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  • 特開-スピニングリールのリール本体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075699
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】スピニングリールのリール本体
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/01 20060101AFI20230524BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20230524BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
A01K89/01 A
B29C45/14
B29C45/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188765
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】川端 崇
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】モホド シュクリ ナズリ ビン ムスタファ
【テーマコード(参考)】
2B108
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
2B108BA01
2B108BA03
2B108BA05
2B108BA07
2B108BA09
4F202AD05
4F202AG03
4F202AG27
4F202AH02
4F202AR12
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB22
4F202CQ03
4F206AD05
4F206AG03
4F206AG27
4F206AH02
4F206AR12
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB22
4F206JF05
4F206JL02
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】軽量化及び外観の向上を同時に実現することができるスピニングリールのリール本体1を、提供する。
【解決手段】スピニングリールのリール本体1は、釣り竿が取り付けられる釣竿取付部3と、機構収納部13を有する筐体部5と、筐体部5から釣竿取付部3に向けて延びる脚部7と、筐体部5及び脚部7内に配置されるインサート部9と、を備える。釣竿取付部3、筐体部5、及び脚部7は、射出成形によって一体に形成される。インサート部9は、第1部分15と、第2部分17と、を有する。第1部分15の少なくとも一部が露出するように、第1部分15は機構収納部13に配置される。第2部分17は、第1部分15と一体に形成される。第2部分17の少なくとも一部は、脚部7の基端部7a内に配置される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り竿が取り付けられる釣竿取付部と、
機構収納部を有する筐体部と、
前記筐体部から前記釣竿取付部に向けて延びる脚部と、
前記筐体部及び前記脚部内に配置されるインサート部と、
を備え、
前記釣竿取付部、前記筐体部、及び前記脚部は、射出成形によって一体に形成され、
前記インサート部は、少なくとも一部が露出するように前記機構収納部に配置される第1部分と、前記第1部分と一体に形成され少なくとも一部が前記脚部の基端部内に配置される第2部分と、を有する、
スピニングリールのリール本体。
【請求項2】
前記第2部分は、先細り形状に形成される、
請求項1に記載のスピニングリールのリール本体。
【請求項3】
前記第2部分は、少なくとも1つの凹部を有する、
請求項1又は2に記載のスピニングリールのリール本体。
【請求項4】
前記第2部分の外面及び前記脚部の外面の間の厚みは、3.0mm以下である、
請求項1から3のいずれか1項に記載のスピニングリールのリール本体。
【請求項5】
前記第2部分の外面及び前記脚部の外面の間の厚みは、1.5mm以上である、
請求項4に記載のスピニングリールのリール本体。
【請求項6】
前記第1部分は、少なくとも1つの孔部を有し、
前記少なくとも1つの孔部には、金型に固定される位置決め部材が装着される、
請求項1から5のいずれか1項に記載のスピニングリールのリール本体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピニングリールのリール本体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスピニングリールのリール本体は、釣竿取付部と、筐体部と、脚部と、を有している。釣竿取付部には、釣り竿が取り付けられる。筐体部は、機構収納部を有する。脚部は、筐体部から釣竿取付部に向けて延びる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56-096644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、リール本体の脚部は把持性を考慮すると、脚部の断面積は小さいことが望ましい。一方で、リール本体の筐体部には機構収納空間が設けられるので、筐体部の断面積は大きいことが望ましい。
【0005】
このような脚部及び筐体部を一体で形成する場合、脚部及び筐体部の接続部である脚部の基端部において断面積が急激に小さくなると、応力が脚部の基端部に集中し、脚部の基端部の強度が低下するおそれがある。
【0006】
これを避けるため、特許文献1のリール本体では、脚部の基端部は、筐体部に近づくにつれて、その断面積が徐々に増加するように形成され、脚部の内部には細身の補強芯材が配置される。この場合、脚部の基端部の断面積(肉厚)が大きくなるので、リール本体の重量が増加するおそれがある。また、脚部の基端部の断面積(肉厚)が大きくなると、リール本体を射出成形によって形成する際に冷却時間が長くなるので、リール本体の外面にヒケが生じるおそれがある。また、特許文献1のリール本体では、補強芯材をリール本体内に位置決めする手段がないので、補強心材の配置が不安定になり、補強芯材がリール本体の表面に露出するおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、外観の向上または軽量化を実現することができるスピニングリールのリール本体を、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係るスピニングリールのリール本体は、釣り竿が取り付けられる釣竿取付部と、機構収納部を有する筐体部と、筐体部から釣竿取付部に向けて延びる脚部と、筐体部及び脚部内に配置されるインサート部と、を備える。釣竿取付部、筐体部、及び脚部は、射出成形によって一体に形成される。
【0009】
インサート部は、第1部分と、第2部分と、を有する。第1部分の少なくとも一部が露出するように、第1部分は機構収納部に配置される。第2部分は、第1部分と一体に形成される。第2部分の少なくとも一部は、脚部の基端部内に配置される。
【0010】
本リール本体では、インサート部における第2部分の少なくとも一部を脚部の基端部内に配置することによって、脚部の基端部における射出樹脂の肉厚を薄くできるので、表面にヒケが生じることなく、リール本体の外観を向上させることができる。また、インサート部を形成する材料を射出樹脂より軽量なものにすることでリール本体の軽量化を図ることもできる。
【0011】
また、インサート部における第1部分の少なくとも一部が露出するように第1部分が機構収納部に配置されるので、第1部分において露出した部分をインサート部の位置決め手段として用いることによって、インサート部を脚部の基端部に対して好適に位置決めすることができる。
【0012】
本発明の他の側面に係るスピニングリールのリール本体では、第2部分は先細り形状に形成されることが好ましい。この構成によって、脚部の基端部の断面積(肉厚)を好適に小さくすることができる。
【0013】
本発明の他の側面に係るスピニングリールのリール本体では、第2部分は、少なくとも1つの凹部を有することが好ましい。この構成によって、第2部分及び脚部を確実に一体化することができる。また、脚部からの第2部分の抜け出しを防止することができる。
【0014】
本発明の他の側面に係るスピニングリールのリール本体では、第2部分の外面及び脚部の外面の間の厚みは、3.0mm以下であることが好ましい。この構成によって、ヒケの発生を好適に防止することができる。
【0015】
本発明の他の側面に係るスピニングリールのリール本体では、第2部分の外面及び脚部の外面の間の厚みは、1.5mm以上であることが好ましい。この構成によって、射出成形時の材料を好適に流動させることができる。
【0016】
本発明の他の側面に係るスピニングリールのリール本体では、第1部分は、少なくとも1つの孔部を有することが好ましい。少なくとも1つの孔部には、金型に固定される位置決め部材が装着される。この構成によって、インサート部を脚部の基端部に対して好適に位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、スピニングリールのリール本体において、軽量化及び外観の向上を同時に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態によるスピニングリールのリール本体の側面図(インサート部を除く)。
図2】リール本体においてインサート部の第1部分を収納する部分を部分的に拡大した斜視図。
図3】スピニングリールのリール本体の側面図(インサート部を含む)。
図4】インサート部の外観斜視図。
図5】脚部、筐体部、及びインサート部を部分的に拡大した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態が採用されたスピニングリールのリール本体1は、図1に示すように、釣竿取付部3と、筐体部5と、脚部7と、インサート部9と、を備える。釣竿取付部3、筐体部5、及び脚部7は、射出成形によって一体に形成される。例えば、釣竿取付部3、筐体部5、及び脚部7は、樹脂によって形成される。釣竿取付部3、筐体部5、及び脚部7は、他の材料例えば金属によって形成されてもよい。
【0020】
釣竿取付部3には、釣り竿が取り付けられる。筐体部5は、機構収納部13を有する。例えば、筐体部5は、筒状部11と、機構収納部13と、を有する。筒状部11には、図示しないロータが配置される。ロータの前部には、図示しないスプールが配置される。
【0021】
機構収納部13には、スピニングリールを動作させるための各種機構が配置される。各種機構は、図示しない、ハンドルに連動して回転する駆動ギア、スプールに連結されるスプール軸、駆動ギアに噛み合いロータを回転させるピニオンギア、及びピニオンギアの回転に連動してスプール軸を前後方向に移動させるオシレーティング機構等、を含む。図1及び図2に示すように、機構収納部13には、保持部13aが設けられる。保持部13aは、図4に示す第1部分15の被保持部15a(後述する)を覆う。
【0022】
図1に示すように、脚部7は、筐体部5から釣竿取付部3に向けて延びる。脚部7は、基端部7aと、先端部7bと、を有する。基端部7aは、脚部7において機構収納部13側に設けられる。基端部7aは、射出成形によって機構収納部13と一体に形成される。
【0023】
先端部7bは、脚部7において釣竿取付部3側に設けられる。先端部7bは、射出成形によって、基端部7a及び釣竿取付部3と一体に形成される。すなわち、基端部7a及び先端部7bは、射出成形によって筐体部5及び釣竿取付部3と一体に形成される。
【0024】
図3に示すように、インサート部9は、筐体部5及び脚部7内に配置される。例えば、インサート部9は樹脂によって形成される。インサート部9は、他の材料例えば金属によって形成されてもよい。インサート部9の材料は、釣竿取付部3、筐体部5、及び脚部7の樹脂より軽い材料であることが好ましい。図4に示すように、インサート部9は、第1部分15と、第2部分17と、を有する。
【0025】
図5に示すように、第1部分15の少なくとも一部が露出するように、第1部分15は機構収納部13に配置される。本実施形態では、インサート部9が筐体部5及び脚部7内に配置された状態において、第1部分15の一部例えば露出面15cが露出するように、第1部分15は機構収納部13に配置される。
【0026】
図4に示すように、第1部分15は、被保持部15aと、少なくとも1つの孔部15bと、を有する。被保持部15aは、射出成形を行う際に位置決め部材Hによって保持される。位置決め部材Hは、図示しない金型に固定される。
【0027】
図5に示すように、被保持部15aは、機構収納部13の保持部13a(図2を参照)に保持される。被保持部15aが機構収納部13の保持部13aに配置された状態で、被保持部15aの一部は露出する。例えば、被保持部15aの一部は、被保持部15aの一面を形成する露出面15cである。
【0028】
図4に示すように、少なくとも1つの孔部15bは、2つの孔部15bを含む。2つの孔部15bは、露出面15cから凹んで形成される。2つの孔部15bには、位置決め部材Hが挿入される。これにより、インサート部9は金型に対して位置決めされる。
【0029】
図4に示すように、第2部分17は、第1部分15と一体に形成される。第2部分17は、先細り形状に形成される。図5に示すように、第2部分17の少なくとも一部は、脚部7の基端部7a内に配置される。本実施形態では、第2部分17は、脚部7の基端部7a内に配置される。なお、第2部分17は、脚部7の基端部7aの内部及び先端部7bの内部の両方に配置されてもよい。
【0030】
図4及び図5に示すように、第2部分17は、少なくとも1つの凹部17aを有する。少なくとも1つの凹部17aは、2つの凹部17a1,17a2を含む。2つの凹部17a1,17a2は、第2部分17の外面に凹状に形成される。例えば、一方の凹部17a1は、第2部分17の前面に形成される。他方の凹部17a2は、第2部分17の後面に形成される。
【0031】
なお、凹部17a(17a1,17a2)の個数は、1個であっても3個以上であってもよい。凹部17a(17a1,17a2)の形成位置は、上記の位置と異なっていてもよい。
【0032】
図5に示すように、第2部分17が脚部7の基端部7a内に配置された状態において、第2部分17の外面及び脚部7の外面の間の厚みTは、1.5mm以上である。第2部分17の外面及び脚部7の外面の間の厚みTは、3.0mm以下である。すなわち、第2部分17の外面及び脚部7の外面の間の厚みTは、1.5mm以上且つ3.0mm以下である。
【0033】
ここでは、第2部分17の外面及び脚部7の外面の間の厚みTは、凹部17a(17a1,17a2)を除いた第2部分17の外面と、脚部7の外面とによって、定義される。
【0034】
なお、第2部分17の外面及び脚部7の外面の間の厚みTは、第2部分17のまわりに設けられる脚部7(基端部7a)の厚みと解釈してもよい。この場合、脚部7(基端部7a)において凹部17a(17a1,17a2)に配置される部分は、厚みTの計測対象から除かれる。
【0035】
上記の構成を有するリール本体1は、釣竿取付部3、筐体部5、及び脚部7を形成するための金型を用いて以下のように形成される。まず、金型に固定された位置決め部材Hが、インサート部9の2つの孔部15bにそれぞれ挿入される(図4を参照)。これにより、インサート部9が金型内に位置決めされる。
【0036】
ここでは、第2部分17の外面及び脚部7の外面の間の厚みTが1.5mm以上且つ3.0mm以下になるように、金型はインサート部9と間隔を隔てて配置される。インサート部9の露出面15cには、金型が接触する。このように、二つの位置決め部材Hと露出面15cによって金型に固定されることによって、インサート部9は後述する樹脂を流動させる際に移動することなく、リール本体内に安定して配置される。
【0037】
次に、加熱された樹脂が、金型の内部に流し込まれる。これにより、加熱された樹脂は、金型及びインサート部9の間に充填される。この状態で、樹脂が冷却される。樹脂の冷却時間は、8秒以上且つ12秒以下であることが好ましい。
【0038】
続いて、樹脂が冷却された後、釣竿取付部3、筐体部5、及び脚部7は、金型から取り出される。これにより、釣竿取付部3、筐体部5、脚部7、及びインサート部9が、一体に形成される。
【0039】
上述したスピニングリールのリール本体1は、以下のような特徴を有する。
【0040】
本リール本体1では、インサート部9における第2部分17の少なくとも一部を脚部7の基端部7a内に配置することによって、脚部7の基端部7aの断面積(肉厚)が小さくなる。これにより、リール本体1の軽量化を図ることができ、リール本体1の外観を向上することができる。例えば、インサート部9を釣竿取付部3、筐体部5、及び脚部7の材料より軽い材料によって形成することによってリール本体1を好適に軽量化することができ、リール本体1の外観を向上することができる。
【0041】
本リール本体1では、インサート部9における第1部分15の少なくとも一部(露出面15c)が露出するように第1部分15が機構収納部13に配置されるので、位置決め部材Hによって、インサート部9を脚部7の基端部7aに対して好適に位置決めすることができる。
【0042】
本リール本体1では、第2部分17は先細り形状に形成されるので、脚部7の基端部7aの断面積(肉厚)を好適に小さくすることができる。本リール本体1では、第2部分17は、少なくとも1つの保持部13aを有するので、第2部分17及び脚部7を確実に一体化することができる。また、脚部7からの第2部分17の抜け出しを防止することができる。
【0043】
本リール本体1では、第2部分17の外面及び脚部7の外面の間の厚みTは、3.0mm以下であるので、ヒケの発生を好適に防止することができる。本リール本体1では、第2部分17の外面及び脚部7の外面の間の厚みTは、1.5mm以上であるので、射出成形時の材料を好適に流動させることができる。
【0044】
本リール本体1では、位置決め部材Hは金型に固定される。この状態において、位置決め部材Hは、インサート部9における第1部分15の孔部15bに挿入される。これにより、インサート部9を脚部7の基端部7aに対して好適に位置決めすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、スピニングリールのリール本体に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 リール本体
3 釣竿取付部
5 筐体部
7 脚部
9 インサート部
13 機構収納部
13a 保持部
15 第1部分
15b 孔部
17 第2部分
H 位置決め部材
T 第2部分の外面及び脚部の外面の間の厚み
図1
図2
図3
図4
図5