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特開2023-75627アンギュラ玉軸受用保持器およびアンギュラ玉軸受
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075627
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】アンギュラ玉軸受用保持器およびアンギュラ玉軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/41 20060101AFI20230524BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20230524BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
F16C33/41
F16C19/16
F16C19/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188643
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪八重 順也
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA21
3J701BA22
3J701BA25
3J701DA14
3J701EA31
3J701EA36
3J701EA37
3J701EA38
3J701FA60
3J701GA03
(57)【要約】
【課題】外輪軌道と内輪軌道との間に配置される前の玉をポケット内に保持する力を確保しやすい、アンギュラ玉軸受用保持器およびアンギュラ玉軸受を提供する。
【解決手段】保持器5は、円環状のリム部22と、リム部22の円周方向複数箇所から軸方向一方側にそれぞれ伸長し、かつ、それぞれが凹曲面状の円周方向側面を有する複数の柱部23と、それぞれが複数の柱部23のうちの円周方向に隣り合う2つの柱部23とリム部22とにより三方が囲まれた、玉4を保持するための複数のポケット24とを備える。複数の柱部23のそれぞれは、径方向外側面の軸方向一方側部分に、軸方向一方側に向かうにしたがって径方向内側に向かう方向に傾斜した傾斜面部26、および、傾斜面部26よりも径方向内側に、軸方向一方側および円周方向両側に開口し、円周方向に隣り合う2つのポケット24を連通する切り欠き27を有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状のリム部と、
前記リム部の円周方向複数箇所から軸方向一方側にそれぞれ伸長し、かつ、それぞれが凹曲面状の円周方向側面を有する複数の柱部と、
それぞれが前記複数の柱部のうちの円周方向に隣り合う2つの柱部と前記リム部とにより三方が囲まれた、玉を保持するための複数のポケットと、
を備え、
前記複数の柱部のそれぞれは、径方向外側面の軸方向一方側部分に、軸方向一方側に向かうにしたがって径方向内側に向かう方向に傾斜した傾斜面部、および、前記傾斜面部よりも径方向内側に、軸方向一方側および円周方向両側に開口し、円周方向に隣り合う2つの前記ポケットを連通する切り欠きを有する、
アンギュラ玉軸受用保持器。
【請求項2】
前記傾斜面部が、平坦面により構成されており、該平坦面は、軸方向一方側から見て、前記リム部の中心軸から延び、かつ、前記傾斜面部を備えた前記柱部の円周方向中央部を通過する放射直線に対して直交する方向に伸長する形状を有する、請求項1に記載のアンギュラ玉軸受用保持器。
【請求項3】
内周面にアンギュラ型の外輪軌道を有する外方部材と、
外周面にアンギュラ型の内輪軌道を有する内方部材と、
前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に配置された複数個の玉と、
前記玉を転動自在に保持するための保持器と、を備え、
前記保持器が、請求項1または2に記載のアンギュラ玉軸受用保持器である、
アンギュラ玉軸受。
【請求項4】
自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持するためのハブユニット軸受として用いられる、請求項3に記載のアンギュラ玉軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンギュラ玉軸受用保持器、および、アンギュラ玉軸受用保持器を備えたアンギュラ玉軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用のハブユニット軸受などに用いられるアンギュラ玉軸受では、外輪軌道と内輪軌道との間に配置された複数個の玉を、冠形のアンギュラ玉軸受用保持器を用いて、円周方向等間隔に配置し、かつ、転動自在に保持している。
【0003】
図10図13は、特開2017-125560号公報(特許文献1)に記載された冠形のアンギュラ玉軸受用保持器である、保持器100を示している。保持器100は、円環状のリム部101と、リム部101の円周方向複数箇所から軸方向一方側にそれぞれ伸長し、かつ、それぞれが凹曲面状の円周方向側面を有する複数の柱部102と、それぞれが複数の柱部102のうちの円周方向に隣り合う2つの柱部102とリム部101とにより三方が囲まれた、玉を保持するための複数のポケット103とを備える。
【0004】
アンギュラ玉軸受などのラジアル玉軸受においては、基本動定格荷重Crを表す下記の式(1)を利用して、軸受の選定に必要な定格荷重を求めることが行われている。
Cr=b(icоsα)0.72/3Dw1.8 ・・・(1)
ここで、式(1)中、bおよびfは、軸受の材料、形状、製造品質で定まる定数であり、iは、1個の軸受内の玉の列数であり、αは、接触角であり、Zは、1列に含まれる玉の個数であり、Dwは、玉の直径である。式(1)から、1列に含まれる玉数(Z)を増やすことで、基本動定格荷重Crを向上させることが可能になり、軸受寿命を延長できることがわかる。
【0005】
保持器100では、複数の柱部102のそれぞれは、軸方向一方側の端部から軸方向中間部にわたる範囲に、軸方向一方側、円周方向両側、および径方向内側に開口し、円周方向に隣り合う2つのポケット103を連通する切り欠き104を有する。複数の柱部102のそれぞれの軸方向一方側部分、すなわち切り欠き104の径方向外側に位置する部分の内径は、リム部101の外径よりも大きい。このような保持器100によれば、切り欠き104の存在に基づいて、円周方向に隣り合う2つの玉の間の距離を縮めることができるため、1列に含まれる玉数を増やしやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-125560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2017-125560号公報に記載された冠形の保持器100は、アンギュラ玉軸受の組立作業の作業性を確保する面からは、改良の余地がある。この理由について、以下に説明する。
【0008】
保持器100を備えたアンギュラ玉軸受を組み立てる際には、保持器100の複数のポケット103内に玉を保持した後、これらの玉を、外方部材の内周面に備えられた外輪軌道と、内方部材の外周面に備えられた内輪軌道との間に配置する作業を行う。このため、これらの玉が、外輪軌道と内輪軌道との間に配置される前にポケット103から脱落しないようにする必要がある。
【0009】
具体的には、保持器100のように、柱部102の軸方向一方側の端部から軸方向中間部にわたる範囲に切り欠き104を有する構造では、リム部101と、円周方向に隣り合う2つの柱部102のそれぞれの軸方向一方側部分、すなわち切り欠き104の径方向外側に位置する部分とにより、ポケット103内の玉をしっかりと抱きかかえるように保持することによって、玉がポケット103から脱落しないようにする必要がある。このため、柱部102のうち切り欠き104の径方向外側に位置する部分の形状、特に、柱部102の軸方向一方側の端部のうち、径方向外端部における円周方向両側の端部に位置する2つの尖部105の形状が正しく成形されていることが重要となる。
【0010】
しかしながら、図10および図11に示すように、柱部102の軸方向一方側部分は、柱部102の軸方向他方側部分に比べて肉厚が大きく、しかも、軸方向に関する肉厚の変化、および、径方向に関する肉厚の変化が大きい。このため、保持器100を射出成形により造る際に、柱部102の軸方向一方側部分に、成形収縮に伴う好ましくない変形であるヒケが生じやすい。柱部102の軸方向一方側部分にヒケが生じると、該柱部102の2つの尖部105は、軸方向に関して一方側、かつ、径方向に関して外側に向けて倒れるように変形、すなわち、ポケット103内に保持される玉の転動面から離れるように変形するため、ポケット103内に玉を保持する力が低くなる。したがって、アンギュラ玉軸受の組立作業の作業性を確保する面から、改良の余地がある。
【0011】
本発明は、外輪軌道と内輪軌道との間に配置される前の玉をポケット内に保持する力を確保しやすい、アンギュラ玉軸受用保持器およびアンギュラ玉軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様のアンギュラ玉軸受用保持器は、円環状のリム部と、前記リム部の円周方向複数箇所から軸方向一方側にそれぞれ伸長し、かつ、それぞれが凹曲面状の円周方向側面を有する複数の柱部と、それぞれが前記複数の柱部のうちの円周方向に隣り合う2つの柱部と前記リム部とにより三方が囲まれた、玉を保持するための複数のポケットとを備える。
【0013】
前記複数の柱部のそれぞれは、径方向外側面の軸方向一方側部分に、軸方向一方側に向かうにしたがって径方向内側に向かう方向に傾斜した傾斜面部、および、前記傾斜面部よりも径方向内側に、軸方向一方側および円周方向両側に開口し、円周方向に隣り合う2つの前記ポケットを連通する切り欠きを有する。
【0014】
本発明の一態様のアンギュラ玉軸受用保持器では、前記傾斜面部が、平坦面により構成されており、該平坦面は、軸方向一方側から見て、前記リム部の中心軸から延び、かつ、前記傾斜面部を備えた前記柱部の円周方向中央部を通過する放射直線に対して直交する方向に伸長する形状を有する。
【0015】
本発明の一態様のアンギュラ玉軸受は、内周面にアンギュラ型の外輪軌道を有する外方部材と、外周面にアンギュラ型の内輪軌道を有する内方部材と、前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に配置された複数個の玉と、前記玉を転動自在に保持するための保持器とを備え、前記保持器が、本発明のアンギュラ玉軸受用保持器である。
【0016】
本発明の一態様のアンギュラ玉軸受は、自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持するためのハブユニット軸受として用いられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様のアンギュラ玉軸受用保持器およびアンギュラ玉軸受によれば、外輪軌道と内輪軌道との間に配置される前の玉をポケット内に保持する力を高く確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施の形態の第1例のハブユニット軸受の断面図である。
図2図2は、第1例のアンギュラ玉軸受用保持器を軸方向一方側から見た斜視図である。
図3図3は、第1例のアンギュラ玉軸受用保持器の円周方向一部分を軸方向一方側かつ径方向内側から見た斜視図である。
図4図4は、第1例のアンギュラ玉軸受用保持器を軸方向一方側から見た図である。
図5図5は、図4の上端部の拡大図である。
図6図6は、図4のA-A断面図である。
図7図7は、図4のB-B断面図である。
図8図8は、第1例のアンギュラ玉軸受用保持器を射出成形により造る際に用いる金型装置の部分断面図である。
図9図9は、本発明の実施の形態の第2例に関する、図5に相当する図である。
図10図10は、従来のアンギュラ玉軸受用保持器を軸方向一方側から見た斜視図である。
図11図11は、従来のアンギュラ玉軸受用保持器の円周方向一部分を軸方向一方側かつ径方向内側から見た斜視図である。
図12図12は、従来のアンギュラ玉軸受用保持器を軸方向一方側から見た図である。
図13図13は、図12のC-C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1例]
本発明の実施の形態の第1例について、図1図8を用いて説明する。
【0020】
本例は、本発明のアンギュラ玉軸受用保持器を備えるアンギュラ玉軸受を、自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持するためのハブユニット軸受に適用した例である。本発明のアンギュラ玉軸受は、ハブユニット軸受に限らず、各種機械装置に組み込まれる単列または複列のアンギュラ玉軸受に適用することもできる。
【0021】
ハブユニット軸受1は、駆動輪用であり、外方部材である外輪2と、内方部材であるハブ3と、複数個の玉4と、それぞれがアンギュラ玉軸受用保持器である、2つの保持器5とを備える。本発明のアンギュラ玉軸受は、駆動輪用のハブユニット軸受に限らず、従動輪用のハブユニット軸受に適用することもできる。
【0022】
ハブユニット軸受1に関して、軸方向外側は、車両への組付け状態で車両の幅方向外側となる図1の左側であり、軸方向内側は、車両への組付け状態で車両の幅方向中央側となる図1の右側である。
【0023】
外輪2は、内周面に、それぞれがアンギュラ型の外輪軌道である、複列の外輪軌道6a、6bを有する。外輪2は、内周面のうち、軸方向内側の外輪軌道6aの軸方向内側に隣接する部分、および、軸方向外側の外輪軌道6bの軸方向外側に隣接する部分に、大径溝肩部7を有する。外輪2は、軸方向中間部に、径方向外側に向けて突出した静止フランジ8を有する。静止フランジ8は、径方向中間部の円周方向複数箇所に、軸方向に貫通する支持孔9を有する。
【0024】
本例では、支持孔9は、ねじ孔により構成されている。外輪2は、懸架装置のナックルに備えられた通孔を挿通した支持ボルトを、静止フランジ8の支持孔9に軸方向内側から螺合することで、懸架装置に対し支持固定され、車輪が回転する際にも回転しない。
【0025】
ハブ3は、外周面に、それぞれがアンギュラ型の内輪軌道である、複列の内輪軌道10a、10bを有し、外輪2の径方向内側に外輪2と同軸に配置される。ハブ3は、外輪2よりも軸方向外側に位置する部分に、径方向外側に向けて突出した回転フランジ11、および、軸方向外側の端部に、円筒状のパイロット部12を有する。
【0026】
回転フランジ11は、径方向中間部の円周方向複数箇所に、軸方向に貫通する取付孔13を有する。取付孔13のそれぞれには、ディスクやドラムなどの制動用回転体、および、車輪を構成するホイールを、回転フランジ11に対し結合固定するためのスタッド14が圧入によりセレーション嵌合されている。すなわち、本例では、取付孔13は、圧入孔により構成されている。
【0027】
制動用回転体およびホイールは、それぞれの中心部に備えられた中心孔にパイロット部12を挿通し、かつ、それぞれの径方向中間部の円周方向複数箇所に備えられた通孔に、スタッド14を挿通した状態で、スタッド14の先端部にハブナットを螺合することにより、回転フランジ11に結合固定される。
【0028】
回転フランジの取付孔を、ねじ孔により構成することもできる。この場合には、制動用回転体に備えられた通孔と、ホイールに備えられた通孔とを挿通したハブボルトを、取付孔に螺合することにより、制動用回転体および車輪を回転フランジに結合固定する。
【0029】
本例では、ハブ3は、内輪15とハブ輪16とを組み合わせてなる。
【0030】
内輪15は、外周面に、複列の内輪軌道10a、10bのうちの軸方向内側の内輪軌道10aを有する。
【0031】
ハブ輪16は、外周面の軸方向中間部に、複列の内輪軌道10a、10bのうちの軸方向外側の内輪軌道10bを有する。ハブ輪16は、軸方向外側の内輪軌道10bよりも軸方向外側に位置する部分に回転フランジ11、および、軸方向外側の端部にパイロット部12を有する。
【0032】
ハブ輪16は、軸方向外側の内輪軌道10bよりも軸方向内側に位置する部分に、軸方向外側に隣接する部分よりも外径が小さく、内輪15が外嵌される小径筒部17を有する。ハブ輪16は、小径筒部17の軸方向内側の端部から径方向外側に向けて折れ曲がり、内輪15の軸方向内側の端面を押え付けるかしめ部18を有する。すなわち、本例のハブ3は、ハブ輪16の小径筒部17に内輪15を外嵌した状態で、小径筒部17の軸方向外側の端部に存在する段差面19と、かしめ部18との間で内輪15を軸方向両側から挟持して、内輪15とハブ輪16とを結合することにより構成される。内輪は、ハブ輪に対し、ナットや圧入により結合することもできる。
【0033】
玉4は、複列の外輪軌道6a、6bと複列の内輪軌道10a、10bとの間に、それぞれの列ごとに複数個ずつ、それぞれの列の保持器5により保持された状態で転動自在に配置されている。これにより、ハブ3は、外輪2の径方向内側に回転自在に支持される。
【0034】
本例のハブユニット軸受1は、軸方向内側列の玉4のピッチ円直径と、軸方向外側列の玉4のピッチ円直径とが等しい、等径PCD型の構造を有する。ただし、本発明は、軸方向内側列の玉のピッチ円直径が、軸方向外側列の玉のピッチ円直径よりも小さい、あるいは、大きい、異径PCD型のハブユニット軸受に適用することもできる。
【0035】
本例のハブユニット軸受1は、外輪2の内周面とハブ3の外周面との間に存在し、かつ、玉4が配置された、円筒状の転動体設置空間20の軸方向両側の開口を塞ぐシール装置21a、21bをさらに備える。すなわち、シール装置21a、21bにより、転動体設置空間20内に封入したグリースの漏洩を防止し、かつ、転動体設置空間20内に、泥水などの異物が侵入することを防止している。
【0036】
次に、本例のハブユニット軸受1に組み込まれる、それぞれの列の保持器5について、具体的に説明する。保持器5に関して、軸方向、径方向、および円周方向は、特に断らない限り、保持器5を構成するリム部22の軸方向、径方向および円周方向を意味する。
【0037】
それぞれの列の保持器5は、互いに同一形状を有しており、軸方向に関して互いに逆向きに組み付けられている。換言すれば、軸方向内側の保持器5は、軸方向外側の保持器5と同一形状の保持器5を軸方向に関して反転させて使用している。すなわち、軸方向内側の保持器5に関しては、軸方向内側が軸方向一方側に相当し、かつ、軸方向外側が軸方向他方側に相当する。これに対し、軸方向外側の保持器5に関しては、軸方向外側が軸方向一方側に相当し、かつ、軸方向内側が軸方向他方側に相当する。
【0038】
それぞれの列の保持器5は、互いに同一形状を有するため、以下では、これらの保持器5の形状について、1つの保持器5を取り上げて説明する。
【0039】
保持器5は、合成樹脂を射出成形、具体的にはアキシアルドロー成形することにより全体が一体に造られた、冠形のアンギュラ玉軸受用保持器であって、全体として略円すい台形状を有する。
【0040】
保持器5を構成する合成樹脂としては、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド46(PA46)、ポリアミド9T(PA9T)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアセタール(POM)、フェノール樹脂(PF)などの各種の合成樹脂を採用することができる。これらの合成樹脂には、必要に応じて、ガラス繊維、ポリエチレン繊維、カーボン繊維、アラミド繊維などの各種の強化繊維を混入することができる。
【0041】
保持器5は、円環状のリム部22と、リム部22の円周方向複数箇所から軸方向一方側にそれぞれ伸長し、かつ、それぞれが凹曲面状の円周方向側面を有する複数の柱部23と、それぞれが複数の柱部23のうちの円周方向に隣り合う2つの柱部23とリム部22とにより三方が囲まれた、玉4を保持するための複数のポケット24とを備える。
【0042】
図1図6、および図7に示すように、リム部22は、略円筒面状の外周面を有し、かつ、外輪2の内周面のうちの複列の外輪軌道6a、6bの間部分の内径よりも小さい外径を有する。リム部22は、略円筒面状の内周面を有し、かつ、ハブ3の外周面のうちの複列の内輪軌道10a、10bの間部分の外径よりも大きい内径を有する。リム部22の軸方向一方側の側面の円周方向等間隔複数箇所には、柱部23の軸方向他方側の端部が接続されている。リム部22の軸方向一方側の側面のうち、柱部23から円周方向に外れた部分のそれぞれは、凹曲面状に構成されている。リム部22の軸方向他方側の側面は、リム部22の中心軸に直交する仮想平面上に存在する平坦面により構成されている。
【0043】
本例では、リム部22は、内周面の軸方向他方側部分に、径方向外側に向けて凹んだ凹部25を有する。凹部25は、図8に示すように、保持器5をアキシアルドロー成形により造る際に用いる可動型45の凸部47によって形成される部位である。凹部は、リム部の内周面の軸方向他方側部分に限らず、たとえばリム部の内周面の軸方向一方側部分や軸方向中間部に設けることもできる。凹部25および凸部47については、さらに後述する。
【0044】
複数の柱部23は、それぞれが同一形状を有する。このため、以下では、これらの柱部23の形状について、1つの柱部23を取り上げて説明する。
【0045】
図6および図7に示すように、柱部23は、径方向外側面の軸方向一方側部分に、軸方向一方側に向かうにしたがって径方向内側に向かう方向に傾斜した傾斜面部26、および、傾斜面部26よりも径方向内側に、軸方向一方側および円周方向両側に開口し、円周方向に隣り合う2つのポケット24を連通する切り欠き27を有する。
【0046】
本例では、柱部23の径方向外側面は、軸方向一方側に向かうにしたがって径方向外側に向かう方向に伸長した略S字状の断面形状を有する、図6および図7において点X1から点X2までの部分である軸方向他方側部分28と、軸方向他方側部分28の軸方向一方側の端部から軸方向一方側に向かうにしたがって径方向内側に向かう方向に傾斜した、図6および図7において点X2から点X3までの部分である傾斜面部26とからなる。傾斜面部26は、保持器5の中心軸に直交し、かつ、後述するポケット24の中心Cを含む仮想平面S1よりも軸方向一方側に位置している。本例では、傾斜面部26は、保持器5の中心軸を中心とする部分円すい状の凸面により構成されている。このため、傾斜面部26は、軸方向一方側から見て、図4および図5に示すように、保持器5の中心軸を中心とする円弧形状を有する。
【0047】
本発明を実施する場合、傾斜面部26の軸方向寸法La(図6参照)は、任意の大きさに決定することができるが、柱部23の軸方向一方側部分の肉厚変化を抑える面から、柱部23の径方向外側面のうち仮想平面S1よりも軸方向一方側に位置する部分の軸方向寸法Lbの50%以上とするのが好ましく、軸方向寸法Lbの60%以上とするのがより好ましい。本例では、軸方向寸法Laを、軸方向寸法Lbの60%程度としている。
【0048】
本発明を実施する場合、保持器5の中心軸に対する傾斜面部26の傾斜角度θは、任意の大きさに決定することができるが、柱部23の軸方向一方側部分の肉厚変化を抑える面から、10゜以上30゜以下であることが好ましく、15゜以上25゜以下であることがより好ましい。本例では、傾斜角度θは、20゜程度としている。
【0049】
本例では、柱部23の径方向内側面は、リム部22の内周面から軸方向一方側に伸長した直線状の断面形状を有する軸方向他方側部分29と、軸方向他方側部分29の軸方向一方側の端部から径方向外側に向けて伸長した直線状の断面形状を有する段部30と、段部30の径方向外側の端部から軸方向一方側に向かうにしたがって径方向外側に向かう方向に伸長した直線状の断面形状を有する軸方向一方側部分31とからなる。
【0050】
本例では、柱部23の切り欠き27は、軸方向一方側の端部から軸方向中間部にわたる範囲に、軸方向一方側および円周方向両側にのみ開口するように備えられている。本発明を実施する場合、柱部の切り欠きは、前述した従来構造のように、軸方向一方側および円周方向両側だけでなく、径方向内側にも開口していてもよい。すなわち、本発明において、柱部の切り欠きは、少なくとも軸方向一方側および円周方向両側に開口しており、軸方向一方側、円周方向両側、および径方向内側に開口する切り欠きも包含すると解釈される。
【0051】
本例では、柱部23の切り欠き27が存在する範囲は、保持器5の中心軸を中心とし、かつ、後述するポケット24の中心C、すなわち玉4の中心Оを通る円であるピッチ円が通過する部分を含んでいる。すなわち、該ピッチ円は、切り欠き27の内側を通過する。切り欠き27は、柱部23の軸方向一方側の端部から軸方向中間部にわたる範囲を、円周方向から見て略U字形に切り欠いている。切り欠き27の径方向幅は、軸方向一方側に向かうにしたがって大きくなっている。本例の保持器5では、切り欠き27の存在に基づいて、円周方向に隣り合う2つの玉4の間の距離を縮めることができるため、1列に含まれる玉数を増やしやすい。
【0052】
柱部23は、軸方向一方側部分のうちで切り欠き27よりも径方向外側に位置する部分に外側柱片32、および、軸方向一方側部分のうちで切り欠き27よりも径方向内側に位置する部分に内側柱片33を有する。柱部23の傾斜面部26は、外側柱片32の径方向外側面のうち、仮想平面S1よりも軸方向一方側に位置している。
【0053】
本例では、内側柱片33の軸方向一方側の端面である内側端面35が、外側柱片32の軸方向一方側の端面である外側端面34よりも、軸方向一方側に位置している。本発明を実施する場合には、内側端面と外側端面とが軸方向に関して同じ位置に配置される構成、または、外側端面が内側端面よりも軸方向一方側に位置する構成を採用することもできる。
【0054】
本例では、外側端面34は、径方向内側に向かうにしたがって軸方向一方側に向かう方向に傾斜した、保持器5の中心軸を中心とする部分円すい状の凸面により構成されている。内側端面35は、円弧形の断面形状を有する凸曲面により構成されている。本発明を実施する場合には、外側端面および内側端面の形状として、たとえば、保持器の中心軸に直交する平坦面などの、本例と異なる形状を採用することもできる。
【0055】
本例では、柱部23の円周方向側面には、アキシアルドロー成形時に固定型44と可動型45との突き合わせ部に位置するパーティングライン36が存在する(図3図6図8参照)。パーティングライン36は、柱部23の径方向外端縁の軸方向他方側の端縁寄り部P1から、外側柱片32の軸方向一方側の端縁の径方向内端縁P2まで、柱部23の円周方向側面に沿って軸方向に伸長しており、軸方向一方側に向かうにしたがって径方向外側に向かう方向に少しだけ傾斜している。パーティングライン36は、保持器5の中心軸を中心とし、かつ、後述するポケット24の中心Cを通る仮想円筒面S2よりも径方向外側に存在する。パーティングライン36の軸方向一方側部分は、外側柱片32の径方向内側縁に沿って存在する。
【0056】
柱部23は、パーティングライン36よりも径方向外側(図6および図7における左側)の部分である外側柱部37と、パーティングライン36よりも径方向内側(図6および図7における右側)の部分である内側柱部38とからなる。外側柱部37は、外側柱片32を含む部分であり、内側柱部38は、内側柱片33を含む部分である。
【0057】
複数のポケット24のそれぞれの内面は、円周方向に対向するそれぞれが凹曲面状の2つの柱部23の円周方向側面と、リム部22の軸方向一方側の側面のうちで柱部23から円周方向に外れた部分に備えられた凹曲面状の部分とにより、部分球状凹面状に構成されており、玉4の転動面の曲率半径よりもわずかに大きい曲率半径を有する。ポケット24の中心Cは、ポケット24内に保持される玉4の中心Oと実質的に一致している。
【0058】
具体的には、本例では、図7に示すように、外側柱部37の円周方向側面のうち、仮想平面S1よりも軸方向一方側に位置する部分、すなわち、外側柱片32の円周方向側面のうち、仮想平面S1よりも軸方向一方側に位置する部分は、ポケット24の中心Cを中心とする部分球状凹面である外側球状凹面39により構成されている。外側球状凹面39は、玉4の転動面の曲率半径よりもわずかに大きい曲率半径を有する。内側柱部38の円周方向側面のうち、仮想平面S1よりも軸方向他方側に位置する部分、および、リム部22の軸方向一方側の側面のうちで柱部23から円周方向に外れた部分は、ポケット24の中心Cを中心とする単一の部分球状凹面である内側球状凹面40により構成されている。内側球状凹面40の曲率半径は、外側球状凹面39の曲率半径と同一である。本例では、ポケット24の内面は、円周方向に対向する2つの外側球状凹面39、および、1つの内側球状凹面40により構成されている。
【0059】
本例では、外側柱部37の円周方向側面のうち、仮想平面S1よりも軸方向他方側に位置する部分は、ポケット24の中心Cを通り、かつ、保持器5の中心軸と平行な直線を中心とする部分円筒状凹面である外側円筒状凹面41により構成されている。内側柱部38の円周方向側面のうち、仮想平面S1よりも軸方向一方側に位置する部分、すなわち、内側柱片33の円周方向側面のうち、仮想平面S1よりも軸方向一方側に位置する部分は、ポケット24の中心Cを通り、かつ、保持器5の中心軸と平行な直線を中心とする部分円筒状凹面である内側円筒状凹面42により構成されている。外側円筒状凹面41および内側円筒状凹面42のそれぞれは、玉4の転動面と接触しない。
【0060】
外側柱部37のうち、仮想平面S1よりも軸方向一方側に位置する部分の円周方向両側の側面のそれぞれは、ポケット24の中心Cを中心とする部分球状凹面である外側球状凹面39により構成されている。このため、外側柱部37のうち仮想平面S1よりも軸方向一方側に位置する部分の肉厚、すなわち、外側柱片32のうち仮想平面S1よりも軸方向一方側に位置する部分の肉厚は、軸方向に関して一方側に向かうにしたがって大きくなっており、かつ、径方向に関して外側に向かうにしたがって大きくなっている。
【0061】
本例では、図8に示すように、保持器5をアキシアルドロー成形により造る際に用いる金型装置43は、軸方向に型開きすることができる分割金型である固定型44および可動型45を備える。図8に示すように固定型44および可動型45を軸方向に型閉じした状態で、固定型44と可動型45との間には、保持器5を成形するための空間であるキャビティ46が画成されている。
【0062】
固定型44は、保持器5の表面のうち、リム部22の軸方向他方側の側面、リム部22の外周面、複数の柱部23のそれぞれの径方向外側面、および複数の柱部23のそれぞれを構成する外側柱部37の円周方向両側の側面を成形する部分を有する。可動型45は、保持器5の表面のうち、残りの部分を成形する部分を有する。すなわち、可動型45は、保持器5の表面のうち、リム部22の内周面、および、複数のリム部22のそれぞれの径方向内側面を成形する部分を有する。
【0063】
保持器5をアキシアルドロー成形により造る際には、キャビティ46内に溶融した合成樹脂を流し込み、該合成樹脂が冷却されて固化した後、固定型44と可動型45とを軸方向に型開きすることにより、キャビティ46内から成形された保持器5を取り出す。型開きは、固定型44を動かさずに、可動型45を固定型44に対して図8における上方に移動させることにより行う。
【0064】
この際に、保持器5は、成形収縮によってリム部22の内周面および複数の柱部23の径方向内側面が可動型45の一部を抑え付けることにより、可動型45と一緒に図8における上方に移動する。本例では、この際に、保持器5が可動型45と一緒に確実に図8における上方に移動できるようにするために、可動型45のうち、リム部22の内周面の軸方向他方側部分を成形する部分に、径方向外側に向けて0.05mm~0.1mm程度突出する凸部47が備えられている。そして、凸部47と、凸部47によって形成される保持器5の凹部25とを係合させることに基づいて、保持器5が可動型45と一緒に確実に図8における上方に移動できるようにしている。本発明を実施する場合、凹部25および凸部47がなくても、型開きの際に保持器が可動型と一緒に確実に移動できるようであれば、凹部25および凸部47を省略することもできる。
【0065】
そして、上述のように可動型45および保持器5が図8における上方に移動する途中で、図示しない不動のエジェクターピンが、保持器5の一部である、外側端面34または切り欠き27の軸方向他方側の端部に位置する底部を押すことにより、保持器5が可動型45から分離される。
【0066】
本例では、この際に、保持器5は、可動型45が保持器5に対して、保持器5の軸方向寸法の1/2程度だけ上方に移動するまでの間、可動型45から落下しない。具体的には、保持器5は、段部30が可動型45の下端縁よりも下方に達した時点で、可動型45から落下する。このため、保持器5の落下位置が安定する。
【0067】
ハブユニット軸受1は、たとえば、次のようにして組み立てることができる。まず、2つの保持器5のポケット24のそれぞれに、玉4を挿入する。具体的には、2つの保持器5のそれぞれに関して、軸方向一方側が上側を向いた保持器5の円周方向に隣り合う2つの柱部23の軸方向一方側の端部の間隔を弾性的に広げ、玉4を、上側かつ径方向内側から押し込むことで、ポケット24に玉4を挿入する。
【0068】
次いで、ポケット24のそれぞれに玉4が挿入された2つの保持器5を、外輪2の複列の外輪軌道6a、6bの内側に配置する。このために、まず、保持器5のポケット24のそれぞれに保持された玉4を径方向内側に寄せて、保持器5の中心軸を中心とする玉4の外接円直径を、大径溝肩部7の内径よりも小さくする。この状態で、保持器5および該保持器5に保持された玉4を、大径溝肩部7の径方向内側を通過させる。その後、玉4を径方向内側に押圧する力を解放して自由状態とすることで、保持器5の中心軸を中心とする玉4の外接円直径を、大径溝肩部7の内径よりも大きくする。これにより、外輪2に対し、保持器5および該保持器5に保持された玉4を、不用意に分離しないように組み付ける。
【0069】
次いで、互いに組み合わされた外輪2と2つの保持器5および複数個の玉4との径方向内側に、ハブ輪16を挿通し、さらに、ハブ輪16の小径筒部17に内輪15を外嵌する。そして、ハブ輪16の軸方向内側の端部を径方向外側に向けて塑性変形させることにより、かしめ部18を形成し、内輪15とハブ輪16を結合してハブ3を構成する。以上のようにして、ハブユニット軸受1を組み立てる。なお、ハブユニット軸受1を組み立てる手順は、矛盾を生じない限り、適宜順番を入れ替えたり同時に実施したりすることができる。
【0070】
上述のようにハブユニット軸受1を組み立てる際には、保持器5のポケット24内に保持した玉4が、外輪軌道6a、6bと内輪軌道10a、10bとの間に配置される前にポケット24から脱落しないようにする必要がある。具体的には、ポケット24の内面を構成する、円周方向に対向する2つの外側球状凹面39、および、1つの内側球状凹面40により、玉4をしっかりと抱きかかえるように保持することによって、玉4がポケット24から脱落しないようにする必要がある。このため、2つの外側球状凹面39の形状、特に、2つの外側球状凹面39のそれぞれの軸方向一方側かつ径方向外側の端部の形状が正しく成形されていることが重要となる。換言すれば、柱部23を構成する外側柱片32の軸方向一方側の端部のうち、径方向外端部における円周方向両側の端部に位置する2つの尖部48の形状が正しく成形されていることが重要となる。
【0071】
この点に関して、本例の構造では、外側柱片32のうち、仮想平面S1(図6および図7参照)よりも軸方向一方側に位置する部分の肉厚は、軸方向に関して一方側に向かうにしたがって大きくなっており、かつ、径方向に関して外側に向かうにしたがって大きくなっている。ただし、本例の構造では、外側柱片32の径方向外側面の軸方向一方側部分に、軸方向一方側に向かうにしたがって径方向内側に向かう方向に傾斜した傾斜面部26を有する。このため、傾斜面部26の存在に基づいて、すなわち、傾斜面部26を備えていない構造に比べて、外側柱片32の軸方向一方側部分の肉厚変化を小さく抑えることができる。
【0072】
したがって、保持器5を射出成形により造る際に、外側柱片32の軸方向一方側部分に、成形収縮に伴う好ましくない変形であるヒケが生じることを抑制できる。したがって、外側柱片32の軸方向一方側の端部のうち、径方向外端部における円周方向両側の端部に位置する2つの尖部48の形状を正しく成形することができる。換言すれば、ポケット24の内面を構成する2つの外側球状凹面39のそれぞれの軸方向一方側かつ径方向外側の端部の形状を正しく成形することができる。この結果、外輪軌道6a、6bと内輪軌道10a、10bとの間に配置される前の玉4をポケット24内に保持する力を確保しやすい。
【0073】
[第2例]
本発明の実施の形態の第2例について、図9を用いて説明する。
【0074】
本例では、保持器5aを構成する複数の柱部23の径方向外側面の軸方向一方側部分に備えられた傾斜面部26aは、平坦面により構成されている。該平坦面である傾斜面部26aは、図9に示すように、軸方向一方側から見て、リム部22の中心軸から延び、かつ、該傾斜面部26aを備えた柱部23の円周方向中央部を通過する放射直線αに対して直交する方向に伸長する形状を有する。このような傾斜面部26aの軸方向一方側の端縁部は、外側柱片32aの軸方向一方側の端部のうち、径方向外端部における円周方向両側の端部に位置する2つの尖部48を直線的につなぐ直線形状を有する。
【0075】
本例の構造では、傾斜面部26aが前記平坦面により構成されているため、傾斜面部が保持器の中心軸を中心とする部分円すい状の凸面により構成されている第1例の構造に比べて、外側柱片32aの軸方向一方側部分のうち、径方向の肉厚が最も大きくなる部分である、円周方向中央部分の径方向の肉厚を小さくすることができる。このため、外側柱片32aの軸方向一方側部分に、成形収縮に伴う好ましくない変形であるヒケが生じることを、さらに抑制できる。その他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【符号の説明】
【0076】
1 ハブユニット軸受
2 外輪
3 ハブ
4 玉
5、5a 保持器
6a、6b 外輪軌道
7 大径溝肩部
8 静止フランジ
9 支持孔
10a、10b 内輪軌道
11 回転フランジ
12 パイロット部
13 取付孔
14 スタッド
15 内輪
16 ハブ輪
17 小径筒部
18 かしめ部
19 段差面
20 転動体設置空間
21a、21b シール装置
22 リム部
23 柱部
24 ポケット
25 凹部
26、26a 傾斜面部
27 切り欠き
28 軸方向他方側部分
29 軸方向他方側部分
30 段部
31 軸方向一方側部分
32、32a 外側柱片
33 内側柱片
34 外側端面
35 内側端面
36 パーティングライン
37 外側柱部
38 内側柱部
39 外側球状凹面
40 内側球状凹面
41 外側円筒状凹面
42 内側円筒状凹面
43 金型装置
44 固定型
45 可動型
46 キャビティ
47 凸部
48 尖部
100 保持器
101 リム部
102 柱部
103 ポケット
104 切り欠き
105 尖部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13