(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075815
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 9/06 20060101AFI20230524BHJP
【FI】
B25J9/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188957
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 隆之
(72)【発明者】
【氏名】志村 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一樹
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707AS05
3C707BS15
3C707NS21
(57)【要約】
【課題】マスク等の比較的重い搬送対象物を搬送することが可能であるとともに、ガラス基板等の比較的軽い搬送対象物を効率的に搬送することが可能であっても、コストを低減することが可能な産業用ロボットを提供する。
【解決手段】この産業用ロボットでは、アーム7は、第1先端側アーム部10と第2先端側アーム部11と共通アーム部12とを備えており、共通アーム部12は、第1先端側アーム部10の基端側が回動可能に連結される第1共通アーム部20と、第2先端側アーム部11の基端側が回動可能に連結される第2共通アーム部21とを備えている。この産業用ロボットでは、少なくとも、第1中心間距離L1が第2中心間距離L2よりも短くなっているか、または、第1共通アーム幅H1が第2共通アーム幅H2よりも広くなっていて、共通アーム部12の第1共通アーム部20側の剛性が共通アーム部12の第2共通アーム部21側の剛性よりも高くなっている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物が搭載される第1ハンドおよび第2ハンドと、上下方向を回動の軸方向として前記第1ハンドおよび前記第2ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、上下方向を回動の軸方向として前記アームの基端側が回動可能に連結されるアーム支持部とを備え、
前記アームは、前記第1ハンドが先端側に回動可能に連結される第1先端側アーム部と、前記第2ハンドが先端側に回動可能に連結される第2先端側アーム部と、上下方向を回動の軸方向として前記第1先端側アーム部の基端側および前記第2先端側アーム部の基端側が回動可能に連結されるとともに前記アーム支持部に回動可能に連結される共通アーム部とを備え、
前記共通アーム部は、前記第1先端側アーム部が先端側に回動可能に連結される第1共通アーム部と、前記第2先端側アーム部が先端側に回動可能に連結される第2共通アーム部とを備え、
前記アーム支持部に対する前記共通アーム部の回動中心と前記第1共通アーム部に対する前記第1先端側アーム部の回動中心との水平方向の距離を第1中心間距離とし、前記アーム支持部に対する前記共通アーム部の回動中心と前記第2共通アーム部に対する前記第2先端側アーム部の回動中心との水平方向の距離を第2中心間距離とし、前記第1共通アーム部の長手方向と上下方向とに直交する方向における前記第1共通アーム部の幅を第1共通アーム幅とし、前記第2共通アーム部の長手方向と上下方向とに直交する方向における前記第2共通アーム部の幅を第2共通アーム幅とすると、
少なくとも、前記第1中心間距離が前記第2中心間距離よりも短くなっているか、または、前記第1共通アーム幅が前記第2共通アーム幅よりも広くなっていて、前記共通アーム部の、前記第1共通アーム部側の剛性が、前記共通アーム部の、前記第2共通アーム部側の剛性よりも高くなっていることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記第1中心間距離が前記第2中心間距離よりも短くなっているとともに、前記第1共通アーム幅が前記第2共通アーム幅よりも広くなっていることを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記第1共通アーム部に対する前記第1先端側アーム部の回動中心と前記第1先端側アーム部に対する前記第1ハンドの回動中心との水平方向の距離を第3中心間距離とし、前記第2共通アーム部に対する前記第2先端側アーム部の回動中心と前記第2先端側アーム部に対する前記第2ハンドの回動中心との水平方向の距離を第4中心間距離とすると、
前記第1中心間距離は、前記第2中心間距離よりも短くなっており、
前記第1中心間距離と前記第3中心間距離とが等しく、かつ、前記第2中心間距離と前記第4中心間距離とが等しくなっていて、前記第1先端側アーム部の剛性が前記第2先端側アーム部の剛性よりも高くなっていることを特徴とする請求項1または2記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記第1先端側アーム部の長手方向と上下方向とに直交する方向における前記第1先端側アーム部の幅を第1先端側アーム幅とし、前記第2先端側アーム部の長手方向と上下方向とに直交する方向における前記第2先端側アーム部の幅を第2先端側アーム幅とすると、
前記第1先端側アーム幅が前記第2先端側アーム幅よりも広くなっていて、前記第1先端側アーム部の剛性が前記第2先端側アーム部の剛性よりも高くなっていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の産業用ロボット。
【請求項5】
前記第1先端側アーム部の上下方向の厚さは、前記第2先端側アーム部の上下方向の厚さよりも厚くなっていて、前記第1先端側アーム部の剛性が前記第2先端側アーム部の剛性よりも高くなっていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の産業用ロボット。
【請求項6】
前記アーム支持部には、前記第1共通アーム部の基端側が回動可能に連結され、
前記第2共通アーム部の基端は、前記第1共通アーム部の基端側に固定されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の産業用ロボット。
【請求項7】
上下方向から見たときに、前記第1共通アーム部と前記第2共通アーム部とがなす角度が90°となっていることを特徴とする請求項6記載の産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送対象物を搬送するための産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空中で液晶ディスプレイ用のガラス基板を搬送する産業用ロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の産業用ロボットは、2個のハンドと、2個のハンドが回動可能に連結されるアームと、アームが回動可能に連結される本体部とを備えている。アームは、2個のハンドのそれぞれが先端側に回動可能に連結される2個の先端側アーム部と、2個の先端側アーム部の基端側が回動可能に連結される1個の共通アーム部とから構成されている。共通アーム部は、略V形状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の産業用ロボットは、たとえば、プロセスチャンバーにガラス基板を搬入したり、プロセスチャンバーからガラス基板を搬出したりする。プロセスチャンバーでは、液晶ディスプレイを製造するために、ガラス基板に対して所定の処理が行われる。たとえば、プロセスチャンバーでは、ガラス基板の表面を部分的に覆うマスクを用いた所定の処理がガラス基板に対して行われる。プロセスチャンバーでマスクが使用される場合、使用済みの汚れたマスクを洗浄するために、定期的に、使用済みのマスクをプロセスチャンバーから搬出して、洗浄済みのマスクをプロセスチャンバーに搬入しなければならない状況が生じうる。
【0005】
この場合、プロセスチャンバーに対してガラス基板を搬送する産業用ロボットによってプロセスチャンバーに対するマスクの搬送を行えば、液晶ディスプレイの製造システムの構成を簡素化することが可能になる。一方で、マスクの重さは、たとえば、ガラス基板の重さの30倍以上となっており、ガラス基板に比べてマスクは重くなっている。そのため、ガラス基板を搬送する産業用ロボットをそのまま用いてマスクを搬送することは困難である。
【0006】
ガラス基板搬送用の産業用ロボットによるマスクの搬送を可能にするためには、産業用ロボットの剛性を高めれば良い。しかしながら、ガラス基板の搬送頻度と比較して搬送頻度が低いマスクを搬送するために産業用ロボットの剛性を単純に高めたのでは、産業用ロボットの製造コスト等のコストが高くなる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、マスク等の比較的重い搬送対象物を搬送することが可能であるとともに、ガラス基板等の比較的軽い搬送対象物を効率的に搬送することが可能であっても、コストを低減することが可能な産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットは、搬送対象物が搭載される第1ハンドおよび第2ハンドと、上下方向を回動の軸方向として第1ハンドおよび第2ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、上下方向を回動の軸方向としてアームの基端側が回動可能に連結されるアーム支持部とを備え、アームは、第1ハンドが先端側に回動可能に連結される第1先端側アーム部と、第2ハンドが先端側に回動可能に連結される第2先端側アーム部と、上下方向を回動の軸方向として第1先端側アーム部の基端側および第2先端側アーム部の基端側が回動可能に連結されるとともにアーム支持部に回動可能に連結される共通アーム部とを備え、共通アーム部は、第1先端側アーム部が先端側に回動可能に連結される第1共通アーム部と、第2先端側アーム部が先端側に回動可能に連結される第2共通アーム部とを備え、アーム支持部に対する共通アーム部の回動中心と第1共通アーム部に対する第1先端側アーム部の回動中心との水平方向の距離を第1中心間距離とし、アーム支持部に対する共通アーム部の回動中心と第2共通アーム部に対する第2先端側アーム部の回動中心との水平方向の距離を第2中心間距離とし、第1共通アーム部の長手方向と上下方向とに直交する方向における第1共通アーム部の幅を第1共通アーム幅とし、第2共通アーム部の長手方向と上下方向とに直交する方向における第2共通アーム部の幅を第2共通アーム幅とすると、少なくとも、第1中心間距離が第2中心間距離よりも短くなっているか、または、第1共通アーム幅が第2共通アーム幅よりも広くなっていて、共通アーム部の、第1共通アーム部側の剛性が、共通アーム部の、第2共通アーム部側の剛性よりも高くなっていることを特徴とする。
【0009】
本発明の産業用ロボットでは、共通アーム部は、第1先端側アーム部が先端側に回動可能に連結される第1共通アーム部と、第2先端側アーム部が先端側に回動可能に連結される第2共通アーム部とを備えている。また、本発明では、少なくとも、第1中心間距離が第2中心間距離よりも短くなっているか、または、第1共通アーム幅が第2共通アーム幅よりも広くなっていて、共通アーム部の、第1共通アーム部側の剛性が、共通アーム部の、第2共通アーム部側の剛性よりも高くなっている。
【0010】
そのため、本発明では、第1共通アーム部、第1先端側アーム部および第1ハンドを用いてマスク等の比較的重い搬送対象物を搬送することが可能になる。また、本発明では、共通アーム部の第2共通アーム部側の剛性が共通アーム部の第1共通アーム部側の剛性よりも低くなっているため、第2共通アーム部、第2先端側アーム部および第2ハンドを用いて比較的重い搬送対象物を搬送することは困難になるおそれがあるが、ガラス基板等の比較的軽い搬送対象物であれば、第2共通アーム部、第2先端側アーム部および第2ハンドを用いて搬送対象物を搬送することが可能になる。すなわち、本発明では、第1ハンドおよび第2ハンドの2個のハンドを用いて比較的軽い搬送対象物を搬送することが可能になる。したがって、本発明では、ガラス基板等の比較的軽い搬送対象物を効率良く搬送することが可能になる。
【0011】
また、本発明では、共通アーム部の第2共通アーム部側の剛性が共通アーム部の第1共通アーム部側の剛性と同等になっている場合と比較して、産業用ロボットのコストを低減することが可能になる。すなわち、本発明では、比較的重い搬送対象物を搬送することが可能であるとともに、比較的軽い搬送対象物を効率的に搬送することが可能であっても、産業用ロボットのコストを低減することが可能になる。
【0012】
本発明において、第1中心間距離が第2中心間距離よりも短くなっているとともに、第1共通アーム幅が第2共通アーム幅よりも広くなっていることが好ましい。このように構成すると、共通アーム部の第1共通アーム部側の剛性をより高めることが可能になる。したがって、第1共通アーム部、第1先端側アーム部および第1ハンドを用いてより重い搬送対象物を搬送することが可能になる。
【0013】
本発明において、第1共通アーム部に対する第1先端側アーム部の回動中心と第1先端側アーム部に対する第1ハンドの回動中心との水平方向の距離を第3中心間距離とし、第2共通アーム部に対する第2先端側アーム部の回動中心と第2先端側アーム部に対する第2ハンドの回動中心との水平方向の距離を第4中心間距離とすると、第1中心間距離は、第2中心間距離よりも短くなっており、第1中心間距離と第3中心間距離とが等しく、かつ、第2中心間距離と第4中心間距離とが等しくなっていて、第1先端側アーム部の剛性が第2先端側アーム部の剛性よりも高くなっていることが好ましい。
【0014】
このように構成すると、第1共通アーム部に連結される第1先端側アーム部の剛性が高くなっているため、第1共通アーム部、第1先端側アーム部および第1ハンドを用いてより重い搬送対象物を搬送することが可能になる。また、第2先端側アーム部の剛性が第1先端側アーム部の剛性と同等になっている場合と比較して、産業用ロボットのコストを低減することが可能になる。
【0015】
本発明において、第1先端側アーム部の長手方向と上下方向とに直交する方向における第1先端側アーム部の幅を第1先端側アーム幅とし、第2先端側アーム部の長手方向と上下方向とに直交する方向における第2先端側アーム部の幅を第2先端側アーム幅とすると、第1先端側アーム幅が第2先端側アーム幅よりも広くなっていて、第1先端側アーム部の剛性が第2先端側アーム部の剛性よりも高くなっていることが好ましい。
【0016】
このように構成すると、第1共通アーム部に連結される第1先端側アーム部の剛性が高くなっているため、第1共通アーム部、第1先端側アーム部および第1ハンドを用いてより重い搬送対象物を搬送することが可能になる。また、第2先端側アーム部の剛性が第1先端側アーム部の剛性と同等になっている場合と比較して、産業用ロボットのコストを低減することが可能になる。
【0017】
本発明において、第1先端側アーム部の上下方向の厚さは、第2先端側アーム部の上下方向の厚さよりも厚くなっていて、第1先端側アーム部の剛性が第2先端側アーム部の剛性よりも高くなっていることが好ましい。このように構成すると、第1共通アーム部に連結される第1先端側アーム部の剛性が高くなっているため、第1共通アーム部、第1先端側アーム部および第1ハンドを用いてより重い搬送対象物を搬送することが可能になる。また、第2先端側アーム部の剛性が第1先端側アーム部の剛性と同等になっている場合と比較して、産業用ロボットのコストを低減することが可能になる。
【0018】
本発明において、アーム支持部には、第1共通アーム部の基端側が回動可能に連結され、第2共通アーム部の基端は、第1共通アーム部の基端側に固定されていることが好ましい。たとえば、アーム支持部に回動可能に連結される部材を共通アーム部が備えていて、この部材に第1共通アーム部の基端および第2共通アーム部の基端が固定されている場合(すなわち、所定の部材を介して第1共通アーム部がアーム支持部に連結されている場合)には、この部材に対して第1共通アーム部が固定された部分の剛性が低下するおそれがあるが、このように構成すると、第1共通アーム部がアーム支持部に直接連結されているため、このような問題は生じない。
【0019】
本発明において、上下方向から見たときに、第1共通アーム部と第2共通アーム部とがなす角度が90°となっていることが好ましい。このように構成すると、上下方向から見たときに、第1共通アーム部と第2共通アーム部とがなす角度が鋭角や鈍角になっている場合と比較して、第1共通アーム部および第2共通アーム部の構成を簡素化して、第2共通アーム部の基端を第1共通アーム部の基端側に容易に固定することが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明の産業用ロボットでは、マスク等の比較的重い搬送対象物を搬送することが可能であるとともに、ガラス基板等の比較的軽い搬送対象物を効率的に搬送することが可能であっても、産業用ロボットのコストを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる産業用ロボットの平面図である。
【
図2】
図1に示すアームの内部の構成を説明するための断面図である。
【
図4】本発明の他の実施の形態にかかる産業用ロボットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
(産業用ロボットの構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる産業用ロボット1の平面図である。
図2は、
図1に示すアーム7の内部の構成を説明するための断面図である。
【0024】
本形態の産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、たとえば、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ用のガラス基板2や液晶ディスプレイ用のガラス基板2(以下、「基板2」とする。)を搬送するための水平多関節ロボットである。ロボット1は、ディスプレイの製造システムに組み込まれて使用され、真空中で基板2を搬送する。ディスプレイの製造システムは、複数のプロセスチャンバーを備えている。
【0025】
ロボット1は、プロセスチャンバーに対する基板2の搬送を行う。すなわち、ロボット1は、プロセスチャンバーへの基板2の搬入と、プロセスチャンバーからの基板2の搬出とを行う。プロセスチャンバーでは、ディスプレイを製造するために、基板2の表面を部分的に覆うマスク3を用いた所定の処理が基板2に対して行われる。マスク3は、定期的に洗浄される。マスク3の洗浄は、プロセスチャンバーの外部で行われる。
【0026】
本形態のロボット1は、プロセスチャンバーに対するマスク3の搬送も行う。すなわち、ロボット1は、プロセスチャンバーからのマスク3の搬出と、プロセスチャンバーへのマスク3の搬入とを行う。ロボット1は、たとえば、プロセスチャンバーから搬出した使用済みのマスク3をマスク収容部に搬入するとともに、洗浄済みのマスク3をマスク収容部から搬出してプロセスチャンバーに搬入する。マスク3は、基板2よりも重たくなっている。たとえば、マスク3の重量は、基板2の重量の30倍以上となっている。本形態の基板2およびマスク3は、ロボット1によって搬送される搬送対象物である。
【0027】
ロボット1は、基板2およびマスク3が搭載されるハンド5と、基板2が搭載されるハンド6と、上下方向を回動の軸方向としてハンド5、6が回動可能に連結されるアーム7と、上下方向を回動の軸方向としてアーム7が回動可能に連結される本体部8とを備えている。ハンド5、6は、アーム7の先端側に回動可能に連結されている。本体部8には、アーム7の基端側が回動可能に連結されている。ロボット1は、通常、2個のハンド5、6によって基板2を搬送し、マスク3の交換を行うときに、ハンド5によってマスク3を搬送する。本形態のハンド5は、第1ハンドであり、ハンド6は、第2ハンドであり、本体部8は、アーム支持部である。
【0028】
アーム7は、ハンド5が回動可能に連結される先端側アーム部10と、ハンド6が回動可能に連結される先端側アーム部11と、上下方向を回動の軸方向として先端側アーム部10、11が回動可能に連結されるとともに本体部8に回動可能に連結される共通アーム部12とを備えている。本形態のアーム7は、先端側アーム部10、11と共通アーム部12とによって構成されている。ハンド5は、先端側アーム部10の先端側に回動可能に連結されている。ハンド6は、先端側アーム部11の先端側に回動可能に連結されている。本形態の先端側アーム部10は、第1先端側アーム部であり、先端側アーム部11は、第2先端側アーム部である。
【0029】
共通アーム部12には、先端側アーム部10、11の基端側が回動可能に連結されている。具体的には、共通アーム部12は、上下方向から見たときの形状がV形状となるように形成されており、V形状をなす共通アーム部12の一方の先端側に先端側アーム部10の基端側が回動可能に連結され、共通アーム部12の他方の先端側に先端側アーム部11の基端側が回動可能に連結されている。本体部8には、共通アーム部12の基端側が回動可能に連結されている。具体的には、V形状をなす共通アーム部12の中心部分(頂点部分)が本体部8に回動可能に連結されている。アーム7のより具体的な構成については後述する。
【0030】
ハンド5は、ハンド6よりも下側に配置されている。先端側アーム部10は、ハンド5よりも下側に配置されている。先端側アーム部11は、ハンド6よりも上側に配置されている。共通アーム部12は、先端側アーム部10よりも下側に配置されている。すなわち、先端側アーム部10、11は、共通アーム部12よりも上側に配置されている。共通アーム部12は、本体部8よりも上側に配置されている。
【0031】
ハンド5、6は、アーム7に連結される基部14と、基部14から水平方向へ突出するフォーク部15とを備えている。ハンド5の基部14は、先端側アーム部10の先端側に回動可能に連結され、ハンド6の基部14は、先端側アーム部11の先端側に回動可能に連結されている。フォーク部15は、基部14に固定されている。ハンド5のフォーク部15には、基板2およびマスク3が搭載される。すなわち、ハンド5は、基板2を搬送するとともにマスク3も搬送する。ハンド6のフォーク部15には、基板2が搭載される。すなわち、ハンド6は、基板2を搬送するがマスク3は搬送しない。
【0032】
ロボット1は、共通アーム部12に対して先端側アーム部10を回動させるとともに先端側アーム部10に対してハンド5を回動させるアーム部駆動機構16と、共通アーム部12に対して先端側アーム部11を回動させるとともに先端側アーム部11に対してハンド6を回動させるアーム部駆動機構17とを備えている。また、ロボット1は、本体部8に対して共通アーム部12を回動させるアーム部駆動機構と、本体部8に対してアーム7を昇降させる昇降機構とを備えている。
【0033】
(アームの具体的な構成)
図3は、
図1に示すアーム7の平面図である。
【0034】
上述のように、アーム7は、先端側アーム部10、11と共通アーム部12とによって構成されている。先端側アーム部10、11は、上下方向から見たときの形状が細長い長円形状となるとともに上下方向の厚さが比較的薄いブロック状に形成されている。先端側アーム部10、11は、中空状に形成されている。先端側アーム部10の厚さ(上下方向の厚さ)t1は一定になっており、先端側アーム部11の厚さ(上下方向の厚さ)t2は一定になっている。
【0035】
共通アーム部12は、上述のように、上下方向から見たときの形状がV形状となるように形成されている。共通アーム部12は、中空状に形成されている。共通アーム部12は、先端側アーム部10が回動可能に連結される第1共通アーム部20と、先端側アーム部11が回動可能に連結される第2共通アーム部21とを備えている。本形態の共通アーム部12は、第1共通アーム部20と第2共通アーム部21とによって構成されている。
【0036】
第1共通アーム部20は、上下方向から見たときの形状が細長い長円形状となるとともに上下方向の厚さが比較的薄いブロック状に形成されている。第2共通アーム部21は、上下方向から見たときの形状が細長い略長方形状となるとともに上下方向の厚さが比較的薄いブロック状に形成されている。上下方向から見たときの第2共通アーム部21の先端の形状は、半円状となっており、上下方向から見たときの第2共通アーム部21の基端の形状は、直線状となっている。第1共通アーム部20の厚さ(上下方向の厚さ)は一定になっており、第2共通アーム部21の厚さ(上下方向の厚さ)は一定になっている。また、第1共通アーム部20の厚さと第2共通アーム部21の厚さとが等しくなっている。
【0037】
先端側アーム部10は、第1共通アーム部20の先端側に回動可能に連結されている。先端側アーム部11は、第2共通アーム部21の先端側に回動可能に連結されている。本体部8には、第1共通アーム部20の基端側が回動可能に連結されている。第2共通アーム部21の基端は、第1共通アーム部20の基端側に固定されている。第1共通アーム部20と第2共通アーム部21とは、上下方向において同じ位置に配置されている。上下方向から見たときに、第1共通アーム部20と第2共通アーム部21とがなす角度θは90°となっている。
【0038】
図3に示すように、本体部8に対する共通アーム部12の回動中心C1と第1共通アーム部20に対する先端側アーム部10の回動中心C2との水平方向の距離を第1中心間距離L1とし、第2共通アーム部21に対する先端側アーム部11の回動中心C3と回動中心C1との水平方向の距離を第2中心間距離L2とすると、第1中心間距離L1は、第2中心間距離L2よりも短くなっている。また、第1共通アーム部20の長手方向と上下方向とに直交する方向における第1共通アーム部20の幅を第1共通アーム幅H1とし、第2共通アーム部21の長手方向と上下方向とに直交する方向における第2共通アーム部21の幅を第2共通アーム幅H2とすると、第1共通アーム幅H1は、第2共通アーム幅H2よりも広くなっている。
【0039】
このように、第1中心間距離L1が第2中心間距離L2よりも短くなり、かつ、第1共通アーム幅H1が第2共通アーム幅H2よりも広くなっているとともに、上述のように、第1共通アーム部20の厚さと第2共通アーム部21の厚さとが等しくなっており、共通アーム部12の、第1共通アーム部20側の剛性は、共通アーム部12の、第2共通アーム部21側の剛性よりも高くなっている。具体的には、共通アーム部12の、回動中心C1と回動中心C2との間の部分の剛性が、共通アーム部12の、回動中心C1と回動中心C3との間の部分の剛性よりも高くなっている。
【0040】
また、
図3に示すように、先端側アーム部10に対するハンド5の回動中心C4と回動中心C2との水平方向の距離を第3中心間距離L3とし、先端側アーム部11に対するハンド6の回動中心C5と回動中心C3との水平方向の距離を第4中心間距離L4とすると、第1中心間距離L1と第3中心間距離L3とが等しく、かつ、第2中心間距離L2と第4中心間距離L4とが等しくなっている。すなわち、第3中心間距離L3は、第4中心間距離L4よりも短くなっている。
【0041】
また、先端側アーム部10の長手方向と上下方向とに直交する方向における先端側アーム部10の幅を第1先端側アーム幅H3とし、先端側アーム部11の長手方向と上下方向とに直交する方向における先端側アーム部11の幅を第2先端側アーム幅H4とすると、第1先端側アーム幅H3は、第2先端側アーム幅H4よりも広くなっている。さらに、
図2に示すように、先端側アーム部10の厚さt1は、先端側アーム部11の厚さt2よりも厚くなっている。
【0042】
そのため、先端側アーム部10の剛性は、先端側アーム部11の剛性よりも高くなっている。具体的には、先端側アーム部10の、回動中心C2と回動中心C4との間の部分の剛性が、先端側アーム部11の、回動中心C3と回動中心C5との間の部分の剛性よりも高くなっている。また、本形態では、先端側アーム部10の長さ(長手方向の長さ)は、先端側アーム部11の長さ(長手方向の長さ)よりも短くなっている。
【0043】
アーム7は、本体部8と共通アーム部12との連結部である関節部23からハンド5、6の先端(具体的には、フォーク部15の先端)が離れるように伸びる位置と、ハンド5、6の先端が関節部23に近づくように縮む位置との間で本体部8に対して伸縮可能となっている。関節部23からハンド5の先端が離れるように、アーム7の、先端側アーム部10側の部分が伸びるときには、アーム7の、先端側アーム部11側の部分は縮んでおり、関節部23からハンド6の先端が離れるように、アーム7の、先端側アーム部11側の部分が伸びるときには、アーム7の、先端側アーム部10側の部分は縮んでいる。本体部8に対してアーム7が伸縮するときには、ハンド5、6は、本体部8に対して一定方向を向いた状態で水平方向に直線的に移動する。
【0044】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、第1中心間距離L1が第2中心間距離L2よりも短くなっているとともに、第1共通アーム幅H1が第2共通アーム幅H2よりも広くなっていて、共通アーム部12の第1共通アーム部20側の剛性が、共通アーム部12の第2共通アーム部21側の剛性よりも高くなっている。そのため、本形態では、第1共通アーム部20、先端側アーム部10およびハンド5を用いて重量の重いマスク3を搬送することが可能になる。
【0045】
また、本形態では、共通アーム部12の第2共通アーム部21側の剛性が共通アーム部12の第1共通アーム部20側の剛性よりも低くなっているため、第2共通アーム部21、先端側アーム部11およびハンド6を用いてマスク3を搬送することは困難であるが、重量の軽い基板2であれば、第2共通アーム部21、先端側アーム部11およびハンド6を用いて基板2を搬送することは可能である。すなわち、本形態では、2個のハンド5、6を用いて基板2を搬送することが可能になる。したがって、本形態のロボット1では、重量の軽い基板2を効率良く搬送することが可能になる。
【0046】
また、本形態では、共通アーム部12の第2共通アーム部21側の剛性が共通アーム部12の第1共通アーム部20側の剛性と同等になっている場合と比較して、ロボット1のコストを低減することが可能になる。すなわち、本形態のロボット1では、重量の重いマスク3を搬送することが可能であるとともに、重量の軽い基板2を効率的に搬送することが可能であっても、ロボット1のコストを低減することが可能になる。
【0047】
本形態では、第3中心間距離L3が第4中心間距離L4よりも短くなっており、かつ、第1先端側アーム幅H3が第2先端側アーム幅H4よりも広くなっているとともに、先端側アーム部10の厚さt1が先端側アーム部11の厚さt2よりも厚くなっていて、先端側アーム部10の剛性が先端側アーム部11の剛性よりも高くなっている。すなわち、本形態では、第1共通アーム部20に連結される先端側アーム部10の剛性が高くなっている。そのため、本形態では、第1共通アーム部20、先端側アーム部10およびハンド5を用いてより重いマスク3を搬送することが可能になる。また、本形態では、先端側アーム部11の剛性が先端側アーム部10の剛性と同等になっている場合と比較して、ロボット1のコストを低減することが可能になる。
【0048】
本形態では、本体部8に、第1共通アーム部20の基端側が回動可能に連結され、第2共通アーム部21の基端は、第1共通アーム部20の基端側に固定されている。たとえば、本体部8に回動可能に連結される部材を共通アーム部12が備えていて、この部材に第1共通アーム部20の基端および第2共通アーム部21の基端が固定されている場合(すなわち、所定の部材を介して第1共通アーム部20が本体部8に連結されている場合)には、この部材に対して第1共通アーム部20が固定された部分の剛性が低下するおそれがあるが、本形態では、第1共通アーム部20が本体部8に直接連結されているため、このような問題は生じない。
【0049】
本形態では、上下方向から見たときに、第1共通アーム部20と第2共通アーム部21とがなす角度θは90°となっている。そのため、本形態では、角度θが鋭角や鈍角になっている場合と比較して、第1共通アーム部20および第2共通アーム部21の構成を簡素化して、第2共通アーム部21の基端を第1共通アーム部20の基端側に容易に固定することが可能になる。
【0050】
(産業用ロボットの変更例)
図4は、本発明の他の実施の形態にかかるロボット1の平面図である。
【0051】
上述した形態において、ロボット1は、
図4に示すように、アーム7の基端側が回動可能に連結されるとともに本体部8に回動可能に連結されるスイングアーム25を備えていても良い。
図4に示す変更例では、スイングアーム25は、アーム7の基端側が回動可能に連結されるアーム支持部となっている。スイングアーム25は、上下方向から見たときの形状が細長い長円形状となるとともに上下方向の厚さが比較的薄いブロック状に形成されている。アーム7の基端側は、スイングアーム25の先端側に連結されている。本体部8には、スイングアーム25の基端側が連結されている。
【0052】
スイングアーム25は、アーム7より下側に配置されるとともに本体部8より上側に配置されている。アーム7は、上下方向を回動の軸方向としてスイングアーム25に対して回動可能となっている。スイングアーム25は、上下方向を回動の軸方向として本体部8に対して回動可能となっている。ロボット1は、スイングアーム25に対して共通アーム部12を回動させるアーム部駆動機構と、本体部8に対してスイングアーム25を回動させるアーム部駆動機構と、本体部8に対してスイングアーム25を昇降させる昇降機構とを備えている。
【0053】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0054】
上述した形態において、第1共通アーム部20の厚さが第2共通アーム部21の厚さより厚くなっていても良い。また、上述した形態において、第1中心間距離L1が第2中心間距離L2よりも短くなっていて、共通アーム部12の第1共通アーム部20側の剛性が共通アーム部12の第2共通アーム部21側の剛性よりも高くなっているのであれば、第1共通アーム幅H1と第2共通アーム幅H2とが等しくなっていても良い。また、上述した形態において、第1共通アーム幅H1が第2共通アーム幅H2よりも広くなっていて、共通アーム部12の第1共通アーム部20側の剛性が共通アーム部12の第2共通アーム部21側の剛性よりも高くなっているのであれば、第1中心間距離L1と第2中心間距離L2とが等しくなっていても良い。
【0055】
すなわち、少なくとも、第1中心間距離L1が第2中心間距離L2よりも短くなっているか、または、第1共通アーム幅H1が第2共通アーム幅H2よりも広くなっていて、共通アーム部12の第1共通アーム部20側の剛性が共通アーム部12の第2共通アーム部21側の剛性よりも高くなっていれば良い。ただし、上述した形態のように、第1中心間距離L1が第2中心間距離L2よりも短くなっているとともに、第1共通アーム幅H1が第2共通アーム幅H2よりも広くなっていれば、共通アーム部12の第1共通アーム部20側の剛性をより高めることが可能になる。そのため、上述した形態では、第1共通アーム部20、先端側アーム部10およびハンド5を用いてより重いマスク3を搬送することが可能になる。
【0056】
上述した形態において、先端側アーム部10の剛性が先端側アーム部11の剛性よりも高くなっているのであれば、第3中心間距離L3と第4中心間距離L4とが等しくなっていても良いし、第1先端側アーム幅H3と第2先端側アーム幅H4とが等しくなっていても良いし、先端側アーム部10の厚さt1と先端側アーム部11の厚さt2とが等しくなっていても良い。また、上述した形態において、先端側アーム部11の剛性が先端側アーム部10の剛性と同等となっていても良い。
【0057】
上述した形態において、共通アーム部12は、本体部8に回動可能に連結されるアーム基部を備えていても良い。この場合には、たとえば、第1共通アーム部20の基端および第2共通アーム部21の基端がこのアーム基部に固定されている。また、上述した形態において、上下方向から見たときに、第1共通アーム部20と第2共通アーム部21とがなす角度θは、鈍角になっていても良いし、鋭角になっていても良い。また、上述した形態において、基板2およびマスク3以外の搬送対象物がハンド5によって搬送されても良いし、基板2以外の搬送対象物がハンド6によって搬送されても良い。
【符号の説明】
【0058】
1 ロボット(産業用ロボット)
2 基板(ガラス基板、搬送対象物)
3 マスク(搬送対象物)
5 ハンド(第1ハンド)
6 ハンド(第2ハンド)
7 アーム
8 本体部(アーム支持部)
10 先端側アーム部(第1先端側アーム部)
11 先端側アーム部(第2先端側アーム部)
12 共通アーム部
20 第1共通アーム部
21 第2共通アーム部
25 スイングアーム(アーム支持部)
C1 アーム支持部に対する共通アーム部の回動中心
C2 第1共通アーム部に対する第1先端側アーム部の回動中心
C3 第2共通アーム部に対する第2先端側アーム部の回動中心
C4 第1先端側アーム部に対する第1ハンドの回動中心
C5 第2先端側アーム部に対する第2ハンドの回動中心
L1 第1中心間距離
L2 第2中心間距離
L3 第3中心間距離
L4 第4中心間距離
H1 第1共通アーム幅
H2 第2共通アーム幅
H3 第1先端側アーム幅
H4 第2先端側アーム幅
t1 第1先端側アーム部の上下方向の厚さ
t2 第2先端側アーム部の上下方向の厚さ
θ 第1共通アーム部と第2共通アーム部とがなす角度