(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075761
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】発泡成形容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/42 20060101AFI20230524BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20230524BHJP
B65D 1/26 20060101ALI20230524BHJP
B65D 21/032 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
B65D1/42
B65D1/00
B65D1/26 120
B65D21/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188863
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田窪 陽子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友則
【テーマコード(参考)】
3E006
3E033
【Fターム(参考)】
3E006AA01
3E006BA08
3E006CA01
3E006DA03
3E006DB05
3E033AA08
3E033BA15
3E033BA16
3E033BA22
3E033CA05
3E033CA08
3E033DA08
3E033DC03
3E033DD05
3E033EA05
3E033FA02
(57)【要約】
【課題】外形不良を改善し得る発泡成形容器を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る発泡成形容器(101)は、周壁(1)の内面(15)から径方向内側へ張り出して周方向へ延在するスタック段(4)と、周壁(1)の外面(16)から径方向外側へ張り出して周壁(1)の上下方向へ延在するリブ(5)とを備え、リブ下端(5b)がスタック段(4)と重なる位置に配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間の外周を囲む周壁と、
前記内部空間の下端を規定する底壁と、
前記周壁の内面から径方向内側へ張り出して前記周壁の周方向へ延在するスタック段と、
前記周壁の外面から径方向外側へ張り出して前記周壁の上下方向へ延在するリブと、を備え、
前記リブは、該リブの前記底壁側の端部であるリブ下端が、前記周壁を挟んで前記スタック段と重なる位置に配置されるか、または前記スタック段よりも上側の位置に配置される、発泡成形容器。
【請求項2】
前記リブは、前記リブ下端へ向かって前記径方向における高さが減少する、請求項1に記載の発泡成形容器。
【請求項3】
前記リブは、前記リブ下端において前記周壁の外面と段差なく繋がっている、請求項2に記載の発泡成形容器。
【請求項4】
前記リブは、前記リブ下端へ向かって前記周方向における幅が減少している、請求項1から3のいずれか1項に記載の発泡成形容器。
【請求項5】
前記周壁は、前記リブ下端とは反対側の前記リブの端部であるリブ上端が配置される位置を基準位置とした場合、該基準位置の下側の肉厚に比べて、該基準位置の上側の肉厚が大きくなっている、請求項1から4のいずれか1項に記載の発泡成形容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形によって製造される有底筒状の容器が知られている。射出成形とは、樹脂を溶融させ、金型に流し込み固めることで形状を得る成形技法である。この種の容器に関して、特許文献1には、周壁の外面に上下方向へ延在した複数のリブを備える容器が開示されている。
【0003】
図9は、従来の容器200を示す断面図である。
図9に示すように、容器200は、周壁201の内面に設けられたスタック段204と、周壁201の外面に設けられた複数のリブ205とを備え、使用者が容器200を手で持ったときにリブ205によって熱が伝わり難くなっている。
【0004】
また、この種の容器を、化学発泡剤を混合した樹脂または超臨界状態のガス等の発泡剤を溶かした樹脂を使用する発泡射出成形によって製造することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような従来技術では、スタック段204の位置を超えて底壁202の下側の位置までリブ205が延在しているため、例えば枠囲みP4で示すスタック段204とリブ205とが重なる部分が厚肉になる。このため、前記発泡射出成形で容器200を成形した場合、厚肉部分に外形不良が生じる可能性がある。
【0007】
つまり、発泡射出成形の場合、金型を開放した際に樹脂の後膨れ(不要な発泡)が起こる惧れがあり、これを避けるために、適度に冷却してから金型を開放する必要性がある。ところが、厚肉部分は冷却に時間を要するため、金型を開放した際、厚肉部分に後膨れによる外形不良が生じ易くなる。
【0008】
本発明の一態様に係る発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、外形不良を改善し得る発泡成形容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る発泡成形容器は、内部空間の外周を囲む周壁と、前記内部空間の下端を規定する底壁と、前記周壁の内面から径方向内側へ張り出して前記周壁の周方向へ延在するスタック段と、前記周壁の外面から径方向外側へ張り出して前記周壁の上下方向へ延在するリブと、を備え、前記リブは、該リブの前記底壁側の端部であるリブ下端が、前記周壁を挟んで前記スタック段と重なる位置に配置されるか、または前記スタック段よりも上側の位置に配置される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、外形不良を改善し得る発泡成形容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態1に係る発泡成形容器を示す正面図である。
【
図2】
図1に示される発泡成形容器の平面図である。
【
図3】
図1に示される発泡成形容器のA-A断面図である。
【
図4】
図3に示される枠囲みP1の部分を示す断面図である。
【
図5】
図3に示される枠囲みP2の部分を示す断面図である。
【
図6】前記発泡成形容器の製造工程の一例を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施形態2に係る発泡成形容器を示す正面図である。
【
図8】
図7に示される発泡成形容器の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図6に基づいて説明する。ただし、以下の説明は本発明に係る発泡成形容器の一例であり、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではない。
【0013】
[発泡成形容器の構成]
図1は、本実施形態に係る発泡成形容器101を示す正面図である。また、
図2は、
図1に示される発泡成形容器101の平面図であり、
図3は、
図1に示される発泡成形容器101のA-A断面図である。
【0014】
発泡成形品としての発泡成形容器101は、上端に開口101aを有する有底筒状の容器である。発泡成形容器101は、内部空間Sの外周を囲む周壁1と、内部空間Sの下端を規定する底壁2と、周壁1の下端に連なって底壁2よりも下側に延在する糸尻3とを備える。また、発泡成形容器101は、周壁1の内面15から径方向内側の内部空間Sへ張り出して周壁1の周方向へ延在するスタック段4と、周壁1の外面16から径方向外側へ張り出して周壁1の上下方向(軸方向)へ延在するリブ5と、周壁1の上端から径方向外側へ張り出したフランジ6とを備える。
【0015】
この発泡成形容器101は、例えば、即席食品等の収容に適したものである。内部空間Sに収容される即席食品としては、熱湯を注ぎ入れて調理する即席めん、即席スープ等が挙げられる。これらの高温の食品を収容するため、発泡成形容器101は、射出成形の一種であり、耐熱性を有するプラスチック等の樹脂材料を使用して発泡射出成形により形成される。発泡射出成形とは、化学発泡剤を混合して溶融した樹脂、または溶融した樹脂の中に二酸化炭素ガスや窒素ガス等の発泡剤を溶かして金型に流し込み、成形時に発泡させる成形技法である。特に後述する超臨界発泡射出成形が好適である。
【0016】
本実施形態に係る発泡成形容器101は、スタック段4とリブ5とが重なる部分の肉厚(厚み)を従来よりも低減することにより、発泡射出成形における発泡ムラを抑制すると共に、金型開放後の後膨れを抑え、発泡成形容器101の外形不良を改善するものである。以下、発泡成形容器101の各部の構成について説明する。
【0017】
(周壁1)
周壁1は、上端側へ向かって拡径される円筒形状を有する。周壁1は、上端側が開口101aになっており、下端側が底壁2によって塞がれている。周壁1は、上側から順に、第1部分11と、第2部分12と、第3部分13とを含む。第1部分11にはリブ5が設けられず、この第1部分11は、周壁1の外面16にロールラベルまたは熱収縮ラベル等が装着される場合に、これらのラベル等を接着または保持する面として機能する。第2部分12と第3部分13との間には、段差14が設けられている。この段差14があることにより、周壁1の径方向へ作用する外力に対する強度が向上する。
【0018】
なお、周壁1は、円筒形状に限定されない。周壁1は、四角柱等の多角柱形状であってもよい。また、周壁1は、上端側(開口101a側)が円形で下端側が四角形等の多角形等のように、上端と下端とで形状が異なっていてもよい。
【0019】
(底壁2)
底壁2は、円形の薄板形状を有する。底壁2は、その外周部分が周壁1に接続されることにより、周壁1の下端側を塞いでいる。本実施形態では、底壁2は、外周部分に比べて中央部Mの部分が高くなっており、底壁2の中央部Mおよびその周辺部分が上側へ向かって盛り上がった形状になっている。発泡成形容器101が発泡射出成形される際、底壁2の中央部Mから材料が射出され、金型のキャビティ内に圧入される。ここでいう材料とは、発泡剤を含み、加熱されて溶融状態にある樹脂である。
【0020】
なお、底壁2は、円形形状に限定されない。底壁2の形状は、周壁1の下端の形状に応じて適宜変更可能である。
【0021】
(糸尻3)
糸尻3は、周壁1と底壁2との接続部分において、周壁1の下端から下側へ向かって延在する筒形状を有する。発泡成形容器101を上下方向へ積み重ねた際、上側の発泡成形容器101の糸尻3の下端が、下側の発泡成形容器101のスタック段4の上面41に当接する。糸尻3を設けることによって底壁2が底上げされ、発泡成形容器101が上げ底構造となる。
【0022】
(スタック段4)
スタック段4は、底壁2よりも上側の位置に配置され、周壁1の第3部分13の内面15から径方向内側へ張り出して、周壁1の周方向へ延在して設けられる。スタック段4は、開口101a側の端部であるスタック段上端4aと、スタック段上端4aとは反外側の底壁2側の端部であるスタック段下端4bとを含んでいる。スタック段上端4aは、発泡成形容器101を積み重ねた際に糸尻3の下端を支持する上面41になっている。また、スタック段下端4bは、底壁2よりも上側の位置に配置されている。
【0023】
スタック段4は、周方向の全周の中で1以上の切欠き43を有する。本実施形態では、スタック段4は、周方向の全周の中で1つの切欠き43を有する。スタック段4が切欠き43を有することにより、発泡射出成形後に金型から発泡成形容器101を取り外すためのエアブロー工程において、切欠き43を通って空気が底壁2と金型との間に自由に入り込むことができる。このため、後述するように、金型と発泡成形容器101との分離を円滑に行なうことができ、離型不良を低減することができる。なお、切欠き43を複数設けることも可能である。この場合、周方向に均等な間隔で切欠き43を設けることができる。
【0024】
(リブ5)
リブ5は、周壁1の外面16から径方向外側へ張り出して複数設けられる。リブ5は、周壁1の外面16に沿って周壁1の上下方向へ延在しており、周壁1の第2部分12と第3部分13とに跨って設けられている。リブ5は、開口101a側の端部であるリブ上端5aと、リブ上端5aとは反外側の底壁2側の端部であるリブ下端5bとを含んでいる。本実施形態では、リブ上端5aは、第1部分11と第2部分12との接続部分の直下に配置されている。また、リブ下端5bは、スタック段下端4bよりも上側の位置であって、周壁1を挟んでスタック段4と重なる位置に配置されている。
【0025】
本実施形態では、リブ5はスタック段4と重なっているが、スタック段4とリブ5との重なりは僅かであってよく、重なり寸法は、例えば0.7mm以下、特に0.1mm以上0.5mm以下であることが好ましい。このように、スタック段4とリブ5とに僅かな重なりがあることで、発泡成形容器101の厚肉化を抑えつつ、発泡射出成形時に溶融樹脂をスムーズにスタック段4からリブ5へ押し流すことができる。なお、スタック段4と重ならない位置にリブ5を設けてもよい。スタック段4とリブ5とが重ならない構成については、後述の実施形態2で説明する。
【0026】
これらのリブ5は、周壁1の外面16の全周に亘って略等間隔に配置されている。リブ5を設けることにより、使用者が手で発泡成形容器101を持ったときにリブ5によって熱が伝わり難くなる。なお、リブ5は、例えば第1部分11と第2部分12との接続部分まで延在していてもよい。また、例えば周壁1の外面16にラベル等を保持する面が不要である場合、リブ5はフランジ6の直下まで延在していてもよい。つまり、第1部分11にもリブ5が設けられていてもよい。これにより、リブ5による断熱効果をより広範囲に亘って得ることができる。
【0027】
リブ5の各々は、リブ上端5aおよびリブ下端5bへ向かって先細りしたテーパー形状になっている。リブ5は、例えば周壁1の段差14からリブ上端5aおよびリブ下端5bへ向かって、周壁1の径方向における高さ(肉厚)および周壁1の周方向における幅が減少していてもよい。
【0028】
このように、発泡成形容器101では、リブ5は、周壁1を挟んでスタック段4と重なる位置にリブ下端5bが配置されている。また、リブ5は、リブ下端5bへ向かって先細りしたテーパー形状になっている。このため、従来のようにスタック段の位置を超えて底壁よりも下側の位置までリブが延在している構成に比べて、スタック段4と重なる部分のリブ5の高さ(肉厚)を抑えることができ、スタック段4とリブ5とが重なる部分の肉厚を低減することができる。
【0029】
なお、リブ5は、周壁1の外面16に沿って上下方向へ直線的に延在しており、個々のリブ5を水平な面で切ったときの断面形状は、三角形であってもよく、台形であってもよい。
【0030】
また、リブ5は、周壁1の上下方向、つまり周壁1の上端と下端とを結ぶ方向へ実質的に延在していればよい。このため、リブ5は、上下方向に対して角度を成すように傾いていてもよく、湾曲、屈曲等していてもよい。ただし、発泡射出成形時に溶融樹脂が滞留せずに底壁2からフランジ6側へ流れ易くなるため、周壁1の外面16に沿って上下方向へ直線的に延在するようにリブ5を設けることが好ましい。
【0031】
(フランジ6)
フランジ6は、周壁1の上端から径方向外側へ張り出して設けられる。フランジ6には、図示しないフィルム等からなる蓋体が剥離可能にヒートシールされる。これにより、蓋体によって内部空間Sが密封されることで、内部空間Sに収容される食品が衛生的に保護される。なお、蓋体のヒートシールは、超音波シールまたは高周波シールによるものでもよい。また、蓋体として、フランジ6の外周に嵌合する成形蓋を使用することもできる。
【0032】
[リブ5の詳細]
図4は、
図3に示される枠囲みP1の部分を示す断面図である。
図4に示すように、リブ5は、周壁1を挟んでスタック段4と重なる位置にリブ下端5bが配置されている。つまり、リブ5は、スタック段上端4aの位置とスタック段下端4bの位置とによって規定される上下方向の領域Rの範囲内にリブ下端5bが配置されている。従って、発泡成形容器101では、スタック段4の下側の位置までリブ5が延在していないようになっている。
【0033】
また、リブ5はリブ下端5bへ向かって周壁1の径方向における高さ(肉厚)が減少しており、リブ下端5b側におけるリブ5の高さが抑えられている。このため、従来のように底壁よりも下側の位置までリブが延在している構成に比べて、スタック段4と重なる部分の径方向におけるリブ5の高さを比較的小さくすることができ、スタック段4とリブ5とが重なる部分の肉厚を低減し易くなっている。
【0034】
また、リブ5は、リブ下端5bにおいて周壁1の外面16と段差なく繋がっている。つまり、リブ5は、リブ下端5bへ向かって周壁1の径方向における高さが徐々に減少し、リブ下端5bにおける高さが0になっている。これにより、スタック段4とリブ5とが重なる部分の肉厚をより低減することができる。加えて、リブ下端5bで急激な肉厚変化が起こらないため、発泡射出成形時にリブ下端5bにおいて発泡ムラを起こり難くすることができる。
【0035】
さらに、上述したように、リブ5は、リブ下端5bへ向かって、周壁1の周方向における幅が減少している。これにより、スタック段4と重なる部分のリブ5の樹脂量を低減することができる。加えて、リブ下端5bで急激な幅の変化が起こらないため、発泡射出成形時にリブ下端5bにおいて発泡ムラを起こり難くすることができる。
【0036】
加えて、発泡成形容器101では、底壁2の下側の位置までリブ5が延在していないため、
図4の枠囲みP3で示すように、周壁1と底壁2と糸尻3とが交わるクロスポイントにリブ5が設けられていない。このため、クロスポイントにリブ5が重なることによる厚肉化を回避することができる。
【0037】
なお、リブ下端5bにおける周壁1の外面16とリブ5とが成す角度θは、例えば10度以上80度以下であることが好ましい。また、周壁1の肉厚と、周壁1の径方向におけるスタック段4の最大肉厚(内部空間Sへ張り出したスタック段4の最大長)とを合わせた幅Wは、0.8mm以上1.5mm以下であることが好ましく、0.8以上1.2mm以下であることがより好ましい。これにより、スタック段4とリブ5とが重なる部分の肉厚を抑えて、発泡射出成形後の後膨れを好適に低減することができる。
【0038】
また、周壁1の径方向におけるリブ5の高さは、高い部分で例えば1.0mm以上2.5mm以下であることが好ましい。また、周壁1の周方向におけるリブ5の幅は、広い部分で例えば1.5mm以下であることが好ましい。さらに、周壁1の段差14において互いに隣り合うリブ5同士の周方向における間隔は、4.0mm以上8.0mm以下であることが好ましい。このようなリブ5によって、内容物の熱が手に伝わり難い状態で発泡成形容器101を持つことができる。
【0039】
また、スタック段4の上面41と、スタック段4の内部空間S側の周面42と、周壁1の外面16とに内接する円を内接円Cと定義した場合、リブ下端5bの位置は、周壁1の外面16と内接円Cとの接点位置または該接点位置よりも高い位置にあることが好ましい。この場合、内接円Cの直径Dは、1.3mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることがより好ましい。これにより、スタック段4とリブ5とが重なる部分の肉厚を抑えて、発泡射出成形後の後膨れを好適に低減することができる。なお、スタック段4とリブ5とが重なる部分におけるリブ5の高さは、最も高い位置でも0.5mm以下となるように低く留めておくことが好ましい。これにより、発泡射出成形後の後膨れをより好適に低減することができる。
【0040】
[発泡成形容器101の寸法例]
本実施形態に係る発泡成形容器101は、薄肉の容器である。発泡成形容器101の内部空間Sによって規定される内容量は、例えば300ml以上600ml以下である。発泡成形容器101の高さは、例えば75mm以上120mm以下である。
【0041】
また、周壁1は、上端側へ向かって拡径しており、周壁1の平均勾配は、鉛直方向に対して例えば6度以上10度以下である。この場合、スタック段4の上面41の位置は、底壁2の上面から10mm以上35mm以下であることが好ましく、10mm以上20mm以下であることがより好ましい。
【0042】
さらに、周壁1の肉厚は、例えば1.0mm以下である。「周壁1の肉厚」とは、スタック段4およびリブ5等を除いた周壁1自体の肉厚をいう。周壁1の肉厚は、例えば0.3mm以上1.0mm以下であってよい。また、周壁1の肉厚は、部分的に異なっていてもよい。
【0043】
図5は、
図3に示される枠囲みP2の部分を示す断面図である。
図5に示すように、周壁1は、リブ上端5aが配置される位置を基準位置Bとした場合、該基準位置Bの下側の肉厚T2に比べて、該基準位置Bの上側の肉厚T1が大きくなっていてもよい。肉厚T1は、例えば0.3mm以上1.0mm以下であることが好ましく、0.4mm以上0.7mm以下であることがより好ましい。また、肉厚T2は、肉厚T1に対して70%以上80%以下であることが好ましい。これにより、発泡射出成形時に、リブ上端5aとなる部位に達した材料を円滑に流動させることができ、発泡ムラを抑制することができる。
【0044】
[発泡成形容器101の製造方法]
本実施形態に係る発泡成形容器101は、発泡射出成形によって成形される。発泡成形容器101は、例えば、発泡剤として超臨界ガス(以下、「超臨界流体」ということもある。)を使用した超臨界発泡射出成形によって好適に製造することができる。超臨界発泡射出成形とは、発泡射出成形の一種であり、発泡剤として超臨界ガスを使用し、ノズル内の圧力を高圧に保ちつつ、金型に材料を射出するときの圧力差によって材料を発泡させる成形技法である。超臨界ガスとして、一般的に窒素ガス、二酸化炭素ガス等が使用される。
【0045】
図6は、発泡成形容器101の製造工程の一例を示す断面図である。
図6に示すように、発泡成形容器101の製造に使用する金型は、内側金型71と外側金型72とが組み合わせられることによってキャビティ73を形成する。内側金型71は、第1部分74と、第2部分75とを含む。また、外側金型72は、第3部分76と、第4部分77とを含む。第3部分76の中央部には、ノズルNが貫通するように配置されている。
【0046】
発泡成形容器101の製造方法は、第1部分74および第2部分75を含む内側金型71を外側金型72に組み合わせてキャビティ73を形成するキャビティ形成工程と、周壁1となる部位へ向けて、超臨界流体を混入させた溶融した材料を射出する射出工程と、射出された材料が適度に冷えるまで待機する冷却工程と、発泡成形容器101から外側金型72を取り外す第1取外工程と、第1部分74と第2部分75との境目78から外側へ向けてエアブローするエアブロー工程と、発泡成形容器101を内側金型71から取り外す第2取外工程とを含んでいる。
【0047】
第1部分74は底壁2となる部位に隣接する部分を占めている。第2部分75は、底壁2となる部位から見て第1部分74よりも遠い部分を占めている。境目78は、底壁2となる部位から見てスタック段4となる部位よりも遠い位置において、周壁1となる部位に環状に露出するように配置されている。境目78においては、空気が通過可能な程度の僅かな間隙があいている。この間隙の幅は、例えば10μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0048】
また、境目78の位置は、発泡成形容器101の高さ方向の中央とスタック段4との間である。境目78の位置は、特に、スタック段4の上面41の上側15mm以上40mm以下の位置であることが好ましい。
【0049】
発泡成形容器101の製造方法では、まず、キャビティ形成工程にて、内側金型71を外側金型72に組み合わせた後、続く射出工程にて、底壁2の中央部Mとなる部位からキャビティ73内に材料を射出する。キャビティ73内に射出された材料は、フランジ6となる部位までキャビティ73内を流動する。このとき、発泡成形容器101では周壁1の肉厚T2に比べて肉厚T1が大きくなっているため、リブ上端5aとなる部位に達した材料がフランジ6となる部位側へ円滑に流動することができる。
【0050】
次に、冷却工程にて射出された材料が適度に冷えるまで待機した後、続く第1取外工程にて外側金型72を取り外す。ここで、本実施形態に係る発泡射出成形の場合、第1取外工程にて外側金型72を取り外す際に樹脂の後膨れ(不要な発泡)が起こることを避けるために、前工程である冷却工程にて適度に樹脂を冷却してから外側金型72を取り外す必要性がある。しかしながら、肉厚が大きい厚肉部分は冷却に時間を要するため、冷却が不十分であった場合、外側金型72を取り外した際に厚肉部分に後膨れによる外形不良が生じる可能性がある。
【0051】
例えば
図9に示す従来の容器200の場合、枠囲みP4で示すスタック段204にリブ205が重なる部分が厚肉になる。また、枠囲みP5で示す周壁201と底壁202と糸尻203とが交わるクロスポイントにリブ205が重なる部分が厚肉になる。このため、この容器200を発泡射出成形で成形した場合、外側金型72を開放した後、これらの厚肉部分に後膨れによる外形不良が生じる可能性がある。
【0052】
これに対して、本実形態に係る発泡成形容器101では、リブ下端5bが周壁1を挟んでスタック段4と重なる位置に配置されており、スタック段4の下側の位置までリブ5が延在していない。このため、スタック段4とリブ5とが重なる部分の肉厚を容器200に比べて低減することができる。また、周壁1と底壁2と糸尻203が交わるクロスポイント(
図4の枠囲みP3参照)にリブ5が重ならないため、該クロスポイントの厚肉化を抑えることができる。したがって、発泡成形容器101の製造方法によれば、外側金型72を開放した後の後膨れを低減し、発泡成形容器101の外形不良を改善することができる。
【0053】
また、多数のリブ5が設けられる周壁1の外面16側の表面積は、リブ5が設けられない周壁1の内面15側の表面積に比べて大きくなっている。このため、冷却工程における樹脂の冷却時間が不十分である場合、第1取外工程にて外側金型72を取り外す際に外面16側が外側金型72に密着し、発泡成形容器101が外側金型72に付随して内側金型71から外れるという離型不良が生じることがある。このような離型不良は、糸尻3を有する上げ底構造の場合に特に発生し易く、生産性が悪化する原因となる。
【0054】
これに対して、本実形態に係る発泡成形容器101では、従来のリブ205に比べて、リブ5の上下方向の長さが相対的に短くなっている。このため、外面16側の表面積が低減されるので、上述した離型不良を低減することができる。
【0055】
さらに、リブ5は、リブ下端5bへ向かって高さおよび幅が先細りしたテーパー形状になっている。このため、第1取外工程にて外側金型72を発泡成形容器101から取り外す際に、発泡成形容器101から外側金型72が抜け易くなり、外側金型72をスムーズに取り外すことができる。
【0056】
次に、エアブロー工程では、矢印F1で示すように、第1部分74と第2部分75との境目78から外側へ向けて空気を送り込む。境目78からキャビティ73に噴出した空気のうちの一部は、矢印F2に示すように発泡成形容器101と第1部分74との間に侵入し、発泡成形容器101と第1部分74とを分離させる。このとき、切欠き43となる部位を通って空気が底壁2と第1部分74との間に入り込むため、発泡成形容器101と内側金型71との分離を円滑に行なうことができる。
【0057】
また、境目78からキャビティ73に噴出した空気のうちの他の一部は、矢印F3に示すように発泡成形容器101と第2部分75との間に侵入し、発泡成形容器101と第2部分75とを分離させる。このエアブロー工程の後、第2取外工程にて発泡成形容器101を内側金型71から取り外す。
【0058】
このように、発泡成形品100によれば、後膨れおよび離型不良による外形不良を改善することができる。また、発泡成形容器101の厚肉化を抑えることにより冷却工程の時間を従来に比べて短縮化できるため、発泡成形品100の生産性を向上させることができる。
【0059】
なお、発泡成形容器101の製造に使用する溶融樹脂としては、ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリスチレン系のうちのいずれかの熱可塑性樹脂が用いられる。特に、プロピレンエチレンブロック共重合体でメルトフローレート(MFR)が40g/10min以上100g/10min以下のものが使用可能である。また、含有させるガスは、窒素ガス、二酸化炭素ガスのいずれかであってよい。窒素ガスの場合は、樹脂材料中に1%以上1.5%以下の比率で含有させればよい。二酸化炭素ガスの場合は、樹脂材料中に2%以上4%以下の比率で含有させればよい。この場合、成形品としては、発泡により3%以上10%以下の軽量化を図ることができる。これにより、使用する樹脂量の削減効果が期待できる。また、このような超臨界流体を混入させた溶融樹脂は、成形時の流動性がよく、上述したような薄肉成形品の成形を実現しながら、発泡成形容器101の外観不良の問題を解決し易くなる。
【0060】
[発泡成形容器101のまとめ]
以上のように、本実施形態に係る発泡成形容器101は、内部空間Sの外周を囲む周壁1と、内部空間Sの下端を規定する底壁2と、周壁1の内面15から径方向内側へ張り出して周壁1の周方向へ延在するスタック段4と、周壁1の外面16から径方向外側へ張り出して周壁1の上下方向へ延在するリブ5とを備える。リブ5は、該リブ5の底壁2側の端部であるリブ下端5bが、周壁1を挟んでスタック段4と重なる位置に配置される。
【0061】
発泡成形容器101では、リブ下端5bが、周壁1を挟んでスタック段4と重なる位置に配置されるため、スタック段4の下側の位置までリブ5が延在していない。このため、例えば、スタック段4と重なるリブ下端5b側の高さ(肉厚)が抑えられるようにリブ5の位置、形状を調整することにより、従来のように底壁よりも下側の位置までリブが延在している構成に比べてスタック段4とリブ5とが重なる部分の肉厚を低減し易くなる。従って、本実施形態によれば、外形不良を改善し得る発泡成形容器101を実現することができる。
【0062】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、
図7、
図8に基づいて以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0063】
[発泡成形容器102の構成]
図7は、本実施形態に係る発泡成形容器102を示す正面図である。
図7に示すように、発泡成形容器102は、リブ下端52bがスタック段4に掛かっておらず、スタック段4よりも上側の位置に配置される点において、前記発泡成形容器101と主に異なっている。
【0064】
具体的には、リブ52は、リブ上端52aおよびリブ下端52bへ向かって先細りしたテーパー形状になっており、リブ下端52bがスタック段上端4aよりも上側に配置されている。このため、スタック段4とリブ5とが重なっておらず、リブ5がスタック段4と重なることによる厚肉化を回避することができる。
【0065】
なお、リブ52は、スタック段4と重ならない程度にスタック段4の少しだけ上側にリブ下端5bが配置されていればよい。つまり、スタック段上端4aとリブ下端52bとの間隔は僅かであってよい。リブ52による断熱性を損なわないためには、前記間隔は0mm以上5.0mm以下であることが好ましく、特に0.05mm以上3.0mm以下であることが好ましい。
【0066】
[発泡成形容器102のまとめ]
以上のように、本実施形態に係る発泡成形容器102は、内部空間Sの外周を囲む周壁1と、内部空間Sの下端を規定する底壁2と、周壁1の内面15から径方向内側へ張り出して周壁1の周方向へ延在するスタック段4と、周壁1の外面16から径方向外側へ張り出して周壁1の上下方向へ延在するリブ52とを備える。リブ52は、底壁2側の該リブ52の端部であるリブ下端52bが、スタック段4よりも上側の位置に配置されている。
【0067】
発泡成形容器102では、リブ下端52bが、スタック段4よりも上側、つまりスタック段上端4aよりも上側の位置に配置されるため、スタック段4とリブ5とが重ならない。このため、リブ52がスタック段4と重なることによる厚肉化を回避することができる。
【0068】
従って、本実施形態によれば、外形不良を改善し得る発泡成形容器102を実現することができる。
【0069】
[発泡成形容器102の変形例]
図8は、
図7に示される発泡成形容器102の変形例である発泡成形容器103を示す正面図である。
図8に示すように、発泡成形容器103では、リブ53がリブ上端53aおよびリブ下端53bへ向かってテーパー形状になっていない点において、前記発泡成形容器102と主に異なっている。
【0070】
具体的には、リブ53は、リブ上端53aおよびリブ下端53bへ向かって先細りせず、高さおよび幅が略一定のまま上下方向へ延在している。このようなリブ53の形状であっても、スタック段4とリブ53とが重ならないため、リブ53がスタック段4と重なることによる厚肉化を回避することができる。
【0071】
なお、リブ53は、周壁1を挟んでスタック段4と重なる位置に配置されていてもよい。この場合、例えばスタック段下端4bよりも上側の位置にリブ下端53bを配置することにより、従来のようにスタック段を超えて底壁よりも下側の位置までリブが延在している構成に比べて、スタック段4と重なる部分のリブ53の樹脂量が低減される。これにより、発泡成形容器101の外形不良を改善し得る。
【0072】
このように、本発明に係るリブは、リブ上端およびリブ下端へ向かって高さおよび幅が減少したテーパー形状に限定されず、テーパー形状以外の形状を採用することも可能である。
【0073】
〔備考〕
本発明の態様1に係る発泡成形容器は、内部空間の外周を囲む周壁と、前記内部空間の下端を規定する底壁と、前記周壁の内面から径方向内側へ張り出して前記周壁の周方向へ延在するスタック段と、前記周壁の外面から径方向外側へ張り出して前記周壁の上下方向へ延在するリブと、を備え、前記リブは、該リブの前記底壁側の下端であるリブ下端が、前記周壁を挟んで前記スタック段と重なる位置に配置されるか、または前記スタック段よりも上側の位置に配置される。
【0074】
前記構成では、リブ下端が、周壁を挟んでスタック段と重なる位置に配置されるか、またはスタック段よりも上側の位置に配置されるため、スタック段の下側の位置までリブが延在していない。このため、例えば、スタック段と重なるリブ下端側の高さ(肉厚)が抑えられるようにリブの位置、形状を調整することにより、従来のように底壁よりも下側の位置までリブが延在している構成に比べてスタック段とリブとが重なる部分の肉厚を低減し易くなる。またはスタック段とリブとの重なりを無くすことにより、リブがスタック段と重なることによる厚肉化を回避することができる。従って、前記構成によれば、外形不良を改善し得る発泡成形容器を実現することができる。
【0075】
本発明の態様2に係る発泡成形容器では、前記態様1において、前記リブは、前記リブ下端へ向かって前記径方向における高さが減少していてもよい。
【0076】
前記構成によれば、リブの高さがリブ下端へ向かって減少しているため、スタック段とリブとが重なる部分の肉厚を効率的に低減することができる。
【0077】
本発明の態様3に係る発泡成形容器では、前記態様2において、前記リブは、前記リブ下端において、前記周壁の外面と段差なく繋がっていてもよい。
【0078】
前記構成によれば、リブ下端において周壁とリブとが段差なく繋がるため、スタック段とリブとが重なる部分の肉厚をより低減し易くなる。
【0079】
本発明の態様4に係る発泡成形容器では、前記態様1から3のいずれかにおいて、前記リブは、前記リブ下端へ向かって前記周方向の幅が減少していてもよい。
【0080】
前記構成では、リブの幅がリブ下端へ向かって減少しているため、スタック段とリブとが重なる部分におけるリブの樹脂量を低減して、外形不良をより改善し易くなる。
【0081】
本発明の態様5に係る発泡成形容器では、前記態様1から4のいずれかにおいて、前記周壁は、前記リブ下端とは反対側の前記リブの端部であるリブ上端が配置される位置を基準位置とした場合、該基準位置の下側の肉厚に比べて、該基準位置の上側の肉厚が大きくなっていてもよい。
【0082】
前記構成によれば、発泡射出成形時にリブ上端に達した材料を円滑に流動させることができる。
【0083】
また、本発明によれば、発泡成形による樹脂使用量の軽減と、発泡成形容器の外形不良の改善とを図ることにより、廃棄物を削減することができる。これにより、持続可能な開発目標(SDGs)の目標12「つくる責任 つかう責任」の達成に貢献することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 周壁
2 底壁
4 スタック段
5、52、53 リブ
5b、52b、53b リブ下端
15 内面
16 外面
101、102、103 発泡成形容器
B 基準位置
S 内部空間