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特開2023-75676無線通信システム、無線アクセスポイント装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075676
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線アクセスポイント装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/10 20180101AFI20230524BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20230524BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20230524BHJP
   H04W 48/08 20090101ALI20230524BHJP
【FI】
H04W76/10
H04W84/12
H04W88/06
H04W48/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188728
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】390040187
【氏名又は名称】株式会社バッファロー
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】太田 雅矢
(72)【発明者】
【氏名】小野 陽
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067DD34
5K067EE02
5K067EE10
5K067FF02
(57)【要約】
【課題】ネットワーク可用性を向上できる無線通信システム、無線アクセスポイント装置、及びプログラムを提供する。
【解決手段】アクセスポイント装置10が、端末装置200との間で、所定の高速ローミング方式に対応した通信を行う第1のインタフェースと、所定の高速ローミング方式を無効とした通信を行う第2のインタフェースとを含む複数のインタフェースのいずれかのインタフェースを介して通信を行う。アクセスポイント装置10は、端末装置200からの接続要求を受け入れ、当該接続要求時に、当該端末装置200を識別する情報を取得し、当該取得した情報に基づいて、上記第1のインタフェースと第2のインタフェースとを含む複数のインタフェースのいずれのインタフェースを介した通信を行うかを決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアクセスポイント装置を含む無線LANシステムと、端末装置とを含み、
前記無線LANシステムの各アクセスポイント装置は、前記端末装置との間で、所定の高速ローミング方式に対応した通信を行う第1のインタフェースと、所定の高速ローミング方式を無効とした通信を行う第2のインタフェースとを含む複数のインタフェースのいずれかのインタフェースを介して通信を行うアクセスポイント装置であり、
前記無線LANシステムが、
端末装置からの接続要求を受け入れる手段と、
前記接続要求時に、当該端末装置を識別する情報を取得する取得手段と、
前記第1のインタフェースと、前記第2のインタフェースとを含む複数のインタフェースのいずれのインタフェースを介した通信を行うかを決定する決定手段と、
を有し、
前記決定したインタフェースを介して前記接続要求を行った端末装置との通信を開始するよう制御する無線通信システム。
【請求項2】
端末装置との間で、所定の高速ローミング方式に対応した通信を行う第1のインタフェースと、所定の高速ローミング方式を無効とした通信を行う第2のインタフェースとを含む複数のインタフェースのいずれかのインタフェースを介して通信を行う通信手段と、
端末装置からの接続要求を受け入れる手段と、
前記接続要求時に、当該端末装置を識別する情報を取得する取得手段と、
前記第1のインタフェースと、前記第2のインタフェースとを含む複数のインタフェースのいずれのインタフェースを介した通信を行うかを決定する決定手段と、設定完了後に接続すべきインタフェースの情報を提供する手段と、を有し、
前記決定したインタフェースを介して、前記接続要求を行った端末装置との通信を開始するよう制御するアクセスポイント装置。
【請求項3】
請求項2に記載のアクセスポイント装置であって、
前記第1のインタフェースと、前記第2のインタフェースとは少なくとも、それぞれ互いに異なる周波数が設定されているアクセスポイント装置。
【請求項4】
請求項2に記載のアクセスポイント装置であって、
前記第1のインタフェースと、前記第2のインタフェースとは少なくとも、それぞれ互いに異なるSSIDが設定されているアクセスポイント装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項に請求項に記載のアクセスポイント装置であって、
過去に、前記所定の接続設定後の接続に失敗した端末装置を識別する情報を保持する保持手段にアクセス可能であって、
前記決定手段は、前記取得手段が取得した情報で識別される端末装置が、過去に前記所定の高速ローミング方式が有効なインタフェースへの接続に失敗した端末装置であるか否かを、前記保持手段にアクセスして調べ、前記第1のインタフェースと、前記第2のインタフェースとを含む複数のインタフェースのいずれのインタフェースを介した通信を行うかを決定するアクセスポイント装置。
【請求項6】
請求項5に記載のアクセスポイント装置であって、
端末装置が、前記所定の高速ローミング方式が有効なインタフェースへの接続に失敗したことを検出すると、前記保持手段にアクセスし、当該インタフェースへの接続に失敗した端末装置を識別する情報を保持させるアクセスポイント装置。
【請求項7】
端末装置との間で、所定の高速ローミング方式に対応した通信を行う第1のインタフェースと、所定の高速ローミング方式を無効とした通信を行う第2のインタフェースとを含む複数のインタフェースのいずれかのインタフェースを介して通信を行う通信手段を備えたアクセスポイント装置を、
端末装置からの接続要求を受け入れる手段と、
前記接続要求時に、当該端末装置を識別する情報を取得する取得手段と、
前記第1のインタフェースと、前記第2のインタフェースとを含む複数のインタフェースのいずれのインタフェースを介した通信を行うかを決定する決定手段と、設定完了後に接続すべきインタフェースの情報を提供する手段として機能させ、
前記決定したインタフェースを介して、前記接続要求を行った端末装置との通信を開始するよう制御させるプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、無線アクセスポイント装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、無線LANの利用環境が普及し、アクセスポイント装置も、各所に設置されて利用されている。
【0003】
このように複数のアクセスポイント装置が各所に設置されている状況下では、あるアクセスポイント装置と通信を行っているクライアントが移動したときに、無線LANでの通信先を、別のアクセスポイント装置に切り替える、いわゆるローミングが発生する。
【0004】
従来の技術では、ローミングが発生すると、クライアントは現在通信中のアクセスポイント装置(ローミング元)との通信を切断し、新たなローミング先となるアクセスポイント装置とのアソシエーションや認証を行うこととなっており、少なくとも一時的に無線LAN接続が切断されて、通信遅延などが生じていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】藤ノ木俊,「[ワイヤレスブログ第9回]ローミング」,[online],2019年11月21日,[令和3年11月16日検索],インターネット<URL:https://licensecounter.jp/engineer-voice/blog/articles/20191121__9.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、例えば非特許文献1に記載されているように、IEEE802.11rなどの規格が定められ、比較的高速にローミングを行うための技術(高速ローミング技術)が開発されてきている。しかしこの高速ローミング技術を利用するためには、アクセスポイント装置側と、クライアント側との双方が同じ規格の高速ローミング技術に対応した処理を行う必要があるにも関わらず、双方の規格に子細な相違があるなどによって高速ローミングが有効となっている際に接続に失敗してしまうという場合が生じていた。
【0007】
また無線LANでは、一度、通信を行うためのネットワーク設定が行われると、ユーザが明示的にネットワーク設定を切り替えるまで元のネットワーク設定が利用され続けることとなり、あるネットワーク設定で接続に失敗した場合、その後も接続ができず、ネットワーク可用性が低下してしまう。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、ネットワーク可用性を向上できる無線通信システム、無線アクセスポイント装置、及びプログラムを提供することを、その目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来例の問題点を解決する本発明の一態様は、複数のアクセスポイント装置を含む無線LANシステムと、端末装置とを含む無線通信システムであって、前記無線LANシステムの各アクセスポイント装置は、前記端末装置との間で、所定の高速ローミング方式に対応した通信を行う第1のインタフェースと、所定の高速ローミング方式を無効とした通信を行う第2のインタフェースとを含む複数のインタフェースのいずれかのインタフェースを介して通信を行うアクセスポイント装置であり、前記無線LANシステムが、端末装置からの接続要求を受け入れる手段と、前記接続要求時に、当該端末装置を識別する情報を取得する取得手段と、前記第1のインタフェースと、前記第2のインタフェースとを含む複数のインタフェースのいずれのインタフェースを介した通信を行うかを決定する決定手段と、を有し、前記決定したインタフェースを介して、前記接続要求を行った端末装置との通信を開始するよう制御するものである。
【0010】
また本発明のもう一つの態様は、アクセスポイント装置であって、端末装置との間で、所定の高速ローミング方式に対応した通信を行う第1のインタフェースと、所定の高速ローミング方式を無効とした通信を行う第2のインタフェースとを含む複数のインタフェースのいずれかのインタフェースを介して通信を行う通信手段と、端末装置からの接続要求を受け入れる手段と、前記接続要求時に、当該端末装置を識別する情報を取得する取得手段と、当該取得手段が取得した情報に基づいて、前記第1のインタフェースと、前記第2のインタフェースとを含む複数のインタフェースのいずれのインタフェースを介した通信を行うかを決定する決定手段と、設定完了後に接続すべきインタフェースの情報を提供する手段を有し、前記決定したインタフェースを介して、前記接続要求を行った端末装置との通信を開始するよう制御するものである。
【0011】
本発明のこれらの態様によると、高速ローミングを有効としたインタフェースに接続できないと判断される端末装置については第2のインタフェースを介した通信を行い、高速ローミングに対応する端末装置については第1のインタフェースを介した通信を行うよう振り分けることができ、高速ローミングに対応する端末装置についてはその可用性を維持しつつ、高速ローミングを有効としたインタフェースに接続できないと判断される端末装置については高速ローミングを行わないよう制御されるので、その可用性も向上できる。
【0012】
またここで、前記第1のインタフェースと、前記第2のインタフェースとは少なくとも、それぞれ互いに異なる周波数帯が設定されていることとしてもよいし、それぞれ互いに異なるSSIDが設定されていることとしてもよい。
【0013】
この例では、高速ローミングを有効とした第1のSSIDに接続できないと判断される端末装置については第2のSSIDを介した通信を行い、高速ローミングに対応する端末装置については第2のSSIDとは異なる第1のSSIDを介した通信を行うよう振り分けることが可能となる。
【0014】
またここでアクセスポイント装置は、過去に、接続設定後に接続に失敗した端末装置を識別する情報を保持する保持手段にアクセス可能であり、前記決定手段は、前記取得手段が取得した情報で識別される端末装置が、過去に前記所定の接続設定後の接続に失敗した端末装置であるか否かを、前記保持手段にアクセスして調べ、前記第1のインタフェースと、前記第2のインタフェースとを含む複数のインタフェースのいずれのインタフェースを介した通信を行うかを決定することとしてもよい。
【0015】
この例によると、過去に接続設定後の接続に失敗した端末装置については、アクセスポイントより提供された情報を元に上記第2のインタフェースによる通信を行うことが可能となり、高速ローミングが有効なインタフェースに接続できないと判断される端末装置について、比較的簡便な操作により、高速ローミングを有効とする第1インタフェースへの接続を行わないよう制御されることとなる。
【0016】
さらにこの際に、端末装置が、前記所定の接続設定後の接続に失敗したことを検出すると、前記保持手段にアクセスし、当該接続に失敗した端末装置を識別する情報を保持させることとしてもよい。
【0017】
この例では、過去にローミングに失敗した端末装置が人為的操作なく記録されるため、高速ローミングに対応しないと判断される端末装置について、比較的簡便な操作により、高速ローミングを無効とする第2インタフェース、周波数帯若しくはSSIDへの接続を行うよう制御されることとなる。
【0018】
また本発明の別の態様は、プログラムであって、端末装置との間で、所定の高速ローミング方式に対応した通信を行う第1のインタフェースと、所定の高速ローミング方式を無効とした通信を行う第2のインタフェースとを含む複数のインタフェースのいずれかのインタフェースを介して通信を行う通信手段を備えたアクセスポイント装置を、端末装置からの接続要求を受け入れる手段と、前記接続要求時に、当該端末装置を識別する情報を取得する取得手段と、当該取得手段が取得した情報に基づいて、前記第1のインタフェースと、前記第2のインタフェースとを含む複数のインタフェースのいずれのインタフェースを介した通信を行うかを決定する決定手段と、設定完了後に接続すべきインタフェースの情報を提供する手段として機能させ、前記決定したインタフェースを介して、前記接続要求を行った端末装置との通信を開始するよう制御させることとしたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、高速ローミングが有効なインタフェースに接続可能な端末装置であると否とに関わらずそのネットワーク可用性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態の例に係る無線通信システムの構成ブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係るアクセスポイント装置の制御部の例を表す機能ブロック図である。
図3】本発明の実施の形態に係るアクセスポイント装置の動作例を表すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係る無線通信システム1は、図1に例示するように、無線LANシステム100と、端末装置200(クライアント)とを含んで構成される。また無線LANシステム100は、複数のアクセスポイント装置10a,10b…(以下、それぞれを区別する必要がない場合は、アクセスポイント装置10として表記する)と、コントローラ装置20とを含む。
【0022】
さらにアクセスポイント装置10は、制御部11と、記憶部12と、通信部13とを含んで構成される。ここで制御部11は、CPUなどのプログラム制御デバイスであり、記憶部12に格納されたプログラムに従って動作する。
【0023】
本実施の形態の例では、この制御部11は、通信部13を制御して、端末装置200との間で、所定の高速ローミング方式を有効とした通信を行う第1のインタフェースと、所定の高速ローミング方式を無効とした通信を行う第2のインタフェースとを含む複数のインタフェースのいずれかのインタフェースを介して通信を行う。またこの制御部11は、端末装置200から接続要求を受け入れると、当該端末装置200を識別する情報を取得し、当該取得した情報に基づいて、上記第1のインタフェースと第2のインタフェースとを含む複数のインタフェースのいずれのインタフェースを介した通信を行うかを決定する。そして制御部11は、設定完了後に接続すべきインタフェースの情報を提供する手段により当該決定したインタフェースの情報を端末装置200に送付し、接続要求を行った端末装置200との通信を開始する。この制御部11の動作については後に詳しく述べる。
【0024】
記憶部12は、不揮発性のメモリデバイスを含み、制御部11によって実行されるプログラムを保持する。またこの記憶部12は、制御部11のワークメモリとしても動作する。この記憶部12は揮発性のメモリデバイスを含んでもよい。
【0025】
なお、この記憶部12に保持されるプログラムは、コンピュータ可読かつ非一時的な記録媒体に格納されて提供され、この記憶部12に複写されたものであってもよいし、ネットワーク等を介して受信されたものであってもよい。
【0026】
通信部13は、制御部11の制御に従い、端末装置200との間で無線LANの規格による通信を行うとともに、有線または無線にて上記コントローラ装置20との間で通信を行う。既に述べたように、本実施の形態の例では、この通信部13は、端末装置200ごとに複数のインタフェースから選択されて決定されたインタフェースを介して通信を行う。
【0027】
コントローラ装置20は、高速ローミングを行う際に、ローミング元となったアクセスポイント装置10aから受信した認証要求をローミング先となるアクセスポイント装置10bに対して送出し、またその応答をローミング先となるアクセスポイント装置10bから受信してローミング元となったアクセスポイント装置10aへ送出するといった動作を行う。このような動作は、Over-the-DSローミング方式として広く知られたものであるので、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0028】
端末装置200は、スマートフォンや携帯ゲーム機、あるいは家電製品など、種々の電子機器である。この端末装置200のうちには、アクセスポイント装置10と同じ規格による高速ローミングに対応した通信を行うものも、アクセスポイント装置10と同じ規格による高速ローミングに対応していないものも含まれてよい。
【0029】
次に本実施の形態のアクセスポイント装置10の制御部11の動作例について説明する。本実施の形態のアクセスポイント装置10は、既に述べたように、所定の高速ローミング方式を有効とした通信を行う第1のインタフェースと、所定の高速ローミング方式を無効とした通信を行う第2のインタフェースとを含む複数のインタフェースのいずれかのインタフェースを介して通信を行うよう設定されている。ここでインタフェースは例えば2.4GHz帯や5GHz帯、6GHz帯等の周波数帯域、またはSSID(Service Set IDentifier)によって識別される。つまり具体的な例として本実施の形態のアクセスポイント装置10は、所定の高速ローミング方式を有効とした通信を行う第1のSSIDで識別されるネットワークと、上記所定の高速ローミング方式を無効とした通信を行う第2のSSIDで識別されるネットワークとのいずれかに端末装置200を接続させる。
【0030】
制御部11は、所定の高速ローミング方式を有効とした通信を行う第1のSSIDで識別されるネットワークに接続した端末装置200については、例えばIEEE802.11rOver-the-DSローミング方式による高速ローミングを行う。例えばローミング先となるアクセスポイント装置10の制御部11は、コントローラ装置20を介して認証要求(FT Request)を受信して高速ローミングの動作を開始する。この認証要求には、高速ローミングを行う端末装置200のMAC(Media Access Control)アドレスなど、端末装置200を識別する情報が含まれる。
【0031】
この認証要求を受信した制御部11は、当該認証要求に対する所定の応答(FT Response)を、コントローラ装置20及びローミング元のアクセスポイント装置10を介して端末装置200へ送出する。そしてその後、この制御部11は、通信部13を介して端末装置200から再接続の要求を受け入れて、再接続の処理を行い、応答を送出することとなる。
【0032】
制御部11は、接続設定後、認証要求(Auth Request)を受信しながら、対応する端末装置200との再接続が所定の時間内にできなかった場合には、当該端末装置200を識別する情報(例えばMACアドレス)を、コントローラ装置20に送出して、コントローラ装置20に当該情報を蓄積して記憶させる。
【0033】
この例では、コントローラ装置20が、過去に所定の接続に失敗した端末装置200を識別する情報(以下、失敗履歴情報と呼ぶ)を保持する保持手段として動作することとなる。
【0034】
また本実施の形態の制御部11は、図2に例示するように、端末装置200からの接続要求を受け入れる受入部111と、取得部112と、決定部113と、接続部114とを機能的に含んで構成される。
【0035】
受入部111は、所定のタイミング(例えばアソシエーション要求があったとき、あるいはWPS(Wi-Fi Protected Setup)等による接続設定が行われるとき)に、端末装置200からの接続要求を受け入れる。この接続要求には、端末装置200を識別するMACアドレスなどの情報が含まれる。取得部112は、受入部111が受け入れた接続要求に含まれる端末装置200を識別する情報を取得する。
【0036】
決定部113は、取得部112が取得した情報に基づいて、当該情報で識別される端末装置200を、上記第1のインタフェースと第2のインタフェースとを含む複数のインタフェースのいずれのインタフェースに接続して通信を行うかを決定する。
【0037】
一例としてこの決定部113は、コントローラ装置20にアクセスし、当該コントローラ装置20が保持する、過去に上記所定の接続設定後の接続に失敗した端末装置を識別する失敗履歴情報のうちに、取得部112が取得した情報が含まれているか否かを調べる。
【0038】
つまりこの決定部113は、接続要求を行った端末装置200が、過去に接続設定後の接続に失敗したか否か(再接続に失敗したことがあり、失敗履歴情報にその識別情報が保持されているか否か)を調べる。
【0039】
決定部113は、失敗履歴情報に取得部112が取得した情報が含まれていなければ、接続要求を行った端末装置200を、所定の高速ローミング方式を有効とした通信を行う第1のSSIDで識別されるネットワークに接続することを決定する。またこの決定部113は、失敗履歴情報に取得部112が取得した情報が含まれていれば、接続要求を行った端末装置200を、所定の高速ローミング方式を無効とした通信を行う第2のSSIDで識別されるネットワークに接続することを決定する。
【0040】
接続部114は、決定部113により決定されたSSIDのネットワークに、接続要求を行った端末装置200を接続するよう制御する。
【0041】
[動作]
本実施の形態は上述の例の構成を備えており、次のように動作する。なお、以下の例で当初は、コントローラ装置20が保持する、過去に上記所定の接続設定後の接続に失敗した端末装置を識別する失敗履歴情報は空であるものとする。
【0042】
端末装置200aが無線LANシステム100のいずれかのアクセスポイント装置10に対して接続要求(例えばWPSによる接続要求)を行うと、当該接続要求を受けたアクセスポイント装置10が、図3に例示する処理を開始し、接続要求を行った端末装置200aを識別するMACアドレスなどの情報(ここでは識別情報「A」とする)を取得する(S11)。
【0043】
そしてこのアクセスポイント装置10は、コントローラ装置20にアクセスし、当該コントローラ装置20が保持する失敗履歴情報のうちに、上記取得した情報「A」が含まれているか否かを調べる(S12)。
【0044】
ここでは、この端末装置200aはこの時点で過去に接続設定後の接続に失敗したことはなく、コントローラ装置20が保持する失敗履歴情報は空であるので(S12:No)、アクセスポイント装置10は、この情報「A」で識別される端末装置200aを、所定の高速ローミング方式を有効とした通信を行う第1のSSIDで識別されるネットワークに接続するよう制御する(S13)。
【0045】
その後、無線LANシステム100に含まれるアクセスポイント装置10aとの間で、第1のSSIDで識別されるネットワークに接続中、この端末装置200aが移動し、アクセスポイント装置10aとの通信よりもアクセスポイント装置10bとの通信が適切である状態(例えばアクセスポイント装置10bとの間で送受する信号の強度が他のアクセスポイント装置10との間での信号よりも強いと判断される状態)となると、コントローラ装置20がアクセスポイント装置10bへのローミングを行うよう端末装置200aに促す(S14:高速ローミング処理の開始)。
【0046】
ここで端末装置200aが高速ローミング方式に対応している場合、端末装置200aは、ローミング先となるアクセスポイント装置10bに対して、アクセスポイント装置10a及びコントローラ装置20を介して認証要求(Auth Request)を送出する。
【0047】
するとアクセスポイント装置10bが、この認証要求に対し、所定の応答(Auth Response)を、コントローラ装置20及びローミング元のアクセスポイント装置10aを介して端末装置200aへ送出する。
【0048】
端末装置200aはその後、アクセスポイント装置10bに対して再接続(re-association)を要求し、アクセスポイント装置10bが再接続の応答を行ってローミングが完了するのが本来の高速ローミング方式の一例である。
【0049】
そこでアクセスポイント装置10bは、接続設定後の接続に成功したか否かを調べ(S15)、端末装置200aがアクセスポイント装置10bに再接続されて接続設定後の接続に成功していれば(S15:Yes)、そのまま接続が完了したものとして処理を終了し、通信を続ける。
【0050】
一方、ステップS14の接続設定後の接続処理において、端末装置200aが何らかの原因で、認証要求(Auth Request)の送出を行わないか、あるいはアクセスポイント装置10bに対して再接続を要求しない、または応答に対して正しい処理を行わないと、認証要求の応答などが行われてから所定の時間内に完了しない(接続設定後の接続処理に失敗した)ことになる。そこでこのように接続設定後の接続処理に失敗した場合、アクセスポイント装置10aまたはアクセスポイント装置10bがステップS15において、接続設定後の接続処理に成功していないと判断する(S15:No)。
【0051】
そして端末装置200aが接続設定後の接続処理に失敗したと判断したアクセスポイント装置10がこの端末装置200aを識別する情報「A」を、コントローラ装置20に送出して、コントローラ装置20に、失敗履歴情報として蓄積させる(S16)。
【0052】
この例では、端末装置200aは、接続設定後の接続に失敗し、無線LANシステム100との接続が失われた状態となる。
【0053】
その後ユーザは、接続設定後の接続に失敗し、接続が失われたことを受けて、再度、端末装置200aの、WPSによる接続要求を行う。するとこの接続要求を受けたアクセスポイント装置10が図3の処理を実行し、そのステップS11で接続要求を行った端末装置200aを識別する情報「A」を取得し、さらにコントローラ装置20にアクセスして、当該コントローラ装置20が保持する失敗履歴情報のうちに、上記取得した情報「A」が含まれているか否かを調べる(ステップS12)。
【0054】
ここでは先の処理において、コントローラ装置20が、当該情報「A」を、失敗履歴情報に含めて保持しているため(ステップS12:Yes)、アクセスポイント装置10は、この情報「A」で識別される端末装置200aを、所定の高速ローミング方式を無効とした通信を行う第2のSSIDで識別されるネットワークに接続するよう制御する(S17)。
【0055】
[高速ローミング方式の他の例]
なお、ここまでの説明では、高速ローミング方式の例として、無線LANシステム100がIEEE802.11rOver-the-DSローミング方式でのローミングの処理を行う例について説明したが、本実施の形態はこの例に限られず、無線LANシステム100がIEEE802.11rOver-the-Airローミング方式でのローミングの処理を行うこととしてもよい。さらにIEEE802.11r以外の高速ローミング方式でのローミング処理を行う場合も、同様の構成を採用できる。
【0056】
[変形例1]
またここまでの説明では、アクセスポイント装置10とコントローラ装置20とが別体であるように記載してきたが、コントローラ装置20は、同じ無線LANシステム100に含まれるいずれかのアクセスポイント装置10と一体的に構成されてもよい。
【0057】
[変形例2]
さらに上記実施の形態では、アクセスポイント装置10が、失敗履歴情報に基づいて端末装置200を接続するインタフェースを決定することとしていたが、これに代えて、失敗履歴情報にその識別情報が記録されている端末装置200に対して少なくとも一度、失敗履歴情報に記録されている旨の報知を行い、端末装置200のユーザが当該報知を受けて、端末装置200を操作してインタフェースを変更する構成であってもよい。また、失敗履歴情報を保持しない場合は、端末装置200のユーザが接続に失敗したことを受けて、インタフェースを変更することとしてもよい。
【0058】
[変形例3]
また、アクセスポイント装置10のインタフェースは、このアクセスポイント装置10を設定するためのインタフェース(ウェブサーバを介してアクセス可能なものであってもよい)を用いて、アクセスポイント装置10の管理者等が、各インタフェース(各SSIDあるいは各周波数帯域)ごとに、高速ローミングを有効とするか、無効とするかを選択可能としてもよい。
【0059】
[変形例4]
さらにここまでの説明ではインタフェース毎に高速ローミング方式の有効・無効情報を保持していたが、アクセスポイント装置10が、インタフェース毎に高速ローミング方式の有効・無効情報を保持する代わりに、端末装置200において、高速ローミング方式が有効であるインタフェースに接続しているにも関わらず、接続設定後の接続に失敗した場合は、その旨の履歴を保持し、当該履歴に基づいて高速ローミング方式を無効としたインタフェースへの接続を行うよう制御してもよい。
【0060】
[変形例5]
さらに、一部の端末装置200では、当該端末装置200を識別する情報がランダムに変化する技術を使用している場合がある。そこで、アクセスポイント装置10は、失敗履歴情報の記録に関わらず、接続設定後の接続に失敗した端末装置200を検出して、当該端末装置200の識別情報を失敗履歴情報に記録した後に、それから所定の期間内(例えばその後の最初の接続設定、あるいは記録した後、24時間以内など所定の時間内)に行われた接続設定の際、当該接続設定を行った端末装置200に対して高速ローミングを無効とする第2のインタフェースの情報を送信して、第2のインタフェースでの接続を促すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 無線通信システム、10 アクセスポイント装置、11 制御部、12 記憶部、13 通信部、20 コントローラ装置、100 無線LANシステム、111 受入部、112 取得部、113 決定部、114 接続部、200 端末装置。
図1
図2
図3