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  • 特開-魚卵食品生産方法及び魚卵食品 図1
  • 特開-魚卵食品生産方法及び魚卵食品 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075811
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】魚卵食品生産方法及び魚卵食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/30 20160101AFI20230524BHJP
   A23L 35/00 20160101ALN20230524BHJP
【FI】
A23L17/30 Z
A23L35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188950
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】316006082
【氏名又は名称】株式会社ヤマトバイオレッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100180921
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】馬場 扶喜子
(72)【発明者】
【氏名】梁川 剛一
【テーマコード(参考)】
4B036
4B042
【Fターム(参考)】
4B036LC01
4B036LE03
4B036LF19
4B036LH33
4B036LH37
4B036LH39
4B036LH44
4B036LH50
4B036LP24
4B042AC03
4B042AC10
4B042AD39
4B042AG12
4B042AH09
4B042AK20
4B042AP13
4B042AP14
(57)【要約】
【課題】 本願発明は、新規の魚卵食品生産方法等を提供することを目的とする。
【解決手段】 複数の魚卵の集合体である魚卵集合体を用いた魚卵食品を生産する魚卵食品生産方法であって、前記魚卵集合体の内部に具材を充填する具材充填ステップを含む、魚卵食品生産方法である。本願発明によれば、新規の魚卵食品生産方法等を提供することが可能になる。特に商品価値の高い一本物の形状を維持しつつ、魚卵食品の味のバリエーションを増やすことが可能になる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の魚卵の集合体である魚卵集合体を用いた食品を生産する魚卵食品生産方法であって、
前記魚卵集合体の内部に具材を充填する具材充填ステップを含む、魚卵食品生産方法。
【請求項2】
前記具材は、主材と、調整材とを有し、
前記具材充填ステップの前に、前記主材と前記調整材とを混合する具材混合ステップをさらに含む、請求項1に記載の魚卵食品生産方法。
【請求項3】
前記調整材は、前記魚卵集合体を構成する前記魚卵が離散した状態の材料である、請求項2に記載の魚卵食品生産方法。
【請求項4】
前記具材は、粘性を有する材料である、請求項1から3のいずれかに記載の魚卵食品生産方法。
【請求項5】
前記具材は、水よりも粘度が高い材料である、請求項4記載の魚卵食品生産方法。
【請求項6】
前記具材充填ステップの前に、前記魚卵集合体の端部から前記魚卵集合体の長手方向に、前記具材を充填するための充填ノズルを挿入する充填ノズル挿入ステップとを含み、
前記具材充填ステップにおいて、前記充填ノズルを前記魚卵集合体の長手方向に引き抜きつつ、前記具材を充填する、請求項1から5のいずれかに記載の魚卵食品生産方法。
【請求項7】
前記魚卵集合体は、皮に複数の前記魚卵が包まれた状態のものであり、
前記具材充填ステップにおいて、前記皮の裂け目を塞いだ状態で前記具材を充填する、請求項1から6のいずれかに記載の魚卵食品生産方法。
【請求項8】
複数の魚卵の集合体である魚卵集合体を用いた魚卵食品であって、
前記魚卵集合体の内部に具材を備える、魚卵食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、魚卵食品生産方法及び魚卵食品に関するものであり、特に複数の魚卵の集合体である魚卵集合体を用いた魚卵食品を生産する魚卵食品生産方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
辛子明太子は、タラの卵巣を加工した食品である。従来より、辛子明太子の製造方法としては、塩漬け後に唐辛子をまぶすまぶし製法と、塩漬け後に唐辛子調味液に入れて二次漬けする漬け込み製法が知られている。
【0003】
また、辛子明太子の形状には、卵巣の形状を維持した「一本物」と、卵巣膜が切れた状態の「切れ子」と、魚卵1粒ずつが離散した状態の「ばら子」とがある。特に一本物は贈答用として好まれ、商品価値が高いため、ばら子を用いて一本物の状態に似せた魚卵成形物を製造する方法なども提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-014970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、辛子明太子やたらこ等の魚卵集合体の加工方法の種類は多くはなく、特に商品価値の高い一本物は、味のバリエーションの開発の余地がある。
【0006】
そこで、本願発明は、新規の魚卵食品生産方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の第1の観点は、複数の魚卵の集合体である魚卵集合体を用いた食品を生産する魚卵食品生産方法であって、前記魚卵集合体の内部に具材を充填する具材充填ステップを含む、魚卵食品生産方法である。
【0008】
本願発明の第2の観点は、第1の観点の魚卵食品生産方法であって、前記具材は、主材と、調整材とを有し、前記具材充填ステップの前に、前記主材と前記調整材とを混合する具材混合ステップをさらに含む。
【0009】
本願発明の第3の観点は、第2の観点の魚卵食品生産方法であって、前記調整材は、前記魚卵集合体を構成する前記魚卵が離散した状態の材料である。
【0010】
本願発明の第4の観点は、第1から第3の観点の魚卵食品生産方法であって、前記具材は、粘性を有する材料である。
【0011】
本願発明の第5の観点は、第4の観点の魚卵食品生産方法であって、前記具材は、水よりも粘度が高い材料である。
【0012】
本願発明の第6の観点は、第1から第5のいずれかの観点の魚卵食品生産方法であって、前記具材充填ステップの前に、前記魚卵集合体の端部から前記魚卵集合体の長手方向に、前記具材を充填するための充填ノズルを挿入する充填ノズル挿入ステップとを含み、前記具材充填ステップにおいて、前記充填ノズルを前記魚卵集合体の長手方向に引き抜きつつ、前記具材を充填する。
【0013】
本願発明の第7の観点は、第1から第6のいずれかの観点の魚卵食品生産方法であって、前記魚卵集合体は、皮に複数の前記魚卵が包まれた状態のものであり、前記具材充填ステップにおいて、前記皮の裂け目を塞いだ状態で前記具材を充填する。
【0014】
本願発明の第8の観点は、複数の魚卵の集合体である魚卵集合体を用いた魚卵食品であって、前記魚卵集合体の内部に具材を備える、魚卵食品である。
【発明の効果】
【0015】
本願発明の各観点によれば、新規の魚卵食品生産方法等を提供することが可能になる。特に商品価値の高い一本物の形状を維持しつつ、魚卵食品の味のバリエーションを増やすことが可能になる。
【0016】
また、本願発明の第2の観点によれば、具材に複数の特徴を備えさせることが容易となる。例えば、主材に特定の味を付加させつつ、調整材の分量を調整して主材の味の濃さを調整することが可能となる。
【0017】
第2の観点の効果に関連して、商品開発の過程において、魚卵集合体1本に対して、主材3グラムの場合が味のバランスが優れていることが分かったとする。しかし、充填装置の1回の最小充填量が10グラム等、望ましい量よりも多いことがあり得る。そこで、第2の具材混合ステップにおいて、主材と調整材を混合して、具材における主材の割合を小さくすることが有用となる。これにより、魚卵集合体1本に3グラムよりも多量の具材を注入しても、望ましい味のバランスにすることが可能になる。
【0018】
さらに、本願発明の第3の観点によれば、主材を魚卵集合体になじませることが容易となる。そのため、様々なバリエーションの主材の選択の幅を広げつつ、主材と魚卵集合体の一体感に優れた魚卵食品を提供することが可能になる。
【0019】
さらに、本願発明の第4の観点によれば、充填した具材が魚卵集合体から流れ出ることがなく、具材と魚卵集合体とが一体となった魚卵食品を提供することがさらに容易になる。
【0020】
さらに、本願発明の第5の観点によれば、粘度が高いために皮を通して魚卵集合体の内部に浸透することが難しい粘度が高い材料であっても、魚卵集合体に味を付加する材料として採用することが可能となる。
【0021】
さらに、本願発明の第6の観点によれば、魚卵集合体の長手方向の広範囲に具材が入っている魚卵食品を提供することが可能になる。
【0022】
さらに、本願発明の第7の観点によれば、皮の裂け目から内部の魚卵又は具材が漏れ出すことを防止でき、美観に優れた魚卵食品を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本願発明に係る魚卵食品生産方法の前半の各工程を示す図である。
図2】本願発明に係る魚卵食品生産方法の後半の各工程を示す図である。
図3】本願発明に係る魚卵食品生産方法で生産した魚卵食品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本願発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本願発明の実施例は、以下に記載する内容に限定されるものではない。
【実施例0025】
図1は、本願発明に係る魚卵食品生産方法の前半の各工程を示す図である。具体的には、(a)主材3及び調整材5からなる具材7を容器9に投入するステップ、(b)具材7を混合するステップ、(c)混合された具材7を充填装置11に投入するステップ、(d)充填スピードの設定ステップ、及び、(e)充填量の設定ステップの様子を示す図である。図2は、本願発明に係る魚卵食品生産方法の後半の各工程を示す図である。具体的には、(f)充填ノズルを魚卵集合体に挿入するステップ、及び、(g)具材を魚卵集合体に充填するステップの様子を示す図である。
【0026】
本実施例では、魚卵集合体1(本願請求項における「魚卵集合体」の一例)としてたらこ、主材3(本願請求項における「主材」の一例)として岩のり、調整材5としてばら子(本願請求項における「魚卵材」の一例)を用いた。魚卵集合体1は、タラの卵巣を塩漬け又は辛子調味液漬け等により味付けしたものである。
【0027】
また、本実施例で用いた充填装置11は、ホッパー13と、充填スピード調整部15と、充填量調整部17と、充填ノズル19と、シリンダーと、充填ボタンとを備える。充填装置11は、図示しない充填ボタンが押されると、シリンダーを作動させ、所定の量の充填される材料を所定のスピードで充填ノズル19から押し出す。
【0028】
図1を参照して、図1(a)及び(b)に示すように、所定の量ずつ軽量した岩のり(主材3)とばら子(調整材5)とを容器9にて混合して具材7を準備する(本願請求項における「具材混合ステップ」の一例)。次に図1(c)に示す通り、充填装置11のホッパー13に具材を投入する。続いて図1(d)及び(e)に示す通り、充填装置11の充填スピード調整部15と、充填量調整部17とにより、所定の充填スピードと充填量に設定する。
【0029】
続いて、図2を参照して、図2(f)に示す通り、魚卵集合体1の端部から魚卵集合体1の長手方向に、具材7を充填するための充填ノズル19を挿入する(本願請求項における「充填ノズル挿入ステップ」の一例)。このとき、魚卵集合体1の逆の端部に近いところまで充填ノズル19が入っていることを確認する。最後に図2(g)に示す通り、充填ボタンを押し、充填ノズル19を魚卵集合体1の長手方向に引き抜きつつ、魚卵集合体1の内部に具材7を充填する(本願請求項における「具材充填ステップ」の一例)。
【0030】
なお、一般に、魚類の卵巣は1匹に2本あり、それらは短い管で繋がっている。繋がった状態のものを一腹という。一腹を管部分で分割して1本の状態にする際に、卵巣の側面の卵巣膜に裂け目ができる。具材充填ステップにおいては、手や板等で押さえて一時的に裂け目を塞いだ状態で具材を充填する。これにより、裂け目から内部の魚卵又は具材が漏れ出すことを防止できる。
【0031】
図3は、本願発明に係る魚卵食品生産方法で生産した魚卵食品を示す図である。図3(a)に示す通り、魚卵食品21は、卵巣の形状を維持した一本物のままであり、美観に優れている。充填した具材23がたらこ25から流れ出ることがなく、具材23とたらこ25とが一体となっている。また、細い充填ノズルを用いることにより、穴が目立たなく、美観に優れた魚卵食品を提供することが可能になる。
【0032】
図3(b)に示す通り、魚卵食品21は、端から端まで長手方向の広範囲に具材23が充填されていることが分かる。
【0033】
また、本実施例では主材3として岩のりを用いたが、主材3を他の食材に変えることにより、味のバリエーションを増やすことが可能になる。
【0034】
調整材5は、主材3とは味が異なるものであり、具材7における主材3の味を調整するために加えられる。商品開発の過程において、たらこ1本に対して、岩のり3グラムの場合が味のバランスが優れていることが分かった。しかし、充填装置の1回の最小充填量が10グラム等、望ましい量よりも多いことがあり得る。そこで、具材混合ステップにおいて、岩のりとばら子を混合して、具材における岩のりの味を薄めることにより、たらこに3グラムよりも多量の具材を注入しても、所望のたらこと岩のりの味のバランスにすることが可能になる。
【0035】
なお、本願発明に係る具材としては粘性を有する食材が適している。これにより、充填した具材が魚卵集合体から流れ出ることがなく、具材と魚卵集合体とが一体となった魚卵食品を提供することが容易になる。
【0036】
従来、魚卵集合体を調味液に漬け込み、又は、調味料をまぶすことで味を付ける手法が用いられていた。本願発明は、新規の魚卵食品の生産方法等を提供し、従来用いられなかった具材による調味を可能とした。
【0037】
例えば、主材として、岩のりの他にもチーズや味噌のように塩気のあるもの、チョコレートやフルーツソースのように甘味のあるものを用いてもよい。また、グラタンソースやポテトソースのように、ソース状とした他の料理や食材を用いてもよい。このような主材を用いる際も、調整材として魚卵集合体を構成するバラ子状態の魚卵と混合して充填することにより、一体感に優れた魚卵食品を提供可能となる。
【0038】
また、複数の魚卵の集合体である魚卵集合体としては、辛子の入った調味液に漬けた辛子明太子でもよいし、辛子の入っていない調味液に漬けたたらこであってもよい。また、タラの卵巣だけではなく、他の魚類の卵巣を用いてもよい。また、卵巣の形状を維持したものだけではなく、ばらばらの状態の魚卵を再結合させたものでもよい。
【符号の説明】
【0039】
1;魚卵集合体、3;主材、5;調整材、7;具材、9;容器、11;充填装置、13;ホッパー、15;充填スピード調整部、17;充填量調整部、19;充填ノズル、21;魚卵食品、23;具材、25;たらこ
図1
図2
図3