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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075664
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】物品管理システム、物品管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20230524BHJP
   G06Q 30/0203 20230101ALI20230524BHJP
【FI】
G06K7/10 128
G06Q30/02 312
G06K7/10 264
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188707
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】平田 和也
(72)【発明者】
【氏名】坂上 充敏
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB02
(57)【要約】
【課題】通信に要するデータを抑制しつつ、物品が手に取られた頻度を自動的に測定する物品管理システム、及び、物品管理方法を提供する。
【解決手段】本発明のある態様は、物品に取り付けられた金属膜を有するシート部材と、物品を保持するホルダに取り付けられた通信デバイスと、通信デバイスと無線通信を行う無線装置と、無線装置による通信デバイスとの時間の経過に応じた通信可否の結果を取得し、通信可否の結果に基づいて無線装置が通信デバイスと通信可能となる頻度を測定する測定装置と、を備えた物品管理システムである。ここで、通信デバイスは、物品がホルダに保持されたときにシート部材によって通信デバイスの少なくとも一部が遮蔽される位置に取り付けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に取り付けられた金属膜を有するシート部材と、
前記物品を保持するホルダに取り付けられた通信デバイスと、
前記通信デバイスと無線通信を行う無線装置と
前記無線装置による前記通信デバイスとの時間の経過に応じた通信可否の結果を取得し、前記通信可否の結果に基づいて前記無線装置が前記通信デバイスと通信可能となる頻度を測定する測定装置と、を備え、
前記通信デバイスは、前記物品が前記ホルダに保持されたときに前記シート部材によって前記通信デバイスの少なくとも一部が遮蔽される位置に取り付けられている、
物品管理システム。
【請求項2】
前記物品が前記ホルダに保持されたときに前記シート部材によって遮蔽されない位置に配置された参照用の通信デバイスをさらに備え、
前記無線装置は、前記参照用の通信デバイスと通信を行い、
前記測定装置は、前記無線装置による前記参照用の通信デバイスとの時間の経過に応じた通信可否の結果を取得し、前記通信可否の結果に基づいて前記無線装置が前記参照用の通信デバイスと通信可能となる頻度を測定する、
請求項1に記載された物品管理システム。
【請求項3】
前記物品は、試供用に店舗に配置される商品である、
請求項1又は2に記載された物品管理システム。
【請求項4】
前記通信デバイスは、周囲の電波を収集して電力に変換し、当該電力を貯蔵するキャパシタを備えた無線タグである、
請求項1から3のいずれか一項に記載された物品管理システム。
【請求項5】
前記通信デバイスは、UHF帯の無線タグである、
請求項1から3のいずれか一項に記載された物品管理システム。
【請求項6】
前記通信デバイスは、HF帯の無線タグである、
請求項1から3のいずれか一項に記載された物品管理システム。
【請求項7】
前記通信デバイスは、マイクロ波帯の無線タグである、
請求項1から3のいずれか一項に記載された物品管理システム。
【請求項8】
金属膜を有するシート部材を物品に取り付け、
前記物品を保持するホルダに通信デバイスを取り付け、その際、前記物品が前記ホルダに保持されたときに前記シート部材によって前記通信デバイスの少なくとも一部が遮蔽されるようにし、
前記通信デバイスと無線通信が可能となる位置に無線装置を配置し、
前記無線装置による前記通信デバイスとの時間の経過に応じた通信可否の結果を取得し、前記通信可否の結果に基づいて前記無線装置が前記通信デバイスと通信可能となる頻度を測定する、
物品管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品管理システム、及び、物品管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、商品のマーケティング等の目的で、店舗に配置した商品サンプルを来店者が手に取ったことを検出するように構成したシステムが知られている。
例えば、特許文献1に記載されたシステムでは、商品陳列棚に、非接触ICタグが添付されている商品サンプルを陳列させるとともに、非接触ICタグと通信可能な構造を有するICタグリーダを備える。そして、商品サンプルが商品陳列棚から取り出された際に、ICタグリーダで読み取られていた固有情報が受信できない状態になったことで、システム内の情報処理装置は、商品サンプルを買物客が手に取られたことを検知するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-148884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、店舗において商品サンプルが買物客に手に取られていない時間は、買物客に手に取られている時間に比べてずっと長い。そのため、上記従来のシステムでは、買物客に手に取られていない非常に長い時間、ICタグリーダは、商品サンプルに添付されている非接触ICタグから固有情報を受信し続け、情報処理装置が常時、固有情報を受信できなくなったか否か監視し続けることになる。それによって、システムにおいてICタグリーダと情報処理装置の間の通信に要するデータ量が膨大となり、回線容量の逼迫を招く虞がある。そればかりか、買物客に手に取られていない非常に長い時間に情報処理装置が受信するデータは、商品のマーケティング解析に寄与しない。
【0005】
そこで、本発明は、通信に要するデータを抑制しつつ、物品が手に取られた頻度を自動的に測定する物品管理システム、及び、物品管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、
物品に取り付けられた金属膜を有するシート部材と、
前記物品を保持するホルダに取り付けられた通信デバイスと、
前記通信デバイスと無線通信を行う無線装置と
前記無線装置による前記通信デバイスとの時間の経過に応じた通信可否の結果を取得し、前記通信可否の結果に基づいて前記無線装置が前記通信デバイスと通信可能となる頻度を測定する測定装置と、を備えた物品管理システムである。
ここで、前記通信デバイスは、前記物品が前記ホルダに保持されたときに前記シート部材によって前記通信デバイスの少なくとも一部が遮蔽される位置に取り付けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、通信に要するデータを抑制しつつ、物品が手に取られた頻度を自動的に測定する物品管理システム、及び、物品管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態の商品管理システムの適用例を示す図であり、商品棚のホルダに商品が置かれている状態を示す図である。
図2】一実施形態の商品管理システムの適用例を示す図であり、商品棚のホルダに商品が置かれていない状態を示す図である。
図3】ネーマ紙が貼付された商品の一例を示す図である。
図4】商品が置かれた場合のホルダと商品が置かれていない場合のホルダとを示す図である。
図5】所定の期間内のタグ検出回数の集計例を示す図である。
図6】一実施形態の商品管理システムの各装置の内部構成を示すブロック図である。
図7】IoTタグから送信されるアドバタイジングパケットの構成を示す図である。
図8】タグデータベースのデータ構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示において「物品」とは、例えば商品、製品、半製品(製造途中にある中間段階の製品)、モックアップ等の有体物を意味する。以下の実施形態では、物品の一例として、販売促進用商品(POSM(Point of Sale Material)ともいう。)を挙げる。
【0010】
以下、本開示の情報処理システムの一実施形態である商品管理システムについて説明する。
一実施形態の商品管理システムは、店舗に販売促進用商品(POSM)を試供可能に配置し、販売促進用商品を来店者が手に取る時刻や頻度を自動で測定することにより、有用なマーケティング情報を効率的に取得するように構成されている。
販売促進用商品(以下、単に「商品」という。)は限定しないが、来店者が手に取って試してみたくなるような商品であることが好ましく、例えば、電気髭剃り、デジタルカメラ、ビデオカメラ、スマートフォン等であるが、その限りではない。商品は、筆箱や万年筆等の文房具、香水、口紅やファンデーション等の化粧品、携帯型ゲーム機、ハンディクリーナ等の家電製品、洗濯用の柔軟剤、さらには香りの見本等に広く適用することができる。
【0011】
一実施形態の商品管理システムでは、商品に、金属膜を有するシート部材が取り付けられる。
このシステムでは、商品棚に商品を保持するホルダが設置される。ホルダには、通信デバイスが取り付けられる。通信デバイスのホルダへの取り付け位置は、商品がホルダに保持されたときに、商品に取り付けられているシート部材によって通信デバイスの少なくとも一部が遮蔽される位置である。
【0012】
通信デバイスが通信可能な範囲内には、通信デバイスと通信を行うための無線装置が配置される。
通信デバイスは、周囲の電波を収集して電力に変換し、当該電力を貯蔵するキャパシタを備えたIoTタグ(無線タグの一例)が長期間メンテナンス不要で利用可能な点で好ましいが、その限りではなく、UHF帯、HF帯、又は、マイクロ波帯で動作するRFIDタグ(無線タグの一例)であっても構わない。また、いずれの場合も、RFIDタグは、パッシブ型(電池が内蔵されていないもの)でもよいし、アクティブ型(電池が内蔵されているもの)であってもよい。
【0013】
一実施形態の商品管理システムでは、商品に取り付けられているシート部材と、ホルダに取り付けられている通信デバイスとによって、商品が来店者によって手に取られてホルダから外れたか否か判断するように構成される。すなわち、商品がホルダに保持されている場合には、商品に取り付けられているシート部材によって通信デバイスの少なくとも一部が遮蔽されるため、通信デバイスの電波の放射性能が大幅に低下し、通信デバイスと無線装置の通信ができないか、通信頻度が大幅に低下する。他方、商品がホルダに保持されていない場合(つまり、来店者が商品を手に取った場合)には、シート部材によって通信デバイスが遮蔽されず、通信デバイスと無線装置の通信が可能である。
【0014】
一実施形態の商品管理システムでは、無線装置は、通信デバイスとの通信が可能である場合、通信デバイスを識別する識別情報(例えば、後述するタグID)を受信し、ネットワークを介して受信した識別情報をサーバに通知することで、サーバは、識別情報に対応する通信デバイスが取り付けられた商品が手に取られたと判断できる。そのため、サーバは、識別情報を受信した頻度を測定することで、対応する商品を来店者が手に取った頻度についての情報を得ることができる。
商品が来店者に手に取られていない間は、通信デバイスと無線装置の通信ができないか、通信頻度が大幅に低下するため、無線装置とサーバとの間の通信はほとんど発生しない。したがって、このシステムでは、商品が手に取られた頻度を自動的に測定する際に、通信に要するデータを大幅に抑制できる。
【0015】
以下、一実施形態の商品管理システムについて、商品が電気髭剃りである場合を例に採り、図面を参照してより具体的に説明する。
図1は、電気髭剃りのPOSMとして6台の商品7-1~7-6が試供可能に展示されている状態の図を示している。図2は、図1から商品を取り除いた状態の図を示している。
図1に示すように、商品棚3に取り付けられた6台のホルダ30-1~30-6に、それぞれ6台の商品7-1~7-6が保持され、各ホルダの近傍には来店者への商品説明のためのラベルPL1~PL6が配置されている。
【0016】
以下の説明において、商品7-1~7-6に共通する事項に言及するときには、「商品7」と表記する。ホルダ30-1~30-6に共通する事項に言及するときには、「ホルダ30」と表記する。
【0017】
図2に示すように、6台のホルダ30-1~30-6には、それぞれIoT(Internet of Things)タグT1~T6(通信デバイスの一例)が取り付けられる。IoTタグは、周囲環境の電波に基づいて発電する環境発電型の通信デバイスの一例であり、バッテリを備えていない。
以下の説明では、IoTタグT1~T6をそれぞれホルダタグT1~T6という。
【0018】
ホルダタグT1~T6の最大通信距離は、限定しないが、例えば3~10メートルの範囲である。ホルダタグT1~T6は、低電力消費の無線通信を行うように構成されており、通信プロトコルの例としては、Bluetooth(登録商標) Low Energy (以下、BLE)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)等が挙げられる。以下では、BLEによる通信を行う場合を例として説明する。
ホルダタグT1~T6は、BLEの規格に準拠する場合、所定間隔毎(例えば、1~10秒程度の短時間毎)にアドバタイジングパケット(後述する)をブロードキャスト送信する。ホルダタグT1~T6が送信するパケットには、各タグの識別情報であるタグIDが含まれる。
【0019】
以下の説明において、ホルダタグT1~T6に共通する事項に言及するときには、「ホルダタグT」と表記する。
【0020】
商品棚3の近くには、ホルダタグT1~T6の各々とBLE通信を行うための無線装置2が配置される。後述するが、無線装置2は、ネットワークを介してタグ管理サーバ(後述する)と通信可能なゲートウェイ装置である。無線装置2は、図2に示すように各ホルダに商品が配置されていない場合に各タグから発信されるパケットを受信可能な位置に配置される。すなわち、無線装置2は、各タグの電波出力を考慮して配置される。
図1及び図2において仮想線で無線装置2を示しているように、無線装置2の設置場所は任意に設定することができる。
【0021】
図1及び図2に示すように、好ましくは、商品棚3に参照タグTrefが配置される。参照タグTrefは、参照用のタグであり、ホルダタグT1~T6と同じ構成のデバイスである。
参照タグTrefは、商品7-1~7-6が対応するホルダに保持されているか否かに関わらず無線装置2と通信可能である限り、如何なる場所に配置されてもよい。参照タグTrefは、無線装置2が正常に動作しているか否か判断するために設けられる。特に、後述するように、商品7-1~7-6がすべてホルダに保持されている状態では、無線装置2がホルダタグT1~T6から発信される電波を受信できないため、仮に参照タグTrefがないとしたならば、システムが正常に動作しているかの判断が難しい。そこで、商品7-1~7-6が対応するホルダに保持されているか否かに関わらず無線装置2と通信可能な参照タグTrefを設けることで、システムが正常に動作しているか否か判断できる。
【0022】
図3には、例示的な商品7を背面側から見た図である。図3に示すように、商品7には、ネーマ紙NPが貼付される。
ネーマ紙NP(シート部材の一例)は、透明PETフィルム、アルミニウムの蒸着層(膜)(金属膜の一例)、粘着剤をこの順に積層したものであり、粘着剤により商品7の背面に貼り付けられている。なお、ネーマ紙NPに代えて、曲面追従性を有するホイル紙(フォイル紙)を使用してもよい。
【0023】
図4に、ホルダ30に商品7が保持されていない状態と、ホルダ30に商品7が保持されている状態とを比較して示す。
図4に示すように、ホルダ30は、商品7の底部を支持するための支持部31と、背もたれ部32と、を有する。支持部31は、商品棚3の表面に取り付けられ、孔31hが形成されている。孔31hが商品7の底部を受け入れることで商品7が支持部31に支持される。
背もたれ部32は、支持部31から上方に延びる板状部材であり、商品7の背面部を支持する。図2にも示したように、背もたれ部32には、ホルダタグTが取り付けられている。
商品7にはワイヤ8の一端が取り付けられており、ワイヤ8の他端(図示せず)は各商品7を保持するホルダ30近くの商品棚3に固定されている。ワイヤ8の長さは、来店者が商品7を手に取ったとき商品7を十分に試供することができる程度に設定されている。
【0024】
図4に示すように、ホルダ30に商品7が保持されている状態では、商品7の背面に貼付されているネーマ紙NPと、ホルダ30の背もたれ部32に取り付けられているホルダタグTとが、接触又は近接する。つまり、ネーマ紙NPによってホルダタグTの少なくとも一部が遮蔽される。前述したように、ネーマ紙NPにはアルミニウムの蒸着層があるため、この層がホルダタグTから発信される電波を遮蔽し、ホルダタグTからの電波の放射性能が大幅に低下する。その結果、無線装置2がホルダタグTから発信されるパケットを受信できなくなるか、受信頻度が大幅に低下する。無線装置2がホルダ30の背面側にある場合、無線装置2とホルダタグTとの間にネーマ紙NPは存在しないが、ホルダタグTとネーマ紙NPが近接していることにより通信が妨げられる。
他方、ホルダ30が商品7に保持されていない状態では、ホルダタグTからの電波の放射性能が低下しないため、無線装置2がホルダタグTから発信されるパケットを問題なく受信できる。
したがって、無線装置2がホルダタグTからパケットを検出した頻度を計測することで、来店者が商品7を手に取った頻度を推定することができる。
【0025】
図5に、無線装置2がホルダタグTからパケットを検出した頻度についての例示的な測定結果を示す。
図5Aは、1日の店舗の開店時間(午前10時から午後9時まで)中に、ホルダタグT1~T3及び参照タグTrefから無線装置2がパケットを検出するタイミングで点をプロットした図である。
図5Bは、図5Aに示した店舗の開店時間のうち午後6時から午後8時までの2時間を対象として、ホルダタグT1から無線装置2がパケットを検出するタイミングで点をプロットした部分を拡大した図である。
【0026】
図5Cは、図5Bに対応した図であり、店舗の開店時間のうち午後6時から午後8時までの2時間を対象として、ホルダタグT1の検出回数(つまり、ホルダタグT1に対応する商品7-1がホルダ30-1から取り外された回数)を10分間ごとにカウントした値を示す図である。
例えば、ホルダタグT1から5秒間隔でパケットが発信される場合、商品7がホルダ30から取り外されている間、5秒ごとに無線装置2がホルダタグT1からのパケットを受信する(つまり、ホルダタグT1を検出する)。このホルダタグT1の検出回数を10分ごとに集計したものが図5Cである。この例では、午後6時半から6時40分までの10分間にタグ検出回数が80回であるため、400秒(=80×5秒)の間、来店者が商品7-1を手に取った時間となる。
図5Cに例示するように集計処理は、無線装置2に接続されるタグ管理サーバ(後述する)において行われる。
【0027】
なお、図5A図5Cは、商品7がホルダ30によって保持されている間、ホルダタグTが商品7に取り付けられているネーマ紙NPによって完全に遮蔽され、ホルダタグTと無線装置2との通信ができない理想的な状態を示している。しかし、商品7がホルダ30によって保持されている間、ホルダタグTの一部のみがネーマ紙NPによって遮蔽される場合には、ホルダタグTと無線装置2との通信が長い周期で可能となる場合がある。例えば、ホルダタグTがネーマ紙NPに遮蔽されていないときに5秒間隔でパケットが発信される場合には、ホルダタグTの一部のみがネーマ紙NPによって遮蔽されるときに5秒より長い周期(例えば、数分~数時間)で、ホルダタグTと無線装置2との通信が可能となる場合がある。
そこで、所定の閾値よりも短い間隔で無線装置2がパケットを受信した場合に、ホルダタグTを検出したと判断するとよい。例えば、所定の閾値は、ホルダタグTがネーマ紙NPに遮蔽されていない場合にパケットを送信する間隔よりも僅かに大きい値に設定する。
【0028】
次に、図6及び図7を参照して、一実施形態の商品管理システム1の各装置の構成を説明する。
図6は、本実施形態の商品管理システム1の各装置の内部構成を示すブロック図である。図7は、ホルダタグTから送信されるアドバタイジングパケットの構成を示す図である。
【0029】
図6に示すように、商品管理システム1は、無線装置2、及び、無線装置2とネットワークNWを介して通信可能なタグ管理サーバ5(測定装置の一例)を含む。ネットワークNWは限定しないが、例えばLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、移動体通信ネットワーク、インターネット等である。
無線装置2は、ホルダタグT及び参照タグTrefからBLE通信によりパケットを受信するBLE無線端末として機能する。また、無線装置2は、各タグからパケットを受信すると、受信したパケットに含まれるタグIDをタグ管理サーバ5に送信する。
ホルダタグT及び参照タグTrefは、正常にパケットを発信できる状況では、上述したように所定間隔毎にパケットを発信し、それに応じて無線装置2もタグIDを所定間隔毎にタグ管理サーバ5に送信する。
【0030】
図6を参照すると、ホルダタグTは、例えば、制御部11、アンテナ12、ハーベスティング部13、電圧制御部14、及び、RFトランシーバ15を含む。なお、以下では、ホルダタグTの構成について説明するが、図6に図示しない参照タグTrefの構成もホルダタグTと同じである。
【0031】
タグ全体の形態は図示しないが、例えば、アンテナ12が形成される所定のパターンの導電性金属箔と、当該金属箔に接続されるICチップとが接続された薄膜状の部材である。ICチップ内に、制御部11、ハーベスティング部13、及び、電圧制御部14、RFトランシーバ15が実装される。
【0032】
制御部11は、マイクロプロセッサとメモリ111を有し、ホルダタグTの全体を制御する。メモリ111は、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)であり、マイクロプロセッサによって実行されるプログラムのほか、ホルダタグTに固有の識別情報であるタグIDを記憶する。
【0033】
ハーベスティング部13は、周囲環境の電波(例えば周囲の無線通信による電波)に基づいて環境発電を行い、発電により得られた電力を内部のエネルギーストレージ131に貯蔵する。本実施形態では、ハーベスティング部13は、例えばアンテナ12が受信した無線信号を直流電圧に変換し、エネルギーストレージ131に貯蔵する。エネルギーストレージ131は、例えばキャパシタである。キャパシタの場合には、半導体チップ上に構成されたもの(つまりオンダイ(on-die)型のキャパシタ)でもよい。
【0034】
ハーベスティング部13が環境発電に使用する電波は、広範囲の周波数帯域において複数の異なる周波数帯の電波である。例えば、いわゆる3G~5G等の移動体通信システムで採用されている周波数帯の無線通信による電波、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格で採用されている周波数帯の無線通信による電波、ZigBee(登録商標)やThread等の通信プロトコルに代表される2.4GHz帯の無線通信による電波、RFIDで採用されている周波数帯(例えば、900MHz帯、13.56MHz帯)の無線通信による電波等が挙げられる。
ここに例示したような電波は、一般に、ほとんどすべてのエリアで適用可能である。そして、ホルダタグTは、周囲環境の電波に基づいてハーベスティング部13による環境発電で得られる電力で動作する。そのため、ホルダタグTにバッテリを搭載する必要がなく、システムコストを抑制することができる。また、バッテリを搭載する必要がないことから、バッテリの交換作業を行わずに済むため、タグが存在するにもかかわらずタグIDを取得できないという不具合が生じない。
【0035】
電圧制御部14は、制御部11及びRFトランシーバ15に動作電圧を供給するとともに、エネルギーストレージ131の電圧をモニタしており、モニタ結果に応じて電力モードを切り替える。エネルギーストレージ131の電圧が所定の閾値以下である場合には、電力モードを最小限の回路のみを動作させる第1モードとし、このとき制御部11及びRFトランシーバ15では、後述するパケットの生成や無線信号の送信等が行われない。エネルギーストレージ131の電圧が所定の閾値以上まで充電された場合には、電力モードを通常の処理ルーチンを実行する第2モードとし、このとき制御部11及びRFトランシーバ15ではパケットの生成、無線信号の送信を含む各種の処理が行われる。
【0036】
制御部11は、電力モードが第2モードの場合に、BLEのプロトコルに従ってアドバタイジングパケットを生成する。
アドバタイジングパケットは、BLEにおいてブロードキャスト通信を実現するためにアドバタイジングチャネルを利用して送信されるパケットであり、図7に示すパケット構成を有する。
【0037】
図7においてプリアンブル及びアドレスアクセスは、それぞれが所定の固定値である。CRCは巡回検査符号であり、パケットペイロード(つまり、アドバタイジングチャネルPDU(protocol data unit))を対象として所定の生成多項式を用いて算出される検査データである。
アドバタイジングチャネルPDU(以下、単に「PDU」という。)はヘッダとペイロードからなり、当該ペイロードは、ADVアドレスとADVデータとからなる。ADVアドレスはアドバタイザー(つまり、報知する主体であるホルダタグT)のアドレスであるが、送信元を特定しないように送信の都度に設定されるランダムな値でもよい。ADVデータはアドバタイザーのデータ(ブロードキャストデータ)であり、タグIDを含む。
【0038】
制御部11は、PDUを暗号化することが好ましい。暗号化方法は限定しないが、例えば鍵長128ビットのAES(Advanced Encryption Standard)を利用することができる。
【0039】
RFトランシーバ15は、送信するパケット(ベースバンド信号)に対して所定のデジタル変調(例えばGFSK(Gaussian Frequency Shift Keying))を行った後に直交変調を行い、高周波信号(BLEの場合、2.4GHzの周波数帯の信号)をアンテナ12に送出する。
【0040】
アンテナ12は、送信アンテナと発電用アンテナを含む。送信アンテナは、RFトランシーバ15によって送出される高周波の無線信号(パケット)を送信する。他方、発電用アンテナは、例えば周囲環境の電波を受信し、ハーベスティング部13と協働してレクテナとして機能する。
【0041】
図6に示すように、無線装置2は、制御部21、アンテナ22、RFトランシーバ23、および、通信部24を備える。
制御部21は、マイクロプロセッサを主体として構成され、無線装置2の全体を制御する。例えば、制御部21は、ホルダタグTから受信したパケットのPDUを復号し、CRCからホルダタグT側と同一の生成多項式を用いて誤り検出を行った後、当該PDUからブロードキャストデータを抽出し、タグ管理サーバ5に送信するように、通信部24を制御する。
RFトランシーバ23は、アンテナ22でホルダタグTから受信した無線信号を検波し、ベースバンド信号に変換し、所定のデジタル復調を行ってパケットを受信する。また、RFトランシーバ23は、ビーコン信号をアンテナ22から送信するために、例えば所定のパターンのベースバンド信号を直交変調してアンテナ22に送出する。
通信部24は、タグ管理サーバ5との通信を行うための通信インタフェースとして機能する。
【0042】
図6に示すように、タグ管理サーバ5は、例えば、制御部51、ストレージ52、及び、通信部53を備える。
制御部51は、マイクロプロセッサを主体として構成され、タグ管理サーバ5の全体を制御する。
ストレージ52は、HDD(Hard Disk Drive)等の大規模記憶装置を備え、タグデータベースを記憶する。図8に示すように、タグデータベースには、ホルダタグTのタグIDと、当該ホルダタグTに対応するホルダ30に保持される商品7の商品コードと、が関連付けられている。ストレージ52はまた、参照タグTrefのタグIDを記憶している。
通信部53は、無線装置2と通信を行うための通信インタフェースとして機能する。
【0043】
制御部51はサーバプログラムを実行することで、ホルダタグT及び参照タグTrefが発信するタグIDを含むパケットを無線装置2が受信した場合、当該パケットに含まれるタグIDを無線装置2から取得する。
制御部51は、タグデータベースに含まれるタグIDを無線装置2から取得する度に、取得したタグIDと、タグIDを取得した時刻とを、タグ検出ログとしてストレージ52に記録する。すなわち、制御部51は、無線装置2によるホルダタグTとの時間の経過に応じた通信可否の結果を取得する。なお、図5A図5Bは、タグ検出ログをプロットしたものである。このタグ検出ログに基づいて、制御部51は、図5Cに例示したように所定時間ごとのタグ検出回数の集計処理を行い、特定の商品コードの商品が来店者に手に取られた頻度を測定する。その際、タグIDに対応する商品コードがタグデータベースを参照して特定される。
集計処理を行うタイミングは任意に設定可能である。一例では、店舗の1日の営業時間に、無線装置2によるホルダタグTとの時間の経過に応じた通信可否の結果をタグ検出ログとして記録し、営業時間が経過した後のタイミングで、タグ検出ログを基に集計処理を行う。
【0044】
同様に、制御部51は、参照タグTrefのタグIDを無線装置2から取得する度に、取得したタグIDと、タグIDを取得した時刻とを、タグ検出ログとしてストレージ52に記録する。図1に示したように、参照タグTrefは商品7によって遮蔽されることがないため、無線装置2が故障していない限り、参照タグTrefがパケットを発信する所定間隔ごとに参照タグTrefのタグIDを取得できる。参照タグTrefのタグIDを所定間隔ごとに取得できない場合には、制御部51は、無線装置2が故障していると判断し、図示しない管理者端末に通知する。
【0045】
図6には図示しないが、タグ管理サーバ5とネットワークNWを介して通信可能な利用者端末が、タグ管理サーバ5から、タグ検出ログに基づく集計処理の結果を取得して表示し、利用者が閲覧できるように構成することが好ましい。例えば、利用者端末とタグ管理サーバ5がHTTPSにより通信を行うことにより、利用者端末のブラウザはタグ管理サーバ5から表示用データを受信し、図5Cに例示した形式の集計処理結果を利用者端末の画面に表示する。それによって利用者は、各商品が手に取られた時刻と頻度の情報を視覚的に得ることができる。
【0046】
以上説明したように、上述した商品管理システム1によれば、店舗の商品棚3の各ホルダ30にホルダタグTを取り付け、商品7にネーマ紙NPを取り付ける。その際、ホルダ30に商品7が保持されたときにネーマ紙NPによってホルダタグTの少なくとも一部が遮蔽されるようにし、ホルダタグTと無線装置2との通信ができないか、又は通信をし難くするようにする。店舗の来店者が商品7を手に取った場合には、ホルダタグTと無線装置2との通信ができるようになる。
そのため、無線装置2と通信可能なタグ管理サーバ5は、無線装置2とホルダタグTとの通信可否の結果を無線装置2から取得し、その通信可否の結果に基づいて無線装置2がホルダタグTと通信可能となる頻度を測定する。それによって、対応する商品7が来店者によって手に取られた頻度についての情報を得ることができる。
商品7が来店者に手に取られていない間は、ホルダタグTと無線装置2の通信ができないため、無線装置2とタグ管理サーバ5との間の通信は発生しない。したがって、このシステムでは、商品7が手に取られた頻度を自動的に測定する際に、通信に要するデータを大幅に抑制できる。
【0047】
さらに、一実施形態の物品管理方法は、以下の各ステップを含む。
(1)ネーマ紙NPを商品7に取り付けるステップ
(2)商品7を保持するホルダ30にホルダタグTを取り付け、その際、商品7がホルダ30に保持されたときにネーマ紙NPによってホルダタグTの少なくとも一部が遮蔽されるようにするステップ
(3)ホルダタグTと無線通信が可能となる位置に無線装置2を配置するステップ
(4)無線装置2によるホルダタグTとの時間の経過に応じた通信可否の結果を取得し、通信可否の結果に基づいて無線装置2ホルダタグTと通信可能となる頻度を測定するステップ
【0048】
以上、本発明の物品管理システム、及び、物品管理方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1…商品管理システム
T1~T6…ホルダタグ
Tref…参照タグ
11…制御部
111…メモリ
12…アンテナ
13…ハーベスティング部
131…エネルギーストレージ
14…電圧制御部
15…RFトランシーバ
2…無線装置
21…制御部
22…アンテナ
23…RFトランシーバ
24…通信部
3…商品棚
30-1~30-6…ホルダ
31…支持部
31h…孔
32…背もたれ部
5…タグ管理サーバ
51…制御部
52…ストレージ
53…通信部
7-1~7-6…商品
8…ワイヤ
PL1~PL6…ラベル
NP…ネーマ紙
NW…ネットワーク
図1
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図8