(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075601
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】発泡成形体製造装置及び発泡成形体製造装置用スクリュ
(51)【国際特許分類】
B29C 45/50 20060101AFI20230524BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20230524BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20230524BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
B29C45/50
B29C45/00
B29C44/00 D
B29C44/36
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188602
(22)【出願日】2021-11-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】509292076
【氏名又は名称】株式会社 日本油機
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】並木 和也
(72)【発明者】
【氏名】市川 博章
(72)【発明者】
【氏名】田中 郁朗
【テーマコード(参考)】
4F206
4F214
【Fターム(参考)】
4F206AB02
4F206AG20
4F206AR072
4F206AR12
4F206AR13
4F206JA04
4F206JD03
4F206JF04
4F206JF12
4F206JQ17
4F206JQ41
4F214AB02
4F214AG20
4F214UA08
4F214UB01
4F214UD13
4F214UM11
(57)【要約】
【課題】飢餓ゾーン及び送給
ゾーンで輸送される溶融樹脂の流量の低下を防止し、高い生産効率で高品質な発泡成形体を製造できる。
【解決手段】熱可塑性樹脂を可塑化溶融する可塑化ゾーン21、溶融樹脂を飢餓状態にして注入される物理発泡剤を溶融樹脂に溶解する飢餓ゾーン22、物理発泡剤が溶解された溶融樹脂の圧縮と計量を行う送給ゾーン23が上流側から順に設けられるシリンダ2と、シリンダ2に軸周りの回転が自在に内装され、軸部31の外周に螺旋状にフライトが形成されているスクリュ3を備え、送給ゾーン23に対応するスクリュ3のフライトのリード角βが、飢餓ゾーン22に対応するフライトのリード角αよりも小さく設定され、送給ゾーン23に対応するスクリュ3のフライトの条数が、飢餓ゾーン22に対応する複数条のフライトの条数よりも小さく設定される発泡成形体製造装置1。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とする可塑化ゾーン、溶融樹脂を飢餓状態にして注入される物理発泡剤を溶融樹脂に溶解する飢餓ゾーン、物理発泡剤が溶解された溶融樹脂の圧縮と計量を行う送給ゾーンが上流側から順に設けられるシリンダと、
前記シリンダに軸周りの回転が自在に内装され、軸部の外周に螺旋状にフライトが形成されているスクリュとを備え、
前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角よりも小さく設定されると共に、
前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトの条数が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの複数条の前記フライトの条数よりも小さく設定されており、
前記飢餓ゾーンと前記送給ゾーンとの間に徐変ゾーンが設けられ、
前記飢餓ゾーンから前記送給ゾーンまで連続して形成されている前記フライトのリード角が、前記飢餓ゾーンに対応する前記フライトのリード角から前記送給ゾーンに対応する前記フライトのリード角となるように前記徐変ゾーンで徐変されていることを特徴とする発泡成形体製造装置。
【請求項2】
前記飢餓ゾーンに対応する前記フライトのうち、前記送給ゾーンに対応する前記フライトと連続するもの以外のフライトの螺旋進行が前記徐変ゾーンでフライト径を減少しながら終息することを特徴とする請求項1記載の発泡成形体製造装置。
【請求項3】
熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とする可塑化ゾーン、溶融樹脂を飢餓状態にして注入される物理発泡剤を溶融樹脂に溶解する飢餓ゾーン、物理発泡剤が溶解された溶融樹脂の圧縮と計量を行う送給ゾーンが上流側から順に設けられるシリンダと、
前記シリンダに軸周りの回転が自在に内装され、軸部の外周に螺旋状にフライトが形成されているスクリュとを備え、
前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角よりも小さく設定されると共に、
前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトの条数が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの複数条の前記フライトの条数よりも小さく設定されており、
前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角に対して0.50~0.62倍の範囲に設定されていることを特徴とする発泡成形体製造装置。
【請求項4】
熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とする可塑化ゾーン、溶融樹脂を飢餓状態にして注入される物理発泡剤を溶融樹脂に溶解する飢餓ゾーン、物理発泡剤が溶解された溶融樹脂の圧縮と計量を行う送給ゾーンが上流側から順に設けられるシリンダと、
前記シリンダに軸周りの回転が自在に内装され、軸部の外周に螺旋状にフライトが形成されているスクリュとを備え、
前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角よりも小さく設定されると共に、
前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトの条数が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの複数条の前記フライトの条数よりも小さく設定されており、
前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトの条数が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトの条数の1/2以下に設定されていることを特徴とする発泡成形体製造装置。
【請求項5】
熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とする可塑化ゾーン、溶融樹脂を飢餓状態にして注入される物理発泡剤を溶融樹脂に溶解する飢餓ゾーン、物理発泡剤が溶解された溶融樹脂の圧縮と計量を行う送給ゾーンが上流側から順に設けられるシリンダと、
前記シリンダに軸周りの回転が自在に内装され、軸部の外周に螺旋状にフライトが形成されているスクリュとを備え、
前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角よりも小さく設定されると共に、
前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトの条数が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの複数条の前記フライトの条数よりも小さく設定されており、
前記シリンダに前記スクリュが軸方向への進退自在に内装される射出成形装置であり、
前記送給ゾーンに対応する前記フライトと、前記飢餓ゾーンに対応する前記フライトとが、前記スクリュが前記シリンダ内で下流側に最大限前進した状態において、それぞれ前記送給ゾーンに対応して配置される前記フライトと、前記飢餓ゾーンに対応して配置される前記フライトであることを特徴とする発泡成形体製造装置。
【請求項6】
熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とする可塑化ゾーン、溶融樹脂を飢餓状態にして注入される物理発泡剤を溶融樹脂に溶解する飢餓ゾーン、物理発泡剤が溶解された溶融樹脂の圧縮と計量を行う送給ゾーンが上流側から順に設けられるシリンダと、前記シリンダに軸周りの回転が自在に内装され、軸部の外周に螺旋状にフライトが形成されているスクリュとを備える発泡成形体製造装置に用いられるスクリュであって、
前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角よりも小さく設定されると共に、
前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトの条数が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの複数条の前記フライトの条数よりも小さく設定されており、
前記飢餓ゾーンと前記送給ゾーンとの間に徐変ゾーンが設けられ、
前記飢餓ゾーンから前記送給ゾーンまで連続して形成されている前記フライトのリード角が、前記飢餓ゾーンに対応する前記フライトのリード角から前記送給ゾーンに対応する前記フライトのリード角となるように前記徐変ゾーンで徐変されていることを特徴とする発泡成形体製造装置用スクリュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュ式の発泡成形体製造装置及び発泡成形体製造装置用スクリュに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡成形体を製造する製造装置として、シリンダに軸周りの回転と軸方向への進退が自在にスクリュが内装されると共に、熱可塑性樹脂が可塑化溶融されて溶融樹脂となる可塑化ゾーン、溶融樹脂の密度を低下させて飢餓状態にし、加圧注入される物理発泡剤を溶融樹脂に溶解する飢餓ゾーン、物理発泡剤が溶解された溶融樹脂の圧縮と計量を行う送給ゾーンがシリンダの上流側から順に設けられる射出成形機が知られている。このような射出成形機では、シリンダの先端から金型内に物理発泡剤が溶解された溶融樹脂を射出し、金型内で物理発泡剤を気泡化して発泡成形体を得ることができる。
【0003】
この種の射出成形機では、飢餓ゾーンにおいて物理発泡剤を溶融樹脂により均一で効率的に溶解させ、製造される発泡成形体を高品質化することと、飢餓ゾーンの溶融樹脂の圧力を確実に低下させ、十分な物理発泡剤をシリンダ内に注入できることが望まれる。そして、このような要望に応えるため、特許文献1の射出成形機では、飢餓ゾーン及び送給ソーンにおけるスクリュのフライトを多条フライトで形成することにより、物理発泡剤の不活性ガスと溶融樹脂との接触面を増加させ、均一で効率的な溶解を可能にすると共に、多条フライトのリード角を10~45度の範囲に設定することにより、飢餓ゾーン及び送給ソーンの溶融樹脂の流量を大きくして飢餓ゾーンの溶融樹脂の圧力を低下させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の射出成形機のようなスクリュ式の発泡成形体の製造装置では、飢餓ゾーン及び送給ソーンにおけるフライトの条数の増加に応じて、物理発泡剤を溶融樹脂に均一で効率的に溶解し、高品質な発泡成形体を得ることが可能になるものの、このフライトの条数の増加は、フライトピッチを拡大し、フライトのリード角をより鈍角化する。フライトのリード角が鈍角になると、輸送される溶融樹脂の流量が低下するが、これにスクリュの先端側に溜まった溶融樹脂の内圧、抵抗圧が加わると、飢餓ゾーン及び送給ソーンで輸送される溶融樹脂の流量が著しく低下してしまう。
【0006】
輸送される溶融樹脂の流量が著しく低下すると、飢餓ゾーンの溶融樹脂の圧力を十分に低下させて、必要な物理発泡剤をシリンダ内に注入できる飢餓状態を得ることが難しくなる。そのため、可塑化ゾーンからの溶融樹脂の流入量を減らして飢餓ゾーンの溶融樹脂の圧力を低下させ、所要レベルの飢餓状態を生成することが必要になるが、このような可塑化ゾーンからの溶融樹脂の流入量の減少は生産効率の低下を招いてしまう。そのため、高品質の発泡成形体を得ることができると共に、高い生産効率で発泡成形体を製造できる製造装置が求められる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、物理発泡剤を溶融樹脂に均一で効率的に溶解し、高品質な発泡成形体を製造することができると共に、飢餓ゾーン及び送給ソーンで輸送される溶融樹脂の流量の低下を防止し、高い生産効率で発泡成形体を製造することができる発泡成形体製造装置及び発泡成形体製造装置用スクリュを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発泡成形体製造装置は、熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とする可塑化ゾーン、溶融樹脂を飢餓状態にして注入される物理発泡剤を溶融樹脂に溶解する飢餓ゾーン、物理発泡剤が溶解された溶融樹脂の圧縮と計量を行う送給ゾーンが上流側から順に設けられるシリンダと、前記シリンダに軸周りの回転が自在に内装され、軸部の外周に螺旋状にフライトが形成されているスクリュとを備え、前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角よりも小さく設定されると共に、前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトの条数が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの複数条の前記フライトの条数よりも小さく設定されていることを特徴とする。
これによれば、飢餓ゾーンに対応するフライトを複数条或いは多条のフライトとすることにより、飢餓ゾーンで注入される物理発泡剤を溶融樹脂に均一で効率的に溶解し、例えば高倍率な発泡成形体や緻密セル構造の発泡成形体等の高品質な発泡成形体を製造することができる。また、送給ゾーンに対応するフライトのリード角を飢餓ゾーンに対応するフライトのリード角よりも小さく設定すると共に、送給ゾーンに対応するフライトの条数を飢餓ゾーンに対応するフライトの条数よりも小さく設定することにより、飢餓ゾーン及び送給ソーンで輸送される溶融樹脂の流量の低下を防止してスムーズな溶融樹脂の流れを得ることができ、飢餓ゾーンの溶融樹脂の圧力を必要且つ十分に低下させ、適量の物理発泡剤をシリンダ内に注入できる飢餓状態を確実に実現することができる。従って、飢餓ゾーンの溶融樹脂の圧力を低下させるために、可塑化ゾーンからの溶融樹脂の流入量を減らすことも不要となり、計量時間を短縮して高い生産効率で発泡成形体を製造することができる。また、溶融樹脂の送給性向上によって飢餓ゾーンで高い飢餓状態を保つことができるので、物理発泡剤の注入箇所から溶融樹脂が逆流する現象を防止することができ、耐ベントアップ性能を高めることができる。また、溶融樹脂の送給性向上と飢餓ゾーンの複数条或いは多条のフライトにより、効率的に物理発泡剤を溶融樹脂に溶解させることができるため、飢餓ゾーンの長さ、換言すればスクリュやシリンダの全長を短縮することができ、装置の設置場所の省スペース化と装置コストの削減を図ることができる。
【0009】
本発明の発泡成形体製造装置は、前記飢餓ゾーンと前記送給ゾーンとの間に徐変ゾーンが設けられ、前記飢餓ゾーンから前記送給ゾーンまで連続して形成されている前記フライトのリード角が、前記飢餓ゾーンに対応する前記フライトのリード角から前記送給ゾーンに対応する前記フライトのリード角となるように前記徐変ゾーンで徐変されていることを特徴とする。
これによれば、飢餓ゾーンに対応するフライトのリード角から送給ゾーンに対応するフライトのリード角となるように徐変ゾーンで徐変することにより、スクリュ形状の急激な変化によって溶融樹脂の送給の安定性が低下することを抑制できる。従って、溶融樹脂をよりスムーズに送給ゾーンに流し込むことができ、飢餓ゾーン及び送給ソーンで輸送される溶融樹脂の流量の低下をより確実に防止することができる。
【0010】
本発明の発泡成形体製造装置は、前記飢餓ゾーンに対応する前記フライトのうち、前記送給ゾーンに対応する前記フライトと連続するもの以外のフライトの螺旋進行が前記徐変ゾーンでフライト径を減少しながら終息することを特徴とする。
これによれば、送給ゾーンに対応する前記フライト以外のフライトの螺旋進行を徐変ゾーンでフライト径を減少しながら終息させることにより、スクリュ形状の急激な変化によって溶融樹脂の送給の安定性が低下することを抑制できる。従って、溶融樹脂をより一層スムーズに送給ゾーンに流し込むことができ、飢餓ゾーン及び送給ソーンで輸送される溶融樹脂の流量の低下をより一層確実に防止することができる。
【0011】
本発明の発泡成形体製造装置は、前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角に対して0.50~0.62倍の範囲に設定されていることを特徴とする。
これによれば、溶融樹脂のスムーズ且つ適量の流れを維持しつつ、発泡セル径が合格基準内の小ささで且つ発泡セルの破泡が無いか極力少ない高品質の発泡成形体を確実に得ることができる。
【0012】
本発明の発泡成形体製造装置は、前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトの条数が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトの条数の1/2以下に設定されていることを特徴とする。
これによれば、溶融樹脂のスムーズ且つ適量の流れを維持しつつ、発泡セル径が合格基準内の小ささで且つ発泡セルの破泡が無いか極力少ない高品質の発泡成形体を確実に得ることができる。
【0013】
本発明の発泡成形体製造装置は、前記シリンダに前記スクリュが軸方向への進退自在に内装される射出成形装置であり、前記送給ゾーンに対応する前記フライトと、前記飢餓ゾーンに対応する前記フライトとが、前記スクリュが前記シリンダ内で下流側に最大限前進した状態において、それぞれ前記送給ゾーンに対応して配置される前記フライトと、前記飢餓ゾーンに対応して配置される前記フライトであることを特徴とする。
これによれば、物理発泡剤を溶融樹脂に均一で効率的に溶解し、高品質な発泡成形体を射出成形することができると共に、飢餓ゾーン及び送給ソーンで輸送される溶融樹脂の流量の低下を防止し、高い生産効率で発泡成形体を製造することができる射出成形装置を得ることができる。
【0014】
本発明の発泡成形体製造装置用スクリュは、熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とする可塑化ゾーン、溶融樹脂を飢餓状態にして注入される物理発泡剤を溶融樹脂に溶解する飢餓ゾーン、物理発泡剤が溶解された溶融樹脂の圧縮と計量を行う送給ゾーンが上流側から順に設けられるシリンダと、前記シリンダに軸周りの回転が自在に内装され、軸部の外周に螺旋状にフライトが形成されているスクリュとを備える発泡成形体製造装置に用いられるスクリュであって、前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角よりも小さく設定されると共に、前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトの条数が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの複数条の前記フライトの条数よりも小さく設定されていることを特徴とする。
これによれば、飢餓ゾーンに対応するフライトを複数条或いは多条のフライトとすることにより、発泡成形体製造装置において飢餓ゾーンで注入される物理発泡剤を溶融樹脂に均一で効率的に溶解し、例えば高倍率な発泡成形体や緻密セル構造の発泡成形体等の高品質な発泡成形体を製造することができる。また、送給ゾーンに対応するフライトのリード角を飢餓ゾーンに対応するフライトのリード角よりも小さく設定すると共に、送給ゾーンに対応するフライトの条数を飢餓ゾーンに対応するフライトの条数よりも小さく設定することにより、発泡成形体製造装置において飢餓ゾーン及び送給ソーンで輸送される溶融樹脂の流量の低下を防止してスムーズな溶融樹脂の流れを得ることができ、飢餓ゾーンの溶融樹脂の圧力を必要且つ十分に低下させ、適量の物理発泡剤をシリンダ内に注入できる飢餓状態を確実に実現することができる。従って、飢餓ゾーンの溶融樹脂の圧力を低下させるために、可塑化ゾーンからの溶融樹脂の流入量を減らすことも不要となり、計量時間を短縮して高い生産効率で発泡成形体を製造することができる。また、溶融樹脂の送給性向上によって飢餓ゾーンで高い飢餓状態を保つことができるので、発泡成形体製造装置において物理発泡剤の注入箇所から溶融樹脂が逆流する現象を防止することができ、耐ベントアップ性能を高めることができる。また、溶融樹脂の送給性向上と飢餓ゾーンの複数条或いは多条のフライトにより、発泡成形体製造装置において効率的に物理発泡剤を溶融樹脂に溶解させることができるため、飢餓ゾーンの長さ、換言すればスクリュやシリンダの全長を短縮することができ、装置の設置場所の省スペース化と装置コストの削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、物理発泡剤を溶融樹脂に均一で効率的に溶解し、高品質な発泡成形体を製造することができると共に、飢餓ゾーン及び送給ソーンで輸送される溶融樹脂の流量の低下を防止し、高い生産効率で発泡成形体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による実施形態の発泡成形体製造装置を示す構成説明図。
【
図2】実施形態の発泡成形体製造装置におけるスクリュの部分拡大図。
【
図4】実施例と比較例の発泡成形体製造装置で製造した発泡成形体の比較試験の内容を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施形態の発泡成形体製造装置〕
本発明による実施形態の発泡成形体製造装置1は、型締め装置と協働して発泡成形体を製造するスクリュ式の射出成形装置であり、コアバック法で射出成形を行うものである。発泡成形体製造装置1は、
図1~
図3に示すように、外周に設けられるヒータ(図示省略)で内部に供給される熱可塑性樹脂を加熱可能で、ノズル26から溶融樹脂を射出するシリンダ2と、シリンダ2に内装され、軸周りの回転と軸方向への進退が自在に設けられるスクリュ3と、シリンダ2の内部に樹脂ペレットの熱可塑性樹脂を供給するホッパー4と、シリンダ2の内部に物理発泡剤を供給する発泡剤供給機構5を備える。
【0018】
シリンダ2には、熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とする可塑化ゾーン21と、溶融樹脂を飢餓状態にして注入される物理発泡剤を溶融樹脂に溶解する飢餓ゾーン22、物理発泡剤が溶解された溶融樹脂の圧縮と計量を行う送給ゾーン23が、上流側から下流側に向かって順に設けられ、飢餓ゾーン22と送給ゾーン23との間にはスクリュ3のフライトのリード角と条数を変化させる徐変ゾーン24が設けられている。尚、「上流側」と「下流側」はそれぞれシリンダ2内を流れる溶融樹脂の流れ方向の上流側と下流側を意味し、「飢餓状態」は溶融樹脂の密度が低下した状態を意味する。
【0019】
可塑化ゾーン21には、供給ゾーン211と、圧縮ゾーン212と、計量ゾーン213が、上流側から下流側に向かって順に設けられる。供給ゾーン211では、ホッパー4から供給される熱可塑性樹脂の樹脂ペレットをスクリュ3の回転によって射出側である前方に移送すると共に、加熱されるシリンダ2の内壁によって樹脂ペレットに余熱を与える。圧縮ゾーン212では、前方に移送する熱可塑性樹脂を剪断混錬して可塑化溶融し、溶融樹脂を圧縮する。計量ゾーン213では、圧縮した溶融樹脂の密度を均一化して一定に保持する。
【0020】
可塑化ゾーン21に対応する部分に配置されるスクリュ3には、軸部31の外周に1つのフライト32が螺旋状に傾斜して形成されており、シングルフライト構造になっている。また、可塑化ゾーン21と飢餓ゾーン22との間には、飢餓ゾーン22における溶融樹脂の密度を低下させるために、溶融樹脂の下流側へ供給量を制限するシールゾーン25が設けられている。
【0021】
可塑化ゾーン21の供給ゾーン211で供給する熱可塑性樹脂は適用可能な範囲で適宜であり、例えば、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、アモルファスポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)、ポリフェニレンスルファイド、ポリアミドイミド、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の熱可塑性樹脂、及びこれらの複合材料を用いることができ、又、2種類以上を混合して用いてもよい。また、これらの熱可塑性樹脂にガラス繊維、タルク、カーボン繊維、セラミック等の各種無機フィラー、セルロースナノファイバー、セルロース、木粉等の有機フィラーを混練したものを用いることもできる。また、熱可塑性樹脂は、例えば発泡核剤として機能する無機フィラー、有機フィラーや溶融張力を高める添加剤等、必要に応じて各種添加剤を含むものとしてもよい。
【0022】
飢餓ゾーン22には、その上流側の端部付近に発泡剤供給機構5が設けられており、発泡剤供給機構5によって二酸化炭素、窒素のような不活性ガス等の物理発泡剤を所定の圧力に加圧し、飢餓ゾーン22におけるシリンダ2の内部に物理発泡剤を供給する。飢餓ゾーン22では、発泡剤供給機構5によって供給された物理発泡剤が、密度が低下した溶融樹脂と接触し、溶融樹脂に溶解される。また、飢餓ゾーン22に対応するスクリュ3のフライト33a、34a、35a、36a、より詳細にはスクリュ3がシリンダ2内で下流側に最大限前進した状態において、飢餓ゾーン22に対応する部分に配置されるスクリュ3のフライト33a、34a、35a、36aは、軸部31の外周に複数条(図示例では4条)で螺旋状に傾斜して形成されており、多条フライト構造になっている。
【0023】
送給ゾーン23では、物理発泡剤が溶解された溶融樹脂の圧縮し、スクリュ3を後方に移動して計量を行う。尚、射出時にはスクリュ3を前方に移動して、シリンダ2の先端から型締め装置に物理発泡剤が溶解された溶融樹脂を射出する。また、図示例の送給ゾーン23に対応するスクリュ3のフライト33b、34b、より詳細にはスクリュ3がシリンダ2内で下流側に最大限前進した状態において、送給ゾーン23に対応する部分に配置されるスクリュ3のフライト33b、34bは、軸部31の外周に複数条(図示例では2条)で螺旋状に傾斜して形成されており、多条フライト構造になっている。尚、送給ゾーン23に対応する部分に配置されるスクリュ3では、軸部31の外周に1つのフライトが螺旋状に傾斜して形成されるシングルフライト構造としても好適である。
【0024】
送給ゾーン23に対応するスクリュ3のフライト33bのリード角とフライト34bのリード角は同一角度のリード角βに設定され、飢餓ゾーン22に対応するスクリュ3のフライト33aのリード角とフライト34aのリード角は同一角度のリード角αに設定されており、送給ゾーン23に対応するスクリュ3のフライト33b、34bのリード角βは、飢餓ゾーン22に対応するスクリュ3のフライト33a、34aのリード角αよりも小さく設定されている。尚、飢餓ゾーン22に対応するスクリュ3のフライト35a、36aのリード角も、フライト33a、34aのリード角αと同一角度に設定されている。送給ゾーン23に対応するスクリュ3のフライトのリード角βは、飢餓ゾーン22に対応するスクリュ3のフライトのリード角αに対して0.50~0.62倍の範囲に設定すると、溶融樹脂のスムーズ且つ適量の流れを維持しつつ、発泡セル径が所定の合格基準内の小ささで且つ発泡セルの破泡が無いか極力少ない高品質の発泡成形体を確実に得ることができて好適である。
【0025】
また、送給ゾーン23に対応するスクリュ3のフライト33b、34bの条数が、飢餓ゾーン22に対応するスクリュ3の複数条のフライト33a、34a、35a、36aの条数よりも小さく設定されている。本実施形態では、送給ゾーン23に対応するスクリュ3のフライト33b、34bの条数は2条であり、飢餓ゾーン22に対応するスクリュ3の複数条のフライト33a、34a、35a、36aの条数は4条になっている。この送給ゾーン23に対応するスクリュ3のフライトの条数は、飢餓ゾーン22に対応するスクリュ3のフライトの条数の1/2以下となるように設定すると、溶融樹脂のスムーズ且つ適量の流れを維持しつつ、発泡セル径が所定の合格基準内の小ささで且つ発泡セルの破泡が無いか極力少ない高品質の発泡成形体を確実に得ることができて好適である。
【0026】
徐変ゾーン24では、飢餓ゾーン22から送給ゾーン23まで連続して形成されているフライト33、34のリード角が、飢餓ゾーン22に対応するフライト33a、34aのリード角αから送給ゾーン23に対応するフライト33b、34bのリード角βとなるように徐変されている。また、徐変ゾーン24では、飢餓ゾーン22に対応する複数条のフライト33a、34a、35a、36aのうち、送給ゾーン23に対応するフライト33b、34bと連続するフライト33a、34a以外のフライト35a、36aの螺旋進行が、フライト径を減少しながら終息するように形成されている。
【0027】
そして、射出成形装置の発泡成形体製造装置1の樹脂を射出する側には金型を締め付ける型締め装置が設けられ、発泡成形体製造装置1と型締め装置の動作を制御する制御装置が設けられて、製造設備の全体が構成される。尚、実施形態の発泡成形体製造装置1は、スクリュ3を軸方向に移動してコアバックで射出成形を行う製造設備を構成するものとしたが、本発明の発泡成形体製造装置は、射出成形装置に限定されず、例えばシリンダの先端部にダイスが設けられ、スクリュが軸周りの回転が自在に内装されるスクリュ式の押出成形装置等としてもよい。
【0028】
本実施形態の発泡成形体製造装置1は、飢餓ゾーン22に対応するフライトを複数条或いは多条のフライト33、34、35、36とすることにより、飢餓ゾーン22で注入される物理発泡剤を溶融樹脂に均一で効率的に溶解し、例えば高倍率な発泡成形体や緻密セル構造の発泡成形体等の高品質な発泡成形体を製造することができる。
【0029】
また、送給ゾーン23に対応するフライト33b、34bのリード角βを飢餓ゾーン22に対応するフライト33a、34a、35a、36aのリード角αよりも小さく設定すると共に、送給ゾーン23に対応するフライト33b、34bの条数を飢餓ゾーン22に対応するフライト33a、34a、35a、36aの条数よりも小さく設定することにより、飢餓ゾーン22及び送給ソーン23で輸送される溶融樹脂の流量の低下を防止してスムーズな溶融樹脂の流れを得ることができ、飢餓ゾーン22の溶融樹脂の圧力を必要且つ十分に低下させ、適量の物理発泡剤をシリンダ2内に注入できる飢餓状態を確実に実現することができる。従って、飢餓ゾーン22の溶融樹脂の圧力を低下させるために、可塑化ゾーン21からの溶融樹脂の流入量を減らすことも不要となり、計量時間を短縮して高い生産効率で発泡成形体を製造することができる。
【0030】
また、溶融樹脂の送給性向上によって飢餓ゾーン22で高い飢餓状態を保つことができるので、物理発泡剤の注入箇所から溶融樹脂が逆流する現象を防止することができ、耐ベントアップ性能を高めることができる。また、溶融樹脂の送給性向上と飢餓ゾーン22の複数条或いは多条のフライト33a、34a、35a、36aにより、効率的に物理発泡剤を溶融樹脂に溶解させることができるため、飢餓ゾーン22の長さ、換言すればスクリュ3やシリンダ2の全長を短縮することができ、装置の設置場所の省スペース化と装置コストの削減を図ることができる。
【0031】
また、飢餓ゾーン22に対応するフライト33a、34a、35a、36aのリード角αから送給ゾーン23に対応するフライト33b、34bのリード角βとなるように徐変ゾーン24で徐変することにより、又、送給ゾーン23に対応するフライト33b、34b以外のフライト35a、36aの螺旋進行を徐変ゾーン24でフライト径を減少しながら終息させることにより、スクリュ形状の急激な変化によって溶融樹脂の送給の安定性が低下することを抑制できる。従って、溶融樹脂をよりスムーズに送給ゾーン23に流し込むことができ、飢餓ゾーン22及び送給ソーン23で輸送される溶融樹脂の流量の低下をより確実に防止することができる。
【0032】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0033】
例えばスクリュ3の外径或いは基本的なフライト径に相当するシリンダ2の内径は本発明の趣旨の範囲内で適宜設定することが可能であり、例えば10mm~300mm、好ましくは20mm~245mm、より好ましくは30~190mmとするとよい。また、送給ゾーン23のフライトのリード角βと飢餓ゾーン22のフライトのリード角αとの角度差も本発明の趣旨の範囲内で適宜設定することが可能であり、例えば2度~50度、好ましくは10度~40度、より好ましくは15度~25度とするとよい。
【0034】
また、上記実施形態の発泡成形体製造装置1のスクリュ3では、飢餓ゾーン22のフライト条数:4条を送給ゾーン23のフライト条数:2条に減少させる構成としたが、フライト条数の減少数は本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、例えば飢餓ゾーンのフライト条数:6条を送給ゾーンのフライト条数:3条に減少させる構成、或いは飢餓ゾーンのフライト条数:2条を送給ゾーンのフライト条数:1条に減少させる構成としてもよい。これらの条数を減少させる変形例においても、飢餓ゾーンと送給ゾーンとの間に、飢餓ゾーンから送給ゾーンまで連続して形成されているフライトのリード角が、飢餓ゾーンに対応するフライトのリード角から送給ゾーンに対応するフライトのリード角となるように徐変させると共に、飢餓ゾーンに対応するフライトのうち、送給ゾーンに対応するフライトと連続するもの以外のフライトの螺旋進行をフライト径を減少しながら終息する徐変ゾーンを設けると好適である。
【0035】
また、本発明の発泡成形体製造装置では、飢餓ゾーンの内部において、下流側区間に対応するスクリュのフライトのリード角を上流側区間に対応するスクリュのフライトのリード角よりも小さく設定すると共に、下流側区間に対応するスクリュの複数条のフライトの条数を上流側区間に対応するスクリュの複数条のフライトの条数よりも小さく設定する構成としてよく、例えば上流側区間のフライト条数:8条を下流側区間のフライト条数:4条に減少させる構成、或いは第1上流側区間のフライト条数:8条を第1下流側区間のフライト条数:4条に減少させ、更に第1下流側区間に相当する第2上流側区間のフライト条数:4条を第2下流側区間のフライト条数:2条に多段で減少させる構成としてもよい。これらの条数を減少させる変形例においても、上流側区間と下流側区間との間に、上流側区間から下流側区間まで連続して形成されているフライトのリード角が、上流側区間に対応するフライトのリード角から下流側区間に対応するフライトのリード角となるように徐変させると共に、上流側区間に対応するフライトのうち、下流側区間に対応するフライトと連続するもの以外のフライトの螺旋進行をフライト径を減少しながら終息する徐変ゾーンと同様の構成の徐変区間を設けると好適である。
【0036】
〔実施例と比較例〕
次に、本発明による実施例の発泡成形体製造装置と比較例の発泡成形体製造装置で製造した発泡成形体の比較試験について説明する。実施例と比較例の比較試験の熱可塑性樹脂には、ポリプロピレン(出光ライオンコンポジット製、4700G)にタルクを20%混合したものを用いた。使用する発泡成形体製造装置は、型締め装置と協働して発泡成形体を製造するスクリュ式の射出成形装置とし、コアバック法で射出成形を行った。実施例と比較例で成形した試験片の発泡成形体の形状は、正方形の板状であり、各試験片の発泡成形体の厚みは2mmで一定とし、スクリュシリンダの径にあわせて、各試験片の発泡成形品の大きさを200mm角~500mm角の範囲で変更した。
【0037】
実施例と比較例で成形した試験片の発泡成形体の品質に関し、発泡セルサイズ(発泡セルの平均のセル直径)について、ゲート部、中央部および流動末端部における発泡セルの平均セル径が40μm以下である場合と合格とし、又、発泡セルの均一性について、製品を透かして目視で確認し、破泡の有無を確認して評価した(
図4参照)。尚、
図4の発泡セルサイズの欄に関し、○は目視確認による破泡無し、×は目視確認による破泡有りを示している。
【0038】
[実施例1]
実施例1では、シリンダのシリンダ内径(直径)を56mmとし、基本的にこれと同一のフライト径を有するスクリュから構成される射出成形装置を用いた。最大限前進した状態のスクリュの飢餓ゾーン(区間長:355mm)に対応する領域には、全体に亘って4条のフライトが形成され、この4条のフライトのリード角は49度とした。最大限前進した状態のスクリュの送給ゾーン(区間長:195mm)に対応する領域には、2条のフライトが形成され、この2条のフライトのリード角は30度とし、飢餓ゾーンに対応するフライトのリード角の0.61倍とした。また、飢餓ゾーンと送給ゾーンの間には徐変ゾーン(区間長:101mm)を設け、スクリュ形状の急激な変化によって樹脂の安定送給が損なわれないように形状をスムージングした。金型には、厚さ2mmで200mm角の正方形板を形成できるものを用い、窒素ガスによる物理発泡剤の圧力:8Mpa、スクリュ背圧:10MPa、樹脂温度:180~210℃、金型温度:50℃という条件で、可塑化計量後、射出速度50mm/sで射出充填を行った。保圧20Mpaの圧力にて2秒印加した後、金型を4mm開いて3倍のコアバック発泡を行った。
【0039】
実施例1で成形した発泡成形体の成形品について、断面SEMにてセル径を評価したところ、平均セル径は22μmと小さく、合格基準をクリアしており良好であった。また、発泡セルの破泡は観察されなかった。また、同一の試験片の発泡成形体を連続で100ショット成形したが、異常はみられず、ベントアップの生じない溶融樹脂の良好な送給性が得られた。
【0040】
[実施例2]
実施例2では、シリンダのシリンダ内径(直径)を80mmとし、基本的にこれと同一のフライト径を有するスクリュから構成される射出成形装置を用いた。最大限前進した状態のスクリュの飢餓ゾーン(区間長:507mm)に対応する領域には、全体に亘って4条のフライトが形成され、この4条のフライトのリード角は49度とした。最大限前進した状態のスクリュの送給ゾーン(区間長:310mm)に対応する領域には、2条のフライトが形成され、この2条のフライトのリード角は30度とし、飢餓ゾーンに対応するフライトのリード角の0.61倍とした。また、飢餓ゾーンと送給ゾーンの間には徐変ゾーン(区間長:144mm)を設け、スクリュ形状の急激な変化によって樹脂の安定送給が損なわれないように形状をスムージングした。金型には、厚さ2mmで500mm角の正方形板を形成できるものを用い、窒素ガスによる物理発泡剤の圧力:8Mpa、スクリュ背圧:10MPa、樹脂温度:180~210℃、金型温度:50℃という条件で、可塑化計量後、射出速度50mm/sで射出充填を行った。保圧20Mpaの圧力にて2秒印加した後、金型を4mm開いて3倍のコアバック発泡を行った。
【0041】
実施例2で成形した発泡成形体の成形品について、断面SEMにてセル径を評価したところ、平均セル径は25μmと小さく、合格基準をクリアしており良好であった。また、発泡セルの破泡は観察されなかった。また、同一の試験片の発泡成形体を連続で100ショット成形したが、異常はみられず、ベントアップの生じない溶融樹脂の良好な送給性が得られた。
【0042】
[比較例1]
比較例1では、シリンダのシリンダ内径を56mmとし、基本的にこれと同一のフライト径を有するスクリュから構成される射出成形装置を用いた。最大限前進した状態のスクリュの飢餓ゾーン(区間長:456mm)に対応する領域と、送給ゾーン(区間長:195mm)に対応する領域には、間に徐変ゾーンが無く、全体に亘って4条のフライトが形成され、この4条のフライトのリード角は49度とした。それ以外については実施例1と同様とし、コアバック発泡を行った。
【0043】
比較例1で成形した発泡成形品について、断面SEMにてセル径を評価したところ、平均セル径は41μmであり、やや肥大化していた。これは、送給ゾーンのフライトのリード角が実施例1と比較して大きいために溶融樹脂の送給性が低下し、それにより飢餓ゾーンの樹脂量が増加して物理発泡剤の溶解性が低下したためと推測される。また、発泡セルの破泡が目視確認された。
【0044】
[比較例2]
比較例2では、飢餓ゾーンにおける樹脂量を少なくして物理発泡剤の溶解性を上げるために、定量供給装置によって(図示せず)ホッパーから供給する樹脂量を比較例1に対して約25%削減し、それ以外については比較例1と同様の装置構成と条件で、コアバック発泡を行った。比較例2で成形した発泡成形品について、断面SEMにてセル径を評価したところ、平均セル径は26μmと小さく良好であった。ただし、樹脂供給量を制限したことにより比較例1より+5秒計量時間が遅くなってしまった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、樹脂製の発泡成形体を製造する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…発泡成形体製造装置 2…シリンダ 21…可塑化ゾーン 211…供給ゾーン 212…圧縮ゾーン 213…計量ゾーン 22…飢餓ゾーン 23…送給ゾーン 24…徐変ゾーン 25…シールゾーン 26…ノズル 3…スクリュ 31…軸部 32…フライト 33、33a、33b、34、34a、34b、35、35a、36、36a…フライト 4…ホッパー 5…発泡剤供給機構 α、β…フライトのリード角
【手続補正書】
【提出日】2023-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュ式の発泡成形体製造装置及び発泡成形体製造装置用スクリュに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡成形体を製造する製造装置として、シリンダに軸周りの回転と軸方向への進退が自在にスクリュが内装されると共に、熱可塑性樹脂が可塑化溶融されて溶融樹脂となる可塑化ゾーン、溶融樹脂の密度を低下させて飢餓状態にし、加圧注入される物理発泡剤を溶融樹脂に溶解する飢餓ゾーン、物理発泡剤が溶解された溶融樹脂の圧縮と計量を行う送給ゾーンがシリンダの上流側から順に設けられる射出成形機が知られている。このような射出成形機では、シリンダの先端から金型内に物理発泡剤が溶解された溶融樹脂を射出し、金型内で物理発泡剤を気泡化して発泡成形体を得ることができる。
【0003】
この種の射出成形機では、飢餓ゾーンにおいて物理発泡剤を溶融樹脂により均一で効率的に溶解させ、製造される発泡成形体を高品質化することと、飢餓ゾーンの溶融樹脂の圧力を確実に低下させ、十分な物理発泡剤をシリンダ内に注入できることが望まれる。そして、このような要望に応えるため、特許文献1の射出成形機では、飢餓ゾーン及び送給ゾーンにおけるスクリュのフライトを多条フライトで形成することにより、物理発泡剤の不活性ガスと溶融樹脂との接触面を増加させ、均一で効率的な溶解を可能にすると共に、多条フライトのリード角を10~45度の範囲に設定することにより、飢餓ゾーン及び送給ゾーンの溶融樹脂の流量を大きくして飢餓ゾーンの溶融樹脂の圧力を低下させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の射出成形機のようなスクリュ式の発泡成形体の製造装置では、飢餓ゾーン及び送給ゾーンにおけるフライトの条数の増加に応じて、物理発泡剤を溶融樹脂に均一で効率的に溶解し、高品質な発泡成形体を得ることが可能になるものの、このフライトの条数の増加は、フライトピッチを拡大し、フライトのリード角をより鈍角化する。フライトのリード角が鈍角になると、輸送される溶融樹脂の流量が低下するが、これにスクリュの先端側に溜まった溶融樹脂の内圧、抵抗圧が加わると、飢餓ゾーン及び送給ゾーンで輸送される溶融樹脂の流量が著しく低下してしまう。
【0006】
輸送される溶融樹脂の流量が著しく低下すると、飢餓ゾーンの溶融樹脂の圧力を十分に低下させて、必要な物理発泡剤をシリンダ内に注入できる飢餓状態を得ることが難しくなる。そのため、可塑化ゾーンからの溶融樹脂の流入量を減らして飢餓ゾーンの溶融樹脂の圧力を低下させ、所要レベルの飢餓状態を生成することが必要になるが、このような可塑化ゾーンからの溶融樹脂の流入量の減少は生産効率の低下を招いてしまう。そのため、高品質の発泡成形体を得ることができると共に、高い生産効率で発泡成形体を製造できる製造装置が求められる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、物理発泡剤を溶融樹脂に均一で効率的に溶解し、高品質な発泡成形体を製造することができると共に、飢餓ゾーン及び送給ゾーンで輸送される溶融樹脂の流量の低下を防止し、高い生産効率で発泡成形体を製造することができる発泡成形体製造装置及び発泡成形体製造装置用スクリュを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発泡成形体製造装置は、熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とする可塑化ゾーン、溶融樹脂を飢餓状態にして注入される物理発泡剤を溶融樹脂に溶解する飢餓ゾーン、物理発泡剤が溶解された溶融樹脂の圧縮と計量を行う送給ゾーンが上流側から順に設けられるシリンダと、前記シリンダに軸周りの回転が自在に内装され、軸部の外周に螺旋状にフライトが形成されているスクリュとを備え、前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角よりも小さく設定されると共に、前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトの条数が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの複数条の前記フライトの条数よりも小さく設定されていることを特徴とする。
これによれば、飢餓ゾーンに対応するフライトを複数条或いは多条のフライトとすることにより、飢餓ゾーンで注入される物理発泡剤を溶融樹脂に均一で効率的に溶解し、例えば高倍率な発泡成形体や緻密セル構造の発泡成形体等の高品質な発泡成形体を製造することができる。また、送給ゾーンに対応するフライトのリード角を飢餓ゾーンに対応するフライトのリード角よりも小さく設定すると共に、送給ゾーンに対応するフライトの条数を飢餓ゾーンに対応するフライトの条数よりも小さく設定することにより、飢餓ゾーン及び送給ゾーンで輸送される溶融樹脂の流量の低下を防止してスムーズな溶融樹脂の流れを得ることができ、飢餓ゾーンの溶融樹脂の圧力を必要且つ十分に低下させ、適量の物理発泡剤をシリンダ内に注入できる飢餓状態を確実に実現することができる。従って、飢餓ゾーンの溶融樹脂の圧力を低下させるために、可塑化ゾーンからの溶融樹脂の流入量を減らすことも不要となり、計量時間を短縮して高い生産効率で発泡成形体を製造することができる。また、溶融樹脂の送給性向上によって飢餓ゾーンで高い飢餓状態を保つことができるので、物理発泡剤の注入箇所から溶融樹脂が逆流する現象を防止することができ、耐ベントアップ性能を高めることができる。また、溶融樹脂の送給性向上と飢餓ゾーンの複数条或いは多条のフライトにより、効率的に物理発泡剤を溶融樹脂に溶解させることができるため、飢餓ゾーンの長さ、換言すればスクリュやシリンダの全長を短縮することができ、装置の設置場所の省スペース化と装置コストの削減を図ることができる。
【0009】
本発明の発泡成形体製造装置は、前記飢餓ゾーンと前記送給ゾーンとの間に徐変ゾーンが設けられ、前記飢餓ゾーンから前記送給ゾーンまで連続して形成されている前記フライトのリード角が、前記飢餓ゾーンに対応する前記フライトのリード角から前記送給ゾーンに対応する前記フライトのリード角となるように前記徐変ゾーンで徐変されていることを特徴とする。
これによれば、飢餓ゾーンに対応するフライトのリード角から送給ゾーンに対応するフライトのリード角となるように徐変ゾーンで徐変することにより、スクリュ形状の急激な変化によって溶融樹脂の送給の安定性が低下することを抑制できる。従って、溶融樹脂をよりスムーズに送給ゾーンに流し込むことができ、飢餓ゾーン及び送給ゾーンで輸送される溶融樹脂の流量の低下をより確実に防止することができる。
【0010】
本発明の発泡成形体製造装置は、前記飢餓ゾーンに対応する前記フライトのうち、前記送給ゾーンに対応する前記フライトと連続するもの以外のフライトの螺旋進行が前記徐変ゾーンでフライト径を減少しながら終息することを特徴とする。
これによれば、送給ゾーンに対応する前記フライト以外のフライトの螺旋進行を徐変ゾーンでフライト径を減少しながら終息させることにより、スクリュ形状の急激な変化によって溶融樹脂の送給の安定性が低下することを抑制できる。従って、溶融樹脂をより一層スムーズに送給ゾーンに流し込むことができ、飢餓ゾーン及び送給ゾーンで輸送される溶融樹脂の流量の低下をより一層確実に防止することができる。
【0011】
本発明の発泡成形体製造装置は、前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角に対して0.50~0.62倍の範囲に設定されていることを特徴とする。
これによれば、溶融樹脂のスムーズ且つ適量の流れを維持しつつ、発泡セル径が合格基準内の小ささで且つ発泡セルの破泡が無いか極力少ない高品質の発泡成形体を確実に得ることができる。
【0012】
本発明の発泡成形体製造装置は、前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトの条数が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトの条数の1/2以下に設定されていることを特徴とする。
これによれば、溶融樹脂のスムーズ且つ適量の流れを維持しつつ、発泡セル径が合格基準内の小ささで且つ発泡セルの破泡が無いか極力少ない高品質の発泡成形体を確実に得ることができる。
【0013】
本発明の発泡成形体製造装置は、前記シリンダに前記スクリュが軸方向への進退自在に内装される射出成形装置であり、前記送給ゾーンに対応する前記フライトと、前記飢餓ゾーンに対応する前記フライトとが、前記スクリュが前記シリンダ内で下流側に最大限前進した状態において、それぞれ前記送給ゾーンに対応して配置される前記フライトと、前記飢餓ゾーンに対応して配置される前記フライトであることを特徴とする。
これによれば、物理発泡剤を溶融樹脂に均一で効率的に溶解し、高品質な発泡成形体を射出成形することができると共に、飢餓ゾーン及び送給ゾーンで輸送される溶融樹脂の流量の低下を防止し、高い生産効率で発泡成形体を製造することができる射出成形装置を得ることができる。
【0014】
本発明の発泡成形体製造装置用スクリュは、熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とする可塑化ゾーン、溶融樹脂を飢餓状態にして注入される物理発泡剤を溶融樹脂に溶解する飢餓ゾーン、物理発泡剤が溶解された溶融樹脂の圧縮と計量を行う送給ゾーンが上流側から順に設けられるシリンダと、前記シリンダに軸周りの回転が自在に内装され、軸部の外周に螺旋状にフライトが形成されているスクリュとを備える発泡成形体製造装置に用いられるスクリュであって、前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトのリード角よりも小さく設定されると共に、前記送給ゾーンに対応する前記スクリュの前記フライトの条数が、前記飢餓ゾーンに対応する前記スクリュの複数条の前記フライトの条数よりも小さく設定されていることを特徴とする。
これによれば、飢餓ゾーンに対応するフライトを複数条或いは多条のフライトとすることにより、発泡成形体製造装置において飢餓ゾーンで注入される物理発泡剤を溶融樹脂に均一で効率的に溶解し、例えば高倍率な発泡成形体や緻密セル構造の発泡成形体等の高品質な発泡成形体を製造することができる。また、送給ゾーンに対応するフライトのリード角を飢餓ゾーンに対応するフライトのリード角よりも小さく設定すると共に、送給ゾーンに対応するフライトの条数を飢餓ゾーンに対応するフライトの条数よりも小さく設定することにより、発泡成形体製造装置において飢餓ゾーン及び送給ゾーンで輸送される溶融樹脂の流量の低下を防止してスムーズな溶融樹脂の流れを得ることができ、飢餓ゾーンの溶融樹脂の圧力を必要且つ十分に低下させ、適量の物理発泡剤をシリンダ内に注入できる飢餓状態を確実に実現することができる。従って、飢餓ゾーンの溶融樹脂の圧力を低下させるために、可塑化ゾーンからの溶融樹脂の流入量を減らすことも不要となり、計量時間を短縮して高い生産効率で発泡成形体を製造することができる。また、溶融樹脂の送給性向上によって飢餓ゾーンで高い飢餓状態を保つことができるので、発泡成形体製造装置において物理発泡剤の注入箇所から溶融樹脂が逆流する現象を防止することができ、耐ベントアップ性能を高めることができる。また、溶融樹脂の送給性向上と飢餓ゾーンの複数条或いは多条のフライトにより、発泡成形体製造装置において効率的に物理発泡剤を溶融樹脂に溶解させることができるため、飢餓ゾーンの長さ、換言すればスクリュやシリンダの全長を短縮することができ、装置の設置場所の省スペース化と装置コストの削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、物理発泡剤を溶融樹脂に均一で効率的に溶解し、高品質な発泡成形体を製造することができると共に、飢餓ゾーン及び送給ゾーンで輸送される溶融樹脂の流量の低下を防止し、高い生産効率で発泡成形体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による実施形態の発泡成形体製造装置を示す構成説明図。
【
図2】実施形態の発泡成形体製造装置におけるスクリュの部分拡大図。
【
図4】実施例と比較例の発泡成形体製造装置で製造した発泡成形体の比較試験の内容を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施形態の発泡成形体製造装置〕
本発明による実施形態の発泡成形体製造装置1は、型締め装置と協働して発泡成形体を製造するスクリュ式の射出成形装置であり、コアバック法で射出成形を行うものである。発泡成形体製造装置1は、
図1~
図3に示すように、外周に設けられるヒータ(図示省略)で内部に供給される熱可塑性樹脂を加熱可能で、ノズル26から溶融樹脂を射出するシリンダ2と、シリンダ2に内装され、軸周りの回転と軸方向への進退が自在に設けられるスクリュ3と、シリンダ2の内部に樹脂ペレットの熱可塑性樹脂を供給するホッパー4と、シリンダ2の内部に物理発泡剤を供給する発泡剤供給機構5を備える。
【0018】
シリンダ2には、熱可塑性樹脂を可塑化溶融して溶融樹脂とする可塑化ゾーン21と、溶融樹脂を飢餓状態にして注入される物理発泡剤を溶融樹脂に溶解する飢餓ゾーン22、物理発泡剤が溶解された溶融樹脂の圧縮と計量を行う送給ゾーン23が、上流側から下流側に向かって順に設けられ、飢餓ゾーン22と送給ゾーン23との間にはスクリュ3のフライトのリード角と条数を変化させる徐変ゾーン24が設けられている。尚、「上流側」と「下流側」はそれぞれシリンダ2内を流れる溶融樹脂の流れ方向の上流側と下流側を意味し、「飢餓状態」は溶融樹脂の密度が低下した状態を意味する。
【0019】
可塑化ゾーン21には、供給ゾーン211と、圧縮ゾーン212と、計量ゾーン213が、上流側から下流側に向かって順に設けられる。供給ゾーン211では、ホッパー4から供給される熱可塑性樹脂の樹脂ペレットをスクリュ3の回転によって射出側である前方に移送すると共に、加熱されるシリンダ2の内壁によって樹脂ペレットに余熱を与える。圧縮ゾーン212では、前方に移送する熱可塑性樹脂を剪断混錬して可塑化溶融し、溶融樹脂を圧縮する。計量ゾーン213では、圧縮した溶融樹脂の密度を均一化して一定に保持する。
【0020】
可塑化ゾーン21に対応する部分に配置されるスクリュ3には、軸部31の外周に1つのフライト32が螺旋状に傾斜して形成されており、シングルフライト構造になっている。また、可塑化ゾーン21と飢餓ゾーン22との間には、飢餓ゾーン22における溶融樹脂の密度を低下させるために、溶融樹脂の下流側へ供給量を制限するシールゾーン25が設けられている。
【0021】
可塑化ゾーン21の供給ゾーン211で供給する熱可塑性樹脂は適用可能な範囲で適宜であり、例えば、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、アモルファスポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)、ポリフェニレンスルファイド、ポリアミドイミド、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の熱可塑性樹脂、及びこれらの複合材料を用いることができ、又、2種類以上を混合して用いてもよい。また、これらの熱可塑性樹脂にガラス繊維、タルク、カーボン繊維、セラミック等の各種無機フィラー、セルロースナノファイバー、セルロース、木粉等の有機フィラーを混練したものを用いることもできる。また、熱可塑性樹脂は、例えば発泡核剤として機能する無機フィラー、有機フィラーや溶融張力を高める添加剤等、必要に応じて各種添加剤を含むものとしてもよい。
【0022】
飢餓ゾーン22には、その上流側の端部付近に発泡剤供給機構5が設けられており、発泡剤供給機構5によって二酸化炭素、窒素のような不活性ガス等の物理発泡剤を所定の圧力に加圧し、飢餓ゾーン22におけるシリンダ2の内部に物理発泡剤を供給する。飢餓ゾーン22では、発泡剤供給機構5によって供給された物理発泡剤が、密度が低下した溶融樹脂と接触し、溶融樹脂に溶解される。また、飢餓ゾーン22に対応するスクリュ3のフライト33a、34a、35a、36a、より詳細にはスクリュ3がシリンダ2内で下流側に最大限前進した状態において、飢餓ゾーン22に対応する部分に配置されるスクリュ3のフライト33a、34a、35a、36aは、軸部31の外周に複数条(図示例では4条)で螺旋状に傾斜して形成されており、多条フライト構造になっている。
【0023】
送給ゾーン23では、物理発泡剤が溶解された溶融樹脂の圧縮し、スクリュ3を後方に移動して計量を行う。尚、射出時にはスクリュ3を前方に移動して、シリンダ2の先端から型締め装置に物理発泡剤が溶解された溶融樹脂を射出する。また、図示例の送給ゾーン23に対応するスクリュ3のフライト33b、34b、より詳細にはスクリュ3がシリンダ2内で下流側に最大限前進した状態において、送給ゾーン23に対応する部分に配置されるスクリュ3のフライト33b、34bは、軸部31の外周に複数条(図示例では2条)で螺旋状に傾斜して形成されており、多条フライト構造になっている。尚、送給ゾーン23に対応する部分に配置されるスクリュ3では、軸部31の外周に1つのフライトが螺旋状に傾斜して形成されるシングルフライト構造としても好適である。
【0024】
送給ゾーン23に対応するスクリュ3のフライト33bのリード角とフライト34bのリード角は同一角度のリード角βに設定され、飢餓ゾーン22に対応するスクリュ3のフライト33aのリード角とフライト34aのリード角は同一角度のリード角αに設定されており、送給ゾーン23に対応するスクリュ3のフライト33b、34bのリード角βは、飢餓ゾーン22に対応するスクリュ3のフライト33a、34aのリード角αよりも小さく設定されている。尚、飢餓ゾーン22に対応するスクリュ3のフライト35a、36aのリード角も、フライト33a、34aのリード角αと同一角度に設定されている。送給ゾーン23に対応するスクリュ3のフライトのリード角βは、飢餓ゾーン22に対応するスクリュ3のフライトのリード角αに対して0.50~0.62倍の範囲に設定すると、溶融樹脂のスムーズ且つ適量の流れを維持しつつ、発泡セル径が所定の合格基準内の小ささで且つ発泡セルの破泡が無いか極力少ない高品質の発泡成形体を確実に得ることができて好適である。
【0025】
また、送給ゾーン23に対応するスクリュ3のフライト33b、34bの条数が、飢餓ゾーン22に対応するスクリュ3の複数条のフライト33a、34a、35a、36aの条数よりも小さく設定されている。本実施形態では、送給ゾーン23に対応するスクリュ3のフライト33b、34bの条数は2条であり、飢餓ゾーン22に対応するスクリュ3の複数条のフライト33a、34a、35a、36aの条数は4条になっている。この送給ゾーン23に対応するスクリュ3のフライトの条数は、飢餓ゾーン22に対応するスクリュ3のフライトの条数の1/2以下となるように設定すると、溶融樹脂のスムーズ且つ適量の流れを維持しつつ、発泡セル径が所定の合格基準内の小ささで且つ発泡セルの破泡が無いか極力少ない高品質の発泡成形体を確実に得ることができて好適である。
【0026】
徐変ゾーン24では、飢餓ゾーン22から送給ゾーン23まで連続して形成されているフライト33、34のリード角が、飢餓ゾーン22に対応するフライト33a、34aのリード角αから送給ゾーン23に対応するフライト33b、34bのリード角βとなるように徐変されている。また、徐変ゾーン24では、飢餓ゾーン22に対応する複数条のフライト33a、34a、35a、36aのうち、送給ゾーン23に対応するフライト33b、34bと連続するフライト33a、34a以外のフライト35a、36aの螺旋進行が、フライト径を減少しながら終息するように形成されている。
【0027】
そして、射出成形装置の発泡成形体製造装置1の樹脂を射出する側には金型を締め付ける型締め装置が設けられ、発泡成形体製造装置1と型締め装置の動作を制御する制御装置が設けられて、製造設備の全体が構成される。尚、実施形態の発泡成形体製造装置1は、スクリュ3を軸方向に移動してコアバックで射出成形を行う製造設備を構成するものとしたが、本発明の発泡成形体製造装置は、射出成形装置に限定されず、例えばシリンダの先端部にダイスが設けられ、スクリュが軸周りの回転が自在に内装されるスクリュ式の押出成形装置等としてもよい。
【0028】
本実施形態の発泡成形体製造装置1は、飢餓ゾーン22に対応するフライトを複数条或いは多条のフライト33、34、35、36とすることにより、飢餓ゾーン22で注入される物理発泡剤を溶融樹脂に均一で効率的に溶解し、例えば高倍率な発泡成形体や緻密セル構造の発泡成形体等の高品質な発泡成形体を製造することができる。
【0029】
また、送給ゾーン23に対応するフライト33b、34bのリード角βを飢餓ゾーン22に対応するフライト33a、34a、35a、36aのリード角αよりも小さく設定すると共に、送給ゾーン23に対応するフライト33b、34bの条数を飢餓ゾーン22に対応するフライト33a、34a、35a、36aの条数よりも小さく設定することにより、飢餓ゾーン22及び送給ゾーン23で輸送される溶融樹脂の流量の低下を防止してスムーズな溶融樹脂の流れを得ることができ、飢餓ゾーン22の溶融樹脂の圧力を必要且つ十分に低下させ、適量の物理発泡剤をシリンダ2内に注入できる飢餓状態を確実に実現することができる。従って、飢餓ゾーン22の溶融樹脂の圧力を低下させるために、可塑化ゾーン21からの溶融樹脂の流入量を減らすことも不要となり、計量時間を短縮して高い生産効率で発泡成形体を製造することができる。
【0030】
また、溶融樹脂の送給性向上によって飢餓ゾーン22で高い飢餓状態を保つことができるので、物理発泡剤の注入箇所から溶融樹脂が逆流する現象を防止することができ、耐ベントアップ性能を高めることができる。また、溶融樹脂の送給性向上と飢餓ゾーン22の複数条或いは多条のフライト33a、34a、35a、36aにより、効率的に物理発泡剤を溶融樹脂に溶解させることができるため、飢餓ゾーン22の長さ、換言すればスクリュ3やシリンダ2の全長を短縮することができ、装置の設置場所の省スペース化と装置コストの削減を図ることができる。
【0031】
また、飢餓ゾーン22に対応するフライト33a、34a、35a、36aのリード角αから送給ゾーン23に対応するフライト33b、34bのリード角βとなるように徐変ゾーン24で徐変することにより、又、送給ゾーン23に対応するフライト33b、34b以外のフライト35a、36aの螺旋進行を徐変ゾーン24でフライト径を減少しながら終息させることにより、スクリュ形状の急激な変化によって溶融樹脂の送給の安定性が低下することを抑制できる。従って、溶融樹脂をよりスムーズに送給ゾーン23に流し込むことができ、飢餓ゾーン22及び送給ゾーン23で輸送される溶融樹脂の流量の低下をより確実に防止することができる。
【0032】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0033】
例えばスクリュ3の外径或いは基本的なフライト径に相当するシリンダ2の内径は本発明の趣旨の範囲内で適宜設定することが可能であり、例えば10mm~300mm、好ましくは20mm~245mm、より好ましくは30~190mmとするとよい。また、送給ゾーン23のフライトのリード角βと飢餓ゾーン22のフライトのリード角αとの角度差も本発明の趣旨の範囲内で適宜設定することが可能であり、例えば2度~50度、好ましくは10度~40度、より好ましくは15度~25度とするとよい。
【0034】
また、上記実施形態の発泡成形体製造装置1のスクリュ3では、飢餓ゾーン22のフライト条数:4条を送給ゾーン23のフライト条数:2条に減少させる構成としたが、フライト条数の減少数は本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、例えば飢餓ゾーンのフライト条数:6条を送給ゾーンのフライト条数:3条に減少させる構成、或いは飢餓ゾーンのフライト条数:2条を送給ゾーンのフライト条数:1条に減少させる構成としてもよい。これらの条数を減少させる変形例においても、飢餓ゾーンと送給ゾーンとの間に、飢餓ゾーンから送給ゾーンまで連続して形成されているフライトのリード角が、飢餓ゾーンに対応するフライトのリード角から送給ゾーンに対応するフライトのリード角となるように徐変させると共に、飢餓ゾーンに対応するフライトのうち、送給ゾーンに対応するフライトと連続するもの以外のフライトの螺旋進行をフライト径を減少しながら終息する徐変ゾーンを設けると好適である。
【0035】
また、本発明の発泡成形体製造装置では、飢餓ゾーンの内部において、下流側区間に対応するスクリュのフライトのリード角を上流側区間に対応するスクリュのフライトのリード角よりも小さく設定すると共に、下流側区間に対応するスクリュの複数条のフライトの条数を上流側区間に対応するスクリュの複数条のフライトの条数よりも小さく設定する構成としてよく、例えば上流側区間のフライト条数:8条を下流側区間のフライト条数:4条に減少させる構成、或いは第1上流側区間のフライト条数:8条を第1下流側区間のフライト条数:4条に減少させ、更に第1下流側区間に相当する第2上流側区間のフライト条数:4条を第2下流側区間のフライト条数:2条に多段で減少させる構成としてもよい。これらの条数を減少させる変形例においても、上流側区間と下流側区間との間に、上流側区間から下流側区間まで連続して形成されているフライトのリード角が、上流側区間に対応するフライトのリード角から下流側区間に対応するフライトのリード角となるように徐変させると共に、上流側区間に対応するフライトのうち、下流側区間に対応するフライトと連続するもの以外のフライトの螺旋進行をフライト径を減少しながら終息する徐変ゾーンと同様の構成の徐変区間を設けると好適である。
【0036】
〔実施例と比較例〕
次に、本発明による実施例の発泡成形体製造装置と比較例の発泡成形体製造装置で製造した発泡成形体の比較試験について説明する。実施例と比較例の比較試験の熱可塑性樹脂には、ポリプロピレン(出光ライオンコンポジット製、4700G)にタルクを20%混合したものを用いた。使用する発泡成形体製造装置は、型締め装置と協働して発泡成形体を製造するスクリュ式の射出成形装置とし、コアバック法で射出成形を行った。実施例と比較例で成形した試験片の発泡成形体の形状は、正方形の板状であり、各試験片の発泡成形体の厚みは2mmで一定とし、スクリュシリンダの径にあわせて、各試験片の発泡成形品の大きさを200mm角~500mm角の範囲で変更した。
【0037】
実施例と比較例で成形した試験片の発泡成形体の品質に関し、発泡セルサイズ(発泡セルの平均のセル直径)について、ゲート部、中央部および流動末端部における発泡セルの平均セル径が40μm以下である場合と合格とし、又、発泡セルの均一性について、製品を透かして目視で確認し、破泡の有無を確認して評価した(
図4参照)。尚、
図4の発泡セルサイズの欄に関し、○は目視確認による破泡無し、×は目視確認による破泡有りを示している。
【0038】
[実施例1]
実施例1では、シリンダのシリンダ内径(直径)を56mmとし、基本的にこれと同一のフライト径を有するスクリュから構成される射出成形装置を用いた。最大限前進した状態のスクリュの飢餓ゾーン(区間長:355mm)に対応する領域には、全体に亘って4条のフライトが形成され、この4条のフライトのリード角は49度とした。最大限前進した状態のスクリュの送給ゾーン(区間長:195mm)に対応する領域には、2条のフライトが形成され、この2条のフライトのリード角は30度とし、飢餓ゾーンに対応するフライトのリード角の0.61倍とした。また、飢餓ゾーンと送給ゾーンの間には徐変ゾーン(区間長:101mm)を設け、スクリュ形状の急激な変化によって樹脂の安定送給が損なわれないように形状をスムージングした。金型には、厚さ2mmで200mm角の正方形板を形成できるものを用い、窒素ガスによる物理発泡剤の圧力:8Mpa、スクリュ背圧:10MPa、樹脂温度:180~210℃、金型温度:50℃という条件で、可塑化計量後、射出速度50mm/sで射出充填を行った。保圧20Mpaの圧力にて2秒印加した後、金型を4mm開いて3倍のコアバック発泡を行った。
【0039】
実施例1で成形した発泡成形体の成形品について、断面SEMにてセル径を評価したところ、平均セル径は22μmと小さく、合格基準をクリアしており良好であった。また、発泡セルの破泡は観察されなかった。また、同一の試験片の発泡成形体を連続で100ショット成形したが、異常はみられず、ベントアップの生じない溶融樹脂の良好な送給性が得られた。
【0040】
[実施例2]
実施例2では、シリンダのシリンダ内径(直径)を80mmとし、基本的にこれと同一のフライト径を有するスクリュから構成される射出成形装置を用いた。最大限前進した状態のスクリュの飢餓ゾーン(区間長:507mm)に対応する領域には、全体に亘って4条のフライトが形成され、この4条のフライトのリード角は49度とした。最大限前進した状態のスクリュの送給ゾーン(区間長:310mm)に対応する領域には、2条のフライトが形成され、この2条のフライトのリード角は30度とし、飢餓ゾーンに対応するフライトのリード角の0.61倍とした。また、飢餓ゾーンと送給ゾーンの間には徐変ゾーン(区間長:144mm)を設け、スクリュ形状の急激な変化によって樹脂の安定送給が損なわれないように形状をスムージングした。金型には、厚さ2mmで500mm角の正方形板を形成できるものを用い、窒素ガスによる物理発泡剤の圧力:8Mpa、スクリュ背圧:10MPa、樹脂温度:180~210℃、金型温度:50℃という条件で、可塑化計量後、射出速度50mm/sで射出充填を行った。保圧20Mpaの圧力にて2秒印加した後、金型を4mm開いて3倍のコアバック発泡を行った。
【0041】
実施例2で成形した発泡成形体の成形品について、断面SEMにてセル径を評価したところ、平均セル径は25μmと小さく、合格基準をクリアしており良好であった。また、発泡セルの破泡は観察されなかった。また、同一の試験片の発泡成形体を連続で100ショット成形したが、異常はみられず、ベントアップの生じない溶融樹脂の良好な送給性が得られた。
【0042】
[比較例1]
比較例1では、シリンダのシリンダ内径を56mmとし、基本的にこれと同一のフライト径を有するスクリュから構成される射出成形装置を用いた。最大限前進した状態のスクリュの飢餓ゾーン(区間長:456mm)に対応する領域と、送給ゾーン(区間長:195mm)に対応する領域には、間に徐変ゾーンが無く、全体に亘って4条のフライトが形成され、この4条のフライトのリード角は49度とした。それ以外については実施例1と同様とし、コアバック発泡を行った。
【0043】
比較例1で成形した発泡成形品について、断面SEMにてセル径を評価したところ、平均セル径は41μmであり、やや肥大化していた。これは、送給ゾーンのフライトのリード角が実施例1と比較して大きいために溶融樹脂の送給性が低下し、それにより飢餓ゾーンの樹脂量が増加して物理発泡剤の溶解性が低下したためと推測される。また、発泡セルの破泡が目視確認された。
【0044】
[比較例2]
比較例2では、飢餓ゾーンにおける樹脂量を少なくして物理発泡剤の溶解性を上げるために、定量供給装置によって(図示せず)ホッパーから供給する樹脂量を比較例1に対して約25%削減し、それ以外については比較例1と同様の装置構成と条件で、コアバック発泡を行った。比較例2で成形した発泡成形品について、断面SEMにてセル径を評価したところ、平均セル径は26μmと小さく良好であった。ただし、樹脂供給量を制限したことにより比較例1より+5秒計量時間が遅くなってしまった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、樹脂製の発泡成形体を製造する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…発泡成形体製造装置 2…シリンダ 21…可塑化ゾーン 211…供給ゾーン 212…圧縮ゾーン 213…計量ゾーン 22…飢餓ゾーン 23…送給ゾーン 24…徐変ゾーン 25…シールゾーン 26…ノズル 3…スクリュ 31…軸部 32…フライト 33、33a、33b、34、34a、34b、35、35a、36、36a…フライト 4…ホッパー 5…発泡剤供給機構 α、β…フライトのリード角