(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075645
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】芳香剤揮散器とその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 85/00 20060101AFI20230524BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
B65D85/00 A
B65D83/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188677
(22)【出願日】2021-11-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】591006117
【氏名又は名称】株式会社ナガエ
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】長柄 洋一
【テーマコード(参考)】
3E068
【Fターム(参考)】
3E068AA22
3E068AB05
3E068AC10
3E068BB20
3E068CC30
3E068CE03
3E068CE08
3E068DD40
3E068DE10
3E068DE11
3E068EE26
3E068EE40
(57)【要約】
【課題】、芳香剤を表面に滴下して効率よく表面に広げ、効率よく気化させて香りを空気中に広げることができるとともに、同じ揮散器で香りの混入なく複数の精油を容易に使い分けることができ、芳香剤が表面に広がることを楽しむことができる芳香剤揮散器とその製造方法を提供する。
【解決手段】液体の芳香剤を吸収しない材料で作られた揮散器本体12の表面12aに、液体の芳香剤を滴下する滴下部18と、滴下部18に連続し略放射方向に延出する模様16を備える。模様16は、表面12aを窪ませた溝部14から成る。溝部14は、毛細管現象で芳香剤が溝部14の長手方向に浸透可能な幅と深さを有する。滴下部18に芳香剤を滴下すると、溝部14に芳香剤が毛細管現象で浸透し、溝部14の色が変わる変色部20が生じ、変色部20が放射方向に進行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の芳香剤を吸収しない材料で作られた揮散器本体から成り、前記揮散器本体の表面には、前記芳香剤を滴下する滴下部と、前記滴下部に連続し前記滴下部を中心として略放射方向に延出する放射方向線を含む模様が形成され、前記模様は、前記表面を窪ませた溝部で描かれ、前記溝部は毛細管現象で前記芳香剤が前記溝部の長手方向に浸透可能な幅と深さに設けられ、
前記滴下部に前記芳香剤を滴下すると、前記溝部に前記芳香剤が毛細管現象で浸透し、前記溝部の色が変わって見える変色部が生じ、前記変色部が前記放射方向線に沿って放射方向に進行することを特徴とする芳香剤揮散器。
【請求項2】
前記揮散器本体は金属、樹脂、ガラス、又は石で作られている請求項1記載の芳香剤揮散器。
【請求項3】
前記模様には、環状の円部が設けられ、前記円部の内側には、前記放射方向線である時計回り曲線と反時計回り曲線が設けられ、
前記時計回り曲線は、略放射方向に沿う曲線であり、一方の端部は、前記円部の中心から少し離れた位置にあり、反対側の端部にかけて放射方向に延出し時計回り方向に向かって少し湾曲しながら前記円部に達し、前記時計回り曲線は、同形状に複数本設けられ円周方向に互いに等間隔に一周して配列され、
前記反時計回り曲線は、前記時計回り曲線とは線対称の形状であり、略放射方向に沿う曲線であり、一方の端部は、前記円部の中心から少し離れた位置にあり、反対側の端部にかけて放射方向に延出し反時計回り方向に向かって少し湾曲しながら前記円部に達し、前記反時計回り曲線は、同形状に複数本設けられ円周方向に互いに等間隔に一周して配列されている請求項1又は2記載の芳香剤揮散器。
【請求項4】
前記模様には、環状の円部が設けられ、前記円部の内側には、前記放射方向線である直径線が設けられ、前記直径線は、前記円部の中心から放射方向に沿う直線であり、一方の端部は、前記円部の中心から少し離れた位置にあり、反対側の端部は前記円部に達し、前記直径線は、複数本設けられ円周方向に互いに等間隔に一周して配列され、
前記各直径線には、複数本の交差線が連続して設けられ、前記交差線は、前記直径線に対して所定角度で連結して反時計回りに延出して前記円部に達する直線であり、前記複数本の交差線は、互いに等間隔であり、各々前記円部と前記直径線を結んでいる請求項1又は2記載の芳香剤揮散器。
【請求項5】
液体の芳香剤を吸収しない材料で作られた揮散器本体を設け、前記揮散器本体の表面中央部に、前記芳香剤を滴下する滴下部を形成し、前記滴下部を中心として前記滴下部に連続した溝部による模様を形成する芳香剤揮散器の製造方法であって、前記模様を形成した前記溝部は、毛細管現象で前記芳香剤が前記溝部の長手方向に浸透可能な幅と深さに形成することを特徴とする芳香剤揮散器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体の芳香剤を表面に滴下して自然に気化させる芳香剤揮散器とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体の芳香剤を空気中に拡散させるために、気化式、噴霧式、加熱式、超音波式等、種々の方法と装置がある。例えば、気化式に使用する道具としては、非電気式のスティック、アロマストーン、アロマポット、アロマ皿、木に染み込ませるもの等がある。また、電気式の場合は、加湿器の様な噴霧タイプや、電気の熱で温めるタイプ、ファンによって芳香を拡散させるタイプ等がある。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている薬液の揮散板は、螺子溝のついた螺子穴を有し、螺子穴は、薬液を収納した容器口部の螺子と、嵌め合わせることができ、拡散板は、薬液の容器と嵌め合わせた状態で、容器を倒立させて支えることが可能であり、拡散板は、螺子穴内側から接続して表面に設けられた、放射状に広がる1以上のスリットを有している。これによれば、単に容器の口部に、拡散板を螺合させて容器を倒立させることにより、拡散板に設けられたスリットによって、薬液を外部に導き出すことができ、薬液の拡散効果を容易に得ることができる。
【0004】
また、特許文献2に開示されている薬液揮散器は、上部に開口を有し内部に薬液を収容する容器と、下端部が容器内に配置され上端部が容器外へ露出するように開口を介して容器内に挿入され薬液を容器内から吸い上げる揮散体とを備えている。揮散体は、外側表面と、外側表面から突出し薬液の吸い上げ方向に延びる多数の筋状の突起とを有し、多数の突起間には吸い上げ方向に延びる多数の筋状の微細溝が形成されている。これによれば、薬液が多数の微細溝に沿って毛細管現象により吸い上げられ、外部空間へ自然蒸散することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-42656号公報
【特許文献2】特願2016-73444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景技術の揮散器の場合、揮散器による揮散状態に視覚的効果を得ることができるものではない。さらに、非電気式のもので皿に数滴垂らすだけの揮散器の場合、香りを変更したい場合には皿を洗えばいいだけというメリットがあるが、芳香の拡散性が乏しいと言う問題がある。一方、非電気式のスティックタイプや、ストーンタイプ、木タイプは、芳香の拡散性は高くなるが、それぞれの染み込ませる素材に、使用した香りが定着することになるので、染み込んだ精油を除去できず、異なる香りに使用したい場合、香りが弱まった後に異なる精油を使うことになり、香りが僅かに混合してしまうものである。またその都度揮散器を交換する場合は、コストがかかるものである。
【0007】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、芳香剤を表面に滴下して効率よく表面に広げ、効率よく気化させて香りを空気中に広げることができるとともに、同じ揮散器で香りの混入もなく複数の精油を容易に使い分けることができる芳香剤揮散器とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、液体の芳香剤を吸収しない材料で作られた揮散器本体から成り、前記揮散器本体の表面には、前記芳香剤を滴下する滴下部と、前記滴下部に連続し前記滴下部を中心として略放射方向に延出する放射方向線を含む模様が形成され、前記模様は、前記表面を窪ませた溝部で描かれ、前記溝部は毛細管現象で前記芳香剤が前記溝部の長手方向に浸透可能な幅と深さに設けられ、前記滴下部に前記芳香剤を滴下すると、前記溝部に前記芳香剤が毛細管現象で浸透し前記溝部の色が変わる変色部が生じ、前記変色部が前記放射方向線に沿って放射方向へ進行する芳香剤揮散器である。前記揮散器本体は、金属、樹脂、ガラス、又は石で作られている。
【0009】
前記模様には、環状の円部が設けられ、前記円部の内側には、前記放射方向線である時計回り曲線と反時計回り曲線が設けられ、前記時計回り曲線は、略放射方向に沿う曲線であり、一方の端部は、前記円部の中心から少し離れた位置にあり、反対側の端部にかけて放射方向に延出し時計回り方向に向かって少し湾曲しながら前記円部に達し、前記時計回り曲線は、同形状に複数本設けられ円周方向に互いに等間隔に一周して配列され、前記反時計回り曲線は、前記時計回り曲線とは線対称の形状であり、略放射方向に沿う曲線であり、一方の端部は、前記円部の中心から少し離れた位置にあり、反対側の端部にかけて放射方向に延出し反時計回り方向に向かって少し湾曲しながら前記円部に達し、前記反時計回り曲線は、同形状に複数本設けられ円周方向に互いに等間隔に一周して配列されたものである。
【0010】
前記円部の中心は、前記時計回り曲線と前記反時計回り曲線が設けられず、前記表面が小さい円形溝で囲まれ、ここは前記芳香剤を滴下する前記滴下部となり、前記滴下部の周囲には、前記時計回り曲線と前記反時計回り曲線が密に設けられ、前記円部に近づくにつれて放射方向に広がって互いの間隔が広くなり、前記各時計回り曲線及び前記各反時計回り曲線は、前記滴下部から前記円部にかけて複数回互いに交差する幾何学模様が設けられたものである。
【0011】
又は前記模様には、環状の円部が設けられ、前記円部の内側には、前記放射方向線である直径線が設けられ、前記直径線は、前記円部の中心から放射方向に沿う直線であり、一方の端部は、前記円部の中心から少し離れた位置にあり、反対側の端部は前記円部に達し、前記直径線は、複数本設けられ円周方向に互いに等間隔に一周して配列され、前記各直径線には、複数本の交差線が連続して設けられ、前記交差線は、前記直径線に対して所定角度で連結して反時計回りに延出して前記円部に達する直線であり、前記複数本の交差線は、互いに等間隔であり、各々前記円部と前記直径線を結んだものである。
【0012】
前記円部の中心は、前記直径線と前記交差線が設けられず、前記表面が小さい円形溝で囲まれ、ここは前記芳香剤を滴下する前記滴下部となり、前記滴下部の周囲には、1本の前記直径線から前記複数本の交差線が設けられた扇形の絵柄が複数個、円周方向に互いに等間隔に所定角度で回転して配列された幾何学模様が設けられたものである。
【0013】
またこの発明は、液体の芳香剤を吸収しない材料で作られた揮散器本体を設け、前記揮散器本体の表面中央部に、前記芳香剤を滴下する滴下部を形成し、前記滴下部を中心として前記滴下部に連続した溝部による模様を形成する芳香剤揮散器の製造方法であって、前記模様を形成した前記溝部は、毛細管現象で前記芳香剤が前記溝部の長手方向に浸透可能な幅と深さに形成する芳香剤揮散器の製造方法である。溝部の形成は、レーザー加工、機械彫り加工、エッチング加工等を用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の芳香剤揮散器とその製造方法は、芳香剤を表面に滴下して効率よく表面に広げ、効率よく気化させて香りを空気中に広げることができるとともに、同じ揮散器を用いて複数の精油を容易に使い分けることができる。さらに、芳香剤が溝部に沿って揮散器の表面に広がることも楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の第一実施形態の芳香剤揮散器の平面図(a)、正面図(b)、右側面(c)、背面図(d)、A-A断面図(e)である。
【
図2】この発明の第一実施形態の使用状態を示す正面図である。
【
図3】この発明の第二実施形態の芳香剤揮散器の平面図(a)、正面図(b)、右側面(c)、背面図(d)、B-B断面図(e)である。
【
図4】この発明の第三実施形態の芳香剤気散器の平面図(a)、正面図(b)、右側面図(c)、背面図(d)、C-C断面図(e)である。
【
図5】この発明の第四実施形態の芳香剤気散器の正面図(a)、右側面図(b)、底面図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1はこの発明の第一実施形態を示すもので、この実施形態の芳香剤揮散器10は、揮散器本体12を有し、揮散器本体12は、金属や樹脂、ガラス、研磨した石等、液体の芳香剤11を吸収しない材料で作られている。金属材料は、アルミ、真鍮、銅等を用いることができ、芳香剤揮散器10の使用時ではアルミが比較的芳香剤11が広がる速度が速い。揮散器本体12は均一な厚みの正円の板体であり、正円の直径は例えば50~100mm程度である。揮散器本体12の正円の一方の表面12aには、複数の溝部14が形成され、溝部14により模様16が描かれている。溝部14は、例えば液体の一般的な芳香剤11が、毛細管現象で溝部14の長手方向に浸透可能な小さい幅と深さで形成され、例えば幅が100~200μm、深さが20~50μm程度が良い。すべての溝部14が同じ幅と同じ深さで形成されても良く、互いに異なっていても良い。
【0017】
芳香剤11は、揮発性成分を有した液体であり、例えばアロマオイルである。液体の芳香剤11は油性のものが好ましく、アロマテラピーに使用する100%植物由来の精油(エッセンシャルオイル)を用いことが好ましいが、合成的に香りを付けた合成油を用いても良い。
【0018】
次に、模様16について説明する。模様16は、
図1(b)に示すように、揮散器本体12の表面12aの側縁部から少し内側を一周する環状の円部16aが設けられ、円部16aの中心は正円の揮散器本体12の中心に位置し、後述する滴下部18の中心でもある。円部16aの内側には、ほぼ放射方向に延びる幾何学的な放射方向線である時計回り曲線16bと反時計回り曲線16cが設けられている。
【0019】
時計回り曲線16bは、ほぼ放射方向に沿う曲線であり、一方の端部は、表面12aの中心から少し離れた位置にあり、反対側の端部にかけて放射方向に延出し時計回り方向に向かって少し湾曲しながら円部16aに達している。円部16aに達する端部の位置は、中心に近い端部が位置する直径よりも、少し時計回りに移動した位置にある。時計回り曲線16bは、同形状に36本設けられ円周方向に互いに等間隔に10°ずつ回転して、一周して配列されている。
【0020】
反時計回り曲線16cは、時計回り曲線16bとは線対称の形状であり、ほぼ放射方向に沿う曲線であり、一方の端部は、表面12aの中心から少し離れた位置で、時計回り曲線16bの端部に一致し、反対側の端部にかけて放射方向に延出し反時計回り方向に向かって少し湾曲しながら円部16aに達している。円部16aに達する端部の位置は、中心に近い端部が位置する直径よりも、反時計回りに少し移動した位置にある。反時計回り曲線16cは、同形状に36本設けられ円周方向に互いに等間隔に10°ずつ回転して、一周して配列されている。
【0021】
表面12aの中心付近は、時計回り曲線16bと反時計回り曲線16cが設けられず、表面12aの表面が小さい円形溝で囲まれ、平坦面となり、ここは芳香剤11を滴下する滴下部18となる。滴下部18の周囲には、時計回り曲線16bと反時計回り曲線16cが密に設けられ、円部16aに近づくにつれて放射方向に広がって互いの間隔が広くなる。各時計回り曲線16b及び各反時計回り曲線16cは、滴下部18から円部16aにかけて4回互いに交差し、花のような幾何学模様となる。なお、時計回り曲線16bと反時計回り曲線16cの本数は変更可能であり、互いに交差する回数も変更可能である。
【0022】
次に、この実施形態の芳香剤揮散器10の製造方法について説明する。例えば、揮散器本体12の材料となる板体に、レーザー加工、機械彫り加工、彫金(手彫り)、エッチング加工等で溝部14を形成し、模様16を描く。
【0023】
溝部14の加工のうち、レーザー加工は高速で任意に加工することができ、製造効率が良い。機械彫り加工は、溝部14を比較的深く形成することができ、溝表面も粗いため、芳香剤11の液が溝部14の長手方向に浸透しやすい。彫金(手彫り)は、加工時間がかかるが、より精緻な模様を任意に形成することができる。また、溝部14のエッチング加工は、大量生産に向いている。製造方法はこれに限定されず、先に大判の板材に複数個の揮散器本体12の溝部14を形成した後、プレス等で正円の板体の芳香剤揮散器10を打ち抜いて製造しても良い。揮散器本体12の材質により、適した方法で製造すれば良いものである。
【0024】
次に、この実施形態の芳香剤揮散器10の使用方法について
図2に基づいて説明する。まず、芳香剤揮散器10の表面12aの、滴下部18に、液体の芳香剤11を滴下する。すると、芳香剤11は滴下部18に連続する溝部14に、毛細管現象で溝部14の長手方向に浸透し、時計回り曲線16bと反時計回り曲線16cに入り込み、溝部14内に芳香剤11が入り込んだ部分は、芳香剤11により光の反射状態が変化して、芳香剤11が入り込んでいない他の溝部14や表面12aの表面とは異なる濃さや色の変色部20になり、その他の部分とは、はっきりと識別可能となる。変色部20が滴下部18から溝部14に沿って徐々に円部16aに向かって進行すると、溝部14がはっきり見える範囲が広がっていく様子が動きのある映像として視認される。
【0025】
変色部20は、やがて円部16aに達し、広がる動きが完了する。円部16aは、表面12aの側縁部に連続していないため、円部16aで、芳香剤11の広がりがとまる。これにより、揮散器本体12の側縁部に芳香剤11が達して周囲にこぼれることを防ぐ。模様16は花のような幾何学模様であり、花のように芳香剤11が広がり、模様16がはっきりと浮かび上がる。同時に、芳香剤11は自然に気化されて空気中に香りが広がる。芳香剤11が揮散器本体12の表面12aに薄く広い範囲に広がることにより、効率的に揮散され、空気中に芳香剤11の香りが短時間で濃く広がる。使用後に芳香剤11を変える時は、水や中性洗剤で洗うことで簡単に芳香剤11が落ちる。
【0026】
この実施形態の芳香剤揮散器10によれば、芳香剤11を揮散器本体12の表面12aに滴下して効率よく表面12aの表面に広げ、効率よく揮散させて香りを空気中に広げることができる。芳香剤11が毛細管現象で、溝部14の長手方向に浸透し、変色部20になり、変色部20が表面12a表面に溝部14に沿ってゆっくりと広がっていく様子が動きのある映像として視認され、模様16が浮かび上がる演出効果があり、芳香剤が表面に広がることを楽しむことができる。変色部20の放射方向への広がりは均一ではなく指向性があり不均一な変化を楽しむことができる。芳香剤11は溝部14に溜まるため、香りを長い時間楽しむことができる。さらに、芳香剤揮散器10は水や中性洗剤で洗うことができ、簡単に芳香剤11を落とすことができ、芳香剤11を変えて使用する時も香りの混入がなく、複数の精油を容易に使い分けることができる。
【0027】
芳香剤揮散器10の製造方法は、レーザー加工、機械彫り加工、エッチング加工等で溝部14を形成することにより、効率よく短時間で細かい模様16を設けることができる。また、彫金による場合は、精緻で多様な形状に形成することができる。その他、模様16により、高い意匠性を持たせた芳香剤揮散器10となる。
【0028】
次にこの発明の第二実施形態について
図3に基づいて説明する。なお、ここで上記実施形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態の芳香剤揮散器22は、揮散器本体12を有し、揮散器本体12の一方の表面12aには、複数の溝部14が形成され、溝部14により模様24が描かれている。
【0029】
模様24について説明する。模様24は、
図3(b)に示すように、揮散器本体12の表面12aの側縁部から少し内側を一周する環状の円部24aが設けられ、円部24aの中心は正円の揮散器本体12の中心に位置し、滴下部18の中心にも位置している。円部24aの内側には、放射方向線である直径線24bが設けられている。直径線24bは、放射方向に沿う直線であり、一方の端部は、表面12aの中心から少し離れた位置にあり、反対側の端部は円部24aに達している。直径線24bは、同じ長さのものが6本設けられ円周方向に互いに等間隔に60°ずつ回転して、一周して配列されている。
【0030】
各直径線24bには、9本の交差線24cが連続して設けられている。交差線24cは、直径線24bに対して略60°で連結されて反時計回りに延出して円部24aに達する直線である。9本の交差線24cは、互いに等間隔であり、各々円部24aと直径線24bを結び、交差線24cの長さは互いに異なり、表面12aの中心に近い位置に連結されている交差線24cが一番長く、反対側の円部24aに近い位置に連結されている交差線24cが一番短い。
【0031】
表面12aの中心は、直径線24bと交差線24cが設けられず、表面12aの表面が小さい円形溝で囲まれ、平坦面となり、ここは芳香剤11を滴下する滴下部18となる。滴下部18の周囲には、1本の直径線24bと9本の交差線24cからなる扇形の絵柄が6つ、円周方向に互いに等間隔に60°ずつ回転して配列され、石臼の溝のような幾何学模様となる。なお、直線線24bと交差線24cの本数は変更可能である。
【0032】
この実施形態の芳香剤揮散器22の製造方法は、上記実施の形態と同様である。芳香剤揮散器22の使用方法は、滴下部18に、液体の芳香剤11を滴下する。すると、芳香剤11は滴下部18に連続する溝部14に毛細管現象で、溝部14の長手方向に浸透し、まず直径線24bに入り込み、次に直径線24bに連続する交差線24cに入り込む。溝部14内に芳香剤11が入り込んだ部分は、芳香剤11により光の反射状態が変化して、芳香剤11が入り込んでいない他の溝部14や表面12aの表面とは異なる色の変色部20になり、その他の部分とは、はっきりと識別可能となる。変色部20が滴下部18から徐々に円部24aに向かって進行すると、溝部14がはっきり見える範囲が広がっていく様子が動きのある映像として視認される。変色部20はやがて円部24aに達し、広がる動きが完了する。この実施形態の芳香剤揮散器22によれば、上記実施形態と同様の効果を有する。
【0033】
次にこの発明の第三実施形態について
図4に基づいて説明する。なお、ここで上記実施形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態の芳香剤気散器26は、揮散器本体12を有し、揮散器本体12の一方の表面12aには、複数の溝部14が形成され、溝部14により模様28が描かれている。
【0034】
模様28について説明する。模様28は、
図4(b)に示すように、揮散器本体12の表面12aの側縁部から少し内側を一周する環状の円部28aが設けられ、円部28aの中心は正円の揮散器本体12の中心に位置し、滴下部18の中心にも位置している。円部28aの内側には、放射方向線である直径線28bが設けられている。直径線28bは、放射方向に沿う直線であり、一方の端部は、表面12aの中心から少し離れた位置にあり、反対側の端部は円部28aに達している。直径線28bは、同じ長さのものが6本設けられ円周方向に互いに等間隔に60°ずつ回転して、一周して配列されている。各直径線28bには、複数本の交差線28cが連続して設けられ、麻の葉模様を形成する。なお、交差線28cの間隔は変更可能である。
【0035】
この実施形態の芳香剤揮散器26の製造方法は、上記実施の形態と同様である。芳香剤揮散器26の使用方法も、上記実施の形態と同様であり、同様の効果を有する。
【0036】
次にこの発明の第四実施形態について
図5に基づいて説明する。なお、ここで上記実施形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態の芳香剤気散器30は、揮散器本体32を有し、揮散器本体32は一方向に長い矩形の薄板であり、例えば大きさ86mm×54mm、厚さ0.8mmであり、4つの角部が面取りされている。揮散器本体32の一方の表面32aには、複数の溝部14が形成され、の溝部14により模様34が描かれている。
【0037】
模様34について説明する。模様34は、
図5(a)に示すように、揮散器本体32の表面32aの中心を中心点とする同心円の2つの正円の円部34aが設けられ、二重の円部34aの内側には、第一実施形態の芳香剤気散器10とほぼ同じ模様16が設けられている。二重の円部34aの外側には、商品に関連した文章や単語を表す文字34bが、円部34aの円周に沿って描かれている。
【0038】
この実施形態の芳香剤揮散器30の製造方法は、上記実施の形態と同様である。芳香剤揮散器30の使用方法も、上記実施の形態と同様であり、同様の効果を有する。また、揮散器本体32は矩形であるため角を保持しやすく、また薄形であるため場所を取らず、持ち運びも容易であり、便利である。
【0039】
なお、この発明の芳香剤揮散器は、上記実施形態に限定されるものではなく、揮散器本体の大きさや形状は自由であり、正円や矩形以外に、楕円やその他の多角形でも良く、花形や星形等でも良い。揮散器本体の材料も上記以外でも良い。溝部による模様は、放射方向線を含むものであれば、自由にデザインすることができる。麻の葉の変形、フラワーオブライフという古代神聖幾何学模様、アーチのフラクタル幾何学模様等でもよい。芳香剤が広がる時の指向性は模様を変えることによってコントロールすることができる。溝部は、溝深さ、幅、シボ(粗さ)、長手方向に交差する断面形状等は、特に限定されるものではなく、溝部の溝深さ、増、シボ等を適宜選択することにより、適した芳香剤の種類や広がる速度、持続時間等を設定することができる。滴下部に溝部が設けられていても良く、滴下部全体が表面から窪んでいてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10,22,26,30 芳香剤揮散器
12,32 揮散器本体
12a,32a 表面
14 溝部
16,24,28,34 模様
16a,24a,28a,34a 円部
16b 時計回り曲線
16c 反時計回り曲線
18 滴下部
20 変色部
24b,28b 直径線
24c,28c 交差線
【手続補正書】
【提出日】2022-09-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
液体の芳香剤を吸収しない材料で作られた揮散器本体から成り、前記揮散器本体の表面には、前記芳香剤を滴下する滴下部と、前記滴下部に連続し前記滴下部を中心として略放射方向に延出する放射方向線を含む模様が形成され、前記模様は、前記表面を窪ませた溝部で描かれ、前記溝部の幅が100~200μm、深さが20~50μmに形成され、
前記滴下部に前記芳香剤を滴下すると、前記溝部に前記芳香剤が毛細管現象で浸透し、前記溝部の色が変わって見える変色部が生じ、前記変色部が前記放射方向線に沿って放射方向に進行することを特徴とする芳香剤揮散器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
液体の芳香剤を吸収しない材料で作られた揮散器本体を設け、前記揮散器本体の表面中央部に、前記芳香剤を滴下する滴下部を形成し、前記滴下部を中心として前記滴下部に連続した溝部による模様を形成する芳香剤揮散器の製造方法であって、前記模様を形成した前記溝部の幅が100~200μm、深さが20~50μmに形成することを特徴とする芳香剤揮散器の製造方法。