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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075628
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】スクリュー圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 27/00 20060101AFI20230524BHJP
   F04C 18/16 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
F04C27/00 331
F04C18/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188644
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】頼金 茂幸
(72)【発明者】
【氏名】千葉 紘太郎
(72)【発明者】
【氏名】森田 謙次
(72)【発明者】
【氏名】梶江 雄太
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA03
3H129AA17
3H129AB01
3H129BB16
3H129CC16
3H129CC20
(57)【要約】
【課題】自身の吐出圧力を利用して軸隙間に液体を供給する場合において液膜による軸封性能の向上が可能なスクリュー圧縮機を提供する。
【解決手段】スクリュー圧縮機は、ロータ歯部21及び吐出側シャフト部23を含むスクリューロータ2と、ロータ歯部を収容する収容室45、吐出側シャフト部が貫通する軸孔54、液体を軸孔に導く給液路62を有するケーシング4とを備える。吐出側シャフト部における軸孔に配置される第2軸部25とケーシングの軸孔は、隙間Scをあけて互いに対向する第1の対向面25sと第2の対向面54sを有する。吐出側シャフト部は第1の対向面に環状溝部26を有し、給液路は軸孔の第2の対向面における環状溝部の対向位置で開口する。吐出側シャフト部の第2軸部及びケーシングの軸孔は、環状溝部よりもロータ歯部から遠い領域において、ロータ歯部から離れる方向に向かって径が小さくなる構造部としてテーパ構造を有する。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状の歯を有するロータ歯部及び前記ロータ歯部における軸方向の吐出側端に設けられたシャフト部を含むスクリューロータと、
前記ロータ歯部を収容する収容室、前記シャフト部が貫通する軸孔、外部から供給される液体を前記軸孔に導く給液路を有し、前記ロータ歯部と共に作動室を形成するケーシングとを備え、
前記シャフト部における前記軸孔に配置される所定部分と前記ケーシングの前記軸孔は、隙間をあけて互いに対向する第1の対向面と第2の対向面とを有し、
前記シャフト部は、前記第1の対向面に環状溝部を有し、
前記給液路は、前記ケーシングの前記軸孔の前記第2の対向面における前記環状溝部に対向する位置で開口するように構成され、
前記シャフト部の前記所定部分及び前記ケーシングの前記軸孔は、前記環状溝部の位置よりも前記ロータ歯部から遠い領域において、前記ロータ歯部から離れる方向に向かって径が小さくなる構造部を有している
ことを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載のスクリュー圧縮機において、
前記構造部は、前記ロータ歯部から離れる方向に向かって径が小さくなる段付構造である
ことを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項3】
請求項2に記載のスクリュー圧縮機において、
前記段付構造は、一段の段差部のみで構成されている
ことを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項4】
請求項2に記載のスクリュー圧縮機において、
前記段付構造は、複数段の段差部で構成されている
ことを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項5】
請求項1に記載のスクリュー圧縮機において、
前記構造部は、前記ロータ歯部から離れる方向に向かって径が小さくなるテーパ構造である
ことを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項6】
請求項5に記載のスクリュー圧縮機において、
前記シャフト部の前記所定部分及び前記ケーシングの前記軸孔は、前記環状溝部の位置よりも前記ロータ歯部から遠い領域の全体が前記テーパ構造として構成されている
ことを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項7】
請求項5に記載のスクリュー圧縮機において、
前記シャフト部の前記所定部分及び前記ケーシングの前記軸孔は、前記環状溝部の位置よりも前記ロータ歯部から遠い領域において、一部分のみが前記テーパ構造として構成されている
ことを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項8】
請求項6に記載のスクリュー圧縮機において、
前記シャフト部の前記所定部分及び前記ケーシングの前記軸孔は、前記環状溝部の位置よりも前記ロータ歯部に近い領域においても、前記ロータ歯部から離れる方向に向かって径が小さくなるテーパ構造を有している
ことを特徴とするスクリュー圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュー圧縮機に係り、更に詳しくは、液体の供給により軸封を行うスクリュー圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリュー圧縮機の中には、スクリューロータとケーシングとの間に生じる内部隙間の封止、圧縮気体の冷却、摺動部品の潤滑などを目的として、圧縮行程の作動室内に油を供給する給油式のものがある。給油式のスクリュー圧縮機では、吐出される圧縮気体に油が混入するので、分離器を用いて当該圧縮気体から油を分離している。分離器により分離された油は、熱交換器やフィルタを介して再び作動室内に供給される。給油式のスクリュー圧縮機では、分離器で分離された油を、作動室に他に、スクリューロータを回転可能に支持する軸受に対しても潤滑油として供給する。
【0003】
スクリュー圧縮機や遠心圧縮機などの気体圧縮機では、ロータの軸部の外周面とケーシングの軸孔の内周面との間に形成された環状の隙間(軸隙間と称することがある)を介して圧縮気体が漏洩する。圧縮気体の漏洩量が多いほど効率が低下するので、当該軸隙間を封止する必要がある。軸封の手段の1つとして、当該軸隙間に潤滑油などの液体を供給する方法がある。
【0004】
例えば、給油式のスクリュー圧縮機では、分離器で分離された油を軸隙間に供給して油膜(オイルフィルム)を形成することで、当該軸隙間を介して作動室から軸受室に圧縮気体が漏洩することを抑制することが一般的に行われている。当該軸隙間に供給された油は、最終的に、軸受室に配置されている軸受に供給される。
【0005】
また、軸隙間に液体を供給することで軸封する技術として、例えば、特許文献1に記載のオイルフィルムシールが提案されている。特許文献1に記載のオイルフィルムシールは、ケース(ケーシング)を貫通して外部に突出するロータの外周面とこれを取り囲む内側フローティングリング及び外側フローティングリングの内周面との隙間にケース内圧力より高圧のシール油を供給するものである。当該オイルフィルムシールでは、外側フローティングがロータの軸方向に沿って移動自在に構成され、その内周に外方に向かって先細となる傾斜面を有している。ロータの外周には外側フローティングの内周の傾斜面と対向してこれに平行する傾斜面が形成されている。また、外側フローティングリングの外方端面と外側フローティングリングを保持する外側シールハウジングとの間にシール油の一部を導入する油圧溝が形成され、外側フローティングリングを外方に押圧するバネが配設されている。シール油は、内側フローティングリングと外側フローティングリングとの間に形成された油路から供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-13906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スクリュー圧縮機では、螺旋状のローブを有するスクリューロータとスクリューロータを収容するケーシングとで画成された複数の作動室がスクリューロータの回転に伴って軸方向に移動しつつ収縮することで、作動室内の圧縮気体を圧縮する。このような圧縮原理のため、スクリューロータの吐出側端面近傍における圧縮気体の圧力は、作動室の回転方向(周方向)の位置に応じて異なっている。すなわち、吐出側端面近傍の圧縮気体には周方向に圧力分布が存在する。この圧縮気体の周方向の圧力分布に起因して環状の軸間隙に漏洩する圧縮気体に周方向の圧力分布が生じる。そのため、相対的に圧力の高い領域(例えば、吐出行程や圧縮行程の後期の作動室)では、圧縮気体が軸受室に向かって漏洩しようとする。一方、相対的に圧力の低い領域(例えば、吸込行程や圧縮行程の初期の作動室)では、圧縮気体の漏洩流量が圧力の高い領域よりも少ないか、場合によっては、逆に、軸受室内の気体が作動室に流入しようとする。
【0008】
給油式のスクリュー圧縮機の中には、作動室や軸受室などに供給される油を、ポンプなどの加圧装置を用いることなく、スクリュー圧縮機自身が生み出す吐出圧力とケーシング内の作動室や軸受室などの供給先の圧力との圧力差(以下、自己差圧と称することがある)を利用して循環させているものがある。このような構成の給油式のスクリュー圧縮機では、供給先の給油圧力が分離器から供給先までの経路中に生じる圧力損失によって当該圧縮機の吐出圧力よりも常時低くなっている。
【0009】
給油式のスクリュー圧縮機において、自身の吐出圧力を利用して油を供給することで軸封を行う場合には、軸隙間に供給された油が当該軸隙間に流入した圧縮気体のうち吐出行程や圧縮行程にある相対的に高圧の作動室からの圧縮気体の影響を受けるので、環状の軸隙間の周方向全体に亘って適切な油膜(オイルフィルム)を形成することは容易ではない。そのため、自身の吐出圧力を利用して油を供給することで軸封を行う給油式のスクリュー圧縮機においては、軸封性能の向上が望まれている。
【0010】
また、自己差圧を駆動力として油を供給することで軸封を行う給油式のスクリュー圧縮機に対して、特許文献1に記載の技術(オイルフィルムシール)を適用することを考える。円筒面状のロータ外周面に対向する内側フローティングリングと外方に向かって先細に傾斜するロータ外周面に対向する外側フローティングリングとの間に形成された油路からスクリュー圧縮機自身の吐出圧力を利用してシール油を供給する場合には、吐出行程などの作動室内の圧縮気体がシール油よりも相対的に高圧になるので、前述の場合と同様に、環状の軸隙間の周方向全体に亘って適切なオイルフィルムを形成することは難しいと考えられる。すなわち、スクリュー圧縮機自身の吐出圧力を利用して油を供給することで軸封を行う場合には、ケース(ケーシング)内の圧力よりも高圧のシール油を供給することを前提とする特許文献1に記載のオイルフィルムシールの構造を用いても、良好な軸封性能を得ることは難しい。
【0011】
本発明は、上記の問題点を解消するためになされたものであり、その目的は、スクリュー圧縮機自身の吐出圧力を利用して軸隙間に液体を供給する場合において液膜による軸封性能の向上が可能なスクリュー圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいる。その一例は、螺旋状の歯を有するロータ歯部及び前記ロータ歯部における軸方向の吐出側端に設けられたシャフト部を含むスクリューロータと、前記ロータ歯部を収容する収容室、前記シャフト部が貫通する軸孔、外部から供給される液体を前記軸孔に導く給液路を有し、前記ロータ歯部と共に作動室を形成するケーシングとを備え、前記シャフト部における前記軸孔に配置される所定部分と前記ケーシングの前記軸孔は、隙間をあけて互いに対向する第1の対向面と第2の対向面とを有し、前記シャフト部は、前記第1の対向面に環状溝部を有し、前記給液路は、前記ケーシングの前記軸孔の前記第2の対向面における前記環状溝部に対向する位置で開口するように構成され、前記シャフト部の前記所定部分及び前記ケーシングの前記軸孔は、前記環状溝部の位置よりも前記ロータ歯部から遠い領域において、前記ロータ歯部から離れる方向に向かって径が小さくなる構造部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、周方向に圧力分布がある気体が軸孔とシャフト部の隙間(軸隙間)を介して環状溝部内に流入すると、環状溝部が膨張室の役割を果たすことで気体の圧力分布が均一化される。このため、スクリュー圧縮機自身の吐出圧力を利用して軸隙間に液体を供給する場合においても、環状の軸隙間の周方向全体に亘って液膜を形成することが可能となる。加えて、環状溝部よりもロータ歯部から遠い領域において径が小さくなる構造部を設けることで、環状溝部よりも液膜の流れの下流側に、スクリューロータの回転に伴って生じる遠心力の作用によって液膜の流れに流動抵抗が生じる。この流動抵抗により、液膜の流量が抑制されるので、環状溝部が液体で充填される状態を維持することが可能となる。したがって、スクリュー圧縮機自身の吐出圧力を利用して軸隙間に液体を供給する場合において、液膜による軸封性能の向上が可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機を一部省略して示す断面図である。
図2図1に示す本発明の第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機をII-II矢視から見た断面図である。
図3図2に示す本発明の第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機をIII-III矢視から見た断面図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機に対する給液の外部経路を示す系統図である。
図5】本発明の第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機に対する比較例のスクリュー圧縮機における吐出側部分の構造を拡大した状態で示す断面図である。
図6】本発明の第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機における吐出側の軸封の作用及び効果を示す説明図である。
図7図5に示す比較例のスクリュー圧縮機における吐出側軸隙間を介した圧縮気体の漏洩量についての説明図である。
図8】本発明の第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機における吐出側軸隙間を介した圧縮気体の漏洩量についての説明図である。
図9】本発明の第1の実施の形態の変形例に係るスクリュー圧縮機における吐出側部分の構造を拡大した状態で示す断面図である。
図10】本発明の第2の実施の形態に係るスクリュー圧縮機を一部省略して示す断面図である。
図11】本発明の第2の実施の形態に係るスクリュー圧縮機における吐出側の軸封の作用及び効果を示す説明図である。
図12】本発明の第2の実施の形態の変形例に係るスクリュー圧縮機における吐出側部分の構造を拡大した状態で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて例示説明する。本実施の形態は、圧縮機内部に油を供給する給油式、且つ、ツインロータ型のスクリュー圧縮機に対して適用した例である。
【0016】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機の構成及び当該スクリュー圧縮機に対する給油の外部経路の構成を図1図4を用いて説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機を一部省略して示す断面図である。図2図1に示す本発明の第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機をII-II矢視から見た断面図である。図3図2に示す本発明の第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機をIII-III矢視から見た断面図である。ただし、図3はケーシングの外形部を省略している。図4は本発明の第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機に対する給液の外部経路を示す系統図である。図1及び図2中、右側がスクリュー圧縮機の吸込側であり、左側が吐出側である。図3中、太い矢印はスクリューロータの回転方向を示している。
【0017】
図1において、スクリュー圧縮機1は、ツインロータ型であり、互いに噛み合って回転する雄ロータ2(雄型のスクリューロータ)及び雌ロータ3(雌型のスクリューロータ)と、雄雌両ロータ2、3を収容するケーシング4とを備えている。雄ロータ2は、吸込側軸受6と吐出側軸受7、8とにより回転自在に支持されている。雌ロータ3は、吸込側軸受10と吐出側軸受11、12とにより回転自在に支持されている。
【0018】
雄ロータ2は、図1図3に示すように、螺旋状の雄歯21aを有するロータ歯部21と、ロータ歯部21における軸方向(図1及び図2中、左右方向)の一方端(吸込側端)及び他方端(吐出側端)にそれぞれ一体に設けられた吸込側シャフト部22及び吐出側シャフト部23とで構成されている。ロータ歯部21は、軸方向の一方端及び他方端にそれぞれ吸込側端面21b及び吐出側端面21cを有している。吸込側シャフト部22は、例えば、電動モータなどの回転駆動源70(図4参照)に連結される。吐出側シャフト部23の構造の詳細は後述する。
【0019】
雌ロータ3は、図1及び図3に示すように、螺旋状の雌歯31aを有するロータ歯部31と、ロータ歯部31における軸方向(図1中、左右方向)の一方端(吸込側端)及び他方端(吐出側端)にそれぞれ一体に設けられた吸込側シャフト部32及び吐出側シャフト部33とで構成されている。ロータ歯部31は、軸方向の一方端及び他方端にそれぞれ吸込側端面31b及び吐出側端面31cを有している。吐出側シャフト部33の構造の詳細は後述する。
【0020】
ケーシング4は、図1及び図2に示すように、主ケーシング41と、主ケーシング41の軸方向吐出側(図1及び図2中、左側)に取り付けられる吐出側ケーシング42とを備えている。ケーシング4の内部には、図1及び図3に示すように、雄ロータ2のロータ歯部21と雌ロータ3のロータ歯部31とを互いが噛み合った状態で収容する収容室45が形成されている。収容室45は、主ケーシング41に形成された一部重複する2つの円筒状空間の開口部を吐出側ケーシング42で閉塞することによって形成されている。ケーシング4の収容室45を形成する内壁面は、雄ロータ2のロータ歯部21の径方向外側を覆う略円筒面状の雄側内周面45aと、雌ロータ3のロータ歯部31の径方向外側を覆う略円筒面状の雌側内周面45bと、雄雌両ロータ2、3のロータ歯部21、31の吸込側端面21b、31bに対向する吸込側内壁面45cと、雄雌両ロータ2、3のロータ歯部21、31の吐出側端面21c、31cに対向する吐出側内壁面45dとを有している。ケーシング4の吐出側内壁面45dに対して、雄雌両ロータ2、3の吐出側端面21c、31cが僅かな隙間(以下、吐出側端面隙間と称することがある)をもって対向している。雄雌両ロータ2、3のロータ歯部21、31とそれを取り囲むケーシング4の収容室45の内壁面(雄側内周面45a、雌側内周面45b、吸込側内壁面45c、吐出側内壁面45d)とによって圧力の異なる複数の作動室Cが形成される。
【0021】
図1及び図2に示すように、主ケーシング41における軸方向一方側(図1及び図2中、右側)の端部には、雄ロータ2用の吸込側軸受6が配置される吸込側軸受室47及び雌ロータ3用の吸込側軸受10が配置される吸込側軸受室48が設けられている。両吸込側軸受室47、48は、吸込側隔壁49によって収容室45と隔てられている。吸込側隔壁49には、雄ロータ2の吸込側シャフト部22が貫通する吸込側軸孔49a及び雌ロータ3の吸込側シャフト部32が貫通する吸込側軸孔49bが設けられている。各吸込側軸孔49a、49bには、雄ロータ2及び雌ロータ3の吸込側シャフト部22、32がそれぞれ僅かな隙間をもって配置されている。
【0022】
吐出側ケーシング42には、雄ロータ2用の吐出側軸受7、8が配置される吐出側軸受室51および雌ロータ3用の吐出側軸受11、12が配置される吐出側軸受室52が設けられている。両吐出側軸受室51、52は、一方側(図1及び図2中、右側)が吐出側隔壁53によって収容室45と隔てられている一方、他方側(図1及び図2中、左側)が開口している。吐出側隔壁53には、雄ロータ2の吐出側シャフト部23が貫通する吐出側軸孔54および雌ロータ3の吐出側シャフト部33が貫通する吐出側軸孔55が設けられている。吐出側軸孔54及び吐出側軸孔55には、雄ロータ2の吐出側シャフト部23及び雌ロータ3の吐出側シャフト部33がそれぞれ僅かな隙間(以下、吐出側軸隙間と称することがある)をもって配置されている。吐出側軸孔54及び吐出側軸孔55の構造の詳細は後述する。また、吐出側ケーシング42には、両吐出側軸受室51、52の開口を閉塞する吐出側カバー43が取り付けられている。
【0023】
図2に示すように、ケーシング4における軸方向の一方側(図2中、右側)には、ケーシング4の外部から作動室Cへ気体を吸い込むための吸込流路57が設けられている。ケーシング4における軸方向の他方側には、作動室Cからケーシング4の外部へ圧縮気体を吐出するための吐出流路58(図2では図示せず、図4を参照)が設けられている。吐出流路58は、ケーシング4の吐出側内壁面45dに吐出ポート58a(図3参照)を有している。吐出流路58は、後述の外部給油系統100(図4参照)に接続されている。
【0024】
スクリュー圧縮機1は、例えば、給油式であり、雄ロータ2及び雌ロータ3の潤滑、圧縮気体の冷却、雄ロータ2及び雌ロータ3とケーシング4との隙間等のシールを目的として、ケーシング4内の作動室Cに対して潤滑油が供給される構成となっている。さらに、本実施の形態のスクリュー圧縮機1は、作動室Cに加えて、雄ロータ2用の吸込側軸受6及び吐出側軸受7、8並びに雌ロータ3用の吸込側軸受10及び吐出側軸受11、12に対しても潤滑油が供給される構成となっている。
【0025】
具体的には、ケーシング4には、図2に示すように、給油路60が設けられている。給油路60は、ケーシング4の外部から供給される潤滑油をケーシング4内の収容室45(作動室C)に導く第1経路61と、当該潤滑油を吐出側軸孔54及び吐出側軸孔55に導く第2経路62と、当該潤滑油を吸込側軸受6及び吸込側軸受10に供給するための第3経路(図示せず)とを含んでいる。第1経路61は、収容室45における作動室Cが圧縮行程となる領域に開口している。第2経路62は、吐出側軸隙間を介して潤滑油を吐出側軸受7、8及び吐出側軸受11、12に供給するためのものである。第2経路62の構造の詳細については後述する。
【0026】
給油式のスクリュー圧縮機1には、図4に示すように、当該圧縮機1に対して潤滑油を供給するための外部給油系統100が接続されている。外部給油系統100は、例えば、オイルセパレータ101、オイルクーラ102、オイルフィルタなどの補機103及びそれらを接続する管路104などで構成されている。オイルセパレータ101は、ケーシング4の吐出流路58に接続されており、スクリュー圧縮機1から吐出された圧縮気体に含まれる潤滑油を分離するものである。外部給油系統100は、ポンプ等の動力源を用いることなく、オイルセパレータ101内に流入する圧縮気体の圧力を駆動源として潤滑油をスクリュー圧縮機1に供給する。このような構成の外部給油系統100を用いる場合、スクリュー圧縮機1に供給される潤滑油の供給圧は、スクリュー圧縮機1の吐出圧よりも必ず低くなる。なぜなら、オイルセパレータ101ではスクリュー圧縮機1から吐出された圧縮気体から潤滑油を分離する過程などで圧力損失が生じると共に、オイルセパレータ101からスクリュー圧縮機1に供給されるまでの間に潤滑油がオイルクーラ102及びオイルフィルタなど補機103の通過することで圧力損失が生じるからである。
【0027】
上述のように構成されたスクリュー圧縮機1では、図1に示す雄ロータ2が回転駆動源70(図4参照)により駆動されて雌ロータ3を回転駆動すると、雄雌両ロータ2、3の回転に伴い作動室Cが軸方向に移動しつつ作動室Cの容積が増減する。これにより、気体が、図2に示す吸込流路57を介して作動室C内に吸い込まれ、所定の圧力に達するまで圧縮される。最終的に、図4に示すケーシング4の吐出流路58を介して外部給油系統100のオイルセパレータ101に吐出される。オイルセパレータ101では、圧縮気体と潤滑油とが分離される。潤滑油が除去された圧縮気体は必要に応じて外部機器へ供給され、分離された潤滑油はオイルセパレータ101に貯留される。
【0028】
オイルセパレータ101に貯留された潤滑油は、オイルクーラ102で冷却され補機のオイルフィルタ103で不純物が除去された後に、スクリュー圧縮機1に供給される。スクリュー圧縮機1への潤滑油の供給は、ポンプ等の動力源を用いることなく、オイルセパレータ101内に流入する圧縮気体の圧力(スクリュー圧縮機1の吐出圧)を利用して行われる。
【0029】
スクリュー圧縮機1に供給された潤滑油は、図2に示すケーシング4の給油路60の第1経路61を介して作動室Cに供給されると共に、第2経路62及び吐出側軸隙間(雄ロータ2の吐出側シャフト部23の外周面と吐出側軸孔54の内周面との隙間および雌ロータ3の吐出側シャフト部33の外周面と吐出側軸孔55の内周面との隙間)を介して吐出側軸受7、8及び吐出側軸受11、12に供給される。吸込側軸受6及び吸込側軸受10にも、吐出側軸受7、8及び吐出側軸受11、12と同様に潤滑油が供給される。作動室Cに供給された潤滑油によって、圧縮気体が冷却されると共に、雄雌両ロータ2、3の歯先とケーシング4の収容室45の雄側内周面45a及び雌側内周面45bとの隙間や雄雌両ロータ2、3の吐出側端面21c、31cとケーシング4の収容室45の吐出側内壁面45cとの隙間(吐出側端面隙間)などが封止される。作動室C内に供給された潤滑油は、圧縮気体と共に吐出流路58から吐出され、オイルセパレータ101に流入する。
【0030】
ところで、複数の作動室C内の圧縮気体は、吐出側軸受室51、52との圧力差によって、雄雌両ロータ2、3のロータ歯部21、31の吐出側端面21c、31c側から吐出側端面隙間及び吐出側軸隙間を介して吐出側軸受室51、52に流出しようとする。ただし、雄雌両ロータ2、3のロータ歯部21、31の吐出側端面21c、31c近傍における圧縮気体の圧力は、作動室Cの回転方向(周方向)の位置に応じて異なっている。スクリュー圧縮機1は、前述したように、複数の作動室Cが雄雌両ロータ2、3の回転に伴い軸方向に移動しつつ膨張及び収縮を経ることで、作動室C内に気体を吸い込み圧縮するものである。このような圧縮原理のため、ロータ歯部21、31の吐出側端面21c、31c近傍の圧縮気体には周方向に圧力分布が存在する。具体的な一例としては、例えば図3に示すように、吐出側端面21c、31c近傍における雄ロータ2と雌ロータ3が噛み合わない領域では、吐出ポート58a(二点鎖線の部分)の位置とは反対側(図3では上側)の領域(作動室C)を起点として、一点鎖線の矢印Pの方向に向かうほど高圧の領域(作動室C)となる。このように、ロータ歯部21、31の吐出側端面21c、31c近傍の圧縮気体には周方向の圧力分布が存在する。このため、この気体の周方向の圧力分布に起因して、複数の作動室Cから吐出側軸隙間に漏洩する圧縮気体にも周方向の圧力分布が生じている。
【0031】
本実施の形態に係るスクリュー圧縮機1では、周方向に圧力分布が生じている複数の作動室Cから吐出側軸隙間を介した吐出側軸受室51、52への圧縮気体の漏洩に対して、吐出側軸受7、8及び吐出側軸受11、12を潤滑させるための潤滑油を吐出側軸隙間に供給して吐出側軸隙間に油膜(オイルフィルム)を形成させることで、吐出側軸隙間を封止する。ただし、スクリュー圧縮機1は、スクリュー圧縮機1自身の吐出圧力を利用して潤滑油を吐出側軸隙間に供給する構成であるので、吐出側軸隙間に供給される潤滑油の圧力がスクリュー圧縮機1から吐出される圧縮気体の圧力よりも低くなっている。
【0032】
そこで、本実施の形態に係るスクリュー圧縮機1では、スクリュー圧縮機1自身の吐出圧力を利用して吐出側軸隙間に液体(潤滑油)を供給する場合であっても、次のような特徴部を備えることで吐出側の軸封性能の向上を図るものである。図1及び図2を用いて第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機1における吐出側の軸封のための特徴部を説明する。
【0033】
図1及び図2において、雄ロータ2の吐出側シャフト部23は、吐出側軸受7、8が取り付けられる第1軸部24と、第1軸部24とロータ歯部21との間に位置する第2軸部25とで構成されている。第1軸部24は、外径が一定の円柱状に形成されている。第2軸部25は、ケーシング4の吐出側軸孔54内に配置される部分であり、その全長が吐出側軸受7、8(第1軸部24)に向かって先細りのテーパ構造を有している。ケーシング4(吐出側ケーシング42)の吐出側軸孔54は、吐出側シャフト部23の第2軸部25の構造に応じて、その全長が吐出側軸受室51に向かって先細りのテーパ構造を有している。
【0034】
第2軸部25の外周面とケーシング4の吐出側軸孔54を形成する内周面とは、所定の範囲の大きさ(例えば、数十~数百μm)の隙間をあけて互いに対向する第1の対向面25sと第2の対向面54sとを有している。第2軸部25の第1の対向面25sは、その全体が吐出側軸受7、8の方向(ロータ歯部21から離れる方向)に向かって先細りの第1のテーパ面(吐出側軸受7、8に向かうにつれて徐々に接近する傾斜面)として形成されている。ケーシング4の吐出側軸孔54の第2の対向面54sは、その全長が第2軸部25の第1のテーパ面(第1の対向面25s)の形状に応じて吐出側軸受室51の方向(収容室45から離れる方向)に向かって先細りの第2のテーパ面(吐出側軸受室51に向かうにつれて徐々に接近する傾斜面)として形成されている。このような構造により、雄ロータ2の第2軸部25の第1のテーパ面(第1の対向面25s)とケーシング4の吐出側軸孔54の第2のテーパ面(第2の対向面54s)とによって形成される隙間(吐出側軸隙間)は、収容室45から離れる方向に先細りのテーパ面状(円錐面状)となっている。
【0035】
第2軸部25の第1のテーパ面(第1の対向面25s)には、環状溝部26が設けられている。環状溝部26は、環状の吐出側軸隙間の大きさ(数十~数百μm)に対して容積が相対的に大きな膨張室として機能するものである。環状溝部26の形成位置は、環状溝部26よりも吐出側軸受7、8(第1軸部24)側にテーパ状の第1の対向面25sが残存する位置であれば任意である。環状溝部26は、例えば図1及び図2に示すように、第1の対向面25sにおける第1軸部24よりもロータ歯部21に近い位置、すなわち、テーパ状の第2軸部25の外径が相対的に大きな位置に設けられている。なお、環状溝部26の形成位置は、作動室C内の圧縮気体の吐出側軸隙間を介した吐出側軸受室51への漏洩を封止する観点から、環状溝部26よりも吐出側軸受7、8(第1軸部24)側に存在するテーパ状の第1の対向面25sの長さが長くなる位置、すなわち、ロータ歯部21により接近した位置が好ましい。また、環状溝部26に対しては潤滑油(軸封用の液体)が供給されるように構成されている。すなわち、ケーシング4の給油路60の第2経路62は、吐出側軸孔54の第2のテーパ面(第2の対向面54s)における第2軸部25の環状溝部26に対向する位置で開口するように構成されている。
【0036】
また、雌ロータ3の吐出側シャフト部33及びケーシング4の吐出側軸孔55の構造は、図1に示すように、雄ロータ2の吐出側シャフト部23及びケーシング4の吐出側軸孔54の構造と同様なものである。すなわち、雌ロータ3の吐出側シャフト部33は、吐出側軸受11、12が取り付けられる第1軸部34と、第1軸部34とロータ歯部31との間に位置する第2軸部35とで構成されている。第1軸部34は、外径が一定の円柱状に形成されている。第2軸部35は、ケーシング4の吐出側軸孔55内に配置される部分であり、その全長が吐出側軸受11、12(第1軸部34)に向かって先細りのテーパ状(円錐台状)に形成されている。ケーシング4(吐出側ケーシング42)の吐出側軸孔55は、吐出側シャフト部33の第2軸部35の形状に応じて、その全長が吐出側軸受室52に向かって先細りのテーパ状(円錐台状)に形成されている。
【0037】
第2軸部35の外周面とケーシング4の吐出側軸孔55を形成する内周面とは、所定の範囲の大きさ(例えば、数十~数百μm)の隙間をあけて互いに対向する第1の対向面35sと第2の対向面55sとを有している。第2軸部35の第1の対向面35sは、その全体が吐出側軸受11、12の方向(ロータ歯部31から離れる方向)に向かって先細りの第1のテーパ面(吐出側軸受11、12に向かうにつれて徐々に接近する傾斜面)として形成されている。ケーシング4の吐出側軸孔55の第2の対向面55sは、その全長が第2軸部35の第1のテーパ面(第1の対向面35s)の形状に応じて吐出側軸受室52の方向(収容室45から離れる方向)に向かって先細りの第2のテーパ面(吐出側軸受室52に向かうにつれて徐々に接近する傾斜面)として形成されている。このような構造により、雌ロータ3の第2軸部35の第1のテーパ面(第1の対向面35s)とケーシング4の吐出側軸孔55の第2のテーパ面(第2の対向面55s)とによって形成される隙間(吐出側軸隙間)は、収容室45から離れる方向に先細りのテーパ面状(円錐面状)となっている。
【0038】
第2軸部35の第1のテーパ面(第1の対向面35s)には、環状溝部36が設けられている。環状溝部36は、環状の吐出側軸隙間の大きさ(数十~数百μm)に対して容積が相対的に大きな膨張室として機能するものである。環状溝部36の形成位置は、環状溝部36よりも吐出側軸受11、12(第1軸部34)側にテーパ状の第1の対向面35sが残存する位置であれば任意である。環状溝部36は、例えば図1に示すように、第1の対向面35sにおける第1軸部34よりもロータ歯部31に近い位置、すなわち、テーパ状の第2軸部35の外径が相対的に大きな位置に設けられている。なお、環状溝部36の形成位置は、作動室C内の圧縮気体の吐出側軸隙間を介した吐出側軸受室52への漏洩を封止する観点から、環状溝部36よりも吐出側軸受11、12(第1軸部34)側に存在するテーパ状の第1の対向面35sの長さが長くなる位置、すなわち、ロータ歯部31により接近した位置が好ましい。また、環状溝部36に対しては潤滑油(軸封用の液体)が供給されるように構成されている。すなわち、給油路60の第2経路62は、吐出側軸孔55の第2のテーパ面(第2の対向面55s)における第2軸部35の環状溝部36に対向する位置で開口するように構成されている。
【0039】
次に、第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機における軸封の作用及び効果について比較例のスクリュー圧縮機と比較しつつ説明する。ここでは、雄ロータ側の吐出側軸隙間に対する軸封についてのみ説明するが、雌ロータ側の吐出側軸隙間に対する軸封についても同様である。
【0040】
先ず、比較例のスクリュー圧縮機の構造及びその構造に起因した吐出側の軸封の問題点について図5を用いて説明する。図5は本発明の第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機に対する比較例のスクリュー圧縮機における吐出側部分の構造を拡大した状態で示す断面図である。
【0041】
図5に示す比較例のスクリュー圧縮機201が本実施の形態に係るスクリュー圧縮機1に対して相違する主要な点は、雄ロータ202の吐出側シャフト部223の形状及びケーシング204の吐出側軸孔254の形状が異なることである。具体的には、比較例の雄ロータ202は、吐出側軸受7、8が取り付けられた円柱状の第1軸部24と、第1軸部24とロータ歯部21との間に位置する円柱状の第2軸部225とを有する吐出側シャフト部223を備えている。第2軸部225は、環状溝部が無い構成である。比較例のケーシング204(吐出側ケーシング242)の吐出側軸孔254は、吐出側シャフト部223の第2軸部225の形状に応じて円柱状に形成されている。
【0042】
雄ロータ202の第2軸部225の外周面とケーシング204の吐出側軸孔254を形成する内周面とは、所定の範囲の大きさ(例えば、数十~数百μm)の隙間をあけて互いに対向する第1の対向面225sと第2の対向面254sとを有している。第2軸部225の第1の対向面225sは、その全体が円筒面として形成されている。ケーシング204の吐出側軸孔254の第2の対向面254sは、その全長が第2軸部225の円筒面の第1の対向面225sの形状に応じて円筒面として形成されている。このような構造により、雄ロータ202の第2軸部225における円筒面の第1の対向面225sとケーシング204の吐出側軸孔254の円筒面の第2の対向面254sとによって形成される隙間(吐出側軸隙間)は、円筒面状となっている。
【0043】
このように、上述した構造の比較例のスクリュー圧縮機201における吐出側シャフト部223及びケーシング204の吐出側軸孔254は、本実施の形態に係るスクリュー圧縮機1の吐出側シャフト部23及びケーシング4の吐出側軸孔54に対して、第2軸部225の第1の対向面225s及び吐出側軸孔254の第2の対向面254sが円筒面であること及びそれに伴い吐出側軸隙間が円筒面状になっていることが異なっていると共に、第2軸部225に環状溝部が設けられていないことが異なっている。
【0044】
上述した構造の比較例のスクリュー圧縮機201では、吐出側シャフト部223の第2軸部225の第1の対向面225sとケーシング204の吐出側軸孔254の第2の対向面254sとの環状の隙間(吐出側軸隙間)に対して、ケーシング204の給油路60の第2経路62から潤滑油を供給する。環状の吐出側軸隙間に対しては、雄ロータ202のロータ歯部21の吐出側端面21cにおいて周方向に並ぶ複数の作動室C(図3参照)から圧縮気体が流入する。周方向に並ぶ複数の作動室Cには圧力分布があるので、前述したように、吐出側軸隙間に流入する圧縮気体にも周方向の圧力分布が生じている。給油路60の潤滑油の圧力が比較例のスクリュー圧縮機201の吐出圧よりも低い場合、吐出側軸隙間に供給された潤滑油が吐出側軸隙間に流入した圧縮気体のうち吐出行程や圧縮行程の後期にある相対的に高圧の作動室Cからの圧縮気体の影響を受けることで、環状の吐出側軸隙間の全体に油膜(オイルシール)を形成することは難しい。このため、相対的に高圧の圧縮気体が吐出側軸隙間を介して吐出側軸受室51へ漏洩してしまう傾向にあり、吐出側軸隙間の油膜(オイルシール)によって圧縮気体の漏洩Lgを抑制する効果が限定的になってしまう。
【0045】
次に、第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機における吐出側の軸封の作用及び効果について図6を用いて説明する。図6は本発明の第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機における吐出側の軸封の作用及び効果を示す説明図である。
【0046】
本実施の形態のスクリュー圧縮機1においては、図6に示すように、雄ロータ2の吐出側シャフト部23における第2軸部25の第1の対向面25sが吐出側軸受7、8の方向に向かって先細りの第1のテーパ面として形成されていると共に、ケーシング4の吐出側軸孔54の第2の対向面54sが第2軸部25の第1のテーパ面(第1の対向面25s)の形状に応じて吐出側軸受室51の方向に向かって先細りの第2のテーパ面として形成されている。これにより、吐出側軸隙間Sc(拡大図も参照)が吐出側軸受室51の方向に先細りのテーパ面状(円錐面状)になっている。加えて、第2軸部25の第1の対向面25sにおける軸方向の中途位置に環状溝部26が設けられていると共に、吐出側軸孔54の第2の対向面54sにおける環状溝部26に対向する位置に給油路60の第2経路62が開口している。
【0047】
このような構造において、給油路60の第2経路62から吐出側軸隙間Scに対して吐出側軸受7、8の潤滑油が供給される。給油路60の第2経路62の潤滑油は、先ず、環状溝部26内に流入する。比較例のスクリュー圧縮機201の説明のところでも述べたように、雄ロータ2のロータ歯部21の吐出側端面21cにおいて周方向に並ぶ複数の作動室C(図3参照)に圧力分布があるので、吐出側軸隙間Scに流入する圧縮気体にも周方向の圧力分布が生じている。周方向に圧力分布がある圧縮気体が環状溝部26内に流入すると、環状の吐出側軸隙間Scに対して相対的に大きな容積を有する環状溝部26が膨張室の役割を果たす。すなわち、吐出行程や圧縮行程の後期の相対的に高圧の作動室Cから環状溝部26に流入した圧縮気体と相対的に低圧の作動室Cから環状溝部26に流入した圧縮気体とが混合して周方向の圧力分布が均一化される。したがって、環状溝部26に流入した圧縮気体は、吐出行程や圧縮行程の後期にある作動室Cの圧力よりも低い状態になる。このため、給油路60の潤滑油の圧力がスクリュー圧縮機1の吐出圧よりも低い場合であっても、環状の吐出側軸隙間Scの周方向の全体に亘って油膜(オイルシール)を形成することが可能となる。
【0048】
環状溝部26内に流入した潤滑油は、吐出側軸隙間Scを介して吐出側軸受室51に流入して吐出側軸受7、8を潤滑する。このとき、環状溝部26の周方向全体に亘って潤滑油が充填される状態になることが望ましい。環状溝部26の周方向全体に潤滑油が充填されていない場合、吐出側軸隙間Scに流入した圧縮気体が環状溝部26内に巻き込まれて吐出側軸受室51に漏洩してしまう懸念がある。環状溝部26の周方向全体に亘って潤滑油を充填するためには、給油路60の第2経路62から環状溝部26に流入する潤滑油の流量が環状溝部26から吐出側軸受室51へ流出する潤滑油の流量よりも大きくなる必要がある。
【0049】
本実施の形態においては、環状溝部26よりも吐出側軸受7、8側の吐出側軸隙間Scの領域(下流側の流路)において流動抵抗が生じるように構成することで、環状溝部26から吐出側軸受室51へ流出する潤滑油の流量が制限されている。具体的には、図6の拡大図に示すように、吐出側軸隙間Scを介して環状溝部26から吐出側軸受室51へ流れる潤滑油Oは、その粘性によって吐出側シャフト部23の第2軸部25の回転に伴って周方向に向かって流動する。このとき、潤滑油には径方向外側に向かう遠心力Fcが作用する。潤滑油Oに作用する遠心力Fcは、ケーシング4の吐出側軸孔54の第2の対向面54sに沿った方向の第1分力Fc1とそれに直交する方向の第2分力Fc2とに分解することができる。ケーシング4の第2の対向面54sは収容室45側に向かって内径が徐々に大きくなる第2のテーパ面なので、第1分力Fc1は収容室45側を向く力となる。したがって、吐出側軸受室51の方向に先細りのテーパ面状の吐出側軸隙間Scを介して環状溝部26から吐出側軸受室51へ流れる潤滑油には、潤滑油の流れ方向の上流側に向かう力が作用する。すなわち、吐出側軸隙間Scを介して環状溝部26から吐出側軸受室51へ流れる潤滑油には、流動抵抗が生じている。この流動抵抗によって、環状溝部26から吐出側軸受室51へ流出する潤滑油の流量が抑制される。その結果、環状溝部26の周方向全体に亘って潤滑油が充填された状態を維持することができる。なお、流動抵抗の大きさは、テーパ面状の吐出側軸隙間Scにおける先端側(吐出側軸受室51側)の半径Rtと環状溝部26側の半径Rgの大きさによって規定されるものである。
【0050】
このように、給油路60の第2経路62から環状溝部26に対して供給された潤滑油は、環状溝部26の周方向全体に充填された状態を維持しながら、環状溝部26から吐出側軸受室51へテーパ面状の吐出側軸隙間Scを介して流動する。すなわち、吐出側軸隙間Scにおける環状溝部26よりも吐出側軸受室51側に油膜Oが形成される。したがって、吐出側軸隙間Scに供給される潤滑油Oの圧力がスクリュー圧縮機1の吐出圧よりも低い場合であっても、環状溝部26の周方向全体に亘って充填されている潤滑油及び環状溝部26よりも吐出側軸受室51側に形成された油膜Oによって、複数の作動室Cから吐出側軸隙間への圧縮気体の漏洩量を抑制することができるので、吐出側の軸封性能が向上する。吐出側の軸封性能の効果の観点からは、環状溝部26から吐出側軸受室51(第1軸部24)側に向かって流動する油膜Oの経路が長い方が軸封性能を向上させるためには有利である。したがって、軸封性能の向上を考えた場合、環状溝部26及び給油路60の第2経路62の開口部は、第1軸部24(吐出側軸受室51)よりもロータ歯部21(収容室45)により近い位置に形成する方が好ましい。
【0051】
また、第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機1の特徴部の構造は、比較例のスクリュー圧縮機201の構造の場合よりも、圧縮気体の吐出側軸隙間Scを介した吐出側軸受室51への漏洩量が少なくなる。この理由を図7及び図8を用いて説明する。図7図5に示す比較例のスクリュー圧縮機における吐出側軸隙間を介した圧縮気体の漏洩量についての説明図である。図8は本発明の第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機における吐出側軸隙間を介した圧縮気体の漏洩量についての説明図である。
【0052】
吐出側軸隙間への潤滑油の供給を行わない場合を想定する。このとき、本実施の形態に係るスクリュー圧縮機1及び比較例のスクリュー圧縮機201における、作動室C内の圧縮気体の吐出側軸隙間を介した吐出側軸受室51への漏洩量を比較する。ただし、雄ロータ2の回転の影響を無視する。すなわち、雄ロータ2が静止している状況において、吐出行程にある作動室Cの圧力P1と吐出側軸受室51の圧力P2との圧力差ΔPによる漏洩を考える。図7及び図8に示すように、吐出側軸隙間の大きさh、すなわち、ケーシング4、204の吐出側軸孔54、254の内径と雄ロータ2、202の吐出側シャフト部23、223の第2軸部25、225の外径との径差hは、本実施の形態のスクリュー圧縮機1と比較例のスクリュー圧縮機201とで同じ値とする。
【0053】
このとき、比較例のスクリュー圧縮機201における圧縮気体の吐出側軸隙間(2重円筒部)Sceを介した漏洩量Qeは、以下の式(1)により求められる。式(1)において、R図5及び図7に示すケーシング204の吐出側軸孔254の孔径(内径)を、Leは図5及び図7に示す吐出側軸孔254の内周面に沿った吐出側軸隙間Sceの長さを、μは気体の粘度を示している。
【0054】
【数1】
【0055】
一方、本実施の形態に係るスクリュー圧縮機1における圧縮気体の吐出側軸隙間(2重円筒部)Scを介した漏洩量Qiは、以下の式(2)により求められる。式(2)において、R図6及び図8に示すケーシング4のテーパ状の吐出側軸孔54における収容室45側(大径側)の孔径(内径)を、R図5及び図7に示すケーシング4のテーパ状の吐出側軸孔54における吐出側軸受室51側(小径側)の孔径(内径)を、Liは図6及び図8に示す吐出側軸孔54の内周面に沿った吐出側軸隙間の長さを、μは気体の粘度を示している。
【0056】
【数2】
【0057】
ここで、以下の大小関係が成立している。
【0058】
【数3】
【0059】
したがって、式(1)から求められる漏洩量Qeと式(2)から求められる漏洩量Qiを比較すると、比較例の漏洩量Qeは本実施の形態の漏洩量Qiよりも多くなる(Qe>Qi)。雄ロータ2、202が回転している場合であっても、Qe>Qiの関係は維持される。
【0060】
このように、本実施の形態においては、雄ロータ2の吐出側シャフト部23における第2軸部25の第1の対向面25s(第1のテーパ面)とケーシング4の吐出側軸孔54の第2の対向面54s(第2のテーパ面)との間に形成される吐出側軸隙間Scをテーパ面状(円錐面状)にすることで、比較例のスクリュー圧縮機201における円筒面状の吐出側軸隙間Sceよりも、圧縮気体の漏洩量を低減することが可能である。このため、テーパ面状(円錐面状)の当該吐出側軸隙間Scへの潤滑油の供給量を低減することができ、その分、機械損失を低減することが可能となる。
【0061】
上述した本実施の形態のスクリュー圧縮機1は、螺旋状の歯21a、31aを有するロータ歯部21、31及びロータ歯部21、31における軸方向の吐出側端に設けられた吐出側シャフト部23、33(シャフト部)を含む雄ロータ2及び雌ロータ3(スクリューロータ)と、ロータ歯部21、31を収容する収容室45、吐出側シャフト部23、33(シャフト部)が貫通する吐出側軸孔54、55(軸孔)、外部から供給される潤滑油(液体)を吐出側軸孔54、55(軸孔)に導く給油路60の第2経路62(給液路)を有し、ロータ歯部21、31と共に作動室Cを形成するケーシング4とを備えている。吐出側シャフト部23、33(シャフト部)における吐出側軸孔54、55(軸孔)に配置される第2軸部25、35(所定部分)とケーシング4の吐出側軸孔54、55(軸孔)は、隙間Scをあけて互いに対向する第1の対向面25s、35sと第2の対向面54s、55sとを有する。吐出側シャフト部23、33(シャフト部)は第1の対向面25s、35sに環状溝部26、36を有し、第2経路62(給液路)はケーシング4の吐出側軸孔54、55(軸孔)の第2の対向面54s、55sにおける環状溝部26、36に対向する位置で開口するように構成される。吐出側シャフト部23、33(シャフト部)の第2軸部25、35(所定部分)及びケーシング4の吐出側軸孔54、55(軸孔)は、環状溝部26、36の位置よりもロータ歯部21、31から遠い領域において、ロータ歯部21、31から離れる方向に向かって径が小さくなる構造部としてのテーパ構造を有している。
【0062】
この構成によれば、周方向に圧力分布がある気体が吐出側軸孔54、55(軸孔)と吐出側シャフト部23、33(シャフト部)の第2軸部25、35(所定部分)の軸隙間Sc(隙間)を介して環状溝部26、36内に流入すると、環状溝部26、36が膨張室の役割を果たすことで気体の圧力分布が均一化される。このため、スクリュー圧縮機1自身の吐出圧力を利用して軸隙間Scに液体を供給する場合においても、環状の軸隙間Scの周方向全体に亘って液膜を形成することが可能となる。加えて、環状溝部26、36よりもロータ歯部21、31から遠い領域において径が小さくなる構造部としてのテーパ構造を設けることで、環状溝部26、36よりも液膜の流れの下流側に、雄ロータ2及び雌ロータ3(スクリューロータ)の回転に伴って生じる遠心力の作用によって液膜の流れに流動抵抗が生じる。この流動抵抗により、液膜の流量が抑制されるので、環状溝部26、36が液体で充填される状態を維持することが可能となる。したがって、スクリュー圧縮機1自身の吐出圧力を利用して軸隙間Scに液体を供給する場合において、液膜による軸封性能の向上が可能となる。
【0063】
加えて、この構成によれば、シールリング等の他の軸封部材を用いることなく、雄ロータ2及び雌ロータ3(スクリューロータ)の吐出側シャフト部23、33(シャフト部)の形状及びそれに対応するケーシング4の吐出側軸孔54、55(軸孔)の形状の特徴のみによって吐出側の軸封を行うことができるので、吐出側の軸封の構成を簡素化することができる。
【0064】
また、本実施の形態のスクリュー圧縮機1においては、吐出側シャフト部23、33(シャフト部)の第2軸部25、35(所定部分)及びケーシング4の吐出側軸孔54、55(軸孔)は、環状溝部26、36の位置よりもロータ歯部21、31から遠い領域の全体がテーパ構造として構成されている。
【0065】
この構成によれば、吐出側シャフト部23、33(シャフト部)の第2軸部25、35(所定部分)と吐出側軸孔54、55(軸孔)との間に形成される隙間(軸隙間Sc)うち、環状溝部26、36よりも下流側の全体がテーパ面状(円錐面状)に形成されるので、環状溝部26、36よりも下流側を流動する油膜Oの全長に亘って遠心力を作用させることができる。
【0066】
また、本実施の形態のスクリュー圧縮機1においては、吐出側シャフト部23、33(シャフト部)の第2軸部25、35(所定部分)及びケーシング4の吐出側軸孔54、55(軸孔)が、環状溝部26、36の位置よりもロータ歯部21、31に近い領域においても、ロータ歯部21、31から離れる方向に向かって径が小さくなるテーパ構造を有している。
【0067】
この構成によれば、吐出側シャフト部23、33(シャフト部)の第2軸部25、35(所定部分)と吐出側軸孔54、55(軸孔)との間に形成される軸隙間Scの全体がテーパ面状(円錐面状)に形成されるので、円筒面状の軸隙間よりも、圧縮気体の漏洩量を低減することが可能である。
【0068】
[第1の実施の形態の変形例]
次に、本発明の第1の実施の形態の変形例に係るスクリュー圧縮機について図9を用いて例示説明する。図9は本発明の第1の実施の形態の変形例に係るスクリュー圧縮機における吐出側部分の構造を拡大した状態で示す断面図である。なお、図9において、図1図8に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0069】
図9に示す第1の実施の形態の変形例によるスクリュー圧縮機1Aが第1の実施の形態によるスクリュー圧縮機1に対して異なる点は、雄ロータ2Aの吐出側シャフト部23Aにおける第2軸部25Aの構造、及び、当該吐出側シャフト部23Aの第2軸部25Aが配置されるケーシング4A(吐出側ケーシング42A)の吐出側軸孔54Aの構造が異なることである。図9では、雄ロータ2Aの吐出側シャフト部23A及びそれに対応するケーシング4Aの吐出側軸孔54Aのみが示されているが、雌ロータの吐出側シャフト部及びそれに対応するケーシング4Aの吐出側軸孔も同様な構造を採用することが可能である。
【0070】
具体的には、雄ロータ2Aの吐出側シャフト部23Aにおける第2軸部25Aは、第1軸部24に繋がる円柱軸部27と、円柱軸部27よりもロータ歯部21側に位置して円柱軸部27に連続するテーパ軸部28とで構成されている。円柱軸部27の外径は、例えば、第1軸部24の外径よりも大きく設定されている。テーパ軸部28は、円柱軸部27の方向(ロータ歯部21から離れる方向)に向かって先細りのテーパ状(円錐台状)に形成されている。ケーシング4A(吐出側ケーシング42A)の吐出側軸孔54Aは、吐出側シャフト部23Aの第2軸部25Aの形状に応じて、第2軸部25Aの円柱軸部27が配置される第1孔部541と、第2軸部25Aのテーパ軸部28が配置される第2孔部542とで構成されている。第1孔部541は、一方側が吐出側軸受室51に開口すると共に、他方側が第2孔部542に連続する。第2孔部542は、一方側が第1孔部541に連続すると共に、他方側が収容室45に開口する。
【0071】
第2軸部25Aにおける円柱軸部27の外周面とケーシング4Aの吐出側軸孔54Aにおける第1孔部541を形成する内周面とは、所定の範囲の大きさ(例えば、数十~数百μm)の隙間をあけて互いに対向する第1の対向面27sと第2の対向面541sとを有している。円柱軸部27の第1の対向面27sおよび第1孔部541の第2の対向面541sはそれぞれ外径及び内径が略一定の円筒面として形成されている。第2軸部25Aにおけるテーパ軸部28の外周面とケーシング4Aの吐出側軸孔54Aにおける第2孔部542を形成する内周面とは、所定の範囲の大きさ(例えば、数十~数百μm)の隙間をあけて互いに対向する第1の対向面28sと第2の対向面542sとを有している。テーパ軸部28の第1の対向面28sは、吐出側軸受7、8の方向(ロータ歯部21から離れる方向)に向かって先細りの第1のテーパ面(吐出側軸受7、8に向かうにつれて徐々に接近する傾斜面)として形成されている。ケーシング4Aの第2孔部542の第2の対向面542sは、テーパ軸部28の第1のテーパ面(第1の対向面28s)の形状に応じて吐出側軸受室51の方向(収容室45から離れる方向)に向かって先細りの第2のテーパ面(吐出側軸受室51に向かうにつれて徐々に接近する傾斜面)として形成されている。
【0072】
すなわち、第2軸部25Aの第1の対向面は、円筒面として構成された円柱軸部27の第1の対向面27sである第1外周対向面部と、第1外周対向面部27sよりもロータ歯部21の近くに位置し、ロータ歯部21から離れる方向に向かって先細りの第1のテーパ面として構成されたテーパ軸部28の第1の対向面28sである第2外周対向面部とで構成されている。ケーシング4Aの吐出側軸孔54Aの第2の対向面は、第2軸部25Aの第1外周対向面部である円柱軸部27の第1の対向面27sに対向する円筒面として構成された第1孔部541の第2の対向面541sである第1内周対向面部と、第1内周対向面部541sよりも収容室45の近くに位置し、第2軸部25Aの第2外周対向面部であるテーパ軸部28の第1の対向面28sに対向し、収容室45から離れる方向に先細りの第2のテーパ面として構成された第2孔部542の第2の対向面542sである第2内周対向面部とで構成されている。
【0073】
本変形例においては、雄ロータ2Aの第2軸部25Aの第1の対向面27s、28sとケーシング4Aの吐出側軸孔54Aの第2の対向面541s、542sとの間に形成される隙間(吐出側軸隙間)のうち、円柱軸部27の第1の対向面27sと第1孔部541の第2の対向面541sとの間に形成される吐出側軸隙間が円筒面状になると共に、テーパ軸部28の第1の対向面28sと第2孔部542の第2の対向面542sとの間に形成される吐出側軸隙間が収容室45から離れる方向に向かって先細りのテーパ面状(円錐面状)になる。
【0074】
第2軸部25Aのテーパ軸部28の第1の対向面28s(第1のテーパ面)には、膨張室として機能する環状溝部26が設けられている。環状溝部26の形成位置は、環状溝部26よりも吐出側軸受7、8(第1軸部24)側にテーパ状の第1の対向面28sが残存する位置であれば任意である。環状溝部26は、例えば図9に示すように、第1の対向面28sにおける円柱軸部27とロータ歯部21との間の中途位置に設けられている。なお、環状溝部26の形成位置は、作動室C内の圧縮気体の吐出側軸隙間を介した吐出側軸受室51への漏洩を封止する観点から、環状溝部26よりも吐出側軸受7、8(第1軸部24)側に存在するテーパ状の第1の対向面28sの長さが長くなる位置、すなわち、ロータ歯部21により接近した位置が好ましい。また、環状溝部26に対しては潤滑油(軸封用の液体)が供給されるように構成されている。すなわち、ケーシング4Aの給油路60の第2経路62は、吐出側軸孔54Aの第2孔部542の第2の対向面542s(第2のテーパ面)における第2軸部25Aのテーパ軸部28の環状溝部26に対向する位置で開口するように構成されている。
【0075】
このような構造では、周方向に圧力分布がある圧縮気体が吐出側軸隙間を介して環状溝部26内に流入すると、環状溝部26が膨張室の役割を果たすことで、吐出行程や圧縮行程の後期にある作動室Cから漏洩した圧縮気体の圧力が低下する。したがって、給油路60から環状溝部26に供給された潤滑油は、その圧力がスクリュー圧縮機1の吐出圧よりも低い場合であっても、環状溝部26の周方向全体に亘って流入可能となり、吐出側軸隙間を介して吐出側軸受室51に流入して吐出側軸受7、8を潤滑する。すなわち、環状溝部26よりも吐出側軸受室51側の環状の吐出側軸隙間の周方向の全体に亘って油膜(オイルシール)を形成することが可能となる。
【0076】
また、本変形例においては、雄ロータ2Aの吐出側シャフト部23Aにおける第2軸部25Aの第1の対向面の一部分28sが吐出側軸受7、8の方向に向かって先細りの第1のテーパ面として形成されていると共に、ケーシング4Aの吐出側軸孔54Aの第2の対向面の一部分542sが第2軸部25Aの第1のテーパ面(第1の対向面の一部分28s)の形状に応じて吐出側軸受室51の方向に向かって先細りの第2のテーパ面として形成されている。これにより、吐出側軸隙間のうちの収容室45に近接する側の一部分が吐出側軸受室51の方向に先細りのテーパ面状(円錐面状)になる。
【0077】
このような構造では、環状溝部26よりも吐出側軸受7、8側の吐出側軸隙間の領域(下流側の流路)において流動抵抗が生じる。すなわち、吐出側軸受室51の方向に先細りのテーパ面状の吐出側軸隙間を介して環状溝部26から吐出側軸受室51へ流れる潤滑油には、遠心力により潤滑油の流れ方向の上流側に向かう力が作用する。この流動抵抗によって、環状溝部26から吐出側軸受室51へ流出する潤滑油の流量が抑制されるので、環状溝部26の周方向全体に亘って潤滑油が充填された状態を維持することができる。
【0078】
このように、給油路60の第2経路62から環状溝部26に対して供給された潤滑油は、環状溝部26の周方向全体に充填された状態を維持しながら、環状溝部26から吐出側軸受室51へテーパ面状の吐出側軸隙間を介して流動する。すなわち、吐出側軸隙間における環状溝部26よりも吐出側軸受室51側に油膜が形成される。したがって、吐出側軸隙間に供給される潤滑油の圧力がスクリュー圧縮機1の吐出圧よりも低い場合であっても、環状溝部26の周方向全体に亘って充填されている潤滑油及び環状溝部26よりも吐出側軸受室51側に形成された油膜によって、複数の作動室Cから吐出側軸隙間への圧縮気体の漏洩量を抑制することができるので、吐出側の軸封性能が向上する。
【0079】
上述した第1の実施の形態の変形例によれば、第1の実施の形態と同様に、周方向に圧力分布がある気体が吐出側軸孔54A(軸孔)と吐出側シャフト部23A(シャフト部)の第2軸部25A(所定部分)の軸隙間Sc(隙間)を介して環状溝部26内に流入すると、環状溝部26が膨張室の役割を果たすことで気体の圧力分布が均一化される。このため、スクリュー圧縮機1A自身の吐出圧力を利用して軸隙間Scに液体を供給する場合においても、環状の軸隙間Scの周方向全体に亘って液膜を形成することが可能となる。加えて、環状溝部26よりもロータ歯部21から遠い領域において径が小さくなる構造部としてのテーパ構造を設けることで、環状溝部26よりも液膜の流れの下流側に、雄ロータ2A(スクリューロータ)の回転に伴って生じる遠心力の作用によって液膜の流れに流動抵抗が生じる。この流動抵抗により、液膜の流量が抑制されるので、環状溝部26が液体で充填される状態を維持することが可能となる。したがって、スクリュー圧縮機1A自身の吐出圧力を利用して軸隙間Scに液体を供給する場合において、液膜による軸封性能の向上が可能となる。
【0080】
また、本変形例に係るスクリュー圧縮機1Aにおいては、吐出側シャフト部23A(シャフト部)の第2軸部25A(所定部分)及びケーシング4Aの軸孔54Aは、環状溝部26の位置よりもロータ歯部21から遠い領域において、一部分28のみがテーパ構造として構成されている。この構成によれば、吐出側シャフト部23A(シャフト部)の剛性を第1の実施の形態の吐出側シャフト部23よりも高めることができる。
【0081】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係るスクリュー圧縮機の構造について図10を用いて例示説明する。図10は本発明の第2の実施の形態に係るスクリュー圧縮機を一部省略して示す断面図である。なお、図10において、図1図9に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0082】
図10に示す第2の実施の形態によるスクリュー圧縮機1Bが第1の実施の形態によるスクリュー圧縮機1に対して異なる点は、雄ロータ2Bの吐出側シャフト部23Bにおける第2軸部25Bがテーパ構造ではなく段付構造を有していること、及び、当該吐出側シャフト部23Bの第2軸部25Bが配置されるケーシング4B(吐出側ケーシング42B)の吐出側軸孔54Bがテーパ構造ではなく第2軸部25Bの形状に応じた段付構造を有していることである。図10では、雄ロータ2Bの吐出側シャフト部23B及びそれに対応するケーシング4Bの吐出側軸孔54Bのみが示されているが、雌ロータの吐出側シャフト部及びそれに対応するケーシング4Bの吐出側軸孔も同様な構造を採用することが可能である。
【0083】
具体的には、雄ロータ2Bの吐出側シャフト部23Bにおける第2軸部25Bは、環状溝部26の位置よりもロータ歯部21から遠い領域において、ロータ歯部21から離れる方向に向かって径が小さくなる段付構造を有している。第2軸部25Bの段付構造は、一段の段差部のみで構成されている。詳細には、第2軸部25Bは、第1軸部24に繋がる第1円柱軸部251と、第1円柱軸部251よりもロータ歯部21側に位置して第1円柱軸部251に繋がる第2円柱軸部252とを有している。第2円柱軸部252は、第1円柱軸部251よりも大径となるように構成されている。第2軸部25Bは、大径側の第2円柱軸部252と小径側の第1円柱軸部251との接続位置において環状の段差部29を有している。
【0084】
ケーシング4B(吐出側ケーシング42B)の吐出側軸孔54Bは、吐出側シャフト部23Bの第2軸部25Bの構造に応じて、環状溝部26の位置よりもロータ歯部21から遠い領域において、ロータ歯部21から離れる方向に向かって径が小さくなる段付構造を有している。吐出側軸孔54Bの段付構造は、一段の段差部のみで構成されている。詳細には、吐出側軸孔54Bは、第2軸部25Bの第1円柱軸部251が配置される第1孔部541Bと、第2軸部25Bの第2円柱軸部252が配置される第2孔部542Bとで構成されている。第1孔部541Bは、一方側が吐出側軸受室51に開口すると共に、他方側が第2孔部542Bに開口する。第2孔部542Bは、一方側が第1孔部541Bに開口すると共に、他方側が収容室45に開口する。第2孔部542Bは、穴径が第1孔部541Bよりも大径となるように構成されている。吐出側軸孔54Bは、大径側の第2孔部542Bと小径側の第1孔部541Bとの接続位置において環状の段差部56を有している。
【0085】
第2軸部25Bにおける第1円柱軸部251の外周面とケーシング4Bの吐出側軸孔54Bにおける第1孔部541Bを形成する内周面とは、径方向に所定の範囲の大きさ(例えば、数十~数百μm)の隙間をあけて互いに対向する第1の対向面251s(図11参照)と第2の対向面541sとを有している。第1円柱軸部251の第1の対向面251sおよび第1孔部541Bの第2の対向面541sはそれぞれ外径及び内径が一定の円筒面として形成されている。第2軸部25Bにおける第2円柱軸部252の外周面とケーシング4Bの吐出側軸孔54Bにおける第2孔部542Bを形成する内周面とは、径方向に所定の範囲の大きさ(例えば、数十~数百μm)の隙間をあけて互いに対向する第1の対向面252s(図11参照)と第2の対向面542sとを有している。第2円柱軸部252の第1の対向面252sおよび第2孔部542Bの第2の対向面542sはそれぞれ外径及び内径が一定の円筒面として形成されている。また、第2軸部25Bの段差部29と吐出側軸孔54Bの段差部56とは、軸方向に所定の範囲の大きさ(例えば、数十~数百μm)の隙間をあけて互いに対向するように構成されている。
【0086】
すなわち、第2軸部25Bの第1の対向面は、第1円柱軸部251の第1の対向面251sである円筒面の第1外周対向面部と、第1外周対向面部251sよりもロータ歯部21の近くに位置し、第1円柱軸部251よりも大径の第2円柱軸部252の第1の対向面252sである円筒面の第2外周対向面部と、小径の第1外周対向面部251sと大径の第2外周対向面部252sとの接続位置に形成された段差部29とで構成されている。ケーシング4Bの吐出側軸孔54Bの第2の対向面は、第1円柱軸部251の第1の対向面251s(第2軸部25Bの第1外周対向面部)に対向する円筒面として構成された第1孔部541Bの第2の対向面541sである第1内周対向面部と、第1内周対向面部541sよりも収容室45の近くに位置し、第2円柱軸部252の第1の対向面252s(第2軸部25Bの第2外周対向面部)に対向し、第1内周対向面部541sよりも大径の第2孔部542Bの第2の対向面542sである第2内周対向面部と、小径の第1内周対向面部541sと大径の第2内周対向面部542sとの接続位置に形成された段差部56とで構成されている。
【0087】
本実施の形態においては、雄ロータ2Bの第2軸部25Bの第1の対向面251s、252s、29とケーシング4Bの吐出側軸孔54Bの第2の対向面541s、542s、56との間に形成される隙間(吐出側軸隙間)のうち、第1円柱軸部251の第1の対向面251sと第1孔部541Bの第2の対向面541sとの間に形成される吐出側軸隙間が円筒面状になると共に、第2円柱軸部252の第1の対向面252sと第2孔部542Bの第2の対向面542sとの間に形成される吐出側軸隙間が円筒面状になる。第2軸部25Bの段差部29と吐出側軸孔54Bの段差部56との間に形成される吐出側軸隙間が径方向に拡がる円環状になる。
【0088】
本実施の形態においては、第2軸部25Bにおける大径側の第2円柱軸部252の第1の対向面252sに環状溝部26が設けられている。環状溝部26は、第2軸部25Bにおける段差部29よりもロータ歯部21に近い領域に設けられる必要がある。環状溝部26は、吐出側軸隙間の大きさ(数十~数百μm)に対して容積が相対的に大きな膨張室として機能するものである。なお、環状溝部26の形成位置は、作動室C内の圧縮気体の吐出側軸隙間を介した吐出側軸受室51への漏洩を封止する観点から、環状溝部26よりも吐出側軸受7、8(第1軸部24)側に存在する第1の対向面252sの長さが長くなる位置、すなわち、ロータ歯部21により接近した位置が好ましい。
【0089】
次に、第2の実施の形態に係るスクリュー圧縮機における吐出側の軸封の作用及び効果について図11を用いて説明する。図11は本発明の第2の実施の形態に係るスクリュー圧縮機における吐出側の軸封の作用及び効果を示す説明図である。
【0090】
雄ロータ2Bのロータ歯部21の吐出側端面21cにおいて周方向に並ぶ複数の作動室C(図3参照)に圧力分布があるので、吐出側軸隙間Scに流入する圧縮気体にも周方向の圧力分布が生じている。周方向に圧力分布がある圧縮気体が環状溝部26内に流入すると、環状溝部26が膨張室の役割を果たすことで、圧縮気体の周方向の圧力分布が均一化される。このため、給油路60の潤滑油の圧力がスクリュー圧縮機1Bの吐出圧よりも低い場合であっても、環状の吐出側軸隙間Scの周方向の全体に亘って油膜(オイルシール)を形成することが可能となる。
【0091】
環状溝部26内に流入した潤滑油は、吐出側軸隙間Scを介して吐出側軸受室51に流入して吐出側軸受7、8を潤滑する。このとき、環状溝部26の周方向全体に亘って潤滑油が充填される状態になることが望ましく、給油路60の第2経路62から環状溝部26に流入する潤滑油の流量が環状溝部26から吐出側軸受室51へ流出する潤滑油の流量よりも大きくなる必要がある。
【0092】
本実施の形態においては、環状溝部26よりも吐出側軸受7、8側の吐出側軸隙間Scの領域(下流側の流路)において流動抵抗が生じるように構成することで、環状溝部26から吐出側軸受室51へ流出する潤滑油の流量が制限されている。具体的には、環状溝部26から吐出側軸隙間Scを介して吐出側軸受室51へ流れる潤滑油Oは、その粘性によって吐出側シャフト部23Bの第2軸部25Bの回転に伴って周方向に向かって流動する。このとき、図11の拡大図に示すように、第2軸部25Bの段差部29と吐出側軸孔54Bの段差部56との間に形成された吐出側軸隙間Scに存在する潤滑油Oには、径方向外側に向かう遠心力Fcが作用する。したがって、吐出側軸隙間Scを介して環状溝部26から吐出側軸受室51へ流れる潤滑油には、潤滑油の流れ方向の上流側に向かう力が作用する。すなわち、吐出側軸隙間Scを介して環状溝部26から吐出側軸受室51へ流れる潤滑油には流動抵抗が生じている。この流動抵抗によって、環状溝部26から吐出側軸受室51へ流出する潤滑油の流量が抑制される。
【0093】
また、第2軸部25B及び吐出側軸孔54Bが段付構造を有しているので、油膜(オイルフィルム)が流動する流路としての吐出側軸隙間Scには急角度で折れ曲がる部分が存在する。この段付構造に起因する吐出側軸隙間Scの折れ曲がり部は、流動する油膜(オイルフィルム)の流動抵抗となる。
【0094】
このように、環状溝部26よりも吐出側軸受7、8側の吐出側軸隙間Scの領域(下流側の流路)では、遠心力の作用によって流動抵抗が生じると共に、吐出側軸隙間Scの折れ曲がり部によって流動抵抗が生じる。これにより、環状溝部26から吐出側軸受室51へ流出する潤滑油の流量が制限されるので、環状溝部26の周方向全体に亘って潤滑油が充填された状態を維持することができる。なお、遠心力の作用による流動抵抗の大きさは、小径側の第1円柱軸部251の半径Rtと大径側の第2円柱軸部252の半径Rgの大きさによって規定されるものである。
【0095】
したがって、給油路60の第2経路62から環状溝部26に対して供給された潤滑油は、環状溝部26の周方向全体に充填された状態を維持しながら、環状溝部26から吐出側軸受室51へ吐出側軸隙間Scを介して流動する。すなわち、吐出側軸隙間Scにおける環状溝部26よりも吐出側軸受室51側に油膜Oが形成される。吐出側軸隙間Scに供給される潤滑油Oの圧力がスクリュー圧縮機1の吐出圧よりも低い場合であっても、環状溝部26の周方向全体に亘って充填されている潤滑油及び環状溝部26よりも吐出側軸受室51側に形成された油膜Oによって、複数の作動室Cから吐出側軸隙間Scへの圧縮気体の漏洩量を抑制することができるので、吐出側の軸封性能が向上する。吐出側の軸封性能の効果の観点からは、環状溝部26から吐出側軸受室51(第1軸部24)側に向かって流動する油膜Oの経路が長い方が軸封性能を向上させるためには有利である。したがって、軸封性能の向上を考えた場合、環状溝部26及び給油路60の第2経路62の開口部は、ロータ歯部21(収容室45)により近い位置に形成する方が好ましい。
【0096】
上述した第2の実施の形態のスクリュー圧縮機1Bは、螺旋状の歯21aを有するロータ歯部21及びロータ歯部21における軸方向の吐出側端に設けられた吐出側シャフト部23B(シャフト部)を含む雄ロータ2B(スクリューロータ)と、ロータ歯部21を収容する収容室45、吐出側シャフト部23B(シャフト部)が貫通する吐出側軸孔54B(軸孔)、外部から供給される潤滑油(液体)を吐出側軸孔54B(軸孔)に導く給油路60の第2経路62(給液路)を有し、ロータ歯部21と共に作動室Cを形成するケーシング4Bとを備えている。吐出側シャフト部23B(シャフト部)における吐出側軸孔54B(軸孔)に配置される第2軸部25B(所定部分)とケーシング4Bの吐出側軸孔54B(軸孔)は、隙間Scをあけて互いに対向する第1の対向面251、252、29と第2の対向面541s、542s、56とを有する。吐出側シャフト部23B(シャフト部)は第1の対向面252に環状溝部26を有し、第2経路62(給液路)はケーシング4Bの吐出側軸孔54B(軸孔)の第2の対向面における環状溝部26に対向する位置で開口するように構成される。吐出側シャフト部23B(シャフト部)の第2軸部25B(所定部分)及びケーシング4Bの吐出側軸孔54B(軸孔)は、環状溝部26の位置よりもロータ歯部21から遠い領域において、ロータ歯部21から離れる方向に向かって径が小さくなる構造部としての段付構造を有している。
【0097】
この構成によれば、周方向に圧力分布がある気体が吐出側軸孔54B(軸孔)と吐出側シャフト部23B(シャフト部)の第2軸部25B(所定部分)の軸隙間Sc(隙間)を介して環状溝部26内に流入すると、環状溝部26が膨張室の役割を果たすことで気体の圧力分布が均一化される。このため、スクリュー圧縮機1B自身の吐出圧力を利用して軸隙間Scに液体を供給する場合においても、環状の軸隙間Scの周方向全体に亘って液膜を形成することが可能となる。加えて、環状溝部26よりもロータ歯部21から遠い領域において径が小さくなる構造部としての段付構造を設けることで、環状溝部26よりも液膜の流れの下流側に、雄ロータ2B(スクリューロータ)の回転に伴って生じる遠心力の作用によって液膜の流れに流動抵抗が生じる。この流動抵抗により、液膜の流量が抑制されるので、環状溝部26が液体で充填される状態を維持することが可能となる。したがって、スクリュー圧縮機1B自身の吐出圧力を利用して軸隙間Scに液体を供給する場合において、液膜による軸封性能の向上が可能となる。
【0098】
また、本実施の形態のスクリュー圧縮機1Bの吐出側シャフト部23B(シャフト部)の第2軸部25B(所定部分)及びケーシング4Bの吐出側軸孔54B(軸孔)においては、ロータ歯部21から離れる方向に向かって径が小さくなる構造部が段付構造である。
【0099】
この構成によると、油膜(オイルフィルム)が流動する流路としての吐出側軸隙間Scに折れ曲がり部が存在するので、油膜(オイルフィルム)の流れの流動抵抗がさらに増加する。これにより、液膜による軸封性能の更なる向上が可能となる。
【0100】
また、本実施の形態のスクリュー圧縮機1Bにおいては、吐出側シャフト部23B(シャフト部)の第2軸部25B(所定部分)及びケーシング4Bの吐出側軸孔54B(軸孔)の段付構造が一段の段差部のみで構成されている。この構成によると、液膜による軸封性能の向上を可能としつつ、加工の容易性も維持することが可能である。
【0101】
[第2の実施の形態の変形例]
次に、本発明の第2の実施の形態の変形例に係るスクリュー圧縮機について図12を用いて例示説明する。図12は本発明の第2の実施の形態の変形例に係るスクリュー圧縮機における吐出側部分の構造を拡大した状態で示す断面図である。なお、図12において、図1図12に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0102】
図12に示す第2の実施の形態の変形例によるスクリュー圧縮機1Cが第2の実施の形態によるスクリュー圧縮機1Bに対して異なる点は、雄ロータ2Cの吐出側シャフト部23Cにおける第2軸部25Cが5段の段差部を有する段付構造を有すること、及び、当該吐出側シャフト部23Cの第2軸部25Cが配置されるケーシング4C(吐出側ケーシング42C)の吐出側軸孔54Cが第2軸部25Cの形状に応じた5段の段差部を有する段付構造を有していることである。
【0103】
具体的には、雄ロータ2Cの吐出側シャフト部23Cにおける第2軸部25Cは、環状溝部26の位置よりもロータ歯部21から遠い領域において、ロータ歯部21から離れる方向に向かって径が小さくなる段付構造を有している。第2軸部25Cの段付構造は、5段の段差部で構成されている。詳細には、第2軸部25Cは、第1軸部24側からロータ歯部21側に向かって順に、第1円柱軸部251C、第2円柱軸部252C、第3円柱軸部253C、第4円柱軸部254C、第5円柱軸部255C、第6円柱軸部256Cを有している。第2軸部25Cは、第6円柱軸部256Cから第1円柱軸部251Cに向かって順に径が小さくなるように構成されている。第2軸部25Cは、大径側の第6円柱軸部256Cから小径側の第1円柱軸部251Cに向かって順に、第1段差部291、第2段差部292、第3段差部293、第4段差部294、第5段差部295を有している。
【0104】
ケーシング4C(吐出側ケーシング42C)の吐出側軸孔54Cは、吐出側シャフト部23Cの第2軸部25Cの構造に応じて、環状溝部26の位置よりもロータ歯部21から遠い領域において、ロータ歯部21から離れる方向に向かって径が小さくなる段付構造を有している。吐出側軸孔54Cの段付構造は、5段の段差部で構成されている。詳細には、吐出側軸孔54Cは、第2軸部25Cの第1円柱軸部251Cから第6円柱軸部256Cまで順に配置されるように、第1孔部541C、第2孔部542C、第3孔部543C、第4孔部544C、第5孔部545C、第6孔部546Cを有している。吐出側軸孔54Cは、第6孔部546Cから第1孔部541Cに向かって順に径が小さくなるように構成されている。吐出側軸孔54Cは、大径側の第6孔部546Cから小径側の第1孔部541Cに向かって順に、第1段差部561、第2段差部562、第3段差部563、第4段差部564、第5段差部565を有している。
【0105】
第2軸部25Cにおける第1円柱軸部251C~第6円柱軸部256Cの外周面とそれに対応するケーシング4Cの吐出側軸孔54Cにおける第1孔部541C~第6孔部546Cを形成する内周面とは、径方向に所定の範囲の大きさ(例えば、数十~数百μm)の隙間をあけて互いに対向する第1の対向面と第2の対向面とを有している。また、第2軸部25Cにおける第1段差部291~第5段差部295とそれに対応する吐出側軸孔54Cにおける第1段差部561~第5段差部565とは、軸方向に所定の範囲の大きさ(例えば、数十~数百μm)の隙間をあけて互いに対向するように構成されている。
【0106】
本実施の形態においては、第2軸部25Cにおける最大径の第6円柱軸部256Cの外周面に環状溝部26が設けられている。環状溝部26は、吐出側軸隙間の大きさ(数十~数百μm)に対して容積が相対的に大きな膨張室として機能するものである。なお、環状溝部26は、第2軸部25Cにおける第5段差部295よりもロータ歯部21に近い領域に設けられる必要がある。作動室C内の圧縮気体の吐出側軸隙間を介した吐出側軸受室51への漏洩を封止する観点から、環状溝部26の形成位置は、第1段差部291よりもロータ歯部21に接近した位置が好ましい。この場合、吐出側軸隙間を流動する油膜に生じる遠心力の作用が最も大きくなると共に、吐出側軸隙間の流路の長さが最も長くなるので、その分、流動抵抗が大きくなる。
【0107】
上述した第2の実施の形態の変形例によれば、第2の実施の形態と同様に、周方向に圧力分布がある気体が吐出側軸孔54C(軸孔)と吐出側シャフト部23C(シャフト部)の第2軸部25C(所定部分)の軸隙間Sc(隙間)を介して環状溝部26内に流入すると、環状溝部26が膨張室の役割を果たすことで気体の圧力分布が均一化される。このため、スクリュー圧縮機1C自身の吐出圧力を利用して軸隙間Scに液体を供給する場合においても、環状の軸隙間Scの周方向全体に亘って液膜を形成することが可能となる。加えて、環状溝部26よりもロータ歯部21から遠い領域において径が小さくなる構造部としての段付構造を設けることで、環状溝部26よりも液膜の流れの下流側に、雄ロータ2C(スクリューロータ)の回転に伴って生じる遠心力の作用によって液膜の流れに流動抵抗が生じる。この流動抵抗により、液膜の流量が抑制されるので、環状溝部26が液体で充填される状態を維持することが可能となる。したがって、スクリュー圧縮機1C自身の吐出圧力を利用して軸隙間Scに液体を供給する場合において、液膜による軸封性能の向上が可能となる。
【0108】
また、本変形例のスクリュー圧縮機1Cにおいては、吐出側シャフト部23C(シャフト部)の第2軸部25C(所定部分)及びケーシング4Cの吐出側軸孔54C(軸孔)の段付構造が複数段の段差部で構成されている。この構成によれば、段差部の数に応じた多数の折れ曲がり部が吐出側軸隙間Scに存在することで、流動抵抗が増加するので、液膜による軸封性能の更なる向上が可能となる。
【0109】
[その他の実施の形態]
なお、本発明は、上述した実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。すなわち、ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0110】
例えば、上述した実施の形態においては、給油式のスクリュー圧縮機1、1A、1B、1Cを例に説明したが、水などの液体が供給される給液式のスクリュー圧縮機に本発明を適用することができる。また、ツインロータ型のスクリュー圧縮機1、1A、1B、1Cを例に説明したが、シングルロータ型やトリプルロータ型等のツインロータ型以外のスクリュー圧縮機にも本発明を適用することができる。
【0111】
また、上述した第1の実施の形態においては、雄ロータ2及び雌ロータ3の両吐出側シャフト部23、33がテーパ状の第2軸部25、35を有する構成及びそれ対応するケーシング4の吐出側軸孔54、55がそれぞれテーパ状に形成された構成の例を示した。しかし、雄ロータ2の吐出側シャフト部23及び雌ロータ3の吐出側シャフト部33のいずれか一方の吐出側シャフト部のみがテーパ状の第2軸部を有する構成も可能である。この場合、テーパ状の第2軸部25を有する吐出側シャフト部に対応するケーシング4の吐出側軸孔のみが第2軸部のテーパ形状に応じてテーパ状に形成される。
【符号の説明】
【0112】
1、1A、1B、1C…スクリュー圧縮機、 2、2A、2B、2C…雄ロータ(スクリューロータ)、 3…雌ロータ(スクリューロータ)、 4、4A、4B、4C…ケーシング、 21…ロータ歯部、 21a…雄歯(歯)、 23、23A、23B、23C…吐出側シャフト部(シャフト部)、 25s…第1の対向面、 251s…第1の対向面、 252s…第1の対向面、 26…環状溝部、 29…段差部、 31…ロータ歯部、 31a…雌歯(歯)、 33…吐出側シャフト部(シャフト部)、 35s…第1の対向面、 45…収容室、 54、54A、54B、54C…吐出側軸孔(軸孔)、 54s…第2の対向面、 541s…第2の対向面、 542s…第2の対向面、 55…吐出側軸孔(軸孔)、 55s…第2の対向面、 56…段差部、 60…給油路(給液路)、 62…第2経路(給液路)、 C…作動室、 Sc…軸隙間(隙間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12