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特開2023-75799透析装置の洗浄方法および透析装置洗浄排液の中和装置
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  • 特開-透析装置の洗浄方法および透析装置洗浄排液の中和装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075799
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】透析装置の洗浄方法および透析装置洗浄排液の中和装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/66 20230101AFI20230524BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20230524BHJP
   B01D 19/02 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
C02F1/66 530P
A61M1/16 185
C02F1/66 510L
C02F1/66 521X
C02F1/66 530K
C02F1/66 522R
C02F1/66 510R
C02F1/66 540Z
B01D19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188927
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】591083299
【氏名又は名称】東レ・メディカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】597076048
【氏名又は名称】株式会社セムコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】内山 俊之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀義
(72)【発明者】
【氏名】大川 好
【テーマコード(参考)】
4C077
4D011
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077EE04
4C077GG13
4C077HH06
4C077HH12
4C077HH20
4C077JJ05
4C077JJ12
4C077JJ22
4C077KK30
4D011BA04
(57)【要約】
【課題】設置作業が容易で特別な中和剤を用いることなく下水道基準の範囲内に透析排液を中和処理できる透析装置の洗浄方法を提供する。
【解決手段】透析ユニット洗浄排液を中和した後に放流する透析装置の洗浄方法であって、酸洗浄排液を酸貯留槽に送る酸洗浄工程と、アルカリ洗浄排液を排液貯留槽に送るアルカリ洗浄工程と、水洗浄排液を放流槽に送る水洗工程と、水洗工程の終了後に送液を休止して、他の透析操作の開始に備える休止工程とからなり、排液貯留槽の液面レベルがL0以上となったときに、透析ユニットから排出された排液の排液貯留槽から放流槽への送液を開始する排液貯留槽レベル制御と、放流槽の液面レベルがL1以上となったときに、排液の放流槽から下水道への放流を開始する放流槽レベル制御とを実施し、アルカリ洗浄工程の開始時に、放流槽の液面レベルがL3以下となるまで排液を放流槽から下水道に放流する透析装置の洗浄方法。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の透析操作の終了後に、透析ユニットに洗浄液を通過させて、前記透析ユニットから排出される洗浄排液を中和ユニットで中和した後に下水道に放流する透析装置の洗浄方法であって、
前記透析ユニットに酸性の洗浄液を通過させて、前記透析ユニットから排出される酸洗浄排液を前記中和ユニットの酸貯留槽に送る酸洗浄工程と、
前記透析ユニットにアルカリ性の洗浄液を通過させて、前記透析ユニットから排出されるアルカリ洗浄排液を前記排液貯留槽に送るアルカリ洗浄工程と、
前記透析ユニットに水を通過させて、前記透析ユニットから排出される水洗浄排液を前記中和ユニットの放流槽に送る水洗工程と、
前記水洗工程の終了後に送液を休止して、他の透析操作の開始に備える休止工程とからなり、
前記排液貯留槽の液面レベルが第一の設定値L0以上となったときに、前記透析ユニットから排出された排液の前記排液貯留槽から放流槽への送液を開始する排液貯留槽レベル制御と、
前記放流槽の液面レベルが第二の設定値L1以上となったときに、前記排液の前記放流槽から下水道への放流を開始する放流槽レベル制御とを実施し、
前記アルカリ洗浄工程の開始時に、前記放流槽の液面レベルが第三の設定値L3以下となるまで前記排液を前記放流槽から下水道に放流することを特徴とする透析装置の洗浄方法。
【請求項2】
第一の透析操作の終了後に、前記酸洗浄工程、前記アルカリ洗浄工程、前記水洗工程および前記休止工程を実施する第一の洗浄操作と、
第二の透析工程の終了後に、前記アルカリ洗浄工程、前記水洗工程および前記休止工程を実施するが、前記酸洗浄工程を実施しない第二の洗浄操作とからなる、請求項1に記載の透析装置の洗浄方法。
【請求項3】
第一の洗浄操作において、前記酸貯留槽の液面レベルが第四の設定値L以下となったときに、前記酸洗浄排液の前記酸貯留槽から前記排液貯留槽への送液を停止する、請求項2に記載の透析装置の洗浄方法。
【請求項4】
第一の洗浄操作の前記アルカリ洗浄工程においては、前記酸洗浄排液を前記酸貯留槽から前記排液貯留槽に送り、前記排液貯留槽内のpHが第五の設定値PL1以下となったときに前記酸洗浄排液の前記酸貯留槽から前記排液貯留槽への送液を停止し、前記放流槽内のpHが第六の設定値PL2以下となったときに前記排液の前記放流槽から前記排液貯留槽への送液を開始する、請求項2または3に記載の透析装置の洗浄方法。
【請求項5】
前記アルカリ洗浄工程において、前記放流槽内のpHが第七の設定値PH1以上となったときに、前記排液の前記放流槽から前記排液貯留槽への送液を開始する、請求項2~4のいずれかに記載の透析装置の洗浄方法。
【請求項6】
前記アルカリ洗浄工程において、前記排液の前記放流槽から前記排液貯留槽への送液を開始した後に前記放流槽の液面レベルが第八の設定値L2以上となったときに、前記アルカリ洗浄工程を停止して、前記排液貯留槽と前記放流槽との間で排液を循環させる排液循環工程を実施する、請求項4または5に記載の透析装置の洗浄方法。
【請求項7】
第二の洗浄操作の前記アルカリ洗浄工程においては、前記放流槽内のpHが第九の設定値PH2以上となったときに、前記酸洗浄排液の前記酸貯留槽から前記排液貯留槽への送液を開始する、請求項2~6のいずれかに記載の透析装置の洗浄方法。
【請求項8】
前記排液貯留槽が、前記透析装置の系外に排出される排液が流入する上流側区画と、前記排液貯留槽レベル制御により排液が放流槽に流出する下流側区画とからなり、
前記排液貯留槽レベル制御において、前記排液の一部が前記下流側区画から放流槽に送液されるとともに、前記排液の他の一部が前記下流側区画から前記上流側区画へと送液される、請求項1~7のいずれかに記載の透析装置の洗浄方法。
【請求項9】
前記放流槽内に発生する泡に向けて水を噴霧する消泡操作を実施する、請求項1~8のいずれかに記載の透析装置の洗浄方法。
【請求項10】
透析装置の酸洗浄排液を受け入れて貯留する酸貯留手段と、
透析装置のアルカリ洗浄排液および透析排液を受け入れて貯留する排液貯留手段と、
前記酸洗浄排液、前記アルカリ洗浄排液および前記透析排液からなる混合排液を貯留する混合排液貯留手段と、
前記酸洗浄排液を前記酸貯留手段から前記排液貯留手段に注入する酸注入手段と、
前記排液貯留手段から前記混合排液貯留手段に排液を移送する移送手段と、
前記混合排液貯留手段から前記排液貯留手段に排液を返送する返送手段と、
前記混合排液貯留手段から下水道に排液を放流する放流手段と、
前記排液貯留手段および前記混合排液貯留手段に設けられて排液のpHおよび液位を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段が、下水道に放流される前記排液のpHを所定範囲内に調整しつつ、前記排液貯留手段が前記アルカリ洗浄排液の受け入れを開始する時に、前記混合排液貯留手段の液位を所定の高さまで低下させることを特徴とする透析装置洗浄排液の中和装置。
【請求項11】
前記制御手段が、前記混合排液貯留手段内の排液のpHに応じて、前記返送手段による排液の返送と前記放流手段による排液の放流を制御するように構成されている、請求項10に記載の透析装置洗浄排液の中和装置。
【請求項12】
前記返送手段および前記放流手段が一のポンプおよび一の三方弁からなり、前記混合排液貯留手段内の排液の送り先が、前記三方弁の流路切替えにより前記排液貯留手段または前記下水道に設定される、請求項10または11に記載の透析装置洗浄排液の中和装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析ユニットと、透析ユニットから排出される排液を中和して放流する中和ユニットとからなる透析装置の洗浄方法および透析装置洗浄排液の中和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析治療には、塩化ナトリウムや塩化カリウム等が含有される透析液が使用される。また、透析治療後に透析装置を洗浄するために、酢酸(濃度約1%、pH約3.5)や次亜塩素酸ナトリウム溶液(濃度約300~1000ppm、pH約10.5)が使用される。これらの液体は使用後に、下水道基準で定められたpH5を超え9未満の範囲に中和処理してから、下水道に排出する必要があるが、透析医療機関からの酸性排液が原因で、コンクリート製の下水道管を破損させたという事例(令和2年12月28日付の東京都下水局「透析医療機関の皆様へ」等)が報告されており、下水道基準を全ての透析医療機関が満たせていない状況にある。下水道管に損傷が発生した場合、下水への排水ができなくなるとともに、道路陥没を引き起こし、日常生活に影響を及ぼす恐れがあり、下水道法第18条に基づき、下水道管損傷の原因者は、現状復旧費用の負担が必要になる場合もある。このような状況から近年、下水道基準を満たすように排水の中和設備を設置することが透析医療機関に求められている。
【0003】
下水道基準を満たすための中和槽としては、例えば特許文献1にて開示されているが、施設で使用される透析装置の台数に比例して、中和処理する排液の量が増加するため、中和槽を大型化する必要がある。そのため、貸しビルに診療所を開院しているような透析医療機関等においては、中和槽の新設のために拡張工事を伴う増改築やそれに伴う各種許可申請が必要となる可能性があり、容易に設置できない。また、排液の中和に用いる中和剤は苛性ソーダや硫酸等の劇物であり、大量の中和剤を保管する場合、その管理面からも注意が必要となる。
【0004】
このような問題を解決すべく、特許文献2にて、前述の中和槽を設置せずとも、人工透析後の透析排液を下水へ排液することができる透析排液処理システムが開示されている。本システムでは、複数台の透析装置から排出された排液の内、pHセンサで判別した酸性排液だけを酸液貯留タンクに貯留しておき、pH5.5以上の排液を下水へ排出する前に、ミキシングタンクで酸性排液とpH5.5以上の排液を混合、中和させている。このシステムを用いることによって、透析装置から排出された酸性の排液を用いて、その他の排液を中和できることから、前述の中和剤が不要になるという利点がある。また、透析装置からの排液の内、酸性の排液のみを貯留すれば良いことから、タンクの大きさを特許文献1と比較して、小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-38495号公報
【特許文献2】特開2021-3262号公報
【特許文献3】特開2021-37467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2で開示された透析排液処理システムにおいても、施設で使用される透析装置の台数に比例して、酸性排液の量が増加するため、酸液貯留タンクも大きくする必要があり、また、中和処理を行うミキシングタンク等も大型化することから、既存の透析医療機関に容易に新設できないという懸念は払拭されない。
【0007】
さらに、同透析排液処理システムを設置した後で透析装置の台数が増減し、処理する排液の量が変化した場合に、システムの各タンク類の拡張や縮小が容易に行えないことも懸念される。特に透析装置の台数が増加することで、中和処理の能力が不足した場合、大型化した貯留タンクへの換装等の大掛かりな工事が必要になる恐れがある。
【0008】
また、特許文献3には、中和剤を用いることなく人工透析装置の洗浄廃液や消毒廃液の中和処理を可能とするシステムが開示されている。しかしながら、中和が必要な廃液は廃液受槽から中和槽へ送出されて中和域に入るまで撹拌され、中和域に入らない限りは下水管に排出することができないので、中和槽の容積を十分大きく設計する必要があると考えられる。
【0009】
そこで本発明は、上記問題に鑑み、既存の透析医療機関に容易に設置できるほどに小型化し、且つ、大掛かりな工事も必要とせず、専門性を有する設置作業が不要で、さらに中和剤を用いることなく下水道基準(pH5を超え9未満)の範囲内となるように透析ユニットの排液を中和処理できる透析装置の洗浄方法および透析装置洗浄排液の中和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る透析装置の洗浄方法は、
一の透析操作の終了後に、透析ユニットに洗浄液を通過させて、前記透析ユニットから排出される洗浄排液を中和ユニットで中和した後に下水道に放流する透析装置の洗浄方法であって、
前記透析ユニットに酸性の洗浄液を通過させて、前記透析ユニットから排出される酸洗浄排液を前記中和ユニットの酸貯留槽に送る酸洗浄工程と、
前記透析ユニットにアルカリ性の洗浄液を通過させて、前記透析ユニットから排出されるアルカリ洗浄排液を前記排液貯留槽に送るアルカリ洗浄工程と、
前記透析ユニットに水を通過させて、前記透析ユニットから排出される水洗浄排液を前記中和ユニットの放流槽に送る水洗工程と、
前記水洗工程の終了後に送液を休止して、他の透析操作の開始に備える休止工程とからなり、
前記排液貯留槽の液面レベルが第一の設定値L0以上となったときに、前記透析ユニットから排出された排液の前記排液貯留槽から放流槽への送液を開始する排液貯留槽レベル制御と、
前記放流槽の液面レベルが第二の設定値L1以上となったときに、前記排液の前記放流槽から下水道への放流を開始する放流槽レベル制御とを実施し、
前記アルカリ洗浄工程の開始時に、前記放流槽の液面レベルが第三の設定値L3以下となるまで前記排液を前記放流槽から下水道に放流することを特徴とする方法からなる。
【0011】
本発明に係る透析装置の洗浄方法によれば、放流槽の液面レベルを十分に下げてからアルカリ洗浄工程を実施するので、アルカリ洗浄工程の間に放流槽内の排液のpHが下水道基準の範囲外となった場合には、公共下水への放流を停止し、排液を下水道基準の範囲内にまで放流槽内で中和補正してから放流を開始することで、洗浄工程を極力停止せずに洗浄排液の中和処理および下水道への放流を実施することができる。
【0012】
本発明の透析装置の洗浄方法は、
第一の透析操作の終了後に、前記酸洗浄工程、前記アルカリ洗浄工程、前記水洗工程および前記休止工程を実施する第一の洗浄操作と、
第二の透析工程の終了後に、前記アルカリ洗浄工程、前記水洗工程および前記休止工程を実施するが、前記酸洗浄工程を実施しない第二の洗浄操作とからなるように構成可能である。このような構成により、一日の透析治療終了後の装置洗浄プログラムを、例えば火曜日、木曜日および土曜日は酸洗浄を含むフル洗浄モード、月曜日、水曜日および金曜日は酸洗浄を省略した簡易洗浄モードとするなど、フレキシブルに設定することができる。
【0013】
上記の透析装置の洗浄方法は、第一の洗浄操作において、前記酸貯留槽の液面レベルが第四の設定値L以下となったときに、前記酸洗浄排液の前記酸貯留槽から前記排液貯留槽への送液を停止するように構成可能である。このような構成により、酸洗浄を省略した簡易洗浄モードに設定された日(例えば月曜日、水曜日および金曜日)においても酸貯留槽には酸洗浄排液が一定量残されるので、放流槽内のpHが第九の設定値PH2以上となったときに、前記酸洗浄排液の前記酸貯留槽から前記排液貯留槽への送液を開始することで排液のpHを低下させることが可能である。
【0014】
上記の透析装置の洗浄方法は、第一の洗浄操作の前記アルカリ洗浄工程においては、前記酸洗浄排液を前記酸貯留槽から前記排液貯留槽に送り、前記排液貯留槽内のpHが第五の設定値PL1以下となったときに前記酸洗浄排液の前記酸貯留槽から前記排液貯留槽への送液を停止し、前記放流槽内のpHが第六の設定値PL2以下となったときに前記排液の前記放流槽から前記排液貯留槽への送液を開始するように構成可能である。このような構成により、酸洗浄を含むフル洗浄モードに設定された日(例えば火曜日、木曜日および土曜日)には酸洗浄排液を積極的に注入しつつ、排液貯留槽内のpHが低下し過ぎた際に酸洗浄排液の注入を停止し、さらに放流槽内のpHが低下し過ぎた際には放流槽から排液貯留槽に排液を返送して循環混合させることにより中和を促進することができる。
【0015】
上記の透析装置の洗浄方法は、前記アルカリ洗浄工程において、前記放流槽内のpHが第七の設定値PH1以上となったときに、前記排液の前記放流槽から前記排液貯留槽への送液を開始するように構成可能である。酸洗浄を含むフル洗浄モードに設定された日(例えば火曜日、木曜日および土曜日)および酸洗浄を省略した簡易洗浄モードに設定された日(例えば月曜日、水曜日および金曜日)のいずれにおいても、放流槽内のpHが上昇し過ぎた際には放流槽から排液貯留槽に排液を返送して循環混合させることにより中和を促進することができる。
【0016】
上記の透析装置の洗浄方法は、前記アルカリ洗浄工程において、前記排液の前記放流槽から前記排液貯留槽への送液を開始した後に前記放流槽の液面レベルが第八の設定値L2以上となったときに、前記アルカリ洗浄工程を停止して、前記排液貯留槽と前記放流槽との間で排液を循環させる排液循環工程を実施するように構成可能である。放流槽の液面レベルを十分に下げてからアルカリ洗浄工程を実施しているので、放流槽内のpHが上昇または低下し過ぎた際であっても、放流槽から排液貯留槽に排液を返送して循環混合させながらpHが中和域に復帰するのを待つ間、アルカリ洗浄工程をしばらく継続して実施できる。しかしながら、pHが中和域に復帰しないまま放流槽の液面レベルが上昇を続けた場合には、アルカリ洗浄工程を停止して、放流も実施せずに排液循環工程に移行させる。このようにして、排液のpHが下水道基準の範囲外となった場合には、排液を十分に中和してから公共下水に放流することができる。
【0017】
本発明の透析装置の洗浄方法は、
前記排液貯留槽が、前記透析装置の系外に排出される排液が流入する上流側区画と、前記排液貯留槽レベル制御により排液が放流槽に流出する下流側区画とからなり、
前記排液貯留槽レベル制御において、前記排液の一部が前記下流側区画から放流槽に送液されるとともに、前記排液の他の一部が前記下流側区画から前記上流側区画へと送液されるように構成可能である。このように排液貯留槽を上流側と下流側に区画することにより、排液の混合効率の向上を図りつつ、狭いスペースにタンクを効率的に配置できるように装置のレイアウトを設計することができる。
【0018】
本発明の透析装置の洗浄方法において、前記放流槽内に発生する泡に向けて水を噴霧する消泡操作を実施することが可能である。放流槽内には泡が発生しやすく、そのまま放置すると泡沫がタンクからあふれて外壁面を汚染する恐れがあるが、泡に向けて逆浸透膜(RO)装置から排出される濃縮水などを噴射することで効果的に泡を消すことができる。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る透析装置洗浄排液の中和装置は、
透析装置の酸洗浄排液を受け入れて貯留する酸貯留手段と、
透析装置のアルカリ洗浄排液および透析排液を受け入れて貯留する排液貯留手段と、
前記酸洗浄排液、前記アルカリ洗浄排液および前記透析排液からなる混合排液を貯留する混合排液貯留手段と、
前記酸洗浄排液を前記酸貯留手段から前記排液貯留手段に注入する酸注入手段と、
前記排液貯留手段から前記混合排液貯留手段に排液を移送する移送手段と、
前記混合排液貯留手段から前記排液貯留手段に排液を返送する返送手段と、
前記混合排液貯留手段から下水道に排液を放流する放流手段と、
前記排液貯留手段および前記混合排液貯留手段に設けられて排液のpHおよび液位を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段が、下水道に放流される前記排液のpHを所定範囲内に調整しつつ、前記排液貯留手段が前記アルカリ洗浄排液の受け入れを開始する時に、前記混合排液貯留手段の液位を所定の高さまで低下させることを特徴とするものからなる。
【0020】
本発明に係る透析装置洗浄排液の中和装置によれば、排液貯留手段(排液貯留槽)がアルカリ洗浄排液の受け入れを開始する時に、混合排液貯留手段(放流槽)の液位を所定の高さまで低下させるので、アルカリ洗浄工程の間に放流槽内の排液のpHが下水道基準の範囲外となった場合には、公共下水への放流を停止し、排液を下水道基準の範囲内にまで放流槽内で中和補正してから放流を開始することで、洗浄工程を極力停止せずに洗浄排液の中和処理および下水道への放流を実施することができる。
【0021】
本発明の透析装置洗浄排液の中和装置において、前記制御手段が、前記混合排液貯留手段内の排液のpHに応じて、前記返送手段による排液の返送と前記放流手段による排液の放流を制御するように構成可能である。このような構成により、混合排液貯留手段(放流槽)内の排液のpHが下水道基準の範囲外となった場合には、公共下水への放流を停止し、混合排液貯留手段(放流槽)から排液貯留手段(排液貯留槽)に排液を返送して循環混合させることにより排液を下水道基準の範囲内にまで中和補正してから放流を開始することができる。
【0022】
本発明の透析装置洗浄排液の中和装置において、前記返送手段および前記放流手段が一のポンプおよび一の三方弁からなり、前記混合排液貯留手段内の排液の送り先が、前記三方弁の流路切替えにより前記排液貯留手段または前記下水道に設定されるように構成可能である。このような構成により、三方弁を返送手段と放流手段に兼用することが可能となり、また混合排液貯留手段(放流槽)から三方弁に向けて送液するポンプも返送手段と放流手段に兼用することができるので、バルブへ変更すると、放流ポンプ(水中ポンプ)を放流停止時のリターンバルブへと併用することで、装置の部品点数を削減することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る透析装置の洗浄方法および透析装置洗浄排液の中和装置によれば、中和剤を用いなくても下水道基準の範囲内となるように洗浄排液を簡便に中和処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施態様に係る洗浄方法が適用可能な透析装置の透析工程における液流れを示す概略フロー図である。
図2図1の透析装置の水洗工程における液流れを示す概略フロー図である。
図3図1の透析装置の酸洗浄工程における液流れを示す概略フロー図である。
図4図1の透析装置のアルカリ洗浄工程における液流れを示す概略フロー図である。
図5図1の透析装置の排液循環工程における液流れを示す概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る透析装置の洗浄方法の望ましい態様を、図面を参照して具体的に説明する。
【0026】
図1は、複数の透析ユニット2および1つの中和ユニット3から構成される透析装置1の概略フロー図であり、透析工程における液流れを示している。フロー図において、液が流れるラインには実線を付し、液が流れていないラインには破線を付している。
【0027】
透析液供給装置4から透析ユニット2へは、透析液が供給されて人体への透析治療が行われ、使用済みの透析液は透析排液として透析ユニット2から透析排液ライン5を通して中和ユニット3へ送液される。
【0028】
透析排液ライン5にはpH計6が設けられ、透析ユニット2から排出された排液のpHを監視することができる。透析ユニット2の工程(透析工程、水洗工程、酸洗浄工程、アルカリ洗浄工程、休止工程)が切り替わる際に、それに応じて中和ユニット3の工程も切り替わるが、透析ユニット2から排出された排液が透析排液ライン5を経て中和ユニット3に流入するまでに若干のタイムラグが生じるので、各工程に応じた液種を適切に処理するためには、弁やポンプをタイミング良く作動させる必要がある。そこで、透析ユニット2から送信される工程信号に基づいて中和ユニット2の工程切替え制御を実施しつつ、pH計6の示すpH値の変動を検知して当該タイムラグを補正することにより、透析排液や洗浄排液を適切に処理することが可能である。また、pH計6の代わりに電導度計を設置して、電導度の変動を検討してタイムラグを補正してもよい。
【0029】
中和ユニット3に送られた透析排液は、三方弁7、8を介して排液貯留槽9に送られる。排液貯留槽9は、上流側区画9aと下流側区画9bに分かれており、上流側区画9aと下流側区画9bは連通している。下流側区画9bには撹拌機10とpH計11が設けられており、槽内のpHを均一に保つことができる。
【0030】
透析排液は、下流側区画9bの液面レベルが所定値(L0)を超えるとオーバーフローして放流槽12に流入する。放流槽12にはpH計13が設けられ、槽内のpHが下水道基準(pH5を超え9未満)の範囲内にあれば放流遮断弁14を開放する。放流槽12内に透析排液が流入して液面計15が所定の液面レベル(L1)に達したときに水中ポンプ16が稼働を開始して、透析排液を下水道に放流する。液面計15が所定の液面レベル(L2)まで低下すると水中ポンプ16は稼働を停止し放流を終了する。排液貯留槽9から流入する透析排液により放流槽12の液面が再び所定の液面レベル(L1)に達すると水中ポンプ16は再び稼働を開始し、透析排液を下水道に放流する。以後、透析工程中はこの放流サイクルを繰り返す。
【0031】
透析排水には重炭酸ナトリウムや人体から排出された老廃物が含まれ、炭酸ガスも溶け込んでいるので、放流槽12において泡立ちが発生する場合がある。そこで放流槽12の上側に設けられたシャワーノズル17から定期的あるいは不定期に消泡用水を噴霧して泡を消すことができる。消泡用水としては水道水なども利用できるが、透析液調製用水を製造するための逆浸透膜(RO)装置から排出される濃縮水を利用すれば水の有効利用および排水量の低減につながるので好ましい。
【0032】
図2は、複数の透析ユニット2の系内を水で洗い流す水洗工程における液流れを示す透析装置1の概略フロー図である。一日の透析治療が終了した後に、透析装置1の運転状態は水洗工程に移行する。水洗工程において透析液供給装置4から透析ユニット2へは、逆浸透膜(RO)装置の透過水が供給されて、系内洗浄済みの水洗浄排液として透析ユニット2から透析排液ライン5を通して中和ユニット3へ送液される。
【0033】
中和ユニット3に送られた水洗浄排液は、三方弁7、8を介して放流槽12に送られる。放流槽12のpHが下水道基準(pH5を超え9未満)の範囲内にあれば放流遮断弁14を開放する。放流槽12内に水洗浄排液が流入して液面計15が所定の液面レベル(L1)に達したときに水中ポンプ16が稼働を開始して、水洗浄排液を下水道に放流する。液面計15が所定の液面レベル(L2)まで低下すると水中ポンプ16は稼働を停止し放流を終了する。流入する水洗浄排液により放流槽12の液面が再び所定の液面レベル(L1)に達すると水中ポンプ16は再び稼働を開始し、水洗浄排液を下水道に放流する。以後、水洗工程中はこの放流サイクルを繰り返す。
【0034】
図3は、複数の透析ユニット2の系内を酸性の洗浄液で洗い流す酸洗浄工程における液流れを示す透析装置1の概略フロー図である。水洗工程を所定時間実施した後に、透析装置1の運転状態は酸洗浄工程に移行する。酸洗浄工程において透析液供給装置4から透析ユニット2へは、1%酢酸水溶液や過酢酸水溶液など酸性の洗浄液が供給されて、系内洗浄済みの酸洗浄排液として透析ユニット2から透析排液ライン5を通して中和ユニット3へ送液される。
【0035】
中和ユニット3に送られた酸洗浄排液は、三方弁7を介して酸貯留槽18に送られ、アルカリ洗浄工程で排出されるアルカリ洗浄排液と排液貯留槽9内で混合するために一時的に貯留される。なお、放流槽12のシャワーノズル17から定期的あるいは不定期に消泡用水が噴霧されるので、放流槽の液面レベルは次第に上昇し、液面計15が所定の液面レベル(L1)に達したときに水中ポンプ16が稼働を開始して槽内の排液を下水道に放流し、液面計15が所定の液面レベル(L2)まで低下すると水中ポンプ16は稼働を停止し放流を終了するという放流サイクルは継続して行われる。
【0036】
図4は、複数の透析ユニット2の系内をアルカリ性の洗浄液で洗い流すアルカリ洗浄工程における液流れを示す透析装置1の概略フロー図である。酸洗浄工程を所定時間実施し、図2に示したのと同様の水洗工程を実施した後に、透析装置1の運転状態はアルカリ洗浄工程に移行する。アルカリ洗浄工程において透析液供給装置4から透析ユニット2へは、300~1000ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液などアルカリ性の洗浄液が供給されて、系内洗浄済みのアルカリ洗浄排液として透析ユニット2から透析排液ライン5を通して中和ユニット3へ送液される。
【0037】
アルカリ洗浄工程の開始時には、透析排液を放流槽12から下水道に放流して放流槽12の液面レベルを所定の値(L3)まで下げておく。このように放流槽12の液面レベルをあらかじめ下げておくことで、放流開始までの時間を確保しつつ透析排液とアルカリ洗排液を酸洗浄排液で中和して、放流開始までに槽内pHを確実に下水道基準の範囲内に調整することができる。
【0038】
中和ユニット3に送られたアルカリ洗浄排液は、三方弁7、8を介して排液貯留槽9に送られる。排液貯留槽9に貯留されている透析排液にアルカリ洗浄排液が混入するが、酸注入ポンプ20の稼働により酸貯留槽18に貯留されている酸洗浄排液が排液貯留槽9に送られて中和されるので、アルカリ洗浄排液と酸洗浄排液の流入バランスが良好である限りは排液貯留槽9の槽内pHは中性域に調整される。酸洗浄排液が過剰に流入して槽内pHが所定の値(PL1)以下になると酸注入ポンプ20は稼働を停止する。また、撹拌機10により下流側区画9bを撹拌するとともに、排液混合ポンプ21が稼働することにより下流側区画9bから上流側区画9aに混合排液を循環させて、槽内pHを均一に保つことができる。
【0039】
排液貯留槽9において透析排液、アルカリ洗浄排液および酸洗浄排液が混合されてなる混合排液は、下流側区画9bの液面レベルが所定値(L0)を超えるとオーバーフローして放流槽12に流入する。放流槽12にはpH計13が設けられ、槽内のpHが下水道基準(pH5を超え9未満)の範囲内にあれば放流遮断弁14を開放する。放流槽12内に混合排液が流入して液面計15が所定の液面レベル(L1)に達したときに水中ポンプ16が稼働を開始して、混合排液を下水道に放流する。液面計15が所定の液面レベル(L2)まで低下すると水中ポンプ16は稼働を停止し放流を終了する。排液貯留槽9から流入する混合排液により放流槽12の液面が再び所定の液面レベル(L1)に達すると水中ポンプ16は再び稼働を開始し、混合排液を下水道に放流する。以後、アルカリ洗浄工程中はこの放流サイクルを繰り返す。
【0040】
また、アルカリ洗浄工程において放流槽12内のpHが9より小さい所定の値(PH1)以上または5より大きい所定の値(PL2)以下となったときに、排液リターンポンプ22を稼働して放流槽12内の混合排液を排液貯留槽9に返送することで、排液貯留槽9内のpHを補正するとともに放流槽12の液面レベルを一時的に下げることができる。放流槽12の液面レベルが所定の液面レベル(L1)まで上昇している時に放流槽12のpHが下水道基準(pH5を超え9未満)の範囲を外れてしまうと、アルカリ洗浄工程を停止しなければならないが、放流槽12に流入させる前に、排液貯留槽9内の混合排液のpHを中和方向へ補正するとともに放流槽12の液面レベルを下げることにより、アルカリ洗浄工程を安定して継続実施することができる。
【0041】
上記のアルカリ洗浄工程を所定時間実施した後に、アルカリ性の洗浄液(次亜塩素酸ナトリウム水溶液など)の濃度を約20ppmに低減して、2回目のアルカリ洗浄工程を実施することもできる。このアルカリ洗浄工程で用いるアルカリ洗浄液のpHは約8.6であり、下水道基準の範囲内であることから、図2に示した水洗工程のフローと同様に排液貯留槽9をバイパスしてアルカリ洗浄排液を放流槽12に送ってもよいし、排液のpHを監視しつつ放流槽12をもバイパスして直接放流することも可能である。
【0042】
排液貯留槽9は上流側区画9aと下流側区画9bに分けることなく一つの区画で構成してもよい。この場合、三方弁8、撹拌機10、pH計11および排液混合ポンプ21は一つの区画にすべて設置される。
【0043】
排液リターンポンプ22を設ける代わりに、水中ポンプ16を用いて混合排液を放流槽12から排液貯留槽9へ返送することもできる。この場合、放流遮断弁14として三方弁を用いれば、三方弁の切り替え操作によって送液先を下水道と排液貯留槽9のいずれかに適宜設定することができる。
【0044】
アルカリ洗浄工程を所定時間実施した後には、透析装置の運転を停止して、アルカリ洗浄液を透析ユニット1の系内に封入したまま翌日まで静置する。翌日の透析治療を開始するにあたっては、図2に示したのと同様の水洗工程を実施して系内のアルカリ洗浄液を洗い流した後に、透析準備の操作を経て、図1に示す透析工程のフローにて透析治療を再開する。排液貯留槽9に貯留されている混合排液は排出せずに透析工程を開始し、透析排液の流入により混合排液中の透析排液の割合が次第に増大する。
【0045】
図1~4に示す工程は必ずしも毎日実施する必要はなく、例えば毎週日曜には透析装置1の運転を休止し、透析工程(第一の透析操作)終了後の水洗工程の後に実施する酸洗浄工程は特定の曜日(毎週火曜、木曜および土曜)のみに実施して、それ以外の曜日(毎週月曜、水曜および金曜)には酸洗浄工程の実施を省略してもよい。酸洗浄工程の実施を省略する場合には、透析工程(第二の透析操作)終了後の水洗工程の後にアルカリ洗浄工程を実施することになるが、アルカリ洗浄工程において酸貯留槽18に貯留されている酸洗浄排液が中和のために消費されるので、あらかじめ酸貯留槽18の液面レベルを上昇させておくことが好ましい。具体的には、酸洗浄工程を実施する特定の曜日(毎週火曜、木曜および土曜)において、酸貯留槽18の液面レベルが所定の値(L)以下となったときに酸洗浄排液の酸貯留槽18から排液貯留槽9への送液を停止することで、それ以外の曜日(毎週月曜、水曜および金曜)に消費するための酸洗浄排液を確保することができる。
【0046】
酸洗浄工程の実施を省略する場合には、図4に示すアルカリ洗浄工程の開始時には酸注入ポンプ20を稼働させず、放流槽12内のpHが9より小さい所定の値(PH2)以上となったときに初めて酸注入ポンプ20を稼働して、酸貯留槽18から排液貯留槽9へと酸洗浄排液を送液する。排液貯留槽9内のpHまたは放流槽12内のpHが所定の値よりも低くなったとき、あるいは所定時間が経過したときに酸注入ポンプ20の稼働を停止することにより、排液貯留槽9および放流槽12内の混合排液のpHが下がり過ぎないように調整することができる。
【0047】
図5は、アルカリ洗浄工程において、上述の通り放流槽12内のpHが9より小さい所定の値(PH1)以上または5より大きい所定の値(PL2)以下となったことにより、排液リターンポンプ22を稼働して放流槽12内の混合排液を排液貯留槽9に返送している状態において、放流槽12の液面レベルが所定の液面レベル(L2)以上となったことにより、アルカリ洗浄工程から排液循環工程への切り替えが行われた後の液流れを示す透析装置1の概略フロー図である。放流槽12内のpHが9に近い値まで上昇しているときや5に近い値まで下降しているときには、所定の液面レベル(L1)以上に達しても排水を下水道へ放流しないように放流槽12の液面レベル制御を停止する。単に液面レベル制御を停止してしまうと放流槽12がオーバーフローする恐れがあるので、その代わりに放流槽12の液面レベルが所定の液面レベル(L2)まで上昇したときにはアルカリ洗浄工程を一時停止して、排液貯留槽9と放流槽12の間で排液を循環する排液循環工程を開始する。放流槽12内のpHが9に近い値まで上昇しているときは、排液循環工程においても酸貯留槽18から排液貯留槽9への酸洗浄排液の送液は継続して実施し、排液貯留槽9内のpHまたは放流槽12内のpHが所定の値よりも低くなったときに酸注入ポンプ20の稼働を停止する。排液循環工程を所定時間継続し、排液貯留槽9および放流槽12内の混合排液のpHが安定して中和域に保持されていることが確認された場合には、排液循環工程を終了してアルカリ洗浄工程を再開する。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、病院等に設置されて血液透析治療に用いられる透析装置の洗浄方法および透析装置洗浄排液の中和装置として広く利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 透析装置
2 透析ユニット
3 中和ユニット
4 透析液供給装置
5 透析排液ライン
6、11、13 pH計
7、8 三方弁
9 排液貯留槽
9a 排液貯留槽の上流側区画
9b 排液貯留槽の下流側区画
10 撹拌機
12 放流槽
14 放流遮断弁
15、19 液面計
16 水中ポンプ
17 シャワーノズル
18 酸貯留槽
20 酸注入ポンプ
21 排液混合ポンプ
22 排液リターンポンプ

図1
図2
図3
図4
図5