位の全体厚さM=T0+H2は、0.27mmよりも小さくなることが好ましく、T0=0.1mmとした場合、厚さT0に対する当該全体厚さMの比M/T0は、2.7よりも小さくなる。
【0087】
平板状の負極タブ40の面46側を押し込み、面42側に押し出して突起41群及び突起45を形成する場合、面46側からの押し込み量(或いは面42側への押し出し量)が大きくなると、突起41群及び突起45の部位(特にそれらの中腹部)で部分的に負極タブ40の厚さ(肉厚)が薄くなり得る。突起45よりも高くするために押し込み量を多くして形成する突起41群では、突起45に比べて、このように負極タブ40の厚さが部分的に薄くなることが、より生じ易くなる。
【0088】
上記のように突起41群形成部位及び突起45形成部位の全体厚さMを0.27mmよりも小さくなるように設定する、或いは厚さT0に対する当該全体厚さMの比M/T0を2.7よりも小さくなるように設定すると、このように突起41群及び突起45の形成によって負極タブ40の厚さが部分的に薄くなることの程度を抑えることができるようになる。例えば、突起41群及び突起45のいずれの部位においても、当該部位の厚さT1(肉厚)の、厚さT0に対する差異を20%以下とすることができ、負極タブ40の全体的な厚さ分布(或いは厚さばらつき)を均一化することができるようになる。
【0089】
負極タブ40の全体的な厚さ分布を、厚さT0に対して20%以下といったように均一化することで、抵抗溶接の際、溶接電流及びそれが流れることによる温度上昇が局所に集中することが抑えられる。例えば、突起45に対する突起41群の配置対称性から、溶接電流が2箇所以上に分散され、溶接電流及びそれによる温度上昇の局所集中が抑えられる。このように溶接電流及び温度上昇の局所集中が抑えられることで、爆飛が効果的に抑えられるようになる。
【0090】
尚、突起41群及び突起45の高さが同じ場合でも、このように負極タブ40の全体的な厚さ分布を、厚さT0に対して20%以下といったように均一化することで、同様に爆飛が効果的に抑えられるようになる。
【0091】
続いて、突起41群が配置される円周44の中心に突起45が配置される形態の負極タブ40について、その中心の突起45の高さ、外装缶10の湾曲した内側側面12との溶接強度(接続強度)及びそのばらつきの関係を評価した結果について述べる。
【0092】
ここでは、円周44上に4つの突起41群が配置されその円周44の中心に突起45が配置された負極タブ40と、その中心の突起45の高さを変化させた負極タブ40について、溶接電流を前述の1.6kAから2.7kAに上げて、外装缶10の湾曲した内側側面12に対する抵抗溶接を行った。比較のため、円周44上に4つの突起41群が配置されその円周44の中心に突起45が配置されない負極タブ40について、同様に、溶接電流を2.7kAに上げて、外装缶10の湾曲した内側側面12に対する抵抗溶接を行った。溶接した負極タブ40と外装缶10との引張り強度を測定し、これを溶接強度とした。各負極タブ40について、外装缶10と溶接した10個の試料を作製し、それら10個の試料の溶接強度の平均値及びばらつき(標準偏差σ)を求めた。また、各負極タブ40について、10個の試料の外装缶10の孔あきの有無を確認した。結果を表2に示す。
【0093】
【表2】
表2に示した試料No.5は、
図7(B)に示した負極タブ40、即ち、突起41群が円周44上に4つ配置された負極タブ40を、外装缶10の湾曲した内側側面12に溶接した試料である。この試料No.5は、円周44の中心に突起45が配置されない負極タブ40を用いた比較のための試料である。
【0094】
表2に示した試料No.8は、
図8(B)に示した負極タブ40、即ち、突起41群が円周44上に4つ、突起45が中心に1つの、合計5つの突起が配置された負極タブ40を、外装缶10の湾曲した内側側面12に溶接した試料である。この試料No.8は、円周44上の突起41群の高さ(H0;
図9(A))と中心の突起45の高さが等しい負極タブ40を用いた基準となる試料である。
【0095】
表2に示した試料No.8a~8eも同様に、
図8(B)に示した負極タブ40、即ち、突起41群が円周44上に4つ、突起45が中心に1つの、合計5つの突起が配置された負極タブ40を、外装缶10の湾曲した内側側面12に溶接した試料である。これらの試料No.8a~8eは、円周44上の突起41群の高さ(H1;
図11(B))に対して中心の突起45の高さ(H2;
図11(B))が低くなるように変化させた負極タブ40を用いた試料である。
【0096】
表2において、中心の突起45の高さ[mm]は、
図11(B)に示した高さH2であり、比率[%]は、円周44の突起41の高さH1(又は
図9(A)のH0=0.150mm)に対する中心の突起45の高さH2の比率である。
【0097】
表2より、溶接電流を1.6kAから2.7kAに上げた条件では、円周44の中心に突起45が配置されない負極タブ40を用いた試料No.5において、溶接強度のばらつきが大きくなるのに対し、中心に円周44上の突起41群と同じ高さの突起45が配置される負極タブ40を用いた試料No.8では、溶接強度のばらつきが抑えられるようになる。但し、試料No.8では、溶接電流が上げられると、中心の突起45に溶接電流が集中し、10個の試料中4個の試料で外装缶10(突起45に対応する部分(中心部))の孔あきが発生した。円周44上の突起41群の高さに対する中心の突起45の高さの比率が80%である負極タブ40を用いた試料No.8aでも同様に、溶接強度のばらつきは抑えられる一方、中心の突起45への溶接電流の集中により、10個の試料中2個の試料で外装缶10(突起45に対応する部分(中心部))の孔あきが発生した。
【0098】
これに対し、円周44上の突起41群の高さに対する中心の突起45の高さの比率が60%である負極タブ40を用いた試料No.8bでは、溶接電流を2.7kAに上げた条件でも、溶接強度のばらつきが抑えられ、且つ、中心の突起45への溶接電流の集中による外装缶10の孔あきも抑えられた。円周44上の突起41群の高さに対する中心の突起45の高さの比率が50%である負極タブ40を用いた試料No.8c、高さの比率が30%である負極タブ40を用いた試料No.8d、高さの比率が20%である負極タブ40を用いた試料No.8eについても同様に、溶接強度のばらつき及び外装缶10の孔あきが共に抑えられた。
【0099】
表2の結果から、外装缶10の湾曲した内側側面12と抵抗溶接する負極タブ40として、突起41群が配置される円周44の中心に突起45が配置される負極タブ40を用いる場合、その中心の突起45の高さは、円周44上の突起41群の高さの20%~60%の範囲とすることが好ましい。このように中心の突起45の高さを円周44上の突起41群の高さの20%~60%の範囲とすることで、溶接強度のばらつき及び外装缶10の孔あきを効果的に抑えることが可能になる。抵抗溶接の際に、比較的高い溶接電流の条件が用いられても、負極タブ40の突起45の高さが当該範囲であれば、溶接強度のばらつき及び外装缶10の孔あきを抑えることができる。
【0100】
尚、以上の説明では、突起41群が配置される円周44の中心に突起45が配置され、溶接前の突起41群の高さよりも、溶接前の突起45の高さが低い形態の負極タブ40を用いる場合について、主に、突起41群及び突起45が共に外装缶10の内側側面12と溶接される形態を示したが、突起41群及び突起45のうち、円周44の突起41群は内側側面12と溶接され、中心の突起45は内側側面12と溶接されない形態となることがあってもよい。また、突起41群及び突起45の高さが同じ場合でも、円周44の突起41群は内側側面12と溶接され、中心の突起45は内側側面12と溶接されない形態となることがあってもよい。中心の突起45が内側側面12と溶接されるか否かには、円筒形電池1や溶接用電極棒210の仕様、例えば、外装缶10の内側側面12の湾曲形状、溶接用電極棒210の先端部211の湾曲形状や加圧力が影響し得る。
【0101】
また、以上の説明では、外装缶10を負極として機能させる円筒形電池1において、その外装缶10内に収容される巻取体20の負極層22に接続される負極タブ40を、外装缶10の湾曲した内側側面12に抵抗溶接により接続する場合を例にした。
【0102】
このほか、円筒形電池1は、外装缶10を正極として機能させるような形態とされてもよい。このような形態とする場合には、外装缶10内に収容される巻取体20の正極層21に接続される正極タブに対し、上記負極タブ40について述べたような構成を採用し、それを外装缶10の湾曲した内側側面12に抵抗溶接により接続すればよい。更にこの場合、巻取体20の負極層22に接続される負極タブに対し、上記正極タブ30について述べたような構成を採用し、それを、上記正極端子100に代えて封口体80にガスケット90を介して設けられる負極端子に接続すればよい。上記のような負極タブ40と外装缶10の湾曲した内側側面12との接続技術は、正極タブと外装缶10の湾曲した内側側面12との接続にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 円筒形電池
10 外装缶
10a,40a 軸線
11 底部
12 内側側面
20 巻取体
20a 発電要素
21 正極層
22 負極層
23 セパレータ
23a,23b,42,46 面
24 絶縁テープ
30 正極タブ
40 負極タブ
41,45 突起
43 基準点
44 円周
47 凹部
48,49 溶接部分
50,60 絶縁板
70 非水電解液
80 封口体
90 ガスケット
100 正極端子
210,220 溶接用電極棒
211,221 先端部
AR1,AR2 溶接面積
H0,H1,H2 高さ
L1,L2 最大距離
M 全体厚さ
S0 面
T0,T1 厚さ