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  • 特開-防獣電気柵及び防獣電気柵システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075572
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】防獣電気柵及び防獣電気柵システム
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/24 20110101AFI20230524BHJP
【FI】
A01M29/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188556
(22)【出願日】2021-11-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年10月12日~14日に「農業Week 国際畜産資材EXPO」に展示。令和3年8月30日に「農業Week 国際畜産資材EXPO」のウェブページに掲載。
(71)【出願人】
【識別番号】390019323
【氏名又は名称】小岩金網株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】西村 康志
(72)【発明者】
【氏名】阿部 剛
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121DA02
2B121EA21
2B121FA01
2B121FA07
2B121FA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】遮蔽機能を有するフェンス面内に電撃機能を有する通電線を編み込んだ一体構造により設置が容易で遮蔽効果の高い防獣電気柵及び防獣電気柵システムを提供する。
【解決手段】防獣電気柵1は、地盤に立設した複数の支柱10と、複数の支柱10の間に展設したフェンス面20と、を備え、フェンス面20が、高さ方向に並列した水平線材21と、幅方向に鋸歯状に延在する複数の連結線材22と、を有し、1本の連結線材22が、その上下の頂点で、上下方向に隣り合う2本の水平線材21と連結することで、フェンス面20がトラス形状の金網を構成し、複数の水平線材21が、絶縁線と通電線との組み合わせからなる。本発明の防獣電気柵システムAは、防獣電気柵1と、衝撃電流を生成可能な送電装置A1と、を備え、送電装置A1のプラス極が通電線と電気的に接続し、送電装置A1のマイナス極がアースA3又は他の通電線と電気的に接続する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に立設した複数の支柱と、
前記複数の支柱の間に展設したフェンス面と、を備え、
前記フェンス面が、高さ方向に並列した水平線材であって幅方向に直線状に延在する複数の水平線材と、高さ方向に並列した絶縁性の連結線材であって幅方向に鋸歯状に延在する複数の連結線材と、を有し、
1本の前記連結線材が、その上下の頂点で、上下方向に隣り合う2本の前記水平線材と連結することで、前記フェンス面がトラス形状の金網を構成し、
前記複数の水平線材が、絶縁線と通電線との組み合わせからなることを特徴とする、
防獣電気柵。
【請求項2】
前記連結線材が、その上下の頂点で、前記水平線材にコイル状に巻き付いていることを特徴とする、請求項1に記載の防獣電気柵。
【請求項3】
前記フェンス面の下部を水平方向に折り返して地盤に敷設したガード部を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の防獣電気柵。
【請求項4】
前記通電線が、アルミ被覆鋼線の裸線であり、前記連結線材及び前記絶縁線が、亜鉛メッキ鉄線の樹脂被覆線であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の防獣電気柵。
【請求項5】
前記支柱が、金属製の支柱本体と、前記支柱本体に付設した複数の碍子と、を備え、前記フェンス面を、前記碍子を介して前記支柱本体に取り付けたことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の防獣電気柵。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の防獣電気柵と、
衝撃電流を生成可能な送電装置と、を備え、
前記送電装置のプラス極が前記通電線と電気的に接続し、前記送電装置のマイナス極がアース又は他の前記通電線と電気的に接続することを特徴とする、
防獣電気柵システム。
【請求項7】
前記送電装置がパルス出力式であることを特徴とする、請求項6に記載の防獣電気柵システム。
【請求項8】
前記送電装置と電気的に接続する、太陽光発電装置を備えることを特徴とする、請求項6又は7に記載の防獣電気柵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防獣電気柵及び防獣電気柵システムに関し、特に、遮蔽機能を有するフェンス面内に電撃機能を有する通電線を編み込んだ一体構造により、設置が容易で遮蔽効果の高い、防獣電気柵及び防獣電気柵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
農地等において、イノシシやサル等の害獣が圃場内へ侵入することを防ぐために、防獣電気柵が設置される
特許文献1~4には、地盤に立設した支柱間に、碍子を介して水平方向に電線を配設し、送電装置から電線に電圧を印加する、電気柵が開示されている。
これらの電気柵は、害獣が電線に接触した初回の電気ショックにより接触を恐れる心理的効果を利用して、電気柵を忌避させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-51270号公報
【特許文献2】特開2006-271238号公報
【特許文献3】特開2008-79521号公報
【特許文献4】特開2002-272355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術には以下のような問題点が存在する。
<1>害獣は電気ショックを学習済みであれば電気柵を忌避するが、未学習のイノシシやシカ等の比較的大きな害獣が電気柵に衝突すると、激しい衝撃によって、電線が切断したり、碍子から外れて支柱や地面に触れることで漏電を起こし、電気柵として機能しなくなる。
<2>現場で電線の有効な配設高さを設定して、電線を一本ずつ配線する必要があり、特に遮蔽効果を考慮して電線を密に配設する場合、設置に手間と時間がかかる。
【0005】
本発明の目的は、以上のような問題点を解決するための防獣電気柵及び防獣電気柵システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の防獣電気柵は、地盤に立設した複数の支柱と、複数の支柱の間に展設したフェンス面と、を備え、フェンス面が、高さ方向に並列した水平線材であって幅方向に直線状に延在する複数の水平線材と、高さ方向に並列した絶縁性の連結線材であって幅方向に鋸歯状に延在する複数の連結線材と、を有し、1本の連結線材が、その上下の頂点で、上下方向に隣り合う2本の水平線材と連結することで、フェンス面がトラス形状の金網を構成し、複数の水平線材が、絶縁線と通電線との組み合わせからなることを特徴とする。
【0007】
本発明の防獣電気柵は、連結線材が、その上下の頂点で、水平線材にコイル状に巻き付いていてもよい。
【0008】
本発明の防獣電気柵は、フェンス面の下部を水平方向に折り返して地盤に敷設したガード部を備えていてもよい。
【0009】
本発明の防獣電気柵は、通電線が、アルミ被覆鋼線の裸線であり、連結線材及び絶縁線が、亜鉛メッキ鉄線の樹脂被覆線であってもよい。
【0010】
本発明の防獣電気柵は、支柱が、金属製の支柱本体と、支柱本体に付設した複数の碍子と、を備え、フェンス面を、碍子を介して支柱本体に取り付けてもよい。
【0011】
本発明の防獣電気柵システムは、防獣電気柵と、衝撃電流を生成可能な送電装置と、を備え、送電装置のプラス極が通電線と電気的に接続し、送電装置のマイナス極がアース又は他の通電線と電気的に接続することを特徴とする。
【0012】
本発明の防獣電気柵システムは、送電装置がパルス出力式であってもよい。
【0013】
本発明の防獣電気柵システムは、送電装置と電気的に接続する、太陽光発電装置を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の防獣電気柵及び防獣電気柵システムは、以上の構成を備えるため、次の効果のうち少なくとも一つを備える。
<1>フェンス面の構造材に通電線を編み込んだ一体構造により、フェンス面が物理的な遮蔽機能と電撃機能とを兼ね備える。このため、イノシシやシカ等の比較的大きな害獣が激しい勢いで衝突しても、破損しにくく、電撃機能を維持することができる。
<2>通電線が絶縁線内に一体に編み込まれているため、通電線が導電性のある支柱等の部材に接触しにくく、漏電しにくい。
<3>ロール状に丸めたフェンス面を現場で展開して、支柱間に展設するだけで、フェンス面と通電線を同時に設置できるため、短時間に設置でき施工効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る防獣電気柵システムの説明図。
図2】支柱及びフェンス面の説明図。
図3】フェンス面の巻き取りに係る図面代用写真。
図4】実施例2の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の防獣電気柵及び防獣電気柵システムについて詳細に説明する。
【実施例0017】
[防獣電気柵システム]
<1>全体の構成(図1
本発明の及び防獣電気柵システムAは、屋外において害獣Vの通行を遮断するためのシステムである。
防獣電気柵システムAは、地盤に設置した防獣電気柵1と、送電線A2を介して防獣電気柵1と電気的に接続した送電装置A1と、を少なくとも備える。
本例では、防獣電気柵システムAをイノシシに適用する。ただし対象はイノシシに限らず、他の様々な害獣、例えばシカ、サル、アライグマ、ハクビシン等にも適用することができる。
なお、図1では便宜的に2本の支柱10と1面のフェンス面20からなる防獣電気柵システムAの1単位のみを表示しているが、実際には支柱10及びフェンス面20は幅方向に連続して、敷地を害獣側と保護側とに区画する。
【0018】
<2>防獣電気柵
防獣電気柵1は、通電線をフェンス面内に一体に組み込んだフェンスである。
防獣電気柵1は、地盤に立設した複数の支柱10と、支柱10の間に展設したフェンス面20と、を少なくとも備える。
防獣電気柵1の高さは、対象の害獣Vによって設定する。例えば害獣Vがイノシシの場合には1.5m以上、サルの場合には2m以上、シカの場合には2.5m以上等とすることができる。
【0019】
<3>支柱(図2
支柱10は、フェンス面20を支持する柱材である。
本例では支柱10は、金属製の支柱本体11と、支柱本体11に付設した複数の碍子12と、を備える。
本例では支柱本体11として、溶融亜鉛メッキを施した打ち込み杭と、溶融亜鉛メッキを施した鋼管の組み合わせを採用する。詳細には、打ち込み杭を地盤に打ち込み、打ち込み杭の地上部に鋼管を外挿して支柱本体11を構成する。
碍子12は、支柱本体11の高さ方向に沿って所定間隔で配置し、碍子12を介してフェンス面20を支柱本体11に固定する。
ただし支柱10の構造はこれに限らず、要はフェンス面20を絶縁状態で支持できる構造であればよい。
【0020】
<4>フェンス面(図2
フェンス面20は、遮蔽機能と電撃機能を兼ね備えた面材である。
フェンス面20は、複数の水平線材21を複数の連結線材22で連結した金網からなる。
詳細には、複数の水平線材21を、2本の支柱10間に水平方向に展張し、これを上下方向に所定間隔で並列し、上下方向に隣り合う2本の水平線材21を連続する1本の連結線材22でジグザグに連結する。
全ての水平線材21を連結線材22で連結することで、フェンス面20が、上向き三角形と下向き三角形が連続したトラス形状を構成する。
本例では、フェンス面20の下部を水平方向に折り返してガード部20aを構成し、ガード部20aを地盤の害獣側に敷設する。
フェンス面20は、遮蔽機能を有する金網内に、電撃機能を有する通電線21bを編み込んだ一体構造に一つの特徴を有する。
【0021】
<4.1>水平線材
水平線材21は、支柱10間を遮蔽する線材である。
水平線材21は、絶縁線21aと通電線21bの組み合わせからなる。
本例では水平線材21の内、絶縁線21aを亜鉛メッキ鉄線の樹脂被覆線とし、通電線21bをアルミ被覆鋼線(AS線)の裸線とする。
通電線21bは、対象の害獣の接触位置に対応して設定する。本例では、垂直方向11列の水平線材21の内、イノシシの鼻の高さに対応する、下から3~7列の5本の水平線材21を通電線21bとする。
通電線21bは、端部をフェンス面20の外側に延出して、相互に接続すると共に、後述する送電装置A1のプラス極と電気的に接続する。
【0022】
<4.2>連結線材
連結線材22は、複数の水平線材21を連結する線材である。
連結線材22は、絶縁性を備える線材を鋸歯状に曲折してなる。
本例では連結線材22として、亜鉛メッキ鉄線の樹脂被覆線を採用する。
連結線材22は、鋸歯状の上下の各頂点で水平線材21と連結する。
本例では、水平線材21と連結線材22の連結部において、連結線材22を水平線材21の外周にコイル状に巻き付けて固定する。これによって、水平線材21を絶縁性の連結線材22に確実に固定することができる。
【0023】
<4.3>ガード部
ガード部20aは、害獣Vによる地盤の掘り起こしを予防する構造である。
フェンス面20の前面にガード部20aを設けることで、害獣Vがフェンス面20の下方の地盤を掘り返してフェンス面20を潜り抜けるのを防ぐことができる。
ガード部20aの長さは害獣Vの種類に応じて設定する。
ガード部20aは、アンカーピン等によって地盤に固定する。
なお、害獣Vの脚がガード部20aの絶縁線のみに載っている状態では、害獣Vの身体がフェンス面20の通電線21bに接触しても閉回路が形成されず、通電しないおそれがある。
このため、ガード部20a内に通電線を配設しておき、これをアースと電気的に接続しておくことが望ましい。
【0024】
<4.4>フェンス面の巻き取り(図3
フェンス面20は、ロール状に巻き取って搬送/保管することができる。
詳細には、大面積のフェンス面20を、幅方向に巻き取ってコンパクトな筒状にすることができる。
フェンス面20の素材が亜鉛メッキ鉄線の裸線のみからなる場合、フェンス面20をロール状に巻くと、線材にロール状の強い巻癖がつく。このため、巻癖を解きながら展開するのに車両の牽引等による大きな力が必要となる。
これに対し、本発明のフェンス面20は、大部分が亜鉛メッキ鉄線の樹脂被覆線からなり、線材が柔らかく細いため、ロール状に巻いても巻癖がつきにくい。このため、網目にパイプを差して引っ張る等の方法によって、人力で容易に展開することができる。
【0025】
<5>送電装置
送電装置A1は、フェンス面20の通電線21bへ衝撃電流を送電する装置である。
送電装置A1は、送電線A2を介して、プラス極をフェンス面20の通電線21bと電気的に接続し、マイナス極をアースA3と電気的に接続する。
本例では送電装置A1として、パルス出力式の電柵器を採用する。衝撃電流を数秒間隔のパルス出力とすることで、誤って人間が触れた場合であっても、静電気のような瞬間的なショックを受けるだけですぐに手を離せるため、感電リスクを低減することができる。
また、本例では、送電装置A1の電源として、太陽光パネルとバッテリーを備える、太陽光発電装置A4を採用する。太陽光発電装置A4は、電池の交換や充電が不要であるため、メンテナンス期間を延ばしてランニングコストを削減することができる。
ただし送電装置A1の電源は太陽光発電装置A4に限らず、設置場所の環境に合わせて、充電式バッテリー、乾電池、コンセント等を採用することもできる。
【実施例0026】
[フェンス面にプラス/マイナス両極を接続する例]
実施例1では、フェンス面20の通電線21bにはプラスの電流しか通さない。
従って、害獣Vがサルやアライグマなどの跳躍する動物である場合、地盤に足を触れずにフェンス面20に直接飛びつくと、接触によっても閉回路が形成されないため通電線21bが通電せず、害獣Vが電撃を受けずにフェンス面20を乗り越えてしまうおそれがある。
そこで、本例では、フェンス面20内の複数の通電線21bの内、一部を送電装置A1のプラス極に接続し、他の一部を送電装置A1のマイナス極に接続する(図4)。
プラスの通電線21bとマイナスの通電線21bは、相互に絶縁しつつ、交互に配列するなど、害獣Vが同時に触れやすい配置に設置する。
本例では、害獣Vがフェンス面20に飛びつき、プラスの通電線21bとマイナスの通電線21bに同時に接触すると、そこに閉回路が形成されることで、害獣Vに衝撃電流を与えることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 防獣電気柵
10 支柱
11 支柱本体
12 碍子
20 フェンス面
20a ガード部
21 水平線材
21a 絶縁線
21b 通電線
22 連結線材
A 防獣電気柵システム
A1 送電装置
A2 送電線
A3 アース
A4 太陽光発電装置
V 害獣
図1
図2
図3
図4